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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A41D13/11 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020001451
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021110054
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】中野 美希
(72)【発明者】
【氏名】山下 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】柄崎 梢
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100570(JP,A)
【文献】登録実用新案第3100600(JP,U)
【文献】特開2011-167419(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気可能なシート材を備えるマスク本体を有し、
前記マスク本体は、横方向に沿って折られた山折り部を有する襞を複数有し、
前記マスク本体の左右側辺が、装着者の頬骨頂点と外耳道開口内側端との中間点より耳側に位置するとともに、
前記マスク本体の縦寸法に対する、当該マスク本体の横寸法が、2.7倍以上4.4倍以下であり、
前記マスク本体の前記左右側辺の近傍には、前記襞の形状を保持するため第一接合部が設けられているとともに、
前記第一接合部よりも左右方向中心側に、前記襞の少なくとも一部の開きを制御する第二接合部が設けられており、
前記マスク本体には、前記襞が少なくとも3本形成されており、
上下方向の中間部に形成された中間襞の開きを制御する前記第二接合部を有するとともに、
前記中間襞より上方に設けられた上部襞の開きを制御する上部接合部、および
前記中間襞より下方に設けられた下部襞の開きを制御する下部接合部を有し、
横方向にみて、前記上部接合部は、前記第二接合部よりも耳側に配置されており、前記下部接合部は、前記第二接合部よりも口側に配置されており、
前記上部接合部の長さ方向2分の1の地点である第一中間点と、前記下部接合部の長さ方向2分の1の地点である第二中間点とを結んでなる第一仮想線と、
前記第一仮想線と前記第二接合部とが交差する交点を含み上下方向に伸長する第二仮想線と、の交差角度θが30度以上50度以下であることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記マスク本体を正面視した際、前記下部接合部が、耳方向から顎方向に向けて下り傾斜するよう形成されている請求項に記載のマスク。
【請求項3】
前記マスク本体は、上方から下方にむけて、第一襞、第二襞、第三襞、第四襞の少なくとも4つの襞を有し、
前記マスク本体を上下方向に沿って切断してなる切断面において、前記第二襞および前記第三襞によって断面略Ω状の折り畳み部が形成されているとともに、
前記第一襞は前記第二襞と同方向に折り畳まれており、前記第四襞は、前記第三襞と同方向に折り畳まれている前記請求項または2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の顔に対する被覆面積が大きく、かつ使用感の良好なマスクに関し、特にはプリーツマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクの使用目的は、防塵用、防花粉用、自己の咳の拡散防止など多様である。そのため、マスクは、季節を問わず使用される。
【0003】
マスクには、種々のタイプがあり、たとえば横方向に沿って山折りしてなる襞を複数備えるプリーツマスク、または襞を有さず顔の凹凸に沿った形状の立体マスクなどが知られる。
【0004】
上記プリーツマスクは、使用前において略平坦状のマスク本体を有し、使用時にプリーツを適宜開くことで装着者の顔に密着させるタイプであり、マスク本体の縦横比は概ね、1:1.6~1:1.85程度のものが主流である。かかる比率は、鼻腔および口から顎までの領域を充分に被覆しつつ、顔との良好な密着性を維持可能な適切な比率として、広く当業者に採用されている。かかる比率において、マスク本体の左右側辺を装着者の頬骨頂点近傍に配置させる設計を採用することで、マスク本体の中央部においてプリーツを上下方向に大きく開きつつ、マスク本体の左右側辺を、装着者の顔(具体的には頬骨頂点近傍から顎先までの領域)に対し良好に密着させることができる。
