(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】生産管理システム及び生産管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2021086932
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 孝治
(72)【発明者】
【氏名】川俣 純希
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-032033(JP,A)
【文献】特開2018-032396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153624(US,A1)
【文献】特開2019-147580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された基準シーケンスで連携して動作する2つ以上の生産ライン構成装置(11、12、13、14、15)を含む生産ラインを管理する生産管理システム(1)であって、
前記生産ライン構成装置と
ネットワーク(17)を介して通信可能に構成され
、前記基準シーケンスを記憶しているホストコンピュータ(16)を備え、
前記生産ライン構成装置は、予め設定された事象が発生した場合に当該事象が発生したことを示す
とともに、データ送信元を識別する固有のIDが割り当てられた事象データを前記ホストコンピュータに送信し、
前記ホストコンピュータは、受信した前記事象データ
と前記基準シーケンスに基づいて、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定した場合には、アラームを出力する生産管理システム。
【請求項2】
前記生産ライン構成装置のうち同じ処理を繰り返している1つの生産ライン構成装置について、
前記ホストコンピュータは、
当該生産ライン構成装置において、所定の前記事象が発生してから、所定時間経過しても同じ前記事象が発生しないとき、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定する請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記生産ライン構成装置のうち前記生産ライン上で隣接する2つの生産ライン構成装置について、
前記ホストコンピュータは、
当該生産ライン構成装置
のうちの一方の生産ライン構成装置からの所定の前記事象の通知に対して、所定時間経過しても
当該生産ライン構成装置のうちの他方の生産ライン構成装置から所定の前記事象が発生しないとき、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定する請求項1または請求項2に記載の生産管理システム。
【請求項4】
前記事象は、少なくとも前記生産ライン構成装置
のうちのいずれかでの製品への処理が終了したことを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生産管理システム。
【請求項5】
予め設定された基準シーケンスで連携して動作する2つ以上の生産ライン構成装置(11、12、13、14、15)を含む生産ラインと、前記生産ライン構成装置と
ネットワーク(17)を介して通信可能に構成され
、前記基準シーケンスを記憶しているホストコンピュータ(16)と、を備え、前記生産ライン構成装置は、予め設定された事象が発生した場合に当該事象が発生したことを示す
とともに、データ送信元を識別する固有のIDが割り当てられた事象データを前記ホストコンピュータに送信する生産管理システム(1)の生産管理プログラムであって、
前記ホストコンピュータに、受信した前記事象データ
と前記基準シーケンスに基づいて、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定した場合には、アラームを出力する機能を実現させるための生産管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品等を生産する生産ラインでの生産状況などを管理する生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、肉、魚、加工食品、医薬品等を生産する生産ラインでは、製造された物品を、計量して所定重量で包装し、異物混入の検査や最終的な重量の検査等を行ない、これらの検査で良品と判定されたものを最終製品として箱詰め等して出荷している。
【0003】
特許文献1には、計量機、包装機、製品検査機あるいは箱詰め機である複数の生産ライン構成装置でなる生産ラインが記載されている。
【0004】
