(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】熱変色性インク組成物のためのポリエーテルアミンを含有する消去ツール
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20240216BHJP
C09D 11/17 20140101ALI20240216BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B43L19/00 B
C09D11/17
B43K29/02 F
(21)【出願番号】P 2020570172
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 IB2019056471
(87)【国際公開番号】W WO2020026129
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-29
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カフィア,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ソバージュ,オーロラ
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-166495(JP,U)
【文献】特表2009-503245(JP,A)
【文献】特開2015-174437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/00-31/00
B43L 1/00-12/02
15/00-27/04
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インク組成物を消去するための消去組成物であって、
(a)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド単位に基づくポリエーテル骨格
であって、当該ポリエーテル骨格の両末端に第一級アミノ基が結合したポリエーテル骨格を含む1~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%の少なくとも1つの
ポリエーテルアミンと、を含み、
前記熱変色性インク組成物が電子供与性呈色性化合物(ロイコ染料)、電子受容性化合物(現像剤)及び、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の色反応を制御する反応媒体を含む、消去組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルアミンが、以下の式
(I)を有し、
・式(I):
【化1】
式中、
nは、5~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表
す、請求項1に記載の消去組成物。
【請求項3】
(a)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の式の1~50重量%、好ましくは1~30%、より好ましくは2~20重量%の少なくとも1つの
前記ポリエーテルアミンであって、
【化2】
式中、
nは、20~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、好ましくは、RはCH
3であ
り、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド単位に基づくポリエーテル骨格であって、当該ポリエーテル骨格の両末端に第一級アミノ基が結合したポリエーテル骨格を有するポリエーテルアミンと、を含む、請求項1または請求項2に記載の消去組成物。
【請求項4】
前記ゴム(a)が、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴムとポリプロピレン(PP)とのブレンドである加硫熱可塑性エラストマー(TPV)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)を含むスチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、およびこれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の消去組成物。
【請求項5】
前記ゴム(a)が、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴムとポリプロピレン(PP)とのブレンドである、請求項4に記載の消去組成物。
【請求項6】
前記充填剤が、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸ナトリウム、粘土、タルク、カオリン、シリカ、マイカ、カルサイト、ウォラストナイト、ベントナイト、および好ましくは炭酸カルシウムから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の消去組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルアミン(c)が、以下の式であり、
【化3】
式中、
nは、25~35まで変化し、
Rは、CH
3である、請求項1~6のいずれか一項に記載の消去組成物。
【請求項8】
