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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240216BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D83/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020094609
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187504
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079577(JP,A)
【文献】特開2020-070048(JP,A)
【文献】特開2006-264767(JP,A)
【文献】特開2002-059981(JP,A)
【文献】特開平09-020358(JP,A)
【文献】実開昭55-108052(JP,U)
【文献】米国特許第05740947(US,A)
【文献】特開2005-304964(JP,A)
【文献】特開平07-315448(JP,A)
【文献】特開2014-166878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムを有する複数のポンプと、
複数の前記ポンプそれぞれの前記ステムの上端部に取付けられた押下ヘッドと、を備え、
複数のポンプは並列に設けられ、
前記押下ヘッドに、複数の前記ステム内に各別に連通する複数の吐出孔が形成され、
前記押下ヘッドを押下して複数の前記ステムを下方に移動させ各前記ポンプを作動させることにより、内容液が各前記ステム内を通して複数の前記吐出孔から各別に吐出され、
互いに隣り合う前記吐出孔同士の間隔が、1mm以上となっており、
前記押下ヘッドの周壁部に、外側に向けて突出する複数の吐出筒が形成され、
前記吐出筒の先端開口が、前記吐出孔とされ、
互いに隣り合う前記吐出筒の先端部同士の間隔が、1mm以上2mm以下となっている、吐出器。
【請求項2】
前記吐出筒の先端部は、前記吐出孔回りに沿う全周にわたってその径方向の外側に向けて膨出している、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記押下ヘッドは、1つ設けられ、複数の前記ポンプそれぞれの前記ステムの上端部に一体に取付けられている、請求項1または2に記載の吐出器。
【請求項4】
この吐出器の内部には、内容液が収容された容器本体内と複数の前記吐出孔とを各別に連通し、かつ前記ステム内を含む、内容液の流通空間が複数設けられ、
前記押下ヘッドおよび前記ステムを下降端位置まで下方に移動させたときの、前記流通空間の容積の減少量が、複数の前記流通空間それぞれにおいて互いに異なっている、請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムを有する複数のポンプと、複数のポンプそれぞれのステムの上端部に取付けられた押下ヘッドと、を備え、複数のポンプは並列に設けられ、押下ヘッドに、複数のステム内に各別に連通する複数の吐出孔が形成され、押下ヘッドを押下して複数のステムを下方に移動させ各ポンプを作動させることにより、内容液が各ステム内を通して複数の吐出孔から各別に吐出される吐出器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-112406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、ポンプの内部で発生した負圧が吐出孔に及ぼされることによって、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれ、他方の吐出孔内で2種類の内容液が意図せず混合されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムを有する複数のポンプと、複数の前記ポンプそれぞれの前記ステムの上端部に取付けられた押下ヘッドと、を備え、複数のポンプは並列に設けられ、前記押下ヘッドに、複数の前記ステム内に各別に連通する複数の吐出孔が形成され、前記押下ヘッドを押下して複数の前記ステムを下方に移動させ各前記ポンプを作動させることにより、内容液が各前記ステム内を通して複数の前記吐出孔から各別に吐出され、互いに隣り合う前記吐出孔同士の間隔が、1mm以上となっている。
【0007】
本発明によれば、互いに隣り合う吐出孔同士の間隔が、1mm以上となっているので、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、ポンプの内部で発生した負圧が吐出孔に及ぼされたとしても、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液に、他方の吐出孔の負圧を及ぼしにくくすることが可能になり、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができる。
【0008】
前記押下ヘッドの周壁部に、外側に向けて突出する複数の吐出筒が形成され、前記吐出筒の先端開口が、前記吐出孔とされ、互いに隣り合う前記吐出筒の先端部同士の間隔が、1mm以上2mm以下となってもよい。
【0009】
この場合、押下ヘッドの周壁部に、外側に向けて突出する複数の吐出筒が形成され、吐出筒の先端開口が吐出孔となっているので、内容液を複数の吐出孔から特定の位置に吐出しやすくすることができる。
