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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】既存杭の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20240216BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E02D9/02
E02D13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020076541
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021173031
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】北島 明
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 伸也
(72)【発明者】
【氏名】丸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 翔
(72)【発明者】
【氏名】土佐内 優介
(72)【発明者】
【氏名】千種 信之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恒次
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓磨
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002265(JP,A)
【文献】特開2017-066721(JP,A)
【文献】特開平08-004000(JP,A)
【文献】特開2017-206814(JP,A)
【文献】特開2020-197071(JP,A)
【文献】特開昭55-132814(JP,A)
【文献】特開2003-147771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/02
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤と縁切れされた既存杭を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去する既存杭の撤去方法であって、
前記既存杭の周囲の地盤上に基台を載置し、
吊り上げ用ワイヤを前記既存杭の上部に連結して前記既存杭の切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記基台の上方に位置するように前記既存杭を引き上げ、
前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、
基台上に、前記既存杭の上下移動を可能とした幅で延在しその長手方向の一端が開放された長溝と、前記長溝の他端側に開放されたワイヤ挿通用欠部とを有するがれき落下防止板を、前記長溝内で前記既存杭が上下移動できるように位置合わせをして載置し、
前記既存杭の切断すべき箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように、かつ、前記吊り下げ用ワイヤを前記ワイヤ挿通用欠部内に位置させて前記吊り下げ用ワイヤの前記一端が前記がれき落下防止板の下方に位置するように前記既存杭を前記吊り上げ用ワイヤを介して下降させ、
前記吊り上げ用ワイヤと前記吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、
前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、
前記切断すべき箇所で前記既存杭を切断し、前記吊り上げ用ワイヤを取り外し、切断された前記既存杭の部分を撤去すると共に前記ネットを撤去し、
切断後、前記吊り下げ用ワイヤで吊り下げられた既存杭の上部に前記取り外した吊り上げ用ワイヤを連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤがたるむ程度に前記既存杭を引き上げたのち、前記吊り下げ用ワイヤを取り外し、
前記吊り上げ用ワイヤにより前記既存杭の次に切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように前記長溝内で前記既存杭を引き上げ、
前記次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に前記取り外した吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、
以後、前記と同様に、前記既存杭を下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記次に切断すべき箇所で前記既存杭を切断して切断された前記既存杭の部分を撤去し、
このような作業を繰り返して行なう、
ことを特徴とする既存杭の撤去方法。
【請求項2】
地盤と縁切れされた既存杭を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去する既存杭の撤去方法であって、
前記既存杭の周囲の地盤上に基台を載置し、
第1ウィンチに接続された吊り上げ用ワイヤの一端を前記既存杭の上部に連結して前記既存杭の切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記基台の上方に位置するように前記既存杭を引き上げ、
