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特許7437928インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240216BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240216BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
H01L21/68 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019227703
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097144
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲司
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0089979(US,A1)
【文献】特開2018-157160(JP,A)
【文献】特開2014-179527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、前記インプリント材を硬化させることにより前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記ショット領域が変形するように前記基板を加熱する加熱部と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材を硬化させる硬化部と、
前記加熱部および前記硬化部を制御する制御部と、を備え、
前記ショット領域は、互いに離隔した複数の第1領域および互いに離隔した複数の第2領域を含み、前記パターン領域は、前記複数の第1領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第3領域および前記複数の第2領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第4領域を含み、
前記制御部は、前記複数の第1領域のそれぞれと前記複数の第3領域のうち対応する第3領域とをアライメントする第1アライメントを制御した後に前記複数の第1領域の上の前記インプリント材を硬化させるように前記硬化部を制御し、その後、前記複数の第2領域のそれぞれと前記複数の第4領域のうち対応する第4領域とをアライメントする第2アライメントを制御した後に前記ショット領域の全域の上の前記インプリント材が硬化するように前記硬化部を制御し、
前記第2アライメントは、前記加熱部による前記複数の第2領域の加熱を含み、
前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1アライメントにおいて前記加熱部に前記第1領域を加熱させない、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1アライメントにおいて前記加熱部が前記第1領域に与える熱量が前記第2アライメントにおいて前記加熱部が前記第2領域に与える熱量より小さいように前記加熱部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記モールドを変形させるモールド変形機構を更に備え、
前記制御部は、前記第1アライメントおよび前記第2アライメントの少なくとも一方において前記モールド変形機構を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記モールドを変形させるモールド変形機構を更に備え、
前記制御部は、前記第1アライメントおよび前記第2アライメントにおいて前記モールド変形機構を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第1アライメントにおいて前記モールド変形機構によってモールドを変形させた状態での前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第1アライメントにおいて前記モールド変形機構によってモールドを変形させた状態での前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第1アライメントにおいて前記モールド変形機構によってモールドの変形を開始する時点での前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第1アライメントにおいて前記モールド変形機構によってモールドの変形を開始する時点での前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記第2アライメントを開始する時点において、前記第2領域は、前記第4領域より小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記ショット領域は、複数のチップ領域を含み、前記第1領域は、各チップ領域に配置された領域を含み、前記第2領域は、各チップ領域に配置された領域を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、前記インプリント材を硬化させることにより前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置であって、
