(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】切削液タンク
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240216BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
(21)【出願番号】P 2020110116
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘太
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-045678(JP,A)
【文献】特開2014-034081(JP,A)
【文献】特開2014-188659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00 - 11/10
B24B 55/12 - 57/02
B01D 29/00
B01D 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体と、
前記タンク本体の所定の流入箇所に設けられ、工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液が流入する切削液流入部と、
前記タンク本体の所定の汲み上げ箇所に設けられ、前記タンク本体に貯留された切削液を汲み上げて前記加工部へ供給する切削液供給部と、
前記切削液流入部および前記切削液供給部を結ぶように前記タンク本体に形成された切削液流路と、
前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げ、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び前記切削液流路に戻す、切削液清浄化装置とを備え
、
前記切削液供給部が、前記汲み上げ箇所から切削液を汲み上げる第1汲み上げポンプを有しており、
前記切削液清浄化装置が、前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げる第2汲み上げポンプと、基端が前記第2汲み上げポンプに接続され、先端に前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプの下流側の箇所に清浄化された切削液を吐出する第1吐出部が設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路の途中に設けられたスラッジ除去部とを有しており、
前記切削液流路は、複数のコーナー部を有している、切削液タンク。
【請求項2】
タンク本体と、
前記タンク本体の所定の流入箇所に設けられ、工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液が流入する切削液流入部と、
前記タンク本体の所定の汲み上げ箇所に設けられ、前記タンク本体に貯留された切削液を汲み上げて前記加工部へ供給する切削液供給部と、
前記切削液流入部および前記切削液供給部を結ぶように前記タンク本体に形成された切削液流路と、
前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げ、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び前記切削液流路に戻す、切削液清浄化装置とを備え、
前記切削液供給部が、前記汲み上げ箇所から切削液を汲み上げる第1汲み上げポンプを有しており、
前記切削液清浄化装置が、前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げる第2汲み上げポンプと、基端が前記第2汲み上げポンプに接続され、先端に前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプの下流側の箇所に清浄化された切削液を吐出する第1吐出部が設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路の途中に設けられたスラッジ除去部とを有しており、
前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプおよび前記第1吐出部間にスラッジ除去用フィルタが設けられている、切削液タンク。
【請求項3】
タンク本体と、
前記タンク本体の所定の流入箇所に設けられ、工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液が流入する切削液流入部と、
