(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20240216BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240216BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 501
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176021
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シーセン・ホウ
(72)【発明者】
【氏名】ミンチ・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・カイツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マランゴーニ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トレフォナス・三世
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-029216(JP,A)
【文献】特開2002-072480(JP,A)
【文献】特開2002-156764(JP,A)
【文献】特開2015-031796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分解性基を含む第1のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第1の繰り返し単位と、カルボン酸基を含む第2のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第2の繰り返し単位とを含む酸感受性ポリマーと、
2つ以上のエノールエーテル基を含む化合物であって、前記化合物は前記酸感受性ポリマーとは異なる化合物と、
塩基不安定基を含む材料であって、フッ素化エステルを有する材料と、
光酸発生剤と、
溶媒と、
を含むフォトレジスト組成物。
【請求項2】
前記化合物は、式(5):
【化1】
(式中、R
14は、独立して-H、C
1~4アルキル、又はC
1~4フルオロアルキルを表し、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-S-、-N(R
15)-、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R
15)-から選択される1つ以上の基を含み、R
15は、水素或いは置換又は非置換C
1-10アルキルを表し、任意の2つのR
14基は、一緒に任意選択で環を形成し、L
5は、結合基の価数がdであることを表し、dは、2~4の整数である)のものである、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記化合物は、式(5-1):
CH
2=CH-O-R
17-O-CH=CH
2(5-1)
(式中、R
17は、C
1~10直鎖アルキレン、C
3~10分岐アルキレン、C
3~10環式アルキレン、又はこれらの組み合わせを表し、そのそれぞれは、置換され得る又は非置換であり得る)のものである、請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項4】
前記化合物は、ポリマー主鎖にぶら下がっているエノールエーテル基を含む第1の繰り返し単位を含むポリマーである、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
前記化合物の前記第1の繰り返し単位は、ビニル芳香族モノマー又は(メタ)アクリレートモノマーから形成される、請求項4に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記酸分解性基は、式-C(=O)OC(R
5)
3(式中、R
5は、それぞれ独立して、直鎖C
1~20アルキル、分岐C
3~20アルキル、単環式又は多環式C
3~20シクロアルキル、直鎖C
2~20アルケニル、分岐C
3~20アルケニル、単環式又は多環式C
3~20シクロアルケニル、単環式又は多環式C
6~20アリール、或いは単環式又は多環式C
2~20ヘテロアリー
ルであり、そのそれぞれは、置換されている又は非置換であり、各R
5は、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-S-、-N(R
6)-、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R
6)-から選択された1つ以上の基を含み、R
6は、水素或いは置換又は非置換C
1~10アルキルを表し、任意の2つのR
5基は、一緒に任意選択で環を形成する)の3級エステル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
前記第1のフリーラジカル重合性モノマー及び前記第2のフリーラジカル重合性モノマーは、独立して、ビニル芳香族モノマー又は(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
前記
酸感受性ポリマーは、ラクトン基を含む第3の繰り返し単位を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
塩基不安定基を含む前記材料は、フッ素化ポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項10】
(a)基板に請求項1~9のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物の層を塗布する工程と、
(b)前記フォトレジスト組成
物の層をソフトベークする工程と、
(b)前記ソフトベークされたフォトレジスト組成
物の層を活性化放射線に露光する工程と、
(d)前記フォトレジスト組成
物の層を露光後ベークする工程と、
(c)レジストレリーフ像を提供するために、前記露光後ベークされたフォトレジスト組成
物の層を現像する工程と、
を含むパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、電子デバイスの製造に関する。より具体的には、本発明は、フォトレジスト組成物、及びこのような組成物を使用するパターン形成方法に関する。この組成物及び方法は、半導体デバイスの製造に有用なリソグラフィーパターンの形成において特定の用途が見出される。
【背景技術】
【0002】
半導体製造業界では、フォトレジスト層は、半導体基板に配置された金属、半導体又は誘電体層などの1つ以上の下層及び基板自体に画像を転写するために使用される。半導体デバイスの集積密度を高め、ナノメートル範囲の寸法を有する構造物の形成を可能にするために、高解像度性能を有するフォトレジスト組成物及びフォトリソグラフィー処理ツールが開発され続けてきた。
【0003】
化学増幅フォトレジスト組成物は、従来、高解像度処理に使用されている。このような組成物は、典型的には、酸分解性基を有するポリマー、光酸発生剤(PAG)、及び溶媒を使用する。このようなフォトレジスト組成物から形成される層を活性化放射線にパターン状に露光すると、酸発生剤が酸を形成し、露光後ベーク中にフォトレジスト層の露光領域の酸分解性基が開裂する。これは、現像溶液中の層の露光領域と非露光領域との間の溶解度特性の違いをもたらす。ポジ型現像(PTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域は、水性塩基現像液に可溶になり、基板表面から除去され、現像液に不溶性である非露光領域が現像後に残り、ポジ画像を形成する。得られるレリーフ(relief)像により、基板の選択的な処理が可能となる。
【0004】
半導体デバイスにおいてナノメートルスケールの形状を達成するための1つのアプローチは、化学増幅フォトレジストの露光中に短波長、例えば、193ナノメートル(nm)以下の光を使用することである。リソグラフィー性能を更に改善するために、例えば、ArF(193nm)光源を有する液浸スキャナーなどの、画像デバイスのレンズの開口数(NA)を効果的に増加させる液浸リソグラフィーツールが開発された。このツールは、画像デバイスの最終面と、半導体ウェハーの上面との間において、比較的屈折率の高い流体、典型的には水を使用することで達成される。ArF液浸ツールは、多重(二重又はより高次の)パターン形成を使用することで、現在、16nmノード及び14nmノードまでリソグラフィーの限界を押し上げている。しかしながら、リソグラフィー解像度の増加に伴い、フォトレジストパターンの線幅粗さ(LWR)は、高解像度パターンを作成する上でますます重要になっている。例えば、ゲートの長さに沿った過度の線幅の変動は、閾値電圧に悪影響を及ぼす可能性があり、漏れ電流を増加させる場合があり、その両方がデバイスの性能と生産量に悪影響を与える可能性がある。従って、所望のLWR特性を可能にするフォトレジスト組成物が望まれるであろう。