【0005】
一方、より密着性の高いマスクを提供する目的で、横長の立体マスクが提案されている。具体的には、下記特許文献1に、マスク本体の左右側辺を耳の近傍に達するようマスク本体の横長さを設定した立体マスクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3100600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従来のマスクには、以下の問題があった。
即ち、従来のプリーツマスクは、プリーツという特性から、多くの装着者の顔形状や顔の大きさ(以下、「顔形状等」と略していう場合がある)に合わせ易いという利点を有するものの、横寸法が短く、頬骨頂点近傍に位置する左右側辺より耳側は装着者の頬が広く露出する。そのため、夏は頬の被覆部分と非被覆部分とで日焼けの状態に差が出てしまい、また冬は被覆部分と非被覆部分とで外気温に対する肌感が大きく異なるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献1に記載の横長のマスクでは、上述するプリーツマスクの問題は解消されるものの、プリーツマスクと比較して、装着者が息苦しさを感じる場合があった。プリーツマスクではプリーツの開き方を調整することで、装着者の顔の形状や大きさに対応させ易いのに対し、特許文献1に記載のマスクは、形状が固定されているため、隙間を生じさせない設計とすることにより、上記口元空間が確保され難いためである。
また特許文献1に記載のマスクは、装着者による形状の調整ができないため、装着者の顔が小さい場合にはマスクと顔との間に隙間が生じ易く、装着者の顔が大きい場合には目元や顎先などが充分に覆われない場合がある。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、装着者の顔形状等に適合させ易く、息苦しさを与え難いプリーツマスクであって、装着者の耳元付近まで充分に被覆可能であるとともに密着性の高いマスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のマスクは、通気可能なシート材を備えるマスク本体を有し、上記マスク本体は、横方向に沿って折られた山折り部を有する襞を複数有し、上記マスク本体の左右側辺が、装着者の頬骨頂点と外耳道開口内側端との中間点より耳側に位置するとともに、上記マスク本体の縦寸法に対する、当該マスク本体の横寸法が、2.7倍以上4.4倍以下であり、上記マスク本体の上記左右側辺の近傍には、上記襞の形状を保持するため第一接合部が設けられているとともに、上記第一接合部よりも左右方向中心側に、上記襞の少なくとも一部の開きを制御する第二接合部が設けられており、上記マスク本体には、上記襞が少なくとも3本形成されており、上下方向の中間部に形成された中間襞の開きを制御する上記第二接合部を有するとともに、上記中間襞より上方に設けられた上部襞の開きを制御する上部接合部、および上記中間襞より下方に設けられた下部襞の開きを制御する下部接合部を有し、横方向にみて、上記上部接合部は、上記第二接合部よりも耳側に配置されており、上記下部接合部は、上記第二接合部よりも口側に配置されており、上記上部接合部の長さ方向2分の1の地点である第一中間点と、上記下部接合部の長さ方向2分の1の地点である第二中間点とを結んでなる第一仮想線と、上記第一仮想線と上記第二接合部とが交差する交点を含み上下方向に伸長する第二仮想線と、の交差角度θが30度以上50度以下であることを特徴とする。

【発明の効果】
【0011】
上記構成を備える本発明のマスクは、装着者の顔形状等に適合させ易く、口元空間を適度に確保するという従来のプリーツマスクの長所を備え、かつ良好な密着性を維持しつつ耳元付近まで被覆可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施態様にかかるマスクの正面図である。
図2図1に示すマスクのA-A断面図である。
図3】(3a)は本発明のマスクの一実施態様にかかるマスクの部分正面図であり、(3b)は、本発明の他の実施態様にかかるマスクの部分正面図である。
図4】本発明のマスクが人に装着された状態を示す説明図である。