このような生産ラインでは、各装置のセンサ等に異常が発生した場合、生産ラインのオペレータに異常を告知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の生産ライン構成装置が連携して動作している場合、特に各装置が一連に配置されているような場合には、いずれかの装置でわずかな動作タイミングのずれや生産される物品の搬送のばらつきなど軽微な異常が発生していても、その異常が各装置における許容範囲である限り、いずれの装置からもエラーやアラーム等が発生せず、時間の経過に伴っていずれかの装置でエラーやアラームが発生するような異常状態にいたるまで、各装置が本来の性能を発揮できず非効率な状態で生産を続けているということを把握することが難しい。
【0007】
すなわち、前後の他装置と信号を送受信して自装置の動作を制御する連携装置は、自装置の動作開始が他装置との信号送受信に依存しており、特に、信号入力を受けて動作を開始する連携装置は、信号入力がない限り信号入力待ちとなる。通常、前後の他装置が自装置のエラー信号やアラーム信号を受けてどのような動作をするかは、生産ラインの装置構成により様々であるから、何らかの処置がないと自装置の動作が継続できないような異常状態になるまで異常信号が出力されない。
【0008】
そこで、本発明は、複数の装置で構成される生産ラインにおいて、いずれかの装置で異常状態になる前に、この生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知することができる生産管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生産管理システムは、予め設定された基準シーケンスで連携して動作する2つ以上の生産ライン構成装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、前記生産ライン構成装置とネットワークを介して通信可能に構成され、前記基準シーケンスを記憶しているホストコンピュータを備え、前記生産ライン構成装置は、予め設定された事象が発生した場合に当該事象が発生したことを示すとともに、データ送信元を識別する固有のIDが割り当てられた事象データを前記ホストコンピュータに送信し、前記ホストコンピュータは、受信した前記事象データと前記基準シーケンスに基づいて、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定した場合には、アラームを出力するものである。
【0010】
この構成により、各生産ライン構成装置から送られてくる事象データと基準シーケンスにより、生産効率が低下しているか判定され、アラームが出力される。このため、いずれかの生産ライン構成装置が異常状態になる前に、生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0011】
また、本発明の生産管理システムにおいて、前記生産ライン構成装置のうち同じ処理を繰り返している1つの生産ライン構成装置について、前記ホストコンピュータは、当該生産ライン構成装置において、所定の前記事象が発生してから、所定時間経過しても同じ前記事象が発生しないとき前記生産ラインの生産効率が低下したと判定するものである。
【0012】
この構成により、同じ処理を繰り返している生産ライン構成装置で、その処理が所定時間経過しても行なわれないと、生産効率が低下していると判定される。このため、いずれかの生産ライン構成装置が異常状態になる前に、生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0013】
また、本発明の生産管理システムにおいて、前記生産ライン構成装置のうち前記生産ライン上で隣接する2つの生産ライン構成装置について、前記ホストコンピュータは、当該生産ライン構成装置のうちの一方の生産ライン構成装置からの所定の前記事象の通知に対して、所定時間経過しても当該生産ライン構成装置のうちの他方の生産ライン構成装置から所定の前記事象が発生しないとき前記生産ラインの生産効率が低下したと判定するものである。
【0014】
この構成により、隣接する生産ライン構成装置からの要求信号に対して、所定時間経過しても応答が無いと、生産効率が低下していると判定される。このため、いずれかの生産ライン構成装置が異常状態になる前に、生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0015】
また、本発明の生産管理システムにおいて、前記事象は、少なくとも前記生産ライン構成装置のうちのいずれかでの製品への処理が終了したことを含むものである。
【0016】
この構成により、生産ライン構成装置での製品への処理が終了して、所定時間経過しても何も行われないと、生産効率が低下していると判定される。このため、いずれかの生産ライン構成装置が異常状態になる前に、生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0017】
