(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】判定システム、及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240216BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240216BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20240216BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20240216BHJP
【FI】
G16H10/00
A61B5/01 350
G01J5/00 101Z
G01J5/48 A
(21)【出願番号】P 2019210424
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 幸市郎
(72)【発明者】
【氏名】浦邉 雅章
(72)【発明者】
【氏名】坂本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慶太
(72)【発明者】
【氏名】門谷 仁睦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹雄
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067371(JP,A)
【文献】特開2020-062198(JP,A)
【文献】特開2018-183564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/01
G01J 5/00-5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の健康状態を判定する判定システムであって、
前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、
前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、
少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、
少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、を備え
、
前記第1推定手段は、
前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の所定部位を特定する第1処理と、
前記第1取得手段が取得した前記熱画像に基づいて、前記第1処理で特定された前記所定部位における表面温度を測定する第2処理と、
前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度に基づいて、前記生理情報を推定する第3処理と、を行い、
前記判定システムは、
前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、
前記第1推定手段は、
前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する、
判定システム。
【請求項2】
前記第1推定手段は、
前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、複数種類の前記生理情報を推定する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記相関関係情報は、複数の前記対象者に共通となって
いる、
請求項
1又は2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記相関関係情報は、複数の前記対象者各々に固有となって
いる、
請求項
1又は2に記載の判定システム。
【請求項5】
前記対象者の体重情報を取得する第3取得手段と、
前記第3取得手段が取得した前記体重情報に基づいて、前記対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定する第2推定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記第2推定手段が推定した前記脱水量情報と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する、
請求項1から4の何れか一項に記載の判定システム。
【請求項6】
前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定する特定手段、を備え、
前記判定手段は、前記特定手段が特定した前記外観状態と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報とに基づいて、前記対象者の健康状態を判定する、
請求項1から5の何れか一項に記載の判定システム。
【請求項7】
前記対象者を撮像して当該対象者の前記熱画像を出力する赤外線カメラと、
前記対象者を撮像して当該対象者の前記可視光画像を出力する可視光カメラと、を備え、
前記赤外線カメラ及び前記可視光カメラは、相互に同時に前記対象者を撮像し、
前記第1取得手段は、前記赤外線カメラが撮像した前記対象者の前記熱画像を取得し、
前記第2取得手段は、前記可視光カメラが撮像した前記対象者の前記可視光画像を取得する、
請求項1から6の何れか一項に記載の判定システム。
【請求項8】
対象者の健康状態を判定する判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、
前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、
少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、
少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、として機能させ
、
前記第1推定手段は、
前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の所定部位を特定する第1処理と、
前記第1取得手段が取得した前記熱画像に基づいて、前記第1処理で特定された前記所定部位における表面温度を測定する第2処理と、
前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度に基づいて、前記生理情報を推定する第3処理と、を行い、
前記コンピュータは、
前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、
前記第1推定手段は、
前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する、
判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定システム、及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの健康に関する情報を生成する技術が知られていた(例えば、特許文献1参照)。この従来の技術においては、赤外線カメラ及び可視光カメラの撮像結果を用いて、健康に関する情報を生成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、赤外線カメラ及び可視光カメラの撮像結果を用いて、各々相互に異なる要素を計測して、計測結果に基づいて健康に関する情報を生成していたので、健康に関する情報の精度の観点から改善の余地があった。すなわち、例えば、赤外線カメラの撮像結果を用いて肌の状態等を計測し、また、可視光カメラの撮像結果を用いてたるみやむくみ等を計測していたので、肌の状態等の計測精度及びたるみやむくみ等の計測精度を向上させる余地があり、健康に関する情報の精度の観点から改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みなされたもので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる判定システム、及び判定プログラムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の判定システムは、対象者の健康状態を判定する判定システムであって、前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、を備え、前記第1推定手段は、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の所定部位を特定する第1処理と、前記第1取得手段が取得した前記熱画像に基づいて、前記第1処理で特定された前記所定部位における表面温度を測定する第2処理と、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度に基づいて、前記生理情報を推定する第3処理と、を行い、前記判定システムは、前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、前記第1推定手段は、前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する。
【0007】
請求項2に記載の判定システムは、請求項1に記載の判定システムにおいて、前記第1推定手段は、前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、複数種類の前記生理情報を推定する。
【0008】
請求項3に記載の判定システムは、請求項1又は2に記載の判定システムにおいて、前記相関関係情報は、複数の前記対象者に共通となっている。
【0009】
請求項4に記載の判定システムは、請求項1又は2に記載の判定システムにおいて、前記相関関係情報は、複数の前記対象者各々に固有となっている。
【0010】
請求項5に記載の判定システムは、請求項1から4の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記対象者の体重情報を取得する第3取得手段と、前記第3取得手段が取得した前記体重情報に基づいて、前記対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定する第2推定手段と、を備え、前記判定手段は、前記第2推定手段が推定した前記脱水量情報と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する。
【0011】
請求項6に記載の判定システムは、請求項1から5の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定する特定手段、を備え、前記判定手段は、前記特定手段が特定した前記外観状態と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報とに基づいて、前記対象者の健康状態を判定する。