【0005】
プロセスの処理量は、半導体製造業界で大きな関心を集めている分野である。これは、デバイス形成を通して現れる高周波を考えると、フォトレジスト露光プロセスに特に当てはまる。高度なフォトレジスト露光ツールは、典型的にはウェハーに渡り移動し、一度に1つのダイでフォトレジスト層を露光する。ウェハーに渡り全てのダイを処理する時間は、非常に長くなる可能性がある。改善された感光性を有するフォトレジスト組成物は、より短い露光時間で目標限界寸法(CD)を達成することを可能にするであろう。従って、感度が改善されたフォトレジスト組成物が望まれるであろう。
【0006】
(特許文献1)は、架橋された樹脂を含む化学増幅ポジ型フォトレジスト組成物を開示している。架橋された樹脂は、架橋剤として機能するモノマーから形成された重合ユニットを含む。その重合ユニットは、光生成酸との反応によって露光後に及び露光後ベーク中に分解することを目的とした2つのアセタール基を含み、これによってフォトレジスト層の露光領域を水性現像液に可溶にする。このようなフォトレジスト組成物は、貯蔵寿命の安定性の問題を示すと考えられており、合成中のアセタール基の相対的な不安定性のために作成するのも難しい場合がある。従って、より安定したフォトレジスト組成物が望まれるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2006/016022A1号明細書
【文献】米国特許第8,431,325号明細書
【文献】米国特許第4,189,323号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、最新技術に関連する1つ以上の問題に対処する改善されたフォトレジスト組成物及びパターン形成方法が、当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、フォトレジスト組成物が提供される。フォトレジスト組成物は、酸分解性基を含む第1のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第1の繰り返し単位と、カルボン酸基を含む第2のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第2の繰り返し単位とを含む酸感受性ポリマーと、2つ以上のエノールエーテル基を含む化合物であって、その化合物は酸感受性ポリマーとは異なる化合物と、塩基不安定基を含む材料と、光酸発生剤と、溶媒と、を含む。
【0010】
また、パターン形成方法が提供される。パターン形成方法は、(a)本明細書に記載のフォトレジスト組成物の層を基板に塗布する工程と、
(b)フォトレジスト組成層をソフトベークする工程と、(b)ソフトベークされたフォトレジスト組成層を活性化放射線に露光する工程と、
(d)フォトレジスト組成層を露光後ベークする工程と、
(c)レジストレリーフ像を提供するために、露光後ベークされたフォトレジスト組成層を現像する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのものであるにすぎず、本発明を限定することを意図しない。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈で別の指示がない限り、単数形及び複数形を含むことを意図している。本明細書で開示される全ての範囲は、終点を含み、終点は、独立して、互いに合体できる。要素が別の要素「の上に」又は「に渡り」あると言われる場合、それは、他の要素と直接に接触し得るか、又は介在要素がそれらの間に存在し得る。対照的に、要素が別の要素「の上に直接」あると言われる場合、介在する要素は、存在しない。
【0012】
本明細書で用いる場合、「酸分解性基」は、酸の触媒的作用により、任意選択で且つ典型的には熱処理を伴うことにより、結合が開裂し、その結果、例えば、カルボン酸基又はアルコール基などの極性基が生じる基を意味し、ポリマー上に形成され、任意選択で且つ典型的には、開裂した結合に接続した部位がポリマーから切断される。酸分解性基は、例えば、3級アルキルエステル基、2級又は3級アリールエステル基、アルキル基とアリール基の組み合わせを有する2級又は3級エステル基、或いは3級アルコキシ基を含む。酸分解性基は、当技術分野において一般に「酸開裂性基」、「酸開裂性保護基」、「酸分解性基」、「酸不安定保護基」、「酸脱離基」及び「酸感受性基」とも呼ばれている。
【0013】
別記しない限り、「置換」されている基は、その水素原子の1つ以上が1つ以上の置換基によって置換されている基を意味する。例示的な置換基には、限定されないが、ヒドロキシ(-OH)、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-I、-Br)、C1~18アルキル、C1~8ハロアルキル、C3~12シクロアルキル、少なくとも1つの芳香環を有するC6~12アリール(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル等、各環は置換又は非置換芳香族のいずれかである)、少なくとも1つの芳香環を有するC7~19アリールアルキル、C7~12アルキルアリール及びこれらの組み合わせが含まれる。炭素数決定の目的のために、基が置換されている場合、基の炭素原子の数は、任意の置換基の炭素原子を除いた、このような基における炭素原子の総数である。
【0014】
本発明のフォトレジスト組成物は、酸感受性ポリマー、2つ以上のエノールエーテル基を含む化合物であって、その化合物は酸感受性ポリマーとは異なる化合物、塩基不安定基を含む材料、光酸発生剤、及び溶媒を含み、1つ以上の任意選択的な更なる成分を含むことができる。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の特定のフォトレジスト組成物が、線幅粗さ(LWR)の低減及び感光性の改善など、著しく改善されたリソグラフィー性能を達成できることを発見した。
【0015】
酸感受性ポリマーは、酸分解性基を含む第1のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第1の繰り返し単位と、カルボン酸基を含む第2のフリーラジカル重合性モノマーから形成される第2の繰り返し単位とを含み、1つ以上の更なるタイプの繰り返し単位を含み得る。ポリマーは、フォトレジスト組成物の溶媒に良好な溶解性を有する必要がある。
【0016】
酸分解性基は、分解すると、ポリマーにカルボン酸基又はアルコール基を形成するタイプのものであり得る。酸分解性基は、好ましくは3級エステル基であり、より好ましくは3級アルキルエステル基である。酸分解性基を有する適切な繰り返し単位は、例えば、式(1a)、(1b)、又は(1d)の1つ以上のモノマーから誘導され得る:
【化1】
【0017】
式(1a)及び(1b)では、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換又は非置換C1~10アルキル、或いは置換又は非置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素、或いは置換又は非置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。
【0018】
式(1a)では、L1は、少なくとも1つの炭素原子、少なくとも1つのヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含む2価連結基である。例えば、L1は、1~10の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。典型的な例では、L1は、-OCH2-、-OCH2CH2O-、又は-N(R21)-(この場合、R21は、水素又はC1~6アルキルである)であり得る。
【0019】
