(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】感ガス材料、感ガス材料の製造方法及びガス濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G01N27/12 C
G01N27/12 A
G01N27/12 M
(21)【出願番号】P 2020100357
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美穂
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257823(JP,A)
【文献】特開2008-241430(JP,A)
【文献】特開2006-023224(JP,A)
【文献】特開2001-289809(JP,A)
【文献】特開2010-043905(JP,A)
【文献】特開2008-064674(JP,A)
【文献】特開昭59-026041(JP,A)
【文献】特表2004-523731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262780(US,A1)
【文献】M.K.PARIA, H.S.MAITI,JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE,1983年,Vol.18,pp.2101-2107
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズと亜鉛元素とを備え、
元素分析により、スズ元素及び前記亜鉛元素が検出され、
結晶構造解析により、前記酸化スズが検出され
、酸化亜鉛が検出されない感ガス材料。
【請求項2】
酸化スズと亜鉛元素とを備え、
元素分析により、スズ元素及び前記亜鉛元素が検出され、
結晶構造解析により、前記酸化スズ及
び酸化亜鉛が検出され、
前記結晶構造解析で算出された、前記酸化スズの結晶量に対する
前記酸化亜鉛の結晶量の比が、前記スズ元素の含有量に対する前記亜鉛元素の含有量の比よりも小さい感ガス材料。
【請求項3】
前記亜鉛元素の含有量の、
前記スズ元素の含有量に対する比が、0.1mol%以上50mol%未満である請求項
1又は2に記載の感ガス材料。
【請求項4】
スズ塩と亜鉛塩とを含む混合水溶液に沈殿剤を混合して、亜鉛イオンを内部に含むスズ水酸化物を生成する工程と、
前記
スズ水酸化物を焼成して、
酸化スズと亜鉛元素を含む焼成物を生成する焼成工程と、を含む感ガス材料の製造方法。
【請求項5】
アルデヒド類とアルコールとを含む検査対象ガスの前記アルデヒド類の濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
請求項1~
3の何れか一項の感ガス材料を備え、前記検査対象ガスに含まれる前記アルデヒド類及び前記アルコールを検出する第1の検出部と、
前記検査対象ガスに含まれる前記アルデヒド類及び前記アルコールを検出し、前記アルデヒド類の検出感度に対する前記アルコールの検出感度の比が前記第1の検出部の前記アルデヒド類の検出感度に対する前記アルコールの検出感度の比よりも大きい第2の検出部と、
前記第1の検出部と前記第2の検出部との検出結果に基づいて前記アルデヒド類の濃度を算出する制御部と、
を備えるガス濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感ガス材料、感ガス材料の製造方法及びガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検知対象となるガス(検査対象ガス)中に含まれる特定のガス成分(化学物質)を検出するガスセンサを備えたガス濃度測定装置は、建物や車両等において様々な用途に用いられている。
【0003】
ガスセンサにより検出されるガス成分として、例えば、ホルムアルデヒド、エタノール、アセトン、クロロホルム等の揮発性有機化合物(VOC);メタン、プロパン、ブタン等の可燃性ガス;一酸化炭素、窒素酸化物等の有毒ガス;硫黄化合物等の悪臭ガスが挙げられる。上記ガスの中でも、VOCは、毒性の高い化学物質を含み、頭痛、めまい、吐き気等の健康被害の原因となる大気汚染物質であると共に、シックハウス症候群の原因物質でもある。特に、アルデヒド類の一種であるホルムアルデヒドは、住宅や生活用品から発生することが知られており、シックハウス症候群の主要因の物質であると考えられ、発がん性のある物質とされている。
【0004】
上記ガスを検出するガスセンサの一つに半導体式センサがある。半導体式センサは、様々な種類のガスに対して高感度に反応でき、電気化学式センサ等の他のセンサに比べて低コストである。そのため、半導体式センサをVOCの分析等に用いることが検討されている。その際、半導体式センサは、様々な種類のVOCに対して高感度に反応するため、ガス種の判別もしくはガス種毎の濃度測定ができないという問題があった。そこで、例えばホルムアルデヒドをアルコール等の他のVOCと区別して測定するため、検出特性の異なる複数のガスセンサを備えて、複数のガスを検出するガス濃度検出装置が提案されている。
【0005】
このようなガス濃度測定装置として、例えば、ホルムアルデヒド等のガスを検知する第1のガスセンサと、アルコール濃度を検出する第2のガスセンサと、制御部とを備え、制御部で第1のガスセンサからの濃度信号と第2のガスセンサからの濃度信号の出力差に基づいてホルムアルデヒドの濃度を測定するガス濃度測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のガスセンサは、エタノールに対する感度がホルムアルデヒドに対する感度よりも大きいものがほとんどであり、ホルムアルデヒド濃度を精度良く算出することができない、という問題があった。
【0008】
そのため、室内や車内等でガス濃度測定装置を更に有効に用いるため、ホルムアルデヒドのようなアルデヒド類やエタノール等のアルコール、その他のガス成分等を含む検査対象ガスからアルデヒド類を高感度で検出できるガス検出用の感ガス材料が希求されている。
【0009】
本発明の一態様は、アルコールに対してアルデヒド類を高感度で検出することができる感ガス体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る感ガス材料は、酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素を含む侵入型固溶体を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る感ガス材料は、アルコールに対してアルデヒド類を高感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る感ガス材料の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】ガス濃度測定装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】ガスセンサの構成の一例を示す概念断面図である。
【
図4】ガスセンサを構成する、ガスセンサ素子の構成の一例を示す概念断面図である。
【
図6】例1の感ガス材料をEPMAで元素分析した結果を示す図である。
【
図7】例1の感ガス材料及び例3の酸化スズをXRDにより結晶構造を解析した結果を示す図である。
【
図8】例1の感ガス材料の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を示す図である。
