(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】冷却庫
(51)【国際特許分類】
F25D 19/00 20060101AFI20240216BHJP
F25D 19/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F25D19/00 522A
F25D19/02 A
(21)【出願番号】P 2021099479
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2023-05-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月16日東京ビックサイトにおいて開催された第21回厨房設備機器展で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月3日東京都調布市国領町の店舗(Don Bravo)に納入
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月11日神奈川県鎌倉市の店舗(Aah bit)に納入
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和也
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-106977(JP,A)
【文献】実開昭52-117674(JP,U)
【文献】実開昭54-70171(JP,U)
【文献】特開2005-257201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/00 ~ 19/04
F25D 39/02
A47F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口(3)を有する収納庫(4)を備える冷却庫本体(1)と、
前面開口(3)から後方に向かって差込まれて収納庫(4)の内部に設置される蒸発器(12)と、
蒸発器(12)から後方に向かって延設され、蒸発器(12)に冷媒を供給する入口管(24)と、蒸発器(12)から冷媒を回収する出口管(25)と、
収納庫(4)に対する蒸発器(12)の後方への差込み時に、蒸発器(12)をスライド案内するガイド構造(32)と、
を備え、
ガイド構造(32)により、蒸発器(12)は常態において固定される固定位置と、該固定位置よりも後方側に設置された組付位置との間で、収納庫(4)内でスライド変位可能に構成されており、
収納庫(4)の後壁(26)に、ガイド構造(32)による蒸発器(12)の固定位置から組付位置へのスライド変位時における入口管(24)および出口管(25)の移行軌跡に対応して、両管(24・25)の庫外への導出を許す導出孔(27)が設けられていることを特徴とする冷却庫。
【請求項2】
入口管(24)および出口管(25)が、蒸発器(12)から後方に向かって伸びる直線管状に形成されている請求項1に記載の冷却庫。
【請求項3】
導出孔(27)が、入口管(24)が挿通される第1導出孔(27A)と、出口管(25)が挿通される第2導出孔(27B)とで構成される請求項1または2に記載の冷却庫。
【請求項4】
ガイド構造(32)が、蒸発器(12)が組付位置よりも後方へスライドすることを阻止するスライドストッパー(54)を備えている請求項1から3のいずれかひとつに記載の冷却庫。
【請求項5】
ガイド構造(32)が、蒸発器(12)を固定位置で位置保持する保持ストッパー(53)を備えている請求項1から4のいずれかひとつに記載の冷却庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納庫に設置された蒸発器に接続される冷媒配管が、冷却庫本体の後壁を介して庫外に導出されている冷却庫に関する。本発明の冷却庫は、ブラストチラー、ショックフリーザーなどの急速冷却庫、冷蔵庫、冷凍庫などに適用できる。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却庫は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の冷却庫では、冷却器(蒸発器)が組付けられた冷却ユニットは、庫内(収納庫)に対して本体(冷却庫本体)の前面開口から庫内左方の設置室に設置されている。庫内には前後方向に伸びる上下2本のレールが設けられており、冷却ユニットはこれらレールで案内されて庫内に押し込まれる。