式(1a)及び(1b)において、R1~R6は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、単環式又は多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、直鎖又は分岐C2~20アルケニル、単環式又は多環式C3~20シクロアルケニル、単環式又は多環式C3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式又は多環式C6~20アリール、或いは単環式又は多環式C2~20ヘテロアリールであり、水素を除いたそのそれぞれは、置換されている又は非置換であり、但し、R1~R3の1つのみが、水素であり得、R4~R6の1つのみが、水素であり得、但し、R1~R3のうちの1つが水素である場合には、R1~R3の他の一方又は両方は、置換又は非置換単環式又は多環式C6~20アリール、或いは置換又は非置換単環式又は多環式C4~20ヘテロアリールであり、R4~R6のうちの1つが水素である場合には、R4~R6の他の一方又は両方は、置換又は非置換単環式又は多環式C6~20アリール、或いは置換又は非置換単環式又は多環式C4~20ヘテロアリールである。好ましくは、R1~R6は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐C1~6アルキル、或いは単環式又は多環式C3~10シクロアルキルであり、そのそれぞれは、置換されている又は非置換である。
【0020】
式(1a)では、R1~R3のいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R1~R3のそれぞれは、それらの構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)2-、及びN(R42)-S(O)2-から選択される1つ以上の基を任意選択で含み得、この場合、R42は、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C1~20シクロアルキル、或いは単環式又は多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。式(2b)では、R4~R6のいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R4~R6のそれぞれは、構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)2-及び-N(R43)-S(O)2-から選択される1つ以上の基を任意選択で含み得、この場合、R43は、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、或いは単環式又は多環式C1~20ヘテロシクロアルキルである。
【0021】
式(1c)では、R7~R9は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、単環式又は多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、単環式又は多環式C6~20アリール、或いは単環式又は多環式C2~20ヘテロアリールであり得、水素を除いたそのそれぞれは、置換されている又は非置換であり、R7~R9のいずれか2つは、一緒に任意選択で環を形成し、R7~R9のそれぞれは、それらの構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)2-、及び-N(R44)-S(O)2-から選択される1つ以上の基を任意選択で含み得、この場合、R44は、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、或いは単環式又は多環式C1~20ヘテロシクロアルキルであり得、但し、酸分解性基がアセタール基でない場合、R7~R9のいずれか1つのみは、水素であり得、但し、R7~R9の1つが水素である場合、R7~R9の他の一方又は両方は、置換又は非置換単環式又は多環式C6~20アリール、或いは置換又は非置換単環式又は多環式C4~20ヘテロアリールである。
【0022】
式(1c)では、X1は、ビニル及びノルボルニルから選択される重合性基であり、L2は、単結合又は2価の結合基であり、但し、X1がビニルの場合、L2は、単結合ではない。好ましくは、L2は、単環式又は多環式C6~30アリーレン、或いは単環式又は多環式C6~30シクロアルキレンであり、そのそれぞれは、置換され得る又は非置換であり得る。式(1c)では、aは、0又は1である。aが0である場合、L2基は、酸素原子に直接接続されていることを理解されたい。
【0023】
モノマー(1a)の非限定的な例は、
【化2】
を含む。
【0024】
式(1b)のモノマーの非限定的な例は、以下を含む:
【化3】
【化4】
(式中、Rは、上記で定義された通りであり、R’及びR”は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐C
1~20アルキル、単環式又は多環式C
3~20シクロアルキル、単環式又は多環式C
1~20ヘテロシクロアルキル、直鎖又は分岐C
2~20アルケニル、単環式又は多環式C
3~20シクロアルケニル、単環式又は多環式C
3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式又は多環式C
6~20アリール、或いは単環式又は多環式C
4~20ヘテロアリールであり、そのそれぞれは、置換されている又は非置換である)。
【0025】
モノマー(1c)の非限定的な例は、
【化5】
を含む。
【0026】
酸分解性基を有する繰り返し単位は、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて、典型的には10~80モル%、より典型的には25~75モル%、更により典型的には30~70モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0027】
酸感受性ポリマーの第2の繰り返し単位は、カルボン酸基を含む第2のフリーラジカル重合性モノマーから形成される。典型的には、第2の繰り返し単位は、式(2)のものである:
【化6】
(式中、R
10は、水素、フッ素、置換又は非置換C
1~10直鎖、C
3~10分岐又はC
3~10環式アルキル、典型的には、水素又はメチルであり、L
3は、少なくとも1つの炭素原子を含む2価連結基であり、例えば、置換又は非置換C
1~10直鎖、C
3~10分岐、又はC
3~10環式アルキレン、或いはこれらの組み合わせであり、1つ以上のヘテロ原子を含み得、bは、0又は1であり、0が典型的である)。R
10及びL
3は、任意選択で、それぞれ独立して、その構造の一部として、-O-,-C(O)-、-C(O)O-(例えば、-C(O)OH)、又は-S-から選択される1つ以上の基を含み得る。
【0028】
式(2)の適切な化合物は、例えば、以下を含む:
【化7】
【0029】
カルボン酸基を有する繰り返し単位は、典型的には、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて、1~35モル%、より典型的には1~25モル%、更により典型的には5~15モル%の量で、酸感受性ポリマー中に存在する。
【0030】
酸感受性ポリマーは、ラクトン基を含む繰り返し単位を含み得る。適切なこのような繰り返し単位は、例えば、式(3)のモノマーから誘導され得る:
【化8】
【0031】
式(3)では、R11は、水素、フッ素、シアノ、置換又は非置換C1~10アルキル、或いは置換又は非置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、R11は、水素、フッ素、或いは置換又は非置換C1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。L4は、単結合、或いは置換又は非置換C1~30アルキレン、置換又は非置換C1~30ヘテロアルキレン、置換又は非置換C3~30シクロアルキレン、置換又は非置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換又は非置換C6~30アリーレン、置換又は非置換C7~30アリールアルキレン、或いは置換又は非置換C1~30ヘテロアリーレン、或いは置換又は非置換C3~30ヘテロアリールアルキレンの1つ以上を含む2価連結基であり得、式中、L4は、任意選択で、例えば-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)2-、及び-N(R44)-S(O)2-から選択される1つ以上の基を更に含み得、R44は、水素、直鎖又は分岐C1~20アルキル、単環式又は多環式C3~20シクロアルキル、或いは単環式又は多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。R12は、ラクトン含有基であり、例えば、単環式、多環式、又は縮合多環式C4~20ラクトン含有基である。
【0032】
式(3)のモノマーの非限定的な例は、
【化9】
(式中、R
11は、本明細書に記載されている通りである)を含む。更なる例示的なラクトン含有モノマーは、例えば、以下を含む:
【化10】
【0033】
