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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電動ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B22D17/32 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020029553
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133379
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 吉久
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】井尻 崇
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079764(JP,A)
【文献】特開2002-361698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
B22D 17/32
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に溶湯金属を射出して成形品を成形する電動ダイカストマシンであって、
射出用モータと、
前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、
前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、
前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を前記金型内に射出する射出プランジャと、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される衝撃緩衝装置とを備え、
前記衝撃緩衝装置は、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの一方に固定された第1部材と、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの他方に固定された第2部材と、
予め前記進退方向に圧縮された状態で、前記第1部材及び前記第2部材の間に配置された弾性体と、
前記弾性体の初期圧縮量を調整する圧縮量調整機構とを備え、
前記圧縮量調整機構は、
前記第1部材及び前記第2部材を前記進退方向に貫通する貫通孔に挿通され、前記第1部材に固定され、且つ前記第2部材に対して相対的に進退可能で且つ回転不能にされたタイロッドと、
前記タイロッドの前記第2部材側に形成された雄ねじに螺合され、前記第1部材と反対側に位置する前記第2部材の側面に当接する調整ナットと、
前記第2部材に対して前記調整ナットを位置決めする位置決め部材とを有し、
前記調整ナットは、
小径部と、
前記小径部と前記進退方向に隣接し、前記小径部より直径が大きい大径部とを有し、
前記位置決め部材は、前記大径部を前記進退方向に貫通する複数の第1ボルト穴と、前記複数の第1ボルト穴の一部に連通するように前記第2部材に設けられた第2ボルト穴とに螺合される位置決めボルトであることを特徴とする電動ダイカストマシン。
【請求項2】
金型内に溶湯金属を射出して成形品を成形する電動ダイカストマシンであって、
射出用モータと、
前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、
前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、
前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を前記金型内に射出する射出プランジャと、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される衝撃緩衝装置とを備え、
前記衝撃緩衝装置は、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの一方に固定された第1部材と、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの他方に固定された第2部材と、
予め前記進退方向に圧縮された状態で、前記第1部材及び前記第2部材の間に配置された弾性体と、
前記弾性体の初期圧縮量を調整する圧縮量調整機構とを備え、
前記圧縮量調整機構は、
前記第1部材及び前記第2部材を前記進退方向に貫通する貫通孔に挿通され、前記第1部材に対して相対的に進退可能で且つ回転不能にされ、且つ前記第2部材に固定されたタイロッドと、
前記タイロッドの前記第1部材側に形成された雄ねじに螺合され、前記第2部材と反対側に位置する前記第1部材の側面に当接するタイナットと、
前記進退ナットが後退限に位置するときに前記タイナットに嵌合し、前記進退ナットが前記後退限から前進すると前記タイナットから離間する嵌合ナットと、
前記嵌合ナットを回転させる調整用モータとを有することを特徴とする電動ダイカストマシン。
【請求項3】
前記圧縮量調整機構は、
前記進退ナットの周方向に離間した位置に配置された前記タイロッド、前記タイナット、及び前記嵌合ナットの複数のセットと、
複数の前記嵌合ナットが連動して回転するように、前記調整用モータの駆動力を複数の前記嵌合ナットそれぞれに伝達する駆動力伝達機構とを有することを特徴とする請求項に記載の電動ダイカストマシン。
【請求項4】
前記成形品の成形条件の入力を受け付ける入力装置と、
前記入力装置に入力された前記成形条件に応じて、前記調整用モータの回転方向及び回転量を制御する制御装置とを備えることを特徴とする請求項またはに記載の電動ダイカストマシン。
【請求項5】
金型内に溶湯金属を射出して成形品を成形する電動ダイカストマシンであって、
射出用モータと、
前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、
前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、
