(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】管の本数計測方法及び本数計測装置
(51)【国際特許分類】
G06M 11/00 20060101AFI20240216BHJP
G06M 9/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G06M11/00 D
G06M9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021167420
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】522502680
【氏名又は名称】日鉄鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 繁俊
(72)【発明者】
【氏名】玉置 瑞基
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-22395(JP,A)
【文献】特開2017-173992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 7/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の被計測管の本数を計測する方法であって、
前記複数本の被計測管から構成される被計測管束の端面を撮像して撮像画像を生成する撮像画像生成工程と、
前記被計測管の公称外径及び公称肉厚に基づき作成したテンプレート画像と、前記撮像画像生成工程で生成した前記撮像画像とをパターンマッチングして、前記撮像画像を構成する複数の画素領域の前記テンプレート画像に対する一致率を算出するパターンマッチング工程と、
前記被計測管束の縦寸法を前記被計測管束の横寸法で除算した前記被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定し、前記複数の画素領域のうち、前記パターンマッチング工程で算出された前記一致率が前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出する本数算出工程と、を有する、
ことを特徴とする管の本数計測方法。
【請求項2】
前記ラック内に長手方向が水平となるように載置された複数本の管から構成される管束であって、前記複数本の管の公称外径が異なる複数の前記管束を用いて、前記管束の縦横比と、前記管の公称外径との関係である第1関係を予め算出する第1関係算出工程を更に有し、
前記本数算出工程において、前記被計測管の公称外径と、前記第1関係算出工程で算出した前記第1関係とを用いて、前記被計測管束の縦横比を推定し、前記推定した前記被計測管束の縦横比に基づいて前記しきい値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管の本数計測方法。
【請求項3】
前記ラック内に長手方向が水平となるように載置された複数本の管から構成される管束であって、前記複数本の管の公称外径及び公称肉厚が異なる複数の前記管束を用いて、前記管束の縦横比を前記管の肉厚で除算して算出されるパラメータと、前記一致率との関係である第2関係を予め算出する第2関係算出工程を更に有し、
前記本数算出工程において、前記被計測管束の縦横比を前記被計測管の肉厚で除算して算出される評価対象パラメータと、前記第2関係算出工程で算出した前記第2関係とを用いて、前記しきい値を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の管の本数計測方法。
【請求項4】
前記第2関係算出工程で前記パラメータを算出する際に、前記管の肉厚として、前記管の公称肉厚から面取りによる減肉量を減算した値である面取り後肉厚を用い、
前記本数算出工程で前記評価対象パラメータを算出する際に、前記被計測管の肉厚として、前記被計測管の公称肉厚から面取りによる減肉量を減算した値である面取り後肉厚を用いる、
ことを特徴とする請求項3に記載の管の本数計測方法。
【請求項5】
前記第2関係算出工程において、前記撮像画像を構成する前記複数の画素領域の位置に応じた前記一致率のバラツキと、前記第2関係における前記一致率の算出誤差とを考慮して、補正量を決定し、
前記本数算出工程において、前記評価対象パラメータと前記第2関係とを用いて決定した前記しきい値を前記補正量に基づいて補正し、前記一致率が補正後の前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の管の本数計測方法。
【請求項6】
前記被計測管束が、前記ラック内に架設され、上下方向に位置変動可能なスリング上に積載されている、
ことを特徴とする請求項1から5に記載の管の本数計測方法。
【請求項7】
前記被計測管が電縫鋼管である、
ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の管の本数計測方法。
【請求項8】
ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の被計測管の本数を計測する装置であって、
前記複数本の被計測管から構成される被計測管束の端面を撮像して撮像画像を生成する撮像手段と、
前記撮像手段で生成された前記撮像画像を用いて、前記複数本の被計測管の本数を算出する演算処理手段と、を備え、
前記演算処理手段は、
前記被計測管の公称外径及び公称肉厚に基づき作成されたテンプレート画像と、前記撮像手段で生成された前記撮像画像とをパターンマッチングして、前記撮像画像を構成する複数の画素領域の前記テンプレート画像に対する一致率を算出するパターンマッチング工程と、
前記被計測管束の縦寸法を前記被計測管束の横寸法で除算した前記被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定し、前記複数の画素領域のうち、前記パターンマッチング工程で算出された前記一致率が前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出する本数算出工程と、を実行する、
