(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】広範囲マイクロ波プラズマCVD装置およびその成長の方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/511 20060101AFI20240216BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240216BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C23C16/511
H05H1/46 B
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020562608
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 NO2019050103
(87)【国際公開番号】W WO2019216772
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519326448
【氏名又は名称】ベストランデツ イノバシオンセルスカップ アーエス
【氏名又は名称原語表記】Vestlandets Innovasjonsselskap AS
【住所又は居所原語表記】Thormohlens gate 51, 5006 Bergen, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユースタス ツァリーカス
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-138889(JP,A)
【文献】特開2004-200646(JP,A)
【文献】特開2007-180034(JP,A)
【文献】Y. Chen et al.,UNEQUALLY SPACED AND EXCITED RESONANT SLOTTED-WAVEGUIDE ANTENNA ARRAY BASED ON AN IMPROVED RESONANT-SLOT COUPLED CAVITY CHAIN COMPOSITE RIGHT/LEFT-HANDED WAVEGUIDE,Progress In Elevtromagnetics Research,Vol.110,2010年,pp. 421-435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/511
H05H 1/46
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LA・MPCVD(広範囲マイクロ波プラズマ化学気相成長)反応器装置であって、
反応器チャンバであって、第1の周波数の電磁エネルギによって前記反応器チャンバの内部にプラズマ領域を設ける反応器チャンバと、
右手・左手系複合(CRLH)導波管区域であって、前記第1の周波数にて無限波長で動作し、かつ前記CRLH導波管区域の内部から前記反応器チャンバの内部に前記電磁エネルギを結合するように配置されたカプラ手段を壁内に有する、CRLH導波管区域と、
を備える、LA・MPCVD反応器装置。
【請求項2】
前記カプラ手段は、互いに離間した複数の電磁エネルギカプラを備える、請求項1記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項3】
前記カプラ手段は、前記CRLH導波管区域の前記壁にスロットを備える、請求項1または2記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項4】
エネルギ出力部を有する電磁エネルギ源を備え、
前記CRLH導波管区域内の1つまたは複数のCRLH導波管は、前記エネルギ出力部に結合された第1のエネルギ入力端部を有する、請求項1、2または3記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項5】
前記CRLH導波管区域内の前記1つまたは複数のCRLH導波管は、第2の短絡端部を有する、請求項4記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項6】
前記反応器チャンバは、第1および第2のサブチャンバを備え、前記第1のサブチャンバは前記カプラ手段を備え、前記第2のサブチャンバは、前記プラズマ領域を備えるように適合され、電磁エネルギは、前記CRLH導波管区域から前記第1のサブチャンバを介して前記第2のサブチャンバに提供される、請求項1から5までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項7】
前記第1および第2のサブチャンバは、断面において同じ面積を有する、請求項6記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項8】
前記第2のサブチャンバは、前記プラズマ領域を大気圧から分離するように配置された石英窓を備える、請求項6または7記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項9】
前記第1および第2のサブチャンバは、互いの上に配置されるとともに各端部で相互接続されている、請求項6から8までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項10】
前記電磁エネルギは、前記第1の周波数でマイクロ波エネルギである、請求項1から9までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項11】
前記第1の周波数は、2.45GHzである、請求項1から10までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項12】
前記CRLH導波管区域は、並んで配置された複数のCRLH導波管を備える、請求項1から11までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項13】
