(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20240216BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20240216BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H05K5/06 E
H05K5/04
B60R16/02 610B
(21)【出願番号】P 2020008556
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 元
(72)【発明者】
【氏名】深町 聡
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220592(JP,A)
【文献】特開2019-078325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
H05K 5/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容し、挿入孔を有する筐体と、
前記筐体の外側から前記挿入孔に挿入し、前記筐体に圧着した状態で固定される挿入部品と、
前記筐体と前記挿入部品との間に介在し、前記挿入部品が前記筐体に固定された状態において、前記筐体と鋭角に当接
し、外周に沿って形成される溝部を有する、環状の弾性部材と
を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記挿入部品は、
前記筐体の内部の圧力を前記挿入孔を介して調節する防水性のフィルターを有すること
を特徴とする請求項
1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記筐体は、
金属によって構成されること
を特徴とする請求項1
または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記電子部品は、
車両を制御する制御部品であり、
前記筐体は、
前記車両の内部に搭載されること
を特徴とする請求項1
、2または3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
電子部品を収容し、横方向に挿入孔を有する筐体と、
前記挿入孔に挿入され、前記筐体に圧着した状態で固定される挿入部品と、
前記挿入部品に嵌めた状態で、左右が前記筐体と前記挿入部品との間に挟め込まれた環状の弾性部材と、
前記環状の弾性部材の外周に沿って形成され、前記筐体と鋭角に当接した溝部と
を備えた電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両に搭載された電子制御装置には、防水性が求められる一方で、筐体の内部圧力を外気圧と一定にするため、通気口を有するとともにかかる通気口を防水性のフィルタで覆ったものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電子制御装置では、筐体と、フィルタユニットとの間にOリングなどの弾性部材を挟むことで、密閉性を向上させ、防水性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、弾性部材と、筐体との間に塩水などが溜まり、筐体の腐食を招くおそれがあった。一方で、筐体の表面処理を施すことで耐腐食性を向上させることも可能であるが、コストの増大を招くため好ましくない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、筐体の腐食を抑制することができる電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る電子制御装置は、筐体と、挿入部品と、環状の弾性部材とを備える。前記筐体は、電子部品を収容し、挿入孔を有する。前記挿入部品は、前記筐体の外側から前記挿入孔に挿入し、前記筐体と圧着した状態で固定される。前記環状の弾性部材は、前記筐体と前記挿入部品との間に介在し、前記挿入部品が前記筐体に固定された状態において、前記筐体と鋭角に当接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筐体の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、電子制御装置の外観の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、弾性部材の外観の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、設置時における弾性部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる電子制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を用いて、実施形態に係る電子制御装置の概要について説明する。
図1は、電子制御装置の外観の一例を示す図である。なお、以下では、電子制御装置が車両のエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)である場合を例に挙げて説明する。
【0012】
図1に示すように、電子制御装置1は、筐体10と挿入部品20とを備える。筐体10は、エンジンを制御するための電子部品(不図示)を収容するとともに、挿入部品20が挿入される挿入孔(不図示)を有する。
【0013】
また、筐体10は、例えば、アルミニウムなどの金属で構成されるとともに、その表面に陽極酸化処理などの各種表面処理が施される。このように、筐体10を熱伝導性が比較的高い金属で構成することにより、筐体10内部の熱を筐体10から効率よく放出することができる。
【0014】
また、
図1に示す例において、筐体10にコネクタの接続口や筐体10内部の熱を排出するためのフィンなどが更に設けられる場合を示す。なお、
図1に示す筐体10の外観は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0015】
挿入部品20は、筐体10に設けられた挿入孔に挿入され、筐体10に圧着した状態で固定される。例えば、挿入部品20の一部は、筐体10内部の圧力を調節する防水性のフィルタ(不図示)で構成される。
【0016】
防水性のフィルタは、微細な通気口が形成され、空気を通過させるものの、水や油などを弾くフィルタである。したがって、筐体10の挿入孔の一部を防水性のフィルタで覆うことで、筐体10内部の防水性を確保しつつ、筐体10内部の通気性を確保することができる。
【0017】
