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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ボールジョイントカバー
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20240216BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20240216BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16C11/06 Q
F16F9/54
F16J15/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020200223
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088013
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大友 裕也
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村山 健一
(72)【発明者】
【氏名】瀬間 拓明
(72)【発明者】
【氏名】松元 義樹
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-097547(JP,A)
【文献】実開昭47-019675(JP,U)
【文献】実開昭57-042259(JP,U)
【文献】米国特許第5630672(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00-11/12
F16D 41/00-47/06
F16F 9/00-9/58
F16J 3/00-3/06
F16J 15/16-15/32
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/46-15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のトランク側被取付部に突設されて軸先端にボールを有したボールスタッドと、軸先端にソケットを有し前記ボールを前記ソケット内に嵌合した態様でトランクリッドを開状態に保持するストラッドバーとの間に設けられて前記ソケット内への異物侵入を防ぐボールジョイントカバーであって、
一対のカバー体で構成され、前記ボールと前記ソケットを嵌合した態様で、前記各カバー体が一方カバー体に設けられた係合部を他方カバー体に設けられた被係合部に係合することにより組付けられて、前記ストラッドバーのうち前記ソケット及び該ソケットを突出している軸先端側と、前記ボールスタッドのうち前記ボールを突出している軸先端側とを覆うことを特徴としているボールジョイントカバー。
【請求項2】
前記各カバー体は内側に設けられた軟質部材を有していることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイントカバー。
【請求項3】
前記各カバー体は、一方のカバー体又は両方のカバー体の内壁に突設されて前記ストラッドバーのうち前記ソケットを突出している軸先端側に圧接する傾斜した止水リブを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールジョイントカバー。
【請求項4】
前記各カバー体は、前記ボールスタッドのうち前記ボール及び該ボールを突出している軸先端側を挿通可能な軸孔を区画する半孔部を有していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のボールジョイントカバー。
【請求項5】
前記各カバー体は、前記ストラッドバーのうち前記ソケットを突出している軸先端側を覆う上側部分が互いに上下に重ねられることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のボールジョイントカバー。
【請求項6】
前記各カバー体が薄肉ヒンジで接続されていると共に、前記上下に重ねられる部分が何れか一方カバー体に設けられた係止爪により一方カバー体を他方カバー体に係止可能にすることを特徴とする請求項5に記載のボールジョイントカバー。
【請求項7】
