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▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】香料原料の酸化防止
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20240216BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/9783 20170101ALI20240216BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240216BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240216BHJP
   C09K 15/06 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
A61K8/365
A61K8/33
A61K8/9783
A61Q13/00 100
A61Q19/00
C11B9/00 R
C11D3/50
C09K15/06
A61K8/49
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020529404
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019051758
(87)【国際公開番号】W WO2019145425
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】62/623,077
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18169940.6
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジャニル マリー ジュマロン
(72)【発明者】
【氏名】アディ ファデル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル カランドラ
(72)【発明者】
【氏名】イン ワン
(72)【発明者】
【氏名】メラニー スミス
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/004212(WO,A1)
【文献】特表2007-515396(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02236127(EP,A1)
【文献】Sunscreen Lotion SPF 15,ID 4267399,Mintel GNPD[online],2016年9月,[検索日2022.11.21],インターネット<https://www.portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 15/00
C07F 7/00
C11B 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調合された香料、または香料原料の、光により誘発される酸化を、低減、防止および/または抑制する方法であって、前記調合された香料は、水アルコール溶液であり、前記調合された香料、または香料原料は着色剤を含むものであり、前記光により誘発される酸化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、または香料原料の変色を、低減、防止および/または抑制するものであり、前記調合された香料、または香料原料に、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、前記調合された香料、または香料原料の、光により誘発される酸化を、低減、防止および/または抑制するために十分な量で添加することを含み、さらに前記方法は、前記調合された香料、または香料原料に、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の安定剤を添加することを含む、前記方法。
【請求項2】
さらに、前記調合された香料、または香料原料のpHを、pH5~pH7.5に調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量が、前記調合された香料、または香料原料のpHにおける変化を、低減、防止および/または抑制するために十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光により誘発される酸化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、または香料原料の安定性および/または貯蔵寿命を、増大、向上および/または改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記調合された香料、または香料原料中の前記少なくとも1種の安定剤の濃度が、0.01~2質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、ピルビン酸、2-オキソ吉草酸、フェニルグリオキシル酸、2-オキソ酪酸、2-オキソ-2-フラン酢酸、α-ケトグルタル酸、2-オキソペンタン二酸、オキサル酢酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量が、前記調合された香料、または香料原料の0.0001~10質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、有機塩および一価もしくは二価のカチオンの塩からなる群から選択される塩として、前記調合された香料、または香料原料に添加される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本願は、2018年1月29日に出願された米国の仮特許出願第62/623,077号、および2018年4月27日に出願された欧州特許出願第18169940.6号の利益を主張するものであり、これらを参照することによって、その内容の全体を本願に取り入れるものとする。
【0002】
発明の技術分野
本明細書において提示される種々の態様は、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、化粧品、エッセンシャルオイルおよび天然抽出物の酸化を、低減、防止および/または抑制するための方法および組成物に関する。
【0003】
背景技術
多くの香料成分、調合された香料、ボディケア製品、化粧品、香料原料(たとえばエッセンシャルオイル、天然抽出物および合成成分)は、大気、熱および/または光にさらされると酸化されうる。酸化は、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、エッセンシャルオイルまたは天然抽出物の官能的性質および/または外観における変化につながりうる。酸化はたとえば、過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、ペルオキシヘミアセタール、ヘミアセタール、アセタールまたはエステル交換生成物を含む化学種を形成することがある。酸化の結果として形成されたこれらの化学種は、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、エッセンシャルオイルまたは天然抽出物の官能的性質または外観を変化させることがあるか、あるいは有害であるか、刺激性であるか、またはアレルギーを引き起こすことがある。
【0004】
LED光は特に、他の光源よりもはるかに、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、エッセンシャルオイル、および天然抽出物を酸化することが証明されている。従って、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、化粧品、エッセンシャルオイルおよび天然抽出物の酸化を低減する必要性が存在する。
【0005】
発明の概要
本明細書において提示される1つの態様は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を低減、防止および/または抑制する方法であって、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止および/または抑制するために十分な量で添加することを含む方法を提供する。
【0006】
1つの態様では、前記方法はさらに、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種の安定剤を添加することを含む。
【0007】
1つの態様では、前記方法はさらに、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHを、pH5~pH7.5に調整することを含む。
【0008】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHにおける変化を、低減、防止および/または抑制するために十分である。
【0009】
1つの態様では、前記酸化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の変色を、低減、防止および/または抑制する。
【0010】
1つの態様では、pHにおける変化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の変色を、低減、防止および/または抑制する。
【0011】
1つの態様では、前記酸化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の安定性および/または貯蔵寿命を、増大、向上および/または改善する。
【0012】
1つの態様では、pHにおける変化の低減、防止および/または抑制が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の安定性および/または貯蔵寿命を、増大、向上および/または改善する。
【0013】
本明細書において提示される1つの態様は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料、および少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を含有する組成物であって、前記α-オキソカルボン酸が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止および/または抑制するために十分な量で、前記組成物中に存在する組成物を提供する。
【0014】
1つの態様では、前記組成物がさらに、少なくとも1種の安定剤を含有する。
【0015】
1つの態様では、前記組成物中の前記少なくとも1種の安定剤の濃度が、0.01~2質量%である。
【0016】
1つの態様では、前記少なくとも1種の安定剤が、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、ピルビン酸、2-オキソ吉草酸、フェニルグリオキシル酸、2-オキソ酪酸、2-オキソ-2-フラン酢酸、α-ケトグルタル酸、2-オキソペンタン二酸、オキサル酢酸、インドール-3-ピルビン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の0.0001~10質量%である。
【0019】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、有機塩として添加される。
【0020】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、一価もしくは二価のカチオンの塩として、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本明細書において提示された特定の態様による、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のための典型的なディスプレイを示す。