前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に第1吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に前記第1吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、
前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に第2ウィンチに接続された第2吊り下げ用ワイヤの一端を連結し、
基台上に、前記既存杭の上下移動を可能とした幅で延在しその長手方向の一端が開放された長溝と、前記長溝の他端側に開放されたワイヤ挿通用欠部とを有するがれき落下防止板を、前記長溝内で前記既存杭が上下移動できるように位置合わせをして載置し、
前記既存杭の切断すべき箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように、かつ、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤを前記ワイヤ挿通用欠部内に位置させて前記第1、第2吊り下げ用ワイヤの前記一端が前記がれき落下防止板の下方に位置するように前記既存杭を前記吊り上げ用ワイヤを介して下降させ、
前記吊り上げ用ワイヤと前記第1、第2吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、
前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、
前記切断すべき箇所で前記既存杭を切断し、前記吊り上げ用ワイヤを取り外し、切断された前記既存杭の部分を撤去すると共に前記ネットを撤去し、
切断後、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤで吊り下げられた既存杭の上部に前記取り外した吊り上げ用ワイヤを連結すると共に、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤがたるむ程度に前記第1ウィンチにより前記既存杭を引き上げたのち、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤの一端を取り外し、
前記吊り上げ用ワイヤにより前記既存杭の次に切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように前記長溝内で前記既存杭を引き上げ、
前記次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に前記取り外した第1、第2吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記第1吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、
以後、前記と同様に、前記既存杭を下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記第1、第2吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記次に切断すべき箇所で前記既存杭を切断して切断された前記既存杭の部分を撤去し、
このような作業を繰り返して行なう、
ことを特徴とする既存杭の撤去方法。
【請求項3】
前記がれき落下防止板は、前記長溝および前記ワイヤ挿通用欠部を有する本体板部と、前記開放された長溝部分を閉塞する閉塞位置と前記長溝部分を開放する開放位置との間で前記本体板部に揺動可能に連結された開閉板部とを含んで構成され、
基台上に前記落下防止板を位置合わせして載置したのち、前記開閉板部を開放位置から閉塞位置に揺動させる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の既存杭の撤去方法。
【請求項4】
前記既存杭の地盤との縁切れは、前記既存杭の外周で掘削装置の回転駆動部によりケーシングを回転駆動することによりなされ、
前記掘削装置は前記回転駆動部の上下方向の案内を行なうリーダを備え、
前記リーダの下端は前記基台上に載置されている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の既存杭の撤去方法。
【請求項5】
前記第1ウィンチは前記掘削装置が備えるウィンチであり、
前記第2ウィンチは、前記掘削装置とは別の移動式クレーンが備えるウィンチである、
ことを特徴とする請求項2を引用する請求項4記載の既存杭の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存杭の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物の建て替えに際しては、新たな建築物や構造物の柱の下方に既存杭が位置する場合があり、このような場合、既存杭を撤去して新たな杭が打設される。
既存杭の撤去は、まず、水を供給しつつ既存杭の周囲の地盤を掘削し、既存杭と地盤とを縁切りし、その後、既存杭を引き抜く作業が行われる。
そして、既存杭の撤去後、新たな杭が鉛直に打設されるように、既存杭が埋設された孔内の泥水に固化材を注入し、撹拌装置により撹拌混合して固化させ、周囲の地盤と同等に改良する作業が行われ、その後、新たな杭が打設される。
一方、既存杭の長さが、例えば、30m、40mの場合、そのままではトラックやトレーラーなどに載せて搬送することができない。
