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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】戸当り装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/00 20170101AFI20240216BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E05F5/00 C
E05F5/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020116333
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014144
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瞭人
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3172168(US,A)
【文献】米国特許第3862774(US,A)
【文献】特開2019-131952(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083141(JP,U)
【文献】特開2019-143296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブースの出入口を画成するドア枠の一方の縦枠部に回動可能に取り付けられたドアに対して、前記出入口を閉じる閉じ位置から前記ブース内への回動を許容し、前記ブース外への回動を禁じる戸当り装置において、
前記ドア枠における上枠部または他方の縦枠部に固定されたベースと、
前記ドアの回動軌跡と干渉する規制位置と前記ドアの回動軌跡と干渉しない退避位置との間で回動可能にして前記ベースに連結された戸当り部材と、
前記戸当り部材を前記規制位置で前記ベースにロックするとともに、このロック状態を解除する解除操作部を有するロック機構と、
を備えたことを特徴とする戸当り装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記ベースに設けられた受部と、
前記戸当り部材にスライド可能に支持され、スライド方向の両端部が第1端部と第2端部として提供され、前記第1端部が前記受部と係合した時に前記戸当り部材をロックするロック部材と、
前記ロック部材を前記受部に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記ロック部材の前記第2端部が、前記戸当り部材の外側に配置され、前記解除操作部として提供されることを特徴とする請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項3】
前記ベースには保持突起が形成されており、前記戸当り部材が前記退避位置にある時に、前記ロック部材の前記第1端部が前記保持突起に係止されることにより、前記戸当り部材が前記退避位置に保持されることを特徴とする請求項2に記載の戸当り装置。
【請求項4】
前記戸当り部材が扁平な形状をなし、
前記ロック部材は、互いに平行をなしその軸線方向にスライド可能にして前記戸当り部材に支持された一対のスライドシャフトと、前記解除操作部とを備え、
前記スライドシャフトには前記付勢部材としての圧縮コイルバネが巻装され、
前記ベースには前記受部としての一対の受穴が形成され、この一対の受穴に、前記ロック部材の前記第1端部としての前記一対のスライドシャフトの先端部が、それぞれ嵌まっており、
前記解除操作部は、前記戸当り部材において前記ベースとは反対側の端部に沿って延び、前記一対のスライドシャフトの基端部に固定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の戸当り装置。
【請求項5】
前記戸当り部材は、前記ドアと対向する戸当り面に収容凹部を有し、この収容凹部に磁石が配置され、前記戸当り面には緩衝パッド部が配置され、この緩衝パッド部が前記磁石を覆っていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の戸当り装置。
【請求項6】
前記ドア枠の前記上枠部の下面に前記ベースが固定され、
前記戸当り部材は、垂直に垂れ下がった前記規制位置と水平をなす前記退避位置との間で、前記上枠部に沿って延びる水平の回動軸線を中心にして、前記ベースに回動可能に連結され、
