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特許7438086データの系列間の差異を判定する方法、装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】データの系列間の差異を判定する方法、装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 18/22 20230101AFI20240216BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20240216BHJP
   G01M 17/007 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
G06F18/22
G06F11/34 176
G01M17/007 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020191919
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080707
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南波 優
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭太
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-288983(JP,A)
【文献】特開2014-217691(JP,A)
【文献】特開2020-043650(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184928(WO,A1)
【文献】特開平07-147309(JP,A)
【文献】特開2020-141316(JP,A)
【文献】@katsuki104(イノ カツキ),時系列データのタイムラグを検知したい!!(相互相関関数),Qiita [online],2019年02月25日,https://qiita.com/katsuki104/items/d0d2a38efb91557e031c,[2023年11月13日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 18/22
G06F 11/34
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによってデータの系列間の差異を判定する方法であって、
前記コンピュータが、第1系列および第2系列を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記第1系列と前記第2系列との相関係数がより大きくなるように前記第2系列をずらすことにより、第3系列を取得する、ずらしステップと、
前記コンピュータが、前記第1系列と前記第3系列との差分の絶対値に基づいて、前記第1系列と前記第3系列との差異を判定する、判定ステップと、
前記コンピュータが、判定の結果を出力する、出力ステップと、
含み、
前記判定ステップは、
前記コンピュータが、前記差分の絶対値が所定閾値以上である区間を取得するステップと、
前記コンピュータが、各前記区間における前記差分の絶対値の平均値を算出するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、さらに、前記コンピュータが、各前記区間について、前記平均値に基づき、差異のグレードを決定するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記出力ステップにおいて、前記コンピュータは、各前記区間について、当該区間を表す情報、当該区間に係る前記平均値に基づく順位に従って出力る、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1系列、前記第2系列および前記第3系列はいずれも時系列のデータであり、
前記ずらしステップにおいて、前記コンピュータは、前記第2系列を時間についてずら、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ずらしステップにおいて、前記コンピュータは、前記第2系列を、前記相関係数が最大となるようにずら、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに前記コンピュータが、前記判定ステップにおいて用いられる基準値の入力を、GUIを介して受け付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実行することにより、データの系列間の差異を判定する装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの系列間の差異を判定する方法、装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の試験等のために、データを測定して評価する方法が周知である。このような方法の例は、特許文献1に記載される。
【0003】
