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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】鎮痒効能を有する皮膚局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240216BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240216BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/44
A61Q19/00
A61K31/205
A61K36/185
A61P17/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020009012
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021020884
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】201910694724.3
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519100321
【氏名又は名称】ヤンシェンタン(アンジ)・コスメティックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シーチー
(72)【発明者】
【氏名】ニン、シンジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャシャ
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108670878(CN,A)
【文献】特表2019-519549(JP,A)
【文献】特開2008-074796(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107184411(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105878119(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0006047(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103565705(CN,A)
【文献】特許第7329474(JP,B2)
【文献】特開2006-131546(JP,A)
【文献】特開2001-58920(JP,A)
【文献】ID 2614303,DATABASE GNPD [ONLINE], MINTEL,2014年08月
【文献】Science and Technology of Food industry,2002年,Vol.23, No.10,p.62-63
【文献】ID 1427977,DATABASE GNPD [ONLINE], MINTEL,2010年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 37/02
A61P 37/08
A61P 43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痒効能を有する皮膚局所組成物の調製におけるベタインとカバノキ樹液の組み合わせの使用であって、この皮膚局所組成物は別個の成分として添加された水を含まず、
前記カバノキ樹液が、1.1~4倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、
上記使用。
【請求項2】
前記カバノキ樹液が、.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記皮膚局所組成物が医薬組成物または化粧品組成物である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
(A)カバノキ樹液および(B)ベタインの組み合わせを含む、鎮痒効能を有する皮膚局所組成物であって、別個の成分として添加された水を含まず、
前記カバノキ樹液が、1.1~4倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、
上記皮膚局所組成物。
【請求項5】
前記カバノキ樹液が、.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
医薬組成物または化粧品組成物である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、5~99.9重量%カバノキ樹液を含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項8】
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、20~95重量%のカバノキ樹液を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%ベタインを含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項10】