図2】調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料において、光によって誘発される変化に対する光源の影響を経時的に示す。
図3】調合された香料のpHにおいて、光によって誘発される変化に対するバッファの影響を経時的に示す。
図4】530nmの波長で記録された、調合された香料の吸収における、光によって誘発された変化の影響を経時的に示す。
図5】本明細書において提示された特定の態様による、酸化による脱カルボキシル化反応に関して提案される例を示す。
図6】本明細書において提示された特定の態様による、α-オキソカルボン酸と有機ヒドロペルオキシドとの間の反応に関して提案される例を示す。
図7】付香用組成物の視覚的な外観において、光によって誘発される変化に対する、本明細書において提示された特定の態様による組成物の影響を示す。
図8】本明細書において提示された特定の態様による、香料原料におけるPOVの低減率の代表例を示す。
図9】本明細書において提示された特定の態様による方法による、スキンクリームのPOVを示す。
図10】本明細書において提示された特定の態様による方法による、スキンクリームのPOVを示す。
図11】付香用組成物のpHにおいて、光によって誘発される変化に対する、本明細書において提示される特定の態様による組成物の影響を示す。
【0022】
詳細な説明
以下の記載では、実施することができる特定の実施態様を参照するが、これらは具体例によって示されている。これらの実施態様は、当業者が本明細書に記載されている発明を実施することができるよう詳細に記載されているが、その他の実施態様を使用することもでき、かつ本明細書に提示されている態様の範囲から逸脱することなく、論理的な変更を加えることができるものであると理解すべきである。従って、以下の例示的な実施態様の記載は、限定的な意味で捉えられるべきではなく、本明細書において提示される様々な態様の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。
【0023】
要約は、読み手が直ちに技術的な開示内容の性質と本質とを確かめることができるよう、米国特許規則(37CFR)の1.72(b)に従って提供されている。要約は、各請求項の範囲または意味を解釈または制限するために使用されるものではないとの認識のもとで提出されている。
【0024】
調合された香料、ボディケア製品、化粧品、香料原料(たとえばエッセンシャルオイル、天然抽出物および合成成分)の多くは、酸化されうるものであり、酸化による損傷または分解を生じる。図1~4を参照すると、水アルコール溶液、たとえば調合された香料は、光または熱に長期間曝露されると酸化される。調合された香料が展示される場所はしばしば、調合された香料を特に酸化する傾向にある光、たとえばLED光を含んでいる(たとえば図1を参照のこと)。
【0025】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、長期にわたる光への曝露は、過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、ペルオキシヘミアセタールまたはエステル交換生成物を含む化学種を形成する。これらの中間体は、香料成分自体や、調合された香料に色彩を付与するために使用された着色剤、またはこれらの任意の組み合わせを化学的に変性することがある。従って、酸化は、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、エッセンシャルオイルまたは天然抽出物の官能的性質、pHおよび/または外観における変化につながりうる。
【0026】
具体例を挙げるとすれば、長期にわたる光への曝露は、着色剤を含有している水アルコール溶液のpHにおける変化をもたらし、調合された香料を刺激する(図2)。pHにおける変化の度合いは、複数の要因、たとえば調合された香料中に含まれている着色剤の種類および濃度(図2および3)、光源の強度および/または種類(図2)、バッファの存在(図4)、調合された香料の組成等に依存しうる。
【0027】
別の具体例では、酸化は、過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、ペルオキシヘミアセタールを含む化学種を形成することがある。過酸化物価(POV)は、物質1kgあたりの酸化能に相当する量として定義されており、酸化の程度の指標として使用される。
【0028】
調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のPOVは、肌への感作問題、たとえば接触皮膚炎に基づいて、規制の制限がある。
【0029】
従って、香料成分、調合された香料、調合されたボディケア製品、化粧品、エッセンシャルオイルおよび天然抽出物の酸化を、低減、防止または抑制する必要性が存在する。
【0030】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料を、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸で処理することにより、低減、防止、是正および/または抑制される。
【0031】
図5および6を参照すると、1つの態様では、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、酸化による脱カルボキシル化を経由して有機ヒドロペルオキシドと反応し、これによって有機ヒドロペルオキシドを消費して、有機ヒドロペルオキシドの酸化能を低減する。生じる反応は、α-オキソカルボン酸から、二酸化炭素と、炭素原子が一つ少なくなった、相応するカルボン酸とへの酸化、および有機ヒドロペルオキシドから相応する有機アルコールへの還元をもたらす。α-オキソカルボン酸としてピルビン酸を使用し、かつ有機ヒドロペルオキシドとしてリモネンのヒドロペルオキシドを使用する、例示的に提案される反応は、図6に示されている。
【0032】
いくつかの態様では、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸と有機ヒドロペルオキシドとの反応は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化もしくは酸化による損傷を是正する。
【0033】
いくつかの態様では、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化の低減、防止、是正および/または抑制は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の過酸化物価(POV)を測定することによって監視することができ、この場合、測定されるPOVの低減が、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化の低減、防止または抑制に相応する。
【0034】
本明細書において使用する「過酸化物価」または「POV」とは、物質1kgあたりの酸化能に相当する量を指す。特定の理論に限定することを意図するものではないが、物質のPOVは、分析によって決定される。「POV」という用語は、1つの化合物または一群の化合物を指すものではなく、しばしば緩やかに用いられ、POV試験の間に応答を生じる試料に含まれている自動酸化生成物と相互に交換可能に用いられる。このような自動酸化生成物は、試験される特定の物質に応じて様々である。有機ヒドロペルオキシドおよび無機ヒドロペルオキシド、有機過酸化物および無機過酸化物、ペルオキシヘミアセタール、ペルオキシヘミケタールおよび過酸化水素自体を含む化合物クラスの多くは、POV試験の間に応答を示すが、そのような化合物に限定されるわけではない。
【0035】
具体例を挙げるなら、1つのPOV試験は、酸化還元のヨウ素滴定である。POV応答性の化合物はすべて、試験のために規定された時間内にヨウ化物イオンをヨウ素分子へと酸化することができるという特性において共通している。実際、ヨウ化物の酸化反応がこの試験の基礎である。従って、「POV」は、特定の試料中の全てのヨウ化物イオン酸化種の合計モル量を表す数値である。
【0036】
具体例を挙げるなら、リモネンおよびリナロールは、多くのエッセンシャルオイル中で主要成分として一般的に見られる不飽和テルペンである。リモネンおよびリナロールはいずれも、大気中の酸素によって容易に酸化されてヒドロペルオキシドを形成する。リモネンおよびリナロールのヒドロペルオキシドは、接触皮膚炎を生じる感作物質として知られている。従って、リモネン、およびリモネンを含有する天然の生成物は、推奨される有機ヒドロペルオキシドのレベルが、20ミリモル/L(もしくは10ミリ当量/L)未満である場合に香料原料として使用することができるにすぎない。同様に、マツ属およびトドマツ属を含むマツ科由来のエッセンシャルオイルおよび単離物は、推奨される有機ヒドロペルオキシドのレベルが、10ミリモル/L(もしくは5ミリ当量/L)未満である場合に香料原料として使用することができるにすぎない。
【0037】
香料原料のPOVは当業者が容易に選択することができる任意の方法によって決定することができる。非限定的な例は、ヨウ素滴定、高速液体クロマトグラフィー等である。
【0038】
香料原料のPOVを決定するための1つの方法の例は、Calandra等著のFlavour and Fragr. J.(2015年)、第121~130頁に開示されている。
【0039】
香料原料は、エッセンシャルオイル、天然抽出物および合成成分を含むが、これらに限定されるものではない。
【0040】
調合された香料または化粧品のPOVは、当業者が容易に選択することができる任意の方法によって決定することができる。非限定的な例は、ヨウ素滴定、高速液体クロマトグラフィー等である。
【0041】
調合された香料または化粧品のPOVを決定するための1つの方法の例は、Calandra等著のFlavour and Fragr. J.(2015年)、第121~130頁に開示されている。
【0042】
調合されたボディケア製品のPOVは、当業者が容易に選択することができる任意の方法によって決定することができる。非限定的な例は、ヨウ素滴定、高速液体クロマトグラフィー等である。
【0043】
調合されたボディケア製品のPOVを決定するための1つの方法の例は、Calandra等著のFlavour and Fragr. J.(2015年)、第121~130頁に開示されている。
【0044】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、本明細書において提示される方法は、考えられうる多数のメカニズムによって、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化(および/または酸化による損傷)を、低減、防止、是正および/または抑制する。考えられうる1つのメカニズムは、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、酸化による脱カルボキシル化を経由して、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化副生成物と反応することである。考えられうるもう1つのメカニズムは、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸またはその塩が、大気、熱および/または光に曝露された後に、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHにおける変化を緩衝することである。
【0045】
本明細書において提示される1つの態様は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止および/または抑制する方法であって、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を低減、防止および/または抑制するために十分な量で添加することを含む方法を提供する。
