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特許7438028車両用動力装置および発電機付車輪用軸受
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  • 特許-車両用動力装置および発電機付車輪用軸受 図1
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  • 特許-車両用動力装置および発電機付車輪用軸受 図9
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  • 特許-車両用動力装置および発電機付車輪用軸受 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】車両用動力装置および発電機付車輪用軸受
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20240216BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240216BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20240216BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240216BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240216BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20240216BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240216BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20240216BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20240216BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60K7/00 ZHV
B60K6/26
B60K6/44
B60K6/52
B60K6/547
H02K5/173 A
H02K7/14 C
F16C19/18
F16C41/00
F16C35/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020099183
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021192998
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】矢田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】西川 健太郎
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189029(JP,A)
【文献】特開平5-278476(JP,A)
【文献】国際公開第2018/228800(WO,A1)
【文献】特開2008-126733(JP,A)
【文献】特開2019-50712(JP,A)
【文献】特開2015-83440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
B60K 6/26
B60K 6/44
B60K 6/52
B60K 6/547
H02K 5/173
H02K 7/14
F16C 19/18
F16C 41/00
F16C 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、前記ブラケットに対し前記内輪のインボード側端を離脱することで、車両用動力装置から前記車輪用軸受の組立品を抜き取り可能であり、
前記電動機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる車両用動力装置。
【請求項2】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、
前記電動機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられ、前記足回りフレーム部品に前記ブラケットが取付けられると共に前記ブラケット円筒部に前記ステータが設置された状態で、前記ブラケット基部に対し前記車輪用軸受の組立品が軸受軸方向に着脱可能に構成された車両用動力装置。
【請求項3】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、
前記電動機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられ、
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のインボード側の外周面に嵌合された部分内輪とを有し、前記内輪本体はインボード側に突出し先端部に雄ねじ部が形成されるインボード側突出部を有し、前記ブラケット基部には、前記インボード側突出部の挿通を許す挿通孔が形成され、前記インボード側突出部が前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通されかつ前記部分内輪のインボード側端面が前記ブラケット基部のアウトボード側面に当接した状態で前記インボード側突出部の前記雄ねじ部に螺合されるナットが設けられた車両用動力装置。
【請求項4】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、
前記電動機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられ、
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定された部分内輪とを有し、前記内輪本体はインボード側に突出し先端部に雄ねじ部が形成されるインボード側突出部を有し、前記ブラケット基部には、前記インボード側突出部の挿通を許す挿通孔が形成され、前記インボード側突出部が前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通されかつ前記内輪本体のインボード側端面が前記ブラケット基部のアウトボード側面に当接した状態で前記インボード側突出部の前記雄ねじ部に螺合されるナットが設けられた車両用動力装置。
【請求項5】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、
前記電動機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられ、
