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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】新規抗LAG-3抗体ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240216BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240216BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240216BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240216BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240216BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240216BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240216BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240216BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240216BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240216BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240216BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240216BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K49/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P31/18
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/16
A61P31/22
A61P33/06
A61P33/02
A61P31/04
A61P25/28
A61P37/08
A61P11/06
A61P1/04
A61P25/00
A61P21/04
A61P29/00 101
A61P21/00
A61P19/02
A61P3/10
A61P9/00
A61P29/00
A61K47/68
G01N33/574 A
G01N33/543 595
G01N33/543 597
G01N33/536 A
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021500326
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2019078315
(87)【国際公開番号】W WO2019179365
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/079682
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518417374
【氏名又は名称】シーストーン ファーマシューティカルズ
(73)【特許権者】
【識別番号】520363384
【氏名又は名称】シーストーン ファーマシューティカルズ(スーチョウ)カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518417363
【氏名又は名称】シーストーン ファーマシューティカルズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユンイン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジン
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/219995(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/149143(WO,A1)
【文献】特表2016-516681(JP,A)
【文献】国際公開第2017/198212(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/183052(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/220225(WO,A1)
【文献】特表2017-516489(JP,A)
【文献】特表2017-532059(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087589(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 1/00- 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LAG-3と特異的に結合する重鎖可変ドメインを含む単離された抗体ポリペプチドであって、重鎖可変ドメインが、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
CDR1が、GLTLSQYTMGのアミノ酸配列(配列番号1)を含み、
CDR2が、AIHWTSSVTDYADSVXGのアミノ酸配列(配列番号33)を含み、かつ
CDR3が、TXYYTHRGXFDYのアミノ酸配列(配列番号34)を含み、
がK、Y、M、D、またはRであり、Xが、HまたはWであり、かつXがSまたはPである、単離された抗体ポリペプチド。
【請求項2】
CDR1が、配列番号1の配列を含み、
CDR2が、配列番号2、4、8、9、および10から選択される配列を含み、かつ
CDR3が、配列番号3、5、6、および7から選択される配列を含む、
請求項1に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項3】
a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
b)配列番号1、配列番号4、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
c)配列番号1、配列番号4、および配列番号6から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
d)配列番号1、配列番号4、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
e)配列番号1、配列番号8、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
f)配列番号1、配列番号9、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
g)配列番号1、配列番号9、および配列番号6から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
h)配列番号1、配列番号9、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;
i)配列番号1、配列番号10、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;または
j)配列番号1、配列番号4、および配列番号3から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域
を含む、請求項1または2に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、および配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項5】
単一ドメイン抗体または重鎖抗体である、請求項1~4のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項6】
重鎖可変ドメインが、VHHドメインに由来する、請求項1~5のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項7】
免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項8】
免疫グロブリン定常領域が、ヒトIgの定常領域である、請求項7に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項9】
免疫グロブリン定常領域が、ヒトIgGのFc領域である、請求項7に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項10】
ラクダ類起源である、またはヒト化されている、請求項1~9のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項11】
表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して5×10-9、2×10-10、2.5×10-12M以下のK値で、ヒトLAG-3と特異的に結合することが可能である、請求項1~10のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項12】
フローサイトメトリーによって測定して10-9、5×10-10、6×10-11M以下のK値で、細胞表面上に発現されたヒトLAG-3と特異的に結合することが可能である、請求項1~11のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項13】
カニクイザルLAG-3、および/またはマウスLAG-3と特異的に結合することが可能である、請求項1~12のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項14】
1つまたは複数のコンジュゲート部分に連結された、請求項1~13のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項15】
コンジュゲート部分が、クリアランス改変剤、化学療法剤、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素-基質標識、DNA-アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはチューブリン結合剤を含む、請求項14に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、および配列番号32からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17または18に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項19に記載のベクターが発現される条件下で、請求項20に記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項1~13のいずれかに記載の抗体ポリペプチドを発現させる方法。
【請求項22】
LAG-3活性の調節より恩恵を受ける対象における疾患または状態を処置する方法に使用するための、請求項16に記載の医薬組成物であって、前記方法は請求項1~13のいずれかに記載の抗体ポリペプチドの治療上有効な量を対象に投与することを含む、医薬組成物。
【請求項23】
疾患または状態がLAG-3関連の疾患または状態である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
疾患または状態が、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
癌が、膠芽腫、血液新生物、転移性黒色腫、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、慢性Bリンパ球性白血病(B-CLL)、急性BおよびTリンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、ヘアリーセル白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、肝細胞癌、皮膚癌、子宮内膜癌、カルチノイド癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿道の癌、腎盂腎癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、始原神経外胚葉性腫瘍、髄芽腫、星細胞種、退形成性星細胞種、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫、真性多血症、血小板減少症、特発性骨髄線維症〔myelfibrosis〕、軟部組織肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、環境誘発癌、アスベストによって誘発される癌、および転移性癌である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
感染性疾患が、HIV、肝炎(A、B、およびC型)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌〔Staphylococcus aureus〕、緑膿菌〔Pseudomonas aeruginosa〕、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、破傷風、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症、ライム病菌、赤痢アメーバ〔Entamoeba histolytica〕、大腸バランジウム〔Balantidium coli〕、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ種、ランブル鞭毛虫〔Giardia lambia〕、クリプトスポリジウム種、ニューモシスチスカリニ〔Pneumocystis carinii〕、三日熱マラリア原虫〔Plasmodium vivax〕、バベシアミクロチ〔Babesia microti〕、ブルーストリパノソーマ〔Trypanosoma brucei〕、クルーズトリパノソーマ〔Trypanosoma cruzi〕、ドノバンリーシュマニア〔Leishmania donovani〕、トキソプラズマゴンディ〔Toxoplasma gondii〕、およびブラジル鉤虫〔Nippostrongylus brasiliensis〕である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
自己免疫疾患が、アルツハイマー病、アレルギー、喘息、セリアック病、クローン病、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、ループス、多発性硬化症、重症筋無力症、リウマチ性多発筋痛症、リウマチ性関節炎、I型糖尿病、および血管炎である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象がヒトである、請求項2227のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
投与が、経口、鼻腔内、静脈内、皮下、舌下、または筋肉内投与による、請求項2228のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
LAG-3発現細胞におけるLAG-3活性を調節する方法(人間を手術する方法を除く。)であって、LAG-3発現細胞を、請求項1~16のいずれかに記載の抗体ポリペプチドに対して曝露することを含む方法。
【請求項31】
サンプル中のLAG-3の存在または量を検出する方法であって、サンプルを、請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドと接触させること、およびサンプル中のLAG-3の存在または量を決定することを含む方法。
【請求項32】
対象におけるLag-3関連の疾患または状態を診断するための情報を得る方法であって、a)対象から得たサンプルを、請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドと接触させること;b)サンプル中のLAG-3の存在または量を決定すること;およびc)LAG-3の存在または量を、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態の存在または状況と相関させることを含む方法。
【請求項33】
対象におけるLAG-3関連の疾患または状態を処置するための医薬の製造における、請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドの使用。
【請求項34】
LAG-3関連の疾患または状態を診断するための診断試薬の製造における、請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドの使用。
【請求項35】
LAG-3の検出において有用である、請求項1~15のいずれかに記載の抗体ポリペプチドを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年3月20日に出願されたPCT出願番号PCT/CN2018/079682の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して、新規抗ヒトLAG-3抗体ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
リンパ球活性化遺伝子-3、またはLAG-3(CD223としても知られる)は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、細胞外領域に4つの免疫グロブリンドメインを含有するCD4と構造的に類似であるが、両者のアミノ酸配列は、わずか20%の相同性を共有するに過ぎない(Dijkstra et al.(2006)Mol Immunol.43:410~419)。CD4と同様に、LAG-3は、MHCクラスII分子と相互作用するが、より高い親和性で相互作用する(Huard et al.(1995)Eur J Immunol.25:2718~2721)。CD4とは異なり、LAG-3は、ヒト免疫不全ウイルスgp120タンパク質とは相互作用しない(Baixeras et al.(1992)J.Exp.Med.176:327-337)。
【0004】
LAG-3は、休止期末梢血リンパ球には発現されないが、活性化T細胞およびNK細胞において発現される。LAG-3の主要なリガンドはMHC-IIである。さらに、試験により、LAG-3のリガンドはまた、主に腫瘍の微小環境において非免疫細胞によって生成されるガレクチン-3、ならびに肝細胞および腫瘍細胞によって生成される洞様毛細血管内皮細胞レクチン(LSECtin)も含むことが示されている(Lawrence P.Andrews(2017)Immunol Rev;276:80~96)。LAG-3およびMHC-IIの結合は、樹状細胞の機能を制御することができる(Andreae et al(2002)J Immunol 168:3874~3880)。T細胞の場合、そのLAG-3の発現アップレギュレーションおよび活性化は、CD4およびCD8 T細胞の増殖および機能を阻害することができる(Monica V.GoldbergおよびCharles G.Drake(2011)Curr Top Microbiol Immunol 344:269~278)。Treg細胞のLAG-3を遮断すると、Tregの阻害機能を除去することができる(Workman and Vignali(2005)J Immunol 174:688-695)。したがって、LAG-3は、免疫療法の有効な候補標的であると考えられる。
