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特許7437984インドール化合物、酸化染料中間体、インドール化合物の製造方法及び酸化染料含有水溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】インドール化合物、酸化染料中間体、インドール化合物の製造方法及び酸化染料含有水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/04 20060101AFI20240216BHJP
   C09B 67/44 20060101ALI20240216BHJP
   D06P 1/32 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 79/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C07F5/04 C CSP
C09B67/44 A
D06P1/32
C08G79/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020043479
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143155
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】三尾 茂
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-147812(JP,A)
【文献】特表2009-527546(JP,A)
【文献】特表2016-510764(JP,A)
【文献】特開2006-160670(JP,A)
【文献】特開昭61-217061(JP,A)
【文献】田中豊助,有機ホウ素化合物の化学,有機合成化学協会誌,1964年,Vol.22(10),p.806-815
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/
C09B 67/44
D06P 1/32
C08G 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物である、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体のホウ酸エステルであるインドール化合物。
【化1】


〔式(I)中、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。R は、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。nは0以上50以下の整数である。〕
【請求項2】
前記式(I)中、R、R及びRが水素原子である請求項に記載のインドール化合物。
【請求項3】
数平均分子量(Mn)が400~10000である請求項1又は請求項に記載のインドール化合物。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のインドール化合物を含む酸化染料中間体。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のインドール化合物の製造方法であって、
下記式(III)で表される化合物と、三ハロゲン化ホウ素と、を反応させて前記インドール化合物を製造する工程を含むインドール化合物の製造方法。
【化2】


〔式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。Rは、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~12の脂肪族基であるか、又は、一体となって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。〕
【請求項6】
前記式(III)中、R、R及びRは水素原子である請求項に記載のインドール化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のインドール化合物をアルカリ加水分解して、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体の塩を含む水溶液を製造する工程を含む酸化染料含有水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インドール化合物、酸化染料中間体、インドール化合物の製造方法及び酸化染料含有水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5,6-ジヒドロキシインドールは、空気中の酸素により酸化されて黒色のメラニンとなる性質を有することから、古くから酸化染料として用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
例えば特許文献2にはL-DOPA(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)の水溶液を酵素反応で酸化し5,6-ジヒドロキシインドールの水溶液として得る製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】英国特許第823503号明細書
