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特許7438051光音響センサ、光音響センサの校正方法、及び空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】光音響センサ、光音響センサの校正方法、及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/036 20060101AFI20240216BHJP
   G01N 21/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G01N29/036
G01N21/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020130220
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026652
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高武 直弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】森 雄二
(72)【発明者】
【氏名】川村 邦人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 洋
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184419(JP,A)
【文献】特表2013-510293(JP,A)
【文献】特開2010-025421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0225190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0109080(US,A1)
【文献】特開2019-124488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成し測定されるガスを貯留するセンサセルと、前記センサセル内の前記ガスに光を照射する光源と、前記光源を断続的に発光させる光源駆動手段と、前記センサセル内の特定ガスの音響波を検出するマイクロフォンと、前記マイクロフォンで検出された音響波を信号処理する信号処理手段と、少なくとも、前記光源駆動手段に駆動信号を与える光源駆動機能、及び前記信号処理手段からの信号に基づいて前記特定ガスの種類を推定するガス推定機能を実行する制御手段を備え、
前記制御手段の前記ガス推定機能は、前記音響波の周波数と前記ガスの温度情報を用いて前記特定ガスの平均分子量を求め、求められた前記平均分子量から前記特定ガスの種類を推定するものであって、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
fr∝c=(κRT/M)1/2 (ここで、「fr」を前記音響波の周波数、「c」を周波数frと比例関係にある音速、「κ」を前記ガスの比熱比、「R」を前記ガスのガス定数、「T」を前記ガスのガス温度、「M」を前記特定ガスの前記平均分子量とする)
で定義された演算式から前記平均分子量が求められる演算式に変形した演算式で、前記音響波の周波数と前記温度情報を用いて前記平均分子量を求めると共に、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記平均分子量と前記特定ガスの種類の関係が記憶されたテーブルから、求められた前記平均分子量に対応する前記特定ガスの種類を推定する
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光音響センサであって、
前記制御手段の前記光源駆動機能においては、
前記光源駆動手段の駆動周波数を変化させて前記光源を断続的に発光させ、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記マイクロフォンによって検出された前記音響波の出力強度が最大となるピーク周波数を探索し、前記平均分子量を求めるための前記音響波の周波数として前記ピーク周波数を使用する
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の光音響センサであって、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記音響波の前記ピーク周波数の強度から前記特定ガスのガス濃度を推定する
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の光音響センサであって、
前記ガスの前記温度情報は、外部に設けられた温度検出手段から通信手段を介して取得されているか、または、前記光源駆動手段、前記信号処理手段、及び前記制御手段が実装されている回路基板に設けられた測温素子から取得されている
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の光音響センサであって、
前記ガスの前記温度情報は、通信手段を介して外部から送られてくる設定温度情報に基づいている
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項6】
内部空間を形成し測定されるガスを貯留するセンサセルと、前記センサセル内の前記ガスに光を照射する光源と、前記光源を断続的に発光させる光源駆動手段と、前記センサセル内の特定ガスの音響波を検出するマイクロフォンと、前記マイクロフォンで検出された前記音響波を信号処理する信号処理手段と、少なくとも、前記光源駆動手段に駆動信号を与える光源駆動機能、及び前記信号処理手段からの信号に基づいて前記特定ガスの種類を推定するガス推定機能を実行する制御手段を備え、
前記制御手段の前記ガス推定機能は、前記音響波の周波数と前記ガスの温度情報を用いて前記特定ガスの平均分子量を求め、求められた平均分子量から前記特定ガスの種類を推定するものであって、
前記光源は既知の前記ガスのガス成分を検出するための既知ガス光源を備え、また、前記光源駆動手段は前記既知ガス光源を駆動する既知ガス光源駆動手段を備え、
前記ガスの前記温度情報は、前記制御手段の前記ガス推定機能によって前記音響波の周波数と既知の前記ガスの前記平均分子量を用いて求められた前記温度情報である