データの評価において、異なる測定行為で得られた複数のデータ系列間の差異の評価が行われる場合がある。このような評価に用いられるプロットデータ可視化システムの構成例を図13に示す。従来のプロットデータ可視化システムは、入力データ処理機能および表示機能を発揮し、記憶領域に前機種のプロットデータ(データの系列)および新機種のプロットデータを格納する。
【0004】
図14に、従来技術に係るプロットデータ可視化方法のフローチャートの例を示す。プロットデータ可視化システムは、まず入力処理機能によってユーザによる旧機種のプロットデータと新機種のプロットデータの入力を受け付け、次に表示機能によってこれらのプロットデータを表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-58357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、異なる測定行為で得られた複数のデータ系列間の差異の評価が困難であるという問題があった。
【0007】
たとえば、自動車製品の評価において、前機種と新機種とで想定外の差異が発生していないかを確認するために、前機種のデータと、新機種のデータとが比較され、差異が評価される場合がある。そのような場合に、正確な評価を行うためには、前機種と新機種のデータ系列を整合させる(たとえば測定開始時刻を一致させる)ことが必要となる。
【0008】
従来の技術では、この整合作業を作業者が目視によって行っており、時間がかかるので迅速な処理が困難である。また、目視による整合作業では必ずしも適切な整合が実現されず、差異の評価精度を向上させるのが困難である。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、データの系列間の差異を判定する方法、装置およびプログラムにおいて、複数のデータ系列間の差異の評価をより容易にするものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る方法の一例は、
データの系列間の差異を判定する方法であって、
第1系列および第2系列を取得するステップと、
前記第1系列と前記第2系列との相関係数がより大きくなるように前記第2系列をずらすことにより、第3系列を取得する、ずらしステップと、
前記第1系列と前記第3系列との差異を判定する、判定ステップと、
判定の結果を出力する、出力ステップと、
を備える。
【0011】
本発明に係る装置の一例は、上述の方法を実行することにより、データの系列間の差異を判定する。
【0012】
本発明に係るプログラムの一例は、上述の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る、データの系列間の差異を判定する方法、装置およびプログラムによれば、複数のデータ系列間の差異の評価がより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】発明の実施例1に係る差異判定装置の構成例を示す図。
図2図1の差異判定装置の機能ブロック表現例を示す図。
図3】データの系列の構成例を示す図。
図4図1の差異判定装置によって実行される方法を表すフローチャートの例。
図5図4のステップS1で取得される2つの系列の具体例を示す図。
図6図4のステップS1およびS2において用いることができるGUIの画面構成例。
図7】相関係数を算出するための式の例。
図8図4のステップS3で取得される第3系列の具体例を示す図。
図9】差異のグレード付け処理の具体例を説明する図。
図10】判定結果の出力例を示す図。
図11図4のステップS3におけるより具体的な処理手順を表すフローチャートの例。
図12図4のステップS5におけるより具体的な処理手順を表すフローチャートの例。
図13】従来のプロットデータ可視化システムの構成例を示す図。
図14】従来のプロットデータ可視化方法のフローチャートの例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図1に、本発明の実施例1に係る差異判定装置10の構成例を示す。差異判定装置10は、本明細書に記載される方法を実行することにより、データの系列間の差異を判定する装置である。
【0016】
差異判定装置10は、たとえば公知のコンピュータを用いて構成することができる。差異判定装置10は、たとえば、入力部11と、表示部12と、通信部13と、CPU14と、記憶部15とを備える。
【0017】
入力部11は、たとえばキーボードおよびマウスを含む。表示部12は、たとえば液晶ディスプレイを含む。通信部13は、たとえばネットワークインタフェースを含む。CPU14は演算装置として機能する。記憶部15はたとえば半導体メモリおよび磁気ディスク装置を含む。記憶部15は、複数のデータの系列を記憶することができる。たとえば、第1系列のデータファイル16と、第2系列のデータファイル17とを記憶する。
【0018】
また、記憶部15は図示しないプログラムを記憶してもよい。CPU14がこのプログラムを実行することにより、差異判定装置10は本明細書において説明される機能を実現してもよい。すなわち、このプログラムは、本明細書に記載される方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0019】