前記各カバー体は、前記ソケットのうち前記ボールをソケット内に嵌入する側と反対側の外面部分と、前記ソケットを突出している前記ストラッドバーの軸先端側のうち前記外面部分の真上部分とを露出していることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のボールジョイントカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸先端にボールを有したボールスタットに対し軸先端にソケットを有してソケット内にボールを嵌合したストラッドバーとの間に設けられてソケット内への水等の異物侵入を防ぐ場合に好適なボールジョイントカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のテールゲートないしはハッチバックは、図1の模式図に示されるごとくバックドア11の開状態が車体後方の両側に配置されたストラッドバー3により支持されている。各ストラッドバー3はロッド材などとも称されており、パネル又はブラケット等に突設されたボールスタッド2に嵌合されている。
【0003】
図10(a)はそのような構造例として特許文献1に開示のジョイント装置10を示し、(b)はそれに用いられたダストカバー単品を示している。このジョイント装置10は、車体パネル側の被取付部材51に対し突設されて軸先端にボール(球頭部)21を有した第2の部材であるボールスタッド12と、第1の部材であるソケット11を有しボール21にソケット11を嵌合した収納位置から使用位置に切り換えられるロッド材25と、ボール21とソケット11との接続部分を覆ってソケット内への水等の異物の侵入を防ぐためのゴム製のダストカバー15とを有している。
【0004】
ダストカバー15は、上下中間部分を径大に形成した略筒形からなり、下端周囲部に設けられた第1のシール部としてのソケット嵌着部45と、上端周囲部に設けられた第2のシール部としてのスタッド嵌着部42と、上側内面47から環状に突設された対向部48とを有している。そして、ダストカバー15は、ソケット嵌着部45がソケット11に設けられたカバー取付部32に嵌合されると共に略C形のクリップ17などにより抜止めされ、スタッド嵌着部42がボールスタッド12の軸部22aに嵌合される。この取付状態において、ダストカバー15は、ソケット11と被取付部材51との間に圧縮変形されていると共に、対向部48がソケット11の開口側端面に当接している。
【0005】
以上のダストカバー15では、ソケット11の開口部を覆い水等の異物の侵入を抑制でき、また、第2のシール部42が第1のシール部45側に渦度に移動しようとすると内面側に設けられた対向部48がソケット11の開口側端面に当接して第2のシール部42の移動を規制できる。そのため、第2のシール部42とボールスタッド12との間に隙間が生じてシール性が低下するのを抑制したり、ダストカバー15のソケット11への摺接を抑制しカバーを保護できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-148449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したダストカバーでは、第1のシール部を抜け止め用のクリップ等によりソケット側に取り付けるため部材数が多く、ダストカバーの見栄えも悪い。また、ダストカバーは、ボールスタッドの軸部に配置されるが、その操作で中央の軸孔にボールを挿通する際に軸孔を弾性拡径しなければならず、また、配置後にソケットにボールを嵌合してボールスタットをソケット側に組み付けなくてはならないため作業性が悪く組付け工数に時間が係る。
【0008】
そこで、本発明の目的は以上のような課題を解決して、ダストカバーに対応するボールジョイントカバーとして、ボールジョイントカバーの組付けがソケットをボールスタッドのボールに嵌合した後に行えるようにして組付け操作を良好にし、また、斬新で見栄えがよく、シール性にも優れているものを提供することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1の本発明は、形態例の図面を参照して特定すると、
自動車のトランク側被取付部(12)に突設されて軸先端にボール(20)を有したボールスタッド(2)と、軸先端にソケット(30)を有し前記ボールを前記ソケット内に嵌合した態様でトランクリッド(13)を開状態に保持するストラッドバー3との間に設けられて前記ソケット内への異物侵入を防ぐボールジョイントカバーであって、一対のカバー体(4,5)で構成され、前記ボール(20)と前記ソケット(30)を嵌合した態様で、前記各カバー体が一方カバー体に設けられた係合部(58)を他方カバー体に設けられた被係合部(48)に係合することにより組付けられて、前記ストラッドバー(3)のうち前記ソケット(30)及び該ソケットを突出している軸先端側と、前記ボールスタッド(2)のうち前記ボール(20)を突出している軸先端側とを覆うことを特徴としたジョイントカバー(6)である。