0.1~20重量%、好ましくは0.3~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%の少なくとも1つの顔料(d)をさらに含み、好ましくは、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、フタロシアニンブルーBN(ピグメントブルー15)、カーボンブラック(ピグメントブラック7)、フタロシアニングリーンG(ピグメントグリーン7)、ピグメントイエロー74、ピグメントレッド254、ピグメントバイオレット23、およびこれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の消去組成物。
【請求項9】
請求項1~8に記載の消去組成物を固体コアとして含む、消去ツール。
【請求項10】
熱変色性インク組成物を消去するための消去ツールを調製するための方法であって、
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド単位に基づくポリエーテル骨格
であって、当該ポリエーテル骨格の両末端に第一級アミノ基が結合したポリエーテル骨格を含む1~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンと、を混合することによって、請求項1~8に記載の消去組成物を調製する工程と、
(ii)工程(i)の終わりに得られた消去組成物を成形し、
熱変色性インク組成物を消去するための消去ツールを得る工程
であって、前記熱変色性インク組成物が電子供与性呈色性化合物(ロイコ染料)、電子受容性化合物(現像剤)及び、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の色反応を制御する反応媒体を含む工程と、を含む、方法。
【請求項11】
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の
式(I)を有する、1~50重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%の少なくとも1つの
前記ポリエーテルアミンであって、
・式(I):
【化4】
式中、
nは、5~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表
す、ポリエーテルアミンとを混合することによって、請求項1~8に記載の消去組成物を調製する工程と、
(ii)工程(i)の終わりに得られた消去組成物を成形し、消去ツールを得る工程と、を含む、請求項10に記載の消去ツールを調製するための方法。
【請求項12】
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは30~70重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の式の1~50重量%、好ましくは1~30%、より好ましくは2~20重量%の少なくとも1つの
前記ポリエーテルアミンであって、
【化5】
式中、
nは、20~40、好ましくは25~35まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、好ましくは、RはCH
3であ
り、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド単位に基づくポリエーテル骨格であって、当該ポリエーテル骨格の両末端に第一級アミノ基が結合したポリエーテル骨格を含むポリエーテルアミンと、を混合することによって、請求項1~8に記載の消去組成物を調製する工程と、
(ii)工程(i)の終わりに得られた消去組成物を成形し、消去ツールを得る工程と、を含む、請求項10または請求項11に記載の消去ツールを調製するための方法。
【請求項13】
不可逆的な熱変色性インクを消去するための、請求項9に記載の消去ツールの使用。
【請求項14】
担体中に分散された変色コアシェルマイクロカプセルを含む熱変色性インク組成物を含有するインクリザーバと、
請求項9に記載の消去ツールと、を備える、筆記具。
【請求項15】
前記コアシェルマイクロカプセルが、
電子供与性呈色性有機化合物と、
電子受容性化合物と、
前記電子供与性呈色性有機化合物と前記電子受容性化合物との間の色反応を制御する反応媒体であって、好ましくは、エチレングリコールジステアレート、シュウ酸ジメチル、メチルベヘネート、ヘプタデカン-9-オン、1-オクタデカノール、およびこれらの混合物から選択される、反応媒体と、を含む、請求項14に記載の筆記具。
【請求項16】
前記反応媒体が、ワックスであり、好ましくは40~70℃の範囲の融点を有し、より好ましくはエチレングリコールジステアレート、シュウ酸ジメチル、メチルベヘネート、ヘプタデカン-9-オン、1-オクタデカノール、およびこれらの混合物から選択される、請求項15に記載の筆記具。
【請求項17】
前記電子供与性呈色性有機化合物が、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチリンドール-3-イル)-4-アザフタリド(ブルー63、CAS番号69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(イエローCK37、CAS番号144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(ブルー203、CAS番号98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(ブラック15、CAS番号:36431-22-8)、および3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(レッド40、CAS番号50292-91-6)から選択される、請求項15または請求項16に記載の筆記具。