前記ショット領域が変形するように前記基板を加熱する加熱部と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材を硬化させる硬化部と、
前記加熱部および前記硬化部を制御する制御部と、を備え、
前記ショット領域は、複数のチップ領域を含み、各チップ領域は、第1領域および第2領域を含み、前記パターン領域は、前記第1領域に転写すべきパターンを有する第3領域および前記第2領域に転写すべきパターンを有する第4領域を含み、
前記制御部は、前記第1領域と前記第3領域とをアライメントする第1アライメントを制御した後に前記第1領域の上の前記インプリント材を硬化させるように前記硬化部を制御し、その後、前記第2領域と前記第4領域とをアライメントする第2アライメントを制御した後に前記ショット領域の全域の上の前記インプリント材が硬化するように前記硬化部を制御し、
前記第2アライメントは、前記加熱部による前記第2領域の加熱を含み、
前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント装置によって基板の上にインプリント材の硬化物からなるパターンを形成する工程と、
前記工程でパターンが形成された前記基板の加工を行う工程と、
を含み、前記加工が行われた前記基板から物品を得ることを特徴とする物品製造方法。
【請求項12】
基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、前記インプリント材を硬化させることにより前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域は、互いに離隔した複数の第1領域および互いに離隔した複数の第2領域を含み、前記パターン領域は、前記複数の第1領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第3領域および前記複数の第2領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第4領域を含み、
前記インプリント方法は、
前記複数の第1領域のそれぞれと前記複数の第3領域のうち対応する第3領域とをアライメントする第1アライメント工程と、
前記第1アライメント工程の後に、前記複数の第1領域の上の前記インプリント材を硬化させる第1硬化工程と、
前記第1硬化工程の後に、前記複数の第2領域のそれぞれと前記複数の第4領域のうち対応する第4領域とをアライメントする第2アライメント工程と、
前記第2アライメント工程の後に、前記ショット領域の全域の上の前記インプリント材を硬化させる第2硬化工程と、を含み、
前記第2アライメント工程は、前記複数の第2領域を加熱により変形させることを含み、
前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、前記インプリント材を硬化させることにより前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域は、複数のチップ領域を含み、各チップ領域は、第1領域および第2領域を含み、前記パターン領域は、前記第1領域に転写すべきパターンを有する第3領域および前記第2領域に転写すべきパターンを有する第4領域を含み、
前記インプリント方法は、
前記第1領域と前記第3領域とをアライメントする第1アライメント工程と、
前記第1アライメント工程の後に、前記第1領域の上の前記インプリント材を硬化させる第1硬化工程と、
前記第1硬化工程の後に、前記第2領域と前記第4領域とをアライメントする第2アライメント工程と、
前記第2アライメント工程の後に、前記ショット領域の全域の上の前記インプリント材を硬化させる第2硬化工程と、を含み、
前記第2アライメント工程は、前記第2領域を加熱して前記第2領域を変形させることを含み、
前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい、
ことを特徴とするインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置では、基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、該インプリント材を硬化させることにより該インプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。よく知られているように、ショット領域に形成されているパターンとその上に重ねてインプリント装置によって形成されるパターンとの重ね合わせ精度が重要である。そのための技術として、型を変形させる技術やショット領域を変形させる技術が知られている。特許文献1には、モールドの側面に力を加えることによってモールドのパターン領域の形状を補正する技術が記載されている。特許文献2には、基板側パターン領域を加熱することによって基板側パターン領域の形状を補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-504141号公報