前記CRLH導波管区域は、周期的にカスケード接続された単位セルを備え、周波数と位相シフトとの間の前記単位セルの関係は構成可能である、請求項1から12までのいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項14】
前記単位セルは、該単位セルの内部寸法を修正するように構成されたチューニング要素を備える、請求項13記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項15】
前記チューニング要素は、前記単位セルに挿入されるように配置される一対のスタブを備える、請求項14記載のLA・MPCVD反応器装置。
【請求項16】
反応器チャンバ内で広範囲プラズマ化学気相成長の方法であって、該反応器チャンバは、第1の周波数の電磁エネルギによって前記反応器チャンバの内部にプラズマ領域を設けるように配置されており、前記方法は、
右手・左手系複合(CRLH)導波管区域の内部から前記反応器チャンバの内部に、前記CRLH区域の壁カプラ手段を介して電磁エネルギを結合することを含み、前記CRLH導波管区域は、前記第1の周波数にて無限波長で動作するように配置される、反応器チャンバ内で広範囲プラズマ化学気相成長の方法。
【請求項17】
前記CRLH導波管区域は、周期的にカスケード接続された単位セルを備え、該単位セルは、前記単位セルの内部寸法を修正するように構成されたチューニング要素を備え、
前記方法は、チューニング要素を調節することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
エネルギ出力部を有する電磁エネルギ源は、前記CRLH導波管区域の入力部に接続され、
前記方法は、前記チューニング要素を反復的に調節するとともに前記電磁エネルギ源を前記CRLH導波管区域とインピーダンス整合させることによって、測定される反射電力を最小化することを含む、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ化学気相成長(MPCVD)のための反応器装置および方法に関する。
【0002】
背景技術
既知のマイクロ波プラズマ化学気相成長(MPCVD)反応器は、MPCVD反応器チャンバの内部に結合されかつ該内部にマイクロ波エネルギを送達するマイクロ波エネルギ源を採用する。受信したマイクロ波エネルギの共振空洞を形成するMPCVD反応器チャンバは、チャンバ内に、近くに位置する基板上に堆積させる材料の蒸気を形成する反応を促進する高温プラズマを基板近傍に形成するのに十分な高さの電界強度で電磁エネルギの電界を形作るよう設計される。
【0003】
ダイヤモンド材料を堆積させるための既知のMPCVD反応器装置では、マイクロ波エネルギ源によって発生させられたマイクロ波は、通常、マイクロ波放射エネルギ源と反応器チャンバとの間に配置された従来の導波管を通って反応器チャンバに入り、マイクロ波放射エネルギ源からの出力を、従来の導波管カプラを介して反応器チャンバの壁の開口部を通して結合する。反応器空間に入った波は、反応器チャンバの壁によって偏向され、空洞の内壁からの反射によってさらに伝播するチャンバの設計および形状によるものであり、その結果、該波は、反応チャンバ内に配置されるのに適した基板ホルダの真上の、反応器チャンバの雰囲気の比較的小さいボリューム内にプラズマを形成するために集中する。次に、雰囲気の成分の反応が比較的小さなプラズマ領域内で起こり、該比較的小さなプラズマ領域では、チャンバ内のマイクロ波エネルギの強い局所電界が作動ガスをイオン化してダイヤモンド材料を形成し、そしてダイヤモンド材料の堆積が基板ホルダで支持された適切な基板上で起こる。基板ホルダは、通常、チャンバ内で垂直に移動するように配置されており、これにより共振空洞の共振特性も調節可能である。これは、入射する放射線の一部を反射する傾向がある高密度プラズマに有益であり、それが今後は空洞の共振特性に影響を及ぼす。
【0004】
マイクロ波エネルギおよびMPCVD反応器に関連する教示を含むいくつかの文献は次のとおりである:
- A. Kromka et al, Linear antenna microwave plasma CVD deposition of diamond films over large areas, Volume 86, Issue 6, 27 January 2012, Pages 776-779;
- S. Liao et al, Synthesis, Simulation and Experiment of Unequally Spaced Resonant Slotted-Waveguide Antenna Arrays Based on the Infinite Wavelength Propagation Property of Composite Right/Left-Handed Waveguide, IEEE Transactions on Antennas and Propagation (Volume: 60, Issue: 7, July 2012);
- J. Kim et al, Large-area surface wave plasmas using microwave multi-slot antennas for nanocrystalline diamond film deposition, Plasma Sources Science and Technology, Volume 19, Number 1;
- Microwave engineering of plasma-assisted CVD reactors for diamond deposition, Journal of Physics Condensed Matter (Impact Factor: 2.35). 09/2009; 21(36):364202. DOI: 10.1088/0953-8984/21/36/364202;
