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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240216BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101B
B05B11/00 101G
B05B11/00 101K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020182787
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073034
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142766(JP,A)
【文献】特開平8-324616(JP,A)
【文献】特開2007-320594(JP,A)
【文献】特開2008-207159(JP,A)
【文献】特開平11-221500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容される容器本体の口部に上方付勢状態で下降可能に立設されるステムを有するポンプと、
前記ステムの上端部に取り付けられ、内容液の吐出孔を有する押下ヘッドと、
前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、
前記ポンプは、
前記ステムに連動して上下動する液用ピストンが内部に上下摺動自在に設けられた液用シリンダと、
前記ステムに連動して上下動する空気用ピストンが内部に上下摺動自在に設けられた空気用シリンダと、
前記液用シリンダ内と前記吐出孔との連通を遮断するとともに、前記液用シリンダの内圧が高まったときに前記液用シリンダ内と前記吐出孔とを連通させる上部弁体と、を有し、
前記液用シリンダの内周面のうち前記液用ピストンよりも下方に位置する部分には開放凹部が形成され、
前記空気用ピストンと前記ステムとの間には、前記空気用シリンダ内と前記吐出孔とを連通させる空気流路が形成され、
前記液用ピストンが前記開放凹部に到達したときに、前記液用シリンダ内と前記容器本体内とを連通させる連通孔が設けられ、
前記空気用ピストンは、前記液用ピストンが前記開放凹部に到達した後も前記空気用シリンダに対して下降可能である、吐出器。
【請求項2】
前記ステムは中間部材および上側部材を含み、
前記中間部材は前記空気用ピストンの径方向内側に挿入され、
前記上側部材は前記押下ヘッドが取り付けられる取付筒部を有し、
前記上部弁体は、前記ステム内に設けられ、
前記空気流路は前記取付筒部の内面における前記上部弁体よりも上方の部位に開口している、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記液用ピストンが前記開放凹部に到達するまでの間、前記空気用シリンダ内の空気を排出する排気部を有する、請求項1または2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押下ヘッドを押下したときに、容器本体の内容液が吐出孔から吐出するように構成された吐出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-276943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内容液を吐出させた後、押下ヘッド内(例えば吐出孔の内側等)に内容液が残留すると、この内容液が固化して次回の吐出がされにくくなる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、押下ヘッド内で内容液が固化することを抑制できる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る吐出器は、内容液が収容される容器本体の口部に上方付勢状態で下降可能に立設されるステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に取り付けられ、内容液の吐出孔を有する押下ヘッドと、前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、前記ポンプは、前記ステムに連動して上下動する液用ピストンが内部に上下摺動自在に設けられた液用シリンダと、前記ステムに連動して