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定された部分内輪とを有し、前記内輪本体のインボート側端にねじ孔が形成されるフランジ部を有し、前記フランジ部が前記ブラケット基部にインボード側からボルトにより着脱可能に固定される車両用動力装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の車両用動力装置において、前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通される前記インボード側突出部には、前記ブラケット基部に対する相対的な回転を防止するスプラインが設けられている車両用動力装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用動力装置において、前記内輪に対する前記外輪の回転速度を検出する回転検出センサが前記車輪用軸受に設けられ、前記
回転検出センサは、前記外輪のアウトボード側端部に設置される回転検出センサ回転子と、前記内輪のアウトボード側端部に設置され前記回転検出センサ回転子を検出する回転検出センサ固定子とを有し、前記回転検出センサの出力ケーブルを外部に取り出す外部取出手段を備えた車両用動力装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用動力装置において、前記回転検出センサが車輪速センサとしての機能を兼ねる車両用動力装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用動力装置において、前記ロータは、前記ロータケースと一体でこのロータケースとしての機能を兼ねるロータコアを有する車両用動力装置。
【請求項10】
固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪の回転により発電する発電機とを備えた発電機付車輪用軸受において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記発電機を設置するブラケットを備え、前記ブラケットに対し前記内輪のインボード側端を離脱することで、発電機付車輪用軸受から前記車輪用軸受の組立品を抜き取り可能であり、
前記発電機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記発電機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記発電機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる発電機付車輪用軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用動力装置および発電機付車輪用軸受に関し、自動車等に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪内部にモータを組み込んだ車両用動力装置は、車輪を支持する車輪用軸受と、車輪の駆動および回生を行うモータが一体構造の装置で、車両の駆動アシスト、減速時の回生、各輪のトルク制御による姿勢安定化など多くの利点があり、自動車の電動化と相俟って今後需要が見込まれている。
【0003】
<従来構造1>
図14は、従来の発電機能付き走行用モータを搭載した車両用動力装置の断面図である。同図14に示すように、この発電機能付き走行用モータを搭載した車両用動力装置は、ブレーキロータ70の摺動部よりも内周側に収められる(特許文献1)。懸架装置71に、車輪用軸受外輪72、モータステータ固定部材73を介して、モータステータコア74が固定される。モータステータコア74には、電流を流し磁力を発生させるためのモータ巻線コイル75が巻かれている。一方、車輪用軸受フランジ76にモータロータケース77とモータロータ78が取付けられ、モータステータコア74周りを回転する。この車輪用軸受と一体化された発電機能付き走行用モータによって車両走行状態に合わせて、駆動および回生を行う。
【0004】
従来の上記車両用動力装置では、車輪用軸受または発電機能付き走行用モータに異常、劣化が発生した場合、車輪用軸受と発電機能付き走行用モータとを分離することができず、車両用動力装置全体を交換する必要があり、交換作業の難易度が高く、交換部品の費用も高額となる。
【0005】
<従来構造2>
従来構造1の課題を解決するため、図15に示すように、車輪用軸受部と発電機能付き走行用モータ部を分離可能とする提案がなされている(特許文献2)。図15の例では、足回りフレーム部品であるナックル79に車輪用軸受固定部材80が設けられ、車輪用軸受固定部材80に対し、外輪81およびステータ82のいずれか一方または両方が着脱可能に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-52482号公報
【文献】特開2019-202570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来構造2の場合、車輪用軸受を分解することなく、車輪用軸受、モータロータ、モータステータを分離することが可能となる。しかし、この構造では、外輪81と車輪用軸受固定部材80間に締結部があり、交換の容易性を確保するためボルト83での固定が適切である。但し、路面からの荷重に耐えうるボルト強度が必要となるため、外輪81と車輪用軸受固定部材80との締結部は外径側に肉厚となる。これに伴い、締結部の外径側に位置するモータ部の占有空間が小さくなり、結果、所望の出力が得られなくなる。
【0008】
また、車輪用軸受固定部材80の外径部にモータステータ82が接しており、モータ動作時にコイルに電流が流れることによる発熱(銅損)と、回転に伴うステータコア内部の磁束の変化による発熱(鉄損)を伴う。その発生した熱が車輪用軸受固定部材80、外輪81を伝熱して軸受内部空間の温度が上昇する。これによって、軸受内部のグリースおよび転動体84を保持する保持器、磁気エンコーダ等が早期に劣化し、従来よりも信頼性に欠ける可能性があった。
【0009】
この発明の目的は、車輪用軸受等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる車両用動力装置および発電機付車輪用軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用動力装置は、固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、
前記電動機はアウターロータ型である。
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有する。
前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。
【0011】
この車輪用軸受は、固定輪が内輪で回転輪が外輪の外輪回転である。さらに足回りフレーム部品に取付けられるブラケットが、内輪のインボード側端を着脱可能に固定され、かつこのブラケットに電動機が設置される。したがって、車輪用軸受の交換時には、ブラケットに対し内輪のインボード側端を離脱することで、車両用動力装置から車輪用軸受の組立品等を容易に抜き取ることが可能となる。その後、新品の車輪用軸受の組立品等を交換時と逆の手順で組立てることが可能となる。電動機はブラケットに設置されるため、車輪用軸受外輪と外輪外周体間に締結部がある前記従来構造等よりも、電動機の径方向の占有空間を大きく確保することができる。よって所望の電動機出力を得ることができる。