- 米国特許出願公開第2005/0160986号明細書, J.-H. Hur et. al., 2005.07.28;
- L. XiaoJing et. al., IC3ME 2015 (pages 2170-2176);
- 米国特許第5230740号明細書, J.E.Pinneo ; 1993.07.27;
- 米国特許出願公開第2006/0153994号明細書, A.H.Gicquel et. al., 2006.07.13;
- 中国特許出願公開第103526187号明細書, Wuhan Inst. Technology, 2014.01.22.
- Y.A. Lebedev.Microwave discharges at low pressures and peculiarities of the processes in strongly non-uniform plasma. Plasma Sources Sci. Technol. 24 053001, 2015は、1950年から現在までの科学出版物に基づいて、10-2から約30kPaの圧力でセンチメートル-ミリメートルの波長のマイクロ波を使用してマイクロ波プラズマを発生する方法を再調査している。
- 米国特許出願公開第2005/000446号明細書は、電磁波を発生するための少なくとも1つの電磁波源と、電磁波源から発生した電磁波を分配するための電磁波分配導波管部分と、それぞれが電磁波分配導波管部分に結合された複数の導波管であって、同一平面上に設けられた複数の導波管と、各導波管内に設けられた複数のスロットと、各スロットに面するように設けられた少なくとも1つの電磁波放射窓と、電磁波放射窓から放射される電磁波によって内部でプラズマが発生する真空容器と、を含むプラズマ処理装置に関する。
- 欧州特許出願公開第0702393号明細書は、狭い窓を有するプラズマチャンバと、プラズマチャンバと結合するための矩形導波管とを含むプラズマ処理装置を開示し、矩形導波管は、プラズマチャンバの狭い窓に対向するとともに矩形導波管の導波管軸線方向に沿って延びるように矩形導波管のE面に配置された長いスロットを有する。さらに、少なくとも1つの矩形導波管に配置された少なくとも2つの長いスロットが設けられている。
- 韓国公開特許第2017-0101452号公報は、表面波プラズマデバイスに関するものであり、該表面波プラズマデバイスは、一方の端部で第1のマイクロ波電源に接続された複数のスロットアンテナを含む第1の導波管と、第1の導波管の反対側の端部に接続された第2のマイクロ波電源を有する第1の導波管と平行に配置された、複数のスロットアンテナを含む第2の導波管と、スロットアンテナから放射されたマイクロ波をチャンバ内に導入して表面波プラズマを発生させる誘電体板と、ガスをチャンバ内に供給するためのガス供給部分と、を含む。
【0005】
上記のMPCVD反応器は堆積範囲が限られているため、広範囲でエネルギ効率の高いプラズマ化学気相成長反応器装置が必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明によれば、新規の広範囲マイクロ波プラズマ化学気相成長(LA・MPCVD)反応器装置の設計が提案される。
【0007】
本発明は、独立請求項1による、右手・左手系複合(CLRH)導波管区域を備えるLA・MPCVD反応器装置を提供する。
【0008】
本発明はまた、独立請求項16による、反応器チャンバ内で広範囲プラズマ化学気相成長の方法である。
【0009】
本発明のLA・MPCVDおよび方法は、異なる基板上の広範囲にわたる均一なフィルムの堆積を可能にする。
【0010】
本発明による反応器の用途の例は、反応器空洞をスケーリングして、発生するプラズマの領域のサイズを増大させる可能性であり、例えば、標準サイズのウェハをダイヤモンドコーティングすることができる。
【0011】
次に、本発明の原理、動作、および利点を例示するために、本発明の実施形態を、以下の図を参照してさらに詳細に説明する。マイクロ波の特徴をよりよく説明するために、いくつかの図は空洞、つまり物理的要素自体ではなく要素の内部空間を示していることに留意されたい。これにより、空洞自体および空洞内の電界分布を簡単に視覚化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、右手・左手系複合(CRLH)導波管の空洞を示す斜視図である。
【
図2】
図1の空洞の上面の電流密度を示す図である。
【
図3】導波管からのマイクロ波エネルギを結合するためのスロットを有する、並んで配置され端部が短絡した複数のCRLH導波管を採用する、本発明によるLA・MPCVD反応器装置の第2の例の典型的な構成の空洞および原理ならびに均一な電流密度分布を示す別のカプラの上面図である。CRLH導波管の空洞のみが示され、物理的なデバイスは示されていないことに留意されたい。
【
図4A】
図3に示すように、一式のCRLH導波管に接続された本発明の実施形態による共振空洞を示す3D CADモデル図である。ここでは、空洞のみが示されている。
【
図4B】
図4Aに示した共振空洞のyz平面およびxz平面の電界分布を示す図である。視認され得るように、電界は共振空洞の大きなボリュームにわたって高い。
【
図5】yz方向の磁場分布を示す図である。ここで、矢印は方向および磁場強度の両方を示している。大きくて太い矢印は、小さくて細い矢印よりも磁場強度が大きいことを示している。
【
図6】
図4Aの実施形態について、反応器の断面ならびにxy平面、xz平面およびyz平面における電界分布を示す図である。赤色実線は堆積チャンバの壁を示し、黒い囲み点線は石英窓を表す一方、黒い囲み破線は堆積範囲を表している。
【
図7A】
図3に示すように、一式のCRLH導波管に接続された、本発明による共振空洞の3D CADモデルを示す図である。ここでは空洞のみが示されていることに留意されたい。ここで、反応器空洞は2つの主要なボリュームである第1のサブチャンバと第2のサブチャンバとに分割され、この例では下側ボリュームと上側ボリュームとにそれぞれ対応する。
