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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/232 20240101AFI20240216BHJP
【FI】
B60K35/232
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019519592
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018746
(87)【国際公開番号】W WO2018216553
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2017100936
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】吉村 俊厚
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/051586(WO,A1)
【文献】特開2003-335149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K35/00-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者からの表示距離(80)が異なる位置に虚像(70)を表示可能な表示光(L)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
外部から情報を取得する情報取得部(20)と、
前記情報取得部(20)が取得した前記情報に基づいて、前記虚像(70)を追加表示するか判定する表示追加判定部(31)と、
前記投射部(40)が表示する前記虚像(70)の前記表示距離(80)を調整することができ、
1)前記表示追加判定部(31)が前記虚像(70)を追加表示すると判定した場合、既に表示されている既存の虚像(73)の表示距離(85)と、追加表示される虚像(74)の表示距離(86)と、を異ならせ、
2)前記虚像(74)を追加表示した後、所定時間が経過した場合、前記追加表示された虚像(74)と前記既存の虚像(73)との表示距離差(87)を短くする、
表示距離決定部(32)と、を備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
視認者からの表示距離(80)が異なる位置に虚像(70)を表示可能な表示光(L)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
外部から情報を取得する情報取得部(20)と、
前記情報取得部(20)が取得した前記情報に基づいて、前記虚像(70)を追加表示するか判定する表示追加判定部(31)と、
前記投射部(40)が表示する前記虚像(70)の前記表示距離(80)を調整することができ、前記表示追加判定部(31)が前記虚像(70)を追加表示すると判定した場合、既に表示されている既存の虚像(73)の表示距離(85)と、追加表示される虚像(74)の表示距離(86)と、を異ならせる表示距離決定部(32)と、を備え、
前記表示距離決定部(32)は、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)を異なる表示距離(85a)に変化させ、変化させる前の前記既存の虚像の表示距離(85)と同じになるように、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を決定する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
視認者からの表示距離(80)が異なる位置に虚像(70)を表示可能な表示光(L)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
外部から情報を取得する情報取得部(20)と、
前記情報取得部(20)が取得した前記情報に基づいて、前記虚像(70)を追加表示するか判定する表示追加判定部(31)と、
前記投射部(40)が表示する前記虚像(70)の前記表示距離(80)を調整することができ、前記表示追加判定部(31)が前記虚像(70)を追加表示すると判定した場合、既に表示されている既存の虚像(73)の表示距離(85)と、追加表示される虚像(74)の表示距離(86)と、を異ならせる表示距離決定部(32)と、を備え、
前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に前記追加表示された虚像(74)を非表示とする条件が成立した場合、前記追加表示されていた虚像(74)の表示距離(86)に、前記既存の虚像(73)の表示距離を近づける、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記表示距離決定部(32)は、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)を異なる表示距離(85a)に変化させ、該表示距離(85a)と異なるように、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を決定する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記表示距離決定部(32)は、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)よりも短くなるように決定する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に特定の条件が成立した場合、前記追加表示された虚像(74)の表示距離(86)と前記既存の虚像(73)の表示距離(85)とを同じにする、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に特定の条件が成立した場合、前記追加表示された虚像(74)の表示距離(86)に前記既存の虚像(85)の表示距離(101)を近づける、
