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特許7438133青みを帯びた外観を有する青色光カット光学材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】青みを帯びた外観を有する青色光カット光学材料
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20240216BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240216BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G02C7/00
G02B5/22
C08L75/04
C08G18/38 076
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020560357
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060930
(87)【国際公開番号】W WO2019211242
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】18315009.3
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518182542
【氏名又は名称】エシロール アテルナジオナール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】フロマンタン, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジメネス, アーメール
(72)【発明者】
【氏名】ポムパン, ワランヤー
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016778(JP,A)
【文献】特表2017-515822(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077358(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/182639(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03203271(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤と、
- 少なくとも1つの吸収色素Aであって、550nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aと、を含む光学材料であって、前記光学材料は、500nm以上且つ550nm未満の極大吸収波長を有するいかなる吸収色素も含まず、
- ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料、及びアリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作され、
- 2mmの光学材料厚さについて、6以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有し、
- 2mmの光学材料厚さについて、120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する、光学材料。
【請求項2】
2mmの光学材料厚さについて、120°以上且つ145°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有するとしてさらに定義される、請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
前記吸収色素Aは、550nm~610nmの範囲にその極大吸収波長を有する、請求項1又は2に記載の光学材料。
【請求項4】
前記吸収色素Aは、アントラキノン色素である、請求項1~3の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項5】
82%以上である、可視スペクトルでの相対光透過率Tvを有するとしてさらに定義される、請求項1~4の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項6】
2mmの光学材料厚さについて、3以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数aを有するとしてさらに定義される、請求項1~5の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項7】
2mmの光学材料厚さについて、5.5以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有するとしてさらに定義される、請求項1~6の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項8】
ポリチオウレタン材料及びポリエピスルフィドモノマー又はオリゴマーの重合又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作されるとしてさらに定義される、請求項1~7の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項9】
前記吸収色素Aは、前記光学材料の総重量に対して0.1~1000重量ppmの範囲の量で存在する、請求項1~8の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項10】
前記UV吸収剤は、前記光学材料の総重量に対して0.05~4重量%の範囲の量で存在する、請求項1~9の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項11】
2mmの光学材料厚さについて、5以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数b*を有するとしてさらに定義される、請求項1~10の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項12】
少なくとも1つの吸収色素Bであって、410nm~450nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Bをさらに含む、請求項1~11の何れか一項に記載の光学材料。
【請求項13】
主前面と主後面とを有する母材を含む光学物品であって、前記母材は、請求項1~12の何れか一項に記載の光学材料を含む、光学物品。
【請求項14】
光学レンズとしてさらに定義される、請求項13に記載の光学物品。
【請求項15】
主前面と主後面とを有する母材を含む光学物品であって、前記母材は、400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤、少なくとも1つの吸収色素Aであって、550nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aを含む光学材料を含み、前記光学材料は、500nm以上且つ550nm未満の極大吸収波長を有するいかなる吸収色素も含まず、ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料、及びアリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作され、前記光学物品は、
- 2mmの光学材料厚さについて、6以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有し、
- 2mmの光学材料厚さについて、120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する、光学物品。
【請求項16】
請求項1~12の何れか一項に記載の光学材料を製造する方法であって、
- 400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤と、少なくとも1つの吸収色素Aであって、550nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aと、ポリチオウレタン材料、又はその前駆体、ポリウレタンウレア材料、又はその前駆体、ポリエピスルフィドモノマー、若しくはオリゴマーの重合、若しくは共重合から得られる材料、又はその前駆体、及びアリルモノマー、若しくはオリゴマーの重合、若しくは共重合から得られる材料、又はその前駆体から選択される材料、又は化合物とを混合することによって光学材料組成物を調製するステップと、
- 前記光学材料組成物を硬化させるステップと
を含み、
前記光学材料は、500nm以上且つ550nm未満の極大吸収波長を有するいかなる吸収色素も含まない方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV光、及び可視スペクトルの青色光の少なくとも一部を吸収する化合物を含む光学材料、より詳細には、低い黄色レベル、良好な透明性及び青みを帯びた外観を有する、これらの材料を含有する眼科レンズに関する。本発明は、これらの材料を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目に見える光は、概ね380ナノメートル(nm)の波長~780nmの波長の範囲の光スペクトルにわたる。このスペクトルのうち、約380nm~約500nmの範囲の部分は、高エネルギーで基本的に青色の光に対応する。
【0003】
多くの研究(例えば、Kitchel E.,“The effects of blue light on ocular health”,Journal of Visual Impairment and Blindness Vol.94,No.6,2000又はGlazer-Hockstein and al.,Retina,Vol.26,No.1.pp.1-4,2006を参照されたい)は、青色光の一部が人間の眼の健康、特に網膜に対する光毒効果を有することを示唆している。眼光学研究は、過剰に長期間にわたる、又は強力な青色光への暴露が、加齢黄斑変性症(ARMD)、又は白内障等の重篤な眼疾患を誘発し得ることを実証した。