【0005】
免疫チェックポイント阻害剤抗体である抗PD-1および抗CTLA4は、臨床において腫瘍に関してすばらしい処置効果を有することが示されている。しかし、ほとんどの患者は、これらの免疫チェックポイント阻害剤の単剤療法に対して不十分な応答率を有する。新規候補標的と組み合わせた応用の発見は、既存の免疫療法の効果を大きく増強および改善し、LAG-3は、現在最も有望な候補標的である。したがって、免疫療法の分野では、新規抗LAG-3抗体または抗体ポリペプチドの開発が大いに必要とされている。高い親和性を有する重鎖単一ドメイン抗体の開発は、その安定性および組織浸透性が良好なので(Harmsen MM,De Haard HJ(2007)Appl Microbiol Biotechnol 77(1):13~22)、免疫療法の分野の拡大に著しく恩恵をもたらすであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示を通じて、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書において、冠詞の文法的対象の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1種の抗体」は、1種の抗体または1種より多い抗体を意味する。
【0007】
本開示は、新規モノクローナル抗LAG-3抗体、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列ならびにその使用を提供する。
【0008】
一態様では、本開示は、LAG-3と特異的に結合する重鎖可変ドメインを含む単離された抗体ポリペプチドであって、重鎖可変ドメインが、相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含み、
CDR1が、GLTLSQYTMGのアミノ酸配列(配列番号1)、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同配列を含み、
CDR2が、AIHWTSSVTDYADSVXGのアミノ酸配列(配列番号33)、またはそれと少なくとも75%の配列同一性を有する相同配列を含み、かつ
CDR3が、TXYYTHRGXFDYのアミノ酸配列(配列番号34)、またはそれと少なくとも75%の配列同一性を有する相同配列を含み、
が、K、Y、M、D、またはRであり、Xが、HまたはWであり、かつXが、SまたはPである、
単離された抗体ポリペプチドを提供する。
【0009】
特定の実施形態では、本開示は、LAG-3と特異的に結合する重鎖可変ドメインを含む単離された抗体ポリペプチドであって、重鎖可変ドメインが、配列番号1の配列を含むCDR1、配列番号2、4、8、9、および10から選択される配列を含むCDR2、ならびに配列番号3、5、6、および7から選択される配列を含むCDR3を含む、単離された抗体ポリペプチドを提供する。
【0010】
特定の実施形態では、本開示は、LAG-3と特異的に結合する重鎖可変ドメインを含む単離された抗体ポリペプチドであって、重鎖可変ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10からなる群から選択される1、2、または3つの重鎖CDR配列を含む、単離された抗体ポリペプチドを提供する。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;b)配列番号1、配列番号4、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;c)配列番号1、配列番号4、および配列番号6から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;d)配列番号1、配列番号4、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;e)配列番号1、配列番号8、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;f)配列番号1、配列番号9、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;g)配列番号1、配列番号9、および配列番号6から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;h)配列番号1、配列番号9、および配列番号7から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;i)配列番号1、配列番号10、および配列番号5から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域;またはj)配列番号1、配列番号4、および配列番号3から選択される1、2、または3つのCDR配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0012】
特定の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、および配列番号31からなる群から選択される配列、ならびに少なくとも80%の配列同一性を有し、LAG-3に対する特異的結合親和性を依然として保持するその相同配列を含む。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、LAG-3に対する特異的結合親和性を依然として保持する、1つまたは複数のアミノ酸残基置換または修飾をさらに含む。特定の実施形態では、置換または修飾の少なくとも1つは、1つまたは複数のCDR配列にあり、および/または1つまたは複数のVH配列にあるが、CDR配列のいずれにもない。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、単一ドメイン抗体または重鎖抗体である。
【0015】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインは、VHHドメインに由来する。
【0016】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、免疫グロブリン定常領域、任意選択でヒトIgの定常領域、または任意選択でヒトIgG(例えば、IgG4)のFc領域をさらに含む。
【0017】
特定の実施形態では、重鎖可変ドメインは、ラクダ類〔camelid〕起源であるか、またはヒト化されている。
【0018】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、ナノボディー(登録商標)である。
【0019】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、ヒトLAG-3、マウスLAG-3、およびカニクイザルLAG-3と特異的に結合することが可能である。特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、ヒトLAG-3、マウスLAG-3、およびカニクイザルLAG-3の、そのリガンドとの結合を特異的に遮断することが可能である。
【0020】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して5×10-9、2×10-10、2.5×10-12M以下のK値で、細胞表面上に発現されたヒトLAG-3と特異的に結合することが可能である。
【0021】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、フローサイトメトリーによって測定して10-9、5×10-10、6×10-11M以下のK値で、細胞表面上に発現されたヒトLAG-3と特異的に結合することが可能である。
【0022】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、カニクイザルLAG-3、および/またはマウスLAG-3と特異的に結合することが可能である。
【0023】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、1つまたは複数のコンジュゲート部分と連結している。特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス改変剤、化学療法剤、毒素、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素-基質標識、DNA-アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、または他の抗癌剤を含む。
【0024】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体ポリペプチドと同じエピトープについて競合する抗体またはその抗原結合断片をさらに提供する。
【0025】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体ポリペプチド、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0026】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドをさらに提供する。特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、および配列番号32からなる群から選択されるヌクレオチド配列、ならびに/または少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)の配列同一性を有するその相同配列、ならびに/または縮重置換のみを有するその変異体を含む。
【0027】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターをさらに提供する。
【0028】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供されるベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0029】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体ポリペプチドを発現させる方法であって、本明細書において提供されるベクターが発現される条件下で本明細書において提供される宿主細胞を培養することを含む方法をさらに提供する。
【0030】
別の態様では、本開示は、LAG-3活性の調節より恩恵を受ける対象における疾患または状態を処置する方法であって、本明細書において提供される抗体ポリペプチドまたは本明細書において提供される医薬組成物の治療上有効な量を対象に投与することを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態では、疾患または状態は、LAG-3関連の疾患または状態である。特定の実施形態では、疾患または状態は、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患である。
【0031】
特定の実施形態では、癌は、膠芽腫、血液新生物、転移性黒色腫、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、慢性Bリンパ球性白血病(B-CLL)、急性BおよびTリンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、ヘアリーセル白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、黒色腫、中皮腫、ウィルムス腫瘍、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、肝細胞癌、皮膚癌、子宮内膜癌、カルチノイド癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿道の癌、腎盂腎癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、始原神経外胚葉性腫瘍、髄芽腫、星細胞種、退形成性星細胞種、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫、真性多血症、血小板減少症、特発性骨髄線維症〔myelfibrosis〕、軟部組織肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、環境誘発癌、アスベストによって誘発される癌、および転移性癌である。
【0032】
特定の実施形態では、感染性疾患は、HIV、肝炎(A、B、およびC型)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌〔Staphylococcus aureus〕、緑膿菌〔Pseudomonas aeruginosa〕、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、破傷風、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症、ライム病菌、赤痢アメーバ〔Entamoeba histolytica〕、大腸バランジウム〔Balantidium coli〕、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ種、ランブル鞭毛虫〔Giardia lambia〕、クリプトスポリジウム種、ニューモシスチスカリニ〔Pneumocystis carinii〕、三日熱マラリア原虫〔Plasmodium vivax〕、バベシアミクロチ〔Babesia microti〕、ブルーストリパノソーマ〔Trypanosoma brucei〕、クルーズトリパノソーマ〔Trypanosoma cruzi〕、ドノバンリーシュマニア〔Leishmania donovani〕、トキソプラズマゴンディ〔Toxoplasma gondii〕、およびブラジル鉤虫〔Nippostrongylus brasiliensis〕である。
【0033】
特定の実施形態では、自己免疫疾患は、アルツハイマー病、アレルギー、喘息、セリアック病、クローン病、グレーブス病、炎症性腸疾患(IBD)、ループス、多発性硬化症、重症筋無力症、リウマチ性多発筋痛症、リウマチ性関節炎、I型糖尿病、および血管炎である。
【0034】
特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0035】
特定の実施形態では、投与は、経口、鼻腔内、静脈内、皮下、舌下、または筋肉内投与による。
【0036】
別の態様では、本開示はさらに、LAG-3発現細胞におけるLAG-3活性を調節する方法であって、LAG-3発現細胞を、本明細書において提供される抗体ポリペプチドに対して曝露することを含む方法を提供する。
【0037】
別の態様では、本開示は、サンプル中のLAG-3の存在または量を検出する方法であって、サンプルを本明細書において提供される抗体ポリペプチドと接触させること、およびサンプル中のLAG-3の存在または量を決定することを含む方法をさらに提供する。
【0038】
別の態様では、本開示は、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態を診断する方法であって、a)対象から得たサンプルを、本明細書において提供される抗体ポリペプチドと接触させること;b)サンプル中のLAG-3の存在または量を決定すること;およびc)LAG-3の存在または量を、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態の存在または状況と相関させることとを含む方法をさらに提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態を処置するための医薬の製造における、本明細書において提供される抗体ポリペプチドの使用をさらに提供する。
【0040】
別の態様では、本開示は、LAG-3関連の疾患または状態を診断するための診断試薬の製造における本明細書において提供される抗体ポリペプチドの使用をさらに提供する。
【0041】
別の態様では、本開示は、LAG-3の検出において有用な、本明細書において提供される抗体ポリペプチドを含むキットをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1Aおよび1Bは、IL-2ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイ(RGA)によって測定して、9種の親和性成熟VHH抗体(Ab)(W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13およびW3396-R2-26H2)が、ヒト化親VHH Ab(W3396-Z4)と比較して増強された反応性を示すことを示す。
図2A図2Aは、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-2が、ベンチマーク抗体(BMK Ab)(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なEC50で細胞表面ヒトLAG-3と結合することを示す。
図2B図2Bは、FACSによって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-2が、0.1、または0.13nMのEC50で、細胞表面マウスLAG-3と結合することを示す。
図2C図2Cは、FACSによって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、2.34、または2.16nMのEC50で、細胞表面カニクイザルLAG-3と結合することを示す。
図3A図3Aは、FACSによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3の細胞表面ヒトMHC-IIとの結合を遮断することを示す。
図3B図3Bは、FACSによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3の細胞表面ヒトMHC-IIとの結合を遮断することを示す。
図3C図3Cは、FACSによって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、2.9、または2.4nMのIC50で、マウスLAG-3の細胞表面マウスMHC-IIとの結合を遮断することを示す。
図4A図4Aは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3の洞様毛細血管内皮細胞レクチン(LSECtin)との結合を遮断することを示す。
図4B図4Bは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3の洞様毛細血管内皮細胞レクチン(LSECtin)との結合を遮断することを示す。
