(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】反復投影マッチング法を用いた放射線イメージングによる物品検査
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240216BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240216BHJP
【FI】
G06T7/00 610
G06T7/70 Z
(21)【出願番号】P 2020573201
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019067600
(87)【国際公開番号】W WO2020002705
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521148625
【氏名又は名称】デルタレイ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・デ・ベーンハウアー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シーベルス
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0186195(US,A1)
【文献】特表2018-514340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0350945(US,A1)
【文献】特表2002-528828(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を検査する方法であって、
放射線イメージング装置を用いて複数の投影角度にて前記物品の複数の投影像を取得するステップと、
前記複数の投影像に基づいて断層撮影再構成を得るステップと、
前記断層撮影再構成における複数のオブジェクトを検出するステップであって、前記複数のオブジェクトの各々は、パラメトリック3次元数値モデルによって記述された一般的形状を有しており、前記複数のオブジェクトごとの位置および/または向きの初期推定値、ならびに前記複数のオブジェクトごとの前記
パラメトリック3次元
数値モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータを決定するステップを含む、検出するステップと、
投影マッチング法を用いることによって前記初期推定値を反復的にリファインするステップであって、反復ごとに、前記複数のオブジェクトの少なくとも1つについて前記複数の投影角度にて前記放射線イメージング装置の動作パラメータによる順投影像をシミュレートするステップ、および取得された投影像とシミュレートされた順投影像との間の差分メトリックを減少させるステップを含む、リファインするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記初期推定値を前記決定するステップは、前記複数のオブジェクトごとの中心位置および方向、ならびに前記複数のオブジェクトごとの長さおよび/または半径を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の投影像を取得するステップは、前記物品のコンピュータ断層撮影スキャンを実行するステップを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の投影像は、いくつかの枚数の投影像からなり、前記枚数は、5枚から1000枚の範囲内
にある、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出するステップは、オブジェクト形状ごとの前記
パラメトリック3次元数値モデルについて前記断層撮影再構成を1つまたは複数のテンプレートにマッチングするテンプレートマッチング法を用いて、あるいは入力としての前記断層撮影再構成をオブジェクト形状のモデルに関してトレーニングされた機械学習アルゴリズムに適用することによって、前記断層撮影再構成における画像バックグラウンドから前記オブジェクトをセグメント化するステップを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出するステップは、前記オブジェクトごとの前記位置の前記初期推定値を決定するステップ、および続いて前記位置の前記決定された初期推定値を考慮に入れて前記オブジェクトごとの前記向きを検出するステップを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記向きを前記検出するステップは、3次元線分について反復ハフ変換アルゴリズムを実行するステップを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出するステップは、前記向きの前記初期推定値を決定するステップ後に前記オブジェクトごとの長さの初期推定値を決定するステップを含む、請求項
6または
7に記載の方法。
【請求項9】
前記長さの前記初期推定値を前記決定するステップは、前記向きの前記初期推定値に対応する方向の前記位置の前記初期推定値における前記テンプレートマッチングの結果として得られる画像内の線プロファイルに関するエッジ検出を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
メディアンフィルタを前記線プロファイルに適用するステップ、および/またはガウスフィルタを用いて前記線プロファイルを平滑化するステップを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記線プロファイルのどちらかの端に関する変曲点を決定するステップを含み、前記変曲点を決定するステップは、候補変曲点を決定するステップと、傾斜が所定の閾値未満である候補変曲点を棄却するステップとを含む、請求項
9または
10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値は、前記物品における背景材料の期待される減衰値と前記検出されたオブジェクトの期待される減衰値との間の所定の値である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記初期推定値を前記反復的にリファインするステップは、前記初期推定値を数値最適化のための初期化パラメータとして用いて、前記複数のオブジェクトごとの前記位置および/または向きを含むパラメータならびに前記複数のオブジェクトごとの前記少なくとも1つの幾何学パラメータの前記数値最適化を含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
放射線イメージング装置とプロセッサとを備えるシステムであって、前記放射線イメージング装置は、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法における複数の投影角度にて前記物品の前記複数の投影像を取得するステップのために適合しており、前記プロセッサは、前記放射線イメージング装置の動作パラメータを考慮に入れて請求項1から
13のいずれか一項に記載の前記方法の残りのステップを実行するステップのために適合されている、システム。
【請求項15】
複数の物品を製造または操作するための製造環境または取扱い環境における複数の物品の各物品の品質管理、試験、分類、選択、計量、および/またはソートのための請求項
1に記載の
方法。
【請求項16】
工業プロセスにおける前記物品のインライン
検査またはオフライン
検査のための請求項1に記載の
方法。
【請求項17】
前記複数の取得された投影像および前記放射線イメージング装置の動作パラメータが入力として与えられるときに、プロセッサ上で実行されると、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線イメージングによる製造品などの物品の非破壊試験の分野に関する。より具体的には、本発明は、放射線イメージング、例えば、テラヘルツイメージングまたは電離放射線イメージング、例えばX線イメージングによる繊維ネットワーク構造を含む複合品を検査する方法およびシステムに関する。本発明は、品質管理、試験、計量、または選択のためにそのよう方法またはシステムを使用することにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維および繊維強化ポリマーを含む生地において、互いに対しての個々の繊維の向きは、最終的な製品特性に、特に、生地または繊維強化複合材料の強度および剛性に大いに影響を及ぼしている。所望の製品特性を得ることは、自動車応用または航空宇宙応用における安全性に関する態様にとって欠くことができない。したがって、繊維およびその向きの検査、ならびに繊維のずれの領域の検出は、射出成形などの製造プロセスの品質の評価において重要なステップであり、局所的な繊維向きは、フロー段階中、および続く冷却段階の変更の影響を受けやすい。繊維およびその向きを検査するための知られている方法は、光学顕微鏡法による光学検査に基づいている。破壊的であり、繊維の向きに関する2次元情報だけを提供するこれらの方法は、欠点を有する。
【0003】
X線コンピュータ断層撮影スキャンからの3D再構成における繊維含有材料のセグメント化は、再構成プロセス中に非常に多くのアーチファクト、例えば、繊維含有量が高い場合に多くの繊維が互いに交差または接触することによるアーチファクトをしばしばもたらす。これは、個々の繊維のセグメント化を難しい問題にさせる傾向があり、再構成された3D画像に事実上の繊維破断、誤った繊維の接続、多数の繊維結合などをもたらし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Zaunerら、Proceedings of the 14th International Congress for Stereology and Image Analysis、Acta Stereologica、2015年
【文献】Gorisら、Nano Letters 15(10)、6996 (2015年)
【文献】van Aarleら、Optics Express 24、25129、2016年
【文献】Gilbert、Journal of Theoretical Biology 36(1)、105、1972年
【文献】Bleichrodtら、Fundamenta Informaticae 135、1 (2014年)
【文献】Lewis、Vision Interface 95、120 (1995年)