前記タンク本体の所定の汲み上げ箇所に設けられ、前記タンク本体に貯留された切削液を汲み上げて前記加工部へ供給する切削液供給部と、
前記切削液流入部および前記切削液供給部を結ぶように前記タンク本体に形成された切削液流路と、
前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げ、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び前記切削液流路に戻す、切削液清浄化装置とを備え、
前記切削液供給部が、前記汲み上げ箇所から切削液を汲み上げる第1汲み上げポンプを有しており、
前記切削液清浄化装置が、前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げる第2汲み上げポンプと、基端が前記第2汲み上げポンプに接続され、先端に前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプの下流側の箇所に清浄化された切削液を吐出する第1吐出部が設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路の途中に設けられたスラッジ除去部とを有しており、
さらに、前記切削液清浄化装置が、前記バイパス流路における前記スラッジ除去部の下流側の箇所から分岐し、先端に前記汲み上げ箇所に清浄化された切削液を吐出する第2吐出部を有する逆洗用分岐流路と、清浄化された切削液の流れを前記バイパス流路または前記逆洗用分岐流路に切り替える流路切替手段とを有
している、切削液タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マシニングセンタや旋盤等の工作機械に用いられる切削液タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマシニングセンタや旋盤のような切削加工を行う工作機械では、工具の潤滑および冷却ならびにスラッジの排出を目的として、切削液(クーラント)が一般的に用いられている。
切削液供給ポンプにより、ワークの切削加工が行われる工作機械の加工室(加工部)に向けて吐出された切削液は、ワークから削り取られた切粉などのスラッジとともに加工部から排出される。排出された切削液は、これに混入したスラッジのうち比較的大きなものがチップコンベアやフィルタによって分離除去された後、切削液タンクのタンク本体に流入して一時的に貯留され、ここから切削液供給ポンプにより再び加工部へ供給される。
ここで、チップコンベアやフィルタによって分離除去することができなかった比較的小さいスラッジは、切削液とともにタンク本体内に流入するが、スラッジが混入したままの切削液が切削液供給ポンプなどの機器に吸い込まれると、機器の損傷や故障を引き起こすだけでなく、スラッジが混入したままの切削液が加工部に供給されると加工不良が生じるおそれがあった。
また、切削液に混入したスラッジがタンク本体の底に堆積することにより、タンク本体の有効容積、すなわち切削液自体を貯留するための容積が低減するおそれ、また、切削液が腐敗して作業環境が損なわれるおそれがあった。
さらにスラッジは、沈殿してタンク本体の底部に堆積するため、一見しただけでは堆積の状態や量を把握するのが難しいうえ、堆積したスラッジを取り除く作業も多大な時間と労力を要するものであった。
【0003】
そこで、例えば下記特許文献1、2に記載の通り、切削液タンクのタンク本体内に切削液を撹拌するスクリューを設置して、スラッジがタンク本体の底部に堆積するのを防止する切削液タンクが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-114221号公報
【文献】特開平2-106248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2の切削液タンクのようにタンク本体内にスクリューを設置する場合、その効果はタンク本体内の一定範囲に限られタンク本体内の広い範囲にスラッジが堆積するのを効果的に防止することができなかった。また、モータの駆動や、スクリューの回転による切削液温度の上昇や消費電力の増加といった問題もあった。
【0006】
この発明の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、切削液温度の上昇や消費電力の増加を抑制しながら、タンク本体内の広い範囲においてスラッジが堆積するのをより効果的に防止できる切削液タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)タンク本体と、
