(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】離隔距離測定装置
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20240216BHJP
E01C 1/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E01C11/22 B
E01C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020151242
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】先納 義和
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-152484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0208286(US,A1)
【文献】特開平08-319831(JP,A)
【文献】特開2018-087420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道の境界に設けられる縁石ブロックに接近する車両との距離を測定する離隔距離測定装置であって、
前記縁石ブロックの前記車道側の側面に開口する空隙部分に配置されたセンサユニットと接続され、前記距離を測定する距離測定部を備え、
前記センサユニットは、
所定距離以下の前記距離の測定に用いられる近距離用センサと、
前記所定距離を超える前記距離の測定に用いられる遠距離用センサと
を含み、
前記距離測定部は、
前記近距離用センサまたは前記遠距離用センサからの出力信号を用いて、前記車両と前記センサユニットとの水平方向における水平離隔距離を測定し、
前記近距離用センサの出力信号
のみを用いて
、前記車両と前記センサユニットとの垂直方向における垂直離隔距離を測定
する離隔距離測定装置。
【請求項2】
前記距離測定部は、前記近距離用センサから前記車両の床面までの垂直方向に沿った距離を前記垂直離隔距離として測定する請求項1に記載の離隔距離測定装置。
【請求項3】
前記縁石ブロックは、
前記車道から立ち上がる縁石部と、
前記縁石部の上方に設けられる筐体部と
を有し、
前記筐体部に前記空隙部分が形成され
前記前記距離測定部は、測定された前記垂直離隔距離から前記近距離用センサと前記筐体部の上面との距離を差し引くことによって前記垂直離隔距離を補正する請求項2に記載の離隔距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縁石ブロック及び離隔距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスやトラム(路面電車)などの車両が停留所に停止する際に、歩道と乗降口との距離、及び歩道と乗降口との段差を小さくする、いわゆる正着性を高めるため、特殊な構造の縁石が提供されている。
【0003】
例えば、車道に連なるように設けられる上面部分を有するベース部と、ベース部の一端側から立ち上がる縁石部とを備える縁石ブロック(車道境界ブロック)において、上面部分の傾斜を、道路幅方向における車道の水平方向に対する傾斜よりも大きくした形状が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このような縁石ブロックによれば、道路より傾斜した上面部分に車輪を載せた状態で走行することによって、車両を自然と縁石ブロック側に近寄らせることができ、ドライバーの高い運転技能に頼ることなく、より容易に停留所への正着性を向上し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような縁石ブロックが用いられる場合、停留所に停止する各車両がどの程度の正着性を有しているかを評価できることが有効である。具体的には、車両の乗降口と、歩道(縁石ブロック)との距離を容易かつ正確に測定できることが望ましい。
【0007】
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、車両との離隔距離を容易かつ正確に測定し得る縁石ブロック及び離隔距離測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車道(車道10)の境界に設けられる縁石ブロック(例えば、縁石ブロック100)であって、前記縁石ブロックの前記車道側の側面に開口する空隙部分(空隙部分131)が形成され、前記空隙部分には、車両(バス50)との距離の測定に用いられるセンサユニット(センサユニット140)が配置され、前記センサユニットは、前記空隙部分の前記車道側の開口端(開口端131a)よりも内側に配置される。