存在する場合、酸感受性ポリマーは、典型的には、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて、5~60モル%、典型的には20~55モル%、より典型的には25~50モル%の量でラクトン繰り返し単位を含む。
【0034】
酸感受性ポリマーは、12以下のpKaを有する塩基可溶性繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基可溶性繰り返し単位は、式(4)のモノマーから誘導され得る:
【化11】
式(4)では、R
13は、水素、フッ素、シアノ、置換又は非置換C
1~10アルキル、或いは置換又は非置換C
1~10フルオロアルキルであり得る。好ましくは、R
13は、水素、フッ素、或いは置換又は非置換C
1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Q
1は、置換又は非置換C
1~30アルキレン、置換又は非置換C
3~30シクロアルキレン、置換又は非置換C
1~30ヘテロシクロアルキレン、置換又は非置換C
6~30アリーレン、置換又は非置換2価C
7~30アリールアルキル、置換又は非置換C
1~30ヘテロアリーレン、或いは置換又は非置換2価C
3~30ヘテロアリールアルキル、又は-C(O)-Oのうちの1つ以上であり得る。Wは、塩基可溶性基であり、例えば、以下から選択することができる:-C(CF
3)
2OHなどのフッ素化アルコール、アミド、イミド、又は-NHS(O)
2Y
1、及び-C(O)NHC(O)Y
1、この場合、Y
1は、F又はC
1~4パーフルオロアルキルである。式(4)では、cは、1~3の整数である。
【0035】
式(4)のモノマーの非限定的な例は、以下を含む:
【化12】
(式中、R
13及びY
1は、上記の通りである)。
【0036】
存在する場合、塩基可溶性繰り返し単位は、典型的には、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて、2~75モル%、典型的には5~25モル%、より典型的には5~15モル%の量で、酸感受性ポリマー中に存在し得る。
【0037】
酸感受性ポリマーは、任意選択では1つ以上の更なる繰り返し単位を含み得る。更なる繰り返し構造単位としては、例えば、エッチ速度及び溶解性など、フォトレジスト組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の更なる単位が挙げられ得る。例示的な更なる単位は、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン及びビニルエステルの1つ以上を含み得る。酸感受性ポリマー中に存在する場合、1つ以上の更なる繰り返し単位は、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて、70モル%まで、典型的には3~50モル%の量で使用され得る。
【0038】
適切な酸感受性ポリマーは、例えば、以下を含む:
【化13】
(式中、各ポリマーの単位のモル比は、合計で100モル%であり、例えば、上記のような範囲で選択されることができる)。
【0039】
酸感受性ポリマーは、典型的には、1000~50,000ダルトン(Da)、より典型的には2000~30,000Da、3000~20,000Da、又は3000~10,000Daの重量平均分子量(Mw)を有する。Mwの、数平均分子量(Mn)に対する比である、酸感受性ポリマーの多分散度指数(PDI)は、典型的には1.1~5、より具体的には1.1~3である。本明細書に記載の分子量値は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0040】
本発明のフォトレジスト組成物において、酸感受性ポリマーは、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、典型的には0.5~99.9重量%、より典型的には30~90重量%又は50~80重量%の量で、フォトレジスト組成物中に存在する。全固形分には、ポリマー、PAG、及び他の非溶媒成分が含まれることが理解されよう。
【0041】
酸感受性ポリマーは、当技術分野における任意の適切な方法、例えば、フリーラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを使用して調製することができる。本明細書に記載の繰り返し単位に対応する1つ以上のモノマーは、例えば、適切な溶媒及び開始剤を使用して組み合わされる、又は別々に供給されることができ、反応器内で重合されることができる。例えば、ポリマー及び酸感受性ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線による照射、又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。
【0042】
2つ以上のエノールエーテル基を含む化合物(エノールエーテル化合物)は、酸感受性ポリマーとは異なり、非ポリマー又はポリマーの形態であり得る。特定の理論に拘束されることを望まないが、エノールエーテル化合物は、フォトレジストソフトベーク工程中に、そのエノールエーテル基と酸感受性ポリマーのカルボン酸基との間のカップリング反応を受けると考えられる。これは、酸感受性ポリマーの架橋をもたらし、これにより、水性塩基現像溶液における酸感受性ポリマーの溶解阻害を増加させると考えられる。露光後ベーク工程中にフォトレジスト層を露光した後、光酸発生剤によって生成された酸が、架橋されたポリマーのアセタール又はケタール結合を切断して、露光領域でポリマーにおいてカルボン酸基を再形成すると考えられる。これにより、現像溶液中の露光領域の溶解が促進されるが、ポリマーは、非露光領域での溶解が抑制された状態で架橋されたままになる。これにより、より高い溶解コントラストを達成することができ、その結果、フォトレジストパターンのLWRが改善されることができる。
【0043】
非ポリマーエノールエーテル化合物は、例えば、式(5):
【化14】
(式中、R
14は、独立して-H、C
1~4アルキル、又はC
1~4フルオロアルキルを表し、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-S-、-N(R
15)-、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R
15)-から選択される1つ以上の基を含み、R
15は、水素或いは置換又は非置換C
1~10アルキルを表し、任意の2つのR
14基は、一緒に任意選択で環を形成し、L
5は、結合基の価数がdであることを表し、典型的には、C
2~10直鎖アルキレン、C
3~10分岐アルキレン、C
3~10環式アルキレン、C
5~12アリーレン、又はこれらの組み合わせを表し、そのそれぞれは、置換され得る又は非置換であり得、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-S-、-N(R
16)、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R
16)-から選択される1つ以上の基を含み、R
16は、-H或いは置換又は非置換C
1~10アルキルを表し、dは、2~4の整数である)のものであり得る。
【0044】
式(5)の好ましいエノールエーテル化合物は、式(5-1)の化合物である:
CH2=CH-O-R17-O-CH=CH2(5-1)
(式中、R17は、C1~10直鎖アルキレン、C3~10分岐アルキレン、C3~10環式アルキレン、又はこれらの組み合わせを表し、そのそれぞれは、置換され得る又は非置換であり得る)。
【0045】
適切なポリマーエノールエーテル化合物は、1つ以上のエノールエーテル基を含むフリーラジカル重合性モノマーから形成される繰り返し単位を含む。エノールエーテル基は、典型的には、ポリマー主鎖にぶら下がっている。モノマーは、典型的には、ビニル芳香族、(メタ)アクリレート、又はノルボルニルモノマーであり、ビニル芳香族及び(メタ)アクリレートが好ましい。ポリマーエノールエーテル化合物は、ホモポリマー、又は2つ、3つ、又はそれ以上の別個の繰り返し単位を含むコポリマーであり得る。ポリマーエノールエーテル化合物は、典型的には、200~100,000Daの重量平均分子量(Mw)及び1.1~5のPDIを有する。
【0046】
適切なエノールエーテル化合物は、例えば、以下を含む:
【化15】
【化16】
【化17】
【0047】
エノールエーテル化合物は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、0.01~60重量%、典型的には1~30重量%、より典型的には3~15重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。適切なエノールエーテル化合物は、市販されており、且つ/又は当業者によって容易に作製することができる。