また、本発明の生産管理プログラムは、予め設定された基準シーケンスで連携して動作する2つ以上の生産ライン構成装置を含む生産ラインと、前記生産ライン構成装置とネットワークを介して通信可能に構成され、前記基準シーケンスを記憶しているホストコンピュータと、を備え、前記生産ライン構成装置は、予め設定された事象が発生した場合に当該事象が発生したことを示すとともに、データ送信元を識別する固有のIDが割り当てられた事象データを前記ホストコンピュータに送信する生産管理システムの生産管理プログラムであって、前記ホストコンピュータに、受信した前記事象データと前記基準シーケンスに基づいて、前記生産ラインの生産効率が低下したと判定した場合には、アラームを出力する機能を実現させるためのものである。
【0018】
この構成により、各生産ライン構成装置から送られてくる事象データと基準シーケンスにより、生産効率が低下しているか判定され、アラームが出力される。このため、いずれかの生産ライン構成装置が異常状態になる前に、生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数の装置で構成される生産ラインにおいて、いずれかの装置で異常状態になる前に、この生産ライン全体としての生産効率が低下していることを検知することができる生産管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生産管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る生産管理システムの各生産ライン構成装置の送信データの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る生産管理システムの各生産ライン構成装置から送信されてくるデータが、通常の状態のときと比べて遅れている場合の例を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る生産管理システムの各生産ライン構成装置から送信されてくるデータが、隣接する装置間で違いがある場合の例を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る生産管理システムの稼働実績のグラフの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る生産管理システムついて詳細に説明する。
【0022】
図1において、本発明の一実施形態に係る生産管理システム1は、上流の製造工程で製造・加工された食品・飲食物等の原材料を受け入れ、計量工程・包装工程で所定の重量分でまとめて包装して製品とし、検査工程で製品の重量や異物混入、包装状態等の検査を行ない、箱詰工程で検査結果が良品と判定された製品を箱詰めする生産ラインの管理を行なう。
【0023】
生産ラインは、それぞれが異なる処理を実行する供給装置11と、計量装置12と、包装装置13と、検査装置14と、ケーサー15と、を含んで構成される。これら各装置(11,12,13,14,15)を生産ライン構成装置とも呼び、通常、各装置(11,12,13,14,15)が一連に配置されて並ぶ形態とされ、生産ラインの前後の工程との間および各工程の装置間には、ベルトコンベア等の搬送手段が配置されている。
【0024】
なお、
図1に示すように各装置(11~15)が隣接して配置される場合に限らず、例えば供給装置11から包装装置13までが包装前の原材料を取り扱う原材料エリア内に隣接して配置され、検査装置14およびケーサー15が包装後の製品を取り扱う製品エリアに隣接して配置され、区分けされた両エリア間をベルトコンベアやシュートからなる搬送手段により連結されるような場合でもよい。
【0025】
供給装置11は、上流の製造工程で製造された原材料を受け入れ、所定量ずつ計量装置12に供給する。
【0026】
計量装置12は、供給装置11から供給された原材料を、所定の重量となるようにまとめたり組み合わせたりして、包装装置13に排出する。
【0027】
計量装置12は、供給装置11から受け入れた原材料を貯留容器に一旦貯留し、所定量ずつ複数の計量容器に分散して投入し、それぞれの計量容器で得られた計量値を組み合わせ演算して所定の重量範囲の原材料を排出する組み合わせ計量手段を有してもよい。
【0028】
包装装置13は、計量装置12から排出された、所定の重量の原材料を、包材で包装して検査装置14に排出する。
【0029】
検査装置14は、包装装置13から排出された包装された製品の重量や異物混入等の検査を行ない、検査で異常がなく良品と判定された包装された製品をケーサー15に排出する。
【0030】
ケーサー15は、検査装置14から排出された包装された製品を箱詰め後、封函して下流の工程に排出する。
【0031】
