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特許7437959修正フォトマスク、及び表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】修正フォトマスク、及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/72 20120101AFI20240216BHJP
   G03F 1/29 20120101ALI20240216BHJP
   C23C 16/16 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
G03F1/72
G03F1/29
C23C16/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020020499
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2020149047
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2019041557
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今敷 修久
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221499(JP,A)
【文献】特開2016-071059(JP,A)
【文献】特開2009-186841(JP,A)
【文献】特開2019-032520(JP,A)
【文献】特開2019-053288(JP,A)
【文献】特開2020-046484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、ホールパターンを形成するための転写用パターン、及び、前記転写用パターンに生じた欠陥に修正が施された修正転写用パターンを含む修正フォトマスクであって、
前記転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp1(μm)、Y-CDがYp1(μm)であるホールパターンを形成するものであって、
X-CDがXm1(μm)、Y-CDがYm1(μm)である透光部からなる、主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置され、前記露光装置によって解像されない幅d(μm)を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域に形成される低透光部と、を含み、
前記補助パターンは、露光光に含まれる代表波長の光に対する透過率T1(%)を有するとともに、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相差を有し、
前記低透光部は、前記代表波長の光に対する透過率T2(%)(ただし、T2<T1)を持つとともに、前記低透光部の前記露光光に対する光学濃度ODが3以上であり、
前記修正転写用パターンに含まれる修正主パターンは、前記転写用パターンの主パターンが遮光性の補充膜によって加工されることにより、X-CDがXm2(μm)、Y-CDがYm2(μm)(ただし、Xm1=Xm2かつYm1=Ym2である場合を除く)である透光部からなり、
前記修正転写用パターンに含まれる修正補助パターンは、前記修正主パターンを、前記低透光部を介して囲む正多角形帯又は円形帯の一部の領域を構成するとともに、前記正多角形帯又は円形帯の前記一部を除く領域には、低透光膜、又は前記低透光膜と素材が異なる低透光性の補充膜が形成され、
前記修正転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp2(μm)、Y-CDがYp2(μm)であるホールパターンを形成するものであり、
下記の式を両方とも満たすことを特徴とする、修正フォトマスク。
0.9Xp1≦Xp2≦1.1Xp1
0.9Yp1≦Yp2≦1.1Yp1
【請求項2】
前記修正補助パターンは、前記正多角形帯又は円形帯の前記一部を除く領域に、透過率T4(%)が30≦T4≦80の修正膜による修正半透光部を有することを特徴とする、請求項1に記載の修正フォトマスク。
【請求項3】
前記補助パターンは、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相シフト作用をもつ半透光膜が、前記透明基板上に形成されてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の修正フォトマスク。
【請求項4】
前記半透光膜の前記代表波長に対する透過率Tf(%)は、30≦Tf≦80であることを特徴とする、請求項3に記載の修正フォトマスク。
【請求項5】
前記主パターンは、前記透明基板の表面が露出してなる、請求項1~のいずれか一項に記載の修正フォトマスク。
【請求項6】
下記の式を両方とも満たすことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の修正フォトマスク。
0.8 ≦ Xm1 ≦ 4.0
0.8 ≦ Ym1 ≦ 4.0
【請求項7】
下記に記載の式を満たすことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の修正フォトマスク。
【数1】
【請求項8】
前記主パターンの幅方向の中心と、前記補助パターンの幅方向の中心との間隔をP(μm)とするとき、下記の式を満たすことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の修正フォトマスク。
1.0<P≦5.0
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の修正フォトマスクを用い、i線、h線、及びg線の少なくとも一つを含む露光光を前記修正転写用パターンに照射して、前記被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子デバイスを製造するためのフォトマスクであって、特に液晶や有機EL(Electro-luminescence)に代表される表示装置の製造に好適なフォトマスクの修正方法、該修正方法を含むフォトマスクの製造方法、前記フォトマスクの製造方法を含む表示装置の製造方法、及び修正フォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、透明基板上に形成された転写用パターンを備えるフォトマスクであって、前記転写用パターンは、所定の径の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置された、補助パターンと、前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置された低透光部とを有するフォトマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-071059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置は、複数のフォトマスクを用い、リソグラフィを利用して製造される。これらの表示装置に対しては、近年、より明るく、かつ省電力であるとともに、高精細、高速表示、広視野角といった表示性能の向上が望まれている。
【0005】
ところで、表示装置に比べて、集積度が高く、パターンの微細化が顕著に進んだ半導体装置(LSI)製造用フォトマスクの分野では、高い解像性を得るために、露光装置には高い開口数(例えばNAが0.2超)の光学系を適用した縮小露光が適用されるとともに、露光光の短波長化が進められてきた経緯がある。その結果、この分野では、KrFやArFのエキシマレーザー(それぞれ、248nm、193nmの単一波長)が利用されるようになった。
【0006】
しかしながら、表示装置製造用のリソグラフィ分野では、上記のような手法を適用することは一般に行なわれていない。例えば、露光装置においては等倍の投影露光装置が用いられ、その光学系のNA(開口数)は、0.08~0.15程度である。また、露光光源にはi線、h線又はg線の光源が主に使用され、多くの場合、これらの波長を含んだブロード波長域の光源が使用される。これにより、大面積(例えば、主表面が一辺300~2000mmの四角形)を照射するための光量を得るなど、生産効率やコスト上の利点が重視されてきた。
【0007】
現在、表示装置の製造においても、パターンの微細化に対するニーズが生じている。しかしながら、LSI製造用の技術を、表示装置製造用にそのまま転用することには、いくつかの問題がある。例えば、高NA(開口数)を持つ高解像度の露光装置を、そのまま大面積のフォトマスクに適用したり、露光波長としてArFエキシマレーザーのような短波長を単一波長で用いたりすることは、技術的にもコスト上も困難が伴なう。
【0008】
つまり、表示装置として従来にないパターンの微細化を追求する一方、LSI製造用の技術を単純に転用できないことが、表示装置製造用フォトマスクの問題点となっている。
【0009】
例えば、表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、「TFT」)で言えば、TFTを構成する複数のパターンのうち、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールは、上下層を導通させるために使用される。ここで、明るく、省電力の表示装置とするためには、液晶表示装置の開口率を極力大きくしなければならない。そうすると、コンタクトホールの径が十分に小さいことが求められる。つまり、表示装置パターンの高密度化の要求に伴い、表示パネル基板上のホールパターンの径の微細化(例えば、ホールパターンの径が3μm未満)が望まれている。例えば、径が0.8μm以上2.5μm以下、さらに、径が2.0μm以下のホールパターンが必要となり、具体的には0.8~1.8μmの径を持つパターンの形成も課題となることが見込まれる。
【0010】