図2に、差異判定装置10の機能ブロック表現例を示す。差異判定装置10は、入力データ処理機能20と、演算結果表示機能21と、相関係数演算機能22と、時間ズレ補正機能23と、問題区間判定機能24と、グレード付け機能25と、記憶機能26とを発揮する。記憶機能26は、第1系列の格納領域27と、第2系列の格納領域28とを実現する。これらの機能は、図1に示す入力部11、表示部12、通信部13、CPU14、および記憶部15が、互いに協働することにより発揮されてもよい。
【0020】
図3に、データの系列の構成例を示す。この構成例は、たとえば第1系列に係る構成を示すが、第2系列も同様の形式で構成することができる。データの系列において、複数のデータ要素が互いに関連付けられる。図3の例では、系列は複数の行および6つの列を含み、各行において、時刻を表すデータ要素と、速度を表すデータ要素と、加速度を表すデータ要素と、ヨーを表すデータ要素と、ピッチを表すデータ要素と、ロールを表すデータ要素とが、互いに関連付けられている。
【0021】
なお、図3の例では6列のデータ要素を含むが、本実施例では系列は2列のデータから構成される。たとえば、図3の例は、時刻および速度からなる系列と、時刻および加速度からなる系列と、時刻およびヨーからなる系列と、時刻およびピッチからなる系列と、時刻およびロールからなる系列とを含む。
【0022】
図4に、差異判定装置10によって実行される方法を表すフローチャートの例を示す。このフローチャートは、データの系列間の差異を判定する方法を表す。なお、差異判定装置10の動作の説明において、差異判定装置10内部で各処理を実行する手段を具体的に特定しない場合があるが、当業者は各処理を適宜設計することができる(たとえば画面上でデータを入力する処理は、入力部11、表示部12、CPU14および記憶部15が協働して、入力データ処理機能20を実現するという処理として、周知技術に基づき設計可能である)。
【0023】
図4の処理において、まず差異判定装置10は、第1系列および第2系列を取得する(ステップS1)。たとえば、第1系列は前機種のプロットデータであり、第2系列は新機種のプロットデータである。本実施例では、各系列は2つのデータ要素(たとえば時刻および速度)からなる組の集合である。とくに、本実施例では、各系列は時系列のデータである。ステップS1の処理は、たとえば入力データ処理機能20を介して実現される。
【0024】
図5に、ステップS1で取得される2つの系列の具体例を示す。横軸は時刻(たとえばms)を表し、縦軸は速度(たとえばm/s)を表す。第1系列D1を実線で、第2系列D2を破線で表す。この例では、第1系列D1および第2系列D2の測定処理の時間的ズレの結果として、第1系列D1に対して第2系列D2の変化が見かけ上遅れており、すなわち右側にずれている。このため、これらの系列を直接的に比較することは不適切であると言える。
【0025】
図4に戻り、ステップS1の後に、差異判定装置10は、判定基準の入力を受け付ける(ステップS2)。判定基準は、系列間に差異があるか否か、または差異がどの程度であるかを判定する際の基準となる情報である。
【0026】
図6に、ステップS1およびS2(および後述のステップS6)において用いることができるGUI(グラフィックユーザインタフェース)の画面構成例を示す。GUIは、第1系列を含むデータのファイル名を入力するファイル名入力欄31と、第2系列を含むデータのファイル名を入力するファイル名入力欄32と、相関係数を計算すべき項目名を入力する項目名入力欄33と、判定に用いられる基準値を入力する基準値入力欄34とを含む。基準値は、ステップS4に関連して後述する相関係数の閾値と、ステップS5に関連して後述する許容誤差とを含んでもよい。
【0027】
このように、差異判定装置10は、GUIを介して基準値を受け付けることができるので、基準値を容易に変更することができ、様々な値を有する測定データに関する判定を行うことができる。
【0028】
また、GUIは、第1系列を図示する第1系列表示領域35と、第2系列を図示する第2系列表示領域36と、第1系列と第2系列との差異を図示する差異表示領域37とを含んでもよい。
【0029】
図4に戻り、ステップS2の後に、差異判定装置10は、第1系列と第2系列との相関係数がより大きくなるように第2系列をずらすことにより、第3系列を取得する(ステップS3、ずらしステップ)。とくに、本実施例では、相関係数が最大となるように第2系列をずらす。ここで、「系列をずらす」とは、ある列のデータ要素をすべて同じ値だけ増加または減少させることをいい、たとえば2次元プロット図上で波形を平行移動させることに対応する。本実施例では第2系列は時間についてずらされ、すなわち波形が時間軸方向に平行移動される。ここで、第2系列は時系列のデータであるので、第3系列もまた時系列のデータとなる。
【0030】
相関係数の定義および算出方法は、公知文献に基づいて当業者が適宜設計可能であるが、たとえば図7に示す式に基づいて相関係数を算出することができる。図7において、rは系列xと系列yとの相関係数を表す。系列xおよびyはそれぞれn個のデータ要素xおよび要素y(ただし1≦i≦n)を含み、xおよびyの上にバー記号を付した記号はそれぞれ系列xおよびyにおけるデータ要素の平均値を表す。相関係数rは、-1以上1以下の値となり、値が1に近いほど正の相関が高いことを示す。
