(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/16 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02K15/16 Z
(21)【出願番号】P 2021147066
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 文明
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-329213(JP,A)
【文献】特開2004-139650(JP,A)
【文献】実開昭61-205261(JP,U)
【文献】特開平9-294346(JP,A)
【文献】特開2021-002908(JP,A)
【文献】特開2012-165519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールに設けられるとともにシャフトの軸方向に沿う第1の方向に向く第1の面に、スペーサを配置することと、
前記フライホイールを貫通して前記第1の面に開口する第1の孔と、前記スペーサを貫通する第2の孔と、が互いに連通し、且つ前記フライホイールに設けられるとともに前記第1の孔の縁から前記軸方向と交差する方向に窪む第1の溝と、前記スペーサに設けられるとともに前記第2の孔の縁から前記軸方向と交差する方向に窪む第2の溝と、が互いに連通するように前記フライホイールと前記スペーサとの位置を調整することと、
前記第1の方向における前記シャフトの端部から前記第1の方向に離間した位置に前記フライホイールを配置することと、
前記第1の孔及び前記第2の孔を通じて視認可能な前記シャフトと、前記第1の孔と、が同心となるように前記シャフトと前記フライホイールとの位置を調整することと、
前記シャフトに設けられるとともに前記第1の溝及び前記第2の溝を通じて視認可能な凸部と、前記第1の溝と、が前記軸方向に並ぶように前記シャフトと前記フライホイールとの位置を調整することと、
前記第1の方向における前記シャフトの端部を前記第1の孔に挿入するとともに、前記凸部を前記第1の溝に挿入することと、
前記スペーサに設けられるとともに前記第1の方向に向く第2の面に、アダプタを配置することと、
前記アダプタを前記シャフトに対して前記第1の方向の反対の第2の方向に押し、前記第1の孔に前記シャフトを圧入することと、
を具備する回転電機の製造方法。
【請求項2】
前記フライホイールに、前記第1の方向に向く第3の面がさらに設けられ、
前記第1の面は、前記第3の面から窪む、
請求項1の回転電機の製造方法。
【請求項3】
前記アダプタは、前記軸方向に積層された複数のアダプタ部材を含み、
前記複数のアダプタ部材のそれぞれは、前記スペーサよりも軽い、
請求項1又は請求項2の回転電機の製造方法。
【請求項4】
前記第1の方向における前記シャフトの端部から前記第1の方向に離間した前記フライホイールから、前記第1の方向に離間した位置に、足場を配置すること、
をさらに具備し、
前記第1の方向は上方向である、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ又は発電機のような回転電機は、ステータと、当該ステータに対して回転可能なロータと、当該ロータと一体的に回転可能なシャフトと、を備える。当該シャフトに、フライホイールが例えば圧入により取り付けられることがある。
【0003】
フライホイールの孔にシャフトが圧入される際、例えば、フライホイールがシャフトの上に吊り上げられる。フライホイールは、例えばジャッキによりフライホイールの孔に圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧入代を生じさせるスペーサと、ジャッキとスペーサとの間で荷重を伝達するアダプタとが、フライホイールとジャッキとの間に設けられることがある。スペーサ及びアダプタは、シャフトとフライホイールの孔との位置決め後に設置される。吊り上げられたフライホイールの上に重いスペーサ及びアダプタを運搬及び配置することは、小さくない労力がかかり、作業効率を低下させる虞がある。
【0006】
