(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び診断支援方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020109604
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 みか
(72)【発明者】
【氏名】藤原 洋子
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203560(WO,A1)
【文献】特開2010-172673(JP,A)
【文献】特開2020-081742(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 1/00 - 1/32
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム動画像としての超音波画像に含まれる病変部を検出し、前記病変部が検出された場合に病変部情報を出力する解析部と、
前記病変部情報に基づいて前記超音波画像上に前記病変部を通知するマークを表示し、前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に前記マークの表示を制限する通知制御部と、
を含
み、
前記通知制御部は、前記マークの表示が制限されている状態においてフリーズ操作があった場合に、フリーズされた超音波画像上に前記マークを再表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記通知制御部は、前記病変部情報に基づいて前記マーク表示制限条件が満たされたことを判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記病変部情報は、前記病変部の位置を示す位置情報及び前記病変部のサイズを示すサイズ情報を含み、
前記通知制御部は、前記位置情報及び前記サイズ情報の少なくとも一方に基づいて前記マーク表示制限条件が満たされたことを判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記マーク表示制限条件には、
前記病変部が所定時間にわたって継続して検出されている場合に満たされる時間条件と、
前記病変部の位置変化が第1範囲内にあり且つ前記病変部のサイズ変化が第2範囲内にある場合に満たされる空間条件と、
が含まれる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
フリーズされた超音波画像であって再表示されたマークを含む超音波画像を検査レポートに含める手段を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記マークは、前記病変部を囲む形態を有し、
前記通知制御部は、前記マークの表示が制限されている状態において、前記超音波画像の外側に前記病変部の検出を通知する他のマークを表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
超音波画像に含まれる病変部を検出する工程と、
前記病変部が検出された場合に生成される病変部情報に基づいて、前記超音波画像上に前記病変部を囲むマークを表示する工程と、
前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に、前記マークの表示を制限する工程と、
前記マークの表示が制限されている状態においてフリーズ操作があった場合に、フリーズされた超音波画像上に前記マークを再表示する工程と、
を含むことを特徴とする診断支援方法。
【請求項8】
情報処理装置において実行されるプログラムであって、
超音波画像に含まれる病変部が検出された場合に生成される病変部情報に基づいて、前記超音波画像上に前記病変部を囲むマークを表示する機能と、
前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に前記マークの表示を制限する機能と、
前記マークの表示が制限されている状態においてフリーズ操作があった場合に、フリーズされた超音波画像上に前記マークを再表示する機能と、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置及び診断支援方法に関し、特に、超音波画像上に病変部を通知するマークを表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乳房の超音波検査においては、乳房の表面に当接されたプローブが乳房の表面に沿って走査される。その走査の過程において、表示器に表示されるリアルタイム断層画像が観察され、その観察を通じて病変部の有無が判断される。病変部が見つかった場合、病変部がその周囲組織を含めて詳しく検査される。このことは他の臓器の超音波検査においても同様である。なお、本願明細書において、病変部は、健常でない部分又は疾患の可能性がある部分を意味するものとする。