前記タンク本体の所定の流入箇所に設けられ、工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液が流入する切削液流入部と、
前記タンク本体の所定の汲み上げ箇所に設けられ、前記タンク本体に貯留された切削液を汲み上げて前記加工部へ供給する切削液供給部と、
前記切削液流入部および前記切削液供給部を結ぶように前記タンク本体に形成された切削液流路と、
前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げ、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び前記切削液流路に戻す、切削液清浄化装置とを備えた、切削液タンク。
【0009】
2)前記切削液供給部が、前記汲み上げ箇所から切削液を汲み上げる第1汲み上げポンプを有し、
前記切削液清浄化装置が、前記切削液流路からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げる第2汲み上げポンプと、基端が前記第2汲み上げポンプに接続され、先端に前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプの下流側の箇所に清浄化された切削液を吐出する第1吐出部が設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路の途中に設けられたスラッジ除去部とを有する、上記1)に記載の切削液タンク。
【0010】
3)前記切削液流路における前記第2汲み上げポンプおよび前記第1吐出部間にスラッジ除去用フィルタが設けられている、上記2)に記載の切削液タンク。
【0011】
4)さらに、前記切削液清浄化装置が、前記バイパス流路における前記スラッジ除去部の下流側の箇所から分岐し、先端に前記汲み上げ箇所に清浄化された切削液を吐出する第2吐出部を有する逆洗用分岐流路と、清浄化された切削液の流れを前記バイパス流路または前記逆洗用分岐流路に切り替える流路切替手段とを有する、上記2)または3)に記載の切削液タンク。
【0012】
上記1)の切削液タンクによれば、タンク本体内の切削液流路を流れるスラッジ含有切削液を汲み上げて一旦切削液流路外へ取り出して、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び切削液流路に戻すことで、切削液流路を流れる切削液に含有されるスラッジの量が低減され、タンク本体内の広い範囲においてスラッジが堆積するのを効果的に防止できるうえに、加工部へ供給される切削液に含有されるスラッジの量も低減される。さらに、タンク本体にモータやスクリューを設置する必要がないため、切削液温度の上昇や消費電力の増加を効果的に抑制することができる。
【0013】
上記2)の切削液タンクによれば、切削液清浄化装置が、切削液流路からスラッジ含有切削液を汲み上げる第2汲み上げポンプと、基端が第2汲み上げポンプに接続し、先端に切削液流路の第2汲み上げポンプ下流側に位置する第1吐出部が設けられたバイパス流路と、バイパス流路上に設けられたスラッジ除去部とを有していることで、スラッジ含有切削液から確実にスラッジを除去することができ、タンク本体内にスラッジが堆積するのをより効果的に防止できる。切削液清浄化装置の上記構成に加えて、切削液供給部が第1汲み上げポンプを有していることで、切削液温度の上昇や消費電力の増加を効果的に抑制することができる。
【0014】
上記3)の切削液タンクによれば、切削液流路の第2汲み上げポンプおよび第1吐出部間にフィルタが設けられていることで、第2汲み上げポンプで汲み上げられなかったスラッジ含有切削液が第1吐出部側に流れたとしても、スラッジが清浄化された切削液に混入するのを防止することができる。
【0015】
上記4)の切削液タンクによれば、切削液清浄化装置が、バイパス流路のスラッジ除去部より下流側から分岐して、先端に汲み上げ箇所に清浄化された切削液を吐出する第2吐出部を有する逆洗用分岐流路と、清浄化された切削液の流れをバイパス流路または逆洗用分岐流路に切り替える流路切替手段とを有していることで、第2吐出部から吐出された切削液によって汲み上げ箇所近傍に堆積したスラッジが洗い流されるだけでなく、切削液流路における切削液を加工部へ供給するための流れ(切削液タンクの通常使用時の流れ)と逆向きの流れが発生させられ、切削液流路全域において通常使用時の流れで堆積したスラッジが洗い流される。そして、洗い流されたスラッジは切削液と共に第2汲み上げポンプによって汲み上げられて、バイパス流路でスラッジ除去部によって除去される。これにより、タンク本体内の広い範囲においてスラッジが堆積するのをより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施形態に係る切削液タンクの通常使用時の切削液の流れを示す概略図である。
