(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】色補正構成要素を有する有機発光ダイオードディスプレイ及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/00 20230101AFI20240216BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240216BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240216BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20240216BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
H10K71/00
G09F9/00 313
G09F9/00 338
G09F9/30 365
H10K50/852
H10K59/38
(21)【出願番号】P 2020557218
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 US2019026491
(87)【国際公開番号】W WO2019204078
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-07
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,ニコラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】フレイアー,デイヴィッド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブロット,ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,デイヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】メンケ,スティーヴン エム.
(72)【発明者】
【氏名】チエン,バート ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リー, ソン テク
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,エンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】エバーアーツ,アルバート アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ウィリアム ブレイク.
(72)【発明者】
【氏名】ブリュッセウィッツ,キース アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ネビット,ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィラー,ブリアナ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ジョディ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ,ジル ジェイ.
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289592(JP,A)
【文献】特開2014-123568(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045070(WO,A1)
【文献】特表2013-546014(JP,A)
【文献】特開2009-070816(JP,A)
【文献】国際公開第2017/205174(WO,A1)
【文献】特表2016-500161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/00
G09F 9/00
G09F 9/30
H10K 50/852
H10K 59/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDディスプレイパネルと色補正構成要素とを備える有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法であって、
前記OLEDディスプレイパネルを準備する工程であって、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いて前記OLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
Cとを有し、前記複数の比較ディスプレイパネルは、
前記複数の比較ディスプレイパネルのWPCS
C
45-WPAE
C空間における性能点
が分布する領域の境界に沿って性能曲線を画定し、前記性能曲線は、最低許容可能効率を有する第1の端点から最大許容可能白色点色シフトWPCS
45
LAを有する第2の端点へと延び、前記準備する工程は、
前記WPCS
C
45
-WPAE
C
空間における前記性能曲線を決定する工程と、その後に、前記OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
0とを有し、WPCS
0
45及びWPAE
0は、前記性能曲線の右側にある、前記ディスプレイパネルの性能点を画定し、WPCS
C
45軸に沿った、前記ディスプレイパネルの前記性能点から前記性能曲線までの距離が少なくとも0.005であるように、前記複数の設計パラメータを選択する工程
とを含む、準備する工程と、
前記OLEDディスプレイパネル上に
前記色補正構成要素を配設する工程であって、前記色補正構成要素は、前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有し、WPCS
45及びWPAEは、前記性能曲線の上方又は左側にある前記ディスプレイの性能点を画定するように構成されている、配設する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記準備する工程は、WPCS
0
45がWPCS
45
LAよりも大きくなるように前記複数の設計パラメータを選択する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記準備する工程は、前記OLEDディスプレイパネルを設計する工程を含み、前記設計する工程は、前記複数の設計パラメータを特定する工程と、1つ以上の傾斜した視野角において、前記OLEDディスプレイパネルの混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせるために、前記複数の設計パラメータの値を選択する工程と、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択する工程の前に、前記色補正構成要素によって提供される色補正を特性評価する工程を更に含み、前記選択する工程は、前記色補正構成要素によって提供される前記色補正が、混色ウェイトにおける前記不均衡を少なくとも部分的に補正するように、前記不均衡を選択する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記OLEDディスプレイパネルは、複数の画素を備え、前記画素の各々は複数のサブ画素を備え、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を備え、前記複数の設計パラメータは、前記複数のOLED層のうちの各層の光学厚さを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
OLEDディスプレイパネルと色補正構成要素とを備える有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法であって、
前記OLEDディスプレイパネルを準備する工程であって、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いて前記OLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
Cと、青色軸方向効率であるBAE
Cとを有し、前記準備する工程は、
改良の対象となる比較ディスプレイパネルについて、WPCS
C
45
と、WPAE
C
と、BAE
C
とを決定する工程と、その後に、前記OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
0とを有し、
前記改良の対象となる比較ディスプレイパネルについて、WPCS
C
45はWPCS
0
45-0.005以下であり、WPAE
CはWPAE
0-1Cd/A以上であるように、前記複数の設計パラメータを選択する工程を含む、準備する工程と、
前記OLEDディスプレイパネル上に
前記色補正構成要素を配設する工程であって、前記色補正構成要素は、前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
45と、青色軸方向効率であるBAEとを有し、
前記改良の対象となる比較ディスプレイパネルについて、WPCS
45は、WPCS
C
45-0.005以下であり、BAEは、BAE
Cよりも少なくとも10%大きくなるように構成されている、配設する工程と、を含む方法。
【請求項7】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
画素化されたOLEDディスプレイパネルと、色補正構成要素と、を備え、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは複数の画素を備え、前記画素の各々は複数のサブ画素を備え、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を備え
、
前記色補正構成要素は、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、前記ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されて
おり、
前記OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
Cとを有し、前記複数の比較ディスプレイパネルは、
比較ディスプレイパネルのWPCS
C
45-WPAE
C空間における性能点
が分布する領域の境界に沿って第1の性能曲線を画定し、
前記OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイと同等である、前記色補正構成要素が配設された複数の比較ディスプレイが、
前記複数の比較ディスプレイのWPCS
C
45-WPAE
C空間における性能点
が分布する領域の境界に沿って第2の性能曲線を画定し、前記第2の性能曲線は、前記第1の性能曲線の上方又は左側にあり、WPCS
45及びWPAEが、実質的に前記第2の性能曲線に沿って、前記ディスプレイの性能点を画定し、
前記第2の性能曲線に沿って性能点を有する前記複数の比較ディスプレイのうちの各比較ディスプレイに対して、前記色補正構成要素を前記比較ディスプレイから取り除くと、
WPCS
C
45
-WPAE
C
空間において第3の性能曲線に沿った性能点を有する比較ディスプレイパネルになり、前記第3の性能曲線は、前記第1の性能曲線の右側にあり、WPCS
0
45及びWPAE
0が、実質的に前記第3の性能曲線に沿って、前記ディスプレイパネルの性能点を画定し、
前記色補正構成要素は、波長及び偏光に依存する部分反射体を備え、前記部分反射体は光学積層体を備え、前記光学積層体は複数の光学繰り返し単位を備え、前記光学繰り返し単位の各々は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下であり、前記第2の軸に沿った屈折率に関して、前記光学繰り返し単位は、前記光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び前記光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有し、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲内にあり、T2は少なくとも350nm、かつ1250nm以下である、
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ。
【請求項8】
前記複数の比較ディスプレイパネルのうちの比較ディスプレイパネルのWPCS
C
45がWPCS
0
45-0.005以下であり、比較ディスプレイパネルのWPAE
CがWPAE
0-1Cd/A以上であり、WPCS
45が比較ディスプレイパネルのWPCS
C
45未満である、請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記複数のサブ画素は、複数の青色サブ画素を含み、前記青色サブ画素の各々は正孔輸送層を有し、前記青色サブ画素の正孔輸送層の厚さは、前記比較ディスプレイパネルにおける対応する青色サブ画素の正孔輸送層の厚さの1.02~1.1倍である、請求項8に記載のディスプレイ。
【請求項10】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
画素化されたOLEDディスプレイパネルと、色補正構成要素と、を備え、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは複数の画素を備え、前記画素の各々は複数のサブ画素を備え、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を備え
、
前記色補正構成要素は、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されて
おり、
前記OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は、前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
Cとを有し、前記複数の比較ディスプレイパネルは、
前記複数の比較ディスプレイパネルのWPCS
C
45-WPAE
C空間における性能点
が分布する領域の境界に沿って性能曲線を画定し、WPCS
45及びWPAEが前記ディスプレイの性能点を画定し、前記ディスプレイの青色軸方向効率BAEが、
前記複数の比較ディスプレイパネルのうちの、前記性能曲線に沿って性能点を有し
かつWPAEから5%以内の白色点軸方向効率を有す
る第1の比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率BAE
Cよりも少なくとも10%大きく、
前記色補正構成要素は、波長及び偏光に依存する部分反射体を備え、前記部分反射体は光学積層体を備え、前記光学積層体は複数の光学繰り返し単位を備え、前記光学繰り返し単位の各々は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下であり、前記第2の軸に沿った屈折率に関して、前記光学繰り返し単位は、前記光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び前記光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有し、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲内にあり、T2は少なくとも350nm、かつ1250nm以下である、
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ。
【請求項11】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
画素化されたOLEDディスプレイパネルと、色補正構成要素と、を備え、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは複数の画素を備え、前記画素の各々は複数のサブ画素を備え、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を備え、前記OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、白色点軸方向効率であるWPAE
Cと、青色軸方向効率であるBAE
Cとを有し、WPCS
C
45はWPCS
0
45-0.005以下であ
り、
前記色補正構成要素は、前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS
45と、青色軸方向効率であるBAEとを有し、WPCS
45はWPCS
C
45-0.005以下であり、BAEはBAE
Cよりも少なくとも10%大きくなるように構成されて
おり、
前記色補正構成要素は、波長及び偏光に依存する部分反射体を備え、前記部分反射体は光学積層体を備え、前記光学積層体は複数の光学繰り返し単位を備え、前記光学繰り返し単位の各々は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下であり、前記第2の軸に沿った屈折率に関して、前記光学繰り返し単位は、前記光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び前記光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有し、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲内にあり、T2は少なくとも350nm、かつ1250nm以下であ
り、第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、前記部分反射体が、25%~60%の平均反射率を有する第1の反射帯域を有する、
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ。
【請求項12】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
画素化されたOLEDディスプレイパネルと、色補正構成要素と、を備え、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、30度における青色対赤色の混色ウェイト比β
0
30、及び45度における青色対赤色の混色ウェイト比β
0
45を有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、β
0
45>β
0
30≧1.05、及び1.5≧β
0
45≧1.1であ
り、
前記色補正構成要素は、前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、45度における前記ディスプレイの青色対赤色の混色ウェイト比がβ
45であり、30度における前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの青色対赤色の混色ウェイト比がβ
30であり、β
0
45-0.1≧β
45≧2.1-β
0
45、及びβ
0
30-0.05≧β
30≧2.05-β
0
30であるように構成され
ており、
前記色補正構成要素は、波長及び偏光に依存する部分反射体を備え、前記部分反射体は光学積層体を備え、前記光学積層体は複数の光学繰り返し単位を備え、前記光学繰り返し単位の各々は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下であり、前記第2の軸に沿った屈折率に関して、前記光学繰り返し単位は、前記光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び前記光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有し、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲内にあり、T2は少なくとも350nm、かつ1250nm以下であ
り、第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、前記部分反射体が、25%~60%の平均反射率を有する第1の反射帯域を有する、
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ。
【請求項13】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
画素化されたOLEDディスプレイパネルと、色補正構成要素と、を備え、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を備える画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を備え、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を備え、
前記色補正構成要素は、前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、前記
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS
45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されて
おり、
前記OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は、前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS
C1
45と、青色軸方向効率であるBAE
C1とを有し、BPCS
C1
45はBPCS
45から0.0025以内であり、BAEはBAE
C1よりも少なくとも10%大きいか、又は、
BAE
C1はBAEから5%以内であり、BPCS
C1
45はBPCS
45よりも少なくとも0.005大きく、
前記色補正構成要素は、波長及び偏光に依存する部分反射体を備え、前記部分反射体は光学積層体を備え、前記光学積層体は複数の光学繰り返し単位を備え、前記光学繰り返し単位の各々は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下であり、前記第2の軸に沿った屈折率に関して、前記光学繰り返し単位は、前記光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び前記光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有し、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲内にあり、T2は少なくとも350nm、かつ1250nm以下であ
り、第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、前記部分反射体が、25%~60%の平均反射率を有する第1の反射帯域を有する、
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、例えば、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)ディスプレイは、観視方向により色が変化する光出力を発生することが多い。
【発明の概要】
【0002】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法が提供される。本方法は、OLEDディスプレイパネルを提供する工程を含み、この工程において、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有し、複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って性能曲線を画定し、性能曲線は、最低許容可能効率を有する第1の端点から、最大許容可能白色点色シフトであるWPCS45
LAを有する第2の端点へと延びている。提供する工程は、OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有するように、複数の設計パラメータを選択することを含み、WPCS0
45及びWPAE0は、性能曲線の右側にあるディスプレイパネルの性能点を画定し、WPCSC
45軸に沿った、ディスプレイパネルの性能点から性能曲線までの距離は少なくとも0.005である。本方法は、OLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程を更に含み、色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有し、WPCS45及びWPAEは、性能曲線の上方又は左側にあるディスプレイの性能点を画定するように構成されている。
【0003】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法が提供される。本方法は、OLEDディスプレイパネルを提供する工程を含み、この工程において、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有する。提供する工程は、OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有するように、複数の設計パラメータを選択することを含む。少なくとも1つの比較ディスプレイパネルについて、WPCSC
45はWPCS0
45-0.005以下であり、WPAECはWPAE0-1Cd/A以上である。本方法は、OLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程を更に含み、色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における白色点色シフトであるWPCS45を有し、WPCS45はWPCSC
45未満であるように構成されている。
【0004】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法が提供される。本方法は、OLEDディスプレイパネルを提供する工程を含み、この工程において、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECと、青色軸方向効率であるBAECとを有する。準備する工程は、OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有するように、複数の設計パラメータを選択することを含む。少なくとも1つの比較ディスプレイパネルについて、WPCSC
45はWPCS0
45-0.005以下であり、WPAECはWPAE0-1Cd/A以上である。本方法は、OLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程を更に含み、色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有し、WPCS45は、WPCSC
45+0.005未満であり、BAEは、BAECよりも少なくとも10%大きくなるように構成されている。
【0005】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含み、各画素は複数のサブ画素を含み、各サブ画素は複数のOLED層を含む。色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されている。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有する。複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って第1の性能曲線を画定する。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外はディスプレイと同等である複数の比較ディスプレイは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って第2の性能曲線を画定する。第2の性能曲線は、第1の性能曲線の上方又は左側にある。WPCS45及びWPAEは、実質的に第2の性能曲線に沿ったディスプレイの性能点を画定する。第2の性能曲線及び複数の比較ディスプレイは、WPCSC
45-WPAEC空間において第3の性能曲線を画定し、このとき、第2の性能曲線に沿って性能点を有する複数の比較ディスプレイのうちの各比較ディスプレイに対して、色補正構成要素を比較ディスプレイから取り除くと、第3の性能曲線に沿った性能点を有する比較ディスプレイパネルになる。第3の性能曲線は、第1の性能曲線の右側にある。WPCS0
45及びWPAE0は、実質的に第3の性能曲線に沿ったディスプレイパネルの性能点を画定する。
【0006】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含み、各画素は複数のサブ画素を含み、各サブ画素は複数のOLED層を含む。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である比較ディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有し、WPCSC
45は、WPCS0
45-0.005以下である。色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有し、WPCS45は、WPCSC
45未満であるように構成されている。
【0007】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含み、各画素は複数のサブ画素を含み、各サブ画素は複数のOLED層を含む。色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されている。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有する。複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って性能曲線を画定し、WPCS45及びWPAEがディスプレイの性能点を画定する。ディスプレイの青色軸方向効率BAEは、性能曲線に沿って性能点を有し、WPAEから5%以内の白色点軸方向効率を有する複数の比較ディスプレイパネルのうちの第1の比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率BAECよりも少なくとも10%大きい。
【0008】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含み、各画素は複数のサブ画素を含み、各サブ画素は複数のOLED層を含む。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である比較ディスプレイパネルは、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECと、青色軸方向効率であるBAECとを有し、WPCSC
45は、WPCS0
45-0.005以下である。色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されており、WPCS45は、WPCSC
45+0.005未満であり、BAEは、BAECよりも少なくとも10%大きい。
【0009】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、30度における青色対赤色の混色ウェイト(color mixing weight)比β0
30、及び45度における青色対赤色の混色ウェイト比β0
45を有する。β0
45>β0
30≧1.05、及び1.5≧β0
45≧1.1。色補正構成要素は、ディスプレイの45度における青色対赤色の混色ウェイト比がβ45であり、ディスプレイの30度における青色対赤色の混色ウェイト比がβ30であるように構成される。β0
45-0.1≧β45≧2.1-β0
45、及びβ0
30-0.05≧β30≧2.05-β0
30。
【0010】
本説明のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供される。ディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含み、各画素は複数のサブ画素を含み、各サブ画素は複数のOLED層を含む。色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルは、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC1
45と、青色軸方向効率であるBAEC1とを有する。BPCSC1
45は、BPCS45から0.0025以内であり、BAEはBAEC1よりも少なくとも10%大きいか又はBAEC1はBAEから5%以内であり、BPCSC1
45はBPCS45よりも少なくとも0.005大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】白色点軸方向効率対白色点色シフト性能空間の概略プロットである。
【
図2】
図1の性能空間及び拡張された性能空間の概略プロットである。
【
図3A】拡張された性能空間を示す概略プロットである。
【
図3B】
図3Aの性能空間によって定義される性能曲線の概略プロットである。
【
図3C】
図3Bの性能曲線の左側及び右側の領域を概略的に表す。
【
図3D】
図3Bの性能曲線の上方及び下方の領域を概略的に表す。
【
図4A】性能曲線及び修正された性能曲線を概略的に表す。
【
図5】有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法を概説するフロー図である。
【
図7】OLEDディスプレイパネルの概略上面図である。
【
図8】赤色、緑色、及び青色のOLED発光積層体の概略断面図である。
【
図9】比較ディスプレイパネルの緑色サブ画素のキャビティ放射率及びドーパント放出のプロットである。
【
図10】いくつかの実施形態に係る、ディスプレイパネルの緑色サブ画素のキャビティ放射率及びドーパント放出のプロットである。
【
図11】
図10の緑色サブ画素の相対スペクトル放射のプロットである。
【
図12】
図9の緑色サブ画素の観視角を有する色シフトのu’-v’プロットである。
【
図13】
図10の緑色サブ画素の観視角を有する色シフトのu’-v’プロットである。
【
図14】いくつかの実施形態に係るディスプレイパネルのサブ画素、及び比較ディスプレイパネルのサブ画素の概略断面図である。
【
図16】ナノ構造化境界面のパワースペクトル密度(PSD)が集中するフーリエ空間内の領域の概略図である。
【
図17A】波数の関数としてのナノ構造化境界面のPSDの概略図である。
【
図17B】波数の関数としてのナノ構造化境界面の波数-パワースペクトル密度(PSD)の積の概略図である。
【
図18A】波数の関数としてのナノ構造化境界面のPSDの概略図である。
【
図18B】波数の関数としてのナノ構造化境界面の波数-パワースペクトル密度(PSD)の積の概略図である。
【
図19】フーリエ空間における環状セクタと円環とを表す。
【
図20A】複数のピラーを有するナノ構造化表面を含むナノ構造化物品の断面図である。
【
図22】多層光学フィルムの例示的な光学繰り返し単位の概略的斜視図である。
【
図24A】多層光学フィルムの層厚さプロファイルの概略図である。
【
図24B】多層光学フィルムの層厚さプロファイルの概略図である。
【
図25】波長及び偏光に依存する部分反射体の透過率対波長の概略プロットである。
【
図26】部分反射体の透過スペクトルの概略的なグラフである。
【
図28】部分反射体の通過軸、直線吸収偏光子の通過軸、及びリターダの進相軸の概略図である。
【
図30】追加のポリマー層を有する、
図29のポリマーフィルムの概略断面図を表す。
【
図31】単層ポリマーフィルムの概略断面図を表す。
【
図32】2層ポリマーフィルムの概略断面図を表す。
【
図33】最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率の概略プロットである。
【
図34】色補正構成要素あり及びなしのディスプレイに対する最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率のプロットである。
【
図35】色補正構成要素あり及びなしのディスプレイに対する最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率のプロットである。
【
図36】比較ディスプレイパネルのセットの性能点のWPCS
C
45-WPAE
C空間でのプロットである。
【
図37】OLEDディスプレイのセットの性能点のWPCS
45-WPAE空間でのプロットである。
【
図38】比較ディスプレイパネルの別のセットの性能点のWPCS
C
45-WPAE
C空間でのプロットである。
【
図39】OLEDディスプレイの別のセットの性能点のWPCS
45-WPAE空間でのプロットである。
【
図40】モデリングによって決定された最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率のプロットである。
【
図41】実験及びモデリングによって決定された、ディスプレイパネルに対する青色軸方向効率対最大青色点色シフトのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されないものとする。