冷却器に冷媒を供給する入口管(冷媒配管)および冷却器から冷媒を回収する出口管(冷媒配管)は、冷却ユニットから後方に向かって延出されている。入口管および出口管のそれぞれは、後方に伸びる水平部分と、水平部分の先端から下向きに伸びる垂直部分とでL字状に形成されている。冷却ユニットの組付けに際しては、上下のレールで案内される冷却ユニットを設置室の所定位置に固定したのち、本体の後壁に開設された貫通孔から入口管および出口管を庫外に導出し、最後にこれら入口管および出口管の先端に冷凍装置(冷却機構)側の冷媒配管を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒配管が冷却庫本体の後壁を介して庫外に導出される冷却庫では、冷媒配管の冷却庫本体の後面からの後方へと突出寸法が大きいと、冷却庫の設置時に壁面との間に大きな隙間が形成されるため、当該突出寸法は可能なかぎり小さい方が好ましい。しかし、特許文献1の冷却庫では、冷却ユニットを所定位置に固定したのち、下向きに伸びる蒸発器側の冷媒配管の端に冷凍装置側の冷媒配管を溶接により接続しているため、溶接作業等の作業領域を確保するためには、蒸発器側の冷媒配管を本体の後壁から後方へ大きく突出させる必要があり、当該冷媒配管の後方への突出寸法を小さくすることには限界があった。
【0005】
本発明は、蒸発器の冷媒配管(入口管および出口管)が冷却庫本体の後壁を介して庫外に導出される冷却庫において、組付け時における冷媒配管の溶接作業の容易化と、組付け後の冷媒配管の後方への突出寸法を小さくすることという、相反する課題を同時に解決できる冷却庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却庫は、前面開口3を有する収納庫4を備える冷却庫本体1と、前面開口3から後方に向かって差込まれて収納庫4の内部に設置される蒸発器12と、蒸発器12から後方に向かって延設され、蒸発器12に冷媒を供給する入口管24と、蒸発器12から冷媒を回収する出口管25と、収納庫4に対する蒸発器12の後方への差込み時に、蒸発器12をスライド案内するガイド構造32とを備える。そして、ガイド構造32により、蒸発器12は常態において固定される固定位置と、該固定位置よりも後方側に設置された組付位置との間で、収納庫4内でスライド変位可能に構成されており、収納庫4の後壁26に、ガイド構造32による蒸発器12の固定位置から組付位置へのスライド変位時における入口管24および出口管25の移行軌跡に対応して、両管24・25の庫外への導出を許す導出孔27が設けられていることを特徴とする。
【0007】
入口管24および出口管25は、蒸発器12から後方に向かって伸びる直線管状に形成されている。
【0008】
導出孔27は、入口管24が挿通される第1導出孔27Aと、出口管25が挿通される第2導出孔27Bとで構成されている。
【0009】
ガイド構造32が、蒸発器12が組付位置よりも後方へスライドすることを阻止するスライドストッパー54を備えている。
【0010】
ガイド構造32は、蒸発器12を固定位置で位置保持する保持ストッパー53を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷却庫のように、ガイド構造32によって蒸発器12が常態において固定される固定位置と、該固定位置よりも後方側に設置された組付位置との間で、収納庫4内でスライド変位可能に構成され、収納庫4の後壁26に、ガイド構造32による蒸発器12の固定位置から組付位置へのスライド変位時における入口管24および出口管25の移行軌跡に対応して、両管24・25の庫外への導出を許す導出孔27が設けられていると、組付位置に蒸発器12を配置した状態においては、入口管24および出口管25の先端を、導出孔27を介して後壁26から後方向へ大きく突出させることができ、また、蒸発器12を固定位置に配置した状態では、入口管24および出口管25の先端の後壁26からの後方向への突出寸法を、前述の組付位置に比べて相対的に小さくすることができる。このように本発明によれば、蒸発器12を組付位置に配置した状態では、入口管24および出口管25の先端を後壁26から後方向へ大きく突出させることができるので、冷却機構側の冷媒配管との間の溶接作業等の組付作業をより容易に進めることができる。また、溶接作業後に蒸発器12を固定位置に変位させることで、入口管24および出口管25の先端を冷却庫本体1に近接させて、両管24・25の後壁26からの後方向への突出寸法を小さくすることができるので、冷却庫の設置時に壁面との間に形成される隙間(デッドスペース)を小さくすることができる。以上より本発明によれば、組付け時における冷媒配管の溶接作業(蒸発器12側の冷媒配管(入口管24および出口管25)と、冷却機構側の冷媒配管との間の溶接作業)の容易化と、組付け後の冷媒配管(蒸発器12側の冷媒配管(入口管24および出口管25))の後方への突出寸法を小さくすることという、相反する課題を同時に解決することができる。