【文献】特開2013-102132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インプリント装置において重ね合わせ精度を向上させるための従来の技術は、高次の空間周波数を有する形状補正には適していない。
【0005】
本発明は、重ね合わせ精度の向上に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、基板のショット領域の上のインプリント材とモールドのパターン領域とを接触させ、前記インプリント材を硬化させることにより前記インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置に係り、前記インプリント装置は、前記ショット領域が変形するように前記基板を加熱する加熱部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材を硬化させる硬化部と、前記加熱部および前記硬化部を制御する制御部と、を備え、前記ショット領域は、互いに離隔した複数の第1領域および互いに離隔した複数の第2領域を含み、前記パターン領域は、前記複数の第1領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第3領域および前記複数の第2領域のそれぞれに転写すべきパターンをそれぞれ有する複数の第4領域を含み、前記制御部は、前記複数の第1領域のそれぞれと前記複数の第3領域のうち対応する第3領域とをアライメントする第1アライメントを制御した後に前記複数の第1領域の上の前記インプリント材を硬化させるように前記硬化部を制御し、その後、前記複数の第2領域のそれぞれと前記複数の第4領域のうち対応する第4領域とをアライメントする第2アライメントを制御した後に前記ショット領域の全域の上の前記インプリント材が硬化するように前記硬化部を制御し、前記第2アライメントは、前記加熱部による前記複数の第2領域の加熱を含み、前記第1領域と前記第3領域との寸法差は、前記第2領域と前記第4領域との寸法差より小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重ね合わせ精度の向上に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のインプリント装置の構成を示す図。
図2】加熱部の構成例を示す図。
図3】基板のショット領域の構成例および基板側マークの配置例を示す図。
図4】歪の大きさが互いに異なる2つの領域を有するショット領域を例示する図。
図5】メモリセルアレイ領域の(目標寸法からの)縮み量が周辺回路領域の(目標寸法からの)縮み量よりも大きい例を示す図。
図6】インプリント装置の動作を例示する図。
図7】物品製造方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1には、一実施形態のインプリント装置1の構成が模式的に示されている。インプリント装置1は、基板3のショット領域3aの上のインプリント材4とモールド2のパターン領域2aとを接触させ、インプリント材4を硬化させることによりインプリント材4の硬化物からなるパターンを形成する。
【0011】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。また、インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に供給されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体(Si、GaN、SiC等)、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。
【0012】
基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。あるいは、基板は、SOI(Silicon on Insulator)基板でありうる。モールドは、インプリント材を硬化させるための硬化エネルギー(例えば、紫外線)を透過する材料、例えば石英で構成されうる。
【0013】
本明細書および添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。アライメント(位置合わせ)は、基板のショット領域とモールドのパターン領域とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)が低減されるように基板およびモールドの少なくとも一方の位置および/または姿勢を制御することを含みうる。また、アライメントは、基板のショット領域およびモールドのパターン領域の少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0014】