図4C図4Cは、ELISAによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3のガレクチン-3(Gal-3)との結合を遮断することを示す。
図4D図4Dは、ELISAによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3のガレクチン-3(Gal-3)との結合を遮断することを示す。
図5A図5Aは、ELISAによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13がヒトCD4と結合しないことを示す。
図5B図5Bは、ELISAによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13がヒトCD4と結合しないことを示す。
図6図6A~6Cは、FACSによって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8からの異なるエピトープビンを有することを示す図である。
図7A図7Aは、RGAアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なEC50でIL-2経路活性を増強することを示す。
図7B図7Bは、RGAアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)のものと同等のまたはそれより良好なEC50でIL-2経路活性を増強することを示す。
図8A図8Aは、ヒトリンパ球混合培養(MLR)アッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトT細胞IFN-γ分泌の促進においてBMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)と同等またはそれより強力であることを示す。
図8B図8Bは、ヒトリンパ球混合培養(MLR)アッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトT細胞IFN-γ分泌の促進においてBMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)と同等またはそれより強力であることを示す。
図9A図9Aは、ADCCアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してADCC効果を誘導しないことを示す。
図9B図9Bは、ADCCアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してADCC効果を誘導しないことを示す。
図10A図10Aは、CDCアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してCDC効果を誘導しないことを示す。
図10B図10Bは、CDCアッセイによって測定して、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してCDC効果を誘導しないことを示す。
図11図11Aおよび11Bは、血清安定性試験におけるFACSによって測定して、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、37℃のヒト血清中で1日間、4日間、7日間、および14日間インキュベーション後の抗原結合能が安定なままであることを示す図である。
図12A図12Aは、エピトープマッピングの結果を示す。図12Aは、LAG-3のモデリングを示す(PDB:5FLUに基づく)。
図12B図12Bは、エピトープマッピングの結果を示す。図12Bは、モデル構造において表示されたW339-BMK1のホットスポットを示す(黒色:変化倍率<0.55、白い点を伴う灰色:変化倍率0.55~0.75)。
図12C図12Cは、エピトープマッピングの結果を示す。図12Cは、モデル構造において表示されたW339-BMK7のホットスポットを示す(黒色:変化倍率<0.55、白い点を伴う灰色:変化倍率0.55~0.75)。
図12D図12Dは、エピトープマッピングの結果を示す。図12Dは、モデル構造において表示されたW339-BMK8のホットスポットを示す(黒色:変化倍率<0.55、白い点を伴う灰色:変化倍率0.55~0.75)。
図12E図12Eは、エピトープマッピングの結果を示す。図12Eは、モデル構造において表示されたW3396-R2-2のホットスポットを示す(黒色:変化倍率<0.55、白い点を伴う灰色:変化倍率0.55~0.75)。
図13図13は、W3396-R2-2およびW339-BMK1が、マウスにおいて同様の薬物動態(PK)プロファイルを示すことを示す。
図14図14は、W3396-R2-2が、カニクイザルにおけるPK調査によって実証される、約212時間のin vivo半減期をサルにおいて有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の以下の説明は、単に、本開示の種々の実施形態を例示するよう意図される。したがって、論じられる特定の改変は、本開示の範囲に対する制限と解釈されてはならない。本開示の範囲から逸脱することなく、種々の均等物、変法および改変が行われ得ることは当業者には明らかであり、また、このような同等な実施形態は、本明細書に含まれるべきであるということが理解される。刊行物、特許および特許出願を含む本明細書において引用されたすべての参考文献は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0044】
定義
用語「抗体」は、本明細書において使用される場合、任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、二価抗体、一価抗体、または特異的抗原と結合する抗体を含む。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、従来の4つの鎖の抗体と、4つの鎖を有しない非従来の抗体(例えば軽鎖を天然に欠く抗体)の両方を広く包含するよう意図される。
【0045】
従来のインタクトな抗体は、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むヘテロ四量体である。哺乳動物重鎖は、α、δ、ε、γおよびμとして分類され、各重鎖は、可変領域(V)および第1の、第2の、および第3の定常領域(それぞれ、CH1、CH2、CH3)からなり、哺乳動物軽鎖は、λまたはκとして分類され、各軽鎖は、可変領域(V)および定常領域からなる。従来の抗体は、「Y」型を有し、Yのステムは、ジスルフィド結合を介して一緒に結合している2つの重鎖の第2および第3の定常領域からなる。Yの各アームは、単一軽鎖の可変および定常領域と結合している単一重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与している。両鎖中の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖CDR、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖CDR)と呼ばれる3つの高度可変ループを含有する。本明細書において開示される抗体および抗原結合断片のCDR境界は、Kabat、IMGT、ChothiaまたはAl-Lazikaniの慣習(Al-Lazikani,B.,Chothia,C.,Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,273(4),927(1997);Chothia,C.et al.,J Mol Biol.Dec 5;186(3):651-63(1985);Chothia,C.およびLesk,A.M.,J.Mol.Biol.,196,901(1987);Chothia,C.et al.,Nature.Dec 21-28;342(6252):877-83(1989);Kabat E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Marie-Paule Lefranc et al,Developmental and Comparative Immunology,27: 55-77(2003);Marie-Paule Lefranc et al,Immunome Research,1(3),(2005);Marie-Paule Lefranc,Molecular Biology of B cells(second edition),chapter 26,481-514,(2015))によって定義または同定され得る。3つのCDRは、CDRよりもより高度に保存され、超可変ループを支持するスキャフォールドを形成するフレームワーク領域(FR)として知られる、両端に位置するストレッチの間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5種の主要なクラスまたはアイソタイプとして、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらは、α、δ、ε、γおよびμ重鎖それぞれの存在を特徴とする。主要な抗体クラスのうちいくつかは、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)またはIgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分割される。
【0046】
ヘテロ四量体である従来の抗体とは異なり、ホモ二量体免疫グロブリンが存在し、これらは天然に軽鎖を欠く。そのような抗体は、例えばラクダ類(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカなど)において見られ、分子量約80kDの重鎖抗体とも呼ばれる(Hamers-Casterman C.et al.,1993,Nature,63:446-448)。
【0047】
用語「抗体ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、抗原結合タンパク質または抗体断片(例えば、CDR、および/または可変領域配列)を含むポリペプチドを指す。抗体ポリペプチドは、例えば重鎖抗体(VHH抗体)、重鎖抗体の可変ドメイン、VHHドメイン、または単一の可変ドメインを含有する単一ドメイン抗体を含み得るか、またはそれらであり得る。抗体ポリペプチドは、さらなるドメイン、例えば定常領域、Fcドメイン、および/または異なる抗原もしくは異なるエピトープと特異的に結合する第2の可変ドメインをさらに含み得る。
【0048】
「重鎖抗体」および「VHH抗体」は、本明細書において互換的に使用され、2つのVドメインを含有し、軽鎖を含有しない抗体を指す(Riechmann L.and Muyldermans S.,J Immunol Methods.Dec 10;231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.Jun;74(4):277-302(2001);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。軽鎖を欠くが、重鎖抗体は、信頼のおける抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.et al.,1993,Nature,363:446-448;Nguyen VK.et al.Immunogenetics.Apr;54(1):39-47(2002);Nguyen VK.et al.Immunology.May;109(1):93-101(2003))。
【0049】
「VHHドメイン」は、本明細書において使用される場合、重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメインを指す。VHHドメインは、適応免疫応答によって生じた最小の既知抗原結合単位に相当する(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.Nov;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun 15(2007))。
【0050】
「単一ドメイン抗体」は、重鎖の単一の可変領域または軽鎖の単一の可変領域のみを含有する抗体断片を指す。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、重鎖抗体の単一の重鎖可変ドメインのみを有する、またはそれからなる。
【0051】
「ナノボディー」(登録商標)とは、重鎖抗体に由来するVHHドメインおよび2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片を指す。
【0052】
特定の例では、2つまたはそれ以上のVHHドメインをペプチドリンカーと共有結合によって結合して、二価または多価ドメイン抗体を作製することができる。二価ドメイン抗体の2つのVHHドメインは、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0053】
用語「二価」とは、本明細書において使用される場合、2つの抗原結合部位を有する抗体または抗体ポリペプチドを指し、用語「一価」とは、1つのみの単一抗原結合部位を有する抗体または抗体ポリペプチドを指し、用語「多価」とは、複数の抗原結合部位を有する抗体または抗体ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、抗体または抗体ポリペプチドは、二価または多価である。
【0054】
用語「キメラ」とは、本明細書において使用される場合、ある種に由来する配列の一部と、別の種に由来する配列の残りとを有する抗体または抗体ポリペプチドを意味する。例示的例では、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域および非ヒト動物に由来する、例えばラクダ科に由来する可変領域を含み得る。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、ラクダ科、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターである。
【0055】
用語「ヒト化」とは、本明細書において使用される場合、抗体が、非ヒト動物に由来するCDR、ヒトに由来するFR領域、および適用可能な場合には、ヒトに由来する定常領域、を含むことを意味する。
【0056】
「LAG-3」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト、サル)、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む任意の脊椎動物起源に由来し得る。ヒトLAG-3の例示的な配列は、ヒトLAG-3タンパク質(部分的、Genbank受託番号:GI:4379038)を含む。LAG-3の例示的な配列は、ハツカネズミ(マウス)LAG-3タンパク質(Genbank受託番号:GI:111308743);クマネズミ(ラット)LAG-3(Genbank受託番号:GI:37921547)を含む。
【0057】
用語「LAG-3」は、本明細書において使用される場合、LAG-3の任意の形態、例えば1)天然の非プロセシングLAG-3分子、例えばスプライス変異体または対立形質変異体を含む「全長」のLAG-3鎖またはLAG-3の天然に存在する変異体;2)細胞におけるプロセシングに起因する任意の形態のLAG-3;または3)組換え法によって作製されたLAG-3サブユニットの全長、断片(例えば、切断形態、細胞外/膜貫通型ドメイン)または修飾された形態(例えば、変異形態、グリコシル化/PEG化、Hisタグ/免疫蛍光融合された形態)を包含するものとする。
【0058】
用語「抗LAG-3」抗体ポリペプチドは、LAG-3(例えば、ヒトまたはサルまたはマウスまたはラットLAG-3)と特異的結合可能である抗体ポリペプチドを指す。
【0059】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、本明細書において使用される場合、例えば、抗体および抗原の間などの2つの分子間の非ランダム結合反応を指す。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ヒトおよび/またはLAG-3と、≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦4×10-9M、≦3×10-9M、≦2×10-9Mまたは≦10-9M)の結合親和性(K)で特異的に結合する。本明細書において使用されるKとは、会合速度に対する解離速度の割合(koff/kon)を指し、これは、それだけには限らないが、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケール熱泳動法、HPLC-MS法およびフローサイトメトリー(例えば、FACS)法を含む当技術分野で公知の任意の従来法を使用することによって決定することができる。特定の実施形態では、K値は、フローサイトメトリーを使用することによって適宜決定できる。
【0060】
「結合を遮断する」または「同一エピトープについて競合する」能力とは、本明細書において使用される場合、抗体ポリペプチドの、2つの分子(例えば、ヒトLAG-3および抗LAG-3抗体)の間の結合相互作用を、任意の検出可能な程度に阻害する能力を指す。特定の実施形態では、2つの分子間の結合を遮断する抗体ポリペプチドは、2つの分子間の結合相互作用を少なくとも85%または少なくとも90%阻害する。特定の実施形態では、この阻害は、85%超または90%超であり得る。
【0061】
用語「エピトープ」とは、本明細書において使用される場合、抗体が結合する、抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群を指す。2種の抗体は、抗原について競合結合を示す場合には、抗原内の同一または密接に関連するエピトープと結合し得る。例えば、抗体ポリペプチドが、参照抗体の、抗原との結合を少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%遮断する場合には、抗体ポリペプチドは、参照抗体と同じ/密接に関連するエピトープと結合すると考えられ得る。
【0062】
当業者ならば、所与の抗体が、本開示の抗体(例えば、ラクダ類モノクローナル抗体W3396-親、およびヒト化抗体W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、およびW3396-R1-26H2)と同じエピトープと結合するか否かを、後者がLAG-3抗原ポリペプチドと結合するのを前者が防ぐか否かを確認することによって過度に実験することなく決定することが可能であるということを認識するであろう。本開示の抗体によるLAG-3抗原ポリペプチドとの結合が減少することによって示されるように、所与の抗体が本開示の抗体と競合する場合には、その2種の抗体は、同じまたは密接に関連するエピトープと結合する。または、所与の抗体のLAG-3抗原ポリペプチドとの結合が、本開示の抗体によって阻害された場合には、その2種の抗体は、同じまたは密接に関連するエピトープと結合する。
【0063】