互いに隣り合う吐出筒の先端部同士の間隔が、1mm以上2mm以下となっているので、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができるとともに、互いに隣り合う吐出孔同士の間隔が過度に広くなるのを抑制することが可能になり、複数の吐出孔から吐出された各内容液を容易に混合させることができる。
【0010】
前記吐出筒の先端部は、前記吐出孔回りに沿う全周にわたってその径方向の外側に向けて膨出してもよい。
【0011】
この場合、吐出筒の先端部が、吐出孔回りに沿う全周にわたってその径方向の外側に向けて膨出しているので、内容液の吐出時の液切れ性を向上させることができる。
【0012】
前記押下ヘッドは、1つ設けられ、複数の前記ポンプそれぞれの前記ステムの上端部に一体に取付けられてもよい。
【0013】
この場合、押下ヘッドが、1つ設けられ、複数のポンプそれぞれのステムの上端部に一体に取付けられているので、1つの押下ヘッドを押下すれば、複数のステムが同時に下方に移動し、複数の吐出孔から内容液が各別に吐出されることとなり、例えば、押下ヘッドが、複数設けられ、かつ複数のポンプそれぞれのステムの上端部に各別に取付けられた構成と比べて、操作性を向上させることができる。
【0014】
この吐出器の内部には、内容液が収容された容器本体内と複数の前記吐出孔とを各別に連通し、かつ前記ステム内を含む、内容液の流通空間が複数設けられ、前記押下ヘッドおよび前記ステムを下降端位置まで下方に移動させたときの、前記流通空間の容積の減少量が、複数の前記流通空間それぞれにおいて互いに異なってもよい。
【0015】
この場合、押下ヘッドおよびステムを下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間の容積の減少量が、複数の流通空間それぞれにおいて互いに異なっているので、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、複数の流通空間で発生する負圧が互いに異なり、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれやすくなっているにもかかわらず、前述したように、一方の吐出孔側の内容液に、他方の吐出孔の負圧を及ぼしにくくすることが可能になることから、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれることを抑制できる効果が顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、内容液の吐出後、押下ヘッドの押下を解除したときに、互いに隣り合う吐出孔のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出容器の、複数のポンプの並列方向に沿う縦断面図である。
図2図1に示す吐出器の上面図である。
図3図1に示す吐出容器の、右側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る吐出容器は、図1に示されるように、吐出器1、複数の容器本体W1、W2、および外装体20を備えている。
【0019】
複数の容器本体W1、W2は、それぞれの中心軸線O1、O2が互いにほぼ平行となるように、並列に設けられている。複数の容器本体W1、W2に、例えば効能、若しくは色等が互いに異なる内容液が各別に収容されている。内容液の粘度は、例えば10mPa・s以上40000mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以上20000mPa・s以下となっている。
外装体20は有底筒状に形成されている。外装体20内に、複数の容器本体W1、W2が収容されている。外装体20の上端部に、肩カバー20aが取付けられている。
【0020】
吐出器1は、上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステム11、12を有する複数のポンプ13、14と、複数のポンプ13、14それぞれのステム11、12の上端部に取付けられた押下ヘッド15と、を備えている。
【0021】
押下ヘッド15に、複数のステム11、12内に各別に連通する複数の吐出孔16、17が形成されている。押下ヘッド15を押下して複数のステム11、12を下方に移動させ各ポンプ13、14を作動させることにより、内容液が各ステム11、12内を通して複数の吐出孔16、17から各別に吐出される。
ステム11、12を下降端位置まで下方に移動させるときの上下方向のストローク量が、複数のポンプ13、14それぞれにおいて、互いに同じになっている。なお、前記ストローク量を、複数のポンプ13、14それぞれにおいて、互いに異ならせてもよい。
【0022】
複数のポンプ13、14は、それぞれのステム11、12が、中心軸線O1、O2と各別に同軸に位置するように、並列に設けられている。複数のポンプ13、14は、複数の容器本体W1、W2に各別に装着されている。
複数のポンプ13、14はそれぞれ、装着キャップ27、28を備えており、装着キャップ27、28が容器本体W1、W2の口部に各別に装着されることで、ポンプ13、14が容器本体W1、W2に取付けられている。各装着キャップ27、28における頂壁部の上面、および外周面には、それぞれの全周にわたって、外装体20に設けられた肩カバー20aが当接、若しくは近接している。これにより、ポンプ13、14および容器本体W1、W2が、外装体20に固定されている。
【0023】