本発明が解決する課題の一例は、作業効率を向上可能な回転電機の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態に係る回転電機の製造方法は、フライホイールに設けられるとともにシャフトの軸方向に沿う第1の方向に向く第1の面に、スペーサを配置することと、前記フライホイールを貫通して前記第1の面に開口する第1の孔と、前記スペーサを貫通する第2の孔と、が互いに連通し、且つ前記フライホイールに設けられるとともに前記第1の孔の縁から前記軸方向と交差する方向に窪む第1の溝と、前記スペーサに設けられるとともに前記第2の孔の縁から前記軸方向と交差する方向に窪む第2の溝と、が互いに連通するように前記フライホイールと前記スペーサとの位置を調整することと、前記第1の方向における前記シャフトの端部から前記第1の方向に離間した位置に前記フライホイールを配置することと、前記第1の孔及び前記第2の孔を通じて視認可能な前記シャフトと、前記第1の孔と、が同心となるように前記シャフトと前記フライホイールとの位置を調整することと、前記シャフトに設けられるとともに前記第1の溝及び前記第2の溝を通じて視認可能な凸部と、前記第1の溝と、が前記軸方向に並ぶように前記シャフトと前記フライホイールとの位置を調整することと、前記第1の方向における前記シャフトの端部を前記第1の孔に挿入するとともに、前記凸部を前記第1の溝に挿入することと、前記スペーサに設けられるとともに前記第1の方向に向く第2の面に、アダプタを配置することと、前記アダプタを前記シャフトに対して前記第1の方向の反対の第2の方向に押し、前記第1の孔に前記シャフトを圧入することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、回転電機の製造方法の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る製造工程における回転電機を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態のシャフト及びフライホイールを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態のフライホイールを模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、上記実施形態のアダプタ部材を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、上記実施形態のスペーサを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0011】
図1は、一つの実施形態に係る製造工程における回転電機10を模式的に示す断面図である。本実施形態における回転電機10は、例えば、ポンプを駆動して、当該ポンプにより原子炉を冷却するための一次冷却水を循環させる、RCP(Reactor Coolant Pump)モータである。なお、回転電機10は、他のモータ、又は発電機のような他の回転電機であっても良い。
【0012】
図1に示すように、回転電機10は、ステータ11と、ロータ12と、シャフト13と、フレーム14と、ブラケット15と、スラストランナ16と、フライホイール17とを有する。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0013】
ロータ12は、ステータ11の内側に配置される。シャフト13は、ロータ12に取り付けられ、ロータ12と一体的に中心軸Axまわりに回転可能である。中心軸Axは、ロータ12及びシャフト13の回転軸であるとともに、シャフト13の中心軸でもある。なお、ロータ12及びシャフト13の回転軸と、シャフト13の中心軸とが、若干ずれていても良い。
【0014】
本実施形態において、中心軸Axは、略鉛直方向に延びている。すなわち、シャフト13は、略鉛直方向(上下方向)に延びている。なお、中心軸Ax及びシャフト13が延びる方向は、この例に限られない。
【0015】
以下の説明において、便宜上、中心軸Ax及びシャフト13の軸方向、径方向、及び周方向が定義される。軸方向は、中心軸Axに沿う方向であり、上方向Du及び下方向Dlを含む。言い換えると、上方向Du及び下方向Dlはそれぞれ、シャフト13の軸方向に沿う方向である。上方向Duは、第1の方向の一例である。下方向Dlは、上方向Duの反対方向であり、第2の方向の一例である。径方向は、中心軸Axと直交する方向である。周方向は、中心軸Axまわりに回転する方向である。
【0016】