前記戸当り部材が前記退避位置にある時、前記ベースと前記戸当り部材が、前記ドアが前記ブース外へ回動する過程における前記ドアの上縁部と、前記上枠部との間の間隙に配置されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の戸当り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーブース等の狭いブースの出入口に設置される戸当り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャワーブースには一般に内開き式ドアが装備されている。利用者がシャワーブース内で体調に異常をきたして意識を失い自力でドアを開くことができない場合、ドアを開いて救助する必要がある。この場合、利用者が邪魔になってドアを開くことができず、外側から救助できない状況が生じ得る。そのため、このような緊急時には、ドアを外開きできることが求められている。
【0003】
特許文献1の戸当り装置は、ドア枠に取り付けられており、ドア枠の上枠部に固定された細長いベースと、このベースの長手方向にスライド可能に支持された戸当り部材とを備えている。戸当り部材は、ベースにスライド可能に支持されるスライド部と、このスライド部から下方に突出する当たり部とを有している。戸当り部材は、ドアの外側に配置され閉じ位置にあるドアの上縁部の外側の面に当たる。この戸当り部材により、ドアの内開きが許容され、ドアの外開きが禁じられている。
【0004】
特許文献1の戸当り装置では、戸当り部材のスライド部に長円形状の係合片が回動可能に支持されており、操作部によりスライド方向と直交する第1位置とスライド方向に沿う第2位置との間で回動可能である。ベースにはその長手方向両端部に係止突起が形成されており、第1位置にある係合片を係止することにより、戸当り部材のベースからの脱落を防止している。緊急時にドアを外開きする必要が生じた時には、上記操作部を90°回して係合片を第2位置にし、スライド部をベースに対してスライドさせることにより、戸当り部材をベースから取り外す。これによりドアの外開きが可能となる。
【0005】
特許文献2の戸当り装置は、ドアに取付けられており、ドアの上縁部の内側の面に固定されたベースと、このベースに、起立位置と水平位置との間で回動可能に連結された戸当り部材とを備えている。戸当り部材は通常時には起立位置にあり、ドアの上縁から上方に突出している。ドアが閉じ位置にある時に戸当り部材はドア枠の上枠部の内側の面に当たる。これにより、ドアの内開きが許容され、外開きが禁じられている。
【0006】
特許文献2の戸当り装置では、戸当り部材はベースに対して、回動軸線を中心に回動可能であるとともに、この回動軸線に沿ってスライド可能である。戸当り部材には受穴が形成され、ベースには突起が形成されている。戸当り部材がコイルバネの力で回動軸線方向に付勢されることにより、戸当り部材の受穴がベースの突起に嵌められており、これにより戸当り部材は起立位置でロックされている。緊急時には、ドアの外側からドアの上縁とドア枠の上枠部との間に手を差し込み、ドアの内側にある戸当り部材をコイルバネに抗して回動軸線方向にスライドさせことにより、上記受穴と突起の嵌め合いを解除し、ドアを外開きする。ロック解除状態の戸当り部材は、上枠部に押されて水平位置へと倒れるので、ドアの外開きの支障とならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-131952号公報
【文献】実用新案登録3083141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の戸当り装置では、戸当り部材をベースに対してスライドさせてベースから取り外す必要があり、作業が煩雑で、緊急時に迅速にドアを外開きすることができない。また、ベースから外した戸当り部材を床に落としたり紛失したりする可能性もある。
特許文献2の戸当り装置は、ドアの外側から見ることができず、しかも緊急時にドア枠とドアの隙間から手を差し込んで戸当り部材をスライド操作してロックを解除する必要があるため、迅速にドアを外開きすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ブースの出入口を画成するドア枠の一方の縦枠部に回動可能に取り付けられたドアに対して、前記出入口を閉じる閉じ位置から前記ブース内への回動を許容し、前記ブース外への回動を禁じる戸当り装置において、
前記ドア枠における上枠部または他方の縦枠部に固定されたベースと、前記ドアの回動軌跡と干渉する規制位置と前記ドアの回動軌跡と干渉しない退避位置との間で回動可能にして前記ベースに連結された戸当り部材と、前記戸当り部材を前記規制位置で前記ベースにロックするとともに、このロック状態を解除する解除操作部を有するロック機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、緊急時に、ドアの外側に配置された戸当り部材を、ロック解除後に規制位置から退避位置へと回動させることにより、ドアを円滑かつ迅速に外開きすることができる。