【0013】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、観視方向により色が変化する光出力を発生することが多い。この作用は、OLEDの発光積層体のカソードとアノードとの間のキャビティの出力が、概ねキャビティ内の観視角の余弦をキャビティ内の波長で除したものとして波長及び観視角に依存する、キャビティが強力なOLEDにおいて特に好ましくない。OLEDディスプレイの色シフト及び効率は、OLEDディスプレイの設計パラメータに依存する。例えば、色シフト及び効率の両方は、OLEDディスプレイの層の厚さ及び材料に依存する。従来のOLEDディスプレイでは、OLED層は、色シフトと効率との間の所望の妥協を達成するように選択される。
【0014】
米国特許仮出願第62/342620号(Freierら)及び同第62/414127号(Ericksonら)、並びに国際公開第2017/205174号(Freierら)に記載されているように、ナノ構造化境界面を含む光学積層体などの色補正構成要素を、OLEDディスプレイパネルの発光層に近接して置いて、ディスプレイの軸上光出力を実質的に変えることなく、観視方向による色のばらつきを低減させることができる。他の有用な色補正構成要素は部分反射体を含み、これは、例えば、波長に依存する反射率及び透過率を提供する。有用な部分反射体は、例えば、米国特許仮出願第62/566654号(Haagら)、及び同第62/383058号(Benoitら)、及び同第62/427450号(Benoit)に記載されている。他の有用な色補正構成要素はポリマーフィルムを含み、これは、例えば、穏やかな光学拡散体として機能する。有用なポリマーフィルムは、例えば、米国特許出願公開第15/587929号(Haoら)、及び同第15/587984号(Haoら)に記載されている。
【0015】
色補正構成要素は、トップ発光OLEDの上面に隣接して、又はボトム発光OLEDの底面に隣接して置くことができる。OLEDは、キャビティが強力なOLED、又はキャビティが弱いOLED、又はキャビティなしOLEDであってもよい。現在のOLED市場は、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)(active-matrix organic light-emitting diode)ディスプレイで占められており、このディスプレイは、トップエミッション型アーキテクチャを有し、現在、強力マイクロキャビティ設計を採用していることを除いて、いずれの光抽出法も使用していない。このキャビティが強力な設計は、高い光効率を有し得るが、角度的色均一性(angular color uniformity)が、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)よりもはるかに悪い。本明細書のいくつかの実施形態では、色補正構成要素は、有利には、AMOLEDなどのキャビティが強力なOLEDと共に使用される。なぜなら、典型的には、キャビティが強力なOLEDには比較的大きな色シフトが存在するからである。
【0016】
いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、発光層上に配設された封入材と、封入材に隣接して配設された円偏光子とを含む。いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、封入材と円偏光子との間に配設される。
【0017】
観視方向による色のばらつきの低減を定量化するために使用できるいくつかの変数が存在する。例えば、軸上の指定色からの、観視角による色シフトを使用して、色シフトを特性評価することができる。軸上に指定された色が異なれば、色シフトを特性評価するための異なる量が提供される。軸方向色に白色を指定することは、全体的な色シフト性能を特性評価する有用な量を提供することが見出された。具体的には、色シフトを特性評価する有用な量は、観視角がゼロから45度に変化する際のディスプレイの最大白色点色シフト(WPCS45)である。ディスプレイを特性評価するのに有用な別の量は、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフト(BPCS45)である。観視角とは、ディスプレイ外部の空気中で決定される、ディスプレイに垂直な方向を基準にした角度を指す。ディスプレイの内部層における、法線方向を基準にした対応する角度は、スネルの法則によって決定することができる。ディスプレイが湾曲している場合、法線方向とは、特性評価されている光を放射する画素における法線方向を指す。
【0018】
観視角による白色点色シフトは、国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage、CIE)1976の均等色度系(Uniform Chromaticity Scale、UCS)色度図との関連で説明することができる。特定の観視角での白色点色シフトは、ゼロ度観視角での光出力が白色である場合の、特定の観視角での光出力と、ゼロ度(ディスプレイに垂直)観視角での光出力との間の色度距離である。色度距離は、CIE色度図における2点間のユークリッド距離を指す。例えば、第1の色がCIE1976UCSの色座標(u’1,v’1)を有し、第2の異なる色がCIE1976UCSの色座標(u’2,v’2)を有する場合、2つの色の間の色度距離は、(Δu’v’)2=(u’2-u’1)2+(v’2-v’1)2の正の平方根で与えられる。垂直方向の視野角における白色点は、任意の好適な白色点とすることができる。例えば、白色点は、標準的な発光体の白色点と見なすことができる、又はディスプレイパネルによって生成される白色点と見なすことができる。白色点はu’,v’座標で指定することができる。例えば、1つの好適な白色点はu’=0.19783、及びv’=0.46833である。他の例示的な好適な白色点を表1に示す。表1は、標準的な発光体について、及び一般的なディスプレイから生成された白色光について、CIE x、y、u’、及びv’座標を与え、標準的な発光体についての相関色温度(CCT)を与える。
【0019】
【0020】
特定の観視角での青色点色シフトは同様に、光出力がディスプレイの青色サブ画素からである場合に、特定の観視角での光出力と、ゼロ度(ディスプレイに垂直)観視角での光出力との間の色度距離として定義される。
【0021】
ディスプレイの輝度及び/又は効率を特性評価することも望ましい。軸上の輝度を特性評価する有用な量は、ディスプレイの白色点軸方向効率(WPAE)である。ディスプレイを特性評価するのに有用な別の量は、青色軸方向効率(BAE)である。BAEは、ディスプレイが白色光出力(例えば、本明細書の別の場所に記載される白色点のいずれか)を発生する場合の青色サブ画素の効率である。OLEDディスプレイの寿命は、典型的には、青色サブ画素の寿命によって限定される。したがって、BAEを増加させることにより、OLEDディスプレイの寿命を増加させることができる。効率は、供給される単位電流当たりに生成される光度を指し、cd/Aで表すことができる。
【0022】
本明細書によれば、OLED積層体及び色補正構成要素を同時に設計すること、又は色補正構成要素の特性に少なくとも部分的に基づいてOLED積層体を設計することにより、最初にOLED積層体を設計して色シフトと効率との間で所望の妥協を提供し、次いで色補正構成要素を使用して色シフトを更に補正することによって得られる性能利益を超える性能利益が得られる。例えば、いくつかの実施形態によれば、OLED積層体の層が、OLEDディスプレイパネルの混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせるように選択され、色補正構成要素が、この不均衡を少なくとも部分的に補正するために使用される場合、結果として得られるディスプレイは、従来のディスプレイパネル上に色補正構成要素を置くことによって達成することができない性能(例えば、効率及び/又は色シフトの低減)を有する。混色ウェイトにおけるこの不均衡は、色補正構成要素の好適な選択によって達成することができる光学特性に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態によれば、この結果、従来のOLEDディスプレイよりも明るく(例えば、より高いWPAE)、また従来のOLEDディスプレイと少なくとも同じくらい良好な色シフトをもたらす(例えば、WPCS45が増加しない)ディスプレイが構築される、又は、従来のOLEDディスプレイと比較して改善された色シフト(例えば、低減されたWPCS45及び/又は低減されたBPCS45)を有し、また少なくとも同じくらい良好な輝度を提供する(例えば、WPAEは低減されず、及び/又はBAEは低減されない)ディスプレイが構築される、又は、従来のディスプレイパネルと比較して改善された青色軸方向効率を有し、また同等の結果若しくは改善された色シフトをもたらす(例えば、WPCS45は実質的に増加せず、及び/又はBPCS45は増加しない)ディスプレイが構築される。より一般的には、いくつかの実施形態によれば、OLED積層体及び色補正構成要素を同時に設計すること、又は色補正構成要素の特性を考慮してOLED積層体を設計することにより、色補正構成要素を従来のOLEDディスプレイパネルに適用することによっては達成することができない、色シフト/効率の性能空間がもたらされることが見出された。いくつかの実施形態によれば、OLED積層体及び色補正構成要素を同時に設計すること、又は色補正構成要素を考慮してOLED積層体を設計することが、BAEを増加させる結果をもたらし得ることが見出された。いくつかの実施形態では、好ましい設計は、青色軸方向効率を増大させることを優先して、白色点色シフトの緩やかな増加を可能にすることであり得る。
【0023】
WPCS0
45は、色補正構成要素なしディスプレイパネルの0~45度における最大白色点色シフト、WPCSC
45は、比較ディスプレイパネルの0~45度における最大白色点色シフト、WPCS45は、色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの0~45度における最大白色点色シフト、WPAE0は、色補正構成要素なしディスプレイパネルの白色点軸方向効率、WPAECは、比較ディスプレイパネルの白色点軸方向効率、WPAEは、色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの白色点軸方向効率、BAECは、比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率、BAEは、色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの青色軸方向効率、BPCS0
45は、色補正構成要素なしディスプレイパネルの、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフト、BPCSC
45は、比較ディスプレイパネルの0~45度における最大白色点色シフト、BPCS45は、色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの0~45度における最大白色点色シフト、を表す。いくつかの実施形態によれば、より望ましくない、又は更に通常は許容できない白色点又は青色点色シフトをもたらすようにOLED積層体を設計することにより、色補正構成要素が含まれる場合に、WPCS45-WPAE-BPCS45-BAE空間(例えば、WPCS45<WPCSC
45、及び/又はWPAE>WPAEC、及び/又はBAE>BAEC、及び/又はBPCS45<BPCSC
45)において、少なくとも一面では性能が改善される結果となることが見出された。
【0024】
本明細書のディスプレイの別の利点は、いくつかの実施形態によると、製造のばらつきに対する許容誤差が改善されることである。例えば、いくつかの実施形態によれば、例えば、不完全な厚さ制御を伴う製造に起因する層厚のばらつきが、従来のディスプレイパネルにおけるよりも著しく小さいWPCS45-WPAEにおける性能ばらつきをもたらすことが見出されている。
【0025】
図1は、WPAE-WPCS
45座標における性能空間12を概略的に表すプロットである。性能空間12は、性能曲線14の上方、又は下方、及び右側の点を含み、比較ディスプレイパネルの1つ以上の設計パラメータを変更することによって達成可能な性能点を表す。比較ディスプレイパネル、本明細書のディスプレイパネル、及び本明細書のディスプレイパネル及び色補正構成要素を含むOLEDディスプレイは、同じプロット上に表すことができるので、プロットのx軸及びy軸は、WPCS
C
45-WPAE
C軸、WPCS
0
45-WPAE
0軸、及びWPCS
45-WPAE軸として互換可能に参照される。所与のOLEDディスプレイパネルについて、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルを画定することができる。比較ディスプレイパネルは、WPCS
C
45-WPAE
C空間内の性能点を画定し、性能点の境界に沿って性能曲線14を画定する。具体的には、性能曲線14は、性能点の境界の左上の部分である。性能曲線14に沿った異なる点は、設計パラメータの適切な選択によって実現することができる異なる性能結果を表す。性能点が性能曲線14上に置かれる場合、WPAE
Cも低下させることなく、より低いWPCS
C
45をもたらす、又はWPCS
C
45も増加させることなく、より高いWPAE
Cをもたらす結果となる設計パラメータの選択肢はない。
【0026】
典型的には、0~45度の観視角における許容可能最大白色点色シフトであるWPCS45
LA、及び最小許容可能軸方向効率であるWPAEMinが存在し、これらは用途に依存し得る(例えば、これらの量の一方又は両方は、携帯電話用とテレビ用とで異なり得る)。いくつかの実施形態では、複数の比較ディスプレイパネルは、WPAEMinの下方及び上方の両方に延びるWPAECの範囲、並びにWPCS45
LAの下方及び上方の両方に延びるWPCSC
45の範囲を有する。いくつかの実施形態では、WPCSC
45の範囲は、少なくとも0.01~0.015に延びる。いくつかのそのような実施形態では、WPCSC
45の範囲は、例えば、少なくとも0.02、又は少なくとも0.009~0.015、又は少なくとも0.008~0.02に延びる。いくつかの実施形態では、WPAECの範囲は、少なくとも30cd/A~35cd/A、又は25cd/A~35cd/A、又は35cd/A~40cd/A、又は40cd/A~45cd/Aに延びる。いくつかの実施形態では、WPAECの範囲は、少なくとも5cd/A、又は少なくとも10cd/Aにわたって延びる。色補正構成要素を参照することなく性能点を選択する場合、白色点軸方向効率がWPAEMinよりも大きく、0~45度の観視角における最大白色点色シフトがWPCS45
LAよりも小さい、性能曲線14に沿った点を選択するであろう。例えば、効率と色シフトとの間の所望の妥協として性能点15aを選択することができる。次いで、色補正構成要素を追加して、色シフトを、性能点15bへと低減させることができる。白色点軸方向効率がWPAEMinである第1の端点141と、0~45度の観視角における最大白色点色シフトがWPCS45
LAである第2の端点142との間に延びる性能曲線14の部分が、性能曲線14aである。性能曲線14aは、少なくともWPAEMinの白色点軸方向効率と、WPCS45
LA以下の、0~45度の観視角における最大白色点色シフトとを有する性能曲線14を画定する複数の比較ディスプレイパネルのサブセットである複数の比較ディスプレイパネルによって定義される。第1の端点及び第2の端点は、代替として、0~45度の観視角における最大白色点色シフトが、本明細書の他の場所に記載されるいずれかの範囲にわたって延びるように、及び/又は、白色点軸方向効率が、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲にわたって延びるように選択してもよい。
【0027】
本明細書によれば、色補正構成要素の効果を考慮するようにOLEDパネルを設計することにより、従来設計されたOLEDパネルに色補正を使用することと比較して、改善された結果を得ることができることが見出された。ディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素を有するディスプレイに対する結果を最適化することに関心があるので、ディスプレイパネルの性能点についての最適な選択は、性能曲線14の下方及び右側であり得るが、場合によっては、性能曲線14上にも存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、色補正構成要素が含まれる場合、ディスプレイパネルに対する性能点10aは性能点10bに変換され、ディスプレイパネルの他の性能点はいずれも、効率などの別の所望の性能属性を犠牲にすることなく、より低い白色点色シフトをもたらすことがない。性能点10aは、性能曲線14の下方及び右側にあること、並びに、性能点10aと比較して改善された白色点軸方向効率及び改善された白色点色シフトの両方を有する性能点13aを有する比較ディスプレイパネルが存在することに留意されたい。色補正構成要素が含まれる場合、性能点13aは性能点13bにシフトされる一方で、性能点10aは性能点10bにシフトされ、性能点10bは、性能点13bよりも実質的により低い白色点色シフトを有する。
【0028】
別の例として、色補正構成要素が含まれる場合、性能点20aは性能点20bにシフトされる。性能点20bは、性能点15b及び13bのものとほぼ同等の白色点色シフトを有するが、極めて高い白色点軸方向効率を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ディスプレイパネル及び色補正構成要素を含む結果的なディスプレイの最適性能をもたらす性能点は、性能曲線14aの右側にある性能曲線109に沿っている。
【0030】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、0~45度におけるディスプレイパネルの最大白色点色シフトを、左側に少なくとも0.005、又は少なくとも0.01、又は少なくとも0.015だけシフトさせる。換言すれば、いくつかの実施形態では、WPCS45
0-WPCS45≧0.005、又はWPCS45
0-WPCS45≧0.01、又はWPCS45
0-WPCS45≧0.015である。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイパネルの設計パラメータの値は、WPCS45
0が、少なくとも0.012、又は少なくとも0.015、又は少なくとも0.016、又は少なくとも0.017、又は少なくとも0.018、又は少なくとも0.019、又は少なくとも0.02であるように選択される。いくつかの実施形態では、WPCS45は、0.014以下、又は0.012以下、又は0.01以下、又は0.008以下、又は0.006以下、又は0.005以下である。いくつかの実施形態では、WPCS0
45は少なくとも0.017であり、WPCS45は0.01以下である。いくつかの実施形態では、WPCS0
45は少なくとも0.020であり、WPCS45は0.014以下である。いくつかの実施形態では、WPCS45は、WPCSC
45-0.005以下、又はWPCSC
45-0.01以下、又はWPCSC
45-0.015以下である。いくつかの実施形態では、WPCSC
45は、WPCS0
4-0.005以下、又はWPCS0
4-0.01以下、又はWPCS0
4-0.015以下である。いくつかの実施形態では、WPCS45は、WPCSC
45-0.005以下であり、WPCSC
45は、WPCS0
4-0.005以下である。いくつかの実施形態では、WPCS45は、WPCSC
45-0.01以下であり、WPCSC
45は、WPCS0
4-0.01以下である。
【0031】
なお、
図1では、色補正構成要素を含むディスプレイの各々の効率が、色補正構成要素がないディスプレイの効率よりもわずかに低いことに留意されたい。これは、垂直入射で色補正構成要素を通過する透過が(例えば、吸収に起因して、又は散乱に起因して)完全ではないために生じ得る。例えば、国際公開第2017/205174号(Freierら)の色補正構成要素は、典型的には、吸収に起因して、WPAEを1.1~1.3cd/A低下させることが見出されている。本明細書によれば、この効率の小さな低下は、OLEDディスプレイパネルの設計パラメータを選択して、それにより色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの色シフトが、通常許容不可能であると考えられる場合であっても(例えば、WPCS
0
45>WPCS
45
LA)、高効率を有する性能点(例えば、性能点20a)を有するようにすることにより補償してもよい。いくつかの実施形態では、WPAEは、少なくとも35cd/A、又は少なくとも40cd/A、又は少なくとも43cd/A、又は少なくとも45cd/Aである。
【0032】
いくつかの実施形態では、別の属性を優先して、ディスプレイの性能点を、比較ディスプレイパネルよりも高い白色点色シフトを有するように選択してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、性能点20bが、より高い効率ゆえに性能点10bよりも好ましい場合があるが、他の実施形態では、性能点10bが、そのより低い色シフトゆえに好ましい場合がある。別の例として、ディスプレイの青色軸方向効率(BAE)が比較ディスプレイの青色軸方向効率(BAEC)よりも高い場合は、比較ディスプレイよりも低いWPAE及び高いWPCS45の両方を有する性能点を有するディスプレイが、比較ディスプレイよりも好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、BAEは、BAECよりも少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%大きい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ディスプレイの効率(WPAE又はBAE)は、比較ディスプレイパネルの効率よりも大きいが、白色点色シフトは、比較ディスプレイパネルの白色点色シフトよりも小さくない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、WPCSC
45は、WPCS0
45-0.005以下であり、WPAECはWPAE0-1cd/A以上であり、WPCS45は、WPCSC
45+0.005未満であり、BAEはBAECよりも少なくとも10%大きい。いくつかのそのような実施形態では、及び他の実施形態では、WPCS45は、WPCSC
45以下、又はWPCSC
45-0.005以下、又はWPCSC
45-0.01以下、又はWPCSC
45-0.015以下である。
【0034】
図2は、性能曲線14、修正された性能曲線114、及び改善された性能曲線110を概略的に示すプロットである。色補正構成要素、及び性能曲線14に沿った性能点を有する複数の比較ディスプレイパネル内の比較ディスプレイパネルは、本明細書の他の場所で更に説明するように、修正された性能曲線114を画定する。なぜなら、色補正構成要素は比較ディスプレイパネルの性能点をシフトさせるからである。いくつかの実施形態では、
図2に概略的に示すように、修正された性能曲線114は、一部の領域では性能曲線14の上方及び左側にあるが、他の領域では性能曲線14の右側にあるということが見出された。いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、性能曲線14に沿った一部の比較ディスプレイパネルについて白色点色シフトを低減させるが、他の比較ディスプレイパネルについては白色点色シフトを増加させる。改善された性能曲線110は、本明細書のいくつかの実施形態に従って達成することができる性能点のセットの境界を表す。いくつかの実施形態では、修正された性能曲線114は、
図2に示すものとは異なって見える。例えば、いくつかの実施形態では、色補正構成要素が白色点色シフトを減少させる領域は、
図2に示すように、大きいWPCS
C
45まで延びない場合がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外はディスプレイと同等である複数の比較ディスプレイが、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って第2の性能曲線を画定し(例えば、改善された性能曲線110)、第2の性能曲線は、第1の性能曲線の上方又は左側にある(例えば、性能曲線14a)。いくつかの実施形態では、第2の性能曲線及び複数の比較ディスプレイは、WPCSC
45-WPAEC空間において第3の性能曲線(例えば、性能曲線109)を画定し、このとき、第2の性能曲線に沿って性能点を有する複数の比較ディスプレイのうちの各比較ディスプレイに対して、色補正構成要素を比較ディスプレイから取り除くと、第3の性能曲線に沿った性能点を有する比較ディスプレイパネルになる。第3の性能曲線(例えば、性能曲線109)は、第1の性能曲線(例えば、性能曲線14a)の右側にあってもよい。いくつかの実施形態では、WPCS45及びWPAEは、ディスプレイの性能点を実質的に第2の性能曲線に沿って画定し、WPCS0
45及びWPAE0は、ディスプレイパネルの性能点を実質的に第3の性能曲線に沿って画定する。これとの関連で、ディスプレイ又はディスプレイパネルの性能点が実質的に性能曲線に沿っているということは、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、0~45度における最大白色点色シフトが、それぞれ、その点の色シフトから0.0025以内にあり、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、白色点軸方向効率が、それぞれ、その点の白色点軸方向効率から5%以内にあるような点が、性能曲線上に存在するということを意味する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ又はディスプレイパネルの性能点が実質的に性能曲線に沿っていると説明される場合、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、0~45度における最大白色点色シフトが、それぞれ、その点の色シフトから0.001以内にあり、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、白色点軸方向効率が、それぞれ、その点の白色点軸方向効率から2%以内にあるような点が、性能曲線上に存在する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ又はディスプレイパネルの性能点が実質的に性能曲線に沿っていると説明される場合、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、0~45度における最大白色点色シフトが、それぞれ、その点の色シフトから0.0005以内にあり、ディスプレイ又はディスプレイパネルの、白色点軸方向効率が、それぞれ、その点の白色点軸方向効率から1%以内にあるような点が、性能曲線上に存在する。
【0036】
本明細書の任意の所与のディスプレイパネルに関して、比較設計パネルの特定のセットにおける比較ディスプレイパネルを参照することが有用であり得る。例えば、ディスプレイパネルの性能点30(WPCS
0
45とWPAE
0の座標を有する)を
図2に示す。点40のセットは、WPCS
0
45-Δ
C以下のWPCS
C
45、及びWPAE
0-Δ
E以上のWPAE
Cを有する比較ディスプレイパネルの性能点である。Δ
Cの有用な値としては、0.005又は0.01を含む。Δ
Eの有用な値としては、1cd/A、又は0.5cd/A、又は約1~約2cd/Aの範囲内を含む。比較ディスプレイパネルの性能点41及び42が示されている。ディスプレイパネルとの比較のために選択された特定の比較ディスプレイパネルは、第1の比較ディスプレイパネルと呼ばれる場合がある。一部の実施形態では、複数の比較ディスプレイパネルのうちに、座標(WPCS
C
45,WPAE
C)を有する性能曲線に沿って性能点42を有する少なくとも1つの比較ディスプレイパネルが存在し、ここで、WPCS
C
45がWPCS
0
45-Δ
C以下であり、WPAE
CがWPAE
0-Δ
E以上であり、WPCS
45がWPCS
C
45未満である。いくつかのそのような実施形態では、Δ
C=0.005、及びΔ
E=1cd/Aである。効率の上限も指定することができる。例えば、WPAE
Cは、WPAE
0-Δ
E~WPAE
0+Δ
Eの範囲内にあると指定することができる。Δ
Eを絶対数として指定する代わりに、WPCS
C
45、WPCS
C
45、又はWPCS
C
45のいずれか1つのパーセントとして指定してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、WPCS
C
45の範囲は、WPAEから5%以内、又は2%以内、又は1%以内であると指定される。いくつかの実施形態では、選択された比較ディスプレイパネル(第1の比較ディスプレイパネル)は、WPAEに等しい白色点軸方向効率を有する。
【0037】
ディスプレイのいくつかの可能な性能点(WPCS45、WPAE)は、性能点31、32、33、及び43として示される。WPCS45-WPAE空間における性能点31及び43は、色補正構成要素を使用せずに、従来のOLEDディスプレイパネルを使用して達成することができる。しかしながら、性能点31又は43を有する本明細書のディスプレイは、同じ又は類似のWPCS45-WPAE座標を有する従来のOLEDディスプレイの性能属性を超えて改善される別の性能属性(例えば、青色軸方向効率)を有する。例えば、いくつかの実施形態では、ディスプレイパネル(例えば、性能点31を有する)は、性能曲線に沿って性能点を有しWPAEから5%以内の白色点軸方向効率を有する複数の比較ディスプレイパネルのうちの第1の比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率BAECよりも、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%大きい青色軸方向効率を有する。いくつかの実施形態では、第1の比較ディスプレイパネルは、性能点43によって与えられるWPCSC
45-WPAEC座標を有し、色補正構成要素を有するOLEDディスプレイは、性能点31によって又は性能点43によって与えられるWPCS45-WPAE座標を有するが、このディスプレイは、第1の比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率を少なくとも10%上回る青色軸方向効率を有する。
【0038】
性能点32及び33は、性能曲線14に沿った性能点を有するディスプレイパネル上に色補正構成要素を置くことによって達成できない性能を表す。性能点33は、性能点32よりも低い白色点色シフトを有し、よって典型的には、低い白色点色シフトが第一の関心事である実施形態では、性能点32よりも好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態では、性能点32を有するディスプレイは、より高い青色軸方向効率を有する場合があり、よって高い青色軸方向効率が第一の関心事である実施形態では好ましい場合がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、WPCS0
45及びWPAE0は、性能曲線14の下方及び右側にあるディスプレイパネルの性能点(WPCS0
45,WPAE0)を画定する。いくつかの実施形態では、WPCS45及びWPAEは、修正された性能曲線114の上方又は左側にあるディスプレイの性能点(WPCS45,WPAE)を画定する。いくつかの実施形態では、(WPCS45,WPAE)は、性能曲線14の上方及び左側にある。いくつかの実施形態では、(WPCS45,WPAE)は、性能曲線14の上方及び左側にあり、修正された性能曲線114の上方又は左側にある。いくつかの実施形態では、WPAEC対WPCSC
45のプロットのWPCSC
45軸に沿った、WPCS45から性能曲線14まで、又は修正された性能曲線114までの距離は、少なくとも0.002、又は0.005である。例えば、性能点32と性能曲線14との間の距離d1は、少なくとも0.002、又は少なくとも0.0025、又は少なくとも0.005、又は少なくとも0.0075、又は少なくとも0.01であり得る。いくつかの実施形態では、WPAEC対WPCSC
45のプロットのWPAEC軸に沿った、WPAEから性能曲線14までの最小距離、又は修正された性能曲線114までの最小距離は、少なくとも0.5cd/A、又は少なくとも1.0cd/Aである。例えば、性能点20bから性能曲線14までの距離d2は、少なくとも0.5cd/A、又は少なくとも1.0cd/Aであってもよい。WPAEC対WPCSC
45のプロットのWPCSC
45軸に沿った、性能点20bから性能曲線14までの距離、又は修正された性能曲線114までの距離は、少なくとも0.002、0.0025、0.005、又は0.0075、又は0.01であってもよい。いくつかの実施形態では、WPAEC対WPCSC
45のプロットのWPCSC
45軸に沿った、WPCS0
45から性能曲線14までの距離は、少なくとも0.002、又は少なくとも0.005である。いくつかの実施形態では、WPAEC対WPCSC
45のプロットのWPAEC軸に沿った、WPAE0から性能曲線14までの距離は、少なくとも0.5cd/A、又は少なくとも1.0cd/Aである。例えば、性能点39から性能曲線14までの距離d3は、少なくとも0.002、又は少なくとも0.005であってもよく、性能点39から性能曲線14までの距離d4は、少なくとも0.5cd/A、又は少なくとも1CD/Aであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、白色点軸方向効率対最大白色点色シフトのプロットの代わりに、又はそれに加えて、青色軸方向効率対最大青色点色シフトのプロットの観点で、ディスプレイ及びディスプレイパネルの性能を特性評価することが好都合である。
図33は、色補正構成要素を含むディスプレイ(曲線730に沿う)、及び色補正構成要素を含まないディスプレイパネル(曲線740に沿う)についての、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率の概略プロットである。ディスプレイの性能点790、及び比較ディスプレイパネルの性能点770及び780が示されている。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、各画素が複数のサブ画素を含み、各サブ画素が複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS
45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている、色補正構成要素と、を含む。いくつかの実施形態では、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS
C1
45と、青色軸方向効率であるBAE
C1とを有し、BPCS
C1
45はBPCS
45から0.0025以内であり、BAEはBAE
C1よりも少なくとも10%大きい。例えば、第1の比較ディスプレイパネルは、性能点790を有するディスプレイのBPCS
45にほぼ等しいBPCS
C1
45を有する性能点770を有してもよく、性能点790を有するディスプレイのBAEは、性能点770を有する第1の比較ディスプレイパネルのBAE
C1よりも実質的に大きい。いくつかの実施形態では、BPCS
C1
45は、BPCS
45から0.001以内であり、BAEはBAE
C1よりも少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい。いくつかの実施形態では、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS
C1
45と、青色軸方向効率であるBAE
C1とを有し、BAE
C1はBAEから5%以内であり、BPCS
C1
45は、BPCS
45よりも少なくとも0.005大きい。例えば、第1の比較ディスプレイパネルは、性能点780を有するディスプレイのBAEにほぼ等しいBAE
C1をする性能点780を有してもよく、性能点790を有するディスプレイのBPCS
45は、性能点780を有する第1の比較ディスプレイパネルのBPCS
C1
45よりも実質的に小さい。いくつかの実施形態では、BAE
C1はBAEから2%以内であり、BPCS
C1
45は、BPCS
45よりも少なくとも0.0075、又は少なくとも0.01、又は少なくとも0.015大きい。
【0041】
いくつかの実施形態では、BPCSC1
45はBPCS45から0.0025以内であり、BAEはBAEC1よりも少なくとも10%大きく(例えば、性能点770を有する第1の比較ディスプレイパネルに対して)、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第2の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC2
45と、青色軸方向効率であるBAEC2とを有し(例えば、性能点780を有する第2の比較ディスプレイパネルに対して)、BAEC2はBAEから5%以内であり、BPCSC2
45は、BPCS45よりも少なくとも0.005大きい。いくつかの実施形態では、BPCSC1
45はBPCS45から0.001以内であり、BAEはBAEC1よりも少なくとも15%大きく、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第2の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC2
