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  • 特許-防水コネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240216BHJP
   H01R 13/504 20060101ALI20240216BHJP
   H01R 13/405 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/52 301E
H01R13/504
H01R13/405
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001996
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021111496
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-131378(JP,U)
【文献】特開2019-114523(JP,A)
【文献】特開2018-170196(JP,A)
【文献】特開2006-066216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0104957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の金属シェルであって、その周面の少なくとも半分を切り欠いてなるスリットと、切り欠かれずに残存し、前記スリットと対向する周面である連結部を含む金属シェルと、
前記連結部の内周面と外周面とを含む全周を封止する第1封止部材と、
前記金属シェルに挿通される金属端子と、
前記金属シェルの内部および外部の前記連結部よりもコネクタ先端方向にある所定位置まで充填され、前記金属シェルと前記第1封止部材と前記金属端子を一体化する樹脂ボディを含む
防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の防水コネクタであって、
前記金属端子の外周面を封止する第2封止部材を含み、
前記樹脂ボディは、
前記金属シェルと前記第1封止部材と前記金属端子と前記第2封止部材を一体化する
防水コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の防水コネクタであって、
前記第1封止部材は、
前記金属シェルをインサート成形することで形成され、
前記第2封止部材は、
前記金属端子をインサート成形することで形成された
防水コネクタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の防水コネクタであって、
前記樹脂ボディは、
前記金属シェルと前記第1封止部材と前記金属端子と前記第2封止部材を一括インサート成形することで形成された
防水コネクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の防水コネクタであって、
前記金属シェルと前記金属端子をプレス部品とした
防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
防水コネクタの従来例として例えば特許文献1、特許文献2がある。
【0003】
特許文献1は、コネクタの一体成形方法に関する発明である。当該方法におけるコネクタは、電線と、ターミナルと、被覆部材とを有し、被覆部材は、接続部の周囲に設けられ被覆部と接着すると共にターミナルと圧接して接続部をシールする弾性樹脂と、この弾性樹脂の周囲に設けられ弾性樹脂と接着すると共にターミナルと圧接する樹脂とを有する。当該方法は、接続部の周囲に弾性樹脂を射出成形し、被覆部と弾性樹脂とを接着させる第1工程と、この第1工程の後、弾性樹脂の周囲に弾性樹脂を押さえ込むように樹脂を射出成形し、弾性樹脂とターミナルとを圧接させて接続部をシールさせると共に弾性樹脂と樹脂とを接着させ、ターミナルと樹脂とを圧接させる第2工程とを有する。
【0004】
特許文献2のコネクタ及びコネクタの製造方法は、端子金具を樹脂モールドにより成形されたハウジング内に埋め込んだ形態のコネクタにおいて、シール性能の安定化を図ることを目的とする。当該方法は、機器側端子(端子金具)の外周に、リング状をなすゴム製のシール部材を焼き付けにより接着し、そのシール部材を包囲するように樹脂モールドにより機器側ハウジング(ハウジング)を成形している。シール手段として、機器側端子の外周面にゴム製のシール部材を焼き付けにより接着したので、シール剤を塗布する場合のような塗布量の管理を行わなくても、機器側端子と機器側ハウジングとの間をシール部材の弾性によって確実にシールできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5308935号公報
【文献】特開2005-19321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のコネクタの一体成形方法は、棒状のターミナルの周囲に形成した弾性樹脂を押さえ込むように樹脂を射出成形することによりターミナルをシールすることを特徴としており、シール対象が棒状でなく、例えば筒状のシェルと棒状の端子の組み合わせである場合には、構造が複雑になるため、適切な成形方法とはいえない。
【0007】
また、特許文献2のコネクタ及びコネクタの製造方法は、機器側端子の外周にシール部材31を焼き付けにより接着しているが、この方法では加硫接着材の塗布工程が煩雑である。
【0008】
そこで本発明では、シェルと端子を有するコネクタにおいて、簡易なインサート成形のみで十分な防水性を確保できる防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防水コネクタは、金属シェルと、第1封止部材と、金属端子と、樹脂ボディを含む。
【0010】