【0003】
リアルタイムで変化する断層画像上において、一時的に現れる病変部を視覚的に特定することは容易ではない。特に乳房の超音波検査において、断層画像上に現れる組織は多層構造を有しており、その中に含まれる病変部を検査者が瞬時に識別することは容易ではない。
【0004】
病変部の特定を支援する技術として、CADe(Computer Aided Detection)がある。その技術は、例えば、フレームごとに断層画像内の病変部を検出し、断層画像内に病変部が含まれる場合にそれを通知するものである。例えば、断層画像上に病変部を囲むマークが表示される。CADeは、CAD(Computer Aided Diagnosis)と共に利用され又はCADに含まれるものである。
【0005】
特許文献1には、CAD機能を備えた医療装置が開示されている。その医療装置は、病変部を通知するマークの表示の有無を自動的に選択する機能を備えている。特許文献2にも、CAD機能を備えた医療装置が開示されている。その医療装置は、病変部を通知するマークを含むサブ画像を表示する機能を備えている。特許文献1,2のいずれにも、マークの表示を強制的に終了させる技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-159739号公報
【文献】国際公開2018/198327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CADe機能又はCAD機能を搭載した超音波診断装置においては、超音波画像上に病変部を通知するマークが自動的に表示される。そのマークは、一般に、病変部を囲む形状を有する。マークの登場及びその継続的な表示を通じて、検査者に対して病変部が存在していることを通知でき、これにより病変部の詳細検査を促せる。しかし、検査者により病変部が認識された後においても、マークが必要以上に継続的に表示されると、超音波画像の観察に当たってそのマークが邪魔になる。病変部が特定された場合、病変部それ自体が詳細に観察され、また、病変部と周囲組織との繋がり関係等も詳細に観察されるが、そのような観察過程において、見たい部位がマークに覆われてしまう問題が生じ得る。
【0008】
マーク表示を手動でオフにしてマークを消去することも可能であるが、そのような操作は検査者にとって負担となる。また、そのような操作を行うために視線を操作パネルへ移動させると、その後、視線を超音波画像に戻した際に病変部を見失うこともある。特に集団検診では、一人の被検者当たりの超音波検査期間の短縮が要望されており、検査者の操作や視線移動をできるだけ少なくすることが求められる。
【0009】
本開示の目的は、自動的に検出された病変部をマークにより通知する場合において、マークにより超音波画像の観察が妨げられることを防止又は軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る超音波診断装置は、リアルタイム動画像としての超音波画像に含まれる病変部を検出し、前記病変部が検出された場合に病変部情報を出力する解析部と、前記病変部情報に基づいて前記超音波画像上に前記病変部を通知するマークを表示し、前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に前記マークの表示を制限する通知制御部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本開示に係る診断支援方法は、超音波画像に含まれる病変部を検出する工程と、前記病変部が検出された場合に生成される病変部情報に基づいて、前記超音波画像上に前記病変部を囲むマークを表示する工程と、前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に、前記マークの表示を制限する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本開示に係るプログラムは、超音波画像に含まれる病変部が検出された場合に生成される病変部情報に基づいて、前記超音波画像上に前記病変部を囲むマークを表示する機能と、前記病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に前記マークの表示を制限する機能と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、検出された病変部をマークにより通知する場合において、マークにより超音波画像の観察が妨げられることを防止又は軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【