【0009】
本開示の一態様は、車道(車道10)の境界に設けられる縁石ブロック(例えば、縁石ブロック100)に接近する車両(バス50)との距離を測定する離隔距離測定装置(離隔距離測定装置200)であって、前記縁石ブロックの前記車道側の側面に開口する空隙部分に配置されたセンサユニットと接続され、前記距離を測定する距離測定部(距離測定部210)を備え、前記センサユニットは、所定距離以下の前記距離の測定に用いられる近距離用センサ(近距離用センサ141)と、前記所定距離を超える前記距離の測定に用いられる遠距離用センサ(遠距離用センサ142)とを含み、前記距離測定部は、前記近距離用センサの出力信号及び前記遠距離用センサの出力信号の少なくとも何れかを用いて前記距離を測定する。
【発明の効果】
【0010】
上述した縁石ブロック及び離隔距離測定装置によれば、車両との離隔距離を容易かつ正確に測定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、縁石ブロックを含む道路構造の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、縁石ブロック100の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、縁石ブロック100(センサユニット140)及び離隔距離測定装置200の機能ブロック構成図である。
【
図4】
図4は、離隔距離測定装置200による離隔距離の測定動作フローを示す図である。
【
図5】
図5は、センサユニット140からの出力信号の例を示す図である。
【
図6】
図6は、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142からの出力信号に基づく水平離隔距離の測定例を示す図である。
【
図7】
図7は、近距離用センサ141からの出力信号に基づく垂直離隔距離の測定例を示す図である。
【
図8】
図8は、水平離隔距離の測定データの例を示す図である。
【
図9】
図9は、変更例に係る縁石ブロック100Aの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)縁石ブロックを含む道路構造例
図1は、縁石ブロックを含む道路構造の一例を示す。車道10は、車両、具体的には、バス50が走行するために設けられた道路である。
【0014】
歩道20は、歩行者用に設けられた道路であり、車道10より一段(15cm~30cm程度)高くなっている。歩道20の一部には、乗客がバス50に乗り降りする停留所(不図示)が設けられる。
【0015】
バス50は、複数の車輪51を備える。
図1に示すように、後輪には、2本のタイヤを並列に組み付けた、いわゆるダブルタイヤが採用されてもよい。
【0016】
バス50の種類は特に限定されず、例えば、大型バス(全長10~11m程度、全幅2.5m程度)、中型バス(全長10m程度、全幅2.3m程度)または小型バス(全長6.3~7.0m程度、全幅2.0m程度)でもよい。
【0017】
なお、バス50は、このような種類に限定されず、いわゆるバス高速輸送システム(BRT: Bus Rapid Transit)として用いられる車両でもよいし、二両以上の車体が繋げられた連接バスでもよい。
【0018】
バス50が停留所に停止する際、バス50の乗降口と歩道20の距離(水平離隔距離と呼ぶ)、及びバス50の乗降口と歩道20との段差(垂直離隔距離と呼ぶ)が極力小さくなることが、乗降性の観点から好ましい。特に、車いす、ベビーカーまたは荷物用カートの利用者に対しては、当該距離及び段差を極力小さくし、いわゆる正着性を向上することが望まれる。
【0019】
正着性は、バスの定時運行性及び乗降性に関わる性能であり、主に離隔距離(正着距離と呼ばれてもよい)のことを指す。離隔距離は、縁石ブロック100とバス50との距離、具体的には、歩道20の車道10側の端部からバス50の乗降口の端部(ステップ)までの距離であり、水平離隔距離と垂直離隔距離とに分かれる。
【0020】
バス50の正着性を高めるため、本実施形態では、車道10と歩道20との境界(車道境界)に特殊な形状の縁石ブロック100が用いられる。縁石ブロック100は、車道10の延在方向に沿って複数配置され、車道10と歩道20とを区画する。
【0021】
縁石ブロック100は、縁石部110及び筐体部130を有する。縁石部110は、車道10から立ち上がり、車道10と歩道20とを区画するとともに、歩道20を車道10より一段高い位置に設けることができる。縁石部110は、一般的な縁石同様に、コンクリート製でもよいが、車輪51(タイヤ)の側面(サイドウォール)と接触することを考慮すると、ゴム製または強化プラスティック製としてもよい。
