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特許7438013ティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240216BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
G05B19/42 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020080170
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021171899
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】安田 一仁
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-207090(JP,A)
【文献】特開2018-144193(JP,A)
【文献】特開2015-168012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
G05B 19/42 ~ 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用ロボットに設けられ、作業対象部に対する作業ツールの位置合わせ動作のティーチングの際に用いられるティーチング支援システムにおいて、
前記作業用ロボットの作業ツールの動作軸に対して直交する面上に一つの中心から等間隔に配置され前記作業ツールとは独立して前記動作軸方向での一体的移動が可能で、それぞれ出射角度の調整可能な少なくとも3つのレーザー光源を有するレーザー光出射部と、
前記レーザー光源に対応する数が設けられ、前記各レーザー光源から出射されたレーザー光をそれぞれ同時に受光した時に前記動作軸が前記作業対象部の面に対して直交する状態となる様な位置に配置された受光部を有する面直確認用の分散受光部と、前記各レーザー光源から出射されたレーザー光を受光可能な一つの離間距離確認用の中央受光部と、を上面に有し、前記作業対象部に着脱可能に取り付けられる受光ブロックと、
を有することを特徴とするティーチング支援システム。
【請求項2】
前記作業対象部が被溶接部であり、前記作業ツールが溶接ガンであり、該溶接ガンに取り付けられたスタッドボルトが前記被溶接部に溶接される対象物であることを特徴とする請求項1に記載のティーチング支援システム。
【請求項3】
前記各分散受光部に前記レーザー光がそれぞれ同時に入射したときに、該同時入射の状況を知らせる第1の報知手段と、
前記中央受光部に全ての前記レーザー光が同時に入射したときに、該同時入射の状況を知らせる第2の報知手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のティーチング支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載のティーチング支援システムを用いたティーチング支援方法であって、
前記受光ブロックを、前記中央受光部が前記溶接ガンの動作軸方向で前記溶接対象部と重なるように前記溶接対象部上に設置し、
前記レーザー光源から出射された少なくとも3つのレーザー光が前記溶接ガンの先端部で交点を結ぶ様に前記レーザー光源のレーザー出射角度を調整し、
その後、前記出射角度を維持しつつ、
前記受光ブロック方向に移動させ、前記各分散受光部に前記各レーザー光が同時に受光する状態となる位置に移動させて前記溶接ガンと前記溶接対象部との面直を確認し、
次に、前記溶接ガンの前記面直状態を維持しつつ、前記レーザー光の交点が前記中央受光部の受光位置に位置するように前記溶接ガンの前記溶接対象部からの離間距離を調整し、
その後、前記受光ブロックを取り除いて、前記溶接ガンを前記溶接対象部方向に移動させ、前記溶接ガンの先端を前記離間距離の調整された前記交点から更に前記取り除いた前記受光ブロックの厚さ分の距離だけ前記溶接対象部に近接させることを特徴とするティーチング支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用ロボットに設けられ、作業対象部に対する作業ツールの位置合わせ動作のティーチングの際に用いられるティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に穴を開けずにボルト溶接する技術として、スタッド溶接工法が用いられている。中でも、作業用ロボットを用いたスタッド溶接は、種々の打点面に的確に対応できることから広く用いられている。
【0003】