【文献】Dalitzら、Image Processing On Line 7、184 (2017年)
【文献】Kaufmanら、Proceedings of the ACM Workshop on Interactive 3D Graphics、45~75ページ(1986年)
【文献】Burgerら、Principles of Digital Image Processing: Core Algorithms (Springer、2009年)
【文献】Burgerら、Principles of Digital Image Processing: Fundamental Techniques (Springer、2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、物品検査のための信頼できる非破壊的な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明による方法および装置によって達成される。
【0007】
第1の態様では、本発明は、物品を検査する方法に関する。この方法は、
放射線イメージング装置を用いて複数の投影角度にて物品の複数の投影像を取得するステップと、
複数の投影像に基づいて断層撮影再構成を得るステップと、
断層撮影再構成における複数のオブジェクト、例えば繊維を検出するステップであって、各オブジェクトは、パラメトリック3次元数値モデルによって記述された一般的形状を有しており、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きの初期推定値、ならびに複数のオブジェクトごとの3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータを決定するステップを含む、ステップと、
投影マッチング法を用いることによって初期推定値を反復的にリファインするステップであって、反復ごとに、複数のオブジェクトの少なくとも1つについて複数の投影角度にて放射線イメージング装置の動作パラメータによる順投影像をシミュレートするステップ、および取得された投影像とシミュレートされた順投影像との間の差分メトリックを減少させるステップを含む、ステップとを含む。
【0008】
方法は、他のオブジェクト、例えば繊維を一定に保ったまま、オブジェクト、例えば単繊維または限られた本数の繊維をほんの部分的に投影することを可能にするが、これを必要としていない。この部分的な投影により、単一のオブジェクトだけがリファインされ、ごく一部だけが順投影されるより効率的な手法を可能にする。
【0009】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、3次元数値モデルは、円柱であってよい。
【0010】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、初期推定値を決定するステップは、複数のオブジェクトごとの中心位置および方向、ならびに複数のオブジェクトごとの長さおよび/または半径を決定するステップを含んでよい。
【0011】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、オブジェクトは、繊維として数的にモデル化されてよい。
【0012】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、物品は、繊維がポリマーまたは樹脂マトリックスなどのマトリックス物質に埋め込まれている繊維強化複合材であってよい。
【0013】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、複数の投影像を取得するステップは、物品の(マイクロ)コンピュータ断層撮影スキャンを実行するステップを含んでよい。
【0014】
それは、本発明の実施形態が従来の方法より少ない投影像を用いて行うことができる本発明の実施形態による方法の利点である。例えば、本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、複数の投影像は、いくつかの枚数の投影像からなってよく、この枚数は、5枚から1000枚の範囲内、好ましくは10枚から200枚の範囲内にある。
【0015】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、再構成するステップは、代数的断層撮影再構成法を実行するステップを含んでよい。
【0016】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、代数的断層撮影再構成法は、同時反復再構成法を含んでよい。
【0017】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、断層撮影再構成における画像バックグラウンドからオブジェクトをセグメント化するステップを含んでよい。
【0018】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、セグメント化するステップは、数値モデルがテンプレートマッチングの結果として得られる画像を得るためにテンプレートへの断層撮影再構成のテンプレートマッチングを含んでよい。代替として、これは、断層撮影再構成がオブジェクト形状のモデルに関してトレーニングされた機械学習アルゴリズムに入力として適用される機械学習法によって得られてよい。
【0019】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、テンプレートマッチングは、テンプレートへの断層撮影再構成の正規化相互相関を計算するステップを含んでよい。
【0020】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、テンプレートは、等方性3次元ガウシアンテンプレートを含んでよい。
【0021】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、所定の閾値未満の結果として得られる画像におけるボクセル値が基準バックグラウンドレベル、例えばゼロに設定されるように結果として得られる画像の閾値をとるステップをさらに含んでよい。
【0022】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、所定の閾値は、結果として得られる画像における最大強度の所定の比であってよい。
【0023】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、結果として得られる画像における極大値を決定するステップを含んでよい。
【0024】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、極大値は、結果として得られる画像の各ボクセルのまわりの近傍、例えば26個の近傍において検出されてよい。
【0025】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、検出されたオブジェクトとしてのオブジェクトの期待される減衰値を示す所定の値を上回る極大値を選択するステップと、選択された極大値の位置を検出されたオブジェクトごとの位置の決定された初期推定値に関連付けるステップとを含んでよい。
【0026】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、位置を関連付けるステップは、検出された極大値のまわりの近傍、例えば26個の近傍において結果として得られる画像の質量中心を算出するステップを含んでよい。
【0027】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、オブジェクトごとの位置の初期推定値を決定するステップと、続いて位置の決定された初期推定値を考慮に入れてオブジェクトごとの向きを検出するステップとを含んでよい。
【0028】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、向きを検出するステップは、ハフ変換を実行するステップを含んでよい。
【0029】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、ハフ変換は、3次元線分についての反復ハフ変換アルゴリズムを含んでよい。
【0030】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、検出するステップは、向きの初期推定値を決定するステップ後にオブジェクトごとの長さの初期推定値を決定するステップを含んでよい。
【0031】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、長さの初期推定値を決定するステップは、向きの初期推定値に対応する方向の位置の初期推定値における結果として得られる画像内の線プロファイルに関するエッジ検出を含んでよい。
【0032】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法は、メディアンフィルタを線プロファイルに適用するステップ、および/またはガウスフィルタを用いて線プロファイルを平滑化するステップを含んでよい。
【0033】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法は、線プロファイルのどちらかの端に関する変曲点を決定するステップを含んでよい。
【0034】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、変曲点を決定するステップは、B-スプライン補間と、1次空間導関数における最高の傾斜を見つけるために2次空間導関数の根を計算するステップとを含んでよい。
【0035】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、変曲点を決定するステップは、候補変曲点を決定するステップと、傾斜が所定の閾値未満である候補変曲点を棄却するステップとを含んでよい。
【0036】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、所定の閾値は、物品における背景材料の期待される減衰値とオブジェクトの期待される減衰値との間の所定の値であってよい。