図5】(5a)は、従来のマスクが人に装着された状態を示す説明図であり、(5b)は、従来のマスクの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、プリーツマスクの態様において、良好な密着性を維持しつつ、鼻腔、口元、顎先だけでなく、耳近傍まで広く装着者の顔を被覆可能なマスクを提供する。本発明者らの鋭意検討によれば、単に従来のプリーツマスクを拡大し、耳元まで覆うようマスクを設計した場合、マスク本体が耳元付近において上下方向に屈曲してしまい良好な密着性が維持されないことがわかった。そこで、検討を重ね、従来のプリーツマスクにおける縦横比の常識を逸脱した、これまでにない横方向に顕著に細長い形状とすることで、良好な密着性を維持しつつ、被覆面積の拡張が実現可能であることを見出し、本発明を完成した。しかも、本発明のマスクは、使用前の状態では、従来のプリーツマスクとは明らかに異なる特徴的な形状を呈するものの、装着した状態では、耳元まで広く被覆すること以外は、従来のプリーツマスクと顕著な外観の相違を感じさせない。そのため、本発明のマスクは、装着者に対し、外観上の違和感を与えることなく、良好な使用感を提供することができる。本発明のマスクは、たとえば、使い捨てマスクであってもよいし、マスク本体内部に取り換え可能なガーゼ部などが設置され、繰り返し使用されるマスクであってもよい。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図1から図5を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
尚、マスクを説明する際に、上下左右、横、縦といった方向は、図1紙面において確認される正面視されたマスクの上下左右方向等を指す。
図1は、本発明の一実施態様にかかるマスク100の正面図である。ここでいう正面とは、装着者に装着された場合、外側に露出する面を意味する。図2は、図1に示すマスク100のA-A断面図である。図3aは、マスク100の部分正面図であり、図3bは、マスク100の変形であるマスク110の部分正面図である。図4は、本発明のマスクが人(装着者200)に装着された状態を示す説明図である。図4では、マスク100の構成の一部を適宜図示省略している。
図5aは、従来のマスク300が人(装着者200)に装着された状態を示す説明図であり、図5bは、従来のマスク300の正面図である。尚、マスク300は、プリーツが図示省略されているが、適宜、一般的なプリーツマスクと同様のプリーツを備えていてよい。
【0015】
図1に示すとおり、マスク100は、通気可能なシート材を備えるマスク本体10を有し、マスク本体10は、横方向に沿って折られた山折り部12(図2参照)を有する襞14が複数設けられている。襞14を複数備えるマスク100は、所謂プリーツマスクである。
マスク100において、マスク本体10の左右側辺(右側辺21、左側辺22)は、装着者200の頬骨頂点202と外耳道開口内側端204との中間点より耳側に位置している(図4参照)。本発明のマスク100は、上述するマスク本体10の縦寸法Yに対する、マスク本体10の横寸法Xが、2.7倍以上4.4倍以下の範囲となるよう構成される。
【0016】
尚、本発明において、頬骨頂点202とは、一般的な骨格における頬骨の張った箇所を指し、おおよそ、装着者200の目尻よりやや下方であって耳寄りの位置を指している。また本発明において、外耳道開口内側端204とは、外耳の開口部であって顔面側の端部を指している。頬骨頂点202および外耳道開口内側端204は、いずれも厳密な一点を定義するものではなく、マスク100における右側辺21および左側辺22が耳近傍に配置されることを説明するために用いた用語である。
【0017】
図5aに示すように従来のマスク300は、左右側辺(図5aでは左側辺306を図示している)が、装着者200の頬骨頂点202付近に配置されることが一般的である。かかる設計によれば、装着者300の頬骨頂点202付近から顎にかけて、左右側辺それぞれを密着させ易い。かかる密着性を得るため、図5bに示す従来のマスク本体302は、縦横比を、1:1.6~1:1.85程度に設計される。図5bに示すマスク本体302は、具体的には、縦横比は1:1.8で図示している。
しかしかかる構成では、図5aから理解されるとおり、装着者200の頬は頬骨頂点202近傍より耳側が大きく露出してしまう。
【0018】