ロボットを用いたスタッド溶接では、ティーチング作業、すなわち、実際の作業を、ロボットのマニュアル動作指示ツールによって動作軌跡を記録し、この動きのデータに基づいて、ロボットに同じ動作を記憶させ、それを正しく再生させるようにセッティングする作業、が行われる。このティーチング作業において、特に、作業対象部である溶接する打点面に対しての、作業ツールである溶接ガンの間隔と面直度合いが的確な溶接を行うための重要な要素となる。
【0004】
特許文献1には、ロボットのアームの先端部に設けられ、3つのレーザー変位計を備えた測定装置を用いて、ワークに対するアーム先端部の位置および姿勢を調整する技術が開示されており、この技術を用いてティーチング作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-144193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では3つのレーザー変位計の測定値から制御装置を用いて位置および姿勢を算出し、その算出結果に基づいてワークの先端部の位置および姿勢を調整するものであり、システム自体が複雑である。したがって、この技術によるティーチング作業は煩雑なものとなり、実際的ではない。
【0007】
また、簡便には、特許文献1に開示されているような制御装置を用いず、作業者がスケールを使って面直を確認しながらティーチング作業を行うことも考えられる。しかし、この方法では、熟練者であれば可能であっても、不慣れな者が行うと、溶接する打点面に対して、溶接ガンとの距離および面直が正しく設定されず、溶接不良を起こすこととなる。特に、スタッド溶接では、スポット溶接のように板を挟み込まないため、僅かなずれも溶接品質に影響する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、不慣れな作業者であっても、ティーチング作業をより正確に簡便に行うことのできるティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的の達成のため請求項1に記載のティーチング支援システムは、
作業用ロボットに設けられ、作業対象部に対する作業ツールの位置合わせ動作のティーチングの際に用いられるティーチング支援システムにおいて、
前記作業用ロボットの作業ツールの動作軸に対して直交する面上に一つの中心から等間隔に配置され前記作業ツールとは独立して前記動作軸方向での一体的移動が可能で、それぞれ出射角度の調整可能な少なくとも3つのレーザー光源を有するレーザー光出射部と、
前記レーザー光源に対応する数が設けられ、前記各レーザー光源から出射されたレーザー光をそれぞれ同時に受光した時に前記動作軸が前記作業対象部の面に対して直交する状態となる様な位置に配置された受光部を有する面直確認用の分散受光部と、前記各レーザー光源から出射されたレーザー光を受光可能な一つの離間距離確認用の中央受光部と、を上面に有し、前記作業対象部に着脱可能に取り付けられる受光ブロックと、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成により、作業ツールと作業対象部との面直は、受光ブロックの上面に設けられた分散受光部の各受光部が、作業ツールに設けられたレーザー光出射部の各光源からのレーザー光を同時に受光している状態となった時に確保される。
【0011】
次に、作業ツールと作業対象部との離間距離は、少なくとも3つの光源からそれぞれ出射されるレーザー光が、受光ブロックの上面の一つの離間距離確認用の受光部に同時に入射した状態を確認すること、すなわち、各レーザー光の交点が当該離間距離確認用の中央受光部に位置するように前記作動軸方向におけるレーザー光出射部の位置を調整することで正しく確認される。すなわち、全ての光源からのレーザー光の交点を受光ブロック上面の離間距離確認用の中央受光部に位置させることで、その交点と作業対象部までの距離(前記受光ブロックの厚さに相当)が的確に認識される。したがって、作業ツールの先端を一旦、その交点位置に合わせることで、作業ツールを作業対象部に的確に近接させることができ、これにより、的確なティーチング情報を作業者の如何に関わらず安定して得ることができる。
【0012】
請求項2に記載のティーチング支援システムは、請求項1に記載のティーチング支援システムにおいて、
前記作業対象部が被溶接部であり、前記作業ツールが溶接ガンであり、該溶接ガンに取り付けられたスタッドボルトが前記被溶接部に溶接される対象物であることを特徴とする。
【0013】
この構成により、面直及び被溶接部との離間距離が厳しく要求されるスタッドボルトについても、溶接ガンが被溶接部に近接するまでの動きの情報が常に的確に確保され、該情報を作業者の如何に関わらず安定して得ることができる。
【0014】
請求項3に記載のティーチング支援システムは、請求項1に記載のティーチング支援システムにおいて、