請求項2または6に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるHUD装置は、視認者(一般的に車両の運転者)に、車両の前景に重ねて虚像を視認させるものである。このように、HUD装置は、視認者に情報を呈示する虚像を前景に重ねて表示することで、前景から視線を大きくずらすことなく虚像の示す情報を視認者に認識させることができるため、視認者の視線移動の負荷を軽減し、安全な運転に寄与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-101311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HUD装置は、入力される情報に応じて、車両が走行中であっても視認者に伝達する情報を増減させることがある。言い換えると、HUD装置が表示する虚像は、車両走行中に増減する。例えば、視認者は、虚像が追加される位置をたまたま凝視していた場合、追加表示された虚像をすぐに認識することができるが、虚像が追加された位置を凝視していなかった場合、周辺視で何かしらの虚像が追加されたことが認識できたとしても追加された虚像を特定するのに、周辺視で虚像が追加されたと思われる領域に存在する複数の虚像に視線を移動させ、どの虚像が元々表示されていたか考える必要があり、追加された虚像を特定するために視認者にかかる負荷が大きく、対策が必要とされていた。
【0005】
本発明の1つの目的は、追加表示された虚像が呈示する情報を認識しやすく表示することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、視認者が視認する虚像までの距離である表示距離を調整可能であり、追加表示する虚像の表示距離と、既に表示してあった既存の虚像の表示距離とを異ならせることで、追加表示された虚像を視認者に迅速に特定させることができ、虚像が呈示する情報を認識しやすくする、ことをその要旨とする。
【0007】
本発明の第1の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置は、
視認者からの表示距離(80)が異なる位置に虚像(70)を表示可能な表示光(L)を被投影部に向けて投射する投射部(40)と、
外部から情報を取得する情報取得部(20)と、
前記情報取得部(20)が取得した前記情報に基づいて、前記虚像(70)を追加表示するか判定する表示追加判定部(31)と、
前記投射部(40)が表示する前記虚像(70)の前記表示距離(80)を調整することができ、前記表示追加判定部(31)が前記虚像(70)を追加表示すると判定した場合、既に表示されている既存の虚像(73)の表示距離(85)と、追加表示される虚像(74)の表示距離(86)と、を異ならせる表示距離決定部(32)と、を備える。
【0008】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置によれば、追加表示される虚像と、既に表示されていた既存の虚像とが、異なる表示距離に表示される。言い換えると、視認者は、追加表示される虚像と、既に表示されていた既存の虚像とが奥行方向(典型的には車両の前後方向)に異なる位置で視認できる。この結果、追加表示された虚像と既存の虚像との区別がつきやすく、また、一方の虚像に目の焦点を合わせると、他方の虚像に焦点が合わなくなり視認性が低下するため、視認者の目にかかる負担、または虚像が呈示する情報を認識するための負担を軽減することができる。
【0009】
また、第1の態様に従属する第2の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)を異なる表示距離(85a)に変化させ、該表示距離(85a)と異なるように、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を決定してもよい。
【0010】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、既存の虚像は、虚像が追加表示される際、既存の虚像がもともと表示されていた表示距離とは異なる表示位置に表示されることになる。したがって、虚像が追加表示された際、視認者が習慣的に既存の虚像がもともと表示されていた表示距離に目の焦点を合わせても、実際に表示される既存の虚像に焦点が合わない。すなわち、既存の虚像に対して視認者の目の焦点が瞬間的に合いにくくなるため、既存の虚像が凝視されにくくなり、追加表示された虚像に視認者の視覚的注意を向けやすい。
【0011】
また、第1または2の態様に従属する第3の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)を異なる表示距離(85a)に変化させ、変化させる前の前記既存の虚像の表示距離(85)と同じになるように、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を決定してもよい。
【0012】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、既存の虚像の表示距離を変化させ、既存の虚像がもともと表示されていた表示距離に合わせて、新たな虚像を追加表示する。したがって、虚像が追加表示された際、視認者が習慣的に既存の虚像がもともと表示されていた表示距離に目の焦点を合わせると、既存の虚像ではなく、追加された虚像に焦点が合う。すなわち、瞬間的に追加表示された虚像に焦点を合わせやすい。なお、追加表示する虚像の表示距離は、既存の虚像がもともと表示されていた表示距離と厳密に同じでなくてもよく、既存の虚像がもともと表示されていた表示距離の前後1.5[m]以内に設定されていればよい。
【0013】
また、第1乃至3の態様に従属する第4の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記追加表示される虚像(74)の表示距離(86)を、前記既存の虚像(73)の表示距離(85)よりも短くなるように決定してもよい。