【
図7B】
図7Aに示す本発明の実施形態によるLA・MPCVD反応器装置内部の電界の3次元図を提供する斜視断面図である。
【
図8】
図7Aの共振空洞の実施形態についてのyz方向の磁場分布を示す図である。ここで、矢印は方向および磁場強度の両方を示している。大きくて太い矢印は、小さくて細い矢印よりも磁場強度が大きいことを示している。
【
図9】
図7Aの実施形態についてのyz平面における電界分布を示す断面図である。黒い囲み点線は、石英窓の可能な位置を表している。
【
図10A】
図7に示す実施形態によるLA・MPCVD反応器装置の所定の瞬間における空洞内の電界を示す斜視図であり、該LA・MPCVD反応器装置は、並んで配置され端部が短絡した4つのCRLH導波管デバイスと、共通のマイクロ波エネルギ源からすべてのCRLH導波管デバイスにマイクロ波エネルギを供給するように配置された導波管ラインおよびT字ジャンクションなどのスプリッタの装置とを備えている。水平に配置された石英窓も示されている。
【
図10B】
図10Aの実施形態の物理的実装を示す斜視図である。ここで、LA・MPCVD反応器は、真空チャンバの下に並んで配置され端部が短絡した4つのCRLH導波管デバイスと、図面の下部にある矩形の入力ポートに接続されるべき共通のマイクロ波エネルギ源からすべてのCRLH導波管デバイスにマイクロ波エネルギを供給するように配置された導波管ラインおよびT字ジャンクションなどのスプリッタの装置と、を備える。3スタブチューナなどのインピーダンス整合ユニットが、エネルギ源と入力ポートとの間に使用されてもよい。
【
図11】xz平面での電界分布を示す断面図である。囲み破線はプラズマ領域を示している。この分布は、
図4Aに示す実施形態の分布、または
図7Aの実施形態の分布、第2のサブチャンバ、反応器チャンバの上側ボリュームを表すことができる。
【
図12A】
図7Aに示す実施形態による反応器の詳細を示す断面概略図である。
【
図12B】
図10Bに示す反応器真空チャンバの上半分の物理的実装を示す斜視図である。この図では、上の
図12Aに示されている反応器の詳細を示すために、前板が取り外されている。
【
図13A】CRLH導波管の単位セル空洞の斜視図である。
【
図13B】2.45GHzの周波数での単位セルあたりの位相シフトを表す分散図である。
【
図13C】周波数が2.45GHzであるときの本発明の実施形態による単位セル空洞の測定値をmmで示す図である。
【
図13D】本発明の一実施形態によるCRLH導波管のスロットの測定値および配置を示す図である。この実施形態では、スロットは、導波管のz方向およびx方向に対して45度に配置されかつ40mmの長さおよび8mmの幅を有する。
【
図14A】単位セルの寸法を調節するためにスタブをどのように使用できるかを示す図である。図示されている単位セルは空洞である一方、スタブは物理的要素を表していることを認識されたい。
【
図14B】単位セルの寸法を変更するためにスタブを空洞内にどのように入れることができるかを示す、上部が切り取られた断面図である。ここでは、本発明によるCRLH導波管の物理的実装が示されている。空洞は、導波管内部に配置された順次配置された単位セルである。
【
図15】反応器を、反応器のために設計されている公称周波数から逸脱する異なる作動周波数に適合させるための方法の実施形態を示すブロック図である。
【0013】
図面では、x方向およびy方向はCLRH導波管に垂直であると定義される一方、z方向は導波管の長手方向である。さらに、y方向は導波管から反応器への方向である。方向はほとんどの図面に示されている。方向の定義は説明のためにのみ提供されており、代わりに他の定義を使用することもできる。
【0014】
提出された図はカラーで提示されている。これにより、反応器およびその要素内の電流分布、例えばCLRH導波管区域の電流分布の説明が改善される。赤色は最も高い電流密度を示す一方、青色は最も低い電流密度を示す。赤色と青色との間には、電流密度が減少してゆくオレンジ色、黄色、緑色の範囲がある。赤色、つまり最も高い電流密度は、例えば、
図2および
図3のCLRH区域に沿う中心部、
図7Bおよび
図9Bの上部チャンバの中央、ならびに
図11の中央に視認され得る。
【0015】
発明の詳細な説明
以下では、本発明は、広範囲マイクロ波プラズマ化学気相成長反応器と呼ばれ、本明細書では頭字語LA・MPCVDによって識別される。概して、本発明のLA・MPCVDは、第1の態様において、マイクロ波エネルギの広範囲堆積チャンバへの新規の結合を提供する。
図3に示すように、マイクロ波エネルギカプラは、右手・左手系複合(CRLH)導波管の無限波長特性の少なくとも一区域に基づく。CRLH導波管デバイスは、一連の導波管単位セルによって構成される、CRLH導波管の短絡区域であり得る。一連における各単位セルは、マイクロ波エネルギの作動周波数に整合する周波数に対して分散がゼロの左手(LH)通過帯域および右手(RH)通過帯域に位相シフトを提供するように設計される。典型的には、実用的な実施形態では、マイクロ波エネルギ発生器は、2.45GHzの周波数で動作することができる。CRLH導波管の、その「無限波長伝播周波数」で動作するこの特性を適用すると、導波管の壁の異なる部分の電流は、いかなる時でも一見して均一または「コヒーレント」であり、「z」とラベル付けされた軸線によって示すように導波管内で長手方向へのマイクロ波伝播の方向に沿って一見して変動することなく、本発明のCRLH導波管デバイスに含まれるCRLH導波管の短絡区域の実質的に全長にわたって延びる。
【0016】
導波管から出てLA・MPCVD反応器チャンバに入る一見均一な、または「無限波長の」、「コヒーレントな」電磁マイクロ波エネルギを結合するために、本発明のCRLH導波管デバイスには、導波管内を伝播するマイクロ波エネルギによって設定された均一に分布した「コヒーレントな」電流を運ぶCRLH導波管の壁に、1つまたは複数の、適切に寸法決めかつ配向されたスロットが設けられている。このようにして、短絡したCRLH導波管壁に沿ったすべてのスロット要素を励起して、時間的に同相または逆相のいずれかであるマイクロ波エネルギを出力することができる。