【
図9】例1及び例2の感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を示す図である。
【
図10】参照例1の感ガス材料をEPMAで元素分析した結果を示す図である。
【
図11】参照例1の感ガス材料をXRDにより結晶構造を解析した結果を示す図である。
【
図12】例2の感ガス材料の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を示す図である。
【
図13】例3の酸化スズの、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を示す図である。
【
図14】例3~例7の感ガス材料の、測定時間と抵抗値との関係を示す図である。
【
図15】例4の感ガス材料の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0014】
<感ガス材料>
本発明の実施形態に係る感ガス材料について説明する。本実施形態では、一例として、検査対象ガス中に含まれるVOCを測定する場合について説明する。なお、VOCとは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール等のアルデヒド類;エタノール、メタノール、n-ブタノール等のアルコール;アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等をいう。これらは、例えば、化学品、塗料、印刷インキ、接着剤、溶剤及び燃焼等に含まれる。本実施形態では、感ガス材料で検知するVOCがホルムアルデヒド及びエタノールである場合について説明する。
【0015】
本実施形態に係る感ガス材料は、酸化スズ(SnO2)の結晶格子の隙間に亜鉛(Zn)元素を含む侵入型固溶体を備えている。なお、本実施形態に係る感ガス材料は、侵入型固溶体のみで構成されていてもよい。
【0016】
本願発明者は、ホルムアルデヒドの検出感度が高い感ガス材料を検討するに当り、金属酸化物の中でも酸化スズを用い、酸化スズに侵入型固溶できる金属元素として亜鉛を用いることで、ホルムアルデヒドに対する活性が高まり、ホルムアルデヒドに対する反応性を向上させることができることに着目した。そして、本願発明者は、酸化スズの結晶構造中に亜鉛元素を侵入させて、酸化スズの結晶中に亜鉛元素を固溶させた侵入型固溶体を形成することで、ホルムアルデヒドに対する反応性を向上させ、ホルムアルデヒドをエタノールに比べて高感度で検出することができることを見出した。
【0017】
酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素が侵入して侵入型の固溶体を形成していることは、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による元素分析とX線回折(XRD)による結晶構造解析とを行うことで確認することができる。酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素が侵入して固溶していることは、具体的には、EPMAによる元素分析においてSnとZnが添加量に対応する強度を検出し、XRDによる結晶構造解析において酸化スズのみのピークを観察することで確認することができる。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る感ガス材料は、EPMA等による元素分析によりスズ元素及び亜鉛元素が検出され、XRD等による結晶構造解析により酸化スズが検出されるが酸化亜鉛が検出されない侵入型固溶体からなる。
【0019】
また、本実施形態に係る感ガス材料は、EPMA等による元素分析によりスズ元素及び亜鉛元素が検出され、XRD等による結晶構造解析により酸化スズ及び酸化亜鉛が検出されるが、結晶構造解析で算出された酸化スズの結晶量に対する酸化亜鉛の結晶量の比が、スズ元素の含有量に対する亜鉛元素の含有量の比よりも小さい侵入型固溶体からなる。
【0020】
酸化スズに固溶させる亜鉛元素の固溶量は、固溶限界量まで可能であるが、固溶量としては、亜鉛元素の含有量のスズ元素の含有量に対する比が、0.1mol%以上50mol%未満であることが好ましく、1.0mol%~30.0mol%であることがより好ましく、3.0mol%~20mol%であることがさらに好ましく、10.0mol%~15.0mol%であることが最も好ましい。亜鉛元素の固溶量のスズ元素の含有量に対する比が0.1mol%以上50mol%未満であれば、酸化スズの結晶中に亜鉛元素を固溶させた状態を形成することができる。
【0021】
本実施形態に係る感ガス材料は、金属酸化物としてSnO2の他に、酸化インジウム(In2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(FeO、Fe2O3)、酸化セリウム(CeO?)、酸化タングステン(WO3)等の金属酸化物を含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態に係る感ガス材料は、その形態は特に限定されず、板状、柱状、球状等に形成することができる。感ガス材料は、多孔質構造を有していてもよい。これにより、感ガス材料の比表面積を増大させることができるので、検査対象ガスとの接触面積を増加させることができる。
【0023】
<感ガス材料の製造方法>
本実施形態に係る感ガス材料の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る感ガス材料の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る感ガス材料の製造方法は、水酸化物の生成工程(ステップS11)、水洗工程(ステップS12)、乾燥工程(ステップS13)及び焼成工程(ステップS14)を含む。以下、各工程について説明する。
【0024】
(水酸化物の生成工程)
スズ塩と亜鉛塩とを含む水溶液に沈殿剤を混合して、共沈法により、亜鉛イオンを内部に含むスズ水酸化物の沈殿物を生成する(水酸化物の生成工程:ステップS11)。
【0025】
まず、スズ塩及び亜鉛塩を水に溶解して、スズ塩と亜鉛塩とを含む混合水溶液を調整する。
【0026】
スズ塩としては、フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ等のスズハロゲン化物、硝酸スズ、硫酸スズ、燐酸スズ、酢酸スズ等を挙げることができる。これは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、安定性と入手の容易さの観点から、塩化スズを用いることが好ましい。塩化スズは、塩化スズ二水和物、塩化スズ三水和物、塩化スズ五水和物等の水和物であってもよい。また、スズ塩におけるスズは二価から四価の原子価のものから選択できるが、四価のスズを用いることが好ましい。
【0027】
亜鉛塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等を挙げることができる。これは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸亜鉛を用いることが好ましい。酢酸亜鉛は、酢酸亜鉛二水和物等の水和物であってもよい。
【0028】