45と、青色軸方向効率であるBAEC2とを有し、BAEC2はBAEから2%以内であり、BPCSC2
45は、BPCS45よりも少なくとも0.0075大きい。
【0042】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS0
45と、青色軸方向効率であるBAE0とを有する。例えば、(BPCS0
45、BAE0)は、色補正構成要素がディスプレイパネル上に配設された場合に性能点790をもたらす性能点781であり得る。
【0043】
性能曲線の上方/下方又は左側/右側が意味することを一般的に説明するために、普通は考慮されないであろう、WPAEC-WPCSC
45の領域を含む、拡張性能空間の一般的な可能な形状を考慮する。
【0044】
図3Aは、WPAE
C-WPCS
C
45座標における拡張性能空間212を概略的に示す。図示した実施形態では、性能曲線214に沿って効率及び色シフトが低下するにつれて、WPCS
C
45が最小点に到達する。この最小点はWPCS
45
Minとラベル付けされ、対応する白色点軸方向効率であるAを有する。他の実施形態では、WPAEがゼロに接近するにつれてWPAEはWPCS
45
Minに接近し、図示するような勾配の符号の変化はない。この場合、Aはゼロと見なすことができる。図示した実施形態では、性能曲線214に沿って効率及び色シフトが増加するにつれて、WPAEは最大点に到達する。この最大値は、WPAE
Maxとラベル付けされ、観視角が0から45度まで変化する際の対応する最大白色点色シフトであるBを有する。他の実施形態では、WPAEは、大きいWPCS
C
45においてWPAE
Maxに接近し、図示するような勾配の符号の変化はない。この場合、Bは達成可能な最大のWPCS
C
45と見なすことができる。性能曲線214は、性能点(WPCS
45
Min,A)と(B,WPAE
Max)との間に延びる拡張性能空間212の境界の部分である。
図3Bは、性能空間212の境界の残りの部分がない性能曲線214を概略的に表す。いくつかの実施形態では、性能曲線214は、(WPCS
45
Min,A)と(B,WPAE
Max)との間の曲線の一部分のみにわたって延びると見なしてもよい。例えば、曲線の下側端点を、白色点軸方向効率が、Aよりも高い場合がある最小許容可能値にある点であると見なしてもよく、曲線の第2の端点を、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトが、Bよりも低い場合がある最大許容可能値にある点であると見なしてもよい。
【0045】
図3Cは、性能曲線214の左側又は右側の意味を表す。ある点からWPCS
C
45のより低い点に向かって引かれた水平線が、性能曲線214と交差するか、又は、性能曲線214の左の端点から下向きに延びる垂直線、若しくは性能曲線214の右の端点から上向きに延びる垂直線と交差する場合、その点は性能曲線214の右側にある。同様に、ある点からWPCS
C
45のより高い点に向かって引かれた水平線が、性能曲線214と交差するか、又は、性能曲線214の左の端点から下向きに延びる垂直線、若しくは性能曲線214の右の端点から上向きに延びる垂直線と交差する場合、その点は性能曲線214の左側にある。
【0046】
図3Dは、性能曲線214の上方又は下方の意味を表す。ある点からWPAE
Cのより高い点に向かって引かれた垂直線が、性能曲線214と交差するか、又は、性能曲線214の左の端点から左側に延びる水平線、若しくは性能曲線214の右の端点から右側に延びる水平線と交差する場合、その点は性能曲線214の下方にある。同様に、ある点からWPAE
Cのより低い点に向かって引かれた垂直線が、性能曲線214と交差するか、又は、性能曲線214の左の端点から左側に延びる水平線、若しくは性能曲線214の右の端点から右側に延びる水平線と交差する場合、その点は性能曲線214の上方にある。
【0047】
色補正構成要素を、性能点を有する比較ディスプレイパネル上に置くことにより、修正された性能点が画定される。したがって、色補正構成要素、及び性能曲線に沿って性能点を有する複数の比較ディスプレイパネルが、複数の修正された性能点を画定する。設計空間は、2次元よりも高い場合があり、典型的には2次元よりも高いので、2次元のWPCS
C
45-WPAE
C空間において、同じの性能点を有する比較ディスプレイパネルは2つ以上あり得る。一般的には、これら比較ディスプレイパネルの全てが、同じ修正された性能点にシフトするわけではない。このことは
図4Aに概略的に表されている。性能曲線214に沿った比較ディスプレイパネルは、領域313においてシフトされた性能を有する。いくつかの実施形態では、領域313は、
図4Aに示すものとは異なって見える。例えば、領域313は、図示するような比較的狭い領域では必ずしもない。更に、領域313は、性能曲線214とは著しく異なる形状を有する場合がある。いくつかの実施形態では、領域313は、所与の白色点軸方向効率に対して白色点色シフトが改善する領域、及び所与の白色点軸方向効率に対して白色点色シフトが劣化する領域を含む。
【0048】
修正された性能曲線314は、所与のWPAE
Cに対して最低のWPCS
C
45を有する、又は所与のWPCS
C
45に対して最高のWPAE
Cを有する、領域313内の点の境界の部分である。修正された性能曲線314は、修正された性能点の境界の最も上の部分と最も左の部分との結合として説明することができる。
図4Bは、第1の端点314a、最低のWPCS
C
45の点314b、最高のWPAE
Cの点314c、及び第2の端点314dを有する修正された性能曲線314の概略図である。他の実施形態では、修正された性能曲線314は、
図4Bに示すものとは異なって見える場合がある。例えば、第1の端点314aと点314bは一致してもよく、及び/又は第2の端点314dと点314cは一致してもよい。修正された性能点の境界の最も上の部分は、修正された性能曲線314の、点314bと第2の端点314dとの間の部分である。修正された性能点の境界の最も左の部分は、修正された性能曲線314の、第1の端点314aと点314cとの間の部分である。修正された性能曲線314は、点314b及び314cなどの傾斜が符号を変化させる点を含む場合があるので、性能曲線214について上述した意味で、点が、修正された性能曲線314の最も上の部分の上方又は下方にある場合に、その点は修正された性能曲線314のそれぞれ上方又は下方にあると定義する。同様に、性能曲線214について上述した意味で、点が、修正された性能曲線314の最も左の部分の左側又は右側にある場合に、その点は修正された性能曲線314のそれぞれ左側又は右側にあると定義する。例えば、領域390は修正された性能曲線314の上方及び左側にあり、領域392は修正された性能曲線314の下方及び左側にあり、及び領域394は修正された性能曲線314の上方及び右側にある。いくつかの実施形態では、本明細書のディスプレイは、修正された性能曲線314の上方又は左側に性能点を有する(例えば、領域390、392、又は394のいずれかにおいて)。いくつかの実施形態では、ディスプレイは、修正された性能曲線314の上方かつ左側に性能点を有する(例えば、領域390において)。
【0049】
OLEDディスプレイパネルは、典型的には複数の画素を含み、各画素は、少なくとも赤色、緑色、及び青色のサブ画素を含み、各サブ画素は発光積層体を含む。従来の手法では、赤色、緑色、及び青色の発光積層体は、原色のシフトを最小限に抑え、混色ウェイト間のバランスを維持するように設計されており、その結果、許容可能な程度に低い色シフトが得られる(WPCS45
LA以下)。本手法では、発光積層体は、色補正構成要素によって復元されることになる混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせるように、いくつかの実施形態に従って設計される。例えば、いくつかの実施形態では、この不均衡は、本明細書の他の場所で更に説明するように、OLED発光積層体のキャビティを強化することによって、及び/又は、キャビティの厚さ若しくは光学厚さを変更することによって達成することができる。所望の不均衡は、色補正構成要素によって提供される色混合のシフトから決定することができ、混色ウェイトという観点で定量化することができる。
【0050】
サブ画素によって生成される色などの色の混色ウェイトは、CIE 1931(CIE 1931 XYZ色空間)においてCIEによって定義される三刺激値X、Y、及びZの合計を指す。三刺激値は、スペクトル放射輝度に、対応する三刺激応答関数(X(λ)、Y(λ)、Z(λ)、又は
【数1】
で示される)を乗じたものの積分である。相対混色ウェイトは、特定の観視角での混色ウェイトを、ゼロ観視角での混色ウェイトで割ったものを指す。ゼロ観視角での混色ウェイトによる除算は、相対混色ウェイトがゼロ観視角において1であるような、便利な正規化を提供する。青色対赤色の混色ウェイト比は、青色サブ画素の相対混色ウェイトを、赤色サブ画素の相対混色ウェイトで割ったものを指す。緑色対赤色の混色ウェイト比は、緑色サブ画素の相対混色ウェイトを、赤色サブ画素の相対混色ウェイトで割ったものを指す。
【0051】
所与の色補正構成要素について、色補正構成要素によって提供される混色ウェイトのシフトを決定することができ、これは、色補正構成要素が含まれる場合に、白色点色シフトが好適に低くなるように、発光積層体に対して設計パラメータ(例えば、光学厚さ)を選択する際に使用することができる。いくつかの実施形態では、色補正構成要素が、第1の層及び第2の層と、それらの間のナノ構造化境界面とを含む。ナノ構造化境界面は、2つの材料の間の、ナノ構造を含む境界面である。ナノ構造とは、1nmから1000nmの範囲の少なくとも1つの長さスケールを有する構造である。いくつかの実施形態では、ナノ構造は、10nmから500nmの範囲、又は100nmから350nmの範囲にある少なくとも1つの長さスケールを有する。例えば、国際公開第2017/205174号(Freierら)に全般的に記載されているような有用な色補正構成要素は、125nmの二乗平均振幅(Varとも示される)を有し、波数25μm
-1と37μm
-1との間に環状に集中した実質的に方位対称のパワースペクトル密度(PSD)を有するナノ構造を、低屈折率層と高屈折率層との間で利用している。高屈折率(例えば、n=1.85)層は、典型的にはOLED積層体に面して配設され、低屈折率(例えば、n=1.5)層は、典型的には観察者に面して配設される。この色補正構成要素のPSDから、色補正構成要素が含まれる場合に、表2による、観視角θ
iにおける青色対赤色の混色ウェイト比β
i、及びθ
iにおける緑色対赤色の混色ウェイト比γ
iを有するディスプレイパネルが、低い白色点色シフトをもたらすことになると判定することができる。
【表2】
【0052】
いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイパネルについての複数の設計パラメータ(例えば、OLED発光積層体における様々な層の光学厚さ)は、1つ以上の斜めの視野角において、OLEDディスプレイパネルの混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせるように選択される。いくつかの実施形態では、この不均衡は、色補正構成要素によって提供される色補正の特性評価に基づいて選択される。例えば、混色ウェイトにおける不均衡は、色補正構成要素が上述の通りである場合、表2の混色ウェイト比に一致する又は近似するように選択することができる。他の色補正構成要素については、混色ウェイト比は、表2に示すものとは実質的に異なっていてもよい。しかしながら、表2に示すいくつかの一般的な傾向は、様々な色補正構成要素に当てはまる。例えば、青色対赤色の混色ウェイト比は、20度から45度の角度視野範囲にわたって、緑色対赤色の混色ウェイト比よりも大きいことが典型的には好ましい。いくつかの実施形態では、青色対赤色の混色ウェイト比は、ゼロから45度までの観視角に対して一定である、又は単調に増加する。いくつかの実施形態では、緑色対赤色の混色ウェイト比は、ゼロ~20度(又は25度、又は30度)の観視角に対して1に近く(例えば、0.99~1.01)、20度(又は25度、又は30度)~45度の観視角で一定又は単調に増加する。
【0053】
いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素とを含む。いくつかの実施形態では、ディスプレイパネルは、30度における青色対赤色の混色ウェイト比β0
30、及び45度における青色対赤色の混色ウェイト比β0
45を有し、β0
45>β0
30≧1.05、及び1.5≧β0
45≧1.1である。いくつかの実施形態では、色補正は、ディスプレイの45度における青色対赤色の混色ウェイト比がβ45であり、ディスプレイの30度における青色対赤色の混色ウェイト比がβ30であるように構成される。いくつかの実施形態では、β0
45よりもβ45が1に近く、β0
30よりもβ30が1に近い。いくつかの実施形態では、β45は、β0
45-0.15以下、又はβ0
45-0.1以下である。いくつかの実施形態では、β30は、β0
30-0.1以下、又はβ0
30-0.05以下である。いくつかの実施形態では、β0
45-0.1≧β45≧2.1-β0
45、及びβ0
30-0.05≧β30≧2.05-β0
30である。いくつかの実施形態では、β0
45は1.4以下である。いくつかの実施形態では、β0
45は、少なくとも1.19である。いくつかの実施形態では、1.38≧β0
45≧1.15、又は1.35≧β0
45≧1.19、又は1.33≧β0
45≧1.21である。いくつかの実施形態では、1.4≧β0
30である。いくつかの実施形態では、1.25≧β0
30≧1.07である。いくつかの実施形態では、β0
45-β0
30≧0.03、又はβ0
45-β0
30≧0.04、又はβ0
45-β0
30≧0.05、又はβ0
45-β0
30≧0.06である。いくつかの実施形態では、β0
45-β0
30は、0.3以下、又は0.25以下、又は0.2以下、又は0.15以下である。いくつかの実施形態では、1.26≧β0
30≧1.1、及び1.35≧β0
45≧1.19である。β30及びβ45は1に近いことが好ましい。いくつかの実施形態では、1.1≧β45≧0.9、又は1.08≧β45≧0.92、又は1.06≧β45≧0.94,又は1.05≧β45≧0.95、又は1.04≧β45≧0.96である。いくつかの実施形態では、1.1≧β30≧0.9、又は1.08≧β30≧0.92、又は1.06≧β30≧0.94、又は1.05≧β30≧0.95、又は1.04≧β30≧0.96である。
【0054】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネルは、45度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ0
45を有し、OLEDディスプレイ(色補正構成要素を含む)は、ディスプレイの45度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ45を有する。いくつかの実施形態では、γ0
45は、少なくとも1.025である、又は少なくとも1.03であり、γ45はγ0
45-0.005以下、及び1.025≧γ45≧0.975である。いくつかの実施形態では、1.1≧γ0
45≧1.03、又は1.08≧γ0
45≧1.03、1.07≧γ0
45≧1.04である。いくつかの実施形態では、γ45は、γ0
45-0.01以下、又はγ0
45-0.02以下、又はγ0
45-0.03以下である。いくつかの実施形態では、1.02≧γ45≧0.98、又は1.015≧γ45≧0.985、又は1.01≧γ45≧0.99である。
【0055】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネルは、30度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ0
30を有し、OLEDディスプレイは、30度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ30を有する。いくつかの実施形態では、β30は、β0
30が1に近いのと少なくとも同じだけ1に近い。他の実施形態では、γ30及びγ0
30はそれぞれ1に近く(例えば、どちらも0.98~1.02、又は0.99~1.01の範囲内)、γ30は、γ0
30ほどは1に近くなくてもよい。いくつかの実施形態では、1.03≧γ0
30≧0.97、又は1.02≧γ0
30≧0.98、又は1.01≧γ0
30≧0.99である。いくつかの実施形態では、1.03≧γ30≧0.97、又は1.02≧γ30≧0.98、又は1.01≧γ30≧0.99である。いくつかの実施形態では、1.03≧γ0
30≧0.97及び1.02≧γ30≧0.98である。いくつかの実施形態では、1.02≧γ0
30≧0.98及び1.01≧γ30≧0.99である。いくつかの実施形態では、|γ0
30-1|>|γ30-1|である。
【0056】
いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイを作製する方法は、本明細書の他の場所で更に説明されるように、WPCSC
45-WPAEC空間における性能曲線の下方及び右側に性能点を有するOLEDディスプレイパネルを提供する工程と、ディスプレイの性能点が、修正された性能曲線の上方又は左側にあるように構成されているOLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、0~45度におけるOLEDディスプレイの許容可能最大白色点色シフトであるWPCS45
LAを決定する工程を含み、ディスプレイパネルを準備する工程は、WPCS0
45がWPCS45
LAよりも大きくなるように複数の設計パラメータを選択する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、複数の設計パラメータを特定する工程と、1つ以上の斜めの視野角において、OLEDディスプレイパネルの混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせて、WPCS0
45がWPCS45
LAよりも大きくなるように、それらのパラメータの値を選択する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、WPCS45
LAは、例えば、マーケティングデータによって少なくとも部分的に決定することができる製品性能要件に基づいて決定される。WPCS45
LAは、携帯電話、タブレット、コンピュータモニタ、及びテレビセットに関して異なっていてもよく、プレミアム製品(例えば、ハイエンド携帯電話)、及びバジェット製本(例えば、安価な携帯電話)に関して異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、WPCS0
45-WPCS45
LA≧0.005、又はWPCS0
45-WPCS45
LA≧0.01、又はWPCS0
45-WPCS45
LA≧0.015である。いくつかの実施形態では、WPCS45
LA-WPCS45≧0.005、又はWPCS45
LA-WPCS45≧0.01、WPCS45
LA-WPCS45≧0.015、又はWPCS45
LA-WPCS45≧0.02である。いくつかの実施形態では、WPCS45
LAは、少なくとも0.005、又は少なくとも0.01、又は少なくとも0.015である。いくつかの実施形態では、WPCS45
LAは、0.05以下、又は0.03以下、又は0.025以下、又は0.02以下、又は0.015以下、又は0.015以下、又は0.01以下である。
【0057】
図5は、本明細書のいくつかの実施形態に係る、OLEDディスプレイを作製する方法を概説するフロー図である。工程3300において、色補正構成要素によって提供される色補正が決定される。所与の色補正構成要素(例えば、好適な回折ナノ構造化境界面を含む光学積層体、好適な反射率及び透過率の部分反射体、好適な光学特性を有する穏やかな拡散体を含む光学積層体)について、観視角の関数としての、色補正構成要素によって提供される異なる色の混合の程度は、例えば、実験的に又は光学モデリングによって決定することができる。これにより、色補正構成要素によって提供される混色ウェイトのシフトが生じる。これにより、ディスプレイパネルの出力の色不均衡(これは、混色ウェイトのシフトに関して定量化することができる)を決定することができ、色不均衡は、色補正構成要素と組み合わせた時に、結果として、所望の又は許容可能な(例えば、小さい)、観視角による白色点色シフトにつながる(例えば、表2を参照)。
【0058】
工程3310では、色不均衡を生じさせるようにOLED設計が選択される。いくつかの実施形態では、この工程は、設計パラメータ(例えば、発光積層体内の様々な層の光学厚さ)を特定する工程と、工程3300において特定された所望の色不均衡を構築する又は近似するために、これらパラメータの値を選択する工程と、を含む。設計パラメータの適切な値は、青色対赤色の混色ウェイト比、及び緑色対赤色の混色ウェイト比を、観視角の関数として設計パラメータの様々な値に対して数値的に決定し、次いで所望の比を与える又は近似するための値を選択することによって選択することができる。例えば、所望の比からの2乗平均平方根(rms)誤差を計算することができ、rms誤差を最小にする設計パラメータの値を選択することができる。いくつかの実施形態では、他の考慮事項又は制約が課される。例えば、設計空間は、1つ以上の色に対する色シフトが特定の値を下回る設計、及び/又は特定の値を超える軸方向効率(WPAE及び/又はBAE)を有する設計に限定してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、工程3320及び工程3310は反復される。例えば、工程3310は、いくつかの種類の色補正構成要素に対して実行してもよく、工程3320は、色補正構成要素の各々に対して実行してもよい。次いで、工程3320の結果に基づいて、追加の色補正構成要素を考慮してもよく(例えば、試験された色補正構成要素を特徴付けるパラメータの補間又は外挿)、そして工程3320を繰り返してもよい。
【0060】
設計パラメータの適切な値が特定されると、OLEDディスプレイパネルは、真空蒸着、真空熱蒸発、有機気相堆積、及びインクジェット印刷のうちの1つ以上によって有機層を堆積させることを含み得る従来のOLED製造プロセスを用いて、OLEDディスプレイパネルを作製することができる。OLEDディスプレイパネルを製造する有用な方法は、米国特許出願公開第2010/0055810(Sungら)、同第2007/0236134号(Hoら)、同第2005/0179373号(Kim)、及び同第2010/0193790号(Yeoら)に記載されている。工程3320において、色補正構成要素がディスプレイパネル上に配設される。
【0061】
OLEDディスプレイパネルについての設計パラメータは、発光型OLED発光積層体の様々な層の厚さ、及び様々な層についての材料選択を含み得る。いくつかの実施形態では、様々な層の光学厚さが設計パラメータとして使用される。層の光学厚さは、層の物理的厚さに層の屈折率を乗じたものを指す。発光積層体内の層との関連において、光学厚さを決定する際に使用される屈折率は、発光積層体のピーク発光波長における屈折率であると見なされることになる。層について複素屈折率を定義することができ、屈折率の虚部が層の吸収を特徴付ける。別段の指示がない限り、用語「屈折率」は、「複素屈折率」への言及がない場合には、対応する複素屈折率の実部とすることができる実数の量を指す。
【0062】
OLEDディスプレイパネルについての設計パラメータは、発光積層体(例えば、青色サブ画素)のいずれか1つの、又は発光積層体(例えば、青色サブ画素と緑色サブ画素)の任意の組み合わせの、又は全ての発光積層体についての、任意の層厚さ若しくは層光学厚さ又は層材料を含み得る。例えば、カソード層の厚さ若しくは光学厚さ、正孔輸送層の厚さ若しくは光学厚さ、キャッピング層の厚さ若しくは光学厚さ、及び/又は発光積層体のうちの1つ以上の発光層の厚さ若しくは光学厚さが、いくつかの実施形態において有用な設計パラメータである。いくつかの実施形態では、異なる有色サブ画素についての正孔輸送層及び発光層の厚さは、別個の設計パラメータであると考えられるが、OLED発光積層体の他の層の厚さの各々は、発光積層体の各々に共通の設計パラメータであると見なされる。なぜなら、多くの従来の製造プロセスでは、製造コストの制約により、発光積層体に共通層が使用されるからである。
【0063】
図6は、OLED発光積層体575の概略断面図である。OLED発光積層体575は、上部(発光側)から順に、封止剤層670、任意選択のバッファ層674、キャッピング層675、カソード676、電子輸送層677、発光層678、電子遮断層679、正孔輸送層680、正孔注入層681、及びアノード682を含む。薄膜封止材(TFE)と呼ばれることがある封止剤層670は、第1の無機層671と第2の無機層673との間に配設された有機層672を含む。有機層672は、マイクロメートルのオーダー(例えば、約6マイクロメートル)の厚さを有してもよく、第1の無機層671及び第2の無機層673は、例えば、約100nm又は約50nmの厚さを有する、例えば、Al
2O
3層、又は窒化ケイ素層、又は当該技術分野において既知の他の無機材料であってもよい。任意選択のバッファ層674は、LiF層であってもよく、例えば、80~500nmの範囲の厚さを有してもよい。キャッピング層675は、TCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)層であってもよく、例えば、30~85nmの範囲の厚さを有してもよい。カソード676は、マグネシウム-銀合金(例えば、9:1のMg:Ag原子比を有する)であってもよく、例えば6~16nmの範囲の厚さを有してもよい。電子輸送層677は、例えばBphen(4,7ジフェニル-1,10-フェナントロリン)層であってもよく、例えば、30~65nmの範囲の厚さを有してもよい。発光層678は、例えば、ドーパント(例えば、10重量%にて)を有する、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能なTPBi(2,2’,2’’-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)を含んでもよく、例えば、15~35nmの範囲の厚さを有してもよい。好適なドーパントとしては、Firpic(ビス[2-(4,6ジフルオロフェニル)ピリジナト-C2,N](ピコリナト)イリジウム(III))(青色)、Irppy3(トリス[2-フェニルピリジナト-C2、N]イリジウム(III))(緑色)、及びPQIr((2,4-ペンタンジオナト)ビス[2-(2-キノリニル)フェニル]イリジウム(III))(赤色)が挙げられる。電子遮断層679は、2TNATA(4,4’,4’’-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)(Sigma-Aldrichから入手可能)層であってもよく、例えば、8~12nmの範囲の厚さを有してもよい。正孔輸送層680は、TCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)(Sigma-Aldrichから入手可能)であってもよく、例えば、90nm~230nmの範囲の厚さを有してもよく、これは、青色サブ画素に使用されるより薄い層、赤色サブ画素に使用されるより厚い層、及び緑色サブ画素に使用される中間厚さを有する。正孔注入層681は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)層であってもよく、例えば、5~18nmの範囲の厚さを有してもよい。アノード682は、アルミニウム層であってもよく、例えば、100nmの厚さを有してもよい。
【0064】
図7は、複数の画素945を含むOLEDディスプレイパネル900の概略上面図であり、各画素はサブ画素945a、945b、及び945cを含む。サブ画素945a、945b、及び945cは、典型的には、赤色、緑色、及び青色などの異なる色である。平均画素間隔Pが示されている。間隔Pは、最隣接の画素間のピッチである。ディスプレイパネル900は、サブ画素945a、945b、及び945cに使用される層に応じて、本明細書のディスプレイパネルであってもよく、又は比較ディスプレイパネルであってもよい。いくつかの実施形態では、追加のサブ画素(例えば、黄色)が含まれていてもよい。画素及びサブ画素の配置は、
図7に概略的に図示したものと同様であるか、又は異なる場合がある。例えば、当技術分野で既知のように、三角形パターン、縞模様パターン、斜線パターン、又はペンタイル(PENTILE)マトリックスを使用することができる。例えば、サブ画素の赤色と緑色の対、及びサブ画素の緑色と青色の対を含むペンタイルマトリックスの場合、各画素は、赤色と緑色の対、及び緑色と青色の対を含み、それにより各画素は4つのサブ画素を含むと理解することができる。
【0065】
図8は、赤色のOLED発光積層体575r、緑色のOLED発光積層体575g、及び青色のOLED発光積層体575bの概略断面図である。各発光積層体575r、575g、及び575bは、発光積層体575に対応し、発光積層体575について説明したものと同じ種類の層を有する。1つの発光積層体の1つ以上の層で使用される材料が、別の発光積層体で使用されるものとは異なっていてもよい。例えば、異なる有色発光積層体で使用される発光層678は、典型的には、異なる色を提供するために異なる組成を有する。1つの発光積層体の1つ以上の層の層厚は、別の発光積層体の層とは異なっていてもよい。発光積層体575r、575g、及び575bはまた、サブ画素945a、945b、及び945cに対応し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書のディスプレイパネルで使用されるOLED積層体は、比較ディスプレイパネルよりも、より厚い及び/又はより強いキャビティを使用する。より厚いキャビティを使用すると、キャビティ放射率のピークは、ドーパント発光スペクトルの鋭いエッジから離れるようにシフトする。これにより、デバイス発光において、より短い波長へのシフトの増加がもたらされ、結果として、より短い波長に向かう色の初期シフトはより大きくなる。キャビティを強化することにより、ピークが狭くなり、ピーク波長に対する色の感度が増大する。いくつかの実施形態では、正味の結果は、本明細書のディスプレイパネルについての0~45度における最大色シフトは、比較ディスプレイパネルと比較して、2倍を超える増加である。色補正構成要素を含まない場合、このような大きな色シフトは、多くの用途では許容できない。しかしながら、色補正構成要素は、色シフトを少なくとも部分的に補正して、許容可能な色シフトを提供することができる。軸方向効率は、軸方向ピークをドーパント放出のエッジから離れるように移動させることと、より強いキャビティ放射率のピーク振幅の増加との両方によって増加する。これにより、いくつかの実施形態によれば、色補正構成要素を含み、比較ディスプレイパネルと同じ色シフトを有するディスプレイに対して、改善された軸方向効率をもたらす。
【0067】
OLED発光積層体575などの発光積層体の放射率を理解するのに有用な単純なモデルは、Fab-Perot光学キャビティモデルであり、このモデルでは、バッファ層674、キャッピング層675、及びカソード676によって画定される上面を有し、アノード683によって画定される底面を有するキャビティ上に封止剤層670が配設される。電子輸送層677、発光層678、電子遮断層679、正孔輸送層680、及び正孔注入層は、キャビティ内部の層であると考えられる。キャビティ放射率は、2ncavTcavcos(θcav)が、空気中に放射される光の波長の整数倍の時に最大であり、ここで、ncavはキャビティの内部層の実効屈折率であり、Tcavはキャビティの厚さであり、θcavはキャビティ内における法線に対する放出角度であり、スネルの法則により、発光積層体の外側の空気中の観視角に関連する。発光積層体の放出は、キャビティ放射率にドーパント放出を乗じたものである。キャビティモデルでは、色シフトは、主にキャビティ放射率におけるcos(θcav)項から生じる。
【0068】
図9~
図10は、Fabry-Perot光学キャビティモデルから得られる、比較ディスプレイパネルの緑色サブ画素と、本明細書のディスプレイパネルの緑色サブ画素、それぞれの、キャビティ放射率及びドーパント放出のプロットである。ゼロ、15、30、45、及び60度におけるキャビティ放射率、並びにドーパント放出が示されている。デバイス放出は、キャビティ放射率とドーパント放出の積である。
図11は、
図10の緑色サブ画素の相対スペクトル放射を示す。
図9では、ゼロ度観視角における軸方向ピークは、ドーパント放出のエッジ964に近接し、
図10では、ゼロ度観視角における軸方向ピークは、ドーパント放出のエッジ964からより遠く離れている。本明細書の他の場所に記載するように、このシフトは、より厚いキャビティを使用することによって得ることができる。
図10では、キャビティ放射率ピークの幅は、
図9と比較して狭くなっている。本明細書の他の場所に記載するように、この狭幅化は、より強いキャビティを使用することによって得ることができる。
【0069】
図12~
図13は、
図9~10に示す緑色サブ画素の観視角における色シフトを示す。
図13に示すゼロから45度における最大色シフトは、
図12に示すものよりも実質的に大きい。しかしながら、色補正構成要素が含まれる場合、
図13の色シフトは低減され、
図12の色シフトよりも小さい場合があり、及び/又は、例えば、許容可能な色シフト及び改善された効率を有するディスプレイがもたらされる場合がある。
【0070】
キャビティの厚さは、例えば、正孔輸送層及び/又は発光層の厚さを調整することによって調整することができる。いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、緑色波長に対するよりも青色波長に対して実質的により強い効果を有し、緑色波長に対するよりも赤色波長に対して実質的により弱い効果を有する。青色発光積層体の厚さ正孔輸送層は、特に、発光積層体の色シフトを調整して色補正構成要素を効果的に利用するために有用な設計パラメータであることが見出されている。屈折率にキャビティ厚さを乗じたものがキャビティ放射率モデルに入っているので、正孔輸送層について異なる材料が考慮される場合に有用な設計パラメータは、青色発光積層体の正孔輸送層の光学厚さである。
【0071】
図14は、本明細書のディスプレイパネルのサブ画素575d、及び比較ディスプレイパネルのサブ画素575cの概略断面図である。サブ画素575dは、例えば、OLED発光積層体575r、575g、及び575bのいずれかに対応し得る。サブ画素575cは、サブ画素の層の材料、サブ画素の層の厚さ、及び/又はサブ画素の層の光学厚さを含み得る1つ以上の設計パラメータによって、サブ画素575dとは異なる。図示した実施形態では、サブ画素575dは、比較ディスプレイパネルのサブ画素575cの正孔輸送層680cよりも厚い正孔輸送層680dを有する。いくつかの実施形態では、青色サブ画素の正孔輸送層680dの厚さは、比較ディスプレイパネルにおける対応する青色サブ画素の正孔輸送層680cの厚さの少なくとも1.02倍、又は少なくとも1.03倍である。いくつかの実施形態では、青色サブ画素の正孔輸送層680dの厚さは、比較ディスプレイパネルにおける対応する青色サブ画素の正孔輸送層680cの厚さの1.1倍以下である。
【0072】
キャビティの強度は、カソード(例えば、カソード676)の反射率を調整することによって調整することができる。これは、カソードの厚さを変化させることによって行うことができる。しかしながら、カソードは、典型的には、実質的な電圧降下を伴うことなく必要な駆動電流を流出させるために十分な厚さを有することが望ましく、これにより、カソードの厚さを変化させてカソードの反射率を制御することができる程度が限定される。別の手法は、比較的厚く反射性のカソードを使用し、バッファ層及びキャッピング層(例えば、バッファ層674及びキャッピング層675)の厚さ及び屈折率を最適化して、反射波の干渉を利用してカソードの反射率を低下させることである。いくつかの実施形態では、バッファ層及びキャッピング層の厚さ及び屈折率を調整して、カソードの反射率を減少させる効率が、比較ディスプレイパネルと比較して劣るようにすることにより、比較ディスプレイパネルの発光キャビティと比較して発光キャビティが強化される。いくつかの実施形態では、バッファ層及び/又はキャッピング層の、厚さ又は材料選択又は光学厚さが、発光積層体の色シフトを調整するための有用な設計パラメータである。
【0073】
図15は、OLED発光層1530のエバネッセント領域1538の外部に近接して配設された、光学積層体と称することができる色補正構成要素1501を含む、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ1500の断面図である。エバネッセント領域1538は、典型的には、OLED発光層1530からz方向に、可視光のほんの数波長分だけ広がる。OLED積層体1531は、OLED発光層1530と、電極1532と、正孔輸送層1533とを含有する。他の層もまた、例えば、