上下動する空気用ピストンが内部に上下摺動自在に設けられた空気用シリンダと、前記液用シリンダ内と前記吐出孔との連通を遮断するとともに、前記液用シリンダの内圧が高まったときに前記液用シリンダ内と前記吐出孔とを連通させる上部弁体と、を有し、前記液用シリンダの内周面のうち前記液用ピストンよりも下方に位置する部分には開放凹部が形成され、前記空気用ピストンと前記ステムとの間には、前記空気用シリンダ内と前記吐出孔とを連通させる空気流路が形成され、前記液用ピストンが前記開放凹部に到達したときに、前記液用シリンダ内と前記容器本体内とを連通させる連通孔が設けられ、前記空気用ピストンは、前記液用ピストンが前記開放凹部に到達した後も前記空気用シリンダに対して下降可能である。
【0007】
上記態様によれば、押下ヘッドが押下された際に、液用ピストンが液用シリンダ内を下降することで、液用シリンダの内圧が高まり、上部弁体が押し上げられて液用シリンダ内と吐出孔とが連通し、内容液が吐出孔から吐出される。液用ピストンが開放凹部に到達すると、連通孔を通じて液用シリンダ内と容器本体内とが連通するため、液用シリンダの内圧が開放される。これにより、上部弁体がステム内と吐出孔との連通を遮断し、吐出孔に向けた内容液の供給が停止した状態で、空気流路から空気用シリンダ内の空気が吐出孔に向けて供給される。したがって、吐出孔等に残留した内容液が、空気用シリンダ内から供給される空気の圧力によって押し出され、内容液が固化することで吐出孔等が閉塞することを抑制できる。
【0008】
ここで、前記ステムは中間部材および上側部材を含み、前記中間部材は前記空気用ピストンの径方向内側に挿入され、前記上側部材は前記押下ヘッドが取り付けられる取付筒部を有し、前記上部弁体は、前記ステム内に設けられ、前記空気流路は前記取付筒部の内面における前記上部弁体よりも上方の部位に開口していてもよい。
【0009】
この場合、例えば中間部材と空気用ピストンとの間の隙間および中間部材と上側部材との間の隙間を用いて空気流路を形成できる。そして、空気流路が上部弁体の上方に開口していることで、上部弁体がステム内と吐出孔との連通を遮断した状態で空気を上部弁体の上方に供給し、この空気によって吐出孔等に残留した内容液を押し出すことができる。
【0010】
また、上記態様の吐出器は、前記液用ピストンが前記開放凹部に到達するまでの間、前記空気用シリンダ内の空気を排出する排気部を有してもよい。
【0011】
この場合、液用ピストンが開放凹部に到達するまでは、排気部から空気が排出されるため、空気流路を通じて空気用シリンダ内の空気が吐出孔に供給されることが抑制される。したがって、吐出孔から吐出される内容液に空気が混ざることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、押下ヘッド内で内容液が固化することを抑制可能な吐出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る吐出器の縦断面図である。
図2図1の押下ヘッドが押下された状態を示す縦断面図である。
図3】第2実施形態に係る吐出器の縦断面図である。
図4図4の押下ヘッドが押下された状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の吐出器について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、吐出器1Aは、容器本体2の口部2aに上方付勢状態で下降可能に立設されるステム4を有するポンプ3と、ステム4の上端部に取り付けられ、内容液の吐出孔85aが形成された押下ヘッド80と、ポンプ3を口部2aに装着する装着キャップ40と、を備える。吐出器1Aおよび容器本体2を合わせて、「吐出容器」ともいう。容器本体2は有底筒状に形成されており、内部には内容液が収容される。
吐出器1Aは、押下ヘッド80を押下してステム4を下方に移動させポンプ3を作動させることにより、内容液をステム4内を通して吐出孔85aから吐出するように構成されている。
【0015】
(方向定義)
本実施形態では、ステム4の中心軸線Oに沿う方向を上下方向という。上下方向において、押下ヘッド80側を上方といい、容器本体2の底部側を下方という。上下方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