【
図2】この発明の実施形態に係る切削液タンクの逆洗時の切削液の流れを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態に係る切削液タンクについて、
図1および
図2を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示す通り、切削液タンク(1)は、切削液を貯留するためのタンク本体(10)を備えている。タンク本体(10)の所定の流入箇所には切削液流入部(2)が設けられており、図示しない工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液が切削液流入部(2)からタンク本体(10)へ流入している。また、タンク本体(10)の所定の汲み上げ箇所には、タンク本体(10)に貯留された切削液を汲み上げて加工部へ供給するための切削液供給部(7)が設けられており、切削液供給部(7)は切削液を汲み上げる1つ以上の(この実施形態では3つの)第1汲み上げポンプ(70)を有している。切削液流入部(2)および切削液供給部(7)(第1汲み上げポンプ(70))を結ぶようにタンク本体(10)に切削液流路(P)が形成されている。切削液を加工部へ供給する際(通常使用時)、切削液流入部(2)から流入したスラッジ含有切削液は切削液流路(P)を切削液供給部(7)の第1汲み上げポンプ(70)へ向って流れる。第1汲み上げポンプ(70)の数は特に限定されず、タンク本体(10)の大きさや形状等によって適宜変更される。
【0019】
さらに、切削液タンク(1)は、切削液流路(P)からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げ、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び切削液流路(P)に戻す、切削液清浄化装置(4)を備えている。
【0020】
切削液清浄化装置(4)の詳細について以下に説明する。なお、以下の説明における上流および下流は、切削液タンク(1)の通常使用時、すなわち、切削液を加工部に供給する際に切削液流路(P)内で形成される切削液の流れにおける上流および下流とし、切削液流入部(2)を上流側、切削液供給部(7)を下流側とする。
【0021】
切削液清浄化装置(4)は、切削液流路(P)における切削液流入部(2)の近傍に設けられ、切削液流路(P)からスラッジ含有切削液を一時的に汲み上げる1つ以上の(この実施形態では1つの)第2汲み上げポンプ(41)を有している。第2汲み上げポンプの設置位置は好ましくは上流側、より好ましくは切削液流入部(2)近傍とされるがこれに限定されることなく、他の構成要素との干渉を避けた位置としたり、敢えてスラッジの堆積し易い場所に設置してスラッジを効果的に吸い上げるようにすることもできる。また、第2汲み上げポンプ(41)の数は特に限定されず、タンク本体(10)の大きさや形状等によって適宜変更される。
【0022】
切削液清浄化装置(4)は、さらに、基端が第2汲み上げポンプ(41)に接続され、先端に切削液流路(P)における第2汲み上げポンプ(41)の下流側の箇所に清浄化された切削液を吐出する第1吐出部(43)が設けられたバイパス流路(C1)を有している。切削液流路(P)における第1吐出部(43)から清浄化された切削液が吐出される箇所は第2汲み上げポンプ(41)近傍が好ましいが、第2汲み上げポンプ(41)より下流であれば特に限定されず、スラッジの堆積し易い場所に設置してスラッジの堆積を抑制するようにしてもよい。
【0023】
バイパス流路(C1)の途中にはスラッジ除去部(42)が設けられており、切削液流路(P)から第2汲み上げポンプ(41)によって汲み上げられてバイパス流路(C1)へ取り出されたスラッジ含有切削液はスラッジが除去され、清浄化される。スラッジ除去部(42)には、スラッジ含有切削液からスラッジのみを除去する機能を有するもの、例えばフィルタ、が用いられる。
【0024】