ことを特徴とする管の本数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の管の本数を精度良く計測する本数計測方法及び本数計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管(電気抵抗溶接鋼管、ERW鋼管ともいう)は、公知のように、造管ラインにおいて、コイルから巻き出された薄板をロールで管状に成形し、管状に成形された薄板の端部同士を電気抵抗溶接することで製造される。この電気抵抗溶接は、高周波電力が印加されたインダクションコイルを用いて、薄板の端部に渦電流を生成し、この渦電流によって加熱(誘導加熱)された薄板の端部をロールで圧接する方法である。
そして、造管ラインにおいて、溶接後の長尺の鋼管は、製品に要求される所定の長さ毎に切断される。
【0003】
造管ラインで切断された鋼管は、横送り搬送されながら、端面が面取りされ、表面検査された後、ラック内に自然落下して長手方向が水平となるように積載される。具体的には、ラック内には、上下方向に位置変動可能なスリングが架設されており、鋼管はこのスリング上に積載される。ラック内に積載された鋼管の本数に応じて、スリングを上下方向に位置変動させる(本数が少ない場合は上方に位置させ、本数が増えるに従って下方に位置させる)ことで、自然落下時の鋼管の疵発生を防止している。
【0004】
ラック内に積載された鋼管は、クレーンでラック外に搬送され、防錆塗油された後、予め決められた本数(予定本数)の鋼管が結束された状態で出荷される。
クレーンによる鋼管の搬送回数を低減して作業効率を高めるには、一度に搬送する鋼管の本数は、できるだけ多い方が望ましいため、クレーンの搬送能力の最大値付近で決定されている。このため、ラック内に積載される鋼管の本数も多く、例えば、小径(外径10mm~60mm程度)の鋼管の場合、ラック内に数百本が積載されている。そして、数百本の鋼管がクレーンでラック外に一度に搬送され、結束されて出荷される。
【0005】
ここで、出荷前には、結束される鋼管の本数が予定本数に合致されているか否かを検査する必要がある。しかしながら、ラック内に積載された状態の数百本の鋼管の本数を検査員が手動で計測することは困難である。
【0006】
例えば、特許文献1、2には、結束後の鋼管の本数を自動計測する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1、2にも記載のように、結束後の鋼管の本数を自動計測する方法では、結束後の鋼管の束の断面形状を六角形状とするのが一般的である。前述の小径の鋼管のように、数百本もの多数本の鋼管を、束の断面形状が六角形状となるように結束することは困難であるため、特許文献1、2に記載の方法を用いて、結束後の多数本の鋼管の本数を計測することは現実的ではない。
また、結束後の鋼管の本数が予定本数に合致しなかった場合、いったん結束を解いて、正しい本数の鋼管を結束し直す必要があるため、特に、多数本の鋼管を結束する場合には、結束の解除・再結束の手間をなくすため、結束前に鋼管の本数を計測することが望ましい。
したがって、ラック内に積載された結束前の状態で多数本の鋼管の本数を自動計測することが望まれている。
【0007】
特許文献3、4にも鋼管の本数を自動計測する方法が提案されているものの、ラック内に積載された状態で多数本の鋼管の本数を自動計測可能な方法ではない。
【0008】
なお、上記の説明では、管として電縫鋼管を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限るものではなく、ラック内に積載された状態で複数本の管の本数を精度良く計測することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-239105号公報
【文献】特開2013-246749号公報
【文献】特開平10-269337号公報
【文献】特開2015-43124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の管の本数を精度良く計測する本数計測方法及び本数計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行い、パターンマッチング(テンプレートマッチング)法を適用することに着眼した。具体的には、複数本の被計測管から構成される被計測管束の端面を撮像して撮像画像を生成し、この撮像画像と、被計測管の公称外径及び公称肉厚に基づき作成したテンプレート画像とをパターンマッチングして、撮像画像を構成する複数の画素領域のテンプレート画像に対する一致率を算出し、この一致率が所定のしきい値以上である画素領域の数を、被計測管束を構成する複数本の被計測管の本数として算出する方法を検討した。
しかしながら、上記のしきい値を高く設定しすぎると、カウントされない被計測管が生じて、算出した本数が実際の本数よりも少なくなり(すなわち、未検出となる)、逆に、しきい値を低く設定しすぎると、実際には被計測管の存在しない被計測管と被計測管との隙間も被計測管としてカウントされて、算出した本数が実際の本数よりも多くなる(すなわち、過検出となる)という問題があり、適切なしきい値の設定を手動で行うのが困難であるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、被計測管束の縦寸法(積載された複数本の被計測管のうち、最も上側に位置する被計測管と、最も下側に位置する被計測管との上下方向の距離)を、被計測管束の横寸法(積載された複数本の被計測管のうち、最も左側に位置する被計測管と、最も右側に位置する被計測管との左右方向の距離)で除算した被計測管束の縦横比と、撮像画像における被計測管に対応する画素領域の一致率とが良好な相関関係を有することを見出した。このため、被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定すれば、被計測管束を構成する複数本の被計測管の本数を適切に算出できることが分かった。
【0013】