【0012】
請求項7に記載の判定システムは、請求項1から6の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記対象者を撮像して当該対象者の前記熱画像を出力する赤外線カメラと、前記対象者を撮像して当該対象者の前記可視光画像を出力する可視光カメラと、を備え、前記赤外線カメラ及び前記可視光カメラは、相互に同時に前記対象者を撮像し、前記第1取得手段は、前記赤外線カメラが撮像した前記対象者の前記熱画像を取得し、前記第2取得手段は、前記可視光カメラが撮像した前記対象者の前記可視光画像を取得する。
【0013】
請求項8に記載のプログラムは、対象者の健康状態を判定する判定プログラムであって、コンピュータを、前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、として機能させ、前記第1推定手段は、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の所定部位を特定する第1処理と、前記第1取得手段が取得した前記熱画像に基づいて、前記第1処理で特定された前記所定部位における表面温度を測定する第2処理と、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度に基づいて、前記生理情報を推定する第3処理と、を行い、前記コンピュータは、前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、前記第1推定手段は、前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の判定システム、及び請求項8に記載の判定プログラムによれば、第1取得手段が取得した熱画像と、第2取得手段が取得した可視光画像とに基づいて、対象者の生理情報であって、対象者の健康状態に関連する生理情報を推定することにより、例えば、熱画像と可視光画像との2種類の画像に基づいて生理情報を推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
また、第2取得手段が取得した可視光画像に基づいて、対象者の所定部位を特定し、第1取得手段が取得した熱画像に基づいて、当該特定された対象者の所定部位における表面温度を測定し、測定された対象者の所定部位における表面温度に基づいて、生理情報を推定することにより、例えば、生理情報との間で相関が認められる情報を測定可能な部位(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。また、対象者の露出している部分(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者が着衣を着用した状態で所定部位の表面温度を測定することができるので、判定システムの利便性を向上させる事が可能となる。
【0016】
請求項3に記載の判定システムによれば、例えば、対象者の生理情報を共通の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態を共通の基準を用いて判定する事が可能となる。
【0017】
請求項4に記載の判定システムによれば、例えば、対象者の生理情報を対象者各々に固有の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
【0018】
請求項5に記載の判定システムによれば、対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定することにより、例えば、生理情報に加えて、脱水量情報も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の判定システムによれば、可視光画像に基づいて、対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定することにより、例えば、生理情報に加えて、外観状態も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の判定システムによれば、赤外線カメラ及び可視光カメラは、相互に同時に対象者を撮像し、第1取得手段は、赤外線カメラが撮像した対象者の熱画像を取得し、第2取得手段は、可視光カメラが撮像した対象者の可視光画像を取得することにより、例えば、同じタイミングで撮像された熱画像及び可視光画像を取得することができるので、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができ、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図11】体重測定装置と判定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る判定システム、及び判定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、判定システム、及び判定プログラムに関する。
【0024】
ここで、「判定システム」とは、対象者の健康状態を判定するシステムであり、例えば、健康状態を判定する専用システム、あるいは、汎用的に用いられるシステム(例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等)に対して健康状態を判定するための機能を実装することにより実現されるシステム等を含む概念である。「判定システム」とは、例えば、第1取得手段、第2取得手段、第1推定手段、及び判定手段を備え、任意で、格納手段、第3取得手段、第2推定手段、特定手段、赤外線カメラ、及び可視光カメラを備える。
【0025】
この「判定システム」については任意に適用することができ、例えば、建設現場の作業員のスクリーニング、あるいは、学校、病院、又は空港等の利用者のスクリーニング等に適用してもよいが、以下に示す実施の形態では、建設現場の作業員の熱中症に関するスクリーニングに適用する場合を例示して説明する。
【0026】
「対象者」とは、健康状態を判定される対象となる人又は動物であり、例えば、作業員(適宜「作業者」とも称する)、施設利用者、学生、患者、医療関係者、及び旅行者等を含む概念である。「健康状態」とは、健康に関連する状態であり、例えば、熱中症にかかっている疑いがあるか否か、インフルエンザ等の任意の病気にかかっている疑いがあるか否か等を含む概念である。
【0027】
「第1取得手段」とは、対象者の熱画像を取得する手段であり、例えば、赤外線カメラが撮像した対象者の熱画像を取得する手段である。「赤外線カメラ」とは、対象者を撮像して当該対象者の熱画像を出力する装置である。「熱画像」とは、熱の量を示す画像であり、例えば、撮像されている対象が出力する熱分布を図として可視化した画像である。そして、この「熱画像」を用いることにより、撮像されている対象の温度を測定することが可能となる。
【0028】
「第2取得手段」とは、対象者の可視光画像を取得する手段であり、例えば、可視光カメラが撮像した対象者の可視光画像を取得する手段である。「可視光カメラ」とは、対象者を撮像して当該対象者の可視光画像を出力する装置である。「可視光画像」とは、可視光によって表示される画像である。そして、この「可視光画像」に対して公知の画像認識を行うことによって、撮像されている対象を認識することが可能となる。
【0029】
なお、前述の赤外線カメラ及び可視光カメラについては、相互に同時に対象者を撮像するように構成してもよいし、あるいは、対象者を順次撮像するように構成してもよい。なお、「相互に同時に対象者を撮像する」とは、例えば、赤外線カメラ及び可視光カメラが相互に同時に共通の対象者を撮像することを示す概念である。また、「対象者を順次撮像する」とは、例えば、赤外線カメラ又は可視光カメラの一方を用いて対象者を撮像した後、赤外線カメラ又は可視光カメラの他方を用いて当該対象者を撮像することを示す概念である。
【0030】
「第1推定手段」とは、少なくとも、第1取得手段が取得した熱画像と、第2取得手段が取得した可視光画像とに基づいて、対象者の生理情報であって、対象者の健康状態に関連する生理情報を推定する手段である。「第1推定手段」とは、例えば、第1処理~第3処理を行う手段である。
【0031】
「生理情報」とは、対象者の健康状態に関連する情報であり、例えば、平均皮膚温度、大腿温度、着衣脱水密度、心拍数、及び深部温度等を含む概念である。「平均皮膚温度」とは、対象者における身体(例えば、上半身)の皮膚温度の平均であり、例えば、上半身における任意の位置(例えば、7か所等)の皮膚温度の平均等を示す概念である。「大腿温度」とは、大腿の温度であり、例えば、脚の付け根の部分の温度等を示す概念である。「着衣脱水密度」とは、作業を行うことにより失われる対象者の水分量の密度を示す概念であり、例えば、作業を行う場合において、作業を行うことにより失われる対象者の水分量(例えば、作業中に水分補給を行わないこととして、着衣を身に着けた状態での作業前後の対象者の体重の差分)を、当該作業の時間及び対象者の体重の積で除した値に対応する概念である。「心拍数」とは、所定時間(例えば、1分間等)における心拍の回数を示す概念である。「深部温度」とは、体の内部の温度を示す概念である。
【0032】
第1推定手段が行う「第1処理」とは、第2取得手段が取得した可視光画像に基づいて、対象者の所定部位を特定する処理である。「所定部位」とは、対象者の身体(顔も含む)の一部であり、例えば、顔全体、顔における鼻及び口を含む領域、顔における鼻及び口の内の鼻のみが入る領域、脇、膝、及び肘等を含む概念である。
【0033】
第1推定手段が行う「第2処理」とは、第1取得手段が取得した熱画像に基づいて、第1処理で特定された所定部位における表面温度を測定する処理である。
【0034】
第1推定手段が行う「第3処理」とは、第2処理で測定された所定部位における表面温度に基づいて、生理情報を推定する処理であり、例えば、第2処理で測定された所定部位における表面温度と、格納手段に格納されている相関関係情報とに基づいて、生理情報を推定する処理等を含む概念である。なお、相関関係情報については後述する。
【0035】
「判定手段」とは、少なくとも第1推定手段が推定した生理情報に基づいて、対象者の健康状態を判定する手段であり、例えば、第2推定手段が推定した脱水量情報と、第1推定手段が推定した生理情報に基づいて、対象者の健康状態を判定する手段等を含む概念であり、また、特定手段が特定した外観状態と、第1推定手段が推定した生理情報とに基づいて、対象者の健康状態を判定する手段等を含む概念である。
【0036】
つまり、対象者の健康状態の判定は、例えば、生理情報、脱水量情報、又は外観状態の内に少なくとも生理情報を用いて行われるが、以下の実施の形態では、これらの情報の内の生理情報のみを用いて判定する場合を説明し、生理情報に加えて脱水量情報又は外観状態を用いて判定する場合については変形例において説明する。