図3】マーク表示条件及びマーク表示制限条件を説明するための図である。
【
図4】病変部情報及びそれに基づく制御を示す図である。
【
図6】マーク表示条件及びマーク表示制限条件の他の例を示す図である。
【
図7】マーク表示制限状態で表示される他のマークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、解析部、及び、通知制御部を備える。解析部は、リアルタイム動画像としての超音波画像に含まれる病変部を検出し、病変部が検出された場合に病変部情報を出力する。通知制御部は、病変部情報に基づいて超音波画像上に病変部を通知するマークを表示し、病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合にマークの表示を制限する。
【0017】
上記構成によれば、マークが継続的に検出されてマークが継続的に表示されている場合において、マーク表示制限条件が満たされると、マークの表示が制限される。よって、病変部やその周囲組織の観察に当たってマークが邪魔になることを防止でき又は軽減できる。マーク表示のマニュアル制限によると、検査者において負担が生じるが、上記構成によればそのような問題は生じない。
【0018】
マーク表示の制限は、実施形態において、マーク表示の終了であり、すなわちマークの消去である。マーク消去以前において、表示されたマークを通じて、検査者により、病変部が既に特定されているので、マークを消去しても病変部を見失うことはないものと考えられる。必要であれば、マークが再表示されるように、所定の操作又は所定の入力を行えばよい。実施形態において、マークは、病変部を囲む図形である。マーク検出が途絶えた後においても一定期間にわたってマーク表示制限を維持してもよい。マーク消去以外の表示制限(例えば輝度低下)が採用されてもよい。
【0019】
実施形態において、通知制御部は、病変部情報に基づいてマーク表示制限条件が満たされたことを判定する。病変部の検出により生成される病変部情報を基礎としてマーク表示条件が満たされたか否かを判定することにより、その判定の信頼性を高められる。フレーム間相関演算結果、プローブ測位情報、等に基づいてマーク表示制限条件が充足されたか否かが判定されてもよい。
【0020】
実施形態において、病変部情報は、病変部の位置を示す位置情報及び病変部のサイズを示すサイズ情報を含む。通知制御部は、位置情報及びサイズ情報の少なくとも一方に基づいてマーク表示制限条件が満たされたことを判定する。この構成によれば、同じ病変部の継続的な表示を判定し易くなる。換言すれば、新たな病変部が検出された場合においてマークが表示される可能性を高められる。
【0021】
実施形態において、マーク表示制限条件には、病変部が所定時間にわたって継続して検出されている場合に満たされる時間条件と、病変部の位置変化が第1範囲内にあり且つ病変部のサイズ変化が第2範囲内にある場合に満たされる空間条件と、が含まれる。時間条件及び空間条件の両方を考慮することにより、同じ病変部が継続的に検出されている状態をより正確に識別できる。
【0022】
実施形態において、通知制御部は、マークの表示が制限されている状態においてフリーズ操作があった場合に、フリーズされた超音波画像上にマークを再表示する。フリーズ後に超音波画像がストアされる場合に、超音波画像中にマークを含めれば、超音波画像を事後的に観察する場合において、病変部を特定し易くなる。マーク入りの超音波画像とマーク無しの超音波画像とを併せてストアするようにしてもよい。フリーズ後に病変部の計測が行われる場合、計測機能の起動に際してマークを自動的に消去してもよい。
【0023】
実施形態において、マークは、病変部を囲む形態を有する。通知制御部は、マークの表示が制限されている状態において、超音波画像の外側に病変部の検出を通知する他のマークを表示する。この構成によれば、マークの表示が制限されていても、他のマークの表示を通じて病変部が検出され続けてことを検査者に通知できる。そのような他のマークとして、超音波画像の外側に、病変部の水平位置及び垂直位置を特定するマークセットを表示してもよい。複数の病変部が検出されている場合に、それらに対応する複数のマークセットが表示されてもよい。
【0024】
実施形態に係る診断支援方法は、第1工程、第2工程及び第3工程を備える。第1工程では、超音波画像に含まれる病変部が検出される。第2工程では、病変部が検出された場合に生成される病変部情報に基づいて、超音波画像上に病変部を囲むマークが表示される。第3工程では、病変部の継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合に、マークの表示が制限される。
【0025】