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%のベタインを含む、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)カバノキ樹液および(B)ベタインの組み合わせを含む、鎮痒効能を有する皮膚局所組成物に関し、この皮膚局所組成物は、別個の成分として添加される水を含まない。
【背景技術】
【0002】
年齢とともに、人間の皮脂腺の機能は次第に低下し、水分を保持する皮膚の能力は低下し始める。秋と冬が来ると、多くの人が皮膚の痒みを感じる。さらに、湿疹、乾癬、皮膚炎、乾燥肌、その他の皮膚疾患も痒みを伴い、これは患者の健康と生活の質に深刻な影響を及ぼす。患者がひっかきすぎると、患部はひっかき傷で覆われ、皮膚の外観に影響を与え、皮膚感染や潰瘍を引き起こすことさえある。したがって、長期間使用できる痒みを効果的に緩和できる皮膚局所製剤(皮膚外用製品)、特に長期間使用できる化粧品またはスキンケア製品を開発することが非常に必要である。
【0003】
現在、皮膚の痒みのメカニズムは完全には明らかにされていない。近年の研究では、皮膚の痒みの発生は、ヒスタミン、セロトニン、神経ペプチド、サイトカインなどのいくつかのメディエーターの関与に関係している可能性があることが示されている。その中でも、ヒスタミンは主に肥満細胞の異染性顆粒に存在し、皮膚血管にはHおよびH受容体があり、ヒスタミンによって引き起こされる血管拡張と血管透過性の増加は2つの受容体に因る。ヒスタミンは、表皮または基底膜の痒みを引き起こし、また真皮に放出されながら痛みと浮腫を引き起こす。したがって、肥満細胞の活性化と脱顆粒を阻害し、それによってヒスタミンの放出を減らすと、皮膚の痒みを緩和することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝統的な中国の医薬治療法には、不便な使用、貧弱な経皮吸収、未知の治療メカニズムなどの欠点がある。ホルモン製品は短期間しか使用できず、長期間使用すると明らかな副作用と依存性があるため、日常のケアとして使用することはできない。上記の問題を考慮して、本発明は、痒みメディエーターであるヒスタミンの放出を根本的に阻害し、それにより効果的に痒みを緩和することができる皮膚局所用組成物、特に化粧用組成物を提供する。この組成物はさまざまな化粧品製剤に適用でき、良好な鎮痒効能を持ちながら、便利な使用、容易な吸収、および長期使用の利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、鎮痒効能を有する皮膚局所組成物におけるカバノキ樹液とベタインの組み合わせの使用に関し、この皮膚局所組成物は、別個の成分として添加される水を含まない。
【0006】
別の態様において、本発明は、(A)カバノキ樹液および(B)ベタインの組み合わせを含む、鎮痒効能を有する皮膚局所組成物を提供し、この皮膚局所組成物は、別個の成分として添加される水を含まない。
【0007】
皮膚局所組成物には、医薬組成物および化粧品組成物、特に化粧品組成物、より具体的にはスキンケア化粧品組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
本発明による皮膚局所用組成物は、肥満細胞からのヒスタミンの放出を阻害することができ、したがって、皮膚の痒みを緩和および阻害する良好な効果を有する。水系、またはカバノキ樹液のみを含む水系、またはベタインのみを含む水系と比較して、本発明による皮膚局所組成物は、抗ヒスタミン効能を著しく改善し、カバノキ樹液とベタインの組み合わせが無水系で相乗効果を生じたことを示す。
【0009】
本発明による皮膚局所組成物は、追加された水成分を一切含まないが、使用されるカバノキ樹液中の固有の水分または他の成分から不可避的に導入される少量または微量の水までも排除しない。
【0010】
一実施形態では、本発明による皮膚局所組成物は、EDTA塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、およびグルコン酸などのキレート化剤を含まない。
【0011】
本発明に関与するカバノキは、カバノキ属カバノキ科に属し、シラカバ、ヨーロッパダケカンバ、およびシラカンバの3つの品種に由来するものであってよい。
【0012】
成分(A)のカバノキ樹液は、カバノキジュース、ホワイトバーチ樹液などとも称される。カバノキ樹液は、糖分、脂肪酸、アミノ酸、ミネラル成分などを含む栄養素が豊富であり、その採集時期は、雪が溶け始めてから木が葉に覆われるまでである。採集中、地面から40~60cm離れたカバノキの幹に小さな穴を穿ち、液体誘導装置を導入する。カバノキ樹液は、沈殿物または不純物のない無色透明で栄養価の高いカバノキ樹液を得るために、従来の方法で採集、ろ過、および滅菌される。カバノキ樹液は、Daxinganling Chaoyue Wild Berry Development Co.,Ltd.から市販されている。
【0013】
本発明では、カバノキ樹液をそのまま使用してもよく(この場合、カバノキ樹液原液とも呼ばれる)、またはカバノキ樹液濃縮物の形態で使用してもよい(濃縮カバノキ樹液とも呼ばれる)。
【0014】