ホストコンピュータ16は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、ハードディスク装置と、入出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0032】
供給装置11、計量装置12、包装装置13、検査装置14、ケーサー15、ホストコンピュータ16は、ネットワーク17に接続されている。供給装置11、計量装置12、包装装置13、検査装置14、ケーサー15、ホストコンピュータ16は、ネットワーク17を介して、相互に通信できるようになっている。
【0033】
ホストコンピュータ16には、生産ラインの各装置の配置が予め設定されていて、一つの装置の前後に配置された他の装置に関する情報が、例えば装置固有のIDと対応付けて記憶されている。
【0034】
図1に示す例では、供給工程に供給装置11、計量工程に計量装置12、包装工程に包装装置13、検査工程に検査装置14、箱詰工程にケーサー15が、この順で配置されていることが、ホストコンピュータ16に記憶されている。
【0035】
なお、いずれかの工程に複数の装置があり、それぞれがホストコンピュータ16と通信できる場合には、各装置が直列的に配置しているのか、並列的に配置しているのかを設定できるようになっているとよい。
【0036】
ホストコンピュータ16は、生産ラインの各装置から送信される検査結果や動作来歴などの検査情報(事象データ)を、ネットワーク17を介して受信し、ハードディスク装置に記憶して管理する。
【0037】
ここでいう装置の動作来歴には、各装置の運転開始、停止に限らず、例えば、供給装置11における上流工程からの原材料の供給量過不足検知、動作停止を伴うカバー類の開放検知、供給装置が排出した原材料の通過検知などが含まれ、計量装置12における供給された原材料の貯留量検知、計量手段(図示せず)のゼロセット処理などが含まれ、包装装置13におけるヒートシール部の温度安定待ち、包材のシートロール交換などが含まれ、検査装置14における物品の搬入検知、検査結果の出力、検査手段(図示せず)のリセット処理や安定待ち期間、ケーサー15の包材切れなど、各装置固有の動作情報が含まれ、事象データとしてホストコンピュータ16に送信される。
【0038】
なお、事象データには、装置固有のIDが割り当てられ、どの事象データがどの装置から送信されたかをデータ上で識別するための識別情報とするとよい。
【0039】
さらに、ホストコンピュータ16は、各装置から送信される事象データを受信すると、受信した時刻情報をタイムスタンプとして付加する受信時刻情報付加手段を有してもよい。これにより、いずれかの装置の事象データに時刻情報が含まれない場合であっても、ほぼ同時点の時刻情報がホストコンピュータ16に記録されることとなり、装置側の制御ソフトウェアの機能上の制約を受けないようにできる。また、各装置に設定されている時刻にずれがあっても影響が小さい。
【0040】
計量装置12、包装装置13、検査装置14、ケーサー15は、
図2に示すように、所定の事象が発生したとき、事象データとしての送信データをデータ送信先に送信する。
図2において、データ送信先の「システム」は、ホストコンピュータ16に送信されるものである。
【0041】
計量装置12は、後段の包装装置13からの組み合わせ要求信号(後述)を受け、原材料を受け入れることが可能なときまたは受け入れた原材料が不足していると判定したとき、供給装置11に供給要求信号を出力し、ホストコンピュータ16には、計量装置12における事象データとして供給要求信号を送信した時刻に基づき、原材料の供給を要求した時刻情報を送信する。
【0042】
計量装置12は、原材料の供給が十分であると判定したとき、供給装置11への供給要求信号出力を停止し、ホストコンピュータ16には、供給要求信号を停止した時刻に基づき、原材料の供給が完了した時刻情報を送信する。
【0043】
計量装置12は、供給装置11から供給された原材料を受け入れて計量し、所定の重量範囲となるようにまとめたり組み合わせたりして、ホストコンピュータ16に排出する原材料の計量値を送信する。
【0044】
計量装置12は、原材料の排出が完了すると、包装装置13に対して排出信号を送信し、ホストコンピュータ16には、排出が完了した時刻情報を送信する。
【0045】
包装装置13は、包装を行なう準備ができたと判定したとき、計量装置12に所定の重量にまとめられたり組み合わせられたりした原材料を要求する組み合わせ要求信号を送信し、ホストコンピュータ16には、組み合わせ要求信号を送信した時刻情報を送信する。
【0046】
包装装置13は、包装した結果として包装OK(正常に包装された状態を指す)または包装NG(正常に包装されなかった状態を指す)などの包装結果およびその時刻データをホストコンピュータ16に送信する。包装結果は、後段の検査装置14にも送信する。
【0047】
