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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】コップ状容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/28 20060101AFI20240216BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B65D3/28 A
B65D3/22 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020002116
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109671
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 克美
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-106843(JP,A)
【文献】特開2001-341749(JP,A)
【文献】特開昭59-001350(JP,A)
【文献】特開平01-178447(JP,A)
【文献】特開2017-224485(JP,A)
【文献】特開昭56-151650(JP,A)
【文献】特開昭54-040774(JP,A)
【文献】特開昭51-127880(JP,A)
【文献】特開昭63-272653(JP,A)
【文献】特開2019-142036(JP,A)
【文献】特開2020-011774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/28
B65D 3/22
B65D 85/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、アルミニウム箔層と、アルミニウム箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部の互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、アルミニウム箔層とアルミニウム箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの両端縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、コップ状容器。
【請求項2】
胴体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、請求項1のコップ状容器。
【請求項3】
さらに、底体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、請求項1または2のコップ状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばアイスクリームやヨーグルトのような食品や飲料等を内容物とするコップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアイスクリームやヨーグルト等の半固形状乳製品を充填包装するための容器として、紙製のコップ状容器、すなわち紙コップが一般に用いられている。
紙コップは、通常、それぞれ所定形状にカットされた紙製ブランクよりなる胴体と底体とを接合一体化することにより形成されている。より詳細には、胴体は、略扇形の胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形するとともに、下端開口縁部に内方に折り返された折り返し部を形成し、上端開口縁部に外方にカールされたフランジ部を形成してなる。底体は、略円形の底体用ブランクをその外周部に垂下部が形成されるようにスカート成形してなる断面略逆U形のものである。そして、底体の垂下部が胴体の折り返し部に包み込まれて接合されることにより、胴体および底体が一体化されている。
胴体用および底体用の各ブランクは、例えば、一般原紙、耐酸紙、コート紙等よりなる紙層と、紙層の片面または両面に積層されたポリエチレン(PE)層とを有する積層体よりなる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、上記各ブランクの材料として、紙層およびポリエチレン(PE)層に加えてアルミニウム箔等よりなるバリア層を積層してなる積層体を使用した紙コップも知られている(例えば下記の特許文献2参照)。
【0004】
その他、アイスクリーム、ヨーグルト等の容器として、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック成形体よりなるものも知られている(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-30955号公報
【文献】特開2007-210639号公報
【文献】特開2007-176505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙コップは、生産性に優れ、安価に製造することが可能である反面、バリア性が低く、内容物の長期保存には適していなかった。
アルミニウム箔等のバリア層が付加された紙コップの場合、内容物の長期保存性は向上するが、紙層の端面から水が侵入しやすく、レトルト殺菌を行うことができなかった。
また、プラスチック製の容器の場合、製造設備のコストが高くつく上、内容物の長期保存には適していなかった。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明者は、胴体用ブランクおよび底体用ブランクそれぞれの材料として、金属箔層とその両面のうち少なくとも一方の面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体を使用したコップ状容器を先に提案した(特願2019-106125号)。
上記のコップ状容器によれば、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌を行うこともできる。
【0008】