【0010】
以上の本発明は、次のように具体化されることがより好ましい。
(1)前記各カバー体は、内側に設けられた軟質部材を有している構成である(請求項2)。
(2)前記各カバー体は、一方のカバー体又は両方のカバー体の内壁に突設されて前記ストラッドバーのうち前記ソケットを突出している軸先端側に圧接する傾斜した止水リブを有している構成である(請求項3)。
【0011】
(3)前記各カバー体は、前記ボールスタッドのうち前記ボール及び該ボールを突出している軸先端側を挿通可能な軸孔を区画する半孔部を有している構成である(請求項4)。
(4)前記各カバー体は、前記ストラッドバーのうち前記ソケットを突出している軸先端側を覆うカバーの上側部分が互いに上下に重ねられる構成である(請求項5)。
【0012】
(5)前記各カバー体が薄肉ヒンジで接続されていると共に、請求項5の前記上下に重ねられる部分が何れか一方カバー体に設けられた係止爪により一方カバー体を他方カバー体に係止可能にする構成である(請求項6)。
(6)前記各カバー体は、前記ソケットのうち前記ボールをソケット内に嵌入する側と反対側の外面部分と、前記ソケットを突出している前記ストラッドバーの軸先端側のうち前記外面部分の真上部分とを露出している構成である(請求項7)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、特許文献1のダストカバーに比べ以下のような点で優れている。
第1に、本発明のボールジョイントカバーは、一対のカバー体で構成され、ソケットとボールを嵌合した態様で、両カバー体が一方に設けられた係合部を他方に設けられた被係合部に係合する操作だけで組み付けられるため課題で述べたような問題が解消され組付け作業が容易となり作業工数も短縮可能になる。
第2に、両カバー体は、図2に例示されるごとくストラッドバーのうちソケット及び該ソケットを突出している軸先端側と、ボールスタッドのうちボールを突出している軸先端側とを覆うため、例えば、ストラッドバーの軸部に沿って流れてくる伝い水がソケット内に入り込まないよう遮断し、かつ、被取付部からボールスタッドの軸部に沿って流れてくる伝い水もソケット内に入り込まないよう遮断する。そのため、それら伝い水に起因したソケットやボールの錆発生や動作不良の発生を確実に防止できる。
【0014】
請求項2の発明では、各カバー体が内側に設けられている軟質部材を有しているため、前記各伝い水が軟質部材によるシールないしはパッキン作用により効率よく遮断され、その遮断作用により品質を向上できる。
【0015】
請求項3の発明では、図4に例示されるごとく各カバー体が一方のカバー体又は両方のカバー体の内壁に突設されてストラッドバーのうちソケットを突出している軸先端部側に圧接する傾斜した止水リブを有しているため、特にストラッドバーの軸部に沿って流れてくる伝い水が止水リブによりソケットの開口側へ流れないよう阻止し、その阻止作用により品質をより向上できる。
【0016】
請求項4の発明では、図3及び図5から推察されるごとく各カバー体がボールスタッドのうちボール及びボールを突出している軸先端側を挿通可能な軸孔を区画する半孔部を有しているため、特許文献1のようにボールスタッドのボールをカバー側の軸孔に挿通する際に軸孔を弾性拡径するというような厄介な操作がなくなり作業性を改善できる。
【0017】
請求項5の発明では、図5から推察されるごとく各カバー体がストラッドバーのうちソケットを突出している軸先端側を覆うカバーの上側部分が互いに上下に重ねられる(形態例の場合だと図6のカバー体4の底板41とカバー体5の底板51)ため、上下部のラビリンス構造によりシール性を向上したり剛性を強化できる。
【0018】
請求項6の発明では、各カバー体が薄肉ヒンジで接続されると共に、請求項5の上下に重ねられる部分が何れか一方カバー体に設けられた係止爪により一方カバー体を他方カバー体に係止可能となるため、仮に、薄肉ヒンジが破断したとしても、各カバー体が係止爪の係止により離れるという虞がなくなりその点からシール性を確実に維持できる。
【0019】