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の光音響センサであって、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
fr∝c=(κRT/M) 1/2 (ここで、「fr」を前記音響波の周波数、「c」を周波数frと比例関係にある音速、「κ」を前記ガスの比熱比、「R」を前記ガスのガス定数、「T」を前記ガスのガス温度、「M」を前記ガスの平均分子量とする)
で定義された演算式から前記温度情報が求められる演算式に変形した演算式で、前記音響波の周波数と前記平均分子量を用いて前記温度情報を求める
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項8】
内部空間を形成し測定されるガスを貯留するセンサセルと、前記センサセル内の前記ガスに光を照射する光源と、前記光源を断続的に発光させる光源駆動手段と、前記センサセル内の特定ガスの音響波を検出するマイクロフォンと、前記マイクロフォンで検出された前記音響波を信号処理する信号処理手段と、少なくとも、前記光源駆動手段に駆動信号を与える光源駆動機能、及び前記信号処理手段からの信号に基づいて前記特定ガスの種類を推定するガス推定機能を実行する制御手段を備え、
前記制御手段の前記ガス推定機能は、前記音響波の周波数と前記ガスの温度情報を用いて前記特定ガスの平均分子量を求め、求められた平均分子量から前記特定ガスの種類を推定するものであって、
前記光源、及び前記光源駆動手段は、一対の同じ前記光源、及び同じ前記光源駆動手段を有する共に、一対の前記光源、及び前記光源駆動手段の間には、一対の電流測定手段が備えられており、
前記制御手段には、一対の前記電流測定手段で測定された夫々の平均電流値の差分が、
所定の予め定めた差分閾値と乖離していた場合には、警報を発生する警報発生機能が備えられている、
或いは、前記マイクロフォンは、一対の同じ前記マイクロフォンが備えられており、
前記制御手段には、一対の前記マイクロフォンで測定された夫々の前記音響波の強度の差分が、所定の予め定めた差分閾値と乖離していた場合には、警報を発生する警報発生機能が備えられている
ことを特徴とする光音響センサ。
【請求項9】
内部空間を形成し測定されるガスを貯留するセンサセルと、前記センサセル内の前記ガスに光を照射する光源と、前記光源を断続的に発光させる光源駆動手段と、前記センサセル内の特定ガスの音響波を検出するマイクロフォンと、前記マイクロフォンで検出された前記音響波を信号処理する信号処理手段と、少なくとも、前記光源駆動手段に駆動信号を与える光源駆動機能、及び前記信号処理手段からの信号に基づいて前記特定ガスの種類を推定するガス推定機能を実行する制御手段を備えた光音響センサの校正方法であって、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記音響波の周波数と前記ガスの温度情報に基づいて前記特定ガスの平均分子量を求めるステップと、
求められた前記平均分子量から前記特定ガスの種類を推定するステップを実行し、
更に、前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
fr∝c=(κRT/M)1/2 (ここで、「fr」を前記音響波の周波数、「c」を周波数frと比例関係にある音速、「κ」を前記ガスの比熱比、「R」を前記ガスのガス定数、「T」を前記ガスのガス温度、「M」を前記特定ガスの前記平均分子量とする)
で定義された演算式から前記平均分子量が求められる演算式に変形した演算式で、前記音響波の周波数と前記温度情報を用いて前記平均分子量を求めるステップを実行し、
前記制御手段の前記光源駆動機能においては、
前記光源駆動手段の駆動周波数を変化させて前記光源を断続的に発光させるステップを実行し、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記マイクロフォンによって検出された前記音響波の出力強度が最大となるピーク周波数を探索し、前記平均分子量を求める前記音響波の周波数として前記ピーク周波数を使用するステップを実行し、
前記制御手段の前記ガス推定機能においては、
前記音響波の前記ピーク周波数の強度から前記特定ガスのガス濃度を推定するステップを実行する
ことを特徴とする光音響センサの校正方法。
【請求項10】
建築物の住環境である室内空気の空気品質を制御するための空調システムであって、前記空調システムは、中央管理手段と、前記中央管理手段によって制御される空調手段、及び空気品質調整手段とを備え、前記中央管理手段は、前記空気品質を制御するため前記室内空気のガス成分を検出する光音響センサと接続され、前記中央管理手段は、前記光音響センサの出力に基づいて前記空調手段、及び前記空気品質調整手段を制御すると共に、
前記光音響センサは、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載された前記光音響センサである
ことを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体(ガス)の成分を検出する光音響センサ、光音響センサの校正方法、及び空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に事務所や商業施設、或いは工場等においては、住環境である室内空気の温度や湿度の制御が行われている。しかしながら、最近では温度や湿度の制御だけではなく、有害なガスや嫌な匂いの除去、更には芳香等の付加といった、空気品質を制御する要求が高まっている。
【0003】
この空気品質を制御するには、ガス濃度や匂い濃度の適切な制御が必要であり、目的に応じたガス成分や匂い成分を検知するガスセンサが必要である。ガス成分や匂い成分を検出するセンサとして、光音響効果を用いた光音響センサが提案されている。
【0004】
光音響効果は、ガスを構成する特定成分の分子に対して、特定の波長の光を断続的(パルス状)に照射すると、光を吸収した分子が熱膨張、及び収縮を行うことで音響波(音波)が発生する現象である。光音響センサは、小型で低濃度ガスを高感度に検出が可能なため、建築物の空調システムでの適用が進められている。尚、光音響センサは空調システムだけでなく、他の分野でも適用できるが、以下では空調システムの適用例を説明する。