ところで、一般的に、筐体の挿入孔に挿入部品を固定する際には、筐体と挿入部品との間に、Oリングなどの弾性部材を挟むことで、挿入孔の気密性を確保する。しかしながら、筐体とOリングとの間に、塩水が付着した状態が続くと、塩水によって筐体の腐食をまねくおそれがある。例えば、筐体表面を陽極酸化処理などの表面処理を施すことで、筐体の耐腐食性を向上させることも可能であるが、コストが増加するため好ましくない。
【0018】
そこで、実施形態に係る電子制御装置1では、筐体10表面に付着した塩水を弾性部材から排水させることとした。つまり、実施形態に係る電子制御装置1は、一般的なOリングではなく、外周の形状に特徴を有する弾性部材を用いることで、筐体10表面に付着した塩水を排水させることとした。
【0019】
図2は、弾性部材の形状の一例を示す図である。実施形態に係る弾性部材30は、例えば、ゴムや樹脂などといった所定の弾性を有する材質によって構成される。
図2に示すように、弾性部材30は、貫通孔31と、溝部32とを備える。貫通孔31は、挿入部品20が挿入される穴である。また、
図2の例においては、貫通孔31が、内側に行くにしたがって口径が広くなる形状である場合を示すが、貫通孔31の形状は、かかる形状に限られるものではなく円柱状であってもよい。
【0020】
溝部32は、弾性部材30の外周に弾性部材30の円周方向に沿って形成された溝である。
図2に示す例では、溝部32が、湾曲した形状であり、弾性部材30の外周の中央に行くにしたがって溝が徐々に深くなる場合について示す。
【0021】
次に、
図3および
図4を用いて、固定された状態における弾性部材30の形状について説明する。
図3は、
図1に示すA-A線に沿う断面模式図である。
図4は、固定された状態における弾性部材30の模式図である。
【0022】
図3に示す例において、挿入部品20は、フィルタ部21と、鉤部22とを備える。フィルタ部21は、上述のように、防水性のフィルタによって構成される。例えば、フィルタにゴミなどが蓄積されるのを防ぐ観点から、防水性のフィルタは、所定の隙間を介して全体がカバーなどで覆われていることが好ましい。
【0023】
鉤部22は、挿入部品20を筐体10に固定するための鉤であり、
図3に示すように、鉤部22を筐体10の挿入孔に引っ掛けることで、挿入部品20が筐体10に固定される。なお、筐体10の気密性を確保する観点から、筐体10と挿入部品20とを圧着させた状態で固定することが好ましい。
【0024】
また、
図3に示すように、筐体10と、挿入部品20との間には、弾性部材30が介在する。弾性部材30によって、筐体10と、挿入部品20との間に生じる隙間を埋めることができ、筐体10内部の気密性を確保することができる。
【0025】
また、
図4に示すように、本実施形態において、弾性部材30に溝部32を有することから、筐体10に対して弾性部材30は鋭角に当接する。ここで、筐体10に対して弾性部材30が鋭角に当接するとは、筐体10と、弾性部材30との
図4に示す接触角θが90°より小さいことを示す。
【0026】
なお、仮に、弾性部材30において、溝部32の先端(筐体10と接触する箇所)がつぶれていたとしても、溝部32自体が形成されていれば、接触角θが90°より小さいものとし、筐体10に対して弾性部材が鋭角に当接する条件を満たすものとする。
【0027】
これにより、例えば、筐体10と弾性部材30との境界に存在する水滴は、溝部32を伝って溝部32の最深部へ流れることになる。つまり、弾性部材30に溝部32を設けることで、筐体10と弾性部材30との境界に水滴が留まりにくく、塩水による筐体10の腐食を抑えることが可能となる。
【0028】
また、上述のように、筐体10と、挿入部品20とは圧着した状態で固定されるため、
図4に示すように、弾性部材30には、筐体10および挿入部品20の双方から圧縮力Fが加わることになる。
【0029】
したがって、弾性部材30は、圧縮力Fに対する反力(圧縮力Fに対して逆向きに働く力)によって筐体10と圧着した状態を保持することができる。なお、弾性部材30は、固定時において、溝部32が形成されればよく、固定されていない状態においては、溝部32はなくてもよい。すなわち、弾性部材30は、圧縮力Fによって、溝部32が形成されれば、その他の構造であってもよい。
【0030】
また、
図4の例では、弾性部材30が、筐体10に加えて、挿入部品20に対しても、鋭角に当接する場合について示したが、これに限定されるものではない。すなわち、挿入部品20の塩水による腐食を考慮しない場合には、挿入部品20に対して弾性部材30が鈍角に当接することにしてもよい。
【0031】
すなわち、溝部32の形状は、上記の例に限られるものではなく、例えば、弾性部材30が筐体10に対して鋭角に当接すれば、その他の形状であってもよい。例えば、溝部32がV字形状であってもよいし、筐体10から挿入部品20に向かってスロープ形状であってもよい。
【0032】
この際、溝部32をどのような形状にするかは、例えば、弾性部材30の作りやすさや、製造コストを考慮して、適宜、決定することとすればよい。また、例えば、円柱状の弾性部材の中央部を径方向に縛るなどして、弾性部材30を製造することにしてもよい。
【0033】
なお、
図2に示したように、溝部32に対称性を持たせることで、弾性部材30の取り付け向きを確認する必要がないので、弾性部材30の取り付け作業を容易にすることが可能である。
【0034】
上述したように、実施形態に係る電子制御装置1は、筐体10と、挿入部品20と、環状の弾性部材30とを備える。筐体10は、電子部品を収容し、挿入孔を有する。挿入部品20は、筐体10の外側から挿入孔に挿入し、筐体10に圧着した状態で固定される。環状の弾性部材は、筐体10と挿入部品20との間に介在し、挿入部品20が筐体10に固定された状態において、筐体10と鋭角に当接する。
【0035】
したがって、実施形態に係る電子制御装置1によれば、筐体10の腐食を抑制することができる。特に、実施形態に係る電子制御装置1においては、筐体10表面に陽極酸化処理などの表面処理が不要となるので、安価に筐体10の腐食を抑制することが可能となる。
【0036】
ところで、上述した実施形態では、電子制御装置1が、車両に搭載されるエンジンECUである場合について説明した。しかしながら、電子制御装置1は、エンジンECUに限定されるものではなく、その他の電子制御装置であってもよい。特に、風雨にさらされる環境下に設置される種々の電子制御装置に本発明を適用することで、電子制御装置内部の防水を容易に確保することができる。
【0037】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 電子制御装置
10 筐体
20 挿入部品
21 フィルタ部
22 鉤部
30 弾性部材
31 貫通孔
32 溝部