【0011】
好ましくは、前記ロック機構は、前記ベースに設けられた受部と、前記戸当り部材にスライド可能に支持され、スライド方向の両端部が第1端部と第2端部として提供され、前記第1端部が前記受部と係合した時に前記戸当り部材をロックするロック部材と、前記ロック部材を前記受部に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記ロック部材の前記第2端部が、前記戸当り部材の外側に配置され、前記解除操作部として提供される。
上記構成によれば、解除操作部を付勢部材に抗して引くことにより、簡単に戸当り部材のロック状態を解除でき、より一層迅速にドアの外開きが可能となる。
【0012】
好ましくは、前記ベースには保持突起が形成されており、前記戸当り部材が前記退避位置にある時に、前記ロック部材の前記第1端部が前記保持突起に係止されることにより、前記戸当り部材が前記退避位置に保持される。
上記構成によれば、戸当り部材の退避位置を安定して保持でき、ドアの外開きを円滑に行うことができる。
【0013】
好ましくは、前記戸当り部材が扁平な形状をなし、前記ロック部材は、互いに平行をなしその軸線方向にスライド可能にして前記戸当り部材に支持された一対のスライドシャフトと、前記解除操作部とを備え、前記スライドシャフトには前記付勢部材としての圧縮コイルバネが巻装され、前記ベースには前記受部としての一対の受穴が形成され、この一対の受穴に、前記ロック部材の前記第1端部としての前記一対のスライドシャフトの先端部が、それぞれ嵌まっており、前記解除操作部は、前記戸当り部材において前記ベースとは反対側の端部に沿って延び、前記一対のスライドシャフトの基端部に固定されている。
上記構成によれば、一対のスライドシャフトを用いることにより、安定したロック状態を得ることができ、ドアの閉じ位置への回動時に生じる衝撃に対する強度を高めることができる。
【0014】
好ましくは、前記戸当り部材は、前記ドアと対向する戸当り面に収容凹部を有し、この収容凹部に磁石が配置され、前記戸当り面には緩衝パッド部が配置され、この緩衝パッド部が前記磁石を覆っている。
上記構成によれば、戸当り部材の厚みを増大させることなく磁石によるドアへの吸着機能を発揮することができる。
【0015】
好ましくは、前記ドア枠の前記上枠部の下面に前記ベースが固定され、前記戸当り部材は、垂直に垂れ下がった前記規制位置と水平をなす前記退避位置との間で、前記上枠部に沿って延びる水平の回動軸線を中心にして、前記ベースに回動可能に連結され、前記戸当り部材が前記退避位置にある時、前記ベースと前記戸当り部材が、前記ドアが前記ブース外へ回動する過程における前記ドアの上縁部と、前記上枠部との間の間隙に配置される。

上記構成によれば、ドア枠の上枠部とドアの上縁部との間の間隙を利用して戸当り装置を設置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急時にドアを円滑かつ迅速に外開きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ドア枠と閉じ位置のドア枠を、シャワーブースの内側から見た斜視図である。
図2】ドア枠の上枠部に設置される本発明の第1実施形態に係る戸当り装置と、ドアの上縁部に固定される当て金具とを示す斜視図である。
図3A】閉じ位置のドアが戸当り装置の戸当り部材に当たっている状態を示す側断面図である。
図3B】戸当り部材のロックを解除した状態を示す図3A相当図である。
図3C】戸当り部材が退避位置にある状態を示す図3A相当図である。
図4】戸当り装置をシャワーブースの内側から見た分解斜視図である。
図5】戸当り装置をシャワーブースの内側から見た正面図である。
図6図5のA-A矢視断面図である。
図7図6のB-B矢視断面図である。
図8】戸当り装置の緩衝ユニットと取付金具を、シャワーブースの外側から見た斜視図である。
図9図5のC-C断面図である。
図10A図5のD-D矢視断面図であり、戸当り部材がベースにロックされている状態を示す。
図10B】戸当り部材のロックが解除されて水平退避位置へと回動している途中の状態を示す図10A相当図である。
図10C】戸当り部材が水平退避位置にある状態を示す図10A相当図である。
図11】本発明の第2実施形態を示す図5相当図である。