【0005】
光音響センサは、セルと呼ばれる閉鎖された空間を形成する筐体に測定ガスを封入し、光をパルス状に照射して音響波を発生させ、この音響波のピーク周波数(強度が最大となる周波数)からガス成分を特定するようにしている。尚、空調システムに用いる光音響センサでは、セルの外側の空気(室内空気)をセル内に循環させるために、少なくとも1個以上の接続孔をセルに形成している。
【0006】
しかしながら、光音響効果で発生する音響波のピーク周波数は、測定ガスの温度に依存する傾向にあるため、室内の空気温度が変化すると、ガス成分の種類の推定に誤りが生じる恐れがあり、このため温度依存性を補償することが求められている。
【0007】
このような要請に応える技術として、例えば、特表2001-507798号公報(特許文献1)においては、ガス成分の種類と濃度が既知のガスを用いることで、未知のガスの濃度演算の補正を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2001-507798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1では、種類と濃度が既知のガスを用いることで、未知のガスの濃度計算の補正を行うようにしているが、既知のガスを準備できないと、ガスの種類の推定やガス成分の濃度が測定できないといった課題や、経年劣化で既知のガスが漏洩した場合に、ガスの種類の推定やガス成分の濃度の演算の精度が低下するといった課題を有している。このため、特許文献1のような光音響センサでは、既知のガスのメンテナンスが必要であり、例えば、空調システムに採用するのは得策ではない。
【0010】
本発明の目的は、既知のガス等を使用することなく、少なくともガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができる新規な光音響センサ、光音響センサの校正方法、及び空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部空間を形成し測定されるガスを貯留するセンサセルと、センサセル内のガスに光を照射する光源と、光源を断続的に発光させる光源駆動手段と、センサセル内の特定ガスの音響波を検出するマイクロフォンと、マイクロフォンで検出された音響波を信号処理する信号処理手段と、少なくとも、光源駆動手段に駆動信号を与える光源駆動機能と、信号処理手段からの信号に基づいて特定ガスの種類を推定するガス推定機能を実行する制御手段を備え、制御手段のガス推定機能は、音響波の周波数とガスの温度情報を用いて特定ガスの平均分子量を求め、求められた平均分子量から特定ガスの種類を推定する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、既知のガス等を使用することなく、ガス成分の種類の推定を温度に依存しないで正確に行うことができる。尚、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用される空調システムのシステム図である。
図2】平均分子量とガス成分を関係付けたテーブルの構成を説明する説明図である。
図3図1に示す空調システムで実行される第1の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャート図である。
図4図1に示す空調システムで実行される第2の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャート図である。
図5】音響波の強度とガス成分の濃度を関係付けたテーブルの構成を説明する説明図である。
図6図1に示す空調システムで実行される第3の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャート図である。
図7】本発明の第4の実施形態になる空調システムのシステム図である。
図8図7に示す空調システムで実行される第4の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャート図である。
図9】本発明の第5の実施形態になる空調システムのシステム図である。
図10図9に示す空調システムで実行される第5の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャート図である。
図11】本発明の第6の実施形態になる空調システムのシステム図である。
図12】本発明の第7の実施形態になる空調システムのシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略、及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【実施例1】
【0015】
先ず、図1、及び図2を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。ここで、図1は、本発明が適用される空調システムを示し、図2は、図1に示す空調システムで実行される第1の実施形態になるガス成分の推定方法を説明するフローチャートを示している。
【0016】
図1に示す空調システムにおいて、空調機(空調手段)10は、センサ群11からのセンサ情報を受信し、この受信信号に基づいて空調動作を実行する機能を備えている。センサ群11は、居住空間の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)、居住空間のCO濃度を検出するCOセンサ、及び居住空間を漂う粉塵を検出する粉塵センサ等の環境センサや、居住者の心拍数を検出する心拍センサ、居住者の体温を検出するサーモパイル等の人感センサから構成されている。
【0017】
また、空調機10は、サーバ等から構成される中央管理装置(中央管理手段)12と無線、或いは有線で接続されており、空調機10から稼動情報、センサ情報等を中央管理装置12に送信している。更に、中央管理装置12は、空調機10の操作信号や制御信号を空調機10に送信している。
【0018】
そして、空調機10には、本実施形態の特徴である光音響センサ13が無線、或いは有線で接続されている。光音響センサ13は、事務所や商業施設、或いは工場等の任意の場所に設置することができる。更には、図面に示していないが、空調機10自体に設けることも可能である。
【0019】