ポンプ3は、ステム4と、シリンダ部材10と、下側弁部材30と、空気用ピストン50と、押下ヘッド80と、上側弁部材90と、を有する。本実施形態のステム4は、下側部材20と、中間部材70と、上側部材60と、が組み合わされた構造を有する。なお、ステム4は1つの部品により構成されてもよい。
【0017】
シリンダ部材10は、液用シリンダ11と、拡径部12と、空気用シリンダ13と、フランジ部14と、下筒部15と、バネ座17と、を有する。液用シリンダ11は上下方向に延びる筒状である。液用シリンダ11の下端部には、内径が下方に向かうに従って小さくなるテーパ部11cが形成されている。液用シリンダ11には、連通孔Hおよび開放凹部11bが形成されている。連通孔Hは、液用シリンダ11の上端部であって、拡径部12よりも下方に位置する部分に形成されている。連通孔Hは液用シリンダ11を径方向に貫通するように形成されており、容器本体2内に向けて開口している。なお、連通孔Hはシリンダ部材10における液用シリンダ11以外の部位に形成されてもよい。
【0018】
開放凹部11bは、液用シリンダ11の内周面に形成され、径方向外側に向けて窪んでいる。開放凹部11bは、連通孔Hよりも下方かつ液用シリンダ11の下端のテーパ部11cよりも上方に形成されている。開放凹部11bは、液用シリンダ11の内周面において周方向の全周にわたって延びている。ただし、開放凹部11bは、周方向に間隔を空けて形成された複数の縦溝(上下方向に沿って延びる溝)であってもよい。
バネ座17は、開放凹部11bよりも下方に位置しており、液用シリンダ11の内周面から径方向内側に突出している。
【0019】
拡径部12は、液用シリンダ11の上端に形成されている。拡径部12の内径は液用シリンダ11の内径よりも大きい。空気用シリンダ13は有底筒状であり、拡径部12の上方に位置している。空気用シリンダ13内には、空気用ピストン50が上下方向に摺動可能に設けられている。空気用シリンダ13、ステム4、および空気用ピストン50によって囲まれた空間を、本実施形態では「作動空間S」という。空気用ピストン50が空気用シリンダ13に対して上下方向に摺動することに伴い、作動空間Sの内容積が変化する。
【0020】
空気用シリンダ13の底壁は拡径部12の上端に接続されている。空気用シリンダ13の内径は液用シリンダ11および拡径部12の内径よりも大きい。空気用シリンダ13には、複数の空気孔13aが周方向に間隔を空けて形成されている。なお、空気孔13aの数は1つでもよい。フランジ部14は、空気用シリンダ13における空気孔13aよりも上方の部分から径方向外側に突出している。フランジ部14と口部2aとの間に、環状のパッキンが挟まれている。
【0021】
下筒部15は、液用シリンダ11から下方に突出している。下筒部15の内側には、パイプ16が挿入されている。パイプ16の下端は容器本体2の底部近傍において開口している。液用シリンダ11内が負圧になったとき、パイプ16の下端の開口から吸い上げられた内容液が、液用シリンダ11内に流入する。
【0022】
下側部材20は、液用ピストン21と、係止部22と、フランジ23と、シール筒部24と、を有する。液用ピストン21は、上下方向に延びる筒状であり、下端部は弾性を有するとともに下方に向かうに従って拡径している。液用ピストン21の下端部は、液用シリンダ11の内周面に液密に接しており、シールが確保された状態で液用シリンダ11に対して摺動する。
【0023】
液用ピストン21には、径方向外側に突出する補助シール突部21aが形成されている。補助シール突部21aは、液用ピストン21の下端よりも上方に位置しており、液用シリンダ11の内周面に液密に接している。押下ヘッド80が押下されていない状態では、補助シール突部21aは連通孔Hよりも上方に位置している。これにより、連通孔Hを通じて、容器本体2の内容液が空気用シリンダ13内に流入することが抑制される。
【0024】
係止部22は、液用ピストン21の内周面から径方向内側に突出している。係止部22には、下方から圧縮バネ6が接している。圧縮バネ6は、係止部22とバネ座17との間で、上下方向に圧縮された状態で配置されている。これにより、下側部材20(ステム4)が上方付勢される。
【0025】