【0046】
いくつかの態様では、香料原料は、合成成分、天然の生成物、エッセンシャルオイルおよび天然抽出物からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの態様では、ボディケア製品は、スキンクリームである。
【0048】
いくつかの態様では、前記方法はさらに、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHを、pH5~pH7/5に調整することを含む。いくつかの態様では、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHは、pH5、またはpH5.5、またはpH6、またはpH6.5、またはpH7、またはpH7/5に調整される。
【0049】
いくつかの態様では、pHを調整するステップは、バッファ、たとえば少なくとも1種のα-オキソカルボン酸、トリエタノールアミンまたはN-メチルジエタノールアミン等を添加することを含む。
【0050】
本明細書において提示される1つの態様は、次のステップを含む、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のPOVを低減する方法を提供する:第一のPOVレベルを有する調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を添加するステップ、および前記第一のPOVレベルを、予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルに低下させるために十分な時間にわたって、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に混合するステップ。
【0051】
本明細書において提示される1つの態様は、次のステップを含む、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止または抑制する方法を提供する:(a)第一のPOVレベルを有する調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を添加するステップ、および(b)前記第一のPOVレベルを、予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルに低下させるために十分な時間にわたって、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に混合するステップであって、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を低減、防止または抑制するために十分であるステップ。
【0052】
いくつかの態様では、香料原料は、合成成分、天然の生成物、エッセンシャルオイルおよび天然抽出物からなる群から選択される。
【0053】
1つの態様では、香料原料は柑橘類のオイル(シトラスオイル)である。
【0054】
いくつかの態様では、ボディケア製品はスキンクリームである。
【0055】
いくつかの態様では、香料原料は、香料に配合する前に処理される。
【0056】
いくつかの態様では、香料原料は、香料に配合された後に処理される。
【0057】
いくつかの態様では、予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、5~20ミリモル/Lである。
【0058】
いくつかの態様では、前記方法はさらに、予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルを有する調合された香料、ボディケア製品または香料原料から、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の過剰量を除去することを含む。
【0059】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記過剰量および/またはカルボン酸副生成物は、液-液抽出によって、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料から除去される。
【0060】
いくつかの態様では、前記方法はさらに、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を除去した後に、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料を処理して、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料の酸価を低減することを含む。
【0061】
いくつかの態様では、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料は、カルボン酸塩で処理して、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料の酸価を低減させることを含む。
【0062】
いくつかの態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、5~20ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、20ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、19ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、18ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、17ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、16ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、15ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、14ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、13ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、12ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、11ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、10ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、9ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、8ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、7ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、6ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、5ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、4ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、3ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、2ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、1ミリモル/Lである。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、1ミリモル/L未満である。
【0063】
いくつかの態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、POVにおける10%の低減である。1つの代替的な態様では、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルは、POVにおける20%の低減、または30%の低減、または40%の低減、または50%の低減、または60%の低減、または70%の低減、または80%の低減、または90%の低減、または100%の低減である。
【0064】
いくつかの態様では、POVを、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルまで低減するために十分な時間は、24時間を上回る。1つの態様では、POVを、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルまで低減するために十分な時間は、24時間、または23時間、または22時間、または21時間、または20時間、または19時間、または18時間、または17時間、または16時間、または15時間、または14時間、または13時間、または12時間、または11時間、または10時間、または9時間、または8時間、または7時間、または6時間、または5時間、または4時間、または3時間、または2時間、または1時間である。
【0065】
いくつかの態様では、POVを、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルまで低減するために十分な時間は、60分以下である。1つの態様では、POVを、前記予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルまで低減するために十分な時間は、60分、または50分、または40分、または30分、または20分、または10分、または9分、または8分、または7分、または6分、または5分、または4分、または3分、または2分、または1分である。
【0066】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加する、少なくとも1種のα-オキシカルボン酸の量および/または割合もしくは速度を制御して、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の過剰量が蓄積されないようにする。前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の過剰量の蓄積は、たとえば調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、酸触媒作用による損傷を生じることがある。
【0067】
前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中での前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の溶解度、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸のpKa、POVの還元速度、α-オキソカルボン酸による、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の嗅覚特性に対する影響、およびこれらの任意の組み合わせを含む複数の要因に依存するが、これらに限定されるわけではない。具体例を挙げるなら、溶解度の下限では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中で実質的に不溶性である。これに対して、溶解度の上限では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中で完全に混和する。
【0068】