亜鉛塩は、例えば、亜鉛イオンの含有量の、スズ元素の含有量に対する比が0.1mol%以上50mol%未満となるように添加されることが好ましく、より好ましくは1.0mol%~30.0mol%であり、さらに好ましくは3.0mol%~20mol%であり、最も好ましくは10.0mol%~15.0mol%である。亜鉛塩を混合水溶液に添加することで生じる亜鉛イオンの含有量は、最終的に得られる固溶体に含まれる亜鉛元素と略同等であるため、固溶体に含まれる亜鉛元素は、亜鉛塩の含有量によって調整可能である。亜鉛塩を、亜鉛イオンの含有量のスズ元素の含有量に対する比が0.1mol%以上50mol%未満となるように添加されることで、固溶体に含まれる亜鉛元素の含有量のスズ元素の含有量に対する比を0.1mol%以上50mol%未満とすることができる。そのため、亜鉛元素を固溶体中に固溶させた状態で含めることができる。
【0029】
スズ塩及び亜鉛塩を溶解させる溶媒としては、水(例えば、純水)等の水溶性溶媒を用いることができる。
【0030】
スズ塩と亜鉛塩とを含む混合水溶液に共沈法により沈殿剤を添加して、スズ塩と亜鉛塩と沈殿剤とを反応させることにより、SnとZnとを含み、亜鉛イオンを内部に含む亜鉛水酸化物を生成する。この水酸化物は、不溶性の沈殿物である。浴槽内の沈殿物は、水を除去して回収する。
【0031】
沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSnを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア(NH3)水、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、NH3水が好ましい。これらの沈殿剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
沈殿反応は、沈殿物の状態が制御し易い等の点から、SnとZnを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水等の溶媒に添加して混合する方法が好ましい。SnとZnを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液の濃度、反応時のpH等は、適宜調整することができる。
【0033】
なお、SnとZnとを含む混合水溶液は、沈殿剤との反応時にSnとZnを含む溶液となっていればよく、例えばSnを含む原料とZnを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を水に添加した後、沈殿剤を添加して沈殿剤と反応させてもよい。別々の溶液として調製する場合も、各原料が実質的に水に溶解する範囲で適宜調整する。
【0034】
(水洗工程)
次に、生成したスズ水酸化物の沈殿物を含む浴槽に純水を添加して、沈殿物を水洗する(水洗工程:ステップS12)。
【0035】
沈殿物の水洗後、浴槽から水を除去して、沈殿物を回収する。
【0036】
(乾燥工程)
次に、回収した沈殿物を所定の乾燥温度及び乾燥時間で乾燥し、乾燥物を得る(乾燥工程:ステップS13)。
【0037】
乾燥温度及び乾燥時間は、沈殿物の量等に応じて適宜選択可能であり、例えば、乾燥温度は80℃~150℃であることが好ましく、所定時間は12時間~24時間であることが好ましい。
【0038】
次に、乾燥物を所定の焼成温度及び焼成時間で焼成することで、金属複合酸化物として、酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素を含む侵入型固溶体を含む感ガス材料を生成する(焼成工程:ステップS14)。
【0039】
焼成温度及び焼成時間は、乾燥物の量等に応じて適宜選択可能であり、例えば、焼成温度は600℃~800℃であることが好ましく、焼成時間は2時間~4時間であることが好ましい。
【0040】
得られた感ガス材料に含まれる侵入型固溶体を構成する酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素が侵入していることは、上述の通り、EPMA等による元素分析においてSnとZnが添加量に対応する強度が検出されることで確認できる。また、XRD等による結晶構造解析においてSnO2のみのピークが観察されることで確認できる。
【0041】
このように、本実施形態に係る感ガス材料は、酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素を含む侵入型固溶体を備えている。酸化スズの結晶格子の隙間に亜鉛元素が侵入して固溶することで、エタノールへの応答性よりもホルムアルデヒドヘの応答性を高めることができると共に、結晶子サイズを小さくすることができるため、金属酸化物反半導体であるSnO2は酸化活性を向上させ、被検知ガスの感度が損なわれることを低減することができる。そのため、本実施形態に係る感ガス材料は、ホルムアルデヒドをエタノールよりも高感度で検出することができる。よって、本実施形態に係る感ガス材料は、エタノールの検出感度に対するホルムアルデヒドの検出感度の比を大きくすることができるので、検査対象ガス中にホルムアルデヒドの他にエタノールが含まれていても、エタノールに対してホルムアルデヒドを高感度で検出することができる。
【0042】
ホルムアルデヒドは、一般に、住宅用建材等に含有されている場合が多く、低濃度(例えば、0.1ppm以下)でも検知できることが重要である。また、エタノールは、消臭剤等に多く含まれているため、ホルムアルデヒドの検出時にbエタノールも検出され、誤動作の一因ともなっている。本実施形態に係る感ガス材料は、エタノールよりもホルムアルデヒドを高感度で検出することができるため、ホルムアルデヒドが住宅用建材等にエタノールと共に低濃度で含まれている場合でも、検知性能を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る感ガス材料は、ホルムアルデヒド及びエタノールの検出感度を高めることで、ホルムアルデヒド及びエタノールの検出時の立ち上がり及び立ち下がりを向上させることができる。そのため、ホルムアルデヒドに対する応答感度を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る感ガス材料は、亜鉛元素の含有量の、スズ元素の含有量に対する比を、0.1mol%以上50mol%未満とすることができる。前記比が0.1mol%以上50mol%未満であれば、酸化スズの結晶中に亜鉛元素が侵入して固溶した状態を安定して形成することができるので、SnO2の結晶子サイズを小さくした状態を維持することができるといえる。そのため、本実施形態に係る感ガス材料は、ホルムアルデヒドに対する反応性をより安定して向上させることができる。
【0045】
<ガス濃度測定装置>
本実施形態に係る感ガス材料を備えるガス濃度測定装置について説明する。一例として、建物の室内空間(空間)の空気中に含まれるVOCを測定する場合について説明する。
【0046】
図2は、一実施形態に係るガス濃度測定装置の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、ガス濃度測定装置1は、装置本体10、第1のガス検出部である第1のガスセンサ20、第2のガス検出部である第2のガスセンサ30、電源部40、抵抗測定部50及び制御装置60を備え、ホルムアルデヒドとエタノールとを含む検査対象ガス中のホルムアルデヒドの濃度を測定する。ガス濃度測定装置1は、建物や車両等の同一の空間S1内に設けられる。第1のガスセンサ20、第2のガスセンサ30及び電源部40は、通電ラインLを介して制御装置60に接続されている。空間S1内の空気中には、検査対象ガスとしてVOCであるホルムアルデヒド及びエタノールを含む。
