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特許7438175感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、及び感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240216BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240216BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
C08G59/17
C08G18/80
C08G18/79 010
C08G18/78 031
C08F290/06
H05K1/03 610S
H05K1/03 610L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021159592
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049695
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】田中 沙佑美
(72)【発明者】
【氏名】堀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】有馬 克哉
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-169810(JP,A)
【文献】特開2009-198710(JP,A)
【文献】特開2011-048313(JP,A)
【文献】特開2021-063950(JP,A)
【文献】特開2009-185182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
C08G 59/17
C08G 18/80
C08G 18/79
C08G 18/78
C08F 290/06
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロックイソシアネートと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、を含有し、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が60質量部以下であり、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)ブロックイソシアネートを40質量部以上70質量部以下含有し、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、
前記(B)ブロックイソシアネートが、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の三量体にブロック剤が反応したブロックイソシアネートである感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が10質量部以下である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が1.0質量部以下である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートまたはビウレット型ポリイソシアネートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)ブロックイソシアネートを45質量部以上70質量部以下含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(E)有機フィラーを含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、絶縁被覆材料に適した感光性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物が被覆されたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リジット基板やフレキシブル基板を用いたプリント配線板の基板上には、導体(例えば、銅箔)の回路パターンが形成され、導体の回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除く回路部分は、絶縁材料からなる絶縁保護膜であるソルダーレジスト膜で被覆される。
【0003】
また、近年、電子機器の高機能化と小型化に伴い、電子機器に設置されるプリント配線板の設置空間が、ますます狭小化されている。そこで、電子機器内部の狭小化した空間にプリント配線板を設置するために、柔軟性を有するフレキシブル基板を用いたプリント配線板(フレキシブルプリント配線板)が使用されることがある。
【0004】
フレキシブルプリント配線板の絶縁保護膜には、高い柔軟性が要求される。柔軟性を向上させた絶縁被膜を形成できる組成物として、例えば、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン、及び(F)ポリウレタン粒子を含有する感光性組成物が開示されている(特許文献1)。
【0005】
一方で、近年、モバイル端末機器の高性能化やネットワーク通信技術の進歩に伴い、使用される情報量が急激に増加しており、情報通信で使用する電気信号は、高速・大容量伝送が可能である高周波数へシフトしてきている。また、全てのモノをつなぐIoT(Internet оf Things)が進められてきている点からも、従来以上の無線通信の高速化を図る必要があり、3GHz以上の高周波数を使用した第5世代通信(5G)への移行も進められてきている。
【0006】
このような、近年の通信技術の進歩と変化に伴い、高速・大容量伝送を担う電子部品が搭載されたプリント配線板にも、高周波信号の伝送や処理に対応できることが必要とされている。高速・大容量通信では、プリント配線板に被覆された絶縁保護膜の誘電特性が高い(例えば、高誘電率、高誘電正接)と、絶縁保護膜にて発生する誘電損失が熱に変換されて電子部品に熱負荷がかかる等の問題がある。
【0007】
特許文献1では、感光性組成物の硬化物の架橋密度を上げることで強度を有する硬化塗膜を形成するために、エポキシ化合物からなる硬化剤が配合されている。すなわち、特許文献1では、エポキシ化合物のエポキシ基と感光性プレポリマーのカルボキシル基を反応させることで、硬化物中に架橋構造を形成して硬化塗膜に強度を付与している。しかし、エポキシ化合物のエポキシ基と感光性プレポリマーのカルボキシル基が反応すると水酸基が生じることから、エポキシ化合物のみを用いて硬化物の架橋密度を上げると、絶縁保護膜の誘電特性が高くなってしまうという問題があった。
【0008】
上記から、高速・大容量伝送に対応可能な低誘電材料(例えば、低誘電率、低誘電正接を有する材料)である絶縁保護膜に対する要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-293882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物及び前記感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロックイソシアネートと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、を含有し、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が60質量部以下である感光性樹脂組成物。