【0022】
筐体部130は、縁石部110の上方に設けられる。筐体部130は、バス50の乗降口と歩道20との段差を調整するために設けられてもよい。このような用途から、筐体部130は、マウントアップ部などと呼ばれてもよい。
【0023】
本実施形態では、筐体部130は、縁石部110と別体であり、ステンレス鋼などの金属製とすることができる(但し、木製などでも構わない)。筐体部130には、バス50との離隔距離の測定に用いられるセンサユニット140が配置される。
【0024】
(2)縁石ブロックの形状
図2は、縁石ブロック100の概略斜視図である。
図2に示すように、縁石ブロック100は、車道10(
図1参照)の延在方向D1に沿って複数配置される。上述したように、縁石ブロック100は、車道10の境界に設けられる。
【0025】
縁石ブロック100の車道10側の側面120は、空隙部分131が形成されてよい。空隙部分131は、側面120に開口する。具体的には、空隙部分131は、筐体部130に形成される。
【0026】
空隙部分131には、バス50との距離(離隔距離)の測定に用いられるセンサユニット140が配置される。センサユニット140は、距離測定用の複数のセンサによって構成されてもよい。
【0027】
センサユニット140は、空隙部分131の車道10側の開口端131aよりも内側に配置される。具体的には、センサユニット140は、開口端131aよりも歩道20側、つまり、車道10から離れる側に配置される(
図1に点線によって示されたセンサユニット140の位置も参照)。例えば、センサユニット140は、開口端131aから20~100mm程度内側に配置されてよい。
【0028】
縁石ブロック100の側面120は、バス50のボディとの接触を回避できる形状とすることが好ましい。例えば、縁石ブロック100は、特開2018-87420号公報に記載されている車道境界ブロックのような形状とすることができる。
【0029】
また、
図1に示したように、歩道20寄りの車道10(または車道10に連なる縁石ブロック100の上面部分)の傾斜を、道路幅方向における車道10の水平方向に対する傾斜よりも大きくしてもよい。これにより、バス50を自然と縁石ブロック100側に近寄らせることができる(詳細については、特開2018-87420号公報に内容を参照)。
【0030】
(3)縁石ブロック及び離隔距離測定装置の機能ブロック構成
図3は、縁石ブロック100(センサユニット140)及び離隔距離測定装置200の機能ブロック構成図である。
【0031】
図3に示すように、縁石ブロック100の筐体部130には、センサユニット140が配置される。センサユニット140は、近距離用センサ141と遠距離用センサ142とを含む。
【0032】
近距離用センサ141は、所定距離以下の距離の測定に用いられる。具体的には、近距離用センサ141は、バス50との離隔距離が所定距離以下の場合の測定に用いられる。
【0033】
遠距離用センサ142は、所定距離を超える距離の測定に用いられる。具体的には、遠距離用センサ142は、バス50との離隔距離が所定距離を超える場合の測定に用いられる。
【0034】
所定距離は、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142の種類または性能などに応じて変更されて構わない。近距離用センサ141は、例えば、レーザー光を用いた距離センサであってもよい。また、遠距離用センサ142は、例えば、超音波を用いた距離センサであってもよい。
【0035】
近距離用センサ141は、80mm~180mm或いは100~200mm程度の距離を測定できることが好ましい。遠距離用センサ142は、150mm~1,000mm程度の距離を測定できることが好ましい。
【0036】
近距離用センサ141及び遠距離用センサ142は、バス50などの測定対象物を検出できない場合、つまり、近距離用センサ141と測定対象物との離隔距離が200mm程度以上、遠距離用センサ142と測定対象物との離隔距離が1,000mm程度以上である場合、所定の電圧(例えば、5V)を出力し、測定対象物を検出した場合、測定対象物との離隔距離に応じた電圧(例えば、5V未満)を出力できる。
【0037】
離隔距離測定装置200は、車道10の境界に設けられる縁石ブロック100に接近するバス50などの車両との距離(離隔距離)を測定する。
【0038】