上記の診断支援方法は、ハードウエアの機能により実現され、あるいは、ソフトウエアの機能により実現される。後者の場合、診断支援方法を実行するプログラムが、可搬型記憶媒体又はネットワークを介して、情報処置装置にインストールされる。情報処理装置の概念には、超音波診断装置、コンピュータ等が含まれる。
【0026】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置の構成がブロック図として示されている。超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、生体(被検者)に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて、超音波画像を形成する医療用の装置である。超音波診断対象となる臓器は、実施形態において、例えば、乳房である。
【0027】
乳房の集団検診においては、短時間にしかも見落としなく病変部を特定する必要がある。実施形態に係る超音波診断装置は、検査者による病変部の特定を支援するために、超音波画像に含まれる病変部(例えば低輝度の腫瘤像)を自動的に検出するCADe機能を備えている。これについては後に詳述する。
【0028】
プローブ10は、超音波を送受波する手段として機能するものである。プローブ10は、可搬型送受波器であり、それは検査者(医師、検査技師等)によって保持及び操作される。乳房の超音波診断に際しては、プローブ10の送受波面(具体的には音響レンズ表面)が被検者の胸部表面に当接される。リアルタイム表示される断層画像を観察しながら、胸部表面に沿ってプローブ10がマニュアルで走査される。
【0029】
プローブ10は、図示された構成例において、一次元配列された複数の振動素子からなる振動素子アレイを備えている。振動素子アレイによって超音波ビーム(送信ビーム及び受信ビーム)12が形成され、超音波ビーム12の電子的な走査により走査面14が形成される。走査面14は観察面であり、すなわち二次元データ取込領域である。超音波ビーム12の電子走査方式として、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式等が知られている。超音波ビーム12のコンベックス走査が行われてもよい。超音波プローブ10内に2D振動素子アレイを設け、超音波ビームの二次元走査により、生体内からボリュームデータが取得されてもよい。
【0030】
プローブ10の位置情報を求める測位装置を設けてもよい。測位装置は、例えば、磁気センサ18及び磁場発生器20により構成される。プローブ(正確にはプローブヘッド)10に磁気センサ18が設けられる。磁気センサ18によって磁場発生器20により生成された磁場を検出することにより、磁気センサ18の三次元座標情報を得られる。その三次元座標情報に基づいてプローブ10の位置及び姿勢が特定される。
【0031】
送信回路22は送信ビームフォーマーとして機能する。具体的には、送信時において、送信回路22は、振動素子アレイに対して複数の送信信号を並列的に供給する。これにより送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波が振動素子アレイに到達すると、複数の振動素子から複数の受信信号が並列的に出力される。受信回路24は受信ビームフォーマーとして機能し、複数の受信信号を整相加算(遅延加算ともいう)することにより、ビームデータを生成する。
【0032】
ちなみに、1回の電子走査当たり、電子走査方向に並ぶ複数のビームデータが生成され、それらが走査面14に対応する受信フレームデータを構成する。個々のビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。受信回路24の後段にはビームデータ処理部が設けられているが、その図示が省略されている。
【0033】
画像形成部26は、受信フレームデータに基づいて断層画像(Bモード断層画像)を生成する電子回路である。それはDSC(Digital Scan Converter)を有している。DSCは、座標変換機能、画素補間機能、フレームレート変換機能等を有している。より詳しくは、画像形成部26において、受信フレームデータ列に基づいて表示フレームデータ列が構成される。表示フレームデータを構成する複数の表示フレームデータは、複数の断層画像データであり、それらのデータによりリアルタイム動画像が構成される。断層画像以外の超音波画像が生成されてもよい。例えば、カラーフローマッピング画像が形成されてもよいし、組織を立体的に表現した三次元画像が形成されてもよい。表示フレームデータ列は、表示処理部32及び画像解析部28に送られている。必要に応じて、表示フレームデータ列が通知制御部30にも送られる。
【0034】