ここで、上記のコップ状容器の場合、胴体のオーバーラップ部において、容器の内側に位置する胴体用ブランクの内端縁部の端面が内容物に晒されることになるため、内容物の種類等によっては、同端面に腐食やデラミネーション(層間剥離)が生じるおそれがある。
この発明の目的は、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌も可能なコップ状容器として、内容物との接触等による腐食やデラミネーションの発生を抑制しうるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0010】
1)胴体用ブランクの両端縁部どうしを重ね合わせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、アルミニウム箔層と、アルミニウム箔層の両面のうち少なくとも胴体の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部の互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、アルミニウム箔層とアルミニウム箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの両端縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、コップ状容器。
【0011】
2)胴体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、上記1)のコップ状容器。
【0012】
3)さらに、底体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面にベーマイト皮膜が形成されている、上記1)または2)のコップ状容器。
【発明の効果】
【0013】
上記1)のコップ状容器によれば、胴体用ブランクの両端縁部において、アルミニウム箔層の端面がベーマイト皮膜によって被覆されているので、内容物との接触等によりアルミニウム箔の端面に腐食やデラミネーションが生じるのを確実に抑制することができる。
【0014】
上記2)のコップ状容器によれば、胴体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面がベーマイト皮膜によって被覆されているので、胴体用ブランクにおけるアルミニウム箔層の端面全体の腐食やデラミネーションが効果的に抑制される。
【0015】
上記3)のコップ状容器によれば、底体用ブランクの全周縁部において、アルミニウム箔層の端面がベーマイト皮膜によって被覆されているので、底体用ブランクにおけるアルミニウム箔層の端面全体の腐食やデラミネーションが効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態に係るコップ状容器の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う垂直断面図であって、同図中、一点鎖線Aで囲まれた部分は一点鎖線aで囲まれた部分を拡大して示したものであり、一点鎖線Bで囲まれた部分は一点鎖線bで囲まれた部分を拡大して示したものである。
図3】(a)は胴体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であり、(b)は底体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図である。
図4】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部を拡大して示す水平断面図である。
図5】(a)は胴体用ブランクの平面図であり、(b)は胴体用ブランクから成形された胴体の斜視図である。
図6】(a)は底体用ブランクの平面図であり、(b)は底体用ブランクから成形された底体の斜視図である。
図7】上記コップ状容器の製造工程の一部を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図1図7を参照して説明する。
なお、以下の説明において、「上下」は、コップ状容器、胴体、底体における上下(例えば図2,7の各上下)をいうものとし、また、「内」は、コップ状容器、胴体、底体における中心に近い側(例えば図4の下、図7の右)をいい、「外」は、コップ状容器、胴体、底体における中心から遠い側(例えば図4の上、図7の左)をいうものとする。
【0018】
図1および図2は、この発明の実施形態のコップ状容器(1)の全体構成を示すものであって、同容器(1)は、胴体用ブランク(20A)から成形された胴体(2)と、底体用ブランク(30A)から成形された底体(3)とを接合一体化してなる。
胴体(2)は、テーパ筒状のものであって、図5に示すように、扇形をした胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)どうしをオーバーラップさせて接合することにより成形されている。したがって、胴部(2)には、その高さ方向に沿ってのびるオーバーラップ部(21)が存在する。
胴体(2)の下端開口縁部には、内方に折り返された折り返し部(22)が形成されている。
また、胴体(2)の上端開口縁部には、外方に折り曲げられたフランジ部(23)が設けられている。フランジ部(23)は、下方に折り返されてほぼ水平な偏平状に成形されている。なお、フランジ部は、図示以外の形態、例えば、下方にカールさせられて横断面略円弧状に成形された形態であってもよい。
底体(3)は、円形をした水平な底部(31)と、底部(31)の外周縁部から下方にのびた垂下部(32)とを有する断面略逆U形のものであって、図6に示すように、円形の底体用ブランク(30A)を絞り成形してなる。
そして、底体(3)の垂下部(32)の外面が胴体(2)の下端部(2a)の内面に接合されるとともに、胴体(2)の折り返し部(22)が垂下部(32)の内面に接合されることにより、胴体(2)および底体(3)が一体化されている(図2および図7参照)。
なお、図示は省略したが、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造によって、胴体(2)と底体(3)とを一体化した構成とすることもできる。この構成によれば、底体(3)の成形時に垂下部(32)に若干のシワが発生していた場合でも、空気等を混入することなく、胴体(2)の下端部(2a)と底体(3)の垂下部(32)とを確実にシールすることができる。