特許文献1には、透光部からなる主パターンと、その近傍に配置され、i線~g線の光を略180度シフトする位相シフト量を持つ補助パターンと、それら以外の領域に形成された低透光部を持つフォトマスクが記載されている。このフォトマスクによれば、主パターンと補助パターンの双方を透過する露光光の相互干渉を制御し、透過光の空間像を大幅に改善できると記載されている。したがって、特許文献1記載のフォトマスクは、表示装置用の露光装置の露光環境下において、表示パネル基板などの被転写体上に、安定して微細な孤立ホールパターンを形成することができると考えられる。
【0011】
上記特許文献1に記載の転写用パターンは、主パターンの近傍に、被転写体上に直接解像しない、適切な設計の補助パターンを配置し、主パターンの転写性を向上させている。補助パターンは、精緻に設計された微細パターンである一方、例えば、半透光部からなる該補助パターンに欠陥が生じた場合の対処が課題になる。
【0012】
一般に、フォトマスクの製造過程において、パターン欠陥の発生をゼロとすることは極めて困難である。例えば、不要な膜の残留や、異物(パーティクル)の混入などによって、透過率が設定値より低下した余剰欠陥(黒欠陥ともいう)が発生することは現実的に避けられない。また、必要な膜の欠落等によって、透過率が設定値より大きくなった欠落欠陥(白欠陥ともいう)が発生することも現実的に避けられない。
【0013】
こうした場合を想定し、フォトマスクに生じた欠陥を検査にて検出し、修正装置によって修正(リペア)する手法が、従前から実施されている。修正の手法としては、白欠陥に対しては修正膜を堆積させることが一般的であり、黒欠陥に対しては余剰部分をエネルギー線の照射によって除去し、必要に応じてさらに修正膜を堆積させることが、一般的である。修正装置としては、主に、FIB(Focused Ion Beam)装置、又は、レーザCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が用いられ、修正膜の堆積、又は余剰膜の除去を行って、白欠陥及び黒欠陥を修正することが可能である。
【0014】
フォトマスクに生じた欠陥に対し修正膜の形成を行なう場合、まず、欠陥検査装置によって欠陥を検出し、修正を行なう対象部分を決定する。修正膜を形成する対象は、フォトマスクが有する転写用パターンの、遮光膜や半透光膜(以下、それぞれ正常な遮光膜、正常な半透光膜ともいう)に生じた白欠陥であったり、あるいは、意図的に黒欠陥を除去したことで形成された白欠陥などである。ここで「正常な」膜とは、フォトマスク製造の際に、該フォトマスクの設計に従い、所定の光学物性(遮光膜であれば遮光性、半透光膜であれば光透過率、位相シフト特性など)を有するような材料、膜厚、膜質によって形成された膜である。半透光膜は、露光光を一部透過する膜であり、転写用パターンにおける半透光部を構成する際に用いられる。
【0015】
例えばレーザCVD装置を用い、対象部分に局所的な修正膜(CVD膜ともいう)を形成して修正する(レーザCVD法)。このとき、フォトマスク表面に、修正膜の原料となる原料ガスを供給して、原料ガス雰囲気を形成する。修正膜の原料として、例えば、金属カルボニルが使用される。具体的には、クロムカルボニル(Cr(CO))、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、タングステンカルボニル(W(CO))などが例示される。なかでも、耐薬性の高いクロムカルボニルが、好ましく用いられる。
【0016】
修正膜の原料にクロムカルボニルを用いた場合は、たとえば、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO))を加熱して昇華させ、昇華物をキャリアガス(Arガス等)とともに原料ガスとして修正対象部分に導く。そして、この原料ガス雰囲気中にレーザ光を照射して、レーザの熱/光エネルギー反応により原料ガスを分解させ、基板上に生成物を堆積させて、クロムを主材料とする修正膜を形成する。
【0017】
FIB修正装置を用いる場合は、ガリウムイオン等によるイオンビームを対象位置に照射し、炭素系の修正膜(FIB膜ともいう)を堆積させるなどの方法が採られる。
【0018】
いずれの場合にも、遮光膜に生じた欠陥に上記修正膜を形成する場合には、欠陥近傍と同程度以上の遮光性を持つ修正膜(以下、補充膜ともいう)を形成して修正することができる。
【0019】
一方、半透光部の修正に上記CVD膜を用いようとする場合、修正工程において、堆積する修正膜の膜厚調整を行い、形成される修正膜の光透過率を、正常膜のもつ目標値に一致させることが必要になる。しかしながら、修正膜の膜厚調整を行って膜の透過率を目標値に完全に一致させることは、容易でない。
【0020】
また、修正膜の素材は、フォトマスクの転写用パターンを構成する正常な半透光膜の素材と異なり、その成膜方法も異なるから膜質も異なる。そのため、正常な半透光膜が位相シフト作用を有する場合、修正膜によって、該正常な半透光膜の持つ透過率と位相シフト作用との両方を同時に充足させることは、より難しい。
【0021】
上記に加え、正常な半透光膜として適用される膜材は、その透過率や位相シフト特性に波長依存性(光の波長に応じて透過率や位相シフト量が変化する性質)を有する場合があるが、修正膜において正常な半透光膜と同等の波長依存性を完全に復元することは、難しい。したがって、上記のようにブロード波長域を露光に用いる、表示装置製造用の露光環境においては、修正を施した部分が、正常な半透光膜をもつ部分と同一の転写結果を示すとは限らない。
【0022】
特許文献1には、透明基板上に位相シフト作用をもつ半透光膜を形成してなる補助パターンとともに、該半透光膜を用いず、透明基板の主表面に掘り込みを形成してなる補助パターンが記載されている。掘り込みによって形成された補助パターンを持つフォトマスクにおいても、補助パターンの部分に遮光膜が残留し、或いは、該掘り込みが所定深さに形成されずに欠陥となった場合などに、上記修正膜によってその機能を回復することは難しい。
【0023】
本発明は、位相シフト作用を持つ補助パターンを有するホールパターン形成用の転写用パターンにおいて、補助パターンに欠陥が生じても、表示装置等の電子デバイスの製造歩留や生産効率の低下を生じさせないように、効率よく安定した条件で欠陥転写用パターンを修正できるフォトマスクの修正方法、該修正方法を含むフォトマスクの製造方法、前記製造方法を含む表示装置の製造方法、及び修正フォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明にかかるフォトマスクの修正方法は、透明基板上に、転写用パターンを備えるフォトマスクの、前記転写用パターンに生じた欠陥を修正するフォトマスクの修正方法であって、
前記転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上に所望のCD値を持つホールパターンを形成するものであって、
透光部からなる主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置され、前記露光装置によって解像されない幅を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域に形成される低透光部と、を含み、
前記補助パターンは、露光光に含まれる代表波長の光に対する透過率T1(%)を有するとともに、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相差を有し、
前記低透光部は、前記代表波長の光に対する透過率T2(%)(ただしT2<T1)を持ち、
前記補助パターンに欠陥が生じたとき、前記主パターンのCD値を増減することにより、前記露光装置により露光した場合に、被転写体上に前記所望のCD値を持つ前記ホールパターンを形成するような、修正転写用パターンの形状を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた形状に基づいて、前記主パターンのCD値を増減する修正加工を施す修正工程と、を有する。
【0025】
本発明にかかるフォトマスクの修正方法は、透明基板上に、転写用パターンを備えるフォトマスクの、前記転写用パターンに生じた欠陥を修正するフォトマスクの修正方法であって、
前記転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp1(μm)、Y-CDがYp1(μm)であるホールパターンを形成するものであって、
X-CDがXm1(μm)、Y-CDがYm1(μm)である透光部からなる、主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置され、前記露光装置によって解像されない幅d(μm)を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域に形成される低透光部と、を含み、
前記補助パターンは、露光光に含まれる代表波長の光に対する透過率T1(%)を有するとともに、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相差を有し、
前記低透光部は、前記代表波長の光に対する透過率T2(%)(ただしT2<T1)を持ち、
前記補助パターンに欠陥が生じたとき、前記主パターンのX-CD及びY-CDの少なくとも一方を増減して、X-CDがXm2(μm)、Y-CDがYm2(μm)であるような主パターンを持つ修正転写用パターンであって、該修正転写用パターンを前記露光装置により露光した場合に、被転写体上にX-CDがXp1に等しく、Y-CDがYp1に等しいホールパターンを形成する修正転写用パターンの形状を特定する、特定工程と、
前記特定工程で得られた形状に基づいて、前記主パターンのX-CD及びY-CDの少なくとも一方を増減する修正加工を施す修正工程と、を有するものとすることができる。
【0026】
前記特定工程は、前記修正転写用パターンを前記露光装置により露光した場合に、被転写体上にX-CDがXp1に等しく、Y-CDがYp1に等しいホールパターンを形成するための、Xm2とYm2の組合せを算出する、算出工程を含んでもよい。