光音響センサ13は少なくとも、内部空間を形成し測定されるガス(ここでは空気)を貯留するセンサセル14と、このセンサセル14内のガス(空気)に光を照射する光源A15~光源N17と、センサセル14内の空気の音響波を検出するマイクロフォン18と、センサセル14内の内部空間と外部空間を接続する少なくとの2つの接続孔19とを備えている。2つの接続孔19は、上述したようにセンサセル14内に空気を循環させるために設けられている。
【0020】
光源A15~光源N17の光は、センサセル14に形成した光入射部から内部空間に向けて照射される。光源A15~光源N17は種々の光源を利用でき、例えば、半導体レーザ、ガスレーザ、LED等の光源を利用できる。製造コスト等を考慮して本実施形態ではLEDを使用している。これらの光源A15~光源N17は、断続的(パルス状)に発光して、センサセル14内に貯留された空気に光エネルギを与える構成とされている。これによって、センサセル14内の測定すべき特定ガス成分が熱膨張、収縮を繰り返して音響波を発生する。
【0021】
光源A15~光源N17から照射される光の波長は、測定すべき特定ガス成分によって決められており、本実施形態ではN個のガス成分を検出するように、N個の光源A15~光源N17が備えられている。本実施形態ではLEDを用いているので、所定の波長を透過させる光フィルタを使用して、所望の波長を得るようにしている。
【0022】
光源A15~光源N17は、断続的に発光してセンサセル14内に貯留された空気に光エネルギを与えることから、駆動回路(光源駆動手段)A20~駆動回路(光源駆動手段)N22によってパルス的に発光を制御されている。また、駆動回路A20~駆動回路N22は、マイクロフォン18によって検出される音響波の強度が最大になるピーク周波数を求める(探索する)ために、周波数を所定の範囲で変更(スイープ)するように制御される。
【0023】
このため、駆動回路A20~駆動回路N22は、制御回路部(制御手段)23によって決められた周波数で駆動される。制御回路部23は、マイクロコンピュータ、入出力回路等から構成されており、マイクロコンピュータに内蔵されたROMに記憶された制御ソフトウェアによって所定の機能を実行するものである。
【0024】
例えば、少なくとも、上述した駆動回路A20~駆動回路N22の周波数を変更する機能(光源駆動機能)、及び音響波からガス成分の種類や濃度を求める機能(ガス推定機能)等を実行する。音響波からガス成分の種類や濃度を求める方法については後述する。
【0025】
尚、以下では駆動回路A20と光源A15について説明するが、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22と光源B16~光源N17についても同様の動作を行うものである。
【0026】
マイクロフォン18で検出される、光源A15の断続的な発光によって発生した音響波は、検出回路部24で電気信号に変換され、更に信号処理部(信号処理手段)25でノイズを除去されると共に、増幅されて制御回路部23に送信される。制御回路部23では、音響波の強度が最大になるピーク周波数から、このピーク周波数を生じさせる駆動回路A20の駆動周波数を求める。
【0027】
つまり、光源A15の発光周波数と音響波の周波数はほぼ一致するので、より正確な周波数を求めるために駆動回路A20の駆動周波数を求めている。この駆動周波数は制御回路部23が自ら発生しているので、この駆動周波数を求めれば良い。この音響波の強度が最大となるピーク周波数、及び強度は、メモリ(記憶手段)26に一時的に記憶される。メモリ26は、書き換え可能なメモリであり、電池バックアップされたRAM、フラッシュROM、マイクロコンピュータのRAM等のメモリを使用することができる。
【0028】
更に、光音響センサ13は、空調機10と無線、或いは有線で接続された通信部(通信手段)27を有しており、センサ群11の温度センサで検出された外気(ガス)の温度情報が、空調機10を介して光音響センサ13に取り込まれている。取り込まれた温度情報はメモリ26に一時的に格納される。
【0029】
尚、空調機10には、自身の制御のために温度センサを備えているものが多く、この空調機10の温度センサを使用して温度情報を検出することもできる。また、温度情報は、光音響セセンサ13の測定開始時、または所定周期毎に空調機10、或いはセンサ群11から取得されている。
【0030】
一方、制御回路部23で求められたガス成分とその濃度は、通信部27から空調機10に送られ、更には中央管理装置12に送られる。中央管理装置12は送られてきたガス成分とその濃度に対応して、空調機10、及び匂い吸着装置、集塵装置、オゾン脱臭装置、芳香付加装置等の空気品質調整装置(空気品質調整手段)28を制御する。尚、空調機10に、空気品質調整装置28の機能を持たせることもできる。
【0031】
そして、制御回路部23においては、メモリ26に記憶された駆動回路A20の駆動周波数、及び空気の温度情報から、測定すべき特定ガス成分の平均分子量を求め、求められた平均分子量から特定ガス成分の種類を推定する演算を実行する。具体的には、マイクロコンピュータで、以下に示す演算を実行して平均分子量を求めている。
【0032】
センサセル14の音響波の共鳴周波数(fr)は以下の(1)式で表すことができる。気体中においては、音速は一般的に比熱比、平均分子量、温度に依存する。ここで、「c」を音速、「κ」をセンサセル14に貯留されているガスの比熱比、「R」をセンサセル14に貯留されているガスのガス定数、「T」をセンサセル14に貯留されているガスのガス温度、「M」をセンサセル14に貯留されている特定ガスの平均分子量と定義すると、共鳴周波数(fr)と比例関係にある音速(c)は
fr∝c=(κRT/M)1/2……(1)
と表される。
【0033】
例えばセンサセル14が、検出セル(光源側)、及びこれにダクトを介して接続された共鳴セル(マイクロフォン側)の組み合わせから構成されている場合、「fr∝c」は、
fr=cd/4π・((π(V1+V2)/LV1V2))1/2 ……(2)
で表される。ここで、「d」は ダクト径、「L」はダクト長、「V1」は 検出セル体積、「V2」は共鳴セル体積である。
【0034】
尚、右辺の音速(c)以外は、係数として取り扱うことができ、これはセンサセル14の構成に基づいて予め求めておくことができる。
【0035】