【0037】
「格納手段」とは、相関関係情報を格納する手段である。「相関関係情報」とは、所定部位における表面温度を示す表面温度情報と生理情報との相関関係を示す情報である。なお、この「相関関係情報」としては、複数の対象者に共通となっている情報を用いてもよいし、あるいは、複数の対象者各々に固有となっている情報を用いてもよい。
【0038】
「第3取得手段」とは、対象者の体重を示す体重情報を取得する手段である。
【0039】
「第2推定手段」とは、第3取得手段が取得した体重情報に基づいて、対象者の脱水量(失われた水分量)を示す脱水量情報を推定する手段である。なお、脱水量の推定手法は任意であるが、例えば、作業中に水分補給を行わないこととして、着衣を身に着けた状態での作業前後の対象者の体重の差分を脱水量とする手法を用いてもよい。
【0040】
「特定手段」とは、第2取得手段が取得した可視光画像に基づいて、対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定する手段である。「外観状態」とは、対象者の外観から判断される当該対象者の状態であり、例えば、対象者の表情、顔のテカリ具合、汗面積比、脇汗の状態、着衣量、及び腰の曲がり具合等を含む概念である。なお、「汗面積比」とは、対象者の所定の一部又は全部の面積に対する、当該一部又は全部における発汗している領域の面積の比率を示す概念であり、例えば、顔の全体の面積に対する、当該顔の内の発汗している領域の面積の比率を示す概念である。
【0041】
そして、以下に示す実施の形態では、「対象者」が建設現場の作業員であり、また、生理情報、脱水量情報、又は外観状態の内の生理情報を用いて、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する場合について説明する。また、「生理情報」として、平均皮膚温度、大腿温度、及び着衣脱水密度を用いる場合について説明する。
【0042】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0043】
(構成)
まず、本実施の形態に係る判定装置について説明する。
図1は、判定装置の設置状態を例示した図であり、また、
図2は、判定装置の正面図であり、また、
図3は、判定装置のブロック図である。なお、
図1及び
図2において、X-Y-X軸は相互に直交する軸であり、Z軸が垂直方向に沿っており、Y軸及びX軸が水平方向に沿っていることとして、以下説明する。
【0044】
判定装置1は、判定システムであり、例えば、
図1に示すように、建設現場の休憩所に設けられており、また、作業員の顔を撮像可能となるように地面から所定高さ(例えば、160cm~170cm等)の位置に設けられている。判定装置1は、例えば、
図3のサーモグラフィカメラ11、可視光カメラ12、記録部13、及び制御部14を備える。
【0045】
(構成-サーモグラフィカメラ)
図3のサーモグラフィカメラ11は、前述の赤外線カメラである。このサーモグラフィカメラ11の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、
図2に示すように、判定装置1の筐体に設けられており、また、前述の熱画像(一例としては、公知のサーモグラフィの技術を用いて撮像される対象の各位置が放射する熱の分布を色の違いで示す画像)を撮像して出力するように構成されている。
【0046】
(構成-可視光カメラ)
図3の可視光カメラ12は、前述の可視光カメラである。この可視光カメラ12の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、
図2に示すように、判定装置1の筐体に設けられており、また、前述の可視光画像(一例としては、公知のイメージセンサ等を用いて撮像される撮像されている対象の可視光での外観を示す画像)を撮像して出力するように構成されている。
【0047】
なお、この可視光カメラ12及び前述のサーモグラフィカメラ11の画角(撮像できる範囲)は任意に設定することができるが、例えば、可視光カメラ12及び前述のサーモグラフィカメラ11が相互に共通の画角に設定されており、当該各カメラは、相互に同一の範囲を撮像できるように構成されていることとする。
【0048】
(構成-記録部)
図3の記録部13は、判定装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段である。この記録部13の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、EEPROMやFlashメモリ等を用いて構成されている。ただし、EEPROMやFlashメモリに代えてあるいはEEPROMやFlashメモリと共に、ハードディスクの如き外部記録装置、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、又はROM、USBメモリ、SDカードの如き電気的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0049】
記録部13は、例えば、作業員関連情報DB131を備え、閾値情報が記録されている。
【0050】
(構成-記録部-作業員関連情報DB)
作業員関連情報DB131は、作業員関連情報を格納する作業員関連情報格納手段であり、特に、相関関係情報を格納する格納手段である。
図4は、作業員関連情報を例示した図である。「作業員関連情報」とは、相関関係情報であり、
図4に示すように、項目「作業員ID」に対応する情報と、項目「氏名情報」に対応する情報と、項目「皮膚温度相関情報」に対応する情報と、項目「大腿温度相関情報」に対応する情報と、項目「着衣脱水密度相関情報」に対応する情報とが相互に関連付けられている。
【0051】
項目「作業員ID」に対応する情報は、作業員を一意に識別する作業員識別情報(以下、識別情報を「ID」とも称する)である(
図4では、「ID001」等)。項目「氏名情報」に対応する情報は、作業員の氏名を特定する氏名情報である(
図4では、便宜上の記載であり「ID001」の作業員の氏名である「AA AA」等)。
【0052】
項目「皮膚温度相関情報」に対応する情報は、所定部位における表面温度(表面温度情報)と平均皮膚温度(生理情報)との相関関係を示す皮膚温度相関情報である(
図4では、「ID001」の作業員の皮膚温度相関情報である「Ts001」等)。なお、ここでの
図4の「Ts001」等については、説明の便宜上の記載であり、詳細の説明は後述する。大腿温度相関情報の「Tf001」等及び着衣脱水密度相関情報の「Td001」等も同様とする。項目「大腿温度相関情報」に対応する情報は、所定部位における表面温度(表面温度情報)と大腿温度(生理情報)との相関関係を示す大腿温度相関情報である(
図4では、「ID001」の作業員の大腿温度相関情報である「Tf001」等)。項目「着衣脱水密度相関情報」に対応する情報は、所定部位における表面温度(表面温度情報)と着衣脱水密度(生理情報)との相関関係を示す着衣脱水密度相関情報である(
図4では、「ID001」の作業員の着衣脱水密度相関情報である「Td001」等)。
【0053】
図5は、作業員の顔の正面図である。
図4の各相関情報で用いられている表面温度の対象となる所定部位としては、
図5に示す狭領域R1又は広領域R2の内の一方のみ又は両方を用いることができる。「狭領域」R1とは、前述の所定部位であり、顔における鼻及び口の内の鼻のみが入る領域であって、
図5に示すように、正面視において鼻を中心として口が入らない矩形の領域である。また、「広領域」R2とは、前述の所定部位であり、顔における鼻及び口を含む領域であって、
図5に示すように、正面視において鼻と口が入る矩形の領域であって、狭領域R1を包含し且つ当該狭領域R1よりも大きな面積の領域である。なお、本実施の形態では、
図4の各相関情報で用いられている表面温度の対象となる所定部位として、狭領域R1又は広領域R2の内の狭領域R1のみを用いる場合を例示して説明する。
【0054】
図6は、相関関係の一例を示す図である。なお、例えば、
図6は、
図4の「ID001」の作業員についての相関関係を示す図であり、
図6(a)の平均皮膚温度相関直線L1は、狭領域R1の表面温度と平均皮膚温度との相関関係を示しており、また、
図6(b)の大腿温度相関直線L2は、狭領域R1の表面温度と大腿温度との相関関係を示しており、また、
図6(c)の着衣脱水密度相関直線L3は、狭領域R1の表面温度と着衣脱水密度との相関関係を示している。そして、前述の
図4の皮膚温度相関情報である「Ts001」としては、
図6(a)の平均皮膚温度相関直線L1を示す情報(一例としては、演算式又はテーブル情報等)が格納されており、また、
図4の大腿温度相関情報である「Tf001」としては
図6(b)の大腿温度相関直線L2を示す情報(一例としては、演算式又はテーブル情報等)が格納されており、また、
図4の着衣脱水密度相関情報である「Td001」としては
図6(c)の着衣脱水密度相関直線L3を示す情報(一例としては、演算式又はテーブル情報等)が格納されていることとする。なお、
図4の「ID001」の作業員以外の作業員(例えば、「ID002」又は「ID003」の作業員等)の各相関情報についても、「ID001」の作業員の各相関情報と同様な情報が格納されていることとする。
【0055】
そして、このような
図4の作業員関連情報の具体的な格納手法は任意であるが、例えば、作業員ID及び氏名情報については、管理者が自己の端末(例えば、パーソナルコンピュータ又はタブレット端末等)を判定装置1に通信可能に接続した上で、各情報を当該端末を介して判定装置1に入力した場合に、制御部14が、入力された各情報に基づいて格納することとする。また、皮膚温度相関情報については、管理者が、各作業員の平均皮膚温度を任意の測定器を用いて測定し、また、平均皮膚温度の測定時点での当該作業員の狭領域R1の表面温度を測定し、これら測定結果である平均皮膚温度と狭領域R1の表面温度の組み合わせのデータを多数(例えば、30組~50組等)、自己の端末に入力した上で、当該端末にてこの多数のデータに対して任意の処理(例えば、近似直線を求める処理等)を行うことにより平均皮膚温度相関直線を求めて、求めた平均皮膚温度相関直線を示す情報を、判定装置1に入力した場合に、制御部14が、入力された各情報に基づいて格納することとする。なお、大腿温度相関情報及び着衣脱水密度相関情報についても、皮膚温度相関情報と同様にして格納することとする。なお、ここで説明した格納手法は一例であり、この手法に限らず、他の手法で格納してもよい。
【0056】
(構成-記録部-閾値情報)
図3の記録部13に格納されている「閾値情報」とは、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定するための閾値を示す情報であり、例えば、