図6に示すように含めることができる。内層1534は、OLED発光層1530から色補正構成要素1501を分離する。内層1534は、OLED発光層1530のための封止剤であってもよい(例えば、封止剤層670に対応する)。色補正構成要素1501は、第1の層1510と第2の層1520との間に配設されたナノ構造化境界面1502を含み、第2の層1520は第1の層1510とOLED発光層1530との間に配設されている。ナノ構造化境界面1502は、h(x,y)として示される、中央面1504からの変位1506を有する。ナノ構造化境界面1502は、OLED発光層1530から距離dに配設されている。距離dは、中央面1504からOLED発光層1530の上部までの距離である。いくつかの実施形態では、dは、少なくとも5マイクロメートル、又は少なくとも10マイクロメートルであり、いくつかの実施形態では、dは、100マイクロメートル以下、又は50マイクロメートル以下である。ナノ構造化境界面1502は、複数のピーク1503と、最隣接のピーク間の平均間隔Sとを有する。本明細書中で使用する場合、平均は、別段の指定のない限り、単純算術平均をいう。ナノ構造化境界面1502の中央面1504からの変位1506のばらつきをVarと表す。
図15はまた、ディスプレイ1500内の画素に関する視錐1547を示し、視錐1547は、ディスプレイ1500の法線1546に対して半角θを有する。例えば、半角θは60度、又は45度であってよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の層1510及び第2の層1520は、連続ポリマー相を有するポリマー層である。第1の層1510と第2の層1520のいずれかが、屈折率を変化させるために無機ナノ粒子を含んでもよい。このようなナノ粒子は、典型的には、平均サイズが100nm未満である(平均サイズは、(6V/π)1/3としてナノ粒子の平均体積V(単純算術平均)から求めることができる)。いくつかの実施形態では、所望のナノ構造化表面を有するツールを使用して、本明細書の他の場所で更に説明される連続キャスト及び硬化プロセスにおいて第1の層1510を形成する。第2の層1520は、例えば、架橋性組成物で第1の層1510のナノ構造化表面をバックフィルすることにより形成することができる。例えば、液体コーティング、蒸着コーティング、粉体コーティング、ラミネーション、ディップコーティング、又はロールツーロールコーティングのうちの1つの方法を使用して、バックフィル材料を適用して、第2の層1520を形成することができる。いくつかの実施形態では、バックフィル材料は、ナノ構造化境界面とは反対側に平坦面を形成する。第1の層1510と第2の層1520のそれぞれが、連続層(例えば、連続ポリマー相を有する層)であってもよい。第1の層1510と第2の層1520のそれぞれが、中実層(例えば、硬質又は軟質ポリマー層)であってもよい。
【0075】
第1の層1510は、架橋樹脂層であってもよく、例えば、1.2から1.6の範囲、又は1.4から1.55の範囲の屈折率を有してもよい。屈折率は、別途明記しない限り、又は文脈上他を明確に示すのでない限り、632nmで測定した屈折率を指す。いくつかの実施形態では、第2の層1520は、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、又は少なくとも1.75の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、第2の層1520は、2.2以下、又は2.1以下、又は2.0以下の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、第2の層1520は、第1の層1510より大きい屈折率を有する。第1の層1510と第2の層1520は、ナノ構造化境界面1502を挟んで屈折率コントラスト(第2の層1520の屈折率と第1の層1510の屈折率における差の絶対値)を提供する。いくつかの実施形態では、屈折率コントラストは、ナノ構造化境界面1502に沿って一定である。いくつかの実施形態では、屈折率コントラストは、0.1、0.2、又は0.3~1.0の範囲内にある。いくつかの実施形態では、第1の層1510は超低屈折率材料であり、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990号(Haoら)に記載されており、1.2~1.35の範囲内の屈折率を有し、第2の層120は1.6を超える、又は1.7を超える屈折率を有する高屈折率層である。
【0076】
典型的には、ナノ構造化境界面を透過した回折屈折力が屈折率コントラストの2乗に比例するため、屈折率コントラストは大きいことが望ましく、このことは、第2の層1520に高屈折率材料を利用することで実現できる。第2の層1520に好適な材料の例としては、高屈折率無機材料、高屈折率有機材料、ナノ粒子で充填されたポリマー材料、窒化ケイ素、高屈折率無機材料で充填されたポリマー、及び高屈折率の共役ポリマーが挙げられる。高屈折率ポリマー及びモノマーの例は、C.Yangらによる、Chem.Mater.7,1276(1995)、及びR.Burzynskiらによる、Polymer 31,627(1990)、及び、米国特許第6,005,137号に記載されており、これら全ての文献は、参照により、本明細書に矛盾しない範囲で本明細書に組み込まれる。高屈折率無機材料で充填されたポリマーの例は、米国特許第6,329,058号に記載されている。ナノ粒子で充填されたポリマー材料のナノ粒子の例としては、TiO2、ZrO2、HfO2、又は他の無機材料などの高屈折率材料が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、ナノ構造化境界面1502は、実質的に方位対称のパワースペクトル密度(PSD)を有する。PSDは、xy平面の領域にわたって、変位h(x,y)(
【数2】
とも表され、ここで、
【数3】
はxy平面におけるベクトルである)の2次元フーリエ変換の大きさを2乗し、h(x,y)におけるピーク間の平均間隔と比べて十分に大きい領域に対する面積で除することによって得られる。したがって、この領域に対するフーリエ変換の大きさを2乗したものの比は、近似的にこの面積から独立している。波数ベクトル
【数4】
(kとも表される)におけるPSDは、十分に大きい面積Aについて、
【数5】
と表現することができる。典型的には、平均間隔は、1マイクロメートル未満であり、10マイクロメートル×10マイクロメートルの正方形の面積は、PSDを決定するのに十分に大きな面積である。PSDは、長さの4乗の単位を有する。PSDの定義から、PSDの2次元フーリエ空間の積分は、ナノ構造化境界面の平均変位からの変位のばらつきVarの(2π)
2倍に等しい。本明細書で説明する実質的に方位対称のパワースペクトル密度を利用することは、PSDが適切に選択されたときにOLEDディスプレイの軸出力(例えば、輝度、色、及びコントラスト)を大きく変更することなく、所望の色補正を提供するのに有用であることが見出された。
【0078】
図16は、ナノ構造化境界面のパワースペクトル密度(PSD)が集中するフーリエ空間内の領域の概略図である。円環1612は、共に波数ゼロ1622を中心とする内円1614及び外円1616によって境界を定められた、フーリエ空間における2次元領域である。内円1614は、kinの半径を有し、kinは、円環1612の内側波数として説明することができ、外円1616は、koutの半径を有し、koutは、円環1612の外側波数として説明することができる。全フーリエ空間にわたるPSDの積分は、ばらつきVarの(2π)
2倍であり、このことは、本明細書の他の部分で説明される。いくつかの実施形態では、内円1614内に含まれ、円1614によって囲まれる領域1613にわたっての、フーリエ空間におけるPSDの積分は、Varの4倍以下、又はVarの2倍以下、又はVar以下である。いくつかの実施形態では、2次元円環1612にわたっての、フーリエ空間におけるPSDの積分は、0.8~1.0に(2π)
2とVarを乗じたもの、又は0.9~1.0に(2π)
2とVarを乗じたものである。いくつかの実施形態では、2次元円環1612にわたっての、フーリエ空間におけるPSDの積分は、約(2π)
2×Varである。いくつかの実施形態では、kinは、6ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は8ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は9ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は12ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は14ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものである。いくつかの実施形態では、koutは、10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたもの、12ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたもの、13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたもの、14ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.866との和を乗じたもの、又は16ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.9との和を乗じたものである。いくつかの実施形態では、kinは、2πラジアン/(700ナノメートル)に第2の屈折率を乗じたものから2πラジアン/(400ナノメートル)に第2の屈折率を乗じたものまでの範囲にある。いくつかの実施形態では、kinは、2πラジアン/(600ナノメートル)に第2の屈折率を乗じたものから2πラジアン/(500ナノメートル)に第2の屈折率を乗じたものまでの範囲にある。いくつかの実施形態では、koutは、2πラジアン/(700ナノメートル)に第2の屈折率と0.8との和を乗じたものから2πラジアン/(400ナノメートル)に第2の屈折率と0.9との和を乗じたものまでの範囲にある。いくつかの実施形態では、koutは、2πラジアン/(600ナノメートル)に第2の屈折率と0.866との和を乗じたものから2πラジアン/(500ナノメートル)に第2の屈折率と0.866との和を乗じたものまでの範囲にある。
【0079】
フーリエ空間内において、原点から離れている任意の点が、原点からその点までの波数ベクトルを規定する。媒質中を伝播する光の波数ベクトルは、伝播方向の単位ベクトルに、媒質の屈折率を乗じ、2πを乗じ、光の自由空間波長で除したものである。波数ベクトルの大きさは、波数という。本明細書で使用する場合、波数ベクトル及び波数は、ラジアンが明示的に記載されていないとしても、単位長さ当たりのラジアンで表現される。PSDは、2次元波数ベクトルの関数であり、PSDが方位対称である場合には、PSDは波数の関数である。本明細書では、ある波数ベクトルにおいて評価されたPSDと、その波数ベクトルの大きさとの積を、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積と呼び、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、一般に、波数ベクトルの関数であり、PSDが方位対称である場合には、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、波数の関数である。
【0080】
ある入射波数ベクトルを有する光が、ある媒体において、媒体中の入射光の波長と比べて小さい全振幅で、変位h(x,y)を有するナノ構造化境界面上に入射し、かつ透過した波数ベクトルを有する光が、ナノ構造化境界面によって回折される場合、ナノ構造化境界面を透過した回折屈折力は、透過波数ベクトルの水平成分と入射波数ベクトルの水平成分と(例えば、
図15のxy平面上への透過波数ベクトル及び入射波数ベクトルの投影)の間の差において評価されたPSDに略比例する。(2π/λ)(n2)(ここで、n2は、第2の層(例えば、層1520)の屈折率であり、λは、OLED発光層からの光の特性波長である)の大きさの入射波数ベクトルを有する光は、光が、透過した回折屈性力が(2π/λ)(n2)で評価したPSDに比例する状態で、(入射波数ベクトルの水平投影が約(2π/λ)(n2)の大きさを有するように)高い入射角度でナノ構造化境界面に入射した場合、ディスプレイに垂直な方向へ回折することができる。ナノ構造化境界面の存在によって、ディスプレイに垂直な光出力が実質的に変化しないことが望ましい場合が多いため、kinは、(2π/λ)(n2)以上であることが望ましい場合がある。λ本明細書の他の部分で詳述するように、いくつかの場合では、ナノ構造化境界面が、空気において、ディスプレイの法線に対して特定の角度未満の観視角φについては、光出力を大きく変化させないことが望ましい場合がある。φこのような場合、kinは、(2π/λ)以上(n2+sinφ)であることが望ましい場合もある。
【0081】
kinとkoutとの間の波数におけるPSDは、ディスプレイの法線に対する観視角を大きくしたときの回折透過を徐々に大きくする。これは、回折透過に寄与するフーリエ空間における面積が徐々に増えるためである。このように回折透過が徐々に大きくなることにより、混色が徐々に向上し、結果として色均一性が改善することが見出された。大きさが(2π/λ)(n2+sinθ)より大きい水平成分を有する波数ベクトルでナノ構造化境界面に入射した光は、ディスプレイの法線に対してθ度未満の観視角へ回折することができない。θが最大観視角(例えば、60度であり得る、ディスプレイの視錐の半角)である場合、(2π/λ)(n2+sinθ)を超える波数のPSDの部分は、ディスプレイの視錐への回折透過に大きく寄与しない。したがって、いくつかの実施形態では、koutは、(2π/λ)(n2+sinθ)以下である。
【0082】
kinを決定するために選択された特性波長λは、koutを決定するために選択された特性波長とは異なってもよい。例えば、kinを決定するための特性波長は、OLEDディスプレイにおける赤色発光体の波長に基づいていてもよく、他方、koutを決定するための特性波長は、OLEDディスプレイにおける青色発光体の波長に基づいていてもよい。このことは、ナノ構造化境界面が、ディスプレイの視錐において、すべての色について所望の混色効果をもたらすことを確実にするためになされてもよい。他の実施形態では、一方の色サブ画素を他方のサブ画素より大きくシフトさせると有利な場合があり、特性波長λは、kin及びkoutの両方を決定する際に、その色サブ画素の波長としてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ構造化境界面は、緑色サブ画素に対するよりも青色サブ画素に対して実質的により強い色補正を提供し、緑色サブ画素に対するよりも赤色サブ画素に対して更により小さい(又は実質的にゼロの)色補正を提供することが望ましい。この場合、特性波長λは、青色サブ画素の波長(例えば、ピーク波長)と見なすことができる。
【0083】
図17Aは、波数の関数としてのナノ構造化境界面のPSDの理想的な概略図である。この理想的な場合、PSDは、kinとkoutとの間のみ非ゼロであり、この波数範囲において、PSDmaxの最大値に等しい一定の大きさを有する。他の場合には、PSDは、kin未満の波数kではゼロではない場合もあり、kinとkoutとの間のkでは一定ではない場合もあり、koutより大きいkではゼロではない場合もある。ナノ構造化境界面を通る回折屈折力は、PSDに比例する被積分関数上のフーリエ空間における2次元積分によって決定される。この2次元積分は、角度座標φの極座標においてkdkdφで与えられる微分面積要素d
2kを有する。したがって、ナノ構造化境界面を通る回折屈折力は、波数と、波数の大きさを有する波数ベクトルで評価されたPSDと、の積に比例する被積分関数の波数及び角度座標上の積分によって決定される。この積を波数-パワースペクトル密度(PSD)の積と呼ぶ。
図17Bは、波数の関数としてのナノ構造化境界面の波数-パワースペクトル密度(PSD)の積(kPSDと表される)の理想的な概略図である。波数-パワースペクトル密度(PSD)の積kPSDは、kPSDmaxの最大値を有する。
【0084】
図18Aは、波数の関数としての別のナノ構造化境界面のPSDの概略図である。PSDは、kinより大きく、koutより小さい波数に対して発生する最大値PSDmaxを有する。いくつかの実施形態では、波数kin及びkoutは、PSDがその最大値の0.5、0.3、0.2、又は0.1倍である、最大値PSDmaxの左右にある点である。いくつかの実施形態では、波数kin及びkoutは、kPSDがその最大値の0.5、0.3、0.2、又は0.1倍である、最大値kPSDmaxの左右にある点である。
図18Bは、波数と、波数の関数として波数で評価されたナノ構造化境界面のパワースペクトル密度(PSD)との積(kPSDで表される、波数PSD積)の概略図である。波数-パワースペクトル密度(PSD)の積kPSDは、kPSDmaxの最大値を有する。いくつかの実施形態では、kin未満のすべての波数について、PSDは、PSDmaxの0.5倍以下、PSDmaxの0.3倍以下、PSDmaxの0.2倍以下、又はPSDmaxの0.1倍以下である。いくつかの実施形態では、kin未満のすべての波数について、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、kPSDmaxの0.3倍以下、kPSDmaxの0.2倍以下、kPSDmaxの0.1倍以下、又はkPSDmaxの0.05倍以下である。いくつかの実施形態では、PSD及び波数-パワースペクトル密度(PSD)の積が、本明細書の他の部分で説明する、それぞれの環状に平均化された値に置き換えられる場合、及びPSDmaxが、環状に平均化されたPSDの最大値に置き換えられ、kPSDmaxが、環状に平均化された波数-パワースペクトル密度(PSD)の積の最大値に置き換えられる場合に、上記の範囲は有効である。
【0085】
いくつかの実施形態では、kinとkoutとの間の円環上のフーリエ空間における2次元積分は、Varの(2π)2倍の0.8~1.0倍であり、ここで、Varは、ナノ構造化境界面の平均変位からの変位のばらつきである。いくつかの実施形態では、フーリエ空間における、半径kinの円内の領域にわたる2次元積分と半径koutの円の外側の領域上の2次元積分との合計は、Varの(2π)2倍の0.2倍以下である。
【0086】
いくつかの実施形態では、PSDは、kinとkoutとの間に集中するが、koutより大きい波数からかなりの寄与がある(例えば、PSDは、PSDmaxの0.05倍より大きい、又はPSDmaxの0.1倍より大きい場合もある)。これは、本明細書の他の部分で説明する、ナノ構造化境界面を形成する際に、ツールを使用することに起因し、ツールは、急激な高さの変化を有するため、PSDに高い波数をもたらし得る。このような長い波数への寄与は、一般的には、ナノ構造化境界面を含むOLEDディスプレイの色出力の均一性に著しく影響しないと考えられる。
【0087】
フーリエ空間内の領域上の量(例えば、PSD又は波数ベクトルPSD積)の平均は、領域上の量の積分を、領域の面積によって除したものをいう。ある波数におけるPSD(又は波数-パワースペクトル密度(PSD)の積)の円環平均は、フーリエ空間における、波数の0.9倍の内径と波数の1.1倍の外径とを有する、円環上のPSD(又は波数PSD)積の平均である。いくつかの実施形態では、6~9ラジアン/マイクロメートルの範囲にある少なくとも1つのk1について、PSDの環状平均は、k1に第2の屈折率を乗じたものより大きい波数で最大値を有し、PSDは、k1に第2の屈折率を乗じたもの未満の波数の最大環状平均の0.1、0.2、又は0.3倍以下である。いくつかの実施形態では、6~9ラジアン/マイクロメートルの範囲にある少なくとも1つのk1について、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積の環状平均は、k1に第2の屈折率を乗じたものより大きい波数で最大値を有し、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、k1に第2の屈折率を乗じたもの未満の波数について最大環状平均の0.1、0.2、又は0.3倍以下である。
【0088】
図17A~
図18Bの波数kin及びkoutは、
図16に関連して本明細書の他の部分で説明する値のいずれかをとることができる。
【0089】
図19は、実質的な方位対称性の説明に役立つ環状セクタ1917を含む、円環1915を示す。円環1915及び環状セクタ1917は、第1の大きさk1を有する第1の波数ベクトルk1によって決定される。円環1915は、フーリエ空間における、第1の大きさk1の0.9倍の内半径Rinと、第1の大きさk1の1.1倍の外半径Routとによって境界を定められた領域である。円環1915は、波数ゼロ1922を中心にしている。環状セクタ1917は、第1の波数ベクトルk1を中心とし、σの中心角を有する。環状セクタは、k1の左右にσの半分の方位角だけ広がる円環1915の一部分である。本明細書で使用する場合、10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものと、13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたものと、の間にある第1の大きさk1を有する任意の第1の波数ベクトルk1について、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の局所平均間の最大差が、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の環状平均の0.67~1.33倍である場合、パワースペクトル密度は実質的に方位対称であり、ここで、局所平均は、フーリエ空間における、第1の波数ベクトルk1を中心とし、第1の大きさの0.9倍の内半径Rin、第1の大きさk1の1.1倍の外半径Rout、及び中心角σを有する環状セクタ1917上のパワースペクトル密度の平均であり、環状平均は、フーリエ空間における、第1の大きさk1の0.9倍の内半径Rin、及び第1の大きさk1の1.1倍の外半径Routを有する円環1915上のパワースペクトル密度の平均であり、σは、60度に等しい。
【0090】
いくつかの実施形態では、10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものと、13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたものと、の間にある第1の大きさk1を有する任意の第1の波数ベクトルk1について、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の局所平均間の最大差が、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の環状平均の0.7~1.3倍、0.8~1.2倍、又は0.9~1.1倍である。
【0091】
いくつかの実施形態では、PSDは、PSDが実質的に方位対称であるかどうかを決定する際により小さい環状セクタを使用する場合、依然として実質的に方位対称である。例えば、いくつかの実施形態では、PSDは、中心角σが30度に等しい場合、実質的に方位対称である。
【0092】
10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものと、13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたものと、の間の範囲は、実質的な方位対称を規定する際に使用され、これは、ナノ構造化境界面によって結果としてもたらされる色均一性が、一般的に、他の範囲よりこの範囲の影響を多く受けることが見出されたためである。PSDはまた、より広い波数範囲内において略方位対称であってもよい。いくつかの実施形態では、6ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、8ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの、又は10ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものと、13ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.8との和を乗じたもの、又は14ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率と0.9との和を乗じたものと、の間にある第1の大きさk1を有する任意の第1の波数ベクトルk1について、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の局所平均間の最大差が、第1の波数ベクトルk1におけるパワースペクトル密度の環状平均の0.7~1.3倍、又は0.8~1.2倍であり、ここで、局所平均は、フーリエ空間における、第1の波数ベクトルk1を中心とし、第1の大きさの0.9倍の内半径Rin、第1の大きさk1の1.1倍の外半径Rout、及び中心角σを有する環状セクタ517上のパワースペクトル密度の平均であり、環状平均は、フーリエ空間における、第1の大きさk1の0.9倍の内半径Rin、及び第1の大きさk1の1.1倍の外半径Routを有する円環1915上のパワースペクトル密度の平均であり、σは、60度に等しい、又は30度に等しい。
【0093】
PSDは、ある程度の方位方向のばらつきを有していてもよく、実質的に方位対称であると考えることができる。いくつかの実施形態では、実質的に方位対称なPSDは、n回対称軸を有する。このことは、360度をnで除した角度で分離された、共通の大きさを持つ任意の2つの波数ベクトルに対して、PSDは同じ値をとることを意味する。例えば、
図19の波数ベクトルk1及びk2は同じ大きさk1を有し、角度γによって分離されている。PSDが、任意の2つのこのような波数ベクトルの対において共通の値を有し、かつγが360度をnで除したものである場合、PSDは、n回対称であると説明できる。いくつかの実施形態では、実質的に方位対称なパワースペクトル密度は、少なくとも6回回転対称である。
【0094】
本明細書の他の部分で説明するパワースペクトル密度を有するナノ構造化境界面は、ナノ構造化表面を有するツールを使用して作製することができる。いくつかの実施形態では、ツールは、基材に部分的に埋め込まれた複数の粒子を含む。ツールを作製する有用な技術が、米国特許出願公開第2014/0193612号(Yuら)、及び米国特許第8460568号(Davidら)に記載されている。ツールのナノ構造化表面は、原子間力顕微鏡法(AFM)によって特性評価でき、これは、例えば高速フーリエ変換を介して表面のPSDを決定するために使用することができる。要約すれば、ツールは、ポリマー前駆体マトリックス中に粒子を分配して、層を形成することによって作製できる。次いで、この層を乾燥又は硬化する。溶媒を蒸発させる熱を加えること、又は化学線を照射することによって、層を硬化できる。いくつかの場合には、この層を加熱して溶媒を除去し、次いで、化学線を照射して層を硬化させる。次いで、層を(例えば、反応性イオンエッチングで)エッチングして、ツールを形成できる。次いで、ツールを使用して、第1の層にナノ構造化表面を形成でき、次いで第1の層をバックフィルして、ナノ構造化境界面を有する光学積層体を形成できる。ナノ構造化表面は、樹脂がツールに対してキャストされ、例えば化学線(例えば、紫外線)放射又は熱によって硬化される連続キャスト及び硬化プロセスにおいて形成することができる。連続キャスト及び硬化プロセスの例は、以下の特許、米国特許第4374077号、同第4576850、同第5175030、同第5271968、同第5558740号、及び同第5995690号に記載されている。
【0095】
このツールは、Sで表される平均間隔を有するナノ構造化境界面を生成する。粒子は典型的にはランダムに粒塊化(agglomerated)しており、そのため、粒子は典型的には周期的格子上にない。ナノ構造化境界面の平均間隔は、最隣接のピーク間の平均距離と定義することができ、ツールの場合には、隣接する粒子間の中心間距離に対応する。粒子は、Dと表される平均粒径を有する。単分散球状粒子の場合、これは粒径である。他の場合では、平均サイズDは、である、D=(6V/π)1/3として粒子の平均体積V(ナノ構造化境界面の形成に用いられる粒子の単純算術平均)から決定される。
【0096】
層に粒子を十分に高充填することにより、粒子は略方位対称にランダムに凝集するため、ナノ構造化境界面について実質的に方位対称なPSDを得る。粒子のサイズD、及び粒子の充填、又は結果として得られる粒子の平均中心間間隔Sは、
図17A~
図18Bに示す波数koutを及びkinを決定するように選択することができる。一般的には、粒子を高充填することを選択することにより、PSDは、フーリエ空間において、実質的に方位対称となり、薄い領域に局在化する(koutはkinを大幅には上回らない)。高充填であることは、ツールが形成された場合、粒子が層内でほぼ密に充填されていることを意味する。粒子の充填が減少すると、Sが大きくなり、波数kinをより小さい値に移動させる。一般に、波数koutは、粒子のサイズDに反比例し、波数kinは、粒子間の間隔Sに反比例する。このように、ツールの長さスケールD及びSを選択することにより、例えば
図17A~
図18Bのようにkinとkoutとの間に集中した、実質的に方位対称のPSDを有するナノ構造化表面を作製することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ツールをエッチングして、ナノ構造化境界面を形成すると、粒子及び柱の頂部を有する柱状構造が形成される。このような柱状構造は、結果として得られるPSDに高い波数への寄与を与える。これらの高い波数への寄与は、結果として得られるナノ構造化境界面を組み込んだOLEDディスプレイの色均一性に大きく影響を及ぼさないと考えられる。ポストの高さは、エッチングプロセスにより制御できる。高さを低くすることにより、PSDに対する高い波数への寄与を低減し、したがって、kinとkoutとの間のPSDを増加させる。
【0098】
色補正構成要素のための有用なナノ構造化境界面に関する、及びナノ構造化境界面を作製する方法に関する更なる詳細は、米国特許仮出願第62/342620号(Freierら)、及び同第62/414127号(Ericksonら)、並びに国際公開第2017/205174号(Freierら)に見出すことができ記載されている。
【0099】
図20Aは、ベース表面1218から延びる複数のピラー1203を含むナノ構造化表面1202を有する第1の層1210を含むナノ構造化物品1201の概略的断面図であり、ベース表面1218はピラー1203の間のナノ構造化表面1202の部分である。第1の剥離ライナー1243を除去し、任意選択でナノ構造化表面1202を埋め戻すことによって、ナノ構造化物品1201を使用して色補正構成要素を提供することができる。ピラー1203は、平均横方向寸法W、平均高さH、及び平均中心間隔Sを有する。ピラー1203の各々はナノ粒子1242を含む。ナノ粒子1242は平均直径Dを有する。エッチ層1210aはピラー1203を形成する際にエッチングされる、層1210の部分である。ナノ構造化物品という用語は、ナノ構造化表面、又は2層間のナノ構造化境界面、を有する任意の物品を指し得る。ナノ構造化表面又はナノ構造化境界面は、1nm~1000nmの範囲内の少なくとも1つの寸法を有する構造である。場合によっては、ナノ構造は、各横方向寸法、又は3つの全ての寸法が、1nm~1000nmの範囲、又は10nm~1000nmの範囲にある。第1の層は概ねx及びy方向に配設されており、ピラー1203は概ねz方向に延びている。ナノ構造化物品1201は、第1の剥離ライナー1243、及び第1の層1210と第1の剥離ライナー1243との間に配設された第1の転写層1241を含む。第1の層1210及び/又は転写層1241はポリマー層であってもよく、又はポリマー層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の層1210は、例えば、放射線架橋性モノマーのフラッシュ蒸発及び気相堆積によって、最初に転写層1241にモノマー又はオリゴマーの層を堆積し、その層を架橋してポリマーをin situで形成し、続いて、例えば電子ビーム装置、UV光源、放電装置、又は他の好適なデバイスを使用して架橋してエッチ層1210aを形成することによって、形成することができる。次いで、本明細書の他の場所で更に説明するように、エッチ層1210aをエッチングして(例えば、本明細書と矛盾しない限りにおいて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0193612号(Yuら)、及び米国特許第8460568号(Davidら)で概略的に記載されるようなプラズマエッチングによって)、第1の層1210内にピラー1203を形成する。いくつかの実施形態では、転写層1241は、国際公開第2013/116103号(Kolbら)及び国際公開第2013/116302号(Kolbら)に記載のように作製され、これら文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。剥離ライナー1243は、例えば、シリコーン被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの、任意の従来の剥離処理フィルムであり得る。第1の層1210、転写層1241、及び第1の剥離ライナー1243のための他の有用な材料は、本明細書の他の場所で更に説明される。
【0100】
エッチ層1210a及び転写層1241に対して異なる材料を使用することにより、エッチ層1210aを、ナノ構造化表面1202のエッチング特性の改善、又は所望の光学特性のために選択することが可能になり、かつ転写層1241を、剥離ライナー1243上での被覆性の改善、又は剥離ライナー1243からの剥離特性の改善のために選択することが可能になる。加えて、転写層1241の厚さ及び物理的物性を、構成体の機械的特性が改善するように選択してもよい。これが、転写プロセス中及び使用時における構成体のクラックなどの悪影響を緩和することに役立つ場合がある。転写層を、クラックを引き起こす可能性のあるバックフィル(BF)層中の応力を緩和するように選択してもよい。いくつかの実施形態では、BF層はバインダー中に無機ナノ粒子を高濃度で含有させたものを含む。場合によっては、これにより、BF層は非常に脆弱になり割れやすくなる。他の実施形態では、転写層1241は省略され、エッチ層1210aが第1の剥離ライナー1243上に配設される。この場合、エッチング層1210aは転写層とみなすことができ、本明細書の他の場所で説明する、エッチ層又は転写層のいずれかのための材料から作製することができる。転写層1241はまた、ナノ構造化物品に追加の機能性を追加することができる。例えば、転写層1241は、所望の水分又は酸素バリア特性を有することができ、又は、例えば紫外線(UV)光の遮光特性を提供するために使用することができる。いくつかの実施形態では、転写層1241は、少なくとも平均ピラー高さに等しい厚さを有する。
【0101】
ピラー1203の下部1203a(
図20B参照)の間の間隔1219は窪みと呼ばれる場合があり、ピラー1203はナノ構造化表面1202の突出部と呼ばれる場合がある。ピラー以外のナノ構造も本明細書の範囲内にあり、ナノ構造の平均高さよりも上方に延びるナノ構造化表面の部分が突出部であり、ナノ構造の平均高さよりも下方のナノ構造化表面の部分が窪みである。
【0102】
図20Bは、
図20Aのナノ構造化物品のピラー1203の概略的断面図である。ピラー1203aは、下部1203a、上部1203b、及び中間部1203cを含む。いくつかの実施形態では、本明細書の他の場所で更に説明するように、中間部1203cは、ピラー1203を作製するために使用するエッチングプロセスにおいて除去されなかったマトリックス材料又はバインダーを含む。いくつかの実施形態では、ピラーは円形断面を有する。他の実施形態では、ピラーは、例えばテーパ状の矩形断面などの他の断面を有してもよい。いくつかの実施形態では、下部1203aは円筒状であり、上部1203bのナノ粒子は球状である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、下部の直径と実質的に等しい直径を有する。ナノ粒子は、ピラー1203を形成する際にエッチマスクとして機能できる任意のナノ粒子とすることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子はSiO
2ナノ粒子などの無機ナノ粒子である。他の実施形態では、ナノ粒子は、エッチマスクとして機能できるシリコーンナノ粒子であってもよい。他の好適なナノ粒子については、本明細書の他の場所で更に説明する。いくつかの実施形態では、本明細書の他の場所で更に説明するように、上部1203bは表面処理され、界面1209に沿って中間部1203cに共有結合される。本明細書に記載のいずれかの実施形態では、ナノ構造の上部(マスク部分)は、ナノ構造の下部に付着させたバインダーに共有結合してもよい。
【0103】
上部1203bと下部1203aとは、異なる組成物を有する。いくつかの実施形態では、下部1203aはポリマー材料を含み、上部1203bは無機材料を含む。いくつかの実施形態では、下部1203aは少なくとも60重量パーセントのポリマー材料を含み、上部1203bは少なくとも80重量パーセントの無機材料を含む。いくつかの実施形態では、上部1203bはナノ粒子を含むか、又はナノ粒子から実質的に構成しもよい(すなわち、上部1203bはナノ粒子を含んでもよく、かつ、ピラーを作製するために使用したエッチングプロセスにおいて完全には除去されなかったバインダーの残渣を含む可能性があり、またナノ粒子上に、ナノ構造化物品の光学性能に実質的に影響しない他の不純物を含む可能性がある)。いくつかの実施形態では、下部1203aはポリマーであるか、又は連続したポリマー相を有する。ナノ粒子はまた、下部1203aに含まれていてもよい。好ましくは、そのようなナノ粒子は上部1203bのナノ粒子よりも小さい。下部1203aの屈折率を変更するために、下部1203aには、例えば、直径が約100nm未満、約50nm未満、又は約40nm未満の複数のナノ粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、下部1203aは、上部1203bのナノ粒子の直径の半分よりも大きい直径を有するナノ粒子を含まない。