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の被計測管の本数を計測する方法であって、前記複数本の被計測管から構成される被計測管束の端面を撮像して撮像画像を生成する撮像画像生成工程と、前記被計測管の公称外径及び公称肉厚に基づき作成したテンプレート画像と、前記撮像画像生成工程で生成した前記撮像画像とをパターンマッチングして、前記撮像画像を構成する複数の画素領域の前記テンプレート画像に対する一致率を算出するパターンマッチング工程と、前記被計測管束の縦寸法を前記被計測管束の横寸法で除算した前記被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定し、前記複数の画素領域のうち、前記パターンマッチング工程で算出された前記一致率が前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出する本数算出工程と、を有する、ことを特徴とする管の本数計測方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、本数算出工程において、被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定し、撮像画像を構成する複数の画素領域のうち、パターンマッチング工程で算出された一致率がしきい値以上である画素領域の数を、被計測管束を構成する複数本の被計測管の本数として算出するため、本発明者らの知見の通り、被計測管の本数を適切に算出可能である。
【0015】
本発明において、被計測管束の縦横比は、撮像画像生成工程で生成した撮像画像を画像処理して算出することも可能である。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、ラック内に載置された管束の縦横比と管の公称外径とは、良好な相関関係を有する。このため、撮像画像を画像処理して被計測管束の縦横比をその都度算出しなくても、予め把握できる被計測管の公称外径に上記の相関関係を適用すれば、被計測管束の縦横比を推定可能である。
すなわち、本発明において、好ましくは、前記ラック内に長手方向が水平となるように載置された複数本の管から構成される管束であって、前記複数本の管の公称外径が異なる複数の前記管束を用いて、前記管束の縦横比と、前記管の公称外径との関係である第1関係を予め算出する第1関係算出工程を更に有し、前記本数算出工程において、前記被計測管の公称外径と、前記第1関係算出工程で算出した前記第1関係とを用いて、前記被計測管束の縦横比を推定し、前記推定した前記被計測管束の縦横比に基づいて前記しきい値を決定する。
上記の好ましい方法によれば、第1関係(ラック内に載置された管束の縦横比と管の公称外径との相関関係)を予め算出しておけば、被計測管束の縦横比をその都度画像処理して算出する必要がなく、しきい値を効率良く決定でき、ひいては被計測管の本数を効率良く算出可能である。
【0016】
前述のように、本発明者らの知見によれば、被計測管束の縦横比と、撮像画像における被計測管に対応する画素領域の一致率とが良好な相関関係を有する。具体的には、例えば、ラック内に載置された管束の縦横比を管の肉厚で除算して算出されるパラメータと、撮像画像における管に対応する画素領域の一致率とが良好な相関関係を有する。
したがって、本発明において、好ましくは、前記ラック内に長手方向が水平となるように載置された複数本の管から構成される管束であって、前記複数本の管の公称外径及び公称肉厚が異なる複数の前記管束を用いて、前記管束の縦横比を前記管の肉厚で除算して算出されるパラメータと、前記一致率との関係である第2関係を予め算出する第2関係算出工程を更に有し、前記本数算出工程において、前記被計測管束の縦横比を前記被計測管の肉厚で除算して算出される評価対象パラメータと、前記第2関係算出工程で算出した前記第2関係とを用いて、前記しきい値を決定する。
上記の好ましい方法によれば、第2関係(管束の縦横比を管の肉厚で除算して算出されるパラメータと一致率との相関関係)を予め算出しておけば、被計測管束の縦横比を被計測管の肉厚で除算して算出される評価対象パラメータと、第2関係とを用いて、しきい値を適切に決定でき、ひいては被計測管の本数を精度良く算出可能である。
【0017】
上記の好ましい方法において、第2関係算出工程でパラメータを算出する際に、管の肉厚として公称肉厚を用いることも可能である。
しかしながら、管が電縫鋼管である場合等には、端面が面取りされるため、撮像画像における管の肉厚は公称肉厚よりも小さくなっていると考えられる。このため、精度の良い(相関係数の高い)第2関係を算出するには、面取り後の肉厚を用いることが好ましい。
すなわち、上記の好ましい方法において、前記第2関係算出工程で前記パラメータを算出する際に、前記管の肉厚として、前記管の公称肉厚から面取りによる減肉量を減算した値である面取り後肉厚を用い、前記本数算出工程で前記評価対象パラメータを算出する際に、前記被計測管の肉厚として、前記被計測管の公称肉厚から面取りによる減肉量を減算した値である面取り後肉厚を用いることが、より好ましい。
なお、減肉量とは、管を切断した後の端面(内面側及び外面側)の面取りによって、端面(切断面)に対して傾斜する部位の長さを意味する。
【0018】
また、上記の好ましい方法において、より一層適切なしきい値を得るには、撮像画像を構成する複数の画素領域の位置に応じた一致率のバラツキと、第2関係における一致率の算出誤差とを考慮して、決定したしきい値を補正することが好ましい。
すなわち、上記の好ましい方法において、前記第2関係算出工程において、前記撮像画像を構成する前記複数の画素領域の位置に応じた前記一致率のバラツキと、前記第2関係における前記一致率の算出誤差とを考慮して、補正量を決定し、前記本数算出工程において、前記評価対象パラメータと前記第2関係とを用いて決定した前記しきい値を前記補正量に基づいて補正し、前記一致率が補正後の前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出することが、より好ましい。
【0019】
本発明は、前記被計測管束が、前記ラック内に架設され、上下方向に位置変動可能なスリング上に積載されている場合に、特に有効である。
【0020】
また、本発明は、前記被計測管が電縫鋼管である場合に、特に有効である。
【0021】