請求項7の発明では、各カバー体がソケットのうちボールをソケット内に嵌入する側と反対側の外面部分と、ソケットを突出しているストラッドバーの軸先端側のうち前記外面部分と連続する真上部分とを露出しているため、例えば、トランクリッド開閉時にリッド側が各カバー体の露出している箇所で逃がされ各カバー体に当たらなくなり、それによりシール性を犠牲にすることなく露出部分に応じた分だけ軽量化でき、また、良好な意匠性ないしは斬新性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のボールジョイントカバーの使用例を示す模式図である。
図2図1の要部を拡大した拡大外観図である。
図3図2のA-A線拡大断面図である。
図4図2の態様で上記ボールジョイントカバー単品を示した図である。
図5】ストラッドバーに対するボールジョイントカバーの組付途中の状態を示した図である。
図6】(a)は上記ボールジョイントカバー単品を示す斜視図、(b)は軟質部材の一方を単品で示す斜視図、(c)はもう一方の軟質部材を単品で示す斜視図である。
図7】上記各軟質部材を取り付けた状態でボールジョイントカバーを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のB方向から見た図、(c)は背面図である。
図8】軟質部材の一方を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のC方向から見た図、(c)は背面図である。
図9】軟質部材の他方を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のD方向から見た図、(c)は背面図である。
図10】(a)と(b)は特許文献1に開示のジョイント装置とダストカバー単品図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最適な形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、形態例のボールジョイントカバー(以下、カバーと略称することもある)の使用例を含めてカバー構造の細部を明らかにした後、主な作動に言及する。
【0022】
(カバーの構造)図1の自動車1において、車体後方にはトランクルーム11が設けられてトランクリッド13で開閉される。トランクリッド13は、上側がヒンジを介して上パネルに回動可能に支持されている。トランクリッド13の両側は、パネル内のブラケット等である被取付部12に突設されたボールスタッド2及びそのボールスタッド2に嵌合されているストラッドバー3により支持している。すなわち、左右のボールスタッド2は、パネル又はブラケット等に突設されて軸先端にボール20を有している。これに対し、左右のストラッドバー3は、軸先端(下端)にソケット30を有してそのソケット内に対応するボール20を嵌合した態様でトランクリッド13を開状態に保持する。更に、この構造では、ボールスタッド2とストラッドバー3の間に設けられて、ソケット30内への水等の異物侵入を防ぐボールジョイントカバー6を有している。
【0023】
このうち、ボールスタット2は、剛材等から形成されてボール20及び軸部21からなる。ボール20は略球状に形成されている。軸部21は、ボール20を突出している軸先端部21aと、トランク内側に設けられた被取付部19に固定されるボルト部21bとからなる。軸先端部21aは、ボルト部21bからボール20に向かって次第に径小に形成されている。ボルト部21bは、雄ネジ部であり、ナットNが軸先端部21a側に装着されると共にパッキンPを介して被取付部19に設けられた取付孔19aに貫通され、かつ、取付孔19aを貫通したネジ部分が別のナットNで締め付けられる。このようなボールスタッド2は、被取付部19に対し突出状態に装着されればよい。つまり、この取付構造としては、この例に限られず、例えば特許文献1の構造、更に被取付部19に溶着等により突設してもよい。
【0024】
ストラッドバー3は、ボール20と回動可能に嵌合するソケット30及び支持用軸部31からなる。ソケット30は、従来と同様に嵌入したボール20が不用意に抜けないようにする内部構造となっている。軸部31は、トランクリッド13を開状態に支持するに好適な長さに設定され、ソケット30を突出している軸先端部31aと、軸先端部31aに径小軸部31bを介して連結された操作用軸部31cと、操作用軸部31cの突出端に設けられた不図示の被嵌合部からなる。そして、ストラッドバー3は、ソケット30がボール20に嵌合された態様で、トランクリッド13がヒンジ14を支点として開位置まで開放されたとき、ボール20を支点として起立方向へ回動操作されて、操作用軸部31aの突出端にある被嵌合部をトランクリッド13内側に設けられた嵌合孔17に嵌合することでトランクリッド13を開状態に保持する。