【文献】特開2006-158304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、5,6-ジヒドロキシインドールは、酸化され易い性質のためその製造方法が制限されていた。特許文献2では、5,6-ジヒドロキシインドール又はその反応中間体を取り出して扱うことは出来ていなかった。また当該方法では、高濃度の5,6-ジヒドロキシインドールを含有する水溶液を製造することができなかった。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、上記事情に鑑みてなされたものであり、新規なインドール化合物、上記新規なインドール化合物を含む酸化染料中間体、インドール化合物の製造方法、及び酸化染料含有水溶液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 5,6-ジヒドロキシインドール誘導体のホウ酸エステルであるインドール化合物。
<2> 下記式(I)で表される化合物である<1>に記載のインドール化合物。
【0007】
【化1】
【0008】
〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。Rは、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。nは0以上の整数である。〕
<3> 前記式(I)中、R、R及びRが水素原子である<2>に記載のインドール化合物。
<4> 数平均分子量(Mn)が400~10000である<1>~<3>のいずれか1つに記載のインドール化合物。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載のインドール化合物を含む酸化染料中間体。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のインドール化合物の製造方法であって、
下記式(III)で表される化合物と、三ハロゲン化ホウ素と、を反応させて前記インドール化合物を製造する工程を含むインドール化合物の製造方法。
【0009】
【化2】
【0010】
〔式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。Rは、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~12の脂肪族基であるか、又は、一体となって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。〕
<7> 前記式(III)中、R、R及びRは水素原子である<6>に記載のインドール化合物の製造方法。
<8> <1>~<4>のいずれか1つに記載のインドール化合物をアルカリ加水分解して、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体の塩を含む水溶液を製造する工程を含む酸化染料含有水溶液の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、新規なインドール化合物、上記新規なインドール化合物を含む酸化染料中間体、インドール化合物の製造方法、及び酸化染料含有水溶液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。 本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において、メラニン誘導体は、メラニンのインドール骨格に置換基が導入されていない化合物、及び、メラニンのインドール骨格に置換基が導入された化合物の両方を含む概念である。
本開示において、5、6-ジヒドロキシインドール誘導体は、5、6-ジヒドロキシインドールのインドール骨格に置換基が導入されていない化合物、及び、5、6-ジヒドロキシインドールのインドール骨格に置換基が導入された化合物の両方を含む概念である。
【0014】
≪インドール化合物≫
本開示のインドール化合物は、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体のホウ酸エステルである。本開示のインドール化合物は、新規な化合物であり、例えば、酸化染料を製造するための前駆体として好適に用いることができる。
【0015】
本開示のインドール化合物は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
【化3】
【0017】
〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。Rは、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。nは0以上の整数である。〕
【0018】
式(I)中、nは0以上の整数を表す。また、nの上限値は、特に限定されるものではないが、50であることが好ましく、25であることがより好ましい。
式(I)におけるnが0の場合、式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物である。
【0019】
【化4】
【0020】
なお、本開示のインドール化合物は、n(繰り返し単位数)が異なる複数種の化合物からなるものであってもよい。
【0021】
置換のアルキル基、及び置換のアリール基における、置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、等が挙げられる。これらの置換基は、アルキル基、アリール基に1個だけでなく2個以上置換していてもよく、単独又は異なる種類の置換基で置換していてもよい。
【0022】
~Rで表される、置換もしくは無置換アルキル基の具体例としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の総炭素数1~10の直鎖アルキル基;
【0023】