前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を前記金型内に射出する射出プランジャと、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される衝撃緩衝装置とを備え、
前記衝撃緩衝装置は、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの一方に固定された第1部材と、
前記進退ナット及び前記射出プランジャの他方に固定された第2部材と、
予め前記進退方向に圧縮された状態で、前記第1部材及び前記第2部材の間に配置された弾性体と、
前記弾性体の初期圧縮量を調整する圧縮量調整機構とを備え、
前記圧縮量調整機構は、
前記第1部材及び前記第2部材を前記進退方向に貫通する貫通孔に回転可能に挿通され、前記第2部材と反対側に位置する前記第1部材の側面に当接する中空のタイロッドと、
前記タイロッドの前記第2部材側に形成された雄ねじに螺合され、且つ前記第1部材と反対側に位置する前記第2部材の側面に固定されたタイナットと、
前記進退ナットの進退範囲の全域において前記タイロッドに内挿され、前記タイロッドに対して相対的に進退可能で且つ一体回転するスライドシャフトと、
前記スライドシャフトを回転させる調整用モータとを有することを特徴とする電動ダイカストマシン。
【請求項6】
前記金型の開閉及び型締を行う型締装置と、
前記電動ダイカストマシンの動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記射出プランジャを前進させる向きに前記射出用モータを駆動して、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を型締された前記金型内に射出する射出処理と、
前記型締装置に前記金型を型開させるのに連動して、前記射出プランジャを前進させる向きに前記射出用モータを駆動する突出し処理とを繰り返し実行することによって複数の成形品を成形し、
前記射出処理の前に、前記初期圧縮量を減少させる向きに前記調整用モータを駆動し、
前記突出し処理の前に、前記初期圧縮量を増大させる向きに前記調整用モータを駆動することを特徴とする請求項に記載の電動ダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって駆動される電動ダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、射出用サーボモータと、射出用サーボモータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、ねじ軸の回転に伴って進退する進退ナットと、進退ナットの進退に追従してスリーブ内を進退することによって、スリーブ内に貯留された溶湯金属を金型内に射出する射出プランジャとを備える電動ダイカストマシンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の電動ダイカストマシンは、射出時に発生するサージ圧が金型に伝搬するのを阻止するために、進退ナットに固定された第1部材と、射出プランジャに固定された第2部材と、予め弾性圧縮された状態で第1部材及び第2部材の間に配置される弾性体とを有する衝撃緩衝装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-79763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動ダイカストマシンにおいて、弾性体の初期圧縮量が大き過ぎると、サージ圧を受けたときに弾性体が十分に弾性圧縮できない。その結果、金型へのサージ圧の伝搬を阻止することができない。一方、弾性体の初期圧縮量が小さ過ぎると、小さな圧力でも弾性体が弾性圧縮されるので、射出用モータの回転に対する射出プランジャの追従性が低下する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、衝撃緩衝装置を備える電動ダイカストマシンにおいて、金型へのサージ圧の伝搬阻止と、射出用モータに対する射出プランジャの追従性の維持とを両立させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金型内に溶湯金属を射出して成形品を成形する電動ダイカストマシンであって、射出用モータと、前記射出用モータの駆動力が伝達されて回転するねじ軸と、前記ねじ軸に螺合され、前記ねじ軸の回転に伴って進退方向に進退する進退ナットと、前記進退ナットの進退に追従してスリーブ内を前記進退方向に進退することによって、前記スリーブ内に貯留された溶湯金属を前記金型内に射出する射出プランジャと、前記進退ナット及び前記射出プランジャの間に配置され、前記射出プランジャの前進時に発生するサージ圧を受けて前記進退方向に弾性圧縮される衝撃緩衝装置とを備え、前記衝撃緩衝装置は、前記進退ナット及び前記射出プランジャの一方に固定された第1部材と、前記進退ナット及び前記射出プランジャの他方に固定された第2部材と、予め前記進退方向に圧縮された状態で、前記第1部材及び前記第2部材の間に配置された弾性体と、前記弾性体の初期圧縮量を調整する圧縮量調整機構とを備え、前記圧縮量調整機構は、前記第1部材及び前記第2部材を前記進退方向に貫通する貫通孔に挿通され、前記第1部材に固定され、且つ前記第2部材に対して相対的に進退可能で且つ回転不能にされたタイロッドと、前記タイロッドの前記第2部材側に形成された雄ねじに螺合され、前記第1部材と反対側に位置する前記第2部材の側面に当接する調整ナットと、前記第2部材に対して前記調整ナットを位置決めする位置決め部材とを有し、前記調整ナットは、小径部と、前記小径部と前記進退方向に隣接し、前記小径部より直径が大きい大径部とを有し、前記位置決め部材は、前記大径部を前記進退方向に貫通する複数の第1ボルト穴と、前記複数の第1ボルト穴の一部に連通するように前記第2部材に設けられた第2ボルト穴とに螺合される位置決めボルトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、金型へのサージ圧の伝搬阻止と、射出用モータに対する射出プランジャの追従性の維持とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電動ダイカストマシンの側面図である。