【0031】
ステップS3の処理は、たとえば相関係数演算機能22および時間ズレ補正機能23を介して実現可能である。また、ステップS3におけるより具体的な処理手順の例は、図11を参照して後述する。
【0032】
このように、相関係数に基づいて自動的に第2系列をずらすことができるので、作業者の目視による手作業が不要となる。また、正確な演算に基づく適切な系列の整合が実現される。とくに、相関係数が最大となるようにずらすことにより、最適な整合が実現される。
【0033】
図8に、ステップS3で取得される第3系列の具体例を示す。各軸は図5と同様である。第1系列D1を実線で、第3系列D3を破線で表す。図5と比較すると、第1系列D1と第2系列D2とは時間的にあまりよく整合していないが、第1系列D1と第3系列D3とは時間的によく整合しており、第1系列D1と第3系列D3とをより正確に比較することができると言える。
【0034】
ステップS3の後、差異判定装置10は、ステップS4およびS5を実行することにより、第1系列D1と第3系列D3との差異を判定する(判定ステップ)。
【0035】
まず、差異判定装置10は、第1系列D1と第3系列D3との相関係数に基づいて差異を判定する(ステップS4、第1判定ステップ)。差異の判定処理は、たとえば相関係数と所定閾値との比較に基づいて行われる。この閾値は、ステップS2で判定基準の一部として入力することができる(たとえば図6の基準値入力欄34)。相関係数が閾値以下であれば、第1系列D1と第3系列D3とに差異があると判定され、相関係数が閾値を超えていれば、第1系列D1と第3系列D3とに差異がないと判定される。
【0036】
閾値はたとえば0.9とすることができる。この場合には、たとえば相関係数が0.99であれば差異がないと判定され、たとえば相関係数が0.89であれば差異があると判定される。
【0037】
次に、差異判定装置10は、第1系列D1と第3系列D3との差分の絶対値に基づいて差異を判定する(ステップS5、第2判定ステップ)。ここで、差分とは、ずらされたデータ要素以外のデータ要素の差分をいい、実施例1では速度のデータ要素の差分をいう。たとえば、各時刻における第1系列D1の速度と、第3系列D3の速度とについて、差分の絶対値が計算される。
【0038】
差異の判定処理は、たとえば差分の絶対値の最大値(最大誤差)と所定閾値(許容誤差)との比較に基づいて行われる。許容誤差は、ステップS2で判定基準の一部として入力することができる(たとえば図6の基準値入力欄34)。最大誤差が許容誤差未満であれば、第1系列D1と第3系列D3とに差異がないと判定され、最大誤差が許容誤差以上であれば、第1系列D1と第3系列D3とに差異があると判定される。
【0039】
図8の例では、許容誤差はたとえば0.02とすることができる。この場合には、たとえば最大誤差が0.005であれば差異がないと判定され、たとえば最大誤差が0.055であれば差異があると判定される。
【0040】
また、ステップS5において差異があると判定された場合には、差異判定装置10は、差異のグレード付けを行う。この場合、差異判定装置10は、まず差分の絶対値が許容誤差以上である区間(以下「問題区間」と呼ぶ)を取得し、各問題区間における差分の絶対値の平均値を算出する。そして、各問題区間について、この平均値に基づき、差異のグレードを決定する。これらの処理は、たとえば問題区間判定機能24およびグレード付け機能25を介して実現可能である。
【0041】
図9を用いて、差異のグレード付け処理の具体例を説明する。なお、説明の便宜上、図9に示す各系列の内容は図5および図8のものとは異なる。
【0042】
差異判定装置10は、差分の絶対値が許容誤差以上である区間を取得する。図9の例では、差分の絶対値が許容誤差0.02以上である区間として、問題区間P1~P3が取得される。問題区間P1は時刻37秒において開始し、差分の絶対値の平均値は0.037である。問題区間P2は時刻52秒において開始し、差分の絶対値の平均値は0.027である。問題区間P3は時刻81秒において開始し、差分の絶対値の平均値は0.020である。
【0043】
各問題区間における差異のグレードは、この平均値が大きいほど高くなるように決定される。たとえば、平均値が許容誤差の2倍未満である場合には、グレードは最低のAグレードとなり、平均値が許容誤差の2倍以上3倍未満である場合には、グレードはAグレードより高いBグレードとなり、平均値が許容誤差の3倍以上4倍未満である場合には、グレードはBグレードより高いCグレードとなり、平均値が許容誤差の4倍以上である場合には、グレードは最高のDグレードとなる。このような基準によれば、図9の例では問題区間P1~P3いずれもグレードAとなる。
【0044】
以上のステップS4およびS5が判定ステップを構成するが、ステップS4において相関係数に基づく差異がないと判定され、かつ、ステップS5において差分の絶対値に基づく差異もないと判定された場合には、第1系列D1と第3系列D3との差異はないと判定される。一方、ステップS4およびS5のいずれかまたは双方で差異があると判定された場合には、第1系列D1と第3系列D3との差異があると判定される。