検査装置14は、製品を検査した結果として検査OKまたは検査NGなどの検査結果、およびその検査が完了した時刻データをホストコンピュータ16に送信する。検査装置14は、検査NGの製品、および包装装置13から包装NGを受信した製品を生産ライン外に排除する振分装置(図示せず)を含んでも良く、これにより、後段のケーサー15に正常製品のみを効率よく排出することができる。
【0048】
検査装置14は、処理能力オーバーや後段の装置の異常等により後段装置であるケーサー15への製品の供給を止めると判定したとき、前段装置である包装装置13に停止要求信号を送信し、ホストコンピュータ16には、停止要求信号を送信した理由を示す情報(理由コード)と、この停止要求信号を送信した時刻情報を送信する。
【0049】
ケーサー15は、検査装置14から受け入れた製品を所定の個数だけ箱詰めし、箱詰めした結果として箱詰OKまたは箱詰NGなどの箱詰結果、および箱詰めが完了した時刻情報をホストコンピュータ16に送信する。
【0050】
ケーサー15は、包材(例えば段ボールやラッピングシート)の不足等により製品の供給を止めると判定したとき、前段装置である検査装置14に停止要求信号を送信し、ホストコンピュータ16には、停止要求信号を送信した理由を示す情報(理由コード)と、この停止要求信号を送信した時刻情報を送信する。
【0051】
本実施形態において、ホストコンピュータ16は、計量装置12、包装装置13、検査装置14、ケーサー15からそれぞれ送信されてくるデータの時刻情報に基づき、生産効率が低下していることを検知し、アラーム出力する。アラーム出力は、例えば、ホストコンピュータ16に接続された図示しないディスプレイ装置にメッセージとして出力されたり、生産ラインの近傍に適宜設けられた生産状況モニタ上に視覚的または聴覚的に識別可能な形態で出力されたりする。
【0052】
ホストコンピュータ16は、各装置から送信されてくるデータが、通常の状態のときと比べて遅れている場合、生産効率が低下していると判定する。なお、各装置において、通常の状態のときと比べて遅れている事象があった場合に、自らアラームを出すようにしてもよい。
【0053】
なお、ここでいう「通常の状態」とは、生産ラインの各装置が異常状態となることなく稼働していることに限らず、生産ライン全体としての稼働率が所定の基準値以上に維持されていることを指し、具体的には、生産ラインの各装置からホストコンピュータ16に送信されるデータに基づき、各装置が予め設定された基準シーケンスで連携して動作していることを指す。
【0054】
そして、ホストコンピュータ16は、生産ラインを構成する装置の機能や生産ラインにおける配置に応じて設定された基準シーケンスを記憶している。
【0055】
ホストコンピュータ16には、生産ラインごと、あるいはある生産ラインの目標生産効率に応じて、基準シーケンスをシーケンスSQ1、SQ2・・・のように複数記憶しておき、切り替えできるようにしてもよい。
【0056】
また、一つの装置が他の装置に対して信号出力する際には、ホストコンピュータ16に対しても同内容の信号を出力するようになっているが、例えば、一つの装置から他の装置に対する要求信号オンをハイレベル、要求信号オフをローレベルというレベル信号を出力するような場合には、ホストコンピュータ16に対してはアナログ入力ポート(図示せず)を割り当ててもよいし、受信側の他の装置からネットワーク17を介してデータ信号を送信してもよい。
【0057】
例えば、
図3に示すような場合、Aで示す矢印部分は、通常の状態であり、ステップS1において、包装装置13は、包装の準備ができると計量装置12に組み合わせ要求信号を送信する。
【0058】
ステップS2において、計量装置12から供給装置11に対して供給要求信号が送信されて供給装置11から計量装置12に原材料が供給されると、ステップS3において、計量装置12は、原材料を所定の重量になるようにまとめたり組み合わせたりして包装装置13に排出し、ステップS4において、排出信号を包装装置13に送信する。
【0059】
なお、ステップS2において供給装置11は、計量装置12から供給要求信号が送信されなくても、所定量を所定間隔で供給するように動作してもよい。この場合、計量装置11は供給装置11に対して供給停止信号を出力し、必要以上の原材料を供給装置11から受け入れないようにする。これにより、計量装置11で原材料が滞留したり塊になって詰まったりするということがない。
【0060】
ステップS5において、包装装置13は、包装が終了し、次の包装の準備ができると計量装置12に組み合わせ要求信号を送信する。
【0061】
ステップS6において、計量装置12から供給装置11に対して供給要求信号が送信されて供給装置11から計量装置12に原材料が供給されると、ステップS7において、計量装置12は、原材料を所定の重量になるようにまとめたり組み合わせたりして包装装置13に排出し、ステップS8において、排出信号を包装装置13に送信する。
【0062】