【0037】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、反復により初期推定値をリファインするステップは、初期推定値を最適化のために初期化パラメータとして用いて、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きを含むパラメータならびに複数のオブジェクトごとの少なくとも1つの幾何学パラメータの数値最適化を含んでよい。
【0038】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、数値最適化は、3次元画像体積における複数の検出されたオブジェクトの複数の投影像と対応するシミュレートされた順投影像との間の最小平方差などの差分またはディスクレパンシーメトリックの数的最小化あってよい。
【0039】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法は、数値最適化の最終的な反復に用いられるシミュレートされた3次元画像体積を出力するステップを含んでよい。
【0040】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、シミュレートされた3次元画像は、パラメータを用いて複数のオブジェクトごとに3次元数値モデルをサンプリングすることによって生成されてよい。
【0041】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、最適化は、オブジェクトのうちの他のオブジェクトについてのパラメータを一定に保ったまま、最適化の反復ごとにまたは反復のブロックにおいてオブジェクトの1つについてパラメータを最適化してよい。
【0042】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、最適化は、個々に最適化されているオブジェクトの全部にわたって複数回繰り返してよい。
【0043】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、最適化は、最小二乗最小化であってよく、パラメータは、有限差分を用いる勾配降下法を用いて最適化される。
【0044】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、パラメータごとの有限差分は、最適化の現在の反復において最適化されてよく、有限差分のステップの長さをプラスおよびマイナスすることによって変更される。
【0045】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法では、有限差分のステップの長さは、差分またはディスクレパンシーメトリックが、以前の反復前に反復に対して以前の反復が減少していなかった場合に、絶対値が減少してよい。
【0046】
本発明の第1の態様の各実施形態による方法は、複数のオブジェクトのパラメータのリストを出力するステップを含んでよく、パラメータは、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きのリファインされた推定値、ならびに複数のオブジェクトごとの3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータを含む。
【0047】
第2の態様では、本発明は、放射線イメージング装置とプロセッサとを備えるシステムであって、放射線イメージング装置は、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法における複数の投影角度にて物品の複数の投影像を取得するために適合され、プロセッサは、放射線イメージング装置の動作パラメータを考慮に入れて前述の請求項のいずれか一項に記載の方法の残りのステップを実行するステップのために適合されている、システムに関する。
【0048】
第3の態様では、本発明は、複数の物品を製造または操作するための製造環境または取扱い環境における複数の物品の各物品の品質管理、試験、分類、選択、計量、および/またはソートのために本発明の第1の態様または第2の態様の各実施形態による方法またはシステムの使用に関する。
【0049】
本発明の第3の態様の各実施形態による使用は、工業プロセスにおける物品のインライン検査、アットライン検査、オンライン検査、またはオフライン検査における使用であってよい。例えば、インラインは、工業ラインにおける、例えば、コンベヤベルト上の、または同様の流れの中で物品を処理する機構上の物品の直接評価を指すことができ、オンラインは、例えば一次ライン上の物品から得られるサンプリングされた部分母集団に適した低いスループットを有する物品を試験するために、このサンプル群の物品を一次工業ラインから二次ラインへそらすことによって物品の試験、例えばサンプルを指すことができ、アットラインおよびオフラインは、自動化ラインにおける抽出されたサンプルの処理を必要とすることなく試験のために一次ラインからサンプルを抽出することを指すことができる。アットライン試験とオフライン試験の間の区別は、サンプルがラインの工業的内容において、例えば、同じ施設内で、または後者については、専用施設、例えば実験室内で試験されるかにあり得る。
【0050】
第4の態様では、本発明は、複数の取得された投影像および放射線イメージング装置の動作パラメータが入力として与えられるときに、プロセッサ上で実行されると、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラム製品に関する。
【0051】
本発明の実施形態の利点は、検査方法が非破壊であるということにある。
【0052】
本発明の実施形態の利点は、検査方法が工業プロセス中のインラインまたはアットラインで実行され得ることである。品質管理、分類、選択、および/または計量のための既存の検査システムは、改善することができ、または本発明の実施形態による方法を実施するためのアップグレードから利益を受けることができる。
【0053】
本発明の実施形態の利点は、X線イメージング法は、個々の繊維を分解するために用いられてよいということである。本発明の実施形態は、局所的な方向および/または向きの繊維の強度を理解する上での手掛かりになるというさらなる利点を有する。
【0054】
本発明の実施形態の利点は、断層撮影再構成に必要な投影像/図の枚数は、広範な予備知識を反復再構成法に組み込むことによって減少させられるということである。広範な予備知識は、複数のオブジェクトについてパラメータで表示しやすい球または円柱などの数的3次元モデルを用意することによって組み込まれてよく、これは、検査方法をスピードアップするのに有利である。
【0055】
本発明の実施形態の利点は、再構成アーチファクトが大いに減少され得、結果としてより信頼できる検査結果になるということである。
【0056】
本発明の実施形態の利点は、オブジェクトの品質は、このオブジェクトの欠陥または不全、例えば、内部欠陥または内部不全の検出、定量化、および/または分類に基づいてコントロールおよび/または選択され得るということである。
【0057】
本発明の実施形態による方法またはシステムは、関心のオブジェクトの3Dモデルを予備知識として与えることによって幅広い種類のオブジェクトを特定するために適用され得るということが利点である。
【0058】
例えば、本発明の実施形態による検査方法において断層撮影再構成を実行するために必要な投影図が比較的少ないことにより高スループットの速度を実現することができるという本発明の実施形態のさらなる利点がある。搬送システムにおいてインラインで輸送されるオブジェクトの自動化された品質管理および/または選択などのインライン応用が、高スループットの速度を実現できることにより実現可能であるというまたさらなる利点がある。
【0059】
本発明、および先行技術を上回って実現される利点をまとめるために、いくつかのオブジェクトおよび本発明の利点が、本明細書中で上述された。もちろん、そのようなオブジェクトまたは利点は、本発明の任意の特定の実施形態に従って、必ずしも全て実現され得なくてもよいことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書中に教示または示唆され得るように他のオブジェクトまたは利点を実現する必要なく、本発明は、本明細書中に教示されたように1つの利点または利点の群を実現または最適化するやり方で具体化または実行され得ることを認識されよう。
【0060】
本発明の特定および好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、必要に応じて、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わされてよく、その請求項に明示的に記載されているだけでない。
【0061】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかであり、これを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明の実施形態を示す一例における繊維検出およびパラメータ最適化のフローチャートを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、ガウシアンテンプレートと繊維含有サンプルファントムの再構成体積に関する相関結果を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態を示す一例における各ステップに用いられるような線プロファイルを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に関連した例示的な反復法における反復数に関する繊維の正規化投影誤差を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態を示す一例における、2つのランダムに生成されたファントムの中央スライス、およびシミュレートされた投影からのそのファントムの再構成の同一のスライスを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態を示す一例における、2つのランダムに生成されたファントムの中央スライス、およびシミュレートされた投影からのそのファントムの再構成の同一のスライスを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態を示す一例における、第2の合成のファントムのグラウンドトゥルースの描画を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態を示す一例における、繊維パラメータの推定値の長さ誤差を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態を示す一例における、繊維パラメータの推定値の方向誤差を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態を示す一例における、繊維パラメータの推定値の重心位置誤差を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態を示す一例における、投影データに加えられる相加性雑音の標準偏差の関数として長さ誤差を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態を示す一例における、投影データに加えられる相加性雑音の標準偏差の関数として方向誤差を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態を示す一例における、投影データに加えられる相加性雑音の標準偏差の関数として位置誤差を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に用いられ得るような検査システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図面は、概略に過ぎず、非限定である。図面では、要素の一部のサイズは、例示のために誇張され、原寸で描かれていない場合がある。