【0004】
他の最近の刊行物Amault E.,Barrau C.,Nanteau C.,Gondouin P.,Bigot K.,Vienot F.,Gutman E.,Fontaine V., Villette T.,Cohen-Tannoudji D.,Sahel J.A.,Picaud S.:“Phototoxic action spectrum on a retinal pigment epithelium model of age related macular degeneration exposed to sunlight normalized conditions”,August 23,2013,PLOS One,Aug.23;8(8):e71398.doi:10.1371/journal.pone.0071398.eCollection 2013は、視物質の感光性誘導体、N-レチニリデン-N-レチニルエタノールアミン(A2E)を異なる濃度で含み、6時間細胞インキュベートされたブタの網膜色素上皮の初代培養を使用した加齢黄斑変性症のインビトロモデルで生理学的照射条件における光網膜毒性の正確なスペクトルを定義している。
【0005】
したがって、特に危険性のより高い波長バンド(420~450nm)について、有害であり得る青色光への眼の暴露を制限することが推奨される。ISO 8980-3標準:2003(E)表B1は、B(λ)青色光傷害関数を定義している。
【0006】
眼鏡は、このような有害であり得る青色光の網膜への透過に対する保護を提供するのに特に適している。
【0007】
レンズの装用者の眼に対する紫外光(UV光)の有害な影響をできるだけ排除することもさらに必要である。紫外(UV)光は、発光スペクトル中の380nm未満且つ100nmまでの範囲の部分である。UVスペクトルは、多くのバンド、特にUVA、UVB及びUVCバンドを有する。地表面に到達するこれらのUVバンドのうち、315nm~380nmの範囲のUVAバンド及び280nm~315nmの範囲のUVBバンドは、網膜にとって特に有害である。
【0008】
例えば、特許出願国際公開第2008/024414号パンフレットにおいて、UV光及び/又は青色光スペクトル中の400nm~460nmの問題の部分を、適当な波長範囲の光の吸収又は反射を通して抑制するフィルタによって少なくとも部分的にカットすることがすでに提案されている。これは、黄色の吸収色素を光学素子中に組み込むことによっても行うことができる。
【0009】
米国特許第8360574号明細書は、400~460nmの範囲の波長を有する光の5~50%をブロックし、460~700nmの範囲の波長を有する光の少なくとも80%を透過させ、15以下の黄色度指数を示す選択的光波長フィルタを含む眼科レンズを開示している。
【0010】
一般に、望ましくない青色光等の可視波長をブロックすることは、カラーバランス、その光学材料を通して見たときの色覚及びその光学材料が認識される色に影響を与える。実際に、420~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤又は黄色色素を組み込んだ光学材料は、「副作用」として光学物品中に残留着色を生じさせる傾向があり、光学材料は、黄色、茶色又は黄褐色に見える。これは、多くの光学用途にとって審美的に容認できず、その器具が眼科レンズである場合、使用者の正常な色認識の障害となり得る。
【0011】
青色光ブロック化合物の黄変効果を補償し、装用者にとっての且つ外部の観察者が見たときの美容的に容認可能な外観を有する光学物品を得るために、1つの色補正成分又は複数の色補正成分の混合物を光学物品に加えることができる。黄変効果を少なくとも部分的にオフセットし、ほぼ無色の外観を得るために使用される色補正成分は、一般に、青く着色する1つの色素又は適当な割合で使用される複数の色素の混合物である。
【0012】
しかしながら、青色光をカットする光学材料は、一般に、色補正後の最終的な色が不快であるという問題を伴い、これは、灰みの黄色及び/又は緑みの色合いを有すると説明され得る。さらに、この方式は、完全な中和、例えば純粋な無彩色の外観を実現することが再現性の点で難しいため、満足できるものではない。
【0013】
この問題は、光学材料のポリマーマトリクスがもともとわずかに黄色であるとき、又は光学材料が、結果的に黄色の寄与度を増強させる過酸化水素等の反応成分を含むときにより深刻となる。これは、ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドから得られる材料、又はアリル組成物から得られるもの等の材料の場合に当てはまる。さらに、青色光ブロック手段が、その光学材料組成物中に重合されるように組み込まれた化合物を含む場合、加熱/重合時に黄色が強まり得る。
【0014】
UV吸収剤等の光学フィルタ手段は、UV光が網膜に到達することを抑制、又は阻止するため(特に眼科レンズ材料中)だけでなく、母材自体を保護し、したがって風化並びに脆弱化及び/又は黄変を防止するために光学物品に組み込まれることが多い。
【0015】
UV吸収剤は、最終製品中に様々な場所において異なる技術で組み込むことができ、一般的にはコーティングにおいてだけでなく、バルク母材中に例えば母材への含浸により、又は母材前駆体組成中に組み込むことにより組み込まれる。
【0016】
日本特許出願特開2008-056854号公報は、ポリチオール及びポリイソ(チオ)シアネートモノマーと、少なくとも1つの特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを含む、レンズのための重合性組成物であって、その組成物から得られた厚さ9mmのポリチオウレタン樹脂シートの400nmの波長での光カット率は、99.5%以上である、重合性組成物を開示している。
【0017】
特許出願日本特開2000-147201号公報は、含硫黄樹脂(例えば、ポリチオウレタン又はポリエピスルフィド)で製作され、原樹脂との混和性を有する高分子量UV吸収剤をさらに含有する、高い可視光放射透過を確実にするプラスチックレンズを開示しており、その高分子量UV吸収剤は、ベンゾフェノン又はベンゾトリアゾールUV吸収剤、例えば3-[5-(2-ベンゾトリアゾイル)-3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸(UVC2)のポリエチレングリコールモノエステル及びジエステルであり得る。可視放射領域内の黄色、茶色等を吸収しにくいUV吸収剤を使用することが好ましく、それによって光カットオフ波長が縮小される。
【0018】
出願国際公開第2014/133111号パンフレットは、350nm~370nmの範囲内に極大吸収ピークを有する1つ又は複数の紫外線吸収剤と、任意選択により、比較的短い波長、特に400~420nm波長範囲内の青色光への使用者の眼の暴露を制限するように構成された青み剤とを含む光学材料を開示している。410nm波長での光学透過率は、10%以下であり、440nm波長での光学透過率は、80%以上である。
【0019】
出願国際公開第2017/077357号パンフレット及び国際公開第2017/077358号パンフレットは、光学物品を開示しており、これは、4又は7以下である、CIE(1976)L国際標準表色系で定義される比色係数bを有し、87%以上である、可視スペクトルでの相対的光透過率Tvを有する母材を含み、その主前面に到達する420~450nmの範囲の波長を有する光の少なくとも8%をブロックする。この光学物品は、420~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする光学フィルタ手段、例えば吸収色素及び/又はUV吸収剤と、任意選択により、色補正成分としての役割を果たす第二の1つの色素又は複数の色素の混合物とを含み得る。これらの成分は、母材及び/又は母材の表面に堆積された同じ若しくは異なる層中に組み込むことができる。
【0020】
出願国際公開第2018/021567号パンフレットは、わずかに青みを帯びた色調を有すると記載された眼鏡レンズを開示している。ポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物、20質量ppmのトルエン溶液中で550~600nmに極大吸収波長を有する色素L、及び20質量ppmのトルエン溶液中で500nm以上且つ550nm未満に極大吸収波長を有する色素Sであって、質量比5~500である色素L、及び色素S、並びに任意選択によりUV吸収剤を含む重合性組成物を重合することによって得られる樹脂組成物を含む基材を含む眼鏡レンズである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以上に鑑み、光毒性青色光の透過を少なくとも部分的にブロックし、同時に良好な透過率(すなわち高いレベルの透過率)を保持し、顧客により十分に受け入れられる最終的な色を示すことができる手段を含む材料を提供する必要がある。
【0022】
特に、レンズの第一の容認レベルは、顧客がレンズを(装用するのではなく)見たとき、レンズが魅力的な色を有しているべきであるというものである。
【0023】
他の目的は、光学物品が眼科系である場合、有害な波長に対する十分な装用者保護、及び装用者の満足の両方を得ることである。この点において、光学物品は、視界確保の点で装用者に高い快適さを提供すべきである。光透過の容認可能な全体的レベルも、使用者にとって受け入れられる色認識と共に求められる。光学物品は、装用者の色覚を大きく損なわず、光劣化に対する耐性を有するべきである。
【0024】