本発明者らは、1.05~8倍、好ましくは1.1~4倍、より好ましくは1.2~2倍の濃縮度を有するカバノキ樹液濃縮物とベタインとの組み合わせが、非濃縮カバノキ樹液原液とベタインとの組み合わせと比較して、皮膚の痒みを緩和するより良好な効能を示すことを見出した。
【0015】
カバノキ樹液を濃縮する方法は、次のとおりである:
新鮮なカバノキ樹液原液を逆浸透循環装置に導入し、操作圧力を0.5~5bar、温度を20~35℃に制御し、次いで、-65℃に冷却し、0.1Paに減圧し、カバノキ樹液がそれぞれ1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、4倍、8倍などの程度に濃縮するまで循環させる。
【0016】
本発明による皮膚局所組成物は、皮膚局所組成物の総重量に基づいて、5~99.9重量%、好ましくは20~95重量%、より好ましくは35~90重量%のカバノキ樹液を含む。
【0017】
トリメチルグリシンとしても知られる成分(B)ベタインは、水と容易に相互作用し、優れた保湿性能を備えている。本発明で使用されるベタインは、Connell Bros.(Shanghai)Co.,Ltd.などから入手可能である。
【0018】
本発明による皮膚局所組成物は、皮膚局所組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは1~10重量%のベタインを含む。
【0019】
上記成分(A)および(B)に加えて、本発明による皮膚局所組成物は、任意選択で、(C)医薬組成物または化粧品組成物で一般的に使用される成分、例えば、ビヒクル(vehicle)、界面活性剤、スキンケア活性成分(有効成分)、医薬活性成分(有効成分)、ならびに、当技術分野で公知の賦形剤および他の成分を含んでよく、それらの種類および量は、必要に応じて選択することができる。典型的には、成分(C)の含有量は、皮膚局所組成物の総重量に基づいて0~65重量%である。
【0020】
ビヒクルは、当技術分野で公知であり、希釈剤、分散剤、または担体(キャリア)を含むがこれらに限定されない。例には、エタノール、ブタンジオール、ジプロピレングリコールなどが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、必要に応じてそれらの種類および量を選択することができる。典型的には、ビヒクルは、成分(C)の総重量に基づいて、0.5~20%の量で本発明の皮膚局所組成物中に存在する。
【0021】
界面活性剤は、界面の表面張力を低下させ、系の洗浄化、乳化、および安定化の目的を達成するために、医薬品または化粧品で一般的に使用される任意の種類の界面活性剤である。界面活性剤の例には、脂肪酸の石鹸(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウムなど)、高級アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、N-アシルサルコシン(例、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムなど)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例、ラウリルメチルタウリン酸ナトリウムなど)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステル硫酸塩(例、硬化ココナッツ油脂肪酸グリセリンナトリウム硫酸塩など) グルタミン酸N-アシル、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノイソステアラート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンセスキオレアート)、グリセロールポリグリセロール脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノエルカート、グリセリルセスキオレアート、グリセリルモノステアラート、グリセリルモノステアラートマレアートなど)、PEG-脂肪酸エステル(例:PEG-ジステアラート、エチレングリコールジステアラートなど)、PEG-アルキルエーテル(例:PEG-2-オクチルドデシルエーテルなど)、ショ糖脂肪酸エステル等の1種または複数種が挙げられるが、これらに限定されない。それらの種類および量は、必要に応じて当業者によって選択され得る。典型的には、界面活性剤は、成分(C)の総重量に基づいて0.01~50%の量で本発明の皮膚局所組成物中に存在する。
【0022】
スキンケア活性成分は当技術分野で知られており、保湿剤、スキンコンディショナー、皮膚軟化剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
保湿剤の例としては、グリセリン、トレハロース、スクロース、パンテノール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、マンニトール、グリセリンポリエーテル-26、ラムノース、ラフィノース、エリスリトール、ポリエチレングリコール-8、ポリエチレングリコール-32、メチルグルシトールポリエーテル-10、メチルグルシトールポリエーテル-20、PEG/PPG-17/6コポリマー、ポリグルタミン酸ナトリウム、キシリトール、尿素、加水分解スクレロチウムガム、ポリグルタミン酸ナトリウム、グリセリルグルコシド、PPG-10メチルグルコースエーテル、プルラン、トレメラム、PPG-20メチルグルコースエーテルなどの1種または複数種が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、保湿剤は、本発明の皮膚局所組成物中に、成分(C)の総重量に基づいて1~30%の量で存在する。