前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中の前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の溶解度が低い態様の例は、シトラスオイル中でのピルビン酸を含むが、これに限定されるものではない。これらの態様において、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、溶解度を超える濃度で添加されるので、2相系が形成され、この場合、1つの相は、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる。特定の理論に限定することを意図するものではないが、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の成分は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる相に区分される。調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の成分が、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる相に曝されると、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中の酸に敏感な化合物の化学的な変化/損傷を生じる場合がある。
【0069】
具体例を挙げるとすれば、エッセンシャルオイルは大部分がテルペン化合物から構成される。テルペン類というクラスは一般に、酸触媒により転位反応を生じる。従って、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の成分が、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる相に曝露されることにより、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中の酸に敏感な化合物の化学的変化/損傷を生じることがあり、ひいては前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の感覚的性質を変化させることがある。
【0070】
従って、本明細書において提示されるいくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる第二の相の形成を最小化するか、または防止する速度で添加される。このような添加速度は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のPOVを低減する化学反応の速度と同じであってもよい。いくつかの態様では、POVの減少は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止または抑制する。
【0071】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、化学反応と同じ速度で前記α-オキソカルボン酸を添加することは、α-オキソカルボン酸が蓄積されることを防止し、これによって第二の相の体積を最小化することで、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料が、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる酸度の高い相に区分されることを低減するであろう。
【0072】
あるいは、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中に効率的に分散させることにより、2相系の2つの相が接触する表面積を増大させることで、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のPOVを低減する化学反応の速度を高めることができるかもしれない。いくつかの態様では、POVの減少が、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸価、を低減、防止または抑制する。
【0073】
前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中での前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の溶解度が低くない態様の例は、2-オキソ-吉草酸を含むが、これに限定されるものではない。特定の理論に限定することを意図するものではないが、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中での少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の溶解度が低くない態様で、単相が形成されることもある。この場合、添加された少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、処理後の調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中で溶解性であり、従って添加すると直ちに希釈される。この場合、添加速度が反応速度に近いと、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、添加されるに従って消費されることになる。少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の濃度は低いままであり、酸により誘発される変化は最小化される。
【0074】
代替的な1つの態様では、バッファを用いて少なくとも1種の未反応のα-オキソカルボン酸の濃度を最小化し、その際に前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は脱プロトン化されたアニオンとして存在している。
【0075】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸のアニオン形は、プロトン化された酸の形に比べて、ヒドロペルオキシドに対して非反応性である蓋然性が高い。しかし、酸の形がヒドロペルオキシドとの反応によって消費されるにつれて、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸と塩基との対の平衡は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸のpKaに従って直ちに回復される。アニオン形は直ちに媒体からのプロトンを捕捉して、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸のヒドロペルオキシド反応性の酸形をより多く産生する。このようにして、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の成分に、酸による損傷を生じることのない緩和なpHレベルで、前記媒体のバルク酸度を維持することができる。しかし同時に、プロトン化された形に比べて、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の、比較的低いが、固定化されたレベルが存在し、比較的不活性なアニオン形のシンクから消費されたら直ちに補充される。
【0076】
たとえば、具体例として記載する目的にすぎないが、ピルビン酸を使用する場合、ピルビン酸は2.50のpKaを有しているので、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料をpH5.5に緩衝し(3log単位の相違)、ピルビン酸に比べて、10(または1000)倍のピルビン酸アニオンの濃度を生じる(Henderson-Hasselbalchの平衡による)。
【0077】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の0.0001~10質量%である。1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の濃度は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の10質量%である。あるいは前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の濃度は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の9質量%、または8質量%、または7質量%、または6質量%、または5質量%、または4質量%、または3質量%、または2質量%、または1質量%、または0.9質量%、または0.8質量%、または0.7質量%、または0.6質量%、または0.5質量%、または0.4質量%、または0.3質量%、または0.2質量%、または0.1質量%、または0.09質量%、または0.08質量%、または0.07質量%、または0.06質量%、または0.05質量%、または0.04質量%、または0.03質量%、または0.02質量%、または0.01質量%、または0.009質量%、または0.008質量%、または0.007質量%、または0.006質量%、または0.005質量%、または0.004質量%、または0.003質量%、または0.002質量%、または0.001質量%、または0.0009質量%、または0.0008質量%、または0.0007質量%、または0.0006質量%、または0.0005質量%、または0.0004質量%、または0.0003質量%、または0.0002質量%、または0.0001質量%である。
【0078】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、ピルビン酸、2-オキソ吉草酸、フェニルグリオキシル酸、2-オキソ酪酸、2-オキソ-2-フラン酢酸、α-ケトグルタル酸、2-オキソペンタン二酸、オキサロ酢酸、インドール-3-ピルピン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は塩として、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に配合される。前記塩は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を有機塩基と反応させることによって形成してもよい。
【0080】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が一塩基酸である1つの態様では、得られる塩は単塩(mono-salt)である。前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が二塩基酸である1つの態様では、得られる塩は単塩または複塩(di-salt)である。
【0081】
適切な有機塩基の例は、以下の例7~11に記載の有機塩基、アミンポリマー、ポリエチルアミンなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
あるいは、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、Na、K、Mg2+およびCa2+からなる群から選択されるカチオンと反応させることにより塩を形成してもよい。
【0083】
二アンモニウム塩の例は、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸とN-メチルジエタノールアミンとを反応させることにより形成される二アンモニウム塩を含む。
【0084】
いくつかの態様では、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸対N-メチルジエタノールアミンとのモル比は、1:2、または1:1、または2:1であってもよい。