したがって、共鳴周波数(fr)から(2)式を用いて音速(c)を算出することができる。更に、平均分子量(M)を求めるために(1)式を「所定の演算式」(M=κRT/c)に変形し、これに音速(c)と温度(T)を代入して平均分子量(M)を求めることができる。
【0036】
尚、(2)式はセンサセル14として、検出セルと共鳴セルを組み合わせた場合を示したものであるが、センサセル14が検出セルだけの場合や、共鳴セルが2個の場合等もある。この場合は(2)式の係数部分をこれに合わせて修正すればよく、要は共鳴周波数(fr)から音速(c)が求まれば良いものである。
【0037】
このように、本実施形態ではメモリ26に記憶されている、共鳴周波数に対応する光源の駆動周波数(fr)と空気の温度情報(T)とから平均分子量(M)を求めるようにしている。つまり、上述した(1)式を、平均分子量(M)が求められる「所定の演算式」に変形し、この所定の演算式から駆動周波数(f)と空気の温度情報(T)を用いて、温度依存性が補償された平均分子量(M)を求めることができる。
【0038】
そして、求められた平均分子量(M)からガス成分の種類が推定される。推定方法は、例えば、図2に示すように、ガス成分A~Nとこれに対応する平均分子量A~Nをテーブル化しておき、求められた平均分子量(M)から対応するガス成分を検索することで、平均分子量(M)からガス成分の種類を推定することができる。
【0039】
以上のような構成によって、ガス成分の種類の推定を温度に依存しないで正確に行うことができる。尚、本実施形態ではガス成分の濃度は推定していない。ガス成分の濃度を推定する方法は、以下の実施例2で説明する。
【0040】
次に、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される具体的な制御フローを図3に基づき説明する。図3に示す制御フローは、時間的な割込みによって起動されるものであり、例えば、コンペアマッチタイマによる割り込み発生で実行される。ここで、ステップS11以降が、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される制御ステップである。
【0041】
≪ステップS10≫
ステップS10においては、空調機10、またはセンサ群11の温度センサによって温度情報を検出する。この温度センサによる温度情報は室内を循環している空気の平均空気温度を表している。平均空気温度を求めるのは、一時的な温度の変化を検出しないようにして、平均分子量(M)の演算に誤差が生じないようにするためである。温度情報が得られるとステップS11に移行する。
【0042】
≪ステップS11≫
ステップS11においては、ステップS10で得られた温度情報が、光音響センサ13の通信部27を経由して取り込まれ、この受信した温度情報はメモリ26の所定領域に保存される。記憶された温度情報は、少なくとも後述するガス成分が求められるまで保持されている。温度情報が記憶されるとステップS12に移行する。
【0043】
≪ステップS12≫
ステップS12においては、光源A15~光源N17を駆動する駆動回路A20~駆動回路N22の動作が完了したかどうかが判断される。つまり、駆動回路A20~駆動回路N22の動作は順番に実行され、これに対応して音響波の検出が行われるので、駆動回路A20~駆動回路N22の動作が完了したことは音響波の検出が完了し、ガス成分の推定が完了したことを意味している。
【0044】
したがって、すべての駆動回路A20~駆動回路N22の動作が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。
【0045】
一方、すべての駆動回路A20~駆動回路N22の動作が完了していないと判断されると、ステップS13に移行して、ガス成分の推定処理を継続する。尚、以下に説明する推定処理は、駆動回路A20を駆動した時の処理である。これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22を駆動した時のガス成分の推定処理は、駆動回路Aと実質的に同じ推定処理であるので、説明を省略する。
【0046】
≪ステップS13≫
ステップS13においては、一定の速度で駆動回路A20の駆動周波数を変化させて(スイープさせて)、マイクロフォン18によって音響波を測定する。この動作を繰り返しながら、音響波の出力強度が最大となるピーク周波数を探索する。このピーク周波数が、測定するガス成分が最も反応する周波数となる。
【0047】
尚、駆動回路A20の駆動周波数と音響波のピーク周波数は、実質的に対応しているので、この時の駆動回路A20の駆動周波数をピーク周波数として決定する。ピーク周波数が求まるとステップS14に移行する。
【0048】
≪ステップS14≫
ステップS14においては、ステップS13で探索したピーク周波数は、メモリ26の所定領域に保存される。記憶されたピーク周波数は、少なくとも後述するガス成分が求められるまで保持されている。ピーク周波数が記憶されるとステップS15に移行する。
【0049】
≪ステップS15≫
ステップS15においては、メモリ26に記憶された温度情報とピーク周波数を用いて平均分子量(M)を演算する。具体的には、上述した(1)式を、平均分子量(M)が求められる「所定の演算式」に変形し、この所定の演算式にピーク周波数と温度情報を用いることで、温度依存性が補償された平均分子量(M)を求めることができる。平均分子量(M)が求められるとステップS16に移行する。
【0050】
≪ステップS16≫
ステップS16においては、ステップS15で求められた平均分子量(M)からガス成分の種類を推定する。この推定は、上述したように、ガス成分A~Nとこれに対応する平均分子量A~Nをテーブル化しておき、求められた平均分子量(M)から対応するガス成分をテーブルルックアップすることで、平均分子量(M)からガス成分の種類を推定することができる。尚、テーブルルックアップによる手法とは別に、機械学習を用いてガス成分の種類を推定することもできる。
【0051】
そして、ガス成分の推定が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。一方、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22の動作によるガス成分の推定は、上述したステップS13~S16を実行することによって行うことができる。