図4の各相関情報で相関関係が示されている各生理情報(具体的には、平均皮膚温度、大腿温度、及び着衣脱水密度)各々に対して設定されている閾値を示す情報である。なお、この閾値情報については、各作業員に対して個別に設定してもよいし、全作業員に対して共通に設定してもよいが、本実施の形態では、全作業員に対して共通に設定する場合を例示して説明する。
【0057】
ここでは、例えば、熱中症に関する学術論文、実験、又はシミュレーション等に基づいて、平均皮膚温度に関する閾値(以下、「平均皮膚温度閾値」とも称する)である「35.5(℃)」、大腿温度に関する閾値(以下、「大腿温度閾値」とも称する)である「34.5(℃)」、及び着衣脱水密度に関する閾値(以下、「着衣脱水密度閾値」とも称する)である「7.5(g/kgh)」を示す情報が閾値情報として格納されている場合を例示して説明する。
【0058】
(構成-制御部)
制御部14は、判定装置1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0059】
制御部14は、機能概念的には、例えば、第1取得部141、第2取得部142、第1推定部143、及び判定部144を備える。第1取得部141は、対象者の熱画像を取得する第1取得手段である。第2取得部142は、対象者の可視光画像を取得する第2取得手段である。第1推定部143は、少なくとも、第1取得部141が取得した熱画像と、第2取得部142が取得した可視光画像とに基づいて、対象者の生理情報であって、対象者の健康状態に関連する生理情報を推定する第1推定手段である。判定部144は、少なくとも第1推定部143が推定した生理情報に基づいて、対象者(作業員)の健康状態を判定する判定手段である。そして、このような制御部14の各部の処理については後述する。
(判定処理)
次に、このように構成される判定装置1により実行される判定処理について説明する。
図7は、判定処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。「判定処理」とは、概略的には、判定装置1によって実行される処理であり、例えば、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する処理である。この判定処理を実行するタイミングは任意であるが、例えば、判定装置1の電源をオンして、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12が起動した場合に実行が開始されることとし、当該処理の実行が開始されたところから説明する。ここでは、例えば、建設現場の作業員が、休憩時間に
図1の休憩所内の判定装置1の正面の所定位置(例えば、判定装置1の各カメラで作業員の顔が撮像可能な予め決められた位置)に訪れて、判定装置1による判定を受ける運用がとられていることとして説明する。また、建設現場の各作業員については、作業員関連情報DB131に
図4の作業員関連情報が予め格納されていることとして、以下説明する。また、
図4の「ID001」の作業員についての判定を行う場合を例示して説明する。
【0060】
図7のSA1において制御部14は、画像を取得するか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、判定処理が起動した場合に、制御部14が、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12を用いて、各カメラの画角(撮像できる範囲)の画像を所定時間間隔(例えば、0.5秒~1秒間隔等)で繰り返し撮像して、当該撮像した画像を受け取るように構成されていることとする。より具体的には、制御部14が、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12で所定時間間隔毎に同時に撮像して、同じタイミングに撮像された熱画像及び可視光画像を受け取るように構成されていることとする。そして、制御部14は、受け取った熱画像及び可視光画像が作業員の顔を撮像したものであるか否か(つまり、各画像に作業員の顔が写っているか否か)を判定し、判定結果に基づいて画像を取得するか否かを判定する。
【0061】
受け取った熱画像及び可視光画像が作業員の顔を撮像したものであるか否かを判定する具体的な手法は任意であるが、例えば、公知の画像認識を利用する手法を用いてもよい。より具体的には、例えば、作業員の顔が写っている可視光画像及び当該顔が写っていない可視光画像を用いて、教師情報有り機械学習を行って作業員が写っている可視光画像を認識する画像認識用のモデル情報(つまり、可視光画像を入力した場合に、当該入力した可視光画像に作業員が写っているか否かを示す情報を出力するモデル情報)を予め生成しておき、当該生成しておいたモデル情報を用いて判定する場合について説明する。なお、ここでの判定手法は例示であり、他の手法を用いてもよく、例えば、熱画像を入力した場合に、当該入力した熱画像に作業員が写っているか否かを示す情報を出力するモデル情報を用いてもよく、あるいは、当該各モデル情報を用いずに他の手法で判定してもよい。
【0062】
SA1について具体的には、制御部14は、まず、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12から出力される熱画像及び可視光画像(つまり、同じタイミングで撮像された熱画像及び可視光画像)を受け取り、受け取った可視光画像を前述のモデル情報に入力する。次に、当該モデル情報から「入力した可視光画像に作業員が写っていないことを示す情報」が出力された場合、制御部14は、受け取った熱画像及び可視光画像が作業員の顔を撮像したものでないものと判定した上で、画像を取得しないものと判定し(SA1のNO)、画像を取得するものと判定するまで、繰り返しSA1を実行する。また、当該モデル情報から「入力した可視光画像に作業員が写っていることを示す情報」が出力された場合、制御部14は、受け取った熱画像及び可視光画像が作業員の顔を撮像したものであるものと判定した上で、画像を取得するものと判定し(SA1のYES)、SA2に移行する。
【0063】
図8は、可視光画像及び熱画像を例示した図である。なお、熱画像については、実際には、撮像される対象の各位置が放射する熱の分布を色の違いで示す画像となっているが、
図8では、説明の便宜上、熱の分布を示す色の違いを具体的には図示せずに画像の全体をハッチングで図示している。なお、他の図の熱画像に対応する図示も同様とする。ここでは、例えば、「ID001」の作業員が、休憩時間に
図1の休憩所内の判定装置1の正面の所定位置に訪れた場合、制御部14は、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12で撮像された画像として、
図8に示す熱画像及び可視光画像を受け取る。そして、取得した
図8の可視光画像を前述のモデル情報に入力した場合、当該モデル情報から「入力した可視光画像に作業員が写っていることを示す情報」が出力され、受け取った熱画像及び可視光画像が作業員の顔を撮像したものであるものと判定した上で、画像を取得するものと判定する。
【0064】
図7のSA2において制御部14は、画像を取得する。具体的には任意であるが、例えば、第1取得部141が、SA1で画像を出力するものと判定された熱画像及び可視光画像の内の熱画像を取得し、また、第2取得部142が、SA1で画像を出力するものと判定された熱画像及び可視光画像の内の可視光画像を取得する。ここでは、例えば、第1取得部141が
図8の熱画像を取得し、また、第2取得部142が
図8の可視光画像を取得する。
【0065】
図7のSA3において第1推定部143は、SA2で取得した熱画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域を特定する。具体的には任意であるが、例えば、SA2で第2取得部142が取得した可視光画像において画像認識を行うことにより、当該可視光画像において作業員の顔の輪郭、鼻及び口を特定し、更に、当該可視光画像中において鼻の位置を中心して口を含まない矩形の狭画像領域GR1を所定部位に対応する領域として特定する(以下、「SA3の第1処理」)。なお、「狭画像領域」GR1とは、前述の狭領域R1に対応する画像上の領域である。次に、SA2で第2取得部142が取得した可視光画像における所定位置(例えば、左上の隅の点)に基準点を設定し、当該基準点に対する前述の特定した作業員の顔の輪郭及び特定した所定部位に対応する領域の位置又は範囲を任意の手法(例えば、基準点を基準とした座標の集合として特定する手法等)で特定する(以下、「SA3の第2処理」)。次に、SA2で第1取得部141が取得した熱画像における所定位置(前述の可視光画像において基準点を設定した位置に対応する熱画像の所定位置であり、例えば、左上の隅の点)に基準点を設定し、当該設定した基準点及び前述の「SA3の第2処理」で特定した作業員の顔の輪郭及び所定部位に対応する領域の位置又は範囲に基づいて、当該熱画像上において作業員の顔の輪郭及び所定部位に対応する領域の位置又は範囲を特定する。
【0066】
なお、「SA3の第1処理」で行われる画像認識としては、可視光画像から顔自体又は顔の鼻及び口当を認識する公知の画像認識の技術を用いることができるので、詳細の説明は省略する。
【0067】
図9は、可視光画像及び熱画像を例示した図である。ここでは、例えば、「SA3の第1処理」において、SA2で第2取得部142が取得した
図8の可視光画像において画像認識を行うことにより、当該可視光画像において作業員の顔の輪郭、鼻及び口を特定し、更に、当該可視光画像中において鼻の位置を中心して口を含まない矩形の狭画像領域GR1(
図9(a))を所定部位(つまり、
図5の狭領域R1)に対応する領域として特定する。次に、「SA3の第2処理」において、SA2で第2取得部142が取得した
図8の可視光画像における所定位置(例えば、左上の隅の点)に
図9(a)に示すように基準点を設定し、当該基準点に対する前述の特定した作業員の顔の輪郭及び特定した狭画像領域GR1の位置又は範囲を任意の手法(例えば、基準点を基準とした座標の集合として特定する手法等)で特定する。次に、「SA3の第3処理」において、SA2で第1取得部141が取得した
図8の熱画像における所定位置(前述の可視光画像において基準点を設定した位置に対応する熱画像の所定位置であり、例えば、左上の隅の点)に
図9(b)に示すように基準点を設定し、当該設定した基準点及び前述の「SA3の第2処理」で特定した作業員の顔の輪郭及び狭画像領域GR1の位置又は範囲に基づいて、当該熱画像上において作業員の顔の輪郭及び狭画像領域GR1の位置又は範囲を特定する。そして、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、熱画像において顔に対応する領域及び狭画像領域GR1の位置又は範囲を特定することができるので、顔に対応する領域の熱分布及び