【0104】
いくつかの実施形態では、上部1203bのナノ粒子及び下部1203aの材料は、下部1203a及び上部1203bの屈折率がほぼ等しくなるように選択される。いくつかの実施形態では、下部1203aと上部1203bとの間の屈折率の差の絶対値は0.1以下、又は0.05以下である。そのような屈折率の範囲は、異なる上部及び下部を有する、本明細書に記載のいかなるピラーにも適用される。いくつかの実施形態では、下部1203aと中間部1203cとの間の屈折率の差の絶対値は0.1以下、又は0.05以下である。いくつかの実施形態では、上部1203bと中間部1203cとの間の屈折率の差の絶対値は0.1以下、又は0.05以下である。そのような屈折率の範囲は、異なる上部、下部及び中間部を有する、本明細書に記載のいかなるピラーにも適用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、第2の層が複数のピラー1203を覆うように配設されており、ベース表面1218まで連続的に延びている。第2の層は、第1の層1210のナノ構造化表面1202を、例えば架橋性組成物でバックフィルすることにより形成することができる。例えば、液体コーティング、蒸着コーティング、粉体コーティング、ラミネーション、ディップコーティング、又はロールツーロールコーティングのうちの1つの方法を使用して、バックフィル材料を適用して、第2の層を形成することができる。いくつかの実施形態では、バックフィル材料は、ナノ構造化表面とは反対側に平坦面を形成する。いくつかの実施形態では、第2の層は高屈折率バックフィル材料である。好適な高屈折率バックフィル材料の例としては、高屈折率無機材料;高屈折率有機材料;ナノ粒子で充填されたポリマー材料;窒化ケイ素、インジウムスズ酸化物、硫化亜鉛、又はこれらの組み合わせ;高屈折率無機材料で充填されたポリマー;及び高屈折率の共役ポリマーが挙げられる。高屈折率ポリマー及びモノマーの例は、C.Yangらによる、Chem.Mater.7,1276(1995)、及びR.Burzynskiらによる、Polymer 31,627(1990)、及び、米国特許第6,005,137号に記載されており、これら全ての文献は、参照により、本明細書に矛盾しない範囲で本明細書に組み込まれる。高屈折率の無機材料で充填されたポリマーの例は、米国特許第6329058号に記載されており、同文献は、本明細書と矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。高屈折率無機材料は、例えば100nm未満、又は50nm未満、又は40nm未満の大きさを有するナノ粒子であってもよい。ナノ粒子で充填されたポリマー材料のナノ粒子の例としては、TiO2、ZrO2、HfO2、又は他の無機材料などの高屈折率材料が挙げられる。
【0106】
ナノ構造化表面1202、又はナノ構造化表面1202と隣接する第2の層との間の対応するナノ構造化境界面は、本明細書の他の場所で更に説明するように、パワースペクトル密度(PSD)を有することができる。
【0107】
図21は、第1の層1410を含むナノ構造化物品1401の概略的断面図であり、第1の層1410は、第1の層1410のベース表面1418から延びる複数のピラー1403を含むナノ構造化表面1402を有する。ナノ構造化物品1401は更に、第1の剥離ライナー1443上に配設された転写層1441と、複数のピラー1403を覆うように配設され、ベース表面1418まで連続的に延びる第2の層1420と、第2の層1420上に第1の層1410とは反対側に配設された接着剤1448と、接着剤1448上に第2の層1420とは反対側に配設された第2の剥離ライナー1449とを含む。第1の層1410は、例えば第1の層1210に対して説明したように、又は本明細書の他の場所で説明する他の基材層に対して説明するように、堆積することができる。第1の剥離ライナー1443及び第2の剥離ライナー1449は、本明細書の他の場所で説明するあらゆる剥離ライナーであり得る。接着剤1448は、例えば、光学的に透明な接着剤(OCA)であり得る。例示的なOCAは、帯電防止用の光学的に透明な感圧接着剤に関する国際公開第2008/128073号、延伸剥離OCAに関する米国特許出願公開第2009/030084号、インジウムスズ酸化物互換OCAに関する米国特許出願公開第2009/0087629号、光学的に光透過性の接着剤を有する帯電防止光学構成体に関する米国特許出願公開第2010/0028564号、腐食感受性層と適合性のある接着剤に関する米国特許出願公開第2010/0040842号、光学的に透明な延伸剥離接着テープに関する米国特許出願公開第2011/0126968号、及び延伸剥離接着テープに関する米国特許出願公開第2011/0253301号、に記載されたものを含む。好適なOCAとしては、例えば3M Company,St.Paul,MN.から入手可能な、例えば3M OCA 8146などのアクリル系の光学的に透明な感圧接着剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、OCAは1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲内、又は10マイクロメートル~40マイクロメートルの範囲内の厚さを有する。
【0108】
第1の剥離ライン1443及び第2の剥離ライン1449をナノ構造化物品1401から除去することができ、接着剤1448を使用して、残りの層をOLEDディスプレイパネルに取り付けて、色補正構成要素を提供することができる。
【0109】
ピラー1403は、下部1403a、上部1403b、及び中間部1403cを備える。いくつかの実施形態では、上部1403bを一括してマスク又はマスク層と呼ぶことができる。なぜなら、これらの部分は、本明細書の他の場所で更に説明するように、ピラー1403を形成するために使用できるからである。いくつかの実施形態では、ピラー1403の下部は第1の屈折率を有し、第2の層1420は第2の屈折率を有し、ピラー1403の上部は第3の屈折率を有し、ピラー1403の中間部は第4の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、第1の屈折率と第3の屈折率との間の差の絶対値は0.1以下、又は0.05以下である。いくつかの実施形態では、第1の屈折率と第4の屈折率との間の差の絶対値は0.1以下である。いくつかの実施形態では、第1の屈折率と第2の屈折率との間の差の絶対値は0.1~1.5の範囲にある。
【0110】
第1の層1410のナノ構造化表面と、第2の層1420との間の境界面は、本明細書の他の場所で説明するいかなる形状を有してもよい。例えば、本明細書の他の場所で更に説明するように、このナノ構造化境界面はPSDを有してもよい。ナノ構造化境界面を横切る屈折率コントラストは、本明細書の他の場所で説明する、いかなる範囲内にあってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、ナノ構造化表面は、平均ピラー高さに対する標準偏差が平均ピラー高さの10%以下(又は8%以下、又は5%以下、又は更に3%以下)、又は20nm以下(又は15nm未満、又は更に10nm未満)であるピラー高さ分布を有する。標準偏差及び平均ピラー高さは、例えば幅10マイクロメートル、長さ10マイクロメートルの領域にわたって計算してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、第1の層及び第2の層と、それらの間のナノ構造化境界面とを含み(例えば、
図15及び
図21に示すように)、第1の層は第1の屈折率を有し、第2の層はOLEDディスプレイパネルに面し、少なくとも1.4である異なる第2の屈折率を有する。ナノ構造化境界面は、実質的に方位対称のパワースペクトル密度PSDを有する。波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、6ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたものより大きい波数で最大値を有する。いくつかの実施形態では、6ラジアン/マイクロメートルに第2の屈折率を乗じたもの未満の全ての波数については、波数-パワースペクトル密度(PSD)の積は、最大値の0.3倍以下である。
【0113】
いくつかの実施形態では、色補正は、波長及び偏光に依存する部分反射体であるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、部分反射体は、色補正フィルムと称することができるフィルムである。いくつかの実施形態では、部分反射体は光学積層体を含み、光学積層体は複数の光学繰り返し単位を含み、複数の光学繰り返し単位は所望の、波長及び偏光に依存する反射率及び透過率を提供する。
【0114】
本明細書のいくつかの実施形態による波長及び偏光依存性部分反射体は、例えば、部分反射体が有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの円偏光子に使用されるときに、OLEDディスプレイの視野角による色シフトを低減するのに有用である。いくつかの実施形態では、部分反射体は、直交する偏光状態用ではないある偏光状態用の反射帯域を有するため、反射偏光子と、又は部分反射偏光子と呼ぶ場合もある。反射帯域の、遮断軸に沿って偏光された垂直入射光に対する平均反射率は、典型的には97%未満、又は95%未満、又は90%未満、又は75%未満、又は60%未満である。反射帯域は、典型的には98%を超える平均反射率を提供する従来の多層光学フィルムミラー又は反射偏光子の反射帯域よりも、弱くてよい。部分反射体は、制御された帯域端及び入射角に対して調整された反射率を有する、複屈折多層光学フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、部分反射体は、ディスプレイに組み込まれたときに軸上での視覚効果は最小限であるが、軸外では所望の波長に対して光学ゲインが得られるように設計されている。OLEDディスプレイに本明細書の部分反射体を利用することにより、波長及び視野角依存性ゲインを提供することによって、OLEDディスプレイのバックプレーンの典型的には拡散性である特性にもかかわらず、画質を犠牲にすることなく視野角の変化に対する色均一性を改善できることが見出された。
【0115】
いくつかの実施形態では、部分反射体は、OLEDディスプレイから部分反射体へと垂直入射する光への影響は無視できる程度であるが、部分反射体に非垂直入射で入射する光の一部を再利用することによって、非垂直入射における波長依存性ゲインを提供するように構成される。このことは、反射帯域を、垂直入射において主として近赤外(700nm~2500nmの波長)内となるように選択することによって達成できる。非垂直視野角では、反射帯域は赤色波長範囲(600nm~700nmの波長)へとシフトされ、これは、視野角の増大と共に増加する赤色波長のゲインをもたらし得る。いくつかの実施形態では、部分反射体は、垂直入射において波長依存性ゲインを提供してもよく、並びに(例えば、主反射帯域の第2の高調波を含めることによって、例えば、青色光の一部を再利用することによって)、非垂直入射において波長依存性ゲインを提供することができる。このことは、例えばディスプレイが白色点光出力に設定された場合に、ディスプレイから所望の光出力を提供する際の更なる融通性を可能にするために、又は、垂直入射における光出力の色温度を補正するために行うことができる。
【0116】
本明細書の波長及び偏光に依存する部分反射体又は反射偏光子は、典型的には、複数の光学繰り返し単位を含む光学積層体を含む多層光学フィルムであり、各光学繰り返し単位は、ポリマー層であり得る第1の層及び第2の層を含む。
図22は、多層光学フィルム2200の例示的な光学繰り返し単位(ORU)の概略的斜視図である。
図22は、多層光学フィルム2200の2層のみを示すが、フィルム2200は、1つ以上の連続的なパケット又は積層体に配置された数十又は数百のそのような層(複数の層)を含み得る。フィルム2200は、個別のミクロ層2202、2204を含み、ここで「ミクロ層」とは、十分に薄く、そのような層の間の複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受け、多層光学フィルムに、所望の反射又は透過特性をもたらすような層を指す。ミクロ層2202、2204は合わさることで、多層積層体の1つの光学繰り返し単位(ORU)を表すことができる。ORUとは、積層体の厚さにわたりある繰り返しパターンで繰り返す、層の最小の集合である。隣接するマイクロ層の境界面で一部の光が反射されるように、これらのマイクロ層は異なる屈折率特性を有する。紫外、可視、又は近赤外波長で光を反射するように設計された光学フィルムの場合、各ミクロ層は、典型的に、約1マイクロメートル未満の光学厚さ(すなわち、物理的厚さに、該当する屈折率を乗じたもの)を有する。しかしながら、望ましい場合、フィルムの外側表面のスキン層、又は、フィルム内に配置されミクロ層のパケットを分離させる保護境界層(PBL)のようなより厚い層を含むこともできる。いくつかの実施形態では、本明細書の光学フィルムには、ミクロ層の単一のパケット又は積層体のみが含まれている。
【0117】
複数のミクロ層のうちの1つ(例えば、
図22のミクロ層2202、又は
図23の「A」層)の、偏光した光に関する、主たるx軸、y軸、及びz軸に沿った屈折率は、それぞれn1x、n1y、及びn1zである。相互に直交するx軸、y軸、及びz軸は、例えば、材料の誘電テンソルの主方向に対応し得る。多くの実施形態において、かつ議論の都合上、種々の材料の主方向は一致しているが、一般にはそうである必要はない。隣接するミクロ層(例えば、
図22のミクロ層2204、又は
図23の「B」層)の、同じ軸に沿った屈折率は、それぞれ、n2x、n2y、n2zである。これらの層の間の屈折率の差は、x方向に沿ったΔnx(=n1x-n2x)、y方向に沿ったΔny(=n1y-n2y)、及びz方向に沿ったΔnz(=n1z-n2z)である。これらの屈折率差の性質は、フィルム内(又は当該フィルムの所与の積層体内)のミクロ層の数及びこれらの厚さ分布と組み合わされて、フィルムの(又は所与のフィルムの積層体の)反射特性及び透過特性を制御する。例えば、隣接するミクロ層が、1つの面内方向に沿って大きな屈折率不整合(Δnxが大)を有し、直交する面内方向に沿って小さな屈折率不整合(Δny≒0)を有する場合には、フィルム又はパケットは、垂直入射光に対する反射偏光子として作用し得る。波長が反射偏光子又は偏光依存性部分反射体の反射帯域内にある場合、反射偏光子又は偏光依存性部分反射体は、通過軸又は第1の軸と呼ぶ場合のある1つの面内軸に沿って偏光された垂直入射光を比較的強く透過し、遮断軸又は第2の軸と呼ぶ場合のある直交する面内軸に沿って偏光された垂直入射光を比較的強く反射する、光学体であると考えることができる。
【0118】
所望の場合には、z軸に沿った偏光に関する、隣接するミクロ層の間の屈折率の差(Δnz)も、斜めに入射する光のp偏光成分の所望の反射特性を実現するように調整することができる。斜めの入射角における、p偏光の軸上に近い反射率を維持するため、ミクロ層同士の間のz-屈折率の不整合Δnzは、最大面内屈折率差Δnxよりも実質的に小さく、すなわち|Δnz|≦0.5*|Δnx|となるように、制御することができる。代替として、|Δnz|≦0.25g*|Δnx|である。ゼロ又はゼロに近い大きさのz-屈折率不整合は、p偏光に対する反射率が入射角の関数として一定又はほぼ一定である、ミクロ層の間の境界面を与える。更に、z-屈折率不整合Δnzは、面内屈折率差Δnxと比較して反対の極性を有するように、例えばΔnx>0であるときΔnz<0であるように、制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光に対する反射率が、入射角の増加とともに増加する境界面を与える。Δnz>0である場合、p偏光の反射率は、入射角と共に低下する。上記の関係はまた、Δnz及びΔnyを含む関係についても当然該当し、これは例えば、(通過軸が垂直入射において有意な反射率を有する部分偏光フィルムなどの)2つの主要面内軸に沿って有意な反射率及び透過率が所望される場合である。
【0119】
図23の概略側面図では、複数のORUが見えるように、多層光学フィルム2310の、より多くの内部層が示されている。フィルムは局部的なx-y-zデカルト座標と関連して図示されており、フィルムはx及びy軸と平行に延び、z軸はフィルム及びその構成層と垂直であり、フィルムの厚さ軸と平行である。
【0120】
図23において、ミクロ層は、「A」又は「B」としてラベル付けされ、「A」層はある材料から構成され、「B」層は、異なる材料から構成され、これらの層は、図示するように、光学繰り返し単位又はユニットセルORU1、ORU2、...ORU6を形成するように、交互配置にて積層されている。いくつかの実施形態では、全体がポリマー材料から構成される多層光学フィルムは、高反射率が所望される場合、6個よりもはるかに多くの光学繰り返し単位を含む。他の実施形態では、例えば、ミクロ層の少なくともいくつかが無機材料を含む場合、わずか6層又は8層のミクロ層を使用してもよい。多層光学フィルム2310は、実質的により厚い層2312を有するものとして示され、この層は、外側スキン層、又は図に示すミクロ層の積層体をミクロ層の別の積層体若しくはパケット(それが存在する場合には)、又は基材層から分離し得る、保護境界層(「PBL」、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照)を表し得る。多層光学フィルム2310は、反対側にある第1の面2315及び第2の面2317を有する単一の積層体2313を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、より厚い層2312は、光学積層体によって提供される強め合う干渉及び弱め合う干渉に有意に寄与するには厚過ぎるという意味で、光学的に厚い。いくつかの実施形態では、光学的に厚い層は、少なくとも1マイクロメートル、又は少なくとも2マイクロメートル、又は少なくとも3マイクロメートル、又は少なくとも5マイクロメートルである、物理的厚さ及び光学厚さのうちの少なくとも1つを有する。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイで使用される円偏光子は、観視角に対する色均一性を改善するために、直線吸収偏光子とリターダとの間に配設された本明細書の部分反射体を含む。
【0122】
いくつかの場合において、所与の積層体又はパケットのミクロ層は、1/4波積層体に対応する厚さ及び屈折率値を有することができる。すなわち、等しい光学厚さの2つの隣接するミクロ層をそれぞれ有するORUに構成され、そのようなORUは、波長λが光学繰り返し単位の全体の光学厚さの二倍である、建設的干渉光により反射するのに有効である。構成体の「光学厚さ」は、物理的厚さに屈折率をかけた値を指す。偏光依存性部分反射体の場合、光学厚さを決定する際に使用される屈折率は、反射帯域がより強く反射する部分反射体の軸に沿った屈折率である(例えば、反射偏光子の遮断軸)。各ORU内の2つの隣接するミクロ層が同等の光学厚さを有する1/4波積層体は、0.5又は50%の「f比」を有するものとされる。これに関して「f比」は、構成層「A」の光学厚さと完成した光学繰り返し単位の光学厚さとの比を指し、ここで、構成層「A」は、構成層「B」より高い屈折率を有すると仮定される。層「B」がより高い屈折率を有する場合、「f比」は、構成層「B」の光学厚さと完成した光学繰り返し単位の光学厚さとの比を指す。50%のf比を使用することが、しばしば望ましいと見なされる。これは、ミクロ層積層体の1次(主)反射帯域の反射能を最大化するからである。しかし、50%のf比は、2次(第2の高調波)の反射帯域(及びより高い偶数次)を抑制又は排除する。このことはまた多くの場合、多くの用途において望ましいと考えられるが、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、所望の色出力を達成する際に更なる融通性をもたらすために主反射帯域の第2の高調波を利用できるため、用途によっては2次反射帯域を抑制することが望ましくない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、青色波長範囲における反射をもたらすために、第2の高調波が使用される。更に、いくつかの実施形態によれば、反射帯域が比較的低い反射率を有することが望ましい場合がある。この場合、所望の反射率を提供するために、層の総数及び光学繰り返し単位中の層間の屈折率の差に加えて、より小さいf比(又は1により近いf比)を選択することができる。主反射帯域の相対反射能及びf比の関数としての主反射帯域の高調波の相対反射能は、例えば、米国特許第9,279,921号(Kivelら)に記載されており、これは、本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
いくつかの実施形態では、f比は、0.06、若しくは0.1、若しくは0.2~0.4の範囲内、又は、0.6~0.8、若しくは0.9、若しくは0.94の範囲内である。他の実施形態では、f比は、例えば、0.4~0.6の範囲にある。
図23の実施形態では、「A」層は、「B」層よりも全体的に薄いものとして図示されている。図示されている各光学繰り返し単位(ORU1、ORU2など)は、その構成層「A」及び「B」の光学厚さの合計と等しい光学厚さ(OT1、OT2など)を有し、各光学繰り返し単位は、その波長λがORUの全体的な光学厚さの2倍である光の1次反射を提供する。
【0124】
妥当な数の層により所望の反射率を達成するために、隣接するミクロ層は、x軸に沿って偏光された光に関して、例えば、少なくとも0.05、又は少なくとも0.1、又は少なくとも0.15の屈折率の差(|Δnx|)を呈することができる。隣接するミクロ層は、y軸に沿った偏光に対する屈折率(|Δny|)の差がより小さい場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、|Δny|は0.04以下、又は0.02以下、又は0.01以下である。Δいくつかの実施形態では、隣接するミクロ層は、z軸に沿った屈折率の整合又は不整合を呈することがあり(Δnz=0、又は|Δnz|が大)、この不整合は、面内屈折率不整合(単数又は複数)と同じ又は反対の極性又は符号であり得る。斜めに入射する光のp偏光成分の反射率が入射角の増加に伴って増加するか、減少するか、又は同じままであるかは、そのようなΔnzの調整によって制御することができる。屈折率及び屈折率差は、固定基準波長(例えば、532nm、又は550nm、又は632nm)で指定してもよく、又は、各光学繰り返し単位に対して、その光学繰り返し単位が反射するように構成されている波長で指定してもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、光学積層体内の光学繰り返し単位の総数は、少なくとも4個、又は少なくとも10個、又は少なくとも20個、又は少なくとも25個、又は少なくとも30個、又は少なくとも35個、又は少なくとも40個である。いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位の総数は、300個以下、又は200個以下、又は180個以下、又は160個以下、又は150個以下である。より多数の光学繰り返し単位を、より小さい(又は1により近い)f比を有する実施形態で使用することができ、より少数の光学繰り返し単位を、0.5に近いf比を有する実施形態で使用することができる。各交互層がポリマーである場合、多数の光学繰り返し単位が典型的には利用され、少なくとも高屈折率層(例えば、
図22のミクロ層2202、又は
図23の「A」層)が無機である場合、より少数の光学繰り返し単位が典型的には利用される。いくつかの実施形態では、26以下、又は20以下のミクロ層が利用される。
【0126】
多層光学フィルムの少なくとも1つのパケット中のミクロ層のうちの少なくともいくつかは、複屈折性、例えば、一軸複屈折性のものであってよい。いくつかの場合では、各ORUは、1つの複屈折性ミクロ層と、等方性であるか又はもう一方のミクロ層に比べて低い程度の複屈折性を有する第2ミクロ層とを含んでもよい。別の場合において、各ORUは、2つの複屈折性ミクロ層を含んでもよい。
【0127】
多層光学フィルムは、任意の好適な光透過性材料を用いて製造できるが、多くの場合、低吸収性ポリマー材料を使用することが有益である。そのような材料により、可視波長及び赤外波長におけるミクロ層積層体の吸収率は、小さく又は無視できる程度にすることができ、任意の所与の波長、並びに任意の特定の入射角及び偏光状態における積層体(又はそれが一部である光学フィルム)の反射率及び透過率の合計は、近似的に100%、すなわち、R+T≒100%、又はR≒100%-Tとなる。例示的な多層光学フィルムは、ポリマー材料から形成され、共押出成形、キャスティング、及び配向工程を用いて作製することができる。米国特許第5882774号(Jonzaら)「Optical Film」、米国特許第6179948号(Merrillら)「Optical Film and Process for Manufacture Thereof」、米国特許第6783349号(Neavinら)「Apparatus for Making Multilayer Optical Films」、及び特許出願公開第2011/0272849号(Neavinら)「Feedblock for Manufacturing Multilayer Polymeric Films」、を参照されたい。多層光学フィルムは、前述の参照文献のいずれかに記載されているポリマーの共押出によって形成することができる。様々な層のポリマーを、同様の流動学的特性を有するように、例えば融解粘度を有するように選択することができ、それによりこれらのポリマーは、有意な流れの乱れを伴うことなく共押出することができる。押出条件は、それぞれのポリマーを、供給ストリーム又は溶融ストリームとして連続的かつ安定したやり方で適切に供給、溶融、混合、及びポンプ移送するように選択される。溶融ストリームの各々を形成し、維持するために使用される温度は、温度範囲の下限で凍結、結晶化又は過度な圧力低下を回避し、温度範囲の上限で材料劣化を回避する範囲内で選択してもよい。
【0128】
要約すれば、作製方法は、(a)完成フィルムに使用される第1のポリマー及び第2のポリマーに対応する樹脂の少なくとも第1のストリーム及び第2のストリームを提供する工程と、(b)好適なフィードブロックを使用して、第1のストリーム及び第2のストリームを複数の層に分割する工程であって、例えば、フィードブロックが、(i)第1の流れチャネル及び第2の流れチャネルを含む勾配プレートであって、第1のチャネルが流れチャネルに沿って第1の位置から第2の位置まで変化する断面積を有する、勾配プレートと、(ii)第1の流れチャネルと流体連通する第1の複数の導管、及び第2の流れチャネルと流体連通する第2の複数の導管を有する供給管プレートであって、各導管がそれ自体のそれぞれのスロットダイに供給し、各導管が第1の端部及び第2の端部を有し、導管の第1の端部が流れチャネルと流体連通し、導管の第2の端部がスロットダイと流体連通する、供給管プレートと、(iii)任意選択的に、上記導管の近位に位置する軸方向のロッドヒータと、を含む、ものである、分割する工程と、(c)複合ストリームを押出ダイに通過させて、多層ウェブを形成する工程であって、各層が、隣接する層の主表面に概ね平行である、多層ウェブを形成する工程と、(d)多層ウェブを、キャスティングホイール又はキャスティングドラムと呼ばれることもあるチルロール上にキャストして、キャスト多層フィルムを形成する工程と、を含み得る。このキャストフィルムは、完成フィルムと同じ数の層を有してもよいが、キャストフィルムの層は、典型的には、完成フィルムの層よりもはるかに厚い。更に、キャストフィルムの層は、典型的には全て等方性である。広い波長範囲にわたって反射率及び透過率の低周波変動が制御された多層光学フィルムは、軸ロッドヒータの熱領域制御によって実現することができ、例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい。
【0129】
多層ウェブがチルロール上で冷却された後、これを伸張又は延伸して、最終的な又はほぼ最終的な多層光学フィルムを製造することができる。伸張又は延伸は、所望の最終的な厚さになるように層を薄化し、層の少なくとも一部が複屈折性となるように層を方向付ける、という2つの目標を達成する。方向付けること又は延伸は、クロスウェブ方向に沿って(例えばテンターにより)、ダウンウェブ方向に沿って(例えばレングスオリエンタ(length orienter)により)、又はそれらの任意の組み合わせで、同時に又は連続的に達成することができる。1つの方向のみに沿って延伸される場合、延伸は「非拘束」(フィルムは延伸方向に直角な面内方向に寸法的に緩和可能である)であってもよく、又は「拘束」(フィルムが拘束され、延伸方向に直角な面内方向にて寸法的に緩和可能ではない)であってもよい。延伸は、得られるフィルムが偏光依存反射率を有するように、直交する面内方向間で非対称であり得る。いくつかの実施形態では、フィルムはバッチプロセスで延伸してもよい。いずれの場合でも、後続の又は並行的な引き伸ばしの低減、応力又は歪みの平衡、ヒートセット、及び他の処理操作もフィルムに適用することができる。
【0130】
フィルムは、多数のミクロ層から構成される1つ以上のフィルムのセットを共押出して、典型的には交互となった等方性層及び複屈折層である、一般にパケットと呼ばれるものを構成することによって形成できる。パケットは、典型的には、ロールプロセスで形成され、クロスウェブ寸法は、一般的に横断方向(transverse direction、TD)とラベル付けされ、ロールの長さに沿った寸法は、機械方向(machine direction、MD)と呼ばれる。更に、パケットは、形成プロセスにおいて、いわゆるテンタリングプロセス中に複屈折層に影響を及ぼすように慎重に制御された温度ゾーン内で、機械方向及び横断方向に慎重に延伸してもよい。更に、テンタリングプロセスにより、パケットが形成される際に、その横断方向の直線的な延伸又は放物線状の延伸のいずれかを提供できる。一般に(「トーイン(toe-in)」と呼ばれる制御された内向きの直線的縮退を使用して、冷却ゾーン中の制御された収縮を可能にすることができる。このプロセスは、所望の光学効果のために例えば30~600の層、又はそれ以上を提供するように使用することができ、必要に応じて外部の「スキン」層も含んでよい。
【0131】
本明細書の部分反射体は、典型的には、赤色及び/又は近赤外の主(1次)反射帯域、並びに任意選択的に、部分的に青色の第2の高調波(2次)帯域を有する。m次の帯域の各波長は、1次の帯域の波長の1/m倍である。したがって、より高次の帯域の位置及び帯域幅は、1次の帯域の位置及び帯域幅によって決定される。主反射帯域及び第2の高調波の所望の波長範囲を達成するために、主反射帯域は好適な波長範囲(例えば、好適な帯域幅を有する赤外反射帯域)にあることが望ましい。このことは、厚さプロファイルを調整することにより、すなわち、z軸又はフィルムの厚さ方向に沿った厚さ勾配に従ってORUの光学厚さを調整することにより、達成することができ、それにより、光学繰り返し単位の光学厚さは、積層体の一方の側(例えば上部)から積層体の他方の側(例えば下部)へと進むにつれて、増加するか、減少するか、又は他の何らかの関数関係に従う。厚さプロファイルはまた、主反射帯域の勾配及び/又は帯域端の鋭さを調節するように調整することもできる。
【0132】
図24Aは、光学繰り返し単位からなる単一の積層体を有する光学フィルムの層厚さプロファイルの概略図である。この場合では、40個の光学繰り返し単位が含まれており、厚さは、層にわたって線形に変化する。一部の実施形態では、層厚さプロファイルは、実質的に連続している。層厚さプロファイルは、良好に近似(例えば、10パーセントの誤差内、又は5パーセントの誤差内、又は3パーセントの誤差内)する場合、実質的に連続していると説明することができ、任意の内部光学繰り返し単位の光学厚さは、内部光学繰り返し単位のいずれかの側で光学繰り返し単位の光学厚さから線形外挿することによって決定することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位は、光学積層体の第1の面から積層体の反対側の第2の面まで実質的に連続的に変化する光学厚さを有する。厚さの変化は、例えば、米国特許第6,157,490号(Wheatleyら)に記載されているように鋭い帯域端を提供するように選択してもよく、又は、高反射率から低反射率へのより緩やかな遷移を提供するように選択してもよい。いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位の光学厚さは、最小値と最大値との間で変化し、最大値から最小値を引いた値が最大値の35パーセント以下、最大値の5%以上である。いくつかの実施形態では、光学厚さは、単一の積層体の第1の面から単一の積層体の反対側の第2の面へと単調に増加する。単一の積層体内の垂直(
図23のz座標)位置の関数としての単一の積層体内の光学繰り返し単位の光学厚さのプロットである
図24Bに示すように、いくつかの実施形態では、光学厚さは、単一の積層体の位置S
1での第1の面での光学繰り返し単位2481から、位置P
1での積層体内の光学繰り返し単位2483(最小光学厚さT1を有する)へと単調に減少し、光学繰り返し単位2483から、単一の積層体の位置S
2での第2の面と光学繰り返し単位2483との間に配設された位置P
2での単一の積層体内の光学繰り返し単位2485(最大光学厚さT2を有する)へと単調に増加し、光学繰り返し単位2485から、単一の積層体の位置S
2での第2の面へと単調に減少する。いくつかの実施形態では、第1の光学繰り返し単位と第2の光学繰り返し単位との間の隔離距離(P
2-P
1)は、単一の積層体の厚さ(S
2-S
1)の少なくとも半分又は少なくとも70%である。他の可能な層プロファイルとしては、スマイルプロファイル(エッジより積層体の中央においてより薄い)及びフラウンプロファイル(エッジより積層体の中央においてより厚い)が挙げられる。
【0134】
いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位の厚さの変化は、主反射帯域の所望の勾配を与えるように選択される。例えば、主反射帯域は、より高い波長でより反射性であり、より低い波長で反射性が低くてもよく、又はより高い波長でより反射性が低く、より低い波長でより反射性が低くてもよく、又は主反射帯域において実質的に一定の反射率を有してもよい。反射帯域の勾配を調整することにより、入射角に対する反射率を調整し、それによってディスプレイの出力色を視野角で調節するための、更なる融通性を提供することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、波長λ1<λ2<λ3の場合に、部分反射体は、第1の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、λ1~λ3の波長に関して少なくとも85%の透過率を有し、部分反射体は、直交する第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、λ2及びλ3の帯域端を有する第1の反射帯域を有する。いくつかの実施形態では、部分反射体は、その光学繰り返し単位のf比、第2の軸に沿った第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の屈折率差、及び光学積層体内の光学繰り返し単位の総数が、第1の反射帯域が第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、例えば15%~97%、又は15%~95%、又は15%~90%、又は20%~85%、又は20%~75%、又は25%~60%の平均反射率を有するようなものとなっている。いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位は、(λ3-λ2)/(λ3+λ2)が、少なくとも0.03、又は少なくとも0.05、又は少なくとも0.07、かつ、0.25以下、又は0.02以下、又は0.015以下(例えば0.05~0.2の範囲内)であるような、光学厚さの範囲を有する。例えば、いくつかの実施形態では、光学繰り返し単位は、光学積層体の第1の面(例えば、位置S1)に近接した最小光学厚さT1、及び光学積層体の反対側の第2の面(例えば、位置S2)に近接する最大光学厚さT2を有し、ここで、(T2-T1)/(T2+T1)は、0.05~0.2の範囲内にあるか、又は(λ3-λ2)/(λ3+λ2)に関して記載するいずれかの範囲内にある。光学積層体内の位置は、第2の面よりも第1の面に近い場合に、光学積層体の第1の面に近接していると説明することができる。同様に、光学積層体内の位置は、第1の面よりも第2の面に近い場合に、光学積層体の第2の面に近接していると説明することができる。いくつかの実施形態では、T2は少なくとも300nm、又は少なくとも325nm、又は少なくとも350nm、又は少なくとも355nm、又は少なくとも360nm、又は少なくとも375nmである。いくつかの実施形態では、T2は1250nm以下、又は800nm以下、又は500nm以下、又は450nm以下である。