[2]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が10質量部以下である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が1.0質量部以下である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B)ブロックイソシアネートが、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の三量体にブロック剤が反応したブロックイソシアネートである[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートまたはビウレット型ポリイソシアネートである[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートである[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートである[4]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)ブロックイソシアネートを30質量部以上90質量部以下含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]さらに、(E)有機フィラーを含有する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10][1]乃至[9]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロックイソシアネートと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、を含有し、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が60質量部以下であることにより、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が1.0質量部以下であることにより、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がさらに低下する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)ブロックイソシアネートが、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の三量体にブロック剤が反応したブロックイソシアネートであることにより、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下する。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートまたはビウレット型ポリイソシアネートであることにより、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がさらに確実に低下する。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記ポリイソシアネート化合物の三量体が、イソシアヌレート型ポリイソシアネートであることにより、さらに優れた低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、前記(B)ブロックイソシアネートを30質量部以上90質量部以下含有することにより、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下しつつ、優れた現像性を得ることができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、さらに、(E)有機フィラーを含有することにより、柔軟性に優れた硬化塗膜をより確実に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に詳細を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロックイソシアネートと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、を含有し、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が60質量部以下である。本発明の感光性樹脂組成物では、感光性組成物の硬化物の架橋密度を上げるための成分(硬化剤)として、ブロックイソシアネートを配合し、エポキシ化合物は実質的に配合しないことにより、硬化剤とカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基が反応して水酸基が生じることを防止し、または、硬化剤として、ブロックイソシアネートとエポキシ化合物を併用して、エポキシ化合物の配合量をカルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して60質量部以下に抑制することにより、硬化剤とカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基が反応して水酸基が生じることを抑制している。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物では、硬化剤とカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基が反応して水酸基が生じることを防止、抑制することにより、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物では、ブロックイソシアネートのイソシアネート基とカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基が反応してアミド結合が生成することで、硬化物中に架橋構造が形成される。
【0021】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂の化学構造は、特に限定されず、例えば、遊離のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を1個以上と、を有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシアクリレートやエポキシメタクリレート(以下、アクリレートやメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、得られた該樹脂に生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる化学構造を有する、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0022】
多官能エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であれば、化学構造は、特に限定されない。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、エポキシ当量の上限値は、2000が好ましく、1500がより好ましく、1000がさらに好ましく、500が特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100が好ましく、200が特に好ましい。多官能エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらのエポキシ樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したエポキシ樹脂を使用してもよい。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、フルフリルアクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、チグリン酸、アンゲリカ酸等を挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のうち、感光性や反応性に優れ、また取り扱いが容易である点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入されて、多官能エポキシ樹脂の骨格に感光性が付与される。