【請求項18】
前記電子受容性化合物が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号2362-14-3)、9、9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号74462-02-5)、α、α、α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号110726-28-8)、3,5,4’-トリヒドロキシ-トランス-スチルベン(レスベラトロール、CAS番号501-36-0)から選択される、請求項15~17のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項19】
前記マイクロカプセルの前記シェルが、ポリ尿素、メラミン、グアナミン、および好ましくはポリ尿素に基づく、請求項14~18のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項20】
ボールペン、筆ペン、色鉛筆、マーカー、蛍光ペン、チョーク、およびフェルトペン、好ましくは摩擦により消去可能なボールペンから選択される、請求項14~19のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項21】
筆記線を不可逆的に消去するための方法であって、
(i’)担体中に分散された変色コアシェルマイクロカプセルを含む熱変色性インク組成物を用いて、紙に筆記し、筆記線を得る工程と、
(ii’)工程(i’)の終わりに得られた前記筆記線を、請求項9に記載の消去ツールを用いて消去する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化の適用によって元に戻すことができない色変化を受けることができる不可逆的な熱変色性インク組成物を消去するための消しゴムに関する。本発明は、ポリエーテルアミンを含む消去組成物、ならびにそのような消去組成物で作製された消去ツールに関する。本発明はまた、本発明による熱変色性インク組成物および消去ツールを含む筆記具に関する。最後に、本発明は、熱変色性インク組成物で作製され、かつ本発明による消去ツールで消去される筆記線を不可逆的に消去するための方法を目的としている。
【0002】
既知の熱変色性インク組成物は、多くの場合、色の変化に関連する「ヒステリシス」を呈し、すなわち、そのようなインクで付けられた筆記跡の色の変化は可逆的である。熱変色性インク組成物を使用して付けられた筆記跡は、典型的には、室温で着色状態を呈し、熱を適用すると着色状態から実質的に無色に変化し、特定の温度未満に冷却すると最初の着色状態に戻る。既知の熱変色性インクは、典型的には、特定の温度でロイコ染料と現像剤との間の反応を促進または妨害することができる反応媒体を含み、これによって、ロイコ染料は、典型的には、実質的に室温よりも高い特定の温度でその無色の形態で存在する。
【0003】
しかしながら、色の変化の可逆性は、特定の状況において、例えば、消費者が元の筆記跡が「再現される」ことを望まない場合、特に望ましくない可能性がある。
【0004】
JP2015174437は、少なくともロイコ染料、現像剤、および結晶性物質、ならびに第一級もしくは第二級アミンから選択された脱色剤を含有する筆記具インクもしくは色鉛筆を使用して筆記された/描画された線を変色または脱色するための消去ツールを提供する。
【0005】
JP2017087418は、不可逆的な脱色インクの筆跡を消去することができる消去ツールを提供し、上記ツールは、高密度ポリエチレン、ナイロン、またはポリアセタールの中から選択された充填剤と樹脂との混合物を含む。
【0006】
しかしながら、上で参照した特許文献に記載されている消去ツールは、黄色の痕跡を残し、かつ紙に滲出が現れるという欠点がある。さらに、それらは、アミンを溶解し、かつインクを完全に消去するためにエンドユーザーからの重要な力を必要とする高い融点を有するアミンを含む。したがって、熱変色性インク組成物を不可逆的に消去するための、より効率的かつ使いやすい消去ツールの必要性が存在する。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、加熱および/または機械的作用(摩擦)によって、痕跡または滲出なしに、そしてポリエーテルアミン製の消去ツールを使用することによって、エンドユーザーからの重要な消去力を必要とせずに、紙に付着した熱変色性インク組成物を不可逆的に消去することが可能であることを発見した。
【0008】
したがって、本発明は、
(a)10~80重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド(PO/EO)単位に基づくポリエーテル骨格と、ポリエーテル骨格の末端に結合した少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基とを含む1~50重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンであって、好ましくは上記ポリエーテルアミンが、少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基、より好ましくは少なくとも2つの第一級アミノ基を含む、ポリエーテルアミンと、を含む消去組成物に関し、
すべての%は、消去組成物の総重量に関する。
【0009】