フランジ23は、平面視で環状に形成されており、液用ピストン21の上端部から径方向外側に突出している。フランジ23の外径は拡径部12の内径よりも大きい。下側部材20が所定量下降すると、フランジ23が拡径部12の上端開口部に当接し、下側部材20がそれ以上下降することが規制される(図2参照)。シール筒部24は、弾性を有しており、フランジ23の径方向内端から下方に向けて突出した筒状である。シール筒部24の外径は、下方に向かうに従って大きくなっている。下側部材20が所定量下降すると、シール筒部24が拡径部12の内側に入り込むとともに、拡径部12の内周面に気密状態で当接する。拡径部12およびシール筒部24は、ステム4が所定量下降したときに、連通孔Hを通じた空気用シリンダ13内と容器本体2内との連通を遮断するシール構造を構成する。
【0026】
下側弁部材30は、上下方向に沿って延びる柱状であり、下部弁体31と、シール部32と、を有する。下部弁体31は、下側弁部材30の下端部に形成されており、液用シリンダ11のテーパ部11cに対して着座および離隔する。下部弁体31がテーパ部11cに着座すると、パイプ16を通した容器本体2と液用シリンダ11内との連通が遮断される。下部弁体31がテーパ部11cから離隔すると、前記遮断が解除され、再びパイプ16を通して容器本体2と液用シリンダ11内とが連通する。
【0027】
シール部32は、下側弁部材30の上端部に位置し、中空の逆円錐状に形成されている。シール部32は下側部材20の係止部22の内側に、離隔可能に嵌合している。シール部32が係止部22の内側に嵌合した状態では液用ピストン21内の内容液の流動が遮断され、シール部32が係止部22から離隔すると前記遮断が解除される。シール部32は、流通・保管・未使用時における容器本体2の内圧上昇や、転倒、倒立などを起因とする、内容液の漏れを防止する機能を有する。
【0028】
中間部材70は、下側部材20と上側部材60との間に位置しており、下側部材20と上側部材60とを連結している。中間部材70は、内筒部71と、中間筒部72と、上筒部73と、弁座74と、を有する。内筒部71は上下方向に延びる筒状であり、下側部材20における係止部22よりも上方の部分の内側に嵌合されている。中間筒部72は、内筒部71を径方向外側から囲繞している。内筒部71と中間筒部72との間に、下側部材20の上端部が挟まれている。中間筒部72の下端には、径方向外側に突出する突起72aが形成されている。突起72aは、平面視で環状である。上筒部73は、内筒部71および中間筒部72から上方に延びている。弁座74は、上筒部73の内側に形成された、上方を向く段差である。
【0029】
上側部材60は、取付筒部61と、環状突起62と、外側摺動筒部63と、を有する。取付筒部61の下部は、中間部材70の上筒部73を径方向外側から囲っている。取付筒部61の内周面のうち、上筒部73を囲う部分には、複数の縦溝が周方向に間隔を空けて形成されている。これらの縦溝は、後述の空気流路Rの一部である。環状突起62は、平面視で環状であり、取付筒部61の下端部から径方向外側に突出している。外側摺動筒部63は、取付筒部61から下方に延びている。
【0030】
空気用ピストン50は、中間部材70の径方向外側に装着されており、ステム4とともに上下動するように構成されている。空気用ピストン50は、取付部51と、環状部52と、摺動部53と、内側摺動筒部54と、を有する。取付部51は、上下方向に延びる筒状であり、中間筒部72を径方向外側から囲っている。逆に言えば、筒状の取付部51の内側に中間部材70が挿入されている。取付部51に、空気弁5が取り付けられている。環状部52は、取付部51の上端から径方向外側に突出しており、平面視で環状に形成されている。初期状態(図1)において、環状部52と外側摺動筒部63との間には、上下方向の隙間が設けられている。この隙間の範囲内で、上側部材60は空気用ピストン50に対して下降可能となっている。
【0031】
環状部52の内周縁には、環状部52を上下方向に貫通する吸気孔52aが形成されている。空気弁5は、取付部51に外嵌された外嵌筒部と、外嵌筒部の下端から径方向外側に延びる空気弁本体部と、を有する。空気弁本体部は、上下方向に弾性変形可能であり、吸気孔52aを下方から閉塞している。押下ヘッド80が押下された後、上方に復元変位する際、作動空間S内の減圧に伴って空気弁5の空気弁本体部が開き、吸気孔52aを通して外気が空気用シリンダ13内に供給される。
【0032】