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1-n-プロピルブチル基、1-iso-プロピルブチル基、1-iso-プロピル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-n-プロピルペンチル基、2-n-プロピルペンチル基、1-iso-プロピルペンチル基、2-iso-プロピルペンチル基、1-n-ブチルブチル基、1-iso-ブチルブチル基、1-sec-ブチルブチル基、1-tert-ブチルブチル基、2-tert-ブチルブチル基等の総炭素数2~10のモノアルキル置換アルキル基;
【0024】
tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルブチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-3-メチルブチル基、2-エチル-1-メチルブチル基、2-エチル-3-メチルブチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、3,4-ジメチルヘキシル基、3,5-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、4,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-2-メチルペンチル基、1-エチル-3-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、2-エチル-1-メチルペンチル基、2-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、3-エチル-1-メチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、3-エチル-3-メチルペンチル基、3-エチル-4-メチルペンチル基、1-n-プロピル-1-メチルブチル基、1-n-プロピル-2-メチルブチル基、1-n-プロピル-3-メチルブチル基、1-iso-プロピル-1-メチルブチル基、1-iso-プロピル-2-メチルブチル基、1-iso-プロピル-3-メチルブチル基、1,1-ジエチルブチル基、1,2-ジエチルブチル基等の総炭素数3~10のジアルキル置換アルキル基;
【0025】
1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1,2,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,4-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1-エチル-1,2-ジメチルブチル基、1-エチル-1,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2,3-ジメチルブチル基、2-エチル-1,1-ジメチルブチル基、2-エチル-1,2-ジメチルブチル基、2-エチル-1,3-ジメチルブチル基、2-エチル-2,3-ジメチルブチル基等の総炭素数4~10のトリアルキル置換アルキル基;
【0026】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の総炭素数3~20の環状アルキル基;
メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、1,2-ジメチルシクロヘキシル基、1,3-ジメチルシクロヘキシル基、1,4-ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の総炭素数4~10のアルキル置換環状アルキル基;
ベンジル基、4-メチルベンジル基等の総炭素数7~10のアリール置換アルキル基;
【0027】
フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラクロロエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基等の、ハロゲン原子が一部又は全て置換した総炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;が挙げられる。
【0028】
又はRで表される、置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、
フェニル基、ナフチル基等の総炭素数6~10のアリール基;
【0029】
2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基等の総炭素数7~10のモノアルキル置換アリール基;
2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,6-ジメチルフェニル基等の総炭素数8~10のジアルキル置換アリール基;
2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基等の総炭素9又は10のトリアルキル置換アリール基;
【0030】
2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ブトキシフェニル基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルコキシ基が置換した総炭素数7~10のモノアルコキシアリール基;
【0031】
2,3-ジメトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,6-ジメトキシフェニル基等の、炭素数4以下の置換又は無置換のアルコキシ基が置換した総炭素数8~10のジアルコキシアリール基;
【0032】
2,3,4-トリメトキシフェニル基、2,3,5-トリメトキシフェニル基、2,3,6-トリメトキシフェニル基、2,4,5-トリメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基等の、炭素数4以下の置換又は無置換のアルコキシ基が置換した総炭素数9又は10のトリアルコキシアリール基;