図2】プランジャ駆動装置の概略斜視図である。
図3】プランジャ駆動装置の要部断面図である。
図4】圧縮量調整機構の要部拡大図である。
図5】第2実施形態において、進退ナット37が後退限に位置するときのプランジャ駆動装置の要部断面図である。
図6】第2実施形態において、進退ナットが前進限に位置するときのプランジャ駆動装置の要部断面図である。
図7】電動ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
図8】第2実施形態の変形例に係るプランジャ駆動装置の要部断面図である。
図9】第3実施形態において、進退ナットが後退限に位置するときのプランジャ駆動装置の要部断面図である。
図10】第3実施形態において、進退ナットが前進限に位置するときのプランジャ駆動装置の要部断面図である。
図11】自動成形処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動ダイカストマシン10の側面図である。電動ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。図1に示すように、電動ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30とを主に備える。
【0011】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25と、型開閉モータ26とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、電動ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0012】
可動ダイプレート25は、型開閉モータ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0013】
型締された金型21の内部には、ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oが形成される。ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oは、溶湯金属が進入する内部空間である。
【0014】
ビスケットBは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も上流側に位置する。ビスケットBは、後述する射出スリーブ31に連通して水平方向に延びる円筒形状の空間である。ランナRは、ビスケットB及びゲートGの間に位置している。ゲートGは、ランナR及びキャビティCの間に位置している。ゲートGは、溶湯金属の流通方向に直交する断面積がランナR及びキャビティCより小さい。そのため、ランナRからキャビティCに供給される溶湯金属は、ゲートGを通過する際に加速される。
【0015】
キャビティCは、成形品の形状に対応する空間である。キャビティCに充填された溶湯金属が凝固することによって、成形品が成形される。オーバーフロー部Oは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も下流側に位置する。オーバーフロー部Oを満たす量の溶湯金属を金型21内に充填することにより、キャビティC内への溶湯金属の充填不足を防止することができる。
【0016】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ31と、射出プランジャ32と、プランジャ駆動装置33とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0017】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、金型21のビスケットBに連通している。また、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0018】
射出プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ駆動装置33が射出プランジャ32を前進させると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がビスケットB、ランナR、及びゲートGを通じてキャビティCに供給される。一方、プランジャ駆動装置33が射出プランジャ32を後退させると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0019】
プランジャ駆動装置33は、射出用モータ34の駆動力を射出プランジャ32に伝達することによって、電動ダイカストマシン10の左右方向(以下、「進退方向」と表記する。)に沿って射出プランジャ32を進退させる。図2は、プランジャ駆動装置33の概略斜視図である。図3は、プランジャ駆動装置33の要部断面図である。図2及び図3に示すように、プランジャ駆動装置33は、射出用モータ34と、増圧用モータ35と、ねじ軸36と、進退ナット37と、連結筒38と、ガイドロッド39a、39bと、衝撃緩衝装置40とを主に備える。
【0020】
射出用モータ34及び増圧用モータ35は、射出プランジャ32を進退させるための駆動力を発生させる電動サーボモータである。射出用モータ34の駆動力は、射出用モータ34の出力軸と、ねじ軸36と一体回転するプーリ34aとに巻回されたタイミングベルト34bを通じてねじ軸36に伝達される。増圧用モータ35の駆動力は、増圧用モータ35の出力軸と、ねじ軸36と一体回転するプーリ35aとに巻回されたタイミングベルト35bを通じてねじ軸36に伝達される。
【0021】
また、プーリ35aとねじ軸36との間には、ワンウェイクラッチ35cが配置されている。これにより、増圧用モータ35の出力軸の回転速度がねじ軸36より速いとき、増圧用モータ35の駆動力は、ワンウェイクラッチ35cを通じてねじ軸36に伝達される。一方、増圧用モータ35の出力軸の回転速度がねじ軸36より遅いとき、増圧用モータ35の駆動力は、ワンウェイクラッチ35cで遮断されて、ねじ軸36に伝達されない。