【0014】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、追加された虚像が、既存の虚像よりも手前側に視認されることとなる。手前側の虚像(表示)を凝視した場合の奥側の虚像(表示)は、奥側の虚像(表示)を凝視した場合の手前側の虚像(表示)に比べて、視覚的注意が向きにくい(言い換えると、誘目性が低い)。したがって、追加表示する虚像を、既存の虚像よりも手前側に視認させることで、既存の虚像に視覚的注意が向きにくく、追加表示した虚像に注意を向けさせる(注視させる)ことができ、追加表示した虚像が呈示する情報を認識させやすい。
【0015】
また、第1乃至4の態様に従属する第5の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に特定の条件が成立した場合、前記追加表示された虚像(74)と前記既存の虚像(73)との表示距離差(87)を短くしてもよい。
【0016】
既存の虚像と追加表示の虚像とで表示距離差を設けておくと、一方の虚像(表示)に目の焦点が合っている際、他方の虚像(表示)に目の焦点が合いにくくなり、同時に双方の虚像の情報を認識しづらいが、第5の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置では、既存の虚像と追加表示の虚像との表示距離差を短くするので、表示距離差が長い場合と比べて、一方の虚像(表示)に目の焦点が合っている際の他方の虚像(表示)の判読性が向上し、同時または迅速に双方の虚像が呈示する情報を認識させやすい。例えば虚像を追加してから所定の時間が経過することを上記特定の条件とすることで、虚像の追加表示直後は、既存の虚像との区別のしやすさを優先した表示を行いつつ、所定時間経過した後は、追加した虚像及び既存の虚像との表示距離差を小さくすることで、迅速に双方の虚像が呈示する情報を認識させやすい。
【0017】
また、第5の態様に従属する第6の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に特定の条件が成立した場合、前記追加表示された虚像(74)の表示距離(86)と前記既存の虚像(73)の表示距離(85)とを同じにしてもよい。
【0018】
第6の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置では、既存の虚像と追加表示の虚像とで表示距離差をなくすことで、一方の虚像(表示)に目の焦点が合えば、他方の虚像(表示)にも目の焦点が合うため、同時または迅速に双方の虚像が呈示する情報を認識させやすい。
【0019】
また、第5または6の態様に従属する第7の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後に特定の条件が成立した場合、前記追加表示された虚像(74)の表示距離(86)に前記既存の虚像(85)の表示距離(101)を近づけてもよい。
【0020】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、追加表示の虚像を固定しつつ、既存の虚像の表示距離を追加表示の虚像の表示距離に近づけていくため、追加表示の視認性を維持しつつ、既存の虚像と追加表示の虚像とで表示距離差をなくすことで、一方の虚像(表示)に目の焦点が合えば、他方の虚像(表示)にも目の焦点が合うため、同時または迅速に双方の虚像が呈示する情報を認識させやすい。
【0021】
また、第1乃至7の態様に従属する第8の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置のように、前記表示距離決定部(32)は、前記虚像(74)を追加表示した後、前記追加表示された虚像(74)または前記既存の虚像(73)のいずれか一方を非表示とする条件が成立した場合、残る虚像(73,74)の表示距離(85,86)を、前記虚像(74)が追加表示される前の前記既存の虚像(73)の表示距離(85)に近づけてもよい。
【0022】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ装置では、既存の虚像の表示距離を変化させ、追加表示の虚像が表示されていた表示距離に近づける。したがって、追加表示の虚像が削除された(非表示にされた)際、視認者が習慣的に追加表示の虚像が表示されていた表示距離に目の焦点を合わせると、追加表示の虚像が表示されていた表示距離付近の既存の虚像に視覚的注意を向かせやすい。すなわち、瞬間的に残った虚像に視覚的注意を向かせやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1~第4の実施形態に係るHUD装置の構成と、このHUD装置が表示する虚像を説明する図である。
図2】上記実施形態のHUD装置における投射部の構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるHUD装置の主要な動作手順を示すフロー図である。
図4】第1実施形態のHUD装置が表示する虚像の表示例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態におけるHUD装置の主要な動作手順を示すフロー図である。
図6】第2実施形態のHUD装置が表示する虚像の表示例を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態におけるHUD装置の主要な動作手順を示すフロー図である。
図8】第3実施形態のHUD装置が表示する虚像の表示例を示す図である。
図9】本発明の第4実施形態におけるHUD装置の主要な動作手順を示すフロー図である。
図10】第4実施形態のHUD装置が表示する虚像の表示例を示す図である。
図11】第4実施形態の変形例のHUD装置が表示する虚像の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に説明する実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられ、当業者は、本発明が以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0025】
図1は、本発明に係るヘッドアップディスプレイ(以下では、HUDとも呼ぶ)装置10の、第1~第4の実施形態に対応する構成と、このHUD装置10が表示する虚像70を説明する図である。なお、図1では、車両1の前後方向をZ方向(前方向がZ正方向)とし、車両1の左右方向(車両1の幅方向)に沿う方向をX方向(左方向がX正方向)とし、上下方向をY方向(上方向がY正方向)とする。
