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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】記録装置及びトレイユニット
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20240216BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240216BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B65H31/00 B
B41J2/01 305
B41J29/13
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020023661
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127229
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 広行
(72)【発明者】
【氏名】石田 靖
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 正昭
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-039259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00
B41J 2/01
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに記録を行う記録装置であって、
シートが積載されるトレイと、
前記トレイが引き出し可能に収納される収納部と、
前記収納部に対する前記トレイの引き出し方向のスライドを案内する第一のガイド手段と、
前記第一のガイド手段に対して、前記トレイの幅方向に離間し、前記収納部に対する前記トレイの引き出し方向のスライドを案内する第二のガイド手段と、
前記収納部に設けられ、前記トレイとの当接により、前記トレイの前記幅方向の一方の方向の傾きを規制する第一の規制部と、
前記収納部に設けられ、前記トレイとの当接により、前記トレイの前記幅方向の他方の方向の傾きを規制する第二の規制部と、を備え、
前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段は、それぞれ、
前記トレイ又は前記収納部の一方に設けられ、前記引き出し方向に延設されたガイド部と、
前記トレイ又は前記収納部の他方に設けられ、前記ガイド部に対して前記幅方向に当接可能な摺接部と、を備え、
前記第一の規制部は、
前記トレイが前記一方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記トレイと当接するように配置され、
前記第二の規制部は、
前記トレイが前記他方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記トレイと当接するように配置される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段は、前記幅方向で、前記第一の規制部と前記第二の規制部との間に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の記録装置であって、
前記第一のガイド手段及び前記第一の規制部と、前記第二のガイド手段及び前記第二の規制部とは、前記幅方向で前記トレイの中心に対して対称となるように配置されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記収納部に対する前記トレイの位置に関わらず、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部は、前記第一の規制部及び前記第二の規制部に対して、前記引き出し方向にずれた位置に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記第一の規制部は、前記トレイの一方の側面に前記幅方向に当接するように配置され、
前記第二の規制部は、前記トレイの他方の側面に前記幅方向に当接するように配置される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記第一の規制部及び前記第二の規制部は、前記引き出し方向で前記収納部の手前側の端部に配置されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記収納部に設けられた第一の係合部と、
前記トレイに設けられ、前記トレイを前記収納部から引き出した引出位置において前記第一の係合部と係合する第二の係合部と、を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項に記載の記録装置であって、