本発明のポリエーテルアミンにおいて、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド(PO/EO)単位に基づくポリエーテル骨格は、好ましくは、5~40のプロピレンオキシド(PO)単位および/または2~12のエチレンオキシド(EO)単位を含む。ポリエーテル骨格は、より好ましくはプロピレンオキシド(PO)に基づいており、さらにより好ましくは5~40のプロピレンオキシド(PO)単位を含む。
【0010】
本発明のポリエーテルアミンにおいて、ポリエーテル骨格の末端に結合する第一級または第二級アミノ基は、好ましくは、-NH2基(第一級アミノ基)または-NHRa基(第二級アミノ基)であり、式中、Raは、1~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル鎖を表す。ポリエーテル骨格の末端に結合した基は、より好ましくは、-NH2基(第一級アミノ基)である。好ましい実施形態によれば、ポリエーテル骨格は、その骨格の両端に結合した-NH2基(第一級アミノ基)を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリエーテルアミンは、少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基を含み、好ましくは、上記少なくとも2つのアミノ基は、ポリエーテル骨格の末端に結合しており、上記アミノ基は、好ましくは、-NH2基(第一級アミノ基)である。
【0012】
本発明によれば、少なくとも2つのアミノ基を含むポリエーテルアミンは、「ポリエーテルポリアミン」と呼ばれることもある。
【0013】
好ましい実施形態によれば、本発明の消去組成物のポリエーテルアミンは、以下の式(I)、(II)、または(III)のうちの1つを有する。
・式(I):
【化1】
式中、
nは、5~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、
・式(II):
【化2】
式中、
m=0または1であり、
x、y、およびzは、1~80まで変化し、(x+y+z)は、3~90まで変化し、
R’は、H、または1個もしくは2個の炭素原子を含むアルキル鎖を表し、
R”は、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、
・式(II):
【化3】
式中、pとqは、1~6まで変化し、好ましくはp=qである。
【0014】
より好ましい実施形態によれば、本発明は、
(a)10~80重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の式の1~50重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンと、を含む消去組成物に関し、
【化4】
式中、
nは、20~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、好ましくは、RはCH
3であり、
すべての%は、消去組成物の総重量に関する。
【0015】
消去組成物は、有利には20~70重量%、より有利には30~60重量%の少なくとも1つのゴム(a)を含み得る。
【0016】
ゴム(a)は、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴムとポリプロピレン(PP)とのブレンドである加硫熱可塑性エラストマー(TPV)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)、主にシス-1,4-ポリイソプレンからなる天然ゴムまたはヘベアゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)を含むスチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、およびこれらの混合物から選択され得る。好ましい実施形態では、ゴム(a)は、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴムとポリプロピレン(PP)とのブレンドである。
【0017】
消去組成物は、有利には25~75重量%、より有利には30~70重量%の少なくとも1つの充填剤(b)を含み得る。
【0018】
充填剤は、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸ナトリウム、粘土、タルク、カオリン、シリカ、マイカ、カルサイト、ウォラストナイト、ベントナイト、およびこれらの混合物から選択され得る。好ましい実施形態では、充填剤(b)は、炭酸カルシウムである。
【0019】
消去組成物は、有利には1~30重量%、より有利には2~20重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミン(c)を含み得る。好ましい実施形態では、ポリエーテルアミン(c)は以下の式である。
【化5】
式中、
nは、25~35まで変化し、
Rは、CH
3である。
【0020】
本発明の消去組成物は、さらに有利には0.1~20重量%、好ましくは0.3~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%の少なくとも1つの顔料(d)を含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態では、本発明に従って定義されるように、成分(a)、(b)、(c)、および(d)の重量%の合計は100%を表す。
【0022】