また、胴体は、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしを合掌状に重ね合わせて、これらの重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしを熱融着して接合した態様のもの(図示略)であってもよい。この態様の場合、胴体の合掌部を一方の側に折り曲げて、胴体の外面に熱融着させるのが好ましい。
【0019】
胴体用ブランク(20A)は、図3(a)に示すように、アルミニウム箔層(201)と、アルミニウム箔層(201)の両面のうち胴体(2)の内側となる面に積層された熱融着性樹脂層(202)と、アルミニウム箔層(201)の両面のうち胴体(2)の外側となる面に積層された外側熱融着性樹脂層(203)とよりなる積層体(20)から形成されており、紙層を有していない。
また、底体用ブランク(30A)も、図3(b)に示すように、アルミニウム箔層(301)と、アルミニウム箔層(301)の両面のうち底体(3)の上側となる面に積層された上側熱融着性樹脂層(302)と、アルミニウム箔層(301)の両面のうち底体(3)の下側となる面に積層された下側熱融着性樹脂層(303)とよりなる積層体(30)から形成されており、紙層を有していない。なお、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造とする場合には、底体用ブランク(30A)の下側熱融着性樹脂層(303)を省略することも可能である。
各積層体(20)(30)の厚さは、250μm未満とするのが好ましく、200μm未満とするのがより好ましい。各積層体(20)(30)の厚さを上記範囲とすることによって、ブランクの材料として厚さ250~400μm程度の積層体を使用する紙コップのように、胴体(2)のフランジ部(23)のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差が大きくなりすぎることや、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(31)との接合が安定しない、といった問題が確実に回避される。
【0020】
アルミニウム箔層(201)(301)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能するものである。
アルミニウム箔層(201)(301)を構成するアルミニウム箔としては、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔のいずれでもよく、また、軟質、硬質のいずれでもよいが、例えば、JIS H4160で分類されるA8000系(特に、A8079HやA8021H)の焼鈍処理済の軟質材(O材)であれば、成形性に優れているので、好適に用いることができる。
アルミニウム箔層(201)(301)を構成する上記アルミニウム箔の両面には、必要に応じて、化成処理などの下地処理を行う。具体的には、例えば、脱脂処理を行ったアルミニウム箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
上記化成処理によりアルミニウム箔層(201)(301)表面に形成される皮膜は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m~50mg/mとするのが好ましく、特に、2mg/m~20mg/mとするのが好ましい。
なお、アルミニウム箔として軟質材を使用する場合には、化成処理の前処理として、必ずしも脱脂処理を行うことを要しない。
【0021】
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、容器(1)の内外面を構成するものであって、アルミニウム箔層(201)(301)を保護するとともに、積層体(20)(30)に成形性を付与する役割を担うものであり、また、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合の際に熱融着層として機能するものである。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、通常、例えば、熱融着性を有するポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルム等の汎用性を有するポリオレフィン系フィルム、または、これらを貼り合わせた複合フィルムによって構成されるが、とりわけ、耐熱性や絞り成形性に優れている無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)が好適である。
また、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、変性ポリオレフィンよりなるフィルムまたはコート層によって構成することもできる。変性ポリオレフィンとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、チオマリン酸、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等のカルボン酸や、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水コハク酸等の無水カルボン酸により変性されたポリオレフィン(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、これらの共重合体等)が挙げられる。好ましくは、マレイン酸変性ポリオレフィンや無水マレイン酸変性ポリオレフィンが用いられる。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さは、5~80μmとするのが好ましく、10~60μmがより好ましい。熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さを上記範囲とすることによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合部や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合部において十分な接着強度を得ることができると共に、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ(21)によって構成されている部分の段差を緩やかにすることができ、蓋材で封緘した際の密封性が良好となる。