そこで、既存杭を、トラックやトレーラーなどに搭載される所定の長さ毎に引き上げては切断する作業が繰り返して行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-66721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような既存杭の切断作業は圧砕機などを用いて行われ、切断時の大きながれき(コンクリート破片)が既存杭の周囲の縁切りした孔内に落下する。
そして、大きながれきが孔内に落下すると、既存杭を引き抜いた後の泥水と固化材を撹拌混合する際の支障となり、孔内の泥水を周囲の地盤と同等に改良する作業が円滑に行なえなくなる不具合が生じる。
この発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、既存杭の切断時におけるがれきの既存杭の周囲の縁切りした孔内への落下を阻止し、既存杭を撤去した後の孔内の泥水を、周囲の地盤と同等に改良する作業を円滑に行なう上で有利な既存杭の撤去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明は、地盤と縁切れされた既存杭を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去する既存杭の撤去方法であって、前記既存杭の周囲の地盤上に基台を載置し、吊り上げ用ワイヤを前記既存杭の上部に連結して前記既存杭の切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記基台の上方に位置するように前記既存杭を引き上げ、前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、基台上に、前記既存杭の上下移動を可能とした幅で延在しその長手方向の一端が開放された長溝と、前記長溝の他端側に開放されたワイヤ挿通用欠部とを有するがれき落下防止板を、前記長溝内で前記既存杭が上下移動できるように位置合わせをして載置し、前記既存杭の切断すべき箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように、かつ、前記吊り下げ用ワイヤを前記ワイヤ挿通用欠部内に位置させて前記吊り下げ用ワイヤの前記一端が前記がれき落下防止板の下方に位置するように前記既存杭を前記吊り上げ用ワイヤを介して下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記切断すべき箇所で前記既存杭を切断し、前記吊り上げ用ワイヤを取り外し、切断された前記既存杭の部分を撤去すると共に前記ネットを撤去し、切断後、前記吊り下げ用ワイヤで吊り下げられた既存杭の上部に前記取り外した吊り上げ用ワイヤを連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤがたるむ程度に前記既存杭を引き上げたのち、前記吊り下げ用ワイヤを取り外し、前記吊り上げ用ワイヤにより前記既存杭の次に切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように前記長溝内で前記既存杭を引き上げ、前記次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に前記取り外した吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、以後、前記と同様に、前記既存杭を下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記次に切断すべき箇所で前記既存杭を切断して切断された前記既存杭の部分を撤去し、このような作業を繰り返して行なうことを特徴とする。
また、本発明は、地盤と縁切れされた既存杭を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去する既存杭の撤去方法であって、前記既存杭の周囲の地盤上に基台を載置し、第1ウィンチに接続された吊り上げ用ワイヤの一端を前記既存杭の上部に連結して前記既存杭の切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記基台の上方に位置するように前記既存杭を引き上げ、前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に第1吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に前記第1吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、前記切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に第2ウィンチに接続された第2吊り下げ用ワイヤの一端を連結し、基台上に、前記既存杭の上下移動を可能とした幅で延在しその長手方向の一端が開放された長溝と、前記長溝の他端側に開放されたワイヤ挿通用欠部とを有するがれき落下防止板を、前記長溝内で前記既存杭が上下移動できるように位置合わせをして載置し、前記既存杭の切断すべき箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように、かつ、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤを前記ワイヤ挿通用欠部内に位置させて前記第1、第2吊り下げ用ワイヤの前記一端が前記がれき落下防止板の下方に位置するように前記既存杭を前記吊り上げ用ワイヤを介して下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記第1、第2吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記切断すべき箇所で前記既存杭を切断し、前記吊り上げ用ワイヤを取り外し、切断された前記既存杭の部