【0064】
特許請求の範囲におけるいずれかの参照符号は、範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0065】
異なる図面において、同一の参照符号は、同一の要素または類似の要素を指す。
【0066】
本発明は、特定の実施形態に関連するとともにいくつかの図面を参照して説明されるが、本発明は、それに限定されず。特許請求の範囲によってのみ説明される。記載された図面は、概略に過ぎず、非限定である。図面では、要素の一部のサイズは、例示のために誇張され、原寸で描かれていない場合がある。寸法および相対的寸法は、本発明の実施への実際の減少に対応しない。
【0067】
特許請求の範囲に用いられる用語「備える、含む」は、その後に記載される手段に限定されると解釈されるべきでなく、それは、他の要素またはステップを除外しないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ、または成分の存在を言及されたものとして特定するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、または成分、あるいはその群の存在または追加を排除しないものであると解釈されたい。したがって、「手段AおよびBを備える装置」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。これは、本発明に関しては、装置の単なる関連構成要素がAおよびBであることを意味する。
【0068】
本明細書全体を通じての「1つの実施形態」または「一実施形態」の言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じての様々な箇所における「1つの実施形態における」または「一実施形態における」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態に全て言及しているとは限らず、そうであってよい。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において本開示から当業者に明らかなように任意の適切なやり方で組み合わされてよい。
【0069】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、様々な発明の態様の1つまたは複数の開示を合理化するとともに、その理解を助けるために単一の実施形態、その図、または説明に一緒にまとめられる場合があることを理解されたい。しかしながら、開示のこの方法は、権利主張した発明が各請求項に明示されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない状態にある。したがって、詳細な説明の後の特許請求の範囲は、本明細書によりこの詳細な説明に明白に組み込まれ、各請求項は、発明の別々の実施形態としてそれ自体に基づく。
【0070】
さらに、本明細書中に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まず、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内にあると意味され、異なる実施形態を形成する。例えば、添付の特許請求の範囲において、権利主張された実施形態のいずれかは、任意の組合せに用いられてよい。
【0071】
本明細書に与えられた説明には、多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施されてもよいことが理解されよう。他の例では、この説明の理解をあいまいにさせないために、よく知られている方法、構造、および技法は、詳細に示されていない。
【0072】
第1の態様では、本発明は、物品を検査する方法、例えばコンピュータで実施される方法に関する。この方法は、放射線イメージング、例えばテラヘルツ放射線イメージング、および/または電離放射線イメージング、例えばX線イメージングを用いて複数の投影角度にて物品の複数の投影像を取得することと、断層撮影再構成を得るために取得された投影像を再構成することと、断層撮影再構成における複数のオブジェクトを検出することとを含み、複数のオブジェクトの各々は、パラメトリック3次元数値モデルによって記述された一般的形状を有する。例えば、複数のオブジェクトは、パラメトリック3次元数値モデルによって定められる同じ一般的形状を有してよく、例えば、モデルによって定められるジオメトリの少なくとも一部は、変数パラメータに依存する。例えば、一般的形状は、パラメトリック3次元数値ソリッドモデルによって定められるパラメータであるソリッドモデル球の球面境界、またはソリッドモデル多面体の境界、球の半径、および多面体のスケール寸法にそれぞれ関し得る。ソリッドモデルは、その外側境界によって暗黙的に定められ得る内部体積を定め材料パラメータは、内部体積の点に割り当てられてよく、例えば、線吸収係数、原子Z番号、(電子)密度等などの放射線物質相互作用を示す材料パラメータを含む。この検出することは、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きの初期推定値、ならびに複数のオブジェクトごとの3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータを決定することを含む。この方法は、投影マッチング法を用いることによって初期推定値をリファインすることも含む。しかしながら、当業者に明らかとなるはずであるように、各実施形態による方法は、例えば、各オブジェクトクラスが、対応する3次元モデル、例えば異なるパラメトリック3次元モデルによって定められる、複数のオブジェクトクラスによって記述される異なる一般的形状を有する複数のオブジェクトを検出することと、検出されたオブジェクトごとに、位置および/または向きの初期推定値、ならびにそのオブジェクトのクラスに対応する3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータをリファインすることとにも関し得る。検出するステップおよびリファインするステップは、複数のオブジェクトクラスについて連続的にまたは同時に実行されてよい。
【0073】
方法は、放射線イメージングを用いて複数の異なる投影角度にて被検査物品の複数の投影像を取得することを含む。複数の投影像を取得することは、電離放射線イメージングまたはテラヘルツイメージング、例えばX線イメージングを用いて、物品のマイクロコンピュータ断層撮影スキャンを実行することなどを含んでよい。複数の投影像は、5枚から1000枚の範囲内、好ましくは10枚から200枚の範囲内、例えば10枚から100枚の範囲内、例えば10枚から50枚の範囲内、例えば10枚から30枚の範囲内にあるいくつかの枚数の投影像からなってよい。
【0074】
方法は、物品の断層撮影再構成の体積測定画像を得るために取得された投影像を再構成することを含む。再構成するこのステップは、同時反復再構成法(SIRT)などの代数的断層撮影再構成(ART)法を実行することを含んでよい。
【0075】
方法は、断層撮影再構成における複数のオブジェクトを検出することであって、複数のオブジェクトは、3次元数値モデルによって記述された一般的形状を有する、検出することを含む。例えば、3次元数値モデルは、円柱、球、立方体、直方体、卵形、またはプラトンの立体であってよい。
【0076】
例示的な一実施形態では、オブジェクトは、繊維であってよい。例えば、物品は、繊維がポリマーまたは樹脂マトリックスなどのマトリックス物質に埋め込まれている繊維強化複合材であってよい。そのような繊維に用いられる数値モデルは、例えば、可変の長さおよび/または半径パラメータを有する円柱であってよい。高アスペクト比の繊維について、数値モデルは、繊維の曲率を考慮に入れてよく、例えば、曲がった円柱を含んでよい。代替として、複数の当接する剛体円柱が、繊維のための数値モデルとして用いられてよい。例えば、単繊維のセグメントは、剛体円柱として個々にモデル化されてよく、結果は、繊維ごとの全長の最終的な推定値を与えるために組み合わされてよい。さらに、モデルは、例えば、炭素繊維の織りに近づけるように構造化複合材を考慮に入れるように適合されてよい。
【0077】
他の実施形態では、オブジェクトは、支柱または細孔に関連してよく、または矯正装置または多孔性化学ガスセンサのためにトラベキュラーメタル材料などの多孔質ネットワーク構造の柱または細孔に関連してよい。
【0078】
検出するステップは、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きの初期推定値、ならびに複数のオブジェクトごとの3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータを決定することを含む。
【0079】
検出するステップは、断層撮影再構成における画像バックグラウンドからオブジェクトをセグメント化することを含んでよい。例えば、このセグメント化は、テンプレートマッチングの結果として得られる体積測定画像を得るために、断層撮影再構成と数値モデルのためのテンプレートのテンプレートマッチングを含んでよい。テンプレートマッチングは、断層撮影再構成とテンプレートの正規化相互相関を計算することを含んでもよい。例えば、テンプレートは、等方性3次元ガウシアンテンプレートを含んでもよく、または等方性3次元ガウシアンテンプレートからなってもよい。