「保存的置換」とは、アミノ酸配列に関して、アミノ酸残基を、同様の生理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基で置換することを指す。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、Ala、Val、LeuおよびIle)の間で、中性親水性側鎖を有する残基(例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)の間で、酸性側鎖を有する残基(例えば、Asp、Glu)の間で、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、LysおよびArg)の間で、または芳香族側鎖を有する残基(例えば、Trp、TyrおよびPhe)の間で行われ得る。当技術分野で公知であるように、保存的置換は、通常、タンパク質のコンホメーション構造において重大な変化を引き起こさず、したがって、タンパク質の生物活性を保持し得る。
【0064】
用語「相同体」および「相同な」は、本明細書において、互換的であり、最適にアラインされた場合に別の配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(またはその相補鎖)またはアミノ酸配列を指す。
【0065】
「配列同一性パーセント(%)」とは、アミノ酸配列(または核酸配列)に関して、配列をアラインし、必要に応じて、ギャップを導入して、同一アミノ酸(または核酸)の最大数を達成した後に、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基に対して同一である、候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基と考えられる場合も、考えられない場合もある。アミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを決定する目的のアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(U.S.National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトで入手可能、Altschul S.F.et al,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990);Stephen F.et al,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997)も参照のこと)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトで入手可能、Higgins D.G.et al,Methods in Enzymology,266:383-402(1996);Larkin M.A.et al,Bioinformatics(Oxford,England),23(21):2947-8(2007)も参照のこと)およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なツールを使用することによって達成できる。当業者は、ツールによって提供されたデフォルトパラメータを使用してもよく、またはアラインメントのために必要に応じて、例えば、適したアルゴリズムを選択することなどによって、パラメータをカスタマイズしてもよい。
【0066】
「エフェクター機能」とは、本明細書において使用される場合、抗体のFc領域の、そのエフェクター、例えばC1複合体およびFc受容体との結合に起因する生物活性を指す。例示的エフェクター機能として、抗体と、C1複合体上のC1qとの相互作用によって誘導される補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体のFc領域の、エフェクター細胞上のFc受容体との結合によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および食作用が挙げられる。
【0067】
状態の「処置すること」または「処置」とは、本明細書において使用される場合、状態を予防することもしくは軽減すること、状態の発症もしくはその発生の速度を減速すること、状態の発生のリスクを低減すること、状態と関連する症状の発生を予防もしくは遅延すること、状態と関連する症状を低減もしくは終結させること、状態の完全または部分退縮をもたらすこと、状態を治癒することまたはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0068】
「単離された」物質は、天然状態から人の手によって変更されている。「単離された」組成物または物質が天然に生じる場合には、元の環境から変化している、または取り出されている、または両方である。例えば、生存する動物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離されて」いないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、実質的に純粋な状態で存在するようにその天然状態の共存する材料から十分に分離されている場合には「単離されている」。「単離された核酸配列」とは、単離された核酸分子の配列を指す。特定の実施形態では、「単離された抗体ポリペプチド」は、電気泳動法(SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動など)またはクロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなど)によって決定される、少なくとも60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する抗体ポリペプチドを指す。
【0069】
用語「ベクター」は、本明細書において使用される場合、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、そのタンパク質の発現を引き起こすように作動可能に挿入され得る媒体を指す。ベクターは、宿主細胞内に運ぶ遺伝要素の発現を引き起こすように、宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするために使用され得る。ベクターの例として、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージおよび動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスのカテゴリーとして、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルスおよびパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能要素およびリポーター遺伝子を含む、発現を制御するための種々のエレメントを含有し得る。さらに、ベクターは、複製起点を含有し得る。ベクターはまた、限定されるものではないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コーティングを含む、細胞へのその侵入を補助するための材料を含み得る。ベクターは、発現ベクターまたはクローニングベクターであり得る。本開示は、抗体ポリペプチドをコードする本明細書において提供される核酸配列、その核酸配列と作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および少なくとも1つの選択マーカーを含有する、ベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。ベクターの例として、それだけには限らないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)、λファージおよびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bosなどが挙げられる。
【0070】
語句「宿主細胞」は、本明細書において使用される場合、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターが導入されている細胞を指す。
【0071】
「LAG-3関連」疾患または状態とは、本明細書において使用される場合、LAG-3の発現または活性の増大または減少によって引き起こされる、増悪する、またはそうでなければ、関連している任意の疾患または状態を指す。いくつかの実施形態では、LAG-3関連状態として、免疫関連障害、例えば、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患などがある。
【0072】
「癌」とは、本明細書において使用される場合、悪性細胞成長または新生物、異常な増殖、浸潤または転移を特徴とする任意の医学的状態を指し、固形腫瘍および非固形癌(血液悪性腫瘍)、例えば白血病、の両方を含む。本明細書において使用される場合、「固形腫瘍」とは、新生物および/または悪性細胞の固体塊を指す。癌または腫瘍の例として、血液悪性腫瘍、口腔癌(例えば、口唇、舌、または咽頭)、消化器(例えば、食道、胃、小腸、結腸、大腸、または直腸)、腹膜、肝臓および胆管経路、膵臓、呼吸器系、例えば喉頭または肺(小細胞および非小細胞)、骨、結合組織、皮膚(例えば、黒色腫)、乳房、生殖器(卵管、子宮、子宮頸部、精巣、卵巣、または前立腺)、尿路(例えば、膀胱または腎臓)、脳、および内分泌腺、例えば甲状腺が挙げられる。特定の実施形態では、癌は、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、腎癌、膀胱癌、肝細胞癌、および結腸直腸癌から選択される。特定の実施形態では、癌は、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、およびB細胞リンパ腫から選択される。
【0073】
用語「医薬上許容される」は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤(複数可)および/または塩が、一般に、製剤を含むその他の成分と化学的におよび/または物理的に適合しており、そのレシピエントと生理学的に適合していることを示す。
【0074】
抗LAG-3抗体ポリペプチド
一態様では、本開示は、LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)と特異的に結合する重鎖可変ドメインを含む抗体ポリペプチドであって、重鎖可変ドメインが、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1がGLTLSQYTMG(配列番号1)を含み、CDR2がAIHWTSSVTDYADSVXG(配列番号33)を含み、およびCDR3がTXYYTHRGXFDY(配列番号34)を含み、Xが、K、Y、M、D、またはRであり、Xが、HまたはWであり、およびXが、SまたはPである抗体ポリペプチドを提供する。特定の実施形態では、本開示は、配列番号1、33および34のいずれかに対して1、2、または3つ以下のアミノ酸残基置換を有する抗体ポリペプチドであって、Xが、K、Y、M、D、またはRであり、Xが、HまたはWであり、およびXが、SまたはPである抗体ポリペプチドをさらに包含する。
【0075】
特定の実施形態では、本開示は、抗LAG-3 VHH抗体W3396-親、W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、およびW3396-R1-26H2の、1つまたは複数(例えば1、2、または3つ)のCDR配列を含む抗LAG-3抗体ポリペプチドを提供する。
【0076】
「W3396-親」は、本明細書において使用される場合、配列番号11の配列を含む重鎖可変領域を有するVHH抗体を指す。
【0077】
「W3396-Z4」は、本明細書において使用される場合、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396に基づくヒト化VHH抗体を指す。
【0078】
「W3396-R2-1」は、本明細書において使用される場合、配列番号15の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0079】
「W3396-R2-2」は、本明細書において使用される場合、配列番号17の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0080】
「W3396-R2-3は、本明細書において使用される場合、配列番号19の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0081】
「W3396-R2-6」は、本明細書において使用される場合、配列番号21の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0082】
「W3396-R2-10」は、本明細書において使用される場合、配列番号23の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0083】
「W3396-R2-11」は、本明細書において使用される場合、配列番号25の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0084】
「W3396-R2-12」は、本明細書において使用される場合、配列番号27の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0085】
「W3396-R2-13」は、本明細書において使用される場合、配列番号29の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づく親和性成熟VHH抗体を指す。
【0086】
「W3396-R1-26H2」は、本明細書において使用される場合、配列番号31の配列を含む重鎖可変領域を含むW3396-Z4に基づくヒト化VHH抗体を指す。
【0087】
ヒト化抗体W3396-Z4は、その親抗体W3396と比較してLAG-3に対して同等の親和性を有する。親和性成熟抗体W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、および/またはW3396-R1-26H2は、そのヒト化親抗体W3396-Z4と比較してLAG-3に対してより良好な親和性を有する。
【0088】
表1は、これら11種の抗LAG-3単一ドメイン抗体のCDR配列を示す。重鎖可変領域配列はまた、以下の表2および表3にも提供される。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3-1】
【表3-2】
【0092】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、単一ドメイン抗体である。
【0093】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインは、VHHドメインに由来する。VHHドメインは、天然に軽鎖を欠く抗体、例えばラクダ科の種(例えば、WO9404678を参照のこと)、例えばラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコに由来する抗体に由来する重鎖可変ドメインである。VHHドメインは、単一のポリペプチドであり、安定である。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインは、ラクダ類起源のドメインである。
【0095】
CDRは、抗原結合に関与していることが知られているが、6つのCDRのすべてが不可欠である、または不変であるのではないということがわかっている。言い換えれば、抗LAG-3単一ドメイン抗体W3396-親、W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2中の1つまたは複数のCDRを置き換える、または変更する、または修飾するが、LAG-3に対する特異的結合親和性を実質的に保持することが可能である。
【0096】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、抗LAG-3単一ドメイン抗体W3396-親、W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2のうちの1種の重鎖CDR3配列を含む。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、配列番号3、5、6、および7からなる群から選択される重鎖CDR3配列を含む。重鎖CDR3領域は、抗原結合部位の中心に位置し、したがって、抗原と最も接触し、抗体の抗原に対する親和性に最大の自由エネルギーを提供すると考えられる。また、重鎖CDR3は、複数の多様化機序(Tonegawa S.Nature.302:575-81)により、長さ、アミノ酸組成およびコンホメーションの点で、抗原結合部位のうち群を抜いて最も多様なCDRであると考えられる。重鎖CDR3の多様性は、ほとんどの抗体特異性(Xu JL,Davis MM.Immunity.13:37-45)ならびに望ましい抗原結合親和性(Schier R,etc.J Mol Biol.263:551-67)をもたらすのに十分である。
【0097】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、抗体ポリペプチドが、LAG-3と特異的に結合できる限り、適したフレームワーク領域(FR)配列を含む。表1に提供されるCDR配列は、ラクダ類抗体から得られるが、それらは、当技術分野で公知の適した方法、例えば、組換え技術を使用して任意の適した種、例えば、中でもマウス、ヒト、ラット、ウサギの任意の適したFR配列にグラフトできる。
【0098】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ヒト化される。ヒト化抗体ポリペプチドは、ヒトにおけるその低減された免疫原性において望ましい。ヒト化抗体ポリペプチドは、非ヒトCDR配列が、ヒトまたは実質的にヒトFR配列にグラフトされることから、その可変領域においてキメラである。抗体ポリペプチドのヒト化は、非ヒト(マウスなど)CDR遺伝子で、ヒト免疫グロブリン遺伝子における対応するヒトCDR遺伝子を置換することによって本質的に実施できる(例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536を参照のこと)。
【0099】
当技術分野で公知の方法を使用して、適したヒト重鎖可変ドメインを選択して、この目的を達成できる。例示的例では、「ベストフィット」アプローチを使用でき、非ヒト(例えば、ラクダ類)抗体可変ドメイン配列を、既知ヒト可変ドメイン配列のデータベースに対してスクリーニングまたはBLAST検索し、非ヒトクエリー配列に対して最も近いヒト配列を同定し、非ヒトCDR配列をグラフトするためのヒトスキャフォールドとして使用する(例えば、Sims et al、(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mot.Biol.196:901を参照のこと)。あるいは、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワークを、非ヒトCDRのグラフトのために使用してもよい(例えば、Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623を参照のこと)。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗体ポリペプチドは、非ヒトであるCDR配列を除いて、実質的にすべてのヒト配列から構成されている。いくつかの実施形態では、可変領域FRおよび存在する場合には定常領域は、完全に、または実質的に、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒトFR配列およびヒト定常領域配列は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子に由来してもよく、例えば、FR配列はあるヒト抗体に由来し、定常領域は別のヒト抗体に由来してもよい。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体ポリペプチドは、ヒトFR1~4を含む。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗体ポリペプチドは、W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2の、1つまたは複数のFR配列を含む。