【0012】
具体的には、電動機のロータが車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。よって、車輪用軸受の交換時、回転輪である外輪の車輪取付フランジをロータから離脱する。ブラケットは、足回りフレーム部品への取付および内輪への固定を行うブラケット基部を有するため、足回りフレーム部品に取付けられたブラケット基部に対し、内輪のインボード側端を離脱し得る。したがって、車輪用軸受の組立品を車両用動力装置から容易に離脱、組立することができる。電動機を交換する場合も、車輪用軸受を車両用動力装置から離脱するだけで、軸受部品等を分解することなく実施できる。ブラケット基部からアウトボード側に延びるブラケット円筒部の外周面に、ステータが設置されるため、外径側に肉厚となる締結部等を必要とすることなく電動機の径方向の占有空間を大きく確保し得る。これにより所望の電動機出力を得ることができる。
【0013】
また電動機のステータと外輪の外周との間に径方向隙間があるため、ステータでの発熱が車輪用軸受の内部へ伝わり難く、軸受内部空間の温度上昇を抑制することができる。これにより、軸受内部のグリース等が早期に劣化することを防ぐことができる。
したがって、車輪用軸受等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる。
【0014】
前記足回りフレーム部品に前記ブラケットが取付けられると共に前記ブラケット円筒部に前記ステータが設置された状態で、前記ブラケット基部に対し前記車輪用軸受が軸受軸方向に着脱可能に構成されてもよい。この場合、車輪用軸受の交換時に車両用動力装置全体を足回りフレーム部品から一旦取り外す手間を省略して、車両用動力装置から車輪用軸受の組立品等を軸受軸方向に抜き取ることができる。したがって、作業負担の低減を図ることができる。
【0015】
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のインボード側の外周面に嵌合された部分内輪とを有し、前記内輪本体はインボード側に突出し先端部に雄ねじ部が形成されるインボード側突出部を有し、前記ブラケット基部には、前記インボード側突出部の挿通を許す挿通孔が形成され、前記インボード側突出部が前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通されかつ前記部分内輪のインボード側端面が前記ブラケット基部のアウトボード側面に当接した状態で前記インボード側突出部の前記雄ねじ部に螺合されるナットが設けられてもよい。この場合、ナットをインボード側突出部の雄ねじ部から離脱することで、ブラケット基部から車輪用軸受の組立品を軸方向に容易に離脱させることができる。また新品の車輪用軸受の組立品等を前記と逆の手順で組立てることが可能となる。
【0016】
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定された部分内輪とを有し、前記内輪本体はインボード側に突出し先端部に雄ねじ部が形成されるインボード側突出部を有し、前記ブラケット基部には、前記インボード側突出部の挿通を許す挿通孔が形成され、前記インボード側突出部が前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通されかつ前記内輪本体のインボード側端面が前記ブラケット基部のアウトボード側面に当接した状態で前記インボード側突出部の前記雄ねじ部に螺合されるナットが設けられてもよい。
【0017】
この場合、インボード側のナットをインボード側突出部の雄ねじ部から離脱することで、ブラケット基部から車輪用軸受の組立品を軸方向に容易に離脱させることができる。部分内輪は、内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定されることで軸受予圧が与えられるため、軸受予圧を付与する手段と、ブラケット基部に対する内輪の固定手段とを別々に構成することができる。これにより軸受予圧の調整が容易になり、軸受の信頼性が向上する。
【0018】
前記内輪は、内輪本体と、この内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定された部分内輪とを有し、前記内輪本体のインボート側端にねじ孔が形成されるフランジ部を有し、前記フランジ部が前記ブラケット基部にインボード側からボルトにより着脱可能に固定されてもよい。
【0019】
この場合、内輪本体のフランジ部からボルトを離脱することで、ブラケット基部から車輪用軸受の組立品を軸方向に容易に離脱させることができる。部分内輪は、内輪本体のアウトボード側の外周面にナットによる締結または加締めで固定されることで軸受予圧が与えられるため、軸受予圧を付与する手段と、ブラケット基部に対する内輪の固定手段とを別々に構成することができる。これにより軸受予圧の調整が容易になり、軸受の信頼性が向上する。
【0020】
前記ブラケット基部の前記挿通孔に挿通される前記インボード側突出部には、前記ブラケット基部に対する相対的な回転を防止するスプラインが設けられていてもよい。前記スプラインにより、固定輪である内輪の回転および回転方向への振動を抑制し得る。これにより軸受の信頼性をさらに向上することができる。
【0021】
前記内輪に対する前記外輪の回転速度を検出する回転検出センサが前記車輪用軸受に設けられ、前記回転検出センサは、前記外輪のアウトボード側端部に設置される回転検出センサ回転子と、前記内輪のアウトボード側端部に設置され前記回転検出センサ回転子を検出する回転検出センサ固定子とを有し、前記回転検出センサの出力ケーブルを外部に取り出す外部取出手段を備えてもよい。この場合、内輪に対する外輪の回転速度を検出することで、電動機の回転を制御し得る。また、回転検出センサ回転子、回転検出センサ固定子ともに各輪のアウトボード側端部に設置されているため、車輪用軸受を車両用動力装置から離脱することなく回転検出センサのギャップ調整等のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0022】
前記回転検出センサが車輪速センサとしての機能を兼ねてもよい。この場合、部品点数の低減を図り構造を簡単化することができる。
【0023】
前記ロータは、前記ロータケースと一体でこのロータケースとしての機能を兼ねるロータコアを有してもよい。この場合、ロータケースとロータコアとが別部品となる構成よりも、部品点数を低減しコスト低減を図ることができる。
前記「一体」とは、ロータケースとロータコアとが、複数の要素を結合したものではなく単一の材料から例えば鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。
【0024】