また、好ましくは、認識の点において、光学物品は、装用者が見られたときに皮膚の色を保持し、十分な明るさ及び視覚コントラストを保持する場合により良好である。国際公開第2017/077358号パンフレットに開示されているような評価手順を実行できる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、これらの目的の少なくとも幾つかが、美容的に容認可能であり、色補正剤(青み剤)を、青色光ブロック手段による青色光吸収剤により生じる黄色みの中和を確保するために通常使用されるものより高い濃度で含む代替的な光学材料を提供することによって達成できることを見出した。結果として得られる光学材料は、使用者にとってより魅力的である、快適な青みを帯びた色を呈する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のニーズに対応し、先行技術の前述のような欠点を解決するために、本出願人は、光学材料であって、400~450nm、好ましくは420~450nmの波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤、少なくとも1つの吸収色素Aであって、520nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aを含む光学材料を提供し、この光学材料は、ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドモノマー又はオリゴマーの重合又は共重合から得られる材料及びアリルモノマー又はオリゴマーの重合又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作され、光学材料は、2mmの光学材料厚さについて、6以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有し、2mmの光学材料厚さについて、120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する。
【0027】
青みを帯びた外観を有する光学材料は、200°~280°の範囲の、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを呈すると予想される。ここで、驚くべきことに、120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する光学材料は、青みを帯びた外観を有することがわかった。光学の分野で予想されていたものに反するこの発見は、特に有利であり、それは、120°以上且つ180°以下の前記色相角hを得るために使用される吸収色素Aの量は、200°~280°の範囲の色相角hを得るのに必要な量より少ないからである。
【0028】
本発明による光学材料は、好ましくは、光学物品の母材として使用される。これは、一般に、透明な光学物品、特に光学レンズ又はレンズブランク、より好ましくは眼科レンズ又はレンズブランクに含まれる。
【0029】
本説明において、特に別段の明示がない限り、光学物品/材料は、前記光学物品を通して像を観察したとき、コントラストがほとんど失われずに認識される、すなわち前記光学物品を通した像の形成が像の品質に不利な影響を与えずに得られるときに透明であると理解される。「透明」という用語のこの定義は、特に別段の明示がない限り、この説明でそのように資格付けされたすべての物体に当てはめることができる。
【0030】
他の実施形態において、光学材料は、例えば、反射防止フィルム又は液晶表示コンポーネントで有益なコーティング、フィルム又はラミネートを形成するために使用される。光学材料については、以下においてレンズ母材としての使用に関してより具体的に説明されるが、この使用が好ましいものの、この使用に限定されない。
【0031】
「眼科レンズ」という用語は、眼を保護するため及び/又は視力を矯正するために、眼鏡フレームに適応されるレンズを意味するために使用される。前記レンズは、無限焦点、単焦点、二焦点、三焦点、累進レンズ、及びフレネルレンズから選択できる。眼科光学系は、本発明の好ましい分野であるが、本発明は、UV及び青波長をフィルタリングすることが有利であり得る他の種類の光学素子、例えば光学機器用レンズ、特に写真、又は天文学用フィルタ、光学照準レンズ、眼用バイザ、照明系の光学系、スクリーン、板ガラス等にも適用可能である。
【0032】
光学物品が光学レンズである場合、これは、その主前面、主後面、又は両面が1つ、又は複数の機能コーティングで被覆され得る。本明細書で使用される限り、母材の後面とは、その物品を使用する際に装用者の眼から最も近い面を意味するものとする。これは、一般に、凹面である。それに対して、母材の前面は、その物品を使用する際に装用者の眼から最も遠い面である。これは、一般に、凸面である。光学物品は、平面物品でもあり得る。
【0033】
母材とは、本発明の意味において、被覆されていない母材を意味すると理解すべきであり、一般に2つの主面を有する。母材は、特に光学物品、例えば眼鏡に取り付けられることになる眼科レンズの形状を有する光学的に透明な材料であり得る。これに関して、「母材」という用語は、光学レンズ、より詳細には眼科レンズの基本的構成材料を意味すると理解されたい。この材料は、1つ、又は複数のコーティング又は層の積層物を支持する役割を果たし得る。
【0034】
本発明の物品の母材は、有機ガラス母材、例えば熱可塑性プラスチック、又は熱硬化性プラスチックで製作される有機ガラスであり、一般に眼科業界で使用される眼科グレードの透明材料から選択される。これは、好ましくは、熱硬化性樹脂で製作される。
【0035】
本発明による光学材料で製作される母材を含む光学物品を製造するために使用される方法について、特に制約はない。
【0036】
本願の光学母材のポリマーマトリクスは、当業者によく知られている方法により、典型的にはモノマー、及び/又はオリゴマー等の重合性化合物を含む光学材料組成物(「母材組成物」)から得ることができる。本説明では、モノマー、又はオリゴマーは、プレポリマーを含む。
【0037】
本願の光学材料は、ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドのモノマー、又はオリゴマーの重合又は共重合から得られる材料、及びアリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作される。好ましい光学材料は、ポリチオウレタン材料、及びポリエピスルフィドのモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料である。
【0038】
ポリチオウレタンは、ポリイソシアネート(又はポリイソチオシアネート)化合物、及びポリチオール化合物から得ることができる。
【0039】
ポリイソシアネートとは、少なくとも2つのイソシアネート基を含むあらゆる化合物、換言すればジイソシアネート、トリイソシアネート等を意味する。ポリイソシアネートプレポリマーが使用され得る。ポリウレタンの合成に使用され得るポリイソシアネート成分には、「フリー」、「ブロック」、又は「一部ブロック」イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、及び「ブロック」及び「非ブロック」化合物の混合物が含まれる。「ブロック」という用語は、ポリイソシアネートが、ウレア(ビウレア誘導体)、カルボジイミド、ウレタン(アロファネート誘導体)、イソシアヌレート基(環状三量体誘導体)を組み込むための既知の方法により、又はオキシムとの反応により変化されていることを意味する。
【0040】
ポリイソシアネートは、脂肪族、芳香族、脂環式、又は複素環式ポリイソシアネート、及びそれらの混合物から選択され得る。一般に、脂肪族ポリイソシアネートが使用され、これは、それらの紫外光安定性及び黄変しない傾向が優れているからである。
【0041】
本発明のポリイソシアネートは、好ましくは、ジイソシアネートである。入手可能なジイソシアネートの中から、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニル-ジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート、リシンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、エチレンジイソシアネート、ドデカン-1,12-ジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,4-ジイソシアネート、パーヒドロジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、パーヒドロフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(又はビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)-メタン又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5(又は2,6)-ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0042】
ポリイソシアネートの他の非限定的な例は、何れも市販されているイソフォロンジイソシアネート、及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレートである。本発明に適した他のポリイソシアネートは、国際公開第98/37115号パンフレット、国際公開第2014/133111号パンフレット、又は欧州特許第1877839号明細書に記載されている。
【0043】
本発明で使用され得るポリチオールは、少なくとも2つのスルフィドリル(メルカプト)基を含む化合物と定義され、換言すればジチオール、トリチオール、テトラチオール等である。ポリチオールプレポリマーが使用され得る。
【0044】