【0017】
均一な電界の範囲を、例えば、「y」とラベル付けされた軸線によって示された方向のような、本発明の単一のCRLH導波管デバイスのCRLH導波管におけるマイクロ波エネルギ伝播の方向とは異なる方向にも拡張するために、いくつかのCRLH導波管デバイスを並置構成に配置するとともに同時に動作させて、広範囲の均一なマイクロ波エネルギ電界を確立し、反応チャンバ内に広範囲の均一なプラズマ領域を設定することができる。
【0018】
したがって、第1の実施形態では、本発明はLA・MPCVD反応器装置(1)である。反応器装置(1)は、反応器チャンバ(2)を備え、この反応器チャンバ(2)は、第1の周波数の電磁エネルギによって反応器チャンバの内部にプラズマ領域を提供するように適合されている。反応器装置はさらに、CRLH導波管区域(3)を備え、このCRLH導波管区域(3)は、第1の周波数にて無限波長で動作するように適合されかつ壁内に、CRLH導波管区域(3)の内部から反応器チャンバ(2)の内部に電磁エネルギを結合するように配置されたカプラ手段(4)を有する。2つの異なる反応器装置が
図4Aおよび
図7Aにそれらの内部空洞によって間接的に示されている。
図10Bは、
図7Aの内部空洞を有する反応器装置(1)を示している。この実施形態によるCRLH導波管空洞を説明するために使用され得るCRLH導波管区域が、
図1に示されている。
【0019】
関連する実施形態では、カプラ手段は、互いに離間した複数の電磁エネルギカプラを備える。このカプラ手段は、CRLH導波管区域の壁にスロットを備えてもよい。
【0020】
関連する実施形態では、CRLH導波管区域内の1つまたは複数のCRLH導波管は、第2の短絡端部を有する。
【0021】
上記のLA・MPCVD反応器装置は、エネルギ出力部を有する電磁エネルギ源を備えてもよく、CRLH導波管区域内の1つまたは複数のCRLH導波管は、電磁エネルギ源のエネルギ出力部に結合された第1のエネルギ入力端部を有する。
【0022】
チューニングデバイスが、エネルギ出力部とエネルギ入力部との間に接続されてもよい。
【0023】
図3に示すように、CRLH導波管区域内の1つまたは複数のCRLH導波管は、第2の短絡端部を有してもよい。ここで、短絡端部は、第1のエネルギ入力端部の反対側にある。
【0024】
例えば
図7Aに示す第2の実施形態では、反応器チャンバは、第1および第2のサブチャンバを備え、第1のサブチャンバはカプラ手段を備え、第2のサブチャンバは、プラズマ領域を備えるように適合されている。電磁エネルギは、CRLH導波管区域から第1のサブチャンバを介して第2のサブチャンバに提供される。反応器チャンバ以外の他の要素は、第1の実施形態と同じであり得る。
【0025】
第1および第2のサブチャンバは、断面において同じ面積を有してもよい。
【0026】
第2のサブチャンバは、プラズマ領域を大気圧から分離するように配置された石英窓を備えてもよい。
【0027】
図7Aに示すように、第1および第2のサブチャンバは、互いの上に配置されるとともに各端部で相互接続されてもよい。
【0028】
電磁エネルギは、第1の周波数でマイクロ波エネルギであってもよく、該第1の周波数は、関連する実施形態では、2.45GHzであってもよい。
【0029】
LA・MPCVD反応器装置は、1つまたは複数のCRLH導波管を備えていてもよい。
【0030】
上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができる第3の実施形態では、CRLH導波管区域は、
図3に示すように並んで配置された複数のCRLH導波管区域を備える。
【0031】
上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができる第4の実施形態では、CRLH導波管区域は、周期的にカスケード接続された単位セルを備える、上記の請求項のいずれか1項記載のLA・MPCVD反応器装置である。
【0032】
関連する実施形態では、周波数と位相シフトとの間の単位セルの関係は構成可能であってもよい。
【0033】
単位セルを構成するために、単位セルは、関連する実施形態において、単位セルの内部寸法を修正するように構成されたチューニング要素を備える。チューニング要素は、
図14A、
図14Bおよび
図14Cに示すように、各単位セルに挿入されるように配置される一対のスタブであってもよい。
【0034】
一実施形態では、本発明は、反応器チャンバ内に広範囲プラズマ化学気相成長の方法であり、反応器チャンバは、第1の周波数の電磁エネルギによって反応器チャンバの内部にプラズマ領域を提供するように配置されている。この方法は、CRLH導波管区域の内部から反応器チャンバの内部に、CRLH区域の壁カプラ手段を介して電磁エネルギを結合することを含み、CRLH導波管区域は、第1の周波数にて無限波長で動作するように配置される。壁カプラ手段は、ここでは、例えば
図3に示すようにスロットであってもよい。
【0035】
一実施形態では、CRLH導波管区域は、周期的にカスケード接続された単位セルを備える。
【0036】
関連する実施形態では、単位セルは、単位セルの内部寸法を修正するように構成されたチューニング要素を備えてもよく、この方法は、チューニング要素を調節することを含む。
【0037】
関連する実施形態では、エネルギ出力部を有する電磁エネルギ源は、CRLH導波管区域の入力部に接続され、この方法は、チューニング要素を反復的に調節するとともに該電磁エネルギ源をCRLH導波管区域とインピーダンス整合させることによって、測定される反射電力を最小化することを含む。
【0038】
【0039】
さらに、この方法の反応器チャンバおよびCRLH導波管区域は、上記のLA・MPCVD反応器のための実施形態のいずれかからの特徴を備えてもよい。