【0102】
10種の例示的なヒト化抗LAG-3単一ドメイン抗体W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2はすべて、LAG-3に対して特異的結合親和性を保持し、その態様において親ラクダ類抗体と少なくとも同等であるか、またはそれよりさらに良好である。
【0103】
いくつかの実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、それが由来するヒト免疫グロブリンと同じアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトFRの1つまたは複数のアミノ酸残基は、親の非ヒト抗体に由来する対応する残基で置換される。これは、特定の実施形態では、ヒト化抗体ポリペプチドを非ヒト親抗体構造と密接に近似させるために望ましいことであり得る。特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗体ポリペプチドは、各ヒトFR配列中に10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1つ以下のアミノ酸残基置換を含む、または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインのすべてのFR中に10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1つ以下のアミノ酸残基置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基におけるこのような変化は、重鎖FR領域中のみに、軽鎖FR領域中のみに、または両鎖に存在し得る。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、または配列番号31からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、重鎖可変ドメインのすべてまたは一部を含む。一実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、本明細書において提供される重鎖可変ドメインのすべてまたは一部からなる単一ドメイン抗体である。このような単一ドメイン抗体のさらなる情報は、当技術分野で入手可能である(例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと)。
【0106】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、免疫グロブリン定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、重鎖を含む。重鎖定常領域は、CH1、ヒンジおよび/またはCH2-CH3領域を含む。特定の実施形態では、重鎖定常領域は、Fc領域を含む。特定の実施形態では、重鎖定常領域は、CH2-CH3領域を含む、またはCH2-CH3領域である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)、任意選択でヒトIg、任意選択でヒトIgGの定常領域を有する。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、ADCCまたはCDCを誘導できるIgG1アイソタイプの定常領域、または低減されたもしくは枯渇したエフェクター機能を有するIgG4もしくはIgG2アイソタイプの定常領域を含む。ADCCおよびCDCなどのエフェクター機能はLAG-3を発現する細胞に対する細胞傷害性をもたらし得る。エフェクター機能は、Fc受容体結合アッセイ、C1q結合アッセイおよび細胞溶解アッセイなどの種々のアッセイを使用して評価できる。
【0108】
本明細書において提供される抗体ポリペプチドの結合親和性は、抗原と抗原結合分子間の結合が平衡に達する時の会合速度に対する解離速度の割合(koff/kon)を表すK値によって表すことができる。抗原結合親和性(例えば、K)は、例えば、フローサイトメトリーアッセイを含む当技術分野で公知の適した方法を使用して適切に決定できる。いくつかの実施形態では、種々の濃度の抗体ポリペプチドの抗原との結合を、フローサイトメトリーによって決定でき、決定された平均蛍光強度(MFI)をまず、抗体濃度に対してプロットすることができ、次いで、Prismバージョン5(GraphPadソフトウェア、カリフォルニア州、サンディエゴ)を使用して、特異的結合蛍光強度(Y)および抗体の濃度(X)の依存関係を1サイト飽和方程式:Y=Bmax X/(K+X)に適合させることによって、K値を算出でき、式中、Bmaxは、試験抗体ポリペプチドの、抗原との最大特異的結合を指す。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴(SPR)またはフローサイトメトリーアッセイによって測定して、5x10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、5×10-10M以下、4×10-10M以下、3×10-10M以下、2×10-10M以下、10-10M以下、5×10-11M以下、または4×10-11M以下、3×10-11M以下、2.5×10-11M以下、2×10-11M以下、10-11M以下、5×10-12M以下、4×10-12M以下、3×10-12M以下、2.5×10-12M以下、2×10-12M以下、または10-12M以下の結合親和性(K)値で、ヒトLAG-3と特異的に結合可能である。
【0110】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、カニクイザルLAG-3、およびマウスLAG-3と交差反応する。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ヒトLAG-3のものと同様の結合親和性でカニクイザルまたはマウスLAG-3と結合する。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴(SPR)またはフローサイトメトリーアッセイによって測定して、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、5×10-10M以下、4×10-10M以下、3×10-10M以下、2×10-10M以下、10-10M以下、5×10-11M以下、または4×10-11M以下、3×10-11M以下、2.5×10-11M以下、2×10-11M以下、10-11M以下、5×10-12M以下、4×10-12M以下、3×10-12M以下、2.5×10-12M以下、2×10-12M以下、または10-12M以下の結合親和性(K)値で、カニクイザルLAG-3と特異的に結合可能である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴(SPR)またはフローサイトメトリーによって測定して、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、5×10-10M以下、4×10-10M以下、3×10-10M以下、2×10-10M以下、10-10M以下、5×10-11M以下、または4×10-11M以下、3×10-11M以下、2.5×10-11M以下、2×10-11M以下、10-11M以下、5×10-12M以下、4×10-12M以下、3×10-12M以下、2.5×10-12M以下、2×10-12M以下、または10-12M以下、5×10-13M以下、4×10-13M以下、3×10-13M以下、2.5×10-13M以下、2×10-13M以下、または10-13M以下の結合親和性(K)値で、マウスLAG-3と特異的に結合可能である。
【0113】
抗体ポリペプチドのヒトLAG-3との結合は、その最大効果(例えば、結合または阻害など)の50%が観察される抗体の濃度を指す「半数最大効果濃度」(EC50)値によっても表すことができる。EC50値は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISAなどのサンドイッチアッセイ、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーアッセイおよびその他の結合アッセイによって測定できる。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、フローサイトメトリーによる0.1nM以下、0.2nM以下、0.25nM以下、0.3nM以下、0.4nM以下、0.5nM以下、1nM以下、1.5nM以下、3nM以下、または5nM以下、または10nM以下、20nM以下のEC50でヒトLAG-3と特異的に結合する。
【0114】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、ヒトLAG-3のものと同様の結合親和性でカニクイザルまたはマウスLAG-3と結合する。例えば、例示的な単一ドメイン抗体W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2のカニクイザルまたはマウスLAG-3との結合は、ヒトLAG-3のものと同様の親和性またはEC50値である。
【0115】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、フローサイトメトリーによる0.1nM以下、0.2nM以下、0.3nM以下、0.5nM以下、1nM以下、1.5nM以下、2nM以下、2.5nM以下、3nM以下、3.5nM以下、4nM以下、または4.5nM以下のEC50で、組換えカニクイザルLAG-3と特異的に結合する。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、フローサイトメトリーによる0.01nM以下、0.05nM以下、0.1nM以下、0.15nM以下、0.2nM以下、0.3nM以下、0.4nM以下、0.5nM以下、0.6nM以下、0.7nM以下、0.8nM以下、0.9nM以下、または1nM以下のEC50で、組換えマウスLAG-3と特異的に結合する。
【0117】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、診断的および/または治療的使用を提供するのに十分である、ヒトLAG-3に対する特異的結合親和性を有する。
【0118】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ヒトLAG-3のそのリガンドとの結合を遮断し、したがってエフェクター細胞の活性を回復し、Tregのサプレッサー活性を減少させ、および/または抗腫瘍活性を増強する。LAG-3のリガンドは、例えばMHC-II、LSECtinおよびガレクチン-3を含む。LSECtinは、C末端C型炭水化物認識ドメイン(CRD)が中間のネックドメインによって膜表面から突出しているII型膜貫通タンパク質である。受容体は、ジスルフィド連結二量体であるようであり、洞様内皮細胞上に発現され、ウイルス感染を容易にするが、エンドサイトーシス機能を欠くC型レクチンファミリーの他のメンバーのモデルとしての役目を果たす。ガレクチン-3は、ヒトにおいてLGALS3遺伝子によってコードされるタンパク質である。ガレクチン-3は、レクチンファミリーメンバーであり、そのうちの14種の哺乳動物ガレクチンが同定されている。ガレクチン-3(Gal-3)はまた、細胞接着、細胞活性化、および化学誘引、細胞成長および分化、細胞周期、ならびにアポトーシスにおいて重要な役割を果たすβ-ガラクトシド結合タンパク質ファミリーメンバーでもある。ガレクチン-3(Gal-3)の広い生物機能を考慮すると、これは癌、炎症および線維症、心疾患、および卒中に関与することが実証されている。ガレクチン-3の発現が、筋線維芽細胞増殖、線維化、組織修復、炎症、および心室リモデリングを含む心不全に関連する種々の過程に関係していることも、研究により示されている。LAG-3のMHC-II、LSECtin、およびGalectin-3との結合の遮断は、当技術分野で公知の方法、例えばELISAを使用して決定することができる。
【0119】
本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、モノクローナル、ヒト化、キメラ、組換え、標識、二価、または抗イディオタイプであり得る。組換え抗体ポリペプチドは、組換え法を使用して動物においてではなくin vitroで調製された抗体ポリペプチドである。
【0120】
抗体変異体
本明細書において提供される抗体ポリペプチドはまた、その種々の変異体も包含する。特定の実施形態では、抗体ポリペプチドは、本明細書において提供される例示的な抗体の種々のタイプの変異体、すなわちW3396-親、W3396-Z4、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13、またはW3396-R1-26H2を包含する。
【0121】
特定の実施形態では、抗体ポリペプチド変異体は、表1に提供されるような1つまたは複数のCDR配列、表2に提供される1つまたは複数の可変領域配列(しかし、CDR配列のいずれにも存在しない)、および/または定常領域(例えば、Fc領域)において1つまたは複数の修飾または置換を含む。このような変異体は、その親抗体のLAG-3に対する特異的結合親和性を保持するが、修飾(複数可)または置換(複数可)によって付与される1つまたは複数の望ましい特性を有する。例えば、抗体ポリペプチド変異体は、改善された抗原結合親和性、改善された生産性、改善された安定性、改善されたグリコシル化パターン、低減されたグリコシル化のリスク、低減された脱アミノ化、低減されたまたは枯渇したエフェクター機能(複数可)、改善されたFcRn受容体結合、増大された薬物動態半減期、pH感受性および/またはコンジュゲーション(例えば、1つまたは複数の導入されたシステイン残基)に対する適合性を有し得る。
【0122】
当技術分野で公知の方法、例えば、「アラニンスキャニング変異誘発」を使用して、親抗体配列を、スクリーニングして、修飾または置換されるために適したまたは好ましい残基を同定してもよい(例えば、Cunningham and Wells(1989)Science、244:1081-1085を参照のこと)。手短には、標的残基(例えば、電荷を有する残基、例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGlu)を同定し、中性または負電荷を有するアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えることができ、修飾された抗体ポリペプチドを製造し、対象とする特性についてスクリーニングする。特定のアミノ酸位置の置換が、対象とする機能的変化を示す場合には、その位置を修飾または置換にとって有望な残基と同定できる。有望な残基を、異なる種類の残基(例えば、システイン残基、正電荷を有する残基等)で置換することによってさらに評価してもよい。
【0123】
親和性変異体
親和性変異体は、表1に提供されるような1つまたは複数のCDR配列、1つまたは複数のFR配列、または表2に提供される重鎖可変領域配列において修飾または置換を含有し得る。可変領域においてCDR配列の両端に2つのFR領域が位置することは当技術分野で周知であることから、FR配列は、表1におけるCDR配列および表2における可変領域配列に基づいて当業者によって容易に同定できる。親和性変異体は、その親抗体のLAG-3に対する特異的結合親和性を保持する、または親抗体を上回る、改善されたLAG-3特異的結合親和性をさらに有する。特定の実施形態では、CDR配列中、FR配列中または可変領域配列中の少なくとも1つの(またはすべて)の置換は、保存的置換を含む。
【0124】
当業者ならば、表1および表2に提供されるCDR配列および可変領域配列において、1つまたは複数のアミノ酸残基が置換されてもよいが、得られた抗体ポリペプチドは、LAG-3に対する結合親和性を依然として保持する、または改善された結合親和性さえ有するということは理解するであろう。当技術分野で公知の種々の方法を使用して、この目的を達成できる。例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、抗体変異体(FabまたはscFv変異体など)のライブラリーを作製し、発現させ、次いで、ヒトLAG-3に対する結合親和性についてスクリーニングできる。別の例のために、コンピュータソフトウェアを使用して、抗体のヒトLAG-3との結合を実質的にシミュレートし、結合面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定できる。このような残基は、結合親和性の低減を防ぐために置換において避けられる場合もあり、より強い結合を提供するために置換の標的とされる場合もある。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるヒト化抗体ポリペプチドは、1つもしくは複数のCDR配列および/または1つもしくは複数のFR配列中に1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含む。特定の実施形態では、親和性変異体は、CDR配列および/またはFR配列中に合計10、9、8、7、6、5、4、3、2または1つ以下の置換を含む。
【0126】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、表1に列挙されるもの(複数可)に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1、2または3つのCDR配列を含み、一方で、その親抗体と同様の、またはさらに高いレベルでLAG-3に対する結合親和性を保持する。
【0127】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、表2に列挙されるもの(複数可)に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つまたは複数の可変領域配列を含み、一方で、その親抗体と同様の、またはさらに高いレベルでLAG-3に対する結合親和性を保持する。いくつかの実施形態では、表2に記載される可変領域配列において、合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、または欠失されている。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDR(例えば、FR)外の領域で起こる。