【0027】
前記特定工程に先立ち、前記補助パターンに対する複数の欠陥類型と、該欠陥類型の各々に対して予め算出され、対応づけられたXm2とYm2の組合せを参照する、類型参照工程を有し、
前記特定工程では、前記複数の欠陥類型から、前記欠陥に対応する欠陥類型を選定し、選定した前記欠陥類型に対応づけられたXm2とYm2の組合せに基づき、前記修正転写用パターンの形状を特定してもよい。
【0028】
前記補助パターンは、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相シフト作用をもつ半透光膜が、前記透明基板上に形成されてなるものとすることができる。
【0029】
前記低透光部は、前記露光光を実質的に透過しないものとすることができる。
【0030】
前記修正工程に先立ち、前記欠陥を生じた前記補助パターンに対して、低透光性の補充膜を用いた予備加工を行なって、残存する前記補助パターンの形状を整えてもよい。
【0031】
前記欠陥を生じた前記補助パターンに対し、位相シフト作用を持つ修正膜を用いる修正を施さないものとしてもよい。
【0032】
また、前記欠陥を生じた前記補助パターンに、半透光性の修正膜による予備修正を施してもよい。
【0033】
前記修正工程に先立ち、透光部からなる前記主パターンの領域全体に低透光性の補充膜を形成してもよい。
【0034】
前記欠陥は、黒欠陥であってもよい。
【0035】
前記欠陥は、白欠陥であり、前記特定工程後、前記修正工程に先立ち、欠陥を生じた前記補助パターンに対して、半透光性の修正膜による予備修正を施してもよい。
【0036】
前記欠陥は黒欠陥であり、かつ、前記黒欠陥は、前記転写用パターンの前記補助パターンに生じた白欠陥に対し、低透光性の補充膜を形成して生成した黒欠陥であってもよい。
【0037】
前記修正工程では、前記露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp2(μm)、かつY-CDがYp2(μm)であるホールパターンを形成する、修正転写用パターンを形成し、前記転写用パターンは、下記の式を両方とも満たすものとすることができる。
0.9Xp1≦Xp2≦1.1Xp1
0.9Yp1≦Yp2≦1.1Yp1
【0038】
前記転写用パターンにおいて、前記主パターンは、前記透明基板の表面が露出してなり、前記補助パターンは、前記透明基板上に、前記代表波長に対する透過率Tf(%)を持つ半透光膜が形成されてなるとともに、前記半透光膜は、前記代表波長に対する位相シフト量φ1(度)を有し、
30≦Tf≦80(%)であるとともに、φ1が略180(度)であってもよい。
【0039】
前記転写用パターンにおいて、前記補助パターンは、前記主パターンの近傍に前記低透光部を介して配置されてもよい。
【0040】
前記転写用パターンにおいて、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記低透光部を介して囲む、正多角形帯又は円形帯であってもよい。
【0041】
下記の式を両方とも満たしてもよい。
0.8 ≦ Xm1 ≦ 4.0
0.8 ≦ Ym1 ≦ 4.0
【0042】
前記転写用パターンにおいて、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記低透光部を介して囲む、幅dのパターンとして形成されるとともに、下記の式を満たすものとしてもよい。
【数1】
【0043】
下記の式を両方とも満たしてもよい。
0.8 ≦ Xp1 ≦ 4.0
0.8 ≦ Yp1 ≦ 4.0
【0044】
前記転写用パターンにおいて、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記低透光部を介して囲む、幅dのパターンとして形成され、前記主パターンの幅方向の中心と、前記補助パターンの幅方向の中心との間隔をP(μm)とするとき、下記の式を満たすものとしてもよい。
1.0<P≦5.0
【0045】
前記転写用パターンにおいて、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記低透光部を介して囲む、幅dのパターンとして形成され、前記補助パターンの形状は、前記主パターンの形状の重心位置に重心を持つ多角形帯としてもよい。
【0046】
前記ホールパターンは、孤立ホールパターンであってもよい。
【0047】
本発明にかかるフォトマスクの製造方法は、上記に記載のフォトマスクの修正方法を含む。
【0048】
本発明にかかる表示装置の製造方法は、上記に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを用意する工程と、
i線、h線、及びg線の少なくとも一つを含む露光光を前記修正転写用パターンに照射して、前記被転写体上にパターン転写を行なうことを含む。
【0049】
本発明にかかる修正フォトマスクは、透明基板上に、ホールパターンを形成するための転写用パターン、及び、前記転写用パターンに生じた欠陥に修正が施された修正転写用パターンを含む修正フォトマスクであって、
前記転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp1(μm)、Y-CDがYp1(μm)であるホールパターンを形成するものであって、
X-CDがXm1(μm)、Y-CDがYm1(μm)である透光部からなる、主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置され、前記露光装置によって解像されない幅d(μm)を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域に形成される低透光部と、を含み、
前記補助パターンは、露光光に含まれる代表波長の光に対する透過率T1(%)を有するとともに、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する位相差が略180度であり、
前記低透光部は、前記透明基板上に、前記代表波長の光に対する透過率T2(%)(ただしT2<T1)を持ち、
前記修正転写用パターンに含まれる修正主パターンは、前記転写用パターンの主パターンが低透光性の補充膜によって加工されることにより、X-CDがXm2(μm)、YCDがYm2(μm)(ただし、Xm1=Xm2かつYm1=Ym2である場合を除く)である透光部からなり、
前記修正転写用パターンに含まれる修正補助パターンは、前記修正主パターンを、前記低透光部を介して囲む正多角形帯又は円形帯の一部の領域を構成するとともに、前記正多角形帯又は円形帯の前記一部を除く領域には、低透光膜、又は前記低透光膜と素材が異なる低透光性の補充膜が形成され、
前記修正転写用パターンは、露光装置を用いた露光によって被転写体上にX-CDがXp2(μm)、Y-CDがYp2(μm)であるホールパターンを形成するものであり、下記の式を両方とも満たす。
0.9Xp1≦Xp2≦1.1Xp1
0.9Yp1≦Yp2≦1.1Yp1
【0050】
前記修正補助パターンは、前記正多角形帯又は円形帯の前記一部を除く領域に、半透光性の修正膜による修正半透光部を有してもよい。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、フォトマスクの転写用パターンに欠陥が生じたとき、該欠陥に対する修正を効率よく安定した条件で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】第1フォトマスクの転写用パターンの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)はA-A矢視断面図
図2】第2フォトマスクの転写用パターン一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)はA-A矢視断面図
図3】黒欠陥を含む欠陥転写用パターンの一例を示す平面図
図4】フォトマスクの修正方法の実施例1を示すフロー図
図5図3の欠陥転写用パターンを修正した修正転写用パターンの一例を示す平面図
図6】実施例2の各工程における転写用パターンを示す平面図
図7】フォトマスクの修正方法の実施例2を示すフロー図
図8】平面図により欠陥類型一覧の一例を示す図
図9】3つの欠陥類型について修正転写用パターンの形状を特定した例を示す図
図10】実施例4の各工程における転写用パターンを示す平面図
図11】フォトマスクの修正方法の実施例4を示すフロー図
図12】(a)欠陥類型の一例と、(b)該欠陥類型を修正した予備修正類型を示す平面図
図13】(a)欠陥類型の一例と、(b)該欠陥類型を修正した予備修正類型を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0053】
上記のとおり、特許文献1記載のような精緻な構成を持つ転写用パターンにおいて欠陥が生じたとき、既存の修正装置による修正膜によって元通りの構成とすることは難しい。
しかしながら、修正を施さないまま転写を行なえば、被転写体上に形成されるパターンは設計仕様を満たさず、得ようとする表示装置の動作不良を招く等のリスクが生じる。
そこで、ここでは、図1及び図2に示す転写用パターンを持つフォトマスク(以下、それぞれ第1フォトマスク、及び第2フォトマスク)に欠陥が生じたとき、これを修正する場合について例示する。
【0054】
本明細書において、「転写用パターン」は、フォトマスクを用いて得ようとするデバイスに基づいて設計されたパターンであって、フォトマスク基板に形成されるものを意味する。転写用パターンに欠陥を生じたパターンは、「欠陥転写用パターン」ということがある。欠陥転写用パターンに修正を施した後には、「修正転写用パターン」ということがある。なお、修正後に得ようとする「修正転写用パターン」とともに、実際に修正工程後に得られるものについても「修正転写用パターン」ということがある。「修正主パターン」及び「修正補助パターン」についても同様である。
【0055】
<第1フォトマスクの構成>