分を撤去すると共に前記ネットを撤去し、切断後、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤで吊り下げられた既存杭の上部に前記取り外した吊り上げ用ワイヤを連結すると共に、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤがたるむ程度に前記第1ウィンチにより前記既存杭を引き上げたのち、前記第1、第2吊り下げ用ワイヤの一端を取り外し、前記吊り上げ用ワイヤにより前記既存杭の次に切断すべき箇所の下方に位置する前記既存杭の箇所が前記がれき落下防止板の上方に位置するように前記長溝内で前記既存杭を引き上げ、前記次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭の箇所に前記取り外した第1、第2吊り下げ用ワイヤの一端を連結すると共に、前記第1吊り下げ用ワイヤの他端を前記基台に連結し、以後、前記と同様に、前記既存杭を下降させ、前記吊り上げ用ワイヤと前記第1、第2吊り下げ用ワイヤとを前記既存杭の自重により緊張状態とし、前記既存杭の周囲で前記がれき落下防止板上にネットを配置し、前記次に切断すべき箇所で前記既存杭を切断して切断された前記既存杭の部分を撤去し、このような作業を繰り返して行なうことを特徴とする。
また、本発明は、前記がれき落下防止板は、前記長溝および前記ワイヤ挿通用欠部を有する本体板部と、前記開放された長溝部分を閉塞する閉塞位置と前記長溝部分を開放する開放位置との間で前記本体板部に揺動可能に連結された開閉板部とを含んで構成され、基台上に前記落下防止板を位置合わせして載置したのち、前記開閉板部を開放位置から閉塞位置に揺動させることを特徴とする。
また、本発明は、前記既存杭の地盤との縁切れは、前記既存杭の外周で掘削装置の回転駆動部によりケーシングを回転駆動することによりなされ、前記掘削装置は前記回転駆動部の上下方向の案内を行なうリーダを備え、前記リーダの下端は前記基台上に載置されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1ウィンチは前記掘削装置が備えるウィンチであり、前記第2ウィンチは、前記掘削装置とは別の移動式クレーンが備えるウィンチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地盤と縁切れされた既存杭を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去するにあたって、切断時に発生する大きながれき(コンクリート破片)が、がれき落下防止板およびその上に配置されたネットにより受け止められるため、がれきが縁切りした孔内に落下することが防止される。
したがって、既存杭を撤去した後の孔内の泥水を、周囲の地盤と同等に改良する作業を円滑に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、既存杭の切断にあたっては、吊り下げ用ワイヤを用いて切断箇所から下方に位置する既存杭の部分を支持するという簡単な構成で済むことから既存杭の撤去作業の効率化を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、既存杭を切断した際、切断箇所から下方の既存杭を第1吊り下げ用ワイヤおよび第2吊り下げ用ワイヤの双方によって確実に支持できるため、仮に一方のワイヤが切断しても既存杭の落下を回避できるため、既存杭の撤去作業の安全性を確保する上で有利となる。
また、本発明によれば、吊り下げ用ワイヤの取り回しをがれき落下防止板のワイヤ挿通用欠部を介して円滑に行なう上で有利となり、また、がれき落下防止板の開閉板部を閉塞位置として長溝の開放側を覆うことにより、作業者の長溝への落下防止を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、掘削装置のリーダの下端が基台上に載置されているため、既存杭から吊り下げ用ワイヤを介して荷重が基台に加わった場合に基台を安定して地盤上に設置させる上で有利となる。
また、本発明によれば、既存杭の撤去を行なう掘削装置が備える第1ウィンチに加えて汎用的な移動式クレーンが備える第2ウィンチを用いることができるため、特殊な重機を用意する手間がかからず、既存杭の撤去作業に要するコストの低減を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭と地盤とが縁切りされた状態を示している。
図2】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が吊り上げ用ワイヤを介して所定の長さ分引き上げられた状態を示している。
図3】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が吊り下げ用ワイヤを介して基台に連結された状態を示している。
図4】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、吊り上げ用ワイヤおよび吊り下げ用ワイヤが緊張状態とされた状態を示している。
図5】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が切断され、切断された既存杭の部分が撤去された状態を示している。
図6】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、残存する既存杭の部分に吊り上げ用ワイヤが連結された状態を示している。
図7】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、残存する既存杭が吊り上げ用ワイヤを介して所定の長さ分引き上げられた状態を示している。