顔料(d)は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、フタロシアニンブルーBN(ピグメントブルー15)、カーボンブラック(ピグメントブラック7)、フタロシアニングリーンG(ピグメントグリーン7)、ピグメントイエロー74、ピグメントレッド254、ピグメントバイオレット23、およびこれらの混合物から有利に選択され得、フタロシアニンブルーBN(ピグメントブルー15)、カーボンブラック(ピグメントブラック7)、フタロシアニングリーンG(ピグメントグリーン7)、ピグメントイエロー74、ピグメントレッド254、ピグメントバイオレット23は、着色または蛍光消しゴムを調製する際に使用される。好ましい実施形態では、顔料(d)は、二酸化チタンである。
【0023】
本発明はまた、固体コアとして本発明による消去組成物を含む消去ツールに関する。
【0024】
本発明はさらに、本発明による消去ツールを調製するための方法に関し、方法は、
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシド(PO/EO)単位に基づくポリエーテル骨格と、ポリエーテル骨格の末端に結合した少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基とを含む1~50重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンであって、好ましくは上記ポリエーテルアミンが、少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基、より好ましくは少なくとも2つの第一級アミノ基を含む、ポリエーテルアミンと、を混合することによって、本発明による消去組成物を調製することであって、
すべての%は、消去組成物の総重量に関する、調製する工程と、
(ii)例えば、工程(i)の終わりに得られた消去組成物をプレスするか、注入するか、または押し出すことによって成形し、消去ツールを得る工程と、を含む。
【0025】
好ましい実施形態によれば、本発明による消去ツールを調製するための方法は、
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の式(I)、(II)、または(III)のいずれかを有する1~50重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンであって、
・式(I):
【化6】
式中、
nは、5~40まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、
・式(II):
【化7】
式中、
m=0または1であり、
x、y、およびzは、1~80まで変化し、(x+y+z)は、3~90まで変化し、
R’は、H、または1個もしくは2個の炭素原子を含むアルキル鎖を表し、
R”は、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、
・式(III):
【化8】
式中、pとqは、1~6まで変化し、
すべての%は、消去組成物の総重量に関する、ポリエーテルアミンと、を混合することによって、本発明による消去組成物を調製する工程と、
(ii)例えば、工程(i)の終わりに得られた消去組成物をプレスするか、注入するか、または押し出すことによって成形し、消去ツールを得る工程と、を含む。
【0026】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による消去ツールを調製するための方法は、
(i)100~250℃の範囲の温度で、
(a)10~80重量%の少なくとも1つのゴムと、
(b)20~80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(c)以下の式の1~50重量%の少なくとも1つのポリエーテルアミンであって、
【化9】
式中、
nは、20~40まで変化し、好ましくは、nは、25~35まで変化し、
Rは、H、または1~4個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル鎖を表し、好ましくは、RはCH
3であり、
すべての%は、消去組成物の総重量に関する、ポリエーテルアミンと、を混合することによって、本発明による消去組成物を調製する工程と、
(ii)例えば、工程(i)の終わりに得られた消去組成物をプレスするか、注入するか、または押し出すことによって成形し、消去ツールを得る工程と、を含む。
【0027】
消去組成物について以前に定義された特徴は、本発明の消去ツールを調製するための方法で実装される消去組成物に準用(mutadis mutandis)される。
【0028】
消去ツールを調製するための方法の工程(i)は、140~250℃、好ましくは150~230℃の範囲の温度で、ミキサー撹拌で実施することができる。ミキサーの出力において、消しゴムは、1~10mm、好ましくは2~8mm、より好ましくは約5mmの範囲の厚さを有する可撓性シートの形態で得られる。
【0029】
消去ツールを調製する方法の工程(ii)は、100~300℃、好ましくは140~230℃の範囲の温度で実施することができ、したがって、所望の形状、好ましくは円筒形状または長方形状の消去ツールを得ることができる。工程(ii)がプレス成形によって実現される場合、適用される圧力は、10~300バール、好ましくは20~280バール、より好ましくは30~250バールの範囲であり得る。この場合、プレス成形は、10秒~20分、好ましくは20秒~10分、より好ましくは30秒~8分続き、したがって、所望の形状、好ましくは円筒形状または長方形状の消去ツールを得ることができる。
【0030】
熱変色性インクを不可逆的に消去するための本発明による消去ツールの使用もまた、本発明の一部である。
【0031】
本発明の別の主題は、