前記トレイに設けられ、前記引出位置よりも前記トレイが引き出されることを規制するストッパを備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記トレイは、前記引き出し方向に延設された一対の側面を有し、
前記第一のガイド手段及び前記第一の規制部と、前記第二のガイド手段及び前記第二の規制部とは、前記幅方向で前記トレイの中心に対して対称となるように配置され、
記第一の規制部は、前記一対の側面の一方の側面に前記幅方向に当接するように配置され、
前記第二の規制部は、前記一対の側面の他方の側面に前記幅方向に当接するように配置され、
前記収納部に対する前記引き出し方向での前記トレイの位置に関わらず、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部は、前記第一の規制部及び前記第二の規制部に対して、前記引き出し方向の奥側に位置している、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項に記載の記録装置であって、
前記収納部に設けられた第一の係合部と、
前記トレイに設けられ、前記トレイを前記収納部から引き出した引出位置において前記第一の係合部と係合する第二の係合部と、
前記トレイに設けられ、前記引出位置よりも前記トレイが引き出されることを規制する第一のストッパと、
前記トレイに設けられ、前記引出位置よりも前記トレイが引き出されることを規制する第二のストッパと、を備え、
前記第一のストッパは、前記第一のガイド手段の前記摺接部と当接することにより、前記引出位置よりも前記トレイが引き出されることを規制し、
前記第二のストッパは、前記第二のガイド手段の前記摺接部と当接することにより、前記引出位置よりも前記トレイが引き出されることを規制する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の記録装置であって、
前記トレイは、記録済みのシートが排出される排出トレイである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の記録装置であって、
前記トレイは、記録前のシートが積載される給送トレイである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
シートが載置されるトレイユニットであって、
シートが積載される第一のトレイと、
前記第一のトレイが引き出し可能に収納される第二のトレイと、
前記第二のトレイに対する前記第一のトレイの引き出し方向のスライドを案内する第一のガイド手段と、
前記第一のガイド手段に対して、前記第一のトレイの幅方向に離間し、前記第二のトレイに対する前記第一のトレイの引き出し方向のスライドを案内する第二のガイド手段と、
前記第二のトレイに設けられ、前記第一のトレイとの当接により、前記第一のトレイの前記幅方向の一方の方向の傾きを規制する第一の規制部と、
前記第二のトレイに設けられ、前記第一のトレイとの当接により、前記第一のトレイの前記幅方向の他方の方向の傾きを規制する第二の規制部と、を備え、
前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段は、それぞれ、
前記第一のトレイ又は前記第二のトレイの一方に設けられ、前記引き出し方向に延設されたガイド部と、
前記第一のトレイ又は前記第二のトレイの他方に設けられ、前記ガイド部に対して前記幅方向に当接可能な摺接部と、を備え、
前記第一の規制部は、
前記第一のトレイが前記一方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記第一のトレイと当接するように配置され、
前記第二の規制部は、
前記第一のトレイが前記他方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記第一のトレイと当接するように配置される、
ことを特徴とするトレイユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及びトレイユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの記録装置においては、記録を行う記録用紙等の媒体を積載するトレイや、記録済みの媒体を載置するためのトレイが設けられている。記録装置の占有空間を削減するため、使用しない場合にトレイを収納可能な構造が提案されている。特許文献1にはトレイをスライドして引き出し、また、収納可能な構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-39259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライド式のトレイの引き出し構造においては、トレイが引き出された状態から収納状態へユーザがトレイを押し込む際、トレイが傾く場合がある。トレイの傾きが大きくなると、収納空間をトレイが幅方向に押し広げる力関係となり、トレイの操作性が悪化する。トレイの傾きは、ユーザがトレイを押圧する位置が左右のいずれかに偏った場合に発生し得る。トレイの特定の場所に取手を形成したとしても、ユーザが取手を用いるとは限らず、トレイは左右の双方向に傾き得る。