フレーム14は、軸方向に延びる略円筒状に形成され、ステータ11と、ロータ12と、シャフト13の一部と、を覆う。ステータ11は、フレーム14に固定されている。ブラケット15は、軸方向におけるフレーム14の端部に固定される。スラストランナ16は、ブラケット15を軸方向に貫通して、ブラケット15に取り付けられる。スラストランナ16は、シャフト13を中心軸Axまわりに回転可能に支持する。
【0017】
シャフト13の一部は、ブラケット15を貫通し、フレーム14及びブラケット15の外部に位置する。フライホイール17は、フレーム14及びブラケット15の外部において、シャフト13に取り付けられる。フライホイール17は、圧入により、シャフト13に取り付けられる。
【0018】
図2は、本実施形態のシャフト13及びフライホイール17を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、シャフト13は、上端部20を有する。上端部20は、第1の方向におけるシャフトの端部の一例である。上端部20は、上方向Duにおけるシャフト13の端部である。なお、上端部20は、上方向Duにおけるシャフト13の端のみならず、当該端の近傍の部分を含む。
【0019】
上端部20は、フレーム14及びブラケット15の外部に位置する。上端部20に、上端面21と、外周面22とが設けられる。上端面21は、上方向Duにおけるシャフト13の端に位置する略円形の平面である。上端面21は、上方向Duに向く。外周面22は、径方向の外側に向く略円筒状の面である。外周面22は、上端面21の外縁から下方向Dlに延びている。
【0020】
シャフト13の上端部20に、複数のキー25が設けられる。キー25は、凸部の一例である。キー25は、例えば、外周面22に設けられた窪みに嵌め込まれ、外周面22から径方向の外側に突出する。複数のキー25は、周方向に略等間隔に配置される。なお、上端部20に、キー25の代わりにスプラインが設けられても良い。
【0021】
フライホイール17は、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。なお、フライホイール17の形状は、この例に限られない。フライホイール17に、上側面31と、下側面32と、凹面33とが設けられる。上側面31は、第3の面の一例である。
【0022】
上側面31は、略円形の平面であり、上方向Duに向く。なお、上側面31は、凹凸を有しても良いし、曲面であっても良い。上側面31は、少なくとも部分的に上方向Duに向いていれば良い。
【0023】
下側面32は、上側面31の反対側に設けられた略円形の平面であり、下方向Dlに向く。凹面33は、上側面31から下方向Dlに窪んでいる。上側面31、下側面32、及び凹面33は、中心軸Axを中心とするように同心に設けられる。
【0024】
凹面33は、底面33aと周面33bとを有する。底面33aは、第1の面の一例である。底面33aは、略円形の平面であり、上方向Duに向く。なお、底面33aは、凹凸を有しても良いし、曲面であっても良い。底面33aは、少なくとも部分的に上方向Duに向いていれば良い。底面33aの直径は、上側面31の直径よりも短い。周面33bは、底面33aの外縁と、上側面31の内縁との間で延び、略円筒状に形成される。
【0025】
図3は、本実施形態のフライホイール17を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、フライホイール17に、取付孔35と、複数のキー溝36とが設けられる。取付孔35は、第1の孔の一例である。キー溝36は、第1の溝の一例である。
【0026】
図2に示すように、取付孔35は、中心軸Axに沿ってフライホイール17を貫通し、下側面32と凹面33の底面33aとに開口する。取付孔35は、軸方向に延びる略円形の孔である。フライホイール17に、取付孔35を形成(規定、区画)する内周面35aがさらに設けられる。内周面35aは、第1の孔の縁の一例である。内周面35aは、中心軸Axに向く略円筒状に形成される。
【0027】
図3に示すように、複数のキー溝36はそれぞれ、取付孔35の内周面35aから径方向の外側に窪んでいる。径方向は、軸方向と交差する方向の一例である。なお、キー溝36は、内周面35aから軸方向と交差する他の方向に窪んでも良い。
【0028】
キー溝36は、取付孔35とともにフライホイール17を貫通する。このため、キー溝36は、下側面32と、凹面33の底面33aと、内周面35aとに開口する。複数のキー溝36は、周方向に略等間隔に配置される。
【0029】