【0052】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態を図4に基づき説明する。本実施形態では、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を求めている点で、第1の実施形態と異なっている。尚、図3に示す制御ステップと同じ制御ステップの説明は省略する。ここで、本実施形態の空調システムは図1に示すシステムと基本的に同じである。
【0054】
図4に示す制御フローも、時間的な割込みによって起動されるものであり、例えば、コンペアマッチタイマによる割り込み発生で実行される。ここで、ステップS11以降が、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される制御ステップである。
【0055】
≪ステップS10≫ ~ ≪ステップS13≫
ステップS10~ステップS13の制御ステップは、図3に示す制御ステップと同じであるので説明は省略する。そして、ステップS13まで実行するとステップS14Aに移行する。
【0056】
≪ステップS14A≫
ステップS14Aにおいては、ステップS13で探索したピーク周波数と、この時の音響波の強度が、メモリ26の所定領域に保存される。記憶されたピーク周波数、及び強度は、少なくとも後述するガス成分が求められるまで保持されている。ピーク周波数が記憶されるとステップS15に移行する。
【0057】
≪ステップS15≫ ~ ≪ステップS16≫
ステップS15~ステップS16の制御ステップは、図3に示す制御ステップと同じであるので説明は省略する。そして、ステップS15~ステップS16を実行するとステップS17に移行する。
【0058】
≪ステップS17≫
ステップS17においては、ステップS14Aで求められた音響波の強度からガス成分の濃度を推定する。この濃度の推定は、音響波の強度とこれに対応する濃度をテーブル化しておき、求められた強度から対応するガス成分の濃度をテーブルルックアップすることで、音響波の強度からガス成分の濃度を推定することができる。
【0059】
例えば、図5は音響波の強度とガス成分の濃度の関係を示しており、音響波の強度に基づいて、ガス成分の濃度が求められることが理解できる。したがって、この図5に示す関係をテーブル化しておけばよい。また、別の方法として、音響波の強度自体をガス成分の濃度と見做すようにしても良い。
【0060】
そして、ガス成分の種類の推定、及び濃度の推定が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。一方、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22の動作によるガス成分の種類の推定、及び濃度の推定は、上述したステップS13~S17を実行することによって行うことができる。
【0061】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができ、更にはピーク周波数の強度からガス成分の濃度も推定できるようになる。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明の第3の実施形態を図6に基づき説明する。本実施形態では、空調機10で室内の空気温度を一定した後にガス成分の推定を行う点で、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なっている。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態の制御ステップと同じ制御ステップの説明は省略する。ここで、本実施形態の空調システムは図1に示すシステムと基本的に同じである。
【0063】
図6に示す制御フローも、時間的な割込みによって起動されるものであり、例えば、コンペアマッチタイマによる割り込み発生で実行される。ここで、ステップS11以降が、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される制御ステップである。
【0064】
≪ステップS20≫
ステップS20においては、中央管理装置12から所望の設定温度情報を空調機10に送信する。空調機10においては、この設定温度情報に基づいて動作を開始し、室内空気を設定温度に近づくように動作を継続する。空調機10が動作を継続している間にステップS21に移行する。
【0065】
≪ステップS21≫
ステップS21においては、空調機10が動作を継続している間に、空調機10の温度センサによって室温が設定温度に達したと判断されると、空調機10は、自身に設定されている設定温度情報を、空気の温度情報として光音響センサ13に送信する。設定温度情報の送信が完了するとステップS11に移行する。
【0066】
≪ステップS1≫ ~ ≪ステップS16≫
ステップS11~ステップS16の制御ステップは、図3に示す制御ステップと同じであるので説明は省略する。
【0067】
そして、ガス成分の種類の推定が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。一方、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22の動作によるガス成分の種類の推定は、上述したステップS13~S16を実行することによって行うことができる。
【0068】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。また、空調機が室内の空気温度を設定温度に制御する機能を用いることで、センサ群の構成を簡略化することが可能となる。尚、第2の実施形態のように、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を推定する構成とすることもできる。
【実施例4】
【0069】
次に、本発明の第4の実施形態を図7、及び図8に基づき説明する。本実施形態では、光音響センサ13に温度測定機能部29を搭載している点で、第1の実施形態~第3の実施形態と異なっている。尚、第1の実施形態~第3の実施形態の構成要素と同じ構成要素、及び第1の実施形態~第3の実施形態に示す制御ステップと同じ制御ステップの説明は省略する。
【0070】