【0024】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0025】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応によって、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に水酸基が生成し、生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が反応することで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に、さらに遊離のカルボキシル基が導入される。感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に遊離のカルボキシル基が導入されることで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂にアルカリ現像性が付与される。多塩基酸は、2官能以上のカルボン酸(ポリカルボン酸)であれば、特に限定されず、飽和の多塩基酸でもよく、不飽和の多塩基酸でもよい。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、フタル酸誘導体(例えば、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等)、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物は、特に限定されず、例えば、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの多塩基酸、多塩基酸無水物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物との反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。
【0027】
上記した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂では、側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有している。従って、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、光重合反応性に優れ、感光特性がさらに向上する。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、酸価の下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、例えば、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、硬化物の耐湿性と絶縁信頼性の低下を確実に防止する点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、質量平均分子量(Mw)の下限値は、硬化物の強靭性及び露光処理前の指触乾燥性を向上させる点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)の上限値は、アルカリ現像性をより確実に得る点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により測定した分子量を意味する。
【0031】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各出発物質を用いて上記反応にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、「リポキシSP-4621」(昭和電工株式会社)、「KAYARAD ZAR-2000」、「KAYARAD ZFR-1122」、「KAYARAD FLX-2089」、「KAYARAD ZCR-1601H」、「KAYARAD ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(B)ブロックイソシアネート
本発明の感光性樹脂組成物では、カルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成する硬化剤としてブロックイソシアネートを配合することにより、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる。
【0033】
ブロックイソシアネートとは、イソシアネ-ト化合物のイソシアネ-ト基にブロック剤を反応させて得られる反応生成物である。従って、ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤により保護されて不活性化されたイソシアネ-ト化合物である。このブロックイソシアネートを、例えば、所定温度にて加熱処理することにより、このブロック剤がイソシアネート基から解離、すなわち脱ブロックして、活性なイソシアネート基が再生される。
【0034】
ブロックイソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物にブロック剤が反応したブロックイソシアネートであれば、特に限定されないが、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下する点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の三量体にブロック剤が反応したブロックイソシアネートが好ましい。また、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の三量体としては、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がさらに確実に低下する点から、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネートが好ましく、さらに優れた低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができる点から、イソシアヌレート型ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0035】
また、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは、ウレタン結合(―CONH―)を有するビウレット型ポリイソシアネート及びアダクト型ポリイソシアネートに比べ、非極性の傾向にあり、熱的にも化学的にも安定であり、また、耐久性がよい傾向にある。
【0036】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート;4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト、2,4-トリレンジイソシアネ-ト、2,6-トリレンジイソシアネ-ト、キシリレンジイソシアネ-ト、1,5-ナフタレンジイソシアネ-ト、4,4-ジフェニルジイソシアネ-ト、1,4-フェニレンジイソシアネ-ト、2,6-フェニレンジイソシアネ-トなどの芳香族イソシアネート;ジシクロヘプタントリイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネ-ト、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環式イソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物のうち、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がさらに確実に低下する点から、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0037】
ブロック剤としては、例えば、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系ブロック剤;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック剤;ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;メチルエチルケトンオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;コハク酸イミド等のイミド系ブロック剤;アニリン、ブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;尿素系ブロック剤、カルバミン酸塩系ブロック剤等が挙げられる。
