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  • 特許-ガスセンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/407 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G01N27/407
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020169534
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061554
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇史
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-292119(JP,A)
【文献】特許第4859123(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0075253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406-27/413
G01N 27/417-27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子の先端部が自身の先端よりも突出し、前記センサ素子の後端部が自身の後端よりも突出するように当該センサ素子を支持する筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端部の外側に装着されると共に、前記センサ素子の先端部を覆う筒状のプロテクタと、
前記主体金具の後端部の外側に装着されると共に、前記センサ素子の後端部を覆う筒状の外筒と、
を備えるガスセンサにおいて、
前記主体金具と前記プロテクタとの装着部の第1合わせ目、及び前記主体金具と前記外筒との装着部の第2合わせ目に油剤が付着されており、該油剤の付着量が0.1mg未満であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記外筒の内径は前記プロテクタの内径よりも大径であり、
前記第2合わせ目の前記油剤の付着量が、前記第1合わせ目の前記油剤の付着量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記油剤の付着量が0.05mg以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関に用いるガスセンサにおいて、軸線方向に延びるセンサ素子を備える酸素センサが知られている。この酸素センサは、センサ素子の先端部を突出させるようにしてセンサ素子を保持する主体金具と、主体金具の先端部に装着される筒状金属製のプロテクタと、主体金具の後端部に装着される筒状金属製の外筒とを有している。
この主体金具、プロテクタ及び外筒を構成する金属部品は、金属材料を塑性加工、切削加工や研削加工して製造され、加工時の潤滑や冷却のために潤滑油剤、切削油剤や研削油剤のような油剤を金属材料に付着させる。
そして、金属材料に付着した油剤は、次のガスセンサの組立工程(例えば、主体金具のかしめ工程やプロテクタと主体金具の装着工程等)にて同様に潤滑や冷却のために、金属材料にそのまま残留させている。但し、残留油剤の量がその後の工程にとって多過ぎる又は少な過ぎるときは、残留油剤の一部を洗い落とし、又は、残留油剤にそれと同じ油剤を付加し、油剤の付着量を後工程に適した量に増減する。
【0003】
一方、ガスセンサの組立工程後、プロテクタや主体金具に油剤を残留させたままガスセンサを排気管に取り付けて使用に供した場合、プロテクタの内周面や主体金具内周面の残留した油剤がガス化し、プロテクタ内にそのガスが染み出すことで、プロテクタ内の被測定ガスと混ざり合い、ガス検出精度が低下する虞がある。そこで、プロテクタ内周面や主体金具内周面に付着した油剤の量を0.7mg未満に規制し、ガス検出精度の低下を抑制する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4859123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスセンサの組立工程にて、主体金具の後端部に外筒を嵌合する際、及び主体金具の先端部にプロテクタを嵌合する際には、適量の油剤により嵌合時の荷重を低減することが好ましい。又、油剤が介在すれば、例えば主体金具に対して外筒が斜めに嵌合されても滑りが向上して外筒の向きを修正することができる。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、主体金具の先後端にそれぞれプロテクタ及び外筒を容易に装着でき、生産性が向上したガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子の先端部が自身の先端よりも突出し、前記センサ素子の後端部が自身の後端よりも突出するように当該センサ素子を支持する筒状の主体金具と、前記主体金具の先端部の外側に装着されると共に、前記センサ素子の先端部を覆う筒状のプロテクタと、前記主体金具の後端部の外側に装着されると共に、前記センサ素子の後端部を覆う筒状の外筒と、を備えるガスセンサにおいて、前記主体金具と前記プロテクタとの装着部の第1合わせ目、及び前記主体金具と前記外筒との装着部の第2合わせ目に油剤が付着されており、該油剤の付着量が0.1mg未満であることを特徴とする。
【0007】
このガスセンサによれば、油剤が残留した状態で、プロテクタの内面を主体金具の外面に外嵌し、同様に外筒の内面を主体金具の外面に外嵌すると、油剤により嵌合時の荷重を低減することができる。又、油剤が介在することで、主体金具に対してプロテクタや外筒が斜めに嵌合されても滑りが向上してプロテクタや外筒の軸線方向の向きを修正することができる。
このようにして、主体金具の先後端にそれぞれプロテクタ及び外筒を容易に装着でき、生産性が向上する。
そして、主体金具の先後端にそれぞれプロテクタ及び外筒を装着してガスセンサを組み付けた後、全体を熱処理して余分な油剤を除去するが、第1合わせ目,第2合わせ目の油剤は完全に除去し難い。
そこで、最終製品であるガスセンサにおける第1合わせ目,第2合わせ目の油剤の付着量が0.1mg未満であれば、油剤が残留してもセンサの測定精度の低下等を抑制できる。
【0008】
本発明のガスセンサにおいて、前記外筒の内径は前記プロテクタの内径よりも大径であり、前記第2合わせ目の前記油剤の付着量が、前記第1合わせ目の前記油剤の付着量よりも多くてもよい。
外筒の内径がプロテクタの内径よりも大径であると、主体金具への装着(嵌合)時の荷重も大きくなるので、油剤の付着量がより多いと嵌合時の荷重をさらに低減することができる。
本発明のガスセンサにおいて、前記油剤の付着量が0.05mg以上であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、主体金具の先後端にそれぞれプロテクタ及び外筒を容易に装着でき、生産性が向上したガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
図2】主体金具に、プロテクタを外嵌して第1合わせ目を形成する態様を示す図である。
図3】主体金具に、外筒を外嵌して第2合わせ目を形成する態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図1図3に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図、図2は主体金具11にプロテクタ50を外嵌して第1合わせ目J1を形成する態様を示す図、図3は主体金具11に外筒81を外嵌して第2合わせ目J2を形成する態様を示す図である。
【0012】
図1において、ガスセンサ(酸素センサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30及び主体金具11より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