ポンプ13、14は、シリンダ21、22と、シリンダ21、22内に上下摺動可能に嵌合されたピストン23、24と、シリンダ21、22から下方に向けて延びるパイプ25、26と、を備えている。ピストン23、24は、ステム11、12の上下動に連係する。パイプ25、26の下端開口は、容器本体W1、W2の底部内に開口している。シリンダ21、22、ピストン23、24、およびパイプ25、26は、中心軸線O1、O2と各別に同軸に配設されている。
【0024】
押下ヘッド15を押下してステム11、12を下方に移動させると、ピストン23、24が、シリンダ21、22内を下方に向けて摺動し、シリンダ21、22内において、ピストン23、24より下方に位置する部分に充満されている内容液が、加圧されて、ステム11、12内を通して吐出孔16、17から吐出される。
【0025】
押下ヘッド15は、有頂筒状に形成されている。押下ヘッド15は、1つ設けられ、複数のポンプ13、14それぞれのステム11、12の上端部に一体に取付けられている。押下ヘッド15の頂壁部に、下方に向けて突出し、複数のステム11、12に各別に嵌合された複数の装着筒18、19が形成されている。押下ヘッド15の頂壁部の上面は、複数のステム11、12と対応する各位置を問わず全域にわたって、上下方向の位置が同じで、上方を向く平坦面となっている。
なお、押下ヘッド15の頂壁部の上面において、複数のステム11、12の直上に位置する各部分の上下方向の位置を互いに異ならせてもよい。
【0026】
図2および図3に示されるように、押下ヘッド15の周壁部に、外側に向けて突出する複数の吐出筒31、32が形成されている。複数の吐出筒31、32は、押下ヘッド15の周壁部から同じ向きに突出している。吐出筒31、32は、上下方向から見て、ポンプ13、14が並べられた並列方向と直交する方向に向けて延びている。
以下、上下方向から見て、吐出筒31、32が、押下ヘッド15の周壁部の外周面から突出する向きを前方といい、この逆向きを後方という。
【0027】
吐出筒31、32の前端開口(先端開口)が、吐出孔16、17となっている。これにより、複数の吐出孔16、17が、同じ向きに開口している。吐出孔16、17は、前方から見て円形状を呈する。複数の吐出孔16、17の各内径は、互いに同じになっている。吐出筒31、32は、前方に向かうに従い下方に向けて延びている。吐出孔16、17は、斜め下方に向けて開口している。吐出孔16、17の開口面積は、例えば0.785mm以上12.56mm以下となっている。
なお、複数の吐出孔16、17は、互いに異なる向きに開口してもよく、また、複数の吐出孔16、17の各内径を、互いに異ならせてもよく、また、吐出孔16、17は、前方から見て矩形状等を呈してもよい。
吐出筒31、32は、押下ヘッド15の周壁部における前記並列方向の中央部に設けられている。前記並列方向で互いに隣り合う吐出孔16、17の中心軸線同士の間隔は、前記並列方向で互いに隣り合う容器本体W1、W2の中心軸線O1、O2同士の間隔より狭くなっている。
【0028】
吐出筒31、32の各前端部(各先端部)31a、32aは、吐出孔16、17回りに沿う全周にわたってその径方向の外側に向けて膨出している。吐出筒31、32の前端部31a、32aの外周面は、その径方向の外側に向けて膨出する曲面状に形成されている。吐出筒31、32の前端部31a、32aの外径は、前方に向かうに従い小さくなっている。吐出筒31、32の前端部31a、32aにおいて、後方を向く後端面は、斜め上方を向く平面となっている。
【0029】
互いに隣り合う吐出孔16、17同士の間隔Xは、1mm以上となっている。互いに隣り合う吐出筒31、32の前端部31a、32a同士の間隔Yは、1mm以上2mm以下となっている。なお、互いに隣り合う吐出筒31、32における前端部31a、32aより後方に位置する部分同士の間隔は、1mm未満であってもよい。
複数の吐出孔16、17は、上下方向の同じ位置に、前記並列方向に並べられて設けられている。なお、隣り合う吐出孔16、17の上下方向の位置を互いに異ならせてもよい。
【0030】
押下ヘッド15に、複数のステム11、12の各内部と、複数の吐出孔16、17と、を各別に連通する複数のノズル流路33、34が形成されている。ノズル流路33、34は、吐出筒31、32の内部、および装着筒18、19の内部を含んでいる。
ノズル流路33、34は、第1部分33a、34a、第2部分33b、34b、第3部分33c、34c、および第4部分33d、34dを備えている。
【0031】
第1部分33a、34aは、装着筒18、19の内部とされ、上下方向に真直ぐ延びている。
第2部分33b、34bは、第1部分33a、34aから前方に向けて真直ぐ延びている。
第3部分33c、34cは、吐出筒31、32の内部を含み、上下方向から見て前後方向に真直ぐ延びている。第3部分33c、34cの後部は、吐出筒31、32より後方で、かつ中心軸線O1、O2より前方に位置している。
第4部分33d、34dは、前記並列方向に真直ぐ延び、第2部分33b、34bと第3部分33c、34cとを連結している。第4部分33d、34dは、第2部分33b、34bの前端部と、第3部分33c、34cの後端部と、を連結している。
【0032】
吐出器1の内部には、内容液が収容された容器本体W1、W2内と複数の吐出孔16、17とを各別に連通し、かつステム11、12内を含む、内容液の流通空間A1、A2が複数設けられている。