図7において、光音響センサ13は温度測定機能部29を備えており、この温度測定機能部29は制御回路部23に温度情報を送信している。温度測定機能部29は光音響センサ13の回路基板に設けた温度センサ(測温抵抗体やサーミスタ)、サーモパイル等の測温素子を用いることができる。回路基板には、駆動回路20~22検出回路部24、信号処理回路25、制御回路部23等が実装されている。
【0071】
次に、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される具体的な制御フローを図8に基づき説明する。尚、本実施形態の空調システムは、温度情報が光音響センサ13で検出される点を除いて、図1に示すシステムと基本的に同じである。
【0072】
図8に示す制御フローも、時間的な割込みによって起動されるものであり、例えば、コンペアマッチタイマによる割り込み発生で実行される。ここで、ステップS22以降が、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される制御ステップである。
【0073】
≪ステップS22≫
ステップS22においては、光音響センサ13の回路基板に設けた測温素子を用いた温度測定機能部29で温度を検出し、検出された温度情報をメモリ26の所定領域に保存する。記憶された温度情報は、少なくとも後述するガス成分が求められるまで保持されている。温度情報が記憶されるとステップS12に移行する。
【0074】
≪ステップS12≫ ~ ≪ステップS16≫
ステップS12~ステップS16の制御ステップは、図3に示す制御ステップと同じであるので説明は省略する。
【0075】
そして、ガス成分の種類の推定が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。一方、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22の動作によるガス成分の種類の推定は、上述したステップS12~S16を実行することによって行うことができる。
【0076】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。また、空調機10の側から温度情報が得られない状態においても、光音響センサ13だけでガス成分の種類の推定を行うことができる。尚、第2の実施形態のように、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を推定する構成とすることもできる。
【実施例5】
【0077】
次に、本発明の第5の実施形態を図9、及び図10に基づき説明する。本実施形態では、既知ガスを測定する光源Q30を搭載している点で、第1の実施形態~第4の実施形態と異なっている。尚、第1の実施形態~第4の実施形態の構成要素と同じ構成要素、及び第1の実施形態~第4の実施形態に示す制御ステップと同じ制御ステップの説明は省略する。
【0078】
図9において、光音響センサ13は既知のガス成分を検出するための駆動回路Q30と光源Q31を備えている。このように既知のガス成分を検出する光源Q31を備えることによって温度情報を検出する温度センサを省略することができる。つまり、既知のガスなので平均分子量(M)がわかっており、音響波のピーク周波数(=駆動周波数)が検出できれば、(1)式における温度(T)を演算で求めることができる。
【0079】
次に、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される具体的な制御フローを図10に基づき説明する。尚、本実施形態の空調システムは、温度情報が演算で求められる点を除いて、図1に示すシステムと基本的に同じである。
【0080】
図10に示す制御フローも、時間的な割込みによって起動されるものであり、例えば、コンペアマッチタイマによる割り込み発生で実行される。ここで、ステップS23以降が、制御回路部23のマイクロコンピュータで実行される制御ステップである。
【0081】
≪ステップS23≫
ステップS23においては、一定の速度で駆動回路Q30の駆動周波数を変化させて(スイープさせて)、マイクロフォン18によって音響波を測定する。駆動回路Q30の駆動を継続しながら、ステップS24に移行する。
【0082】
≪ステップS24≫
ステップS24においては、駆動回路Q30の駆動周波数のスイープを繰り返しながら、音響波の出力強度が最大となるピーク周波数を探索する。このピーク周波数が、既知ガスのガス成分が最も反応する周波数となる。ピーク周波数が検出されると、(1)式を利用して温度を演算する。
【0083】
この演算は、既知のガスの平均分子量(M)と、ピーク周波数から求められた音速(c)とから温度(T)を演算するものである。上述したように音速(c)は(2)式から求められるので、上述した(1)式を温度(T)が求められる「所定の演算式」(T=cM/κR)に変形し、この所定の演算式に音速(c)と平均分子量(M)を代入することで、温度(T)を求めることができる。
【0084】
つまり、上述した(1)式を、温度(T)が求められる「所定の演算式」に変形し、この所定の演算式から光源の駆動周波数(fr)と平均分子量(M)を用いて温度(T)を求めることができる。温度(T)が求められると、この温度情報はメモリ26の所定領域に保存される。記憶された温度情報は、少なくとも後述するガス成分が求められるまで保持されている。温度情報が記憶されるとステップS12に移行する。
【0085】
≪ステップS12≫ ~ ≪ステップS16≫
ステップS12~ステップS16の制御ステップは、図3に示す制御ステップと同じであるので説明は省略する。
【0086】
そして、ガス成分の種類の推定が完了したと判断されると「エンド」に抜けてこの制御フローの処理を終了する。一方、これ以外の駆動回路B21~駆動回路N22の動作によるガス成分の種類の推定は、上述したステップS12~S16を実行することによって行うことができる。
【0087】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。また、温度センサを用いることなく光音響センサだけでガス成分の種類の推定が可能となる。尚、第2の実施形態のように、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を推定する構成とすることもできる。
【実施例6】
【0088】