【0013】
なお、センサ素子21の後端21eを含む後端寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各電極パッド部13~17に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極パッド部13~17を含むセンサ素子21の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0014】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。
このセンサ素子21は、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22が配置され、後端寄り部位には、電極パッド部13~17が露出形成されている。
さらに、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
【0015】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側が小径で、後述する内側プロテクタ51を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ33が設けられている。そして、その後方には、このネジ33によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部11eが連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部36を備えている。なお、このカシメ用円筒部36は、図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部11dを有している。
【0016】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部11dに係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0017】
センサ素子21は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子21の先端をセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)50で覆われている。プロテクタ50は、内側プロテクタ51と、内側プロテクタ51に外嵌された外側プロテクタ61とからなり、このうち内側プロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。
また、外側プロテクタ61は、内側プロテクタ51に外嵌して一体のプロテクタ50となり、プロテクタ50の後端部50eが円筒部12に溶接されている。外側プロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、プロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
【0018】
又、図1に示すように、センサ素子21の後端寄り部位に形成された各電極パッド部13~17には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端寄り部位の円筒部11eに外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、外筒81の小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0019】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0020】
そして、本発明の特徴部分として、主体金具11の円環状部12とプロテクタ50との装着部(溶接部)の第1合わせ目J1、及び主体金具11の円筒部11eと外筒81との装着部(溶接部)の第2合わせ目J2にそれぞれ油剤が付着されており、該油剤のJ1,J2における付着量がそれぞれ0.1mg未満である。
【0021】
次に、図2図3を参照し、合わせ目J1,J2における油剤の付着量の規定理由について説明する。
図2は、主体金具11の円環状部12に、プロテクタ50の後端部51eの内面51iを外嵌して第1合わせ目J1(図1)を形成する態様を示す。なお、図2の例では、主体金具11にセンサ素子21を保持した第1アセンブリ21AXに、プロテクタ50の内面51iを外嵌している。
ここで、円環状部12の外面、及びプロテクタ50の内面51iには、それぞれ所定量の油剤Wが残留している。この油剤Wは、主体金具11やプロテクタ50を加工して製造する際の潤滑油剤、切削油剤や研削油剤などに由来する。
【0022】
同様に、図3は、主体金具11の円筒部11eに、外筒81の内面81iを外嵌して第2合わせ目J2(図1)を形成する態様を示す。なお、図3の例では、図2で第1アセンブリ21AXにプロテクタ50を保持して作製した素子アセンブリ21Aに、外筒81の内部にセパレータ91、端子金具75、シール材85等を組み付けた外筒アセンブリ81Aを外嵌している。
ここで、円筒部11eの外面、及び外筒81の内面81iには、それぞれ所定量の油剤Wが残留している。この油剤Wは、主体金具11や外筒81を加工して製造する際の潤滑油剤、切削油剤や研削油剤などに由来する。
【0023】
そして、油剤Wが残留した状態で、プロテクタ50の内面51iを円環状部12の外面に外嵌し、同様に外筒81の内面81iを円筒部11eの外面に外嵌すると、油剤Wにより嵌合時の荷重を低減することができる。又、油剤Wが介在することで、主体金具11に対してプロテクタ50や外筒81が斜めに嵌合されても滑りが向上してプロテクタ50や外筒81の軸線O方向の向きを修正することができる。
このようにして、主体金具11の先後端にそれぞれプロテクタ50及び外筒81を容易に装着でき、生産性が向上する。
【0024】
そして、主体金具11の先後端にそれぞれプロテクタ50及び外筒81を装着してガスセンサ1を組み付けた後、全体を熱処理して余分な油剤を除去するが、第1合わせ目J1,第2合わせ目J2の油剤は完全に除去し難い。
そこで、最終製品であるガスセンサ1における第1合わせ目J1,第2合わせ目J2の油剤の付着量が0.1mg未満であれば、油剤が残留してもセンサの測定精度の低下等を抑制できる。
【0025】
第1合わせ目J1,第2合わせ目J2の油剤の付着量は、例えば顕微赤外分光法で測定できる。具体的には、例えば最終製品であるガスセンサ1から第1合わせ目J1,第2合わせ目J2を切り出した部位を水中に浸漬して油分を抽出し、この水溶液を測定することができる。測定器としては、堀場製作所製の油分濃度計OCMA-555-Hが例示できる。
【0026】
なお、外筒81の内径はプロテクタ50(内側プロテクタ51)の内径よりも大径である場合、第2合わせ目J2の油剤の付着量が、第1合わせ目J1の前記油剤の付着量よりも多いことが好ましい。
外筒81の内径がプロテクタ50(内側プロテクタ51)の内径よりも大径であると、主体金具11への装着(嵌合)時の荷重も大きくなるので、油剤の付着量がより多いと嵌合時の荷重をさらに低減することができる。
【0027】
なお、第1合わせ目J1、第2合わせ目J2における油剤の付着量は、先述した測定方法にて検出可能な量が付着していれば良いが、0.05mg以上付着していると、より一層プロテクタ及び外筒を容易に装着することができるため、好ましい。
【0028】
本発明のガスセンサは、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜にその構造、構成を設計変更して具体化できる。
センサ素子としては、板状素子に限らず、筒状素子を用いてもよい。プロテクタも二重プロテクタに限定されない。
【符号の説明】
【0029】
1 ガスセンサ
11 主体金具
11e 主体金具の後端部(円筒部)
12 主体金具の先端部(円環状部)
21 センサ素子
50 プロテクタ
81 外筒
J1 第1合わせ目
J2 第2合わせ目
O 軸線
W 油剤
図1
図2
図3