取付孔35に、シャフト13の上端部20が挿入される。上端面21の近傍において、取付孔35の直径は、シャフト13の上端部20の直径よりも僅かに大きい。また、上端面21から下方向Dlに離間した位置において、取付孔35の直径は、上端部20の直径よりも僅かに小さい。このため、シャフト13の上端部20は、取付孔35に圧入されることとなる。
【0030】
図2に示すように、取付孔35にシャフト13が圧入されるとき、ジャッキ41、油圧ポンプ42、アダプタ43、スペーサ44、センターボルト45、及びナット46が用いられる。なお、シャフト13の圧入に、他の装置が用いられても良い。
【0031】
ジャッキ41は、例えば、中空の油圧ジャッキである。なお、ジャッキ41は、この例に限られない。ジャッキ41は、油圧ポンプ42に接続される。ジャッキ41は、油圧ポンプ42により駆動され、軸方向に伸縮する。
【0032】
アダプタ43及びスペーサ44は、ジャッキ41とフライホイール17との間に介在することで、ジャッキ41により生じる荷重をフライホイール17に伝達する。例えば、ジャッキ41は、アダプタ43に当接し、アダプタ43及びスペーサ44を介してフライホイール17を押す。スペーサ44は、ジャッキ41のための圧入代を生じさせる。
【0033】
センターボルト45は、シャフト13の上端部20に取り付けられる。例えば、センターボルト45は、両ネジボルトであり、シャフト13の上端面21に開口するネジ穴に取り付けられる。センターボルト45は、中心軸Axに沿って軸方向に延びる。センターボルト45は、ジャッキ41のセンターホールを貫通し、ジャッキ41をガイドする。
【0034】
ナット46は、センターボルト45に取り付けられる。ジャッキ41、アダプタ43、及びスペーサ44は、フライホイール17とナット46との間に配置される。このため、油圧ポンプ42に駆動されたジャッキ41が伸びると、ジャッキ41は、アダプタ43及びスペーサ44を介してフライホイール17を押す。
【0035】
アダプタ43は、複数のアダプタ部材50を有する。複数のアダプタ部材50は、ジャッキ41とスペーサ44との間で、軸方向に積層されている。なお、アダプタ43は、一つのアダプタ部材50のみを有しても良い。
【0036】
図4は、本実施形態のアダプタ部材50を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、アダプタ部材50は、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。なお、アダプタ部材50は、他の形状に形成されても良い。
【0037】
アダプタ部材50に、上面51が設けられる。上面51は、上方向Duに向く略円形の平面である。なお、上面51は、凹凸を有しても良いし、曲面であっても良い。上面51は、少なくとも部分的に上方向Duに向いていれば良い。
【0038】
複数のアダプタ部材50のうち最も上に配置された一つにおいて、上面51は、ジャッキ41に当接し、ジャッキ41を支持する。なお、上面51とジャッキ41との間に、他の部材が介在しても良い。
【0039】
アダプタ部材50に、挿通孔55と、複数の周孔56とが設けられる。挿通孔55及び周孔56はそれぞれ、アダプタ部材50を軸方向に貫通する略円形の孔であり、上面51に開口する。なお、挿通孔55は、他の形状に形成されても良い。
【0040】
挿通孔55は、中心軸Axに沿って軸方向に延びている。挿通孔55の直径は、センターボルト45の直径よりも大きい。センターボルト45は、挿通孔55を通ってアダプタ部材50を貫通する。また、挿通孔55の直径は、ジャッキ41の外径よりも短い。このため、ジャッキ41は、挿通孔55を通過せず、上面51に支持されることができる。複数の周孔56は、挿通孔55の周りに配置される。
【0041】
図5は、本実施形態のスペーサ44を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、スペーサ44は、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。なお、スペーサ44は、他の形状に形成されても良い。
【0042】
スペーサ44は、複数のアダプタ部材50のそれぞれよりも重い。例えば、スペーサ44の外径は、アダプタ部材50の外径と略等しい。一方、軸方向におけるスペーサ44の厚さは、軸方向におけるアダプタ部材50の厚さよりも大きい。なお、スペーサ44及びアダプタ部材50の寸法は、この例に限られない。