【0022】
アルミニウム箔層(201)(301)を構成するアルミニウム箔と、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を構成するフィルムとの積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介してドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン系接着剤が用いられる。
上記の接着剤層の存在により、例えば胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の熱融着性樹脂層(202)(203)が熱融着により減肉した場合でも、アルミニウム箔層(201)どうしが接触するのが回避されるので、シール性が保持される。また、上記の接着剤層があれば、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を透過する内容物が容器(1)に充填される場合であっても、アルミニウム箔層(201)(301)が腐食して内容物が漏れ出すのを回避することができる。
【0023】
なお、胴体用ブランク(20A)を構成する積層体(20)と、底体用ブランク(30A)を構成する積層体(30)とは、通常、同一のものが用いられるが、材質および/または厚さの異なるものとしてもよい。
【0024】
次に、上記積層体(20)(30)を使用して、コップ状容器(1)を形成する方法の一例を説明する。但し、この発明の特徴的構成であるアルミニウム箔層(201)の端面にベーマイト皮膜(M1)を形成する工程については、後述する。
まず、積層体(20)を所定サイズの扇形に打ち抜いて、胴体用ブランク(20A)を形成する(図5(a)参照)。
また、積層体(30)を所定サイズの円形に打ち抜いて、底体用ブランク(30A)を形成し(図6(a)参照)、このブランク(30A)を、金型(図示略)を用いて絞り成形加工することにより、底部(31)および垂下部(32)よりなる横断面略逆U形の底体(3)を成形する(図6(b)参照)。得られた底体(3)には、シワが生じていない。また、底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分は、角が出ている。
そして、略円錐台形の金型(図示略)の頂面に、底体(3)をその底部(31)上面が重なるようにセットしておいてから、上記金型の外周面に胴体用ブランク(20A)を巻き付けて、その両端縁部どうしをオーバーラップさせた後、同両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着させることにより、テーパ筒状の胴体(2)を成形する(図5(b)参照)。胴体用ブランク(20A)の両端縁部の熱融着は、通常、熱板を用いたヒートシールによって行われるが、高周波シールや超音波シール等によって行われてもよい。
次に、図7に示すように、胴体(2)の下端開口縁部を内側に折り返して、その折り返し部(22)を円盤状の回転金型(図示略)によって底体(3)の垂下部(32)に押し付けた後、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)と上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)とを熱融着させることにより、胴体(2)と底体(3)とを接合一体化させる。
また、胴体(2)の上端開口縁部を、所定のカール成形金型(図示略)を用いて外方にカールさせるとともに上下方向に加圧して2つ折りの偏平状に成形することにより、フランジ部(23)を形成する(図7参照)。
こうして、図1および図2に示すコップ状容器(1)が得られる。
【0025】
コップ状容器(1)の胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに熱融着された内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)の合計厚さ(T1)が8~150μmであるのが好ましく、より好ましくは16~80μmとなされる(図4参照)。上記合計厚さ(T1)が8μm未満であると、オーバーラップ部(21)のシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記合計厚さ(T1)が150μmを超えると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがある。
また、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部のアルミニウム箔層(201)(201)どうしの厚さ方向から見た重なり幅(W1)が2~10mmであるのが好ましく、より好ましくは4~8mmとなされる(図4参照)。上記重なり幅(W1)が2mm未満であると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがあり、また、シール幅が小さくなりすぎてシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記重なり幅(W1)が10mmを超えると、必要以上にオーバーラップ部(21)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、オーバーラップ部(21)の内側部分(胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204))と外側部分(胴体用ブランク(20A)の外端縁部(205))とにかかる応力の相違に起因して、オーバーラップ部(21)の内側部分にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
【0026】