以下に、本発明の第1フォトマスクを例示する。第1フォトマスクは、液晶や有機ELに代表される表示装置を製造するためのフォトマスクである。なお、本願でいう表示装置とは、表示装置を構成するためのデバイスを含む。そして第1フォトマスクは、表示装置製造用の露光装置によって露光し、その転写用パターンを、被転写体上に転写するものとする。被転写体は、例えば、表示デバイス製造用の基板等に加工対象となる薄膜が形成され、最上層にレジスト膜を形成したものが挙げられる。レジスト膜としては、ポジ型のフォトレジストが好適に使用できる。
【0056】
露光光には、波長が300~500nm程度のものが好適に用いられ、例えば、i線、h線又はg線を含む光を用いることができる。特に複数の波長の光を含むもの(「ブロード波長光」ともいう)を有利に使用でき、i線を含むブロード波長光などが例示される。ブロード波長光を用いる場合には、露光光に含まれるいずれかの波長を代表波長にすると好ましい。例えば、代表波長として、露光光の波長範囲のいずれかの波長を持つ光とすることができる。以下の説明では、h線を代表波長とする。
【0057】
第1フォトマスクは透明基板上に転写用パターンを備える。この転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するものである。特に、孤立ホールパターンを形成するとき、本発明は優れた作用を示す。
【0058】
透明基板は、石英等の透明材料からなり、表面を平坦かつ平滑に研磨加工したものである。透明基板は、例えば、主表面が一辺300~2000mmほどの四角形を有し、5~15mmほどの厚みを有する。
【0059】
透明基板15上に半透光膜16及び低透光膜17がこの順に形成されたフォトマスクブランクを用い、これらの膜に対して、それぞれ所定のパターニングを施すことにより、図1(a)に示す転写用パターン1を形成することができる。
【0060】
転写用パターン1は、主パターン11、補助パターン12及び低透光部13を有する。本形態では、低透光部13は、透明基板15上に半透光膜16と低透光膜17とが積層されてなる。補助パターン12は、半透光膜16が透明基板15上に形成されてなる。
【0061】
主パターン11は透光部からなる。透光部は、露光光に対する透過率が最も高い部分であり、透明基板の表面が露出してなることが好ましい。主パターン11の透光部において、X方向の幅(以下、X-CDという)がXm1(μm)、該X方向と垂直なY方向の幅(以下、Y-CDという)がYm1(μm)を有する。図1(a)に示すように、第1フォトマスクの主パターン11は、正方形(すなわち、Xm1=Ym1)であることが好ましい。なお、CDとは、Critical Dimensionの略であり、ここではパターン幅(寸法)を意味するものとする。なお、フォトマスク上の転写用パターン1において、X方向の幅をX-CD、前記X方向に垂直なY方向の幅をY-CDとする。そして、該転写用パターンを露光して、被転写体上に形成する転写後パターンにおいても、上記に対応するものとし、X方向の幅をX-CD、前記X方向に垂直なY方向の幅をY-CDとする。
【0062】
本形態において、以下の式(1)、式(2)が満たされることが好ましい。
0.8≦Xm1≦4.0 ・・・式(1)
0.8≦Ym1≦4.0 ・・・式(2)
【0063】
これは、Xm1(すなわち、透光部のX方向のCD値)が0.8μm未満になると、露光装置による被転写体上での解像性が難しくなること、及び、径が4.0μmを超えると、既存のフォトマスクによって比較的解像性が得やすく、第1フォトマスクの作用効果は相対的に顕著でないことによる。すなわち、上記範囲の寸法を持つ転写用パターン1を持つフォトマスクにより、後述のXp、Ypのような微細サイズのホールパターンを被転写体上に形成しようとするとき、第1フォトマスクは有利である。
【0064】
補助パターン12は、主パターン11の近傍に設けられる。補助パターン12は、露光装置によって第1フォトマスクを露光したとき、被転写体(表示パネル基板など)上に解像されない幅d(μm)を持つ。本形態の第1フォトマスク(図1(a))において、補助パターン12は、主パターン11との間に、後述の低透光部13を介して配置されている。そして、補助パターン12の形状は、互いに平行な外周と内周を持つ、多角形帯(所定の幅を持つ多角形)であり、外周と内周との距離が一定の値d(これを補助パターン12の幅dとする)を有する。なお、多角形帯とは、ここでは内周及び外周が、互いに相似形の多角形であって、所定の幅dを持つものをいう。
【0065】
第1フォトマスクにおいて、補助パターンは正八角形帯であるが、他の正多角形帯(例えば、正四角形帯、正12角形帯、正16角形帯など)や、正多角形帯ではない多角形帯でもよい。さらに、外周と内周が径の異なる円形であって、内周と外周との距離が一定の値dを有する円形帯であってもよい。また、図1(a)における第1フォトマスクの補助パターン12は、低透光部13を介して主パターン11を連続して囲む形状であるが、補助パターン12を構成する多角形帯又は円形帯の一部が欠落した、不連続形状でもよい。
【0066】
補助パターン12は、露光光に含まれる代表波長の光に対し、透過率T1(%)を有する。ここで透過率T1と、補助パターン12の幅dとの間には、以下の式(3)が成り立つことが好ましい。
【数2】
より好ましくは、以下の式(4)又は式(5)が成り立つとよい。
【数3】
【数4】
【0067】
上記式(3)、式(4)又は式(5)が成り立つとき、補助パターン12の透過光と、主パターン11の透過光との干渉を有利に制御し、被転写体上に形成するホールパターン形成のための光学像(光強度分布)をより有利な形状にする。これにより、例えば、焦点深度(Depth of Focus)、露光余裕度(Exposure Latitude、EL、許容される露光量の誤差)の増大や、MEEF(マスク誤差増大係数)の低減等のうち、一つ以上の転写性能の向上効果を得ることができる。すなわち、補助パターン12を有しなかった、従来のホール形成用転写パターンに比べて、優れた転写性を得ることができる。
【0068】
ここで、補助パターン12の幅d(μm)について、好ましくは、以下の式(6)が成り立つことが好ましい。
d ≧ 0.7 ・・・式(6)
より好ましくは、以下の式(7)が成り立つことが好ましい。
d ≧ 0.8 ・・・式(7)
さらに好ましくは、以下の式(8)が成り立つことが好ましい。
1.0≦d≦1.5 ・・・式(8)
【0069】
dの値が過度に大きいと、露光の際に、被転写体上に解像してしまうリスクが生じ、また小さすぎると、被転写体上にホールパターンを形成する際の、上記有利な効果が不十分になる傾向が生じる。
【0070】
補助パターン12は、透明基板上に半透光膜が形成されてなる、半透光部とすることができる。また、補助パターン12の透過光は、主パターン11の透過光に対して、代表波長の光に対する位相シフト量φ1が略180度である。なお、本願において略180度とは、180度±20度の範囲内を意味する。
すなわち、
160+360M≦φ1≦200+360M(度)(Mは負でない整数)・・・式(9)
とも表わせる。半透光膜の位相シフト特性としては、好ましくは180±10度の範囲内であり、より好ましくは180±5度の範囲内である。
【0071】
補助パターン12の透過率T1(%)は、
30≦T1≦100 ・・・式(10)
とすることが好ましい。ここで、T1は、透明基板の透過率を基準(100%)としたときの数値であり、以下同様である。
【0072】
図1(b)は図1(a)のA-A矢視断面図である。図1(b)に示すように、第1フォトマスクの補助パターン12は、透明基板15上に半透光膜16を形成してなる。このとき、上記代表波長に対する半透光膜16の位相シフト量φ1を略180度にするとよい。
また、補助パターン12の透過率T1(%)について、
30≦T1≦80 ・・・式(11)
を満たすとより好ましく、さらに好ましくは、
40≦T1≦70 ・・・式(12)
を満たすとよい。
【0073】
本形態では、補助パターン12は、透明基板上に、該光に対する透過率Tf(%)をもつ半透光膜16が形成されてなる。従って、したがって、半透光膜16がもつ、露光光の代表波長に対する透過率Tf(%)は、
30≦Tf≦80 ・・・式(13)
であることが好ましい。より好ましくは、
40≦Tf≦70 ・・・式(14)
である。
【0074】
補助パターン12の位置は、主パターン11の幅方向の中心と、補助パターン12の幅方向の中心との間隔をP(μm)としたとき、
1.0<P≦5.0 ・・・式(15)
の関係が成り立つことが好ましい。
より好ましくは、間隔Pは、
1.5<P≦4.5 ・・・式(16)
とすることができる。このとき、上述の、補助パターン12の透過光と、主パターン11の透過光との相互作用がより有利に制御できる。そして、被転写体上に形成するホールパターン形成のための光学像(光強度分布)をより有利な形状として、上記転写性能の向上効果が得られる。
【0075】
低透光部13は、転写用パターン1において、主パターン11と補助パターン12が形成された以外の領域に配置される。好ましくは、転写用パターン1において、主パターン11と補助パターン12を除く領域は、低透光部13のみからなる。
【0076】
低透光部13は、透明基板15上に、例えば、低透光膜17が形成されたものを使用できる。図1(b)では、低透光部13は、半透光膜16上に低透光膜17が積層して形成される。低透光部13の有する、代表波長の光に対する透過率T2(%)は、補助パターン12の透過率T1より小さい。透過率T2は、好ましくは30(%)未満である。より好ましくは20(%)以下とする。また、低透光膜17は、好ましくは実質的に露光光を透過しない遮光膜であるとよい。低透光膜17が遮光膜である場合、光学濃度OD(Optical Density)が3以上を示す低透光膜であることが好ましい。
【0077】
すなわち、ここでいう低透光部は、露光光を比較的低い透過率で透過する場合(具体的には、30%未満)を含み、さらに、実質的に露光光を透過しない、遮光部である場合を含む。前者の場合には、前記代表波長の光に対する、低透光部の位相シフト量は90度以下であり、好ましくは60度以下である。
【0078】