【0085】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、溶剤、たとえばアセトン中に溶解し、この溶液にN-メチルジエタノールアミンを添加することによって、N-メチルジエタノールアミンと反応させてもよい。次いで、得られた白色不透明のエマルションを撹拌し、その間に第二の相が凝集する。次いでこの混合物を少なくとも30分間冷凍庫に置き、底部の相をワックス様の固体になるまで増粘させる。次いで、まだ冷たいうちに上層はデカンテーションにより容易に除去して廃棄することができる。残りのアセトンを、窒素流、続いて室温における真空炉中での処理により底部の生成物層から除去し、これにより、二アンモニウム塩を含む淡黄色の、室温で高粘性の油状物が得られる。
【0086】
少なくとも1種のα-オキソカルボン酸との反応により二アンモニウムを形成するために適切なその他の化合物は、2-(ジメチルアミノ)エタノール、およびN,N-ジメチルドデシルアミンを含む。
【0087】
α-オキソカルボン酸は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に直接添加することができるが、あるいは代替的に、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料にα-オキソカルボン酸を添加する前に希釈することもできる。香料において使用することができる任意の希釈剤を使用することができる。適切な希釈剤は、イソプロパノール、エタノール、ジグリム、トリエチレングリコール等を含むが、これらに限定されるものではない。α-オキソカルボン酸は、希釈剤で、1:1、または1:2、または1:3、または1:4、またはそれ以上に希釈することができる。
【0088】
特定の理論に限定することを意図するものではないが、希釈剤の選択は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量にも影響を及ぼしうる。さらに、希釈剤の選択もまた、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の割合に影響を及ぼしうる。たとえば具体例として、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸としてピルビン酸を使用し、かつ溶剤としてエタノールを使用する場合、ピルビン酸はエタノールとのエステル形成が最小化されるような量および/または割合で添加しなくてはならない。
【0089】
前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の任意の体積に添加することができる。たとえば前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、1000mlまで、あるいは調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、900ml、または800ml、または700ml、または600ml、または500ml、または400ml、または300ml、または200ml、または100ml、または90ml、または80ml、または70ml、または60ml、または50ml、または40ml、または30ml、または20ml、または10ml、また9はml、または8ml、または7ml、または6ml、または5ml、または4ml、または3ml、または2ml、または1mlまで添加することができる。
【0090】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、80分にわたって、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加することができる。あるいは、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、70分、または60分、または50分、または40分、または30分、または20分、または10分、または9分、または8分、または7分、または6分、または5分、または4分、または3分、または2分、または1分にわたって、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加することができる。
【0091】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、0.25ml/分の速度で、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加する。いくつかの態様では、添加速度は、0.25ml/分より大である。いくつかの態様では、添加速度は、0.25ml/分より小である。
【0092】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加する速度は一定である。いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加する速度は変動する。1つの態様では、前記α-オキソカルボン酸は、α-オキソカルボン酸が酸化される速度に等しい速度で、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加する。いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が酸化される速度は、処理後の調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料中のPOVを測定することによって決定することができる。具体例として、図8~10を参照すると、POVの減少速度は、第一の速度を有していてもよく、第一の速度は第二の速度よりも大きくてよい。記載されている態様では、第一の速度の継続時間は、第二の速度の継続時間よりも小さい。
【0093】
代替的な態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を添加し、引き続き一定の時間をおいてクエンチしてもよい。前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、物質の添加から80分後にクエンチしてもよい。あるいは、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、物質の添加から、70分後、または60分後、または50分後、または40分後、または30分後、または20分後、または10分後、または9分後、または8分後、または7分後、または6分後、または5分後、または4分後、または3分後、または2分後、または1分後にクエンチしてもよい。
【0094】
前記クエンチは、NaNCOまたは類似の化合物を添加することにより実施することができる。
【0095】
いくつかの態様では、この方法はさらに、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の過剰量を、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料から除去することを含む。
【0096】
いくつかの態様では、前記前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の過剰量は、液-液抽出によって、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料から除去される。
【0097】
いくつかの態様では、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルまで、低減、防止および/または抑制する、その他の反応副生成物もまた、液-液抽出によって除去される。全ての副生成物、あるいはまた副生成物の一部を除去してもよい。
【0098】
いくつかの態様では、この方法はさらに、過剰のα-オキソカルボン酸を除去した後に、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料を処理して物質の酸価を低減させることを含む。いくつかの態様では、この処理は、バッファを形成する塩基の添加を含む。塩基はたとえばトリエタノールアミン、またはN-メチルジエタノールアミン等を含む。
【0099】
いくつかの態様では、物質を炭酸塩で処理して、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸価を低減させる。
【0100】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量とは、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料のpHにおける変化を、低減、防止、および/または抑制するために十分である。
【0101】
いくつかの態様では、酸化の低減、防止、および/または抑制は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の変色を、低減、防止、および/または抑制する。
【0102】
いくつかの態様では、pHにおける変化の低減、防止および/または抑制は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の変色を、低減、防止および/または抑制する。
【0103】
前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の変色は、任意の適切な方法、たとえば光の特定の波長において、たとえば530nmにおいて、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の吸収を測定することによって決定することができる。
【0104】
いくつかの態様では、酸化の低減、防止および/または抑制は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の安定性および/または貯蔵寿命を、増大、向上および/または改善する。
【0105】
いくつかの態様では、pHにおける変化の低減、防止および/または抑制は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の安定性および/または貯蔵寿命を、増大、向上および/または改善する。
【0106】
いくつかの態様では、この方法はさらに、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に、少なくとも1種の安定剤を添加することを含む。適切な安定剤は、たとえば、UVフィルター、クエンチ剤、バッファ等を含む。
【0107】
いくつかの態様では、少なくとも1種の安定剤は、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
本明細書において提示される様々な態様において使用するために適切なその他の安定剤は、3-ベンゾフェノン、4-ベンゾフェノン、ホモサレート、オクトクリレンおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0109】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種の安定剤は、0.01~2質量%の濃度で、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される。いくつかの態様では、前記少なくとも1種の安定剤の濃度は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の2質量%である。
【0110】
あるいは、前記少なくとも1種の安定剤の濃度は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の1.9質量%、または1.8質量%、または1.7質量%、または1.6質量%、または1.5質量%、または1.4質量%、または1.3質量%、または1.2質量%、または1.1質量%、または1質量%、または0.9質量%、または0.8質量%、または0.7質量%、または0.6質量%、または0.5質量%、または0.4質量%、または0.3質量%、または0.2質量%、または0.1質量%、または0.09質量%、または0.08質量%、または0.07質量%、または0.06質量%、または0.05質量%、または0.04質量%、または0.03質量%、または0.02質量%、または0.01質量%である。