【0080】
初期推定値を決定することは、複数のオブジェクトごとの中心位置および方向、ならびに複数のオブジェクトごとの長さおよび/または半径を決定することを含んでよい。
【0081】
検出するステップは、所定の閾値未満の結果として得られる画像におけるボクセル値が基準バックグラウンドレベル、例えばゼロに設定されるようにテンプレートマッチングの結果として得られる画像の閾値をとることを含んでよい。所定の閾値は、結果として得られる画像における最大強度の所定の比であってよい。検出するステップは、例えば閾値をとる動作の後に、結果として得られる画像における極大値を決定することをさらに含んでよい。例えば、極大値は、結果として得られる画像の各ボクセルのまわりの近傍、例えば26個の近傍において検出されてよい。所定の値を上回る極大値は、検出されたオブジェクトとして選択されてよく、所定の値は、オブジェクトの期待される減衰値を示す。選択された極大値の位置は、検出されたオブジェクトごとの決定された位置に関連し得る。位置を検出されたオブジェクトと関連付けることは、各検出された極大値のまわりの近傍、例えば26個の近傍において結果として得られる画像の質量中心を算出することを含んでよい。
【0082】
オブジェクトごとの位置の初期推定値を決定した後に、検出するステップは、この位置の決定された初期推定値を考慮に入れることによって、例えば、この位置の決定された初期推定値のまわりのオブジェクトの適切な向きを探すことによって、続いてオブジェクトごとの向きを検出することを含んでよい。
【0083】
向きを検出することは、ハフ変換を実行することを含んでよい。ハフ変換は、3次元線分についての反復ハフ変換アルゴリズムを含んでよい。
【0084】
検出するステップは、その向きの初期推定値を決定した後に、オブジェクトごとの長さの初期推定値を決定することを含んでよい。
【0085】
長さの初期推定値を決定することは、向きの初期推定値に対応する方向の位置の初期推定値における結果として得られる画像内の線プロファイルに関するエッジ検出を含んでよい。
【0086】
長さの初期推定値を決定することは、メディアンフィルタを線プロファイルに適用すること、および/またはガウスフィルタを用いて線プロファイルを平滑化することを含んでよい。
【0087】
長さの初期推定値を決定することは、線プロファイルのどちらかの端に関する変曲点を決定することを含んでよい。
【0088】
変曲点を決定することは、B-スプライン補間と、1次空間導関数における最高の傾斜を見つけるために2次空間導関数の根を計算することとを含んでよい。
【0089】
変曲点を決定することは、候補変曲点を決定することと、傾斜が所定の閾値未満である候補変曲点を棄却することとを含んでよい。
【0090】
方法は、投影マッチング法を用いることによって初期推定値をリファインすることも含む。
【0091】
初期推定値をリファインすることは、パラメータの数値最適化を含んでよく、これらのパラメータは、初期推定値をこの最適化のための初期化パラメータとして用いて、複数のオブジェクトごとの位置および/または向き、ならび複数のオブジェクトごとの少なくとも1つの幾何学パラメータを含む。
【0092】
数値最適化は、3次元画像体積における複数の検出されたオブジェクトの複数の投影像と対応するシミュレートされた順投影像との間の最小平方差などの差分またはディスクレパンシーメトリックの数的最小化を含んでよい。
【0093】
方法は、数値最適化の最終的な反復に用いられるシミュレートされた3次元画像体積を出力することを含んでよい。
【0094】
シミュレートされた3次元画像は、例えば最適化の現在の反復のためのパラメータと一致する画像体積を構成するためにパラメータを用いて、複数のオブジェクトごとの3次元数値モデルをサンプリングすることによって、最適化の反復ごとに生成、例えば、再生成および/または更新されてよい。
【0095】
最適化は、複数の検出されたオブジェクトの他のオブジェクトについてのパラメータを一定に保ったまま、最適化の反復ごとにまたは反復のブロックごとに、オブジェクトごとのパラメータを最適化してよい。最適化は、個々に最適化されるオブジェクトの全部にわたって複数回繰り返してよく、本発明の実施形態は、それに限定されない。
【0096】
最適化は、最小二乗最小化を含み得る。パラメータは、有限差分を用いる勾配降下法を用いて最適化されてよい。最適化の現在の反復において最適化されるパラメータごとの有限差分は、例えば、有限差分のステップの長さをプラスおよびマイナスすることによって変更されてよい。有限差分のステップの長さは、差分またはディスクレパンシーメトリック、例えば、最小平方差が、その以前の反復前に反復に対して以前の反復が減少していなかった場合に、現在の反復についての絶対値が減少してよい。
【0097】
方法は、複数のオブジェクトのパラメータのリストを出力するステップを含んでもよく、このパラメータは、複数のオブジェクトごとの位置および/または向きのリファインされた推定、ならびに複数のオブジェクトごとの3次元モデルの少なくとも1つの幾何学パラメータ、例えば長さを含む。
【0098】
本発明の実施形態の利点は、パラメータが投影領域内で直接推定されるパラメトリック数値モデル、例えば、繊維モデルの使用によって、繊維の位置、方向、および長さの推定などのパラメータ推定に本来であれば影響を及ぼし得る再構成アーチファクトを防ぐまたは減少させることができるということである。このようにして与えられるパラメータ推定は、とても少ない投影数についても特に頑強であり得る。例えば、当業界で知られている従来のアルゴリズムは、パラメータを推定するために、例えば、繊維複合材試料に関する量を算出するために数千の投影像を必要とし得る一方、要とされる投影のこの個数は、本発明の実施形態による方法において強力に減少させられ得る。
【0099】
第2の態様では、本発明は、放射線イメージング装置、例えば電離放射線イメージング装置またはテラヘルツイメージング装置とプロセッサとを備えるシステムであって、放射線イメージング装置は、本発明の第1の態様の各実施形態による方法における複数の投影角度にて物品の複数の投影像を取得するステップのために適合され、プロセッサは、放射線イメージング装置の動作パラメータを考慮に入れてこの方法の他のステップを実行するために適合されている、例えばこの方法の他のステップを実行するようにプログラムされている、システムに関する。そのような動作パラメータは、線源の放射線エネルギースペクトル分布、線源検出器距離、物品検出器距離または倍率因子、放射線ビーム形状、検出器のスペクトル応答曲線などを含み得る。
【0100】
第3の態様では、本発明は、複数の物品を製造または操作するための製造または取扱い環境における複数の物品の各物品の品質管理、試験、分類、選択、計量、および/またはソートのための本発明の第1の態様の各実施形態による方法、および/または本発明の第3の態様の各実施形態によるシステムの使用に関する。例えば、計量応用は、ある測定が許容値内にあることを確実にするために物品の長さ、直径、体積、もしくは他の幾何学的および/または物理的特性を測定することに関し得る。
【0101】
例えば、そのような使用は、工業プロセスにおける物品のインライン検査またはオフライン検査における使用であり得る。
【0102】
第4の態様では、本発明は、複数の投影像および放射線イメージング装置の動作パラメータが入力として与えられるときに、プロセッサ上で実行されると、本発明の第1の態様の各実施形態による方法を実施するコンピュータプログラム製品に関する。
【0103】
本発明の原理を示す一例(本発明の実施形態はそれによって限定されない)では、本発明の実施形態による、シミュレートされたX線マイクロコンピュータ断層撮影スキャンからガラス繊維強化ポリマーにおけるガラス繊維のジオメトリパラメータを推定する手法が提示されている。伝統的には、そのようなパラメータは、関心の特徴の画像再構成、前処理、セグメント化、解析を含む複数ステップの手順を用いて推定され得る。この一連における各ステップにより、パイプラインを通って伝搬し、推定されたパラメータの精度を損う誤差がもたらされる。
【0104】
本開示の手法では、体積は、反復再構成法を用いて少ない数の投影角度から再構成されてよい。次いで、ポリマー含有繊維の位置、方向、本数、および長さなどの繊維のパラメータが、繊維形状についての先験的知識を組み込むことによって決定されてよい。繊維の形状は、幾何学的表現、例えば、数値モデルとしてモデル化されてよい。シミュレーション実験を用いて、この方法は、雑音のあるデータが存在する場合でも、かつ利用できる投影角度がほんのわずかでも、それらの表現を推定できることが示されている。
【0105】
ガラス繊維強化ポリマー(GFRP)などの先進の複合材は、成形性、軽量、高張力、および圧縮強度、ならびに費用有効性などの最先端素材についての非常に望ましい特徴を組み込み、したがって、多くの異なる産業において特注コンポーネントを可能にする。そのような複合材は、典型的には、特定の機械的特性を実現するために、マトリックス構成要素(例えば、樹脂マトリックス)、および補強構成要素(例えば、ガラス繊維)からなり得る。X線マイクロコンピュータ断層撮影(μCT)は、非破壊のやり方でおよびマイクロスケール単位の高い空間分解能でそれらの複合材の内部構造を研究するイメージング法である。次いで、結果として得られる体積測定画像は、材料の機械的特性に影響を及ぼす繊維の繊維方向または空間分布などの特徴を特徴付けるためにさらに処理される。高分解能μCT画像からGFRPの構造特性を特徴付ける現在の方法は、大きい投影数(典型的には、1000回を超える)からの体積測定に関する再構成で構成された逐次的なワークフロー、ならびに続く繊維セグメント化および画像解析に頼る。
【0106】
再構成される画像の品質は、投影数、および検出器分解能、ならびに取得ジオメトリなどのいくつかのパラメータに依存し得る。体積内の繊維の特定の精度は、再構成の品質にひどく依存するので、典型的には、長い取得時間が必要とされる。さらに、再構成から個々のオブジェクトの特徴付けまでのワークフロー内のパラメータは、典型的には経験的なやり方で決定され、研究者の経験にもっぱら頼る。すなわち、多くのパラメータは、ワークフローのいくつかのステップにおいて、手動または半自動で設定されなければならず、これは、さらなる誤差をもたらし得る。最後に、従来のワークフローは単方向であるので、ステップの1つにおいて生じるあらゆる誤差が、パイプライン全体を通じて伝搬する。
【0107】