担体中に分散された変色コアシェルマイクロカプセルを含む熱変色性インク組成物を含有するインクリザーバと、
本発明による消去ツールと、を備える、筆記具である。
【0032】
本発明の目的上、「インク組成物」という用語は、ボールペン、筆ペン、色鉛筆、マーカー、蛍光ペン、チョーク、およびフェルトペンなどの筆記具で使用されることを意図された任意のインクを意味するもので、印刷機で使用され、同じ技術的制約に(したがって、同じ仕様に)対応していない印刷インクと混同するべきではない。実際、本発明の枠組み内で筆記具において使用することを意図した「インク組成物」は、筆記具をブロックし、必然的に、不可逆的に筆記が停止されることを回避するために、筆記具のチャネルよりも大きいサイズの固体粒子を含有してはならない。さらに、筆記中の漏れを回避するために、流動性が高すぎてはならない。しかしながら、筆記動作の流れを容易にするために、十分に流動的である必要がある。加えて、使用される筆記具に好適なインク流量、特に10~700mg/200mの筆記流量、有利には250~650mg/200mの筆記流量を可能にする必要がある。また、筆記媒体を汚すことを回避するために、十分に急速に乾く必要がある。また、経時的な移染(出液)の問題を回避する必要がある。したがって、本発明のインク組成物は、それが意図される筆記具に好適である。
【0033】
本発明の熱変色性インク組成物は、水または溶媒、好ましくは水であり得る担体中に分散された熱変色性マイクロカプセルを含む。担体が溶媒系である場合、好ましくは、高沸点有機溶媒が使用される。溶媒の例としては、エチレングリコールフェニル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、カプロラクトン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
担体が水である場合、共溶媒を添加することができる。共溶媒は、インク成分の適合性/溶解性を改善するのに役立ち得る。有用な共溶媒としては、モノ-、ジ-、およびトリ-エチレングリコール;モノ-、ジ-、およびトリ-プロピレングリコール;前述のグリコール類のモノ-およびジ-C1~C20アルキルエーテル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノールを含む芳香族および脂肪族アルコール;2-ピロリドン;N-メチルピロリドン;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
熱変色性マイクロカプセルは、シェルおよびコアを含み、コアは、実質的に無色になる、ならびに/または第1の着色状態から無色および/もしくは第2の着色状態に変色することができる消去可能な染料を含む。シェルは、好ましくは壊れやすく、すなわち、加熱されたとき、および/または機械的作用(摩擦)によってシェルに圧力が適用されたときに、シェルは、(塑性変形するのではなく)破裂する。熱変色性インク組成物の消去可能な染料は、本発明の消しゴムと接触すると、実質的に無色になる、および/または変色する(好ましい態様では、第2の色状態は無色である)。したがって、本発明の熱変色性インク組成物は、例えば、消去プロセス中に熱および/または摩擦力を適用すると、そのような熱および/または摩擦力を適用することがシェルを破裂させ、それによって消しゴムへの消去可能な染料の露出を促進することができるので、不可逆的に変色することができる。
【0036】
したがって、本発明の目的上、「不可逆的に消去された熱変色性インク組成物」という表現は、本発明による消去ツールで消去した場合、温度変化の適用によって元に戻すことができない色変化を受けることができるインク組成物、または温度変化の適用によって回復する/元に戻すことができない色変化を受けることができるインク組成物を含むインクマイクロカプセルを指す。結果として、本発明の熱変色性インク組成物は、ヒステリシスを呈することができず、不可逆的に消去可能であると見なされる。
【0037】
本発明の筆記具において、コアシェルマイクロカプセルは、
電子供与性呈色性有機化合物(ロイコ染料)と、
電子受容性化合物(現像剤)と、
電子供与性呈色性有機化合物(ロイコ染料)と電子受容性化合物(現像剤)との間の色反応を制御する反応媒体と、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の熱変色性インク組成物では、温度の上昇により、インクが消去され、一方で、インクを冷却することにより、色が再出現することになる。
【
図1】これらの変化は、
図1のスキームに従う。このスキームでは、インクの色の脱色開始温度はT3であり、完全な脱色温度はT4であり、TGはT3とT4の間の平均温度である。逆に、インクの色が再出現し始める温度はT2であり、完全な再着色温度はT1であり、THはT1とT2との間の平均温度である。変色ヒステリシス幅(ΔΗ)は、(TH)と(TG)との差である。
【0039】
本発明において、ΔH値は有利に小さく、これは、色変化の前後の2つの状態(脱色状態または発色状態)のうちの一方のみが常温で存在できることを意味する。ΔΗ値は、より有利には0~7℃、好ましくは0.2~5℃、より好ましくは0.2~3℃の範囲である。
【0040】
好ましい実施形態によれば、電子供与性呈色性有機化合物(ロイコ染料)と電子受容性化合物(現像剤)との間の色反応を制御する反応媒体は、ワックスである。
【0041】