前記各分散受光部に前記レーザー光がそれぞれ同時に入射したときに、該同時入射の状況を知らせる第1の報知手段と、前記中央受光部に全ての前記レーザー光が同時に入射したときに、該同時入射の状況を知らせる第2の報知手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、前記作業ツールと作業対象部との面直及びそれらの離間距離の位置合わせが正しく為されるとそれぞれの報知手段からその旨が報知される。したがって、作業者は前記作業ツールと作業対象部との面直及びそれらの離間距離の位置合わせが正しく為されたことを確実に認識することができる。
【0016】
上記目的の達成のため請求項4に記載のティーチング支援方法は、
請求項2に記載のティーチング支援システムを用いたティーチング支援方法であって、
前記受光ブロックを、前記中央受光部が前記溶接ガンの動作軸方向で前記溶接対象部と重なるように前記溶接対象部上に設置し、前記レーザー光源から出射された少なくとも3つのレーザー光が前記溶接ガンの先端部で交点を結ぶ様に前記レーザー光源のレーザー出射角度を調整し、その後、前記出射角度を維持しつつ、前記受光ブロック方向に移動させ、前記各分散受光部に前記各レーザー光が同時に受光する状態となる位置に移動させて前記溶接ガンと前記溶接対象部との面直を確認し、次に、前記溶接ガンの前記面直状態を維持しつつ、前記レーザー光の交点が前記中央受光部の受光位置に位置するように前記溶接ガンの前記溶接対象部からの離間距離を調整し、その後、前記受光ブロックを取り除いて、前記溶接ガンを前記溶接対象部方向に移動させ、前記溶接ガンの先端を前記離間距離の調整された前記交点から更に前記取り除いた前記受光ブロックの厚さ分の距離だけ前記溶接対象部に近接させることを特徴とする。
【0017】
この方法により、まず、設置された受光ブロックの上面の各分散受光部に、予め前記溶接ガンの先端部で交点を結ぶ様に出射角度調整された前記レーザー光源からのレーザー光がそれぞれ分散受光部に同時に入射する様に位置させることで、溶接ガンの前記溶接対象部との面直が確保される。そして、この溶接ガンの面直状態を維持して、前記レーザー光の交点が前記中央受光部の受光位置に位置するように調整することで溶接ガン先端部の溶接対象部からの離間距離を確定することができる。
そして、受光ブロックを取り除いた後、溶接ガンを溶接対象部方向に移動させ、前記離間距離の調整された交点位置から更に受光ブロックの厚さ分の距離だけ溶接対象部に近接させることで、正確に溶接ガンの先端を溶接対象部に近接させる動作を行うことができ、その動作の情報をロボットへのティーチング情報とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法によれば、作業ツールが作業対象部に近接するまでの動きの情報が常に的確に確保され、この情報を作業者の如何に関わらず安定して得ることができる。これにより、不慣れな作業者であっても熟練者と同様のティーチングのための作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のティーチング支援システムのレーザー光出射部の概略構成図を示す。
図2】本発明のティーチング支援システムの受光ブロックの概略構成図を示す。
図3】本発明のティーチング支援システムを用いてティーチング支援作業を行う前の準備作業について示す。
図4】本発明のティーチング支援システムを用いてティーチング支援作業を行う前の準備作業について示す。
図5】本発明のティーチング支援システムを用いてティーチング支援作業を行う前の準備作業について示す。
図6】本発明のティーチング支援システムを用いてティーチング支援を行う方法についての説明図である。
図7】本発明のティーチング支援線システムを用いてティーチング支援を行う方法についての説明図である。
図8】本発明のティーチング支援線システムを用いてティーチング支援を行う方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のティーチング支援システムおよびそれを用いたティーチング支援方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
本発明のティーチング支援システムは、作業ツールに設けられたレーザー光出射部と作業対象部に着脱可能に取り付けられる受光ブロックを有する。図1は、レーザー光出射部の概略構成図である。図1(a)は側面図、図1(b)は上面図を示す。
【0022】