流通空間A1、A2は、パイプ25、26内、シリンダ21、22内、およびノズル流路33、34を含んでいる。流通空間A1、A2とは、吐出器1の内部において、内容液が流通可能な空間のことであって、例えば、シリンダ21、22内であっても、ピストン23、24が位置していて内容液が流通しない部分は含まれない。流通空間A1、A2は、1つのポンプ13、14および吐出孔16、17について1つ設けられている。流通空間A1、A2の容積は、例えば0.5ml以上2.0ml以下となっている。一方の流通空間A1の容積は、例えば0.94mlとされ、他方の流通空間A2の容積は、例えば1.53mlとなっている。
【0033】
押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量が、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに異なっている。
前述した容積の減少量は、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、吐出孔16、17からの内容液の吐出容量、並びに、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置から上昇端位置に復帰させたときの、容器本体W1、W2内の内容液の、ポンプ13、14内への吸入容量とそれぞれ同じになっている。前述した容積の減少量は、例えば0.05ml以上0.50ml以下となっている。一方の流通空間A1における前述した容積の減少量は、例えば0.1mlとされ、他方の流通空間A2における前述した容積の減少量は、例えば0.3mlとなっている。
【0034】
流通空間A1、A2の容積と、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量と、の比率が、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに同じになっている。
流通空間A1、A2の容積は、前述した容積の減少量に対して、2以上の自然数倍となっている。流通空間A1、A2の容積は、前述した容積の減少量の、例えば2倍以上10倍以下となっている。流通空間A1、A2の容積は、前述した容積の減少量の、例えば3倍となっている。
【0035】
本実施形態では、ポンプ13、14、吐出孔16、17、および流通空間A1、A2は、2つずつ設けられている。
そして、一方のパイプ25の内容積をVp1、他方のパイプ26の内容積をVp2、一方の流通空間A1のうち、一方のパイプ25内を除く部分の容積をVd1、他方の流通空間A2のうち、他方のパイプ26内を除く部分の容積をVd2、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、一方の流通空間A1の容積の減少量をS1、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、他方の流通空間A2の容積の減少量をS2としたときに、下記式を満たす。
Vp1=S1/S2×(Vd2+Vp2)-Vd1
【0036】
容器本体W1、W2は2つ設けられ、一方の容器本体W1内に収容された内容液の粘度が、他方の容器本体W2内に収容された内容液の粘度より低くなっている。前者の内容液として、例えば、水分を多く含む化粧水等が挙げられ、後者の内容液として、例えば、油分を多く含む化粧料等が挙げられる。水分を多く含む低粘度の内容液は、油分を多く含む高粘度の内容液と比べて、表面張力が大きいため、吐出時に、一方の吐出筒31の前端部31a等に付着しやすい。
【0037】
2つの流通空間A1、A2のうち、前述した容積の減少量が小さい一方の流通空間A1が、低粘度の内容液が収容された一方の容器本体W1内に連通し、前述した容積の減少量が大きい他方の流通空間A2が、高粘度の内容液が収容された他方の容器本体W2内に連通している。
【0038】
以上説明したように、本実施形態による吐出器1によれば、互いに隣り合う吐出孔16、17同士の間隔Xが、1mm以上となっているので、内容液の吐出後、押下ヘッド15の押下を解除したときに、ポンプ13、14の内部で発生した負圧が吐出孔16、17に及ぼされたとしても、互いに隣り合う吐出孔16、17のうち、一方の吐出孔側の内容液に、他方の吐出孔の負圧を及ぼしにくくすることが可能になり、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができる。
【0039】
押下ヘッド15の周壁部に、外側に向けて突出する複数の吐出筒31、32が形成され、吐出筒31、32の前端開口が吐出孔16、17となっているので、内容液を複数の吐出孔16、17から特定の位置に吐出しやすくすることができる。
互いに隣り合う吐出筒31、32の前端部31a、32a同士の間隔Yが、1mm以上2mm以下となっているので、内容液の吐出後、押下ヘッド15の押下を解除したときに、互いに隣り合う吐出孔16、17のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれるのを抑制することができるとともに、互いに隣り合う吐出孔16、17同士の間隔Xが過度に広くなるのを抑制することが可能になり、複数の吐出孔16、17から吐出された各内容液を容易に混合させることができる。
【0040】
吐出筒31、32の前端部31a、32aが、吐出孔16、17回りに沿う全周にわたってその径方向の外側に向けて膨出しているので、内容液の吐出時の液切れ性を向上させることができる。
【0041】
押下ヘッド15が、1つ設けられ、複数のポンプ13、14それぞれのステム11、12の上端部に一体に取付けられているので、1つの押下ヘッド15を押下すれば、複数のステム11、12が同時に下方に移動し、複数の吐出孔16、17から内容液が各別に吐出されることとなり、例えば、押下ヘッド15が、複数設けられ、かつ複数のポンプ13、14それぞれのステム11、12の上端部に各別に取付けられた構成と比べて、操作性を向上させることができる。