この発明の実施形態に係るコップ状容器(1)の特徴的構成として、胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)において、アルミニウム箔層(201)の端面にベーマイト皮膜(M1)が形成されている。また、好ましくは、胴体用ブランク(20A)の全周縁部において、アルミニウム箔層(201)の端面にベーマイト皮膜(M1)が形成されている。さらに好ましくは、胴体用ブランク(20A)に加えて、底体用ブランク(30A)の全周縁部において、アルミニウム箔層(301)の端面にベーマイト皮膜(図示略)が形成されている。
【0027】
ここで、ベーマイト皮膜は、アルミニウムまたはその合金を高温水または加圧水蒸気中に保持することによって、その表面に生成されるアルミニウム水和酸化皮膜の一種であって、ベーマイト(Boehmite)と呼ばれる結晶構造を有している。一般的に、pHが中性ないし弱アルカリ性で、加熱温度が80℃以上の場合に、ベーマイトの生成が促進されるが、pH4.0以下または加熱温度80℃未満になると、バイヤライトの生成が促進される。ベーマイト皮膜の方が、バイヤライト皮膜よりも耐食性が良好である。
また、通常、乾いた室温の空気中では、アルミニウムの表面に自然酸化皮膜(厚さ:通常10Å)が生成されている。この自然酸化皮膜は、機械的な損傷を受けてもすぐに再生するため安定的であるが、水と接触することにより自己防食性が破壊されてしまう。これに対して、ベーマイト皮膜は、水と接触した場合でも防食性が失われない。
アルミニウムの表面にベーマイト皮膜を形成するための方法としては、以下の2つのベーマイト処理がある。
A)加圧蒸気処理
処理条件:飽和蒸気ゲージ圧力 1~5kg/cm(好ましくは2~4kg/cm
飽和蒸気温度 110~150℃(好ましくは120~140℃)
処理時間 10~60分(好ましくは15~40分)
ベーマイト皮膜厚さ:0.05~0.5μm(好ましくは0.1~0.4μm)
B)沸騰水処理
処理液:比抵抗5×10Ω・cm(好ましくは5×10Ω・cm以上)のイオン交換水にNHOH:0.3質量%を添加してなる弱アルカリ性溶液(pH7~12)
処理条件:処理温度 80~100℃(好ましくは90~100℃)
処理時間 10~60分(好ましくは20~50分)
ベーマイト皮膜厚さ:0.05~0.5μm(好ましくは0.1~0.4μm)
【0028】
上記コップ状容器(1)の場合、胴体用ブランク(20A)(および底体用ブランク(30A))におけるアルミニウム箔層(201)の端面(およびアルミニウム箔層(301)の端面)へのベーマイト皮膜(M1)の形成は、作製されたコップ状容器(1)に加圧蒸気処理を施すか、または、胴体(2)に成形する前の胴体用ブランク(20A)(および底体用ブランク(30A))に加圧蒸気処理または沸騰水処理を施すことによって行うことができる。
前者の方法による場合、コップ状容器(1)において露出しているアルミニウム箔層の端面、すなわち、通常、胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)におけるアルミニウム箔層(201)の端面にベーマイト皮膜(M1)を形成することができる。
また、後者の方法による場合、胴体用ブランク(20A)の所望の縁部または全周縁部(および底体用ブランク(30A)の全周縁部)において、アルミニウム箔層(201)の端面(およびアルミニウム箔層(301)の端面)にベーマイト皮膜(M1)を形成することができる。
アルミニウム箔層(201)の端面(およびアルミニウム箔層(301)の端面)に形成されるベーマイト皮膜(M1)の厚さは、0.05~0.5μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1~0.4μmである。べーマイト皮膜(M1)の厚さが0.05μmより薄い場合は良好な防食性が得られず、一方、同厚さが0.5μmより厚い場合は、著しい防食性向上は認められず、皮膜形成時間が長く必要となるため、生産性が低下し、コストアップとなる。
【0029】
この実施形態のコップ状容器(1)によれば、以下のような効果が奏される。
a)胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)のそれぞれが、アルミニウム箔層(201)(301)およびその両面に積層された熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)よりなる積層体(20)(30)から形成されているので、紙コップの製造設備を利用して安価に製造することができる。
b)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)がアルミニウム箔層(201)(301)を有しているので、内容物の長期保存性に優れている。
c)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を小さくすることができ、したがって、容器(1)のフランジ部(23)上面に蓋材をシールする際にシール不良が起こりにくい。また、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、フランジ部(23)上面の上記段差に殺菌液が残りにくくなる。
d)底体(3)が底体用ブランク(30A)を絞り成形してなるので、底体(3)にシワが発生せず、したがって、従来の紙コップのように底体(3)の垂下部(32)と胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)との接合不良が生じたり、バリア性の低下を招いたりするおそれがない。
e)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とを安定的に接合することができる。
f)紙コップと比べて底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分の曲率半径(アール)を小さくすることができるので、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、コップ状容器(1)の底体(3)上面と胴体(2)内面との境界部分に殺菌液が残りにくくなる。
g)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が紙層を有しないものであるので、レトルト殺菌を支障なく行うことができる。