【0111】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される前記少なくとも1種の安定剤の量を低減することができる。
【0112】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種の安定剤は、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量を低減することができる。
【0113】
いくつかの態様では、この方法は室温で実施される。1つの代替的な態様では、この方法は、-20℃~78℃の範囲の温度で実施される。
【0114】
いくつかの態様では、前記香料原料は、合成成分、天然の生成物、エッセンシャルオイル、および天然抽出物からなる群から選択される。
【0115】
いくつかの態様では、前記香料原料は、シトラスオイルである。
【0116】
いくつかの態様では、前記香料原料は、香料に配合される前に処理される。
【0117】
いくつかの態様では、前記香料減少は、香料に配合された後に処理される。
【0118】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、FEMA(Flavor and Extract Manufacturers Association)のGRASステータスを有している。
【0119】
いくつかの態様では、調合された香料、ボディケア製品または香料原料のPOVを減少させる方法は、以下のステップを含む:
a)調合された香料、ボディケア製品または香料原料を反応容器に導入するステップであって、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料は不活性ガス下、たとえばアルゴン下にあるステップ;
b)少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を、0.25ml/分の速度で前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料に導入するステップであって、前記α-オキソカルボン酸は、希釈剤により1:4に希釈され、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料へ導入する間、常に撹拌されているステップ;
c)水および無水炭酸ナトリウムを混合物に添加し、目視でCOの発生が見られなくなるまで反応を継続させるステップ;および
d)水相を廃棄し、これにより予め決定されていた、より低い第二のPOVレベルを有する調合された香料、ボディケア製品または香料原料が得られるステップ。
【0120】
上記の態様による方法の1例は、以下の例1~4に見ることができる。
【0121】
いくつかの態様では、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料中の前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の第二の相は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の「リーブイン(leave-in)」組成物である。特定の理論により限定することを意図するものではないが、前記の2つの相中に存在する少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量は平衡状態であり、POVの減少によって、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸からなる相から、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料を含む相へと移動する。この態様の1例は、以下の例5に記載されている。
【0122】
いくつかの態様では、前記の少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の「リーブイン」組成物は、前記調合された香料、ボディケア製品または香料原料を有する単相の組成物である。これらの態様では、前記組成物はさらにバッファを含んでおり、その際のpHは、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の大部分が、非プロトン化された形で維持されるように構成されており、前記非プロトン化された形は、(過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、ペルオキシヘミアセタールを含む)組成物のPOVに寄与する化学種と反応することができない。特定の理論に限定することを意図するものではないが、非プロトン化された形で存在する前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量は、プロトン化された形で存在する前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の量と平衡状態であり、POVの減少により、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、非プロトン化された形からプロトン化された形へと移動する。この態様の1例は、以下の例4に記載されている。
【0123】
これらの事例において、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の「リーブイン」組成物は、長時間にわたってPOVを減少させることができる。
【0124】
従って、本明細書において提示される1つの態様は、(a)調合された香料、ボディケア製品または香料原料、および(b)少なくとも1種のα-オキソカルボン酸を含有する組成物であって、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、POVを第一のレベルから、予め決定されている、より低い第二のレベルへと低減するために十分な量で存在する組成物を提供する。
【0125】
1つの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、前記予め決定されている、より低い第二のレベルが、時間と共に変化することを防止するために十分な量で、前記組成物中に存在する。この時間は、数時間、数日、数週間、またはそれ以上であってよい。
【0126】
上記の態様による組成物の1例は、以下の例5に見ることができる。
【0127】
本明細書において提示される1つの態様は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料と、少なくとも1種のα-オキソカルボン酸とを含む組成物であって、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸が、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の酸化を、低減、防止および/または抑制するために十分な量で、前記組成物中に存在する組成物を提供する。
【0128】
いくつかの態様では、前記組成物はさらに、少なくとも1種の安定剤を含む。
【0129】
いくつかの態様では、前記組成物中の前記少なくとも1種の安定剤の濃度は、0.01~1質量%である。
【0130】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種の安定剤は、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)シトレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0131】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のアルファオキソカルボン酸は、ピルビン酸、2-オキソ吉草酸、フェニルグリオキシル酸、2-オキソ酪酸、2-オキソ-2-フラン酢酸、α-ケトグルタル酸、2-オキソペンタン二酸、オキサル酢酸、インドール-3-ピルビン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0132】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸の前記十分な量は、調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料の0.0001~10質量%である。
【0133】
いくつかの態様では、前記少なくとも1種のα-オキソカルボン酸は、二アンモニウム塩として、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料に添加される。
【0134】
いくつかの態様では、前記調合された香料、ボディケア製品、化粧品または香料原料はさらに、着色剤を含む。本明細書中に記載した種々の態様において使用するために適切な着色剤の例は、ブルー1、レッド4、レッド33、イエロー5、イエロー6、オレンジ4等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0135】
適切な調合された香料、ボディケア製品または化粧品の非限定的な例は、以下のものを含む:
- フレグランス、たとえばファインフレグランス、オードトワレ、コロンまたはアフターシェーブローション;
- 繊維ケア製品、たとえば液体洗剤、粉末洗剤、タブレット型洗剤、棒状洗剤、ペースト状洗剤、パウチ型洗剤、液体繊維柔軟剤、シート状繊維柔軟剤、繊維の香りブースター、洗濯物用の前処理剤、繊維リフレッシュナー、アイロン水、洗濯物用漂白剤、絨毯用粉末またはカーペットクリーナー;
- ヘアケア製品、たとえばシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、ヘアオイル、ヘアスタイリング製品(たとえばスプレー、ムースまたはジェル)、毛髪染色用製品または毛髪パーマ用製品;
- スキンケア製品、たとえばフェイスクリーム、フェイスローション、シェービング製品(たとえばフォーム、クリーム、ジェルまたはオイル)、ボディケア製品および/またはハンドケア製品(たとえばローション、クリーム、ジェルまたはオイル)、肌引き締め用製品、脱毛剤、タルク粉末、フットケアクリームもしくはローション、ベビー用ワイプ、クレンジング用ワイプ、保湿用ワイプ、日焼け止め製品(たとえばスプレー、ローション、クリームまたはオイル)、アフターサンローション、またはセルフタンニング用製品;
- ボディデオドラントまたは制汗製品、たとえばボディデオドラントスプレー、ロールオン型デオドラント、デオドラントスティック、デオドラントクリーム、制汗スプレー、制汗スティック、ロールオン型制汗用リキッド、制汗用スティックまたは制汗用クリーム;
- スキンクレンジング製品、たとえば棒状石けん、シャワージェル、液状ハンドソープ、バスフォームまたはプライベートゾーン洗浄用製品;
- エアフレッシュナー製品、たとえばエアフレッシュナースプレー、ジェル状エアフレッシュナー、液体吸い上げ式エアフレッシュナー、多孔質基材(たとえば紙または吸い取り紙、多孔質セラミック、または多孔質プラスチック)を含む固形エアフレッシュナー、透過性の膜を用いた液状もしくはジェル状エアフレッシュナー、電気式エアフレッシュナー、およびエアフレッシュナー/殺虫兼用スプレー;および/または
- 表面手入れ用製品、たとえば多目的クリーナー、家具用艶出し剤、木製フロアクリーナー、窓用クリーナー、食器手洗い用製品(たとえば液状、ジェル状またはペースト状)、食器洗浄機用製品(たとえば粉末状、液状、ジェル状、タブレット状またはサッシェ)、便器洗浄液、インタンク型トイレクリーナー、トイレの輪ジミ防止剤、またはトイレの輪ジミ用洗剤、ペットのトイレ用リッター。
【0136】
本発明を以下の例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0137】