図5の狭領域R1(つまり、所定部位)の熱分布を特定可能となり、当該顔に対応する領域の表面温度及び狭領域R1の表面温度を測定することが可能となる。なお、ここでの「SA3の第1処理」が第1推定手段が行う「第1処理」に相当する。
【0068】
図7のSA4において第1推定部143は、所定部位の表面温度を測定する。具体的には任意であるが、例えば、SA2で取得した熱画像におけるSA3で特定した所定部位に対応する領域内の色(つまり、熱画像における熱の分布を示す色)に基づいて、当該所定部位の表面温度を測定する。なお、ここでの処理が第1推定手段が行う「第2処理」に相当する。
【0069】
ここでは、例えば、SA2で取得した熱画像におけるSA3で特定した所定部位に対応する
図9(b)又は
図9(c)の狭画像領域GR1内の色(つまり、熱画像における熱の分布を示す色)に基づいて、
図5の狭領域R1の表面温度を測定する。より詳細には、例えば、熱画像における色と当該色が示す熱から想定される温度との関係を示す情報(例えば、演算式又はテーブル情報等)が記録部13に記録されていることとし、この情報を参照して、
図9(b)又は
図9(c)の狭画像領域GR1内の各画素(各ピクセル)の色の分布に対応する温度の分布を特定し、特定した各画素の温度の平均を算出し、算出した平均の温度を
図5の狭領域R1の表面温度の測定結果とする。そして、ここでは、例えば、
図5の狭領域R1の表面温度として「Tm」(「Tm」は便宜上の記載であり36.0度と37.0度の間の所定の温度であることとする)を測定することとする。
【0070】
図7のSA5において第1推定部143は、生理情報を推定する。具体的には任意であるが、まず、SA2で取得した可視光画像において画像認識を行うことにより、
図3の作業員関連情報DB131の
図4の作業員関連情報に情報が格納されている作業員の内の何れの作業員が前述の可視光画像に写っているかを特定する(以下、「SA5の第1処理」)。なお、ここでの画像認識は任意であるが、例えば、
図4の作業員関連情報に情報が格納されている作業員各々が写っている可視光画像を用いて、教師情報有り機械学習を行って可視光画像に写っている作業員を特定するモデル情報(つまり、可視光画像を入力した場合に、当該入力した可視光画像に写っている作業員を示す情報(例えば、作業員ID又は氏名情報)を出力するモデル情報)を予め生成しておき、当該生成しておいたモデル情報を用いて特定する場合について説明する。次に、
図3の作業員関連情報DB131の
図4の作業員関連情報を参照して、「SA5の第1処理」で可視光画像に写っていると特定した作業員に関連付けられている各相関情報(具体的には、皮膚温度相関情報、大腿温度相関情報、着衣脱水密度相関情報)を取得する(以下、「SA5の第2処理」)。次に、SA4で測定した所定部位の表面温度を取得し、「SA5の第2処理」で取得した各相関情報に基づいて、当該取得した所定部位の表面温度に対応する生理情報を特定して、特定した生理情報を可視光画像に写っている作業員の生理情報として推定する。なお、ここでの処理が第1推定手段が行う「第3処理」に相当する。
【0071】
ここでは、例えば、まず、「SA5の第1処理」において、SA2で取得した
図8の可視光画像において画像認識を行うことにより、
図3の作業員関連情報DB131の
図4の作業員関連情報に情報が格納されている作業員の内の何れの作業員が前述の可視光画像に写っているかを特定する。具体的には、前述のモデル情報に
図8の可視光画像を入力し、この場合に、例えば、当該モデル情報から「作業員ID」=「ID001」が出力され、
図4の「ID001」の作業員が
図8の可視光画像に写っているものと特定する。次に、「SA5の第2処理」において、
図3の作業員関連情報DB131の
図4の作業員関連情報を参照して、「SA5の第1処理」で可視光画像に写っていると特定した
図4の「ID001」の作業員に関連付けられている各相関情報として「皮膚温度相関情報」=「Ts001」、「大腿温度相関情報」=「Tf001」、及び「着衣脱水密度相関情報」=「Td001」を取得する。次に、「SA5の第3処理」において、SA4で測定した所定部位の表面温度として「Tm」を取得し、「SA5の第2処理」で取得した各相関情報に基づいて、当該取得した所定部位の表面温度である「Tm」に対応する生理情報として
図6(a)の「平均皮膚温度」=「V1」(つまり、平均皮膚温度相関直線L1にて「Tm」に対応する平均皮膚温度として特定される値)、
図6(b)の「大腿温度」=「V2」(つまり、大腿温度相関直線L2にて「Tm」に対応する大腿温度として特定される値)、及び
図6(c)の「着衣脱水密度」=「V3」(つまり、着衣脱水密度相関直線L3にて「Tm」に対応する着衣脱水密度として特定される値)を特定し、特定したこれらの生理情報を
図8の可視光画像に写っている「ID001」の作業員の生理情報として推定する。なお、ここでの「V1」~「V3」は便宜上の記載であることとする。
【0072】
図7のSA6において判定部144は、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、記録部13に記録されている閾値情報を取得し、また、SA5で推定した生理情報を取得した上で、取得した閾値情報と生理情報を比較し、比較結果に基づいて作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する。
【0073】
詳細には、まず、SA5で推定した平均皮膚温度と閾値情報が示す「平均皮膚温度閾値」とを相互に比較し、推定した平均皮膚温度が「平均皮膚温度閾値」以上であるか、推定した平均皮膚温度が「平均皮膚温度閾値」未満であるかを判定する(以下、「SA6の第1の判定」)。また、SA5で推定した大腿温度と閾値情報が示す「大腿温度閾値」とを相互に比較し、推定した大腿温度が「大腿温度閾値」以上であるか、推定した大腿温度が「大腿温度閾値」未満であるかを判定する(以下、「SA6の第2の判定」)。また、SA5で推定した着衣脱水密度と閾値情報が示す「着衣脱水密度閾値」とを相互に比較し、推定した着衣脱水密度が「着衣脱水密度閾値」以上であるか、推定した着衣脱水密度が「着衣脱水密度閾値」未満であるかを判定する(以下、「SA6の第3の判定」)。
【0074】
そして、これらの「SA6の第1の判定」~「SA6の第3の判定」の判定結果に基づいて、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、推定した生理情報が閾値情報が示す閾値以上であるとの判定結果が1個以上存在する場合に、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定し、一方、推定した全ての生理情報が閾値情報が示す閾値未満である場合(つまり、推定した生理情報が閾値情報が示す閾値以上であるとの判定結果が存在しない場合)、作業員が熱中症にかかっている疑いはないものと判定することとする。
【0075】
ここでは、例えば、閾値情報において、前述のように、「平均皮膚温度閾値」=「35.5(℃)」、「大腿温度閾値」=「34.5」、及び「着衣脱水密度閾値」=「7.5(g/kgh)」が格納されており、前述の「V1」が「35.5(℃)」未満であり、前述の「V2」が「34.5」以上であり、前述の「V3」が「7.5(g/kgh)」未満である場合、「SA6の第2の判定」において、推定した大腿温度が大腿温度閾値以上であると判定されるので、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定する。
【0076】
図7のSA7において制御部14は、SA6の判定結果を出力する。具体的には任意であるが、例えば、
図1の判定装置1の周辺における作業員から見える位置に不図示のディスプレイ装置が設けられていることとし、SA6の判定結果を示す情報を当該ディスプレイ装置に送信し、当該ディスプレイ装置に表示してもよい。あるいは、例えば、
図4の作業員関連情報を参照して、「SA5の第1処理」で特定した作業員の氏名情報を特定し、特定した氏名情報とSA6の判定結果を示す情報とを相互に関連付けてディスプレイ装置に表示したり、あるいは、これらの特定した氏名情報とSA6の判定結果を示す情報を管理者の端末装置に送信して当該端末装置に表示したりしてもよい。あるいは、これらの情報を記録部13に蓄積してもよい。又は、SA6において熱中症にかかっている疑いがあるものと判定した場合にのみ、熱中症を回避するための手法を示す案内情報(例えば、「こまめに水分をとってください」という案内メッセージ等)を、ディスプレイ装置に表示してもよい。なお、
図1の判定装置1の周辺又は判定装置1自体にスピーカ装置を設けて、当該スピーカ装置を介して判定結果又は案内情報を音声出力するように構成してもよい。これにて、判定処理を終了する。
【0077】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第1取得部141が取得した熱画像と、第2取得部142が取得した可視光画像とに基づいて、対象者である作業員の生理情報であって、対象者の健康状態に関連する生理情報を推定することにより、例えば、熱画像と可視光画像との2種類の画像に基づいて生理情報を推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
【0078】
また、第2取得部142が取得した可視光画像に基づいて、対象者の所定部位を特定し、第1取得部141が取得した熱画像に基づいて、当該特定された対象者の所定部位における表面温度を測定し、測定された対象者の所定部位における表面温度に基づいて、生理情報を推定することにより、例えば、生理情報との間で相関が認められる情報を測定可能な部位(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。また、対象者の露出している部分(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者が着衣を着用した状態で所定部位の表面温度を測定することができるので、判定装置1の利便性を向上させる事が可能となる。
【0079】
また、所定部位における表面温度を示す表面温度情報と生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納しており、相関関係情報は、複数の対象者各々に固有となっていることにより、例えば、対象者の生理情報を対象者各々に固有の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
【0080】