また、前記課題を解決するため、本発明は、ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の被計測管の本数を計測する装置であって、前記複数本の被計測管から構成される被計測管束の端面を撮像して撮像画像を生成する撮像手段と、前記撮像手段で生成された前記撮像画像を用いて、前記複数本の被計測管の本数を算出する演算処理手段と、を備え、前記演算処理手段は、前記被計測管の公称外径及び公称肉厚に基づき作成されたテンプレート画像と、前記撮像手段で生成された前記撮像画像とをパターンマッチングして、前記撮像画像を構成する複数の画素領域の前記テンプレート画像に対する一致率を算出するパターンマッチング工程と、前記被計測管束の縦寸法を前記被計測管束の横寸法で除算した前記被計測管束の縦横比に基づいてしきい値を決定し、前記複数の画素領域のうち、前記パターンマッチング工程で算出された前記一致率が前記しきい値以上である画素領域の数を、前記被計測管束を構成する前記複数本の被計測管の本数として算出する本数算出工程と、を実行する、ことを特徴とする管の本数計測装置としても提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ラック内に長手方向が水平となるように積載された複数本の管の本数を精度良く計測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る本数計測装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す撮像手段1によって生成される撮像画像の例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る本数計測方法の概略手順を示すフロー図である。
【
図4】
図3に示す第1関係算出工程ST11で算出される第1関係の一例を示す図である。
【
図5】
図3に示す第2関係算出工程ST12で第2関係を算出するのに用いられる一致率の算出方法を説明する説明図である。
【
図6】
図3に示す第2関係算出工程ST12で第2関係を算出するのに用いられる一致率の算出位置の一例を模式的に説明する説明図である。
【
図7】
図3に示す第2関係算出工程ST12で算出される第2関係の一例を示す図である。
【
図8】第2関係算出工程ST12で算出される第2関係の他の例を示す図である。
【
図9】第2関係算出工程ST12で算出される、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の面取り後肉厚T1で除算して算出されるパラメータと、総合誤差σとの関係の一例を示す図である。
【
図10】
図8(b)に示す第2関係を用いて、補正前のしきい値Th’を決定する手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る管の本数計測装置及びこれを用いた管の本数計測方法について、被計測管が電縫鋼管である場合を例に挙げて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る本数計測装置の概略構成を模式的に示す図である。
図1(a)は、本数計測装置の平面図である。
図1(b)は、本数計測装置の設置場所の状況を説明する正面図である。
図1(a)では、表面検査テーブルの図示を省略している。
図1(b)では、本数計測装置の図示を省略している。
図1に示すX方向は被計測管の長手方向に直交する水平方向であり、Y方向は上下方向であり、Z方向は被計測管の長手方向である。他の図についても同様である。なお、
図1に示す構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。他の図についても同様である。
図1に示すように、本実施形態に係る本数計測装置100は、断面コ字状のラックR内に長手方向(Z方向)が水平となるように積載された複数本の被計測管Pの本数を計測する装置である。
図1(a)に示すように、本数計測装置100は、撮像手段1と、演算処理手段2と、を備えている。また、本実施形態に係る本数計測装置100は、照明手段3と、制御手段4と、を更に備えている。
【0026】
図1(b)に示すように、本実施形態の被計測管Pは、面取り機(図示省略)によって端面が面取りされた後、表面検査テーブルTで横送り搬送(長手方向に直交するX方向に搬送)されながら、表面検査される。表面検査が終了した被計測管Pは、表面検査テーブルTの端から自然落下して、ラックR内に積載される。ラックRは、X方向の端部が開口しているため、撮像手段1の撮像視野がラックRで遮られることなく、撮像手段1で被計測管Pの端面を撮像可能である。
ラックR内には、帯状の樹脂から形成されたスリングSが架設されている。本実施形態では、X方向に架設されたスリングSがZ方向に複数(
図1(a)に示す例では、3つ)配置されている。被計測管PはこのスリングS上に積載される。スリングSは、上下方向に位置変動可能である。具体的には、スリングSのX方向の一端が固定され、他端がモータ駆動機構(図示せず)に連結されており、モータ駆動機構を駆動することで、スリングSのラックR内に位置する部分の長さが可変になっている。このスリングSの長さを伸ばせば、スリングSの位置(スリングSのX方向の中間位置)が下方に変動し、スリングSの長さを縮めれば、スリングSの位置(スリングSのX方向の中間位置)は上方に変動する。ラックR内に積載された被計測管Pの本数が少ない場合にはスリングSを上方に位置させ、本数が増えるに従って下方に位置させることで、自然落下時の被計測管Pの疵発生を防止している。
【0027】
撮像手段1は、複数本の被計測管Pから構成される被計測管束PBの端面を撮像して撮像画像を生成する。撮像手段1は、被計測管束PBの端面に正対し(すなわち、撮像手段1の視線方向がZ方向であり)、その視線が、X方向についてはラックRの中心付近を通り、Y方向についてはスリングSのX方向両端付近を通るように、配置されている。撮像手段1の撮像倍率(撮像手段1が具備するレンズ系の倍率)は、被計測管束PBの端面全体が撮像視野内に入るように設定されている。撮像手段1の撮像素子としては、CMOSやCCDが用いられる。
【0028】
照明手段3は、被計測管束PBの端面に対向して、被計測管束PBの端面を照明するように配置されている。照明手段3としては、ハロゲンランプ等の公知の光源が用いられる。
図1(a)に示す例では、撮像手段1を挟んで、一対の照明手段3がX方向に並置されているが、これに限るものではなく、被計測管束PBの端面の照度ができるだけ均一になるように、適切な個数や光軸の傾きを設定すればよい。
【0029】
制御手段4は、撮像手段1及び照明手段3に電気的に接続されており、撮像手段1及び照明手段3の動作を制御する機能を有する。具体的には、例えば、制御手段4には、動作開始のスイッチが設けられており、検査員がこのスイッチを押すことで、撮像手段1及び照明手段3の双方に動作開始の制御信号が送信される。これにより、照明手段3が被計測管束PBの端面を照明すると同時に、撮像手段1が被計測管束PBの端面を撮像して撮像画像を生成する。生成される撮像画像は、被計測管束PBの端面に相当する画素領域が他の画素領域よりも明るいものとなる。