誤差の重要な原因は、多くの方法が人間の介入を必要とし、それらを非決定性にし、研究者の経験に非常に依存させることである。単繊維の抽出および繊維量の測定についてより自動化された解決策を提供するために、最近、多くの手法が導入されている。それらの多くは、繊維の中心線を抽出することを含む。中心線を抽出する個々の方法、およびデータの使用は、各手法において異なる。例えば、当業界で知られている手法は、それらのデータセットの単方向の繊維方向分布に頼ってスライスごとにとても低い分解能の繊維の中心を抽出するために辞書学習法を用い得る。当業界で知られている別の手法は、局所固有値、およびサーキュラーボーティング法を使用し得る一方、さらに別の手法は、骨格化を使用して中心線を抽出し得る。
【0108】
この例に示された手法では、再構成される体積が知られている形状の繊維を含むという予備知識が利用される。そのために、繊維は、測定された投影データにモデルをフィットし投影距離を最小にすることによって推定されるパラメータを有する円柱としてモデル化される。パラメータの初期値は、Zaunerら、Proceedings of the 14th International Congress for Stereology and Image Analysis、Acta Stereologica、2015年に示されたものと同様、従来の代数的再構成法(ART)と、それに続くテンプレートマッチング法とを用いて体積の第1の再構成から得られる。同様のモデルベースの手法は、電子線トモグラフィデータから原子分解能で金ナノ粒子の結晶格子を再構成するためにすでに実施されていた(例えば、Gorisら、Nano Letters 15(10)、6996 (2015年)を参照)。
【0109】
示された例は、ASTRAツールボックスのフレームワークを用いてシミュレートされたX線投影データを使用する(van Aarleら、Optics Express 24、25129、2016年を参照)。
【0110】
CT画像は、X線がサンプルを通過し、サンプルが放射線を減衰させた後にX線の強度を測定することによって取得される投影データから再構成される。測定強度は、
【0111】
【0112】
という式によってサンプル中の様々な材料の減衰係数に関連付けられ、ただし、I0(E)は、所与のエネルギーに対する入射ビーム強度であり、μは、X線が材料の内側に移動する距離の関数における材料のエネルギー依存減衰係数であり、I(s)は、画像化されているオブジェクトを通じて延びる長さに依存する検出器に関する測定強度である。以下のものでは、単色X線は、これが明白なやり方で多色X線へ明白に拡張できるとしても、式をランバート・ベルの法則へ単純化すると想定される。X線源および検出器、またはサンプルのどちらかを回転させることによりいくつかの角度から取得される、式(1)によって説明されるいくつかのX線投影から、体積測定画像が、異なる方法を用いて再構成され得る。この例では、ARTが用いられ、より具体的にはよく知られている同時反復再構成法(SIRT)アルゴリズムが使用される(例えば、Gilbert、Journal of Theoretical Biology 36(1)、105、1972年を参照)。
【0113】
投影像を用いて、以下パラメトリック再構成(PARE)と呼ばれる示されたアルゴリズムは、初期の、例えば、所定の反復数SIRTを実行することによって得られる再構成体積の初期推定値から始める。その後、繊維の中心位置、方向、および長さが推定される。この情報を使用して、テンプレートマッチング法を用いて中心線を抽出することによって検出された体積内の各繊維を表す剛体円柱のリストを構築する。そのようなテンプレートマッチング法は、異なるテンプレートを用いるが、Zaunerら、Proceedings of the 14th International Congress for Stereology and Image Analysis、Acta Stereologica、2015年によって開示されている。
【0114】
この例の円柱繊維モデルは、7つのパラメータを有する。最初の3つは、重心位置のx、y、およびz(デカルト)成分である。続く2つは、繊維の軸の方向単位ベクトルの球面座標(θ,Φ)である。最後の2つのパラメータは、繊維の長さlおよび半径rである。ガラス繊維のための製造プロセスにより、とても精密に調整可能な半径が可能になるので、繊維半径は、一定であると仮定されてよい。円柱パラメータの推定は、以下にさらに詳細に説明される3つの主要なステップからなる。第1のステップは、再構成の現在の状態における繊維の検出全体である。検出後、パラメトリック表現の第1の推定値が得られ、これは、Bleichrodtら、Fundamenta Informaticae 135、1 (2014年)によって示されるものと同様の投影マッチング法を用いることによってリファインされ得る。
【0115】
手順、例えば、繊維検出ステップおよびパラメータ最適化ステップのフローチャートが、
図1に示されている。
【0116】
繊維の一部であるボクセルを見つけるために、繊維は、バックグラウンドからセグメント化される。セグメント化の第1のステップとして、テンプレートマッチングは、例えば、再構成体積Iと等方性3DガウシアンテンプレートGの正規化相互相関(NCC)C_n、すなわち、
【0117】
【0118】
を計算することによって算出され、ただし、xおよびuは、それぞれ画像座標およびテンプレート座標である。量
【0119】
【0120】
は、テンプレートによって含まれる画像の領域内の局所平均値であり、
【0121】
【0122】
は、平均強度Gである。式(2)を算出するのに用いられるアルゴリズムは、Lewis、Vision Interface 95、120 (1995年)によって説明されるNCCの有効な実施である。ガウシアンテンプレートは、半値全幅の定義を用いる繊維の半径に依存した標準偏差
【0123】
【0124】
を有し、次いで、これは、ガウシアンテンプレートのための以下の公式
【0125】
【0126】
を与える。
【0127】
繊維の中心線の位置にその最も高い値を有するということを利用することができ、これを用いて以下に説明するステップにおいて方向および重心を検出する。固体球を用いるテンプレートマッチングが、Zaunerら, Proceedings of the 14th International Congress for Stereology and Image Analysis, Acta Stereologica (2015)によって同様に機能することが示されている。NCCの体積の場合、繊維中心線が検出され得る。そのために、閾値が、C_n、すなわち、
【0128】
【0129】
に適用されてよく、ただし、最高のピークに応じた閾値より低い全てのボクセルは、ゼロに設定されるが、閾値以上の値は維持される。C_nの相関値の範囲が画像内の雑音レベルに応じて変化し得るときに、閾値の値t∈[0,1]が、特定の画像に調整されてよい。tの値は、NCCにおける最大強度の百分率を与える。以下に述べる実験のシミュレーションの場合、t=0.85の値が使用された。
図2において、(「ファントムA」とさらに呼ばれる)繊維を含有するサンプルファントムの再構成体積に関するNCCと式(4)によるガウシアンテンプレートとの結果が視覚化されている。繊維が結果として得られる体積に最高の強度を与えるとともに、中心線がはっきりと見えることが明確である。繊維は結果として得られる体積内で強化されることが明確に見られる。勾配バー71は向きとして働くが、0.55未満の値は表されず、0.55から0.79の間の値がより良い視認性のために透明度の値に与えられる。
【0130】
次いで、所与のボクセルのまわりの26個の近傍の領域におけるC_nの極大値を得ることができる。次いで、結果として得られる最大値のボクセル値が、全ての最大値が繊維の減衰値に近いことを確認するために、再構成においてチェックされる。減衰値が例えば±25%の相対許容値内の期待される繊維減衰μfiberに近い場合、この点は繊維点としてマークされ、ボクセルの26個の近傍を用いて質量中心を算出することによってさらにリファインされる。
【0131】
例えば、Dalitzら、Image Processing On Line 7、184 (2017年)によって説明されるように、NCCのフィルタ処理済み最大値から、各繊維の方向および重心の初期推定値が、3D線セグメントのための反復ハフ変換アルゴリズムを用いて算出されてよい。このアルゴリズムは、伝統的なハフ変換とはわずかに異なる。ボーティングアキュムレータ(voting accumulator)は、線の4つのパラメータ表現を用いる。まず、アルゴリズムは、ポイントクラウドに関して標準的なハフ変換アルゴリズムを実行し、アキュムレータにおける最高のピークを用いて1つの線のパラメータを決定する。次に、アルゴリズムは、検出した線の近くにあるポイントクラウドにおける全ての点を見つけ、それらの点の最小平方フィットを算出して、線のより良い推定値を得る。フィットされた線に近い点は取り除かれる。この手順の後、標準的なハフ変換が、残りの点に関して算出され、上記のプロセスは、ハフ変換を算出するのにもはや十分な点がなくなるまで、または特定数の線が検出されるまで繰り返される。この制限が特定されない場合、第1の条件が満たされるまで、アルゴリズムが実行する。この例では、ハフ変換が3つの点の最小値と共に使用されるが、検出される線の本数に関する制限を適用していない。
【0132】
反復ハフ変換アルゴリズムの角度精度は、方向のサンプリングによって制限され、二十面体の面を三角形に反復細分化することに頼る。精度と速度のトレードオフとして、5つの細分化ステップが使用されてよく、これにより、平均間隔2°で5121個のサンプルが生じる。方向の第1の推定値として、これは、十分に正確とみなされ得る。線は、
x=x0+sd (6)
の形式でパラメータ表示され、ただし、x_0は位置ベクトルであり。dは方向単位ベクトルである。
【0133】