画像解析部28は、CADe機能を発揮するモジュールである。画像解析部28は、フレームごとに、つまり断層画像ごとに、病変部検出処理を実行する。具体的には、断層画像に対する、二値化処理、エッジ検出処理等により、低輝度の閉領域として病変部が検出される。病変部が検出された場合、画像解析部28から病変部情報が出力される。病変部情報には、病変部検出フラグ、病変部の位置情報、及び、病変部のサイズ情報が含まれる。
【0035】
病変部の位置情報は、例えば、病変部に相当する閉領域の中心点(又は重心点)の座標を示す情報であり、あるいは、病変部を囲む図形の中心点(又は重心点)の座標を示す情報である。病変部のサイズ情報は、例えば、病変部を囲む図形の大きさを示す情報である。例えば、病変部に外接しつつ病変部を囲む矩形を定義し、その中心点の座標とその左上隅点の座標から、病変部のサイズが特定されてもよい。中心点の座標が特定されている前提の下、左上隅点の座標を病変部のサイズ情報とみなしてもよい。病変部のサイズ情報として、病変部に相当する閉領域の面積が求められてもよい。複数の病変部が並列的に検出されてもよい。
【0036】
通知制御部30は、病変部の継続的な検出によりマーク表示条件が満たされた場合に病変部を通知するマークを画面上に表示する。通知制御部30は、病変部の更なる継続的な検出によりマーク表示制限条件が満たされた場合にマークの表示を制限する。
【0037】
より詳しく説明すると、実施形態においては、現フレームを含むm(mは2以上の整数)個のフレームにわたって病変部が連続的に検出されており、且つ、基準フレームと現フレームとの間における中心点の移動量が所定範囲内にある場合に、マーク表示条件の充足が判定され、マークが表示される。マーク表示条件に、病変部のサイズの変化量に関する条件が含まれてもよい。実施形態においては、断層画像中に一時的にシャドーが生じ、それにより病変部の検出が一時的に途絶えた場合、病変部の検出が連続しているとみなす例外条件を有している。上記の所定範囲は、ユーザーにより指定され、又は、診療科目や検査対象等により自動的に設定される。
【0038】
また、実施形態においては、現フレームを含むn個(但しnはmよりも大きな整数)のフレームにわたって病変部が連続的に検出されており、且つ、基準フレームと現フレームとの間における中心点の移動量が第1範囲内にあり、且つ、基準フレームと現フレームとの間におけるサイズの変化量が第2範囲内にある場合に、マーク表示制限条件の充足が判定される。マーク表示制限条件の充足が判定された場合、その時点で、マークの表示が終了し、画面上においてマークが消失する。第1範囲及び第2範囲は、ユーザーにより指定され、又は、診療科目や検査対象等により自動的に設定される。
【0039】
後述するように、病変部の検出が途絶えた時点から一定期間にわたってマーク表示制限が維持されてもよい。すなわち、マーク表示制限期間に延長期間を付加してもよく、又は、延長期間を含むマーク表示制限期間が定められてもよい。延長期間は、ユーザーによって指定され、又は、状況に応じて自動的に設定される。延長の有無をユーザーが選択できるようにしてもよい。
【0040】
画像形成部26、画像解析部28及び通知制御部30は、それぞれ、プロセッサにより構成され得る。単一のプロセッサが画像形成部26、画像解析部28及び通知制御部30として機能してもよい。後述するCPUが、画像形成部26、画像解析部28及び通知制御部30として機能してもよい。
【0041】
表示処理部32は、グラフィック画像生成機能、カラー演算機能、画像合成機能等を有する。表示処理部32には、画像形成部26、画像解析部28及び通知制御部30の出力が与えられている。病変部を囲むマークは、グラフィック画像を構成する1つの表示要素である。表示器36は、LCD、有機EL表示デバイス等によって構成される。表示器36には、動画像としての断層画像がリアルタイムで表示され、また、グラフィック画像の一部としてマークが表示される。表示処理部32は、例えば、プロセッサにより構成される。
【0042】
主制御部38は、
図1に示された各要素の動作を制御するものである。主制御部38は、実施形態において、CPU及びプログラムによって構成される。主制御部38には、操作パネル40が接続されている。操作パネル40は入力デバイスであり、それは、複数のスイッチ、複数のボタン、トラックボール、キーボード等を有する。
【0043】
実施形態においては、表示フレームデータ列が画像解析部28及び通知制御部30に与えられているが、受信フレームデータ列が画像解析部28及び通知制御部30に与えられてもよい(符号42を参照)。
【0044】
図2には、マーク表示処理が示されている。断層画像44には病変部46が含まれる。断層画像44の二値化により二値化画像が生成される。二値化画像に対するエッジ検出又は領域検出により、二値化された病変部46Aが抽出される。例えば、病変部46Aにおける水平方向の両端座標、及び、病変部46Aにおける垂直方向の両端座標により、病変部46Aに外接する矩形が定義される。実際には、中心点48の座標及び左上隅点50の座標が特定される。