本発明により適当である好ましいポリチオールモノマー及び/又はオリゴマーとして、脂肪族ポリチオール、例えばトリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8(又は4,7又は5,7)-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン及び2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、1-(1’-メルカプトエチルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1-(2’-メルカプロピルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1-(3’-メルカプロピルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1-(4’-メルカブチルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1-(5’-メルカペンチルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1-(6’-メルカヘキシルチオ)-2,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス-(4’-メルカプトブチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス-(5’-メルカプトペンチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス-(6’-メルカプトヘキシルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス-(3’-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3-トリス-(2’-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス-(4’-メルカプトブチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス-(6’-メルカプトヘキシルチオ)プロパン、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンチオール-1,2,3-プロパントリチオール及び1,2-ビス(2’-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパンが挙げられ得る。ポリチオールの他の例は、国際公開第2014/133111号パンフレット、又は欧州特許第1877839号明細書に見出され得る。
【0045】
好ましい実施形態は、キシリレンジイソシアネートとペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)との組合せ、キシリレンジイソシアネートと4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンとの組合せ、2,5(又は2,6)-ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)と、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンとの組合せ、キシリレンジイソシアネートと4,8(又は4,7又は5,7)-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンとの組合せ、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートと4,8(又は4,7又は5,7)-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンとの組合せ、又はビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドと4,8(又は4,7又は5,7)-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンとの組合せである。
【0046】
本発明に適したポリチオウレタン樹脂の具体的な例は、三井東圧化学社からMR(登録商標)シリーズとして販売されているもの、特にMR6(登録商標)、MR7(登録商標)(屈折率:1.67)、MR8(登録商標)(屈折率:1.6)樹脂、MR10(登録商標)(屈折率:1.67)である。これらの光学材料、及びその調製に使用されるモノマーは、特に米国特許第4,689,387号明細書、米国特許第4,775,733号明細書、米国特許第5,059,673号明細書、米国特許第5,087,758号明細書、及び米国特許第5,191,055号明細書に記載されている。
【0047】
ポリエピスルフィド材料は、少なくとも1つのポリエピチオ(ポリエピスルフィド)モノマー又はオリゴマーと、少なくとも1つのポリチオール化合物(前述のとおり)との反応から又はポリエピチオ化合物に開環重合を行うことによって得ることができる。
【0048】
エピチオ官能基を有する特に好適なモノマーは、直鎖脂肪族ベータ-エピチオプロピルチオ化合物、例えばビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス[4-(ベータ-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(ベータ-エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル]スルフィドである。ポリエピチオ化合物の他の例は、国際公開第2014/133111号パンフレットに見出され得る。
【0049】
市販されているポリエピスルフィドベースの材料の具体的な例は、三井、又はMGCから入手可能な屈折率1.74のものである。
【0050】
ポリウレタンウレアは、ポリウレタンプレポリマーとポリアミン硬化剤、典型的にジアミンの反応生成物である。市販の例は、PPG IndustriesのTrivex(登録商標)(屈折率:1.53)である。
【0051】
ポリアミンとは、少なくとも2つのアミン基、好ましくは2~6つのアミン基を有する化合物を意味する。ポリアミンは、第一、若しくは第二のポリアミン、又は一級、若しくは二級アミン官能基の両方を含む化合物であり得る。ポリアミンは、好ましくは、アミノ基NH(第一のポリアミン)、又は一級アミノ基(第二のポリアミン)、より好ましくはアミノ基を含む。ポリアミンは、脂肪族、又は芳香族であり得、複素環式を含む。有益なポリアミンには、特にHN-(CH-NH型であり、nが2~10であるフェニレンジアミン、例えばパラフェニレンジアミン、及び脂肪族ジアミン、特にエチレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメトリルシクロヘキサンが含まれる。
【0052】
ポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物から得られる。本発明において使用され得るポリオール(多価アルコールの略称)は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物と定義され、換言すればジオール、トリオール、テトロール等である。ポリオールプレポリマーが使用され得る。
【0053】
本発明で使用され得るポリオールの非限定的な例には、(1)低分子量のポリオール、換言すれば数平均分子量が400未満のポリオール、例えば脂肪族ジオール、例えばC2~C10脂肪族ジオール、トリオール及びそれを上回るポリオール等、(2)ポリエステルポリオール、(3)ポリエーテルポリオール、(4)アミド基を含むポリオール、(5)ポリアクリル酸ポリオール、(6)エポキシポリオール(7)ポリビニルポリオール、(8)ウレタンポリオール、及び(9)ポリカーボネートポリオールが含まれる。有益なポリオール化合物の詳細な例は、国際公開第2014/133111号パンフレット又は国際公開第2017/077359号パンフレットに見出され得る。
【0054】
本発明に有益なポリウレタンは、米国特許第5,962,617号明細書及び米国特許第6,127,505号明細書に記載されており、これらは、参照によって本明細書に援用される。
【0055】
他の実施形態において、光学材料は、アリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作される。アリルモノマー、又はアリルオリゴマーは、少なくとも1つのアリル基を含む化合物である。
【0056】
前記化合物は、アリルグリコールカーボネート、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ネオペンチルグリコールビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、ビスフェノールAビス(アリルカーボネート)、ジアリルフタレート、例えばジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート及びジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリトリトールジアリルエーテル及びソルビトールジアリルエーテルからなる群において選択され得る。
【0057】
1つの実施形態において、光学材料は、例えば、CR-39(登録商標)の商品名でPPG Industries社から販売されているジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のポリマー、及びコポリマー等のアルキレングリコールビスアリルカーボネートの重合、又は共重合により得られ、対応する市販のレンズは、ESSILORから販売されているORMA(登録商標)レンズと呼ばれる。
【0058】
アリル含有重合性組成物は、また、前述のアリルモノマー、又はオリゴマー(その例は欧州特許第3282290号明細書に記載されている)と重合可能な第二のモノマー、又はオリゴマーと、任意選択により、アリルモノマー重合に適した触媒、典型的にはラジカル発生重合触媒、例えば有機過酸化物、有機アゾ化合物、及びそれらの混合物とを含み得る。
【0059】
本発明による光学材料は、400~450nm、好ましくは420~450nmの範囲(青色光範囲内)の波長を有する入射光を少なくとも部分的にブロックする、すなわち光学物品の母材の少なくとも1つの幾何学的に画定される表面、好ましくは主表面全体を通した光毒性スペクトル範囲の透過を阻止する少なくとも1つの吸収型光学フィルタ手段(UV吸収剤)を含む。
【0060】
UV吸収剤は、UV光が網膜に到達することを減少させるか、又は阻止するために光学物品中(特に眼科レンズ材料中)に組み込まれることが多い。本発明において使用され得るUV吸収剤は、好ましくは、400nmより短い波長、好ましくは385、又は390nm未満のUV波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする能力だけでなく、電磁スペクトルの可視青色光範囲(400~450nm)、特に420~450nmに及ぶ吸収スペクトルを有する。最も好ましい紫外線吸収剤は、250~400nm、好ましくは350nm~370nmの範囲内に極大吸収ピークを有し、且つ/又は465~495nmの範囲、好ましくは450~550nmの範囲の光を吸収しない。
【0061】