【0026】
図1において、本実施形態のHUD装置10は、通信インターフェース5に通信可能に連結されている。通信インターフェース5は、例えば、USBポート、シリアルポート、パラレルポート、OBDII、及び/又は他の任意の適切な有線通信ポートなどの有線通信機能を含むことができる。車両1からのデータケーブルは、HUD装置10に情報を伝達するために、通信インターフェース5を介して、HUD装置10の情報取得部20に連結される。なお、他の実施形態では、通信インターフェース5は、例えば、Bluetooth(登録商標)通信プロトコル、IEEE802.11プロトコル、IEEE802.16プロトコル、共有無線アクセスプロトコル、ワイヤレスUSBプロトコル、及び/又は他の任意の適切な無線電信技術を用いた無線通信インターフェースを含むことができる。
【0027】
[HUD装置10の構成]
HUD装置10は、通信インターフェース5から各種情報を取得する入力インターフェースである情報取得部20と、表示制御部30と、表示光Lを投射する投射部40と、を有する。例えば、通信インターフェース5には、車両1に設けられた車両ECU、車載カメラ、センサ、他の車載機器、携帯機器、他車両、路上の通信インフラ、などが情報を授受可能に接続され、HUD装置10は、通信インターフェース5に接続された情報取得部20から各種情報を入力し、表示する虚像70に反映する。
【0028】
本実施形態のHUD装置10は、表示光Lを車両1の内部に設けられ、一部の光を透過し、一部の光を反射する被投影部2に向けて投射する。この被投影部2は、車両1のフロントウインドシールドの一部で構成されてもよく、コンバイナなどの専用部品であってもよい。視認者の視点3を置くと想定される領域に、被投影部2に反射された表示光Lによりアイボックス4を形成する。視認者は、視点3をこのアイボックス4内に配置することでHUD装置10が表示する虚像70の全体を視認することができ、視点3がアイボックス4から外れると虚像70の一部が視認できなくなる(視認しづらくなる)。本実施形態のHUD装置10は、X方向、Y方向、Z方向に虚像71,72が表示される位置を調整することができる。すなわち、HUD装置10は、特にアイボックス4から虚像71,72が結像されるまでの間のZ方向の距離である表示距離80を調整することができ、3次元に虚像71,72を表示することができる。
【0029】
表示制御部30は、表示追加判定部31と、表示距離決定部32と、表示データ生成部33と、条件成立判定部34と、を有する。表示制御部30は、情報取得部20から取得した情報に基づいて、表示データを生成し、この表示データに基づいて投射部40を駆動することで虚像70を表示する。特に、本実施形態における表示制御部30は、虚像70(詳細には、虚像70内の各虚像71,72)の表示距離80を調整することが可能である。
【0030】
表示追加判定部31は、通信インターフェース5を介して情報取得部20から取得した情報を入力し、既に表示されている虚像70(後述する既存の虚像73)に対して新たな虚像70(後述する追加表示する虚像74)を追加するかを判定する。なお、表示追加判定部31は、例えば、情報取得部20が新たに情報を取得した、取得した情報が所定の種類の情報であった、取得した情報が所定の条件を満たした情報であった、あるいは取得した複数の情報で所定の組み合わせが成立した場合、新たな虚像70を追加する条件が満たされたと判定する。
【0031】
表示距離決定部32は、虚像70の表示距離80を決定可能であり、表示追加判定部31が虚像70を追加表示すると判定した場合、既に表示されている既存の虚像73の表示距離85と、追加表示される虚像74の表示距離86とが異なるように、各虚像70の表示距離80を決定する(図4図6図10図11参照)。虚像70を追加表示する際の第1~第3実施形態、虚像70を非表示にする際の第4実施形態を後で詳述する。
【0032】
表示データ生成部33は、表示データを生成するものであり、この表示データに基づき、投射部40が駆動する。前記表示データは、表示距離決定部32が決定した表示距離80に各虚像70を表示させるべく投射部40を駆動するための表示距離データを含む。
【0033】
[虚像の説明]
図1の左図を用いて、本実施形態のHUD装置10が表示する虚像70の例を説明する。虚像70は、例えば、平面的に表現される2D虚像71と、立体的に表現される3D虚像72と、を有する。2D虚像71の一例は、図1の表示距離81のXY平面に平面的に結像され、視認者に遠近感を感じさせない虚像である。このような2D虚像71の一例によれば、概ね目の焦点を調整することなく表示全体を明確に認識することができる。また、2D虚像71の別例は、図1の表示距離83のXY平面上に一端があり、表示距離83より視認者から離れた表示距離84のXY平面上に他端があり、平面的に結像され、視認者に遠近感を感じさせる虚像である。このような別例の2D虚像71は、視認者の目の焦点の調整により表示全体が明確に認識されるため、立体的な印象を与えることができる。3D虚像72の一例は、図1の表示距離82のXY平面上に一端があり、表示距離82より視認者から離れた表示距離83のXY平面上に他端があり、体積を有するような立体的なオブジェクトとして結像され、視認者に立体感を感じさせる虚像である。なお、本発明のHUD装置10は、追加表示する虚像の表示距離と、既に表示してあった既存の虚像の表示距離とを異ならせるものである。表示距離80を長くするとは、言い換えるとアイボックス4からより離れた位置に虚像70を結像させることを示し、例えば、表示距離81に表示されている2D虚像71、表示距離82と表示距離83との間に表示されている3D虚像72を、遠方側である表示距離84に近づけることを示す。また、表示距離80を短くするとは、言い換えるとアイボックス4により近づけた位置に虚像70を結像させることを示し、例えば、表示距離84に表示されている2D虚像71、表示距離82と表示距離83との間に表示されている3D虚像72を、近傍側である表示距離81に近づけることを示す。
【0034】
[投射部40の構成例]