【0025】
ボールジョイントカバー6は、ボールスタッドのボール20を突出している軸先端側及び、ストラッドバーのソケット30及び該ソケットを突出している軸先端側を覆うものである。カバー構造は、一対のカバー体4,5で構成されると共に、各カバー体4,5の内側にそれぞれ配設される軟質部材7,8を有している。そして、各カバー体4,5は、内側に対応する軟質部材7,8が配設された後、ボール20とソケット30とを嵌合した態様で、各カバー体4,5が一方カバー体(この例ではカバー体5)に設けられた係合部58を他方カバー体(この例ではカバー体4)に設けられた被係合部48に係合することで、図2及び図3に示されるごとく組付けられる。
【0026】
換言すると、ボールジョイントカバー6は、図6及び図7に示されるごとく樹脂の射出成形体からなり、カバー体4とカバー体5とが薄肉ヒンジ60を介して一体に形成されている。各カバー体4,5は、ボールジョイントカバー6を略二分したカバー半体に相当しており、薄肉ヒンジ60を上側にした状態で、自由端側が下側へ折り畳むよう接近され、自由端側に設けられた係合部58を枠47の内側に設けられた被係合部48に係合抜け止めすることで一体化される。
【0027】
ここで、各カバー体4,5の細部は以下の通りである。まず、カバー体4は、図2及び図3の状態において、上下に配置される側板40と、側板40の下端に共に直角に連結された底板41及び孔仕切板42とからなる。側板40には、使用状態で上側となる薄肉ヒンジ60側の内面及び底板41に連結した状態に突設された止水リブ49と、使用状態で下側となる自由端側外面に突設されたコ形枠47及び枠47内の被係合部48とが設けられている。
【0028】
底板41には、中央部に貫通された軟質部材用の取付孔44と、前記止水リブ49と対向して突設されたもう一方の止水リブ49とが設けられている。各止水リブ49は、図4のごとくストラットバー3がトランクリッド13を支持するため起立した使用態様で、互いに上側に傾斜し、つまり先端が基端よりも上側となるよう突出されており、使用態様で軸部31に沿って流れてくる伝い水が少なくともボール30のうち嵌合穴32の入口側へ流れないようにする。
【0029】
孔仕切板42は、底板41に段差を持って連結しており、ボールスタッド2の軸部21を挿通する半孔部42aと、側板40及び底板41に一体化された状態に設けられた軟質部材用の位置決め部46と、側板40の自由端側の内面に突設されてボール30の底面に設けられた平面部30aを支持する受部43とを有している。また、孔仕切板42は、半孔部42aの下側が円弧状の欠肉部45となっている。
【0030】
一方、カバー体5は、図2及び図3の状態において、上下に配置される側板50と、側板50の下端に共に直角に連結された底板51及び孔仕切板52とからなる。また、カバー体5は、側板50が薄肉ヒンジ60を支点として折り曲げられて側板40と対向配置された状態で、底板51が底板41の下側に配置つまりソケット30を突出している軸先端部31a側を覆うカバーの上側部分が底板41と底板51が上下に重ねられる。
また、底板41には、底板51上に設けられて底板41の下面側に係合する係止爪59を有し、この係止爪59により両カバー体4,5が薄肉ヒンジ60の不用意な切断によっても各カバー体4,5の上側の連結が維持可能となっている。
【0031】
また、側板50には、使用状態で下側となる自由端側外面に突設された台座57及び台座57に設けられた係合部58を有し、係合部58が前記した枠47内の被係合部48に係合される。符号57aは台座57のうち、端部に設けられた案内突起57aである。この案内突起57aは、係合部58を被係合部48に係合する際に枠47内への挿入を誘導する。
【0032】
孔仕切板52は、底板51に対し一段高い位置に連結されており、ボールスタッド2の軸部31を挿通する半孔部52aと、側板50及び底板51に一体化された状態に設けられた位置決め部56と、側板50の自由端側の内面に突設されてボール30の底面に設けられた平面部30aを支持する受部53とを有している。また、孔仕切板52は、半孔部52aの下側が円弧状に欠肉55されている。
【0033】