【0024】
皮膚軟化剤の例としては、グリセロールトリエチルヘキサノアート、カプリル酸/カプリン酸グリセリル、グレープシードオイル、メドウフォームシードオイル、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、セチルアルコール、ポリジメチルシロキサン、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノアート、オリーブ油、アボカド油、コーン油、炭酸ジオクチル、ホモサラート、スクアラン、ステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチルアルコール、水素化ポリデセン、オオミテングヤシ果実油、ヒマワリ種子油、イソヘキサデカン、ホホバ油、ラノリン、パラフィン、微結晶ワックス、蜜蝋など挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、皮膚軟化剤は、成分(C)の総重量に基づいて0.01~50%の量で本発明の皮膚局所組成物中に存在する。
【0025】
スキンコンディショナーは、保湿、抗しわ作用、抗そばかす作用、抗にきび作用、油分制御などのために使用できる。その例には、グルタミン酸フィトステリル/オクチルドデシルラウロイル、ウコンロンガ、セラミド2、セラミド3、アセチルフィトスフィンゴシン、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルフィトスフィンゴシン、コレステロール、コウジ酸、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、アラントイン、カバノキ樹皮抽出物(エキス)、水素化レシチン、アルブチン、トラネキサム酸、ニコチンアミド、アセチルフィトスフィンゴシン、プロチキンレスベラトロール、プテロカルプスマルスピウムエキス、プレクトランサス・バルバツスルートエキス、ドラゴサントール、アスコルビン酸テトライソパルミタート、コショウ種子エキス、ユビキノン、ピリドキシンジパルミタート、ピリドキシンジカプリラート、レチニルパルミタート、トコフェリルアセタート、アベナサティバ抽出物などの1種または複数種が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、皮膚コンディショナーは、本発明の皮膚局所組成物中に、成分(C)の総重量に基づいて0.01~50%の量で存在する。
【0026】
医薬活性成分は、皮膚の痒みを緩和するための当技術分野で知られているものである。例としては、ソフォラフラベセンス抽出物、ペオノール、リナロール、シネオテ、ボルネオール、硫黄、セミ、イヌ科抽出物、スクテラ抽出物、ビストルト抽出物、シソ抽出物、カラミン、サプナッツサポニン、スベリヒユ抽出物、グリチルリチン酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、医薬活性成分は、本発明の皮膚局所組成物中に、成分(C)の総重量に基づいて0.01~80%の量で存在する。
【0027】
賦形剤には、乳化剤、増粘剤、防腐剤(保存料)、香料、pH調整剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
乳化剤の例としては、ソルビタンオリバート、ステアレス-21、PEG-60硬化ヒマシ油、グリセロールステアラート/PEG-100ステアラート、PPG-13-デシルテトラデセス-24、セテアリルグルコシド、ポリグリセリル-10ミリスチン酸、セテアリルグルコシド、ポリグリセリル-10ステアラート、ポリグリセリル-10ジオレアートなどの1種または複数種が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、乳化剤は、本発明の皮膚局所組成物中に、成分(C)の総重量に基づいて0.01~10%の量で存在する。
【0029】
増粘剤の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、キサンタンガム、アラビアゴム、ポリエチレングリコール-14M、ポリエチレングリコール-90M、スクシニル多糖類、アクリラート/C10-30アルキルアクリラート・クロスポリマーなどの1種または複数種が挙げられるが、これらに限定されない。その種類および量は、必要に応じて当業者によって選択され得る。
【0030】
防腐剤の例としては、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クロロフェネシン、および、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、p-ヒドロキシアセトフェノン等の他の防腐相乗剤などの1種または複数種が挙げられるが、これらに限定されない。典型的に、防腐剤は、本発明の皮膚局所組成物中に、成分(C)の総重量に基づいて0.01~10%の量で存在する。