【0030】
図2は、撮像手段1によって生成される撮像画像の例(具体的には、撮像画像の一部であり、被計測管束PBの端面が存在する画素領域を切り取ったもの)を示す図である。
図2(a)は、公称外径OD0=10mm、公称肉厚T0=1.5mmの500本の被計測管Pから構成される被計測管束PBの撮像画像である。
図2(b)は、公称外径OD0=17.3mm、公称肉厚T0=2.96mmの250本の被計測管Pから構成される被計測管束PBの撮像画像である。
図2(c)は、公称外径OD0=22.2mm、公称肉厚T0=2.58mmの250本の被計測管Pから構成される被計測管束PBの撮像画像である。なお、
図2では、被計測管Pに相当する略円形の画素領域の内部に、「□」及び数字が表示されているが、これは後述の演算処理手段2での演算処理において被計測管Pをカウントした結果(具体的には、
図2に表示される数字は、同様の撮像画像を後述の第2関係算出工程ST12で用いる場合の各管P’の一致率(%)を意味し、画素領域A1~A5に存在する各管P’の一致率を用いて、各画素領域A1~A5の一致率が算出される)が表示されているものであり、実際の撮像画像には存在しない。
図2(a)に示す撮像画像では、被計測管束PBの縦寸法V(積載された複数本の被計測管Pのうち、最も上側に位置する被計測管Pと、最も下側に位置する被計測管Pとの上下方向(Y方向)の距離)を、被計測管束PBの横寸法H(積載された複数本の被計測管Pのうち、最も左側に位置する被計測管Pと、最も右側に位置する被計測管Pとの左右方向(X方向)の距離)で除算した被計測管束PBの縦横比VH
rate(=V/H)は、0.35であった。
図2(b)に示す撮像画像では、被計測管束PBの縦横比VH
rateは、0.4であり、
図2(c)に示す撮像画像では、被計測管束PBの縦横比VH
rateは、0.59であった。
このように、被計測管Pの公称外径OD0が大きくなるほど、被計測管束PBの縦横比VH
rateも大きくなることが分かった。
【0031】
演算処理手段2には、撮像手段1で生成された撮像画像が、制御手段4を介して入力される。そして、演算処理手段2は、この撮像画像を用いて、後述のパターンマッチング工程ST3及び本数算出工程ST4を実行することで、複数本の被計測管Pの本数を算出する。演算処理手段2は、例えば、各工程ST3、ST4を実行するためのプログラムがインストールされたコンピュータから構成される。
【0032】
なお、本実施形態では、本数計測装置100が照明手段3を備える構成について説明したが、本発明は必ずしもこれに限るものではない。本数計測装置100の設置環境によっては、被計測管束PBの端面に相当する画素領域が他の画素領域よりも明るい撮像画像が生成される限りにおいて、照明手段3を備えない構成を採用することも可能である。
また、本実施形態では、本数計測装置100が制御手段4を備える構成について説明したが、本発明は必ずしもこれに限るものではない。例えば、制御手段4を備えることなく、撮像手段1及び照明手段3を常時動作させる構成を採用することも可能である。この場合には、撮像手段1は演算処理手段2に直接接続され、撮像手段1で生成された撮像画像が、演算処理手段2に直接入力される。
【0033】
以下、上記の構成を有する本数計測装置100を用いた本数計測方法について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る本数計測方法の概略手順を示すフロー図である。
図3に示すように、本実施形態に係る本数計測方法は、第1関係算出工程ST11及び第2関係算出工程ST12を有する準備工程ST1と、撮像画像生成工程ST2と、パターンマッチング工程ST3と、本数算出工程ST4と、を有する。以下、各工程ST1~ST4について、順に説明する。
【0034】
<準備工程ST1>
準備工程ST1では、被計測管束PBを構成する複数本の被計測管Pの本数を計測するのに先立ち、被計測管束PBとは別の管束PB’を用いて、予め、第1関係を算出する(第1関係算出工程ST11)と共に、第2関係を算出する(第2関係算出工程ST12)。
【0035】
[第1関係算出工程ST11]
第1関係算出工程ST11では、被計測管束PBと同様に、ラックR内に長手方向(Z方向)が水平となるように載置された複数本の管P’から構成される管束PB’であって、複数本の管P’の公称外径OD0が異なる複数の管束PB’を用いて、それぞれ撮像手段1で管束PB’の端面を撮像して撮像画像を生成する。すなわち、ある公称外径OD0を有する複数本の管P’から構成される管束PB’の端面の撮像画像を生成し、これとは別の公称外径OD0を有する複数本の管P’から構成される管束PB’の端面の撮像画像を生成する。これを異なる公称外径OD0の数だけ繰り返す。これにより、異なる公称外径OD0の数に応じた複数の撮像画像が生成される。
なお、同じ公称外径OD0を有する別の複数本の管P’から構成される別の管束PB’の端面の撮像画像を生成して(すなわち、同じ公称外径OD0に対応する複数の撮像画像を生成して)、これを第1関係を算出するのに併せて用いてもよい。
そして、生成した複数の撮像画像に基づき、管束PB’の縦横比VHrateと、管P’の公称外径OD0との関係である第1関係を算出する。
【0036】
図4は、第1関係算出工程ST11で算出される第1関係の一例を示す図である。
図4において、「○」でプロットした点が、管P’の公称外径OD0を横軸座標とし、各公称外径OD0に対応する撮像画像に基づいて算出した管束PB’の縦横比VH
rateを縦軸座標とするデータ点である。
図4に点線で示す直線が、各データ点を用いて最小二乗法で算出した近似直線である。この近似直線が第1関係とされ、演算処理手段2に記憶される。
図4から分かるように、管P’の公称外径OD0が大きくなるほど、管束PB’の縦横比VH
rateも大きくなっている。
なお、本実施形態では、各データ点を用いて最小二乗法で算出した近似直線を第1関係として算出しているが、本発明はこれに限るものではない。最小二乗法以外の近似演算法を用いてもよいし、2次関数等の近似曲線を第1関係として算出してもよい。
【0037】
[第2関係算出工程ST12]