前記UV吸収剤は、使用者の眼をUV光から保護するのと同時に母材自体も保護し、したがってそれが風化し、脆弱化し、且つ/又は黄色くなることを防止する。さらに、本発明のUV吸収剤は、少量のみ使用した場合でも、吸収による青色光カットを改善するのに効率的である。したがって、結果として得られる光学材料は、網膜細胞アポトーシス、又は加齢黄斑変性症に対する高いレベルの網膜細胞保護を提供する。
【0062】
本発明によるUV吸収剤は、限定されることなく、ベンゾフェノンベースの化合物、ベンゾトリアゾールベースの化合物又はジベンゾイルメタンベースの化合物、好ましくはベンゾトリアゾール化合物であり得る。適当なUV吸収剤は、限定されることなく、2-(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Seesorb(登録商標)703/Tinuvin(登録商標)326)又は他のアリルヒドロキシメチルフェニルクロロベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(Visorb 550)、n-オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート(Eversorb(登録商標)109)、2-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-ブトキシフェニル)ベンゾトリアゾール及びBASFが販売するTinuvin(登録商標)CarboProtect(登録商標)も含まれる。好ましい吸収剤は、ベンゾトリアゾール族のものである。青色光から保護するベンゾトリアゾールUV吸収剤の他の例は、国際公開第2017/137372号パンフレットに見出され得る。
【0063】
本発明による別の有益なUV吸収剤には、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-[4,6-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール(Tinuvin(登録商標)1600)、2-[2-ヒドロキシ-3-(ジメチルベンジル)-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)928)及び4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(Eusolex(登録商標)9020)が含まれる。
【0064】
1つの実施形態において、光学材料は、400~450nmの範囲の波長を有する光をブロックしない少なくとも1つのUV吸収剤をさらに含む。
【0065】
以下のUV吸収剤は、400~450nmの範囲の波長における吸収率がより低く、高い濃度において、又は先に挙げたUV吸収剤に加えて使用されなければならない:2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Seesorb(登録商標)709)、2-(3’-メタリル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、オクチル部分が分岐及び直鎖アルキルの混合物であるオクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-フェニル]プロピオネート及び米国特許第4,528,311号明細書において開示される2-ヒドロキシ-5-アクリルオキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール。
【0066】
本発明によるUV吸収剤は、好ましくは、重合中、光学材料中の化合物を網状化し得るいかなる不飽和重合性基又、は架橋性基、例えば非芳香族C=C二重結合等も含まない。
【0067】
本願で使用される本発明によるUV吸収剤化合物の量は、青色光、及びUV光からの満足できる保護を提供するのに十分であるが、沈殿を防止するために多すぎない量である。本発明のUV吸収剤化合物は、一般に、光学材料の総重量に対して(又は重合性化合物の100重量部あたり、若しくは光学材料組成物の重量に対して)0.05~4重量%の範囲、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%の量で存在する。
【0068】
1つの実施形態において、光学材料は、410nm~450nmの範囲内に(可視波長中の)その極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Bをさらに含む。本説明において、ピーク範囲は、トルエン中の20重量ppm色素溶液について示されている。
【0069】
黄色の色素である吸収色素Bの化学的性質は、特に限定されないが、その極大吸収ピークが410~450nmの範囲にあることが条件となる。FWHM(半値全幅)は、好ましくは、40nm未満、好ましくは30nm未満である。好ましくは、色素Bの極大吸収ピークは、410nm~428nmの範囲、好ましくは415nm~428nmの範囲内にある。本明細書で使用される限り、ある波長範囲内に吸収ピークを有するとは、吸収ピークの極大値がこの範囲内にあることを意味し、前記吸収は、その中に組み込まれた光学フィルタ手段を有する光学物品の吸収スペクトル(波長に応じた吸収率)を得ることにより測定される。
【0070】
好ましい吸収色素Bは、電磁スペクトルの410~450nmの範囲、好ましくは420~450nm範囲内の狭い吸収バンドを有する。理想的には、前記吸収バンドの中心は、420~430nm付近にある。これらは、好ましくは、可視スペクトルのうち、410~450nm波長範囲外の領域では吸収しないか又はほとんどしない(典型的には5%未満)。
【0071】
好ましくは、吸収色素Bは、410nm~450nm範囲内の光を選択的に阻止する。本明細書で使用される限り、ある手段がある波長範囲を「選択的に阻止する」のは、それが410~450nm範囲内の少なくとも一部の透過を阻止しながら、その波長範囲外の可視波長の透過に対して、特に具体的にそのように構成されていない限りほとんど、又は全く影響を与えない場合である。
【0072】
実際には、吸収色素Bは、通常、吸収により、410~450nm範囲外の波長の入射光の透過をある程度阻止し得る。
【0073】
吸収色素Bは、ポルフィリン、ポルフィリン錯体、コリン、クロリン、及びコルフィンを含むポルフィリンに関する他の複素環、それらの誘導体、又はペリレン、クマリン、アクリジン、インドレニン(3H-インドールとも呼ばれる)、アントラキノン、アゾベンゼン、フタロシアニン、シアニン、キノリン、ベンゾトリアゾール、ニトロベンゼン、イソキノリン、イソインドリン、ジアリルメタン、及びインドール-2-イリデン族から選択できる。誘導体は、一般的に添加、又は置換により得られる物質である。具体的な例には、オーラミンO、クマリン343、クマリン314、ニトロベンゾオキサジアゾール、ルシファイエローCH、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、プロフラビン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン、2-[4-(ジメチルアミノ)スチリル]-1-メチルピリジニウムヨージド、ルテイン、ゼアキサンチン、T890及びExciton社から入手可能な狭い吸収ピークを有する黄色色素、例えばABS-419(登録商標)、ABS-420(登録商標)、又はABS-430(登録商標)が含まれる。好ましい色素Bは、ABS-420(登録商標)である。
【0074】
吸収色素Bは、一般に、光学材料の総重量に対して(又は光学材料組成物の重量に対して)0.1~10,000重量ppm、好ましくは1~1000ppmの範囲の量で存在する。
【0075】
本発明による光学材料は、好ましくは、280~380nm(好ましくは280~400nm、さらにより好ましくは280~405nm)の範囲の波長を有する光の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%を、基本的にUV吸収剤による吸収を通してブロック又はカットする。最も好ましい実施形態において、280~380nm又は280~400nmの範囲の光の少なくとも96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は100%がブロックされる。
【0076】
1つの実施形態において、光学物品によりブロックされる400~450nmの範囲の波長を有する光の量は、8~50%、より好ましくは10~40%、さらにより好ましくは12~30%である。
【0077】
本願では、特定の波長範囲内の入射光の「X%をブロックする」とは、必ずしもその範囲内の幾つかの波長が完全にブロックされることを意味するわけではないが、それもあり得る。むしろ、明示された波長範囲内の入射光の「X%をブロックする」とは、その範囲内の前記光の平均でX%が透過されないことを意味する。本説明において、特に別段の明示がない限り、光のブロックは、0°~15°の範囲、好ましくは0°の入射角に関して定義される。
【0078】
加えて、光のブロックは、ここで、いかなるコーティング、特に反射防止コーティングも有さない光学材料について考慮される。これは、光学材料により反射される光が透過されず、ブロックされると考えられることを意味する。
【0079】
(コーティングされていない)光学材料の光カットオフ波長は、好ましくは、390nm以上、より好ましくは393nm以上、さらにより好ましくは395nm以上である。これは、好ましくは、465nm未満、より好ましくは450nm未満である。本開示において、光カットオフ波長とは、それ未満では光透過率が1%より低くなる波長と定義される。換言すれば、これは、透過率が1%未満である波長の上限である。光カットオフ波長が高いほど、青色光カット特性がより良好になる。
【0080】
本説明において、特に別段の明記がない限り、光学透過率/透過は、0.7~2mmの範囲、好ましくは2mmの厚さの場合の光学物品の中心において垂直入射(0°)で測定される。本明細書で使用される限り、ある波長範囲内の光学透過率は、この範囲内での透過光の平均であり、特に別段の明示がない限り、その範囲の各波長における眼の感度に応じて重み付けされない。最後に、光透過率は、特に別段の明示がない限り、コーティング、特に反射防止コーティングを有さない光学物品について測定される。特に、両方の空気/母材界面での反射は、各界面について約4~5%、すなわち1枚のレンズについて8~10%と光学透過率を大きく減少させる。