実施例
例1:本明細書において提示される1態様によりピルビン酸を用いたシトラスオイル中でのPOVの減少
シトラスオイル混合物(オレンジ、レモン、ライム、マンダリン、ベルガモットおよびタンジェリン)50mLを、室温で、撹拌棒およびアルゴンガスのブランケットと共に、容量100mLの丸底フラスコに導入した。
【0138】
体積比(v/v)で4:1のイソプロパノール/ピルビン酸溶液を製造した。シリンジポンプを使用して、このピルビン酸溶液20mLを0.25mL/分の速度で、撹拌下にシトラスオイルに滴下した。
【0139】
添加が完了したら、水10mLおよび無水炭酸ナトリウム100mgをフラスコに添加し、撹拌を維持した。目視可能なCOの発生が停止したら(約2~4分)、ピペットで水相を除去し、廃棄した。ピルビン酸処理の前および処理後にシトラスオイル混合物のPOV測定を行った。
【0140】
処理前のPOVは、27.261ミリ当量/Lであり、処理後のPOVは、4.786ミリ当量/Lであった。これはPOVにおける約82%の減少である。
【0141】
例2:本明細書において提示される1態様により2-オキソ-吉草酸を用いたリモネン中でのPOVの減少
自動酸化したリモネン10mLを、撹拌棒およびアルゴンガスブランケットと共に、室温で、容量30mLのガラスバイアル中に導入した。2-オキソ吉草酸100μLを添加した。バイアルを一度振とうし、50分間放置した。POV試験の前にそれ以上の処理は行わなかった。2-オキソ吉草酸処理の前および処理後にPOV測定を行った。処理前のPOVは、65.97ミリ当量/Lであり、処理後のPOVは、17.21ミリ当量/Lであった。これはPOVにおける約74%の減少である。
【0142】
例3:本明細書において提示される1態様により2-オキソ酪酸を用いたリモネン中でのPOVの減少
自動酸化したリモネン20mLを、撹拌棒およびアルゴンガスブランケットと共に、室温で、容量30mLのガラスバイアルに導入した。2-オキソ酪酸250μLを添加した。バイアルを一度振とうしてから放置し、時間の関数としてPOV値について監視した。回収したデータは以下の表に示されている。
【0143】
【表1】
【0144】
これらの結果は、POVにおける初期の迅速な減少と、その後のPOV減少速度における低下を示した。これは、試薬の消耗によるものかもしれないが、POVの損失は、添加した2-オキソ酪酸全てに関するモルベースに完全に依存するためには十分ではない。若干のヒドロペルオキシドは極めて迅速に分解され、その他の酸化剤はそれよりもはるかにゆっくり分解されるからなのかもしれない。追加の2-オキソ酪酸500μLを添加して、試料をさらに24時間放置すると、測定されたPOVは、8.577ミリ当量/Lであった(合計して87.1%の減少)。
【0145】
例4:本明細書において提示される1態様により2-フェニルグリオキシル酸を用いたリモネン中でのPOVの減少
自動酸化されたリモネン20mLを、撹拌棒およびアルゴンガスブランケットと共に、室温で、容量30mLのガラスバイアルに導入した。フェニルグリオキシル酸200mgを添加し、溶解させた。バイアルを一度振とうし、放置し、時間の関数としてPOV値を監視した。回収されたデータは以下の表に示されている。
【0146】
【表2】
【0147】
例5:本明細書において提示される1態様により2-オキソ-フラン酢酸を用いたリモネン中でのPOVの減少
シトラスオイル混合物20mLを、撹拌棒およびアルゴンガスブランケットと共に、室温で、容量30mLのガラスバイアルに導入した。α-オキソ-2-フラン酢酸400mgを添加した。バイアルを一度振とうし、放置し、時間の関数としてPOV値を監視した。添加したα-オキソ-2-フラン酢酸の大部分は溶解しなかったので、酸の限定的な溶解度は、制御された放出メカニズムとして作用する蓋然性が高い:溶液中のα-オキソ-2-フラン酢酸がヒドロペルオキシドにより消費されるに従い、溶解度係数に従ってより多くが溶解する蓋然性が高い。このようにして、溶解しなかった固体が、シトラスオイル混合物中に溶解したα-オキソ-2-フラン酢酸の、一定して低い濃度を維持するためのシンクとして作用する。
【0148】
この事例では、各測定間の時間が比較的長かった(数分ではなく数日)ため、未処理のシトラスオイル混合物が、実験の過程でさらに酸化される可能性が存在していた。従って、処理後のオイルのPOVは、未処理のオイルのPOVと比較して変動していないが、未処理のオイルの測定は、それぞれの時点で再決定された(最初の1回の値を使用するのみではなく)。回収されたデータは以下の表に示されている。
【0149】
【表3】
【0150】
例6:本明細書において提示される1態様により2-オキソ-吉草酸を用いたスキンクリーム配合物中でのPOVの減少
セチルステアリルアルコール0.5部、ウールワックスアルコール6.0部、および白色ワセリンゼリー93.5部を含有するスキンクリーム配合物を、ドイツのPharmacopoeia DAB2008に従って製造した。
【0151】
前記スキンクリームを2つの別々の調剤に分割した。高度に酸化したリモネン試料を両方の調剤に添加し、その際、第一の調剤は、第二の調剤中の酸化リモネンの濃度の約三分の一の濃度の酸化リモネンを含んでいた。酸化リモネン試料の分析は、前記試料が、リモネンのヒドロペルオキシド異性体混合物を含有していることを示した。
【0152】
第一および第二のスキンクリーム調剤の両方の当初のPOVを、2-オキソ吉草酸またはフェニルグリオキサル酸による処理に先だって、次のとおりに記録した:2-オキソ吉草酸(第二の調剤)またはフェニルグリオキシル酸(第一の調剤)を、前記スキンクリーム調剤に慎重に混合した。2-オキソ吉草酸を添加している間に、これらの調剤のPOVを測定した。2-オキソ吉草酸またはフェニルグリオキシル酸の添加の後に、処理した調剤を室温で放置した。得られたPOVデータは、個々の時点で滴定されたスキンクリームのアリコートの正確な質量に関して補正し、当初のPOVに対するパーセンテージとして標準化した。
【0153】
最も高い量の酸化リモネン試料を含有する第二の調剤は、約2.3%(w/w)の2-オキソ吉草酸で処理した。これらの結果は、以下の図9に示されている。
【0154】
最も低い量の酸化リモネン試料を含有している第一の調剤は、約3.9%(w/w)の2-フェニルグリオキシル酸で処理した。これらの結果は、以下の図10に示されている。
【0155】
例7:α-ケトグルタル酸(CAS#328-50-7)とN-メチルジエタノールアミン(NMDEA、CAS#105-59-9)とのモル比1:2での反応による二アンモニウム塩の形成
α-ケトグルタル酸1.461g(0.01モル)を乾燥アセトン10mLに溶解して清澄な溶液が得られた。この溶液を正味2.384g(0.02モル)のNMDEAに一気に添加した。白色不透明のエマルションを3~4分間、強力に撹拌し、その間に第二の相が凝固した。この混合物を少なくとも30分間冷凍庫に置き、底部の相はワックス状の固体へと増粘した。まだ冷たいうちに上層はデカンテーションまたはピペットで容易に除去され、廃棄された。残りのアセトンを底部から除去し、生成物層を窒素流、引き続き室温において真空炉中で処理した。この結果、二アンモニウム塩(AKG-DiNMDEA塩)を含有する、清澄で淡黄色の、室温で高粘性の油状物が得られた。
【0156】
溶剤として、体積比(v/v)で90/10のエタノール/水を使用し、香料オイルとして、オレンジ、グレープフルーツ、およびベルガモットオイルの混合物を使用して香料のサンプルを製造した。シトラスオイル混合物を、約19.4%(v/v)で溶剤に導入した(溶剤25mL中でオイル6mL)。約400mg(2.0%w/v)のAKG-DiNMDEA塩をシトラス香料混合物20mL中に溶解し、添加後に時間の関数としてPOV測定を実施した。未処理の香料試料を、処理した香料と同様に処理し、試験も行った。というのも、POVは、試料の取り扱い(ボトルの開封、撹拌等)により急激に上昇する可能性があるからである。これらの結果は以下の表に示されている。
【0157】
【表4】
【0158】
これらのデータは、AKG-DiNMDEA塩を添加した24時間後に、約94%のPOVにおける減少を示している。
【0159】
例8:α-ケトグルタル酸(CAS#328-50-7)とN,N-ジメチルドデシルアミン(DiMeC12A、CAS#112-18-5)とのモル比1:2での反応による二アンモニウム塩の形成
α-ケトグルタル酸1.461g(0.01モル)を乾燥アセトン6mL中に溶解した。この溶液を撹拌しながら1~2分で、乾燥アセトン6mL中のN,N-ジメチルドデシルアミン4.268g(0.02モル)の別の溶液に滴下した。合した溶液が約35~40℃に温かくなったこと以外は、目視可能な反応の徴候は見られなかった。この混合物を簡単に、しかし強力に振とうし、冷凍庫で30分間冷却した。冷たい時でさえ、生成物の沈殿はまだ生じなかったが、混合物を再度振とうすると、物質全体がほぼ瞬時に固化して固体状の白いワックス状物質となった。取り込まれたアセトンを窒素流、引き続き室温において真空炉中で処理することにより除去できるよう、この固体を30~35℃に加温して、生成物を再度液状化した。これにより、二アンモニウム塩(AKG-DiMeC12A塩)を含有する白色のワックス状固体が得られた。
【0160】
溶剤として、体積比90/10のエタノール/水、および香料オイルとして、オレンジ、グレープフルーツおよびベルガモットオイルの混合物を使用して、香料のサンプルを製造した。このシトラスオイル混合物を約19.4%(v/v)で溶剤に配合した(溶剤25mL中のオイル6mL)。約400mg(2/0%w/v)のAKG-DiMeC12A塩を、シトラス香料混合物20mL中に溶解し、添加後に時間の関数としてPOV測定を行った。未処理の香料試料を、処理後の香料と同様に処理し、かつ試験も行った。というのも、POVは、試料の取り扱い(ボトルの開封、撹拌等)により迅速に上昇することがあるからである。これらの結果は以下の表に示されている。
【0161】
【表5】
【0162】
例9:α-ケトグルタル酸(CAS#328-50-7)と2-(ジメチルアミノ(エタノール(Deanol、CAS#108-01-0)とのモル比1:2での反応による二アンモニウム塩の形成
α-ケトグルタル酸1.461g(0.01モル)を乾燥アセトン10mL中に溶解して清澄な溶液が得られた。この溶液を撹拌下に1~2分で、正味1.783g(0.02モル)の2-ジメチルアミノエタノール(Deanol)に添加した。白色不透明のエマルションを1分間、強力に撹拌し、その間に第二の相が凝集した。この混合物を一夜冷凍庫に置き、底部の相は極めて粘性の高い、濁った油状物へと増粘した。まだ冷たいうちに、上層はデカンテーションまたはピペットにより容易に除去され、廃棄された。残りのアセトンを、窒素流、引き続き室温において真空炉中で処理することにより、底部の生成物層から除去した。これにより、二アンモニウム塩(AKG DiDeanol塩)を含有する、無色透明の、室温で粘性の油状物が得られた。
【0163】
溶剤として、体積比90/10のエタノール水を使用し、かつ香料オイルとして,オレンジ、グレープフルーツおよびベルガモットオイルの混合物を使用して、香料のサンプルを製造した。シトラスオイル混合物を、約19.4%(v/v)で溶剤に導入した(溶剤25mL中オイル6mL)。約200mg(1.0%w/v)のAKG DiDeanol塩を、シトラス香料混合物20mL中に溶解し、添加後に時間の関数としてPOV測定を行った。未処理の香料試料は、処理後の香料と同様に処理し、かつ試験も行った。というのも、POVは試料の取り扱い(ボトルの開封、撹拌等)により迅速に上昇する可能性があるからである。これらの結果は、以下の表に示されている。
【0164】
【表6】
【0165】
例10:ピルビン酸(CAS#328-50-7)とN-メチルジエタノールアミン(NMDEA、CAS#105-59-9)とのモル比1:1での反応による二アンモニウム塩の形成