金属シェルは、筒形状の金属シェルであって、その周面の一部を切り欠いてなるスリットと、切り欠かれずに残存し、スリットと対向する周面である連結部を含む。第1封止部材は、連結部の内周面と外周面を封止する。金属端子は、金属シェルに挿通される。樹脂ボディは、金属シェルの内部および外部の連結部よりもコネクタ先端方向にある所定位置まで充填され、金属シェルと第1封止部材と金属端子を一体化する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防水コネクタによれば、シェルと端子を有するコネクタにおいて、簡易なインサート成形のみで十分な防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の防水コネクタの樹脂ボディの斜視図。
図2】実施例1の防水コネクタの金属シェルの斜視図。
図3】実施例1の防水コネクタの金属端子の斜視図。
図4】実施例1の防水コネクタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
以下、図1図3を参照して、実施例1の防水コネクタの各部品について説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施例の防水コネクタの樹脂ボディ11は、円筒形状の前方部111と、直方体形状の後方部112を含む。
【0016】
図2に示すように、本実施例の防水コネクタの金属シェル12は全体が長細い筒形状であって、金属シェル12の一端(コネクタ接続側)に円筒形状の筒部121が形成されている。筒部121の周面の一部は切り欠かれてスリット122が形成され、スリット122と対向する周面である断面円弧形状の連結部123が切り欠かれずに残存している。連結部123の内周面と外周面は第1封止部材141により封止されている。第1封止部材141は、金属シェル12をインサート成形することで形成される。第1封止部材141は、例えばゴム系材でよい。連結部123に隣接し、金属シェル12の一端側の筒部121を第1の筒部126と呼称する。また、連結部123に隣接し、金属シェル12の他端側(コネクタ接続側と反対側)の筒部121を第2の筒部127と呼称する。
【0017】
第2の筒部127に隣接し、金属シェル12の他端に、金属シェル12の外側に延伸する外縁部を有する脚部124を含む。同図に示すように、金属シェル12はプレス部品とすることができる。金属シェル12をプレス部品とした場合、円筒形状の筒部121を形成するために、継ぎ目125が生じる。
【0018】
図3に示すように、金属端子13は棒状に形成され、その一端はコネクタ接続方向端である。金属端子13の他端側に金属端子13の外周面を封止する第2封止部材142が、金属端子13をインサート成形することで形成されている。第2封止部材142は、例えばゴム系材でよい。金属端子13は、金属シェル12内に挿通される。金属端子13はプレス部品とすることができる。
【0019】
図4に示すように、樹脂ボディ11は、金属シェル12の内部および外部の連結部123よりもコネクタ先端方向にある所定位置(同図の例では、内部について位置X、外部について位置Y)まで充填され、金属シェル12と第1封止部材141と金属端子13と第2封止部材142を一括インサート成形することで形成される。
【0020】
同図のAに示すように、金属シェル12の継ぎ目125は水の浸入経路となる。しかし、同図に示すように、金属シェル12の継ぎ目125が連結部123を通らず、スリット122に連絡されていることにより、Aの侵入経路は、充填された樹脂により封止される。
【0021】
同図のBに示すように、金属シェル12の外周面のうち、スリット122に連絡される面と、樹脂ボディ11の隙間は水の侵入経路となる。しかし、同図に示すように、Bの侵入経路は、スリット122に連絡されていることにより、充填された樹脂により封止される。
【0022】
同図のCに示すように、金属シェル12の内周面のうち、スリット122に連絡される面と、樹脂ボディ11の隙間は水の侵入経路となる。しかし、同図に示すように、Cの侵入経路は、スリット122に連絡されていることにより、充填された樹脂により封止される。
【0023】
同図のDに示すように、金属端子13の外周面と樹脂ボディ11の隙間は水の侵入経路となる。しかし、同図に示すように、Dの侵入経路は、第2封止部材142により封止される。
【0024】
同図のEに示すように、金属シェル12の内周面のうち、連結部123に連絡される面と、樹脂ボディ11の隙間は水の侵入経路となる。しかし、同図に示すように、Eの侵入経路は、第1封止部材141により封止される。
【0025】
同図のFに示すように、金属シェル12の外周面のうち、連結部123に連絡される面と、樹脂ボディ11の隙間は水の侵入経路となる。しかし、同図に示すように、Fの侵入経路は、第1封止部材141により封止される。
【0026】
<効果>
従来は、連結部123に相当する構造がなかったため、シェルの内周用の封止部材と、シェルの外周用の封止部材をそれぞれ設ける必要があり、パーツ点数の増加によるコストの増大、パーツの脱落や異物付着などが課題であったが、実施例1の防水コネクタはこの点を改善できる。
【0027】
具体的には、実施例1の防水コネクタはスリット122と連結部123を設けたため、連結部123の内周面および外周面を第1封止部材141によりインサート成形するだけで、金属シェル12を起因とする水の侵入経路を全て封止することができる。
【0028】
また、第2の筒部127を設けたことにより、連結部123を設けたことによるインピーダンス変動を最小限とすることができる。
【0029】
金属端子13の外周面を第2封止部材142によりインサート成形するだけで、金属端子13を起因とする水の侵入経路を全て封止することができる。
【0030】
第1封止部材141、第2封止部材142は、インサート成形により形成することでタクトの削減、バラツキの抑制を実現でき、安定して生産できる。
【0031】
樹脂ボディ11は、インサート成形により形成することでタクトの削減、バラツキの抑制を実現でき、安定して生産できる。
【0032】
金属シェル12、金属端子13をプレス部品とすることで、これらを安価に製造できる。金属シェル12をプレス部品とすることで生じる継ぎ目125については、連結部123を通らず、スリット122に連絡されるように形成することにより、簡単に封止することができる。
図1
図2
図3
図4