【0047】
装置本体10は、直方体状等に形成され、内部に空間を有するものを用いることができる。装置本体10は、例えば合成樹脂等で形成できる。装置本体10は、
図1に示すように、その表面に第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30を空間S1と接触可能となるように配置している。装置本体10の内部には電源部40及び抵抗測定部50が設けられ、装置本体10の外部に制御装置60が設けられている。
【0048】
第1のガスセンサ20は、上記の本実施形態に係る感ガス材料を備え、検査対象ガスに含まれるホルムアルデヒド及びエタノールを検出するものであり、ホルムアルデヒド濃度センサ及びエタノール濃度センサとして機能する。
【0049】
第1のガスセンサ20は、ホルムアルデヒドの検出感度がエタノールの検出感度よりも高く、ホルムアルデヒドをエタノールよりも高感度で測定することができる。
【0050】
ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度が所定の濃度C1よりも高い濃度(例えば、濃度C2)にかけて検出される抵抗値は、ホルムアルデヒドの検出感度がエタノールの検出感度よりも高ければよい。ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度が濃度C2までに検出される抵抗値は、ホルムアルデヒド濃度が濃度C1の時の抵抗値R11及びエタノール濃度が濃度C1の時の抵抗値R12までと同じ検出感度で低下していてもよいし、異なる検出感度で低下していてもよい。
【0051】
第1のガスセンサ20は、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度を、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度がゼロ(0ppm)の時の抵抗値を基準値として除することにより、下記式(1)及び(2)のように、ホルムアルデヒド及びエタノール濃度の検出感度を求めることができる。なお、下記式(1)及び(2)では、ホルムアルデヒド濃度がゼロ(0ppm)の時の抵抗値を抵抗値R01とし、エタノール濃度がゼロ(0ppm)の時の抵抗値を抵抗値R02とし、ホルムアルデヒドに由来する抵抗値を抵抗値R11とし、エタノールに由来する抵抗値を抵抗値R12とする。ホルムアルデヒド又はエタノールに由来する抵抗値は、例えば、ホルムアルデヒド濃度又はエタノール濃度が所定の濃度の時の抵抗値を意味する。
ホルムアルデヒドの検出感度=ホルムアルデヒドに由来する抵抗値R11/ホルムアルデヒド濃度がゼロの時の抵抗値R01 ・・・(1)
エタノールの検出感度=エタノールに由来する抵抗値R12/エタノール濃度がゼロの時の抵抗値R02 ・・・(2)
【0052】
ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度がゼロの時の抵抗値の比は、それぞれ、抵抗値R01/抵抗値R01、抵抗値R02/抵抗値R02で表わされ、1.0である。そのため、1.0からの傾きの大きさから、ホルムアルデヒド及びエタノール濃度の検出感度を確認することができる。
【0053】
第1のガスセンサ20は、半導体素子としてガスセンサ素子を備える半導体式センサを用いることができる。第1のガスセンサ20の構成の一例について説明する。
図3は、第1のガスセンサ20の構成の一例を示す概念断面図である。
図3に示すように、第1のガスセンサ20は、ケース体21、センサベース22、ガスセンサ素子23、金属メッシュ24及び端子25を備える。第1のガスセンサ20は、空間S1からケース体21に流入する検査対象ガスGを検出する。なお、
図3中の矢印は検査対象ガスGの流れの向きを示す。また、
図3に示す第1のガスセンサ20の構成は、一例を示すものであって第1のガスセンサ20の構成はこれに限定されない。第1のガスセンサ20の各構成について説明する。
【0054】
ケース体21は、略円筒体であり、その一端にケース体21の直径よりも小さい口径の流入口211を有する。流入口211の口径は、特定の大きさに限定されず、例えば数mm程度でよい。
【0055】
センサベース22は、円板状に形成され、端面に段差を有する。センサベース22は、その外径がケース体21の内径と略同じ径を有する挿入部221と、外径がケース体21の外径よりも大きい径を有する固定部222とを有する。挿入部221は、ケース体21の他端に嵌め込まれる。固定部222は、ケース体21の他端に溶接又は接着剤等により固定される。
【0056】
ケース体21にセンサベース22の挿入部221が嵌め込まれることで、ケース体21の内部に検出空間S2が形成される。
【0057】
ガスセンサ素子23は、検出空間S2内に配置され、センサベース22の上面(
図3中の上方向)に固定されている。ガスセンサ素子23は、薄膜型の半導体素子である。
図4は、ガスセンサ素子23の構成の一例を示す概念断面図である。
図4に示すように、ガスセンサ素子23は、基板231、熱絶縁支持層232、ヒーター層233、絶縁層234及びガス検知部235を備える。
【0058】
基板231は、シリコン基板(Si基板)であり、Si基板の代わりに、アルミナ基板、サファイア基板及びマイカ基板等を用いてもよい。基板231は、平面視においてガス検知部235が形成された位置に貫通孔231aを有する。
【0059】
熱絶縁支持層232は、基板231の上面(
図4中の上方向)に設けられ、貫通孔231aにダイアフラム様に形成されている。本実施形態では、熱絶縁支持層232は、第1のSiO
2層232a、Si
3N
4層232b及び第2のSiO
2層232cの三層構造で構成されている。
【0060】
第1のSiO2層232aは、熱酸化温度800℃~1100℃で熱酸化により形成できる。第1のSiO2層232aは、断熱層として機能し、ヒーター層233で発生する熱をSi基板11側へ伝熱しないようにして熱容量を小さくする機能を有する。また、第1のSiO2層232aは、プラズマエッチングに対して高い抵抗力を示し、プラズマエッチングによる基板231への貫通孔の形成を容易にすることができる。
【0061】
Si
3N
4層232bは、第1のSiO
2層232aの上面(
図4中の上方向)に、例えば化学気相成長法(CVD)法を用いて形成することができる。
【0062】
第2のSiO2層232cは、CVD法により形成でき、ヒーター層233との密着性を向上させると共に絶縁性を確保することができる。CVD法により形成される第2のSiO2層は内部応力が小さいため、熱絶縁支持層232に歪みが生じることを軽減することができる。
【0063】
ヒーター層233は、熱絶縁支持層232の上面(
図4中の上方向)の略中央に設けられる。ヒーター層233は、薄膜であり、例えば、PtとWとを含むPt-W膜等で形成することができる。ヒーター層233は、端子25(
図3参照)に接続され、端子25(
図3参照)を介して電源部40と電気的に接続され、給電される。
【0064】
絶縁層234は、熱絶縁支持層232及びヒーター層233を覆うように設けられる。絶縁層234は、例えばSiO2層等で形成することができる。絶縁層234は、ヒーター層233と感知層電極235bとの間に電気的な絶縁を確保することができると共に、ガス感知層235cとの密着性を向上させることができる。
【0065】
ガス検知部235は、一対の接合層235a、一対の感知層電極235b及びガス感知層235cを備える。