【0136】
波長及び偏光に依存する部分反射体又は部分反射偏光子の透過率は、
図25に概略的に示されている。図示した実施形態では、通過状態(光が第1の(通過)軸に沿って偏光されている偏光状態)における垂直入射光に対する透過率2510は、例えば、少なくとも85%、又は少なくとも90%であり得る値Tpを有する。いくつかの実施形態では、垂直入射光に対する通過状態での透過率は、少なくともλ1~λ3の波長範囲にわたって、少なくとも85%、又は少なくとも90%である。遮断状態(光が第2の(遮断)軸に沿って偏光されている偏光状態)での透過率2520は、第1の反射帯域2501及び第2の反射帯域2502を呈する。いくつかの実施形態では、第1の反射帯域2501は主反射帯域であり、第2の反射帯域402は、主反射帯域の第2の高調波である。第1の反射帯域2501は、短波長帯域端がλ2であり長波長帯域端がλ3である。いくつかの実施形態では、λ2は、部分反射体の光学積層体の最小光学厚さT1の約2倍であり、λ3は、光学積層体の最大光学厚さT2の約2倍である。第2の反射帯域2502は、短波長帯域端がλ5であり長波長帯域端がλ4である。第1の反射帯域2501が主反射帯域であり第2の反射帯域2502が主反射帯域の第2の高調波である実施形態では、λ5は約λ2/2であり、λ4は約λ3/2である。いくつかの実施形態では、第1の反射帯域2501は近赤外波長を含む(すなわち、λ2~λ3の範囲内に少なくとも1つの700nm~2500nmの波長が含まれる)。いくつかの実施形態では、第2の反射帯域2502は可視波長を含む(すなわち、λ5~λ4の範囲内に400nm~700nm(例えば400nm)の少なくとも1つの波長が含まれる)。他の実施形態では、λ4は400nm未満であってもよい。いくつかの実施形態では、λ4は500nm以下、又は450nm以下、又は430nm以下、又は410nm以下である。いくつかの実施形態では、λ4は400nm~500nmの範囲内にある。
【0137】
いくつかの実施形態では、第1の反射帯域は、少なくとも700nm、又は少なくとも710nm、又は少なくとも720nm、又は少なくとも750nmの帯域端λ3を有する、主反射帯域である。いくつかの実施形態では、帯域端λ3は2500nm以下、又は1500nm以下、又は1000nm以下、又は900nm以下である。例えば、いくつかの実施形態では、λ3は700nm~2500nm、又は710nm~1000nm、又は720nm~900nm、又は750nm~900nmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、帯域端λ2は少なくとも600nm、又は少なくとも610nm、又は少なくとも620nmである。いくつかの実施形態では、λ2は750nm以下、又は710nm以下、又は700nm以下、又は690nm以下、又は680nm以下である。例えば、いくつかの実施形態では、λ2は600nm~700nmの範囲内、又は610nm~690nmの範囲にある。いくつかの実施形態では、λ1は480nm以下、又は450nm以下、又は420nm以下、又は400nm以下である。いくつかの実施形態では、λ1は少なくとも380nm、又は少なくとも400nmである。例えば、いくつかの実施形態では、λ1は380nm~480nmの範囲内、又は400nm~450nmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、λ1は400nmである。
【0138】
いくつかの実施形態では、部分反射体の第1の反射帯域は、例えば900nm~980nm(例えば、940nm)の波長λcを中心とし、0.05≦(λ3-λ2)/(λ3+λ2)≦0.2を満たす。部分反射体は、波長λcに近い波長を、入射角による帯域シフトによって、ある入射角では反射するが別の入射角では反射しないように適合させてもよい。このような部分反射体は、例えば、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、センサシステムにおいて有用である。
【0139】
第1の反射帯域2501は、第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、Tb1である平均透過率を有する。第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対する対応する平均反射率Rb1は、S-Tb1であり、ここでSは平均反射率と平均透過率の合計であり、これは表面反射及び吸収を無視すれば約100%であり得る。いくつかの実施形態では、反射率は、反射帯域の帯域幅にわたって一定ではない。帯域にわたる平均反射率は、帯域における波長に対する反射率の積分値を、帯域の幅(例えば、λ3-λ2)で割ったものとして表すことができる。いくつかの実施形態では、Rb1は15%よりも大きい、又は20%よりも大きい、又は25%よりも大きい、又は30%よりも大きい。いくつかの実施形態では、Rb1は97%未満、又は95%未満、又は90%未満、又は75%未満、又は60%未満である。例えば、いくつかの実施形態では、Rb1は15%~90%、又は20%~75%、又は25%~60%である。同様に、いくつかの実施形態では、Tb1は10%~85%、又は25%~80%、又は40%~80%である。第2の反射帯域402は、第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対して、Tb2である平均透過率を有する。第2の軸に沿って偏光された垂直入射光に対する対応する平均反射率Rb2は、S-Tb2である。Rb2は、Rb1について記載されたいずれの範囲内にあってもよい。同様に、Tb2は、Tb1について記載されたいずれの範囲内にあってもよい。Rb2は、部分反射体の光学積層体のf比に応じて、Rb1より大きくても、小さくても、又はほぼ等しくてもよい。
【0140】
図26は、仮想的な部分反射体の透過スペクトルの概略的なグラフである。この図では、透過率が波長λに対してナノメートル単位でプロットされ、波長軸は400~1000nmの範囲にわたって延びている。曲線301は、遮断軸に沿って偏光された垂直入射の光に対する、測定された透過率を表し得る。図示の反射体は、スペクトルの赤色及び近赤外領域の一部内の狭帯域内の光を選択的に遮断するが、このことは、曲線301の反射帯域301aの透過率が比較的低いことにより明示される。
【0141】
曲線301の関連する特徴を定量化するために、
図26において、曲線301のベースライン値B、曲線301のピーク値P(この場合ピーク値Pは反射帯域301aの透過最小値に相当し、点p3で示される)、及びPとBとの中間である曲線301の中間値Hを特定している。曲線301は、点p1及びp2において値Hと交差する。これらの点は、反射帯域301aの短波長帯域端307及び長波長帯域端309それぞれにあり、短波長帯域端波長λ2及び長波長帯域端波長λ3を画定する。短波長帯域端波長及び長波長帯域端波長は、対象とする2つの他のパラメータである、λ3-λ2に等しい反射帯域301aの幅(半値全幅又は「FWHM」)と、(λ2+λ3)/2に等しい反射帯域301aの中心波長λcとを算出するために使用することができる。中心波長λcは、反射帯域301aがどの程度対称又は非対称であるかに応じて、反射帯域301aのピーク波長(点p3を参照)と同じである場合も異なる場合もあることに留意されたい。
【0142】
光学要素の透過率は一般に、(所与の波長、入射方向などの光に関して)透過光強度を入射光強度で割ったものを指すが、「外部透過率」又は「内部透過率」という用語で表される場合もある。光学要素の外部透過率は、周囲が空気であり、かつ要素の前方の空気/要素界面のフレネル反射に関して、又は要素の後方の要素/空気界面のフレネル反射に関していかなる補正もされない場合の、その光学要素の透過率である。光学要素の内部透過率は、その前面及び後面のフレネル反射を除去した場合の、その要素の透過率である。前方及び後方のフレネル反射を除くことは、計算によって(例えば、適切な関数を外部透過スペクトルから引き算することによって)、又は実験によってのいずれかで行うことができる。多くのタイプのポリマー及びガラス材料では、フレネル反射は、2つの外部表面の各々で約4~6%(法線入射角又はほぼ法線入射角に対して)であり、これにより、外部透過率が、内部透過率と比べ約10%下方にシフトする。
図26は、これらの透過率のうちどちらが使用されるかについては特定していないので、一般に、内部又は外部透過率のどちらに適用してもよい。本明細書で内部又は外部を指定せずに透過率に言及する場合、文脈により特に明記しない限り、透過率は、外部透過率を指すものと見なしてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、ポリマー多層光学フィルムは、少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%の(例えば
図26の点p3における)最大反射率(あるいは、85%未満、又は80%未満、又は75%未満、又は70%未満の最小透過率)を有する反射帯域を有し得る。場合によっては、光学フィルムを通る内部透過率は、反射帯域のいずれかの側の領域において少なくとも80%であってもよく、又は、反射帯域のいずれかの側の最小透過率よりも少なくとも20%高くてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、光学フィルムは、反射帯域内で少なくとも40%未満の最小内部透過率を有してもよく、反射帯域の短波長帯域端よりも10nm短い、若しくは20nm短い、若しくは30nm短い波長において、少なくとも80%の内部透過率を有してもよく、かつ/又は、光学フィルムは、反射帯域の長波長帯域端よりも10nm長い、若しくは20nm長い、若しくは30nm長い波長において、少なくとも80%の内部透過率を有してもよい。
【0144】
本明細書の部分反射体は、ディスプレイ用途において有用であり、部分反射体を組み込んだOLEDディスプレイにおいて色シフトの低減をもたらすことが見出されている。いくつかの実施形態では、部分反射体は、円偏光子内で直線吸収偏光子とリターダとの間に配設される、色補正部分反射体である。
図27は、直線吸収偏光子2752と、部分反射体2700と、リターダ2756とを含む、円偏光子2750の概略断面図である。部分反射体2700は、本明細書に記載される任意の部分反射体であってもよい。部分反射体2700は、複数の交互のポリマー層を含む光学積層体2713を含み、光学的に厚い層2712及び2714を含む。円偏光子2750を、OLEDディスプレイパネルの光出力面上に配設することができ、リターダ2756はディスプレイパネルに面している。
【0145】
いくつかの実施形態では、部分反射体2700は、直線吸収偏光子2752とリターダ2756との間に配設された反射偏光子であって、反射偏光子は、600nm以上の波長にて短波長帯域端(例えば、
図25のλ2)を有する主反射帯域を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、部分反射体2700は、直線吸収偏光子2752とリターダ2756との間に配設された反射偏光子であり、反射偏光子は、複数の光学繰り返し単位を含む光学積層体を含み、各光学繰り返し単位は第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の屈折率差がΔnyであり、直交する第2の軸に沿った第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の屈折率差がΔnxである。いくつかの実施形態では、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下である。いくつかの実施形態では、第2の軸に沿った屈折率に関して、光学繰り返し単位は、光学積層体の第1の面に近接する最小光学厚さT1、及び光学積層体の反対側の第2の面に近接する最大光学厚さT2を有する。T2及び/又は(T2-T2)/(T2+T2)は、本明細書の他の箇所に記載されるいずれの範囲内にあってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、T2は少なくとも300nm、又は少なくとも350nm、及び/又は1250nm以下である。
【0147】
図28は、部分反射体の通過軸である部分反射体の第1の軸2833、及び直線吸収偏光子の通過軸2843の概略図である。通過軸2843と第1の軸2833との間の角度θが示されている。角度θが20度未満である場合、通過軸2843が第1の軸2833と実質的に整列されているものと説明できる。いくつかの実施形態では、角度θは例えば、10度未満、又は5度未満である。リターダの進相軸2853も図示されている。進相軸2853は、直線吸収偏光子の通過軸2843と斜角φをなす。いくつかの実施形態では、斜角φは、40~50度である。いくつかの実施形態では、角度φは、約45度である。
【0148】
いくつかの実施形態では、リターダは複数のリターダ層を含む。複数のリターダ層を利用して、波長から独立した又は波長にわずかにしか依存しない波の位相差(例えば、nm単位の位相差をnm単位の波長で割ったもの)を得ることができる。いくつかの実施形態では、400nm~700nmの範囲内の少なくとも1つの波長に関して、リターダは波長の1/4の位相差を有する。ある実施形態では、リターダは1つの波長に対して波長の1/4の位相差を有し、またある実施形態では、リターダは2つ以上の波長に対して波長の1/4の位相差を有する。いくつかの実施形態では、リターダは1/4波とは異なる位相差を有する。例えば、(n+1/4)λの位相差を使用することができる。
【0149】
円偏光子が円偏光子として機能することを可能にする任意のリターダを使用することができる。いくつかの実施形態では、リターダは複数のリターダ層を含み、複数のリターダ層のうちの第1のリターダ層は第1の進相軸を有し、複数のリターダ層のうちの第2のリターダ層は第2の進相軸を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の進相軸は平行であり、いくつかの実施形態では、第1及び第2の進相軸は平行ではない。非平行な進相軸は、円偏光子の無色性を改善するために、円偏光子のリターダに使用してもよい。第1のリターダ層と第2のリターダ層の進相軸間の角度は、任意の好適な角度であってもよい。いくつかの実施形態では、この角度は約0度(例えば、-5度~5度)である。他の実施形態では、この角度は0度~45度、又は45度~90度である。
【0150】
色補正構成要素として有用な部分反射体の更なる詳細は、例えば、米国特許仮出願第62/566654号(Haagら)に記載されている。
【0151】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、色補正フィルムを含む。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、発光ディスプレイパネルと円偏光子との間に配設される。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは複数のミクロ層を含み、各ミクロ層は、550nmにおいて、3つの直交屈折率の間に0.05以下の最大差を有する。各ミクロ層は、550nmにおける3つの直交屈折率の算術平均である平均屈折率を有する。いくつかの実施形態では、複数のミクロ層は、高屈折率ミクロ層と低屈折率ミクロ層との交互からなる層ペアとして構成され、各高屈折率ミクロ層の平均屈折率は、各低屈折率ミクロ層の平均屈折率よりも0.15~0.75だけ大きい。いくつかの実施形態では、層ペアの各々は、550nmにおいて150nm~550nmの光学厚さを有し、層ペアの少なくとも半分は、550nmにおいて275nm~400nm光学厚さを有する。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、垂直入射する非偏光可視光の、明所視的(photopically)に重み付けされた少なくとも80%を透過させるのに十分に少数のミクロ層を有し、色補正フィルムは、60°で入射する少なくとも1つの波長の非偏光光の少なくとも15%を反射させるのに十分なミクロ層を有する。明所視的に重み付けされた好適な関数は、CIE(1931)明所視光度関数
【数6】
である(V(λ)とも表される)。
【0152】
いくつかの実施形態では、交互層は有機(例えば、有機ポリマー)である。いくつかの実施形態では、交互層のうちの一方は有機であり、他方は無機である。他の実施形態では、交互層の両方が無機である。いくつかの実施形態では、色補正フィルムの複数のミクロ層の少なくともいくつかは、無機材料と有機材料との両方を含む。いくつかの実施形態では、色補正フィルムの複数のミクロ層の少なくともいくつかは、有機マトリックス中に分散された無機材料を含む。いくつかの実施形態では、無機材料は金属酸化物を含む。
【0153】
高分子電解質複数層(polyelectrolyte multilayer、PEM)コーティング又は静電的自己組織化(electrostatically self-assembled、ESA)コーティングとしても知られる層ごとのコーティングは、色補正フィルムに対して使用することができるコーティングの一種である。基材上に配設することができる複数のミクロ層は、「レイヤー・バイ・レイヤー自己集合プロセス」として一般的に参照される手法によって成膜された少なくとも1つの「2層構造層」を含む。このプロセスは、高分子電解質及び/又は無機酸化物粒子といったような逆極性に帯電したポリイオンの薄膜又はコーティングを静電的に組織化するために一般的に使用される。しかしながら、水素結合ドナー/アクセプタ、金属イオン/リガンド、共有結合部分といったような他の官能基を、フィルムの組織化のための原動力とすることができる。典型的には、この堆積プロセスは、一連の溶液又は槽への、表面電荷を有する基板の露出を含む。これは、液体槽中への基板の没入(ディップコーティングとも呼ばれる)、噴霧、スピンコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷、等々によって実現することができる。基材の極性とは逆極性の電荷を有する第1ポリイオン(例えば、高分子電解質バス)液体溶液に対して露出することにより、基材表面近傍の荷電種が迅速に吸着されることとなる。これは、濃度勾配を確立し、バルク溶液から表面へと、より多くの高分子電解質を引き寄せる。下層の電荷を遮蔽して基材表面の正味の電荷を反転させ得るほど十分なミクロ層が発達するまでは、更なる吸着が起こる。物質移動及び吸着が起こるためには、この露出時間は、典型的には、数秒間から数分間のオーダである。次に、基材は、第1ポリイオン(例えば、バス)液体溶液から取り出され、その後、一連の水洗バスに対して露出される。これにより、物理的に絡まっているような又は緩く結合しているような、すべての高分子電解質が除去される。このような濯ぎ用(例えば、バス)液体溶液に続いて、次に、基材は、第1ポリイオン(例えば、バス)液体溶液の極性とは逆極性の電荷を有した第2ポリイオン(例えば、高分子電解質バス又は無機酸化物ナノ粒子バス)液体溶液に対して露出される。基材の表面電荷が第2(例えば、バス)液体溶液の極性とは逆極性であることにより、再度、吸着が起こる。その後、第2ポリイオン(例えば、バス)液体溶液に対して引き続いての露出により、基材の表面電荷の反転が引き起こされる。後続する濯ぎを実施してサイクルを完了することができる。この一連のステップは、1つの「2層構造層」の成膜を形成するものと言われており、基材に対して更なる2層構造層を追加するために、必要に応じて繰り返すことができる。典型的には、1つのミクロ層を形成するために、複数の2層構造層が成膜される。
【0154】
適切なプロセスのいくつかの例は、米国特許第8,234,998号(Krogman氏ら)、米国特許出願公開第2011/0064936号(Hammond-Cunningham氏ら)、及び米国特許第8,313,798号(Nogueira氏ら)に記載されたものを含む。層ごとのコーティングプロセスを実行するための市販の装置は、STRATOSEQUENCE VI(nanoStrata Inc.,Tallahassee,FL)ディップコーティングロボット、及び、Agiltron,Inc.(Woburn,MA)から入手可能なSPALAS(Spray-Assisted Layer-by-Layer Assembly)コーティングシステム、を含む。
【0155】
基材上における層ごとのコーティングの厚さは、例えばスタイラス表面形状測定を含む当該技術分野において公知の一般的な方法によって決定することができる。層ごとのコーティングの厚さ及び屈折率は、例えば分光エリプソメトリ又はリフレクトメトリを含む当該技術分野において公知の一般的な方法によって決定することができる。層ごとのコーティングの多くは、成膜された2層構造層の数に対しては、一次関数的な厚さの増加を示すが、一方、他のものは、指数関数的な成長又は一次関数を超えた成長を示す。所与の層ごとの材料の組合せ(すなわち、ポリカチオンとポリアニオンとのペア)に関し、特定の組合せの条件(例えば、高分子電解質の濃度、コーティング溶液内におけるイオン強度、及び、コーティング溶液のpH)下において、いわゆる「成長曲線」(すなわち、2層構造層の数に対しての、厚さのプロット)が、一般的に作成される。低屈折率ミクロ層に関しては、材料の組み合わせは、典型的には、ポリマー製のポリカチオン(例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド)と、低屈折率のアニオン性無機酸化物ナノ粒子(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)と、を含む。高屈折率ミクロ層に関しては、材料の組み合わせは、典型的には、ポリマー製のポリカチオンと、高屈折率のアニオン性屈折率無機酸化物ナノ粒子(例えば、コロイド状ジルコニア又はコロイド状チタニア)と、を含む。
【0156】
水性媒体中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。水内における又は水-アルコール溶液内におけるシリカゾルは、LUDOX(E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.,Wilmington,DEによって製造されている)、NYACOL(Nyacol Co.,Ashland,MAから入手可能)、又は、NALCO(Nalco Chemical Co.,Naperville,ILによって製造されている)といったような商品名で市販されている。いくつかの有用なシリカゾルは、4ナノメートル(nm)~77nmの平均粒径を有したシリカゾルとして入手可能なNALCO1115、2326、1050、2327、及び2329である。他の有用なシリカゾルは、20ナノメートルの平均粒径を有したシリカゾルとして入手可能なNALCO1034aである。有用なシリカゾルは、5ナノメートルの平均粒径を有したシリカゾルとして入手可能なNALCO2326である。適切なコロイド状シリカの追加的な例は、米国特許第5,126,394号(Revis氏ら)に記載されている。
【0157】
様々な高屈折率の無機酸化物ゾルが市販されている。ジルコニアゾルは、Nalco Chemical Co.(Naperville,IL)から「Nalco 00SS008」という商標名で入手可能であり、Buhler AG(Uzwil,Switzerland)から「Buhler zirconia Z-WO sol」という商標名で入手可能であり、更に、Nissan Chemical America Corporation(Houston,TX)から「NANOUSE ZR」という商品名で入手可能である。酸化アンチモンによって被覆された酸化スズ及びジルコニアの混合物を含むナノ粒子分散体(RI~1.9)は、Nissan Chemical America Corporation(Houston,TX)から「HX-05M5」という商標名で市販されている。酸化スズナノ粒子分散体(RI~2.0)は、Nissan Chemical America Corp.から「CX-S501M」という商標名で市販されている。
【0158】
いくつかの実施形態では、無機酸化物ナノ粒子は、チタニアを含むか、又はチタニアから作られる。アナターゼ、ブルッカイト、ルチル、及び非晶質を含む様々な形態のチタニアを利用することができる。アナターゼ型チタニアのナノ粒子(5~15nm直径)分散体は、U.S.Research Nanomaterials(Houston,TX)から、15wt%の水性懸濁液として市販されている。TiO2ゾルは、また、酸性溶液又は塩基性溶液内に分散されたものとして、Ishihara Sangyo Kaisha Ltd.(Osaka,Japan)から入手可能である。チタニアは、pH約4~6において等電点を有しており、これにより、等電点よりも十分に大きなpHにおいては層ごとの自己組織化におけるポリアニオンとして使用することができ、また、等電点よりも十分に小さなpHにおいては層ごとの自己組織化におけるポリカチオンとして使用することができる。
【0159】
適切な高分子電解質は、ポリアリルアミン又はポリエチレンイミンといったようなポリカチオン性ポリマー(すなわち、ポリカチオン)を含む。適切なポリカチオン性ポリマーは、限定するものではないけれども、例えば、直鎖状の及び分岐状のポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリビニルアミン、キトサン、ポリアニリン、ポリアミドアミン、ポリ(ビニルベンジルトリアメチルアミン)、ポリ(ジアリル-ジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、及び、ポリ(メタクリロイルアミノ)プロピル-トリメチルアンモニウムクロライド、を含む。適切なポリアニオン性ポリマーは、限定するものではないけれども、ポリ(硫酸ビニル)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、硫酸デキストラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、NAFIONといったような、スルホン化されたテトラフルオロエチレンベースのフッ素化されたポリマー、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、を含む。
【0160】
色補正フィルムに対する目標設計に適合させるために、典型的にはガラス基材上における高屈折率材料と低屈折率材料との組み合わせに関して、成長曲線が作成される。シリコンウェハ又はポリマーフィルムといったような他の基材も、また、適用可能である。成長曲線により、所望の厚さに到達するのに必要な2層構造層の数を決定することができる。その後、色補正コーティングが、各材料の組み合わせに関して必要数の2層構造層を有するように作製され、そして、分光光度計を使用して、紫外/可視/近赤外領域での反射スペクトル及び/又は透過スペクトルが測定される。次に、両スペクトルが、目標設計に関する理論スペクトルと比較される。スペクトル同士が十分に似通っていない場合には、スペクトル同士がより緊密に適合するまで、異なる数の2層構造層が成膜される。高屈折率ミクロ層及び低屈折率ミクロ層の実際の厚さは、例えば断面を走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を使用して測定することにより、決定することができる。これに代えて、光学モデリングソフトウェアを使用して、ミクロ層の実際の厚さを決定することができる。多くの場合、基材によって影響を受けることによりコーティングの成長速度が異なるため、非理想的なものが存在する。これにより、2層構造層の数は、光学設計に対してより緊密に適合するように変更する必要があり得る。
【0161】
真空蒸着された薄膜は、色補正フィルムに対して使用し得る他の種類のコーティングである。高屈折率ミクロ層2202(例えば、
図22のミクロ層2202、又は
図23の「A」層)と、低屈折率ミクロ層2204(例えば、
図22のミクロ層2204、又は
図23の「B」層)との交互からなる複数のミクロ層は、米国特許第7,018,713号(Padiyathら)に記載されているように、ポリマー薄膜、無機薄膜、又はポリマー層と無機層とのハイブリッド組み合わせのいずれについても、従来の薄膜の真空蒸着技術によって作製することができる。ポリマー材料のタイプに応じて、様々な手法でフィルムを蒸着することができる。直接蒸着は、弱い分子間相互作用を有したポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレンといったようなポリマーに対して適用することができる。一般的に、ポリマー薄膜は、蒸着重合法により得ることができる。蒸着重合法においては、モノマー材料を蒸発させ、基材表面上における重合反応によってポリマー薄膜を作り出す。二官能性モノマーの共蒸着は、重縮合又は重付加を介した段階的な反応を引き起こし、これにより、ポリイミド及びポリ尿素といったようなポリマーからなる薄膜を得ることができる。この方法は、また、π共役ポリマーからなる薄膜を調製するためにも適用することができる。他の種類の蒸着重合においては、鎖付加反応を利用し、これにより、ビニルモノマー又はアクリルモノマーのラジカル重合を達成することができる。この方法は、より高い重合度が得られるという利点を有していると共に、多用途の分子設計を可能にするという利点を有している。表面において開始される蒸着重合法は、自己組織化された単一層(self-assembled monolayer、SAM)をモノマーの蒸着に対して組合せるものであって、基材表面に対して化学的に結合されたポリマー薄膜を成長させるための独自の方法である。PVDにおける無溶媒の特質は、ナノメートル厚さのフィルムの形成に際して、また、デバイス作製のために時に必要とされる複数層フィルムの形成に際して、都合がよいものである。
【0162】
高屈折率ミクロ層と低屈折率ミクロ層との交互からなる複数のミクロ層は、色補正フィルム内において変化する厚さを有し得る。いくつかの実施形態においては、複数のミクロ層は、最も薄い光学層ペア厚さから最も厚い光学層ペア厚さまで(例えば、2層ペア以下という例外を除いて)大まかに構成することができる。あるいはその逆に、複数のミクロ層は、最も厚い光学層ペア厚さから最も薄い光学層ペア厚さまで(例えば、2層ペア以下という例外を除いて)大まかに構成することができる。いくつかの実施形態においては、各層ペアの光学的厚さは、異なるものとされる。いくつかの実施形態においては、各層ペアの光学的厚さは、同じものとされる。いくつかの実施形態においては、非常に少ない層では、所望の反射帯域の様々な部分をカバーする各層ペアを有することによって、反射波長の幅を最大化する必要がある。しかしながら、いくつかの実施形態においては、非常に少ない層では、与えられた波長に対して2つ以上の層ペアを有することによって、あるいは、互いに対しての10nm以内に2つ以上の層ペアを有することによって、特定の反射波長の強度を最大化する必要がある。いくつかの実施形態においては、各層ペアの各々は、550nmにおいて150nm~550nmの光学的厚さを有している。いくつかの実施形態においては、層ペアの少なくとも半分は、550nmにおいて275nm~400nmの光学的厚さを有している。いくつかの実施形態においては、層ペアの少なくとも半分は、黄色の光、オレンジ色の光、又は赤色の光を中心とした反射帯域に対応する光学的厚さを有している。所望の層厚さの正確な調整及び構成は、ディスプレイの残部の構成、及び発光ディスプレイの白色点の特徴に依存し得る。
【0163】
色補正フィルムは、角度をシフトさせると、反射又は吸収に基づいて色の忠実度を向上させるので、それら性質の大きさと透過との間にトレードオフが存在する。いくつかの実施形態においては、透過を大きいものに維持することが望ましいことがあり得る。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、垂直入射する非偏光可視光の少なくとも80%を透過させるのに十分に少数の層を有している。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、垂直入射する非偏光可視光の少なくとも85%を透過させるのに十分に少数の層を有している。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、垂直入射する非偏光可視光の少なくとも90%を透過させるのに十分に少数の層を有している。透過の割合は、本明細書では、明所視的に重み付けされた平均透過率を指す。逆に、いくつかの実施形態においては、カラーシフトの補正を効果的なものとし得るよう、60°で入射する少なくとも1つの非偏光光の波長の反射又は吸収は、少なくとも10%であるべきである。いくつかの実施形態においては、60°で入射する少なくとも1つの波長の非偏光光の反射又は吸収は、少なくとも15%であるべきである。いくつかの実施形態においては、60°で入射する少なくとも1つの波長の非偏光光の反射又は吸収は、少なくとも20%であるべきである。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、6から26の光学層を有する。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、8から20のミクロ層を有する。
【0164】
いくつかの実施形態では、色補正フィルムの複数のミクロ層の厚さは、3マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、色補正フィルムの複数のミクロ層の厚さは、1マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、色補正フィルムの複数のミクロ層の厚さは、1.5~2.5マイクロメートルである。
【0165】
いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、垂直入射での透過においてシアンに見える。いくつかの実施形態では、色補正フィルムは、60°入射での透過においてマゼンダに見える。
【0166】
色補正構成要素として有用な色補正フィルムの更なる詳細は、例えば、米国特許仮出願第62/383058号(Benoitら)に更に記載されている。
【0167】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、拡散体フィルムであるか、又は拡散体フィルムを含む。特定の拡散体フィルムが、OLEDディスプレイパネルに近接して置かれた場合、OLEDディスプレイパネルの色シフトを低減させることが見出された。いくつかの実施形態では、拡散体フィルムは、相互連結された細孔及びチャネルを含むポリマー層を含むポリマーフィルムである。いくつかの実施形態では、拡散体フィルムはポリマー層を含むポリマーフィルムであり、ポリマー層はボイドフリーであり、ポリマーマトリックス中に均一に分散された粒子を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、ポリマーフィルムであるか、又はポリマーフィルムを含み、ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリマー層は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、第1のポリマー領域内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域とを含み、チャネルは、屈折率n2を有する第2の材料を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意選択の粒子を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意選択の粒子、並びに/又は空気を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、少なくとも70%の透明度、又は少なくとも80%の透明度、又は少なくとも90%の透明度と、少なくとも80%の可視光透過率と、25%~80%のバルクヘイズと、を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。
【0169】
用語「ヘイズ」は、広角光散乱を指し、ディスプレイから放出される光は、全方向に拡散され、コントラストの損失を引き起こす。より具体的には、用語「バルクヘイズ」は、数ミリメートル(mm)の広いサンプリングビームで測定された広角光散乱を指し、これにより、ポリマーフィルムの前述の数ミリメートルのアパーチャからの平均結果を得る。また、より具体的には、用語「マイクロヘイズ」は、数十ミクロン(すなわち、100ミクロン未満、例えば、10~40ミクロン)のより小さい照射面積で測定される広角光散乱を指し、これにより、平均マイクロヘイズ測定値は、多くの測定値(各々の面積は数十ミクロン、数ミリメートルのポリマーフィルムにわたって拡がる)からの平均結果を表す。
【0170】
用語「正規化されたマイクロヘイズ不均一性」は、少なくとも1mm、及び典型的には数ミリメートルにわたって測定されるときの、マイクロヘイズの標準偏差とマイクロヘイズの平均値との比を指す。マイクロヘイズの標準偏差は、マイクロヘイズノイズの尺度である。したがって、正規化されたマイクロヘイズ不均一性は、視覚的なマイクロヘイズノイズとマイクロヘイズ信号との比の基準値である。
【0171】
用語「透明度」は、狭角での散乱を指し、光は、強く集光され小さい角度範囲で拡散される。特定の透明度を有する効果は、基本的に、試験片を通して非常に小さな細部をいかに良好に見ることができるかで説明される。
【0172】
ヘイズ、透明度、及び可視光透過率は、ASTM D1003-13試験規格に記載されているように決定することができる。
【0173】