転写用パターン1は、被転写体上に、X-CDがXp1(μm)、Y-CDがYp1(μm)であるようなホールパターンを形成するものである。すなわち、Xp1及びYp1は、欠陥のない正常な転写用パターン1によって、被転写体上に形成するホールパターンのX-CD及びY-CDである。特に、被転写体の構成要素であるレジスト膜のボトムCD値(被転写体の表面にあるレジスト膜がパターニングされ、レジストパターンとなったときに、ホールパターンに対応する開口最下部のX-CD及びY-CD)を指す。ここで、Xp1及びYp1は、式(17)及び式(18)をいずれも満たす場合に、発明の効果が顕著である。
0.6≦Xp1≦3.0 ・・・式(17)
0.6≦Yp1≦3.0 ・・・式(18)
【0079】
Xp1及びYp1は、式(19)及び式(20)をいずれも満たす場合が、特に好ましい。
0.6≦Xp1≦2.5 ・・・式(19)
0.6≦Yp1≦2.5 ・・・式(20)
【0080】
第1フォトマスクは、位相シフト作用を持つ補助パターンと透光部からなる主パターンが、遮光部を介在させて離間しており、補助パターンの透過光が形成する光強度分布が、透光部の透過光が形成する光強度分布と干渉する。それぞれの光強度分布は、その外縁側において振幅の正負が反転する部分することにより、例えば、光強度分布曲線のピークを高める効用、転写像の焦点深度を増加させる効用、露光余裕度を増加させる効用及びMEEF(マスク誤差増大係数)を低減する効用のうち、1つ以上の効用がもたらされる。
【0081】
<第2フォトマスクの構成>
図2(a)は、第2フォトマスクの転写用パターン2の一部を示す。図2(b)は、図2(a)のB-B矢視断面図である。第2フォトマスクも表示装置製造用のフォトマスクである。第2フォトマスクの転写用パターン2は、第1フォトマスクの転写用パターン1と異なり、補助パターン22が透明基板表面を所定深さに掘り込み形成されている。本願では、このように掘り込みを伴う転写用パターン2が、透明基板の一主表面に形成されている形態を含め、「透明基板上に転写用パターンを備える」フォトマスクと表現する。第2フォトマスクにおいても、第1フォトマスクと同様に、補助パターンの透過光は、主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する略180度の位相差を有する。
【0082】
第2フォトマスクの場合、補助パターン22の透過率T1(%)は、透明基板の透過率と同じ、実質的に100%となる。また、第1フォトマスクにおける好ましい関係式である、上記式(1)~(9)、(15)~(20)は、第2フォトマスクにおいても同様に当てまる。第1フォトマスク及び第2フォトマスクはいずれも、等倍のプロジェクション露光装置を用いて露光することにより、上記の優れた作用が得られる。
【0083】
<フォトマスクに生じる欠陥>
以下、第1フォトマスクに欠陥が生じた場合を例として説明するが、第2フォトマスクに欠陥が生じた場合についても同様である。図3は、第1フォトマスクの補助パターン12に黒欠陥14が生じた状態を示す。黒欠陥14により、補助パターン12の作用が少なくとも部分的に損なわれる。このため、このような欠陥転写用パターン3を露光すると、被転写体上には設計どおりの光強度分布が形成されない。すなわち、被転写体の構成要素であるレジスト膜を露光後に現像して得られるレジストパターンのボトムCDがX方向、又はY方向において設計値どおりに形成されないおそれがある。レジストパターンのボトムCDは、該レジストパターンをエッチングマスクとして、エッチング加工されるパターンのCDを決定する。よって、レジストパターンのボトムCDが設計値どおりに形成されないと、電子デバイス内のパターンのCDが設計値どおりに形成されないリスクが生じる。
【0084】
欠陥転写用パターン3における欠陥は、精緻に組み立てたフォトマスクの構成から得られるべき性能が十分に発揮されない不利益を生む。しかしながら、上述の理由により、補助パターン12に生じた黒欠陥14に対し、半透光性の修正膜で半透光部を復元するように既存の修正装置で修正しても、補助パターン12を完全に正常パターンと同じ状態に復元することは、困難である。そこで、補助パターン12に黒欠陥14が生じたとき、主パターン11の寸法を修正し修正転写用パターンを形成する。
【0085】
これにより、補助パターン12の黒欠陥14に対し、半透光性の修正膜で半透光部を復元しなくても、被転写体の表面に設計どおりのCD値を持つホールパターンを形成することができる。
【0086】
以下、各実施例によりフォトマスクの修正方法を説明する。以下の実施例では、第1フォトマスクを前提として説明するが、第2フォトマスクであっても同様の修正方法が適用できる。
【実施例1】
【0087】
図4にフォトマスクの修正方法の一例をフロー図にして示す。はじめに、修正転写用パターンの形状及び寸法を特定する特定工程30を行い、その後、特定工程30で特定された修正転写用パターンの形状及び寸法に基づいて、修正工程40を行う。ここでは、欠陥を生じた補助パターンに対して、修正を施すことを必ずしも必要とせず、主パターン11に対する加工を行なう。例えば、黒欠陥を生じた補助パターンに対し、これを復元するために半透光性の修正膜による修正を施すことは、必須ではない。ただし、補助パターンに半透光性の修正膜による修正を施した上で、主パターン11の寸法を修正してもよい。この点については実施例4以降で説明する。
【0088】
<修正転写用パターンの形状を特定する工程(特定工程)>
特定工程30の一手法である、修正主パターンのCD値を算出する算出工程について説明する。算出工程では光学シミュレーションを使用するとよい。シミュレーション条件として、例えば、以下の情報を使用する。
(1)フォトマスクの露光に適用する露光条件(投影露光装置の光学系が持つ開口数NA、コヒレンスファクタσ、露光波長など)
(2)修正対象とするフォトマスクに関する設定条件(転写用パターンの設計デザインや膜の光学物性、補助パターンに生じた欠陥の位置や欠陥面積など)
(3)被転写体表面に用いるフォトレジスト膜の素材や特性及び膜厚
【0089】
主パターンに修正を施す際の目標は、修正転写用パターンを露光して被転写体上に転写することにより、表示装置の製造を行なうことができ、該表示装置において動作不良などの不都合の発生を抑えることある。ここで、主パターンに施す修正に際し、主パターンのX-CD及びY-CDの少なくとも一方を増減させる。
【0090】
具体的には、X-CDがXm2(μm)、Y-CDがYm2(μm)であるような主パターンを持つ修正転写用パターンを形成する。この修正転写用パターンは、前記露光装置により露光した場合に、被転写体上に所定の寸法を持つホールパターンを形成するための、前記修正転写用パターンであり、上記のXm2、Ym2(μm)の値を求める(算出工程)。
【0091】
増減とは、増加又は減少である。X-CD及びY-CDの一方を増加させるとともに他方を減少させてもよく、両方を増加させてもよい。又は、一方のみを増加させ、他方は増減寸法をゼロとする(つまり増減させない)場合を含む。X-CDとY-CDの少なくとも一方は増加させると好ましい。これは、黒欠陥による補助パターンの機能低減を補い、被転写体上に形成されるホールパターンのCDを回復する上で有利である。
【0092】
ここでは、主パターンの寸法(X-CD及びY-CD)を如何なる数値とすれば、修正転写用パターンを露光装置により露光することによって、被転写体上にX-CDがXp1に等しく、Y-CDがYp1に等しいホールパターンを形成することができるか、を算出する。すなわち、被転写体上のレジスト膜によって形成されるレジストパターンであって、そのボトムCDにおいて、X-CDがXp1に等しく、Y-CDがYp1に等しいホールパターンを形成可能となるように、X-CD、Y-CDの増減を決定する。また、露光条件(Dose量等)も正常な転写用パターンを用いる際の条件と同一とする。
【0093】
上記算出結果により、修正転写用パターンにおける主パターンのX-CD及びY-CD、すなわちXm2及びYm2の値が決定する。なお、上記算出工程において、修正転写用パターンによって被転写体上に形成するホールパターンのX-CDがXp1に等しい、あるいは、Y-CDがYp1に等しいとの表現は、±5nm以内の誤差が生じる場合を含むものとする。すなわち、Xp1又はYp1に対して±5nmの範囲で解が得られれば、修正転写用パターンの形状を特定することができる。ここで、修正転写用パターンによって被転写体上に形成するホールパターンのX-CDがXp1に等しい、あるいは、Y-CDがYp1に等しいとの表現は、±5nm以内の誤差が生じる場合を含むものとする。
【0094】
X-CD及びY-CDの少なくとも一方を増加又は減少させるとき、主パターンの重心位置を変化させないことが好ましい。つまり、被転写体上に形成するホールパターンのX-CD及びY-CDがそれぞれXp1及びYp1に等しくなるための、欠陥転写用パターンの修正方法は、主パターンの重心位置を動かすことなく、算出することが好ましい。
【0095】
<主パターンに修正を施す工程(修正工程)>
修正工程40について説明する。第1フォトマスクについて、上記シミュレーションによって修正転写用パターンの形状が特定されたら、該形状に基づいて欠陥転写用パターンの主パターンに対して修正を施し、上記のX-CDがXm2、Y-CDがYm2となるように主パターンを形成する。
【0096】
本実施例では、被転写体上に得ようとするホールパターンのX-CDとY-CDが等しい、すなわち、Xp1=Yp1とする。また、上記のとおり、Xm1=Ym1である。図5に、図3の欠陥転写用パターン3を修正した、修正転写用パターン4の一例を示す。修正後の主パターン111(実線)の開口幅はXm2(X-CD)及びYm2(Y-CD)であり、少なくとも一方は、修正前の主パターン11(一点鎖線)の開口幅Xm1及びYm1よりも大きな値をとっている。
【0097】
CD値の修正について、Xm2<Xm1の場合には、転写用パターンにおいて透光部からなる主パターンのX-CDを減少させる修正を施す。例えば、CVD膜やFIB膜などによる修正膜であって、近傍の低透光部と同程度の透過率を持つ膜(補充膜)を透光部のエッジ近傍に形成して、開口幅を減縮することができる。低透光部が実質的に露光光を透過しない遮光膜である場合には、遮光性の補充膜を形成して、X-CDの数値を減少させる。