モールド2は、その外周形状が矩形でありうる。モールド2は、基板3と対向する側の面にパターン領域2aを有する。1回のインプリント処理で、パターン領域2aと同程度の面積を有するパターンが基板3のショット領域3aの上に形成される。この明細書では、ショット領域は、1回のインプリント処理によってパターンが形成される領域を意味し、基板3は、1又は複数のショット領域、典型的には複数のショット領域を有しうる。インプリント装置1に提供される基板3に既に形成されているパターンの形成のために使用された露光装置におけるショット領域の寸法と、インプリント装置1におけるショット領域の寸法とは、同じであってもよいし、互いに異なってもよい。1つのショット領域のサイズは、例えば、26mm×33mm程度である。1つのショット領域は、1又は複数のチップ領域を含みうる。複数のチップ領域は、スクライブラインによって互いに離隔されうる。露光装置におけるショット領域がインプリント装置1におけるショット領域より小さい場合、露光装置における複数のショット領域は、インプリント装置において1つのショット領域として扱われうる。
【0015】
インプリント装置1は、モールド駆動機構7、基板駆動機構23、ディスペンサ15、アライメント計測部19、硬化部5、基板加熱部17、制御部CNT等を備えうる。モールド駆動機構7は、例えば、モールド2を保持するモールド保持部8と、モールド保持部8を駆動することによってモールド2を駆動する駆動機構9と、モールド2のパターン領域2aを変形させるモールド変形機構10とを含みうる。パターン領域2aを変形させる動作は、パターン領域2aの形状を補正する動作でありうる。モールド保持部8と駆動機構9は、硬化部5からの硬化光5aおよび基板加熱部17からの加熱光17aを通過させる開口部13を有しうる。開口部13には、透過部材14が配置されうる。透過部材14は、モールド2の裏面(パターン領域2aを有する面とは反対側の面)の側に密閉空間SPを規定する。透過部材14は、硬化部5からの硬化光5aおよび基板加熱部17からの加熱光17aを透過する。
【0016】
密閉空間SPの圧力は、不図示の圧力調整器によって調整されうる。圧力調整器によって密閉空間SPの圧力が外部圧力より高くすることによって、パターン面2aを基板3に向かって凸形状に変形させることができる。これにより、基板3の上のショット領域3aの中心部においてインプリント材4に対するパターン領域2aの接触を開始させることができる。このような動作は、パターン領域2aとインプリント材4との間に気体が残留することを抑えるために有利である。
【0017】
駆動機構9は、例えば、ボイスコイルモータ、エアシリンダ、ピエゾ、リニアモータ等のアクチュエータの少なくとも1つを含みうる。駆動機構9は、モールド2と基板3の上のインプリント材4とを接触させたり、硬化したインプリント材4からモールド2を分離させたりするように、モールド保持部8(モールド2)をZ方向に駆動しうる。駆動機構9は、例えば、X軸、Y軸、θX軸、θY軸、θZ軸の全部または一部に関しても、モールド保持部8(モールド2)を駆動してもよい。
【0018】
モールド変形機構10は、例えば、リニアモータ、ピエゾ等のアクチュエータの少なくとも1つを含み、該アクチュエータによって、モールド2の側面に対して力を加えうる。このような力は、パターン領域2aに平行な方向の力でありうる。モールド変形機構10は、モールド2の側面に対して力を加えることによってパターン領域2aを変形させ、これによりパターン領域2aの形状を補正しうる。
【0019】
基板駆動機構23は、基板3を保持する基板保持部12と、基板保持部12を支持する基板ステージ13と、基板ステージ13を駆動することによって基板3を駆動する駆動機構21とを含みうる。駆動機構21は、例えば、リニアモータを含みうる。駆動機構21は、例えば、X軸、Y軸、θZ軸に関して基板ステージ13(基板3)を駆動しうる。駆動機構21は、Z軸、θX軸、θY軸の全部または一部に関しても、基板ステージ13(基板3)を駆動してもよい。基板駆動機構23は、粗動駆動系および微動駆動系の組み合わせのように、複数の駆動系によって構成されてもよい。基板ステージ11の位置は、例えば、筐体16に設けられたスケールと基板ステージ13に設けられた光学機器とで構成されるエンコーダシステムによって計測されうる。基板ステージ11の位置は、他の計測器、例えば、筐体16に設けられたレーザ干渉計と基板ステージ13に設けられた反射鏡とで構成される干渉計システムによって計測されてもよい。
【0020】
ディスペンサ15は、基板3の1又は複数のショット領域に対してインプリント材4を供給するように構成されうる。ディスペンサ15は、例えば、基板駆動機構23によって基板3が走査駆動されている状態で基板3の目標位置にインプリント材14が配置されるようにインプリント材14を吐出しうる。
【0021】