【0012】
入口管24および出口管25が、蒸発器12から後方に向かって伸びる直線管状に形成されていると、入口管24および出口管25が折れ曲がった垂直部分を含んでL字状に形成されている場合に比べて、蒸発器12のスライド案内時において両管24・25の移行軌跡を小さくすることができるので、各管24・25がL字状に形成された場合に比べて、後壁26に形成される導出孔27の開口面積を小さくすることができる。以上より、後壁26に貫通孔が形成されることによる断熱材の排除に伴う、冷却庫本体1の断熱性能の低下を抑えることができる。また、蒸発器12が組付位置にあるときの両管24・25の先端の管周面が冷却庫本体1の後壁26に対向することを解消して、溶接作業をより容易に行うことができる。
【0013】
導出孔27が、入口管24が挿通される第1導出孔27Aと、出口管25が挿通される第2導出孔27Bとで構成されていると、導出孔27を両管24・25が挿通できるひとつの貫通孔で構成する場合に比べて、導出孔27の開口面積(第1導出孔27Aと第2導出孔27Bとの合計開口面積)をさらに小さくすることができるので、冷却庫本体1の断熱性能の低下をより抑えることができる。
【0014】
ガイド構造32が、蒸発器12が組付位置よりも後方へスライドすることを阻止するスライドストッパー54を備えていると、組付位置へのスライド時に蒸発器12が後壁26の内面に衝突するのを防ぐことができるので、冷却庫本体1および蒸発器12が破損することを回避できる。
【0015】
ガイド構造32が、蒸発器12を固定位置で位置保持する保持ストッパー53を備えていると、保持ストッパー53を利用して簡便に蒸発器12を固定位置に位置保持することができるので、冷却庫本体1に対する蒸発器12の組付けを容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の冷却庫に係る要部の横断平面図であり、(a)は冷却ユニットが組付位置にあるときを示し、(b)は冷却ユニットが固定位置にあるときを示している。
【
図5】冷却ユニット部分における冷却庫の横断平面図である。
【
図7】冷却ユニットのスライド操作方法を説明するための図である。
【
図8】入口管および出口管と冷媒配管との接続手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
図1から
図8に、本発明に係る冷却庫を食品に対して粗熱取り、急速冷却、あるいは急速凍結などの冷却処理を行う急速冷却庫(ブラストチラー)に適用した実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1乃至
図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において急速冷却庫は、冷却庫本体1と、冷却庫本体1の下方に設けられた機械室2とで構成される。冷却庫本体1は前面開口3を有する収納庫4を備える横長の断熱箱体からなり、前面開口3は揺動開閉式の扉5により開閉される。収納庫4の右方には冷却ユニット6が設置され、この冷却ユニット6の左方にホテルパン7が上下多段状に収納される。
【0018】
図2および
図4に示すように、冷却ユニット6は、左右に開口を有する四角枠状のユニットケース10と、ユニットケース10の左側開口を塞ぐように設けられ、吸込み開口を備えるケース蓋11と、ユニットケース10とケース蓋11とで形成される中空ケースの内部に配される蒸発器12および冷却ファン13などで構成される。吸込み開口から吸気され冷却ファン13で送給される収納庫4内の空気は、蒸発器12を通過する間の熱交換によって冷却され、蒸発器12の前後の隙間から左向きに送給されて収納庫4内を循環する。収納庫4の左壁とケース蓋11とに左右一対の多段状の載置枠14が設けられており、食品を載せたホテルパン7を左右の載置枠14に差込み装着することで、収納庫4内にホテルパン7を上下多段状に配することができる。冷却処理時には、蒸発器12を運転状態にし、冷却ファン13を駆動することにより、ホテルパン7上の食材を冷却することができる。
【0019】
図2に示すように、機械室2の内部には、蒸発器12とともに冷却機構を構成する圧縮機17、凝縮器18、凝縮器18用の送風ファン19などが収容されている。圧縮機17と凝縮器18、凝縮器18と蒸発器12、および蒸発器12と圧縮機17は、それぞれ冷媒配管で接続されており、冷媒は、圧縮機17から吐出されたのち凝縮器18、蒸発器12を経て、再び圧縮機17に吸入され循環する。