【0005】
本発明は、スライド式のトレイの操作性を向上する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
シートに記録を行う記録装置であって、
シートが積載されるトレイと、
前記トレイが引き出し可能に収納される収納部と、
前記収納部に対する前記トレイの引き出し方向のスライドを案内する第一のガイド手段と、
前記第一のガイド手段に対して、前記トレイの幅方向に離間し、前記収納部に対する前記トレイの引き出し方向のスライドを案内する第二のガイド手段と、
前記収納部に設けられ、前記トレイとの当接により、前記トレイの前記幅方向の一方の方向の傾きを規制する第一の規制部と、
前記収納部に設けられ、前記トレイとの当接により、前記トレイの前記幅方向の他方の方向の傾きを規制する第二の規制部と、を備え、
前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段は、それぞれ、
前記トレイ又は前記収納部の一方に設けられ、前記引き出し方向に延設されたガイド部と、
前記トレイ又は前記収納部の他方に設けられ、前記ガイド部に対して前記幅方向に当接可能な摺接部と、を備え、
前記第一の規制部は、
前記トレイが前記一方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記トレイと当接するように配置され、
前記第二の規制部は、
前記トレイが前記他方の方向に傾くことにより、前記第一のガイド手段及び前記第二のガイド手段の各摺接部の双方が対応する前記ガイド部に当接する前に、前記トレイと当接するように配置される、
ことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スライド式のトレイの操作性を向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る記録装置の外観図。
図2】給送トレイの展開状態を示す図。
図3図1の記録装置のトレイユニットを展開した状態を示す図。
図4】(A)はトレイの収納態様を示す図、(B)はトレイの引き出し態様を示す図。
図5】(A)はトレイの部分拡大斜視図、(B)は図(A)のA-A線断面図。
図6】トレイユニットの要部底面図(収納態様)。
図7】トレイユニットの要部底面図(展開態様)。
図8】(A)及び(B)はトレイユニットの要部斜視図(展開態様)。
図9】(A)及び(B)はトレイに傾きが生じた状態の説明図。
図10】(A)及び(B)はトレイに傾きが生じた状態の説明図。
図11】(A)及び(B)はトレイに傾きが生じた状態の説明図。
図12】(A)及び(B)はトレイの寸法設計例の説明図。
図13】(A)は図(A)のB-B線断面図、(C)は図(A)のC-C線断面図。
図14】トレイに傾きが生じた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<記録装置>
図1は本発明の実施形態に係る記録装置1の外観図である。記録装置1はシリアル型のインクジェット記録装置であり、記録媒体にインクを吐出して画像を記録する装置である。しかし本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
記録装置1は、給送トレイユニット2、アクセスカバー3、操作パネル4a、電源ボタン4b、排出トレイユニットTUが設けられている。給送トレイユニット2は、展開自在に設けられており、図1では格納状態にある給送トレイユニット2が図示されている。図では展開状態の給送トレイユニット2が図示されている。給送トレイユニット2はトレイ20と、トレイ20に対して引き出し可能に収納されるトレイ21とを備える。図14に示すように給送トレイユニット2には、その展開時において、画像をこれから記録する記録前の記録媒体Sが積載される。
【0013】
アクセスカバー3は開閉自在に設けられており、図1では閉状態にあるアクセスカバー3が図示されている。アクセスカバー3を開状態にすると、記録装置1の内部構造が露出する。記録装置1の内部には、インクタンクを搭載したキャリッジ、キャリッジに支持され、インクを吐出する記録ヘッド、キャリッジを主走査方向に往復動させる駆動機構、記録媒体Sを副走査方向に搬送する搬送機構、制御回路等が設けられている。アクセスカバー3を開状態にするとインクタンクの交換作業を行うことができる。
【0014】
操作パネル4aは、ユーザの操作を受け付けるボタン類とユーザに情報を提供する表示部とを含む。電源ボタン4bは、ユーザによる記録装置1の電源のオン・オフ操作を受け付ける。排出トレイユニットTUは前面ドア5を備えている。排出トレイユニットTUは、図1のように前面ドア5が装置1の外観を形成する格納状態と、図3に示す展開状態とに回転軸部5aを回動中心として展開自在に設けられている。
【0015】