ここで、Bで示す矢印のように、ステップS9の包装装置13からの組み合わせ要求信号がわずかであっても遅れる場合、生産ライン全体としての生産効率が低下してしまう。
【0063】
ホストコンピュータ16は、計量装置12から排出信号が送信されてから、所定の時間が経過しても包装装置13から組み合わせ要求信号が送信されない場合、アラームを出力する。なお、計量装置12において、排出信号を送信してから、所定の時間が経過しても包装装置13から組み合わせ要求信号が送信されない場合、自装置でアラームを出力するようにしてもよい。
【0064】
その後、ステップS10において、計量装置12から供給装置11に対して供給要求信号が送信されて供給装置11から計量装置12に原材料が供給されると、ステップS11において、計量装置12は、原材料を所定の重量になるように組み合わせて包装装置13に排出し、ステップS12において、排出信号を包装装置13に送信する。
【0065】
ステップS13において、包装装置13は、包装が終了し、次の包装の準備ができると計量装置12に組み合わせ要求信号を送信する。そして、計量装置12は、供給装置11に供給要求信号を送信する。
【0066】
ここで、Cで示す矢印のように、ステップS14の供給装置11からの原材料の供給が遅れる場合、ステップS15の計量装置12の組み合わせの排出や、ステップS16の組み合わせ排出信号の送信にも遅れが波及してしまい、生産効率が低下してしまう。
【0067】
ホストコンピュータ16は、包装装置13から組み合わせ要求信号が送信されてから所定の時間が経過しても計量装置12から組み合わせ排出結果や排出信号が送信されない場合、アラームを出力する。なお、包装装置13において、組み合わせ要求信号を送信してから所定の時間が経過しても計量装置12から排出信号が送信されない場合、自装置でアラームを出力するようにしてもよい。
【0068】
また、ホストコンピュータ16は、各装置から送信されてくるデータが、隣接する装置間で所定のシーケンスと異なるような信号の送信順序の違いがある場合、生産効率が低下していると判定する。
【0069】
例えば、
図4に示すような場合、ステップS21において、包装装置13は、包装された製品を検査装置14に排出する。ステップS22において、検査装置14は、製品の検査を行ない、ステップS23において、検査装置14は、良品と判定された製品を排出する。ステップS24において、ケーサー15は、製品の箱詰め後、封函して排出する。
【0070】
ここで、検査装置14は、包装装置13の動作間隔よりも短い時間で検査を行うことができるため、製品の排出を要求する信号を前段の包装装置13には送信しない。すなわち、包装装置13は、後段の検査装置14からの信号を受けることなく包装された製品を検査装置14に排出し、同様に、検査装置14は、ケーサー15からの信号を受けることなく、良品と判定された製品をケーサー15に排出する。
【0071】
続けて、ステップS25において、包装装置13は、包装された製品を検査装置14に排出する。ステップS26において、検査装置14は、製品の検査を行ない、ステップS27において、検査装置14は、良品と判定された製品を排出する。ステップS28において、ケーサー15は、製品の箱詰め後、封函して排出する。
【0072】
ここで、ステップS29において、包装装置13が、包装された製品を検査装置14に排出した後、Dで示す矢印の間、包装装置13からの製品の排出や検査装置14での検査結果が送信されない場合、生産効率が低下してしまう。
【0073】
ホストコンピュータ16は、包装装置13からの包装結果を受信してから所定の時間が経過しても、検査装置14からの検査結果や、包装装置13からの包装結果を受信しない場合、製品の生産ができていないか、ライン中での乗り継ぎ不良などが発生して生産効率が低下していると判定して、アラームを出力する。
【0074】
その後、ステップS30において、包装装置13が、包装された製品を検査装置14に排出し、ステップS31において、検査装置14が、製品の検査を行ない、ステップS32において、検査装置14が、良品と判定された製品を排出する。
【0075】
ここで、Eの矢印で示すように、ステップS32で検査装置14が製品の排出を行なった後、所定の時間が経過しても検査装置14からの製品の排出やケーサー15での箱詰めが行われない場合、箱詰工程から下流工程に製品が排出されていないこととなり、生産効率が低下してしまう。
【0076】
ホストコンピュータ16は、検査装置14からの検査結果を受信してから所定の時間が経過しても、ケーサー15からの包装結果や、検査装置14からの検査結果を受信しない場合、製品の生産ができていないか、ライン中での乗り継ぎ不良などが発生して生産効率が低下していると判定して、アラームを出力する。
【0077】
ホストコンピュータ16では、例えば、1日の生産が終わった後、1日の稼働実績をディスプレイ装置に表示させることができる。