【0098】
一方、Xm2>Xm1の場合には、上記と反対に、主パターンのエッジ部分をレーザザッピング、又はイオンビームエッチングなどによって除去して、開口幅を拡張し、X-CDを増加することができる。Y-CDの増減についても同様である。
【0099】
この場合、主パターン111のエッジには、少なくとも部分的に、正常な低透光膜のエッチング断面(多くはウェットエッチング断面)の代わりに、補充膜のレーザザッピング断面、あるいは、イオンビームエッチングなどによる断面を持つことになる。しかしながら、このことによる特段の不都合は生じない。
【0100】
また、詳細は後述するが、黒欠陥を生じた転写用パターンに対し、主パターン11のX-CD又はY-CDの少なくとも一方を増減するに先立ち(又は、増減した後に)、透光部からなる主パターン11の領域全体に上記補充膜を形成し、開口を暫定的に埋めてもよい。この場合、特に、X-CDとY-CDの一方が増加、他方が減少する補正を行なう際に、位置とサイズを正確に形成しやすい点で有利である。
【0101】
以上の工程によって、修正転写用パターン4が形成される。そして、修正転写用パターン4を持つフォトマスクを、表示装置製造用の露光装置によって露光し、表示装置を製造する。これにより、表示装置製造の効率や歩留の向上に寄与できる。
【0102】
表示装置製造用のフォトマスクに欠陥が生じた場合、最も深刻なリスクの一つは、表示パネル基板上のホールパターンが、設計値どおりのサイズに形成されないことである。例えば、多数のホールパターン形成用の転写用パターンを持つフォトマスクにおいて、その一部に欠陥が生じた場合、被転写体上において、その一部のホールパターンに、設計どおりのホールが形成されていないことにより、デバイスとしての動作が保証されないことになる。
【0103】
一般には、被転写体上に形成されるパターンサイズ(CD)は、露光の際の照射光量によって変化する。しかしながら、フォトマスク面内に形成された転写用パターンの一部に生じた欠陥の位置のみに、他と異なる露光量を適用することはできない。こうした問題に対し、本実施例によれば、転写用パターンに欠陥が生じた場合にも、上記不都合を生じさせず、被転写体上に設計値に等しいサイズのホールパターンを形成し、表示装置製造の効率や歩留に寄与することができる。そして、設計が等しいホールパターンは、被転写体上において、実質的にすべて均一なサイズを持つホールパターンとなる。
【0104】
修正転写用パターンの主パターン寸法であるXm2及びYm2は、修正転写用パターン4を露光したとき、理論的には、被転写体上に、X-CD及びY-CDとして、それぞれ、Xp1及びYp1の値を有するホールパターンを形成するものとなる。
【0105】
修正工程40によって、得られた修正転写用パターン4を、露光装置によって露光したとき、被転写体上に形成されるホールパターンにおいて、X-CD及びY-CDを、それぞれ、Xp2(μm)及びYp2(μm)とするとき、これらが、それぞれ、Xp1及びYp1と等しくなることが最も好ましい。しかしながら、適用する修正装置(CVD修正装置、又はFIB修正装置など)の加工精度に誤差が生じた場合には、修正工程によって得られた修正転写用パターン4を、露光装置によって露光したとき、Xp2(μm)及びYp2(μm)が、それぞれ、Xp1及びYp1と一致しない場合がある。
【0106】
こうした場合においても、
0.9Xp1≦Xp2≦1.1Xp1 ・・・式(21)
0.9Yp1≦Yp2≦1.1Yp1 ・・・式(22)
を満たせば、本発明の作用効果が十分に得られる。すなわち、上記範囲のXp2及びYp2により、表示装置製造において実質的な問題は生じない。
上記の修正方法により、欠陥を生じた補助パターンに対する直接的な修正を行うことなく、フォトマスクの性能を回復することができる。
【実施例2】
【0107】
図6及び図7を参照して、第1フォトマスクの転写用パターンに黒欠陥を生じたときに、これを修正する方法を説明する。図3に示すように、補助パターン12に黒欠陥14を生じた転写用パターンに対し、以下の要領で修正を行なう。
【0108】
図6(a)には、補助パターン52の部分に黒欠陥54を生じた欠陥転写用パターン5が示されている。欠陥転写用パターン5は、透光部からなる主パターン51、半透光部からなる補助パターン52及びそれら以外の領域を示す遮光部53(OD>3)を含み、補助パターン52には黒欠陥54が含まれる。透光部は、X-CDがXm1=2.0μm、Y-CDがYm1=2.0μmの正方形であり、補助パターン52は幅dが1.3μm、間隔Pが3.25μmの八角形帯によってなり、補助パターン52の透過率T1は45%、位相シフト量φ1が、180度である。欠陥転写用パターン5は、欠陥がなければ、表示装置製造用露光装置を用いて露光したときに、被転写体(表示パネル基板)上に、X-CDとしてXp1が1.50μm、Y-CDとしてYp1が1.50μmのホールパターンを形成するためのものである。
【0109】
まず、修正によって到達すべき、修正転写用パターン6の形状を特定する特定工程30を行う。ここで、特定工程30は、実施例1と同様に、修正主パターンのCD値を算出する算出工程により行う。本実施例においても、算出工程に光学シミュレーションを用いる。光学シミュレーションにあたっては、シミュレーション条件において、黒欠陥の形状(位置、面積を含む)を、フォトマスクに関する設定条件として入力することができる。
【0110】
本実施例のシミュレーションは、図6(b)のように、補助パターン52に予備加工50を行った後の形状を前提として行う。予備加工の詳細については後述する。
【0111】
仮に、図6(b)の状態のままで、転写用パターンを露光すると、被転写体上には、X-CD=0.96μm、Y-CD=0.93μmのホールパターンが形成されることが光学シミュレーションによりわかった。これは、目標値、すなわちXp1=Yp1(=1.5μm)に対して、不足している。
【0112】
そこで、上記した前提をもとに、図6(b)に示される残存補助パターンに対して、主パターンのX-CD、及びY-CDをどのような値とすれば、被転写体上にXp1=Yp1(=1.5μm)のホールパターンを形成することができるかを光学シミュレーションによって算出した(算出工程)。
【0113】
算定手法の一例としては、転写用パターンの設計デザイン上、可能な数値範囲における任意のX-CDに対し、Y-CDを可能な数値範囲内で変化させて組み合わせたときに、被転写体上に形成される転写像を解析し、これらの組合せの中から目標のXp1とYp1の値が得られるXm2とYm2の組合せを求める。X-CD及びY-CDの可能な数値範囲とは、修正転写用パターン6において、主パターンと補助パターンが接触しない範囲である。
【0114】
その結果、上記の例では、修正転写用パターン6において、X-CDとしてXm2=1.82μm、Y-CDとしてYm2=2.44μmとすることにより、目標値のX-CD、Y-CDを持つホールパターンが被転写体上に形成できることが特定された(特定工程)。このとき、修正の前後において、主パターンの重心位置は変化しないものとした。
【0115】
上記で触れたとおり、シミュレーションをより効率的に行なうため、黒欠陥54を生じた補助パターン52の欠陥形状を整える、予備加工50を行なうことができる。例えば、複雑な形状で黒欠陥が生じた場合など、特定工程30においてシミュレーション条件が複雑になることを回避するため、該黒欠陥形状を補充膜によって整える(すなわち欠陥を生じた補助パターンの残存する部分の形状を整える)ことが可能である。予備加工後の形状を考慮し、これを前提として、上記シミュレーションの条件を決定することができる。
【0116】
具体的には、図6(a)で残存している補助パターン52に、遮光性の補充膜58を形成し、図6(b)の形状に加工する。補充膜は、低透光部の光学特性を参照し、低透光性(ここでは遮光性)のものを用いることができる。予備加工後の補助パターンの形状を前提として(見込んで)、特定工程30のシミュレーションを行なう。
【0117】
本実施例では特定工程30の後に予備加工50を行うが、予備加工50は、特定工程30の前に行っても、同時に行ってもよい。
【0118】
次に、特定工程により特定された修正転写用パターン6とするため、修正工程40を実施する。まず、上記シミュレーションの前提どおりに、補助パターンに形状加工を加える予備加工50を行い、図6(b)の形状とする。なお、形状加工に用いる補充膜は例えばCVD法により形成する。この場合、補充膜58は、Cr系のCVD膜を用いることができる。
【0119】
次に主パターンのX-CD、Y-CDを増減する修正を施す。なお、ここでは、いったん欠陥転写用パターンにおける主パターン51の領域全体に遮光性の補充膜を形成し、開口を補充膜で埋めている(図6(c)参照。以降、主パターンの開口全体に低透光性(遮光性)の補充膜を形成し、開口を補充膜で埋めることを、「孔埋め」ということがある。)。その上で、レーザを照射して補充膜(及び必要な部分の遮光膜)を除去し、特定工程で特定したとおりの形状となるように主パターンのX-CD、Y-CDを形成する。このように主パターンを孔埋めしたのちに、目標寸法の主パターン511を形成する方法は、修正した主パターン511の位置とサイズを正確に形成しやすい点で有利である。
【0120】
そして、図6(d)に示す、修正転写用パターン6を得る。すなわち、Xm2が1.82μm、Ym2が2.44μmであるような、長方形の主パターンを持つ修正転写用パターンの形状を形成する。
【0121】
修正の過程で、結果に影響を与えない工程順序の入れかえを行なっても良い。以下の実施例においても同様である。例えば、本実施例において図6(b)に示された補助パターンの予備加工50と図6(c)に示された主パターン51の孔埋めとは、処理の順序が逆になってもよく、処理を同時に行ってもよい。
【0122】
実施例2においては、補助パターン52に生じた黒欠陥54の形状に対し、特定工程の算定を簡易化するために、補助パターン52の形状を整える予備加工50を行なうことを前提として、シミュレーションを行なった。なお、補助パターン52の予備加工は必須ではなく、生じたままの黒欠陥54の形状をもとにシミュレーションを行なってもよいことは、言うまでもない。