【0020】
図4に示すように、蒸発器12は、一群のフィン22と、繰り返し反転屈曲されてフィン群を厚み方向へ貫く蒸発管23と、蒸発管23の一端に連続して蒸発管23(蒸発器12)に冷媒を供給する入口管24と、蒸発管23の他端に連続して蒸発管23(蒸発器12)から冷媒を回収する出口管25とを備えている。入口管24および出口管25は冷媒配管を構成しており、それぞれ前後方向に伸びる直線管状に形成されて、その先端(後端)側の半部がユニットケース10を貫通して冷却ユニット6の後方に突出されている。
【0021】
図1、
図3および
図4に示すように、入口管24および出口管25の先端は、冷却庫本体1の後壁26に貫通状に設けられた導出孔27を介して庫外に導出されている。庫外に導出された入口管24の先端には、凝縮器18の下流側に接続される冷媒配管を構成する供給管28に接続される。また、庫外に導出された出口管25の先端には、圧縮機17の上流側に接続される冷媒配管を構成する回収管29に接続される。導出孔27は、入口管24が挿通される左側の第1導出孔27Aと、出口管25が挿通される右側の第2導出孔27Bとで構成されており、第1および第2の導出孔27A・27Bのそれぞれは、各管24・25の直径よりもひと回り大きな丸孔状に形成されている。
【0022】
冷却ユニット6(蒸発器12)は、前面開口3の前方から収納庫4の奥行き方向である後方向に差し込まれて収納庫4の内部に設置されるようになっている。この冷却ユニット6の差し込み操作の容易化を図るため、冷却庫本体1にはガイド構造32が設けられている。
図2に示すように、ガイド構造32は、冷却庫本体1の上壁と冷却ユニット6を構成するユニットケース10の上枠との間に設けられる左右一対のガイドレール33・34と、冷却ユニット6を下側から支持する断面L字状に形成された支持プレート35とで構成される。
【0023】
図6に示すように、左ガイドレール33は、冷却庫本体1の上壁に固定される固定レール38と、固定レール38で受け止められ案内される可動レール39とで構成される。固定レール38は、下向きに開口する断面コ字状の固定枠40と、固定枠40の右側下端から左方向に延設される受止枠41とを備えている。また、可動レール39は、断面L字状の固定片42と、固定片42の右端に連続する断面へ字状の係止片43とを備えている。左ガイドレール33は、係止片43が受止枠41の上面で支持されることにより、固定レール38に対して可動レール39が前後方向にスライド可能に構成される。固定レール38および可動レール39の前後方向の長さ寸法は、冷却ユニット6の前後方向の長さ寸法よりも僅かに小さく設定されている。
【0024】
右ガイドレール34は、冷却庫本体1の上壁に固定される固定レール46と、固定レール46で受け止められ案内される可動レール47とで構成されている。固定レール46は、断面逆L字状の固定枠48と、固定枠48の下端から左方向に延設される受止枠49とを備えている。また、可動レール47は、水平壁からなる係止片50で構成されている。右ガイドレール34は、係止片50が受止枠49の上面で支持されることにより、固定レール46に対して可動レール47が前後方向にスライド可能に構成される。
図5に示すように、可動レール47の前後方向の長さ寸法は、冷却ユニット6の前後方向の長さ寸法の3分の2程度であり、ユニットケース10の前後方向の略中央位置に配されている。また、固定レール46の前後方向の長さ寸法は可動レール47の半分程度であり、収納庫4の前後中央よりも前側に配されている。
【0025】
冷却ユニット6は、ガイド構造32により、固定位置(
図1(b))へとスライド案内されることに加え、当該ガイド構造32により、固定位置よりも収納庫4の後方(奥側)に設けられた組付位置(
図1(a))へとスライド案内可能に構成されている。本実施形態の入口管24および出口管25の先端は、固定位置においては第1および第2の導出孔27A・27B(導出孔27)の庫外側開口部よりも前側で後壁26の厚み範囲内にあり、組付位置においては第1および第2の導出孔27A・27Bの庫外側開口部よりも後側に突出して後壁26から離間している。
【0026】
図5に示すように、ガイド構造32は、冷却ユニット6を固定位置で位置保持する保持ストッパー53と、組付位置よりも後側へ冷却ユニット6がスライドされることを阻止するスライドストッパー54とを備える。保持ストッパー53およびスライドストッパー54は、右ガイドレール34に設けられている。両ストッパー53・54は、固定レール46の受止枠49に形成された係合孔55と、可動レール47の係止片50の右端に下向きに設けられて、係合孔55に差込み係合される係合爪56とで構成される。