図8】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、(A)は図1の平面図、(B)は(A)のB矢視図である。
図9】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、(A)は図2の平面図、(B)は(A)のB矢視図である。
図10】第1の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、(A)は図3の平面図、(B)は(A)のB矢視図である。
図11】がれき落下防止板の開閉板を開放位置とした平面図である。
図12】掘削装置の側面図である。
図13】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭と地盤とが縁切りされた状態を示している。
図14】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が吊り上げ用ワイヤを介して所定の長さ分引き上げられた状態を示している。
図15】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が第1、第2吊り下げ用ワイヤを介して基台に連結された状態を示している。
図16】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、吊り上げ用ワイヤおよび第1、第2吊り下げ用ワイヤが緊張状態とされた状態を示している。
図17】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、既存杭が切断され、切断された既存杭の部分が撤去された状態を示している。
図18】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、残存する既存杭の部分に吊り上げ用ワイヤが連結された状態を示している。
図19】第2の実施の形態に係る既存杭の撤去方法の説明図であり、残存する既存杭が吊り上げ用ワイヤを介して所定の長さ分引き上げられた状態を示している。
図20】掘削装置と移動式クレーン一部とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る既存杭の撤去方法について図面を参照して説明する。
まず、既存杭の撤去に先立って行われる既存杭の地盤からの縁切り工程について図12を参照して説明する。
この縁切り工程では掘削装置10が用いられ、掘削装置10は、クレーン12と、リーダ14と、回転駆動部16と、ケーシング18とを含んで構成されている。
クレーン12は、クローラ1202が設けられた下部走行体1204と、下部走行体1204の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体1206と、上部旋回体1206に上下方向に起伏可能にかつ伸縮可能に設けられたブーム1208とを備えている。
【0009】
リーダ14は、ブーム1208の先端に支持されたリーダブラケット15を介して揺動可能に吊り下げられ、リーダ14の下端は、既存杭の周囲の地盤上に載置された基台20上に設置される。
図8(A)、(B)に示すように、基台20は、下部桁材22と、上部桁材24と、杭受台26とを備えている。
下部桁材22は、既存杭を挟むように間隔をおいて平行に並べた2つの木製の角材で構成されている。
上部桁材24は、下部桁材22の長手方向の一方の端部の上面をまたぐようにして載置された1つの木製の角材で構成されている。
杭受台26は、直線上に延在する基部26Aと、基部26Aの両端から基部26Aと直交する方向に延在する一対の側部26B、26Cとを有するコ字状を呈している。
杭受台26は、上部桁材24と基部26Aとが平行し、基部26Aと一対の側部26B、26Cが既存杭32を挟むように位置決めされて下部桁材22の上面に載置される。
杭受台26は、例えば、H形鋼などの鋼材を接合することで構成されている。
一対の側部26B、26Cのうち一方の側部26Bの内側には後述する吊り下げ用ワイヤ38の一端を係止するためのフック2602が設けられている。
図12に示すように、リーダ14の上端には、不図示の滑車を介して第1ワイヤ28、第2ワイヤ30が吊り下げられており、第1ワイヤ28、第2ワイヤ30は、不図示のウィンチ(巻上装置)によってそれぞれ独立して巻き取り、繰り出しがなされる。
【0010】
回転駆動部16は第1ワイヤ28の先端に連結され、第1ワイヤ28の巻き取り、繰り出しにより、リーダ14に沿って上下方向に移動される。
ケーシング18は、複数のケーシング分割体1802が着脱可能に結合されて構成され、回転駆動部16により回転駆動され、最も下位に位置するケーシング分割体1802は、その下端に掘削用のカッター1804が取着されている。
【0011】
既存杭32の地盤Gからの縁切り工程は以下の通りである。
図1に示すように、予め、既存杭32の上部が露出するように地盤Gを掘削しておく。なお、図中符号34は、掘削装置10によって縁切りした既存杭32の外周面を囲む円筒状の孔を示す。
次に、既存杭32の周囲に基台20を設置し、既存杭32の近傍に掘削装置10を移動させ設置する。
クレーン12の上部旋回体1206を旋回させると共にブーム1208を伸長させ、ケーシング18が既存杭32の上方に位置し、かつ、ケーシング18の軸心が既存杭32の軸心と一致するように位置決めする。
この際、リーダ14の下端を基台20(上部杭材24)の上面に設置しリーダ14が鉛直方向に延在した状態が保持されるようにする。
次いで、回転駆動部16によりケーシング18を回転させつつ、クレーン12の第1ワイヤ28を繰り出すことにより、水を供給しつつケーシング18で既存杭32の周囲の地盤Gを掘削する。