一方、本発明のマスク100は、左右方向に細長い形状に構成されており、図4で示すとおり、左右側辺(図4では左側辺22を図示している)が装着者200の耳近傍に配置される。このため、一方の耳近傍から他方の耳近傍まで装着者200の顔の被覆面積を大きく確保することができ、かつ横方向に沿った襞を複数有することから、装着者の顔の縦方向の被覆面積も従来どおり確保することができる。しかも、横寸法に比べ縦寸法比率が小さいため、耳近傍において、左右側辺が屈曲し難く、隙間が生じ難い。
また図1のマスク100と、図5bのマスク300とを比較すると、明らかにマスク100は、これまでにない横に細長い特徴的な形状であることが理解される。しかし、装着時においては、図4に示すマスク100と図5aに示すマスク300とを比較すれば理解されるとおり、マスク100は、装着者200の頬を耳近傍まで被覆していること以外は、マスク300と比べて装着時の外観上の差異はほとんどない。即ち、マスク100は、装着前は、非常に特徴的な形状を呈するものの、装着時には、外観上の違和感を与えることがない。
以下にマスク100についてさらに詳細に説明する。
【0019】
(マスク本体)
マスク本体10は、装着者200の顔に対向する位置に配置される。マスク本体10の形状は特に限定されない。たとえば図1に示すように、マスク本体10は、装着前の形状において、上側辺26、下側辺27、右側辺21、および左側辺22を備える長方形とすることができる。
図1、2に示すとおり、マスク本体10は、マスク本体10を構成するシート材の上端および下端が正面側に折り返された折り返し端54を有し、上側辺26側の折り返し端54近傍は、上側辺接合部53により接合されており、また下側辺27側の折り返し端54近傍は、下側辺接合部53’により接合されている。尚、図2において、上側辺接合部53および下側辺接合部53’は黒く塗りつぶして図示している。
また上側辺接合部53により接合され袋状となった折り返し部分には、ノーズフィッター51が内蔵されている。装着者200の鼻形状に沿わせてノーズフィッター51を変形させることで、マスク本体10の取り付け位置を安定化させることができる。ノーズフィッター51の配置位置がずれないよう、上側辺25の折り返し部分であってノーズフィッター51の左右両端近近傍には、適宜、ノーズフィッターストッパー52となる接合部が設けられる。
【0020】
尚、本発明に関し接合部とは、マスク本体10を厚み方向に接合して固定する部分である。接合方法は特に限定されず、たとえば超音波シールやヒートシール等の溶着加工が一般的であるが、縫製などのその他の方法であってもかまわない。本実施態様では、もっぱら溶着加工により形成された接合部について説明する。
【0021】
マスク100は、装着時、マスク本体10の左右側辺が、図4に示す左側辺22のように、装着者200の頬骨頂点202と外耳道開口内側端204との中間点より耳側に配置される。より好ましくは、上記左右側辺と耳元との間に実質的に頬が露出しない程度に耳近傍に配置されるとよい。
【0022】
マスク100において、マスク本体10の縦寸法Yに対する、マスク本体10の横寸法Xは、2.7倍以上4.4倍以下であり、好ましくは、3.3倍以上3.9倍以下である。ここでいう縦寸法Yとは、装着前の襞14が折りたたまれた状態であるマスク本体10の上下方向における寸法を意味し、横寸法Xとは、装着前の襞14が折りたたまれた状態であるマスク本体10の左右方向における寸法を意味する。かかる比率を採用することによって、顔に対する良好な密着性を維持しつつ、装着者200に対する被覆面積を従来と比べ顕著に拡大可能である。
尚、図示省略するが、マスク本体10が非長方形状である場合、上記縦寸法Yは、右側辺21および左側片22が同じ寸法である場合には当該寸法を意味し、異なる場合には右側辺21および左側片22のいずれか短い方の寸法を意味する。また、上記横寸法Xは、装着前の襞14が折りたたまれた状態であるマスク本体10の左右方向における最大寸法を意味する。
【0023】
マスク本体10の大きさは特に限定されないが、たとえば、装着前であって襞14が折りたたまれた状態で、縦寸法Yは60mm以上75mm以下、横寸法Xは200mm以上260mm以下とすることができる。またかかるマスク本体10において、襞14を全て開いた状態での縦寸法Yは、130mm以上150mm以下程度にすることができる。