【0033】
クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、ヨードフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の、ハロゲン原子が置換した総炭素数6~10のアリール基;
【0034】
トリフルオロメチルフェニル基、トリクロロメチルフェニル基等の、炭素数4以下で一部又は全てがハロゲン置換されたアルキル基が置換した総炭素数7~10のハロゲン化アルキルアリール基;
N,N-ジメチルアミノフェニル基、N,N-ジエチルアミノフェニル基、N-フェニル-N-メチルアミノフェニル基、N-トリル-N-エチルアミノフェニル基、N-クロロフェニル-N-シクロヘキシルアミノフェニル基、N,N-ジトリルアミノフェニル基等の総炭素数10以下のN,N-二置換アミノ置換アリール基;
【0035】
メチルチオフェニル基、エチルチオフェニル基、メチルチオナフチル基、フェニルチオフェニル基等のアルキルチオアリール基又はアリールチオアリール基;
などが挙げられる。
【0036】
酸素含有基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。
【0037】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0038】
、R及びRが置換又は無置換のアルキル基を表す場合、アルキル基の炭素原子数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
また、R、R及びRが置換又は無置換のアリール基を表す場合、アリール基の炭素原子数は6~10であることが好ましく、6であることがより好ましい。
【0039】
メラニン誘導体を効率的に製造する観点から、R及びRは、いずれも水素原子であることが好ましい。
メラニン誘導体を効率的に製造する観点から、Rは、水素原子であることが好ましい。
メラニン誘導体を効率的に製造する観点から、R、R及びRは、いずれも水素原子であることが特に好ましい。
【0040】
本開示のインドール化合物は、分子量を特に制限されるものでは無いが、GPC測定により求められるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、400~10000であることが好ましい。
数平均分子量(Mn)が400~10000であることで、合成したインドール化合物を取り出す際のロスが抑えられ、収率を向上させることができる。
上記同様の観点から、GPC測定により求められるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、400~8000であることがより好ましく、400~5000であることがさらに好ましい。
【0041】
本開示の式(I)で表される化合物であるインドール化合物の具体例としては、以下が挙げられる。ただし、本開示の式(I)で表される化合物であるインドール化合物は、これらに限定されるわけではない。
【0042】
【化5】

【0043】
≪インドール化合物の製造方法≫
本開示のインドール化合物の製造方法は、本開示のインドール化合物の製造方法であって、下記式(III)で表される化合物と、三ハロゲン化ホウ素と、を反応させてインドール化合物を製造する工程(以下、反応工程ともいう)を含む。
【0044】
【化6】
【0045】
〔式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数6~10の置換もしくは無置換のアリール基、酸素含有基、又はハロゲン原子である。Rは、水素原子、又は炭素原子数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~12の脂肪族基であるか、又は、一体となって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。〕
【0046】
<反応工程>
反応工程において、下記式(III)で表される化合物と三ハロゲン化ホウ素とを溶媒中で反応させることにより、本開示のインドール化合物(即ち、式(I)で表される化合物であるインドール化合物;以下、単に「インドール化合物」とも称する)を得ることができる。
【0047】
式(III)中、R、R及びRの具体例及び好ましい態様は、上述の式(I)におけるR、R及びRの具体例及び好ましい態様と同様である。
【0048】
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~12の脂肪族基であるか、又は、一体となって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。
即ち、R及びRは、互いに結合していてもよい。
及びRは、互いに結合している場合において、炭素数1~4のアルキレン基を形成する。
【0049】
式(III)中、R及びRで表される炭素数1~12の脂肪族基としては、飽和脂肪族基(即ち、アルキル基)であっても、不飽和脂肪族基(即ち、アルケニル基又はアルキニル基)であってもよく、又、分岐構造及び環状構造の少なくとも一方を有していてもよい。
【0050】
式(III)中、R及びRで表される炭素数1~12の脂肪族基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族基(即ち、アルキル基);
【0051】