作業ツールは、本実施の形態では溶接ガン16であり、作業用ロボット(図示していない)のアームの先端部に取り付けられている。レーザー光出射部10は、3つのレーザー光源23と、それらを保持するレーザー光源保持部22と、溶接ガン16に取り付けるための第1ブラケット17および第2ブラケット18を有する。第1ブラケット17は溶接ガン16に取り付けられ、第2ブラケット18は、溶接ガン16のストローク方向(矢印A)およびストローク方向と直交する方向(矢印B)に移動可能に第1ブラケット17に取り付けられている。第2ブラケット18の下部にはレーザー光源保持部22が取り付けられている。この構成により、レーザー光源保持部22は、溶接ガン16に対して矢印A、Bで示す方向に移動可能であり、その移動量を調整する調整部(図示していない)が設けられている。また、調整部にはそれぞれの移動量を把握できるように数値メモリが設けられている。
【0023】
レーザー光源保持部22は、3本の腕により上面視コの字型に構成され、2本の腕の各先端部にレーザー光源23が取り付けられ、また2本の腕を連結する腕の中央部にもレーザー光源23が取り付けられている。各レーザー光源23は、レーザー光の出射方向が調整可能に構成されている。2本の腕を連結する腕は、第2ブラケット18と連結されている。
【0024】
各レーザー光源23の配置関係は、上面視で正三角形の各頂点に配置されており、各レーザー光源23からの出射光は、上面視三角形の中心点を通る法線L上の一点に集まるように角度付けされている。また、溶接ガン16の動作軸またはストローク方向は、この上面視三角形の中心点を通る法線Lと重なる。したがって、レーザー光出射部10に設けられた3つのレーザー光源23を包含する面は、溶接ガン16の動作軸に対して直交している。
【0025】
図2(a)は、受光ブロックの側面図、図2(b)は、受光ブロックの上面図を示す。受光ブロック12は円筒形状の本体部26を有し、上面29の中央部には、溶接ガンと作業対象部との位置および距離を確認するための中央受光部30が設けられている。また、この中央受光部30を軸として該軸の周りにそれぞれ等間隔に配置され、溶接ガンと作業対象部である被溶接部との面直を確認するための分散受光部が設けられている。分散受光部は、レーザー光出射部10のレーサー光源23に対応する数の受光部32で構成される。本実施の形態では分散受光部の受光部32は3つである。また、本実施の形態では、受光ブロック12の厚さ、すなわち、被溶接部と中央受光部との距離は20mmである。
【0026】
受光ブロック12の本体部26の底面にはリング状の磁石36が設けられており、この受光ブロック12が溶接ガンの打点面(被溶接部)に簡単に着脱できるように構成されている。また、本体部26の側部には、第1の報知手段である発光ランプ38と第2の報知手段である発光ランプ39が設けられている。第1の報知手段である発光ランプ38は、例えば緑色を発光する発光ランプであり、分散受光部33の3つの受光部32のすべてにレーザー光がそれぞれ同時に入射したときに発光するように構成されている。また、第2の報知手段である発光ランプ39は、例えば赤色を発光する発光ランプであり、中央受光部30に、一点で交わる3つのレーザー光のその一点が入射したときに発光するように構成されている。
【0027】
次に本発明のティーチング支援システムを用いたティーチング支援方法について説明する。
【0028】
まず、準備段階として以下の作業を行う。図3は、第1の準備作業についての説明図である。レーザー光出射部10を溶接ガン16に取り付ける。溶接ガン16は作業用ロボット14に取り付けられている。レーザー光源保持部22の3か所に取り付けられたレーザー光源23からの各出射光が、溶接ガン16の先端部16aで交わるように、レーザー光源23からのレーザー光の出射角度、また第2ブラケット18の調整部(図示していない)を調整する。図3(a)は、調整が終わったレーザー光出射部10の側面図、図3(b)は、調整が終わったレーザー光出射部10の背面図を示す。3つのレーザー光は、溶接ガン16の先端部16aで交わっている。
【0029】
次に、図4(a)の側面図、図4(b)の背面図に示すように、第2の準備作業として、レーザー光出射部10を溶接ガン16から被溶接部方向(矢印C)に所定の量だけずらす。本実施の形態では30mmとした。すなわち、3台のレーザー光源23の交わる位置を溶接ガン16の先端部16aから30mmだけ被溶接部側に離す。このとき、溶接ガン16の先端部16aと3つのレーザー光の交わる点を結ぶ線は、図4(a)、(b)に示すように側面から見ても背面から見ても一直線上にある。
【0030】
図5は、第3の準備段階として、中央受光部30が溶接ガン16の動作軸方向で溶接対象部40と重なるように溶接対象部40上に設置する。被溶接部40と受光ブロック12の中央受光部30がちょうど重なり合うように設置することが重要である。受光ブロック30の底面には磁石36が配置されているので、容易に作業対象部40上に設置することが可能である。なお、この第3の準備は、第1及び第2の準備よりも前に行っても良い。
【0031】