第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第1の材料は、相互連結された細孔(すなわち、ボイド)及びチャネルのネットワークを有する多孔質構造を形成する。すなわち、細孔及びチャネルは、第1のポリマー領域によって画定される。
【0174】
典型的には、複数の相互連結された細孔及びチャネルは、中空トンネル又はトンネル様通路を介して互いに接続された細孔を含む。特定の実施形態では、ネットワーク内には、複数の相互連結された細孔及びチャネルが存在し得る。特定の実施形態では、少量の閉じた又は接続されていない細孔が存在し得る。
【0175】
典型的には、細孔及びチャネルは、2マイクロメートル以下の平均断面(例えば、球形細孔の直径)を有する。別の言い方をすれば、相互連結された細孔及びチャネルのネットワークは、2マイクロメートル未満のサイズの散乱粒子と同様の角度平均散乱特性を有する。角度平均散乱特性という用語は、以下の意味を有する:不規則形状の散乱中心は、衝突光角に非常に依存する散乱断面及び散乱角などの散乱特性を有する。角度平均散乱特性は、衝突光角を考慮しており、全ての衝突光角の平均化された特性を呈する。
【0176】
特定の実施形態では、複数の相互連結された細孔及びチャネルの体積分率は、少なくとも10%である。
【0177】
第1のポリマー材料は、典型的には、多官能性モノマー及び/又はオリゴマーの硬化物である。特定の実施形態では、第1のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。特定の実施形態では、第1のポリマー材料は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー((メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートを含む)、の硬化物を含む。
【0178】
ポリマー材料は、好ましくは、細孔及びチャネルが崩壊しないように、多孔質構造を支持するために十分に弾性である。これに関連して、「弾性」材料は、軟質又は硬質の弾性材料であってもよいが、材料の流れにより多孔質構造中をゆっくりと充填する粘性又は粘弾性材料ではない。
【0179】
第1のポリマー材料を形成できる多官能性モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company(Exton,PA)から商品名SR351で市販されている)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomerから商品名SR454で市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商品名SR444で市販されている)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomerから商品名SR399で市販されている)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名SR494でSartomerから)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(商品名SR368でSartomerから)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名SR238でSartomerから)、及び(メタ)アクリレート官能性オリゴマーが挙げられる。そのようなオリゴマーの例としては、高引張強度及び高伸長の樹脂、例えば、Sartomer Companyから市販されているCN9893、CN902、CN9001、CN961、及びCN964、並びにCytec Industries(Woodland Park,NJ)から市販されているEBECRYL 4833及びEb8804が挙げられる。好適な材料としてはまた、「ハード」オリゴマーアクリレート及び「ソフト」オリゴマーアクリレートの組み合わせも挙げられる。「ハード」アクリレートの例としては、EBECRYL 4866などのポリウレタンアクリレート、EBECRYL 838などのポリエステルアクリレート、並びにEBECRYL 600、EBECRYL 3200、及びEBECRYL 1608(Cytecから市販されている)、及びCN2920、CN2261、及びCN9013(Sartomer Companyから市販されている)などのエポキシアクリレートが挙げられる。「ソフト」アクリレートの例としては、Cytecから市販されているEBECRYL 8411、並びにSartomer Companyから市販されているCN959、CN9782、及びCN973が挙げられる。好適な材料は、例えば、米国特許第9,541,701(B2)号(Thompsonら)に記載されている。
【0180】
特定の実施形態では、第1の材料はまた、モルホロジーの制御を助ける粒子を含む。特定の実施形態では、粒子は、ナノ粒子、所望により表面改質ナノ粒子である。そのような粒子の例としては、SiO2(例えば、Nissan Chemical AmericaからのA174処理されたNALCO 2329Kシリカ粒子、表面改質MP4540Mシリカ粒子)、ZrO2、TiO2、SnO2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい粒子は、SiO2である。このような粒子の例は、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990(A1)号(Haoら)に記載されている。第1の材料中の粒子の量は、第1の材料の総重量を基準として、最大60重量%であり得る。
【0181】
第1のポリマー材料によって画定される多孔質構造の調製は、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990(A1)号(Haoら)、及び米国特許第8,808,811(B2)号(Kolbら)に記載されている。あるプロセスでは、まず、溶剤に溶解した重合性材料を含む溶液が調製され、重合性材料は、例えば、1種以上のモノマー、任意選択的にカップリング剤、架橋剤、及び反応開始剤などの添加剤、並びに任意選択的にナノ粒子などの複数の粒子を含んでもよい。次に、重合性材料は、例えば、熱又は光を適用して重合され、溶剤中に不溶性ポリマーマトリックスを形成する。場合によっては、重合工程後、溶剤は、より低い濃度であるが、重合性材料の一部を依然として含んでもよい。次に、溶液を乾燥又は蒸発させることによって溶剤を除去し、ポリマー結合剤中に分散された相互連結されたチャネルのネットワークを含む第1のポリマーマトリックスを得る。所望により、第1のポリマーマトリックスは、第1のポリマーマトリックス中に分散された複数の粒子を含む。使用される場合、粒子は、第1のポリマーマトリックス内に結合され、結合は、物理的又は化学的であり得る。
【0182】
特定の実施形態では、第1の材料は、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも35体積%の量で、第1のポリマー層中に存在する。特定の実施形態では、第1の材料は、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大90体積%の量で、第1のポリマー層中に存在する。
【0183】
本開示のポリマーフィルムは、第2の材料で完全に又は更には部分的に充填された「ホスト」として第1の材料内の細孔及びチャネルのネットワークを利用して作製できる。第2の材料は、第1の材料の屈折率と屈折率が一致しない。典型的には、第1の材料と第2の材料との屈折率の差は、少なくとも0.01である。細孔及びチャネルをポリマー材料で完全に充填すると、元の「空気ボイド」は、第1のポリマー「ホスト」相中の「ゲスト」ポリマー相によって置き換えられる。本明細書の得られたポリマーフィルムの光学特性は、第1の(n1)ポリマー材料と第2の(n2)ポリマー材料との間の屈折率の差、及びそれらの2つの混合材料の固有のモルホロジーによって決定することができる。
【0184】
特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、空気で充填される。特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、第2のポリマー材料及び所望により粒子で充填される。特定の実施形態では、細孔及びチャネルのネットワークは、空気と第2のポリマー材料(所望により粒子と混合される)との混合物で充填される。空気、第2のポリマー材料(所望により粒子と混合される)、又はこれらの混合物は、本明細書では、第2の材料と呼ばれ、第2の材料で充填された複数の相互連結された細孔及びチャネルは、本明細書では、第2の相互連結領域と呼ばれる。
【0185】
したがって、本明細書では、第1の材料は、屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域を画定する。屈折率n2を有する第2の材料を含む第2の相互連結領域は、第1の材料内に相互侵入ネットワークを形成する。
【0186】
第2の材料がポリマー材料を含む場合、第2のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。粒子はまた、屈折率を制御するために、第2のポリマー材料と混合してもよい。特定の実施形態では、粒子は、ナノ粒子、所望により表面改質ナノ粒子である。そのような粒子の例としては、TiO2、ZrO2、SnO2、並びにHX-305M5などのいくつかの混合金属酸化物、Nissan Chemical America(Houston、TX)によって製造されたSnO2/ZrO2/SbO2の混合物が挙げられる。そのような粒子の例は、例えば、米国特許第8,343,622号(Liuら)に記載されている。第2の材料中の粒子の量は、第2の材料の総体積を基準として、最大80体積%であり得る。
【0187】
第2の材料がポリマー材料を含む場合、そのようなポリマー材料は、典型的には、ポリマーフィルムの総体積を基準として、少なくとも10体積%の量で、ポリマーフィルム中に存在する。第2の材料がポリマー材料を含む場合、そのようなポリマー材料は、典型的には、ポリマーフィルムの総体積を基準として、最大65体積%の量で、ポリマーフィルム中に存在する。
【0188】
(第1のポリマー領域の)第1の材料は、屈折率n1を有する。(第2の相互連結領域の)第2の材料は、屈折率n2を有する。これらの領域の材料は、n1がn2と異なるように選択される。特定の実施形態では、|n1-n2|は少なくとも0.01である。特定の実施形態では、|n1-n2|は、少なくとも0.02、又は少なくとも0.03、又は少なくとも0.04、又は少なくとも0.05、又は少なくとも0.1である。特定の実施形態では、|n1-n2|n1は、最大で0.5である。特定の実施形態では、n1はn2から0.5以内であり、n1はn2から0.4以内であり、n1はn2から0.3以内であり、n1はn2から0.2以内であり、又はn1はn2から0.1以内である。これに関連して、「以内」は、0.5(又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0189】
特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの唯一のポリマー層である。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの2つ以上のポリマー層のうちの1つである。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの2つのポリマー層のうちの1つである。
【0190】
図29に示すように、特定の実施形態では、ポリマーフィルム2901は、2つの主表面2903及び2904を有するポリマー層2902を含み、ポリマー層2902は、屈折率n
1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域2905と、第1のポリマー領域2905内で相互連結された細孔及びチャネル2906のネットワークを含む第2の領域と、を含み、相互連結された細孔及びチャネル2906のネットワークは、屈折率n
2を有する第2の材料で充填されている。相互連結された細孔及びチャネル2906内の第2の材料は、空気、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0191】
特定の実施形態では、本明細書のポリマーフィルムは、第1のポリマー層の一方又は両方の主表面(単数又は複数)上に配設された第2のポリマー層を含み、第2のポリマー層は、屈折率n3を有する第3のポリマー材料を含み、第1のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同一又は異なる。
【0192】
図30に示すように、特定の実施形態では、本明細書のポリマーフィルム2907は、第1のポリマー層2902の1つの主表面2903上に配設された第2のポリマー層2908を含み、第1のポリマー層2902は、第1のポリマー領域2905を含む。第2のポリマー層2908は、第3のポリマー材料を含む。(領域2905の)第1のポリマー材料及び(層2908の)第3のポリマー材料は、同一でも異なっていてもよい。代替として、第3のポリマー材料(又は層2908)は、相互連結された細孔及びチャネル2906のネットワーク内の第2のポリマー材料と同一であってもよい。
【0193】
第2の材料が空気を含む場合、第1及び第2の材料の混合ネットワークは、多孔質構造を形成する。第2のポリマー層2908(
図30)は、キャッピング層を形成し、キャッピング層の第3のポリマー材料は、多孔質構造に侵入していないか、又は多孔質構造の一部にのみ侵入している。特定の実施形態では、第3のポリマー材料は、アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機ポリマーを含む。
【0194】
特定の実施形態では、第1のポリマー材料と第3のポリマー材料とは異なり、それによりn1はn3とは異なる。特定の実施形態では、|n1-n3|n1は、少なくとも0.05である。特定の実施形態では、|n1-n3|は、最大で0.5である。特定の実施形態では、n1はn3から0.5以内であり、n1はn3から0.4以内であり、n1はn3から0.3以内であり、n1はn3から0.2以内であり、又はn1はn3から0.1以内である。これに関連して、「以内」は、0.5(又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0195】
特定の実施形態では、第2のポリマー材料又は第3のポリマー材料のうちの少なくとも1つは、接着剤材料である。特定の実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料のそれぞれは、接着剤材料である。
【0196】
特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー材料は、少なくとも500ナノメートルマイクロメートル(マイクロメートル又はμm)の厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー層は、最大25マイクロメートル、又は最大15マイクロメートル、又は最大5マイクロメートル、又は最大1マイクロメートルの厚さを有する。
【0197】
特定の実施形態では、第2のポリマー材料は、第1の材料内の細孔及びチャネルを部分的に充填するか、又は第1の材料内の細孔及びチャネルを完全に充填することができ、任意選択的に、充填された混合層(層2902、
図30)の上部に過剰な第2のポリマー層を有することができる。この過剰な第2のポリマー層(例えば、層2908、
図30)に最大厚さは存在しないが、特定の実施形態では、最大1ミリメートル(mm)の厚さであり得る。
【0198】
特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、少なくとも1マイクロメートルの厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、最大15マイクロメートル、最大25マイクロメートル、最大50マイクロメートル、又は更には100マイクロメートル超の厚さを有する。
【0199】
本明細書の色補正構成要素で使用されるポリマーフィルムは、次の特性:少なくとも70%(好ましくは少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、又はより好ましくは少なくとも90%)の透明度と、少なくとも85%(好ましくは少なくとも90%)の可視光透過率と、15%~80%(好ましくは20%~80%、より好ましくは30%~70%、及び更により好ましくは30%~50%)のバルクヘイズと、を有してもよい。特定の実施形態では、本明細書のポリマーフィルムは、ポリマーフィルム全体にわたって12%以下(好ましくは10%未満、又はより好ましくは8%未満)の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。このようなフィルムは、OLEDデバイスで使用された場合、制御された局所的均一性を伴う、非常に穏やかな光学拡散体として機能することができる。透明度、透過率、及びバルクヘイズは、Haze Gard Plus(BYK Gardner(Columbia、MD)製)を使用して測定できる。Haze Gard Plusは、ポリマーフィルムの18ミリメートル(mm)アパーチャのサンプリングビームから得た測定値を報告する。本明細書のディスプレイに対する好ましい透明度、透過率、及びヘイズの範囲は、従来のディスプレイで使用される場合、本明細書で使用されるディスプレイパネルの設計空間が異なることに起因して、対応する好ましい範囲とは異なる場合がある。
【0200】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、2つの主表面を有するポリマー層を含むポリマーフィルムであるか又はそれを含む。このポリマー層は、ポリマーマトリックス及び粒子(好ましくはポリマー粒子)を含み、好ましくはボイドフリーである。粒子を有するこのポリマー層は、第1のポリマー層と呼ばれる。第1のポリマー層は、屈折率n1を有する第1のポリマーマトリックスと、第1のポリマーマトリックス中に均一に分散された屈折率n2を有する粒子と、を含み、この粒子は、第1のポリマー層の体積を基準として、30体積%未満の量で存在し、かつ400ナノメートル(nm)~3000nmの粒径範囲を有し、n1は、n2とは異なる。そのようなポリマーフィルムは、非常に穏やかな光学拡散体の光学機能を有する。
【0201】
特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの唯一のポリマー層である。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの2つのポリマー層のうちの1つである。特定の実施形態では、第1のポリマー層は、本明細書のポリマーフィルムの2つ以上のポリマー層のうちの1つである。
【0202】
図31に示すように、特定の実施形態では、ポリマーフィルム3101は、2つの主表面3103及び3104を有するポリマー層3102を含む。このポリマー層3102は、ポリマーマトリックス3105と、この第1のポリマーマトリックス5中に均一に分散された粒子3106(好ましくはポリマー粒子)と、を含む。特定の実施形態では、そのようなポリマーフィルム3101は、ボイドフリー(void-free)である。本文脈中、「ボイドフリー」は、細孔又はボイドが0.5体積パーセント(体積%)未満で存在することを意味する。
【0203】
図32に示すように、特定の実施形態では、本明細書のポリマーフィルム3107は、第1のポリマー層3102の1つの主表面3103上に配設された第2のポリマー層3108を含み、第1のポリマー層3102は、ポリマーマトリックス3105(すなわち、第1のポリマーマトリックス3105)と、粒子3106と、を含む。第2のポリマー層3108は、第2のポリマーマトリックス3109を含む。第1のポリマーマトリックス3105及び第2のポリマーマトリックス3109は、同一でも異なっていてもよい。
【0204】
第1のポリマーマトリックス(粒子が分散しているマトリックス)は、屈折率n1を有し、第2のポリマーマトリックスは、屈折率n3を有する。特定の実施形態では、第1のポリマーマトリックス及び第2のポリマーマトリックスは、同一材料を含む。特定の実施形態では、第1のポリマーマトリックスは、第2のポリマーマトリックスと異なる。
【0205】
特定の実施形態では、第1及び第2のポリマーマトリックスが異なる場合、n1は、n3とは少なくとも0.05異なる。特定の実施形態では、n1はn3から0.2以内であり、特定の実施形態では、n1はn3から0.1以内である。本文脈中、「以内」は、0.2(又は0.1)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0206】
特定の実施形態では、第1のポリマーマトリックス及び第2のポリマーマトリックスのうちの少なくとも1つは、接着剤マトリックスである。特定の実施形態では、第1のポリマーマトリックス及び第2のポリマーマトリックスはそれぞれ、接着剤マトリックスである又は接着剤マトリックスを含む。特定の実施形態では、第1の接着剤マトリックス及び第2の接着剤マトリックスは、同一材料を含む。特定の実施形態では、第1の接着剤マトリックスは、第2の接着剤マトリックスとは異なる。
【0207】
特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー層は、少なくとも10マイクロメートル(マイクロメートル又はμm)の厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第1の(場合によっては、唯一の)ポリマー層は、最大100マイクロメートル、又は最大50マイクロメートル、又は最大25マイクロメートル、又は最大15マイクロメートルの厚さを有する。
【0208】
特定の実施形態では、ポリマーフィルムの第2のポリマー層は、少なくとも25マイクロメートルの厚さを有する。この第2のポリマー層に最大厚さは存在しないが、特定の実施形態では、最大1ミリメートル(mm)の厚さであり得る。
【0209】
特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、少なくとも35マイクロメートルの厚さを有する。特定の実施形態では、ポリマーフィルム全体は、最大130マイクロメートルの厚さを有する。
【0210】
本明細書の色補正構成要素で使用されるポリマーフィルムは、次の特性:少なくとも70%(好ましくは少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、又はより好ましくは少なくとも90%)の透明度と、少なくとも85%(好ましくは少なくとも90%)の可視光透過率と、15%~80%(好ましくは20%~80%、より好ましくは30%~70%、及び更により好ましくは30%~50%)のバルクヘイズと、ポリマーフィルムにわたって12%以下(好ましくは10%未満、又はより好ましくは8%未満)の正規化されたマイクロヘイズ不均一性と、を有してもよい。本明細書のディスプレイに対する好ましい透明度、透過率、及びヘイズの範囲は、従来のディスプレイで使用される場合、本明細書で使用されるディスプレイパネルの設計空間が異なることに起因して、対応する好ましい範囲とは異なる場合がある。
【0211】
画素化されたディスプレイの視覚的に知覚される所望の品質が達成することができるように、ディスプレイ画素の長さスケールのオーダーでの(例えば、
図29~
図32のいずれかのポリマーフィルムの)、制御されたヘイズの空間分布についての均一性が典型的には好ましい。表示画素の長さスケールのオーダーを超えるヘイズの不均一性は、画素ぼけ又はいわゆるスパークル(sparkle)などの光学的欠陥をもたらし得る。この品質は、マイクロヘイズ均一性測定によって測定可能であり、この測定では、試料の数十マイクロメートルを照射するサンプリングビームから測定値が提供される。この測定では、測定されたマイクロヘイズレベルの標準偏差を測定しながら、1ピクセル以下の寸法を有する光プローブでポリマーフィルム表面を走査する。このマイクロヘイズ測定技術は、人間の視覚的な知覚のピークに対応する空間周波数、すなわち、典型的な表示距離では、1ミリメートル当たり1~5ライン対の範囲の空間周波数についての試料分析を可能にする。マイクロヘイズ測定により、表示画素寸法のサイズスケールにおけるサイズスケールのばらつきの検査が可能になる。対照的に、従来のヘイズ測定システムは、各測定で光学フィルムの広い面積を分析し、画素化ディスプレイの臨界長さスケールで視覚的に知覚される差異を区別することができない。
【0212】
重要なことに、ポリマーフィルムは、光拡散を制御し、粒子とポリマーマトリックスとの間の屈折率の差、粒径及び粒子の充填量、ポリマーフィルムの厚さ、並びにポリマーフィルムの第1のポリマー層とディスプレイとの間の距離を制御することによって、OLEDディスプレイの角色均一性を著しく改善する。ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離が大きいほど、望ましくない画素ぼけがより増大する。画素サイズが小さくなるほど、ポリマーフィルムの第1のポリマー層及びディスプレイ平面がより近くなるべきである。また、この距離が増加すると、コントラスト比は望ましくないほど低くなる。これらの2つの要因のため、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、最小化されるのが望ましい。一実施例では、50マイクロメートルの典型的な画素間隔を有する市販の手持形デバイスの場合、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面距離との間の距離は、好ましくは150マイクロメートル未満であるべきである。更なる例では、500マイクロメートルの典型的な画素間隔を有する大きなディスプレイモニタの場合、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、好ましくは1500マイクロメートル未満であるべきである。一般に、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法の3倍未満であることが望ましい。第1のポリマー層とディスプレイ平面との距離が小さくなるほど、更により好ましい。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法の2倍未満であることが望ましい。他の実施形態では、ポリマーフィルムの第1のポリマー層と発光ディスプレイ平面との間の距離は、ディスプレイの画素間隔寸法未満であることが望ましい。好ましい実施形態では、ポリマーフィルムは、輝度、円偏光子適合性、及び観視角を含む主な性能特性に著しく影響することはない。また、重要なことに、画素ぼけを著しく低減することができる。
【0213】
本明細書のポリマーフィルムのポリマー材料には、多種多様なポリマーを使用してもよい。ポリマー材料中で使用するための例示的なポリマーとしては、シリコーン、アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0214】
特定の実施形態では、ポリマー材料は、単相ポリマー、又は多相モルホロジーを有するポリマーから選択することができる。多相モルホロジーは、例えば、非晶質ドメイン及び結晶性ドメインの両方を有する半結晶ポリマーなどのポリマーマトリックスの選択に固有であり得るか、又はポリマーブレンドから生じ得る。あるいは、多相モルホロジーは、ポリマーマトリックスの乾燥中又は硬化中に発生し得る。多相モルホロジーを有する有用なポリマーマトリックスとしては、相のそれぞれが同一の屈折率を有するもの、又は屈折率が不整合であるが、分散相のドメインサイズがポリマーマトリックス中に分散された粒子の粒径を超えないものが挙げられる。
【0215】
特定の実施形態では、ポリマー材料は、接着剤材料である。特定の実施形態では、少なくとも1つの接着剤材料は、光学的に透明な接着剤(OCA)(optically clear adhesive)を含む。特定の実施形態では、光学的に透明な接着剤は、アクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリイソブチレン(PIB)など)、シリコーン、又はこれらの組み合わせから選択される。例示的なOCAとしては、帯電防止の光学的に透明な感圧接着剤に関する国際公開第2008/128073号(3M Innovative Property Co.)、引っ張り剥離式OCAに関する米国特許出願公開第2009/089137号(Shermanら)、インジウムスズ酸化物適合性OCAに関する米国特許出願公開第2009/0087629号(Everaertsら)、光学的透過性接着剤を有する帯電防止の光学構造に関する米国特許出願公開第2010/0028564号(Chengら)、腐食感受性層と適合性のある接着剤に関する米国特許出願公開第2010/0040842号(Everaertsら)、光学的に透明な引っ張り剥離式接着テープに関する米国特許出願公開第2011/0126968号(Dolezalら)、及び引っ張り剥離式接着テープに関する米国特許第8,557,378号(Yamanakaら)に記載されるようなものが挙げられる。好適なOCAとしては、例えば3M Company,St.Paul,MN.から入手可能な、例えば3M OCA 8146などのアクリル系の光学的に透明な感圧接着剤が挙げられる。
【0216】
特定の実施形態では、二重層製品構造(例えば、
図30及び
図32参照)は、特定の光学的拡散特性を有する1つの層(例えば、
図30の層2902、又は
図32の層3102)と、光学的に透明な接着剤である第2の層(例えば、
図30の層2908、又は
図32の層3108)と、を含み得る。二重層製品構造を形成することによる利点のいくつかは、剥離強度、堅牢性、コーティング一体性などの改善された接着性を提供することであろう。二重層製品がOLEDディスプレイデバイス中に組み込まれる場合、光学拡散層、例えば、
図30の層2902、又は
図32の層3102)は、OLED発光ディスプレイ平面に面し、構造が許す限り、その平面に近接して置かれることが好ましい。コントラスト比及び画素ぼけの最小化などを含む最良性能のために、光学拡散層は、OLED封止層(単数又は複数)と直接接触することが好ましいであろう。直接接触していない場合、拡散層と発光平面との間の距離が増加するにつれて、性能は低下し得る。
【0217】
色補正構成要素が、ポリマーマトリックス中に粒子を含むポリマーフィルムを含む実施形態では、ポリマー粒子などの粒子は、好ましくはポリマーマトリックス中に均一に分散される。本文脈中、「均一に分散された」は、ポリマーマトリックス全体にわたって連続的にランダムに分散された粒子分布を意味する。このような分散された粒子は、分散された個々の粒子であり、粒子のアグリゲート又はアグリゲーションではない。このようなアグリゲートの存在により、業界ではスパークルとして既知の欠陥として照明ディスプレイに現れる、非常に局所化されたヘイズ差が生まれる。LCDなどのディスプレイパネルの裏側に配置されることが多い典型的なバルク拡散体とは異なり、色補正拡散体フィルムはディスプレイパネルと観察者との間に配置され、これにより、粒子アグリゲーションによる欠陥がより明白になる。加えて、ワイドビューカラー用途では、光学フィルムの透明度が高いことが多くの場合望ましい。また、一般にヘイズが高く、透明度が低い典型的な拡散体とは対照的に、このような透明度により、粒子アグロメレートもより明確になるであろう。
【0218】
ポリマーマトリックス中に均一に分散された粒子を得るために、混合プロセス及びコーティング方法を制御する必要がある。例えば、ポリマー前駆体(例えば、硬化性モノマー)又はポリマー組成物中に粒子を効果的に分散させるために、機械的混合を約数分間にわたって実施してもよい。あるいは、試料(ポリマー前駆体又は溶液に添加される乾燥粒子)のローリングを実施してもよいが、完全かつ均質な粒子分散体を得るために、これは、長時間(例えば、約数日又は約数週間)にわたって行われる必要がある。したがって、ローラ混合は、非常に実用的又は有効ではなく、機械的混合が、その効率及び高い剪断能力のために好ましい。機械的混合は、初期混合中に存在し得るあらゆる粒子アグロメレートを破壊するのに役立つ。
【0219】
機械的混合に加えて、機械的に混合される成分へ粒子を制御しながら(ゆっくりと)添加することが、典型的には、個々の粒子のアグロメレーションを避けるために必要である。粒子を急速に添加すると、「ウェットケーキ様固体」を形成しやすい場合があり、これは、一旦形成されると再分散するのが困難である。ゆっくりと添加するには、少量(すなわち、小ショット)の粒子を添加することが必要となり得るため、ミキサーに負担がかからず、ケーキが形成されない。小ショットの粒子が混合されると、別のショットが添加される。ケーキが形成されると、それを破壊し、適度な時間で完全に均一な分散体を得ることは困難であり得る。
【0220】
したがって、特定の実施形態では、ポリマーマトリックス中に粒子を効果的に均一に分散させるために、高剪断ミキサー(例えば、分散ディスクDSFB635、Promix(Ontario、Canada)製)を、粒子をゆっくりと添加することと組み合わせるのが好ましい。典型的には、より堅牢なポリマー又は無機ビーズに関しては、高剪断を使用することができ、一方、より軟質又はより脆い粒子に関しては、より低いがより長い剪断曝露が推奨される。
【0221】
国際公開第2010/033558号で使用される方法(所望の用途(例えば、LCDの裏側拡散体)には分散均一性が不要であるため、典型的には、シロップ剤中に粒子を投入することと、ローラミキサー上でほんの数時間混合することとが含まれる)とは対照的に、機械的撹拌(すなわち、機械的混合)は、溶液中の粒子アグリゲーションを著しく低減することができ、その結果、コーティングされたポリマーマトリックス中に粒子が均一に分散される。加えて、粒子アグリゲーションが発生した場合、十分な混合時間を使用して、溶液中の粒子アグリゲーションを破壊することができる。更に、粒子沈降及び/又はアグロメレーションを回避するために、ポリマー/粒子混合物は、基材上にコーティングされるまで、少なくともローラ上で連続的に混合される。剪断/混合時間が、コーティング組成物中に粒子を均一に分散させるのに十分であれば、コーティングプロセス中のインライン混合を有利に使用することができる。Quadro(Waterloo(Ontario、Canada))から入手可能なものなどのインラインミキサーが有用であり得る。
【0222】
最終ポリマーフィルム中に均一に分散された粒子を保持するために、スロットダイコーティングなどの精密コーティング方法によってコーティング組成物がコーティングされることがまた好ましく、ダイとキャリアフィルムとの間の間隙は比較的大きいことが好ましい。例えば、光学的に機能的でない(拡散性の)光学的透明接着剤層を追加することにより、ダイとキャリアフィルムとの間により広い間隙を開けることができ、結果として、均一に分散された試料が提供される。分散された粒子がコーティングナイフ又はダイ上で膠着又は乾燥し得るコーティング方法は、粒子アグロメレーションの問題を引き起こす場合があり、一般的には好ましくない。
【0223】
粒子は、400ナノメートル(nm)~3000nmの粒径範囲、又は700nm~2.0マイクロメートル(マイクロメートル)の粒径範囲を有する。この観点で、「粒径」は、粒子の最長寸法を指し、これは、球状の粒子における直径である。「粒径範囲」は、粒径の最小から最大までの分布を指す(平均ではない)。したがって、粒子は、必ずしも均一な粒径ではない。粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して決定することができる。
【0224】
粒子は、多面体、平行六面体、ひし形、円筒形、弓形、弓形円筒形、丸みを帯びた形状(例えば、楕円形又は球形又は等軸形)、半球形、ガムドロップ形、ベル形、円錐形、円錐台形、不規則形状、及びこれらの混合物を含む、種々の形状のものであり得る。特定の実施形態では、粒子は、球状ビーズである。
【0225】
本明細書のポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含んでもよく、この第1のポリマー層は、第1のポリマーマトリックスと、その中に均一に分散された粒子(好ましくはポリマー粒子)とを含む。粒子は屈折率n2を有し、粒子が分散された第1のポリマーマトリックスは屈折率n1を有し、n1は、n2とは異なる。特定の実施形態では、|n1-n2|は少なくとも0.01である。特定の実施形態では、|n1-n2|は、少なくとも0.02、又は少なくとも0.03、又は少なくとも0.04、又は少なくとも0.05である。特定の実施形態では、|n1-n2|は最大で0.5.である。特定の実施形態では、n1はn2から0.5以内であり、n1はn2から0.4以内であり、n1はn2から0.3以内であり、n1はn2から0.2以内であり、又はn1はn2から0.1以内である。これに関連して、「以内」は、0.5(又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1)以内で、より高い又はより低いことを意味する。
【0226】
粒子は、好ましくは有機ポリマー粒子であるが、他の粒子も同様に使用することができる。例示的な非有機粒子としては、SiO2、Al2O3、ZrO2、ZnO、及びこれらの混合物が挙げられる。有機粒子中で使用するための例示的な有機ポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、又はこれらの組み合わせから選択される有機ポリマー材料が挙げられる。
【0227】