【0081】
さらに、場合により、青色スペクトルの比較的小さい部分、すなわち380~450nmの領域、好ましくは420nm~450nmの領域を選択的にフィルタリングすることが特に好ましいことがあり得る。実際、青色スペクトルをブロックしすぎると、暗所視、及び「概日サイクル」と呼ばれるバイオリズムを調整するためのメカニズムが妨害される可能性がある。したがって、好ましい実施形態において、光学材料は、465~495nm、好ましくは450~550nmの範囲の波長を有する光の1%未満をブロックする。この実施形態では、光学材料は、選択的に、光毒性の青色光をブロックし、概日リズムにおいて関係のある青色光を透過させる。好ましくは、光学材料は、465~495nm、より好ましくは450~550nmの範囲の波長を有する光の少なくとも85%を透過させる。この透過率は、その範囲内の透過光の平均であり、その範囲の各波長における眼の感度に応じた重み付けは行われない。他の実施形態において、光学材料は、465~495nmの範囲、好ましくは450~550nmの範囲の光を吸収しない。
【0082】
これらの吸収による光阻止のレベルは、吸収色素、及び/又はUV吸収剤の濃度を調整することによって制御でき、光学フィルタ手段がない場合に同じ波長範囲で透過される光の量に関して表現される。
【0083】
本願において後に定義される400~450nmの範囲内のBVC(B’)(青紫カット)により測定された、本発明の光学物品により提供される青色光保護は、18~50%、より好ましくは18~40%、より良好には20~40%、さらにより良好には20~35%の範囲である。
【0084】
母材に含められる青色光ブロック化合物(UV吸収剤、任意選択による吸収色素B等)の黄変効果を補償し、装用者にとっての且つ外部の観察者が見たときの美容的に容認可能な外観を有する光学物品を得るために、光学材料は、520nm~640nm、好ましくは550~620nm、より好ましくは550~610nm、555~610nm、570~620nm又は560~600nmの範囲において(可視波長中の)極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aを含む。これは、色補正成分として使用される。換言すれば、吸収色素Aは、上記の範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする。
【0085】
吸収色素Aは、青み剤、すなわち可視光スペクトル中、概して橙~黄色波長領域内の吸収バンドを有し、青~紫の色を呈する化合物(青~紫の着色色素)である。
【0086】
吸収色素Aの例には、例えば、ウルトラマリンブルー、アイアンブルー(プルシアンブルー-フェロシアン化第二鉄カリウム)、及びコバルトブルー等の無機色素、及び顔料、並びにフタロシアニン化合物、モノアゾ化合物、ジアゾ化合物、アジン化合物、トリアリルメタン化合物、及び濃縮多環化合物(例えば、インディゴ化合物及びアントラキノン化合物)等の有機色素、及び顔料が含まれる。
【0087】
具体的には、吸収色素Aの典型例には、Solvent Violet 13(商品名:Bayer又はClariantが販売する「MACROLEX Violet B」、三菱ケミカル株式会社が販売する「DIARESIN Blue G」、住友化学株式会社が販売する「SUMIPLAST Violet B」)、Solvent Violet 31(商品名:三菱ケミカル株式会社が販売する「DIARESIN Violet D」)、Solvent Violet 33(商品名:三菱ケミカル株式会社が販売する「DIARESIN Blue J」)、Solvent Violet 94(商品名:三菱ケミカル株式会社が販売する「DIARESIN Blue N」)、Solvent Violet 36(商品名:Bayerが販売する「MACROLEX Violet 3R」)、Solvent Blue 97(商品名:Bayerが販売する「MACROLEX Blue RR」)、Solvent Blue 45(商品名:Sandozが販売する「Polysynthren blue RLS」)、Nubiolaが販売する「NBK-1035 blue」、中央合成化学株式会社が販売する「Oil Black SF」、3C中央合成化学株式会社が販売する「Oil Black 109」、中央合成化学株式会社が販売する「SUDAN Black 141」、中央合成化学株式会社が販売する「NEO SUPER Black C-832」、中央合成化学株式会社が販売する「OIL BLUE BA」、Morton International社のMorplas Blue、Sensient社から入手可能なD&C Violet #2、中央合成化学株式会社が販売する「OIL BLUE 8BN」、メチレンブルー、Solvent Violet 11、14、26、37、38、45、47、48、51、59、及び60、並びにDisperse Violet 26、27、及び28が含まれる。上記の色素、及び顔料の何れかの組合せも使用できる。
【0088】
好ましい吸収色素Aは、アントラキノン色素、好ましくはSolvent Violet 33、又はSolvent Violet 13である。
【0089】
吸収色素Aは、無色の外観を得るために必要な量で使用されない。本発明の目的は、ほとんど中立色として認識される光学材料を提供することではない。むしろ、吸収色素Aは、光学材料の色相を調整して、青みを帯びて認識されるようにするのに十分なより多くの量、典型的には光学材料の総重量に対して(又は重合性化合物の重量あたり、若しくは光学材料組成物の総重量に対して)0.1~1000重量ppm、好ましくは0.1~100重量ppmで使用される。この量は、使用される青色光カット組成物の性質(強度)、及び量並びに望まれる最終的な色及び透過率に依存する。当業者であれば、色素A、及び青色光カット組成物のそれぞれの量は、透明で青みを帯びた材料を生成するために相互に適応させなければならないことがわかるであろう。このために、各化合物の最適な量は、単純な研究室での実験により特定できる。
【0090】
本発明による光学材料、又は物品は、色素により付与される色を少なくとも部分的にオフセットするために、少なくとも1つの他の色補正剤、及び/又は蛍光増白剤を含むことができる。この実施形態に関するさらなる詳細、例えば色補正成分又は蛍光増白剤の青色光波長ブロック系に関する配置、及び青色光ブロック成分と色補正成分とを含む別の例示的な系は、例えば、国際公開第2017/077358号パンフレット、米国特許第8,360,574号明細書、国際公開第2007/146933号パンフレット、国際公開第2015/097186号パンフレット、及び国際公開第2015/097492号パンフレットに見出され得る。
【0091】
1つの実施形態において、本発明による光学材料又は物品は、500nm以上且つ550nm未満の極大吸収波長を有するいかなる吸収色素Cも含まない。吸収色素Cの例は、出願国際公開第2018/021567号パンフレットに見出され得、例えばSolvent Red 52、Solvent Red 168又はSolvent Red 146である。
【0092】
1つの実施形態において、本発明による光学材料又は物品は、500nm以上且つ550nm未満の極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素C、例えばSolvent Red 52、Solvent Red 168又はSolvent Red 146を含む。
【0093】
1つの実施形態において、光学材料、又は物品は、色素(顔料を含む)、又はUV吸収剤であり得る少なくとも1つの光吸収添加剤を含むか、又は包囲するナノ粒子を含まない。1つの実施形態において、本発明による色素A、及び/又は色素B、及び/又はUV吸収剤は、ナノ粒子中に含まれないか、又は包囲されない。
【0094】
1つの実施形態において、光学材料又は物品は、本発明による色素A、及び/又は色素B、及び/又はUV吸収剤を含むか又は取り囲むナノ粒子を含む。前記ナノ粒子は、これらの化合物を個別に又は混合物として含むことができる。この実施形態は、国際公開第2018/029540号パンフレットにより具体的に記載されている。
【0095】
本発明による光学材料は、好ましくは、82%以上、好ましくは83%以上、より好ましくは84%以上及びより良好には85%以上の可視スペクトル内の相対的光透過率Tvを有する。
【0096】
本発明による光学材料で製作される光学物品は、一方、又は両方の空気/母材界面において反射防止コーティングで被覆できる。このような実施形態において、Tv率は、好ましくは、85%~99%、より好ましくは88%~98%、さらにより良好には88%~97%の範囲である。
【0097】
反射防止コーティングは、定義上、反射防止コーティングを有さない物品の反射と比較して反射を減弱させるコーティングである。
【0098】
反射防止コーティングが光学物品に堆積される場合、レンズの、反射防止コーティングで被覆された面の平均光反射率Rは、物品の面について、好ましくは2.5%未満(各面について)、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは≦0.75%及びさらにより好ましくは≦0.5%である。
【0099】
で示される「平均光反射率」は、ISO 13666:1998標準において定義されているようなものであり、ISO 8980-4標準に従って測定され(17°未満、典型的に15°の入射角に関する)、すなわち、これは、380~780nmの可視スペクトル全体にわたる荷重平均スペクトル反射である。
【0100】
Tv率は、系の「光透過率」とも呼ばれ、標準NF EN 1836で定義されているようなものであり、380~780nm波長範囲の、この範囲の各波長での眼の感度に応じて重み付けされた平均に関するものであり、D65照明条件(日昼光)下で測定される。
【0101】
本発明による光学材料は、吸収色素Aにより色補正されるため、改善された色特性を有し、これは、黄色度指数Yiで定量化できる。本発明の光学材料の白色度は、標準ASTM E313に記載されているような、C光源、2°観察者によるCIE三刺激値X、Y、Zに基づく比色測定により定量化され得る。本発明による光学材料は、好ましくは低い黄色度指数Yiを有し、すなわち上記の標準に基づく測定による場合に5以下、より好ましくは4、3、又は2以下である。黄色度指数Yiは、ASTM方法E313により、Yi=(127.69 X-105.92 Z))/Yを通して計算され、式中、X、Y、及びZは、CIE三刺激値である。