図12】本発明の第3実施形態を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を、図1図10を参照しながら説明する。図1には、シャワーブースの出入口を画成する金属製のドア枠1と、ガラス製のドア2が示されている。ドア2は、ドア枠1の左右いずれかの縦枠部1aにヒンジ3により回動可能に支持されている。図1ではドア2が出入口を閉じた状態で示されている。ドア2の上縁部には、ドア2の回動軸線の反対側の端部またはその近傍において、当て金具4が取り付けられている。図2図3Aに示すように、当て金具4はコ字形をなし、パッキン5を介してドア2の上縁部に取り付けられている。
【0019】
戸当り装置の概略的な構成と作用
ドア枠1の上枠部1bには、当て金具4に対応した位置に、本願発明の第1実施形態に係る戸当り装置6が設置されている。図2図3A図4に示すように、戸当り装置6は、ドア枠1の上枠部1bの下面に固定されたベース10と、このベース10に回動軸線Lを中心に回動可能に連結された戸当り部材20と、戸当り部材20をベース10にロックするためのロック機構LMと、緩衝ユニット50とを主たる構成要素として備えている。ロック機構LMはロック解除のための解除操作部32を含む。回動軸線Lは上枠部1bの長手方向に水平に延びている。各構成要素の詳細な構造については後述する。
【0020】
図3Aに示すように、通常使用状態では、戸当り部材20は垂直に垂れ下がった規制位置でロックされている。ドア2が閉じ位置にある時、ドア2の上縁部の当て金具4が、戸当り部材20に緩衝ユニット50の緩衝パッド部55(後述する)を介して当たっており、これにより、ドア2は外開き(シャワーブースの外側への回動)を禁じられ、内開き(シャワーブースの内側への回動)のみ許容される。
【0021】
利用者がシャワーブース内で体調に異常をきたして倒れ、この利用者が障害となってドア2が開かない場合には、シャワーブースの外側の救助者は、図3Bにおいて矢印で示すように解除操作部32を手で掴んで下方に引くことにより、ロック機構LMによる戸当り部材20のロック状態を解除し、戸当り部材20を上方に回動して図3Cに示すように水平の退避位置にする。これにより、ドア2を矢印で示すように外開きすることができ、利用者を救助することができる。このように、簡単なロック解除操作により迅速にドア2を外開きすることができる。なお、戸当り部材20が水平の退避位置にある時、戸当り装置6の上下方向の厚みT、すなわちベース10の上面と戸当り部材20の下面(本実施形態では緩衝ユニット50の下面)との間の厚みが、上枠部1bとドア2の上縁部(本実施形態では当て金具4の上面)との間の間隙Dより小さいので、ドア2の外開きの際に戸当り装置6はドア2と干渉しない。
【0022】
戸当り装置の詳細な構造
上記戸当り装置6の各構成要素を詳細に説明する。
図2図3A図4に示すように、ベース10は、上枠部1bの長手方向に沿って延びており、長手方向と直交する方向に隣接する平板形状の固定部11と断面略四角形の支持部12とを有している。固定部11と支持部12の上面は面一をなし、支持部12は固定部11より下方に突出している。固定部11には上下方向に貫通するビス穴11aが長手方向に間隔をおいて形成されており、支持部12の長手方向中央にも上下方向に貫通するビス穴12aが形成されている。上記ビス穴11a,12aを通るビス(図示しない)をドア枠1の上枠部1bの下面に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、ベース10が上枠部1bに固定されている。この固定状態において、固定部11は、閉じ位置にあるドア2の上方に配置されている。支持部12は、閉じ位置にあるドア2より外側に配置されている。
【0023】
図4図7に示すように、ベース10の支持部12の長手方向両端面には軸受穴14が形成されており、支持部12の下面にはテーパをなす一対の受穴15(受部)が形成されている。図3A図10Aに示すように、支持部12の外側の面には、その下縁に沿って延びる保持突起16が形成されている。
【0024】
図4に示すように、戸当り部材20は、扁平で横長の長方形をなしており、上枠部1bの長手方向に延びている。戸当り部材20の長手方向寸法は、ベース10の長手方向寸法より大きく、その厚みは、ベース10の支持部12の上下方向の厚みと同程度かこれより薄い。
【0025】
以下、戸当り部材20の構造を、垂直に垂れ下がった規制位置を基準にして説明する。図4に示すように、戸当り部材20の上面には、長手方向両端部から上方に突出する一対の凸部21が形成されている。凸部21には軸受穴22が形成されている。図5図7に示すように、一対の凸部21間に上記ベース10の支持部12が挿入され、凸部21の軸受穴22とベース10の軸受穴14とに軸部材29が挿入されることにより、戸当り部材20は回動軸線Lを中心に回動可能にしてベース10に連結されている。
【0026】
戸当り部材20の内側の面20a(ドア2と対向する戸当り面)には、横長の長方形をなす収容凹部23が形成されており、この収容凹部23の長手方向両側には、収容凹部23の奥面から隆起した取付部24が形成されている。取付部24は、戸当り面20aから後退している。