次に、図2を参照する。図2は、図1の投射部40の構成例を示す図である。本実施形態の投射部40は、立体画像表示部41と、リレー光学部42と、から構成され、立体画像表示部41が第1の3D実像43を形成し、リレー光学部42が第1の3D実像43を拡大して第2の3D実像44を結像し、この第2の3D実像44の表示光Lを外部の被投影部2に向けて投射する。
【0035】
図2の立体画像表示部41は、3次元に形成される第1の3D実像43を生成するものであり、画像投射部45と、振動スクリーン46と、を有する。
【0036】
画像投射部45は、表示制御部30から入力される表示データに基づいてその表示データに含まれる映像を表す映像光(図示しない)を出射するプロジェクタであり、表示データに含まれる表示距離データに応じて、前記映像を表示するタイミングを調整し、振動スクリーン46の振動位置に同期して投影する前記映像を高速に切り替える。言い換えると、画像投射部45は、前記表示距離データに基づき、振動スクリーン46の振動位置に適した前記映像を振動スクリーン46に投影する。
【0037】
振動スクリーン46は、例えば、画像投射部45の映像を一定の角度範囲に拡散させるポリカーボネート製の拡散フィルムであり、画像投射部45からの前記映像光を受けて実像を結像し、画像投射部45が出射する前記映像光の光軸に沿って往復運動する。振動スクリーン46は、連続的または断続的に振動位置を示す信号を画像投射部45に送信することが可能であり、画像投射部45は、前記振動位置を示す信号を基準に、表示データに含まれる表示距離データに応じた位置に虚像70が視認されるように、前記映像を表示するタイミングを調整してもよい。
【0038】
本実施形態では、表示制御部30は、スクリーン振動方向における振動スクリーン46の振幅を一定に保ちつつ、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整する。すなわち、表示制御部30は、振動スクリーン46がその振幅のうち第1の範囲に位置している期間においては表示光Lを出射せず、振動スクリーン46がその振幅のうち第2の範囲に位置している期間においては表示光Lを出射する。第1の範囲及び第2の範囲の位置及び比率が調整されることで虚像70の奥行き方向Zにおける位置及び長さが調整される。具体的には、振動スクリーン46は、60[Hz]以上の周波数で振動し、この周期1/60[sec]内で、画像投射部45が複数フレームの異なる映像を投射することで各振動位置に複数フレームの異なる映像(実像)を結像する。すなわち、本実施形態では、複数フレームの実像が振動スクリーン46の振動方向で重なることで第1の3D実像43が生成される。なお、表示制御部30は、振動スクリーン46の振幅を変化させることで、虚像70の奥行き方向Zの長さを調整してもよい。
【0039】
図2のリレー光学部42は、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受け、この第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を中間で結像した後、この第2の3D実像44の光である表示光Lを被投影部2に向けて投射するものである。リレー光学部42は、例えば、立体画像表示部41が生成した第1の3D実像43の光を受光するレンズ群からなる第1のリレー光学部47と、第1のリレー光学部47を通った光を反射し、第1のリレー光学部47の光学的パワーと協働して第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を結像させる第2のリレー光学部48と、第2の3D実像44の光である表示光Lを被投影部2に向けて反射する第3のリレー光学部49と、から構成される。
【0040】
第1のリレー光学部47は、第1の3D実像43における振動スクリーン46の各振動位置に結像した各映像を、異なる倍率で拡大する機能を有し、図2では模式的に1枚のレンズに図示されているが、実際には図示しない複数の薄膜レンズを合成した合成レンズから構成される。
【0041】
第2のリレー光学部48は、例えば、正の光学的パワーを有する凹面の反射面を有するミラーで構成され、第1のリレー光学部47から第1の3D実像43の光を入射し、この入射した光を第3のリレー光学部49に向けて反射し、第1のリレー光学部47の光学的パワーと協働して第1の3D実像43を拡大した第2の3D実像44を、第2のリレー光学部48と第3のリレー光学部49との間で結像させる。なお、第2のリレー光学部48が担う光学的作用を、第1のリレー光学部47に持たせることで、第2のリレー光学部48は、省略されてもよい。
【0042】
第3のリレー光学部49は、第2の3D実像44の表示光Lを被投影部2に向けて反射させる凹面ミラーであり、被投影部2の曲面形状による像の歪みを補正する機能と、第2の3D実像44を拡大する機能と、を有する。
【0043】
以上が、3Dの虚像70を視認させる投射部40の実施形態の構成であったが、これに限定されない。以下に、投射部40の変形例を示す。
【0044】
[投射部40の変形例]
立体的な虚像を視認させる他の実施形態では、投射部40は、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式などを含む視差分割方式、ライトフィールド方式やホログラム方式を含む空間再生方式、特開2016-212318に開示されているように透過率を調整可能な調光層を有する複数のスクリーンを厚み方向に重ねて配置し、複数のスクリーンに向けてプロジェクタが投射像を高速で切り替えながら投影し、投射像の高速切り替えに応じて、複数のスクリーンがそれぞれ調光率を適宜調整することで3Dの実像を内部に表示する透過率調整スクリーン方式、特開2004-168230に開示されているように複数の液晶表示素子を厚み方向に重ねることで3Dの実像を内部に表示する方式などを採用してもよい。以上が、本発明の第1~第4の実施形態のHUD装置10の構成である。
【0045】