【0045】
矩形52の外側に、水平方向及び垂直方向に一定のマージン56,58をおいた図形として、矩形54が定義される。その矩形54が断層画像上にマーク64として表示される。マーク64は、病変部46及びその周囲を囲む図形である。図示の例では、マーク64は、破線で構成されている。マーク64の表示態様は自由に選択し得る。例えば、実線で構成されたマークが表示されてもよいし、4つの隅部分のみを表す4つの要素からなるマークが表示されてもよい。円形や楕円のマークが表示されてもよい。
【0046】
いずれにしても、マーク表示条件が充足された場合に断層画像44上にマーク64が表示される。マーク64の表示により、検査者に対して病変部46の存在を知覚させることが可能となり、病変部46の見落としを防止できる。もっとも、マーク64の表示が必要以上に継続すると、病変部46やその周囲組織の観察においてマーク64が邪魔になる。このため、実施形態においては、通知制御部がマーク表示を強制的に制限する機能を備えている。
【0047】
図3には、マーク表示条件及びマーク表示制限条件の例が示されている。上述したように、画像解析部28により病変部検出66が実行される。通知制御部30は、マーク表示制御30A及びマーク表示制限制御30Bを実行する。具体的には、図示の例では、マーク表示条件には、第1条件68及び第2条件70が含まれ、それらの両方が満たされた場合に、マーク表示条件の充足が判定される。第1条件68は、mフレーム以上にわたって病変部が連続して検出されることを求める条件である。mは2以上の整数であり、例えば3である。第2条件70は、基準フレームと現フレームとの間での中心座標の移動量が一定範囲内であることを求める条件である。図示の例では、一定範囲として、水平方向の範囲Δxi、及び、垂直方向の範囲Δyiが定められている。基準フレームは、例えば、病変部が最初に検出されたフレームである。1つ前のフレームを基準フレームとしてもよい。第1条件68及び第2条件70の両方が同時に満たされた場合、マーク表示72が判定され、断層画像に重畳する形式で病変部を囲むマークが表示される。以下に説明するマーク表示制限が生じる前においては、病変部の検出が連続する限りにおいて、マークが継続的に表示される。
【0048】
マーク表示条件が満たされるか否かに際して、シャドー判定結果79が考慮されてもよい。ここで、シャドーは、体表面からのプローブ送受波面の部分的な浮き等に起因して生じるものであり、例えば、断層画像において水平方向における一部の区間が垂直方向全域にわたって帯状に黒く表示される現象である。例えば、送受波面の端部が生体表面から離れることに起因して、あるいは、送受波面が乳首に当たることに起因してシャドーが生じる。例えば、断層画像を水平軸上に投影して構成されるプロファイルにおいて谷部分を特定することによりシャドーの有無及びシャドー範囲を特定し得る。例えば、シャドーが生じてそれによって病変部の検出が一定期間途絶えた場合、病変部の検出が連続しているものとみなされる。
【0049】
マーク表示制限条件は、図示の例において、第1条件74、第2条件76及び第3条件78からなる。それら3つがすべて同時に満たされた場合に、マーク表示制限80が判定され、病変部の検出が続いていても、マークが画面上から消去される。実施形態においては、マーク表示制限の開始後において、病変部の検出が途絶えても、その期間が一定期間(例えば1秒又は2秒)以下であれば、マーク再表示が制限される(符号82を参照)。
【0050】
より詳しくは、図示された例において、第1条件74は、nフレームにわたって病変部が連続して検出されていることを求めるものである。ここで、nはm以上の整数であり、例えば、30又は60である。nはユーザーにより指定され得る。nが状況に応じて自動的に設定されてもよい。
【0051】
第2条件76は、基準フレームと現フレームとの間で、中心点の移動量が第1範囲内であることを求めるものである。第1範囲は、具体的には、水平方向においてΔxjであり、垂直方向においてΔyjである。第1範囲は、ユーザーにより指定され、又は、状況に応じて自動的に設定される。
【0052】
第3条件78は、基準フレームと現フレームとの間で、サイズ変化量が第2範囲内であることを求めるものである。第2範囲は、具体的には、水平方向においてΔxkであり、垂直方向においてΔykである。第2範囲は、ユーザーにより指定され、又は、状況に応じて自動的に設定される。
【0053】
第2条件76及び第3条件78において、基準フレームは、例えば、病変部が連続的に検出されている場合における最初に病変部が検出されたフレームである。前フレームを基準フレームとしてもよく、マーク表示が開始されたフレームを基準フレームとしてもよい。他のフレームを基準フレームとしてもよい。