離隔距離測定装置200は、距離測定部210、記憶部220及び通信部230を備える。なお、離隔距離測定装置200は、ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース、外部インターフェース及び通信インターフェースを備えてよい。また、離隔距離測定装置200は、正着距離自動測定(または計測)装置などと呼ばれてもよい。
【0039】
距離測定部210は、縁石ブロック100の車道10側の側面120に開口する空隙部分131に配置されたセンサユニット140と接続される。例えば、距離測定部210は、センサユニット140と有線接続されてもよいし、無線通信ユニット(不図示)を介して無線接続されてもよい。
【0040】
距離測定部210は、センサユニット140から出力される信号(電圧)に基づいて、バス50などの車両との距離(離隔距離)を測定する。具体的には、距離測定部210は、近距離用センサ141から出力される電圧、及び遠距離用センサ142から出力される電圧の少なくとも何れかを用いて、当該離隔距離を測定できる。つまり、距離測定部210は、近距離用センサ141の出力信号及び遠距離用センサ142の出力信号の少なくとも何れかを用いて当該離隔距離を測定できる。
【0041】
より具体的には、距離測定部210は、近距離用センサ141または遠距離用センサ142から出力された電圧の値と距離との関係式を用いて距離に換算する。電圧値と距離との関係式は、近距離用センサ141の遠距離用センサ142の特性に応じて規定されればよい。
【0042】
また、距離測定部210は、バス50などの測定対象物とセンサユニット140との水平方向における離隔距離(以下、水平離隔距離)、及び当該測定対象物とセンサユニット140との垂直方向における離隔距離(以下、垂直離隔距離)を測定できる。
【0043】
具体的には、距離測定部210は、近距離用センサ141または遠距離用センサ142からの出力信号を用いて水平離隔距離を測定できる。距離測定部210は、バス50のボディ下部側面との水平方向に沿った距離を水平離隔距離として測定する。
【0044】
一方、距離測定部210は、近距離用センサ141からの出力信号のみを用いて垂直離隔距離を測定できる。具体的には、距離測定部210は、近距離用センサ141からバス50の床面までの垂直方向に沿った距離を垂直離隔距離として測定する。垂直離隔距離は、バス50の乗降口のドアが開放された状態において測定できる。或いは、ドアが閉まった状態でも、床面(ステップ)が車幅方向において最も突出しているため、当該ステップの部分を対象として測定してもよい。
なお、水平離隔距離及び垂直離隔距離の測定の具体例については、後述する。
【0045】
記憶部220は、距離測定部210によって測定された距離(または電圧値自体でもよい)のデータを記憶できる。記憶部220は、当該データを時刻情報(日付及び時刻)と対応付けて記憶できる。なお、記憶部220は、データロガーのような記憶装置によって構成されてもよい。
【0046】
通信部230は、有線または無線の通信インターフェースを介して外部の通信ネットワーク(インターネットが含まれてもよい)または通信デバイスに接続できる。
【0047】
通信部230は、記憶部220に記憶されているデータ、或いは距離測定部210から出力される距離(または電圧値自体でもよい)のリアルタイムデータを当該通信ネットワークまたは通信デバイスに向けて送信できる。また、通信部230は、当該通信ネットワークまたは通信デバイスからの制御信号(例えば、記憶部220に記憶されているデータの消去)を受信できる。
【0048】
(4)縁石ブロック及び離隔距離測定装置による離隔距離の測定動作
次に、縁石ブロック100及び離隔距離測定装置200によるバス50などの測定対象物との離隔距離の測定動作について説明する。
【0049】
(4.1)離隔距離の測定動作フロー
図4は、離隔距離測定装置200による離隔距離の測定動作フローを示す。
図4に示すように、離隔距離測定装置200は、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142の出力電圧を検出する(S10)。
【0050】
具体的には、離隔距離測定装置200は、近距離用センサ141からの出力電圧(0~5V)を検出するとともに、遠距離用センサ142からの出力電圧(0~5V)を検出する。上述したように、バス50などの測定対象物を検出できない場合、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142は、約5Vの電圧を出力し、測定対象物を検出した場合、測定対象物との離隔距離に応じた5V未満の電圧を出力する。
【0051】
離隔距離測定装置200は、水平離隔距離を測定する(S20)。水平離隔距離は、バス50などの測定対象物とセンサユニット140との水平方向における離隔距離であり、