【0128】
グリコシル化変異体
本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドはまた、グリコシル化変異体を包含し、これは、抗体ポリペプチドのグリコシル化の程度を増大または減少するために得ることができる。
【0129】
抗体ポリペプチドは、炭水化物部分(例えば、オリゴ糖構造)が結合され得る側鎖を有する、1つまたは複数のアミノ酸残基を含み得る。抗体のグリコシル化は、通常、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分の、アスパラギン残基、例えば、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)などのトリペプチド配列中のアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。O結合型グリコシル化とは、糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち1種の、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的には、セリンまたはトレオニンとの結合を指す。天然グリコシル化部位の除去は、例えば、配列中に存在する、上記のトリペプチド配列のうち1種(N結合型グリコシル化部位について)またはセリンもしくはトレオニン残基(O結合型グリコシル化部位について)が置換されるようにアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成できる。新規グリコシル化部位は、このようなトリペプチド配列またはセリンもしくはトレオニン残基を導入することによって同様の方法で作製できる。
【0130】
システインが遺伝子操作された変異体
本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドはまた、システインが遺伝子操作された変異体を包含し、これは、1つまたは複数の導入された遊離システインアミノ酸残基を含む。
【0131】
遊離システイン残基は、ジスルフィド橋の一部ではないものである。システインが遺伝子操作された変異体は、例えば、中でも、遺伝子操作されたシステインの部位での、例えば、マレイミドまたはハロアセチルを介した、細胞傷害性および/またはイメージング化合物、標識または放射性同位元素とのコンジュゲーションにとって有用である。遊離システイン残基を導入するために抗体ポリペプチドを遺伝子操作する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、WO2006/034488を参照のこと。
【0132】
Fc変異体
本明細書において提供される抗LAG-3抗体ポリペプチドはまた、そのFc領域および/またはヒンジ領域に1つまたは複数のアミノ酸残基修飾または置換を含むFc変異体を包含する。
【0133】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、新生児Fc受容体(FcRn)とのpH依存性結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。このような変異体は、リソソームにおける分解から逃れ、次いで、移動し、細胞の外に放出されることを可能にする酸性pHでFcRnと結合するので、薬物動態半減期の延長を有し得る。抗体ポリペプチドを遺伝子操作して、FcRnに対する結合親和性を改善する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Vaughn,D.et al,Structure,6(1):63-73,1998;Kontermann,R.et al,Antibody Engineering,Volume 1,Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK,published by Springer,2010;Yeung,Y.et al,Cancer Research,70:3269-3277(2010);and Hinton,P.et al,J.Immunology,176:346-356(2006)を参照のこと。
【0134】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を変更する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。Fc領域のCH2ドメインのある特定のアミノ酸残基を、置換して、増強されたADCC活性を提供できる。あるいは、またはさらに、抗体上の炭水化物構造を変更して、ADCC活性を増強できる。抗体エンジニアリングによってADCC活性を変更する方法は、当技術分野で記載されている、例えば、Shields RL.et al.,J Biol Chem.2001.276(9):6591-604;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2000.164(8):4178-84;Steurer W.et al.,J Immunol.1995,155(3):1165-74;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2001,166(4):2571-5;Lazar GA.et al.,PNAS,2006,103(11):4005-4010;Ryan MC.et al.,Mol.Cancer Ther.,2007,6:3009-3018;Richards JO,.et al.,Mol Cancer Ther.2008,7(8):2517-27;Shields R.L.et al,J.Biol.Chem,2002,277:26733-26740;Shinkawa T.et al,J.Biol.Chem,2003,278:3466-3473を参照のこと。特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、228番目のアミノ酸残基が変更されており、例えばSer228Pro(S228P、鎖の交換を妨げ得るまたは低減させ得る)であり、および/または例えばLeu235Gu(L235F、これはFc受容体相互作用を変更し得る)から235番目のアミノ酸残基が変更されている、ヒトIgG4定常領域を含む。
【0135】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、例えば、C1q結合および/またはCDCを改善または減少することによって補体依存性細胞傷害(CDC)を変更する、1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む(例えば、WO99/51642;Duncan & Winter Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号、およびFc領域変異体のその他の例に関してはWO94/29351を参照のこと)。
【0136】
特定の実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、ヘテロ二量体化を容易にするおよび/または促進するためにFc領域の界面における1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。これらの修飾は、第1のFcポリペプチドへの隆起および第2のFcポリペプチドへの空洞の導入を含み、ここでは、第1および第2のFcポリペプチドの相互作用を促進して、ヘテロ二量体または複合体を形成するために、隆起を空洞中に位置させることができる。これらの修飾を有する抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である、例えば、米国特許第5,731,168号に記載されている。
【0137】
種々の技術をVHHまたは単一ドメイン抗体の生成のために使用することができる。例えば、VHHは、ラクダを免疫すること、およびそこからハイブリドーマを得ること、または当技術分野で公知の分子生物学技術を使用して単一ドメイン抗体のライブラリーをクローニングすること、その後ファージディスプレイを使用することによって選択することなど、公知の方法によって得られ得る。
【0138】
本開示の別の態様では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、結合されている2つまたはそれ以上の単一ドメイン抗体を含み得る。単一ドメイン抗体は、配列が同一であり得、同じ標的または抗原に対する抗体であり得る。連結されたVHHの数に応じて、抗体ポリペプチドは、二価(2VHH)、三価(3VHH)、四価(4VHH)であり得、またはそれより高い価数の分子を有し得る。
【0139】
コンジュゲート
いくつかの実施形態では、抗LAG-3抗体ポリペプチドは、コンジュゲート部分をさらに含む。コンジュゲート部分は、抗体ポリペプチドと連結することができる。コンジュゲート部分は、抗体ポリペプチドと結合することができる非タンパク質性部分である。種々のコンジュゲート部分を、本明細書において提供される抗体ポリペプチドと連結してもよいということが考慮される(例えば、“Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr.(eds.),Carger Press,New York,(1989)を参照のこと)。これらのコンジュゲート部分を、その他の方法の中でも、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体形成、会合、ブレンドまたは付加によって抗体ポリペプチドと連結してもよい。
【0140】
特定の実施形態では、本明細書において開示される抗体ポリペプチドを、1つまたは複数のコンジュゲート部分との結合に利用され得る特定の部位をエピトープ結合部分の外側に含有するように、遺伝子操作してもよい。例えば、このような部位は、コンジュゲート部分との共有結合を容易にするために、1つまたは複数の反応性アミノ酸残基、例えば、システインまたはヒスチジン残基などを含み得る。
【0141】
特定の実施形態では、抗体を、コンジュゲート部分と間接的に、または別のコンジュゲート部分を介して連結してもよい。例えば、抗体ポリペプチドを、ビオチンにコンジュゲートしてもよく、次いで、アビジンにコンジュゲートされている第2のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートしてもよい。コンジュゲートは、クリアランス改変剤、毒素(例えば、化学療法剤)、検出可能な標識(例えば、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識または酵素-基質標識)、または精製部分であり得る。
【0142】
「毒素」は、細胞にとって有害である、または細胞に損傷を与え得る、もしくは死滅させ得る任意の薬剤であり得る。毒素の例として、制限するものではないが、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DMI、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカププリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ〔thioepa〕クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびにチューブリン結合剤が挙げられる。
【0143】
検出可能な標識の例として、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサスレッド)、酵素基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32P、その他のランタニド)、発光標識、発色団部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子または検出用金を挙げることができる。
【0144】
特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、抗体の半減期を増大するのに役立つクリアランス変性部分であり得る。例示的例として、水溶性ポリマー、例えば、PEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、分岐していても、非分岐であってもよい。抗体と結合しているポリマーの数は、変わることがあり、1つより多いポリマーが結合される場合には、同一分子である場合も、異なる分子である場合もある。
【0145】
特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、磁性ビーズなどの精製部分であり得る。
【0146】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、コンジュゲートの基材として使用される。
【0147】
ポリヌクレオチドおよび組換え法
本開示は、抗LAG-3抗体ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0148】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、本明細書において使用される場合、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、ならびに一本鎖または二本鎖型のそのポリマーを指す。特に限定していなければ、用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有するポリヌクレオチドを包含する。特に示していなければ、特定のポリヌクレオチド配列はまた、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルトログ、SNP、および相補的配列ならびに明白に示された配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換されている配列を作成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);およびRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)を参照のこと)。
【0149】
特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および/もしくは32に示される1つまたは複数のヌクレオチド配列、ならびに/または少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)の配列同一性を有するその相同配列、ならびに/または縮重置換のみを有し、本明細書において提供される例示的な抗体の可変領域をコードするその変異体を含む。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、シーケンシングされる。コードするDNAはまた、合成法によって得ることもできる。
【0150】
抗LAG-3抗体ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、表3に示されるような配列を含む)を、当技術分野で公知の組換え技術を使用して、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のために、ベクター中に挿入できる。多数のベクターが入手可能である。ベクター構成成分は、一般に、それだけには限らないが、以下のうち1つまたは複数を含む:シグナル配列、複製起点、1種または複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および転写終結配列。
【0151】
本開示は、抗体ポリペプチドをコードする本明細書において提供される核酸配列、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーを含有するベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。ベクターの例としては、それだけには限らないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)、λファージ、およびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR 2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bos等が挙げられる。
【0152】
抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入できる。本明細書においてベクター中のDNAをクローニングまたは発現させるための適した宿主細胞として、上記の原核生物、酵母またはより高度の真核生物細胞がある。この目的のために適した原核生物として、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、エシェリキア属〔Escherichia〕、例えば、大腸菌〔E. coli〕、エンテロバクター属〔Enterobacter〕、エルウィニア属〔Erwinia〕、クレブシエラ属〔Klebsiella〕、プロテウス属〔Proteus〕、サルモネラ属〔Salmonella〕、例えば、サルモネラ・チフィリウム〔Salmonella typhimurium〕、セラチア属〔Serratia〕、例えば、セラチア・マルセッセンス〔Serratia marcescans〕および赤痢菌属〔Shigella〕などの腸内細菌科〔Enterobacteriaceae〕、ならびにB.スブチリス〔subtilis〕およびB.リケニフォルミス〔licheniformis〕などのバチルス属〔Bacilli〕、P.エルジノーサ〔aeruginosa〕などのシュードモナス属〔Pseudomonas〕およびストレプトマイセス属〔Streptomyces〕が挙げられる。
【0153】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核細胞微生物は、抗LAG-3抗体ポリペプチドを発現させるための適したクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ〔Saccharomyces cerevisiae〕または一般的なパン酵母は、下等真核細胞宿主微生物の中で最もよく使用されている。しかし、シゾサッカロミセス・ポンベ〔Schizosaccharomyces pombe〕;例えば、K.ラクチス〔lactis〕、K.フラギリス〔fragilis〕(ATCC12,424)、K.ブルガリクス〔bulgaricus〕(ATCC16,045)、K.ウィッカーアミー〔wickeramii〕(ATCC24,178)、K.ワルチー〔waltii〕(ATCC56,500)、K.ドロソフィラルム〔drosophilarum〕(ATCC36,906)、K.サーモトレランス〔thermotolerans〕およびK.マーキシアヌス〔marxianus〕などのクリベロミセス属〔Kluyveromyces〕宿主;ヤロウイア属〔yarrowia〕(EP402,226);ピキア・パストリス〔Pichia pastoris〕(EP183,070);カンジダ属〔Candida〕;トリコデルマ・リーゼイ〔Trichoderma reesia〕(EP244,234);アカパンカビ〔Neurospora crassa〕;シュワニオミセス・オクシデンタリス〔Schwanniomyces occidentalis〕などのシュワニオミセス属〔Schwanniomyces〕;および例えば、アカパンカビ属〔Neurospora〕、アオカビ属〔Penicillium〕、トリポクラジウム属〔Tolypocladium〕ならびにA.ニデュランス〔A.nidulans〕およびクロコウジカビ〔A.niger〕などのアスペルギルス属〔Aspergillus〕宿主などの糸状菌などの、いくつかのその他の属、種および株が一般に入手可能であり、本明細書において有用である。