以下、第1~第4の実施形態を図3図10を用いて具体的に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図3図4を参照する。図3は、第1実施形態におけるHUD装置10の主要な動作手順を示すフロー図であり、図4は、図3のフロー図に対応した虚像73,74の表示例を示す図である。図4(a)(b)は、追加表示される虚像74が表示される前の表示例を示し、図4(c)(d)は、図3におけるステップS13が実行された後にステップS15で表示更新された後の表示例を示す。図4(a)(c)は、視認者が車両1の前方(Z軸正方向)を見た際に視認する前景(他車両100)と虚像73,74を示す図であり、図4(b)(d)は、虚像73,74の表示距離80の違いを説明する図である。
【0046】
図4のステップS11において、表示制御部30は、情報取得部20を介して新しい情報(図3(c)において「60km/h」と示される他車両100の車速)を取得する。表示制御部30は、情報取得部20を介して、定期的及び/又は各種情報が発生した瞬間的に各種情報を取得する。
【0047】
続いて、ステップS12において、表示追加判定部31は、虚像70を追加表示するか判定する。表示追加判定部31は、取得した情報が所定の種類の情報であった、取得した情報が所定の条件を満たした情報であった、あるいは取得した複数の情報で所定の組み合わせが成立した場合、新たな虚像70を追加する条件が満たしたと判定する。ステップS12において「表示追加しないと判定した場合(NOの場合)」は、ステップS14に移行し、既に表示されている虚像73の情報を更新した表示データを生成し、ステップS15で表示を更新する。
【0048】
ステップS12において「表示追加すると判定した場合(YESの場合)」は、ステップS13で、表示距離決定部32は、既に表示されていた既存の虚像73の表示距離85を維持しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を、既存の虚像73の表示距離85と異なる表示距離に決定する。例えば、表示距離決定部32は、図4(d)に示すように、既存の虚像73と追加表示する虚像74との間に表示距離差87を設けるように、既存の虚像73の表示距離85を変更することなく、追加表示する虚像74の表示距離86を決定する。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85,86で視認されるように表示データを生成し(ステップS14)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS15)。この際、表示距離決定部32は、既存の虚像73の表示距離85よりも短くなるように追加表示する虚像74の表示距離86を決定するので、図3(c)において「60km/h」と示される他車両100の車速を呈示する追加表示された虚像74が、他車両100の上下左右を囲み強調する既存の虚像73より手前側に視認される。これにより、追加された虚像74が、既存の虚像73よりも手前側に視認されることとなり、追加表示した虚像74に注意を向けさせる(注視させる)ことができ、追加表示した虚像74が呈示する情報を認識させやすい。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、図5図6を参照する。図5は、第2の実施形態におけるHUD装置10の主要な動作手順を示すフロー図であり、図6は、図5のフロー図に対応した虚像73,74の表示例を示す図である。図6(a)(b)は、追加表示される虚像74が表示される前の表示例を示し、図6(c)(d)は、図5におけるステップS23が実行された後にステップS25で表示更新された後の表示例を示す。第2の実施形態は、既存の虚像73の表示距離85を変更する点で第1の実施形態とは異なる。
【0050】
図5のステップS21において、表示制御部30は、情報取得部20を介して新しい情報(図6(c)において「60km/h」と示される他車両100の車速)を取得する。表示制御部30は、情報取得部20を介して、定期的及び/又は各種情報が発生した瞬間的に各種情報を取得する。
【0051】
続いて、ステップS22において、表示追加判定部31は、虚像70を追加表示するか判定する。ステップS22において「表示追加しないと判定した場合(NOの場合)」は、ステップS24に移行し、既に表示されている虚像73の情報を更新した表示データを生成し、ステップS25で表示を更新する。
【0052】
ステップS22において「表示追加すると判定した場合(YESの場合)」は、ステップS23で、表示距離決定部32は、既に表示されていた既存の虚像73の表示距離85を表示距離85aに変更しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を、既存の虚像73の新たな表示距離85aと異なる表示距離に決定する。例えば、表示距離決定部32は、図6(d)に示すように、既存の虚像73と追加表示する虚像74との間に表示距離差87を設けるように、既存の虚像73の表示距離85を変更しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を決定する。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85,86で視認されるように表示データを生成し(ステップS24)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS25)。この際、表示距離決定部32は、既存の虚像73の表示距離85を長くした表示距離85aに変更し、既存の虚像73の表示距離85よりも短くなるように追加表示する虚像74の表示距離86を決定する。すなわち、第2の実施形態では、既存の虚像73の表示距離85を維持する第1の実施形態に比べて、既存の虚像73と追加表示される虚像74との表示距離差87が大きくなるため、より既存の虚像73と追加表示された虚像74とを区別しやすくなる。
【0053】