マスク本体10において、装着前の左右側辺における縦寸法Y(縦最小)に対する、襞14を全部開いた際の縦寸法Yの最大値(縦最大)の比率は、縦最小:縦最大=1:1.5~1:2.5程度であることが好ましく、縦最小:縦最大=1:1.8~1:2.1程度であることがより好ましい。このように、耳近傍に配置される左右側辺の縦寸法Yを相対的に小さく設計するとともに、襞14の折りたたみ量を適度に設けることで、マスク本体10の左右方向中央部においては、鼻腔から顎先まで充分に覆うよう設計することができる。
【0024】
マスク本体10を構成する通気可能なシート材は、マスク100を装着した装着者200が、無理なく呼吸できる程度に通気可能なシート材であればよく、特に限定されない。たとえば、不織布、織布、編物などのいずれかまたは組合せでマスク本体10を構成することができる。またマスク本体10は、一枚のシート材からなる単層構造であってもよいし、複数のシート材を積層してなる積層構造であってもよい。
【0025】
上記シート材によってマスク100の機能を変更することができる。たとえば、不織布に酸化チタンを配合するなどしてUV加工をしてもよいし、塵、花粉またはウイルス等の粒子を遮蔽可能とするために、シート材の目付や気体透過率を調整することもできる。また、UV加工したUVカットシート材と、上記粒子を遮蔽可能とした遮蔽シート材を積層させて、複数の機能をマスク100に付加することもできる。
【0026】
より具体的には、たとえば、UVカットシート材、および花粉遮蔽シート材またはウイルス遮蔽シート材を積層させ、夏用マスクを提供することもできる。上記夏用マスクは、正面側から第一UVカットシート材、第二UVカットシート材、遮蔽シート材を備える積層構造とすることができる。複数のUVカットシート材を積層させ、それらシート材トータルで、90%以上のUVを遮蔽するよう構成することが好ましい。夏用マスクにおける上記積層構造は、いずれも不織布から構成してもよいし、不織布シートと非不織布シートとの組合せで構成してもよい。
【0027】
次に、マスク本体10における襞14について説明する。図2に示すように、マスク本体10は、横方向に沿って折られた山折り部12を有する襞14を複数有する。襞14を備えることによって、装着者200の顔の形状に合わせて適度な口元空間を確保し、息苦しさが抑制された使用感の良いマスク100を提供することができる。
【0028】
図1に示すとおり、マスク本体10の左右側辺(右側片21、左側片22)の近傍には、襞14の形状を保持するため第一接合部40が設けられている。第一接合部40は、マスク本体10において形成された複数の襞14を厚み方向に接合し折り畳んだ状態を維持する部位であって、一般的には、右側辺21および左側辺22に沿ってマスク本体10の外縁近傍に設けられる。図1に示すマスク本体10では、襞14全体(第一襞14a、第二襞14b、第三襞14c、第四襞14d)が、第一接合部40により、溶着され折り畳んだ形状が維持されている。
第一接合部40に加え、第一接合部40よりも左右方向中心(以下、マスク中心ともいう)側に、襞14の少なくとも一部の開きを制御する第二接合部42が設けられていることが好ましい。図1に示すマスク本体10では、複数の襞14のうち、上側に設けられた第一襞14aと、下側に設けられた第四襞14dとの間に設けられた上下方向中間位置にある、中間襞(第二襞14bおよび第三襞14c)が第二接合部42によって接合されている。たとえば第二接合部42によって接合される襞14の数は、第一接合部40によって接合される数と同じか、それより少ない。
【0029】
第二接合部42は、かかる第二接合部42によって接合された襞14の、第一接合部40から第二接合部42までの領域の開きを制御するとともに、第二接合部42から左右方向中央部に向けて襞14の開きの支点となる。第一接合部40よりも、やや中央よりにかかる支点を設けることで、装着時のマスク本体10の立体性を向上させ、口元に対するマスク本体10の接触を抑制することができる。これにより装着者200の息苦しさを低減し、より良好な使用感を発揮するマスク100を提供することができる。
第二接合部42の位置は、マスク100の装着対象者や規定サイズ(成人男性、成人女性、子供、Lサイズ、Mサイズなど)などを勘案して適宜決定することができる。あまりマスク本体10のマスク中心寄りに第二接合部42を設けると、襞14の開きが制御され過ぎてプリーツの稼働域が少なくなる。この結果、マスク本体10における、右側の第二接合部42から右側辺21までの領域、および左側の第二接合部42から左側辺22までの領域が、顔のラインに追従し難くなり、かかる領域に皺ができ隙間が生じる可能性がある。