【実施例3】
【0123】
実施例3として、特定工程30を効率的に行なう方法について以下に説明する。本実施例においては、算出工程に代えて類型参照工程を行う。
【0124】
特定工程30のもう一つの手法である類型参照工程について説明する。図8は、第1フォトマスクの補助パターンに生じる黒欠陥の類型を配列したものである。すなわち、図8に示す欠陥類型の一覧は、八角形帯の補助パターンを例とし、この八角形帯を構成する、45度ずつ傾きの異なる8つの区画のうち、失った区画の数によって、欠陥類型を、(1)行~(8)行に分類している。さらに、失った区画の位置の組合せの、場合の数に応じて、欠陥類型を、(a)列~(m)列に配列している。ただし、補助パターンの重心を中心として90度回転したときに同一となる複数の類型、及び、互いに鏡像の関係にある類型については、これらのうち代表を1つのみ掲載している。なお、図8において、低透光部は他図よりも濃い色で塗りつぶしているが、図としての視認性を高めるためであって、当図の低透光部と他図の低透光部との間に、光学濃度等の物性の差異があることを示すものではない。後述する図9の低透光部についても同様である。
【0125】
このように、生じうる欠陥類型を把握し、予めこれら欠陥類型に対して適切なXm2及びYm2の数値をシミュレーションによって算出しておくことができる。そして、個々の欠陥類型に対するXm2とYm2の組合せを互いに対応づけた状態で、データベースとして、電子機器又はそれに付属する記憶媒体などに保存しておく。そして、特定工程では欠陥類型を参照して、適用すべき欠陥類型を選定し、選定した欠陥類型に対応づけられたXm2とYm2の組合せを参照する。これにより、修正転写用パターンの形状を特定する。
【0126】
欠陥が生じた転写用パターンの形状を、選定した欠陥類型と等しくするため、予備加工50をしてもよい。予備加工50は、上述のとおり、黒欠陥の生じた補助パターンに補充膜を形成することにより行う。予備加工を行う際には、残存する補助パターンをできるだけ多く残すことを考慮しつつ、該残存する補助パターンの形状を、いずれかの欠陥類型と等しくなるようにする。
【0127】
図8は、(1)行から(8)行にかけて、残存する補助パターンの面積が次第に小さくなっていく(最後の(8)行は残存部分が無い)。したがって、予備加工を行なう際には、予備加工により、できるだけ、図8の上の方に位置する類型の形状と同一になるように、形状の加工方法を選択することが好ましい。ただし、実際の欠陥形状に等しい形状が欠陥類型に存在する場合は、予備加工をしなくてもよい。
【0128】
特定工程30の後の修正工程40は、実施例1、2と同様に行なうことができる。
【0129】
図9は、上記の方法を用いて3つの欠陥類型について、修正転写用パターンの形状を特定した例を示している。対応付けられた3つの欠陥類型(欠陥例1~3)と正常な転写用パターンで構成される正常部に関する各CD値を表している。Panel X-CD及びPanel Y-CDは、正常な転写用パターン及び欠陥例1~3に示す各欠陥類型の欠陥転写用パターンを、被転写体上に転写したときのホールパターンのX-CD及びY-CDを、光学シミュレーションにより求めたものを表す。他のCD値は上述のとおりである
図9の欠陥例3は、実施例2にて説明した修正方法で特定した修正転写用パターンに関するものである。
【0130】
ここに示した3つの欠陥例は、予備加工により補助パターンの黒欠陥を図8の類型のいずれかと一致させるので、予め算定した主パターンのCD値(Xm2、Ym2)を参照して、修正転写用パターンを得ることができる。なお、図9は、修正前の正方形の主パターンを図示しているが、Xm2、Ym2の数値から、修正転写用パターンは、いずれもYm2がXm2より大きい長方形となることがわかる。なお、図9に記載したシミュレーション条件は、露光装置の開口数NAを0.1とし、コヒレンスファクタσを0.5とし、用いた露光光は、i線、h線、g線を含むものとし、i線、h線、g線の強度比が1.0:0.8:1.0である。
【実施例4】
【0131】
上記実施例1~実施例3における修正方法は、黒欠陥を生じた補助パターンに対する修正を施さず、主パターンの修正のみによって修正転写用パターンを形成するものであった。実施例4では、補助パターンに修正膜を形成する予備修正を行う。
【0132】
例えば、黒欠陥を生じた補助パターンに、半透光性の修正膜によって修正を施そうとする場合が考えられる。但し、上述のように、修正膜の光学物性を正常な半透光膜と一致させることは困難であるため、正常な転写用パターンを完全に復元することは困難である。しかしながら、上記修正膜による補助パターンの修正に併せて、本発明にかかる修正方法を適用することにより、被転写体上に設計どおりのCD値を得ることができる。
【0133】
図10及び図11を参照して、第1フォトマスクの転写用パターンに黒欠陥を生じたときに、これを修正する方法を説明する。図10(a)は、図6(a)と同様に黒欠陥54を生じた補助パターン52を含む欠陥転写用パターン5を示す。図11は、実施例4の欠陥修正フローを示す。本実施例では、補助パターン52の黒欠陥54を持つ転写用パターンに対して、該補助パターン52に半透光性の修正膜を形成して予備修正60を行なうことを想定し、修正転写用パターンの形状を特定するための特定工程を実施する。そして、上記予備修正60を実施するとともに、主パターンのX-CD、Y-CDの増減を行なう。
【0134】
なお、本実施例では、予備修正60の前に、図10(b)にて、上記図6(c)と同様に、主パターン51を遮光性の補充膜で埋める孔埋めを行う。もちろん、上述したように、主パターン51の孔埋めは必須の工程ではなく、孔埋めを行わずに主パターン51のCD値を増減させる加工を行ってもよい。また、主パターン51の孔埋めを行う場合、孔埋めを後述の予備修正60の後に行ってもよい。図10のように、主パターン51の孔埋めを予備修正60の前に行うことにより、予備修正60を行う際に、主パターン51の開口部に修正膜成分等の異物が付着しないという利点がある。
【0135】
次に、図10(c)では、黒欠陥54を形成している遮光膜を除去するとともに、補助パターン52と同じ幅で透明基板を露出させ、いわば人為的に白欠陥541を形成する。これによって、修正膜を形成する領域の形状を整える。
【0136】
図10(d)で、上記で形成した白欠陥541に半透光性の修正膜542を修正半透光部として形成する予備修正60を行なう。
【0137】
予備修正60に用いる修正膜542は、CVD膜でもよく、又はFIB膜でもよく、その材料は上述の修正膜と同様のものを使用することができる。修正膜542は、主パターンを埋める際に用いた上記補充膜と同じ材料からなるものでもよく、又は異なる材料からなるものでもよい。
【0138】
上述のとおり、正常な半透光膜と同一の光学特性を持つ修正膜の形成は困難であるが、修正膜542は、可能な限り、正常な半透光膜に近い光学特性を持つものとすることが望ましい。
【0139】
例えば、修正膜542の露光光の透過率T4(%)は、
30≦T4≦80 ・・・式(23)
であることが好ましく、より好ましくは、
40≦T4≦70 ・・・式(24)
であるとよい。
【0140】
ただし、修正膜542の透過率T4は、補助パターンの透過率T1の値を超えないことがより好ましい。この場合、露光の際に、修正後の補助パターンが被転写体上に解像するリスクを防止できる。
【0141】
さらに、修正膜542は、露光光の代表波長に対する位相シフト量φ2(度)を有し、φ2は、180±40度の範囲内であることが好ましい。すなわち、
140≦φ2<220 ・・・式(25)
であることが好ましい。この修正膜542は、
φ2<160 ・・・式(26)
あるいは、
φ2>200 ・・・式(27)
である場合がある。
【0142】
すなわち、修正膜542を形成した結果の補助パターン52の形状(半透光膜、修正膜のそれぞれの位置、面積を含む)及び、その光学特性を基にして、被転写体上に、設計値どおりのホールパターンを形成するための、主パターン512の形状(Xm2,Ym2)を、上記特定工程30において求める。つまり、予備修正60を施した補助パターン52を光学シミュレーションの条件として使用することにより、該予備修正した補助パターン52とともに、如何なる形状(寸法)の主パターン512とすれば、被転写体上に目標値X-CD、Y-CDをもつホールパターンを得ることができるかを、算定すればよい(算出工程)。
【0143】
本実施例のように、特定工程30を行ったのちに予備修正60を行うことが好ましい。但し、予備修正60を特定工程30の前に行っても、特定工程30と予備修正60とを同時に行ってもよい。
【0144】
図10(e)で修正工程40を行う。すなわち、特定した形状の主パターン512を形成する。補充膜によって埋められた主パターンを改めて形成するための手段としては、レーザザッピング又はイオンビームエッチングなどが適用できる。図10(e)には、修正が完成した修正転写用パターンを示す。主パターン51の孔埋めを行っていない場合には、主パターン11のX-CD、Y-CDを増減する修正を施して、適正なCD値を有する主パターン512を形成する。
【実施例5】
【0145】
実施例4では、黒欠陥を生じた補助パターンに、半透光性の修正膜によって修正を施すことを前提にした上、それによる修正効果が不十分であることを考慮して、特定工程30、すなわち、主パターンのX-CD、Y-CDの増減を算出する算出工程を行い、算出工程の算出結果に基づいて修正を施す例を挙げた。本実施例では、欠陥修正をさらに効率的に行なう、予備修正類型を使用する方法を説明する。
【0146】
すなわち、本実施例では、適用する修正膜の透過率T4(%)と位相シフト量φ2(度)を予め決定し、この修正膜による予備修正後の形状と、これに伴なう主パターンのXCD、Y-CDの増減を、予め類型化して把握しておくことにより、確実で効率的な修正転写用パターンの形成を行なう。
【0147】
なお、ここでは、修正膜の形成幅は、正常な補助パターンの幅dと同一とする。ただし、正常な補助パターンと異なる幅としてもよい。その場合には、T4、φ2とともに、シミュレーション条件のパラメータとして反映させればよい。