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基(2-プロペニル基)、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ヘキセニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基と同義)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル基、1-ヘキシニル基などの直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪族基(即ち、アルケニル基又はアルキニル基);
【0052】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基などの環状脂肪族基;
などが挙げられる。
【0053】
式(III)中、R及びRで表される炭素数1~12の脂肪族基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ビニル基、アリル基、及びエチニル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0054】
式(III)中、R及びRで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、分岐状のアルキレン基であってもよい。
【0055】
式(III)中、R及びRはで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びイソプロピリデン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、及びイソプロピリデン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0056】
前記式(III)中、R、R及びRは水素原子であることが好ましい。
【0057】
式(III)で表される化合物は、その入手方法に特に制限は無いが、J.Org.Chem.2018,83,521-526などの文献にも示されている公知のインドール類の合成方法によって得ることができる。
【0058】
三ハロゲン化ホウ素としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素及び三ヨウ化ホウ素が好ましく、中でも、インドール化合物を効率的に製造する観点から、三臭化ホウ素がより好ましい。
【0059】
反応工程において用いられる三ハロゲン化ホウ素としては、三ハロゲン化ホウ素そのものの液体をそのまま用いることもできるし、ジクロロメタンなどの溶媒に溶解させた状態のものを用いることもできる。
【0060】
反応工程において用いられる溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン(即ち、オルトキシレン、メタキシレン、又はパラキシレン)、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(別名キュメン)、シクロヘキシルベンゼン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、テトラリン、メシチレン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等の非水溶媒が挙げられる。
【0061】
反応工程における反応は、常圧下、減圧下のいずれでも行うことができる。
反応工程における反応は、インドール化合物の生成を阻害する成分(例えば水分)の混入を防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、等)で行うことが好ましい。
【0062】
反応工程における反応温度は、0℃~150℃であることが好ましい。
反応温度が0℃以上であることで、インドール化合物の生成をより促進させることができる。
反応温度が150℃以下であることで、生成したインドール化合物の分解を抑制し、生成率をより向上させることができる。
上記同様の観点から、反応工程における反応温度は、10℃~120℃であることがより好ましく、20℃~80℃であることがさらに好ましい。
【0063】
反応工程における反応時間は、式(III)で表される化合物と三ハロゲン化ホウ素との反応を効率よく進行させる観点から、30分~24時間であることが好ましく、1時間~12時間であることがより好ましい。
【0064】
反応工程後、インドール化合物を取り出す方法については特に制限はない。
例えば、反応工程により、インドール化合物が、目的とする成分(即ち、インドール化合物自体)のみが得られた場合には、それを特段の処理なく取り出すことができる。
また、反応工程により、インドール化合物が溶媒に分散されたスラリーが得られた場合には、スラリーから溶媒を分離し、乾燥させることにより、インドール化合物を取り出すことができる。
また、反応工程により、インドール化合物が溶媒に溶解された溶液が得られた場合には、加熱濃縮等によって溶液から溶媒を留去することによってインドール化合物を取り出すことができる。
また、反応工程により、インドール化合物が溶媒に溶解された溶液が得られた場合には、溶液に対し、インドール化合物が溶解しない溶媒を加えることによってインドール化合物を析出させ、次いで溶液から溶媒を分離し、乾燥させることにより、インドール化合物を取り出すこともできる。
【0065】
取り出されたインドール化合物を乾燥する方法としては、棚段式乾燥機での静置乾燥法;コニカル乾燥機での流動乾燥法;ホットプレート、オーブン等の装置を用いて乾燥させる方法;ドライヤーなどの乾燥機で温風又は熱風を供給する方法;等を適用できる。
【0066】
取り出されたインドール化合物を乾燥する際の圧力は、常圧、減圧のいずれであってもよい。
取り出されたインドール化合物を乾燥する際の温度は、20℃~150℃であることが好ましい。