図4に模式的に示すように、バス50のボディ下部側面との水平方向に沿った距離(点線部分)と解釈されてもよい。
【0052】
但し、歩道20の高さ、バス50の種類、乗車人数などに応じ、実際に測定される水平離隔距離は、必ずしも水平方向と平行でなくてもよい。或いは、実際に測定される水平離隔距離が水平方向と平行でない場合、測定された水平離隔距離及び垂直離隔距離に基づいて、真の水平離隔距離が算出(三角関数を利用)されてもよい。
【0053】
離隔距離測定装置200は、測定対象物との離隔距離に応じて、近距離用センサ141または遠距離用センサ142の出力電圧を用い、出力電圧に応じた水平離隔距離を判定する。
【0054】
また、離隔距離測定装置200は、垂直離隔距離を測定する(S30)。垂直離隔距離は、バス50などの測定対象物とセンサユニット140との垂直方向における離隔距離であり、
図4に模式的に示すように、バス50のボディ下部側面との垂直方向に沿った距離(点線部分)と解釈されてもよい。
【0055】
なお、垂直方向における近距離用センサ141と筐体部130の上面との距離を考慮し、測定された垂直離隔距離は補正されてもよい。具体的には、測定された垂直離隔距離から近距離用センサ141と筐体部130の上面との距離を差し引けばよい。
【0056】
垂直離隔距離は、バス50の構造によって範囲が定まり、水平離隔距離のように大きくなることはないため、離隔距離測定装置200は、近距離用センサ141のみの出力電圧を用い、出力電圧に応じた垂直離隔距離を判定する。
【0057】
具体的には、離隔距離測定装置200は、近距離用センサ141からバス50の床面までの垂直方向に沿った距離を垂直離隔距離として測定する。なお、垂直離隔距離の判定方法の詳細については、さらに後述する。
【0058】
離隔距離測定装置200は、測定した水平離隔距離及び垂直離隔距離のデータ(測定データ)を保存する(S40)。具体的には、離隔距離測定装置200は、測定データを記憶部220に保存する。
【0059】
離隔距離測定装置200は、S10~S40の処理を所定の周期(例えば、10秒~1分程度)で繰り返す。これにより、バス50が停留所に停止しているか否か、及び歩道20との離隔距離(正着距離)を判定できる。なお、S20及びS30の処理は、同時に実行されてよいし、S30の処理が先に実行されてもよい。
【0060】
(4.2)センサユニット140からの出力信号
図5は、センサユニット140からの出力信号の例を示す。具体的には、
図5の上段のグラフの縦軸は、遠距離用センサ142からの出力電圧を示す。横軸は時刻を示す。
図5の下段のグラフの縦軸は、近距離用センサ141からの出力電圧を示す。
【0061】
図5に示すように、遠距離用センサ142(及び近距離用センサ141)は、バス50がセンサユニット140の配置場所、つまり、停留所に居ない場合、約5Vを出力する。
【0062】
図6は、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142からの出力信号に基づく水平離隔距離の測定例を示す。
【0063】
上述したように、遠距離用センサ142は、150mm~1,000mm程度の距離を測定できる。このため、バス50と歩道20との離隔距離がある程度広い場合には、遠距離用センサ142からの出力電圧に基づいて離隔距離(水平離隔距離)を測定すればよい。
【0064】
一方、バス50と歩道20との離隔距離が狭くなる(近距離になる)と、遠距離用センサ142では測定が不可となるため、近距離用センサ141からの出力電圧に基づいて離隔距離(水平離隔距離)を測定する。上述したように、近距離用センサ141は、80mm~180mm或いは100~200mm程度の距離を測定できる。
【0065】
図7は、近距離用センサ141からの出力信号に基づく垂直離隔距離の測定例を示す。
図7に示すように、垂直離隔距離は、停留所に停止しているバス50の床面の乗降用ステップの高さ位置を検出することによって測定される。
【0066】
図7の上下方向は、高さ方向(垂直方向)を示しており、高さ方向における複数箇所の測定ポイントが設定される。
図7に示す例では、10mm~100mmまで10mm間隔で10箇所の測定ポイントが設定されている。なお、10mm~100mmの数値は、近距離用センサ141の位置を基準とした高さ方向(垂直方向)の距離、つまり、垂直離隔距離と対応する。
【0067】
図7に示す例では、バス50の乗降口のドアが開放された状態におけるバス50の床面部分によって、近距離用センサ141は、50, 60及び70mmの位置において、低い電圧(0V)を出力する。これにより、離隔距離測定装置200は、50, 60及び70mmの位置に測定対象物があり、最も高い70mmが乗降用ステップの高さ位置であると検出する。上述したように近距離用センサ141には、レーザー光を用いた距離センサを用い得るが、ラインレーザー(例えば、約100mm幅)を用いることによって昇降用ステップの高さ位置を速やかに判定できる。