【0154】
本明細書において提供されるグリコシル化抗体または抗原断片の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変異体ならびにヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕(イモムシ)、ネッタイシマカ〔Aedes aegypti〕(蚊)、ヒトスジシマカ〔Aedes albopictus〕(蚊)、キイロショウジョウバエ〔Drosophila melanogaster〕(ショウジョウバエ)およびカイコ〔Bombyx mori〕などの宿主に由来する対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ〔Autographa californica〕NPVのL-1変異体およびカイコ〔Bombyx mori〕NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、このようなウイルスは、本明細書において、本発明に従って、特に、ヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕細胞のトランスフェクションのためのウイルスとして使用され得る。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物も宿主として使用され得る。
【0155】
しかし、関心は、脊椎動物細胞において最大であり、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、日常的な手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例として、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(293または懸濁培養における成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫株(Hep G2)がある。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は、293F細胞である。
【0156】
宿主細胞は、抗LAG-3抗体ポリペプチド生成のために上記の発現またはクローニングベクターを使用して形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて改変された従来の栄養培地で培養される。別の実施形態では、抗体ポリペプチドは、当技術分野で公知の相同組換えによって生成され得る。
【0157】
本明細書において提供される抗体ポリペプチドを生成するために使用される宿主細胞は、種々の培地で培養され得る。HamのF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同4,657,866号;同4,927,762号;同4,560,655号;または同5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または再発行米国特許第30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)およびグルコースまたは同等のエネルギー供給源を補給され得る。任意のその他の必要な栄養補助剤もまた、当業者に公知であろう適当な濃度で含まれ得る。温度、pHなどといった培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共にこれまでに使用されたものであり、当業者には明らかとなろう。
【0158】
組換え技術を使用する場合には、抗体ポリペプチドは、細胞内、細胞膜周辺腔において生成され得るか、または培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で生成される場合には、第1のステップとして、微粒子状細片、宿主細胞または溶解した断片のいずれかが例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)には、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。手短には、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍する。細胞細片は、遠心分離によって除去され得る。抗体が培地中に分泌される場合には、このような発現系から得られた上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用してまず濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が前記のステップのいずれにも含まれることがあり、外来性の混入物質の成長を防ぐために、抗生物質が含まれることがある。
【0159】
細胞から調製される抗LAG-3抗体ポリペプチドは、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。
【0160】
特定の実施形態では、固相で固定化されたプロテインAは、抗体ポリペプチドの免疫親和性精製のために使用される。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに応じて変わる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖をベースとする抗体を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプに対して、およびヒトγ3に対して推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。親和性リガンドが付着されるマトリックスは、最も多くはアガロースであるが、その他のマトリックスが利用可能である。コントロールドポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの力学的に安定なマトリックスは、アガロースを使用して達成され得るものよりも迅速な流速およびより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、精製にはBakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、ニュージャージー州、フィリップスバーグ)が有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のためのその他の技術も、回収されるべき抗体に応じて利用可能である。
【0161】
任意の予備的精製ステップ(複数可)後に、対象とする抗体および混入物質を含む混合物は、約2.5~4.5の間のpHの溶出バッファーを使用する、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施される低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付され得る。
【0162】
医薬組成物
本開示は、抗LAG-3抗体ポリペプチドおよび1種または複数の医薬上許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0163】
本明細書において開示される医薬組成物において使用するための医薬上許容される担体として、例えば、医薬上許容される液体、ゲルまたは固体担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張化剤、バッファー、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁剤/分配剤、封鎖剤またはキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤または非毒性補助物質、当技術分野で公知のその他の成分またはそれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0164】
適した成分として、例えば、抗酸化剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、バッファー、保存料、滑沢剤、香味料、増粘剤、着色剤、乳化剤または糖およびシクロデキストリンなどの安定化剤を挙げることができる。適した抗酸化剤として、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよび/または没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書において開示されるように、本明細書において提供されるような抗体ポリペプチドおよびコンジュゲートを含む組成物中に、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤を含めることによって、抗体ポリペプチドの酸化が減少する。この酸化の低減は、結合親和性の喪失を防ぐまたは低減し、それによって、抗体安定性を改善し、有効期間を最大化する。したがって、特定の実施形態では、本明細書において開示されるような1種または複数の抗体ポリペプチドおよびメチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤を含む組成物が提供される。抗体ポリペプチドを、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤と混合することによって、本明細書において提供されるような抗体ポリペプチドの酸化を防ぐための、有効期間を延長するための、および/または有効性を改善するための方法がさらに提供される。
【0165】
さらに例示するために、医薬上許容される担体として、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液またはデキストロースおよび乳酸リンゲル注射液などの水性ビヒクル、植物起源の不揮発性油、綿実油、トウモロコシオイル、ゴマ油またはピーナッツオイルなどの非水性ビヒクル、静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張剤、リン酸またはクエン酸バッファーなどのバッファー、重硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの懸濁剤および分散剤、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)などの封鎖剤またはキレート化剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を挙げることができる。担体として利用される抗菌剤を、複数回用量容器中の医薬組成物に添加してもよく、これとして、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。適した賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールを挙げることができる。適した非毒性補助物質として、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンもしくはシクロデキストリンなどの薬剤を挙げることができる。
【0166】
医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、丸剤、カプセル剤、錠剤、徐放性製剤または散剤であり得る。経口製剤として、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどといった標準担体を挙げることができる。
【0167】
特定の実施形態では、医薬組成物は、注射用組成物に製剤化される。注射用医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、エマルジョンまたは液体溶液、懸濁液またはエマルジョンを作製するのに適した固体形態などの任意の従来の形態で調製され得る。注射のための調製物として、注射用に準備された滅菌および/または非発熱性溶液、皮下錠剤を含む、使用直前に溶媒と組み合わされるべく準備された凍結乾燥散剤などの滅菌乾燥可溶性製剤、注射用に準備された滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされるべく準備された滅菌乾燥不溶性製剤、ならびに滅菌および/または非発熱性エマルジョンを挙げることができる。溶液は、水性であっても、非水性であってもよい。
【0168】
特定の実施形態では、単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアルまたはニードルを備えたシリンジ中にパッケージングされる。非経口投与用のすべての調製物は、当技術分野で公知であり、実施されるように滅菌および非発熱性でなくてはならない。
【0169】
特定の実施形態では、滅菌、凍結乾燥散剤は、適した溶媒中に本明細書において開示される抗体ポリペプチドを溶解することによって調製される。溶媒は、散剤または散剤から調製された復元された溶液の安定性またはその他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤として、それだけには限らないが、水、デキストロース、ソルビトール〔solbital〕、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたはその他の適した薬剤が挙げられる。溶媒は、クエン酸、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムなどのバッファー、または一実施形態ではおよそ中性のpHの、当業者に公知のその他のこのようなバッファーを含有し得る。当業者に公知の溶液のその後の滅菌濾過と、それに続く標準条件下での凍結乾燥によって、望ましい製剤が提供される。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアル中に配分される。各バイアルは、抗LAG-3抗体ポリペプチドまたはその組成物の単一投与量または複数回投与量を含有し得る。バイアルに用量または用量のセットに必要なものを上回る少量(例えば、約10%)を過剰充填することは、正確なサンプル引き出しおよび正確な投薬を促進するために許容される。凍結乾燥散剤は、約4℃~室温などの適当な条件下で保存され得る。
【0170】
注射水による凍結乾燥散剤の復元は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。一実施形態では、復元のために滅菌および/または非発熱性水またはその他の液体の適した担体が、凍結乾燥散剤に添加される。正確な量は、与えられている選択された療法に応じて変わり、経験的に決定され得る。
【0171】
使用方法
本開示は、本明細書において提供される抗体ポリペプチドの治療上有効な量を、それを必要とする対象に投与し、それによって、LAG-3関連状態または障害を処置または予防することを含む治療方法もまた提供する。いくつかの実施形態では、LAG-3関連状態または障害は、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患である。
【0172】
癌の例として、それだけには限らないが、リンパ腫、膀胱癌、骨癌、脳および中枢神経系の癌、乳癌、子宮癌または子宮内膜癌、直腸癌、食道癌、頭頸部癌、肛門癌、消化管癌、上皮内新生物、腎臓癌または腎癌、白血病、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、黒色腫、骨髄腫、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、外陰癌、内分泌系の癌、副甲状腺癌、副腎癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、下垂体腺腫、または類表皮癌が挙げられる。
【0173】
自己免疫疾患の例として、それだけには限らないが、後天性免疫不全症候群(自己免疫成分を有するウイルス疾患であるAIDS)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルーヘルペス状皮膚炎;慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素病、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎-若年性、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スチル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合型結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性〔pemacious〕貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨大細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0174】
感染性疾患の例として、それだけには限らないが、真菌感染症、寄生虫/原虫感染症または慢性ウイルス感染症、例えば、マラリア、コクシジオイオドマイコシスイミティス〔coccidioiodmycosis immitis〕、ヒストプラスマ症、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症アルビカンス〔candidiasis albicans〕、パラコクシジオイデス症〔paracoccidioiomycosis〕、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、バイリサスカリアシス〔Baylisascariasis〕、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミイヤ属〔Cochliomyia〕、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコッカス症、象皮症、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、鞭虫症、トリパノソーマ症、蠕虫感染、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、HIV、サイトメガロウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、II型単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI、ヒト免疫不全ウイルスII、カポジウエスト肉腫関連ヘルペスウイルス伝染病、シンリングウイルス(トルクテノウイルス〔Torquetenovirus〕)、ヒトTリンパ増殖性ウイルスI、ヒトTリンパ増殖性ウイルスII、水痘帯状疱疹、JCウイルスまたはBKウイルスの感染症が挙げられる。