温度が20℃以上であることで乾燥効率により優れる。
温度が150℃以下であることで、生成したインドール化合物の分解を抑制しい、インドール化合物をより安定して取り出すことができる。
上記同様の観点から、取り出されたインドール化合物を乾燥する際の温度は、30℃~120℃であることがより好ましく、40℃~80℃であることがさらに好ましい。
取り出されたインドール化合物は、そのまま用いてもよいし、例えば、溶媒中に分散又は溶解させて用いてもよいし、他の物質と混合して用いてもよい。
【0067】
≪酸化染料中間体≫
本開示の酸化染料中間体は、本開示のインドール化合物を含む。
即ち、本開示のインドール化合物は、酸化染料の原料である5,6-ジヒドロキシインドール誘導体を得るための中間体として好適に用いることができる。
5,6-ジヒドロキシインドール誘導体を得るための中間体として本開示のインドール化合物を用いる場合、インドール化合物の好ましい態様については、上述のインドール化合物の項にて説明した好ましい態様と同様である。
【0068】
本開示の酸化染料中間体は、本開示のインドール化合物以外の他の成分を含むことができる。
他の成分としては、例えば、酸化防止剤が挙げられる。本開示の酸化染料中間体が酸化防止剤を含むことで、耐酸化安定性を高めることができる。
酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等が挙げられ、これらの中でも、チオ硫酸ナトリウム及び亜ジチオン酸ナトリウムが好ましく、亜ジチオン酸ナトリウムがより好ましい。
【0069】
≪酸化染料含有水溶液の製造方法≫
本開示の酸化染料含有水溶液の製造方法は、本開示のインドール化合物をアルカリ加水分解して、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体の塩(本明細書中、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩とも称する)を含む水溶液を製造する工程(以下、水溶液製造工程ともいう)を含む。
本開示の酸化染料含有水溶液の製造方法は、水溶液製造工程を含むことにより、酸化染料としての5,6-ジヒドロキシインドール誘導体を安定して製造することができる。
【0070】
<水溶液製造工程>
水溶液製造工程は、本開示のインドール化合物をアルカリ加水分解させることにより酸化染料である5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩を生成させながら水溶液を製造する工程である。
【0071】
水溶液製造工程において、本開示のインドール化合物をアルカリ加水分解させる。この際、例えば塩基を用いてインドール化合物をアルカリ加水分解させてもよい。
水溶液製造工程において用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
水溶液製造工程において用いられる塩基の量としては、本開示のインドール化合物を5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩に分解するための当量以上の量であることが好ましい。
【0072】
水溶液製造工程は、生成した5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩が酸化されてメラニン誘導体へ転化することを防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等)で行うことが好ましい。
【0073】
水溶液製造工程における反応温度は、0℃~80℃であることが好ましい。
反応温度が0℃以上であることで、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩の生成を促進させることができる。
反応温度が80℃以下であることで、生成した5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩のメラニン誘導体への転化が抑制され、生成率を向上させることができる。
上記同様の観点から、水溶液製造工程における反応温度は、10℃~60℃であることがより好ましく、20℃~40℃であることがさらに好ましい。
【0074】
水溶液製造工程における反応時間は、本開示のインドール化合物と塩基との反応を効率よく進行させる観点から、30分~24時間であることが好ましく、1時間~12時間であることがより好ましい。
【0075】
本開示の酸化染料含有水溶液の製造方法は、水溶液製造工程に用いる水の量を調節することにより得られる酸化染料の水溶液中の濃度を制御することができる。
酸化染料の水溶液中の濃度としては、0.5質量%~20質量%が好ましい。
酸化染料の水溶液中の濃度が20質量%以下であることで、製造面で加水分解反応をより均一に行うことができる。
酸化染料の水溶液中の濃度が0.5質量%以上であることで、染料としての用途により好適に用いることができる。
上記同様の観点から、酸化染料の水溶液中の濃度は、1質量%~15質量%であることがより好ましく、3質量%~10質量%であることがさらに好ましい。
【0076】
本開示の酸化染料含有水溶液の製造方法においては、本開示のインドール化合物をアルカリ加水分解することにより、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩と共にホウ酸塩が生成するが、このホウ酸塩を水溶液中に含んでいる場合であっても、問題なく酸化染料含有水溶液として用いることができる。
水溶液中に含まれるホウ酸塩の濃度としては0.1質量%~5質量%が好ましい。
ホウ酸塩が上記の濃度範囲にあることで、水溶液中の酸化染料の濃度も良好に確保することができる。
【0077】