アライメント計測部19は、モールド2のパターン領域2aに配置されたモールド側マーク2bと、基板3のショット領域3aに配置された基板側マーク3bとの相対位置を計測する。このような計測は、複数のマーク対について実施されうる。各マーク対は、モールド側マーク2bと基板側マーク3bとからなる。
【0022】
制御部CNTは、モールド駆動機構7、基板駆動機構23、ディスペンサ15、アライメント計測部19、硬化部5、基板加熱部17を制御する。制御部CNTは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0023】
図2には、加熱部17の構成例が示されている。加熱部17は、照度分布を有する加熱光17aを基板3のショット領域3aに照射することによってショット領域3aに温度分布を形成し、これによりショット領域3aの形状を補正しうる。なお、図2において、図1のミラー18、ハーフミラー6、透過部材14は、省略されている。加熱部17は、光源61、光ファイバ62、光学系63、DMD(Digital Micro-mirror Device)64、投影光学系65、照射制御部66を含みうる。
【0024】
光源61は、加熱用の光を発生する。加熱用の光は、インプリント材4を硬化させず、かつ基板3によって吸収されやすい波長を有することが好ましい。加熱用の光は、例えば、400nm~2000nmでありうる。光源61が発生する加熱用の光は、光ファイバ62および光学系63を介してDMD64に入射しうる。DMD64は、それに入射した光を空間変調し加熱光17aを生成する。加熱光17aは、投影光学系65を介して基板3のショット領域に照射される。これにより、基板3のショット領域には、照度分布が形成され、それに応じて該ショット領域が変形し、形状が補正される。光源61は、例えば、高出力半導体レーザを含みうる。光学系63は、例えば、光源61から射出された光を集光させる集光光学系(不図示)、集光光学系からの光の強度を均一化してDMD64を照明するための均一照明光学系(不図示)を含みうる。均一照明光学系は、例えば、MLA(Micro Lens Array)を含みうる。
【0025】
DMD64は、2次元に配列された複数のマイクロミラー(不図示)を含む。DMD64は、例えば、照射制御部66からの指令に従って、各マイクロミラーをマイクロミラーの配列面に対して-12度(ON状態)または+12度(OFF状態)の角度で傾けうる。投影光学系65は、DMD64と基板3とを光学的に共役な位置関係にするように構成されている。ON状態のマイクロミラーで反射された光は、加熱光17aとして投影光学系65により基板3上に結像される。OFF状態のマイクロミラーで反射された光は、基板3に到達しない方向に導かれる。
【0026】
照射制御部66は、DMD64を制御する。加熱部17には、制御された照度分布がショット領域に形成されるように各マイクロミラーの状態(ON状態又はOFF状態)を制御するための制御データが供給されうる。加熱光17aが照射された基板3のショット領域では、加熱光17aの光エネルギーが熱エネルギーに変換され、ショット領域には、照度分布に応じた熱量分布が形成される。これにより、ショット領域を目標形状に変形させることができる。
【0027】
図1に戻り、硬化部5は、硬化エネルギーとして、基板3のショット領域3aの上のインプリント材4を硬化させるための硬化光5aを発生し、ショット領域3aの上のインプリント材4に照射する。硬化光5aの光路には、光学素子20が配置されうる。硬化部5は、例えば、光源、DMD、アパーチャ、可変視野絞り、結像光学系等を含み、照度分布および/または照射領域を制御可能である。照度分布および/または照射領域の制御によって、ショット領域3aのうち目標とする一部分のみに硬化光5aを照射することができる。光学素子20と透過部材14との間には、ミラー20が配置されている。加熱部17からの加熱光17aは、例えば、ミラー18およびハーフミラー6を介して基板3に照射されうる。硬化部5からの硬化光5aは、ミラー20およびハーフミラー6を介して基板3の上のインプリント材4に照射されうる。
【0028】
図3(a)には、基板3のショット領域3aの構成例および基板側マーク3bの配置例が示されている。図3(b)には、モールド2のパターン領域2aの構成例およびモールド側マーク2bの配置例が示されている。図3(b)のモールド2は、図3(a)の基板3のショット領域3aの上にパターンを形成するために使用される。
【0029】
図3(a)の例では、1つのショット領域3aは、複数のチップ領域3cと、複数のチップ領域3cを相互に離隔するスクライブライン3dと、複数の基板側マーク3bとを有する。複数の基板側マーク3bは、スクライブライン3dに配置されうる。各基板側マーク3bは、ショット領域3aの角部分に配置されうる。図3(b)の例では、図3(a)のショット領域3aの構成に適合するように、1つのパターン領域2aは、複数のチップ領域2cと、複数のチップ領域2cを相互に離隔するスクライブライン2dと、複数のモールド側マーク2bとを有する。複数のモールド側マーク2bは、スクライブライン2dに配置されうる。各モールド側マーク2bは、パターン領域2aの角部分に配置されうる。
【0030】
図3(a)、(b)の例では、各々が基板側マーク3bとパターン側マーク2bとからなる4つのマーク対が存在し、4つのマーク対について、アライメント計測部19によって、板側マーク3bとパターン側マーク2bとの相対位置が計測されうる。ここで、相対位置の計測は、X方向およびY方向に関してなされる。この計測により、ショット領域3aとパターン領域2aとの間の、X方向の位置ずれ、Y方向の位置ずれ、Z軸周りの回転ずれ、倍率成分のずれ、スキュー成分のずれ、および、台形成分のずれに関する情報を得ることができる。これらの情報に基づいて、制御部CNTは、ショット領域3aとパターン領域2aとの重ね合わせ誤差が許容範囲に収まるように基板駆動機構23、モールド駆動機構7および加熱部17を制御するアライメントを制御することができる。なお、上記の倍率、スキューおよび台形成分は、ショット領域3aの全体についての成分であり、各チップ領域についての成分ではない。
【0031】
図4(a)には、歪の大きさが互いに異なる2つの領域を有するショット領域3aの例が示されている。ここで、歪量が互いに異なる2つの領域は、周辺回路領域3f、および、メモリセルアレイ領域3eある。図4(a)の例では、ショット領域3aは、複数のチップ領域3cを含み、各チップ領域3cは、メモリ製品のチップ領域である。周辺回路領域3fとメモリセルアレイ領域3eとでは、構造が互いに異なるので、剛性も互いに異なる。したがって、一連の製造工程において、例えば、スパッタリングなどの成膜工程などのように加熱を伴う工程を経ることで、周辺回路領域3fとメモリセル領域3eとには、互いに異なる大きさの歪が生じうる。
【0032】
図4(b)には、図4(a)のショット領域3aを有する基板3の上にパターンを形成するために使用されるモールド2の例が示されている。モールド2のパターン領域2aは、周辺回路領域3fに転写すべきパターンを有する第1パターン領域2fおよびメモリセルアレイ領域3eに転写すべきパターンを有する第2パターン領域2eを含む。
【0033】
図5(a)には、メモリセルアレイ領域3eの(目標寸法からの)縮み量が周辺回路領域3fの(目標寸法からの)縮み量よりも大きい例が示されている。換言すると、図5(a)の例では、周辺回路領域3fと第1パターン領域2fとの寸法差は、メモリセルアレイ領域3eと第2パターン領域2eとの寸法差より小さい。図5(a)の例では、メモリセルアレイ領域3eが点線で示されるメモリセルアレイ領域3e’になってしまっている状態が示されている。なお、メモリセルアレイ領域3eおよび周辺回路領域3fの歪の大きさは、実際にはnmオーダであるが、図5(a)では誇張して示されている。
【0034】
図5(a)の例では、パターン面2aとショット領域3aの形状を合わせるには、ショット領域3aにおいて、周辺回路領域3fの膨張を抑えながらメモリセル領域3eを膨張させる必要がある。ここで、加熱部17によってメモリセル領域3eに加熱光17aが照射されると、メモリセル領域3eで熱が発生し、この熱によってメモリセル領域3eが膨張する。しかしながら、この熱は、周辺回路領域3fに伝達されるので、周辺回路領域3fも膨張しうる。
【0035】
そこで、メモリセルアレイ領域3eの外側の領域、即ち周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dの全部または一部に硬化光5aを照射し、周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dの上のインプリント材4を硬化させる第1硬化工程が実施される。以下では、第1硬化工程において硬化光5aが照射される領域を第1領域と定義し、また、ショット領域のうち第1領域とは異なる領域を第2領域と定義する。この定義に従えば、パターン領域2aは、第1領域に転写すべきパターンを有する第3領域、および、第2領域に転写すべきパターンを有する第4領域を含む。
【0036】
第1硬化工程では、周辺回路領域3fの上のインプリント材4は、周辺回路領域3fを膨張させない状態で、即ち重ね合わせ誤差を悪化させない状態で硬化される。図5(b)には、第1硬化工程が模式的に示されている。図5(b)において、網掛けの領域は、ショット領域3aのうち第1硬化工程において、硬化光5aが照射される第1領域である。ショット領域3aが複数のチップ領域を含む場合、第1領域は、各チップ領域に配置された領域(以下、第1部分領域)を含み、第2領域も、各チップ領域に配置された領域(以下、第2部分領域)を含みうる。複数の第1部分領域は、互いに離隔して配置されてもよい。あるいは、複数の第2部分領域は、互いに離隔して配置されてもよい。あるいは、複数の第1部分領域、または、複数の第2部分領域は、互いに離隔して配置されてもよい。複数の第1部分領域は、周期的に配置されうる。複数の第2部分領域は、周期的に配置されうる。
【0037】
第1硬化工程では、メモリセルアレイ領域3eの外側に、メモリセルアレイ領域3eを取り囲むように、硬化光5aが照射されない非照射領域が設けられてもよい。非照射領域は、周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dの一部分でありうる。第1ショット領域は、周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dから非照射領域を除いた部分でありうる。
【0038】
その後、ショット領域3aとパターン領域2aとをアライメントするために、メモリセルアレイ領域3eが加熱部17によって加熱され、メモリセルアレイ領域3eが変形されうる。この際に、モールド変形部10によってパターン領域2aも変形されてもよい。その後、ショット領域3aの全域においてインプリント材4が硬化するようにショット領域3aに硬化光5aを照射する第2硬化工程が実施される。ここで、第2硬化工程では、少なくとも、ショット領域3aのうち第1硬化工程において硬化光5aが照射されてない領域(即ち、第2領域)に硬化光5aが照射されうる。しかし、第2硬化工程では、ショット領域3aのうち第1硬化工程において硬化光5aが照射された領域(即ち、第1領域)の全体又は一部にも硬化光5aが照射されてもよい。
【0039】
以上の方法によれば、周辺回路領域3fにおける重ね合わせ精度を向上させつつ、メモリセルアレイ領域3eにおける重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0040】
なお、周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dの全部または一部は第1領域の一例に過ぎず、また、メモリセルアレイ領域3eは第2領域の一例に過ぎない。第1領域および第2領域は、任意の製品のショット領域において任意に定められうる。
【0041】
図6には、1枚の基板に対するインプリント装置1の動作が例示的に示されている。図6に示された処理は、制御部CNTによって制御される。工程S301では、インプリント装置1に基板4がロードされ、基板保持部12によって基板3が保持される。工程S302では、インプリント処理によってパターンを形成する対象のショット領域3aの上にディスペンサ15によってインプリント材4が配置される。工程S303では、ディスペンサ15によってインプリント材4が配置されたショット領域3aがモールド2の下に配置されるように基板駆動機構23によって基板3が駆動および位置決めされる。
【0042】
工程S304では、基板3のショット領域3aの上のインプリント材4とモールド2のパターン領域2aとが接触するようにモールド駆動機構7によってモールド2が駆動される。工程S305では、アライメント計測部15を使って、ショット領域3aの4つのマーク対について、モールド側マーク2bと基板側マーク3bとの相対位置を計測することによって、ショット領域3aとパターン領域2aとの重ね合わせ誤差が計測される。そして、この重ね合わせ誤差が低減されるように第1アラメントがなされる。第1アライメントでは、X方向の位置ずれ、Y方向の位置ずれ、Z軸周りの回転ずれと、倍率成分のずれ、スキュー成分のずれ、および、台形成分のずれが低減されるように、基板駆動機構23およびモールド駆動機構7が制御されうる。X方向の位置ずれ、Y方向の位置ずれ、Z軸周りの回転ずれの低減には、基板駆動機構23、および、モールド駆動機構7の駆動機構9が使用されうる。また、倍率成分のずれ、スキュー成分のずれ、および、台形成分のずれの低減のために、モールド変形機構10のモールド変形機構10が使用されうる。
【0043】
ここで、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域の間の寸法の関係について説明する。1つの例において、第1アライメントにおいてモールド変形機構10によってモールド2を変形させた状態での第1領域(周辺回路領域3fの一部およびスクライブライン3dの一部)と第3領域2fとの寸法差をΔ1とする。また、第1アライメントにおいてモールド変形機構10によってモールド2を変形させた状態での第2領域(メモリセルアレイ領域3eおよび非照射領域)と第4領域との寸法差をΔ2とする。このとき、Δ1<Δ2でありうる。
【0044】
他の例において、第1アライメントにおいてモールド変形機構10によってモールド2の変形を開始する時点(換言すると、モールド2を変形させていない状態)での第1領域と第3領域との寸法差をΔ1’とする。また、第1アライメントにおいてモールド変形機構10によってモールド2の変形を開始する時点での第2領域と第4領域との寸法差をΔ2’とする。このとき、Δ1’<Δ2’でありうる。
【0045】
工程S306では、第1硬化工程が実施される。具体的には、工程S306では、図6(b)に例示されるように、制御部CNTは、第1領域、即ち周辺回路領域3fおよびスクライブライン3dの全部または一部の上のインプリント材4が硬化されるように硬化部5を制御する。第1領域は、基板側マーク3bが存在する領域を含んでもよく、この場合、第1硬化工程において、基板側マーク3bとモールド側マーク3bとの相対位置が固定される。
【0046】
工程S307では、ショット領域3aとパターン領域2aとの重ね合わせ誤差が低減されるように第2アライメントが実施される。第2アライメントは、加熱部17による第2領域(あるいはメモリセルアレイ領域3e)の加熱を含みうる。加熱部17によるメモリセルアレイ領域3eの加熱は、第2領域(あるいはメモリセルアレイ領域3e)に対して制御された照度分布を与えることによって、重ね合わせ誤差が低減されるようにメモリセルアレイ領域3eを変形させるようになされうる。ここで、第2アライメントが開始される時点において、第2領域(あるいはメモリセルアレイ領域)3eは、第4領域(あるいは第2パターン領域)2eよりも小さい。
【0047】
第2アライメントにおいても、モールド変形機構10が使用されうる。あるいは、制御部CNTは、第1アライメントおよび第2アライメントの少なくとも一方においてモールド変形機構10を動作させてもよい。第2アライメントでは、密閉空間SPの圧力の調整によってパターン領域2aの形状が追加的に補正されてもよい。
【0048】
以上の制御例では、制御部CNTは、第1アライメントにおいて加熱部17に第1領域を加熱させない。しかし、制御部CNTは、第1アライメントにおいて加熱部17が第1領域に与える熱量が第2アライメントにおいて加熱部17が第2領域に与える熱量より小さいように加熱部17を制御してもよい。
【0049】
工程S308では、第2硬化工程が実施される。具体的には、工程S308では、制御部CNTは、ショット領域3aの全域の上のインプリント材4が硬化されるように硬化部5を制御する。工程S308では、工程S306における第1領域への硬化光5aの照射量を考慮して、第1硬化工程および第2硬化工程による硬化光5aの合計の照射量が許容値を超えないように第2硬化工程における照度分布あるいは照射領域が制御されうる。
【0050】
工程S309では、硬化したインプリント材4からモールド2が分離されるようにモールド駆動機構7によってモールド2が駆動される。工程310では、基板3の複数のショット領域のうちパターンを形成すべき全てのショット領域に対するパターンの形成が終了したか否かが判断され、終了してない場合には、次にパターンを形成すべきショット領域について工程S302~S309が実施される。一方、パターンを形成すべき全てのショット領域に対するパターンの形成が終了した場合には、工程S311において、基板保持部12から基板3がアンロードされる。
【0051】
工程S306(第1硬化工程)でインプリント材を硬化させる第1領域と、工程S307(第2アライメント工程)で加熱部17がショット領域に形成する照度分布は、一例において、以下のようにして決定されうる。まず、図6に示す処理において工程S306、S307を省いたテストインプリントを実施して、ショット領域3aとその上にモールド3を使って形成されたパターンとの重ね合せ誤差を、SEMなどを使って取得する。次に、重ね合せ誤差を補正するために最適な第1領域と加熱光17aの照度分布を数値シミュレーションなどによって計算する。
【0052】
本実施形態によれば、ショット領域3aの部分的な領域(第1領域)の上のインプリント材4を硬化させることで、ショット領域3aとパターン領域2aとが相対的に変形できない領域が規定される。また、当該部分的な領域(第1領域)以外の領域(第2領域)は、ショット領域3aとパターン領域2aとが相対的に変形できる領域として規定される。よって、本実施形態は、高次の空間周波数を有する形状補正に有利である。高次の空間周波数を有する形状補正が必要な例としては、例えば、ショット領域が複数のチップ領域を有し、各チップ領域の形状を補正すべきケースを挙げることができる。
【0053】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0054】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0055】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図7(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0056】
図7(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図7(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0057】
図7(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0058】
図7(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
1:インプリント装置、2:モールド、3:基板、5:硬化部、17:加熱部、CNT:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7