また、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12は、相互に同時に対象者を撮像し、第1取得部141は、サーモグラフィカメラ11が撮像した対象者の熱画像を取得し、第2取得部142は、可視光カメラ12が撮像した対象者の可視光画像を取得することにより、同じタイミングで撮像された熱画像及び可視光画像を取得することができるので、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができ、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0081】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0082】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0083】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。また、本出願における「システム」とは、複数の装置によって構成されたものに限定されず、単一の装置によって構成されたものを含む。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。
【0084】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0085】
(生理情報について)
また、上記実施の形態では、生理情報として皮膚温度、大腿温度、及び着衣脱水密度を用いる場合を説明したが、これに限らず、例えば、これらの情報の内の1個のみの情報、あるいは、2個の情報を用いるように構成してもよい。
【0086】
(顔に対応する領域について)
また、上記実施の形態では、SA3において顔に対応する領域を特定する場合について説明したが、これに限らず、例えば、顔に対応する領域は特定せずに、所定部位に対応する領域のみ特定するように構成してもよい。
【0087】
(作業員関連情報について(その1))
また、上記実施の形態の
図4の作業員関連情報における皮膚温度相関情報、大腿温度相関情報、及び着衣脱水密度相関情報の格納手法を任意に変更してもよい。例えば、作業員の狭領域R1の表面温度の測定については、制御部14が、
図7のSA1~SA4の処理と同様な処理を行うことにより行い、この処理で測定された作業員の狭領域R1の表面温度と、管理者に入力された平均皮膚温度、大腿温度、及び着衣脱水密度との組み合わせを用いて各相関情報を生成して格納するように構成してもよい。
【0088】
(作業員関連情報について(その2))
また、上記実施の形態では、
図4の皮膚温度相関情報、大腿温度相関情報、及び着衣脱水密度相関情報が、作業員各々に固有となっている場合について説明したが、これに限らず、例えば、各作業員に共通としてもよい。この場合、例えば、多数の作業員について、狭領域R1の表面温度と平均皮膚温度、大腿温度、及び着衣脱水密度とを測定し、これらの平均を用いて多数の作業員に共通して用いられる皮膚温度相関情報、大腿温度相関情報、及び着衣脱水密度相関情報を1個ずつ生成して格納し、これらの各相関情報を多数の作業員に共通して用いて処理するように構成してもよい。このように構成した場合、所定部位における表面温度を示す表面温度情報と生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納しており、相関関係情報は、複数の対象者に共通となっていることにより、例えば、対象者の生理情報を共通の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態を共通の基準を用いて判定する事が可能となる。
【0089】
(脱水量情報について)
また、上記実施の形態において、作業員の脱水量情報も考慮して作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定するように構成してもよい。
図10は、判定装置の設置状態を例示した図であり、
図11は、体重測定装置と判定装置のブロック図である。なお、
図11において、
図3の構成と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。具体的な実装手法は任意であるが、例えば、
図10に示すように、判定装置2と通信可能な体重測定装置3を設ける。
【0090】
(脱水量情報について-構成-判定装置)
判定装置2は、判定システムであり、
図3の判定装置1において、通信部20を追加し、また、記録部13を記録部23に変更し、また、制御部14を制御部24に変更したものである。
【0091】
通信部20は、外部装置(体重測定装置3)との間で通信を行う通信手段であり、例えば、公知の通信回路等を用いて構成することができる。
【0092】
記録部23は、実施の形態で説明した作業員関連情報DB131、及び作業員体重情報DB232を備え、また、閾値情報を記録する。
【0093】
作業員体重情報DB232は、作業員体重情報を格納する作業員体重情報格納手段である。
図12は、作業員体重情報を例示した図である。「作業員体重情報」とは、作業員の作業前後の体重を示す情報であり、
図12に示すように、項目「作業員ID」に対応する情報と、項目「氏名情報」に対応する情報と、項目「作業前体重情報」に対応する情報と、項目「作業後体重情報」に対応する情報とが相互に関連付けられている。項目「作業員ID」及び項目「氏名情報」に対応する情報は、
図4の同一名称の情報と同様である。項目「作業前体重情報」に対応する情報は、作業を行う前の体重を示す作業前体重情報である(
図12では、「ID001」の作業員の作業前の体重の値を示す「W11」等)。なお、ここで図示されている「W11」は便宜上の記載である(後述の「W12」も同様とする)。項目「作業後体重情報」に対応する情報は、作業を行った後の体重を示す作業後体重情報である(
図12では、「ID001」の作業員の作業後の体重の値を示す「W12」等)。そして、このような作業員体重情報の具体的な格納手法は任意であるが、例えば、作業員ID及び氏名情報は、
図4の同一名称の情報がコピーされて格納されることとし、また、作業前体重情報及び作業後体重情報の格納手法については後述する。
【0094】
図11の記録部23に格納されている「閾値情報」は、
図3の記録部13に格納されている「閾値情報」と概略的には同様であり、例えば、前述の平均皮膚温度閾値、大腿温度閾値、及び着衣脱水密度閾値に加えて、脱水量に関する閾値である脱水量閾値として「1.5(kg)」が格納されているものとする。
【0095】
図11の制御部24は、機能概念的には、例えば、実施の形態で説明した第1取得部141、第2取得部142、及び第1推定部143に加えて、第3取得部245及び第2推定部246を備え、判定部144を判定部244に変更したものである。第3取得部245は、対象者である作業員の体重を示す体重情報を取得する第3取得手段である。第2推定部246は、第3取得部245が取得した体重情報に基づいて、対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定する第2推定手段である。判定部244は、第2推定部246が推定した脱水量情報と、第1推定部143が推定した生理情報に基づいて、対象者の健康状態を判定する判定手段である。そして、このような制御部24の各部の処理については後述する。
【0096】
(脱水量情報について-構成-体重測定装置)
図10及び
図11の体重測定装置3は、当該体重測定装置3に載っている作業員の体重を測定する測定装置であり、例えば、公知の体重計の技術を用いて構成することができる。この体重測定装置3は、建設現場の作業員が、
図10の休憩所内の判定装置2の正面の所定位置(例えば、判定装置1の各カメラで作業員の顔が撮像可能な予め決められた位置)に訪れた場合に当該作業員の体重を測定できるように、判定装置2の正面側に設けられている。
【0097】
(脱水量情報について-処理)
【0098】
判定装置2は、特記する場合を除いて判定装置1と同様な処理を行うこととし、判定装置1の処理と異なる部分についてのみ説明する。ここでは、例えば、作業の前後に、
図10に示すように、作業員が判定装置2の正面の所定位置に訪れて撮像及び体重測定を行う運用がとられている場合を例示して説明する。
【0099】
作業前に作業員が
図10に示すように判定装置2の正面の所定位置に訪れた場合、判定装置2の第3取得部245は、通信部20を介して体重測定装置3との間で通信を行い、体重測定装置3で測定された作業員の体重を示す体重情報を取得し、
図7の「SA5の第1処理」と同様な処理を行って作業員を特定し、
図11の作業員体重情報DB232の
図12の作業員体重情報において、当該特定した作業員に関連付けられている作業前体重情報として前述の取得した体重情報を格納する。なお、ここでは、第3取得部245は、作業前である作業後であるかの判別については、例えば、判定装置2に計時手段(例えば、タイマー等)が設けられており現在時刻を特定可能となっていることとし、現在時刻が作業開始前の時間帯(例えば、午前8時45分~午前9時00分、及び午後12時45分~午後1時00分等)にあたる場合に作業前であるものと識別し、作業終了後の時間帯(例えば、午後12時00分~午後12時15分、及び午後17時00分~午後17時15分等)にあたる場合に作業後であるものと識別してもよい。
【0100】
ここでは、例えば、作業前に「ID001」の作業員が
図10に示すように判定装置2の正面の所定位置に訪れた場合、判定装置2の第3取得部245は、通信部20を介して体重測定装置3との間で通信を行い、体重測定装置3で測定された作業員の体重を示す体重情報である「W11」を取得し、
図12の作業員体重情報において、「作業員ID」=「ID001」に関連付けられた作業前体重情報として「W11」を格納する。
【0101】
次に、作業後に作業員が
図10に示すように判定装置2の正面の所定位置に訪れた場合、判定装置2の第3取得部245は、前述の作業前の場合と同様にして、通信部20を介して体重測定装置3との間で通信を行い、体重測定装置3で測定された作業員の体重を示す体重情報を取得し、
図7の「SA5の第1処理」と同様な処理を行って作業員を特定し、
図11の作業員体重情報DB232の
図12の作業員体重情報において、当該特定した作業員に関連付けられている作業後体重情報として前述の取得した体重情報を格納する。ここでは、例えば、作業後に「ID001」の作業員が
図10に示すように判定装置2の正面の所定位置に訪れた場合、判定装置2の第3取得部245は、前述の作業前の場合と同様にして、通信部20を介して体重測定装置3との間で通信を行い、体重測定装置3で測定された作業員の体重を示す体重情報である「W12」を取得し、
図12の作業員体重情報において、「作業員ID」=「ID001」に関連付けられた作業後体重情報として「W12」を格納する。
【0102】
次に、第2推定部246は、
図12の作業員体重情報を参照して、前述の格納した作業後体重情報と、当該作業後体重情報と同一の作業員の作業前体重情報とを取得し、取得した作業後体重情報に対する取得した作業前体重情報の差分を演算し、演算した差分を当該作業員の脱水量として推定する。ここでは、例えば、第2推定部246は、