この発明の発電機付車輪用軸受は、固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪の回転により発電する発電機とを備えた発電機付車輪用軸受において、
前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記発電機を設置するブラケットを備え、
前記発電機はアウターロータ型であり、
前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記発電機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、
前記発電機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。
【0025】
この構成によると、発電機のロータが車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。このため、車輪用軸受の交換時、回転輪である外輪の車輪取付フランジをロータから離脱する。ブラケットは、足回りフレーム部品への取付および内輪への固定を行うブラケット基部を有するため、足回りフレーム部品に取付けられたブラケット基部に対し、内輪のインボード側端を離脱し得る。したがって、車輪用軸受の組立品を発電機付車輪用軸受から容易に離脱、組立することができる。発電機を交換する場合も、車輪用軸受を発電機付車輪用軸受から離脱するだけで、軸受部品等を分解することなく実施できる。ブラケット基部からアウトボード側に延びるブラケット円筒部の外周面に、ステータが設置されるため、外径側に肉厚となる締結部等を必要とすることなく発電機の径方向の占有空間を大きく確保し得る。
【0026】
また発電機のステータと外輪の外周との間に径方向隙間があるため、ステータでの発熱が車輪用軸受の内部へ伝わり難く、軸受内部空間の温度上昇を抑制することができる。これにより、軸受内部のグリース等が早期に劣化することを防ぐことができる。
したがって、車輪用軸受等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
この発明の車両用動力装置は、固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪を回転駆動可能な電動機とを備えた車両用動力装置において、前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記電動機を設置するブラケットを備え、前記電動機はアウターロータ型であり、前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記電動機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、前記電動機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。このため、車輪用軸受等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる。
【0028】
この発明の発電機付車輪用軸受は、固定輪およびこの固定輪に転動体を介して回転自在に支持された回転輪を有し、車両の車輪を取付ける車輪取付フランジを前記回転輪のアウトボード側端に有する車輪用軸受と、前記回転輪の回転により発電する発電機とを備えた発電機付車輪用軸受において、前記固定輪が内輪であり、前記回転輪が外輪である外輪回転であって、前記車両における足回りフレーム部品に取付けられ前記内輪のインボード側端を着脱可能に固定しかつ前記発電機を設置するブラケットを備え、前記発電機はアウターロータ型であり、前記ブラケットは、前記足回りフレーム部品への取付および前記内輪への固定を行うブラケット基部と、このブラケット基部からアウトボード側に延びて前記外輪の外周に径方向隙間を介して位置し外周面に前記発電機のステータが設置されるブラケット円筒部とを有し、前記発電機のロータが前記車輪取付フランジにロータケースを介してまたは直接に着脱可能に取付けられる。このため、車輪用軸受等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の第1の実施形態に係る車両用動力装置の断面図である。
図2】同車両用動力装置の側面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】同車両用動力装置の分解断面図である。
図5】同車両用動力装置の一部を部分的に変更した断面図である。
図6】この発明の他の実施形態に係る車両用動力装置の断面図である。
図7】同車両用動力装置の側面図である。
図8】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の断面図である。
図9】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用動力装置の断面図である。
図10】同車両用動力装置の側面図である。
図11】いずれかの車両用動力装置を備えた車両の車両用システムの概念構成を示すブロック図である。
図12】同車両用システムを搭載した車両の一例となる電源系統図である。
図13】同車両用動力装置を備えた他の車両の車両用システムの概念構成を説明する図である。
図14】従来構造の車両用動力装置の断面図である。
図15】他の従来構造の車両用動力装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施形態]
この発明の実施形態に係る車両用動力装置を図1ないし図4と共に説明する。
図1に示すように、この車両用動力装置1は、車輪用軸受2と、ブラケット24と、発電機を兼用する電動機である発電機能付き走行用モータ3とを備える。この車両用動力装置1は、アウターロータ型の発電機能付き走行用モータ3を有する。
【0031】
<車輪用軸受2について>
車輪用軸受2は、回転輪である外輪4と、複列の転動体6と、転動体6を保持する図示外の保持器と、固定輪である内輪5とを有する。この車輪用軸受2は、転動体6として鋼球が適用されるアンギュラ玉軸受である。外輪4と内輪5との間の軸受空間には、グリースが封入されている。車輪用軸受2の回転軸C1に沿った方向を「軸受軸方向」といい、前記回転軸C1に直交する方向を軸受径方向という。
【0032】
外輪4は、複列の軌道面が形成された外輪本体4aと、この外輪本体4aのアウトボード側の外周面から外径側に延びる車輪取付フランジ7とを有する。車輪取付フランジ7に、複数のハブボルト13が挿通されている。車輪取付フランジ7には、ブレーキロータ12と図示外の車輪のホイールとが軸方向に重なった状態で、前記ハブボルト13により取付けられている。前記ホイールの外周に図示外のタイヤが取付けられている。
【0033】
前記ハブボルト13ではなく、外輪4のフランジ面にねじ孔を形成し、外方よりホイールボルト(図示せず)で外輪4とブレーキロータ12と前記ホイールおよびタイヤとが固定されてもよい。
なおこの明細書において、車両用動力装置1が車両に搭載された状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0034】