【0022】
ねじ軸36は、プランジャ駆動装置33のハウジングに軸受36aを介して回転自在に支持されている。ねじ軸36は、電動ダイカストマシン10の左右方向(すなわち、進退方向)に延設されている。ねじ軸36は、射出用モータ34及び増圧用モータ35の駆動力が伝達されて、一方側及び他方側に回転する。
【0023】
進退ナット37は、ねじ軸36に螺合されている。進退ナット37は、ねじ軸36の回転に伴って進退方向に進退する。より詳細には、進退ナット37は、ねじ軸36の一方側の回転に伴って前進し、ねじ軸36の他方側の回転に伴って後退する。
【0024】
連結筒38は、円筒形状の外形を呈する。連結筒38は、ねじ軸36に外挿されて、ねじ軸36と同じ方向(すなわち、進退方向)に延設されている。連結筒38は、一端が射出プランジャ32に連結され、他端が後述する第2ブロック42に連結されている。すなわち、射出プランジャ32は、連結筒38を介して第2ブロック42に固定される。
【0025】
ガイドロッド39a、39bは、プランジャ駆動装置33のハウジングに固定されている。ガイドロッド39a、39bは、ねじ軸36及び連結筒38に隣接する位置において、ねじ軸36と平行(すなわち、進退方向)に延設されている。図2では、ねじ軸36及び連結筒38を挟むように、2本のガイドロッド39a、39bが配置されているが、ガイドロッド39a、39bの数はこれに限定されない。
【0026】
衝撃緩衝装置40は、射出プランジャ32を前進させる際に発生するサージ圧が、金型21に伝搬するのを阻止する役割を担う。衝撃緩衝装置40は、第1ブロック(第1部材)41と、第2ブロック(第2部材)42と、コイルバネ(弾性体)43a、43bと、圧縮量調整機構44とを主に備える。
【0027】
第1ブロック41は、進退ナット37に固定されて、進退ナット37と共に進退方向に進退する。第2ブロック42は、連結筒38を介して射出プランジャ32に固定されて、射出プランジャ32と共に進退方向に進退する。また、第1ブロック41及び第2ブロック42は、進退方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。
【0028】
第1ブロック41及び第2ブロック42には、各々を進退方向に貫通し且つ互いに連通する貫通孔41a、41b、42a、42bが形成されている。そして、連通する貫通孔41a、42aにガイドロッド39aが挿通され、連通する貫通孔41b、42bにガイドロッド39bが挿通される。すなわち、第1ブロック41及び第2ブロック42は、ガイドロッド39a、39bに案内されて、進退方向に独立して進退する。
【0029】
また、第1ブロック41及び第2ブロック42には、互いに対面する側面から進退方向に延び且つ互いに連通する凹部41c、41d、42c、42dが形成されている。そして、連通する凹部41c、42cにコイルバネ43aが収容され、連通する凹部41d、42dにコイルバネ43bが収容される。
【0030】
コイルバネ43a、43bは、予め進退方向に圧縮された状態で、第1ブロック41及び第2ブロック42の間(すなわち、凹部41c、42c及び凹部41d、42d)に配置されている。そして、第1ブロック41及び第2ブロック42が独立して進退(すなわち、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が変化)することによって、コイルバネ43a、43bは進退方向に伸縮する。また、コイルバネ43a、43bは、ねじ軸36の周方向に等間隔に配置されるのが望ましい。
【0031】
圧縮量調整機構44は、自然状態におけるコイルバネ43a、43bの圧縮量(以下、「初期圧縮量」と表記する。)を調整する。自然状態とは、衝撃緩衝装置40に対して進退方向の外力が加えられていない状態を指す。より詳細には、自然状態とは、射出用モータ34及び増圧用モータ35が駆動されていない状態を指す。そして、初期圧縮量は、進退方向における第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔によって調整される。
【0032】
第1実施形態に係る圧縮量調整機構44は、オペレータが手動で初期圧縮量を調整するための機構である。図4は、第1実施形態に係る圧縮量調整機構44の要部拡大図である。図3及び図4に示すように、第1実施形態に係る圧縮量調整機構44は、タイロッド45と、固定ボルト46a及びスペーサ46bと、調整ナット47と、位置決めボルト(位置決め部材)48と、キー49とを主に備える。なお、衝撃緩衝装置40は、複数のコイルバネ43a、43bそれぞれに対応付けて、複数の圧縮量調整機構44を備える。
【0033】
タイロッド45は、第1ブロック41及び第2ブロック42を進退方向に貫通する貫通孔41e、42eに挿通されて、進退方向に延設されている。タイロッド45は、固定ボルト46a及びスペーサ46bによって第1ブロック41に固定(すなわち、相対的に進退不能で且つ回転不能)されている。また、タイロッド45は、第2ブロック42に対して相対的に進退可能で且つ回転不能とされている。
【0034】
より詳細には、図4(A)に示すように、タイロッド45の表面には、第2ブロック42の貫通孔42e内において、進退方向に延設されたキー溝45aが形成されている。キー溝45aには、キー49が収容される。これにより、タイロッド45が第2ブロック42に対して回転不能になる。また、キー溝45aの進退方向の長さは、キー49の進退方向の長さより長い。これにより、タイロッド45は、第2ブロック42に対して相対的に進退可能になる。但し、第2ブロック42及びタイロッド45の接続方法は、前述の例に限定されず、スプライン嵌合などでもよい。
【0035】
さらに、タイロッド45の第2ブロック42側の端部には、雄ねじ45bが形成されている。雄ねじ45bには、調整ナット47が螺合される。調整ナット47は、雄ねじ45bに螺合した状態で、第2ブロック42の左面(第1ブロック41と反対側に位置する第2ブロック42の側面)に当接する。すなわち、第1実施形態に係る第1ブロック41及び第2ブロック42は、スペーサ46b及び調整ナット47によって左右両側から挟まれている。