【0066】
接合層235aは、例えば、タンタル膜(Ta膜)又はチタン膜(Ti膜)等で形成でき、絶縁層234の上に設けられる。接合層235aは、感知層電極235bと絶縁層234との接合強度を高めることができる。なお、接合層235aは、感知層電極235bを絶縁層234の上に直接設ける場合には、設けなくてもよい。
【0067】
感知層電極235bは、例えば、白金膜(Pt膜)又は金膜(Au膜)等で形成することができる。感知層電極235bは、一対の接合層235aの上に設けられ、ガス感知層235cの感知電極となる。
【0068】
ガス感知層235cは、一対の感知層電極235bを連結するように絶縁層234の上に形成される。
【0069】
ガス感知層235cは、本実施形態に係る感ガス材料を用いて形成されている。
【0070】
ガス感知層235cは、多孔質構造や柱状構造としてもよい。これにより、ガス感知層235cの比表面積を増大させることができるので、検査対象ガスとの接触面積を増加させ、感度を高めることができる。
【0071】
ガスセンサ素子23は、ダイアフラム構造として、高断熱及び低熱容量としている。なお、ガスセンサ素子23は、ダイアフラム構造でなくてもよい。
【0072】
図3に示すように、金属メッシュ24は、流入口211に設けられる。金属メッシュ24の外径は流入口211の口径と略同じ径を有する円板状の形状を有する。金属メッシュ24は、ステンレス製のネットであり、金属メッシュ24の目開きは数mm程度であり、開口率は、検査対象ガスGが検出空間S2内に流出入できる大きさであればよい。
【0073】
図3に示すように、端子25は、センサベース22から突出して設けられる電極であり、第2のガスセンサ30(
図1参照)及び電源部40(
図1参照)に通電ラインL(
図1参照)を介して接続されている。
図3に示すように、第1のガスセンサ20は、複数(
図3では、4つ)の端子25a、25b、25c及び25dを備える。端子25a及び25bは、電源部40(
図1参照)を接続するための電極である。端子25c及び25dは、ガスセンサ素子23を構成するヒーター層233(
図4参照)を駆動するための電極である。
【0074】
端子25a、25b、25c及び25dは、電源部40(
図1参照)に通電ラインL(
図1参照)を介して接続されている。
【0075】
図3に示すように、第1のガスセンサ20は、ケース体21内にガスセンサ素子23を有しており、第1のガスセンサ20では、ガスセンサ素子23の周囲の酸素量に応じてガスセンサ素子23の抵抗値が変化する。
図4に示すように、ガスセンサ素子23は、ガス感知層235cを有している。ガス感知層235cの表面に吸着している酸素がホルムアルデヒド又はエタノールと反応(表面反応)し、酸素が離脱する。これにより、ガス感知層235cに付着していた酸素イオン(O
2-)がガス感知層235cから脱離する際にガス感知層235cの表面に自由電子を与える。そのため、相対的にガス感知層235cの表面に吸着している酸素量が少なくなり、ガス感知層235cに与えられる自由電子の量が増大することで、ガスセンサ素子23の抵抗値が減少する(
図2参照)。この抵抗値の変化量から、空気中のホルムアルデヒド及びエタノールの濃度を算出することができる。
【0076】
図2に示すように、第2のガスセンサ30は、上述の通り、装置本体10に空間S1と接触可能となるように配置している。第2のガスセンサ30は、半導体素子としてガスセンサ素子を備える半導体式センサを用いることができる。第2のガスセンサ30は、
図3に示す第1のガスセンサ20のガスセンサ素子23を構成するガス感知層235c(
図4参照)の材料を変更したこと以外は第1のガスセンサ20と同様の構成を有する。そのため、
図3及び
図4を用いて、第2のガスセンサ30を構成するガス感知層235cについてのみ説明する。
【0077】
第2のガスセンサ30は、第1のガスセンサ20と同様、
図3に示すように、ケース体21内にガスセンサ素子23を有し、ガスセンサ素子23は、
図4に示すように、ガス感知層235cを有している。
【0078】
第2のガスセンサ30は、第1のガスセンサ20と同様、空気中のホルムアルデヒド及びエタノールを検出するものであり、ホルムアルデヒド濃度センサ及びエタノール濃度センサとして機能する。第2のガスセンサ30は、ホルムアルデヒドの検出感度に対するエタノールの検出感度の比(エタノールの検出感度/ホルムアルデヒドの検出感度)が第1のガスセンサ20のホルムアルデヒドの検出感度に対するエタノールの検出感度の比(エタノールの検出感度/ホルムアルデヒドの検出感度)よりも大きいガスセンサである。
【0079】
第2のガスセンサ30のガス感知層235cでは、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度に応じて第2のガスセンサ30のガス感知層235cの周囲の酸素量が変化することで、第2のガスセンサ30で検出される抵抗値が変化する。第2のガスセンサ30で抵抗値が変化する詳細は、上述の第1のガスセンサ20と同様であるため、説明は省略する。
【0080】
第2のガスセンサ30のガス感知層235cを形成する材料としては、例えば、SnO2、In2O3、WO3、ZnO、TiO2等の金属酸化物半導体を用いることができる。また、SnO2、In2O3、WO3、ZnO、TiO2等の金属酸化物を主成分とし、La、Ag、Fe、Al、Si等を副成分として含む金属複合酸化物を用いることができる。これら主成分及び副成分を形成する材料は、一種単独で用いてよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、第1のアルコール由来変化量の大きさの調整のし易さ等の点から、La、Ag、Feが好ましい。
【0081】
副成分の含有量は、ホルムアルデヒドの検出感度及びエタノールの検出感度の大きさ等に応じて適宜設計可能である。第2のガスセンサ30のガス感知層235cは、SnO2に対して、副成分を1.0mol%~10.0mol%含むことが好ましく、2.0mol%~8.0mol%含むことがより好ましく、4.0mol%~6.0mol%含むことがさらに好ましい。
【0082】
図2に示すように、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30は、装置本体10内に配置され、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30の端子25a及び25b(
図3参照)が、それぞれ、電源部40(
図2参照)に通電ラインLを介して接続される。
【0083】
図1に示すように、電源部40は、装置本体10内に設けられており、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30に電力を供給する。電源部40は、一対の電極を第1のガスセンサ20に接続し、他の一対の電極を第2のガスセンサ30に接続している。
【0084】
図1に示すように、抵抗測定部50は、第1のガスセンサ20の抵抗値を算出する第1の抵抗測定部50Aと、第2のガスセンサ30の抵抗値を算出する第2の抵抗測定部50Bとを有する。
【0085】
第1の抵抗測定部50Aは、一対の抵抗部50aを第1のガスセンサ20を挟み込むように通電ラインLに接続し、第2の抵抗測定部50Bは、一対の抵抗部50aを第2のガスセンサ30を挟み込むように通電ラインLに接続する。すなわち、抵抗測定部50は、第1の抵抗測定部50Aで測定された第1のガスセンサ20のガス感知層235c(