内輪5は、内輪本体5aと、この内輪本体5aのインボード側の外周面に嵌合された部分内輪5bとを有する。内輪本体5aは、インボード側に突出するインボード側突出部5iを有する。インボード側突出部5iは、内輪本体5aと同軸で内輪本体5aと一体に設けられ、且つ、部分内輪5bの配設位置よりもインボード側に突出する。前記「一体に設けられ」とは、インボード側突出部5iと内輪本体5aとが、複数の要素を結合したものではなく単一の材料から例えば鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。
【0035】
インボード側突出部5iは、アウトボード側からインボード側に向かって順次、嵌合部9および雄ねじ部11を含む。前記嵌合部9は、後述するブラケット24の嵌合部であり、内輪本体5aのインボード側の外周面に段差を介して繋がる。嵌合部9は、インボード側の外周面よりも若干小径に形成される第1の嵌合部9aと、この第1の嵌合部9aのアウトボード側に位置する第2の嵌合部9bとを有する。第2の嵌合部9bには、ブラケット24のブラケット基部24aの一部(後述する被嵌合部21(図4))に嵌合されるスプラインSmが形成されている。スプラインSmは、円周方向一定間隔おきに形成される複数のスプライン歯から成り、特に振動を抑制する観点からインボリュートスプラインが好ましい。この第2の嵌合部9bの外周面つまりスプラインSmの外径面は、第1の嵌合部9aよりも小径で且つ雄ねじ部11よりも大径に形成されている。
【0036】
<ブラケット24>
ブラケット24は、車両の足回りフレーム部品であるナックル8に固定されるブラケット基部24aと、このブラケット基部24aにおける大径部(後述する)の所定の径方向位置からアウトボード側に延びるブラケット円筒部24bとを有する。これらブラケット基部24aとブラケット円筒部24bとは、同軸で且つ一体に形成されている。また、基部24aとブラケット円筒部24bは別部材から構成されても良い。ブラケット円筒部24bは、外輪4の外輪本体4aの外周に所定の径方向隙間δを介して位置する。ブラケット基部24aは、アウトボード側の大径部24aaと、この大径部24aaのインボード側面に繋がり大径部24aaよりも小径の小径部24abとを有する。
【0037】
図4に示すように、大径部24aaには、第1の嵌合部9aに嵌合固定される被嵌合部20が形成され、小径部24abには、インボリュートスプラインであるスプラインSmに嵌合固定されるスプライン溝から成る被嵌合部21が形成されている。第1の嵌合部9aとその被嵌合部20との嵌合は、すきま嵌めでよいが、より軸心精度を上げるために圧入してもよい。
【0038】
図1および図2に示すように、ナックル8には、小径部24abの嵌合を許す貫通孔8bが形成されている。大径部24aaには円周方向複数のねじ孔が形成され、ブラケット基部24aはこれらねじ孔に螺合される複数のボルト22でナックル8に取付けられる。ナックル8の貫通孔8bに小径部24abの外周面が嵌合された状態で、かつナックル8のアウトボード側面8aに大径部24aaのインボード側面が当接された状態でブラケット基部24aがナックル8に固定される。
【0039】
部分内輪5bのインボード側端面は、大径部24aaのアウトボード側面に当接離隔可能に構成されている。ブラケット基部24aには、インボード側突出部5iの挿通を許す挿通孔haが形成されている。前記被嵌合部20,21(図4)により挿通孔haが形成される。またインボード側突出部5iの第1の嵌合部9aと大径部24aaの被嵌合部20(図4)が嵌合すると共に、インボード側突出部5iの第2の嵌合部9bと小径部24abの被嵌合部21(図4)がスプライン嵌合する。さらに雄ねじ部11にナット25を螺合することにより、軸受部に所定の軸力が発生するトルク値で車輪用軸受2がブラケット24に固定される。内輪本体5aとブラケット24との嵌合部9の一部にそれぞれインボリュートスプライン溝Smが形成され、互いに嵌合することで、内輪5の回転、および回転方向への振動を抑制し得る。
【0040】
<ブレーキ17について>
ブレーキ17は、ディスク状のブレーキロータ12と、ブレーキキャリパ16(図11)とを備える摩擦ブレーキである。ブレーキロータ12は、平板状部12aと、外周部12bとを有する。平板状部12aは、車輪取付フランジ7に重なる環状で且つ平板状の部材である。外周部12bは、平板状部12aの外周縁部からインボード側に円筒状に延びる円筒状部12baと、この円筒状部12baのインボード側端から外径側に平板状に延びる平板部12bbとを有する。前記ブレーキキャリパ16(図11)は、油圧式および機械式のいずれであってもよく、また電動モータ式であってもよい。
【0041】
<発電機能付き走行用モータ3について>
図1および図3に示すように、この例の発電機能付き走行用モータ3は、車輪の回転で発電を行い、給電されることによって車輪を回転駆動可能な走行補助用の発電機能付き走行用モータである。発電機能付き走行用モータは、ブラケット円筒部24bの外周面に嵌合するステータ18と、このステータ18の外周に位置し車輪取付フランジ7にロータケース15を介して取付けられたロータ19とを有するアウターロータ型である。また、発電機能付き走行用モータ3は、ロータ19が外輪4に取付けられたダイレクトドライブ形式である。
【0042】
この発電機能付き走行用モータ3は、ブレーキロータ12の内径よりも半径方向内方に設置され、且つ、車輪取付フランジ7と、ナックル8のアウトボード側面8aとの間の軸方向範囲に設置されている。発電機能付き走行用モータ3は、例えば表面磁石型永久磁石モータ、すなわちSPM(Surface Permanent Magnet)同期モータ(もしくはSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)と標記)である。
【0043】
もしくは発電機能付き走行用モータ3は、IPM(Interior Permanent Magnet)同期モータ(もしくはIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)と標記)でもよい。その他、発電機能付き走行用モータ3は、スイッチトリラクタンスモータ(Switched reluctance motor;略称:SRモータ)、インダクションモータ(Induction Motor;略称:IM)等各種形式が採用できる。各モータ形式において、ステータ18の巻き線形式として分布巻、集中巻の各形式が採用できる。
【0044】
<ステータ18>
ステータ18は、環状のステータコア18aと、このステータコア18aのティース部に図示外の絶縁材を介して巻回されたステータコイル18bとを有する。前記絶縁材として樹脂ボビン等が適用される。ステータコア18aは、例えば、電磁鋼板、圧粉磁心、またはアモルファス合金等から構成される。ブラケット24のブラケット円筒部24bの外周面に、ステータコア18aが嵌合固定されている。ステータコア18aは、ブラケット円筒部24bの外周面に圧入、接着、別部材による拘束等により固定される。なお、図示しないが、ステータコア18aの内周面に円周方向一定間隔おきに複数の凹み部または凸部が形成され、ブラケット円筒部24bの外周面に、前記複数の凹み部または凸部に嵌まり込む複数の凸部または凹み部が形成されてもよい。これにより、ステータコア18が回転方向に動くことを抑制できる。