【0036】
そのため、調整ナット47をタイロッド45にねじ込む向きに回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が狭まる。その結果、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量が増大する。一方、調整ナット47を逆向きに回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が広がる。その結果、コイルバネ43、43bの初期圧縮量が減少する。
【0037】
より詳細には、調整ナット47は、小径部47aと、大径部47bとを有する。小径部47a及び大径部47bは、進退方向に隣接して配置されている。また、大径部47bの直径は、小径部47aの直径より大きい。そして、図4(A)に示すように、大径部47bには、小径部47aより径方向外側において、厚み方向(進退方向)に貫通するボルト穴(第1ボルト穴)47cが形成されている。また、図4(B)に示すように、ボルト穴47cは、周方向に離間した複数の位置に設けられている。
【0038】
また、第2ブロック42の調整ナット47に対面する側面には、ボルト穴(第2ボルト穴)42fが形成されている。そして、調整ナット47をタイロッド45の雄ねじ45bに螺合すると、第2ブロック42の貫通孔42eに小径部47aが進入し、第2ブロック42のボルト穴42fが形成された側面に大径部47bが当接する。
【0039】
このとき、調整ナット47に設けられた複数のボルト穴47cの一部は、第2ブロック42に設けられたボルト穴42fに対面(連通)する。そこで、連通するボルト穴42f、47cに位置決めボルト48を螺合することによって、第2ブロック42に対して調整ナット47を位置決めすることができる。すなわち、位置決めボルト48は、調整ナット47を第2ブロック42に対して着脱可能に位置決めする。
【0040】
すなわち、オペレータは、位置決めボルト48を外して、雄ねじ45bに対する調整ナット47の螺合量を調整することによって、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量を調整することができる。そして、連通するボルト穴42f、47cに位置決めボルト48を螺合することによって、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量が固定される。なお、図4(B)の例では、45°間隔で8か所にボルト穴47cを形成したので、調整ナット47の1/8回転単位で初期圧縮量を調整することができる。
【0041】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0042】
第1実施形態によれば、調整ナット47を回転させることによって、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量を適切な値に調整することができる。オペレータは、例えば、成形品の成形条件(例えば、射出圧力、射出プランジャ32の前進速度、成形品の冷却時間など)に応じて、初期圧縮量を手動で調整すればよい。
【0043】
より詳細には、後述する高速射出処理(図12のステップS14)における射出圧力が高い成形条件の場合に、初期圧縮量を小さくすればよい。これにより、衝撃緩衝装置40が弾性伸縮しやすくなるので、高速射出処理で発生するサージ圧が金型21に伝搬するのを防止できる。一方、高速射出処理における射出圧力が低い成形条件の場合に、初期圧縮量を大きくすればよい。これにより、衝撃緩衝装置4が弾性伸縮しにくくなるので、射出用モータ34に対する射出プランジャ32の追従性を維持することができる。
【0044】
[第2実施形態]
図5図7を参照して、第2実施形態に係るプランジャ駆動装置33Aを説明する。図5は、進退ナット37が後退限に位置するときのプランジャ駆動装置33Aの要部断面図である。図6は、進退ナット37が前進限に位置するときのプランジャ駆動装置33Aの要部断面図である。図7は、電動ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0045】
第2実施形態は、圧縮量調整機構50の構成が第1実施形態と相違する。第2実施形態に係る圧縮量調整機構50は、制御装置60の制御に従って自動で初期圧縮量を調整する。図5及び図6に示すように、圧縮量調整機構50は、タイロッド51と、キー52と、タイナット53と、嵌合ナット54と、駆動シャフト55と、調整用モータ56と、ギヤ列(駆動力伝達機構)57とを主に備える。なお、圧縮量調整機構50は、複数のコイルバネ43a、43bそれぞれに対応付けて、タイロッド51、キー52、タイナット53、嵌合ナット54、及び駆動シャフト55を複数セット有する。
【0046】
タイロッド51は、第1ブロック41及び第2ブロック42を進退方向に貫通する貫通孔41e、42eに挿通されて、進退方向に延設されている。タイロッド51は、一端に設けられたフランジ部51aによって第2ブロック42に対して固定(すなわち、相対的に進退不能で且つ回転不能)されている。また、タイロッド51は、第1ブロック41に対して相対的に進退可能で且つ回転不能とされている。
【0047】
より詳細には、タイロッド51の表面には、第1ブロック41の貫通孔41e内において、進退方向に延設されたキー溝51bが形成されている。キー溝51bには、キー52が収容される。これにより、タイロッド51が第1ブロック41に対して回転不能になる。また、キー溝51bの進退方向の長さは、キー52の進退方向の長さより長い。これにより、タイロッド51は、第1ブロック41に対して相対的に進退可能になる。但し、第1ブロック41及びタイロッド51の接続方法は、前述の例に限定されず、スプライン嵌合などでもよい。
【0048】
さらに、タイロッド51の第1ブロック41側の端部には、雄ねじ51cが形成されている。雄ねじ51cには、タイナット53が螺合される。タイナット53は、雄ねじ51cに螺合した状態で、第1ブロック41の右面(第2ブロック42と反対側に位置する第1ブロック41の側面)に当接する。すなわち、第2実施形態に係る第1ブロック41及び第2ブロック42は、フランジ部51a及びタイナット53によって左右両側から挟まれている。