そのため、たとえばマスク中心から第二接合部42までの距離は75mm以上95mm以下が好ましく、80mm以上90mm以下がより好ましく、83mm以上88mm以下であることがさらに好ましい。上記距離とは、マスク中心と、第二接合部42の当該マスク中心に最も近い箇所との距離を指す。第二接合部42の配置位置を、かかる数値範囲に設計することで、顔が小さい人が使用した場合でもマスク本体10と顔との間に隙間が生じ難く、一方、顔の大きい人が使用した場合にも目元やあご先の被覆が不十分になることを良好に防止することができる。
【0030】
図1で示す第一接合部40および第二接合部42は、それぞれ複数の点状の溶着部からなり、これらの溶着部が、上下方向に伸長する直線上に整列配置されて構成されており、互いに平行に形成されている。図示省略する変形例として、第一接合部40および第二接合部42の一方または両方は、湾曲したラインやジグザグ等の非直線上に配列された複数の溶着部から構成されてもよいし、連続的に形成された一本の溶着線から構成されてもよい。また第一接合部40および第二接合部42は、非平行であってもよい。
【0031】
襞14が3本以上形成されたマスク100において、より好ましい態様として、上述する第二接合部42より上部および下部にさらに異なる接合部を形成する態様が挙げられる。
即ち、図1に示すとおり、マスク本体10は、襞14が少なくとも3本(図1では襞14が4本形成された態様を示している)形成されてよい。ここで、マスク本体10の上下方向の中間部に形成された中間襞(図1では第二襞14bおよび第三襞14c)の開きを制御する第二接合部42を有するとともに、上記中間襞より上方に設けられた上部襞(図1では第一襞14a)の開きを制御する上部接合部44、および上記中間襞より下方に設けられた下部襞(図1では第四襞14d)の開きを制御する下部接合部46の少なくとも一方が設けられることが好ましい。かかる態様では、横方向にみて、上部接合部44は、第二接合部42よりも耳側に配置され、下部接合部46は、第二接合部42よりも口側に配置される。
【0032】
右側辺21および左側辺22が耳近傍に配置されるとともに横寸法に対する縦寸法比の小さい細長形状のマスク本100において、上部接合部44および/または下部接合部46をさらに設けることで、以下の効果が発揮される。
即ち、上部接合部44を設けることで、頬骨の膨らみに対しマスク本体10の密着性を良好に維持することができ、頬骨のあたりにおける隙間の発生を良好に防止することができる。また下部接合部44を設けることで、顎付近における隙間の発生を良好に防止することができる。
【0033】
また本発明者らの検討によれば、上記中間襞の開きを制御する第二接合部42を設けた場合、さらに、これに対し上部接合部44および下部接合部46を設けることで、口元空間を充分に設けることができることが見出された。具体的には、かかる第二接合部42に対し、上部接合部44を設けない場合には、上部襞(第一襞14a)が第一接合部40を支点として開くため、マスク本体10の内部において形成される空間が分散してしまい、最も立体性が求められる口元において、十分な空間を確保できない場合がある。また同様に下部接合部46を設けない場合には、マスク本体10の下部領域の襞が大きく開き、顎全体をすっぽり覆うことができる反面、口元の空間が潰れてしまい、立体性が損なわれる場合がある。
したがって、顔に対し良好な密着性を維持するとともに、口元空間を充分に確保して息苦しさが抑制されたマスク100を提供するという観点からは、特に、上部接合部44および下部接合部46を設けることが好ましい。
図1から理解されるとおり、マスク100を概略視すると、マスク本体10において、上部接合部44、第二接合部42、および下部接合部46は、この順に、耳から顎に向けて下り傾斜するライン上に配置されている。当該ラインを支点としてそれぞれの襞14が開くように構成されることで、マスク100は、横方向に細長のマスク本体10を顔に対し隙間なく良好に密着させるとともに、口元空間を充分に確保することができる。
【0034】
マスク100の寸法や使用対象者にもよるが、上述する上部接合部44の効果をより充分に発揮させるためには、上部接合部44の下端と、第二接合部42の上端との距離は5mm以上15mm以下であることが好ましく、7mm以上13mm以下であることがより好ましい。
また同様に、下部接合部46の効果をより充分に発揮させるためには、下部接合部46の上端と、第二接合部42の下端との距離は15mm以上25mm以下であることが好ましく、17mm以上23mm以下であることがより好ましい。