図4参照)の抵抗値と、第2の抵抗測定部50Bで測定された第2のガスセンサ30のガス感知層235c(
図4参照)の抵抗値とを、それぞれ、別々に算出する。
【0086】
第1のガスセンサ20で算出される抵抗値は、第1のガスセンサ20で検知された、空気中のホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合せた総抵抗値(第1総抵抗値)である。第2のガスセンサ30で算出される抵抗値は、第2のガスセンサ30で検知された、空気中のホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合せた総抵抗値(第2総抵抗値)である。
【0087】
抵抗測定部50は、制御装置60の、後述する制御部61(
図5参照)と電気的に接続されている。第1の抵抗測定部50Aで測定された第1のガスセンサ20の第1総抵抗値と、第2の抵抗測定部50Bで測定された第2のガスセンサ30の第2総抵抗値は、制御部61(
図5参照)で読み出すことができる。
【0088】
ガス濃度測定装置1は、装置本体10内に、電源部40及び抵抗測定部50の他に、増幅回路、アナログ-デジタル(A-D)変換器等の抵抗測定装置を備えていてもよい。このとき、抵抗測定装置は、第1のガスセンサ20と電源部40との間、第2のガスセンサ30と電源部40との間に、それぞれ、直列に接続されるように設置してもよい。
【0089】
図1に示すように、制御装置60は、装置本体10内に設けられており、
図5に示すように、制御部61、制御部61に接続される操作部62及び表示部63を備えている。
【0090】
制御部61は、
図5に示すように、電源部40及び表示部63を制御可能にこれらと接続されており、第1のガスセンサ20と第2のガスセンサ30との検出結果に基づいてホルムアルデヒドの濃度を算出する。
【0091】
制御部61は、制御プログラムや各種記憶情報を格納する記憶手段と、制御プログラムに基づいて動作する演算手段とを有する。記憶手段には、RAM、ROM及びストレージ等がある。演算手段には、CPU等がある。制御部61は、演算手段が記憶手段に格納されている制御プログラム等を読み出して実行することで実現される。
【0092】
制御部61の有する記憶手段は、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度を合わせた濃度(総合濃度)と、第1の抵抗測定部50Aで測定された、ホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合わせた第1総抵抗値との関係と、総合濃度と、第2の抵抗測定部50Bで測定された、ホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合わせた第2総抵抗値との関係とを示す情報が格納されていることが好ましい。制御部61は、記憶手段に記憶されている記憶値と、抵抗測定部50で測定された測定値とを比較することで、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度を算出することができる。なお、総合濃度は、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度を含んでいればよく、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度のみを合わせた濃度でもよいし、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度以外の他の成分を含む濃度でもよい。
【0093】
制御部61は、第1の抵抗測定部50Aで測定された、ホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合わせた第1総抵抗値の測定結果と、第2の抵抗測定部50Bで測定された、ホルムアルデヒドに由来する抵抗とエタノールに由来する抵抗とを合わせた第2総抵抗値の測定結果との信号を受信する。
【0094】
制御部61は、第1の抵抗測定部50A及び第2の抵抗測定部50Bから受信した第1総抵抗値及び第2総抵抗値に基づいて、空気中のホルムアルデヒド濃度を測定することができる。
【0095】
制御部61は、予め記憶部に記憶しておいた、総合濃度と第1総抵抗値との関係と、総合濃度と第2総抵抗値との関係とを示す関係図を用いてもよい。制御部61は、測定値を記録値と比較することで、総合濃度から空気中のホルムアルデヒド濃度を求めることができる。
【0096】
制御部61は、記憶部に記憶される、ホルムアルデヒド及びエタノールに由来する抵抗値を、下記式(1)及び(2)を用いて、ホルムアルデヒドの検出感度及びエタノールの検出感度を算出することができる。すなわち、制御部61は、ホルムアルデヒド濃度とエタノール濃度がそれぞれ0ppmの時に得られた抵抗値R01及びR02で除した値を、ホルムアルデヒドの検出感度及びエタノールの検出感度として算出することができる。なお、上述の通り、下記式(1)及び(2)では、ホルムアルデヒド濃度がゼロ(0ppm)の時の抵抗値を抵抗値R01とし、エタノール濃度がゼロ(0ppm)の時の抵抗値を抵抗値R02とし、ホルムアルデヒドに由来する抵抗値を抵抗値R11とし、エタノールに由来する抵抗値を抵抗値R12とする。
ホルムアルデヒドの検出感度=ホルムアルデヒドに由来する抵抗値R11/ホルムアルデヒド濃度がゼロの時の抵抗値R01 ・・・(1)
エタノールの検出感度=エタノールに由来する抵抗値R12/エタノール濃度がゼロの時の抵抗値R02 ・・・(2)
【0097】
操作部62は、
図5に示すように、制御部61と電気的に接続されており、制御部61を制御する。
【0098】
表示部63は、
図5に示すように、算出されたホルムアルデヒド濃度、エタノール濃度等を表示する。表示部63としては、液晶表示等を用いることができる。
【0099】
このように、ガス濃度測定装置1は、第1のガスセンサ20、第2のガスセンサ30及び制御装置60を備えている。ガス濃度測定装置1では、第1のガスセンサ20は、本実施形態に係る感ガス材料を用い、エタノールの検出感度に対するホルムアルデヒドの検出感度の比が大きく、ホルムアルデヒドをエタノールよりも高感度で検出することができる。そして、第2のガスセンサ30は、ホルムアルデヒドの検出感度に対するエタノールの検出感度の比が第1のガスセンサ20よりも大きく、エタノールをホルムアルデヒドよりも高感度で検出することができる。そのため、制御装置60は、第1のガスセンサ20の検出結果より算出されるホルムアルデヒド及びエタノールの総合濃度と、第2のガスセンサ30の検出結果より算出されるホルムアルデヒド及びエタノールの総合濃度とに基づいて、空気中のホルムアルデヒド濃度を高精度で算出することができる。よって、制御装置60は、対象ガス中にホルムアルデヒドの他にエタノールが含まれていても、ホルムアルデヒド濃度をより確実に測定することができる。
【0100】
したがって、ガス濃度測定装置1は、検査対象ガス中にエタノール等が含まれている場合でも、エタノールの影響を低減できるので、簡易にホルムアルデヒド濃度をより高精度に測定することができる。
【0101】
ガス濃度測定装置1は、上記のような特性を有することから、VOCの分析に有効に用いることができる。そのため、VOCを分析する際、大気中にホルムアルデヒド以外にエタノール等が含まれていても、ガス濃度測定装置1は、ホルムアルデヒドのみの濃度を簡易に測定できるので、室内環境におけるVOCの分析や、人の呼気に含まれるVOCの分析等に有効に用いることができる。よって、ガス濃度測定装置1は、VOCの分析等に有効に用いることができるため、シックハウス症候群の防止や体調管理等を行うのに好適に用いることができる。