【0031】
pH調整剤の例としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アルギニン、トリエタノールアミンなどの1つまたは複数種が挙げられるが、これらに限定されない。それらの種類および量は、必要に応じて当業者によって選択され得る。
【0032】
本発明による皮膚局所組成物は、当技術分野で知られている適切な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、それは、溶解タンク、乳化ポット、分散機、移送ポンプなど、当技術分野で一般的に使用される容器を使用して調製することができる。調製中、水溶性物質は水相溶解ケトルに入れられ、油溶性物質は油相溶解ケトルに入れられ、2つのケトルはそれぞれ約80℃に加熱される。凝集した原材料の場合、分散機を使用して事前に分散させることができる。溶解が完了すると、油相と水相を乳化ポットに移し、約5~15分間均質化し乳化する。乳化が完了したら、全体を室温まで冷却し、任意選択で香料、防腐剤などを加え、必要に応じて製品のpHを調整する。
【0033】
上記の調製方法は、剤形の要件に応じて変更または調整できる。液体、ローション、軟膏、クリーム、またはゲルなどの医薬組成物または化粧品組成物のさまざまな剤形を必要に応じて調製することができ、化粧品組成物は、ローション、スプレー、乳液、原液、BBクリーム、日焼け止めなどのさまざまな形態であってもよい。
【実施例
【0034】
本発明は、特定の実施形態を参照して以下でさらに詳細に説明される。本明細書に記載された特定の実施形態は、本発明をより詳細に説明するためにのみ使用され、本発明を限定する意図ではないことを理解されたい。同様の置換および修正はすべて当業者には明らかであり、それらはすべて本発明の範囲に含まれるとみなされる。
【0035】
例1:
実験サンプルと対照サンプルの調製
この実施例では、以下の配合を有する組み合わせサンプルが調製され、ここで、組み合わせA-1、A-2、およびA-3は本発明の範囲内であり、組み合わせB-Eは対照である。
【0036】
【表A】
【0037】
上記配合物の調製手順は以下の通りであった:
カバノキ樹液原液、濃縮カバノキ樹液または水を80℃に加熱し、ベタインを添加し、後で使用するために均一に撹拌した。得られたサンプルは、すべて無色透明の溶液であった。
【0038】
例2:
RBL-2H3細胞からのヒスタミン放出に関する実験および対照サンプルの効果
RBL-2H3細胞からのヒスタミンの放出についての上記で調製したサンプルA~Eの効果を、以下の試験方法に従って試験した。
【0039】
実験原理:
化合物48/80(N-メチル-p-メトキシフェニルエチルアミンとホルムアルデヒドとの縮合によって生成されたポリマー)は、脂肪細胞の脱顆粒を誘発するツール薬である。そのメカニズムは、当該化合物が脂肪細胞膜に作用し、セカンドメッセンジャーcAMPおよびcGMPの量を変化させる細胞内カルシウムイオンの増大を誘発して、脂肪細胞の脱顆粒およびヒスタミン放出をもたらすことである。
【0040】
実験材料:
RBL-2H3細胞株は、Zhejiang医科学アカデミーの動物センターから提供された。試験サンプルには、上記の7つのサンプルの組み合わせが含まれていた。試薬には、ウシ胎児血清、タイロード(Tyrode)塩、化合物48/80、およびヒスタミンElisaキットが含まれていた。
【0041】
【表B】
【0042】
実験結果:
実験結果は、以下の表1に要約される。
【0043】
【表1】
【0044】
細胞実験の上記結果は、本発明の範囲内の組み合わせA-1、A-2およびA-3が、対照の組み合わせB-Eと比較してヒスタミン放出量を有意に減少させたことを示す。これは、カバノキ樹液とベタインの組み合わせ、または濃縮カバノキ樹液とベタインの組み合わせがヒスタミン放出の抑制に相乗効果を有し、1.3倍の濃縮カバノキ樹液とベタインの組み合わせがさらに良好な効果を奏したことを示す。
【0045】
例3:脂肪細胞からのインターロイキン-4(IL-4)の放出についての実験サンプルおよび対照サンプルの効果
【0046】
以下の試験方法に従って、脂肪細胞からのIL-4の放出についての上記で調製した7個のサンプルA~Eの効果を試験した。
【0047】
実験原理:
特定の抗原は細胞膜に結合したIgE抗体と架橋し、細胞の活性化と、肉芽に関連する炎症性メディエーター(ヒスタミン、IL-4、IL-13など)の迅速な分泌とをもたらす。免疫誘発に加えて、脂肪細胞の脱顆粒反応は、抗IgE、化合物48/80などの非特異的誘発剤によって引き起こされる可能性があり、これらの薬剤はIgE放出メディエーターに依存するものと同様の特性を示す。この研究では、化合物48/80を使用して脂肪細胞を刺激し、炎症性メディエーターIL-4を脱顆粒および放出させて、脂肪細胞のアレルギー反応に対する試験サンプルの保護効能を調べた。
【0048】
実験材料:
脂肪細胞は、Zhejiang医科学アカデミーの動物センターから提供された。試薬には、ウシ胎児血清、RPM1640培地、タイロード塩、化合物48/80、クロモグリク酸ナトリウム、およびElisa(インターロイキン4)キットが含まれていた。試験サンプルには、対照グループ、モデルグループ、ポジティブ薬剤(クロモグリク酸ナトリウム)グループ、および上記7個のサンプルA-Eが含まれていた。