【0048】
フォトレジスト組成物は、光酸発生剤(PAG)を更に含む。PAGは、典型的には非ポリマー形態であるが、例えば、酸感受性ポリマーの重合された繰り返し単位に存在する、又は異なるポリマーの一部として存在するポリマー形態であり得る。適切なPAGは、露光後ベーク中に、フォトレジスト組成物のポリマーに存在する酸分解性基の開裂を引き起こす酸を生成することができる。適切なPAG化合物は、化学増幅フォトレジストの分野で知られており、イオン性であり得る又は非イオン性であり得る。適切なPAG化合物としては、例えば、オニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、ジ-t-ブチルフェニルヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート、及びジ-t-ブチルフェニルヨードニウムカンファースルホネートが挙げられる。ノニオン性スルホネート及びスルホニル化合物も光酸発生剤として機能することが知られており、例えば、ニトロベンジル誘導体、例えば、2-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、2,6-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート及び2,4-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、スルホン酸エステル、例えば、1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン及び1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、ジアゾメタン誘導体、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、グリオキシム誘導体、例えば、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム及びビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、及びハロゲン含有トリアジン化合物、例えば、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン及び2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。適切な光酸発生剤は、Hashimotoらの(特許文献2)、37列、11~47行及び41~91列に更に記載されている。他の適切なスルホネートPAGには、スルホネート化エステル及びスルホニルオキシケトン、ニトロベンジルエステル、s-トリアジン誘導体、ベンゾイントシレート、t-ブチルフェニルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテート、及びt-ブチルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテートが含まれ、これらは、(特許文献3)及び(特許文献2)に記載されている。
【0049】
特に適切なPAGは、式G
+A
-のものであり、この場合、G
+は、有機カチオンであり、A
-は、有機アニオンである。有機カチオンには、例えば、2つのアルキル基、アリール基又はアルキル及びアリール基の組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン、及び3つのアルキル基、アリール基又はアルキル及びアリール基の組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンが含まれる。いくつかの実施形態では、G
+は、2つのアルキル基、アリール基、又はアルキル及びアリール基の組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン、又は3つのアルキル基、アリール基又はアルキル及びアリール基の組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンである。いくつかの実施形態では、G
+は、式(6A)を有する置換スルホニウムカチオン又は式(6B)を有するヨードニウムカチオンのうちの1つ以上であり得る:
【化18】
(式中、各R
aaは、独立して、C
1~20アルキル基、C
1~20フルオロアルキル基、C
3~20シクロアルキル基、C
3~20フルオロシクロアルキル基、C
2~20アルケニル基、C
2~20フルオロアルケニル基、C
6~30アリール基、C
6~30フルオロアリール基、C
6~30ヨードアリール基、C
4~30ヘテロアリール基、C
7~20アリールアルキル基、C
7~20フルオロアリールアルキル基、C
5~30ヘテロアリールアルキル基、又はC
5~30フルオロヘテロアリールアルキル基であり、そのそれぞれは、置換されている又は非置換であり、各R
aaは、別のR
aa基と離れている、或いは単結合又は2価連結基を介して連結して環を形成する)。各R
aaは、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C
1~12ヒドロカルビレン-、-O-(C
1~12ヒドロカルビレン)-、-C(O)-O-(C
1~12ヒドロカルビレン)-及び-C(O)-O-(C
1~12ヒドロカルビレン)-O-から選択される1つ以上の基を含み得る。各R
aaは、独立して、任意選択で、例えば、3級アルキルエステル基、2級又は3級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する2級又は3級エステル基、3級アルコキシ基、アセタール基又はケタール基から選択される、酸に不安定な基を含み得る。R
aa基の接続に適した2価連結基は、例えば、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(S)-、-C(Te)-又は-C(Se)-、置換又は非置換C
1~5アルキレン及びこれらの組み合わせを含む。
【0050】
式(6A)の例示的なスルホニウムカチオンは、以下を含む:
【化19】
【化20】
【0051】
式(6B)の例示的なヨードニウムカチオンは、以下を含む:
【化21】
【0052】
オニウム塩であるPAGは、典型的には、スルホンアミデート基、スルホンイミデート基、メチド基、又はボレート基などのスルホネート基又は非スルホネート型基を有するアニオンを含む。例示的な適切なスルホネート基を有するアニオンは、以下を含む:
【化22】
【0053】
例示的な適切な非スルホネート化アニオンは、以下を含む:
【化23】
【0054】
フォトレジスト組成物は、任意選択で、複数のPAGを含み得る。典型的には、光酸発生剤は、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、1~65重量%、より典型的には5~55重量%、更により典型的には8~30重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0055】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の塩基不安定基を含む物質(「塩基不安定物質」)を更に含む。本明細書で言及される場合、塩基不安定基は、露光工程及び露光後ベーク工程後、水性アルカリ性現像液の存在下において、開裂反応を経てヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸などの極性基を提供することができる官能基である。塩基不安定基は、塩基不安定基を含むフォトレジスト組成物の現像工程前に大きく反応しない(例えば、結合切断反応が起こらない)。そのため、例えば、塩基不安定基は、露光前ソフトベーク工程、露光工程、及び露光後ベーク工程の間、実質的に不活性である。「実質的に不活性」とは、塩基不安定基(又は部位)の5%以下、好ましくは1%以下が、露光前ソフトベーク工程、露光工程、及び露光後ベーク工程の間、分解、切断又は反応することを意味する。塩基不安定基は、例えば、0.26規定(N)のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液などの水性アルカリ性フォトレジスト現像液を用いた典型的なフォトレジスト現像条件下で反応性を有する。例えば、0.26NのTMAH水溶液は、単一パドル現像又は動的現像に使用することができ、例えば、0.26NのTMAH現像液は、画像化されたフォトレジスト層に10~120秒(s)などの適切な時間で分配される。例示的な塩基不安定基は、エステル基、典型的にはフッ素化エステル基である。好ましくは、塩基不安定物質は、第1及び第2のポリマー並びにフォトレジスト組成物の他の固形成分と実質的に混和せず、第1及び第2のポリマー並びにフォトレジスト組成物の他の固形成分よりも表面エネルギーが低い。基板にコーティングされた場合、塩基不安定物質は、これによりフォトレジスト組成物の他の固形成分から、形成されたフォトレジスト層の上面に分離し得る。