【0102】
以上のように、ガス濃度測定装置1は、建物の空間S内の大気中のホルムアルデヒド濃度のみを測定する場合について説明したが、ガス濃度測定装置1は、上述の通り、大気中のホルムアルデヒド濃度のみを簡易に測定できる。そのため、ガス濃度測定装置1は、建物の室内以外に、例えば、車両の車内、電車の車内、飛行機の機内等に設置して、それらの空間内の空気中のホルムアルデヒド濃度の測定に有効に用いることができる。
【0103】
また、ガス濃度測定装置1は、検査対象ガスとして、ホルムアルデヒド以外のアセトアルデヒド等のアルデヒド類や、エタノール以外のメタノール等のアルコール等も測定でき、ホルムアルデヒドやアルコール以外のVOCの分析にも有効に用いることができる。
【0104】
さらに、ガス濃度測定装置1は、検査対象ガスとしてはVOC以外に、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)及びブタン(C4H10)等の可燃性ガス、一酸化炭素(CO)やアンモニア(NH3)等の有毒ガス、硫化水素(H2S)等の悪臭ガス等の分析にも有効に用いることができる。この場合、ガス濃度測定装置1は、例えば、ガス漏れや不完全燃焼の検出等に用いることができる。
【0105】
(変形例)
なお、本実施形態では、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30は通電ラインLを介して電源部40と直列に接続されていてもよい。
【0106】
本実施形態では、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30が装置本体10に設置されているが、何れか一方のみを装置本体10に設置し、他方を空間S1内に設けてもよい。
【0107】
本実施形態では、制御装置60は、装置本体10内に設けてもよいし、制御装置60の制御部61、操作部62及び表示部63の少なくとも何れか1つだけを装置本体10内に設けてもよい。
【実施例】
【0108】
以下、例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの例により限定されるものではない。
【0109】
<例1>
[固溶体の作製]
塩化スズ・5水和物(SnCl4・5H2O)と水とを容器に添加した後、容器中の、塩化スズ・5水和物と水とを含む水溶液に酢酸亜鉛・2水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O)を、亜鉛イオンの含有量のスズ元素の含有量に対する比が10.0mol%となるように添加して混合した。その後、Sn及びZnを含む混合水溶液にアンモニア(NH3)水を添加して、亜鉛イオンが内部に侵入したスズ水酸化物の沈殿物を生成した。生成したスズ水酸化物の沈殿物を容器から回収した後、水を含む容器中に浸漬して沈殿物を水洗した。水洗した沈殿物を回収して、乾燥機に移した後、100℃で15時間、乾燥した。乾燥した沈殿物を700℃で3時間焼成することで、固溶体からなる感ガス材料を得た。
【0110】
[感ガス材料の評価]
(元素分析、結晶構造の解析)
得られた感ガス材料をEPMA(「EPMA1600」、島津製作所社製)を用いて元素分析した。EPMAで元素分析した結果を
図6に示す。なお、
図6中のピーク強度は、ピークのX線強度の値からバックグラウンドのX線強度の値を減じた値(ピークのX線強度の値-バックグラウンドのX線強度の値)である。また、得られた感ガス材料をX線回折装置(「X'PERT-MPD」、PANalytical社製、X線源:CuKa)を用いてXRDによる結晶構造を解析した。XRDにより結晶構造を解析した結果を
図7に示す。
図6に示すように、EPMAで元素分析した結果、SnとZnが添加量に対応する強度が検出された。また、
図7に示すように、XRDによる結晶構造解析において、SnO
2のピークのみが観察され、ZnOのピークは観察されなかった。なお、
図7中の破線は、酢酸亜鉛・2水和物(Zn(CH
3COO)
2・2H
2O)を添加せず、SnO
2のみを含む焼成物をEPMAで元素分析した結果であり、ZnOのピークは存在しなかった。よって、得られた感ガス材料は、酸化スズの結晶中に亜鉛元素が侵入した侵入型固溶体であるといえることが確認された。
【0111】
[エタノールの検出感度及びホルムアルデヒドの検出感度の評価]
感ガス材料を内部に空間をする容器内に設置し、検査対象ガスの供給口と排出口に一組の導線を連結した。容器内にホルムアルデヒドガス及びエタノールガスの濃度が0ppmである検査対象ガスを供給した時の、感ガス材料の抵抗値R0(単位:Ω)を測定した。
【0112】
次に、検出対象ガスとしてホルムアルデヒドガスを容器内に供給して、ホルムアルデヒドガスの濃度が0.01ppm、0.03ppm及び0.1ppmの時の、感ガス材料の抵抗値R11(単位:Ω)をそれぞれ測定した。
【0113】
次に、容器内に検出対象ガスとしてエタノールガスを供給して、エタノールガスの濃度が0.01ppm、0.03ppm及び0.1ppmの時の抵抗値の、感ガス材料の抵抗値R12(単位:Ω)をそれぞれ測定した。
【0114】
次に、下記式(1)'及び(2)'の通り、抵抗値R11及びR12を抵抗値R0で除した値を、それぞれ、ホルムアルデヒドの検出感度及びエタノールの検出感度として求めた。作製したガスセンサ素子の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を
図8に示す。なお、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度がゼロの時の抵抗値R0の比は、1.0であり、この値を基準値とした。基準値からの抵抗値の変化量の大きさは、ガス成分の検出感度の大きさを意味し、検出感度が大きいほどガス成分の検出感度は高いことを意味し、検出感度が小さいほどガス成分の検出感度は低ことを意味し、検出感度が無い場合にはガスを検知していないことを意味する。
ホルムアルデヒドの検出感度=抵抗値R11/抵抗値R0 ・・・(1)'
エタノールの検出感度=抵抗値R12/抵抗値R0 ・・・(2)'
【0115】
ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図9に示す。
【0116】
<参照例1>
[混合物の作製]
塩化スズ・5水和物(SnCl4・5H2O)と水とを含むスズ水溶液と、酢酸亜鉛・2水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O)と水とを含む亜鉛水溶液をそれぞれ準備した。それぞれの混合水溶液にアンモニア(NH3)水を添加して、スズ水酸化物の沈殿物を含む水溶液と、亜鉛水酸化物の沈殿物を含む水溶液とを作製した。生成したスズ水酸化物の沈殿物を容器から回収した後、水を含むと容器中に浸漬して沈殿物を水洗し、水洗した沈殿物を乾燥機に移した後、100℃で15時間、乾燥した。乾燥した沈殿物を700℃で3時間焼成することで、酸化スズを得た。同様に、生成した亜鉛水酸化物の沈殿物を容器から回収した後、水を含む容器中に浸漬して沈殿物を水洗し、水洗した沈殿物を乾燥機に移した後、100℃で15時間、乾燥した。乾燥した沈殿物を700℃で3時間焼成することで、酸化亜鉛を得た。その後、酸化スズと酸化亜鉛とを、亜鉛元素のスズ元素に対する比が10mol%となるように混合して、感ガス材料を作製した。