【0049】
実験方法:
RPMI1640培地を使用して各サンプルを準備し、各サンプルに8つの複製ウェルを用意した。脂肪細胞を96ウェル培養プレートに5×10/mLの密度でウェルあたり90μLで接種し、10μL/ウェルの対応するサンプルを加えた。37℃の5%COインキュベーターで培養し、4時間後に取り出した。対照グループに加えて、他のグループには化合物48/80の刺激(最終濃度20mg/L)を加え、37℃のインキュベーターで2時間インキュベートし続け、その後1500rpmで5分間遠心分離して上清を得た。そして、上清中のIL-4の含有量は、エリサ(インターロイキン-4)キットによって検出された。
【0050】
実験結果:実験結果を以下の表2に要約する。
【0051】
【表2】
【0052】
これらの結果は、本発明の範囲内の組み合わせA-1、A-2およびA-3が全て、脂肪細胞を刺激する化合物48/80によって引き起こされるIL-4放出を有意に阻害したことを示す(p<0.05)。これは、カバノキ樹液とベタインの組み合わせ、または濃縮カバノキ樹液とベタインの組み合わせが、IL-4放出の阻害に相乗効果を有し、1.3倍の濃縮カバノキ樹液とベタインの組み合わせがさらに良好な効果を奏したことを示す。
【0053】
例4:
鎮痒効能を有するスプレー組成物の調製
この例は、鎮痒効能を有するスプレー組成物を提供し、その配合は以下のとおりであった:
【0054】
【表C】
【0055】
上記のスプレー組成物は以下のように調製された:
1.カバノキの樹液を80℃に加熱し、ベタイン、クエン酸、グリセリン、ヒドロキシ安息香酸メチル、ブタンジオールおよびペンタンジオールを順に加えて混合し、攪拌して均一に溶解した。
2.グルタミン酸フィトステリル/オクチルドデシルラウロイル、グリセロールトリエチルヘキサノアート、グリセリンポリエーテル-26、およびPEG-60硬化ヒマシ油を80℃に加熱し、均一に攪拌した後、上記項目1で得た混合物を加えた。
3.得られたものを40℃まで冷却し、フェノキシエタノールを加えた後、アルギニンでpHを調整して排出した。
【0056】
効能試験:
老人性掻痒症があり、痒みのみがあり、皮膚病変がない、男性または女性の、40歳を超えた30人の患者が選ばれた。上記のスプレー組成物は、毎朝および毎夕に洗浄した後に痒み部位に適用された。組成物の使用の前および4週間後、痒みについて自己評価を実施し、改善の程度に応じて、大幅な改善、明らかな改善、ある程度の改善、有意な改善なし、および改善なしにランク付けした。その結果、27人の患者(90%)が製品使用後に痒みの大幅な改善を示し、他の3人の患者もある程度の改善を示した。これは、スプレー組成物が優れた鎮痒効能を奏したことを示す。
【0057】
例5:
鎮痒効能を有するローション組成物の調製
この例は、鎮痒効能を有するローション組成物を提供し、その配合は以下のとおりであった:
【0058】
【表D】
【0059】
上記のローション組成物は次のように調製された。
1.水相:カバノキ樹液、グリセリン、ベタイン、パンテノール、アラントイン、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、ペンタンジオール、キサンタンガム、カルボマーおよびヒドロキシ安息香酸メチルを混合し、80℃に加熱し、撹拌し、均一に溶解させる。
2.油相:セチルアルコール、ステアリン酸グリセロール/PEG-100ステアリン酸、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、トリエチルヘキサン酸グリセロール、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)。上記の原料を80℃に加熱し、攪拌して均一に溶解させた。
3.水相と油相を混合し、均質化し、5分間乳化した。乳化が完了したら、アルギニンを加え、15分間撹拌し、40℃に冷却し、フェノキシエタノールを加えた。
【0060】
効能試験:
掻痒症があり、痒みのみがあり、皮膚病変がない、男性または女性の、40歳を超えた30人の患者が選ばれた。上記のローション組成物は、毎朝および毎夕に洗浄した後に痒み部位に適用された。組成物の使用の前および4週間後、痒みについて自己評価を実施し、改善の程度に応じて、大幅な改善、明らかな改善、ある程度の改善、有意な改善なし、および改善なしにランク付けした。その結果、28人の患者(93.3%)が製品使用後に痒みの大幅な改善を示し、他の2人の患者もある程度の改善を示した。これにより、ローション組成物が優れた鎮痒効能を奏したことが分かった。
【0061】
例6:
鎮痒効能を有するボディミルク組成物の調製
この例は、鎮痒効能を有するボディミルク組成物を提供し、その配合は以下のとおりであった:
【0062】
【表E】
【0063】
上記のボディミルク組成物は、次のように調製された。
1.水相:カバノキ樹液、グリセリン、ベタイン、パンテノール、アラントイン、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、ジプロピレングリコール、トレハロース、水素化レシチン、キサンタンガム、カルボマー、アクリラート/C10-30アルキルアクリラートクロスポリマーおよびヒドロキシ安息香酸メチルを混合して80℃に加熱し、攪拌して均一に溶解させた。