【0056】
いくつかの態様では、塩基不安定物質は、ポリマー材料であり、本明細書では塩基不安定ポリマーとも呼ばれ、塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基を含む1つ以上の繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、同一又は異なる2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。好ましい塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む少なくとも1つの繰り返し単位、例えば、2つ又は3つの塩基不安定基を含む繰り返し単位を含む。
【0057】
塩基不安定ポリマーは、式(7-1)
【化24】
(式中、X
2は、ビニル及びアクリルから選択される重合性基であり、L
6は、置換又は非置換直鎖又は分岐C
1~20アルキレン、置換又は非置換C
3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む2価連結基であり、R
18は、置換又は非置換C
1~20フルオロアルキル基であり、但し、式(7-1)のカルボニル(C=O)に結合した炭素原子が少なくとも1つのフッ素原子で置換されている)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーであり得る。
【0058】
式(7-1)の例示的なモノマーは、以下を含む:
【化25】
【0059】
塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(7-2)
【化26】
(式中、X
2及びR
18は、式(7-1)で定義した通りであり、L
7は、置換又は非置換直鎖又は分岐C
1~20アルキレン、置換又は非置換C
3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む多価連結基であり、eは、2以上の整数、例えば、2又は3である)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含み得る。
【0060】
式(7-2)の例示的なモノマーは、以下を含む:
【化27】
【0061】
塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(7-3):
【化28】
(式中、X
2は、式(7-1)で定義された通りであり、L
8は、置換又は非置換直鎖又は分岐C
1~20アルキレン、置換又は非置換C
3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む2価連結基であり、L
fは、置換又は非置換C
1~20フルオロアルキレン基であり、式(7-3)のカルボニル(C=O)に結合した炭素原子は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されており、R
19は、置換又は非置換直鎖又は分岐C
1~20アルキル、或いは置換又は非置換C
3~20シクロアルキルである)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含み得る。
【0062】
式(7-3)の例示的なモノマーは、以下を含む:
【化29】
【0063】
本発明の更に好ましい態様では、塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基及び1つ以上の酸分解性基、例えば、1つ以上の酸不安定エステル部位(例えば、t-ブチルエステル)又は酸不安定アセタール基を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基及び酸分解性基を含む繰り返し単位、即ち、塩基不安定基及び酸分解性基の両方が同一の繰り返し単位に存在する繰り返し単位を含み得る。別の例では、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基を含む第1の繰り返し単位と、酸分解性基を含む第2の繰り返し単位と、を含み得る。本発明の好ましいフォトレジストは、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ像に伴う欠陥を減少させることができる。
【0064】
塩基不安定ポリマーは、第1及び第2のポリマーに対して本明細書で述べたものを含む、当技術分野におけるいずれかの適切な方法を用いて調製され得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線による放射又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。これに加えて又はこの代わりに、1つ以上の塩基不安定基を、適切な方法を用いてポリマーの主鎖にグラフト化し得る。
【0065】
いくつかの態様では、塩基不安定物質は、1つ以上の塩基不安定エステル基、好ましくは1つ以上のフッ素化エステル基を含む単一の分子である。単一分子である塩基不安定物質は、50~1,500Daの範囲のMWを有し得る。例示的な塩基不安定物質は、以下を含む:
【化30】
【0066】
フォトレジスト組成物は、上述したポリマー及び酸感受性ポリマーに加えて、これとは異なる1つ以上のポリマーを更に含み得る。例えば、フォトレジスト組成物は、上記で説明した通りであるが組成が異なる更なるポリマー、又は上記で説明したものと類似しているが必須繰り返し単位を含まないポリマーを含み得る。これに加えて又はこの代わりに、1つ以上の更なるポリマーは、フォトレジスト技術分野で周知のもの、例えば、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリノルボルネン、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェノール、ノボラック、スチレンポリマー、ポリビニルアルコール、又はこれらの組み合わせから選択されるものを含み得る。
【0067】
フォトレジスト組成物は、組成物の成分を溶解し、基板におけるそのコーティングを容易にするための溶媒を更に含む。好ましくは、溶媒は、電子デバイスの製造に従来使用される有機溶媒である。適切な溶媒は、例えば、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及び1-クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソ-プロパノール、tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール及び4-メチル-2-ペンタノールなどのアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びアニソールなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ-ブチルケトン、2-ヘプタノン及びシクロヘキサノン(CHO)などのケトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、ヒドロキシイソブチレートメチルエステル(HBM)及びアセト酢酸エチルなどのエステル、γ-ブチロラクトン(GBL)及びε-カプロラクトンなどのラクトン、N-メチルピロリドンなどのラクタム、アセトニトリル及びプロピオニトリルなどのニトリル、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジフェニル、及び炭酸プロピレンなどの環式又は非環式炭酸エステル、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒、水、及びこれらの組み合わせを含む。これらのうち、好ましい溶媒は、PGME、PGMEA、EL、GBL、HBM、CHO、及びこれらの組み合わせである。フォトレジスト組成物中の総溶媒含有量(即ち、全ての溶媒の累積溶媒含有量)は、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、典型的には40~99重量%、例えば、70~99重量%、又は85~99重量%である。所望の溶媒含有量は、例えば、コーティングされたフォトレジスト層の所望の厚さ及びコーティング条件に依存する。