やがて最も下位に位置するケーシング分割体1802の先端が既存杭32の下端とほぼ同じ位置に到達したならば、クレーン12の第1ワイヤ28を巻き取ることによりケーシング18を回転させつつ地盤Gから抜き取る。
これにより、図1に示すように、既存杭32の全長にわたって既存杭32の外周面と地盤Gとが孔34によって縁切りされた状態となる。
【0012】
次に既存杭32の撤去方法について説明する。
既存杭32と地盤Gとが縁切りされたならば、掘削装置10からケーシング18を分解して取り外しておく。
なお、図1図8(A)、(B)に示すように、基台20は既存杭32の周囲の地盤G上に載置された状態のままとする。
図1に示すように、クレーン12から第2ワイヤ30からなる吊り上げ用ワイヤ30Aを繰り出してその一端を地盤Gから露出する既存杭32の上部の外周面に巻き付けて連結する。
なお、図中、符号Xは、既存杭32の切断すべき箇所である切断予定箇所を示す。
【0013】
次に、図2に示すように、クレーン12により吊り上げ用ワイヤ30Aを巻き上げて切断予定箇所Xが基台20から上方に離れた箇所に位置するように既存杭32を上昇させる。
そして、図9(A)、(B)に示すように、上部桁材24の長手方向と直交する方向に間隔をおいて互いに平行するように複数(本実施の形態では4つ)の木製の角材からなる位置調整部材36を杭受台26の上に並べる。位置調整部材36は、後述するがれき落下防止板40の高さ方向の位置を調節するためのものであり、位置調整が不要であれば省略可能である。
また、図2に示すように、吊り下げ用ワイヤ38の一端を基台20の上方に引き出し、他端を杭受台26のフックに連結した状態としておく。
【0014】
次に、図3図10に示すように、位置調整部材36の上にがれき落下防止板40を設置する。
図11に示すように、がれき落下防止板40は、本体板部42と、開閉板部44とを含んで構成されている。
本体板部42および開閉板部44は、鋼板で構成してもよいが、例えば、エクスパンションメタルのようなメッシュ状を呈した金属材料のように軽量化が図られた材料を用いると設置作業の効率化を図る上で有利となる。
本体板部42は、基台20の輪郭よりも一回り大きい矩形状の輪郭を有する板状を呈している。
本体板部42は、既存杭32の上下移動を可能とした幅で延在しその長手方向の一端が開放された長溝4202と、長溝4202の他端側に設けられ長溝4202に向けて開放されたワイヤ挿通用欠部4204とを有している。
開閉板部44は、長溝4202の延在方向と平行する本体板部42の2つの側部のうちの一方の側部の長溝4202の開放側寄りの箇所に不図示のヒンジを介して連結されている。
開閉板部44は、図3図10に示すように、本体板部42の上面に重ね合わされて長溝4202の一端を覆う閉塞位置と、図11に示すように、本体板部42から離れた開放位置との間で揺動する。
【0015】
がれき落下防止板40の設置は次のように行なう。
開閉板部44を開放位置とした状態で、がれき落下防止板40を水平状態に保持し、既存杭32が長溝4202の一端から長溝4202内に入るようにがれき落下防止板40を移動させたのち、がれき落下防止板40を長溝4202内で既存杭32が上昇できるように、かつ、長溝4202の一端がリーダ14に対向し、がれき落下防止板40(本体板部42)の四辺が基部26A、一対の側部26B、26Cとそれぞれ平行するように位置合わせをして位置調整部材36の上面に載置する。
がれき落下防止板40を位置調整部材36の上面に設置したならば、開閉板部44を閉塞位置として長溝4202の開放側を覆う。これにより、がれき落下防止板40上に作業者が立ち入った場合、作業者の長溝4202への落下防止が図られている。
また、図3に示すように、吊り下げ用ワイヤ38の一端を、ワイヤ挿通用欠部4204を介してがれき落下防止板40の上方に引き出し、切断予定箇所Xの下方に位置する既存杭32の外周面の箇所に巻き付けて連結しておく。ワイヤ挿通用欠部4204を設けることで、吊り下げ用ワイヤ38がれき落下防止板40と干渉することがなく吊り下げ用ワイヤ38の取り回しを円滑に行なう上で有利となる。
【0016】
次に、図4に示すように、既存杭32の切断予定箇所Xががれき落下防止板40の上方に位置するように、かつ、吊り下げ用ワイヤ38をワイヤ挿通用欠部4204内に位置させて吊り下げ用ワイヤ38の一端ががれき落下防止板40の下方に位置するように既存杭32を吊り上げ用ワイヤ30Aを介して下降させる。
そして、既存杭32の自重により吊り上げ用ワイヤ30Aと吊り下げ用ワイヤ38とを緊張状態とし、既存杭32の周囲でがれき落下防止板40上にネット46を配置する。
【0017】
次に、図5に示すように、切断予定箇所Xで既存杭32を切断する。既存杭32の切断に際しては、圧砕機やブレーカーなどの従来公知の様々な装置を用いることができる。
この切断により大きながれき(コンクリート破片)が既存杭32の周囲に落下するが、
がれき落下防止板40およびその上に配置されたネット46により受け止められるため、がれきが縁切りした孔34内に落下することが防止される。
なお、既存杭32が切断された際、切断箇所の下方の既存杭32は、吊り下げ用ワイヤ38を介して基台20に支持されているため、落下しない。
【0018】
そして、クレーン12により吊り上げ用ワイヤ30Aを巻き上げて切断された既存杭32の部分を上昇させ撤去する。吊り上げ用ワイヤ30Aは、撤去した既存杭32の部分から取り外される。
そして、がれきと共にネット46をがれき落下防止板40上から撤去する。
【0019】