【0045】
<ロータ19>
ロータ19は、ステータコア18aに対し径方向外方に対向するように設けられている。ロータケース15は、車輪取付フランジ7の外周部に、例えば図示外のボルトにより着脱可能に固定されている。ロータケース15は外輪4と同心の円筒形状である。車輪取付フランジ7の外周部におけるインボード側面に環状凹み7aが形成され、この環状凹み7aにロータケース15のアウトボード側端部がインロー嵌合される。ロータケース15のアウトボード側端部には、軸方向に延びる雌ねじから成るねじ孔が円周方向所定間隔おきに複数形成されている。車輪取付フランジ7の外周部には、複数の前記ねじ孔に対応する複数のボルト孔が形成されている。前記ねじ孔に図示外のボルトが螺合される。なお前記ボルトによる螺合を省略し、車輪取付フランジ7の外周部にロータケース15を圧入嵌合等により固定することも可能である。
【0046】
ロータケース15の内周面に円筒形状のロータコア19aが固定されている。ロータコア19aは、例えば、軟磁性材料から成り、ロータケース15と同心でロータケース15に、例えば、圧入、溶接、接着等により固定されている。ロータコア19aの内周面に円周方向一定間隔おきに複数の凹み部が形成され、各凹み部に永久磁石19bが嵌り込んで接着等により固定されている。なお、図5に示す変更形態のように、ロータコア19aがロータケース15と一体でロータケースとしての機能を兼ねてもよい。この場合、図1の構造よりも部品点数の低減を図り構造を簡単化することができる。
【0047】
<シール構造について>
図1に示すように、ロータケース15のインボード側の内周面と、ブラケット基部24aの大径部24aaの外周面との間には、発電機能付き走行用モータ3および車輪用軸受2内部への水および異物の侵入を防ぐシール部材23が配置されている。
【0048】
<回転検出センサ27について>
この車両用動力装置1には、回転検出センサ27が設けられている。この回転検出センサ27は、発電機能付き走行用モータ3の回転を制御するために、内輪5に対する外輪4の回転角度または回転速度を検出する。この回転速度とは、単位時間当たりの回転数と同義である。回転検出センサ27は、回転検出センサ回転子27aと、この回転検出センサ回転子27aを検出する回転検出センサ固定子27bと、この回転検出センサ固定子27bに接続された出力ケーブル27cとを有する。
【0049】
内輪本体5aのアウトボード側端部にセンサ固定部材28を介して回転検出センサ固定子27bが固定されている。外輪4のアウトボード側端部に、有底円筒状のキャップ29を介して回転検出センサ回転子27aが固定されている。キャップ29の底部から軸受軸方向に突出する軸部の外周面に、回転検出センサ回転子27aが嵌合等により固定されている。キャップ29は防水性を有し、回転検出センサ27および車輪用軸受部への水の浸入を防止する。
【0050】
内輪本体5aの内部には、出力ケーブル27cを外部(この例ではナックル8よりもインボード側)に取り出す外部取出手段としての貫通孔5aaが形成されている。この貫通孔5aaは内輪本体5aの軸心に沿って形成され、内輪本体5aのアウトボード側端からインボード側端に貫通する。この回転検出センサ27として例えばレゾルバが適用されるが、レゾルバに限定されるものではなく、例えば、エンコーダ、パルサーリングあるいはホールセンサなど形式を問わず採用可能である。
【0051】
<車輪速センサSa>
車輪速センサSaは、車輪の回転速度を検出するセンサであって、例えば、外輪4のインボード側端に設置される磁気エンコーダリングERと、この磁気エンコーダリングERに所定隙間を隔てて部分内輪5bの外周面に設置されるセンサ部(図示せず)とを有する。この例では、車輪速センサSaを回転検出センサ27と独立して設けているが、回転検出センサ27が車輪速センサとしての機能を兼ねるようにしてもよい。
【0052】
<本実施形態での軸受分離方法>
車輪用軸受2の交換時の手順について図4と共に説明する。
・ロータケース15と車輪取付フランジ7間の固定を解除する。
・ナット25をインボード側突出部5iの雄ねじ部11から外す。
・その後、車輪用軸受2をブラケット24から軸受軸方向に抜き取る。
組立作業は前記と逆の手順で実施する。
【0053】
<作用効果>
以上説明した車両用動力装置1によれば、ロータ19が車輪取付フランジ7にロータケース15を介して着脱可能に取付けられる。よって、車輪用軸受2の交換時、回転輪である外輪4の車輪取付フランジ7をロータ19およびロータケース15から離脱する。ブラケット24は、ナックル8への取付および内輪5への固定を行うブラケット基部24aを有するため、ナックル8に取付けられたブラケット基部24aに対し、内輪5のインボード側端を離脱し得る。したがって、車輪用軸受2の組立品を車両用動力装置1から容易に離脱、組立することができる。発電機能付き走行用モータ3を交換する場合も、車輪用軸受2を車両用動力装置1から離脱するだけで、軸受部品等を分解することなく実施できる。
【0054】
ブラケット基部24aからアウトボード側に延びるブラケット円筒部24bの外周面に、ステータ18が設置されるため、外径側に肉厚となる締結部等を必要とすることなく発電機能付き走行用モータ3の径方向の占有空間を大きく確保し得る。よって所望の電動機出力を得ることができる。
また発電機能付き走行用モータ3のステータ18と外輪4の外周との間に径方向隙間δがあるため、ステータ18での発熱が車輪用軸受2の内部へ伝わり難く、軸受内部空間の温度上昇を抑制することができる。これにより、軸受内部のグリース等が早期に劣化することを防ぐことができる。
したがって、車輪用軸受2等の交換時に単体での交換が可能となり、交換の手間と交換部品の費用を低減することができ、また、所望の出力を得ることができ且つ軸受の信頼性を担保することが可能となる。
【0055】
ナックル8にブラケット24が取付けられると共にブラケット円筒部24bにステータ18が設置された状態で、ブラケット基部24aに対し車輪用軸受2が軸受軸方向に着脱可能に構成されている。このため、車輪用軸受2の交換時に車両用動力装置全体をナックル8から一旦取り外す手間を省略して、車両用動力装置1から車輪用軸受2の組立品等を軸受軸方向に抜き取ることができる。したがって、作業負担の低減を図ることができる。
【0056】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0057】
[第2の実施形態]
図6図7のVI-VI線断面図である。図6および図7に示すように、この実施形態に係る車両用動力装置1では、内輪5は、内輪本体5aと、この内輪本体5aのアウトボード側の外周面にナット58による締結で固定された部分内輪5bとを有する。この例の内輪本体5aは、インボード側に突出するインボード側突出部5iと、アウトボード側に突出するアウトボード側突出部5oとを有する。アウトボード側突出部5oの先端部に雄ねじ部59が形成され、この雄ねじ部59に前記ナット58が螺合されることで、部分内輪5bが内輪本体5aに固定されると共に軸受予圧が与えられる。インボード側突出部5iがブラケット基部24aの挿通孔に挿通されかつ内輪本体5aのインボード側端面がブラケット基部24aのアウトボード側面に当接した状態でインボード側突出部5iの雄ねじ部11にナット25が螺合される。