好ましい実施形態によれば、電子供与性呈色性有機化合物(ロイコ染料)と電子受容性化合物(現像剤)との間の色反応を制御する反応媒体は、好ましくは40~70°C、より好ましくは45~65°Cの範囲の融点を有する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、電子供与性呈色性有機化合物(ロイコ染料)と電子受容性化合物(現像剤)との間の色反応を制御する反応媒体は、さらにより好ましくは、エチレングリコールジステアレート、シュウ酸ジメチル、メチルベヘネート、ヘプタデカン-9-オン、1-オクタデカノール、およびこれらの混合物から選択される。
【0043】
本発明の目的上、「ワックス」という用語は、室温(25℃)で固体であり、30℃以上の融点を有する親油性化合物を意味することを意図している。
【0044】
本発明では、融点は、ISO11357-3;2011に記載されているように、完全に結晶性または部分的に結晶性の固体状態と可変粘度のアモルファス液体との間の遷移段階に対応する。「融合」とも称される「遷移」という用語は、DSC曲線の吸熱ピークによって特徴付けられる。
【0045】
ワックスの融点は、TA Instruments Q20装置を使用した示差走査熱量測定(DSC)により、20~90°Cの温度範囲で、10°C/分の冷却/加熱速度で測定できる。
【0046】
この測定は、5mgの試料質量で行われる。
【0047】
方法:
1.0°Cで平衡化
2.サイクルの終わりに印を付ける
3.ランプ:10°C/分で90°Cまで
4.2分間の等温
5.ランプ:10°C/分で0°Cまで
6.2分間の等温
7.方法の終了
【0048】
コアシェルマイクロカプセルの電子供与性呈色性有機化合物は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(ブルー63、CAS番号69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(イエローCK37、CAS番号144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(ブルー203、CAS番号98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(ブラック15、CAS番号:36431-22-8)、および3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(レッド40、CAS番号50292-91-6)から選択され得る。
【0049】
コアシェルマイクロカプセルの電子受容性化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BPZ、CAS番号843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号2362-14-3)、9、9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(CAS番号3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号74462-02-5)、α、α、α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号110726-28-8)、3,5,4’-トリヒドロキシ-トランス-スチルベン(レスベラトロール、CAS番号501-36-0)から選択され得る。
【0050】
コアシェルマイクロカプセルのシェルは、マイクロカプセル全体の重量の5~30重量%を表し得る。
【0051】
シェルは、典型的には、ポリマーで形成される。シェルは、ポリ尿素、メラミン、グアナミン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、これらの混合物、および他の同様の重縮合生成物を含むがこれらに限定されないポリマーおよび/または非ポリマー材料から形成することができる。好ましい実施形態によれば、コアシェルマイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素、メラミン、グアナミン(ベンゾグアナミンなど)に基づく。
【0052】
シェル材料は、熱変色性マイクロカプセルを形成するために使用されるマイクロカプセル化技術に影響を与え得る。好適なカプセル化プロセスとしては、ポリマーカプセルを形成するための既知の化学的および物理的方法が挙げられる。化学的方法の代表的な例としては、複雑なコアセルベーション、界面重合(IFP)、ポリマーとポリマーの非相溶性、現場重合、遠心力プロセス、および浸漬ノズルプロセスが挙げられる。物理的方法の代表的な例としては、噴霧乾燥、流動床コーティング、遠心押出、および回転懸濁液分離が挙げられる。選択されたカプセル化方法は、熱変色性カプセルのサイズおよびカプセル化率の要件に依存し、これは、同様に、適用方法に依存する。
【0053】
本発明の枠組み内で、好ましいマイクロカプセル化技術は、界面重合である。代表的な界面重合プロセスでは、ポリ尿素、ポリアミド、ポリウレタンなどのマイクロカプセル壁が、2つの相の間の界面に形成される。カプセル壁を形成する材料は別々の相にあり、一方は水相にあり、他方は充填相にある。重合は、相境界で起こる。したがって、ポリマーカプセルシェル壁が2つの相の界面に形成され、それによってコア材料をカプセル化する。ポリ尿素、ポリアミド、およびポリウレタンカプセルの壁形成は、典型的には、界面重合を介して進行する。参照により本明細書に組み込まれるUS4,622,267は、コア材料が最初に溶媒中に溶解され、溶媒混合物に可溶な脂肪族ジイソシアネートが添加されるマイクロカプセルの調製のための代表的な界面重合技術を開示している。続いて、脂肪族ジイソシアネートの非溶媒を、濁度点にかろうじて到達するまで添加する。次いで、この有機相を水溶液中で乳化し、反応性アミンを水相に添加する。アミンは界面に拡散し、そこでジイソシアネートと反応して、高分子ポリ尿素シェルを形成する。