本開示の酸化染料含有水溶液の製造方法においては、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体の生成過程で終始安定性が保たれることから、得られた酸化染料含有水溶液をそのまま染料用途に用いても問題ない。
また、さらに耐酸化安定性を高める目的で酸化防止剤を加えて用いることもできる。
酸化防止剤としては例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの中でも、酸化防止剤としては、チオ硫酸ナトリウム及び亜ジチオン酸ナトリウムが好ましく、亜ジチオン酸ナトリウムがより好ましい。
【0078】
酸化防止剤は、水溶液製造工程に用いるアルカリ水に予め加えておいてもよく、水溶液製造工程を経て得られる酸化染料含有水溶液に後から加えてもよい。
酸化防止剤の水溶液中の濃度としては、水溶液製造工程における反応の阻害、又は酸化染料の発色機能(即ち、5,6-ジヒドロキシインドール誘導体からのメラニン誘導体生成)の阻害を防ぐ観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【実施例
【0079】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
【0080】
〔合成例1〕式(III)で表される化合物の合成
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、コンデンサを備えた500mLのフラスコを準備した。上記500mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、白金-アルミナ(Pt:5質量%)8.08gと、酸化亜鉛16.28g(0.2mol)と、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン150gとを入れ、攪拌混合して触媒の均一分散液を得た。
ここに3,4-メチレンジオキシアニリン27.42g(0.2mol)と、エチレングリコール12.42g(0.2mol)を1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン100gに溶解させて加え、攪拌しながら加熱を開始し、内温180℃に制御して反応を行った。
加熱、攪拌を28時間継続した後、加熱、攪拌を止め、反応液を室温(25℃)まで冷却した。この反応液の上澄み液を260g採取し、10kPa以下及び180℃の条件で減圧濃縮して60gのオイルを得た。次にこのオイルにヘプタン200gを加え、80℃に加熱して抽出を行った。抽出を3回繰り返し、得られた粉体(ウェットケーキ)を、10kPa以下及び100℃の条件で乾燥させ、乾燥粉体17.64gを得た。
【0081】
得られた生成物を重アセトン溶媒に溶解し、H-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕、及び積分値(比)は、それぞれ以下の通りであった。
H-NMR:5.89ppm(2H)、6.33ppm(1H)、6.90ppm(1H)、6.96ppm(1H)、7.14ppm(1H)、10.02ppm(1H)。
得られた生成物は、H-NMRのスペクトルパターンから、5,6-(メチレンジオキシ)インドールであることが確認された。
【0082】
〔実施例1〕インドール化合物の合成
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、コンデンサを備えた200mLのフラスコを準備した。上記200mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに合成例1で得た5,6-(メチレンジオキシ)インドール16.12g(0.10mol)と、トルエン65gとを入れ、攪拌混合して均一溶液を得た。
ここに三臭化ホウ素(17質量%ジクロロメタン溶液)65mL(0.065mol)を加え、室温(25℃)で12時間攪拌を継続し反応を行った。上記によって得られた反応液は、固体が析出したスラリーであった。このスラリーを濾過して固体(ウェットケーキ)を別け取り、濾過器内にジクロロメタン150gを注いでリンス洗浄を行った。
得られた固体を、室温(25℃)下乾燥窒素通気で乾燥させることにより、黒褐色の粉体15.13gを得た。収率は98%であった。
【0083】
得られた生成物を重アセトン溶媒に溶解し、H-NMR分析、及び11B-NMR分析を行った。H-NMR分析及び11B-NMR分析の各々によって得られたスペクトルにおける、ケミカルシフト〔ppm〕及び積分値(比)は、それぞれ以下の通りであった。又、11B-NMR分析によって得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
【0084】
H-NMR:5.94ppm~6.18ppm(3H)、6.65ppm~7.54ppm(2H)。
11B-NMR:19.33ppm。
得られた生成物は、H-NMRのスペクトルパターンから、原料のメチレンジオキシ骨格のメチレン基が消失し、かつ、インドール骨格を有していることが確認され、又、11B-NMRのスペクトルパターンから、ホウ酸エステルを有することが確認された。
【0085】
また、得られた生成物をジメチルホルムアミド溶媒に溶解し、GPC測定により数平均分子量(Mn)を求めた。
GPC測定は、カラム:TSKgel ALPHA3000の2本直列、溶媒:10mM LiBr/ジメチルホルムアミド、流速:1.0mL/min、カラム温度:40℃、で行った。Mn値はポリスチレン換算値である。
【0086】
GPC測定の結果、3つのピークトップを有するクロマトグラムが得られた。