これに対し、カバー体4に組み込まれる軟質部材7は、ゴム又は軟質樹脂製であり、図6(b)及び図7図8に示されるごとく孔仕切板42の上面に配置される半筒部70と、底板41の上面に配置される板部74とが一体に形成されている。ここで、半筒部70は、孔仕切板42から半孔部42aに挿入可能な形状であり、上面が孔仕切板42上に配置される鍔状部に設けられると共に、鍔状部の内径側に設けられて半孔部42aに重ねられる半孔部72と、鍔状部の外径側に設けられて位置決め部46に嵌合される円弧状の切欠部70aと、鍔状部の下面70bに設けられて半孔部42aの周縁に嵌合する円弧状の係合溝73と、係合溝73から下側に突出されて欠肉部45に位置してナットNとの間をシール可能にするシール部71とを有している。また、板部74は、底板41に対応する形状からなり、上面に突設された複数の横リブ75と、下面中央に突設された係合突起76とを有しており、底板41に対し係合突起76を取付孔44に係合した状態に組付けられる。
【0034】
一方、カバー体5に組み込まれる軟質部材8も、ゴム又は軟質樹脂製であり、図6(c)及び図7図9に示されるごとく孔仕切板52の上面に配置される半筒部80を有している。この半筒部80は、孔仕切板52から半孔部52aに挿入可能な形状であり、上面が孔仕切板52に配置される鍔状部に設けられると共に、鍔状部の内径側に設けられて半孔部52aに重ねられる半孔部82と、鍔状部の外径側に設けられて位置決め部56に嵌合される円弧状の切欠部80aと、鍔状部の下面80bに設けられて半孔部52aの周縁に嵌合する円弧状の係合溝83と、係合溝83から下側に突出されて欠肉部55に位置してナットNとの間をシール可能にするシール部81とを有している。また、この形態例では、カバー体のシール部71とカバー体のシール部81のうち、ボールスタッドの軸部側と嵌合する嵌合内面71a,81aを多面形ないしは多面体(例えば好ましくは10面体から36面体)に形成しており、それにより過干渉を防止し、かつ、嵌合力を適度に保持するようにしている。
【0035】
(主な作動)以上のカバー6は特許文献1のカバー15に比べ以下の利点を有している。
(1)組付け作業は次の点から改善される。まず、このボールジョイントカバー6は、図3図5に示されるように、一対のカバー体4,5で構成され、ストラッドバーのソケット30とボールスタッドのボール20を嵌合した態様で、両カバー体4,5を図5のごとく薄肉ヒンジ60を介し互いに近づく方向に折り曲げられ、カバー体5の係合部58をカバー体4の被係合部58に係合することで組付けられる。このため、このカバー6では、課題で述べたような問題が解消され組付け作業をワンタッチで行うことができ、作業工数を短縮可能になる。
【0036】
すなわち、このカバー構造では、図3及び図5から推察されるごとく、ボール20とソケット30とを嵌合した状態で、図5のごとく各カバー体4,5を薄肉ヒンジ60を介し離間させ、軸先端部31a、ソケット30、軸先端部21aを両側より挟み込むようにして組付ける。付言すると、このカバー構造では、例えば、ボール20を突出している軸先端部21a側を挿通する軸孔62が各カバー体4,5に設けられた半孔部42a,52aにより区画されているため、特許文献1のようにボールスタッドのボールをカバー側の軸孔に挿通する際に軸孔をボール押入力で弾性拡径するという厄介な操作がなくなりため作業性を向上できる。
【0037】
(2)シール性は次の点から優れている。まず、両カバー体4,5は、図2に例示されるごとくストラッドバーのうちソケット30及び該ソケット30を突出している軸先端部31a側と、ボールスタッドのうちボール20を突出している軸先端部21a側とを覆う。このため、このカバー構造では、例えば、ストラッドバーの軸部31に沿って流れてくる伝い水がソケット30の嵌合孔32に入り込まないよう遮断されると共に、被取付部19からボールスタッドの軸部21に沿って流れてくる伝い水もソケット内に入り込まないよう遮断される。その結果、前記伝い水に起因したソケット30やボール20の錆発生や動作不良の発生を防止できる。
【0038】