次に、本発明の第6の実施形態を図11に基づき説明する。本実施形態では、一対の同じ波長の光源を設け、夫々の光源に接続した駆動回路の平均電流値を電流測定回路でモニタして光源の劣化を判定して警報を発する点で、第1の実施形態~第5の実施形態と異なっている。尚、第1の実施形態~第5の実施形態の構成要素と同じ構成要素の説明は省略する。ここで、光源の劣化とは駆動回路を含む光源の劣化である。
【0089】
図11において、一対の同じ波長の光源A15、及び光源A´15´と、これを駆動する駆動回路A20、及び駆動回路A´20´が備えられている。そして、これらの間には電流測定回路A32、及び電流測定回路A´32´が介装されている。したがって、電流測定回路A32、及び電流測定回路A´32´は、光源A15、及び光源A´15´に流れる平均電流値を計測している。
【0090】
同様に、光源B16、駆動回路B21、光源N17、駆動回路22も、対となる光源と駆動回路が設けられ、更にこれらに対応して電流測定回路も設けられている。図11には、光源N´17´と、これを駆動する駆動回路N22´、及び電流測定回路N´33´が示されている。
【0091】
そして、光音響センサ13を起動する時に、制御回路部23のマイクロコンピュータによって、夫々の電流測定回路A32、電流測定回路A´32´が測定した平均電流値が比較され、その差分がメモリ26に格納される。
【0092】
マイクロコンピュータは、メモリ26に記憶された差分が、所定の予め定めた差分閾値(例えば、正常な場合の平均電流値の差分)より大きい場合、駆動回路を含む光源が劣化していると判断し、警報を出力する。警報は通信部27を介して空調機10や中央管理装置12に送信されて、光音響センサ13の劣化を報知することができる。更には、光音響センサ13に設けた点滅ランプ34によって、警報を出力することもできる。
【0093】
このように、マイクロコンピュータには、一対の電流測定回路で測定された夫々の平均電流値の差分が、所定の予め定めた差分閾値(正常な場合の平均電流値の差分)と乖離していた場合には、警報を発生する警報発生機能が備えられている。
【0094】
尚、駆動回路を含む光源が劣化していることを検出するには、上述した方法以外にも種々の方法が考えられる。例えば、一対の駆動回路の平均電流値の間に、20%以上の差異がある場合は、駆動回路を含む光源が劣化しているとして警報を出すこともできる。更には、劣化している光源による音響波の強度については、平均電流値の差分に対応して強度を補正することもできる。
【0095】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。また、光音響センサ13の光源の劣化を報知することができる。更には、第2の実施形態のように、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を推定する構成とする場合において、光源の劣化を検出して音響波の強度を補正することができるので、ガス成分の濃度の推定精度を向上することができる。
【実施例7】
【0096】
次に、本発明の第7の実施形態を図12に基づき説明する。本実施形態では、センサセルに一対のマイクロフォン18、18´を設け、夫々のマイクロフォン18、18´の出力をモニタしてマイクロフォンの劣化を判定して警報を発する点で、第1の実施形態~第6の実施形態と異なっている。尚、第1の実施形態~第6の実施形態の構成要素と同じ構成要素の説明は省略する。
【0097】
図12において、センサセル14には一対の同じマイクロフォン18、18´が設けられ、夫々のマイクロフォン18、18´の出力は、検出回路部24、信号処理部25を介して制御回路部23に入力されている。制御回路部23のマイクロコンピュータは、入力されたマイクロフォン18、18´の出力を比較して、マイクロフォン18、18´の劣化状態を判断する機能を備えている。
【0098】
そして、光音響センサ13を起動する時に、制御回路部23のマイクロコンピュータによって、夫々のマイクロフォン18、18´が測定した周辺環境音の強度が比較され、その差分がメモリ26に格納される。
【0099】
マイクロコンピュータは、メモリ26に記憶された差分が、所定の予め定めた差分閾値(例えば、正常な場合の強度の差分)より大きい場合、マイクロフォン18、18´が劣化していると判断し、警報を出力する。警報は通信部27を介して空調機10や中央管理装置12に送信されて、光音響センサ13の劣化を報知することができる。更には、光音響センサ13に設けた点滅ランプ34によって、警報を出力することもできる。
【0100】
このように、マイクロコンピュータには、一対のマイクロフォンで測定された夫々の音響波の強度の差分が、所定の予め定めた差分閾値(例えば、正常な場合の強度の差分)と乖離していた場合には、警報を発生する警報発生機能が備えられている。
【0101】
尚、マイクロフォンが劣化していることを検出するには、上述した方法以外にも種々の方法が考えられる。例えば、一対のマイクロフォンの出力である強度の間に、20%以上の差異がある場合は、マイクロフォンが劣化しているとして警報を出すこともできる。更には、劣化しているマイクロフォンによる音響波の強度については、強度の差分に対応して、検出された強度を補正することもできる。
【0102】
以上述べたような校正方法を実行することで、ガス成分の種類の推定を温度に依存することなく正確に行うことができるようになる。また、光音響センサ13のマイクロフォンの劣化を報知することができる。更には、第2の実施形態のように、ピーク周波数の強度からガス成分の濃度を推定する構成とする場合において、マイクロフォンの劣化を検出して音響波の強度を補正することができるので、ガス成分の濃度の推定精度を向上することができる。
【0103】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…空調機、11…センサ群、12…中央管理装置、13…光音響センサ、14…センサセル、15…光源A、16…光源B、17…光源N、18…マイクロフォン、19…接続孔、20…駆動回路A、21…駆動回路B、22…駆動回路BN、23…制御回路部、24…検出回路部、25…信号処理部、26…メモリ、27…通信部、28…空気品質調整装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12