摺動部53は、環状部52の径方向外端部から、上下方向に延びている。摺動部53は弾性変形可能であり、空気用シリンダ13の内周面に気密状態で接している。押下ヘッド80が押下されていない状態では、摺動部53によって、空気用シリンダ13の空気孔13aが内側から閉塞される。ステム4が上下動する際、空気用ピストン50もステム4とともに上下動する。このとき、摺動部53が気密状態を保ったまま空気用シリンダ13の内周面に対して摺動する。内側摺動筒部54は、環状部52から上方に向けて延びている。内側摺動筒部54の内径および外径は、上方に向かうに従って大きくなっている。空気用ピストン50と中間部材70との間には、径方向の隙間が設けられている。この隙間は、後述の空気流路Rの一部である。
【0033】
装着キャップ40は、上下方向に延びる装着筒部41と、装着筒部41の上端から径方向内側に延びる環状の頂壁部42と、を有する。装着筒部41の内周面には、容器本体2の口部2aに形成された雄ネジ部に螺着される雌ネジ部が形成されている。装着筒部41の雌ネジ部の内側に、シリンダ部材10のフランジ部14が嵌合していることで、ポンプ3が装着キャップ40に固定されている。押下ヘッド80の下端部は、頂壁部42の内側に挿通されている。装着筒部41の上部に、有頂筒状のキャップCの周壁が嵌合している。
【0034】
押下ヘッド80は、ヘッド内筒81と、ヘッド外筒82と、ノズル筒83と、を有する。ヘッド内筒81およびヘッド外筒82は上下方向に延びる筒状であり、ヘッド外筒82はヘッド内筒81を径方向外側から囲っている。ヘッド内筒81は取付筒部61に外嵌されており、これにより押下ヘッド80がステム4に取り付けられている。ノズル筒83はヘッド外筒82から径方向外側に突出している。ノズル筒83の内側とヘッド内筒81の内側とは連通している。
【0035】
ノズル筒83の内側には、流路形成部材84およびノズルチップ85が設けられている。ノズルチップ85は有頂筒状であり、ノズル筒83の先端の開口部の内側に嵌合されている。本実施形態では、ノズルチップ85に吐出孔85aが形成されている。ただし、例えばノズルチップ85を設けず、ノズル筒83の開口部自体が吐出孔に相当してもよい。流路形成部材84は径方向に延びる柱状部材であり、内容液の流路となる溝が形成されている。流路形成部材84の溝の形状に応じて、吐出孔85aから吐出される内容液の吐出パターンや勢いが変化する。
【0036】
上側弁部材90は、柱状部91と、弾性部92と、上部弁体93と、を有する。柱状部91は上下方向に沿って延びており、ヘッド内筒81の内側に位置している。弾性部92は柱状部91の下端に接続されており、上下方向に弾性変形可能となっている。上部弁体93は弾性部92の下端に接続されており、弾性部92の弾性力によって下方付勢されている。この下方付勢力により、上部弁体93は弁座74に押し付けられており、この状態ではステム4内とヘッド内筒81内との間の連通が遮断されている。ステム4の内圧が高まると、弾性部92の付勢力に抗して上部弁体93が押し上げられ、ステム4内とヘッド内筒81内とが連通する。
【0037】
次に、以上のように構成された吐出器1Aの作用について説明する。なお、以下の説明は、空気用シリンダ13内に空気が充填されているとともに、押下ヘッド80を複数回押下する操作により、液用シリンダ11内に内容液が充填されていることを前提とする。
【0038】
図1に示すように、初期状態(外力が作用していない状態)では、下部弁体31がテーパ部11cから離隔し、シール部32が係止部22に着座し、上部弁体93が弁座74に着座し、シール筒部24が拡径部12から離隔している。また、空気用シリンダ13の空気孔13aは摺動部53によって閉塞されている。また、外側摺動筒部63と環状部52との間に、上下方向の隙間が設けられている。この状態から押下ヘッド80を押下すると、外側摺動筒部63が環状部52に当接するまで、ステム4が空気用ピストン50に対して下降する。このとき、摺動部53と空気用シリンダ13との間に作用する摩擦抵抗により、空気用ピストン50が下降することが抑制される。このため、中間部材70の突起72aと空気用ピストン50の取付部51との間に上下方向の隙間が形成される。
【0039】
押下ヘッド80が押下されることでステム4が下降すると、中間部材70の内筒部71の内面に形成された内面リブが、シール部32に接触する。この内面リブとシール部32との間に作用する摩擦抵抗により、下側弁部材30もシリンダ部材10に対して下降する。これにより、下部弁体31がテーパ部11cに着座し、液用シリンダ11の下端が閉塞される。
【0040】