また、既存の虚像73と追加表示する虚像74とが情報を付加する実景における対象物(図6では他車両)100が同一対象である場合、追加表示する虚像74を他車両100の視認者側の先端(他車両の背面ボディ)より手前側に視認させ、既存の虚像73を他車両100の奥行き方向(Z軸方向)の1/2の位置より奥側(Z軸正方向)に視認させる。これにより、視認者から見て手前側に視認される追加表示される虚像74から奥側に視認される既存の虚像73に向かって、追加表示される虚像74,他車両100,既存の虚像73の順に視覚的注意が向きにくくなる。したがって、最も注意を促すべき実景における他車両100に視認者の視覚的注意を向いている場合であっても、他車両100の視認者側の先端より奥側に視認される既存の虚像73に視覚的注意が向きにくくなり、他車両100の視認者側の先端より手前側に追加表示された虚像74に視覚的注意を向けやすい。既存の虚像74と追加表示された虚像73とを迅速に区別させ、追加表示された虚像73が呈示する情報を認識させやすい。なお、表示制御部30は、追加表示する虚像74を他車両100の視認者側の先端(他車両の背面ボディ)より手前側に視認させ、既存の虚像73を他車両100の奥行き方向の先端より奥側(Z軸正方向)に視認させることが好ましい。これにより、さらに追加表示された虚像74と既存の虚像73とを区別させやすい。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、図7図8を参照する。図7は、第3の実施形態におけるHUD装置10の主要な動作手順を示すフロー図であり、図8は、図7のフロー図に対応した虚像73,74の表示例を示す図である。図8(a)(b)は、追加表示される虚像74が表示される前の表示例を示し、図8(c)(d)は、図7におけるステップS33が実行された後にステップS37で表示更新された後の表示例を示し、図8(e)(f)は、図7におけるステップS35が実行された後にステップS37で表示更新された後の表示例を示す。第3の実施形態は、条件成立判定部34が、特定条件が成立したと判定した場合に、追加表示された虚像74と既存の虚像73との表示距離差87を短くする処理(後述するステップS34,S35)を有する点で、第1,第2の実施形態とは異なる。
【0055】
図7のステップS31において、表示制御部30は、情報取得部20を介して新しい情報(図8(c)において「60km/h」と示される他車両100の車速)を取得する。
【0056】
続いて、ステップS32において、表示追加判定部31は、虚像70を追加表示するか判定する。ステップS32において「表示追加しないと判定した場合(NOの場合)」は、ステップS33を実行することなく、ステップS34に移行する。ステップS34以降の処理は後述する。
【0057】
ステップS32において「表示追加すると判定した場合(YESの場合)」は、ステップS33で、表示距離決定部32は、既に表示されていた既存の虚像73の表示距離85を維持しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を、既存の虚像73の表示距離85と異なる表示距離に決定する。例えば、表示距離決定部32は、図8(d)に示すように、既存の虚像73と追加表示する虚像74との間に表示距離差87を設けるように、既存の虚像73の表示距離85を変更することなく、追加表示する虚像74の表示距離86を決定する。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85,86で視認されるように表示データを生成し(ステップS36)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS37)。
【0058】
第3実施形態で特有の処理であるステップS34,S35を説明する。
ステップS34で、条件成立判定部34は、虚像74が追加表示された後、特定条件が成立したかを判定し、例えば、虚像74が追加表示された後に所定の時間以上経過した場合に、前記特定条件が成立したと判定する。ステップS34において「所定の時間以上経過していないと判定した場合(NOの場合)」は、ステップS35を実行することなく、ステップS36に移行する。
【0059】
ステップS34において「所定の時間以上経過したと判定した場合(YESの場合)」は、ステップS35で、表示距離決定部32は、追加表示した虚像74と既存の虚像73との間の表示距離差87を短くする。例えば、表示距離決定部32は、既存の虚像73の表示距離85を変更することなく、追加表示した虚像74を、既存の虚像73に近づける(図8(d)の表示距離86から図8(f)の表示距離86aに変更する)。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85,86で視認されるように表示データを生成し(ステップS36)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS37)。なお、他の方法として、表示距離決定部32は、追加表示した虚像74の表示距離86を変更することなく、既存の虚像73の表示距離85を、追加表示した虚像74に近づけてもよく、または既存の虚像73の表示距離85と追加表示した虚像74の表示距離86の双方変更することで表示距離差87を近づけてもよい。このように、既存の虚像73と追加表示の虚像74との表示距離差87を短くするので、表示距離差87が長い場合と比べて、一方の虚像(表示)に目の焦点が合っている際の他方の虚像(表示)の判読性が向上し、同時または迅速に双方の虚像が呈示する情報を認識させやすい。
【0060】
なお、図8(f)では、図7でステップS37を実行した後であっても追加表示した虚像74と既存の虚像73との間に表示距離差87を設けていたが、表示距離差87を設けなくてもよい。言い換えると、ステップS34において「所定の時間以上経過したと判定した場合(YESの場合)」は、ステップS35で、表示距離決定部32は、追加表示した虚像74と既存の虚像73との間の表示距離差87をなくしてもよい。言い換えると、追加表示された虚像74の表示距離86と既存の虚像73の表示距離85とを同じにしてもよい。
【0061】
(第4の実施形態)
次に、図9図10を参照する。図9は、第4の実施形態におけるHUD装置10の主要な動作手順を示すフロー図であり、図10は、図9のフロー図に対応した虚像73,74の表示例を示す図である。図10(a)(b)は、虚像74が追加表示される前の表示例を示し、図10(c)(d)は、虚像74が追加表示された後の表示例を示し、図10(e)(f)は、図9におけるステップS45が実行された後にステップS47で表示更新された後の表示例を示す。第4の実施形態は、条件成立判定部34が、追加表示されていた虚像74が非表示となる特定条件が成立したと判定した場合に、残る既存の虚像73の表示距離85aを、元々既存の虚像73が表示されていた表示距離85にする処理(後述するステップS44,S45)を有するものである。