【0027】
より詳しくは、係合孔55は、前係合孔55A、中係合孔55B、および後係合孔55Cで構成されており、3個の係合孔55A・55B・55Cは前後方向に等間隔置きに形成されている。係合爪56は、前係合爪56Aおよび後係合爪56Bで構成されており、2個の係合爪56A・56Bは前後方向に等間隔置きに形成されている。係合孔55の前後方向の寸法は、係合爪56の前後方向の寸法よりも僅かに大きく設定されており、各係合孔55A・55B・55Cの隣接ピッチと、各係合爪56A・56Bの隣接ピッチとは一致している。
【0028】
保持ストッパー53は、
図1(b)に示すように、前係合孔55Aおよび中係合孔55Bと前係合爪56Aおよび後係合爪56Bとで構成されており、前係合爪56Aが前係合孔55Aに係合し、後係合爪56Bが中係合孔55Bに係合することにより、冷却ユニット6を固定位置に位置保持することができる。また、スライドストッパー54は、
図1(a)に示すように、中係合孔55Bおよび後係合孔55Cと前係合爪56Aおよび後係合爪56Bとで構成されており、前係合爪56Aが中係合孔55Bに係合し、後係合爪56Bが後係合孔55Cに係合することにより、冷却ユニット6が組付位置よりも後方へスライド移動することを阻止することができる。
【0029】
冷却庫本体1に対する蒸発器12の組付けは、蒸発器12とともに冷却ファン13をユニットケース10の内部に固定して、冷却ユニット6としてユニット化した状態で行われる。まず、前面開口3の前方から収納庫4の奥行き方向に冷却ユニット6を差込み、左ガイドレール33の受止枠41の上面に係止片43を引っ掛け、さらにユニットケース10を支持プレート35の上面に乗せる。この状態で冷却ユニット6を奥行き方向にスライドさせつつ、右ガイドレール34において受止枠49の上面に係止片50を引っ掛ける。ここから冷却ユニット6をさらに奥行き方向へとスライドさせると、後係合爪56Bの後端が受止枠49の前縁に当接し、一端スライドが阻止される。
【0030】
次いで、冷却ユニット6の左側面の下部を右方に向かって押し込むと、
図7に示すように、受止枠41で受止められた係止片43を支点にして、冷却ユニット6の全体が反時計方向に傾動される。この冷却ユニット6の揺動により、受止枠49に対する後係合爪56Bの当接が解除され、再び冷却ユニット6の奥行き方向へのスライドが可能となる。ここから冷却ユニット6をさらに奥行き方向へとスライドさせると、前係合爪56Aが前係合孔55Aに、また、後係合爪56Bが中係合孔55Bに落込み係合して、冷却ユニット6は保持ストッパー53により一端固定位置に位置保持される。なお、係合爪56が係合孔55の形成部分以外の受止枠49と上下に重なる領域においては、冷却ユニット6は、傾動された状態でスライドされる。
【0031】
固定位置に位置保持された冷却ユニット6の全体を再び反時計方向に傾動させると保持ストッパー53による位置保持が解除されるので、冷却ユニット6の奥行き方向へのスライドが可能となる。ここから冷却ユニット6をさらに奥行き方向へとスライドさせることにより、前係合爪56Aが中係合孔55Bに、また、後係合爪56Bが後係合孔55Cに落込み係合して、冷却ユニット6はスライドストッパー54により組付位置でスライドが阻止される。冷却ユニット6が組付位置にある状態で、入口管24および出口管25に供給管28および回収管29を溶接にて接続する。
【0032】
入口管24と供給管28、および出口管25と回収管29は、L字状の接続管59を介して接続される(
図8(a)参照)。冷却ユニット6を組付位置にスライドさせたのち、入口管24に接続管59を溶接にて接続する(
図8(b)参照)。同様に出口管25にも接続管59を溶接にて接続する。両管24・25に接続管59を接続したのちは、冷却ユニット6の全体を反時計方向に傾動させてスライドストッパー54を解除し、冷却ユニット6を前方向へとスライドさせて、再度保持ストッパー53により固定位置で位置保持する。
【0033】
冷却ユニット6を固定位置に移動させたのち、入口管24側の接続管59に供給管28を溶接にて接続し、同様に出口管25の接続管59に回収管29を溶接にて接続する(