【0038】
ブロックイソシアネート100質量%中におけるブロック剤の含有量は、特に限定されない。
【0039】
ブロックイソシアネートは市販のものであっても使用可能であり、例えば、デュラネートSBN‐70D、デュラネートSBB‐70P、デュラネート17B-60P、デュラネートMF-K60B、デュラネートMF-B60B、デュラネートTPA-B80E、デュラネートE402-B80B(以上、旭化成株式会社、商品名)、スミジュールBL-3175、スミジュールBL-4165、スミジュールBL-1100、スミジュールBL-1265、デスモジュールTPLS-2957、デスモジュールTPLS-2062、デスモジュールTPLS-2078、デスモジュールTPLS-2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン株式会社、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(日本ポリウレタン工業株式会社、商品名)、B-830、B-815、B-846、B-870、B-874、B-882(三井武田ケミカル株式会社、商品名)、BI7986、BI7951、BI7982、BI7960(バクセンデン株式会社、商品名)、カレンズMOI-BM、カレンズMOI-BP(昭和電工株式会社、商品名)等が挙げられる。これらのブロックイソシアネートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ブロックイソシアネート(固形分)の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部(樹脂固形分(以下、同じ)。)に対して、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下する点から、30質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、45質量部が特に好ましい。一方で、ブロックイソシアネートの配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、イソシアネート基の増加による感光性樹脂のカルボキシル基との反応を抑制して優れた現像性を得る点から、90質量部が好ましく、80質量部がより好ましく、75質量部がさらに好ましく、70質量部が特に好ましい。
【0041】
なお、ブロックイソシアネートのイソシアネート基は、感光性樹脂組成物中のカルボキシル基に対して、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下する点から、カルボキシル基のモル数を1とした場合、イソシアネート基のモル数の下限値は0.6モルが好ましく、0.7モルがより好ましく、0.8モルが特に好ましい。一方で、感光性樹脂組成物中のカルボキシル基1モルに対するブロックイソシアネートのイソシアネート基の上限値は、イソシアネート基の増加によるカルボキシル基との反応を抑制して感光性樹脂組成物の優れた諸特性を確実に維持する点から、1.8モルが好ましく、1.6モルがより好ましく、1.4モルが特に好ましい。
【0042】
上記の通り、 本発明の感光性樹脂組成物では、カルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成する硬化剤としてブロックイソシアネートが配合されているので、従来の硬化剤であるエポキシ化合物は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して60質量部以下に抑制されている。エポキシ化合物の配合量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して60質量部以下であれば、特に限定されないが、硬化剤とカルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基が反応して水酸基が生じることをより確実に抑制して、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がより確実に低下する点から、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、硬化塗膜の誘電率と誘電正接がさらに低下する点から、1.0質量部以下がさらに好ましく、エポキシ化合物が配合されていないことが特に好ましい。
【0043】
カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して60質量部以下に抑制されているエポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、о-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、芳香族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
これらのエポキシ化合物のうち、柔軟性だけでなく、耐熱性の向上にも寄与する点から、芳香族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、 (9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。また、α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤でもよく、他の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下が好ましく、2.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0047】
(D)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にすることで機械的強度を光硬化物に付与し、耐酸性等に優れた光硬化物を得るために配合する。
【0048】
反応性希釈剤としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能の(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能の(メタ)アクリレートモノマー;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレートモノマー;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレートモノマー;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。また、(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、他のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下が特に好ましい。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(D)成分の他に、必要に応じて、他の成分、例えば、(E)有機フィラー、着色剤、無機イオン交換体、難燃剤、消泡剤等の添加剤、非反応性希釈剤等を、適宜、配合してもよい。
【0051】
(E)有機フィラー
有機フィラーは、感光性樹脂組成物の光硬化物の物理的強度を上げ、また、柔軟性に優れた光硬化物をより確実に得ることにも寄与する。有機フィラーとしては、例えば、ウレタン系ビーズ、ポリメタクリル酸メチル系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、アクリル系ビーズ、アクリルコポリマー系ビーズ、ポリアクリル酸エステル系ビーズ、ナイロン系ビーズ、シリコーン系ビーズ等の粒子状有機フィラーが挙げられる。これらの有機フィラーのうち、より柔軟性に優れた光硬化物を得ることができる点から、ウレタン系ビーズが好ましい。