さらに押下ヘッド80を押下すると、外側摺動筒部63が環状部52に当接することで、ステム4および空気用ピストン50が一体となってシリンダ部材10に対して下降する。このとき、作動空間Sの内容積が減少するが、作動空間S内の空気は連通孔Hを通して容器本体2内に逃がされる。また、空気用ピストン50がシリンダ部材10に対して下降することで、摺動部53による空気孔13aの閉塞が解除されるため、容器本体2内の空気は空気孔13a等を通して外部に逃がされる。したがって、作動空間Sおよび容器本体2の内圧増加が抑制される。
【0041】
さらにステム4が下降すると、係止部22がシール部32から下方に離隔するとともに、液用ピストン21が液用シリンダ11内を摺動することに伴って液用シリンダ11の内圧が増加し、弾性部92の下方付勢力に抗して上部弁体93が押し上げられる。これにより、内容液がステム4から押下ヘッド80内に流入するとともに、吐出孔85aから吐出される。
【0042】
さらにステム4が下降すると、図2に示すように、シール筒部24が拡径部12内に進入するとともに、液用ピストン21が開放凹部11bに到達する。液用ピストン21が開放凹部11bに到達すると、開放凹部11b内、液用ピストン21の外周面と液用シリンダ11の内周面との間の隙間、および連通孔Hを通じて、液用シリンダ11内と容器本体2内とが連通する。これにより、液用シリンダ11内の圧力が低下し、弾性部92によって下方付勢されている上部弁体93が再び弁座74に着座し、吐出孔85aからの内容液の吐出が停止する。さらに、シール筒部24が拡径部12内に進入することで、連通孔Hを通じた作動空間Sと容器本体2との連通が遮断される。この状態でさらに押下ヘッド80が押下されると、シール筒部24が拡径部12内を摺動するとともに、作動空間Sの内圧が高まる。
【0043】
ここで、本実施形態では、突起72aと取付部51との間の上下方向の隙間と、空気用ピストン50と中間部材70の間の径方向の隙間と、取付筒部61の内周面に形成された縦溝と、を合わせて「空気流路R」という。この空気流路Rによって、作動空間S内と押下ヘッド80内とが連通される。そして、作動空間Sの内圧が高まることで、空気流路Rを通じて空気が押下ヘッド80内に流入し、吐出孔85aから吐出される。したがって、流路形成部材84の流路内や吐出孔85a内の内容液が空気によって押し出され、これらの内容液が固化して流路を閉塞することを抑制できる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1Aは、内容液が収容される容器本体2の口部2aに上方付勢状態で下降可能に立設されるステム4を有するポンプ3と、ステム4の上端部に取り付けられ、内容液の吐出孔85aを有する押下ヘッド80と、ポンプ3を口部2aに装着する装着キャップ40と、を備え、ポンプ3は、ステム4に連動して上下動する液用ピストン21が内部に上下摺動自在に設けられた液用シリンダ11と、ステム4に連動して上下動する空気用ピストン50が内部に上下摺動自在に設けられた空気用シリンダ13と、液用シリンダ11内と吐出孔85aとの連通を遮断するとともに、液用シリンダ11の内圧が高まったときに液用シリンダ11内と吐出孔85aとを連通させる上部弁体93と、を有し、液用シリンダ11の内周面のうち液用ピストン21よりも下方に位置する部分には開放凹部11bが形成され、空気用ピストン50とステム4との間には、空気用シリンダ13内と吐出孔85aとを連通させる空気流路Rが形成され、液用ピストン21が開放凹部11bに到達したときに、液用シリンダ11内と容器本体2内とを連通させる連通孔Hが設けられ、空気用ピストン50は、液用ピストン21が開放凹部11bに到達した後も空気用シリンダ13に対して下降可能である。
【0045】
この構成によれば、押下ヘッド80が押下された際に、液用ピストン21が液用シリンダ11内を下降することで、液用シリンダ11の内圧が高まり、上部弁体93が押し上げられてステム4内と吐出孔85aとが連通し、内容液が吐出孔85aから吐出される。液用ピストン21が開放凹部11bに到達すると、連通孔Hを通じて液用シリンダ11内と容器本体2内とが連通するため、液用シリンダ11の内圧が開放される。これにより、上部弁体93がステム4内と吐出孔85aとの連通を遮断し、吐出孔85aに向けた内容液の供給が停止した状態で、空気流路Rから空気が吐出孔85aに向けて供給される。したがって、吐出孔85a等に残留した内容液が、空気用シリンダ13内から供給される空気の圧力によって押し出され、内容液が固化することで吐出孔85a等が閉塞することを抑制できる。
【0046】