【0035】
上部接合部44は、図1に示すように、複数の溶着部からなり、これらの溶着部が、上下方向に伸長する直線上に配置されて構成されてもよい。本実施形態では、上部接合部44は、第二接合部42と並行に伸長している。図示省略する変形例として、上部接合部44は、湾曲したラインやジグザグ等の非直線上に形成された複数の溶着部から構成されてもよいし、連続的に形成された一本の溶着線から構成されてもよい。また上部接合部44と第二接合部42は、非平行であってもよい。
【0036】
一方、下部接合部46は、マスク本体10を正面視した際、図1に示すとおり、耳方向から顎方向に向けて下り傾斜するよう形成されてもよい。上述のとおり角度をつけて下部接合部46を設けることによって、マスク本体10と顎との隙間を小さく抑え、顎のラインに対しマスク本体10を良好にフィットさせることができるため好ましい。上述のとおり斜め傾斜する下部接合部46は、上部接合部44と同様に複数の点状の溶着部を一方方向に配列して構成されてもよいが、比較的短い長さ寸法で上記効果を良好に発揮させるために、図1に示すとおり連続的な線状の溶着部により構成されることが好ましい。
【0037】
上述する第二接合部42、上部接合部44および下部接合部46の左右方向の位置関係は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜決定することができる。より好ましい位置関係としては、図3aに示すとおり、上部接合部44の長さ方向2分の1の地点である第一中間点44xと、下部接合部46の長さ方向2分の1の地点である第二中間点46xとを結んでなる第一仮想線Iと、第一仮想線Iと第二接合部46とが交差する交点42xを含み上下方向に伸長する第二仮想線IIと、の交差角度θが30度以上50度以下となることが好ましく、35度以上45度以下となることがより好ましい。い。かかる位置関係が採用された態様のマスク100は、装着者200の頬を耳近傍まで覆うとともに、頬骨頂点202付近から顎にかけて、マスク本体10を顔に対しより良好に密着させるとともに、口元空間を充分に確保することができる。
【0038】
図3bにマスク100の変形例であるマスク110を部分的に示す。マスク110は、第二接合部42が、耳方向に凸の湾曲線上に複数の溶着部が配置されて構成されていること、および下部接合部46が斜め傾斜せず、上下方向に伸長する直線状に形成されていること以外はマスク100と同様に構成されている。
マスク110においても、上述と同様に第一仮想線Iおよび第二仮想線IIの交差角度θは、30度以上50度以下となることが好ましい。
【0039】
図2に具体的に示すマスク本体10の態様は、上方から下方にむけて、第一襞14a、第二襞14b、第三襞14c、第四襞14dの少なくとも4つの襞14を有する。これらの各襞14の折り畳み向きは、特に限定されないが、たとえば、図2に示すとおり、マスク本体10を上下方向に沿って切断してなる切断面A-Aにおいて、第二襞14bおよび第三襞14cによって断面略Ω状の折り畳み部50が形成されていることが好ましい。
折り畳み50は、山折り部12および谷折り部13とからなる第二襞14b、同様に山折り部12および谷折り部13とからなる第三襞14cを有し、かかる第二襞14bが上方向に折り畳まれているとともに、第三襞14cが下方向に折り畳まれている。またこのとき、第一襞14aは第二襞14bと同方向(即ち上方向)に折り畳まれており、一方、第四襞14dは、第三襞14cと同方向(即ち下方向)に折り畳まれている。
【0040】
断面略Ω状の折り畳み部50を備えるマスク本体10は、襞14が開かれたとき、鼻腔および口元を覆う領域がドーム状となり口元空間が良好に形成され易い。そのため、装着者200に対し息苦しさや、口とマスク本体10裏面との接触などの不快感を与え難い。
【0041】
上述する折り畳み部50を備えるマスク本体10において、第二接合部42は、正面視において第二襞14bおよび第三襞14cに亘って設けられており、また上部接合部44は、第一襞14a上に設けられており、一方下部接合部46は、第四襞14d上に設けられている。図面では第一襞14aおよび第四襞14dは、それぞれ1つの襞14から構成されているが、これらは、それぞれ2以上の襞14から構成することもできる。
【0042】