次に、図6に示すように、切断後、吊り下げ用ワイヤ38で吊り下げられた既存杭32の上部に取り外した吊り上げ用ワイヤ30Aを連結すると共に、吊り下げ用ワイヤ38がたるむ程度にクレーン12により既存杭32を引き上げたのち、吊り下げ用ワイヤ38の一端を既存杭32から取り外す。この際、吊り下げ用ワイヤ38の他端は必要に応じて基台20のフック2602から取り外してもよい。
【0020】
次に、図7に示すように、クレーン12により吊り上げ用ワイヤ30Aを巻き上げることにより既存杭32の次に切断すべき箇所である切断予定箇所Xの下方に位置する既存杭32の箇所ががれき落下防止板40の上方に位置するように長溝4202内で既存杭32を引き上げる。
そして、次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭32の箇所に取り外した吊り下げ用ワイヤ38の一端を連結する。また、吊り下げ用ワイヤ38の他端を基台20のフック2602から取り外していた場合には改めて吊り下げ用ワイヤ38の他端をフック2602に連結する。
【0021】
以後、同様に、図4図5に示すように、既存杭32を下降させ、吊り上げ用ワイヤ30Aと吊り下げ用ワイヤ38とを既存杭32の自重により緊張状態とし、既存杭32の周囲でがれき落下防止板40上にネット46を配置し、次に切断すべき箇所で既存杭32を切断して切断された既存杭32の部分を撤去する。
このような作業を既存杭32が全て撤去されるまで繰り返して行なう。
【0022】
本実施の形態によれば、地盤Gと縁切れされた既存杭32を所定の長さ毎に引き上げては切断して撤去するにあたって、切断時に発生する大きながれき(コンクリート破片)が、がれき落下防止板40およびその上に配置されたネット46により受け止められるため、がれきが縁切りした孔34内に落下することが防止される。
したがって、既存杭32を撤去した後の孔34内の泥水を、周囲の地盤Gと同等に改良する作業を円滑に行なう上で有利となる。
また、本実施の形態では、吊り下げ用ワイヤ38を用いて切断箇所から下方に位置する既存杭32の部分を支持するという簡単な構成で済むことから既存杭32の撤去作業の効率化を図る上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、掘削装置10のリーダ14の下端が基台20上に載置されているため、既存杭32から吊り下げ用ワイヤ38を介して荷重が基台20に加わった場合に基台20を安定して地盤G上に設置させる上で有利となる。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図8図11を流用すると共に図13図20を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、掘削装置10のクレーン12を用いて既存杭32の引き上げを行なう場合について説明した。
これに対して、第2の実施の形態では、図20に示すように、掘削装置10とは別に移動式クレーン48を用意し、移動式クレーン48のワイヤ50を吊り上げ用ワイヤ50Aとして用いて既存杭32の引き上げを行なう点が第1の実施の形態と異なっている。
また、第2の実施の形態では、切断予定箇所Xよりも下方の既存杭32の箇所を、基台20に連結された吊り下げ用ワイヤ38(以下第1吊り下げ用ワイヤ38という)と、掘削装置10の掘削装置10のクレーン12によって巻き上げ繰り出される第2吊り下げ用ワイヤ52との2つの吊り下げ用ワイヤ38、52で支持するようにした点が第1の実施の形態と異なっている。なお、第2吊り下げ用ワイヤ52は、第1の実施の形態における吊り上げ用ワイヤ30Aに相当するものであるが、説明の便宜上、第2吊り下げ用ワイヤ52として説明を行なう。
【0025】
第1の実施の形態と同様に、図13図8(A)、(B)に示すように、基台20は既存杭32の周囲の地盤G上に載置され、掘削装置10のリーダ14の下端は基台20上に設置されている。
また、既存杭32の近傍の地盤G上に移動式クレーン48を設置しておく。移動式クレーン48は吊り上げ用ワイヤ50Aの巻き上げ繰り出しを行なう不図示の第1ウィンチを備えている。
移動式クレーン48として、例えば、ラフタークレーンなどの従来公知の様々な汎用の移動式クレーンが使用可能である。
一方、掘削装置10のクレーン12は、後述する第2吊り下げ用ワイヤ52の巻き上げ繰り出しを行なう不図示の第2ウィンチを備えている。
【0026】
図13に示すように、移動式クレーン48(第1ウィンチ)から吊り上げ用ワイヤ50Aを繰り出してその一端を地盤Gから露出する既存杭32の上部の外周面に巻き付けて連結する。
【0027】
次に、図14に示すように、移動式クレーン48(第1ウィンチ)により吊り上げ用ワイヤ50Aを巻き上げて切断予定箇所Xが基台20から上方に離れた箇所に位置するように既存杭32を上昇させる。
そして、図9(A)、(B)、図14に示すように、位置調整部材36を杭受台26の上に並べる。
また、図14に示すように、第1吊り下げ用ワイヤ38の一端を基台20の上方に引き出し、他端を杭受台26のフック2602に連結した状態としておく。
【0028】
次に、図15図10に示すように、第1の実施の形態と同様に、位置調整部材36の上にがれき落下防止板40を設置し、開閉板部44を閉塞位置として長溝4202の開放側を覆う。
また、図15に示すように、第1吊り下げ用ワイヤ38の一端を、ワイヤ挿通用欠部4204を介してがれき落下防止板40の上方に引き出し、切断予定箇所Xの下方に位置する既存杭32の外周面の箇所に巻き付けて連結しておく。
さらに、掘削装置10のクレーン12の第2吊り下げ用ワイヤ52の一端を、第1吊り下げ用ワイヤ38の一端よりも上方に離れた既存杭32の外周に巻き付けて連結する。この際、平面視した状態で上下に延在する第2吊り下げ用ワイヤ52がワイヤ挿通用欠部4204内に位置するように第2吊り下げ用ワイヤ52の一端を位置決めして既存杭32に連結する。この際、第2吊り下げ用ワイヤ52はたるんだ状態とされている。