h)胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)において、アルミニウム箔層(201)の端面がベーマイト皮膜(M1)によって被覆されているので、特に水分を含む内容物との接触等によりアルミニウム箔(201)の端面に腐食やデラミネーションが生じるのを確実に抑制することができる。また、胴体用ブランク(20A)の全周縁部において、アルミニウム箔層(201)の端面がベーマイト皮膜(M1)によって被覆されている場合には、胴体用ブランク(20A)のアルミニウム箔層(201)の端面全体における腐食やデラミネーションの発生が効果的に抑制される。さらに、底体用ブランク(30A)の全周縁部において、アルミニウム箔層(301)の端面がベーマイト皮膜によって被覆されていれば、底体用ブランク(30A)のアルミニウム箔層(301)の端面全体における腐食やデラミネーションの発生が効果的に抑制される。
【実施例
【0030】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
厚さ100μmのアルミニウム箔(A8021H-O)の化成処理が施された両面に、それぞれ2液硬化型ウレタン系接着剤を約3g/m塗布して、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をドライラミネートした。そして、接着剤を硬化させるために所定のエージング処理を行うことにより、積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定形状に打ち抜いて、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを成形した。
そして、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを用いて、前述した実施形態と同一の工程により、図1および図2に示す形態のコップ状容器を作製した。
得られたコップ状容器は、厚さ100μmのアルミニウム箔を使用しているので、酸素や水蒸気の透過がほとんど無い、バリア性の良好な容器である。
なお、コップ状容器の寸法は下記の通りとした。
・コップ状容器上部の開口部の内径:65mm
・コップ状容器下部の内径:50mm
・フランジ部の幅:4mm
・コップ状容器の高さ:95mm
・コップ状容器の脚部(折り返し部)の高さ:6mm
次いで、得られたコップ状容器を、加圧蒸気処理装置の処理槽に入れて、飽和蒸気ゲージ圧力2kg/cm、飽和蒸気温度130℃、処理時間30分の条件にて、加圧蒸気処理を行った。この処理により、コップ状容器の胴体用ブランクの両端縁部において、アルミニウム箔の端面に、厚さ0.2μmのベーマイト皮膜を生成させた。
このベーマイト皮膜を有するコップ状容器を実施例1とした。
【0032】
<実施例2>
コップ状容器に加圧蒸気処理を行うことに代えて、胴体および底体に成形する前の胴体用ブランクおよび底体用ブランクに対して、沸騰水処理を行った。
沸騰水処理は、処理液として比抵抗5×10Ω・cmのイオン交換水にNHOH:0.3質量%を添加してなる弱アルカリ性溶液を使用し、処理温度100℃、処理時間30分の条件で行った。こうして、各ブランクの全周縁部におけるアルミニウム箔の端面に、厚さ0.3μmのベーマイト皮膜を生成した。
そして、上記以外は、実施例1と同様の要領でベーマイト皮膜を有するコップ状容器を作製し、これを実施例2とした。
【0033】
<比較例1>
実施例1で作製したコップ状容器に対して加圧蒸気処理を行わず、したがって、アルミニウム箔の端面にベーマイト皮膜が形成されていないコップ状容器を用意し、これを比較例1とした。
【0034】
<包装体サンプルの作製および耐食性等の検証>
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ20μmのアルミニウム箔(A8021H-O)、ヒートシール層を構成する厚さ30μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(CPP)を、この順序で、それぞれ2液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法で貼り合わせてなる積層体を形成し、この積層体を所定形状に打ち抜くことにより、蓋材を作製した。
次に、実施例1,2および比較例1のコップ状容器に、3質量%食塩水と醤油(キッコーマン社製)とを1:1の割合で混合してなる試験液を、フランジ部から10mm下方のレベルまで充填した。
そして、試験液入りの各コップ状容器のフランジ部に、上記蓋材をヒートシールすることにより、包装体サンプルを得た。
【0035】
得られた各包装体サンプルを、温度40℃の環境下で1週間保存した後、蓋材を開封して試験液を排出し、各コップ状容器における胴体の内側を目視で観察した。
実施例1,2のコップ状容器では、胴体用ブランクの内端縁部において、アルミニウム箔の端面に、醤油による着色が僅かに認められたが、腐食やデラミネーションの発生はなく、シール漏れ等の異常も見られなかった。
一方、比較例1のコップ状容器の場合、胴体用ブランクの内端縁部において、アルミニウム箔の端面に腐食の発生が認められ、また、シール漏れには至ってないが、アルミニウム箔とCPPとの間のデラミネーションが部分的に発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、例えば流動状食品や飲料等を内容物とするコップ状容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
(1):コップ状容器
(2):胴体
(2a):胴体の下端部
(21):オーバーラップ部
(23):フランジ部
(20A):胴体用ブランク
(20):積層体
(201):アルミニウム箔層
(202):内側熱融着性樹脂層
(203):外側熱融着性樹脂層
(3):底体
(31):底部
(32):垂下部
(30A):底体用ブランク
(30):積層体
(301):アルミニウム箔層
(302):上側熱融着性樹脂層
(303):下側熱融着性樹脂層
(M1):ベーマイト皮膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7