図12の作業員体重情報を参照して、前述の格納した「作業後体重情報」=「W12」と、当該作業後体重情報と同一の作業員の「作業前体重情報」=「W11」とを取得し、取得した「W12」に対する取得した「W11」の差分を演算し、演算した差分を「ID001」の作業員の脱水量として推定する。
【0103】
次に、判定部244は、第2推定部246が推定した脱水量と、実施の形態と同様な処理を行って第1推定部143が推定した生理情報とに基づいて、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、実施の形態で説明した「SA6の第1の判定」~「SA6の第3の判定」に加えて、第2推定部246が推定した脱水量と
図11の記録部23に記録されている閾値情報が示す脱水量閾値とを相互に比較し、推定した脱水量が「平均脱水量閾値」以上であるか、推定した脱水量が「脱水量閾値」未満であるかを判定する(以下、「脱水量判定」)。
【0104】
そして、例えば、(実施の形態の場合と同様に)推定した生理情報が閾値情報が示す閾値以上であるとの判定結果が1個以上存在する場合、あるいは、推定した脱水量が「平均脱水量閾値」以上であると判定した場合、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定し、一方、(実施の形態の場合と同様に)推定した全ての生理情報が閾値情報が示す閾値未満であり、且つ、推定した脱水量が「平均脱水量閾値」未満であると判定した場合、作業員が熱中症にかかっている疑いはないものと判定することとする。
【0105】
ここでは、例えば、「ID001」の作業員の脱水量としての「W12」と「W11」との差分が脱水量閾値として「1.5(kg)」以上である場合、判定部244は、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定することとなる。
【0106】
このように構成した場合、対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定することにより、例えば、生理情報に加えて、脱水量情報も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0107】
(外観状態について)
また、上記実施の形態において、作業員の外観状態も考慮して作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定するように構成してもよい。
図13は、判定装置のブロック図である。なお、
図13において、
図3の構成と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0108】
(外観状態について-構成)
判定装置4は、判定システムであり、
図3の判定装置1において、記録部13を記録部43に変更し、また、制御部14を制御部44に変更したものである。
【0109】
記録部43は、作業員関連情報DB431を備え、また、実施の形態で説明した閾値情報を記録する。
【0110】
作業員関連情報DB431は、作業員関連情報を格納する作業員関連情報格納手段であり、特に、相関関係情報を格納する格納手段である。
図14は、作業員関連情報を例示した図である。「作業員関連情報」とは、相関関係情報であり、
図14に示すように、項目「作業員ID」に対応する情報と、項目「氏名情報」に対応する情報と、項目「皮膚温度相関情報」に対応する情報と、項目「大腿温度相関情報」に対応する情報と、項目「着衣脱水密度相関情報」に対応する情報と、項目「汗面積比相関情報」に対応する情報が相互に関連付けられている。なお、項目「汗面積比相関情報」に対応する情報以外の情報については、
図4の同一名称の情報と同様である。項目「汗面積比相関情報」に対応する情報は、所定部位における表面温度と汗面積比(外観状態)との相関関係を示す汗面積比相関関係情報である(
図14では、「ID001」の作業員の汗面積比相関情報である「Ta001」等)。
【0111】
図15は、相関関係の一例を示す図である。なお、
図15は、
図14の「ID001」の作業員についての相関関係を示す図であり、汗面積比相関直線L4は、狭領域R1の表面温度と汗面積比との相関関係を示している。ここでの汗面積比とは、例えば、作業員の顔の面積に対する、当該顔における発汗している領域の面積の比率を示していることとして以下説明する。そして、前述の
図14の汗面積比相関情報である「Ta001」としては、
図15の汗面積比相関直線L4を示す情報(一例としては、演算式又はテーブル情報等)が格納されていることとする。そして、このような
図14の作業員関連情報の具体的な格納手法は任意であり、例えば、実施の形態で説明した
図4の作業員関連情報と同様にして予め格納されていることとする。特に、汗面積比相関情報については、作業員が熱中症の疑いがない場合の健康な状態の情報に基づいて格納されていることとする。なお、ここでの汗面積比については、狭領域R1を含む顔の面積に対する、当該顔における発汗している領域の面積の比率を用いたが、これに限らず、狭領域R1を含まない部分の面積に対する当該部分における発刊している領域の面積の比率を用いてもよい。
【0112】
図13の制御部44は、機能概念的には、例えば、実施の形態で説明した第1取得部141、第2取得部142、及び第1推定部143に加えて、特定部445を備え、判定部144を判定部444に変更したものである。特定部445は、第2取得部142が取得した可視光画像に基づいて、対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定する特定手段である。判定部444は、特定部445が特定した外観状態と、第1推定部143が推定した生理情報とに基づいて、対象者の健康状態を判定する判定手段である。そして、このような制御部44の各部の処理については後述する。
【0113】
(外観状態について-処理)
【0114】
判定装置4は、特記する場合を除いて判定装置1と同様な処理を行うこととし、判定装置1の処理と異なる部分についてのみ説明する。
【0115】
図7のSA5において、実施の形態で説明した処理に加えて、特定部445は、第2取得部142が取得した可視光画像に基づいて、作業員の汗面積比を特定する。具体的には任意であるが、例えば、SA2で第2取得部142が取得した可視光画像を取得し、「SA3の第1処理」の場合と同様な処理を行って、当該可視光画像において作業員の顔の輪郭を特定する。次に、前述の可視光画像において、特定した顔の輪郭の内部の領域(つまり、顔に対応する領域)において、更に画像認識を行って発汗している領域を特定し、顔の輪郭の内部の領域で発汗している領域と発汗していない領域とを区別する。なお、ここでの発汗している領域を認識する手法は任意であるが、例えば、発汗した部分は汗に起因するテカリが生じることに着目して画像認識する手法を用いてもよいし、あるいは、顔の一部又は全部が発汗している顔の画像、及び発汗していない顔の画像を用いて教師情報有り機械学習を行って可視光画像に写っている作業員の発汗している領域を特定するためのモデル情報を予め生成しておき、当該生成したおいたモデル情報を用いて特定してもよい。次に、顔の輪郭の内部の全体の領域(つまり、顔全体の領域)に対する発汗しているものと特定された領域の比率を演算し(つまり、「発汗しているものと特定された領域の面積」÷「顔の輪郭の内部の全体の領域の面積」の演算)、演算結果を作業員の汗面積比として特定する。
【0116】
図7のSA6において判定部444は、前述の特定部445が特定した汗面積比と、実施の形態と同様な処理を行って第1推定部143が推定した生理情報とに基づいて、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、実施の形態で説明した「SA6の第1の判定」~「SA6の第3の判定」に加えて、以下の判定を行う。具体的には、SA4で測定した所定部位の表面温度、及び前述の特定部445が特定した汗面積比を取得し、また、
図14の作業員関連情報の内の、可視化画像に写っている作業員に関連付けられている汗面積比相関情報を取得した上で、取得した所定部位の表面温度及び汗面積比の組み合わせの情報が、取得した汗面積比相関情報が示す汗面積比相関直線L4から所定割合以上逸脱しているか否かを判定する。より具体的には、
図15において、前述の所定部位の表面温度及び汗面積比で特定される点が上限直線L41及び下限直線L42の相互間の領域から逸脱している否かを判定する。
【0117】
そして、例えば、(実施の形態の場合と同様に)推定した生理情報が閾値情報が示す閾値以上であるとの判定結果が1個以上存在する場合、あるいは、所定部位の表面温度及び汗面積比の組み合わせの情報が、汗面積比相関情報が示す汗面積比相関直線L4から所定割合以上逸脱している場合、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定し、一方、(実施の形態の場合と同様に)推定した全ての生理情報が閾値情報が示す閾値未満であり、且つ、所定部位の表面温度及び汗面積比の組み合わせの情報が、汗面積比相関情報が示す汗面積比相関直線L4から所定割合以上逸脱していない場合、作業員が熱中症にかかっている疑いはないものと判定することとする。
【0118】
ここでは、例えば、SA4で測定した所定部位の表面温度が「34.0(℃)」であり、特定部445が特定した汗面積比が「70(%)」である場合、所定部位の表面温度及び汗面積比の組み合わせの情報が、
図15の点P1に対応する情報となるので、所定部位の表面温度及び汗面積比の組み合わせの情報が、汗面積比相関情報が示す汗面積比相関直線L4から所定割合以上逸脱しているので、作業員が熱中症にかかっている疑いがあるものと判定することとなる。
【0119】
このように構成した場合、可視光画像に基づいて、対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定することにより、例えば、生理情報に加えて、外観状態も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0120】
(熱画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域を特定する手法について)
また、上記実施の形態では、
図7のSA3において、
図9の基準点を設定して熱画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域を特定する場合について説明したが、これに限らない。例えば、AIに関する技術(例えば、機械学習の技術)を用いて、可視光画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域を、熱画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域に重ね合わせることにより、熱画像における顔に対応する領域及び所定部位に対応する領域を特定するように構成してもよい。