【0054】
第1条件74から第3条件78の全部が同時に充足された場合、同じ病変部が継続的に表示されており、検査者において当該病変部を認識している可能性が高いので、マーク表示制限80が判定され、マークが画面上から消去される。
【0055】
図4に示される表84には病変部情報の推移が含まれる。表84は、複数のレコードからなる。個々のレコードには、フレーム番号86、病変部検出フラグ(Y)88、左上隅点の座標90、中心点の座標92、マーク表示条件の充足を示すフラグ(Y)94、及び、マーク表示制限条件の充足を示すフラグ(Y)96が含まれる。病変部検出が開始されてから若干遅れて、マーク表示が開始される。符号100は病変部が継続的に検出されている期間を示している。符号102は、マーク表示期間を示している。マーク表示開始後、暫くしてマーク表示制限条件が充足され、これにより符号104で示す期間においてマーク表示が強制的に制限される。これにより病変部や周囲組織の観察の際にマークが邪魔になることが防止される。
【0056】
図5において、(A)は、病変部検出フラグを示している。0は非検出を示し、1は検出を示している(上記Yに相当する)。(B)は、マーク表示条件の充足の有無を示しており、0は非充足を示し、1は充足を示している(上記Yに相当する)。(C)は、マーク表示制限条件の充足の有無を示しており、0は非充足を示し、1は充足を示している(上記Yに相当する)。(D)は、実際のマーク表示の有無を示しており、0は非表示を示し、1は表示を示している。(B)に示すマーク表示条件が充足され、且つ、(C)に示すマーク表示制限条件が充足されていない状況において、マークが表示される。
【0057】
より具体的に検討する。タイミングt1において、病変部の検出が開始され、その検出は短時間のみ継続している(符号106を参照)。タイミングt1に若干遅れてマーク表示条件が満たされ(符号107を参照)、マークが短時間のみ表示されている(符号108を参照)。タイミングt2において病変部が再び検出され、その検出も比較的短時間のみ継続している(符号110を参照)。それに伴って、マーク表示条件が短時間充足され(符号111を参照)、これに基づいてマークが短時間表示されている(符号112を参照)。タイミングt3で病変部の検出が再び開始され、その検出は比較的に長い期間にわたって継続している(符号114A及び符号114Cを参照)。但し、途中、期間Δtにおいてシャドーが瞬時的に生じており、病変部の検出が一時的に途絶えている(符号114Bを参照)。もっとも、そのような一時的な途絶えがあっても、マーク表示条件の充足は一定期間にわたって維持されている(符号115を参照)。
【0058】
タイミングt3から若干遅れて、マーク表示が再開されているが、タイミングt4においてマーク表示制限条件が充足され、タイミングt4においてマークが消去されている(符号116を参照)。マーク表示制限条件は一定期間にわたって満たされる(符号118を参照)。
【0059】
タイミングt5において、病変部が非検出となっているが、実施形態では、タイミングt5から一定期間にわたって、マーク表示制限状態が維持される。仮に、延長期間118Aにおいて、病変部が再検出されても(符号120及び符号121を参照)、マークは表示されない。同じ病変部については再びマークを表示する必要性が低いためである。また、たまたま病変部の検出が途絶えた場合に、マークが再表示されると、それが目障りになるからである。もっとも、そのようなマーク再表示制限、つまり延長期間118Aを設けないようにしてもよい。あるいは、同じ病変部であることを確実に確認できる限りにおいて、マークの再表示を制限するようにしてもよい。ユーザーのニーズや操作性を考慮して、マーク表示条件やマーク表示制限条件を適応的に定めるのが望ましい。
【0060】
タイミングt7において、病変部が再度の検出され、その後、検出状態が継続している(符号122を参照)。それに伴って、マーク表示条件が充足され、マークが再表示されている(符号124を参照)。タイミングt8以降において、マーク表示制限条件が満たされており(符号126を参照)、タイミングt8以降においてはマークが再び強制的に消去されている。
【0061】
上記実施形態では、水平方向と垂直方向とで別々の判定を行ったが、それらの判定を統合してもよい。例えば、中心点の移動距離に基づいて同じ病変部であることを判定してもよい。
【0062】
以下、幾つかの変形例について説明する。
【0063】