【0049】
圧縮量調整機構50の構成要素のうち、タイロッド51、キー52、及びタイナット53は、進退方向に離間した後退限(図5)及び前進限(図6)の間を、進退ナット37と共に移動(進退)する。一方、嵌合ナット54、駆動シャフト55、調整用モータ56、及びギヤ列57は、タイナット53から進退方向に離間した固定位置に配置されている。
【0050】
より詳細には、嵌合ナット54は、進退方向においてタイナット53に対面する位置に配置されている。また、嵌合ナット54は、駆動シャフト55の先端に固定されている。そして、複数の駆動シャフト55それぞれは、複数のギヤ57a、57b、57c、57dで構成されるギヤ列57を介して、調整用モータ56に接続されている。すなわち、ギヤ列57及び駆動シャフト55を通じて調整用モータ56の駆動力が嵌合ナット54に伝達されることによって、嵌合ナット54が回転する。
【0051】
そして、図5に示すように、嵌合ナット54は、進退ナット37が後退限のときにタイナット53とスプライン嵌合する。このとき、調整用モータ56の駆動力は、ギヤ列57、駆動シャフト55、及び嵌合ナット54を通じて、タイナット53に伝達される。一方、図6に示すように、進退ナット37が後退限から前進すると、タイナット53は嵌合ナット54から離間する。このとき、調整用モータ56の駆動力は、タイナット53に伝達されない。
【0052】
そして、タイナット53及び嵌合ナット54がスプライン嵌合した状態で、タイナット53がタイロッド51にねじ込まれる向きに調整用モータ56を回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が狭まる。その結果、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量が増大する。一方、調整用モータ56を逆向きに回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が広がる。その結果、コイルバネ43、43bの初期圧縮量が減少する。
【0053】
図7に示すように、電動ダイカストマシン10は、制御装置60を備える。制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0054】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0055】
制御装置60は、電動ダイカストマシン10全体の動作を制御する。より詳細には、制御装置60は、位置センサ64から出力される検知信号と、ロータリエンコーダ65から出力されるパルス信号と、表示入力装置(入力装置)66から出力される入力信号とに基づいて、型開閉モータ26、射出用モータ34、増圧用モータ35、及び調整用モータ56の駆動を制御する。
【0056】
位置センサ64は、射出プランジャ32の位置を検知し、検知結果を示す検知信号を制御装置60に出力する。ロータリエンコーダ65は、型開閉モータ26、射出用モータ34、増圧用モータ35、調整用モータ56それぞれに設けられて、各モータの回転に応じたパルス信号を制御装置60に出力する。
【0057】
表示入力装置66は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置66は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。表示入力装置66は、オペレータの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に対応する入力信号を制御装置60に出力する。
【0058】
制御装置60は、成形処理を実行するのに先立って、成形条件を入力する入力操作を、表示入力装置66を通じてオペレータから受け付ける。このとき、進退ナット37は後退限に位置し、タイナット53及び嵌合ナット54がスプライン嵌合している。そして、制御装置60は、入力された成形条件に応じた初期圧縮量になるように、調整用モータ56の回転方向及び回転量を制御する。成形条件と初期圧縮量との対応関係は、例えば、予めRAM63に記憶されている。
【0059】
また、制御装置60は、初期圧縮量を調整した後に、表示入力装置66を通じて入力された成形条件に従って、成形処理を実行する。成形処理の詳細は、第3実施形態において詳述する。
【0060】
第2実施形態によれば、成形条件に従って初期圧縮量が自動的に調整される。これにより、初期圧縮量を調整するオペレータの作業負担を軽減することができる。但し、成形条件に従って初期圧縮量の調整が行われることに限定されない。他の例として、制御装置60は、電動ダイカストマシン10の劣化の度合いに応じて初期圧縮量を調整してもよい。電動ダイカストマシン10の劣化は、例えば、成形処理の累積回数によって推定することができる。
【0061】
また、第2実施形態では、ギヤ列57を通じて調整用モータ56の駆動力を複数の嵌合ナット54に分配する例を説明した。しかしながら、複数の嵌合ナット54を連動して回転させる方法は、前述の例に限定されない。図8は、第2実施形態の変形例に係るプランジャ駆動装置33Bの要部断面図である。なお、第2実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0062】
図8に示すように、プランジャ駆動装置33Bは、複数の嵌合ナット54(複数の駆動シャフト55)それぞれに対応する複数の調整用モータ56A、56Bを備える。そして、制御装置60は、複数の調整用モータ56A、56Bを同一方向に同一回転量だけ回転させることによって、複数のコイルバネ43a、43bそれぞれの初期圧縮量を連動して調整する。
【0063】
図8に示す変形例によれば、第2実施形態に係る調整用モータ56と比較して、小型の調整用モータ56A、56Bを採用することができる。また、図8に示す変形例によれば、ギヤ列57のバックラッシ等によって、複数の嵌合ナット54(複数の駆動シャフト55)の回転量(すなわち、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量)にずれが生じるのを防止できる。