第2関係算出工程ST12では、被計測管束PBと同様に、ラックR内に長手方向(Z方向)が水平となるように載置された複数本の管P’から構成される管束PB’であって、複数本の管P’の公称外径OD0及び公称肉厚T0が異なる複数の管束PB’を用いて、それぞれ撮像手段1で管束PB’の端面を撮像して撮像画像を生成する。すなわち、ある公称外径OD0及び公称肉厚T0を有する複数本の管P’から構成される管束PB’の端面の撮像画像を生成し、これとは別の公称外径OD0及び公称肉厚T0を有する複数本の管P’から構成される管束PB’の端面の撮像画像を生成する。これを異なる公称外径OD0及び公称肉厚T0の数だけ繰り返す。これにより、異なる公称外径OD0及び公称肉厚T0の数に応じた複数の撮像画像が生成される。
なお、同じ公称外径OD0及び公称肉厚T0を有する別の複数本の管P’から構成される別の管束PB’の端面の撮像画像を生成して(すなわち、同じ公称外径OD0及び公称肉厚T0に対応する複数の撮像画像を生成して)、これを第2関係を算出するのに併せて用いてもよい。また、第1関係算出工程ST11で用いた複数の撮像画像に、異なる公称肉厚T0に対応する撮像画像が含まれるのであれば、第1関係算出工程ST11で用いた複数の撮像画像をそのまま第2関係算出工程ST12で用いることも可能である。
そして、生成した複数の撮像画像に基づき、管束PBの縦横比VHrateを管Pの肉厚で除算して算出されるパラメータと、一致率(撮像画像を構成する複数の画素領域のテンプレート画像に対する一致率)との関係である第2関係を算出する。
【0038】
以下、一致率の算出方法について説明する。
図5は、第2関係を算出するのに用いられる一致率の算出方法を説明する説明図である。
図5(a)は、撮像画像を2値化して得られる2値化画像を模式的に示す図である。2値化画像において、理想的には、2値化によって抽出される管P’の端面に相当する画素領域は白(8bitの場合、255の画素値)となり、管P’の端面以外の画素領域は黒(8bitの場合、0の画素値)となる。
図5(b)は、テンプレート画像を模式的に示す図である。テンプレート画像T
IMGは、管P’の公称外径OD0及び公称肉厚T0に基づき作成される。具体的には、テンプレート画像T
IMGは、公称外径OD0に相当する外径(公称外径OD0に撮像手段1の撮像倍率を乗算した外径)を有する真円と、公称外径OD0-公称肉厚T0×2に相当する外径(公称外径OD0-公称肉厚T0×2に撮像手段1の撮像倍率を乗算した外径)を有する真円との間に位置する画素領域が白(8bitの場合、255の画素値)で、それ以外の画素領域が黒(8bitの場合、0の画素値)の画像である。
そして、
図5(b)に示すテンプレート画像T
IMGと、
図5(a)に示す2値化画像とをパターンマッチング(テンプレートマッチング)して、2値化画像を構成する複数の画素領域のテンプレート画像T
IMGに対する一致率を算出する。具体的には、2値化画像上でテンプレート画像T
IMGをX方向及びY方向に所定のピッチ(例えば、1画素ピッチ)で順次走査し、テンプレート画像T
IMGが位置する2値化画像の画素領域において、テンプレート画像T
IMGの白い画素の位置と、2値化画像の画素領域の白い画素の位置とが一致する割合を、一致率として算出する。すなわち、テンプレート画像T
IMGの白い画素の総数をMとし、一致する画素の数をNとすると、一致率は、以下の式(1)で算出される。
一致率=N/M×100[%] ・・・(1)
【0039】
例えば、
図5(c)に示すように、テンプレート画像T
IMGが2値化画像の画素領域PA1(
図5(a)参照)上に位置する場合、2値化画像の画素領域PA1には黒い画素しか存在しないため、テンプレート画像T
IMGの白い画素に一致する2値化画像の画素領域PA1の白い画素は存在しない。このため、一致率は0%となる。
これに対し、
図5(d)に示すように、テンプレート画像T
IMGが2値化画像の画素領域PA2(
図5(a)参照)上に位置する場合、2値化画像の画素領域PA2の白い画素の位置とテンプレート画像T
IMGの白い画素の位置とが完全に一致するため、一致率は100%となる。ただし、現実には、実際の管P’の端面が真円でなかったり、2値化のしきい値の設定に応じて、2値化画像における管P’の端面に相当する画素領域が真円にならないことに起因して、一致率が100%になることはなく、100%未満の値となるのが通常である。
【0040】
以上に説明したパターンマッチングによる一致率の算出は、演算処理手段2が実行する後述のパターンマッチング工程ST3を実行するためのプログラムを用いて行うことができる。
なお、本実施形態では、撮像画像を2値化した上で、パターンマッチングする場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこれに限るものではなく、撮像画像(濃淡画像)をそのまま用いてパターンマッチングすることも可能である。パターンマッチングについては、公知の手法を種々適用可能であるため、本明細書ではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0041】
第2関係算出工程ST12では、前述のように、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の肉厚で除算して算出されるパラメータと、一致率との関係である第2関係を算出する。
図6は、第2関係を算出するのに用いられる一致率の算出位置の一例を模式的に説明する説明図である。
図6において、破線PEは管束PB’の外縁形状を模式的に表している。
図6に示すように、本実施形態で第2関係を算出する際には、2値化画像において、管束PB’の左右上方にそれぞれ位置する画素領域A1、A2での一致率と、管束PB’の左右方向(X方向)中央にそれぞれ位置する画素領域A3~A5での一致率とを用いる。各画素領域A1~A5には、それぞれ複数本(本実施形態では、10本)の管P’の端面に相当する画素領域が存在している。そして、画素領域A1~A5毎に、10本の各管P’に対応する画素領域の一致率を算出する。すなわち、10本の各管P’に対応する画素領域付近にテンプレート画像T
IMGが位置する場合の最も大きな一致率を、各管P’に対応する画素領域の一致率として算出する。そして、この10本の各管P’に対応する画素領域の一致率の平均値を、各画素領域A1~A5の一致率として算出する。さらに、各画素領域A1~A5の一致率の平均値を、第2関係を算出するための一致率として用いる。