また、この構造では、各カバー体4,5が内側に配置した軟質部材7,8を有しているため、各伝い水が軟質部材7,8によるシールないしはパッキン作用により効率よく遮断される。しかも、この構造では、図4に示されるごとくカバー体4が底板41に止水リブ49,49を突出している。この場合、止水リブ49の一方は底板41と側板40とに一体化され、もう一方の止水リブ49は底板41に一体化されると共にカバー体5の側板51に当接されている。各止水リブ49は、ソケット30の開口を紙面の奥側に配した状態において、軸先端部31の両側に位置して対応側面に当接している。また、各止水リブ49は、軸部31に沿って流れてくる伝い水を受け止め易くするため上向きに傾斜つまり樋状に設けられている。これは、各止水リブ49に受け止められた伝い水が図4の紙面の奥側にある底板41側(ソケット30のボール挿入用開口がこの底板41の下側に配置されている)と反対側、つまりカバー部分を欠如して軸先端部31a及びソケット30を露出している側より外部に流れるようになっている。要は、軸部31に沿って流れてくる伝い水が止水リブ49によりソケット20の開口側へ流れないよう阻止される。
【0039】
細部的な工夫点として、軟質部材7,8は、各カバー体4,5のと孔仕切板42,52を孔仕切板70,80で覆うと共に、鍔状に突出されている孔仕切板42,52と嵌合する係合溝73,83を有している。このため、半孔部42a,52aは、シールないしはパッキン作用に優れた軟質性の係合溝73,83で覆われた状態でボール20を突出している軸先端部20aの軸周り接している。また、係合溝73,83から下側に突出されて欠肉部45,55に配置され、ナットNとの間をシール可能にするシール部71,81を有している。この構造では、ボール20を突出している軸先端部21aに沿って流れてくる伝い水がそれらにより確実に遮断され、ソケット20の開口側へ流れないよう阻止される。
【0040】
(3)剛性や強度は次の点から優れている。このボールジョイントカバー6では、図5から推察されるごとく各カバー体4,5がストラッドバーのうちソケット30を突出している軸先端部31a側を覆うカバーの上側部分が互いに上下に重ねられる、具体的には、カバー体4の底板41とカバー体5の底板51が上下に重ねられるため、上下部のラビリンス構造によりシール性を向上したり剛性を強化できる。加えて、この構造では、各カバー体4,5が薄肉ヒンジ60で接続されると共に、上下に重ねられる底板41,51がカバー体51に設けられた係止爪59によりカバー体51を他方のカバー体4の板部41の下面対応部に係止可能となる。そのため、この構造では、仮に、薄肉ヒンジ60が衝撃などで破断したとしても、各カバー体4,5が係止爪59の係止作用により離れるという虞がなくなりその点からシール性を確実に維持できる。
【0041】
(4)意匠性は次の点で優れている。このボールジョイントカバー6では、各カバー体4,5がソケット30のうちボール20をソケット30の開口から嵌合孔32に嵌入する側と反対側の外面部分と、ソケット30を突出しているストラッドバーの軸先端部31a側のうち前記の外面部分と連続する真上部分とを露出している。この構造により、シール性を犠牲にすることなく露出部分に比例した分だけ軽量化でき、また、良好な意匠性ないしは斬新化が得られる。
【0042】
なお、本発明は以上の形態例に何ら制約されるものではなく、請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。その例を挙げると、形態例では、ボールジョイントカバーが一対のカバー体で構成され、各カバー体が薄肉ヒンジを支点として折り曲げられるようにしたが、各カバー体を分離形成して互いの両端部を連結するようにしてもよい。また、各カバー体は、一方のカバー体に止水リブを対に設けたが、両方のカバー体に設ける構成でもよい。更に、ボールスタッドの被取付部への固定構造はこの形態例以外でもよく、また、軟質部材を二色成形で形成しても差し支えない。
【符号の説明】
【0043】
1・・・・・自動車(10は車体パネル)
2・・・・・ボールスタット(20はボール、21は軸部)
3・・・・・ストラッドバー(30はソケット、31は軸部)
4・・・・・カバー体(40は側板、41は底板)
5・・・・・カバー体(50は側板、51は底板)
6・・・・・ボールジョイントカバー(60は薄肉ヒンジ)
7・・・・・軟質部材(70は孔仕切板、72は半孔部)
8・・・・・軟質部材(80は孔仕切板、82は半孔部)
11・・・・トランク
12・・・・被取付部
13・・・・トランクリッド
21a・・・ボールを突出している軸先端部
31a・・・ソケットを突出している軸先端部
32・・・・ソケットの嵌合穴
42・・・・孔仕切板(42aは半孔部)
48・・・・被係合部
49・・・・止水リブ
52・・・・孔仕切板(52aは半孔部)
58・・・・係合部
59・・・・係止爪
60・・・・薄肉ヒンジ
62・・・・軸孔
N・・・・・ナット
P・・・・・パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10