【0117】
[感ガス材料の評価]
得られた感ガス材料をEPMAで元素分析した結果を
図10に示す。なお、
図10中のピーク強度は、ピークのX線強度の値からバックグラウンドのX線強度の値を減じた値(ピークのX線強度の値-バックグラウンドのX線強度の値)である。また、得られた感ガス材料をXRDにより結晶構造を解析した結果を
図11に示す。
図10に示すように、EPMAで元素分析した結果、SnとZnが添加量に対応する強度が検出された。一方、
図11に示すように、XRDによる結晶構造解析において、SnO
2の他に、ZnOのピーク(
図11中のハッチング箇所参照)が観察された。なお、
図11中の破線は、酢酸亜鉛・2水和物(Zn(CH
3COO)
2・2H
2O)を添加せず、SnO
2のみを含む焼成物をEPMAで元素分析した結果であり、ZnOのピークは存在しなかった。よって、得られた感ガス材料は、SnO
2の結晶中に亜鉛元素が侵入した固溶体を形成しておらず、SnO
2とZnOとの混合物であることが確認された。
【0118】
<例2>
[感ガス材料の作製、評価]
例1において、亜鉛元素の添加量を、亜鉛元素のスズ元素に対する比が15mol%となるように変更したこと以外は、例1と同様にして行った。作製した感ガス材料の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を
図12に示す。また、ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図9に示す。なお、得られた感ガス材料を、EPMAを用いて元素分析した結果、実施例1と同様、SnとZnが添加量に対応する強度が検出され、XRDにより結晶構造を解析した結果、実施例1と同様、SnO
2のピークのみが観察され、ZnOのピークは観察されなかった。
【0119】
<例3>
例1において、酢酸亜鉛・2水和物を添加しなかったこと以外は、例1と同様にして行った。得られた酸化スズをXRDにより結晶構造を解析した結果を
図7に示す。
図7に示すように、XRDによる結晶構造解析において、SnO
2のピークのみが観察された。よって、SnO
2を生成したことが確認された。
【0120】
SnO
2の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を
図13に示す。
図13に示すように、ホルムアルデヒドの検出感度はエタノールの検出感度よりも低かった。また、ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図14に示す。
【0121】
<例4>
例1において、感ガス材料を形成する材料として、1mol%のランタン(La)を添加した酸化スズ(La元素の含有量の、スズ元素の含有量に対する比:1mol%)を用いたこと以外は、例1と同様にして行った。感ガス材料の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を
図15に示す。また、ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図14に示す。
【0122】
<例5>
例1において、感ガス材料を形成する材料として、3mol%のランタン(La)を添加した酸化スズ(La元素の含有量の、スズ元素の含有量に対する比:3mol%)を用いたこと以外は、例1と同様にして感ガス材料を作製した。作製した感ガス材料を用いて、ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図14に示す。
【0123】
<例6>
例1において、感ガス材料を形成する材料として、5mol%の銀(Ag)を添加した酸化スズ(Ag元素の含有量の、スズ元素の含有量に対する比:5mol%)を用いたこと以外は、例1と同様にして感ガス材料を作製した。作製した感ガス材料を用いて、ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図14に示す。
【0124】
<例7>
例1において、ガスセンサ素子を形成する材料として、0.5mol%の鉄(Fe)を添加した酸化スズ(Fe元素の含有量の、スズ元素の含有量に対する比:0.5mol%)を用いたこと以外は、例1と同様にして行った。ホルムアルデヒドガス(濃度30ppb)を容器内に供給した時における、感ガス材料の検出感度を測定した。感ガス材料の抵抗の測定時間と抵抗値との関係を
図14に示す。
【0125】
図8及び
図12に示すように、例1及び例2は、ホルムアルデヒド感度がエタノール感度よりも高かった。また、例2は、例3のように感ガス材料がSnO
2のみで構成されている場合に比べて、ホルムアルデヒド感度がエタノール感度よりも相対的に大きくなっていた。一方、
図13及び
図15に示すように、例3及び例4は、ホルムアルデヒド感度がエタノール感度よりも小さかった。なお、例5~例7でも、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係は、例3及び例4と同様の傾向を示すことが確認された。
【0126】
また、
図9に示すように、例1及び例2は、感ガス材料の抵抗値の変動が大きく、ホルムアルデヒドの検出感度が高かった。一方、
図14に示すように、例3~例7は、酸化スズ及び感ガス材料の抵抗値の変動が小さく、ホルムアルデヒドの検出感度が低かった。
【0127】
例1及び例2のように、酸化スズの結晶中に亜鉛元素が所定量侵入した侵入型固溶体を感ガス材料として用いることで、ホルムアルデヒド感度がエタノール感度よりも高く、ホルムアルデヒドを高感度で検出することができることが確認された。一方、例3、例4及び例7のように、酸化スズ単体や、酸化スズの結晶中に亜鉛元素が侵入していない固溶体を感ガス材料として用いることで、エタノール感度はホルムアルデヒド感度よりも高かった。また、例5及び例6では、ガスセンサ素子の、ホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度とガス成分の検出感度との関係を示していないが、例3、例4及び例7と同様、エタノール感度はホルムアルデヒド感度よりも高いことが確認された。よって、例3~例7のように、酸化スズ単体や、酸化スズの結晶中に亜鉛元素が侵入していない固溶体を感ガス材料として用いることで、エタノール感度はホルムアルデヒド感度よりも高く、エタノールをホルムアルデヒドよりも高感度で検出することができることが確認された。
【0128】
したがって、例1及び例2の侵入型固溶体と、例3~例7のいずれかの酸化スズ又は固溶体とを、ガス濃度測定装置の第1のガスセンサ20又は第2のガスセンサ30に用いれば、第1のガスセンサ20及び第2のガスセンサ30で得られるホルムアルデヒド濃度及びエタノール濃度からホルムアルデヒドを高感度に測定できるといえる。
【0129】
よって、本実施形態に係るガス濃度測定装置は、検査対象ガスにホルムアルデヒドの他に、低濃度(例えば、約0.1ppm以下)のエタノールが含まれている場合であっても、ホルムアルデヒド濃度を高精度に測定できるといえる。
【0130】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1 ガス濃度測定装置
10 装置本体
20 第1のガスセンサ(第1の検出部)
235 ガス検知部
235c ガス感知層
30 第2のガスセンサ(第2の検出部)
40 電源部
50 抵抗測定部
50A 第1の抵抗測定部
50B 第2の抵抗測定部
60 制御装置
61 制御部
G 検査対象ガス
S1 空間