【0062】
図9のステップS41において、表示制御部30は、情報取得部20を介して新しい情報(図10(c)において「60km/h」と示される他車両100の車速)を取得する。
【0063】
続いて、ステップS42において、表示追加判定部31は、虚像70を追加表示するか判定する。ステップS42において「表示追加しないと判定した場合(NOの場合)」は、ステップS43を実行することなく、ステップS44に移行する。ステップS44以降の処理は後述する。
【0064】
ステップS42において「表示追加すると判定した場合(YESの場合)」は、ステップS43で、表示距離決定部32は、ステップS43で、表示距離決定部32は、既に表示されていた既存の虚像73の表示距離85を表示距離85aに変更しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を、既存の虚像73の新たな表示距離85aと異なる表示距離に決定する。例えば、表示距離決定部32は、図6(d)に示すように、既存の虚像73と追加表示する虚像74との間に表示距離差87を設けるように、既存の虚像73の表示距離85を変更しつつ、追加表示する虚像74の表示距離86を決定する。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85,86で視認されるように表示データを生成し(ステップS46)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS47)。
【0065】
第4の実施形態で特有の処理であるステップS44,S45を説明する。
ステップS44で、条件成立判定部34は、虚像74が追加表示された後、追加表示された虚像74を非表示とする特定条件が成立したかを判定し、例えば、虚像74が追加表示された後に所定の時間以上経過した場合に、前記特定条件が成立したと判定する。ステップS44において「特定条件が成立していない場合(NOの場合)」は、ステップS45を実行することなく、ステップS46に移行する。
【0066】
ステップS44において「特定条件が成立した場合(YESの場合)」は、ステップS45で、表示距離決定部32は、残る既存の虚像73の表示距離85aを、元々既存の虚像73が表示されていた表示距離85にする(図10(d)の表示距離85aから図10(f)の表示距離85に戻す)。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85で虚像73が視認されるように、また虚像74が非表示とされるように表示データを生成し(ステップS46)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS47)。この表示更新において、虚像74が非表示となり、虚像73が表示距離85に表示される。
【0067】
なお、第4実施形態の変形例として、条件成立判定部34が、虚像74が追加表示された後に、既存表示されていた虚像73が非表示となる特定条件が成立したと判定した場合に、残る追加表示された虚像73の表示距離86を、元々既存の虚像73が表示されていた表示距離85にしてもよい。図11は、第4実施形態の変形例における虚像73,74の表示例を示す図である。図11(a)(b)は、虚像74が追加表示される前の表示例を示し、図11(c)(d)は、虚像74が追加表示された後の表示例を示し、図11(e)(f)は、図9におけるステップS45が実行された後にステップS45で表示更新された後の表示例を示す。ステップS44において「特定条件が成立した場合(YESの場合)」は、ステップS45で、表示距離決定部32は、残る追加表示されていた虚像74の表示距離86を、元々既存の虚像73が表示されていた表示距離85にする(図11(d)の表示距離86から図11(f)の表示距離85に変更する)。そして、表示データ生成部33は、表示距離決定部32が決定した表示距離85で虚像74が視認され、虚像75が非表示になるように表示データを生成し(ステップS46)、表示制御部30は、この表示データに基づき投射部40を駆動することで表示を更新する(ステップS47)。この表示更新において、虚像73が非表示となり、虚像74が表示距離85に表示される。
【0068】
[変形例]
なお、本発明は、以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形例の一例を記す。
【0069】
上記実施形態では、条件成立判定部34が判定する特定条件は、表示が継続された時間が所定時間より長いことであったが、これに限られない。例えば、条件成立判定部34が判定する特定条件は、情報取得部20を介して、特定の種類の情報を入力したこと、あるいは逆に特定の種類の情報を入力しないことであってもよい。また、情報取得部20を介して入力する情報が、所定の閾値に達する等の条件を満たすことであってもよい。また、情報取得部20を介して入力する複数の情報が特定の組み合わせを満たしたことを条件としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、車両などの移動体に搭載される虚像表示装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…車両、2…被投影部、3…視点、4…アイボックス、5…通信インターフェース、10…HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)、20…情報取得部、30…表示制御部、31…表示追加判定部、32…表示距離決定部、33…表示データ生成部、34…条件成立判定部、40…投射部、41…立体画像表示部、42…リレー光学部、43…第1の3D実像、44…第2の3D実像、45…画像投射部、46…振動スクリーン、70…虚像、80…表示距離、87…表示距離差、100…対象物(他車両)、L…表示光
図1
図2
図3
図4
図5
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図11