【0027】
戸当り部材20には、ロック機構LMが装着されている。図4図7図10Aに示すように、ロック機構LMは、ロック部材30と、このロック部材30を付勢する圧縮コイルバネ35(付勢部材)とを有している。ロック部材30は、一対のスライドシャフト31と、解除操作部32(ロック部材30の第2端部)とを有している。スライドシャフト31は、テーパをなす先端部31a(ロック部材30の第1端部)を有している。スライドシャフト31の径は、この先端部31aから下方に向かって段階的に小さくなっている。スライドシャフト31の大径部31bが戸当り部材20の収容凹部23の上壁に形成された貫通穴23aを挿通し、の中間径部31cが収容凹部23の下壁に形成された貫通穴23bを挿通しており、これにより、スライドシャフト31はその軸線方向にスライド可能に支持されている。
【0028】
スライドシャフト31の中間径部31cは戸当り部材20の収容凹部23に配置されており、この中間径部31cにはコイルバネ35が巻かれている。コイルバネ35は、スライドシャフト31の大径部31bと中間径部31cの段差と、収容凹部23の下壁との間に圧縮状態で配置され、スライドシャフト31を上方に付勢している。これにより、スライドシャフト31の先端部31aがベース10の受穴15に挿入され、戸当り部材20は、垂直に垂れ下がった規制位置で、回動を禁じられている(ロックされている)。
【0029】
図4図5図7に示すように、解除操作部32は、細長い形状をなし戸当り部材20の下面に沿って延びており、一対のスライドシャフト31に固定されている。詳述すると、解除操作部32の一対の貫通穴32aには、それぞれスライドシャフト31の小径基端部31dが貫通している。小径基端部31dはワッシャ33を介してかしめられている。貫通穴32aの上端に、スライドシャフト31の中間径部31cと小径基端部31dの段差が係止され、貫通穴32aの下端にワッシャ33が係止されることにより、解除操作部32は、スライドシャフト31に固定されている。
【0030】
図6図9に示すように、戸当り部材20の取付部24には、支持板60を介して緩衝ユニット50が取り付けられている。緩衝ユニット50は、磁石51とヨーク52を磁力で接合して金型内に配置し他状態で弾性材料(シリコーン等)を射出成形(インサート成形)することにより得られる。弾性材料による成形部は、戸当り面20aを覆う平板形状の緩衝パッド部55と、この緩衝パッド部55の裏面の長手方向中央部から突出し、磁石51とヨーク52を包む包囲部56と、緩衝パッド部55の裏面の長手方向両端縁から突出する係止爪部57とを有している。
【0031】
支持板60は、戸当り部材20の長手方向に延びており、中央のコ字形をなす収容部61と、この収容部61の両端から同一平面に沿って延びる一対の固定部62とを有している。この収容部61に緩衝ユニット50の包囲部56を介して磁石51とヨーク52を収容した状態で、収容部61に形成された貫通穴61aと包囲部56に形成された貫通穴を貫通するビス65を、ヨーク52のネジ穴52aにねじ込むことにより、緩衝ユニット50が支持板60に固定されている。
【0032】
緩衝ユニット50を固定した支持板60は、戸当り部材20の取付部24に固定される。具体的には、図6に想像線で示すように、緩衝パッド部55の端部を一時的にめくって支持板60の固定部62を露出させた状態で、固定部62の貫通穴62aを通るビス66を取付部24のネジ穴24aにねじ込むことにより、支持板60が取付部24に固定され,ひいては緩衝ユニット50が取付部24に固定される。最後に、緩衝パッド部55の端部を押し込んで、係止爪部57を支持板60の固定部62の端縁に係合させる。緩衝ユニット50は戸当り部材20の一部として提供される。
【0033】
上記緩衝ユニット50の装着状態において、取付板60の収容部61と緩衝ユニット50の磁石51およびヨーク52が、扁平な戸当り部材20の収容凹部23に収容され、一対のスライドシャフト31間に配置されるので、戸当り部材20の厚みの増大を招かない。取付板60の固定部62は、戸当り部材20の戸当り面20aと面一をなしている。緩衝パッド部55は、戸当り面20aと取付板60の固定部62と磁石51を覆っている。
【0034】
戸当り装置の詳細な作用
図7図10Aに示すように、スライドシャフト31がコイルバネ35により上方に付勢され、その先端部31aがベース10の受穴15に嵌っているため、戸当り部材20は垂直に下垂れ下がった規制位置でロックされている。一対のスライドシャフト31を用いることにより、安定したロック状態を得ることができ、このロック状態では、スライドシャフト31に固定された解除操作部32は、戸当り部材20の下面に近接した位置にある。