【0043】
スペーサ44に、上面61が設けられる。上面61は、第2の面の一例である。上面61は、上方向Duに向く略円形の平面である。なお、上面61は、凹凸を有しても良いし、曲面であっても良い。上面61は、少なくとも部分的に上方向Duに向いていれば良い。
【0044】
上面61は、複数のアダプタ部材50のうち最も下に配置された一つに当接し、当該アダプタ部材50を支持する。なお、上面61とアダプタ部材50との間に、他の部材が介在しても良い。
【0045】
スペーサ44に、挿通孔65と、複数の周孔66と、複数のキー溝67とが設けられる。挿通孔65は、第2の孔の一例である。キー溝67は、第2の溝の一例である。挿通孔65、周孔66、及びキー溝67はそれぞれ、スペーサ44を軸方向に貫通し、上面61に開口する。
【0046】
挿通孔65は、中心軸Axに沿って軸方向に延びる略円形の孔である。挿通孔65の直径は、センターボルト45の直径よりも大きく、且つジャッキ41の直径よりも大きい。挿通孔65の直径は、例えば、フライホイール17の取付孔35の直径と略等しいか、又は僅かに大きい。挿通孔65の直径は、シャフト13の上端部20の直径よりも僅かに大きい。
図2に示すように、センターボルト45は、挿通孔65を通ってスペーサ44を貫通する。
【0047】
図5に示すように、スペーサ44に、挿通孔65を形成(規定、区画)する内周面65aがさらに設けられる。内周面65aは、第2の孔の縁の一例である。内周面65aは、中心軸Axに向く略円筒状に形成される。
【0048】
複数の周孔66は、挿通孔65の周りに配置される。スペーサ44の周孔66の位置は、アダプタ部材50の周孔56の位置に対応している。複数の周孔66は、例えばネジ穴であり、雌ネジが設けられる。例えば、ボルトが、アダプタ部材50の周孔56を貫通し、スペーサ44の周孔66に嵌め込まれることで、アダプタ43とスペーサ44とを結合させる。
【0049】
複数のキー溝67はそれぞれ、挿通孔65の内周面65aから径方向の外側に窪んでいる。なお、キー溝67は、内周面65aから軸方向と交差する他の方向に窪んでも良い。複数のキー溝67は、周方向に略等間隔に配置される。キー25の数及び配置と、スペーサ44のキー溝67の数及び配置と、フライホイール17のキー溝36の数及び配置と、は互いに対応している。スペーサ44のキー溝67の大きさは、フライホイール17のキー溝36の大きさに略等しい。
【0050】
以下、回転電機10の製造方法の一部である、シャフト13の取付孔35への圧入方法について例示する。なお、以下の圧入方法における各工程は、可能であれば入れ替えられても良い。また、シャフト13の取付孔35への圧入方法は以下の方法に限らず、他の方法を用いても良い。
【0051】
図3に分解して示すように、まず、フライホイール17の凹面33の底面33aに、スペーサ44が配置される。凹面33の周面33bの直径は、スペーサ44の外径よりも若干大きい。このため、凹面33の周面33bは、スペーサ44の位置決めをすることができる。
【0052】
次に、フライホイール17とスペーサ44の位置とが調整される。具体的には、フライホイール17の取付孔35と、スペーサ44の挿通孔65とが、軸方向に重ねられる。これにより、取付孔35と挿通孔65とが互いに連通する。なお、本実施形態では、スペーサ44が周面33bの内側に配置されることで、取付孔35と挿通孔65とが互いに連通する。また、フライホイール17のキー溝36と、スペーサ44のキー溝67とが、軸方向に並べられる。これにより、キー溝36,67が互いに連通する。
【0053】
次に、フライホイール17が、シャフト13の上端部20から上方向Duに離間した位置に配置される。例えば、フライホイール17は、クレーン70により、上端部20の上に吊り上げられる。
【0054】
クレーン70は、例えば、軸方向及び水平方向に移動可能なフック71を有する。フック71は、例えば、チェーンブロック73により、フライホイール17の上側面31に設けられた複数のリング74に接続される。これにより、クレーン70は、フライホイール17を軸方向に略直交する姿勢で吊り上げることができる。
【0055】
上述のように、フライホイール17の凹面33に、スペーサ44が配置されている。このため、クレーン70は、フライホイール17と共に、スペーサ44をシャフト13の上端部20から上方向Duに離間した位置に配置する。凹面33の周面33bは、スペーサ44が水平方向に移動することを制限し、スペーサ44がフライホイール17から脱落することを抑制できる。