排出トレイユニットTUは、前面パネル5の裏側に形成されたトレイ5b、トレイ5bにヒンジ部6aを介して回動自在に連結されたトレイ6、及び、トレイ6に対して引き出し可能なトレイ7とを含む。矢印Yはトレイ7の引き出し方向を示し、Bは奥側(収納側)、Fは手前側(引き出し側)を示す。引き出し方向Yはトレイ6及びトレイ7の積載面と平行な方向である。矢印Xはトレイ6及びトレイ7の幅方向を示し、装置1の幅方向でもある。Lは幅方向Xの一方側(例えば左側)、Rは幅方向Xの他方側(例えば右側)を示す。引き出し方向Yと幅方向Xは交差しており、本実施形態の場合、直交している。
【0016】
図4(A)及び図4(B)はトレイユニットTUの斜視図を示し、図4(A)はトレイ6にトレイ7が収納された状態を、図4(B)はトレイ6からトレイ7が引き出された状態を、それぞれ示す。トレイ7は、例えば、排出方向の長さの短い記録媒体Sを使用する時は、図4(A)の収納状態で使用され、排出方向の長さの長い記録媒体Sを使用する時は、図4(B)の引き出し状態で使用される。トレイ7にはY方向でF側の端部で、かつ、X方向中央部に取手7cが形成されている。取手7c(指かけ)を把持することでユーザはトレイ7の引き出し、収納操作を行いやすくなる。
【0017】
トレイ5b、トレイ6及びトレイ7は装置1の内部から排出される記録媒体Sが積載される積載部を形成する。装置1の内部から排出される記録媒体Sは、通常は画像が記録されている記録後の記録媒体である。排出トレイユニットTUの格納時には、トレイ7がトレイ6に収納され、トレイ6がトレイ5bに対してヒンジ部6aにより折り畳まれたのち、全体として回転軸部5a周りに回動して図1の状態に至る。
【0018】
図5(A)~図8(B)を参照してトレイ7の引き出し/収納構造について説明する。図5(A)はトレイ7がトレイ6から引き出された状態を示し、図5(B)は図5(A)のA-A線断面図である。トレイ6はトレイ7の収納部を形成する。トレイ6は、その下側を形成するベース6cと、その上側を形成するカバー6bとを上下に重ねた中空体であり、内部にトレイ7の収納空間Vを有している。収納空間Vはトレイ6のY方向のF側端部に開口している(開口部6d)。トレイ7は全体として矩形状で板状の部材であり、一対の側面70R、70Lを有している。一対の側面70R、70Lは互いに平行にY方向に延設されている。
【0019】
トレイ7は収納空間VにY方向にスライド自在に設けられている。図6及び図7はトレイ6及びトレイ7を下側から見た図であって、トレイ6はカバー6bのみが図示されている。図6は収納状態を示し、図7は引き出し状態を示している。中心線CLはトレイ6及び7のX方向の中心線である。図8(A)はトレイ6及びトレイ7を上側から見た図であって、トレイ6はベース6cのみが図示されている。図8(B)はトレイ6及びトレイ7を側から見た図であって、トレイ6はカバー6bのみが図示されている。図8(A)及び図8(B)はいずれも引き出し状態を示している。
【0020】
トレイユニットTUは、トレイ6に対するトレイ7の引き出し方向のスライドを案内するガイド構造GR及びガイド構造GLを有している。ガイド構造GRとガイド構造GLとはX方向に離間しており、中心線CLに対して対称に配置されている。
【0021】
ガイド構造GRは、Y方向に延設されたガイド部60Rと、ガイド部60Rに対してX方向に当接可能な摺接部71Rとを含む。本実施形態の場合、ガイド部60Rはトレイ6に形成され、摺接部71Rはトレイ7に形成されている。しかし、これらの配置は逆の配置であってもよい。ガイド部60Rは本実施形態の場合、矩形断面を有するリブであり、その側面が摺接部71Rを案内する摺接面を形成する。摺接部71Rは本実施形態の場合、円筒体であり、その周面がガイド部60RにX方向に当接可能に配置されている。摺接部71Rは、ガイド部60Rに対してX方向で外側(R側)に位置している。
【0022】
ガイド構造GLは、ガイド構造GRと同じ構造を有する。すなわち、ガイド構造GLは、Y方向に延設されたガイド部60Lと、ガイド部60Lに対してX方向に当接可能な摺接部71Lとを含む。本実施形態の場合、ガイド部60Lはトレイ6に形成され、摺接部71Lはトレイ7に形成されている。しかし、これらの配置は逆の配置であってもよい。ガイド部60Lは本実施形態の場合、矩形断面を有するリブであり、その側面が摺接部71Lを案内する摺接面を形成する。摺接部71Lは本実施形態の場合、円筒体であり、その周面がガイド部60LにX方向に当接可能に配置されている。摺接部71Lは、ガイド部60Lに対してX方向で外側(L側)に位置している。
【0023】
以上の構成により、トレイ7はガイド構造GRとガイド構造GLの案内によって、Y方向にスライド自在である。ガイド部60R及びガイド部60Lの各摺動面間のX方向の距離XAと、摺接部71R及び摺接部71Lの内端間のX方向の距離XBとの関係は、XB>XAの関係にある。つまり、ガイド部60Rと摺接部71Rとの間、又は、ガイド部60Lと摺接部71Lとの間には、常にわずかな隙間があるので、トレイ7をスムーズにY方向にスライドすることができる。
【0024】