【0064】
[第3実施形態]
図9図11を参照して、第3実施形態に係るプランジャ駆動装置33Cを説明する。図9は、進退ナット37が後退限に位置するときのプランジャ駆動装置33Cの要部断面図である。図10は、進退ナット37が前進限に位置するときのプランジャ駆動装置33Cの要部断面図である。図11は、自動成形処理のフローチャートである。なお、第1実施形態及び第2実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0065】
第3実施形態は、圧縮量調整機構70の構成が第1実施形態及び第2実施形態と相違する。第3実施形態に係る圧縮量調整機構70は、成形処理サイクル中に初期圧縮量を調整することができる。図9及び図10に示すように、圧縮量調整機構70は、タイロッド71と、タイナット72と、スライドブッシュ73と、スライドシャフト74と、調整用モータ75と、ギヤ列(駆動力伝達機構)76とを主に備える。なお、圧縮量調整機構70は、複数のコイルバネ43a、43bそれぞれに対応付けて、タイロッド71、タイナット72、スライドブッシュ73、及びスライドシャフト74を複数セット有する。
【0066】
タイロッド71は、第1ブロック41及び第2ブロック42を進退方向に貫通する貫通孔41e、42eに回転可能に挿通されて、進退方向に延設されている。タイロッド71は、軸方向(進退方向)に延びる貫通孔が形成された中空構造である。タイロッド71は、一端に設けられたフランジ部71aが第1ブロック41の右面(第2ブロック42と反対側に位置する第1ブロック41の側面)に当接している。タイロッド71の他端(第2ブロック42側の端部)には、雄ねじ71bが形成されている。
【0067】
タイナット72は、タイロッド71の雄ねじ71bに螺合されている。また、タイナット72は、固定ボルト72aによって第2ブロック42の左面(第1ブロック41と反対側に位置する第2ブロック42の側面)に固定されている。すなわち、第3実施形態に係る第1ブロック41及び第2ブロック42は、フランジ部71a及びタイナット72によって左右両側から挟まれている。スライドブッシュ73は、タイロッド71のフランジ部71aに内挿されて、タイロッド71と一体回転する。但し、スライドブッシュ73は省略可能である。
【0068】
圧縮量調整機構70の構成要素のうち、タイロッド71、タイナット72、及びスライドブッシュ73は、進退方向に離間した後退限(図9)及び前進限(図10)の間を、進退ナット37と共に移動(進退)する。一方、スライドシャフト74、調整用モータ75、及びギヤ列76は、固定位置に配置されている。
【0069】
スライドシャフト74は、進退方向に延設されて、タイロッド71に内挿されている。スライドシャフト74は、進退ナット37の進退範囲の全域(すなわち、前進限及び後退限の間)において、タイロッド71に内挿される。また、スライドシャフト74は、タイロッド71に対して相対的に進退可能で且つ一体回転可能に構成されている。第3実施形態において、タイロッド71及びスライドシャフト74は、スプライン嵌合している。但し、第1実施形態及び第2実施形態のように、キー溝の長さをキー長より長くする構成でもよい。
【0070】
複数のスライドシャフト74それぞれは、複数のギヤ76a、76b、76c、76dで構成されるギヤ列76を介して、調整用モータ75に接続されている。すなわち、ギヤ列76及びスライドシャフト74を通じて調整用モータ75の駆動力がタイロッド71に伝達されることによって、タイロッド71が回転する。
【0071】
そして、タイロッド71がタイナット72にねじ込まれる向きに調整用モータ75を回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が狭まる。その結果、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量が増大する。一方、調整用モータ75を逆向きに回転させると、第1ブロック41及び第2ブロック42の間隔が広がる。その結果、コイルバネ43、43bの初期圧縮量が減少する。
【0072】
第3実施形態に係る制御装置60は、図12に示す自動成形処理を実行する。自動成形処理は、複数の成形品を連続して成形する処理である。制御装置60は、自動成形処理の開始指示を成形条件と共に表示入力装置66を通じて受け付けたことに応じて、自動成形処理を開始する。なお、自動成形処理の開始時点において、進退ナット37は後退限に位置しているものとする。
【0073】
まず、制御装置60は、型開閉モータ26を駆動することによって、型締装置20に金型21を型閉及び型締させる(S11)。これにより、金型21の内部に、ビスケットB、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oが形成される。
【0074】
次に、制御装置60は、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量を減少させる向きに、調整用モータ75を駆動する(S12)。次に、制御装置60は、射出用モータ34を低速駆動することによって、射出プランジャ32を低速で前進させる(S13)。これにより、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属は、ビスケットB、ランナR、及びゲートGに進入する。ステップS13の処理は、低速射出処理の一例である。すなわち、制御装置60は、低速射出処理の前に、初期圧縮量を減少させる。
【0075】
次に、制御装置60は、溶湯金属がゲートGを満たしたタイミングで、射出用モータ34を高速駆動することによって、射出プランジャ32を高速で前進させる(S14)。これにより、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属が、キャビティC及びオーバーフロー部Oに一気に流れ込む。なお、制御装置60は、位置センサ64、ロータリエンコーダ65、低速射出処理を開始してからの経過時間などによって、溶湯金属がゲートGを満たしたことを認識することができる。ステップS14の処理は、高速射出処理の一例である。また、ステップS13、S14の処理は、射出処理の一例である。