また、ステム4は中間部材70および上側部材60を含み、中間部材70は空気用ピストン50の径方向内側に挿入され、上側部材60は前記押下ヘッド80が取り付けられる取付筒部61を有し、上部弁体93はステム4内に設けられ、空気流路Rは取付筒部61の内面における上部弁体93よりも上方の部位に開口している。この構成によれば、例えば中間部材70と空気用ピストン50との間の隙間および中間部材70と上側部材60との間の隙間を用いて空気流路Rを形成できる。そして、空気流路Rが上部弁体93の上方に開口していることで、上部弁体93がステム4内と吐出孔85aとの連通を遮断した状態で空気を上部弁体93の上方に供給し、この空気によって吐出孔85a等に残留した内容液を押し出すことができる。
【0047】
また、本実施形態の連通孔Hは、液用ピストン21が開放凹部11bに到達するまでの間、空気用シリンダ13内の空気を排出する排気部としても機能する。このため、液用ピストン21が開放凹部11bに到達するまでは、排気部(連通孔H)から空気が排出され、空気流路Rを通じて空気用シリンダ13内の空気が吐出孔85aに供給されることが抑制される。したがって、吐出孔85aから吐出される内容液に空気が混ざることを抑制できる。
【0048】
なお、液用ピストン21が開放凹部11bに到達するまでの間、空気用シリンダ13内の空気を排出する排気部としては、連通孔H以外の構造も採用可能である。例えば、空気用シリンダ13の周壁の上下方向における一部分に凹部を形成し、空気用ピストン50の摺動部53が当該凹部に位置している間は空気が排出されるように構成してもよい。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図3に示すように、本実施形態の吐出器1Bは、シリンダ部材10および下側部材20の形状が第1実施形態と異なる。
【0050】
本実施形態のシリンダ部材10は、液用シリンダ11と空気用シリンダ13とが、有底筒状の接続筒部18によって接続されている。接続筒部18の底壁は液用シリンダ11の上下方向における中間部分の外周面に接続されており、この底壁に連通孔Hが形成されている。有底筒状の空気用シリンダ13の底壁は、接続筒部18の周壁の上下方向における中間部分に接続されている。また、シール筒部24は接続筒部18の周壁の内周面に対して摺接する。なお、連通孔Hはシリンダ部材10における接続筒部18以外の部位に形成されてもよい。
【0051】
上下方向において、液用ピストン21の下端と開放凹部11bとの間の間隔は、摺動部53の下端と空気用シリンダ13の底壁との間の間隔、およびシール筒部24の下端と接続筒部18の底壁との間の間隔よりも小さい。このため、液用ピストン21が開放凹部11bに到達した時点では、さらにステム4が下降する余地が残されている。
【0052】
本実施形態では、押下ヘッド80が押下されると、液用シリンダ11の内圧および空気用シリンダ13(作動空間S)の内圧の双方が同時に高まる。このため、内容液がステム4を通じて吐出孔85aに供給されるとともに、空気が空気流路Rを通じて吐出孔85aに供給される。したがって、吐出孔85aからは、内容液および空気が混合されて吐出される。その後、液用ピストン21が開放凹部11bに到達すると、連通孔Hを通じて液用シリンダ11内と容器本体2内とが連通し、液用シリンダ11の内圧が開放されて吐出孔85aに向けた内容液の供給が停止される。それ以降、さらに押下ヘッド80が押下されると、空気流路Rを通じた吐出孔85aへの空気の供給は継続される。このため、吐出孔85a等に残留した内容液が押し出され、内容液が固化することを抑制できる。
【0053】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、前記第1、第2実施形態のステム4は、下側部材20、上側部材60、および中間部材70により構成されていたが、ステム4がその他の部材を含んでもよい。あるいは、下側部材20、上側部材60、および中間部材70の一部または全部が一体化した形状を採用してもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B…吐出器 2…容器本体 2a…口部 3…ポンプ 4…ステム 11…液用シリンダ 11b…開放凹部 13…空気用シリンダ 21…液用ピストン 40…装着キャップ 50…空気用ピストン 60…上側部材 61…取付筒部 70…中間部材
80…押下ヘッド 85a…吐出孔 93…上部弁体 H…連通孔 R…空気流路
図1
図2
図3
図4