【0068】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の更なる任意選択的な添加剤を更に含み得る。このような任意選択的な添加剤は、例えば、化学染料及び造影剤、ストライエーション防止剤(anti-striation agent)、可塑剤、速度向上剤(speed enhancer)、増感剤、光分解性消光剤(光分解性塩基としても知られる)、塩基性消光剤、界面活性剤など、又はこれらの組み合わせを含み得る。存在する場合、任意選択的な添加剤は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、0.01~10重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0069】
光分解性消光剤は、照射により弱酸を生成する。光分解性消光剤から生成する酸は、レジストマトリックスに存在する酸分解性基と迅速に反応するほど強力ではない。例示的な光分解性消光剤は、例えば、光分解性カチオン、好ましくは、例えば、C1~20カルボン酸又はC1~20スルホン酸などの強酸発生剤化合物であるが、弱酸(pKa>1)のアニオンと対になった強酸発生剤化合物を調製するためにも有用なものを含む。例示的なカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などを含む。例示的なカルボン酸は、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などを含む。好ましい実施形態では、光分解性消光剤は、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレートなどの光分解性有機双性イオン化合物である。
【0070】
例示的な塩基性消光剤は、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソパノールアミン、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン:n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシ-エチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール、及び2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの直鎖脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート、及びN-(2-アセトキシ-エチル)モルホリンなどの環式脂肪族アミン、ピリジン、ジ-tert-ブチルピリジン、及びピリジニウムなどの芳香族アミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン、及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメートなどの直鎖及び環式アミド並びにその誘導体、スルホン酸塩、スルファミン酸塩、カルボン酸塩及びホスホン酸塩の4級アンモニウム塩などのアンモニウム塩、並びに1級及び2級アルジミン及びケチミンなどのイミン、任意選択で置換されたピラジン、ピペラジン及びフェナジンなどのジアジン、任意選択で置換されたピラゾール、チアジアゾール及びイミダゾールなどのジアゾール、並びに2-ピロリドン及びシクロヘキシルピロリジンなどの任意選択で置換されたピロリドンを含む。
【0071】
例示的な界面活性剤は、フッ素化及び非フッ素化界面活性剤を含み、イオン性又は非イオン性であり得、非イオン性界面活性剤が好ましい。例示的なフッ素化非イオン性界面活性剤は、3M Corporationから入手可能な、FC-4430及びFC-4432界面活性剤などのパーフルオロC4界面活性剤、並びにOmnovaのPOLYFOX PF-636、PF-6320、PF-656、及びPF-6520フルオロ界面活性剤などのフルオロジオールを含む。一態様では、フォトレジスト組成物は、フッ素含有繰り返し単位を含む界面活性剤ポリマーを更に含み得る。
【0072】
本発明のフォトレジスト組成物を用いるパターン形成方法について以下述べる。フォトレジスト組成物をその上にコーティングすることができる適切な基板は、電子デバイス基板を含む。本発明では、半導体ウェハー、多結晶シリコン基板、マルチチップモジュールなどのパッケージング基板、フラットパネルディスプレイ基板、有機発光ダイオード(OLED)等の発光ダイオード(LED)のための基板などの多様な電子デバイス基板が使用され得、半導体ウェハーが典型的である。このような基板は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅及び金の1つ以上から構成される。適切な基板は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレイ、光集積回路、及びLEDの製造において使用されるものなどのウェハーの形態であり得る。このような基板は、任意の適切なサイズであり得る。典型的なウェハー基板の直径は、200~300ミリメートル(mm)であるが、本発明によれば、より小さい直径及びより大きい直径を有するウェハーを適切に使用することができる。基板は、形成されているデバイスの動作中の又は動作可能な部分を任意選択で含み得る1つ以上の層又は構造体を含み得る。
【0073】
典型的には、ハードマスク層、例えば、スピンオンカーボン(SOC)、アモルファスカーボン、又は金属ハードマスク層などの1つ以上のリソグラフィー層、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)、又は酸窒化ケイ素(SiON)層などのCVD層、底部反射防止コーティング(BARC)層などの有機又は無機下層、或いはこれらの組み合わせが、本発明のフォトレジスト組成物をコーティングする前に、基板の上面に提供される。このような層は、上塗りされたフォトレジスト層と共にリソグラフィー材料スタックを形成する。
【0074】
任意選択で、フォトレジスト組成物をコーティングする前に接着促進剤の層を基板表面に塗布することができる。接着促進剤が望ましい場合、例えば、シラン、典型的には、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラン、又はγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤など、ポリマーフィルムのための任意の適切な接着促進剤が使用され得る。特に適切な接着促進剤は、DuPont Electronics&Imaging(Marlborough,Massachusetts)から入手可能なAP3000、AP8000及びAP9000Sの名称で販売されているものを含む。
【0075】
フォトレジスト組成物は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードなどを含む任意の適切な方法によって基板にコーティングすることができる。例えば、フォトレジストの層の塗布は、コーティングトラックを使用して溶媒中でフォトレジストをスピンコーティングすることによって達成され得、この場合、フォトレジストは、回転するウェハー上に分配される。分配中、ウェハーは、典型的には、最大4,000回転/分(rpm)、例えば、200~3,000rpm、例えば、1,000~2,500rpmの速度で、15~120秒の期間回転して、基板上にフォトレジスト組成物の層を得る。コーティングされた層の厚さは、回転速度及び/又は組成物の固形分を変更することによって調整できることが当業者に理解されるであろう。本発明の組成物から形成されるフォトレジスト層は、典型的には、乾燥層厚さが10~3000ナノメートル(nm)、より典型的には15~500nm、20~200nm、又は50~150nmである。
【0076】
フォトレジスト組成物は、典型的には、次に、層中の溶媒含有量を最小限にするためにソフトベークされ、これにより不粘着性コーティングが形成され、基板への層の接着性が改善される。ソフトベークはまた、エノールエーテル基含有化合物と酸感受性ポリマーのカルボン酸基との間の反応を引き起こし、酸感受性ポリマーの架橋をもたらすと考えられる。ソフトベークは、例えば、ホットプレート上又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。ソフトベークの温度及び時間は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び厚さに依存する。ソフトベーク温度は、典型的には、90~170℃、例えば、110~150℃である。ソフトベーク時間は、典型的には、10秒~20分、例えば、1分~10分又は1分~5分である。ソフトベークの温度及び時間は、組成物の成分に基づいて当業者によって容易に決定することができる。