トレイ6には規制部61R及び規制部61Lが形成されている。規制部61Rはトレイ7と当接してトレイ7の、X方向でR方向の傾きを規制する。規制部61Lはトレイ7と当接してトレイ7の、X方向でL方向の傾きを規制する。規制部61R及び規制部61Lを設けたことで、トレイ7のスライドの際、トレイ7が大きく傾くことを抑制して、スムーズなトレイ7のスライドが可能となる。
【0025】
本実施形態の規制部61Rは、収納空間Vを画定するX方向の一方の側壁6eからX方向の内側(中心線CLの側)へ突出した凸部である。同様に、本実施形態の規制部61Lは、収納空間Vを画定するX方向の他方の側壁6eからX方向の内側(中心線CLの側)へ突出した凸部である。規制部61Rと規制部61LとはX方向に離間しており、中心線CLに対して対称に配置されている。この対称配置は中心線CLに対してトレイ7をセンタリングし易い構成である。
【0026】
本実施形態の規制部61Rはトレイ7の側面70RにX方向に当接するように配置されている。規制部61Rが当接する部位は側面70Rに限られないが、側面70Rを当接部位とすることで、トレイ7のY方向の任意の位置においてトレイ7の傾きを抑制できる。同様に、本実施形態の規制部61Lはトレイ7の側面70LにX方向に当接するように配置されている。規制部61Lが当接する部位は側面70Lに限られないが、側面70Lを当接部位とすることで、トレイ7のY方向の任意の位置においてトレイ7の傾きを抑制できる。
【0027】
規制部61R、61Lは、Y方向でトレイ6の手前側の端部に配置されており、特に、開口部6dを画定する壁部を形成している。トレイ7のX方向の任意の位置においてトレイ7の傾きを抑制できる。
【0028】
ガイド構造GR、GLと規制部61R、61Lとの配置について説明する。ガイド構造GR、GLは、X方向で規制部61Rと規制部61Lとの間に位置している。全体的な構造を無理なく構築できる。各摺接部71R、71Lは、トレイ6に対するトレイ7のY方向の位置に関わらず、規制部61R、61Lに対してY方向にずれた位置に位置している。トレイ7のスライドの際、トレイ7が傾く場合、摺接部71R又は摺接部71Lがその回転中心となり易い。規制部61R、61Lが摺接部71R、71Lと常にY方向に離間していることで、トレイ7が傾いた際、規制部61R、61Lによってトレイ7の傾きを正す方向のモーメントがかかり易くなり、トレイ7の傾きが深くなることを抑制できる。特に本実施形態では、各摺接部71R、71Lは、トレイ6に対するトレイ7のY方向の位置に関わらず、規制部61R、61Lに対してY方向でB側に位置している。トレイ7のY方向の位置に関わらず、規制部61R、61Lによってトレイ7の傾きを正す方向のモーメントがかかり易くなり、トレイ7の傾きが深くなることを抑制できる。
【0029】
トレイ7の傾きと引き出し操作及び収納操作について説明する。トレイ7の収納状態において、トレイ7は取手7c以外がトレイ6に隠れている(図4(A))。よってユーザは取手7cを使用して引き出すように誘導されることになる。トレイ7のX方向中心に配置された取手7cを使用してユーザがトレイ7を引き出すと、トレイ7はまっすぐに引き出される。このとき、図10(A)及び図10(B)に示すように、規制部61R、61Lと側面70R、70Lとの間にはわずかな隙間gpがある。
【0030】
図9(A)に示すように傾いた状態となった場合でも、図11(A)に示すように規制部61Lが側面70Lに当接し、その傾きが抑えられる。反対側では図11(B)に示すように規制部61Rと側面70Rとの間に隙間gpがあり、また、摺接部71とガイド部60Rとの間に隙間gpがあるため、トレイ7は小さい操作力でスムーズに引き出される。
【0031】
トレイ7の収納操作の際、図9(B)に示すように、取手7cからX方向にずれた位置が押し込まれる場合がある。図9(B)の例ではトレイ7のX方向でL側にずれた位置が押し込まれている。この場合も、図11(A)及び図11(B)に示したように、規制部61Lが側面70Lに当接し、その傾きが抑えられる。反対側では規制部61Rと側面70Rとの間に隙間gpがあり、また、摺接部71Rとガイド部60Rとの間に隙間gpがあるため、トレイ7は小さい操作力でスムーズに収納することができる。
【0032】
このように本実施形態では、規制部61Rは、トレイ7がR側に傾くことにより、ガイド構造GR、GLの各摺接部71R、71Lの双方が対応するガイド部60R、60Lに当接する前に、トレイ7の側面70Rと当接するように配置されている。同様に、規制部61Lは、トレイ7がL側に傾くことにより、ガイド構造GR、GLの各摺接部71R、71Lの双方が対応するガイド部60R、60Lに当接する前に、トレイ7の側面70Lと当接するように配置されている。
【0033】
こうした配置のための寸法設計例について図12(A)及び図12(B)を参照して説明する。図12(A)はトレイ7が最大限引き出された位置において角度θ1だけ傾いた状態を示している。同図は、摺接部71Lがガイド部60Lに当接し、かつ、摺接部71Rがガイド部60Rに当接した状態を模式的に示している。摺接部71Lがガイド部60Lに当接し、かつ、摺接部71Rがガイド部60Rに当接した状態では、ガイド部60R、60Lがトレイ7をX方向に押し広げる力関係となるので、トレイ7のスライドが重くなる。図12(A)は仮想的な例であるため、トレイ7は、側面70Lは規制部61Lの側面を超えて左側に位置している。このときのガイド部60Lの摺接面と規制部61Lとの当接線上の側面70Lとの距離をXE0とする。