【0029】
次に、図16に示すように、既存杭32の切断予定箇所Xががれき落下防止板40の上方に位置するように、かつ、第1吊り下げ用ワイヤ38および第2吊り下げ用ワイヤ52をワイヤ挿通用欠部4204内に位置させて第1吊り下げ用ワイヤ38の一端および第2吊り下げ用ワイヤ52の一端が、がれき落下防止板40の下方に位置するように既存杭32を移動式クレーン48の吊り上げ用ワイヤ50Aを介して下降させる。
そして、既存杭32の自重により吊り上げ用ワイヤ50Aと第1吊り下げ用ワイヤ38および第2吊り下げ用ワイヤ52とを緊張状態とする。この際、第1吊り下げ用ワイヤ38および第2吊り下げ用ワイヤ52との双方が緊張状態となるように掘削装置10のクレーン12(第2ウィンチ)によって第2吊り下げ用ワイヤ52の巻き上げ量あるいは繰り出し量の調整を行なう。
次いで、既存杭32の周囲でがれき落下防止板40上にネット46を配置する。
【0030】
次に、図17に示すように、切断予定箇所Xで既存杭32を切断する。
この切断により大きながれき(コンクリート破片)が既存杭32の周囲に落下するが、
がれき落下防止板40およびその上に配置されたネット46により受け止められるため、がれきが縁切りした孔34内に落下することが防止される。
なお、既存杭32が切断された際、切断箇所の下方の既存杭32は、第1吊り下げ用ワイヤ38を介して基台20に支持されると共に、第2吊り下げ用ワイヤ52を介して掘削装置10のクレーン12に支持されているため、落下しない。
【0031】
そして、移動式クレーン48(第1ウィンチ)により吊り上げ用ワイヤ50Aを巻き上げて切断された既存杭32の部分を上昇させ撤去する。吊り上げ用ワイヤ50Aは、撤去した既存杭32の部分から取り外される。
そして、がれきと共にネット46をがれき落下防止板40上から撤去する。
【0032】
次に、図18に示すように、切断後、第1、第2吊り下げ用ワイヤ38、52で吊り下げられた既存杭32の上部に取り外した吊り上げ用ワイヤ50Aを連結すると共に、第1、第2吊り下げ用ワイヤ38、52がたるむ程度に移動式クレーン48(第1ウィンチ)により既存杭32を引き上げたのち、第1、第2吊り下げ用ワイヤ38、52の一端を既存杭32から取り外す。この際、第1吊り下げ用ワイヤ38の他端は必要に応じて基台20のフック2602から取り外してもよい。
【0033】
次に、図19に示すように、移動式クレーン48(第1ウィンチ)により吊り上げ用ワイヤ50Aを巻き上げることにより既存杭32の次に切断すべき箇所である切断予定箇所Xの下方に位置する既存杭32の箇所ががれき落下防止板40の上方に位置するように長溝4202内で既存杭32を引き上げる。
そして、次に切断すべき箇所の下方に位置する既存杭32の箇所に、取り外した第1吊り下げ用ワイヤ38の一端を連結し、かつ、第1吊り下げ用ワイヤ38の一端よりも上方の既存杭32の箇所に、第2吊り下げ用ワイヤ52の一端を連結する。また、第1吊り下げ用ワイヤ38の他端を基台20のフック2602から取り外していた場合には改めて第1吊り下げ用ワイヤ38の他端をフック2602に連結する。
【0034】
以後、同様に、図16図17に示すように、既存杭32を下降させ、吊り上げ用ワイヤ50Aと第1吊り下げ用ワイヤ38および第2吊り下げ用ワイヤ52とを既存杭32の自重により緊張状態とし、既存杭32の周囲でがれき落下防止板40上にネット46を配置し、次に切断すべき箇所で既存杭32を切断して切断された既存杭32の部分を撤去する。
このような作業を既存杭32が全て撤去されるまで繰り返して行なう。
【0035】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、第1吊り下げ用ワイヤ38および第2吊り下げ用ワイヤ52の双方により切断箇所から下方の既存杭32の荷重が支持される。
そのため、既存杭32を切断した際、切断箇所から下方の既存杭32を2本のワイヤによって確実に支持できるため、仮に一方のワイヤが切断しても既存杭32の落下を回避できるため、既存杭32の撤去作業の安全性を確保する上で有利となる。
【0036】
また、第2の実施の形態によれば、第1ウィンチとして掘削装置10が備えるウィンチを用い、第2ウィンチとして、掘削装置10とは別の移動式クレーン48が備えるウィンチを用いるようにした。
したがって、既存杭32の撤去を行なう掘削装置10の第1ウィンチに加えて汎用的な移動式クレーン48が備える第2ウィンチを用いることができるため、特殊な重機を用意する手間がかからず、既存杭32の撤去作業に要するコストの低減を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0037】
10 掘削装置
12 クレーン
1202 クローラ
1204 下部走行体
1206 上部走行体
1208 ブーム
14 リーダ
15 リーダブラケット
16 回転駆動部
18 ケーシング
1802 ケーシング分割体
1804 カッター
20 基台
22 下部桁材
24 上部桁材
26 杭受台
26A 基部
26B、26C 側部
2602 フック
28 第1ワイヤ
30 第2ワイヤ
30A 吊り上げ用ワイヤ
32 既存杭
34 孔
36 位置調整部材
38 吊り下げ用ワイヤ(第1吊り下げ用ワイヤ)
40 がれき落下防止板
42 本体板部
4202 長溝
4204 ワイヤ挿通用欠部
44 開閉板部
46 ネット
48 移動式クレーン
50 ワイヤ
50A 吊り上げ用ワイヤ
52 第2吊り下げ用ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20