【0054】
本発明の筆記具は、有利には、ボールペン、筆ペン、色鉛筆、マーカー、蛍光ペン、チョーク、およびフェルトペンから選択される。好ましい実施形態では、筆記具は、摩擦着色器具によって消去可能なボールペンであり、好ましくは10~700mg/200mの筆記流量、より好ましくは250~650mg/200mの筆記流量である。
【0055】
最後に、本発明は、筆記線を不可逆的に消去するための方法に関し、方法は、
(i’)担体中に分散された変色コアシェルマイクロカプセルを含む熱変色性インク組成物を用いて、紙に筆記し、筆記線を得る工程と、
(ii’)工程(i’)の終わりに得られた筆記線を、本発明による消去ツールを用いて消去する工程と、を含む。
【0056】
熱変色性インク組成物について以前に定義された特徴は、本発明の筆記線を不可逆的に消去するための方法の工程(i’)で実装される組成物に準用(mutadis mutandis)される。
【0057】
上記の規定に加えて、本発明はまた、以下の残りの説明から明らかになる他の規定を含む。
【実施例】
【0058】
消去組成物の調製:
異なる消去組成物は、PP-EPDMゴム(Santoprene(商標)、Exxonmobil Chemical)、炭酸カルシウム(CaCO3)(Durcal(登録商標)、Omya)、二酸化チタン(TiO2)(R-KB-2、Sachtleben)、およびアミンを170°Cの温度で5分間混合することによって調製した。
【0059】
混合後、得られた消去組成物を170℃の温度で5分間カレンダ加工して、可撓性シートを得た。可撓性シートを5×5mmの3つの正方形に切断し、重ねて型に入れた。消しゴムの正方形は、185°Cの温度で、50バールの圧力下で40秒間、次いで、200バールの圧力下で40秒間、最後の工程で190バールの圧力下で5分間プレスされた。
【0060】
冷却後、直径10mm、高さ7mmの円筒形状の消去ツールが得られた。
【0061】
以下の表1に提示された式Aおよび式Bの消去組成物において、異なる含有量のアミノ消しゴムを試験した。
【表1】
【0062】
示された重量%は、配合物の総重量に対するものである。
【0063】
ゼオライト(ZEO)を含む標準的な消去組成物も試験された。
【0064】
表2に示すように、アミノ消去化合物の異なる性質が、式Aおよび式Bの消去組成物において試験された。
【表2】
【0065】
熱変色性インク組成物の調製:
スラリーは、19.43重量%のエチレングリコールジステアレート、0.53重量%のブルー203、1.05重量%のビスフェノールAF、および3.00重量%のヘキサメチレンジイソシアネートを30分間、70°Cの温度で棒磁石で攪拌しながら混合することによって、第1のビーカー中で調製した。67.01重量%の脱イオン水を、ULTRA-THURRAX(登録商標)分散剤中の1.00重量%のポリビニルアルコール(PVA)と混合してから、エチレングリコールジステアレート、ブルー203、ビスフェノールAF、および3.00重量%のヘキサメチレンジイソシアネートの混合物を添加して、3分間攪拌した。混合物を、3分間、棒磁石を用いた撹拌下に置いた。1.00重量%のヘキサメチレンジアミンを添加し、混合物中に存在するイソシアネートと3時間反応させて、ポリ尿素マイクロカプセルを形成させた。水中に分散されたコアシェルマイクロカプセルのスラリーが得られ、マイクロカプセルは、直径Dv
50(体積分布の中央値)が6.6μmであり、pHが8.4であった。
【0066】
第二のビーカーで、10重量%のグリセリン(Henry Franc)、0.19重量%の殺生物剤Acticide(登録商標)MBS(トール)、および0.20重量%のトリルトリアゾール(Additin(登録商標)RC8221、Lanxess)を、15分間、棒磁石で攪拌しながら混合した。0.30重量%のキサンタンガム(Jungbunzlauer)を添加し、混合物を15分間撹拌しながら均質化した。以前に得られたスラリーを混合物にゆっくりと添加し、67.01重量%の脱イオン水も添加した。次に、混合物を、35℃の温度で2時間撹拌しながら均質化した。0.30重量%の消泡剤(Moussex(登録商標)S9092、Syntron)を添加し、混合物をさらに15分間35℃の温度で撹拌しながら均質化した。1.00重量%のポリビニルピロリドン(Luvitec((登録商標)K17、BASF)を添加し、混合物をさらに15分間35℃の温度で撹拌しながら均質化した。
【0067】
得られた熱変色性インク組成物を、室温(25℃)で57ミリバールの真空下で脱気した。
【0068】
消去試験:
消去組成物の効率は、上記で調製された熱変色性インク組成物で付けられた筆跡で評価された。熱変色性インク組成物をボールペンタイプのカートリッジに注入した。手動筆跡と機械筆跡を紙に付け、異なる消去組成物の消去品質を(同じ作業者による)手動消去によって評価した。紙の上に見られた観察結果は表3に詳述されている。
【表3】
【0069】
組成A-ゼオライトは、ゼオライトが式Aにおいて添加されたことを意味し、A-1は、試料1が式Aにおいて添加されたことを意味し、以下続く。
【0070】
JEFFAMINE(登録商標)D-2000(JA)を添加した消去用組成物は、標準および他のアミノ消去化合物を添加した消去組成物よりも良好な消去効率を示した。消去組成物は、いかなる痕跡または滲出(残りの消去組成物からのアミンの段階的除去が存在しないこと)も示さず、消去がより容易である(筆跡を完全に消去するためにそれほど力を必要としない)。