【0042】
図7は、第2関係算出工程ST12で算出される第2関係の一例を示す図である。具体的には、
図7に示す第2関係は、管P’の肉厚として公称肉厚T0を用い、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の公称肉厚T0で除算して算出されるパラメータと、
図5及び
図6を参照して説明した手順で算出した一致率との関係である。
図7において、「○」でプロットした点が、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の公称肉厚T0で除算して算出されるパラメータを横軸座標とし、一致率を縦軸座標とするデータ点である。
図7に点線で示す直線が、各データ点を用いて最小二乗法で算出した近似直線である。この近似直線が第2関係とされ、仮にこの第2関係を用いる場合には、この第2関係が演算処理手段2に記憶される。
図7から分かるように、パラメータが大きくなるほど、一致率は小さくなっている。
【0043】
図7に示す例では、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の公称肉厚T0で除算して算出されるパラメータを用いているが、パラメータを算出する際に、管P’の肉厚として、管P’の公称肉厚T0から面取りによる減肉量を減算した値である面取り後肉厚T1(すなわち、T1=T0-減肉量)を用いることも可能である。
【0044】
図8は、第2関係算出工程ST12で算出される第2関係の他の例を示す図である。
図8(a)は、公称肉厚T0と、面取り後肉厚T1との関係の一例を示す図である。
図8(a)に示すような関係は、面取りを行う面取り機の設定によって導き出すことが可能である。また、撮像手段1で管束PB’の端面を撮像して生成した撮像画像と、テンプレート画像T
IMGとを比較することによって導き出すことも可能である。
図8(b)は、面取り後肉厚T1を用いた場合に、第2関係算出工程ST12で算出される第2関係を示す図である。具体的には、
図8(b)は、
図7に示す第2関係を算出するのに用いたものと同じデータ点を用いると共に、
図8(a)に示す関係を用いて、
図7の横軸に示すパラメータを構成する公称肉厚T0を面取り後肉厚T1に置き換えたものである。
図8(b)において、「○」でプロットした点が、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の面取り後肉厚T1で除算して算出されるパラメータを横軸座標とし、一致率を縦軸座標とするデータ点である。
図8(b)に点線で示す直線が、各データ点を用いて最小二乗法で算出した近似直線である。この近似直線が第2関係とされ、この第2関係を用いる場合には、この第2関係が演算処理手段2に記憶される。また、
図8(a)に示すような、公称肉厚T0と面取り後肉厚T1との関係も演算処理手段2に記憶される。
図8から分かるように、
図7と同様に、パラメータが大きくなるほど、一致率は小さくなっている。また、
図8と
図7とを比較すれば分かるように、
図8に示す第2関係の方が精度の良い(相関係数の高い)第2関係を算出できている。このため、第2関係としては、
図8に示すような、面取り後肉厚T1を用いて算出した第2関係を用いることが好ましい。以下の説明では、
図8に示すような、面取り後肉厚T1を用いて算出した第2関係を用いる場合を例に挙げて説明する。
【0045】
なお、本実施形態では、
図7及び
図8の何れの場合も、各データ点を用いて最小二乗法で算出した近似直線を第2関係として算出しているが、本発明はこれに限るものではない。最小二乗法以外の近似演算法を用いてもよいし、2次関数等の近似曲線を第2関係として算出してもよい。
【0046】
図7及び
図8から分かるように、パラメータが大きくなるほど、一致率は小さくなっている。換言すれば、管束PB’の縦横比VH
rateが大きくなるほど、一致率は小さくなっている。前述の
図4から分かるように、管P’の公称外径OD0が大きくなるほど、管束PB’の縦横比VH
rateも大きくなるため、管P’の公称外径OD0が大きくなるほど、一致率が小さくなるといえる。この理由としては、以下の事項が考えられる。
管P’の公称外径OD0が大きくなると、管P’の端面の面積も大きくなる。このため、管P’を切断した後や面取りした後の、管P’の端面の全周に亘る、表面粗さの分布や管軸との直角度が不均一になり易い。このため、撮像画像における管P’の端面に相当する画素領域の明るさ(画素値)も不均一となり易く、2値化した場合に、管P’の端面に相当する画素領域が実際よりも小さく抽出されることが理由の一つであると考えられる。
また、管束PB’が数百本もの多数本の管P’で構成される場合には、管P’の重量によって、特に管束PB’の下方に位置する管P’の端面が楕円に変形する。管P’の公称外径OD0が大きくなるほど、管P’の重量が大きくなるため、管P’の公称外径OD0が大きくなるほど、楕円への変形度合いも大きくなることも理由の一つであると考えられる。
【0047】
なお、本実施形態の第2関係算出工程ST12では、第2関係を算出するのに加えて、後述の本数算出工程ST4で用いる補正量を決定する。
具体的には、第2関係算出工程ST12において、撮像画像(2値化画像)を構成する複数の画素領域の位置に応じた一致率のバラツキと、第2関係における一致率の算出誤差とを考慮して、補正量を決定する。
本実施形態では、複数の画素領域の位置に応じた一致率のバラツキとして、前述の
図6に示す画素領域A1~A5の一致率(各画素領域A1~A5に存在する10本の各管P’に対応する画素領域の一致率の平均値)のバラツキσ1と、画素領域A1~A5の一致率の標準偏差(各画素領域A1~A5に存在する10本の各管P’に対応する画素領域の一致率の標準偏差)のバラツキσ2と、を考える。また、第2関係における一致率の算出誤差として、
図8(b)に示す「○」でプロットしたデータ点と第2関係(点線で示す直線)との縦軸方向の距離σ3を考える。
そして、以下の式(2)に基づき、総合誤差σを算出する。
σ=(σ1
2+σ2
2+σ3
2)
1/2 ・・・(2)
【0048】
図9は、管束PB’の縦横比VH
rateを管P’の面取り後肉厚T1で除算して算出されるパラメータと、上記のようにして算出した総合誤差σとの関係の一例を示す図である。具体的には、
図9は、