図8(c)参照)。最後に、左ガイドレール33の固定枠40と固定片42、およびユニットケース10の下枠と支持プレート35をそれぞれ締結ねじ60で一体に締結して、冷却ユニット6の設置が完了する。冷却ユニット6の設置が完了したのちは、供給管28と第1導出孔27A、および回収管29と第2導出孔27Bとの隙間にコーキング剤61を充填して、収納庫4の断熱性および気密性を確保する(
図5参照)。なお、冷却ユニット6を固定位置に設置した状態では、接続管59は後壁26に設けられた機械室2に連通する凹部62に収容されており、平面視における冷却庫の投影領域の内側に配されている。そのため、冷却庫の後方に冷媒配管が突出することはない。
【0034】
以上のように、本実施形態の冷却庫においては、ガイド構造32により、蒸発器12を常態において固定される固定位置と、該固定位置よりも後方側に設置された組付位置との間で、収納庫4内でスライド変位可能に構成した。これによれば、組付位置に蒸発器12を配置した状態においては(
図1(a)参照)、入口管24および出口管25の先端を、導出孔27を介して後壁26から後方向へ大きく突出させることができる。また、蒸発器12を固定位置に配置した状態では(
図1(b)参照)、入口管24および出口管25の先端の後壁26からの後方向への突出寸法を、前述の組付位置に比べて相対的に小さくすることができる。以上より、蒸発器12を組付位置に配置した状態では、入口管24および出口管25の先端を後壁26から後方向へ大きく突出させることができるので、冷却機構側の冷媒配管との間の溶接作業等の組付作業をより容易に進めることができる。また、溶接作業後に蒸発器12を固定位置に変位させることで、入口管24および出口管25の先端を冷却庫本体1に近接させて、両管24・25の後壁26からの後方向への突出寸法を小さくすることができるので、冷却庫の設置時に壁面との間に形成される隙間(デッドスペース)を小さくすることができる。以上より本実施形態によれば、組付け時における冷媒配管の溶接作業(蒸発器12側の冷媒配管(入口管24および出口管25)と、冷媒機構側の冷媒配管(接続管59)との間の溶接作業)の容易化と、組付け後の冷媒配管(蒸発器12側の冷媒配管(入口管24および出口管25))の後方への突出寸法を小さくすることという、相反する課題を同時に解決することができる。
【0035】
入口管24および出口管25を、後方向に向かって伸びる直線管状に形成したので、入口管24および出口管25を折れ曲がった垂直部分を含んでL字状に形成した場合に比べて、蒸発器12のスライド案内時における両管24・25の移行軌跡を小さくすることができる。これにて、各管24・25をL字状に形成した場合に比べて、後壁26に形成される導出孔27の開口面積を小さくするとともに、当該導出孔27の形成に伴って削除される断熱材を小さくすることができるので、冷却庫本体1の断熱性能の低下をより抑えることができる。また、蒸発器12が組付位置にあるときの両管24・25の先端の管周面が冷却庫本体1の後壁26に対向することを解消することができるので、溶接作業をより容易に行うことができる。
【0036】
導出孔27を、入口管24が挿通される第1導出孔27Aと、出口管25が挿通される第2導出孔27Bとで構成したので、両管24・25が挿通できるひとつの貫通孔で導出孔27を構成する場合に比べて、導出孔27の開口面積(第1導出孔27Aと第2導出孔27Bとの合計開口面積)をさらに小さくすることができ、冷却庫本体1の断熱性能の低下をより抑えることができる。
【0037】
ガイド構造32に、蒸発器12が組付位置よりも後方側へスライドすることを規制するスライドストッパー54を設けたので、当該スライドストッパー54により、組付位置へのスライド操作時に蒸発器12が後壁26の内面に衝突するのを防ぐことができる。これにより、冷却庫本体1および蒸発器12が破損することを確実に回避することができる。
【0038】
ガイド構造32に、蒸発器12を固定位置で位置保持する保持ストッパー53を設けたので、より簡便に蒸発器12を固定位置に位置保持することができる。したがって、冷却庫本体1に対する蒸発器12の組付けを容易化することができる。
【0039】
上記以外に、接続管59は省略することができ、この場合には、入口管24および出口管25を直線部分と垂直部分とでL字状に形成する、あるいは供給管28および回収管29の先端を前向きに屈曲させる。左側に入口管24を配し、右側に出口管25を配したが、左右の配置形態は逆であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 冷却庫本体
3 前面開口
4 収納庫
12 蒸発器
24 入口管
25 出口管
27 導出孔
27A 第1導出孔
27B 第2導出孔
32 ガイド構造
53 保持ストッパー
54 スライドストッパー