【0040】
特定の実施形態
以下に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。概して、この実施形態は、互いに隣り合って配置されたいくつかのCRLH導波管、例えば
図3に示すように4つのCRLH導波管を備えるLA・MPCVD反応器を説明する。
図3に示す4つの導波管はすべて、磁流ベクトルが同じ方向を向くように配置されている。互いに隣り合って配置された任意の数のCRLH導波管からなる他の構成を用いることもできる。
【0041】
共振空洞は、CRLH導波管の上に配置される。4つのCRLH導波管の上にある対応する共振空洞の3D CADモデルを
図4aに示す。共振空洞のサイズは、放射スロットが占める面積によって決定される。チャンバの高さhは、空洞に結合されるマイクロ波放射の波長の約半分になるように選択される。LA・MPCVD反応器の共振空洞のサイズは、CRLH導波管の長さおよび数を単に変更するだけで、つまり放射スロットが占める面積を変更するだけでスケーリングできることに留意することが重要である。
【0042】
マイクロ波放射は、共振空洞に磁気的に結合される。
図4aに示されている共振空洞のyz平面における断面図を
図5に示し、該図において、矢印は、スロット要素の放射によって誘導される磁場の方向と強度とを示している。
【0043】
交流磁場は、
図4bに示すように、共振空洞の広範囲にわたって磁場の垂直方向に均一な電界を発生させる。xy平面、xz平面、およびyz平面における電界分布の断面図を
図6に示す。
【0044】
均一な電界は作動ガスをイオン化し、広範囲にわたって均一なプラズマを生成する。
図6の囲み破線を参照されたい。反応器の堆積チャンバは大気圧から分離されなければならない。これは、放射要素の真上に石英窓を配置することによって達成される。しかしながら、石英窓をプラズマ領域の近くに配置するにはいくつかの制限がある。第一に、広範囲の空洞には大きな石英窓が必要になる。窓の厚さは、大気圧に耐えるために面積とともに増大する。その結果、空洞範囲を増大することにより、窓の表面がプラズマ領域に近づくことになる。第二に、高温プラズマは窓に高い熱負荷をもたらし、窓を損傷させるおそれがある。窓の熱損傷は、チャンバ内の作動圧力を準mbarの範囲まで下げて、化学気相成長プロセスの堆積温度を制限することで回避することができる。
【0045】
この問題を克服するために、共振空洞の別の設計が提案される。新規の空洞は、
図7aに示すように、相互接続された下側ボリュームおよび上側ボリューム、または第1のサブチャンバおよび第2のサブチャンバからなる。各ボリュームは高さhを有し、
図4aに示す空洞と同様の範囲を占めてもよい。2つのボリューム間の距離は、130mmから170mmまで変えてもよい。ボリューム間の異なる距離を選択することで、上側部と下側部とで異なる電界分布がもたらされる。
【0046】
図7aは、共振空洞の3D CADモデルを示している。yz平面およびxz平面における電界分布の断面図は
図7bに示されている。
【0047】
以前の共振空洞の設計と同様の方法で、マイクロ波放射は、
図8に示すように、下側ボリュームまたは第1のサブチャンバに磁気的に結合される。電磁波は、接続している導波管を通って上側ボリュームまたは第2のサブチャンバまでさらに伝播し、
図5に示すのと同様の磁場強度パターンをもたらす。
【0048】
上記の実施形態では、共振空洞は、CRLH導波管区域の上方に配置されて示されている。しかしながら、共振空洞は、例えばCRLH導波管の下方または側方に配置されても適切であり得る。
【0049】
共振チャンバおよび相対的な第1および第2のサブチャンバの高さ、幅および長さの相対的な寸法、ならびに第1のチャンバと第2のチャンバとの間の相対的なサイズおよびこれらの間の距離もまた、それらが第1の周波数で動作する限り変えてもよい。
【0050】
CRLH導波管、またはCRLH導波管区域内の複数の導波管もまた、異なる構成であってもよい。上記で指定した形式の単位セルを有するいかなる導波管の設計、例えば湾曲した導波管の設計もこの目的のために使用できる可能性がある。CRLH導波管、またはCRLH導波管区域内の複数の導波管は、短絡させられる代わりに、例えばシリアルに相互接続される。
【0051】
CRLH導波管における1つまたは複数のスロットなどのカプラ手段は、任意の壁、すなわち、CRLH導波管の側壁、上壁または下壁に配置することができる。好ましくは、共振空洞内の拡大されたプラズマ領域に寄与するために、電界密度分布が長手方向である場所。
【0052】
下側ボリュームおよび上側ボリュームからなる共振空洞の設計は、大きな石英窓の問題を克服する。これで、
図9に示すように、石英窓を高温プラズマから離れたいくつかの位置に配置することができる。囲み破線は、石英窓の垂直方向位置および水平方向位置を示している。位置は、電界が最小である場所に意図的に選択されている。水平に位置する石英窓を有するLA・MPCVD反応器の完全な構成が
図10に示されている。4つのCRLH導波管は、一式のT字ジャンクションで接続され、1つの導波管ポートを使用して励起される。
【0053】
次に、CRLH導波管の実施形態について説明する。この実施形態は、上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0054】
LA・MPCVD反応器の共振空洞内部でのマイクロ波放射の結合は、それぞれが無限波長伝播特性を有する一式のスロット付き右手・左手系複合(CRLH)導波管を使用して達成され得る。これにより、空洞内部の広範囲にわたって均一な高強度電界を発生させることができる。CRLH伝送線路に関する理論は、例えば以下の文献:
- A. Lai et al. Composite right/left-handed transmission line metamaterials. IEEE Microwave Magazine (Volume: 5, Issue: 3, Sept. 2004).