【0078】
ホストコンピュータ16は、例えば、
図5に示すように、生産開始からの経過時間と、包装装置13から計量装置12に送信された組み合わせ要求信号の数である組み合わせ要求数A及び計量装置12から包装装置13に排出された原材料の数である組み合わせ排出数Bとの関係をグラフで表示させる。これにより、生産ラインの稼働中には把握しづらかった時間推移と生産実績との関係が視覚的に把握でき、以降の生産効率改善に活用できるほか、いわゆる生産日報の一部として保存し、過去の実績と対比したり、複数の生産ライン間の実績と対比したりすることもできる。
【0079】
さらに、ホストコンピュータ16は、グラフの中で、組み合わせ要求数Aと組み合わせ排出数Bに基づいて生産効率が低下している部分を、例えば、色分けしたり丸で囲んだりなどの視覚的な識別表示を行なう。
【0080】
ホストコンピュータ16は、例えば、生産効率が低下していて丸で囲まれた部分にマウスカーソルなどを重ねると、生産効率の低下の原因をグラフ表示エリアに近傍するメッセージエリアに表示させる。グラフ表示エリアに重ねてポップアップ表示するようにすると、生産実績の推移と生産効率低下の原因との関連性が把握しやすい。
【0081】
図5において、Xで示す丸にマウスカーソルを重ねると、ホストコンピュータ16は、時刻t1から組み合わせ要求数Aと組み合わせ排出数Bともに増加していないため、例えば、時刻t1近辺の時刻に包装装置13からの受信データに包材交換のデータが記録されてあれば、「包材交換」もしくは「包材交換で稼働が低下しました」などと表示させる。
【0082】
Yで示す丸にマウスカーソルを重ねると、ホストコンピュータ16は、時刻t2から組み合わせ排出数Bが増加していないため、例えば、時刻t2近辺の時刻に計量装置12からの供給要求信号のオンが連続して記録されていたり、供給要求信号のオフが記録されていなかったりすれば、「供給要求信号連続出力」や「供給量不足」もしくは「供給量不足で稼働率が低下しました」などと表示させる。
【0083】
Zで示す丸にマウスカーソルを重ねると、ホストコンピュータ16は、時刻t3近辺で組み合わせ排出数Bの増加率すなわちグラフの傾きが小さいが、時刻t3近辺で効率低下に関連する他の事象データが記録されていない場合には、生産ラインのうちで変動要素があり調整が必要な原材料を取り扱う包装エリアの工程間もしくは工程内の移送が原因の可能性が高いため、例えば、包装装置13の包装結果の数が少なくなっていれば、「計量品ブリッジにより稼働率が低下しました」などと表示させる。
【0084】
このように、上述の実施形態では、ホストコンピュータ16は、計量装置12、包装装置13、検査装置14、ケーサー15から送信されてくる事象データにより、生産効率が低下していることを検知し、アラーム出力する。
【0085】
これにより、各装置から送られてくる事象データにより、生産効率が低下していることが検知されると、アラームが出力され、異常状態になる前に生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0086】
また、ホストコンピュータ16は、各装置で所定の事象が発生してから、所定時間経過しても同じ事象が発生しないとき生産効率が低下したと判定する。
【0087】
これにより、同じ処理を繰り返している装置で、その処理が所定時間経過しても行なわれないことを、生産効率が低下していると検知することができ、異常状態になる前に生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0088】
また、ホストコンピュータ16は、生産ライン上で隣接する装置からの所定の事象の通知に対して、所定時間経過しても所定の事象が発生しないとき生産効率が低下したと判定する。
【0089】
これにより、例えば、計量装置12から組み合わせ排出信号が送信されてから、所定の時間が経過しても包装装置13から組み合わせ要求信号が送信されないことを、生産効率が低下していると検知することができ、異常状態になる前に生産効率が低下していることを検知して警告することができる。
【0090】
なお、本実施形態においては、アラームや稼働実績のグラフをホストコンピュータ16のディスプレイ装置に表示させる場合を示したが、ネットワーク17に接続されているタブレット端末などの情報機器に情報を送信して表示させるようにしてもよい。
【0091】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
1 生産管理システム
11 供給装置(供給工程の生産ライン構成装置)
12 計量装置(計量工程の生産ライン構成装置)
13 包装装置(包装工程の生産ライン構成装置)
14 検査装置(検査工程の生産ライン構成装置)
15 ケーサー(箱詰工程の生産ライン構成装置)
16 ホストコンピュータ
17 ネットワーク