【0102】
本発明の光学材料の国際表色系CIE Lの比色係数a、b、C、及びhは、0°~15°の範囲、特に0°の入射角で光学材料を通して透過される光に関して、10°標準観察者及び標準光源D65を用いて、2mmの光学材料厚さについて380~780nmで計算される。観察者は、国際表色系CIE Lで定義されている「標準観察者」(10°)である。
【0103】
本発明による光学材料は、6以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5、4.5、4、3.5、3、2.5、2又は1.5以下(2mmの光学材料厚さについて)、一般的に0以上である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有する。光学材料の低い比色係数bは、その黄色くない外観と相関させることができる。
【0104】
本発明による光学材料は、好ましくは、-5以上、好ましくは3以下、より好ましくは1以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数aを有し、これは、好ましくは、-5~-1、より好ましくは0~-2.5の範囲である。
【0105】
本発明による光学材料は、120°以上且つ180°以下、好ましくは120°以上且つ145°以下、より好ましくは120°以上且つ140°以下(2mmの光学材料厚さについて)である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する。この色相角の範囲により、光学材料は、観察者により、透過時に緑みを帯びて認識されると予想される。驚くべきことに、本願の光学材料は、観察者により、透過時に青みを帯びて、すなわちそれらの色相角が200°~280°であるかのように認識される。
【0106】
他の実施形態において、本発明による光学材料は、121°、122°、又は123°以上である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する。
【0107】
反射防止コーティング等の1つ又は複数のコーティングを含み得る本発明の光学物品は、好ましくは、光学材料に関して開示した比色係数h、C、b、及びaの値を示す。
【0108】
したがって、本発明は、主前面と主後面とを有する母材を含む光学物品にも関し、前記母材は、400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのU吸収剤、少なくとも1つの吸収色素Aであって、520nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aを含む光学材料を含み、光学材料は、ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料、及びアリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作され、光学物品は、
- 2mmの光学材料厚さについて、6以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有し、
- 2mmの光学材料厚さについて、120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する。
【0109】
色素/顔料、及びUV吸収剤の濃度を調整して、所望の比色係数h、C、b、及びaと、400~450nm範囲の所望の青色光ブロックレベルとを得ることができる。
【0110】
光学材料の反射率は、好ましくは、1.53以上、より好ましくは1.55以上、より好ましくは1.58以上、及びさらにより好ましくは1.60以上であり、これは、好ましくは、1.80以下、より好ましくは1.70以下、及びさらにより好ましくは1.67以下である。特に別段の明記がない限り、本願で言及される屈折率は、25℃、波長550nmで表現される。
【0111】
本発明の光学材料は、一般的に、光、特にUV光線、及び/又は日光による影響を受けやすい色素の光劣化を制限又は回避する。
【0112】
本発明は、使用者の眼の少なくとも一部を、光毒性青色光、換言すれば400~450nm、好ましくは420~450nmの範囲の波長を有する光から保護するための上記の光学材料の使用にも関する。
【0113】
本発明の幾つかの態様において、光学材料の彩度(C)は、10未満(入射角15°の場合)、より好ましくは5、4、3.5、又は3未満である。残留色強度(彩度)の低い物品を得ることは、レンズの場合、装用者の快適な視点に関して好ましい。
【0114】
本発明の吸収色素、及びUV吸収剤は、光学材料/母材の塊中に、当技術分野でよく知られている方法により、好ましくは母材自体の製造中、例えばキャスティング重合、又は射出成型によって組み込むことができる。本明細書で使用される限り、色素とは、そのビヒクル中に溶けない顔料と、それ自体が液体であるか、又はそのビヒクル中に溶ける色素との両方を指し得る。
【0115】
これは、好ましくは、化合物を光学材料組成物(光学材料樹脂又は重合性組成物)に混合し、その後、適当な金型内で(液体)組成物を硬化させて、母材上に支持されるUV、及び青色光フィルタを形成することによって実行される。
【0116】
より具体的には、光学材料組成物は、ガスケット、又はテープを用いて一体に保持される金型のキャビティ内に注入される。結果として得られる光学材料の所望の特性に応じて、減圧下で脱気を行うことができ、且つ/又は加圧、若しくは減圧下でフィルタにかけてから、光学材料組成物を金型中に注入できる。組成物の注入後、金型、好ましくはレンズ用金型を、炉内、又は水中に浸漬させた加熱装置内で所定の温度プログラムに従って加熱し、金型内で樹脂を硬化させることができる。樹脂成型品には、必要に応じてアニーリングを行い得る。
【0117】
特に吸収色素、又はUV吸収剤が鋳込み成形、又は射出成型中に係わる高温に十分に耐えられない場合、他の方法も採用できる。このような方法には、母材を、対象の化合物が分散されている(その後、母材の本体中に拡散する)有機溶剤、及び/又は水性ホットバス中に浸漬させることを含む含浸、若しくは浸染方式、含浸可能な一時的コーティングを含む、特開2000-314088号公報及び特開2000-241601号公報に記載されている拡散方式、又は米国特許第6534443号明細書、及び米国特許第6554873号明細書に記載されているような昇華材料を用いる非接触着色が含まれる。これらの方法は、例えば、国際公開第2017/077357号パンフレットにより詳細に記載されている。
【0118】
光学材料組成物は、前述のもの以外に当技術分野で一般的に使用されている添加剤を含むことができ、これは、例えば、内部離型剤、樹脂改質剤、光安定剤、重合触媒、色補正剤、連鎖延長剤、架橋剤、酸化防止剤、又はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)のフリーラジカルスカベンジャ、他の色素、顔料、フィルタ、及び接着促進剤である。
【0119】
本発明による光学材料組成物は、一般に、重合を開始するための系(触媒)を含む。重合開始系は、重合性化合物の性質に応じて、1つ、又は複数の熱、若しくは光化学重合開始剤、又は代替的に熱、及び光化学重合開始剤の混合物を含むことができる。一般に、開始剤は、組成物中に存在する重合性化合物の総重量に対して0.01~5重量%の比率で使用される。
【0120】
特に、ポリウレタンウレアとポリチオウレタン樹脂の重合、又は(共)重合により得られる母材の場合、好ましい触媒は、アルキルすず、酸化アルキルすず、金属配位錯体、又はアミンから選択され、より好ましくはアルキルすずである。アルキルすずの好ましい比率は、組成物中に存在する重合性化合物の総重量に対して0.02~2重量%である。好ましいアルキルすずは、ジブチルすずジクロリド及びジメチルすずジクロリドである。
【0121】
したがって、本発明は、本明細書に記載されているような光学材料を調製する方法にも関し、これは、
- 400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤と、少なくとも1つの吸収色素Aであって、520nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aと、ポリチオウレタン材料、又はその前駆体、ポリウレタンウレア材料、又はその前駆体、ポリエピスルフィドモノマー、若しくはオリゴマーの重合、若しくは共重合から得られる材料、又はその前駆体、及びアリルモノマー、若しくはオリゴマーの重合、若しくは共重合から得られる材料、又はその前駆体から選択される材料、又は化合物とを混合することによって光学材料組成物を調製するステップと、
- 前記光学材料組成物を好ましくは金型中で硬化させて、ポリマーマトリクスと前記少なくとも1つのUV吸収剤及び吸収色素Aとを含む光学材料を形成するステップと
を含む。
【0122】
方法は、一般に、所望の色素/顔料、及びUV吸収剤と、少なくとも1つの重合性化合物とを含む重合性組成物の調製を含む。
【0123】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの重合性化合物は、アリルグリコールカーボネート、ポリチオール、ポリオール、ポリアミン、ポリエピスルフィド、ポリイソシアネート、及びポリイソチオシアネートから選択される。
【0124】
本発明の1つの実施形態において、重合性組成物は、最初にUV吸収剤を少なくとも1つの第一のモノマーと混合して均一な第一の組成物を取得することによって調製され、その後、少なくとも1つの第二のモノマーが任意選択により前記組成物に添加されて、第二の組成物が得られる。触媒等の添加剤は、第一、及び/又は第二の組成物に添加できる。吸収色素Aは、好ましくは、第二の組成物に添加される。
【0125】
本発明によるプロセスは、それが着色等の特定のステップ及びUV吸収剤を含む特定のコーティングを必要としないため、有利である。
【0126】
本発明は、主前面と主後面とを有する母材を含む光学物品に関し、前記母材は、本説明で開示される光学材料をさらに含む。光学物品は、好ましくは、眼科レンズ、例えばプラスチック眼鏡レンズである。
【0127】
1つの実施形態において、光学物品は、