これらのピークの高さの比は高分子量側から12:22:66であり、それぞれのピーク部分での数平均分子量(Mn)は順に、Mn=8,521、Mn=3,712、Mn=407であった。Mnの計算結果から、それぞれのピークのnは、n=15~17、n=7~8、n=0~1と考えられる。
以上のように、実施例1の合成によって得られた生成物は、下記反応スキームで得られたインドール化合物であることが示された。
【0087】
【化7】

【0088】
〔実施例2〕酸化染料含有水溶液の製造
乾燥窒素ガスをパージしたグローブボックス中で、50mLのサンプルバイアルに実施例1で得たインドール化合物4.63g(5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩の生成量0.03mol相当)を攪拌子と共に入れた。そして別途、水酸化ナトリウム1.65g(0.04mol)を蒸留イオン交換水30g中に溶解させ窒素バブリングして用意したアルカリ水を、グローブボックス中のサンプルバイアルに加え、マグネティックスターラーで攪拌し反応を開始した。室温(25℃)で12時間攪拌を継続し反応を行った。
上記によって得られた水溶液はわずかに濁りのある紅茶色の液であった。これをこのグローブボックス中、濾紙で自然濾過を行って濁りを除き、クリアな紅茶色の酸化染料含有水溶液を得た。
この酸化染料含有水溶液を濾紙片に一滴浸み込ませ、これをグローブボックス外に出したところ、即座に濃い黒色に変化し、黒色の酸化染料として機能していることが確認された。
【0089】
〔実施例3〕酸化染料含有水溶液の製造
乾燥窒素ガスをパージしたグローブボックス中で、50mLのサンプルバイアルに実施例1で得たインドール化合物0.46g(5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩の生成量0.003mol相当)を攪拌子と共に入れた。そして別途、水酸化ナトリウム0.17g(0.004mol)を蒸留イオン交換水15g中に溶解させ窒素バブリングして用意したアルカリ水を、グローブボックス中のサンプルバイアルに加え、マグネティックスターラーで攪拌し反応を開始した。室温(25℃)で12時間攪拌を継続し反応を行った。
上記によって得られた水溶液はほとんど濁りの無い琥珀色の液であった。これをこのグローブボックス中、濾紙で自然濾過を行ってクリアな琥珀色の酸化染料含有水溶液を得た。
この酸化染料含有水溶液を濾紙片に一滴浸み込ませ、これをグローブボックス外に出したところ、即座に濃い黒色に変化し、黒色の酸化染料として機能していることが確認できた。
【0090】
以上のように、実施例2及び実施例3において、本開示のインドール化合物から下記反応スキームにて、酸化染料である5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩が製造されたことが示された。
【0091】
【化8】

【0092】
〔比較例1〕5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩の水溶液の製造
乾燥窒素ガスをパージしたグローブボックス中で、50mLのサンプルバイアルに5,6-ジヒドロキシインドール(Combi-Blocks社試薬)0.51g(0.003mol)を攪拌子と共に入れた。そして別途、水酸化ナトリウム0.17g(0.004mol)を蒸留イオン交換水15g中に溶解させ窒素バブリングして用意したアルカリ水を、グローブボックス中のサンプルバイアルに加え、マグネティックスターラーで攪拌し反応を開始した。室温(25℃)で12時間攪拌を継続し反応を行った。
上記によって得られた水溶液はこの時点で既に黒色インクの様な液であった。これをこのグローブボックス中、濾紙で自然濾過を行うと、黒色の固形分が濾別され、濾液は透明感のある薄い黒色の水溶液となって得られた。
この酸化染料含有水溶液を濾紙片に一滴浸み込ませ、これをグローブボックス外に出したところ、即座に黒色への変化が見られたが、実施例3の結果と比較して薄い黒色となった。
【0093】
原料を、実施例1で得たインドール化合物から5,6-ジヒドロキシインドールに変更して、実施例3と同様の方法により酸化染料含有水溶液の製造を行った比較例1は、色の濃度の薄い染料が得られる結果となった。この理由は、調製時に5,6-ジヒドロキシインドールの安定性が損なわれていたためであると推測される。
【0094】
〔比較例2〕5,6-ジヒドロキシインドール誘導体塩の水溶液の製造
乾燥窒素ガスをパージしたグローブボックス中で、50mLのサンプルバイアルに5,6-ジヒドロキシインドール(Combi-Blocks社試薬)0.51g(0.003mol)を攪拌子と共に入れた。そして別途、水酸化ナトリウム0.17g(0.004mol)とホウ酸0.12g(0.002mol)とを蒸留イオン交換水15g中に溶解させ窒素バブリングして用意したアルカリ水を、グローブボックス中のサンプルバイアルに加え、マグネティックスターラーで攪拌し反応を開始した。室温(25℃)で12時間攪拌を継続し反応を行った。
上記によって得られた水溶液はこの時点で既に黒色インクの様な液であった。これをこのグローブボックス中、濾紙で自然濾過を行うと、黒色の固形分が濾別され、濾液は透明感のある薄い黒色の水溶液となって得られた。
この酸化染料含有水溶液を濾紙片に一滴浸み込ませ、これをグローブボックス外に出したところ、即座に黒色への変化が見られたが、実施例3の結果と比較して薄い黒色となった。
【0095】
原料を、実施例1で得たインドール化合物から5,6-ジヒドロキシインドールに変更し、かつ、ホウ酸塩が生成するようにホウ酸を添加した以外は、実施例3と同様の方法により酸化染料含有水溶液の製造を行った比較例2は、色の濃度の薄い染料が得られる結果となった。この理由は、調製時に5,6-ジヒドロキシインドールの安定性が損なわれていたためであると推測される。