【0034】
図12(B)は、図12(A)の状態から摺接部71Lを回転中心としてトレイ7を時計回りに規制部61Lと側面70Lとが当接する位置まで回転させた状態を示す。なお、この回転に際し、トレイ7が最大限引き出された状態において、摺接部71RのY方向の位置は維持されている。
【0035】
このとき、摺接部71Rがガイド部60Rから離間している。トレイ7は角度θ2(<θ1)だけ傾いている。このときのガイド部60Lの摺接面と規制部61Lとの当接線上の側面70Lとの距離をXEとする。XE<XE0の関係となる。
【0036】
上述した距離XA、XBと、図10(A)及び図10(B)に示す摺接部71L、71Rのガイド部61L、61Rに対する摺接点と側面70L、70Rとの距離XCと、距離XEの関係は、(XB-XA)+XC<XE、となる。したがって、(XB-XA)+XC<XE<XE0の関係を満たすように寸法を設計することで、摺接部71Lがガイド部60Lに当接し、かつ、摺接部71Rがガイド部60Rに当接した状態を回避することができる。
【0037】
次に、トレイ7を最大限引き出した引出位置で保持するためのロック構造について説明する。図6図8(B)などに示すように、トレイ7にはB側の端部に係合部72R、72Lが形成されている。図13(A)を参照する。図13(A)は図8(A)のB-B線断面図である。係合部72Rは、X方向に延びる二列のリブで構成され、二列のリブの間に凹部が形成される。トレイ6のベース6cには係合部72Rと係合する係合部62Rが形成されている。係合部62Rは台形断面の凸部である。係合部72Rの凹部に係合部62Rが図13(A)の如く入り込むことで両者が係合状態となる。トレイ7を収納方向に押圧すると、係合部62Rを係合部72Rが乗り上げて両者の係合が解除される。係合部72Lと、対応する係合部62L(図14に表れている)も同様の構造である。
【0038】
図13(B)を参照する。図13(B)は図8(A)のC-C線断面図である。ベース6には、トレイ7が最大限引き出した位置から更に引き出されることを規制するストッパ63Rが設けられている。ストッパ63RはX方向に延びるリブであり、摺接部71Rと当接することでトレイ7が更に引き出されることを防止する。摺接部71Lと当接するストッパ63L(図14に表れている)も設けられている。
【0039】
次に、引き出されたトレイ7が、傾いた状態で収納方向に押圧された場合のロック構造及びストッパ63R、63Lの機能について図14を参照して説明する。図14はベース6cを透過態様で示した透視図である。トレイ7の収納操作の際、トレイ7のX方向でL側にずれた位置が押し込まれている。このような場合、トレイ7は、X方向で押し込み操作側が先行して移動し、X方向で反対側の移動に遅れが生じる。図9)の例と同様、トレイ7は、規制部61Lと側面70Lとが当接する位置まで傾く。トレイ7が最大引き出し位置で傾く場合、係合部72R、72Lと、対応する係合部62R、62Lの一方の組の係合が解除されつつ、他方の組がトレイ7の傾きの回転中心となる場合がある。すると、規制部61Rと側面70Rとの摩擦増大や、摺接部71Rとガイド部60Rとの摩擦増大を生じてトレイ7の操作が重くなる場合がある。
【0040】
しかし、本実施形態の場合、ストッパ63R、63Lがこのような状態を回避し得る。ストッパ63Rは係合部62R、72Rの組よりもX方向で外側(R側)に位置している。同様に、ストッパ63Lは係合部62L、72Lの組よりもX方向で外側(L側)に位置している。図14の例では、トレイ7の傾きの回転中心は、当初、係合部72Rと、対応する係合部62Rとの係合部位となる。トレイ7の傾きにより、X方向でL側がF側へ移動する。すると、摺接部71Rがストッパ63Rに当接してその移動が規制される。その結果、トレイ7の回転中心が、摺接部71Rとストッパ63Rとの当接点に移行する。この結果、係合部72Rの位置が変化するので、係合部72Rと係合部62Rとの係合が解除される。これにより、規制部61Lと側面70Lとの摩擦増大や、摺接部71Lとガイド部60Lとの摩擦増大を回避することができる。
【0041】
<他の実施形態>
上記実施形態では、排出トレイ6、7について説明したが、その構造は給送トレイユニット2を構成するトレイ20、トレイ21にも適用可能である。
【0042】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0043】
1 記録装置、6 トレイ、7 トレイ、61R 規制部、61L 規制部、TU トレイユニット、GR ガイドユニット、GL ガイドユニット
図1
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