図8(b)に示すものと同じデータ点について総合誤差σを算出した結果である。
図9に示すように、総合誤差σは、パラメータの値に関わらず、ほぼ一定の値を示し、
図9に示す例では、最大で4%程度となった。このため、
図9に示す例では、パラメータの値に関わらず、一定の値である4%の総合誤差σの例えば3倍(3σ)を補正量として決定する。
なお、本発明は必ずしもこれに限るものではなく、第1関係や第2関係と同様に、パラメータと総合誤差σとの関係を最小二乗法等によって近似演算し、この関係を用いて、パラメータ毎に補正量を決定することも可能である。
決定した補正量は、演算処理手段2に記憶される。
【0049】
本実施形態に係る本数計測方法では、以上に説明した準備工程ST1(第1関係算出工程ST11、第2関係算出工程ST12)を予め実行した後、被計測管束PBを構成する複数本の被計測管Pの本数を計測するために、撮像画像生成工程ST2、パターンマッチング工程ST3及び本数算出工程ST4を実行する。
本実施形態では、第1関係算出工程ST11を実行した後に第2関係算出工程ST12を実行する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限るものではなく、第2関係算出工程ST12を実行した後に第1関係算出工程ST11を実行することも可能である。
なお、本実施形態では、撮像画像生成工程ST2を実行する前に、演算処理手段2には、被計測管Pの公称外径OD0、公称肉厚T0及び被計測管束PBを構成する被計測管Pの予定本数が入力され、記憶される。
【0050】
<撮像画像生成工程ST2>
撮像画像生成工程ST2では、撮像手段1が、ラックR内に長手方向(Z方向)が水平となるように積載された複数本の被計測管Pから構成される被計測管束PBの端面を撮像して、撮像画像を生成する。生成された撮像画像は、演算処理手段2に入力される。
【0051】
<パターンマッチング工程ST3>
パターンマッチング工程ST3では、演算処理手段2が、被計測管Pの公称外径OD0及び公称肉厚T0に基づき、テンプレート画像T
IMGを作成する。そして、演算処理手段2は、テンプレート画像T
IMGと、撮像画像生成工程ST2で生成した撮像画像とをパターンマッチング(テンプレートマッチング)して、撮像画像を構成する複数の画素領域のテンプレート画像T
IMGに対する一致率を算出する。パターンマッチング工程ST3では、撮像画像を構成する全ての画素領域上で、又は、撮像画像において被計測管束PBの端面が存在する可能性のある全ての画素領域上で、テンプレート画像T
IMGをX方向及びY方向に順次走査し、一致率を算出する。
パターンマッチングによって一致率を算出する具体的な手順については、第2関係算出工程ST12について、
図5を参照して説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
<本数算出工程ST4>
本数算出工程ST4では、演算処理手段2が、被計測管束PBの縦寸法Vを被計測管束PBの横寸法Hで除算した被計測管束PBの縦横比VH
rateに基づいてしきい値Thを決定する。
具体的には、まず、演算処理手段2は、被計測管Pの公称外径OD0と、第1関係算出工程ST11で算出した第1関係とを用いて、被計測管束PBの縦横比VH
rateを推定する。具体的には、例えば、
図4に示す横軸に被計測管Pの公称外径OD0の値を入力した場合に、第1関係から算出される縦軸の値を、被計測管束PBの縦横比VH
rateとして推定する。
ただし、本発明は、これに限るものではなく、第1関係を用いずに、撮像画像生成工程ST2で生成した撮像画像を画像処理して算出することも可能である。この場合には、前述の第1関係算出工程ST11を割愛することが可能である。
【0053】
次に、演算処理手段2は、被計測管Pの公称外径OD0と、
図8(a)に示すような公称肉厚T0と面取り後肉厚T1との関係とを用いて、被計測管Pの面取り後肉厚T1を算出する。
そして、演算処理手段2は、推定した被計測管束PBの縦横比VH
rateを被計測管PBの肉厚(面取り後肉厚T1)で除算して、評価対象パラメータを算出する。そして、演算処理手段2は、この評価対象パラメータと、第2関係算出工程ST12で算出した第2関係とを用いて、しきい値Thを決定する。
具体的には、例えば、
図8(b)に示す横軸に評価対象パラメータを入力した場合に、第2関係から算出される縦軸の値を、補正前のしきい値Th’として決定する。
図10は、
図8(b)に示す第2関係を用いて、補正前のしきい値Th’を決定する手順を説明する説明図である。
図10に示すように、例えば、評価パラメータが0.55である場合には、補正前のしきい値Th’は60%として決定されることになる。
【0054】
次に、演算処理手段2は、以上のようにして決定したしきい値(補正前のしきい値Th’)を、第2関係算出工程ST12で決定された補正量(3σ)に基づいて補正する。具体的には、補正量が3σ=12%で、補正前のしきい値Th’が60%である場合、被計測管Pの本数に未検出が生じないように、補正前のしきい値Th’から補正量3σを減算した48%が、しきい値(補正後のしきい値)Thとして決定されることになる。
【0055】
最後に、演算処理手段2は、撮像画像を構成する複数の画素領域のうち、一致率がしきい値Th以上である画素領域の数を、被計測管束PBを構成する複数本の被計測管Pの本数として算出する。
なお、本実施形態の演算処理手段2は、算出した被計測管Pの本数と、予め入力された被計測管Pの予定本数とを比較し、両者が合致しない場合には、アラームを出力するように構成されている。これにより、検査員に注意喚起することが可能である。
【0056】
以上に説明した本実施形態に係る本数計測方法を、6種類の異なる公称外径OD0及び公称肉厚T0を有する被計測管Pから構成される被計測管束PBについて適用した結果の一例を表1に示す。
【表1】
表1に示すように、本実施形態に係る本数計測方法によれば、いずれの被計測管束PBについても、演算処理手段2によって自動的に適切なしきい値Thが決定され、一致率がこのしきい値Th以上の画素領域の数を被計測管束PBの被計測管Pの本数として算出することで、実本数と完全に一致する計測結果が得られた。
【符号の説明】
【0057】
1・・・撮像手段
2・・・演算処理手段
3・・・照明手段
4・・・制御手段
100・・・本数計測装置
P・・・被計測管
PB・・・被計測管束
R・・・ラック