特定の実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の体積を基準として、30体積パーセント(体積%)未満の量で第1のポリマー層中に存在する。特定の実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の総体積を基準にして、最大25体積%、最大20体積%、又は最大15体積%の量で第1のポリマーマトリックス中に存在する。特定の実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の総体積を基準にして、少なくとも0.5体積%(又は少なくとも1体積%)の量で第1のポリマーマトリックス中に存在する。
【0228】
色補正構成要素として有用なポリマーフィルムの更なる詳細は、例えば、米国特許出願公開第15/587929号(Haoら)、及び同第15/587984号(Haoら)に記載されている。
【0229】
以下は、本明細書の例示的な実施形態の列挙である。
【0230】
実施形態1は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法であって、方法は、
OLEDディスプレイパネルを準備する工程であって、この工程において、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有し、前記複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って性能曲線を画定し、性能曲線は、最低許容可能効率を有する第1の端点から、最大許容可能白色点色シフトWPCS45
LAを有する第2の端点へと延び、提供する工程は、OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有し、WPCS0
45及びWPAE0は、性能曲線の右側にあるディスプレイパネルの性能点を画定し、WPCSC
45軸に沿った、ディスプレイパネルの性能点から性能曲線までの距離が少なくとも0.005であるように、複数の設計パラメータを選択することを含む、準備する工程と、
OLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程であって、色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有し、WPCS45及びWPAEは、性能曲線の上方又は左側にあるディスプレイの性能点を画定するように構成されている、配設する工程と、を含む。
【0231】
実施形態2は、準備する工程が、WPCS0
45がWPCS45
LAよりも大きくなるように複数の設計パラメータを選択する工程を含む、実施形態1に記載の方法である。
【0232】
実施形態3は、準備する工程が、OLEDディスプレイパネルを設計する工程を含み、設計する工程は、複数の設計パラメータを特定する工程を含む、実施形態1又は2に記載の方法である。
【0233】
実施形態4は、設計する工程が、1つ以上の傾斜した視野角において、OLEDディスプレイパネルの混色ウェイトの不均衡を意図的に生じさせるように、複数の設計パラメータの値を選択する工程を更に含む、実施形態3に記載の方法である。
【0234】
実施形態5は、選択工程の前に、色補正構成要素によって提供される色補正を特性評価することを更に含み、選択する工程は、色補正構成要素によって提供される色補正が混色ウェイトにおける不均衡を少なくとも部分的に補正するように、不均衡を選択することを含む、実施形態4に記載の方法である。
【0235】
実施形態6は、OLEDディスプレイパネルが複数の画素を含み、各画素が複数のサブ画素を含み、各サブ画素が複数のOLED層を含み、複数の設計パラメータが、複数のOLED層内の各層の光学厚さを含む、実施形態4に記載の方法である。
【0236】
実施形態7は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを作製する方法であって、方法は、
OLEDディスプレイパネルを提供する工程であって、この工程において、複数の設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルのうちの各比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECと、青色軸方向効率であるBAECとを有し、準備する工程は、OLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有し、少なくとも1つの比較ディスプレイパネルについて、WPCSC
45はWPCS0
45-0.005以下であり、WPAECはWPAE0-1Cd/A以上であるように、複数の設計パラメータを選択することを含む、準備する工程と、
OLEDディスプレイパネル上に色補正構成要素を配設する工程であって、色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有し、WPCS45は、WPCSC
45+0.005未満であり、BAEは、BAECよりも少なくとも10%大きくなるように構成されている、配設する工程と、を含む方法。
【0237】
実施形態8は、
0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素化されたOLEDディスプレイパネルが複数の画素を含み、各画素が複数のサブ画素を含み、各サブ画素が複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されている、色補正構成要素と、を含む、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有し、複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って第1の性能曲線を画定する。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外はディスプレイと同等である複数の比較ディスプレイが、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って第2の性能曲線を画定し、第2の性能曲線は、第1の性能曲線の上方又は左側にあり、WPCS45及びWPAEが、実質的に第2の性能曲線に沿って、ディスプレイの性能点を画定する。第2の性能曲線及び複数の比較ディスプレイは、WPCSC
45-WPAEC空間において第3の性能曲線を画定し、このとき、第2の性能曲線に沿って性能点を有する複数の比較ディスプレイのうちの各比較ディスプレイに対して、色補正構成要素を比較ディスプレイから取り除くと、第3の性能曲線に沿った性能点を有する比較ディスプレイパネルになり、第3の性能曲線は、第1の性能曲線の右側にあり、WPCS0
45及びWPAE0は、実質的に第3の性能曲線に沿って、ディスプレイパネルの性能点を画定する。
【0238】
実施形態9は、複数の比較ディスプレイパネルのうちの比較ディスプレイパネルのWPCSC
45がWPCS0
45-0.005以下であり、比較ディスプレイパネルのWPAECがWPAE0-1Cd/A以上であり、WPCS45が比較ディスプレイパネルのWPCSC
45未満である、実施形態8に記載のディスプレイである。
【0239】
実施形態10は、複数のサブ画素が複数の青色サブ画素を含み、青色サブ画素の各々が正孔輸送層を有し、青色サブ画素の正孔輸送層の厚さが、比較ディスプレイパネルにおける対応する青色サブ画素の正孔輸送層の厚さの1.02~1.1倍である、実施形態9に記載のディスプレイである。
【0240】
実施形態11は、画素化されたOLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS0
45と、青色軸方向効率であるBAE0とを有し、色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている、実施形態8に記載のディスプレイである。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC1
45と、青色軸方向効率であるBAEC1とを有する。BPCSC1
45はBPCS45から0.0025以内であり、BAEはBAEC1よりも少なくとも10%大きい。
【0241】
実施形態12は、画素化されたOLEDディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS0
45と、青色軸方向効率であるBAE0とを有し、色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている、実施形態8に記載のディスプレイである。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第1の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC1
45と、青色軸方向効率であるBAEC1とを有する。BAEC1はBAEから5%以内であり、BPCSC1
45は、BPCS45よりも少なくとも0.005大きい。
【0242】
実施形態13は、
0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素化されたOLEDディスプレイパネルが複数の画素を含み、各画素が複数のサブ画素を含み、各サブ画素が複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、白色点軸方向効率であるWPAEとを有するように構成されている、色補正構成要素と、を含む、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECとを有し、複数の比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間における性能点の境界に沿って性能曲線を画定し、WPCS45及びWPAEがディスプレイの性能点を画定し、ディスプレイの青色軸方向効率BAEが、性能曲線に沿って性能点を有しWPAEから5%以内の白色点軸方向効率を有する複数の比較ディスプレイパネルのうちの第1の比較ディスプレイパネルの青色軸方向効率BAECよりも少なくとも10%大きい。
【0243】
実施形態14は、
0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS0
45と、白色点軸方向効率であるWPAE0とを有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素化されたOLEDディスプレイパネルが複数の画素を含み、各画素が複数のサブ画素を含み、各サブ画素が複数のOLED層を含み、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である比較ディスプレイパネルが0~45度における最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、白色点軸方向効率であるWPAECと、青色軸方向効率であるBAECとを有し、WPCSC
45はWPCS0
45-0.005以下である、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、色補正構成要素は、ディスプレイが、0~45度における最大白色点色シフトであるWPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成され、WPCS45はWPCSC
45+0.005未満であり、BAEはBAECよりも少なくとも10%大きい、色補正構成要素と、を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。
【0244】
実施形態15は、
30度における青色対赤色の混色ウェイト比β0
30、及び45度における青色対赤色の混色ウェイト比β0
45を有する画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、β0
45>β0
30≧1.05、及び1.5≧β0
45≧1.1である、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、45度におけるディスプレイの青色対赤色の混色ウェイト比がβ45であり、30度におけるディスプレイの青色対赤色の混色ウェイト比がβ30であり、β0
45-0.1≧β45≧2.1-β0
45、及びβ0
30-0.05≧β30≧2.05-β0
30であるように構成されている、色補正構成要素と、を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。
【0245】
実施形態16は、1.08≧β45≧0.92、又は1.06≧β45≧0.94、又は1.05≧β45≧0.95である、実施形態15に記載のディスプレイである。
【0246】
実施形態17は、1.06≧β30≧0.94,又は1.05≧β30≧0.95,又は1.04≧β30≧0.96である、実施形態15に記載のディスプレイである。
【0247】
実施形態18は、画素化されたOLEDディスプレイパネルが、少なくとも1.03の、45度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ0
45を有し、ディスプレイの45度における緑色対赤色の混色ウェイト比γ45がγ0
45-0.01以下、及び1.02≧γ45≧0.98である、実施形態15記載のディスプレイである。
実施形態19は、
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素の各々が複数のサブ画素を含み、サブ画素の各々が複数のOLED層を含む、OLEDディスプレイパネルと、
画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設された色補正構成要素であって、ディスプレイが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている、色補正構成要素と、を含む、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC1
45と、青色軸方向効率であるBAEC1とを有し、BPCSC1
45はBPCS45から0.0025以内であり、BAEはBAEC1よりも少なくとも10%大きい、又は、BAEC1はBAEから5%以内であり、BPCSC1
45は、BPCS45よりも少なくとも0.005大きい。
【0248】
実施形態20は、BPCSC1
45がBPCS45から0.001以内であり、BAEが、BAEC1よりも少なくとも15%大きいか、又はBAEC1よりも少なくとも20%大きいか、又はBAEC1よりも少なくとも25%大きい、実施形態19に記載のディスプレイである。
【0249】
実施形態21は、BAEC1がBAEから2%以内であり、BPCSC1
45が、BPCS45よりも少なくとも0.0075大きいか、又はBPCS45よりも少なくとも0.01大きいか、又はBPCS45よりも少なくとも0.015大きい、実施形態19に記載のディスプレイである。
【0250】
実施形態22は、BPCSC1
45がBPCS45から0.0025以内であり、BAEがBAEC1よりも少なくとも10%大きく、OLED層が1つ以上の異なる光学厚さを有すること以外は画素化されたOLEDディスプレイパネルと同等である第2の比較ディスプレイパネルが、観視角が0から45度に変化する際の最大青色点色シフトであるBPCSC2
45と、青色軸方向効率であるBAEC2とを有し、BAEC2はBAEから5%以内であり、BPCSC2
45は、BPCS45よりも少なくとも0.005大きい、実施形態19に記載のディスプレイである。
【0251】
実施形態23は、色補正構成要素が、波長及び偏光に依存する部分反射体を含む、実施形態8~22のいずれか1つに記載のディスプレイである。
【0252】
実施形態24は、部分反射体が光学積層体を含み、光学積層体が複数の光学繰り返し単位を含み、各光学繰り返し単位が第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、第1の軸に沿った、第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnyであり、直交する第2の軸に沿った、第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の屈折率差はΔnxであり、|Δnx|は少なくとも0.1であり、|Δny|は0.04以下である、実施形態23に記載のディスプレイである。第2の軸に沿った屈折率に関して、光学繰り返し単位は、光学積層体の第1の側に近接する最小光学厚さT1、及び光学積層体の反対側の第2の側に近接する最大光学厚さT2を有してもよく、(T2-T1)/(T2+T1)は0.05~0.2の範囲にあり、T2は少なくとも350nmであり、1250nm以下である。
【0253】
実施形態25は、色補正構成要素が色補正フィルムを含み、この色補正フィルムは複数のミクロ層を含み、各ミクロ層は、550nmにおける3つの直交屈折率の間に0.05以下の最大差を有し、各ミクロ層は、550nmにおける3つの直交屈折率の算術平均である平均屈折率を有する、実施形態8~22のいずれか1つに記載のディスプレイである。複数のミクロ層は、高屈折率ミクロ層と低屈折率ミクロ層との交互からなる層ペアとして構成され、各高屈折率ミクロ層の平均屈折率は、各低屈折率ミクロ層の平均屈折率よりも0.15~0.75だけ大きい。複数の層ペアの各々は、550nmにおいて150nm~550nmの光学厚さを有し、複数の層ペアの少なくとも半分は、550nmにおいて275nm~400nm光学厚さを有している。色補正フィルムは、垂直入射する非偏光可視光の、明所視的に重み付けされた少なくとも80%を透過させるのに十分に少数のミクロ層を有している。色補正フィルムは、60°で入射する少なくとも1つの波長の非偏光光の少なくとも15%を反射させるのに十分なミクロ層を有している。
【0254】
実施形態26は、色補正構成要素がポリマーフィルムを含み、ポリマーフィルムが2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む、実施形態8~22のいずれか1つに記載のディスプレイである。第1のポリマー層は、
屈折率n1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域と、
第1のポリマー領域内の相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域であって、
チャネルは、n2の屈折率を有する第2の材料を含む、第2の領域とを含む。第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意の粒子を含む。第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意の粒子、並びに/又は空気を含む。
【0255】
実施形態27は、色補正構成要素がポリマーフィルムを含み、ポリマーフィルムが2つの主表面を有する第1のポリマー層を含む、実施形態8~22のいずれか1つに記載のディスプレイである。第1のポリマー層はボイドフリーであり、
屈折率n1を有する第1のポリマーマトリックスと、
第1のポリマーマトリックス内に均一に分散された、屈折率n2を有する粒子と、を含み、
粒子は、第1のポリマー層の体積を基準にして、30体積%未満の量で存在し、400nm~3000nmの粒径範囲を有し、n2はn1とは異なる。
【0256】
実施形態28は、色補正構成要素が、第1の層及び第2の層と、それらの間のナノ構造化境界面とを含む、実施形態8~22のいずれか1つに記載のディスプレイである。
【実施例】
【0257】
実施例は、全般的に、整合されたOLEDデバイスと色補正構成要素の利点の例示として提示される。試験結果は、全般的に、視野角の範囲にわたる輝度及び色シフトの性能指標に焦点を合わせている。有用な例えば光学測定である作製された試験クーポンは、商業的使用のための最終ディスプレイデバイスと必ずしも同じではない。本明細書の特定の実施例は、限定的と見なすべきではない。
【0258】
実施例1~12及び比較例1~12
これらの実施例は、単に「拡散接着剤」及び「ナノ構造」タイプとラベル付けされた2つの特定の種類の色補正構成要素を含む。これらの実施例についての試験結果は、共通のOLEDディスプレイデバイスを特性評価するのに有用な青色スペクトル成分(青色サブ画素)に焦点を合わせる。各実施例に対するベースOLEDが、対応する比較例(CE)として列挙され、例えば、CE-1が実施例1のベースOLEDに対応する。
【0259】
【0260】
試験方法:
OLED測定方法の標準セットは、輝度電流電圧(LIV)及びエレクトロルミネセントスペクトルの測定値を含む。これらの測定は、PR655分光放射計(Photo Research,Inc.Chatsworth CA)、及びKeithley 2400ソースメータ(Keithley Instruments Inc.Cleveland OH)を利用した。これらの光学測定値は、色補正構成要素あり又はなしのOLEDデバイスを、PR655カメラに対して回転させることにより、角度の関数として取得した。各OLEDデバイスを、色補正構成要素を用いずに対照として試験し、その後、色補正構成要素をOLEDに積層(laminated)し、輝度及び色特性について再度評価した。
【0261】
拡散性接着剤タイプの色補正構成要素についての透過率、ヘイズ、及び透明度の測定は、Hazegard(BYK-Chemie GmbH,Wesel Germany,ASTM D1003-13に従う)を使用して実施した。
【0262】
OLED試料の調製:
青色のトップエミッション型(TE)OLED試験クーポンを、約10-7Torrのベース圧での有機層及び金属層のための標準的な真空熱蒸発、及び約10-3Torrのベース圧での酸化物層の真空スパッタリングを用いて構築した。
【0263】
研磨されたガラス基板上に100nmの厚さで堆積されたアルミニウムの第1の層と、アルミニウム層の上に15nmの厚さで堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)の第2の層とからなるアノードを作製した。画素を画定させる層を適用して、試験クーポンを形成するのに有用な4×4mmの画素を画定した。OLED層を以下の順序で堆積した:TCTA(100nm)に類似した第1の正孔輸送層(HTL)、2TNATA(10nm)に類似した電子遮断層、TBPiに類似した材料と発光型ドーパント材料Firpicとから構成される発光層、約10重量%の発光型ドーパントを含有する発光層、TPBi(50nm)の電子輸送層(ETL)、LiF(1.5nm)の電子注入層、銀とマグネシウムとの混合物から作製され約10重量%の銀(8nm)を含有するカソード、及びTCTA(65nm)のキャッピング層。第1のスパッタリングされたAl2O3層(50nm)、蒸発(2.5um)によって堆積された有機平滑化層(E200)、及び第2のAl2O3(50nm)層からなる一連の封止層を、OLEDキャッピング層の上に堆積させた。
【0264】
拡散性接着剤タイプの色補正構成要素の調製:
拡散接着剤タイプの色補正構成要素の調製方法は、米国特許第9,960,389号(Haoら)に記載されている。ベース接着剤溶液を以下のように調製した。EHA(55部)、iBOA(25部)、HEA(20部)、及びD-1173を0.02部添加することにより、モノマープレミックスを調製した。窒素(不活性)雰囲気下、この混合物を紫外線発光ダイオード(UVA-LED)によって生成された紫外線に曝露することにより、部分的に重合させて、約1000センチポアズ(cp)の粘度を有するコーティング可能なシロップ剤を得た。次いで、HDDA(0.15部)、IRGACURE 651(0.15部)、及びKBM-403(0.05部)をシロップ剤に添加して、均質な接着剤コーティング溶液を形成した。
【0265】
これらの実施例では、特定の拡散接着剤は、1.48の屈折率を有するベースアクリル接着剤マトリックスに充填された、2μm径のシリコーンビーズ(4重量%のTOSPEARL 120A、屈折率1.42、Momentive Performance Materials,Waterford,NYから入手可能)を含む。ビーズを接着剤溶液に添加し、次いでオーバーヘッドJiffy LM Pintミキサー(Jiffy Mixer Co.Inc,(Corona、CA)製)を使用して2時間機械的に撹拌した。機械的撹拌後、混合物を混合ローラ上に更に24時間置いた。これらサンプルの最終コーティング厚さは63μmであった。拡散接着剤の色補正構成要素は、それぞれ92.5%、81.9%、及び91.4%の測定された透過率、ヘイズ、及び透明度を有した。
【0266】
ナノ構造タイプの色補正構成要素の調製:
ナノ構造タイプの色補正構成要素は、国際公開第2017/205174号(Freierら)に全般的に記載されている。これらの実施例では、光学的に透明な接着剤(OCA 8146,3M Company,ST.Paul MNから入手可能)を使用して、特定のナノ構造化フィルムをOLEDデバイスに積層した(laminated)。この特定のナノ構造化フィルムは、125nmの2乗平均平方根振幅(Varとも示される)を有し、波数25μm-1と37μm-1との間に環状に集中した実質的に方位対称のパワースペクトル密度(PSD)を有するナノ構造を、低屈折率層と高屈折率層との間で利用している。ベアのOLEDデバイスのベースライン測定後、高屈折率(例えば、n=1.85)ナノ構造層を、第2の測定のためにOLED積層体に積層した(laminated)。
【0267】
実施例の説明:
実施例1~8については上述のように、一連の青色のTE OLEDを作製した。ここで、HTL層は、100nmから115nmまで系統的に変化させた。これらのデバイスを拡散性接着剤タイプの色補正構成要素と整合させて、実施例1~8を形成した。ここでも、これらの実施例の各々を、拡散接着剤色補正構成要素あり(比較例1~8)、及びなし(比較例1~8)の両方で試験した。
【0268】
実施例9~12については上述のように、一連の青色のTE OLEDを作製した。ここで、HTLの厚さは、94nmから103nmまで体系的に変化させた。これらのデバイスをナノ構造タイプの色補正構成要素と整合させて、実施例9~12を形成した。
【0269】
試験結果
拡散性接着剤タイプの色補正構成要素を使用した実施例、及び比較例1~8の結果(青色軸方向効率、60度の観視角での効率、観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフト)を表Aに示す。
【0270】
【0271】
比較例6(対照例)は、0.053の色シフトを示し(0~45°における最大色シフト(Δu’v’))、これが色補正構成要素の追加により0.017の色シフトに低減された(実施例6)。また、比較すると、1.44[cd/A]の効率を有する比較例4のベアデバイスと比較して、実施例6のデバイスは1.99[cd/A]の効率を示した。この結果は、色シフトが同等である一方で、効率が38%高いことを示す。色シフトが0.019であった比較例4(対照例)と比較して、実施例6の色シフトは0.017であった。
【0272】
実施例1~8、及び比較例1~8に従って作製した様々なサンプルに対して、青色軸方向効率、及び観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフトを
図34に示す。
【0273】
ナノ構造タイプの色補正構成要素を使用した実施例9~12、及び比較例9~12の結果(青色軸方向効率、及び観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフト)を表Bに示す。
【0274】
【0275】
比較例10(対照例)は、0.013の色シフトを示し(0~45°における最大色シフト(Δu’v’))、これが色補正構成要素の追加により0.009の色シフトに低減された(実施例10)。また、比較すると、1.17[cd/A]の効率を有する比較例10のベアデバイスと比較して、実施例11のデバイスは1.37[cd/A]の効率を示した。この結果は、色シフトが同等である一方で、効率が17%高いことを示す。色シフトが0.013であった比較例10(対照例)と比較して、実施例11の色シフトは0.013であった。
【0276】
実施例9~12、及び比較例9~12に従って作製した様々なサンプルに対して、青色軸方向効率、及び観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフトを
図35に示す。
【0277】
実施例13~19及び比較例13~19
赤色、緑色、及び青色のサブ画素を含むOLEDディスプレイパネルをモデル化した。各サブ画素は
図6に示す層構造を有している。
【0278】
国際公開第2017/205174号(Freierら)に全般的に記載されているような色補正構成要素を、国際公開第2017/205174号(Freierら)に記載されている光学モデリング技術を用いて、ディスプレイパネルに対してモデル化した。色補正構成要素は、125nmの2乗平均平方根振幅(Varとも示される)を有し、波数25μm-1と37μm-1との間に環状に集中した方位対称のパワースペクトル密度(PSD)を有するナノ構造を、低屈折率層と高屈折率層との間で利用している。高屈折率(n=1.85)層を、ディスプレイパネルに面して配設し、低屈折率(n=1.5)層を、ディスプレイパネルから離して配設した。光学的に透明な接着剤(OCA)層を、発光積層体の色補正構成要素とTFEとの間に配設した。高屈折率層、低屈折率層、及びOCA層はそれぞれ、少なくともマイクロメートルの厚さを有した。OCA層は、色補正構成要素を含まない比較ディスプレイにも含めた。OCAの屈折率は低屈折率層の屈折率と同様であり、OCA及び低屈折率層のいずれも有意な吸収を有しなかったので、色補正構成要素を含むディスプレイの光学性能は、低屈折率層の上に第2のOCA層を追加することによって実質的に変化しない。それに応じて、色補正構成要素を含むディスプレイと、色補正構成要素を含まない比較ディスプレイパネルとの間の性能の変化は、TFEの上のOCAの中への色補正構成要素の挿入に起因し得る。
【0279】
相対混色ウェイトは、特定の観視角での混色ウェイトを、ゼロ観視角での混色ウェイトで割ったものとして決定した。観視角θ
iにおける、原色である赤色、緑色、及び青色の相対混色ウェイトは、それぞれCMW
B(θ
i)、CMW
G(θ
i)、CMW
R(θ
i)と示される。0度~45度を5度刻みとして両端値を含めた10個の観視角を考慮した。所望の青色対赤色の混色ウェイト比β
i、及び緑色対赤色の混色ウェイト比γ
iを決定し、所望の比と実際の比との間の2乗平均平方根(rms)差を以下の式を用いて求めた。
【数7】
比較ディスプレイパネルについて、所望の値はβ
i=1及びγ
i=1であった。本明細書のディスプレイパネルでは、β
i及びγ
iの所望の値は、表2に先に示したものである。
【0280】
様々なOLED層のための当該技術分野において既知の材料についての既知の又は(エリプソメトリにより)測定された複素屈折率を、光学モデリングに使用した。層のための材料の所与の選択に関して、層の厚さを変化させ、0.05未満のrmsを与える厚さを可能な設計として保持した。赤色、緑色、及び青色の発光積層体の各々の正孔輸送層の厚さを設計パラメータとして使用し、バッファ層及びキャッピングの発光積層体の各々についての共通の厚さを設計パラメータとして使用した。
【0281】
図36~
図37は、当該技術分野で既知の1組のOLED材料の結果を示し、
図38~
図39は、当該技術分野において既知の別の1組のOLED材料の結果を示す。
図36は、所望の値がβ
i=1及びγ
i=1である比較ディスプレイパネルに対するWPAE
C-WPCS
C
45空間における結果を示す。
図37は、色補正構成要素を含むディスプレイの結果を示し、ディスプレイパネルは、表2に示される所望のβ
i及びγ
iを有する。
図36及び
図37では、点の左上の境界に沿った性能曲線が概略的に示されている。
図37の性能曲線は、
図36の性能曲線よりも改善されている。なぜなら、性能曲線が、白色点色シフトがより低い方に(また、青色軸方向効率がより高い方に(図示せず))シフトされているからである。同様に、
図38は、所望の値がβ
i=1及びγ
i=1である比較ディスプレイパネルに対するWPAE
C-WPCS
C
45空間における結果を示し、
図39は、色補正構成要素を含むディスプレイの結果を示し、ディスプレイパネルは、表2に示される所望のβ
i及びγ
iを有する。
図38及び
図39では、点の左上の境界に沿った性能曲線が概略的に示されている。
図39の性能曲線は、
図38の性能曲線よりも改善されている。なぜなら、性能曲線が、白色点色シフトがより低い方に、白色点軸方向効率がより高い方に、更に青色軸方向効率がより高い方に(図示せず)シフトされているからである。
【0282】
表Cは、色補正構成要素が追加された場合の
図36の比較ディスプレイパネル(比較例13及び14)についての追加の結果、及び色補正構成要素が除去された場合の
図40(実施例13及び14)のディスプレイについての追加の結果を提供する。
【0283】
【0284】
製造変動に対するディスプレイ性能の感度を判定するために、色補正構成要素を有するディスプレイ1~2、及び色補正構成要素を有しない比較ディスプレイCE-13~CE-14について、2%の2乗平均平方根誤差を、5層の厚さ(赤色、緑色、及び青色のHTL厚さ、並びにバッファ層及びキャッピング層の厚さ)に加えた。WPAE-WPCS45空間における名目性能点を中心とする散布度は、比較ディスプレイCE-13~CE-14よりも、ディスプレイ1~2に対して著しく小さくなることが見出された。散布度の大きさは、指定された性能基準を満足するディスプレイのパーセントとして定義される歩留まりによって特性評価することができる。比較ディスプレイCE-13及びディスプレイ実施例13は、比較的高い効率及び比較的高い色シフトの設計を表すので、比較ディスプレイCE-13及びディスプレイ実施例13に対して指定された性能基準を、0.02未満のWPCS45、及び36cd/Aを超えるWPAEと見なした。歩留まりは、ディスプレイの実施例13については88%、比較ディスプレイCE-13については75%であることが判明した。比較ディスプレイCE-14及びディスプレイ実施例2は、比較的低い効率及び比較的低い色シフトの設計を表すので、比較ディスプレイCE-14及びディスプレイ実施例14に対して指定された性能基準を、0.01未満のWPCS45、及び31cd/Aを超えるWPAEと見なした。歩留まりは、ディスプレイの実施例14については90%、比較ディスプレイCE-14については55%であることが判明した。
【0285】
ナノ構造化された色補正構成要素を有する及び有しない青色サブ画素を上述のようにモデル化し、青色軸方向効率、及び観視角がゼロから45度まで変化する際の最大青色点色シフトをモデリングから決定した。ナノ構造化されたタイプの色補正構成要素を用いた実施例15~19、及び比較例15~19の結果を表Dに列挙する。
【0286】
【0287】
比較例16は、0.010(0から45°の間における最大色シフト(Δu’v’))の色シフト、及び1.11[cd/A]の効率を示し、これと比較し、実施例17のデバイスは、1.58cd/Aの効率、及び0.011の色シフトを示した。この結果は、色シフトが同等である一方で、効率が42%高いことを示す。
【0288】
観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率を計算した結果を
図40に示す。(実施例9~12及び比較例9~12について説明したように)色補正構成要素なしのディスプレイパネルに対する、観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率の、計算値と測定値を
図45に示す。モデルによるHTL厚さは95~109nmで変動し、HTL厚さについての実験データは109~113nmで変動した。HTL厚さ範囲の差は、計算値及び測定値の結果が近くなるように選択した。HTL厚さのこのシフトは、モデルの変数と実験の変数との間のわずかな不一致に起因する可能性が高い。モデル化により、観視角がゼロから45度に変化する際の最大青色点色シフトに対する青色軸方向効率の傾向が正確に捕捉されることが、結果から示される。
【0289】
「約、ほぼ(about)」などの用語は、それらが本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者によって理解されるだろう。特徴部の形状、量、及び物理的性質を表す量に適用される「約」の使用が、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「約」は、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されるだろう。特定の値の約として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、約1の値を有する量は、0.9~1.1の値を有する量かつその値が1であり得ることを意味する。
【0290】
前述の参照文献、特許、又は特許出願はいずれも一貫した方法でそれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0291】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替及び/又は同等の実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書において説明した具体的な実施形態のあらゆる適合例又は変形例を包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるものとする。