(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】端子台、ボビン及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240216BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01F27/29 N
H01F27/29 T
H01F37/00 E
H01F37/00 F
H01F37/00 M
(21)【出願番号】P 2020157973
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和樹
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-149827(JP,U)
【文献】実開昭52-120313(JP,U)
【文献】特開2010-034223(JP,A)
【文献】特開平11-288830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0116069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子が取り付けられる端子取付部を有するベースと、
を備え、
前記端子が、前記端子取付部と結合する結合部を備え、
前記端子取付部に、
前記結合部が挿入される、第1の方向に延びる挿入穴と、
前記挿入穴と連絡する嵌合穴と、が形成されていて、
前記結合部が、前記嵌合穴と嵌合する爪部を備え、
前記爪部が、その根元において前記第1の方向と略平行な直線の周りに曲げられることによって、前記嵌合穴に向かって突出している、
端子台。
【請求項2】
前記端子取付部に、前記結合部を前記嵌合穴へ向けて押し出す斜面が形成された、
請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記爪部が、前記結合部の前記第1の方向における先端部に設けられ、
前記斜面が、前記結合部の前記先端部を前記嵌合穴へ向けて押し出すように形成された、
請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記結合部が、前記第1の方向と直交する第2の方向において前記挿入穴に対して前記結合部を位置決めする第1の位置決め構造を備えた、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項5】
前記第1の位置決め構造が、前記第2の方向へ突出して前記挿入穴の壁面と接触する突出部である、
請求項4に記載の端子台。
【請求項6】
前記突出部が、前記第2の方向において、前記結合部が前記挿入穴よりもわずかに大きくなるように形成された、
請求項5に記載の端子台。
【請求項7】
前記突出部が、前記第1の方向において前記爪部から離れた位置に形成された、
請求項5又は請求項6に記載の端子台。
【請求項8】
前記結合部が、前記第1の方向及び前記第2の方向の二方向と直交する第3の方向において前記挿入穴に対して前記結合部を位置決めする第2の位置決め構造を備えた、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項9】
前記第2の位置決め構造が、
前記第3の方向における前記結合部の一端に形成された、前記挿入穴の壁面と接触する第1の位置決め面と、
前記第3の方向における前記結合部の他端に形成された、前記挿入穴の壁面と接触する第2の位置決め面と、を含む、
請求項8に記載の端子台。
【請求項10】
前記挿入穴の断面形状が、前記第1の方向直交する第2の方向に延びる一辺を有する矩形であり、
前記嵌合穴が、前記挿入穴の前記第2の方向と垂直な壁面に開口した、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項11】
前記第1の方向及び前記第2の方向の二方向と直交する第3の方向において、前記爪部が前記結合部の中央部に配置された、
請求項4から請求項10のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項12】
前記爪部及び前記嵌合穴の噛み合う面が、前記第1の方向と略垂直に形成された、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の端子台。
【請求項13】
コイルが巻き付けられるボビン部と、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の端子台と、
を備え、
前記ボビン部と前記端子台のベースが一体に形成され、
前記端子が、
コイルの導線が接続されるコイル接続部と、
回路に接続される端子部と、を有する、
ボビン。
【請求項14】
請求項13に記載のボビンと、
前記ボビン部に巻き付けられたコイルと、
を備えた、
コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子台、ボビン及びコイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイル装置のボビンに端子台を設けたものが記載されている。端子台の端子取付部には、端子を挿入して固定するための端子挿入口と、端子挿入口につながる嵌合穴が形成されている。また、端子には、切り起こしにより爪が形成されている。端子を端子挿入口に挿入すると、端子の爪が端子取付部の嵌合穴と嵌合して、所謂スナップフィットにより端子が端子取付部に取り付けられるようになっている。
【0003】
特許文献1に記載の端子台においては、端子の爪の根元を端子の挿入方向と垂直な直線(以下「横軸」という。)を軸に折り曲げることにより、嵌合穴側に起立した爪が形成されている。そのため、端子の爪は、横軸周りのトルクに対しては剛性が低く、爪が横軸を支点に旋回しやすくなっている。端子を端子挿入口に差し込むと、爪に横軸周りのトルクが加わる。そのため、爪は、弾性変形によって一時的に倒され、嵌合穴まで到達すると弾性復元力によって元の起立した状態に戻って、嵌合穴と嵌合するように構成されている。すなわち、端子側の弾性変形を利用したスナップフィットが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の端子台においては、端子に引き抜く力が加えられたときに生じる横軸周りのトルクに対する爪の剛性が低いため、端子の引き抜き力が弱くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、折り曲げにより起立させた爪を使用するスナップフィットによって固定される端子の引き抜き力を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る端子台は、端子と、端子が取り付けられる端子取付部を有するベースと、を備え、端子が、端子取付部と結合する結合部を備え、端子取付部に、結合部が挿入される、第1の方向に延びる挿入穴と、挿入穴と連絡する嵌合穴と、が形成されていて、結合部が、嵌合穴と嵌合する爪部を備え、爪部が、その根元において第1の方向と略平行な直線の周りに曲げられることによって、嵌合穴に向かって突出しているものである。
【0008】
上記の端子台において、端子取付部に、結合部を嵌合穴へ向けて押し出す斜面が形成された構成としてもよい。
【0009】
上記の端子台において、爪部が、結合部の第1の方向における先端部に設けられ、斜面が、結合部の先端部を嵌合穴へ向けて押し出すように形成された構成としてもよい。
【0010】
上記の端子台において、結合部が、第1の方向と直交する第2の方向において挿入穴に対して結合部を位置決めする第1の位置決め構造を備えた構成としてもよい。
【0011】
上記の端子台において、第1の位置決め構造が、第2の方向へ突出して挿入穴の壁面と接触する突出部である構成としてもよい。
【0012】
上記の端子台において、突出部が、第2の方向において、結合部が挿入穴よりもわずかに大きくなるように形成された構成としてもよい。
【0013】
上記の端子台において、突出部が、第1の方向において爪部から離れた位置に形成された構成としてもよい。
【0014】
上記の端子台において、結合部が、第1の方向及び第2の方向の二方向と直交する第3の方向において挿入穴に対して結合部を位置決めする第2の位置決め構造を備えた構成としてもよい。
【0015】
上記の端子台において、第2の位置決め構造が、第3の方向における結合部の一端に形成された、挿入穴の壁面と接触する第1の位置決め面と、第3の方向における結合部の他端に形成された、挿入穴の壁面と接触する第2の位置決め面と、を含む構成としてもよい。
【0016】
上記の端子台において、挿入穴の断面形状が、第1の方向と直交する第2の方向に延びる一辺を有する矩形であり、嵌合穴が、挿入穴の第2の方向と垂直な壁面に開口した構成としてもよい。
【0017】
上記の端子台において、第1の方向及び第2の方向の二方向と直交する第3の方向において、爪部が結合部の中央部に配置された構成としてもよい。
【0018】
上記の端子台において、爪部及び嵌合穴の噛み合う面が、第1の方向と略垂直に形成された構成としてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、コイルが巻き付けられるボビン部と、上記の端子台と、を備え、ボビン部と端子台のベースが一体に形成され、端子が、コイルの導線が接続されるコイル接続部と、回路に接続される端子部と、を有するボビンが提供される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、上記のボビンと、ボビン部に巻き付けられたコイルと、を備えたコイル装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、端子の爪部を、その根元において、挿入穴の延長方向(すなわち、端子の挿入方向)である第1の方向と略平行な直線の周りに曲げることにより、端子を引き抜く力が加えられたときに爪部に生じるトルクに対する爪部の強度が向上するため、引き抜き力を高くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るボビンの外観図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る端子の外観図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る端子の外観図である。
【
図5】端子とボビンの端子挿入部との嵌合状態を示した図である。
【
図6】端子とボビンの端子挿入部との嵌合状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、当該複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るリアクトル1の外観図である。
【0025】
以下の説明において、
図1における右上から左下へ向かう方向をX軸方向、左上から右下へ向かう方向をY軸方向、下から上へ向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向である。また、説明の便宜上、X軸正方向を前、X軸負方向を後ろ、Y軸正方向を左、Y軸負方向を右、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下とも称する。これらの方向の呼称は、リアクトル1を構成する各部の相対的な位置や向きを簡潔に説明するために使用されるものであり、使用時のリアクトル1の向きを示すものではない。なお、リアクトル1は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びそれらの中間の方向のいずれの方向を鉛直に向けて使用してもよい。
【0026】
リアクトル1は、中足(不図示)を有するEI形のコア10と、その中空部にコア10の中足が通された略筒状のボビン部30a及び端子台ベース40(以下、単に「ベース40」という。)を備えた端子台付きボビン30(以下、単に「ボビン30」という。)と、ボビン部30aに巻き付けられた1つ以上(図示の具体例においては2つ)のコイル20と、ベース40に取り付けられた複数の端子50を備えている。ベース40に端子50を取り付けることにより、端子台60が構成される。
【0027】
コア10はギャップ付きコアであり、E形コア11の中足の端面を樹脂等の非磁性体から形成された平板状のギャップ部材(不図示)を介してI形コア12の側面に接合することによってギャップ(不図示)が形成されている。コア10は、圧粉磁心であるが、別の種類の磁心(例えば、フェライト磁心や、ケイ素鋼板等の電磁鋼板を積層した積層磁心等)であってもよい。
【0028】
コイル20は、エナメル等の絶縁被覆が施された導線を螺旋状に巻いたものである。導線には、例えば、銅やアルミニウム等から形成された平角線や丸線が使用される。より具体的には、本実施形態のコイル20は、丸線を多層整列巻きしたものであるが、導線の断面形状や巻き方はこの構成に限定されない。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る、端子50が取り付けられた状態のボビン30の外観図である。ボビン30は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の電気絶縁性を有する材料から形成される。
【0030】
ボビン30は、筒状の胴部31を有するボビン部30aと、胴部31の延長方向(X軸方向)における両端部に一体に形成された2対のベース40を備えている。また、ボビン部30aは、胴部31の外周に一体に形成された2対の鍔部32及び1つの鍔部34を有している。鍔部32及び鍔部34は、胴部31の延長方向と垂直な平板状の構成部分である。鍔部32は、胴部31の延長方向における両端部の左右両側面に1つずつ形成された、上下に長い矩形の構成部分である。鍔部34は、胴部31の延長方向における中央部の全周に亘って形成された、環状の構成部分である。
【0031】
胴部31の延長方向における各端部に設けられた上下に長い1対の鍔部32と左右に長い1対のベース40により、1つの環状の鍔部33が形成されている。また、各鍔部33を構成する1対の鍔部32の背面32aと1対のベース40の背面40aは、同一平面上に形成されている。
【0032】
コイル20(
図1)が巻き付けられるボビン部30aの胴部31の外周は、1対の鍔部33及び鍔部34によって、コイル20の軸方向(すなわち、X軸方向)に仕切られている。ボビン部30aの胴部31には、2つのコイル20が巻き付けられる。一方のコイル20は、ボビン部30aの一方の鍔部33と鍔部34の間(以下「第1巻付部」という。)に配置され、他方のコイル20は、他方の鍔部33と鍔部34の間(以下「第2巻付部」という。)に配置される。
【0033】
ベース40には、端子50が取り付けられる複数(図示の具体例においては4つ)の端子取付部41が、Y軸方向に所定の間隔で形成されている。端子取付部41には、端子50の下部(後述する結合部53)が挿入される上下(第1の方向)に延びる挿入穴42が形成されている。挿入穴42の上端は、端子取付部41の上面に開口し、差込口42aを形成している。本実施形態では、4つの端子取付部41のうちの2つに端子50が取り付けられている。端子取付部41の詳しい内部構造については、後述する。
【0034】
図3及び
図4は、それぞれ異なる方向から見た端子50の外観図である。端子50は、例えば、銅、黄銅、リン青銅、鉄又はステンレス鋼等の金属板から形成され、必要に応じて、例えば、ニッケルメッキ、スズメッキ又は三価クロメート等の表面処理が施されたものである。本実施形態の端子50は、プレス加工により比較的に低コストで製造することができる。なお、端子50の製造には、プレス加工に限定されず、切削、鍛造又は鋳造等のその他の加工方法又はこれらを組み合わせた方法を使用することができる。
【0035】
端子50は、リアクトル1を回路に接続するための端子部51と、コイル20の導線の端部を接続するためのコイル接続部52と、ベース40の端子取付部41に形成された挿入穴42に挿入される結合部53を有している。なお、端子50は、コイル接続部52と、後述する結合部53の突出部531及び爪部533を除き、X軸方向に垂直な平板により形成されている。
【0036】
端子部51は、上下に長い矩形平板状の部分である。端子部51は、プラグアダプタに差し込み可能な形状に形成されている。端子部51には、プラグアダプタとの嵌合に使用される貫通穴51aが形成されている。貫通穴51aを使用して、圧着端子等を端子部51にねじで固定することもできる。
【0037】
コイル接続部52は、端子部51に対して垂直に延びるアームである。コイル接続部52の延長方向における先端部及び中間部には、コイル20の導線を絡み付け易くするために、上方に突出する突起521が形成されている。
【0038】
結合部53の上部には、左右中央に、後述する爪部533と同じ方向に突出する突出部531が形成されている。突出部531は、例えば、ハーフパンチにより形成される。
【0039】
結合部53の上下中央部には、左右一端から中央にかけて切り込み532が形成されている。結合部53の切り込み532から下側の部分が前方に折り曲げられて、前方へ(すなわち、後述する嵌合穴43(
図6)に向かって)突出するように起立した爪部533が形成されている。
【0040】
これにより、爪部533は、端子50のY軸方向における略中央部に配置され、嵌合穴43(より正確には、後述する角部44の下面)のY軸方向における略中央部と嵌合する。角部44は、Y軸方向中央部において、最も剛性が低く、弾性変形により変位しやすくなっている。そのため、この位置で角部44と爪部533とを嵌合させることにより、比較的に弱い力で嵌合に必要な変形量を角部44に与えることが可能になる。また、嵌合時に端子取付部41を形成する樹脂に加わるひずみも小さくなり、端子取付部41の信頼性が向上する。
【0041】
なお、本実施形態では、爪部533は根元で直角に曲げられているが、本発明はこの構成に限定されない。爪部533の前方への突出量(すなわち、爪部533が端子取付部41に引っ掛かる部分の長さである後述の「噛み合い長L」)を十分に確保することができれば、爪部533を曲げる角度は、どのような値であってもよい。
【0042】
結合部53の左右両端には、Y軸方向と垂直な第1の位置決め面534a(
図3)及び第2の位置決め面534b(
図4)が所定の間隔で形成されている。なお、Y軸方向は、挿入穴42の延長方向であるZ軸方向(第1の方向)及び突出部531が突出するX軸方向(第2の方向)の二方向と直交する方向(第3の方向)である。第1の位置決め面534a及び第2の位置決め面534bにより、Y軸方向において挿入穴42に対して結合部53を位置決めするY軸方向の位置決め構造(第2の位置決め構造)が構成される。
【0043】
結合部53の下端部には、テーパー面535a(
図3)、535b及び535c(
図4)が形成されている。これにより、端子取付部41の挿入穴42に端子50の結合部53を差し込み易くなっている。
【0044】
図5及び
図6は、それぞれ、ベース40の端子取付部41の挿入穴42に端子50を差し込んだ状態を示した図である。なお、
図5は、端子50を挿入穴42に挿入中(すなわち、端子50の結合部53が最下点である結合位置に到達する前)の状態を示し、
図6は、端子50の結合部53が結合位置に到達して、端子取付部41に固定された状態を示す。
【0045】
端子取付部41には、端子50の結合部53が差し込まれる上下に延びる挿入穴42と、挿入穴42の下部から前方に延びる嵌合穴43が形成されている。挿入穴42と嵌合穴43は連絡し、L字状に延びる中空部を形成している。嵌合穴43は、挿入穴42の前方壁面42b(すなわち、X軸方向に垂直な壁面)に開口している。なお、本実施形態の挿入穴42及び嵌合穴43の断面形状は矩形であるが、別の断面形状であってもよい。また、本実施形態では、嵌合穴43が前方において外部に開口しているが、嵌合穴43の前方は閉じていても良い。
【0046】
端子50の結合部53に形成された突出部531は、挿入穴42の延長方向であるZ軸方向(第1の方向)と直交するX軸方向(第2の方向)において挿入穴42に対して結合部53を位置決めするX軸方向の位置決め構造(第1の位置決め構造)である。
【0047】
端子50は、先端部の爪部533より、差込口42aから挿入穴42に挿入される。結合部53の幅(Y軸方向の大きさ)と厚さ(X軸方向の大きさ)は、突出部531が形成された部分(より正確には、突出部531及びその周辺部分)を除き、挿入穴42のY軸方向及びX軸方向の大きさと同じか、それより小さくなっている。そのため、突出部531が差込口42aに到達するまでは、端子50は大きな抵抗なく挿入穴42に差し込まれる。
【0048】
突出部531が形成された部分における結合部53の厚さT(
図6)は、挿入穴42のX軸方向の大きさよりも所定量だけわずかに大きくなっている。従って、突出部531が形成された部分は、圧入により、挿入穴42に挿入される。これにより、端子50のX軸方向への傾き(すなわち、Y軸周りの揺れ)やガタツキが抑制されると共に、端子50の引き抜き力が強化される。また、端子50のX軸方向への動きが抑制されることにより、端子50の爪部533と端子取付部41の嵌合穴43との引っ掛かりが外れにくくなり、端子50の固定が安定化する。なお、突出部531が形成された部分における結合部53の厚さTを挿入穴42のX軸方向の大きさと略同じ大きさにして、圧入せずに突出部531を挿入穴42に挿入できるようにしてもよい。この場合、端子50の引き抜き力は強化されないが、端子50のX軸方向への傾きやガタツキが防止される。また、端子50を挿入穴42に差し込む力が軽減する。
【0049】
なお、圧入が必要となる程度まで突出部531の高さ(X軸方向への突出量)を大きくする場合は、突出部531の周辺で端子取付部41が変形する。端子取付部41の爪部533と噛み合う部分が変形すると、噛み合いが外れて、端子50が抜けやすくなる。そのため、突出部531は、爪部533から離れた位置に形成されることが望ましい。本実施形態では、爪部533を結合部53の下端部に設け、突出部531を結合部53の上端部に設けることにより、突出部531の圧入の影響の軽減が図られている。
【0050】
挿入穴42の後方の壁面の下部(具体的には、嵌合穴43の天井面43aよりも低い部分)には、下方に向かうにつれて徐々に前方へ変位する傾斜面42dが形成されている。爪部533は、傾斜面42dに到達すると、下方へ押し込まれるにつれ、傾斜面42dによって徐々に前方へ押し出される。そして、爪部533(具体的には、爪部533の先端上部533a)によって挿入穴42の前方壁面42bの下部(具体的には、挿入穴42の前方壁面42bと嵌合穴43の天井面43aとが交わる角部44)が弾性変形により前方に押し広げられる。
【0051】
なお、傾斜面42dは、本実施形態では平面であるが、曲面でもよい。この場合、傾斜面42dは、例えば、曲率が一定の円筒面であってもよく、下方ほど曲率が徐々に増加する曲面であってもよい。また、傾斜面42dは、曲面と平面を連続的に(すなわち、傾きが連続的に変化するように)繋げたものでもよい。
【0052】
爪部533の先端上部533aが角部44を通過すると、角部44が爪部533から受けていた力が消失し、弾性復元力により角部44が元の形状に戻る(すなわち、後方へ変位する)。このとき、爪部533は、傾斜面42dにより距離L(
図6)だけ前方へ押し出され、先端上部533aは嵌合穴43に収容されている。そのため、端子50を引き抜く力(Z軸正方向の力)が加えられても、爪部533の先端上部533aは嵌合穴43の天井面43a(具体的には、角部44の下面)に付き当たるため、爪部533の先端上部533aが嵌合穴43から離脱できず、端子取付部41からの端子50の引き抜きが阻害される。
【0053】
爪部533の先端上部533aと角部44が噛み合う部分の長さL(以下「噛み合い長L」という。)によって引き抜き力が変化する。また、噛み合い長Lは、傾斜面42dの設計(例えば、傾斜角や長さ)によって変化する。すなわち、傾斜面42dの設計によって引き抜き力を調整することができる。
【0054】
図6に示されるように、爪部533の先端上部533aと端子取付部41の角部44は、それぞれ、エッジが面取りされておらず、二つの交差する平面(具体的には、X軸方向に略垂直な平面と、Z軸方向に略垂直な平面)によって外形が形成されている。このように、互いに噛み合う部分のエッジを角張った形状にすることにより、有効な噛み合い長Lを長くすることができ、より大きな引き抜き力を得ることが可能になる。
【0055】
本実施形態では、端子50の基材をZ軸(より正確には、Z軸方向に延びる直線)の周りに曲げることによって爪部533が形成されている。そのため、爪部533は、曲げ軸(Z軸)周りのトルクに対しては余り剛性が高くないが、曲げ軸に垂直なY軸周りのトルクに対しては高い剛性を有している。ここで、Z軸方向は、挿入穴42の延長方向であり、すなわち、挿入穴42に端子50を挿入する方向である。従って、端子50が引き抜かれる際には、爪部533には引き抜き方向に垂直なY軸周りのトルクが加わる。従って、端子50が引き抜かれるときに、爪部533が引き抜き力によって変形しにくくなっている。
【0056】
なお、本実施形態では、爪部533はその根元において正確にZ軸方向と平行な直線の周りに曲げられているが、曲げ軸はZ軸方向と略平行であればよい。例えば、曲げ軸がZ軸方向となす角度が45°以下であれば、爪部533が引き抜き力によって変形しにくくなるという本発明の作用効果が現れる。
【0057】
図示された本実施形態の具体例では、ボビン30に4つのベース40が設けられ、各ベース40に4つの端子取付部41が設けられているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ボビン30には、単一又は複数(例えば、2~16個)のベース40を設けることができる。また、ベース40には、単一又は複数(例えば、2~16個)の端子取付部41を設けることができる。
【0058】
図示された本実施形態の具体例では、ボビン30に設けられた計16個の端子取付部41のうち、上側の4つの端子取付部41のみに端子50が取り付けられているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ボビン30に取り付けられる端子50の数は、ボビン30に装着されるコイル20の数等によって変えることができる。また、本実施形態では、端子50よりも多くの端子取付部41が、様々な位置及び向きで設けられている。この構成により、リアクトル1の回路への接続に適した位置及び向きの端子取付部41を選択して使用することが可能になるため、リアクトル1の設置の自由度を高くすることができる。
【0059】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば明細書中に記載された1つ以上の実施形態の技術構成の少なくとも一部と公知の技術構成とを適宜組み合わせたものも本発明の範囲に含まれる。
【0060】
上記の実施形態では、基材の切り起こしにより嵌合穴43と嵌合する突出部である爪部533が形成されているが、嵌合穴43と嵌合する突出部の形状や加工方法はこの構成に限定されない。例えば、爪部533に替えて、ハーフパンチにより形成した突出部を嵌合穴43と嵌合させる構成としてもよい。
【0061】
上記の実施形態は、E形コア11の中足とI形コア12の間にギャップ部材を介在させることによってコア10にギャップが設けられているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ギャップレスのコアを使用してもよい。また、ギャップ付きコアの構造は、コアの接合部にギャップ部材を介在させたものに限らず、例えば、ギャップ部材を使用せずにコアの接合部に厚い接着層を設けたものや、エアギャップを設けたものでもよい。
【0062】
上記の実施形態のコア10は、E形コア11とI形コア12とを組み合わせたEI形コアであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明は、例えば、1対のE形コアを組み合わせたEE形コアや、1対のL形コア、J形コア、C形コア又はU形コアを組み合わせたO形コア等の様々な形態のコアを備えたコイル装置に適用することができる。
【0063】
本実施形態では、端子台60のベース40がボビン30に一体に設けられているが、例えばねじ止めや接着等によりベース40をボビン30に取り付けた構成としてもよい。また、ベース40とボビン30とを分離した構成としてもよい。
【0064】
上記の実施形態は、本発明をリアクトルに適用した一例であるが、本発明は、トランス等の別の種類のコイル装置にも適用することができる。また、本発明は、空芯コイル用のボビンにも適用することができる。また、本発明は、コイル装置以外の電気機器(又は、コイル装置以外の電気機器に適した端子台)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 リアクトル
10 コア
20 コイル
30 ボビン
40 端子台ベース
41 端子取付部
42 挿入穴
43 嵌合穴
50 端子
53 結合部
60 端子台