さらに、切削液清浄化装置(4)は、バイパス流路(C1)におけるスラッジ除去部(42)の下流側の箇所から分岐し、先端に汲み上げ箇所の近傍、すなわち、第1汲み上げポンプ(70)の近傍に清浄化された切削液を吐出する第2吐出部(44)を有する逆洗用分岐流路(C2)と、清浄化された切削液の流れを前記バイパス流路(C1)または前記逆洗用分岐流路(C2)に切り替える流路切替手段(この実施形態では、分岐したバイパス流路(C1)および逆洗用分岐流路(C2)それぞれの途中に設けられた開閉弁(45)(46))とを有している。開閉弁(45)(46)は図示しない制御装置によって制御されている。流路切替手段は、開閉弁(45)(46)に限定されず、たとえば、バイパス流路(C1)および逆洗用分岐流路(C2)の分岐点に二方向切替弁を設けてもよい。
【0025】
上記の通り、この実施形態の切削液清浄化装置(4)は、第2汲み上げポンプ(41)、スラッジ除去部(42)、第1吐出部(43)、第2吐出部(44)、開閉弁(45)(46)、バイパス流路(C1)および逆洗用分岐流路(C2)から構成されている。
【0026】
また、切削液流路(P)における第2汲み上げポンプ(41)および第1吐出部(43)間にスラッジ除去用フィルタが設けられている。
【0027】
次に、この実施形態に係る切削液タンク(1)の使用における、工作機械の加工部へ切削液を供給する場合(通常使用時)、および、通常使用時と逆方向の切削液の流れによって通常使用時にタンク本体(10)の底部に堆積したスラッジを洗い流す場合(逆洗時)それぞれにおける切削液の流れについて説明する。
【0028】
〔通常使用時〕
まず、通常使用時の切削液の流れについて、
図1の矢印を参照して説明する。
図1に示す実施形態においては、切削液流路(P)は、矢印で示しているように、切削液流入部(2)から流入してまっすぐに進む第1の部分(P1)と、第1の部分(P1)からコーナー部(PC)でタンク本体(10)の壁に沿って曲がって(この実施形態においては直角に曲がって)第2汲み上げポンプ(41)の設置位置に至る第2の部分(P2)と、第1切削液吐出口(43)から流入してまっすぐに進む第3の部分(P3)と、第3の部分(P3)からコーナー部(PC)においてタンク本体(10)の壁に沿って曲がって(この実施形態においては直角に曲がって)進む第4の部分(P4)と、第4の部分(P4)からコーナー部(PC)でタンク本体(10)の壁に沿って曲がって(この実施形態においては直角に曲がって)進む第5の部分(P5)と、第5の部分(P5)からコーナー部(PC)でタンク本体(10)の壁に沿って曲がって(この実施形態においては直角に曲がって)進む第6の部分(P6)と、第6の部分(P6)からコーナー部(PC)でタンク本体(10)の壁に沿って曲がって(この実施形態においては直角に曲がって)第1汲み上げポンプ(70)の設置位置に至る第7の部分(P7)とからなる。切削液流路(P)は、複数(図示した例では、6つ)のコーナー部(PC)を有している。
【0029】
工作機械の加工部から排出されたスラッジ含有切削液は切削液流入部(2)からタンク本体(10)に流入し、切削液流路(P)内を第1汲み上げポンプ(70)に向かって流れる。そして、スラッジ含有切削液は切削液流路(P)の途中に設けられた第2汲み上げポンプ(41)によって汲み上げられ、一時的にバイパス流路(C1)へ取り出される。バイパス流路(C1)へ取り出されたスラッジ含有切削液は、スラッジ除去部(42)でスラッジを除去されて清浄化される。そして、制御装置によって、開閉弁(45)は開とされ、かつ、開閉弁(46)は閉とされ、清浄化された切削液は開閉弁(45)を通ってバイパス流路(C1)を流れ、第1切削液吐出口(43)から切削液流路(P)へ吐出される。再び切削液流路(P)へ戻された清浄化された切削液は切削液流路(P)を流れ、第1汲み上げポンプ(70)によって汲み上げられて加工部へ供給される。
【0030】
切削液流入部(2)から流入したスラッジ含有切削液はバイパス流路(C1)において清浄化され、再び切削液流路(P)へ戻される。なお、第2汲み上げポンプ(41)によってスラッジ含有切削液の全量を汲み上げることができずに一部のスラッジ含有切削液がそのまま切削液流路(P)を流れてしまった場合でも、第2汲み上げポンプ(41)および第1切削液吐出口(43)間に設けられたフィルタ(8)を通過する際にスラッジが除去されるため、第1切削液吐出口(43)から吐出される清浄化された切削液にスラッジが混入することはない。
【0031】
第1切削液吐出口(43)より下流側の切削液流路(P)における清浄化された切削液の流量が増加した場合、第1切削液吐出口(43)から吐出された切削液のうち一部は余剰となるが、余剰となった切削液はフィルタ(8)を通過して、再び第2汲み上げポンプ(41)で汲み上げられてバイパス流路(C1)へと取り出される。そのため、第1吐出部(43)からの切削液の吐出や第1汲み上げポンプ(70)へ向かう切削液の流れが余剰となった切削液によって妨げられることはない。