【0076】
なお、射出プランジャ32を高速前進させると、高いサージ圧が発生する。そして、このサージ圧がキャビティC内の溶湯金属に伝搬すると、成形品にバリができるなどの成形不良が発生する可能性がある。しかしながら、第3実施形態では、射出処理の前に初期圧縮量を減少させているので、サージ圧によって衝撃緩衝装置40が大きく弾性伸縮する。その結果、金型21へのサージ圧の伝搬を阻止することができる。
【0077】
次に、制御装置60は、キャビティC内の成形品が凝固するまで待機する(S15)。ステップS15の処理は、冷却工程の一例である。このとき、制御装置60は、鋳物巣などの成形不良を防止するために、キャビティC内の成形品に圧力を付与する。この処理は、増圧工程の一例である。すなわち、制御装置60は、冷却工程及び増圧工程を並行して実行する。
【0078】
制御装置60は、増圧工程において、射出用モータ34を停止すると共に、増圧用モータ35を駆動させる。これにより、ねじ軸36の回転速度は徐々に減速する。ここで、ねじ軸36の回転速度が増圧用モータ35の回転速度より速い期間は、増圧用モータ35の駆動力がワンウェイクラッチ35cで遮断される。一方、ねじ軸36の回転速度が増圧用モータ35の回転速度を下回ると、増圧用モータ35の駆動力がワンウェイクラッチ35cを介してねじ軸36に伝達される。その結果、射出プランジャ32がビスケットB内の溶湯金属に所定の圧力を付与し続ける。
【0079】
次に、制御装置60は、コイルバネ43a、43bの初期圧縮量を増大させる向きに、調整用モータ75を駆動する(S16)。次に、制御装置60は、型開閉モータ26を駆動することによって、型締装置20に金型21を型開させる。また、制御装置60は、金型21を型開させるのに連動して、射出用モータ34を駆動することによって、射出プランジャ32を前進させる(S17)。ステップS17の処理は、突出し処理の一例である。すなわち、制御装置60は、突出し処理の前に、初期圧縮量を増大させる。
【0080】
突出し処理によって、成形品を押し出す向きの力がビスケットB内の金属に付与される。これにより、金型21内の成形品をスムーズに取り出すことができる。また、突出し処理に先立って初期圧縮量を増加させたので、突出し処理における衝撃緩衝装置40の弾性伸縮を抑制することができる。その結果、射出用モータ34の駆動力がダイレクトに射出プランジャ32に伝達される。すなわち、突出し処理において、射出用モータ34に対する射出プランジャ32の追従性の低下を防止することができる。
【0081】
次に、制御装置60は、射出プランジャ32を後退させる向きに、射出用モータ34を駆動する。次に、制御装置60は、予め定められた数の成形品を既に成形したか否か(すなわち、成形完了したか否か)を判断する(S18)。そして、制御装置60は、成形完了していないと判断した場合に(S18:No)、ステップS11以降の処理を再び実行する。一方、制御装置60は、成形完了したと判断した場合に(S18:Yes)、自動成形処理を終了する。
【0082】
第3実施形態によれば、成形サイクル(S11~S17)中に初期圧縮量を調整(増減)することができる。その結果、射出処理(S13~S14)で発生するサージ圧が金型21に伝搬するのを阻止すると共に、突出し処理(S17)における射出用モータ34に対する射出プランジャ32の追従性を維持することができる。
【0083】
なお、制御装置60は、例えば、ステップS12、S16における初期圧縮量を、表示入力装置66を通じて入力された成形条件に基づいて決定すればよい。また、第3実施形態に係るプランジャ駆動装置33Cは、第2実施形態の変形例のように、ギヤ列76に代えて、複数のスライドシャフト74それぞれを回転駆動する複数の調整用モータを備えてもよい。
【0084】
[その他の変形例]
第1ブロック41及び第2ブロック42と、圧縮量調整機構44、50、70の構成要素との位置関係は、第1~第3実施形態の例に限定されず、反転していてもよい。換言すれば、射出プランジャ32及び進退ナット37と、第1ブロック41及び第2ブロック42との位置関係は、第1~第3実施形態の例に限定されず、反転していてもよい。
【0085】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0086】
10…電動ダイカストマシン、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉モータ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…射出プランジャ、33,33A,33B,33C…プランジャ駆動装置、34…射出用モータ、34a,35a…プーリ、34b,35b…タイミングベルト、35c…ワンウェイクラッチ、35…増圧用モータ、36…ねじ軸、37…進退ナット、38…連結筒、39a,39b…ガイドロッド、40…衝撃緩衝装置、41…第1ブロック(第1部材)、41a,41b,41e,42a,42b,42e…貫通孔、41c,41d,42c,42d…凹部、42…第2ブロック(第2部材)、42f…ボルト穴(第2ボルト穴)、43a,43b…コイルバネ(弾性体)、44,50,70…圧縮量調整機構、45,51,71…タイロッド、45a,51b…キー溝、46a…固定ボルト、46b…スペーサ、47…調整ナット、47a…小径部、47b…大径部、47c…ボルト穴(第1ボルト穴)、48…位置決めボルト(位置決め部材)、49,52…キー、51a,71a…フランジ部、51c,71b…雄ねじ、53,72…タイナット、54…嵌合ナット、55…駆動シャフト、56,56A,56B,75…調整用モータ、57,76…ギヤ列(駆動力伝達機構)、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、63…RAM、64…位置センサ、65…ロータリエンコーダ、66…表示入力装置(入力装置)、73…スライドブッシュ、74…スライドシャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11