図6は、まず面直合わせの方法について示す。レーザー光出射部10が取り付けられた溶接ガン16を受光ブロック12上に移動させる。溶接ガン16の先端部16aを受光ブロック12に近づけ、受光ブロック12の分散受光部32でレーザー光出射部10からのレーザー光をそれぞれ同時に受光するように作業ロボットを調整する(矢印参照)。3方向から出射されたレーザー光がちょうど3つの受光部32にそれぞれ入射すると、溶接ガン16の動作軸は被溶接部40の面に対して直交することとなる。すなわち、溶接ガン16と被溶接部40との面直が達成される。3方向から放射されたレーザー光がちょうど3つの受光部32にそれぞれ同時に入射すると、第1の報知手段である発光ランプ38が発光する。したがって、作業者は面直の確認を、緑色のランプが発光するように行えば良いので、不慣れな作業者であっても、簡単に素早く且つ高精度で調整することが可能である。
【0032】
次に、図7を用いて被溶接部40と溶接ガン16との離間距離の確認について説明する。溶接ガン16と被溶接部40との面直が達成されているので、この面直合わせしたときの作業ロボットのアームの手首角度が変化しないように注意しながら、すなわち、面直状態を維持しながら、溶接ガン16を引き上げて行く(矢印参照)。すると、3つのレーザー光の交わる一点が受光ブロック12の上面29の中央受光部30に入射し、赤色の発光ランプ39が発光する。この時、溶接ガン16の引き上げを停止する。
【0033】
その後、図8に示すように、溶接ガン16を溶接対象部40方向に移動させ、溶接ガン16の先端部16aを中央受光部30に位置させた後に、受光ブロック12を取り除いて、そこから更に、取り除いた受光ブロック12の厚さ分の距離だけ被溶接部40に近接させる。
【0034】
言い換えると、発光ランプ39が発光したとき、溶接ガン16の先端部16aと被溶接部40との距離は、第2の準備作業でレーザー光出射部10を溶接ガン16から被溶接部方向(矢印C)にずらした量が正確に30mmならば、合計50mmになっている。そして、溶接ガン16の先端部16aを受光ブロック12の中央受光部30の位置に合わせると、溶接ガン16の先端部16aと被溶接部40との間隔は、受光ブロック12の厚さ、すなわち正確に20mmとなっている。このようにして溶接ガン16の高さ位置合わせが完了する。したがって、高さ位置合わせも、赤色の発光ランプ39が発光するように調整を行えば良いので、不慣れな作業者であっても容易に且つ高精度で位置合わせすることが可能である。
【0035】
溶接ガンとしてスタッドガンを、スタッドガンにスタッドボルトとすると、面直及び被溶接部との離間距離が厳しく要求されるスタッドボルトについても、スタッドガンが被溶接部に近接するまでの動きの情報が常に的確に確保され、該情報を作業者の如何に関わらず安定して得ることができる。
【0036】
本実施の形態によれば、溶接ガン16と被溶接部40との面直は、溶接ガン16に取り付けられたレーザー光出射部10から照射される3つのレーザー光が、受光ブロック12に設けられた3つの受光部32にそれぞれ同時に受光されるように、溶接ガン16の傾きなどを調整することにより達成される。溶接ガン16と被溶接部40との距離は、3方向から照射され溶接ガン16の軸方向の所定の位置で交わるレーザー光が、受光ブロック12の上面の中心部に設けられた中央受光部30に入射するように調整することで正しく設定される。
【0037】
したがって、溶接ガン16が被溶接部40に近接するまでの動きの情報が常に的確に確保され、該情報を作業者の如何に関わらず安定して得ることができ、距離と面直の位置合わせ作業が不慣れな作業者であっても正確にティーチングのための作業を行うことができる。
【0038】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、レーザー光出射部には3つのレーザー光源を設けたが、それ以上の台数を備えてもよい。また、受光ブロックには3つの分散受光部を設けたが、レーザー光出射部のレーザー光源の数に対応してそれ以上であっても良い。また、報知手段として受光ブロックに発光ランプを設け光により報知するように構成したが、報知手段を受光ブロックとは別に、例えば、電波を発信し作業者が所持する受信機により報知されるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 レーザー光出射部
12 受光ブロック
14 作業用ロボット
16 溶接ガン(作業ツール)
16a 先端部
17 第1ブラケット
18 第2ブラケット
22 レーザー保持部
23 レーザー光源
26 本体部
29 上面
30 中央受光部
32 面直確認用の受光部
36 磁石
38 発光ランプ(第1の報知手段)
39 発光ランプ(第2の報知手段)
40 被溶接部(作業対象部)
L 法線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8