【0045】
このように、複数の判定を組み合わせて最終的な判定を行うことにより、多面的な判定が実現でき、柔軟な判定基準の設定が可能となる。
【0046】
ステップS5の後、差異判定装置10は判定の結果を出力する(ステップS6、出力ステップ)。ステップS6の処理は、たとえば演算結果表示機能21を介して、表示によって実現される。
【0047】
図10に、判定結果の出力例を示す。この出力例は図9の例に対応するものである。第1系列D1と第3系列D3とに差異があるので、分析結果欄に「問題あり」と表示されている。第1系列D1と第3系列D3とに差異がない場合には、分析結果欄に「問題なし」と表示される。
【0048】
また、詳細欄に、各問題区間に関する情報が出力される。この例では、1行目が問題区間P1に対応し、2行目が問題区間P2に対応し、3行目が問題区間P3に対応する。各問題区間を特定する情報として、各問題区間の開始時刻が表示される(たとえば問題区間P1については「37秒付近」と表示される)。
【0049】
各問題区間を表す情報は、特定の順位に従って出力されてもよい。図10の例では、各問題区間について、当該問題区間を表す情報が、当該問題区間に係る平均値に基づく順位に従って出力されている(上述のように、問題区間P1、P2、P3における平均値はそれぞれ、0.037、0.027、0.020である)。また、各問題区間についてグレードが出力されてもよい。
【0050】
このように、差異判定装置10は、平均値が高くなった問題区間から順に評価結果として出力するので、とくに差異が大きい区間を容易に認識することができ、優先して対応すべき区間を迅速に決定することができる。
【0051】
また、差異判定装置10は、判定の結果を、各系列の図示とともに、差異表示領域37(図6)に表示してもよい。図6の例では、問題区間が着色されて他の区間と区別され、容易に認識できるようになっている。
【0052】
なお、図10の例では、ステップS5の判定結果のみを示しており、ステップS4の判定結果については示されないが、図10の表示内容に加えて、またはこれに代えて、ステップS4の判定結果を表示してもよい。たとえば、ステップS4において相関係数が閾値を超えている場合に、「前機種と新機種のプロットデータが大きく異なっています」というメッセージを表示してもよい。
【0053】
また、判定結果の出力において、判定処理に係る他の情報を出力してもよい。たとえば、ステップS3において第2系列がずらされた時間、ステップS4で算出された相関係数、ステップS5において差異があると判定されたか否か、ステップS5で算出された最大誤差、ステップS5で算出された平均値、ステップS5で取得された問題区間の持続時間または終了時刻、等を出力してもよい。
【0054】
また、判定結果の出力は、図6のGUIにおいて行われてもよい。たとえば、図9に示すグラフが、差異表示領域37に表示されてもよい。
【0055】
以上説明するように、本発明の実施例1に係る差異判定装置10は、相関係数に基づいて自動的かつ適切に第2系列をずらすことができるので、作業者の目視による手作業が不要となる。また、正確な演算に基づく適切な系列の整合が実現される。このようにして、複数のデータ系列間の差異の評価をより容易にすることができる。
【0056】
図11に、図4のステップS3におけるより具体的な処理手順を表すフローチャートの例を示す。
まず、差異判定装置10は変数を初期化する(ステップS11)。すなわち、最も大きい相関係数の値を0とし、最も相関係数が大きくなった時の時間ズレ補正値を0とし、第2系列をずらす時間を0とする。
【0057】
次に、差異判定装置10は、以下のステップS12~S16を、自動ズレ補正の時間についてループして実行する。ここで、「自動ズレ補正の時間」とは、第2系列をずらす時間をいい、0から所定の最大補正範囲(時間)まで、一定の周期を単位として増加する。この最大補正範囲は、事前に決定される値(たとえば5秒)であり、たとえば図6のGUIを介して入力できるように構成されてもよい(とくに個別の入力欄は図示しない)。
【0058】
ループにおいて、まず差異判定装置10は、第2系列をずらす時間に、1周期分の時間を加算する(ステップS12)。この周期は、たとえば第2系列の測定周期であってもよく、任意に指定可能な値であってもよい。たとえば図6のGUIを介して周期を入力できるように構成されてもよい。
【0059】
次に、差異判定装置10は、第2系列をずらすことにより第3系列を取得し(ステップS13)、第1系列と第3系列との相関係数を算出する(ステップS14)。そして、処理中のループのステップS14において算出された相関係数が、最も大きい相関係数の値より大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0060】
ステップS15においてYESと判定された場合には、最も大きい相関係数の値を表す変数に、処理中のループのステップS14において算出された相関係数を代入するとともに、最も相関係数が大きくなった時の時間ズレ補正値を表す変数に、処理中のループの第2系列をずらす時間を代入する(ステップS16)。ステップS15の判定においてNOと判定された場合には、ステップS16は実行されない。その後、処理は次のループに入る。