【0056】
次に、
図1に示すように、足場81が設置される。フライホイール17がシャフト13の上端部20から上方向Duに離間した状態で、足場81が、フライホイール17から上方向Duに離間した位置に配置される。フライホイール17は、軸方向において、シャフト13と足場81との間に位置する。
【0057】
足場81は、作業者Pが乗ることが可能な広さを有する。足場81には、開口82が設けられる。開口82は、凹面33の近傍におけるフライホイール17の一部とスペーサ44とを露出させる。このため、足場81に乗った作業者Pは、開口82を通じてフライホイール17及びスペーサ44を視認することができる。さらに、チェーンブロック73は、開口82を通じて、フック71とフライホイール17のリング74との間で延びている。
【0058】
足場81に、複数の柱84、手摺85、及びストッパ86が取り付けられる。柱84、手摺85、及びストッパ86は、例えばパイプにより形成される。なお、柱84、手摺85、及びストッパ86は、この例に限られない。
【0059】
柱84は、足場81を支持する。例えば、複数の柱84は、床とフレーム14とに支持される。なお、柱84は、他の場所に支持されても良い。手摺85は、足場81を囲む。足場81に乗った作業者Pは、例えば、手摺85に安全帯87をつなぐことができる。これにより、足場81に乗った作業者Pは、安全に作業を行うことができる。ストッパ86は、足場81、柱84、又は手摺85を、例えば点検足場に接続し、足場81の振動を抑制する。
【0060】
次に、シャフト13とフライホイール17の取付孔35とが同心となるように、シャフト13とフライホイール17の位置とが調整される。例えば、足場81に乗った作業者Pは、開口82を通じてスペーサ44の挿通孔65を上から視認することができる。スペーサ44の挿通孔65とフライホイール17の取付孔35とが連通しているため、作業者Pは、挿通孔65及び取付孔35を通じてシャフト13を視認することができる。作業者Pは、シャフト13の中心(中心軸Ax)と取付孔35の中心とが同心となるように、例えばクレーン70を操作し又は手動で、シャフト13に対するフライホイール17の位置を調整する。
【0061】
次に、シャフト13のキー25とフライホイール17のキー溝36とが軸方向に並ぶように、シャフト13とフライホイール17との位置が調整される。例えば、足場81に乗った作業者Pは、開口82を通じてスペーサ44のキー溝67を上から視認することができる。スペーサ44のキー溝67とフライホイール17のキー溝36とが連通しているため、作業者Pは、キー溝36,67を通じてキー25を視認することができる。作業者Pは、キー25とキー溝36とが軸方向に並ぶように、例えばクレーン70を操作し又は手動で、シャフト13に対するフライホイール17の位置を調整する。
【0062】
次に、フライホイール17が、例えばクレーン70によって、下方向Dlに移動させられる。これにより、シャフト13の上端部20がフライホイール17の取付孔35に挿入されるとともに、キー25がキー溝36に挿入される。
【0063】
上述のように、上端面21から下方向Dlに離間した位置において、取付孔35の直径は、上端部20の直径よりも僅かに小さい。このため、上端部20が取付孔35に完全に挿入される前に、下方向Dlへのフライホイール17の移動は止まる。取付孔35に挿入される上端部20の長さは、例えば、取付孔35の長さの約四分の三である。
【0064】
次に、足場81に乗った作業者Pへ、ジャッキ41、油圧ポンプ42、アダプタ43、センターボルト45、及びナット46が運搬される。なお、ジャッキ41、油圧ポンプ42、アダプタ43、センターボルト45、及びナット46は、例えば、予め足場81に配置されていても良い。
【0065】
アダプタ43のアダプタ部材50は、スペーサ44よりも軽く、容易に運搬されることができる。例えば、アダプタ部材50の厚さはスペーサ44の厚さの約五分の一であり、アダプタ部材50の重さはスペーサ44の重さよりも約10kg軽い。なお、アダプタ部材50及びスペーサ44の厚さ及び重さは、あくまで一例である。
【0066】
次に、
図2に示すように、センターボルト45がシャフト13の上端部20に取り付けられる。さらに、スペーサ44の上面61に、アダプタ43が配置される。センターボルト45は、アダプタ部材50の挿通孔55を通って、アダプタ部材50の上面51から上方向Duに突出する。さらに、アダプタ43が、例えばボルトによりスペーサ44に取り付けられる。