図6に示されるように、情報群128に基づいて、マーク表示136及びマーク表示制限138を判定してもよい。情報群128には、図示の例では、病変部情報130、フレーム間相関値132、測位情報134、等が含まれる。病変部情報130には、病変部検出フラグ、病変部の中心点の移動情報、及び、病変部のサイズの変化情報が含まれる。フレーム間相関値132は、個々のフレーム間で演算される相関値である。プローブの移動量が少なければ、フレーム間における輝度情報の差分が小さくなる。測位情報134は測位装置によって計測される情報であり、プローブの運動を示す情報である。
図6に示す構成によれば、超音波画像の内容及びプローブの運動に基づいて、マークを表示するか否か、表示されているマークを消去するか否かを的確に判定し得る。
【0064】
図7には、表示器の画面152に表示される断層画像154が示されている。断層画像154には病変部156が含まれる。図示の状態は、マーク158が消去された状態である。マーク158の表示に代えて、断層画像154の外側(余白領域)にマーク160が示されている。マーク160は病変部が検出されている状態を示す表示要素である。マーク158が消去されていても、マーク160の表示を通じて、断層画像154中の病変部156が自動的に検出されていることを認識し得る。
【0065】
図8には、表示器の画面に表示される断層画像164が示されている、断層画像164には、第1病変部168及び第2病変部170が含まれる。第1病変部168を通知するマーク174は消去されており、第2病変部170を通知するマーク174も消去されている。マーク172に代えて、断層画像164の外側(余白領域)に、第1マークセットを構成するマーク176X,176Yが表示されており、マーク174に代えて、断層画像164の外側に、第2マークセットを構成するマーク178X,178Yが表示されている。
【0066】
マーク176Xは、第1病変部168の中心点のX座標を示すものであり、当該X座標と同じX座標に表示されている。マーク76Yは、第1病変部168の中心点のY座標を示すものであり、当該Y座標と同じY座標に表示されている。マーク178Xは、第2病変部170の中心点のX座標を示すものであり、当該X座標と同じX座標に表示されている。マーク176Yは、第2病変部170の中心点のY座標を示すものであり、当該Y座標と同じY座標に表示されている。第1マークセットは第1カラーで表示され、第2マークセットは、第1カラーとは異なる第2カラーで表示されている。
図8に示した構成によれば、複数の病変部を囲む複数のマークの表示が消失した以降においても、複数の病変部が存在する位置を特定し易くなる。
【0067】
図9には動作例が示されている。その動作例には検査者によるプローブ操作も含まれる。S10では、体表上でのプローブのマニュアル走査により病変部が探索される。その際において、マーク表示条件が満たされた場合にはマークが表示され、その後、マーク表示制限条件が満たされた場合にはマークの表示が強制的に制限される。S12において、病変部が特定された場合、すなわち、検査者において病変部が知覚された場合、S14において、プローブの位置及び姿勢が調整され、病変部が精査される。その場合において、マーク表示制限条件が満たされた場合、マークが消失する。これにより病変部及びその周囲組織の観察に際してマークが邪魔になることはない。
【0068】
S16では、フリーズ操作が行われる。これにより送受信が一時的に停止し、動画像が静止画像に切り替わる。表示されている画像がマーク表示制限に係る画像である場合、マークが再表示される。つまり、病変部を囲むマークが画面上に登場する。その上で、S18において表示されている画像(マークを含む画像)が記憶部に記録される。その画像は検査レポートの一部になる。
【0069】
フリーズ状態において、過去に取得された画像列を順次表示させる場合においても、マーク表示制限に係る画像についてはマークが表示される。画像の記録に当たって、マーク入り画像とマーク無し画像の両方が記録されてもよい。マークを含むグラフィック画像と、断層画像とが別々に記録されてもよい。
【0070】
S20において本処理の終了が判断されない場合、S22においてフリーズが解除され、S10以降の各工程が再び実行される。
図9に示す動作例は一例に過ぎないものである。これ以外にも多様な動作例を採用し得る。
【0071】
プローブ操作をしながらリアルタイムで断層画像を表示する場合において、上述したマーク表示制御及びマーク表示制限制御を適用することにより超音波検査時間を短縮化できる。超音波診断装置からコンピュータ等の情報処理装置へフレームデータ列を転送し、情報処理装置において動画像としての断層画像が表示されてもよい。その場合において、上記のマーク表示及びマーク表示制限を適用するようにしてもよい。超音波画像として断層画像以外の画像が表示されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 プローブ、26 画像形成部、28 画像解析部、30 通知制御部、32 表示処理部。