【0052】
有機フィラーの配合量は、特に限定されないが、柔軟性に優れた光硬化物をより確実に得つつ、感光性樹脂組成物に塗工性を確実に付与する点から、10質量部以上50質量部以下が好ましく、20質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0053】
着色剤
着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、黒色着色剤、赤色着色剤、橙色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。上記着色剤としては、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤、緑色着色剤であるフタロシアニングリーンやリオノールグリーン、青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系着色剤、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系着色剤、アントラキノン系着色剤等の有機系着色剤を挙げることができる。
【0054】
無機イオン交換体
無機イオン交換体は、反対電荷のイオンを取り込んでイオン交換を行うことで、本発明の感光性樹脂組成物中に残っている塩素イオン、ナトリウムイオン等のイオン性不純物を捕捉固定するとともに、電圧を印加することでイオンとなり移動する金属イオンを捕捉固定することで、高温多湿条件下であっても、感光性樹脂組成物の硬化物中におけるイオンマイグレーション現象を防止する。イオンマイグレーション現象が防止されることで、例えば、本発明の感光性樹脂組成物をプリント配線板のソルダーレジスト膜に使用すると、ソルダーレジスト膜に起因する電極間のショートを防止できる。
【0055】
無機イオン交換体の種類は、特に限定されず、陰イオン交換タイプ、陽イオン交換タイプ、両イオン交換タイプ等が挙げられる。また、無機イオン交換体としては、例えば、Zr系、Sb系、Bi系、Bi-Sb系、Mg-Al系、Zr-Bi系等が挙げられる。
【0056】
無機イオン交換体には、例えば、陽イオン交換体としては、「IXE-100」、「IXE-300」(以上、東亞合成株式会社)、陰イオン交換体としては、「IXE-500」、「IXE-530」、「IXE-550」、「IXE-700」、「IXE-700F」、「IXE-800」(以上、東亞合成株式会社)、両イオン交換体としては、「IXE-600」、「IXE-633」、「IXE-6107」、「IXE-6136」、「IXEPLUS-A1」、「IXEPLUS-A2」、「IXEPLUS-B1」(以上、東亞合成株式会社)等を挙げることができる。これらの無機イオン交換体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
無機イオン交換体は、添加量を抑制して感光性樹脂組成物の塗工性の低下を防止する点から、カチオンの交換容量がNaイオン換算で0.2meq/g以上、アニオン交換容量がClイオン換算で0.2meq/g以上が好ましく、イオン捕捉の点からカチオンの交換容量がNaイオン換算で0.5meq/g以下、アニオン交換容量がClイオン換算で0.5meq/g以下が好ましい。
【0058】
無機イオン交換体の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、イオンマイグレーション現象を確実に防止する点から、0.1質量部が好ましく、イオンマイグレーションによる変色を防止する点から、0.5質量部が特に好ましい。一方で、無機イオン交換体の配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、感光性樹脂組成物の粘度の上昇を防止して、塗工性を確実に付与する点から、10質量部が好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0059】
難燃剤
難燃剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に難燃性を付与するための成分である。感光性樹脂組成物に難燃剤が配合されることで、プリント配線板等に搭載される電子部品等の発熱量が増大しても、感光性樹脂組成物の硬化物である絶縁保護膜の燃焼を防止して、安全性を向上させることができる。難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらのリン系の難燃剤のうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。
【0060】
難燃剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、光硬化物に優れた難燃性を確実に付与する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部が好ましく、10質量部が特に好ましい。一方で、難燃剤の配合量の上限値は、感光性樹脂組成物の塗工性と光硬化物の柔軟性を確実に得る点から、50質量部が好ましく、30質量部が特に好ましい。
【0061】
添加剤
添加剤としては、消泡剤、硬化促進剤、カップリング剤などが挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、メルカプトベンズオキサゾール、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等が挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミナ系等が挙げられる。
【0062】
非反応性希釈剤
非反応性希釈剤は、必要に応じて、感光性樹脂組成物の乾燥性、塗工性を調節するために配合する成分である。非反応性希釈剤には、例えば、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、石油ナフサ等を挙げることができる。これらの非反応性希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、一般的に使用される混練手段または混合手段にて製造することができる。具体的には、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(例えば、10℃~30℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混合、混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して、本発明の感光性樹脂組成物を製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合を行ってもよい。
【0064】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、フレキシブルプリント配線板等のプリント配線板に感光性樹脂組成物を塗工して、プリント配線板の絶縁保護膜であるソルダーレジスト膜を形成する方法について説明する。上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、スプレー塗工、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法等、公知の塗工方法にて、所望の厚さで塗布して塗膜を形成する。次に、必要に応じて、非反応性希釈剤を揮散させるために、70~120℃程度の温度で1~30分間程度加熱する予備乾燥を行って、タックフリーの塗膜を形成する。次に、塗膜上に回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300~400nmの範囲)を照射させて塗膜を光硬化させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域の塗膜を希アルカリ水溶液で除去することにより現像する。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が挙げられる。希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に、目的とするパターンを有するソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0065】