【0067】
次に、ジャッキ41がアダプタ43の上面51に配置される。センターボルト45は、ジャッキ41のセンターホールを通り、ジャッキ41の上端から上方向Duに突出する。さらに、センターボルト45に、ナット46及びワッシャが取り付けられる。
【0068】
次に、油圧ポンプ42がジャッキ41を駆動し、ジャッキ41が軸方向に延びる。ジャッキ41の上端41aは、ナット46及びセンターボルト45を介して、シャフト13に対して固定される。このため、ジャッキ41が伸びると、ジャッキ41の下端41bが下方向Dlに移動する。
【0069】
下方向Dlに移動するジャッキ41の下端41bは、アダプタ43をシャフト13に対して下方向Dlに押す。ジャッキ41は、アダプタ43及びスペーサ44を介して、フライホイール17をシャフト13に対して下方向Dlに押す。これにより、フライホイール17の取付孔35に、シャフト13の上端部20が圧入される。
【0070】
圧入によりフライホイール17が所定の位置まで移動すると、油圧ポンプ42がジャッキ41の駆動を停止する。次に、ジャッキ41、油圧ポンプ42、アダプタ43、センターボルト45、及びナット46が撤去される。さらに、足場81、柱84、手摺85、及びストッパ86が撤去される。以上により、シャフト13の取付孔35への圧入が完了する。
【0071】
以上説明された第1の実施形態に係る回転電機10の製造方法において、フライホイール17とスペーサ44との位置は、フライホイール17を貫通して底面33aに開口する取付孔35と、スペーサ44を貫通する挿通孔65と、が互いに連通し、且つフライホイール17に設けられるとともに取付孔35の内周面35aから軸方向と交差する方向に窪むキー溝36と、スペーサ44に設けられるとともに挿通孔65の内周面65aから軸方向と交差する方向に窪むキー溝67と、が互い連通するように調整される。シャフト13とフライホイール17との位置は、取付孔35及び挿通孔65を通じて視認可能なシャフト13と、取付孔35と、が同心となるように調整される。さらに、シャフト13とフライホイール17との位置は、シャフト13に設けられるとともにキー溝36及びキー溝67を通じて視認可能なキー25と、キー溝36と、が軸方向に並ぶように調整される。すなわち、キー25とキー溝36との位置決めは、スペーサ44のキー溝67を通じて視認することで容易に行われ得る。このため、シャフト13とフライホイール17との位置の調整の前に予め底面33aにスペーサ44が配置されることができ、キー25とキー溝36との位置決め後におけるスペーサ44の運搬及び配置は必要でなくなる。従って、本実施形態の回転電機10の製造方法は、作業効率を向上し得る。
【0072】
フライホイール17に、上方向Duに向く上側面31がさらに設けられる。底面33aは、当該上側面31から窪んでいる。従って、底面33aは、フライホイール17におけるスペーサ44の位置決めを容易にできる。
【0073】
アダプタ43は、軸方向に積層された複数のアダプタ部材50を含む。複数のアダプタ部材50のそれぞれは、スペーサ44よりも軽い。これにより、キー25とキー溝36との位置決め後に上面61に配置されるアダプタ43の運搬及び配置が容易となる。さらに、シャフト13が取付孔35に圧入される際の荷重に応じてアダプタ部材50の数が決定されることで、アダプタ43は、当該荷重により損傷することが抑制される。
【0074】
足場81は、シャフト13の上端部20から上方向Duに離間したフライホイール17から、上方向Duに離間した位置に配置される。これにより、作業者Pは、フライホイール17に乗ることなく、足場81から取付孔35及び挿通孔65を通じてシャフト13とフライホイール17との位置を調整することができる。従って、本実施形態の回転電機10の製造方法は、安全性を向上し得る。
【0075】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…回転電機、13…シャフト、17…フライホイール、20…上端部、25…キー、31…上側面、33a…底面、35…取付孔、35a…内周面、36…キー溝、43…アダプタ、44…スペーサ、50…アダプタ部材、61…上面、65…挿通孔、65a…内周面、67…キー溝、81…足場、Du…上方向、Dl…下方向。