【0032】
上記の通り、切削液タンクの通常使用時において、切削液は、切削液流入部(2)→切削液流路(P)→第2汲み上げポンプ(41)→バイパス流路(C1)→スラッジ除去部(42)→バイパス流路(C1)→第1切削液吐出口(43)→切削液流路(P)→第1汲み上げポンプ(70)の順で流れる。
【0033】
〔逆洗時〕
次に、逆洗時の切削液の流れについて、
図2の矢印を参照して説明する。なお、切削液流入部(2)から切削液流路(P)に流入したスラッジ含有切削液がスラッジ除去部(42)によって清浄化されるまでの行程は通常使用時と同様のため、省略する。
【0034】
制御装置によって、開閉弁(45)は閉とされ、かつ、開閉弁(46)は開とされる。スラッジ除去部(42)で清浄化された切削液は開閉弁(46)を通って、逆洗用分岐流路(C2)を流れ、第2切削液吐出口(44)から切削液流路(P)の第1汲み上げポンプ(70)近傍へ吐出される。第2切削液吐出口(44)から第1汲み上げポンプ(70)近傍へ吐出された清浄化された切削液は、第1汲み上げポンプ(70)近傍に堆積したスラッジを洗い流した後、通常使用時の切削液の流れと逆方向の流れとなって切削液流路(P)を流れ、通常使用時に切削液流路(P)全体に堆積したスラッジを洗い流しながら、第2汲み上げポンプ(41)へ向かって流れる。洗い流したスラッジを含んだ切削液は、第2汲み上げポンプ(41)の手前に設けられたフィルタ(8)を通過する際にスラッジが除去された後、第2汲み上げポンプ(41)で汲み上げられてバイパス流路(C1)へと取り出される。バイパス流路(C1)へと取り出された切削液は、さらに、スラッジ除去部(42)によってスラッジが除去される。
【0035】
上記の通り、切削液タンクの逆洗時において、切削液は、切削液流入部(2)→切削液流路(P)→第2汲み上げポンプ(41)→バイパス流路(C1)→スラッジ除去部(42)という通常使用時と同様の流れを経た後、スラッジ除去部(42)→逆洗用分岐流路(C2)→第2切削液吐出口(44)→切削液流路(P)→フィルタ(8)→第2汲み上げポンプ(41)→バイパス流路(C1)→スラッジ除去部(42)という流れをループさせられる。
【0036】
逆洗によって、切削液流路(P)の清掃が終わると、制御装置によって開閉弁(45)が開、かつ、開閉弁(46)が閉とされ、切削液タンク(1)は再び通常使用に戻される。
【0037】
切削液タンク(1)は、通常使用時において、タンク本体(10)内の切削液流路(P)を流れるスラッジ含有切削液を汲み上げて一旦切削液流路(P)外へ取り出して、スラッジを除去し、清浄化された切削液を再び切削液流路(P)に戻すことで、切削液流路(P)を流れる切削液に含有されるスラッジの量が低減され、タンク本体(10)内の広い範囲においてスラッジが堆積するのを効果的に防止できるうえに、加工部へ供給される切削液に含有されるスラッジの量も低減される。さらに、逆洗時において、汲み上げ箇所近傍に堆積したスラッジが洗い流されるだけでなく、通常使用時の流れと逆向きの流れによって、通常使用時に切削液流路(P)に堆積したスラッジが洗い流され、洗い流されたスラッジはフィルタ(8)およびスラッジ除去部(42)によって確実に除去される。こうして、タンク本体(10)内の広い範囲においてスラッジが堆積するのをより効果的に防止できるとともに、逆洗後の通常使用時には、加工部へ供給される切削液に含有されるスラッジの量をより確実に低減することができる。
【0038】
上記の実施形態によれば、切削液温度の上昇や消費電力の増加を抑制しながら、タンク本体(10)内の広い範囲においてスラッジが堆積するのをより効果的に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、例えば、工具の潤滑・冷却およびスラッジの排出を目的として切削液が用いられる工作機械に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
(1):切削液タンク
(10):タンク本体
(2):切削液流入部
(4):切削液清浄化装置
(41):第2汲み上げポンプ
(42):スラッジ除去部(フィルタ)
(43):第1吐出口
(44):第2吐出口
(45)、(46):流路切替手段(開閉弁)
(7):切削液供給部
(70):第1汲み上げポンプ
(8):フィルタ
(P):切削液流路
(C1):バイパス流路
(C2):逆洗用分岐流路