【0148】
図12(a)には、図8(3)-(c)に示す欠陥類型81を示し、図12(b)には、該欠陥を、修正膜911を用いて修正した予備修正類型91を示す。また図13(a)には、図8(4)-(g)に示す欠陥類型82を示し、図13(b)には、該欠陥を、修正膜912を用いて修正した予備修正類型92を示す。これらに例示するように、欠陥類型の各々に対して、修正膜の形成方法を予め決定しておくことができる。
【0149】
さらに、このような予備修正後に(又は予備修正前に)、予め求めておいたXm2、Ym2とすべく、主パターンに対して必要なX-CD、Y-CDの増減を行い、主パターンを形成することによって、修正転写用パターンが完成する。
【0150】
なお、2つの欠陥類型から2つの予備修正類型を決定する例を示したが、図8に例示するすべての欠陥類型に対して、それぞれの補助パターンの黒欠陥に上記で選択した規定の修正膜による修正を施すものとし、その修正方法を予め決定しておくことができる。
【0151】
このとき、修正膜形成部分の形状は、上記実施例3と同様に、残存する補助パターンをできる限り残すとともに、シミュレーションの効率を考慮して、図8における例にならい、決定する。これによって、図8に例示する欠陥類型の各々に対する予備修正類型を把握でき、図8と同様に配列して保存することができる(不図示)。
【0152】
さらに、該予備修正類型に対して、それぞれ、主パターン11のX-CD、Y-CDに必要な増減を施した際の、正しいXm2、Ym2を得ておく。こうして、予備修正類型の各々に対応する、適切なXm2、Ym2を対応づけて把握し、保存しておけばよい。
【0153】
ところで、図12(b)、図13(b)の予備修正類型をみると、形成された修正膜911、912の外縁は、補助パターンの多角形帯の外周頂点と内周頂点とを結ぶ直線上にない。これは、修正装置の仕様上、修正膜領域が長方形の組み合わせにより形成されるためである。他方、図12(a)、図13(a)に示された欠陥類型81、82では、多角形帯の外周頂点と内周頂点とを結ぶ直線に基づいて各区画が設定されており、予備修正類型91、92と欠陥類型81、82との間で、それぞれ欠陥領域と修正領域が厳密には一致しない。したがって、長方形の組み合わせにより修正膜領域が形成される仕様の修正装置を使用する場合には、当該修正装置によって形成可能な修正膜の形状を踏まえて、欠陥類型の個々の形状を微調整すればよい。修正装置が修正膜領域の形状に特段の制限を有しない場合には、欠陥類型の形状を調整することなく、欠陥類型に応じた修正膜領域を形成すればよい。
【0154】
実際に、転写用パターンにおいて補助パターンに黒欠陥が生じた場合には、まず該欠陥に対応する欠陥類型を、図8の一覧に示された欠陥累計群から求めるとともに、該欠陥類型に対応する予備修正類型を求め、さらに、該予備修正類型に対応づけられたXm2、Ym2とするために、必要なX-CD、Y-CDの増減を行なえばよい。このような一連の修正工程が、効率よく行なえる。
【実施例6】
【0155】
実施例1~5では、補助パターンに生じた黒欠陥を修正した。一方、補助パターンに白欠陥が生じた場合にこれを修正する方法も、本発明に含まれる。例えば、転写用パターンの補助パターンに形成されるべき正常な半透光膜が何らかの原因により欠落した白欠陥(例えば図10(c)に示された状態)に対し、予備加工又は予備修正を行うことで、修正転写用パターンにすることができる。白欠陥に対し、低透光性(又は遮光性)の補充膜を形成する予備加工を施せば、黒欠陥の修正(実施例1~実施例3)と同様に主パターンの修正が可能となる。また、白欠陥に、半透光性の修正膜を形成する予備修正を行えば、予備修正後の欠陥転写用パターンの修正(実施例4~5)と同様に主パターンの修正が可能となる。
【0156】
上述の各実施例は、第1フォトマスクの欠陥修正方法について説明するものであるが、同様の修正方法が第2フォトマスクについても適用できる。
【0157】
<修正転写用パターンを持つフォトマスクの製法について>
本発明は、上記修正方法を含む、フォトマスクの製造方法を含む。例えば、第1フォトマスクは、透明基板上に半透光膜及び低透光膜をこの順に積層し、レジスト膜を塗布したフォトマスクブランクを用意し、それぞれの膜に対して描画、現像、エッチングを適用したフォトリソグラフィを適用することにより、製造することができる。描画に際しては、例えば、レーザ描画装置を用いることができる。
【0158】
また、半透光膜や低透光膜の材料は特に制限されない。半透光膜の膜材料としては、例えば、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Tiのうち少なくとも1つとSiを含む材料、又は、これらの材料の酸化物、窒化物、酸化窒化物、炭化物、又は酸化窒化炭化物を含む材料を使用できる。低透光膜(好ましくは遮光膜)としては、Cr又はその化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物)であっても良く、又は、Mo、W、Ta、Tiのうち少なくとも1つを含む金属のシリサイド、又は、該シリサイドの上記化合物であっても良い。
【0159】
フォトマスクブランクの低透光膜の材料は、半透光膜と同様にウェットエッチングが可能であり、かつ、半透光膜の材料に対してエッチング選択性を持つ材料が好ましい。すなわち、半透光膜のエッチング剤に対して低透光膜は耐性を持ち、また、低透光膜のエッチング剤に対して、半透光膜は耐性を持つことが望ましい。
【0160】
第2フォトマスクは、透明基板上に低透光膜を形成し、レジスト膜を塗布したフォトマスクブランクを用意し、該低透光膜と、透明基板の表面に対して、所定のパターニングを施して、製造することができる。低透光膜の材料については、上記第1フォトマスクに挙げたものと同様とすることができる。
【0161】
第1フォトマスク、第2フォトマスクにおいて、半透光膜や低透光膜の成膜方法としては、スパッタ法等公知の方法を適用することができる。
【0162】
上記第1フォトマスク又は第2フォトマスクに例示されるフォトマスクにおいて、その補助パターンに欠陥が生じたとき、これを上述の修正方法によって修正することを含む、フォトマスクの製造方法が適用できる。
【0163】
<表示装置の製法について>
また、本発明は、上記修正方法によって修正を施したフォトマスクを用意し、これをi線、h線、及びg線の少なくとも一つを含む露光光を用意したフォトマスクに照射して、被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法である。i線、h線及びg線の全てを含むブロードな波長の露光光を用いて転写を行なってもよい。
【0164】
<修正フォトマスクについて>
さらに、本発明は上記修正方法によって修正を施したフォトマスクを含む。すなわち、例えば第1フォトマスク又は第2フォトマスクが有する修正転写用パターンは、主パターンに修正が施された結果として、その透光部(低透光膜に形成された開口)のエッジに、少なくとも部分的に上記補充膜の断面を有するものである。すなわち、修正転写用パターンは、レーザザッピング断面又はイオンビームエッチング断面を持つことができる。
【0165】
また、この修正フォトマスクは被転写体上にX-CDとY-CDが等しいホールパターンを形成するものであるにもかかわらず、その修正転写用パターンの持つ主パターンは、正方形であるとは限らず、長方形(つまりXm2≠Ym2)ともなり得る。
【0166】
また、第1フォトマスクに対して、本発明の修正が施されたとき、上記に加え、以下の特徴を持つ修正転写用パターンが形成されることがある。すなわち、該修正転写用パターンには、その補助パターンの領域において、少なくとも一部に、半透性の修正膜が形成されたものとなる。さらに、その補助パターンの領域において他の一部には、正常な半透光膜が形成されたものとなる場合もある。
【0167】
また、本発明の修正フォトマスクは、透明基板上に、ホールパターンを形成するための転写用パターンと、前記転写用パターンの一部に生じた欠陥転写用パターンに対し修正が施された修正転写用パターンとを、を含んでいる。上記した本発明のフォトマスクは、被転写体上にコンタクトホール等のホールパターンを形成する用途に、極めて有用である。
【0168】
一般に、パターンの種類としては、一定の規則性をもって多数のパターンが配列することにより、これらが相互に光学的な影響を及ぼしあう密集(Dense)パターンと、こうした規則的配列のパターンが周囲に存在しない孤立パターンとを区別して呼称することが多い。本発明のフォトマスクは、被転写体上に孤立ホールパターンを形成しようとするとき好適に適用される。
【0169】
本発明のフォトマスクには、光学系のNA(開口数)が、0.08~0.15程度、σ(コヒレンスファクタ)が0.4~0.7の等倍のプロジェクション露光装置を適用することができる。縮小倍率2倍以内の縮小光学系、もしくは、拡大倍率2倍以内の拡大光学系を用いてもよい。露光光源は、i線、h線、及びg線のいずれか、又はすべてを含むものを利用することが好適である。
【0170】
本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、例えば、上述の実施例の一部を設計変更したり、複数の実施例を組み合わせたり、実施例の数値を変更したりするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0171】
1、2 :転写用パターン
3、5 :欠陥転写用パターン
4、6 :修正転写用パターン
11、51 :(修正前の)主パターン
12、22、52 :補助パターン
13 :低透光部
14、54 :黒欠陥
15 :透明基板
16 :半透光膜
17 :低透光膜
18、58 :補充膜
30 :特定工程
40 :修正工程
50 :予備加工
60 :予備修正
81、82 :欠陥類型
91、92 :予備修正類型
111、511、512 :(修正後の)主パターン
541 :白欠陥
542、911、912 :修正膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13