2.油相:ステアリン酸グリセロール/PEG-100ステアリン酸、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、蜜蝋、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、ポリジメチルシロキサン。上記の原料を80℃に加熱し、攪拌して均一に溶解させた。
3.水相と油相を混合し、均質化し、5分間乳化した。乳化が完了したら、トリエタノールアミンを加え、15分間撹拌し、40℃に冷却し、フェノキシエタノール、アベナサティバエキス、カプリリルグリコールおよびニコチンアミドを加えた。
【0064】
効能試験:
掻痒症があり、痒みのみがあり、皮膚病変がない、男性または女性の、40歳を超えた30人の患者が選ばれた。上記のローション組成物は、毎朝および毎夕に洗浄した後に痒み部位に適用された。組成物の使用の前および4週間後、痒みについて自己評価を実施し、改善の程度に応じて、大幅な改善、明らかな改善、ある程度の改善、有意な改善なし、および改善なしにランク付けした。その結果、29人の患者(96.7%)が製品使用後に痒みの大幅な改善を示し、他の1人の患者も明らかな改善を示した。これにより、ボディミルク組成物が優れた鎮痒効能を奏したことが分かった。
【0065】
例7:
鎮痒効能を有するクリーム組成物の調製
この例は、鎮痒効能を有するクリーム組成物を提供し、その配合は以下のとおりであった:
【0066】
【表F】
【0067】
上記のクリーム組成物は、次のように調製された。
1.水相:カバノキ樹液、ベタイン、グリセリン、パンテノール、アラントイン、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリンポリエーテル-26、キサンタンガム、カルボマー、ヒドロキシ安息香酸メチル;
2.油相:セチルアルコール、カプリル酸/カプリン酸グリセリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ステアリン酸グリセロール/PEG-100ステアリン酸、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシ安息香酸プロピル。上記の原料を80℃に加熱し、撹拌して均一に溶解させた;
3.水相と油相を混合し、均質化し、5分間乳化した。乳化が完了したら、アルギニンを加え、15分間撹拌し、40℃に冷却し、フェノキシエタノールとカプリリルグリコールを順番に加えた。
【0068】
効能試験:
掻痒症があり、痒みのみがあり、皮膚病変がない、男性または女性の、40歳を超えた30人の患者が選ばれた。上記のローション組成物は、毎朝および毎夕に洗浄した後に痒み部位に適用された。組成物の使用の前および4週間後、痒みについて自己評価を実施し、改善の程度に応じて、大幅な改善、明らかな改善、ある程度の改善、有意な改善なし、および改善なしにランク付けした。その結果、28人の患者(93.3%)が製品使用後に痒みの大幅な改善を示し、他の2人の患者も明らかな改善を示した。これにより、クリームローション組成物が優れた鎮痒効能を奏したことが分かった。
【0069】
上述の例の技術的解決策は、本発明の好ましい実施形態であり、添付の特許請求の範囲に対する限定を構成するものではない。本発明の本質および原理から逸脱することなく、様々な修正および変形を行うことができ、これらの修正および変形も本発明の範囲内であると見なされるべきである。
本発明の一態様を以下に示すが、本発明はそれに限定されない。
[発明1]
鎮痒効能を有する皮膚局所組成物におけるベタインとカバノキ樹液の組み合わせの使用であって、この皮膚局所組成物は別個の成分として添加された水を含まない、上記使用。
[発明2]
前記カバノキ樹液がカバノキ樹液原液である、発明1に記載の使用。
[発明3]
前記カバノキ樹液が、1.05~8倍、好ましくは1.1~4倍、より好ましくは1.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、発明1に記載の使用。
[発明4]
前記皮膚局所組成物が医薬組成物または化粧品組成物である、発明1~3のいずれか1項に記載の使用。
[発明5]
(A)カバノキ樹液および(B)ベタインの組み合わせを含む、鎮痒効能を有する皮膚局所組成物であって、別個の成分として添加された水を含まない、上記皮膚局所組成物。
[発明6]
前記カバノキ樹液がカバノキ樹液原液である、発明5に記載の組成物。
[発明7]
前記カバノキ樹液が、1.05~8倍、好ましくは1.1~4倍、より好ましくは1.2~2倍の濃縮度を有する濃縮カバノキ樹液である、発明5に記載の組成物。
[発明8]
医薬組成物または化粧品組成物である、発明5~7のいずれか1項に記載の組成物。
[発明9]
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、5~99.9重量%、好ましくは20~95重量%、より好ましくは35~90重量%のカバノキ樹液を含む、発明5~8のいずれか1項に記載の組成物。
[発明10]
前記皮膚局所組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは1~10重量%のベタインを含む、発明5~9のいずれか1項に記載の組成物。