この初期推定値を用いて、最適化される6つのパラメータのうちの5つだけ、すなわち重心位置および方向単位ベクトルが得られる。長さの初期推定値も得るために、新たに推定される繊維軸を通る線プロファイルに関するエッジ検出が用いられてよい。これは、グリッド上の線ボクセル化のためのブレゼンハムの線アルゴリズムの3次元バージョンを用いて行われてよい(例えば、Kaufmanら、Proceedings of the ACM Workshop on Interactive 3D Graphics、45~75ページ(1986年)を参照)。検出の頑強性を改善するために、まず、メディアンフィルタが、信号のエッジを保存しつつ、高周波雑音を除去するために適用されてよく、線プロファイルが、r_fiberのボクセルの標準偏差でガウスフィルタによって平滑化されてよい。次いで、線プロファイルのどちらかの側の変曲点がB-スプラインで補間することによって算出されてよく、次いで、1次導関数における最も高い傾斜で2次導関数の根を見つける(例えば、Burgerら、Principles of Digital Image Processing: Core Algorithms (Springer、2009年)および/またはBurgerら、Principles of Digital Image Processing: Fundamental Techniques (Springer、2009年)を参照)。傾斜がμ_fiberとμ_polymerの間の値の範囲に関連して選ぶことができるある閾値よりも高い値を有する場合に候補変曲点が唯一考えられ、ただし、μ_fiberおよびμ_polymerは、それぞれ繊維およびポリマーマトリックスについての減衰値である。この例では、閾値は、μ_polymer+0.3(μ_fiber-μ_polymer)といったそうした中間強度値に基づいて選ばれた。
【0134】
繊維を通る線プロファイルおよびその導関数を用いる補間を用いるこのプロセスの例示が、
図3に示されている。(*でマークされた)測定された線プロファイル、一次および二次導関数32a、32b(それぞれ破線および一点鎖線)を伴うそのスプライン補間31、ならびに変曲点33a、33b(上向き三角形および下向き三角形)が示されている。
【0135】
エンドポイント位置を得るために、ブレゼンハムの線上で検出された点に最も近い2つの全体ボクセル点が、線プロファイルの変曲点の座標の一部に応じて線形で補間される。そして、長さの初期推定値は、2つの結果として得られるエンドポイントのユークリッド距離である。
【0136】
反復ハフ変換からのパラメータ推定、および初期開始点としての長さ推定を用いて、繊維パラメータのさらなる最適化が行われてよい。重心位置の座標
px=(px,1,...,px,N)
py=(py,1,...,py,N)
pz=(pz,1,...,pz,N)
の各成分について、方向単位ベクトルの球面座標
aθ=(aθ,1,...,aθ,N)
aΦ=(aΦ,1,...,aΦ,N)
について、および長さ
l=(l1,...,lN)
について、検出および推定されたN本の繊維の全てについて最適化が行われてよい。次いで、これらは、繊維パラメータベクトルξ=(p_x,p_y,p_z,a_θ,a_Φ,l)に組み合わされてよく、線形の式のシステムが、
Wx(ξ)=p (7)
として公式化されてよく、ただし、Wは、一定のジオメトリを伴う順投影を説明する投影マトリックスであり、pは、測定された投影データである。再構成される体積xは、推定される繊維パラメータの関数として定められる。したがって、繊維の最適化は、推定される体積の順投影と測定された投影データの投影距離を最小にする最小化問題
【0137】
【0138】
として公式化されてよい。この最小化問題は、取得された投影像またはそのサブセットの全てについて解かれてよく、このサブセットは、異なる投影角度からの少なくとも2つの投影像を含む。
【0139】
各繊維パラメータベクトル推定値を初期設定するために、先のステップにおいてハフ変換から取り出されたデータ、および検出されたエンドポイントから算出される長さが使用される。この初期推定値を用いて、パラメータの範囲が、方法を数的により安定させるためにパラメータ空間内で座標ごとに間隔[0,1]へスケール変更されてよい。間隔の中心0.5は、各パラメータの初期推定値ξ_iであり、外側境界は、ξ_i±Δ_iによって与えられる。
【0140】
Δ_iの値は、例えば、位置パラメータp_x,i、p_y,i、p_z,iについて5ボクセル(vx)であるように経験的に選ばれてよい。a_θおよびa_について、Δ_iは、ハフアキュムレータにおける2つのサンプル間の間隔の3倍として選択されてよく、l_iについて、値は、10vxとして選択されてよい。
【0141】
推定される体積x(ξ)は、事前に初期設定されてもよい。繊維が最適化される場合、繊維のN-1個の残りの推定値は、繊維の想定分解能をマッチングする規則的な格子グリッド上で固定およびボクセル化されてよい。次いで、繊維のパラメータが、結果として得られる繊維を同じ体積に最適化およびボクセル化するためにシステマティックに変更されてよい。次いで、この体積は、上述した順投影方法を用いて、例えばASTRAツールボックスを用いて順投影され、結果として得られる投影は、測定データと比較されてよい。
【0142】
反復jにおける任意の所与の新しい推定値についてのパラメータが、有限差分を使用して勾配
【0143】
【0144】
の推定を用いて算出されてよい。そのために、まず、
【0145】
【0146】
が、ゼロに初期設定されてよく、次いで各パラメータが、例えば、初期値がδ=0.2として選択され得る場合に、±δ_jで変更されてよい。現在のパラメータについての新しい値のどれか1つの投影誤差または投影距離p_jが、先の最良の推定値の投影誤差以下である場合、2つの値の間の差分が、そのパラメータについての
【0147】
【0148】
の値として設定される。投影誤差が以下でない場合、勾配ベクトルは、その特定のパラメータについてゼロと仮定されてよい。パラメータごとにこのステップを繰り返した後、
【0149】
【0150】
は、単位長さに正規化され、次いで現在の繊維
【0151】
【0152】
についての新しい推定値を算出するために、
【0153】
【0154】
として用いられてよい。
【0155】
次いで、新しい推定値ξ_i,newについての投影誤差が算出される。誤差が先の推定値の誤差以下である場合、ξ_i,newは、繊維の新しい推定値として得られる。誤差が低くない場合、デルタ値は、例えばその現在の値の75%まで減少する。このプロセスは、n_min倍の最小値およびn_max倍の最大値について繰り返されてよい。この例では、n_min=18およびn_max=35が使用され、その両方は経験的に選ばれた。反復は、繰返しの上限で止まり、または
【0156】
【0157】
として定められる誤差の変化率が閾値未満、例えば、0.001の閾値未満である場合に止まる。
図4は、反復数に関する907本の繊維の正規化投影誤差を示す。それぞれの細い線は、単繊維に対応する。投影誤差は、繊維に関して激しく変化し得るので、誤差は、収束を比較できるように正規化された。
【0158】
この例では、最大反復数に到達せず、誤差は停滞または減少し、これは、繊維推定値がより良い解に収束し、または改善しないことを示し、初期推定値がすでに十分に正確であることが起こった場合、反復0が初期推定値についての誤差を与える。
【0159】
体積x(ξ)を推定するために、現在の繊維推定値は、再構成と同じサイズの体積にボクセル化される。そのために、x軸と整合された数的円柱モデルの式は、パラメータ半径r_fiberおよび推定された長さl_fiberを用いて、
【0160】
【0161】
としてサンプリングされる。
【0162】
推定された方向に沿って推定された位置に繊維を配置するために、c(x,y,z)は、規則的なグリッド上でボクセル化され、次いでこれは、x軸が繊維方向ベクトルに沿って方向付けられるとともに、繊維重心が原点に位置するように変換される。本来μfiberに完全に設定されるボクセルは、ボクセルが座標方向ごとにn倍に細分化されるように局所適応的にサブサンプリングされ得、ボクセルあたりn3個のサンプル点という結果になる。次いで、それらのサブボクセルごとの値は、式(11)を用いて算出される。そのやり方で得られた値は、平均され、そのサブボクセルのセットに対応するボクセルに割り当てられ、このようにして繊維境界にエイリアスを生じさせる。
【0163】
ボクセル化は、繊維のすぐ近くにある値を単に置き換えるように設計されてよく、それによって繊維を体積内に配置するときに、他の繊維は影響を受けない。これは、現在の推定値に従って、ボクセルが繊維に属する場合、ボクセルが単に置き換えられることを確かにする。
【0164】
PAREアルゴリズムを示すために、2つのシミュレーション実験がセットアップされた。これらの実験のための数的なファントムが、ランダムに向けられた繊維のセットから、ならびに均一に分布した中心および長さを用いて生成された。繊維方向は、フォンミーゼスフィッシャー(vMF)分布から引き出される独立したサンプルとして生成された。所与の方向u=(θ,Φ)についての球上のその確率密度関数は、
f(u;μvMF,κ)=CFexp(κμvMF
Tu) (12)
ただし、
CF=κ/(4πsinhκ) (13)
であり、ただし、ベクトルμ_vMF=(α,β)は分布の平均方向を示し、κは濃度パラメータを示し、κの大きい値は小さい分散(すなわち、平均方向のまわりにより高い濃度)に対応する。繊維の位置は、各繊維が体積内に完全に配置される(すなわち、切頭はない)という制約と共に、均一の分布から引き出される。均一な分布からやはり引き出される繊維長さは、70±10vxであった。SIRT反復数は、これらの実験について100回まで設定された。
【0165】
2つのファントムは、1003個のボクセルで生成され、このファントムは、方向分布のパラメータが単に違っている。第1のファントム(「ファントムA」)については、方向は、f(u,μ=(π/2,0)κ=40)から引き出された。第2のファントム(「ファントムB」)は、f(u,μ=(0,0)、κ=7)から生成された。
【0166】
繊維をランダムで引き出した場合に、ランダムシーケンシャル吸着(RSA)アルゴリズムのバージョンが、非重複繊維を生成するために実行された。RSAアルゴリズムにおける衝突検出を単純化するために、繊維は、球-円柱として処理され、衝突の問題を減少させて、2つの線セグメントに最も近い点、および単純な距離計算を見つける。繊維を実質的に作用させるために、繊維が正確に接触する場合、したがって2つの繊維の距離が正確にd_1,2=r_1+r_2である場合、繊維の配置も維持される。繊維のアスペクト比が高いので、この手法によってもたらされる誤差は無視できるほどである。「ファントムB」について平均方向のまわりの分散がより高いので、RSAは72個の繊維を単に配置し、一方、「ファントムA」は109個の繊維を含む。いずれの場合も、アルゴリズムは、150個の繊維を配置するように初期設定された。両マトリックスについて期待される値、および繊維減衰は、実データセットのスキャンから推定された。バックグラウンドは、μ_polymer=[0.23±0.07]の強度を有し、繊維は、μ_fiber=[0.76±0.05]の正規化された強度を有した。両強度値は、使用される整数データ型の最大可能値の百分率として与えられる。したがって、ファントムを生成するために、値0.23がバックグラウンドに用いられ、0.76が繊維に用いられた。