- 400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的にブロックする少なくとも1つのUV吸収剤と、
- 少なくとも1つの吸収色素Aであって、520nm~640nmの範囲内にその極大吸収波長を有する少なくとも1つの吸収色素Aと
を含む光学材料で製作され、光学材料は、
- ポリチオウレタン材料、ポリウレタンウレア材料、ポリエピスルフィドモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料、及びアリルモノマー、又はオリゴマーの重合、又は共重合から得られる材料から選択される材料で製作され、
- 2mmの光学材料厚さについて、6以下、好ましくは以下の値:5.5、5、4、3の何れか1つ以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される比色係数bを有し、
- 120°以上且つ180°以下である、CIE(1976)L国際表色系で定義される色相角hを有する。
【0128】
以下の実施例は、本発明をより詳細に、ただし非限定的な方法で例示する。特に別段の明示がない限り、本願において開示されるすべての厚さは、物理的厚さに関する。
【実施例
【0129】
1.使用される化学薬品
光学材料は、重合性モノマー、触媒としてジメチルすずジクロリド(CAS No.753-73-1)、吸収色素AとしてDiaresin Blue J(登録商標)(三菱ケミカル株式会社が販売する、Solvent Violet 33、CAS No.86090-40-6としても知られる青み剤)又はSolvent Violet 13(Clariantが販売するCAS No.81-48-1)、離型剤としてZelec UN(登録商標)、400~450nmの範囲の波長を有する光を少なくとも部分的に阻止する1つ、又は複数のUV吸収剤及び任意選択により、吸収色素Bであって、410nm~450nmの範囲にその極大吸収波長を有する吸収色素BとしてABS-420(登録商標)(Exciton社が販売する、421nm付近に中心をおく狭い吸収ピークを有する選択的黄色色素)を含む組成物から調製された。
【0130】
この実施例で使用されたモノマーは、ノルボルネンジイソシアネート(ISO、CAS No.74091-64-8)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(THIOL1、CAS No.7575-23-7)及び2,3-ビス((2-メルカプトエチル)チオ)-1-プロパンチオール(THIOL2、CAS No.131538-00-6)であり、これらは、反射率1.6のポリチオウレタンマトリクスを生成するためのものである。
【0131】
この実施例で使用された本発明によるUV吸収剤は、Seesorb(登録商標)709(シプロ化成株式会社が販売する2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、CAS No.3147-75-9)、Seesorb(登録商標)703(シプロ化成株式会社が販売する2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、CAS No.3896-11-5)、Eversorb(登録商標)109(Everlight Chemicalが販売する、青色光に対する保護を提供するUV吸収剤、n-オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、CAS No.83044-89-7)、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン(Sigma-Aldrichが販売する有名なUV吸収剤1、CAS No.85-19-8)、Eusolex(登録商標)9020(Merck KGaAが販売する、アヴォベンゾンとも呼ばれる4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、CAS No.70356-09-1)、Tinuvin(登録商標)928(2-[2-ヒドロキシ-3-(ジメチルベンジル)-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール)及びTinuvin(登録商標)1600(BASFが販売する2-[4,6-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール)である。
【0132】
2.鋳込み成形によるレンズの製造
タイピングプロセスにより凸及び凹型を組み立てる。中央厚さ調整を行って、2mm厚さのサンプルを得た。
【0133】
窒素吸引用ガラスチューブ及び真空接続を有する100mLのねじ口ボトルを用いて、例1-2628の調合物を小さいバッチサイズで調製した。UV吸収剤成分を、ISOモノマー(イソシアネート部)に、室温(25℃)において、又はそのUV吸収剤が室温(25℃)で溶けない場合には中程度の加熱下(30℃)において、均質な混合物が得られるまで混合した。
【0134】
ジメチルすずジクロリド触媒を反応混合物に添加し、それを10℃まで冷却してから、チオールモノマーTHIOL1、及びTHIOL2を添加し、真空下で均一になるまで攪拌した。調製の最後に吸収色素及び離型剤を添加した。幾つかの実施形態において、吸収色素Aは、モノマーTHIOL2の溶液中で導入される。
【0135】
組み立てた金型に最終の調合物をシリンジで充填し、重合反応を最大130℃の調整電子オーブンで1日にわたって行った。その後、型を分解し、中央厚さが2mmの、熱硬化性材料の本体を含む平面(屈折力なし)レンズを得た。表面活性化溶液中への浸漬及び超音波処理によってレンズを洗浄し、その後、すすぎ、乾燥させた。
【0136】
3.特徴付け
Hunter社のCary 4000分光光度計を用いて、レンズの光学特性を特定した。可視スペクトル中の光透過率Tvは、装用者の視野角からの透過モードにおいて、レンズ(中央厚さ2mm)の後(凹)面を検出器に向け、光がレンズの前面から入射する状態で測定した。Tvは、D65光源条件(日昼光)で測定した。光カットオフ波長を透過スペクトルから特定した。
【0137】
上述の分光光度計を使用し、白い背景でレンズの前(凸)面を検出器に向け、光がレンズの前記前面から入射する状態で、反射測定を通して、標準ASTM E 313-05に記載されているようなCIE三刺激値X、Y、Zを測定することにより、製作されたレンズの黄色度指数Yiを前述のように計算した。観察者の視野角からYiを測定するこの方法は、実際の装用状況に最も近い。
【0138】
光毒性青色光からの保護は、400nm~450nmの平均青色光保護指数BVCを、透過スペクトルに基づく光ハザード関数B’(λ)により重み付けして計算することによって証明された。このような指数は、以下の関係を通して定義し、入射角0°で測定した:
【数1】
式中、T(λ)は、0°~17°、好ましくは0°の入射角で測定された、ある波長のレンズ透過率を表し、B’(λ)は、本願の出願人の名義による出願国際公開第2017/077359号パンフレットの図1に示される光ハザード関数(相対的スペクトル関数効率)を表す。前記光ハザード関数は、Paris Vision InstituteとEssilor Internationalとの共同作業により得られたものである。この図から、青色光は、428~431nmで人間の目にとって最も危険であることがわかる。400~450nmのB’(λ)関数の幾つかの数値を以下に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
Q-sunテストの太陽光条件に暴露させた後、本発明のレンズの光劣化に対する耐性を評価した。Q-sun試験は、調製された材料を、Q-LABから購入した、全スペクトルの太陽光を再現するQ-SUN(登録商標)Xe-3キセノンチャンバ内にも相対湿度20%(±5%)、温度23℃(±5℃)の条件で入れ、それを照射に40時間又は80時間暴露させることを含む。再びCary 4000分光光度計によりレンズの光学特性を測定し、新たな透過スペクトルを得て、Q-sunテストにより生じた変化を計算した。
【0141】
4.調製した調合物及び結果
調製した調合物並びにこれらの調合物及び最終レンズの特性を下表に示す。
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
400~450nmの範囲の光の透過を削減するための異なる添加剤(青色光を部分的にブロックする各種のUV吸収剤、及び実施例1~4では吸収色素B)を用いて青色光カット機能を有するレンズを製作し、これらの添加物により生成される色を、青み剤として吸収色素Aを異なるレベルで添加することにより改質した。青み剤の量を増やすことにより、青みを増すレンズ群を得ることができる。
【0147】
結果は、本発明による光学物品が良好な青色光保護(BVC:24~34%)、良好なUV光保護(光カットオフ波長≧393nm)、高い可視スペクトル透過率(反射防止コーティングを用いずに、Tv>82%)及び良好な美容的外観(低いYi)を実現することを示している。
【0148】
吸収色素A(青み剤)の量を増やすと、透過率(Tv)、黄色度指数Yi、及びbが低下する一方、aは、一定のままであり、したがって緑み、又は赤みの傾向を示すことなく「純粋な青」への寄与が加わる。
【0149】
Q-sun試験を80時間行った後にYi、及びb*の有意な変化がないことは、使用される吸収色素Aが光安定であることを示し、すなわち、レンズは、厳しいUV暴露下でのエージング後にも黄色みを増したように見えない。
【0150】
官能分析
行った試験により、本発明によるレンズがより受け入れられることが確認された。
【0151】
第一の試験
5人のグループについて、本発明によるレンズを白いプラスチックポリマーの基板マットの上に置き、蛍光増白剤を用いず、レンズ表面での光の反射ができるだけ見えないように非直接蛍光光源下での透過中にそれらの色合いを観察した。
【0152】
観察者全員が、レンズが青みを帯びた色合いを有すると自発的に識別した。
【0153】
第二の試験
本発明のレンズを比較用レンズ、すなわち以下の特徴を有する市販の青色光カットレンズと共に、第一の試験と同様に置いて観察した。
=-1.9、b=3.6 h=118° C=4.1 BVC=28% Tv(D65)=95%
【0154】
本発明のすべてのレンズが、黄緑に見える比較のための市販のレンズより好ましいとされた。