また、所定のパターンを有するネガフィルムを塗膜上に密着させて紫外線を照射させて塗膜を光硬化する上記方法に代えて、ネガフィルムを用いずに、直描露光機にて、塗膜上に、所定のパターンに紫外線を直描することで塗膜を光硬化してもよい。
【実施例
【0066】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1~4、比較例1
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温(25℃)にて混合分散させて、実施例1~4、比較例1にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0068】
なお、下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・KAYARAD ZCR-1601H:固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社。
・KAYARAD ZCR-1601Hは、エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、エポキシアクリレートの生成した水酸基に多塩基酸を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシアクリレート樹脂である。
【0069】
(B)ブロックイソシアネート
・デュラネートSBN‐70D:イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、旭化成株式会社。
・デュラネートSBB‐70P:ビウレット型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、旭化成株式会社。
・デュラネート17B‐60P:ビウレット型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、旭化成株式会社。
【0070】
(C)光重合開始剤
・Omnirad379:α―アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、IGM Resins B.V.社。
・NCI-831:オキシムエステル系光重合開始剤、株式会社ADEKA。
【0071】
(D)反応性希釈剤
・DPCA-60:日本化薬株式会社。
【0072】
エポキシ化合物
・TECHMORE VG3101L:3官能の芳香族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、株式会社プリンテック。
【0073】
着色剤
・PEP-NTK959 BLACK:黒色着色剤、トーヨーカラー株式会社。
・OP-9144Aブルー:青色着色剤、トーヨーカラー株式会社。
無機イオン交換体
・IXE-100:Zr系陽イオン交換体、東亞合成株式会社。
【0074】
(E)有機フィラー
・RHC-730:ウレタンビーズ、大日精化株式会社。
【0075】
難燃剤
・OP935-F:有機リン酸塩、クラリアントジャパン株式会社。
消泡剤
・X-50-1095C:シリコーン系、信越化学工業株式会社。
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社。
【0076】
試験サンプル作製工程
調製した感光性樹脂組成物を用いて以下のように試験サンプルを作製した。
基板:フレキシブルプリント配線板(ポリイミドフィルム、「ESPANEX」(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)、フィルム厚25μm、導体(Cu箔)厚12.5μm)
なお、誘電特性の評価には、ポリテトラフルオロエチレン(テフロンUSLフィルムテープ、厚さ0.1mm)を使用。
基板表面処理:5質量%の硫酸水溶液にての酸処理
塗工方法:スクリーン印刷
Wet膜厚:30μm
予備乾燥:80℃、20分(炉内25分)
露光:直描露光(直描露光機「DilMPACTMms604」(オーク株式会社))にて100mJ/cm2
アルカリ現像:1質量%の炭酸ナトリウム水溶液、30℃、60秒、スプレー圧0.2MPa
ポストキュア:BOX炉、140℃、60分
【0077】
評価・測定項目は以下の通りである。
(1)誘電特性
試験サンプル作製工程にて作製した試験サンプルについて、ポリテトラフルオロエチレン基板から硬化塗膜を取り出し、2mmの短冊形に裁断した。2mmの短冊形に裁断した硬化塗膜について、誘電率測定システム(型番:N5063A、販売元:日本電計株式会社、キーサイトテクノロジー、EMラボ株式会社)を用い、空洞共振法にて、誘電率及び誘電正接(10GHz)を3回測定して、その平均値を算出し、以下のように評価した。
誘電率の評価
○:2.5未満
△:2.5以上3.0未満
×:3.0以上
誘電正接の評価
○:0.015未満
△:0.015以上0.021未満
×:0.021以上
【0078】
(2)柔軟性
試験サンプル作製工程にて作製した試験サンプルを2.5cm幅に切り、硬化塗膜が外側になる状態で、5秒間の500g加重にて、はぜ折り試験により折り曲げを行った後、フラットに戻すサイクルを繰り返し、その際の硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生したかどうかを以下のように評価した。
○:10回の折り曲げにて塗膜に異常なし
△:5~9回目の折り曲げでクラック発生
×:1~4回目の折り曲げでクラック発生
【0079】
(3)現像性
感光性樹脂組成物をスクリーン印刷した基板を80℃、40分にて予備乾燥後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃、スプレー圧0.2MPaの条件にて現像し、現像開始から下地の銅箔が見えるまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。
○:30秒未満
△:30秒以上120秒未満
×:120秒以上
【0080】
実施例1~4、比較例1の評価結果を下記表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
上記表1に示すように、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロックイソシアネートと、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、を含有し、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、エポキシ化合物の含有量が60質量部以下である実施例1~4では、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができた。特に、実施例1、4から、エポキシ化合物が配合されていない実施例1は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してエポキシ化合物が約55質量部配合されている実施例4と比較して、誘電率と誘電正接がさらに低下した。
【0083】
また、実施例1と実施例2、3から、ブロックイソシアネートがイソシアヌレート型ポリイソシアネートである実施例1は、ブロックイソシアネートがビウレット型ポリイソシアネートである実施例2、3と比較して、誘電率と誘電正接がさらに低下した。
【0084】
一方で、硬化剤として、エポキシ化合物を配合し、ブロックイソシアネートを使用しなかった比較例1では、誘電率と誘電正接が高くなり、低誘電材料とすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、柔軟性、現像性等の基本特性を損なうことなく、低誘電率と低誘電正接を有する硬化塗膜を得ることができるので、狭小空間に設置され、高速・大容量通信に使用されるプリント配線板の分野で、特に利用価値が高い。