【0077】
フォトレジスト層は、次に、露光領域と非露光領域との間で溶解度の差を生じさせるために活性化放射にパターン状に露光される。ソフトベークと露光の間に遅延を含めることが望ましい場合がある。適切な遅延時間は、例えば、5秒~30分又は1~5分を含む。組成物のために活性化する放射にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。露光は、典型的には、レジスト層の露光領域と非露光領域とにそれぞれ対応する、光学的に透明な領域と光学的に不透明な領域とを有するパターンフォトマスクを通して行われる。代わりに、このような露光は、典型的には電子ビームリソグラフィーに用いられる、直接描画法において、フォトマスクを用いずに行われ得る。活性化放射は、典型的には、248nm(KrF)、193nm(ArF)、及び13.5nm(極端紫外線、EUV)などの波長で、サブ-400nm、サブ-300nm又はサブ-200nmの波長を有する、或いは電子ビームリソグラフィーを有する。この方法は、液浸又は乾式(非液浸)リソグラフィー技術に応用できる。露光エネルギーは、典型的には、1平方センチメートル当たり1~200ミリジュール(mJ/cm2)、好ましくは10~100mJ/cm2、より好ましくは20~50mJ/cm2であり、露光手段及びフォトレジスト組成物の成分に依存する。好ましい態様では、活性化放射線は、193nm(ArF)であり、193nmの液浸リソグラフィーが特に好ましい。
【0078】
フォトレジスト層の露光後、露光されたフォトレジスト層の露光後ベーク(PEB)が行われる。露光とPEBの間に露光後遅延(PED)を含めることが望ましい場合がある。適切なPED時間は、例えば、5秒~30分又は1~5分を含む。PEBは、例えば、ホットプレート上又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。PEBの条件は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び層の厚さに依存するであろう。PEBは、典型的には、80~150℃の温度で30~120秒間行う。極性切り替え(露光領域)及び極性非切り替え領域(非露光領域)によって定義される潜像がフォトレジスト内に形成される。PEBの間に、光生成された酸が、架橋されたポリマーのケタール結合を切断して、露光された領域のポリマーにおいてカルボン酸基を再形成すると考えられる。
【0079】
露光されたフォトレジスト層を、次に適切な現像液で現像して、現像液に可溶な層の領域を選択的に除去する一方、残った不溶領域は、結果として得られるフォトレジストパターンレリーフ像を形成する。ポジ型現像(PTD)プロセスの場合、フォトレジスト層の露光領域が現像中に除去され、非露光領域が残る。逆に、ネガ型現像(NTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域が残り、非露光領域が現像中に除去される。現像液の塗布は、フォトレジスト組成物の塗布に関して上述したような任意の適切な方法によって行われ得、スピンコーティングが典型的である。現像時間は、フォトレジストの可溶領域を除去するのに効果的な時間であり、5~60秒の時間が典型的である。現像は、典型的には、室温で行われる。
【0080】
PTDプロセスの適切な現像液は、水性塩基現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの4級水酸化アンモニウム溶液、好ましくは0.26規定(N)のTMAH、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを含む。NTDプロセスに適切な現像液は、有機溶媒系であり、現像液の総重量に基づいて、現像液における有機溶媒の累積含有量が50重量%以上、典型的には95重量%以上、95重量%以上、98重量%以上又は100重量%である。NTD現像液用に適切な有機溶媒は、例えば、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、及びこれらの混合物から選択されるものを含む。現像液は、典型的には、2-ヘプタノン又は酢酸n-ブチルである。
【0081】
コーティングされた基板は、本発明のフォトレジスト組成物から形成され得る。このようなコーティングされた基板は、(a)その表面にパターン化される1つ以上の層を有する基板、及び(b)パターン化される1つ以上の層にわたるフォトレジスト組成物の層を含む。
【0082】
フォトレジストパターンは、例えば、エッチングマスクとして使用して、これにより、公知のエッチング技術、典型的には反応性イオンエッチングなどのドライ-エッチングにより、パターンを1つ以上の連続した下位の層に転写し得る。フォトレジストパターンは、例えば、下位のハードマスク層へのパターン転写に使用され得、次にハードマスク層の下の1つ以上の層へのパターン転写のためのエッチングマスクとして使用される。フォトレジストパターンがパターン転写の間で消費されない場合、それは、公知の技術、例えば、酸素プラズマ灰化によって基板から除去され得る。フォトレジスト組成物は、1つ以上のこうしたパターン形成プロセスで使用される場合、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップ、オプトエレクトロニクスチップ、LED、OLEDなどの半導体デバイス及び他の電子デバイスを製造するために使用され得る。
【0083】
以下の非限定的な例は、本発明の例示である。
【実施例】
【0084】
ポリマーの合成
以下のモノマーを使用して、下記の手順に従ってポリマーを合成した:
【化31】
【0085】
実施例1(ポリマーP1)
モノマーM1、M2、M3、及びM4の繰り返し単位をそれぞれ35/30/25/10のモル比で含む5.0gのポリマーを、13gの2-ヒドロキシイソ酪酸メチル及び7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに撹拌しながら溶解し、透明な溶液を得た。撹拌溶液に、0.15gのジフルオロ酢酸及び0.30gの水を加えた。混合物を35℃に温め、撹拌したままにした。72時間後、反応混合物を室温に冷却し、反応混合物を300mLのメタノールに直接加えることによりポリマーを沈殿させた。固体を濾過により収集し、真空で乾燥させて、ポリマーP1として3.5gの白色固体を得た。分子量は、ポリスチレン標準に対するGPCによって決定され、数平均分子量(Mn)=3710Da、重量平均分子量(Mw)=5560ダルトン、PDI(多分散度指数)=1.5であることがわかった。
【化32】
【0086】
フォトレジスト組成物の調製
実施例3~5
フォトレジスト組成物は、表1に記載の材料及び量を使用して、固体成分を溶媒に溶解することによって調製した。得られた混合物は、16~50gの規模で作製され、機械振とう機で3~24時間振とうし、次いで0.2ミクロンの孔径を有するPTFEディスク形フィルターを通して濾過した。
【0087】
【0088】
【0089】
リソグラフィー評価
実施例6~8
300mmのシリコンウェハーを、AR(商標)40A反射防止剤(DuPont Electronics&Imaging)を用い、205℃の硬化温度を使用し60秒間スピンコーティングして、厚さ800Åの第1のBARC層を形成した。次いで、ウェハーを、AR(商標)104反射防止剤(DuPont Electronics&Imaging)を用い、175℃の硬化温度を使用し60秒間スピンコーティングして、厚さ400Åの第2のBARC層を形成した。次いで、ウェハーを、実施例3~5で調製されたそれぞれのフォトレジスト組成物を用いスピンコーティングし、110℃で60秒間ソフトベークして、厚さ900Åのフォトレジスト層を得た。BARC層とフォトレジスト層は、TEL Clean Track Lithiusコーティングツールでコーティングした。ウェハーを、1:1のラインスペースパターン(55nmの線幅/110nmのピッチ)を有するマスクを使用して、ASML 1900i液浸スキャナー(1.3NA、0.86/0.61内側/外側シグマ、35Y偏光のダイポール照明)を使用して露光した。露光されたウェハーを、100℃で60秒間、露光後ベークし、0.26NのTMAH水溶液で12秒間現像した。次いで、ウェハーを脱イオン水で濯ぎ、スピンドライしてフォトレジストパターンを形成した。形成されたパターンのCD線幅測定は、Hitachi High Technologies Co.CG4000CD-SEMを使用して行った。パターンCDがマスクパターンのCD(55nm線幅)と等しくなる露光量であるEサイズも決定した。LWRは、線幅測定の合計100の任意のポイントの分布からの3シグマ値を使用して決定した。結果を表2に示す。
【0090】