【0042】
押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量が、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに異なっているので、内容液の吐出後、押下ヘッド15の押下を解除したときに、複数の流通空間A1、A2で発生する負圧が互いに異なり、互いに隣り合う吐出孔16、17のうち、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれやすくなっているにもかかわらず、前述したように、一方の吐出孔側の内容液に、他方の吐出孔の負圧を及ぼしにくくすることが可能になることから、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれることを抑制できる効果が顕著に発揮される。
【0043】
一方の容器本体W1内に低粘度の内容液が収容されるとともに、他方の容器本体W2内に高粘度の内容液が収容されていて、内容液を複数の吐出孔16、17から吐出したときに、低粘度の内容液が一方の吐出筒31の前端部31a等に付着しやすくなっているにもかかわらず、前述したように、一方の吐出孔側の内容液に、他方の吐出孔の負圧を及ぼしにくくすることが可能になることから、一方の吐出孔側の内容液が、他方の吐出孔内に吸い込まれることを抑制できる効果がより一層顕著に発揮される。
【0044】
内容液が収容された容器本体W1、W2内と吐出孔16、17とを連通し、かつステム11、12内を含む、内容液の流通空間A1、A2の容積と、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量と、の比率が、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに同じになっている。したがって、複数の流通空間A1、A2に内容液を充満させるのに要する、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に繰り返し移動させる回数、いわゆるプライミング回数を、複数の流通空間A1、A2において互いに同じにすることが可能になり、複数のポンプ13、14を同時に作動させ、複数の吐出孔16、17全てから内容液が初めて吐出されたときも、各内容液の量を一定の比率で互いに異ならせることができる。
【0045】
これにより、例えば、容器本体W1、W2内に内容液を充填した後、出荷前に、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に繰り返し移動させ、複数の流通空間A1、A2に内容液を予め充満させておく工程等を経なくても、前述の効果を有することとなり、例えば、製造工程の複雑化、および吐出孔16、17に隣接するノズル流路33、34に位置する内容液の酸化および漏出等を防ぐことができる。
【0046】
パイプ25、26の内容積が上記式を満たすので、パイプ25、26の内容積を調整することによって、流通空間A1、A2の容積を調整し、プライミング回数を、複数の流通空間A1、A2において互いに同じにすることが可能になり、既存のポンプの部品を多く流用しながら、前述の作用効果を有する吐出器1を容易に得ることができる。
【0047】
流通空間A1、A2の容積が、前述した容積の減少量に対して、2以上の自然数倍となっているので、複数のポンプ13、14を同時に作動させて、複数の吐出孔16、17全てから内容液が初めて吐出されたときに、各内容液の量を、一定の比率で互いに異ならせることができるだけでなく、規定の量とすることもできる。
【0048】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
押下ヘッド15を、複数設け、かつ複数のポンプ13、14それぞれのステム11、12の上端部に各別に取付けてもよい。この構成において、各押下ヘッド15に、それぞれの押下ヘッド15が取付けられているステム11、12内に連通する1つの吐出孔を形成してもよい。
流通空間A1、A2の容積を調整して、プライミング回数を、複数の流通空間A1、A2において互いに同じにする際、例えばステム11、12の内容積、若しくは押下ヘッド15のノズル流路33、34の内容積等を調整してもよい。つまり、上記式を満たさなくてもよい。
【0050】
吐出器1は、3つ以上のポンプを有してもよい。
押下ヘッド15の周壁部に、吐出筒31、32を形成せず、吐出孔16、17のみを形成してもよい。
【0051】
押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量を、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに同じにしてもよい。
流通空間A1、A2の容積と、押下ヘッド15およびステム11、12を下降端位置まで下方に移動させたときの、流通空間A1、A2の容積の減少量と、の比率を、複数の流通空間A1、A2それぞれにおいて互いに異ならせてもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 吐出器
11、12 ステム
13、14 ポンプ
15 押下ヘッド
16、17 吐出孔
31、32 吐出筒
31a、32a 前端部(先端部)
A1、A2 流通空間
W1、W2 容器本体
X 吐出孔同士の間隔
Y 先端部同士の間隔
図1
図2
図3