【0121】
(その他の特徴について)
また、上記実施の形態又は変形例において、構成を適宜変更してもよい。具体的には、例えば、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12の撮像結果に基づいて作業員顔の表面温度測定から脱水症状と深部体温・体表面温度を予測し、症状の重い作業員のみ、体重測定と体温計測を詳細に実施してもよく、この場合、作業員のモニタリングに要する時間と負担を低減できる。
【0122】
また、例えば、判定装置1をバッテリー駆動型もしくは電源(100Vの商用電源もしくは太陽光発電に電源)駆動型としてもよい。
【0123】
また、例えば、判定装置1のサーモグラフィカメラ11を用いて夜間の不審者監視を行ってもよく、また、判定装置1に発光部(フラッシュ光を出力する構成)を設けて、フラッシュ光を出力したタイミングで可視光カメラ12で撮像することにより、不審者を可視光画像で撮像するように構成してもよい。このように構成することで、判定装置1を防犯目的にも用いることができる。
【0124】
また、例えば、判定装置1によって判定する健康状態を季節によって変更してもよく、例えば、夏季は熱中症に関する判定を行い、冬季はインフルエンザに関する判定を行うように構成してもよい。
【0125】
また、例えば、判定装置1の可視光カメラ12で撮像した画像に基づいて人の状態(表情、顔のテカリ具合又は脇汗の状態等からの発汗の状態、着衣量、又はユーザの腰の曲がり具合等)を特定し、特定結果に基づいて熱中症を判定するように構成してもよい。
【0126】
また、例えば、判定装置1の構成要素を分散配置してもよく、例えば、サーモグラフィカメラ11及び可視光カメラ12を判定装置1とは別体として設けて、これらの各カメラと判定装置1とが通信を行うことにより実施の形態で説明した処理を行うように構成してもよい。
【0127】
また、例えば、判定装置1の筐体として防水防塵ケーシングを用いてもよく、また、判定装置1の機能をウエアラブルデバイス(例えば、眼鏡型のデバイス等)に実装してもよく、作業所内巡回AIロボットに搭載してもよく、あるいは、入退場時の顔認証システムと連動させてもよい。
【0128】
(組み合わせについて)
また、上記実施の形態及び変形例の技術を任意に組み合わせてもよい。特に、実施の形態、及び変形例の「(脱水量情報について)」及び「(外観状態について)」の技術を組み合わせて、生理情報、脱水量情報、及び外観情報を考慮して作業員の健康状態を判定するように構成してもよい。
【0129】
(付記)
付記1の判定システムは、対象者の健康状態を判定する判定システムであって、前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、を備える。
【0130】
付記2の判定システムは、付記1に記載の判定システムにおいて、前記第1推定手段は、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の所定部位を特定する第1処理と、前記第1取得手段が取得した前記熱画像に基づいて、前記第1処理で特定された前記所定部位における表面温度を測定する第2処理と、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度に基づいて、前記生理情報を推定する第3処理と、を行う。
【0131】
付記3の判定システムは、付記2に記載の判定システムにおいて、前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、前記相関関係情報は、複数の前記対象者に共通となっており、前記第1推定手段は、前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する。
【0132】
付記4の判定システムは、付記2に記載の判定システムにおいて、前記所定部位における表面温度を示す表面温度情報と前記生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納する格納手段、を備え、前記相関関係情報は、複数の前記対象者各々に固有となっており、前記第1推定手段は、前記第3処理において、前記第2処理で測定された前記所定部位における表面温度と、前記格納手段に格納されている前記相関関係情報とに基づいて、前記生理情報を推定する。
【0133】
付記5の判定システムは、付記1から4の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記対象者の体重情報を取得する第3取得手段と、前記第3取得手段が取得した前記体重情報に基づいて、前記対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定する第2推定手段と、を備え、前記判定手段は、前記第2推定手段が推定した前記脱水量情報と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する。
【0134】
付記6の判定システムは、付記1から5の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像に基づいて、前記対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定する特定手段、を備え、前記判定手段は、前記特定手段が特定した前記外観状態と、前記第1推定手段が推定した前記生理情報とに基づいて、前記対象者の健康状態を判定する。
【0135】
付記7の判定システムは、付記1から6の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記対象者を撮像して当該対象者の前記熱画像を出力する赤外線カメラと、前記対象者を撮像して当該対象者の前記可視光画像を出力する可視光カメラと、を備え、前記赤外線カメラ及び前記可視光カメラは、相互に同時に前記対象者を撮像し、前記第1取得手段は、前記赤外線カメラが撮像した前記対象者の前記熱画像を取得し、前記第2取得手段は、前記可視光カメラが撮像した前記対象者の前記可視光画像を取得する。
【0136】
付記8のプログラムは、対象者の健康状態を判定する判定プログラムであって、コンピュータを、前記対象者の熱画像を取得する第1取得手段と、前記対象者の可視光画像を取得する第2取得手段と、少なくとも、前記第1取得手段が取得した前記熱画像と、前記第2取得手段が取得した前記可視光画像とに基づいて、前記対象者の生理情報であって、前記対象者の健康状態に関連する前記生理情報を推定する第1推定手段と、少なくとも前記第1推定手段が推定した前記生理情報に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定手段と、として機能させる。
【0137】
(付記の効果)
付記1に記載の判定システム、及び付記8に記載の判定プログラムによれば、第1取得手段が取得した熱画像と、第2取得手段が取得した可視光画像とに基づいて、対象者の生理情報であって、対象者の健康状態に関連する生理情報を推定することにより、例えば、熱画像と可視光画像との2種類の画像に基づいて生理情報を推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
【0138】
付記2に記載の判定システムによれば、第2取得手段が取得した可視光画像に基づいて、対象者の所定部位を特定し、第1取得手段が取得した熱画像に基づいて、当該特定された対象者の所定部位における表面温度を測定し、測定された対象者の所定部位における表面温度に基づいて、生理情報を推定することにより、例えば、生理情報との間で相関が認められる情報を測定可能な部位(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。また、対象者の露出している部分(例えば、顔等)を所定部位とした場合、対象者が着衣を着用した状態で所定部位の表面温度を測定することができるので、判定システムの利便性を向上させる事が可能となる。
【0139】
付記3に記載の判定システムによれば、所定部位における表面温度を示す表面温度情報と生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納しており、相関関係情報は、複数の対象者に共通となっていることにより、例えば、対象者の生理情報を共通の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態を共通の基準を用いて判定する事が可能となる。
【0140】
付記4に記載の判定システムによれば、所定部位における表面温度を示す表面温度情報と生理情報との相関関係を示す相関関係情報を格納しており、相関関係情報は、複数の対象者各々に固有となっていることにより、例えば、対象者の生理情報を対象者各々に固有の相関関係情報を用いて推定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させる事が可能となる。
【0141】
付記5に記載の判定システムによれば、対象者の脱水量を示す脱水量情報を推定することにより、例えば、生理情報に加えて、脱水量情報も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0142】
付記6に記載の判定システムによれば、可視光画像に基づいて、対象者の外観から判断される状態である外観状態を特定することにより、例えば、生理情報に加えて、外観状態も考慮して判定することができるので、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0143】
付記7に記載の判定システムによれば、赤外線カメラ及び可視光カメラは、相互に同時に対象者を撮像し、第1取得手段は、赤外線カメラが撮像した対象者の熱画像を取得し、第2取得手段は、可視光カメラが撮像した対象者の可視光画像を取得することにより、例えば、同じタイミングで撮像された熱画像及び可視光画像を取得することができるので、対象者の生理情報の推定精度を向上させることができ、対象者の健康状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0144】
1 判定装置
2 判定装置
3 体重測定装置
4 判定装置
11 サーモグラフィカメラ
12 可視光カメラ
13 記録部
14 制御部
20 通信部
23 記録部
24 制御部
43 記録部
44 制御部
131 作業員関連情報DB
141 第1取得部
142 第2取得部
143 第1推定部
144 判定部
232 作業員体重情報DB
244 判定部
245 第3取得部
246 第2推定部
431 作業員関連情報DB
444 判定部
445 特定部
GR1 狭画像領域
L1 平均皮膚温度相関直線
L2 大腿温度相関直線
L3 着衣脱水密度相関直線
L4 汗面積比相関直線
L41 上限直線
L42 下限直線
P1 点
R1 狭領域
R2 広領域