【0167】
それらのファントムから、順投影像が、工業用およびデスクトップのX線スキャナに最も一般的に使用されているジオメトリであるシミュレートされたコーンビームジオメトリを用いて生成された。ファントムは、システムの原点に配置された。線源検出器距離(SDD)は250mmであり、線源オブジェクト距離(SOD)は14mmであった。シミュレートされた検出器は、50μmのサイズを有する正方画素を有した。これは、再構成において等方性の2.8μmの有効な検出器画素サイズをもたらし、ファントムの中心面において約17.86の倍率である。
図5および
図6では、ランダムに生成されたファントム「ファントムA」のyz平面に沿った中央スライス、およびシミュレートされた投影からのファントムの再構成の同じスライスが、それぞれ示されている。
図7は、合成の「ファントムB」のグラウンドトゥルースの描画を示しており、72個の個々の繊維は、f(u,μ=(0,0)、κ=7)から引き出される方向を有する。
【0168】
生成されたデータを用いて、PARE方法の実行は、利用可能な投影角度の個数と信号対雑音(SNR)の両方の関数として評価される。全ての場合に、100回のSIRT反復が、生成された2つのファントムの再構成についてのベースラインとして選ばれた。両ファントムについて、それぞれ、雑音レベルσおよび投影数ごとに1つの実験を行った。追加雑音を用いる実験について、再構成前に投影データに加えられた加算性ガウス分布白色雑音が使用された。
【0169】
PAREによって得られたパラメータ推定の誤差を、以下に説明する。繊維の長さの誤差および重心位置座標の誤差は、これらのパラメータの推定値とその対応するグラウンドトゥルース値との間の差分を算出することによって得られた。方向ベクトルの誤差は、それぞれ推定ベクトルおよびグラウンドトゥルースベクトルのデカルト表現のドット積から得られた角度として算出された。これらの誤差の算出の前に、まず、どの推定繊維パラメータベクトルがどのグラウンドトゥルース繊維パラメータベクトルに対応するのか特定する必要があったことに留意されたい。
【0170】
この目標のために、各グラウンドトゥルース繊維パラメータベクトルが、ユークリッド距離の観点で最も近い推定繊維パラメータベクトルのセット中のベクトルとマッチングされた。数学的に、実行された一対一写像は、以下の通りに説明することができる。繊維のセットを、グラウンドトゥルースF_gtおよび推定された繊維F_estとして示し、次いで、一方のセットから他方のセットへの写像を、
【0171】
【0172】
として定める。
【0173】
これは、一方のセットからの2つ以上の繊維が他方のセットの1つの単繊維まで同じ距離を有する場合に、写像が処理の程度に依存することを示唆することに留意されたい。このケースは、全くありそうにないと予想でき、それが生じた場合でも、誤差値は、おそらくそれらの全てについて同じであり、したがって程度は重要でない。
【0174】
グラウンドトゥルースにあるのよりも多いまたは少ない繊維が検出された場合、最もよくフィットするたった1つが写像され、他のものは、検出されないように破棄された。前者の場合には、それらに関連した推定値を有する繊維に関する誤差をただ評価し、後者の場合には、関連した繊維が、各グラウンドトゥルース繊維について見つけられ、残りは評価されなかった。
【0175】
図8、
図9、および
図10には、使用された投影数の関数としてPAREを用いた推定の品質が示されている。
図8は、推定された繊維長さに関して「ファントムAおよびB」の投影数を変化させた場合の長さ誤差を示す。アウトライアは、+/-6vxでキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。
図9は、推定された方向ベクトルに関して「ファントムAおよびB」の投影数を変化させた場合の方向誤差を示す。アウトライアは、2°でキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。
図10は、繊維の推定された重心位置に関して「ファントムAとB」の両方の投影数を変化させた場合の重心位置誤差を示す。アウトライアは、+/-2vxでキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。
【0176】
全ての図には、投影ごとに2つの箱ひげ図があり、より暗いものは「ファントムA」の結果に対応し、より明るいものは「ファントムB」に対応する。アルゴリズムが、両ファントムについて30回ほどの投影を用いても上側四分位数および下側四分位数において個々の繊維重心を約+/-0.5vxの精度で取り出すことができることが明確に理解できる。
【0177】
図10から観察できるように、誤差は、方向分布の平均軸に対応する座標方向により大きい。方向推定はこれによって影響を受けないが、長さ推定および重心推定は、相関している。長さ推定は、30回の投影について繊維長さを+/-1vxまで取り出すことができる。方向ベクトルは、上側四分位数についておよそ0.6°へ近づけられ得る。
【0178】
投影数を増加すると、小さいパラメータの変化に手順をより敏感にさせる投影誤差を算出するのに利用可能な情報がより多くあるので、この誤差は当然減少する。100回の投影に関しては、重心位置の誤差は、ファントム内の繊維のボクセル化のために実行されるサブサンプリングの精度のあたりで+/-0.3vxほどである。方向は、「ファントムA」について約0.4°に評価され、「ファントムB」について0.25°に評価され得る。長さは、「ファントムA」について0.2vxから0.7vxの間で評価され、「ファントムB」について0.9vxと1.8vxとの間で評価される。
【0179】
図11、
図12、および
図13には、長さ誤差、方向誤差、および位置誤差が、それぞれ、投影データに加えられた相加性雑音の標準偏差σの関数として示されている。
【0180】
推定された繊維長さに関して「ファントムAおよびB」に関するいくつかの雑音レベルについての長さ誤差が、
図11に示されている。アウトライアは、+/-6vxでキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。推定された方向ベクトルに関して「ファントムAおよびB」に関するいくつかの雑音レベルについての方向誤差が、
図12に示されている。アウトライアは、1°でキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。繊維の推定された重心位置に関する「ファントムAとB」の両方に関するいくつかの雑音レベルについての重心位置誤差が、
図13に示されている。アウトライアは、+/-4vxでキャップされたが、水平の破線の外側にさらに示されている。
【0181】
予期されるように、増加するσに対して誤差は増加する。長さ推定は、下側雑音レベルσ=0.5およびσ=1.0についてはほとんど変化せず、先の試験における100回の投影についての誤差と同じ範囲にある。100回の投影がこの実験のために一貫して使用されたので、これも予期される。異なる雑音レベルおよびファントムについての信号対雑音比(SNR)が、以下の表に示されている。これは、
【0182】
【0183】
によって算出されたものであり、ただし、μ_signalは投影の測定強度の平均値であり、σ_noiseは対応する雑音レベルである。長さ推定および重心推定は、方向推定よりも雑音のある投影によってより多く影響を受けると思われる。
【0184】
【0185】
最も高い雑音レベルの場合には、長さ推定は、「ファントムA」について上側四分位数において過大評価された2vxであり、「ファントムB」について約1vxである。
【0186】
これは、我々のモデルのシミュレートされた投影におけるボクセルが変化するやり方による可能性がある。方向ベクトルを変化させるとき、長さまたは重心位置が変化するときに比べて、より多くのボクセルがその値を変化させる。これは、特に、繊維がとても長いときに、最適化が方向の小さい変化により敏感であることを意味する。
【0187】
次に、
図14を参照すると、放射線イメージング装置とプロセッサ191とを備える検査システム190が示されている。放射線イメージング装置は、X線源195とX線に敏感な検出器193とを備える固定されたX線イメージング装置であってよい。検出器193および線源195は、検査中の物品196、例えば、繊維強化ワークピースの取得された投影像を伝送するとともに動作パラメータを通信するためのプロセッサ191に動作可能に接続されている。検査中の物品196は、異なる投影角度について投影像を得るために、ターンテーブル上に、例えば、ホルダまたは固定用フレームに一時的に固定されてよい。放射線イメージング装置190は、散乱X線放射から人間の操作者および他の装備を保護する遮蔽エンクロージャ197によって遮蔽されている。プロセッサ191は、前述した残りの方法ステップを実行するために適合されている。物品196は、コンベヤベルト194または同等の物品移送手段、例えば、ロボットアームによって、放射線イメージング装置190に運ばれてよい。この例は、工業プロセスにおける物品のインライン検査に特に適している。代替の検査システムでは、マイクロCTスキャナに搭載されるために被検査物品が十分に小さいサイズである場合に、放射線イメージング装置は、回転ガントリまたはマイクロCTスキャナを備えてよい。
【0188】
前述の例は、X線放射線イメージングを広範に説明したが、例えば、テラヘルツ波長帯の吸収が弱い物品、例えば、テラヘルツ放射線に対して少なくとも部分的に半透明である物品に対するテラヘルツイメージングを含む他の放射線イメージングモダリティが用いられてよい。繊維含有材料を含む生地、織物、および他の物品は、テラヘルツ放射線に対してしばしば半透明である。同様に、方法およびシステムは、ガンマ線に使用されてよく、または可視波長で被検査物品が半透明または一部半透明であるとともに、散乱が、例えば、幾何学的な光学の制約において、散乱の寄与がしばしば無視できるほんのわずかなものである場合には、可視放射でも使用されてよい。
【符号の説明】
【0189】
31 スプライン補間
32a 1次導関数
32b 2次導関数
33a 変曲点
33b 変曲点
190 検査システム、放射線イメージング装置
191 プロセッサ
193 検出器
194 コンベヤベルト
195 X線源、線源
196 物品
197 遮蔽エンクロージャ