ピルビン酸2.642g(0.03モル)を、乾燥アセトン5mL中に溶解して、清澄な溶液が得られた。この溶液を、攪拌しながら1~2分で、NMDEA 3.575g(0.03モル)および乾燥アセトン5mLから製造された第二の溶液に滴下した。得られた混合物は、酸溶液を添加するにつれて温かくなり(約35~45℃)、濁りが生じた。乳白色のエマルションを1分間、強力に撹拌し、その間に第二の相が凝集した。この混合物を1時間冷凍庫に置き、底部の相の粘度が顕著に増大したが、固化することはなかった。まだ冷たいうちに、上層はデカンテーションまたはピペットにより容易に除去され、廃棄された。残りのアセトンは、底部の生成物層から窒素流、引き続き室温で真空炉中での処理により除去された。これにより、二アンモニウム塩(PA-NMDEA塩)を含有する、清澄で黄金色の、室温で高粘性の油状物が得られた。
【0166】
溶剤として、体積比90/10のエタノール/水、および香料オイルとして、ライム、オレンジ、グレープフルーツおよびベルガモットオイルの混合物を使用して、香料のサンプルを製造した。シトラスオイル混合物を、約16.7%(v/v)で溶剤に導入した(溶剤200mL中のオイル40mL、香料の合計は240mL)。約150mg(1.0%w/v)のPA-NMDEA塩をシトラス香料混合物15mL中に溶解し、添加後に時間の関数としてPOV測定を行った。未処理の香料試料を、処理後の香料と同様に処理し、試験も行った。というのも、POVは、試料の取り扱い(ボトルの開封、撹拌等)により迅速に上昇する可能性があるからである。これらの結果は以下の表に示されている。
【0167】
【表7】
【0168】
これらのデータは、PA-NMDEAが73.3時間のところで消耗されたことを示唆している。というのも、試料のPOVはその後、反応時間を延長しても、それ以上低下することはなかったからである。これは、POVにおける90%超の減少を表す。3日後の平均的な未処理のオイルは、(6.66+6.58)/2=6.62ミリモル/Lであったので、0.58/6.62×100=8.76%が残りであるか、またはPOVにおける91.2%の減少である。
【0169】
例11:フェニルグリオキシル酸(PhGA、CAS#611-73-4)とN-メチルジエタノールアミン(NMDEA、CAS#105-59-9)とのモル比1:1での反応によるアンモニウム塩の形成
PhGA 1.501g(0.01モル)を、乾燥アセトン5mL中に溶解して、清澄な溶液が得られた。この溶液を、NMDEA 1.192g(0.01モル)および乾燥アセトン5mLから製造された第二の溶液に一気に添加した。得られた混合物は温かくなり(約30~35℃)、淡黄色に変色したが、濁りや沈殿物は形成されなかった。この溶液を1分間、強力に撹拌し、30分間冷凍庫に置いた。依然として沈殿物または第二の層は形成されなかったが、溶液は明らかに過飽和であった。溶剤のアセトンを窒素流で除去する試みを行ったが、窒素流が溶液に触れたとたんに、白色の結晶質の濃厚なペーストが形成された。この結晶は、混合物を室温に温めるにつれてアセトン中に再び溶解し始めた。生成物を再凍結し、結晶度の高い生成物が再沈殿し、上澄みのアセトンは、まだ冷たいうちにピペットによりできる限り除去した。次いで残りのアセトンを窒素流下で除去して、純白色の針状結晶が得られた。二アンモニウム塩(PhGA-NMDEA塩)を含むこの結晶質の生成物は、著しく吸湿性であり、周囲大気に曝露されると急速に液化するものである。針状の白色物質は、結晶質を維持するためには、真空下または厳格に窒素ブランケット下に維持する必要があった。質量/収率は、吸湿性が原因で得られなかった。
【0170】
溶剤として、体積比90/10のエタノール/水、および香料オイルとして、ライム、オレンジ、グレープフルーツおよびベルガモットオイルの混合物から香料サンプルを製造した。シトラスオイル混合物を、約16.7%(v/v)で溶剤に導入した(溶剤200mL中のオイル40mL、香料は全部で240mL)。約150mg(1.0%w/v)のPhGA-NMDEA塩を、シトラス香料混合物15mL中に溶解し、添加後に時間の関数としてPOV測定を行った。未処理の香料試料を、処理後の香料と同様に処理し、試験も行った。というのも、POVは、試料の取り扱い(ボトルの開封、撹拌等)により急激に上昇する可能性があるからである。これらの結果は、以下の表に示されている。
【0171】
【表8】
【0172】
これらのデータは、フェニルグリオキシル酸成分が香料サンプル中でPOVを減少させるために効果がある一方で、これまで調べた非アリルピルビン酸よりも反応性が低いことを示唆している。反応性におけるこの相違が有用である状況もありうる。
【0173】
例12:本明細書において提示されるいくつかの態様による、香料原料を含有する溶液の、光により誘発される酸化の防止
第一の実験列では、着色剤レッド33の安定性に対する香料原料バニリンの濃度の経時的な影響を調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図7を参照すると、試験溶液の目視による外観は著しく変化した(一番上の列)。また目視による外観における変化は、バニリンの濃度に依存するように思われた。
【0174】
第二の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する安定剤の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図7を参照すると、試験溶液の目視による外観は変化した(二番目の列)。また目視による外観における変化は、バニリンの濃度に依存するように思われた。
【0175】
第三の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止するα-ケトグルタル酸の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図7を参照すると、試験溶液の目視による外観は変化した。
【0176】
第四の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する安定剤の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図7を参照すると、試験溶液の目視による外観は変化した(五番目の列)。また目視による外観における変化は、バニリンの濃度に依存するように思われた。しかし、安定剤の存在は、目視による外観における変化をある程度低減するように思われた。
【0177】
第五の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する、安定剤と組み合わせたα-ケトグルタル酸の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%、Tinogard Q 0.1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図7を参照すると、試験溶液の目視による外観は少なくとも変化した(六番目の列)。
【0178】
図7の最後の列は、レッド33およびα-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25~1%を含む比較溶液の目視による外観における変化を示している。これらのデータは、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることによって形成された有機塩の溶液0.25%の濃度が、着色剤の目視による外観における変化を防止するために十分であることを示唆している。
【0179】
例13:本明細書において提示されるいくつかの態様による、香料原料を含有する溶液の、光により誘発される酸化の防止
第一の実験列では、溶液のpHの安定性に対する香料原料バニリンの濃度の経時的な影響を調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図11を参照すると、試験溶液のpHは1.68のpH単位の変化をもって著しく低下した。これは、レッド33を用いた比較溶液とラベリングした行である。
【0180】
第二の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する安定剤の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図11を参照すると、試験溶液のpHは1.40のpH単位の変化をもって著しく低下した(レッド33+Covabsorb 0.3%とラベリングした列)。
【0181】
第三の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する、安定剤と組み合わされたα-ケトグルタル酸の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図11を参照すると、試験溶液において観察されたpHの低下は小さく、0.02のpH単位の変化であった(レッド33+Covabsorb 0.3%+α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%とラベリングした列)。
【0182】
第四の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する安定剤の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%、Tinogard 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%、Tinogard 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%、Tinogard 0.1%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%、Tinogard 0.1%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図11を参照すると、試験溶液において観察されたpHの低下は0.66pH単位であった(レッド33+Covabsorb 0.3%+Tinogard 0.1%とラベリングした列)。
【0183】
第五の実験列では、着色剤レッド33の安定性の変化を防止する、安定剤と組み合わされたα-ケトグルタル酸の性能を経時的に調査した。試験溶液は以下のとおりであった:1:バニリン0.50%、Covabsorb 0.3%、Tinogard 0.1%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;2:バニリン1%、Covabsorb 0.3%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%;および3:バニリン2%、Covabsorb 0.3%%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含むエタノール80%。エタノール80%、Covabsorb 0.3%、α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%およびレッド33 1%を含む比較溶液も含まれていた。比較溶液および試験溶液を765ワット/mの強度の光に6時間曝露した。図11を参照すると、試験溶液において観察されたpHの低下は0.07pH単位であった(レッド33+Covabsorb 0.3%+Tinogard 0.1%+α-ケトグルタル酸とNMDAとを反応させることにより形成された有機塩の溶液0.25%とラベリングした列)。
【0184】
本明細書において引用した刊行物は、それらを参照することによってその全体を本明細書の内容に組み込むものとする。本発明の種々の態様を上記で実施例および好ましい実施態様を参照することによって具体的に説明してきたが、本発明の範囲は、上記の記載によって定義されるのではなく、特許法の原則に従って適切に解釈される以下の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11