【0035】
ドア2は、戸当り部材20に規制されているため、内開きのみ許容され、外開きを禁じられている。図3A参照。
ドア2が内開き位置から閉じ位置に向かって回動して戸当り部材20に当たった時には、緩衝パッド部55により衝撃を減じられる。また、一対のスライドシャフト31を用いることにより、この衝撃に対する強度を高めることができる。緩衝パッド部55の裏側には磁石51が配置されていて、当て金具4を引き付けるため、ドア2は閉じ位置を安定して維持される。
【0036】
緊急時、例えばシャワーブース内で利用者が倒れ、ドア2の内開きが困難になった時には、シャワーブースの外側の救助者が図3B図10Bに示すように解除操作部32を手で掴み、コイルバネ35に抗して解除操作部32を下方に引く。これにより、スライドシャフト31の先端部31aがベース10の受穴15から離脱するので戸当り部材20のロックが解除される。
【0037】
次に、戸当り部材20を図10Bに示すように上方に回動させる。この際、スライドシャフト31の先端部31aの端面がベース10の支持部12の下縁部に当たるので、解除操作部32から手を離してもよい。
図3C図10Cに示すように、戸当り部材20が水平をなす退避位置に達すると、スライドシャフト31の先端が保持突起16を超えるため、クリック音とともにスライドシャフト31の先端部31aがベース10の支持部12の外側の面に当たる。スライドシャフト31は保持突起16に係止されて、水平の退避位置から下方への回動を禁じられ、この退避位置で保持されるので、救助者は戸当り部材20から手を放して、ドア2を外側に開くことができる。
【0038】
第2実施形態
図11は、本発明の第2実施形態を示す。本実施形態のロック部材30’は、1本のコ字形をなす棒材により構成され、一対のスライドシャフト31と、これらスライドシャフト31と一体をなして固定された解除操作部32とを備えている。これにより、ロック部材30’の構成を簡略化で、製造コストを低減することができる。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
第2実施形態
図12は、本発明の第3実施形態を示す。本実施形態ではシャワーブースの壁の一部がガラスで構成されている。このガラス製の壁7の垂直をなす縁部7aが、ドア枠の縦枠部として提供されている。ドア2は、閉じ位置においてこのガラス製の壁7と同一平面上に配置され、垂直をなす側縁部2a(ヒンジの反対側の側縁部)がガラス製の壁7の縁部7aと近接する。この側縁部2aに第1実施形態と同様の当て金具4が装着されている。
【0040】
本実施形態の戸当り装置8は、第1実施形態の戸当り装置6と基本構造は同様であるので、図中同番号を付してその詳細な説明を省略するとともに、図示しない構成部の説明では第1実施形態の符号を用いて説明する。異なる点は下記の通りである。
ベース10が、ガラス製の壁7の縁部7aの外側に配置され、この縁部7aの内側には裏板9が配置されている、ベース10と壁7を貫通するボルト(図示しない)を裏板9のネジ穴にねじ込むことにより、ベース10が壁7に固定されている。
【0041】
戸当り部材20は、垂直に延びる回動軸線Lを中心に回動可能である。戸当り部材20は、ドア2の外開きを禁じる規制位置において、ベース10の固定部11と略平行である。ベース10の支持部12の側面(図中左側の側面)にスライドシャフト31を受け入れる受穴15が形成されている。
【0042】
本発明は、上記実施形態に制約されず、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、シャワーブースに限らずトイレブースの出入口を画成するドア枠に戸当り装置を設置してもよい。
ロック部材は、一対のスライドシャフトを有さず、例えば扁平な部材により形成してもよい。この場合、戸当り部材の外側に突出した端部(第2端部)が解除操作部として提供される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、内開き式のドアを規制する戸当り装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ドア枠
1b 上枠部
7a ガラス製の壁の縁部(ドア枠の縦枠部)
2 ドア
6、8 戸当り装置
10 ベース
15 受穴(受部)
20 戸当り部材
23 収容凹部
30 ロック部材
31 スライドシャフト
31a 先端部(ロック部材の第1端部)
31d 小径基端部
32 解除操作部(ロック部材の第2端部)
35 コイルバネ(付勢部材)
51 磁石
55 緩衝パッド部
L 回動軸線
LM ロック機構
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12