【0061】
以上のような処理手順により、当業者は図4のステップS3を実行することができる。
【0062】
図12に、図4のステップS5におけるより具体的な処理手順を表すフローチャートの例を示す。
まず、差異判定装置10は変数を初期化する(ステップS21)。図12のステップS21に示す各変数の定義は次の通りであり、[ ]記号は配列を表す。
Count:ループカウント
Count_diff:許容誤差以上の差異が連続で発生している回数
Number:許容誤差以上の差異が発生している区間(問題区間)の数
Instant_diff:許容誤差以上の差異の値
Total_diff:処理中の問題区間中の差異の合計値
Average_diff[ ]:処理中の問題区間中の差異の平均値
Start[ ]:許容誤差以上の差異が発生し始める時間(問題区間の開始時刻)
End[ ]:許容誤差以上の差異が連続で発生している時間帯の終了時間(問題区間の終了時刻)
【0063】
次に、差異判定装置10は、以下のステップS22~S32を、第3系列の配列の要素についてループして実行する。この配列は、ずらされたデータ要素(たとえば時刻)以外のデータ要素(たとえば速度)を配列として表したものである。以下、第1系列および第3系列の配列を、それぞれ第1系列[i]および第3系列[i]と表す(ただしiはインデックスを表す整数である)。
【0064】
ループにおいて、差異判定装置10は、まずCountの値を1だけ増加させる(ステップS22)。次に、Instant_diffに、第1系列[Count]-第3系列[Count]の絶対値を代入する(ステップS23)。そして、Instant_diffが許容誤差以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0065】
ステップS24において、Instant_diffが許容誤差以上であると判定された(すなわち問題区間である)場合には、以下に説明するステップS25~S31を実行する。そうでない場合(すなわち問題区間ではない)場合には、Count_diffおよびTotal_diffを0とし(ステップS32)、処理は次のループに入る。
【0066】
Instant_diffが許容誤差以上であると判定された(すなわち問題区間である)場合には、まず差異判定装置10は、Count_diffを1だけ増加させ(ステップS25)、Total_diffにInstant_diffを加算する(ステップS26)。
【0067】
次に、差異判定装置10は、Count_diffが1に等しいか否かを判定する(ステップS27)。Count_diffが1に等しい場合(すなわち問題区間が開始された直後)には、Numberを1だけ増加させ(ステップS28)、それまでに検出された問題区間の数をカウントするとともに、Start[Number]に第3系列[Count]を代入して問題区間の開始時刻を記憶する(ステップS29)。
【0068】
ステップS29の後に、または、ステップS27においてCount_diffが1に等しくない場合(すなわち問題区間が継続している場合)には、End[Number]に第3系列[Count]を代入する(ステップS30)。問題区間が継続している場合にはステップS28およびS29は実行されないので、Start[Number]の値は維持され、End[Number]のみが増加することになる。
【0069】
次に、差異判定装置10は、Total_diffをCount_diffで除算し、商をAverage_diff[Number]に代入する(ステップS31)。このようにして、問題区間における差分の絶対値の平均値が算出される。その後、処理は次のループに入る。
【0070】
以上のような処理手順により、当業者は図4のステップS5を実行することができる。
【0071】
上述の実施例1において、次のような変形を施すことができる。実施例1の差異判定装置10は、2つの系列における単一のデータ種類(たとえば速度)の差異を判定するが、複数のデータ種類の差異を判定してもよい。たとえば、図3のようなデータに基づき、速度の差異と、加速度の差異とを、それぞれ判定してもよい。その場合には、結果の出力において、2通りの判定結果を整列して表示してもよい。具体例として、横軸を共通として時間を表し、2つのグラフを上下に配置してもよい。このような構成によれば、複数種類のデータ間の関係を容易に認識することができる。
【0072】
実施例1では各系列は時系列であり、時間についてずらされるが、系列は時間に関する要素を含まないものであってもよく、時間以外のデータ要素についてずらされてもよい。
【0073】
実施例1では差異判定装置10は単一のコンピュータによって構成されるが、複数のコンピュータを含むシステムによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…差異判定装置(差異を判定する装置)
31,32…ファイル名入力欄
33…項目名入力欄
34…基準値入力欄
35…第1系列表示領域
36…第2系列表示領域
37…差異表示領域
D1…第1系列
D2…第2系列
D3…第3系列
図1
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