- Amr M. Nour Eldeen and Islam A. Eshrah. CRLH Waveguide with Air-Filled Double- Ridge Corrugations. 2011 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation (APSURSI).
- T. Ueda et al. Dielectric-Resonator-Based Composite Right/Left-Handed Transmission Lines and Their Application to Leaky Wave Antenna. IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques (Volume: 56, Issue: 10, Oct. 2008).
- L. Shaowei et al. Left-Handed Transmission Line Based on Resonant-Slot Coupled Cavity Chain. IEEE Microwave and Wireless Components Letters (Volume: 17, Issue: 4, April 2007).
- Y. Chen et al. Unequally Spaced and Excited Resonant Slotted - Waveguide Antenna Array Based on an Improved Resonant - Slot Coupled Cavity Chain Composite Right / Left - Handed Waveguide. Progress In Electromagnetics Research, Vol. 110, 421-435, 2010.
に記載されている。
【0055】
CRLH導波管は、周期的にカスケード接続された一連の単位セルからなる。各単位セルは、左手(LH)および右手(RH)の波動伝播をサポートするという独自の特性を有しており、上記のUedaらによって説明されている等価回路モデルを使用して表すことができる。バランスが取れている場合、単位セルには阻止帯域がなく、分散図ではLH帯域からRH帯域へのシームレスな移行がある。提案された発明は、CRLH導波管の無限波長伝播特性を使用するので、導波管内の各単位セルは、バランスが取れていなければならない。この基準は、単位セルの異なる設計によって、例えば、上記のEldenおよびEsrahの文献、Ueadらの文献、Shaoweiらの文献、およびChenらの文献で提案されたようなものによって満たすことができる。
【0056】
CRLH導波管の現状の実施形態は、Chenらによって説明されているのと同様の単位セルの設計を採用している。
図13Aに示されている単位セルは、
図13Bに示されている分散図がLH帯域からRH帯域へのシームレスな移行を有し、それによりセルのバランスが取れるように設計されている。10Bからわかるように、無限波長の伝播周波数は2.45GHzであり、エネルギ源またはマイクロ波発生器の作動周波数と整合する。
【0057】
単位セルは、さまざまな幾何学的形状で実現でき、2.45GHz以外の無限波長伝播周波数をサポートする。
【0058】
CRLH導波管は、周期的にカスケード接続された単位セルのアレイからなり、
図3に示すような金属壁で終端する。CRLH導波管へのマイクロ波放射は、移行導波管を介して供給される。CRLH導波管の無限波長伝播特性により、
図2および
図3に示すように、導波管(z方向)に沿った表面電流は途切れることなく流れる。したがって、マイクロ波放射を空洞に結合するために使用される放射スロット要素を、隣接するスロットがガイド波長(λg)の半分だけ離れている従来の導波管と比較して、ほぼ任意の位置に、互いに近くに配置することができる。したがって、本発明により、広範囲にわたる均一な電磁場分布を達成することができる。
【0059】
スロットの放射メカニズムは従来の導波管の場合と同じであり、各スロットの放射量は遮断される電流によって決定される。結果として、スロットの放射電力は、CRLH導波管の対応する中心線に対する傾斜角に依存する。ここでは、放射電力を最大化するために、すべてのスロットが45度だけ回転させられている。
【0060】
本発明の効果は、反応器の空洞をスケーリングできることである。これは、上記のようにCRLH導波管を拡張するか、さらなる導波管を追加することで行われ得る。これにより、発生したプラズマの領域のサイズが効果的に増大し得る。
【0061】
別の効果は、本発明の実施形態によるLA・MPCVDが、準mbarの圧力範囲よりも高い圧力で作動することができる一方で、LA・MPCVD反応器の他の実装、例えば、標準の導波管では、より低い圧力でのみ動作できることである。
【0062】
これは、CRLH導波管によって可能になった新規の結合技術により達成され、従来技術と比較して、堆積範囲にわたってかなり均一で浅い形状のプラズマをもたらす。プラズマの高さは2.45GHzで半波長未満であり、これはプラズマが入力マイクロ波放射を効果的に吸収できることを意味する。これにより、より高い圧力での動作を可能にする高吸収電力密度がもたらされる。