【0058】
この構成によると、インボード側のナット25をインボード側突出部5iの雄ねじ部11から離脱することで、ブラケット基部24aから車輪用軸受2の組立品を軸方向に容易に離脱させることができる。部分内輪5bは、内輪本体5aのアウトボード側の外周面にナット58による締結で固定されることで軸受予圧が与えられるため、軸受予圧を付与する手段と、ブラケット基部24aに対する内輪5の固定手段とを別々に構成することができる。これにより軸受予圧の調整が容易になり、軸受の信頼性が向上する。
【0059】
[第2の実施形態の変形例:内輪加締め型]
図8に示すように、部分内輪5bは、内輪本体5aのアウトボード側の外周面に加締部60による加締めで固定されてもよい。この場合、図6および図7の例よりも部品点数を低減でき、内輪本体5aの軸方向長さを短縮することができる。
【0060】
[第3の実施形態]
図9図10のIX-IX線断面図である。図9および図10に示すように、この例の内輪5は、内輪本体5aと、この内輪本体5aのアウトボード側の外周面にナット58による締結で固定された部分内輪5bとを有する。内輪本体5aのインボート側端にねじ孔61aが形成されるフランジ部61を有し、フランジ部61がブラケット基部24aにインボード側からボルト62により着脱可能に固定されている。なお図示しないが、部分内輪5bは、内輪本体5aのアウトボード側の外周面に加締部60(図8参照)による加締めで固定されてもよい。
【0061】
この構成によれば、内輪本体5aのフランジ部61からボルト62を離脱することで、ブラケット基部24aから車輪用軸受2の組立品を軸方向に容易に離脱させることができる。部分内輪5bは、内輪本体5aのアウトボード側の外周面にナット58による締結または加締めで固定されることで軸受予圧が与えられるため、軸受予圧を付与する手段と、ブラケット基部24aに対する内輪5の固定手段とを別々に構成することができる。これにより軸受予圧の調整が容易になり、軸受の信頼性が向上する。
【0062】
<車両用システムについて>
図11は、いずれかの実施形態に係る車両用動力装置1を用いた車両用システムの概念構成を示すブロック図である。
この車両用システムにおいて、車両用動力装置1は、主駆動源と機械的に非連結である従動輪10を持つ車両において、従動輪10に対して搭載される。車両用動力装置1における車輪用軸受2(図1等)は、従動輪10を支持する軸受である。
【0063】
主駆動源35は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関、または電動発電機(電動モータ)、または両者を組み合わせたハイブリッド型の駆動源である。前記「電動発電機」は、回転付与による発電が可能な電動モータを称す。図示の例では、車両30は、前輪が駆動輪10、後輪が従動輪10となる前輪駆動車であって、主駆動源35が内燃機関35aと駆動輪側の電動発電機35bとを有するハイブッリド車(以下、「HEV」と称することがある)である。
【0064】
具体的には、駆動輪側の電動発電機35bが48V等の中電圧で駆動されるマイルドハイブリッド形式である。ハイブリッドはストロングハイブリッドとマイルドハイブリッドとに大別されるが、マイルドハイブリッドは、主要駆動源が内燃機関であって、発進時や加速時等にモータで走行の補助を主に行う形式を言い、EV(電気自動車)モードでは通常の走行を暫くは行えても長時間行うことができないことでストロングハイブリッドと区別される。同図の例の内燃機関35aは、クラッチ36および減速機37を介して駆動輪10のドライブシャフトに接続され、減速機37に駆動輪側の電動発電機35bが接続されている。
【0065】
この車両用システムは、従動輪10の回転駆動を行う走行補助用の発電機である電動発電機3と、この電動発電機の制御を行う個別制御手段39と、上位ECU40に設けられて前記個別制御手段39に駆動および回生の制御を行わせる指令を出力する個別電動発電機指令手段45とを備える。電動発電機3は、蓄電手段に接続されている。この蓄電手段は、バッテリー(蓄電池)またはキャパシタ、コンデンサ等を用いることができ、その形式や車両30への搭載位置は問わないが、この実施形態では、車両30に搭載された低電圧バッテリー50および中電圧バッテリー49のうちの中電圧バッテリー49とされている。
【0066】
従動輪用の電動発電機3は、変速機を用いないダイレクトドライブモータである。電動発電機3は、電力を供給することで電動機として作用し、また車両30の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作用する。
電動発電機3は、外輪4(図1)にロータ19(図1)が取付けられているため、電動発電機3に電流を印加すると外輪4(図1)が回転駆動され、逆に電力回生時には誘起電圧を負荷することで回生電力が得られる。この電動発電機3の回転駆動用の駆動電圧または回生電圧が100V以下である。
【0067】
<車両30の制御系について>
上位ECU40は、車両30の統合制御を行う手段であり、トルク指令生成手段43を備える。このトルク指令生成手段43は、アクセルペダル等のアクセル操作手段56およびブレーキペダル等のブレーキ操作手段57からそれぞれ入力される操作量の信号に従ってトルク指令を生成する。この車両30は、主駆動源35として内燃機関35aおよび駆動輪側の電動発電機35bを備え、また二つの従動輪10,10をそれぞれ駆動する二つの電動発電機3,3を備えるため、前記トルク指令を各駆動源35a,35b,3,3に定められた規則によって分配するトルク指令分配手段44が上位ECU40に設けられている。
【0068】
内燃機関35aに対するトルク指令は内燃機関制御手段47に伝達され、内燃機関制御手段47によるバルブ開度制御等に用いられる。駆動輪側の発電電動機35bに対するトルク指令は、駆動輪側電動発電機制御手段48に伝達されて実行される。従動輪側の発電機3,3に対するトルク指令は、個別制御手段39,39に伝達される。前記トルク指令分配手段44のうち、個別制御手段39,39へ出力する部分を個別電動発電機指令手段45と称している。この個別電動発電機指令手段45は、ブレーキ操作手段57の操作量の信号に対して、電動発電機3が回生制動により制動を分担する制動力の指令となるトルク指令を個別制御手段39へ与える機能も備える。個別電動発電機指令手段45および個別制御手段39により、電動発電機3を制御する制御手段68が構成される。
【0069】
個別制御手段39はインバータ装置であり、中電圧バッテリー49の直流電力を三相の交流電圧に変換するインバータ41と、前記トルク指令等によりインバータ41の出力をPWM制御等で制御する制御部42とを有する。インバータ41は、半導体スイッチング素子等によるブリッジ回路(図示せず)と、電動発電機3の回生電力を中電圧バッテリー49に充電する充電回路(図示せず)とを備える。なお個別制御手段39は、二つの電動発電機3,3に対して個別に設けられるが、一つの筐体内に収められ、制御部42を両個別制御手段39,39で共有する構成であってもよい。