尚、上述する襞14の折り畳み方向は本発明を何ら限定するものではない。複数の襞14の折り畳み方向は、上方または下方に折り畳み方向を統一させてなる、所謂九十九折であってもよいし、各襞14がランダムに上方向または下方向に折り畳まれていてもよい。
【0043】
上述する説明は、本発明を何ら限定するものではなく、たとえば、上部接合部44、第二接合部42、および下部接合部46のいずれかの組み合わせまたは全てが、正面視おいて、耳側から顎側に向けて、略連続するライン上に配置された態様を本発明は包含する。ここでいる略連続するラインとは、直線であってもよいし、湾曲線や蛇行線などの非直線であってもよい。
【0044】
(マスク本体固定部)
マスク100は、上述するマスク本体10と、これを顔面に取り付けるための取り付け部を有する。取り付け部とは、マスク本体10が装着者200の顔面に配置された状態を維持することが可能な部位である。図示するマスク100は、取り付け部として、マスク本体10の右側辺21および左側辺22またはその近傍に設けられた耳掛部30を備える。また図示省略する他の取り付け部は、たとえばマスク本体10の裏面(顔側の面)に備えられ、顔に対し取り外し着脱可能な接着部であってもよい。
【0045】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)通気可能なシート材を備えるマスク本体を有し、
前記マスク本体は、横方向に沿って折られた山折り部を有する襞を複数有し、
前記マスク本体の前記左右側辺が、装着者の頬骨頂点と外耳道開口内側端との中間点より耳側に位置するとともに、
前記マスク本体の縦寸法に対する、当該マスク本体の横寸法が、2.7倍以上4.4倍以下であることを特徴とするマスク。
(2)前記マスク本体の前記左右側辺の近傍には、前記襞の形状を保持するため第一接合部が設けられているとともに、
前記第一接合部よりも左右方向中心側に、前記襞の少なくとも一部の開きを制御する第二接合部が設けられている上記(1)に記載のマスク。
(3)前記マスク本体には、前記襞が少なくとも3本形成されており、
上下方向の中間部に形成された中間襞の開きを制御する前記第二接合部を有するとともに、
前記中間襞より上方に設けられた上部襞の開きを制御する上部接合部、および
前記中間襞より下方に設けられた下部襞の開きを制御する下部接合部の少なくとも一方を有し、
横方向にみて、前記上部接合部は、前記第二接合部よりも耳側に配置されており、前記下部接合部は、前記第二接合部よりも口側に配置されている上記(2)に記載のマスク。
(4)前記上部接合部および前記下部接合部を有し、
前記上部接合部の長さ方向2分の1の地点である第一中間点と、前記下部接合部の長さ方向2分の1の地点である第二中間点とを結んでなる第一仮想線と、
前記第一仮想線と前記第二接合部とが交差する交点を含み上下方向に伸長する第二仮想線と、の交差角度θが30度以上50度以下である上記(3)に記載のマスク。
(5)前記マスク本体を正面視した際、前記下部接合部が、耳方向から顎方向に向けて下り傾斜するよう形成されている上記(3)または(4)に記載のマスク。
(6)前記マスク本体は、上方から下方にむけて、第一襞、第二襞、第三襞、第四襞の少なくとも4つの襞を有し、
前記マスク本体を上下方向に沿って切断してなる切断面において、前記第二襞および前記第三襞によって断面略Ω状の折り畳み部が形成されているとともに、
前記第一襞は前記第二襞と同方向に折り畳まれており、前記第四襞は、前記第三襞と同方向に折り畳まれている上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のマスク。
【符号の説明】
【0046】
10、302・・・マスク本体
12・・・山折り部
13・・・谷折り部
14・・・襞
14a・・・第一襞
14b・・・第二襞
14c・・・第三襞
14d・・・第四襞
21、305・・・右側辺
22、306・・・左側辺
26・・・上側辺
27・・・下側辺
30、304・・・耳掛部
40・・・第一接合部
42・・・第二接合部
42x・・・交点
44・・・上部接合部
44x・・・第一中間点
46・・・下部接合部
46x・・・第二中間点
50・・・折り畳み部
51・・・ノーズフィッター
52・・・ノーズフィッターストッパー
53・・・上側辺接合部
53’・・・下側辺接合部
54・・・折り返し端
100、110、300・・・マスク
200・・・装着者
202・・・頬骨頂点
204・・・外耳道開口内側端
X・・・横寸法
Y・・・縦寸法
I・・・第一仮想線
II・・・第二仮想線
θ・・・交差角度

図1
図2
図3
図4
図5