【0063】
単位セルは、2.45GHzの作動周波数に対する単位セルあたりの位相シフトがゼロになるように設計され得る。
【0064】
2.45GHzまたは他の任意の動作周波数以外の周波数についての単位セルあたりゼロの位相シフトは、上記の実施形態のいずれかと組み合わせることができる実施形態において、単位セルの寸法を変化させることによって達成され得る。これは、動作周波数が固定されておらずかつ出力電力の関数であるマイクロ波発生器にとって特に重要である。通常、工業用マグネトロンの周波数は電力とともに増加し、公称周波数から±1%のオーダで逸脱する可能性がある。したがって、発生器の出力電力が変化するときの作動周波数の変化を無効にするように単位セルの形状を積極的に適合させることができる。
【0065】
関連する実施形態では、単位セルの形状の変化は、いかなる周波数に対しても単位セルあたりの位相シフトがゼロになるように達成される。CRLH導波管内のすべてのセルが同時に適合されてもよい。単位セルの適合制御の方法を示すブロック図が
図15に示されている。
【0066】
この方法は、マイクロ波発生器の出力電力を設定し、対応する作動周波数を測定することから始まる。次に、セルの特定の寸法を調節するか、スタブなどのチューニング要素を挿入してセルのバランスを保つことにより、すべての単位セルの形状を変更する。各単位セルの形状は、シミュレーションまたは経験的データからの入力を使用して同じ方法で変更する必要がある。調節されたセルの周波数は、前のステップで測定された作動周波数と整合している必要がある。セルの調節後、発生器から見たインピーダンスは、エネルギ源とCRLH導波管との間に配置された3スタブチューナなどのインピーダンス整合ユニットと整合され得る。このステップで測定された反射電力Prefは、後で使用するために保たれる。セル調節に使用される入力は誤差を有するため、次のステップでは、第3のステップの調節と比較してセルを少し変更する必要がある。次に、インピーダンスが再度整合され、対応する反射電力P’refが測定される。最後に、PrefとP’refとが比較される。P’ref<Prefの場合、セルが再度変更され、インピーダンス整合ステップおよび新しい反射電力測定が続く。これらのステップは、反射電力が最小になるまで反復的に繰り返される。発生器の出力電力が変更された場合、手順が再度繰り返される。
【0067】
単位セルの適合制御は、例えば、
図14に示すように、セルの下部に2つの(截頭された)スタブを同時に挿入することで達成できる。単位セルは、等価回路モデルを使用して、セルを一連のコルゲーション、スタブ、ならびに対応するシャントインダクタンス、直列キャパシタンス、および直列インダクタンスおよびシャントキャパシタンスを有する矩形導波管に分解することで説明できる。したがって、(截頭された)スタブをセルに挿入することで、セル要素のインダクタンスおよびキャパシタンスが効果的に変化する。その結果、単位セルあたりゼロの位相シフトに対応する周波数が変化する。これにより、CRLH導波管の各単位セルを適合制御できる。スタブの挿入深さは、導波管の表面電流密度が均一かつ不変に維持されるように、発生器の作動周波数に整合するように選択する必要がある。単位セルは、プロセス中にバランスを保つ必要がある。
【0068】
ダイヤモンド材料の化学気相成長(CVD)は、次の方法で実現され得る。
図7Bおよび
図9に示される均一な電界は、
図11に示されるように、作動ガスをイオン化し、広範囲にわたって均一なプラズマを生成する。
【0069】
ダイヤモンドCVDプロセスの典型的な作動ガスは、水素およびメタンである。メタンは炭素源として機能し、プラズマによって分子ガスから解離した原子状水素は、プロセス中にグラファイト含有物を選択的にエッチングするために必要である。窒素、酸素、アルゴンなどの他のガスをチャンバに導入して、成長速度や基板温度などのCVDプロセスパラメータを変更することができる。LA・MPCVD反応器の実施形態の概略的な代表図を
図12に示す。提示したチャンバ空洞の上面および下面の両方、すなわち第2のサブチャンバが堆積プロセスに使用できることに留意することが重要である。ここでは、下面への堆積プロセスのみが提示されている。
【0070】
作動ガスは、第2のサブチャンバの上部から導入される。ガスは、基板の上方に配置されるチューブを使用して基板に送達される。各チューブは、堆積範囲全体にわたる均一なガス分布のための一式の孔を含む。
【0071】
プラズマ領域は、
図12Aの中央に赤色楕円図形によって示されている。プラズマ領域は、マゼンタ色矩形で表される基板ステージをカバーする。ダイヤモンド材料は、ステージの上に配置された基板上に堆積される。基板はプラズマによって加熱されるが、必要に応じて、RF誘導または他の手段によってステージも加熱されてもよい。
【0072】
プロセスガスは、真空ポンプを使用してチャンバから排出され得る。CVDプロセス中にポンプ速度を積極的に調節し、圧力を安定に保つようにしてもよい。