【0070】
図12は、前記車両用システムを搭載した車両(図11)の一例となる電源系統図である。同図の例では、バッテリーとして低電圧バッテリー50と中電力バッテリー49とが設けられ、両バッテリー49,50は、DC/DCコンバータ51を介して接続されている。電動発電機3は二つあるが、代表して一つで図示している。図11の駆動輪側の電動発電機35bは、図12では図示を省略しているが、従動輪側の電動発電機3と並列に中電力系統に接続されている。低電圧系統には低電圧負荷52が接続され、中電圧系統には中電圧負荷53が接続される。低電圧負荷52および中電圧負荷53は、それぞれ複数あるが、代表して一つで示している。
【0071】
低電圧バッテリー50は、制御系等の電源として各種の自動車一般に用いられているバッテリーであり、例えば12Vまたは24Vとされる。低電圧負荷52としては、内燃機関35aのスタータモータ、灯火類、上位ECU40およびその他のECU(図示せず)等の基幹部品がある。低電圧バッテリー50は電装補機類用補助バッテリーと称し、中電圧バッテリー49は電動システム用補助バッテリー等と称してもよい。
【0072】
中電圧バッテリー49は、低電圧バッテリー50よりも電圧が高く、かつストロングハイブリッド車等に用いられる高電圧バッテリー(100V以上、例えば200~400V程度)よりも低く、かつ作業時に感電による人体への影響が問題とならない程度の電圧であり、近年マイルドハイブリッドに用いられている48Vバッテリーが好ましい。48Vバッテリー等の中電圧バッテリー49は、従来の内燃機関を搭載した車両に比較的容易に搭載することができ、マイルドハイブリッドとして電力による動力アシストや回生により、燃費低減することができる。
【0073】
前記48V系統の中電圧負荷53は前記アクセサリー部品であり、前記駆動輪側の電動発電機35bである動力アシストモータ、電動ポンプ、電動パワーステアリング、スーパーチャージャ、およびエアーコンプレッサなどである。アクセサリーによる負荷を48V系統で構成することで、高電圧(100V以上のストロングハイブリッド車など)よりも動力アシストの出力が低くなるものの、乗員やメンテナンス作業者への感電の危険性を低くすることができる。電線の絶縁被膜を薄くすることができるので、電線の重量や体積を減らすことができる。また、12Vよりも小さな電流量で大きな電力量を入出力することができるため、電動機または発電機の体積を小さくすることができる。これらのことから、車両の燃費低減効果に寄与する。
【0074】
この車両用システムは、こうしたマイルドハイブリッド車のアクセサリー部品に好適であり、動力アシストおよび電力回生部品として適用される。なお、従来よりマイルドハイブリッド車において、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータ(いずれも図示せず)などが採用されることがあるが、これらはいずれも、内燃機関または動力装置に対して動力アシストまたは回生するため、伝達装置および減速機などの効率の影響を受ける。
【0075】
これに対してこの実施形態の車両用システムは従動輪10に対して搭載されるため、内燃機関35aおよび電動モータ(図示せず)等の主駆動源とは切り離されており、電力回生の際には車体の運動エネルギーを直接利用することができる。また、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータなどを搭載する際には、車両30の設計段階から考慮して組み込む必要があり、後付けすることが難しい。
【0076】
これに対して、従動輪10内に収まるこの車両用システムの電動発電機3は、完成車であっても部品交換と同等の工数で取り付けることができ、内燃機関35aのみの完成車に対しても48Vのシステムを構成することができる。内燃機関35aのみ備えた既存の車両に、いずれかの実施形態に係る車両用動力装置1と、電動発電機用のバッテリーとして、駆動電圧または回生電圧が100V以下の前記中電圧バッテリー49とを搭載することで、車両の大幅な改造をすることなく、マイルドハイブリッド車両にすることができる。この実施形態の車両用システムを搭載した車両に、図11の例のように別の補助駆動用の電動発電機35bが搭載されていても構わない。その際は車両30に対する動力アシスト量や回生電力量を増加させることができ、さらに燃費低減に寄与する。
【0077】
図13は、いずれかの実施形態に係る車両用動力装置1を、前輪である駆動輪10および後輪である従動輪10にそれぞれ適用した例を示す。駆動輪10は内燃機関からなる主駆動源35により、クラッチ36および減速機37を介して駆動される。この前輪駆動車において、各駆動輪10および従動輪10の支持および補助駆動に、車両用動力装置1が設置されている。このように車両用動力装置1を、従動輪10だけでなく、駆動輪10にも適用し得る。
【0078】
図11に示す車両用システムは、発電を行う機能を有するが、給電による回転駆動をしないシステムとしてもよい。この車両用システムには、モータを兼用しない電動発電機3と、車輪用軸受2とを備える発電機付車輪用軸受が搭載される。この発電機付車輪用軸受は、いずれかの実施形態の車両用動力装置に対し、モータを兼用する電動発電機3を除き同一構成である。
【0079】
この発電機付車輪用軸受が搭載される車両用システムによれば、電動発電機3が発電した回生電力を中電圧バッテリー49に蓄えることにより、制動力を発生させることができる。機械式のブレーキ操作手段57と併用や使い分けで、制動性能も向上させることができる。このように発電を行う機能に限定した場合、個別制御手段39はインバータ装置ではなく、AC/DCコンバータ装置(図示せず)として構成することができる。前記AC/DCコンバータ装置は、3相交流電圧を直流電圧に変換することで、電動発電機3の回生電力を中電圧バッテリー49に充電する機能を備え、インバータと比較すると制御方法が容易であり、小型化が可能となる。
【0080】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1…車両用動力装置、2…車輪用軸受、3…発電機能付き走行用モータ(電動機)、4…外輪(回転輪)、5…内輪(固定輪)、5a…内輪本体、5b…部分内輪、5i…インボード側突出部、5aa…貫通孔(外部取出手段)、6…転動体、7…車輪取付フランジ、8…ナックル(足回りフレーム部品)、11…雄ねじ部、15…ロータケース、18…ステータ、19…ロータ、24…ブラケット、24a…ブラケット基部、24b…ブラケット円筒部、25…ナット、27…回転検出センサ、27a…回転検出センサ回転子、27b…回転検出センサ固定子、27c…出力ケーブル、61…フランジ部、62…ボルト、Sa…車輪速センサ
図1
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