【0068】
(4.3)離隔距離の測定データの例
図8は、水平離隔距離の測定データの例を示す。
図8に示すグラフの縦軸は、水平離隔距離(単位:mm)を示す。また、当該グラフの横軸は、時刻と対応するが、縦方向に延びるグラフの直線部分の有無は、停留所に発着したバスを示している。当該直線部分のそれぞれは、停留所に停止したバス毎の水平離隔距離と対応する。
【0069】
(5)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、縁石ブロック100の空隙部分131に配置されるセンサユニット140は、空隙部分131の車道10側の開口端131aよりも内側に配置される。
【0070】
このため、雨や泥などによるセンサユニット140への悪影響を抑制しつつ、バス50との離隔距離を測定できる。すなわち、縁石ブロック100及び離隔距離測定装置200によれば、バス50との離隔距離を容易かつ正確に測定し得る。
【0071】
また、センサユニット140を開口端131aよりも内側に配置することによって、センサユニット140、具体的には、近距離用センサ141及び遠距離用センサ142による測定が不可となる範囲を狭めることができる。例えば、測定範囲100~200mmの近距離用センサ141を開口端131aから100mm内側に配置すれば、0~100mmの水平離隔距離を測定できる。
【0072】
なお、センサユニット140の代替手段としては、ビデオカメラによって撮影された画像データを用いることが考えられるが、撮影レンズの歪みに起因する距離精度の誤差が大きいこと、画像解析の処理負荷並びにデータ量が大きいこと、画像データに含まれる個人情報の取り扱いなどが問題となる場合がある。
【0073】
また、メジャーなどを用いた手動による距離の測定は、対応可能な時間に限界があること、測定誤差がさらに大きいこと、乗降の邪魔になるなど、そもそも現実的でない。
【0074】
本実施形態では、センサユニット140は、近距離用センサ141と遠距離用センサ142とを含む。このため、バス50の停止位置によって離隔距離(水平離隔距離)は大きく変動するが、離隔距離が短い場合でも長い場合でも、正確に離隔距離(水平離隔距離)を測定できる。
【0075】
本実施形態では、近距離用センサ141は、レーザー光を用いた距離センサである。このため、離隔距離が極めて短い場合(例えば、100mm以下)でも、正確に離隔距離(水平離隔距離及び垂直離隔距離)を測定できる。
【0076】
本実施形態では、縁石部110の上方に筐体部130が設けられ、センサユニット140は、筐体部130の空隙部分131に配置される。このため、センサユニット140を容易に配置できる。
【0077】
(6)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0078】
例えば、縁石ブロック100は、次のように変更してもよい。
図9は、変更例に係る縁石ブロック100Aの概略斜視図である。
【0079】
図9に示すように、縁石ブロック100Aの側面120には、空隙部分125が形成される。空隙部分125には、センサユニット140が配置される。
【0080】
なお、縁石ブロック100Aの場合も、センサユニット140は、空隙部分125の車道10側の開口端125aよりも内側に配置されることが好ましい。
【0081】
さらに、バス50の加減速G、速度データを取得し、タイヤなどの耐久性を予測してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、縁石ブロック100の側面120は、バス50のボディとの接触を回避できる特有の形状を有していたが、縁石ブロック100は、一般的な形状でも構わない。
【0083】
さらに、上述した実施形態では、バス50を例として説明したが、乗客が停留所で乗り降りする車両、例えば、トラム(路面電車)などあってもよい。
【0084】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0085】
10 車道
20 歩道
30 停留所
50 バス
51 車輪
100, 100A 縁石ブロック
110 縁石部
120 側面
125 空隙部分
125a 開口端
130 筐体部
131 空隙部分
131a 開口端
140 センサユニット
141 近距離用センサ
142 遠距離用センサ
200 離隔距離測定装置
210 距離測定部
220 記憶部
230 通信部