【0175】
本明細書において提供されるような抗体ポリペプチドの治療上有効な量は、当技術分野で公知の種々の因子、例えば、対象の体重、年齢、過去の病歴、現在の薬物適用、健康状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性および有害な副作用、ならびに投与経路および疾患発達の程度などに応じて変わる。投与量は、これらおよびその他の状況または必要条件によって示されるように、当業者(例えば、医師または獣医師)によって比例的に低減または増大され得る。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるような抗体ポリペプチドは、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療上有効な投与量で投与され得る。これらの実施形態のうち特定のものでは、抗体ポリペプチドは、約50mg/kg以下の投与量で投与され、これらの実施形態のうち特定のものでは、投与量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下または0.1mg/kg以下である。特定の実施形態では、投薬量は、治療過程にわたって変化し得る。例えば、特定の実施形態では、初期投薬量は、その後の投薬量よりも高い場合がある。特定の実施形態では、投薬量は、対象の反応に応じて処置過程にわたって変わり得る。
【0177】
投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療的応答)を提供するように調整され得る。例えば、単回用量が投与される場合も、または数回の分割用量が経時的に投与される場合もある。
【0178】
本明細書において開示される抗体ポリペプチドは、例えば、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内または皮内注射)または非経口ではない(例えば、経口、鼻腔内、眼球内、舌下、直腸内または局所)経路などの当技術分野で公知の任意の経路によって投与され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示される抗体ポリペプチドは、単独で、または1種もしくは複数のさらなる治療手段または薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書において開示される抗体ポリペプチドは、別の治療薬、例えば、化学療法剤または抗癌剤と組み合わせて投与され得る。
【0180】
これらの実施形態の特定のものでは、1種または複数のさらなる治療薬と組み合わせて投与される本明細書において開示される抗体ポリペプチドは、1種または複数のさらなる治療薬と同時に投与されてもよく、これらの実施形態の特定のものでは、抗体ポリペプチドおよびさらなる治療薬(複数可)は、同じ医薬組成物の一部として投与されてもよい。しかし、別の治療薬と「組み合わせて」投与される抗体ポリペプチドは、薬剤と同時に、または薬剤と同じ組成物中で投与されなくてもよい。別の薬剤に先立って、またはその後に投与される抗体ポリペプチドは、抗体ポリペプチドおよび第2の薬剤が、異なる経路によって投与される場合でさえ、その語句が本明細書において使用される場合、その薬剤と「組み合わせて」投与されると考えられる。可能であれば、本明細書において開示される抗体ポリペプチドと組み合わせて投与されるさらなる治療薬は、さらなる治療薬の添付文書に列挙されるスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003年(Physicians’ Desk Reference,57th Ed;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002))もしくは当技術分野で周知のプロトコールに従って投与される。
【0181】
本開示は、抗LAG-3抗体ポリペプチドを使用する方法をさらに提供する。
【0182】
いくつかの実施形態では、本開示は、サンプル中のLAG-3の存在または量を検出する方法であって、サンプルを、抗体ポリペプチドと接触させることと、サンプル中のLAG-3の存在または量を決定することとを含む方法をさらに提供する。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態を診断する方法であって、a)対象から得られたサンプルを、本明細書において提供される抗体ポリペプチドと接触させること;b)サンプル中のLAG-3の存在または量を決定すること;およびc)LAG-3の存在を、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態と相関させることを含む方法をさらに提供する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示は、任意選択で検出可能な部分にコンジュゲートされた、本明細書において提供される抗体ポリペプチドを含むキットを提供する。キットは、LAG-3の検出またはLAG-3関連の疾患の診断において有用であり得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象におけるLAG-3関連の疾患または状態を処置するための医薬の製造における、LAG-3関連の疾患または状態を診断するための診断用試薬の製造における、本明細書において提供される抗体ポリペプチドの使用も提供する。
【0186】
利点
本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、多くの態様において既存の治療に優り、有利である。例えば、既存のLAG-3抗体と比較すると、本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ヒトおよびサルLAG-3に対してより良好な結合親和性を有し、細胞表面MHC-IIに対するLAG-3の結合の遮断においてより有効であり、LSECtinおよびガレクチン-3に対するLAG-3結合の遮断においてより有効であり、IL-2経路活性を増強し、およびIFNγ産生の誘導においてより有効である。本明細書において提供される抗体ポリペプチドはまた、それが、対照抗体が結合するものとは異なるエピトープに結合するという点においても有利である。本明細書において提供される抗体ポリペプチドは、ピコモル濃度レベルに達する親和性でマウスLAG-3と結合し、これはマウスモデルを使用するin vivo機能的アッセイにとって有利である。
【実施例
【0187】
以下の実施例は、特許請求された本発明をより良好に例示するために提供され、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。以下に記載されるすべての特定の組成物、材料および方法は、全体で、または一部で本発明の範囲内に入る。これらの特定の組成物、材料および方法は、本発明を制限するものではなく、単に、本発明の範囲内に入る特定の実施形態を例示するものである。当業者は、発明の能力を行使することなく、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成物、材料および方法を開発し得る。本発明の範囲内にとどまりながら本明細書に記載される手順において多数の変法を行うことができるということが理解されよう。このような変法が本発明の範囲内に含まれることは本発明者らの意図である。
【0188】
[実施例1]
材料および方法
1.1 免疫原の作製
ヒトLAG-3 ECD(Genbank受託番号NP_002277)、カニクイザル(cyno)LAG-3 ECD(Genbank受託番号XP_005570011.1)、およびマウスLAG-3 ECD(Genbank受託番号NP_032505)をコードする核酸配列は、Sangon Biotechにより合成された。合成した核酸から増幅したLAG-3遺伝子断片を、ヒトFc-、マウスFc-、またはHis-タグをそれぞれ含有する発現ベクターpcDNA3.3(ThermoFisher)に挿入した。Expi293細胞(Invitrogen-A14527)に、精製ECD発現ベクターをトランスフェクトし、Expi293(商標)発現培地(ThermoFisher)中、37℃、5%COで5日間培養した。回収した上清をタンパク質精製のために使用した。Hisタグタンパク質を、Ni-NTAカラム(GE healthcare-17-5247-01)を使用して精製し、Fcタグタンパク質をプロテインAカラム(GE healthcare-17-5438-02)を使用して精製した。
【0189】
1.2 ベンチマーク抗体(BMK Ab)(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)の生成
抗ヒトLAG-3ベンチマーク抗体W339-BMK1およびW339-BMK7は、特許米国特許出願公開第20110150892号A1および米国特許出願公開第2017/0101472号A1にそれぞれ開示される情報に基づいて合成した。W339-BMK1は、クローン「25F7」の配列に基づき、W339-BMK7は、クローン「H4sH15482P」の配列に基づいた。W339-BMK8は、WO2015138920A1におけるクローン「BAP050-hum01」の配列に基づいた。ベンチマーク抗体はすべて、S228P変異を有するIgG4アイソタイプのヒト定常領域によって改変されている。
【0190】
合成された遺伝子配列を、プラスミドpcDNA3.3に挿入し、expi293F細胞に一過性にトランスフェクトした。5日間培養後、一過性にトランスフェクトした細胞培養から回収した上清を、タンパク質精製のために使用した。ベンチマーク抗体を、プロテインAカラム(GE healthcare-17-5438-02)によって上清から精製した。
【0191】
1.3 安定な細胞株の確立
ヒト、マウス、およびカニクイザルLAG-3トランスフェクタント細胞株を作製した。手短には、Flp-In-293またはCHO-K1に、Lipofectamine2000トランスフェクションキット(ThermoFisher-11668027)を使用して、製造元のプロトコールに従って全長のヒトLAG-3遺伝子(Genbank受託番号NP_002277)を含有するpcDNA3.3発現ベクターをトランスフェクトした。Flp-In-CHOおよび293F細胞をそれぞれ、マウスおよびカニクイザルLAG-3(Genbank受託番号NP_032505およびXP_005570011.1)によるトランスフェクションのために使用した。トランスフェクションの48~72時間後、トランスフェクトした細胞を選択のためにブラスチシジンを含有する培地中で培養した。LAG-3発現をフローサイトメトリーによって試験した。ヒト、カニクイザル、およびマウスLAG-3を発現する安定な細胞株を、限界希釈によって得た。
【0192】
2.VHHの作製
2.1 免疫
ラクダ類動物においてLAG-3に対する液性免疫応答を誘導するために、動物に、組換えmFcタグを有するヒトLAG-3 ECDおよび組換えhFcタグを有するマウスLAG-3 ECDタンパク質をそれぞれ皮下注射した。免疫は1~3週間の間隔で、注射1回あたり50μg~200μgの範囲の用量で、合計8用量によって行った。
【0193】
2.2 血清中力価の検出
免疫動物血清中の抗ヒトLAG-3および抗マウスLAG-3力価をそれぞれ、ヒトLAG-3.ECD.hisおよびマウスLAG-3.ECD.hisタンパク質を使用してELISAによって検出した。96ウェルプレート(Nunc)を、ヒトまたはマウスLAG-3 ECDの可溶性タンパク質によって4℃で一晩コーティングした。コーティングしたプレートをブロッキングおよび洗浄後、免疫前または免疫血清の連続希釈液をコーティングプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。次にプレートを洗浄し、その後二次抗体であるヤギ抗ラマIgG-HRP(NB7242)と共に1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を添加し、呈色反応を2M HClによって停止させた。450nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダー(Molecular Device)を使用して読み取った。
【0194】
2.3 ライブラリーの構築
血液サンプル50mlを、最後の2回の注射の6~7日後にそれぞれ回収した。末梢血単核球細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)中での密度勾配遠心分離によって精製し、およそ8×10個のPBMCを単離した。総RNAを、これらのPBMCから抽出し、オリゴ-dTおよびランダムプライマーおよびSuperScript III First-Strand Synthesis SuperMixシステム(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を使用して製造元の推奨に従ってcDNAに転写した。
【0195】
次いで、精製cDNAを鋳型として使用して、シグナルペプチドドメイン特異的プライマーおよびCH2ドメイン特異的プライマーを使用することによって、Ig重鎖コード遺伝子セグメントのレパートリーを増幅した。この増幅によって、およそ900bp(従来のIgGを表す)および700bp(CH1ドメインを欠く重鎖のみのIgGを表す)のPCR断片が得られた。重鎖コード遺伝子の2つのクラスをアガロースゲル上でサイズ分離し、重鎖のみのIgGをコードする遺伝子を、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Hilden、Germany)によって精製した。精製した断片を鋳型として使用し、フレームワーク1(FR1)およびフレームワーク4(FR4)特異的プライマー対を使用してVHHレパートリーを増幅した。この増幅手順は、FR1の5’末端にSfiI部位を導入し、FR4の3’末端にNotI制限部位を導入した。約300~400bpのPCR増幅VHH遺伝子のレパートリーをアガロースゲルにロードし、QIAquick Gel Extraction Kitによって精製した。次に、精製断片を、SfiIおよびNotIによって切断し、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen、Hilden、Germany)によって精製した。VHH遺伝子断片を最終的にファージミドベクターpFL249にライゲートし、大腸菌TG1に電気的形質転換した。形質転換後、TG1細胞を、SOC培地中、200rpmで振とうさせながら1時間培養した後、大腸菌TG1を、100μg/mL炭水化物および1%(重量/体積)グルコースを補充した2YT寒天プレート上に播種し、37℃で一晩培養した。翌日、コロニーを、1/3(体積/体積)の80%グリセロールを補充した液体2YT培地にこすり取り、-80℃で保存した。
【0196】
2.4 パニング
LAG-3と有効に結合するVHH断片を選択するため、タンパク質パニング法を使用した。LAG-3 ECDタンパク質20μgを5ml Immunotube〔immune tube〕(Nunc、Rochester、MN、USA)中、400rpmで振とうさせながら4℃で一晩固定化した。翌日、非結合タンパク質を洗浄して除去後、チューブを10%スキムミルクによって25℃で1時間ブロッキングした。免疫ファージライブラリからのおよそ1012cfuのファージを、10%スキムミルクによってブロッキングした非コーティングImmunotubeに添加し、非特異的結合ファージを枯渇させた後、上記のように処置したファージを、LAG-3 ECDタンパク質でコーティングしたチューブに添加し、25℃で2時間インキュベートした。PBSTによって十分に洗浄後、非特異的に吸着したファージを捨て、標的に特異的に結合したファージをグリシン-HCl(pH2.2)によって溶出した後、1M Tris-HCl(pH8.0)によって中和し、指数的に成長するTG1細胞に感染させた。感染したTG1細胞を、2%(重量/体積)グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを含有する2YT寒天プレート上に播種し、37℃で一晩培養した。翌日、2YTを有するプレートからコロニーをこすり取り、1/3(体積/体積)の80%グリセロール中に添加することによって-80℃で凍結した。こすり取った細菌ライブラリーを、100μg/mlアンピシリンを含有する2YT-炭水化物に接種し、ファージ救出のために50μg/mlカナマイシンおよび1mM IPTGを有する2YT培地中でヘルパーファージM13Ko7を感染させ、これを次のラウンドのパニングのための投入物として使用した。サルおよびマウスLAG-3と交差反応するファージ粒子を探り出すため、サルLAG-3およびマウスLAG-3タンパク質による代替のパニングを使用することができる。
【0197】
2.5 スクリーニング
所望のパニングステップの後、プレート上で成長させたファージ感染TG1細胞コロニーをこすり取り、VHH断片を含有するpFL249ファージミドを、NucleoSpin(登録商標)プラスミド(Macherey-Nagel)を使用して抽出した。VHH断片を、SfiIおよびNotI(10~20U/μg、NEB)によるpFL249プラスミドの消化によってクローニングし、次いで6-hisおよびc-Myc-タグの遺伝子を含有する発現ベクターpETbacにライゲートした。ライゲーション産物を、大腸菌BL21(DE3)コンピテント細胞(TIANGEN)において形質転換した後、ZYM-5052培地中、230rpmで振とうさせながら25℃で48時間培養した。大腸菌BL21培養物を4000rpmで20分間遠心分離し、上清を収集した。LAG-3陽性VHHクローンを同定するために、上清をELISAおよびFACS結合アッセイによってスクリーニングした。
【0198】
ELISAアッセイを第1のスクリーニング方法として使用して、VHH大腸菌培養上清のLAG-3 ECDタンパク質との結合を試験した。手短には、96ウェルプレート(Nunc)を、ヒトまたはマウスLAG-3 ECDタンパク質の可溶性タンパク質によって4℃で一晩コーティングした。ブロッキングおよび洗浄後、大腸菌上清をコーティングプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートを洗浄した後、二次抗体であるヤギ抗-c-Myc-HRP(Bethyl)と共に1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を添加し、呈色反応を2M HClによって停止させた。450nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダー(Molecular Device)を使用して読み取った。
【0199】
細胞膜上に発現されたコンホメーショナルLAG-3分子上のLAG-3抗体の天然の結合を確認するために、フローサイトメトリー分析を、LAG-3トランスフェクト細胞株および親の対照細胞株について実施した。細胞を最初に、96ウェルU底プレート(BD)において1×10個/ウェルの密度でVHH大腸菌上清サンプルと共に4℃で1時間インキュベートした後、二次抗体であるマウス抗c-Myc-ビオチン(Sigma)と共に4℃で30分間インキュベートし、その後ストレプトアビジンPE(eBioscience)と共に4℃の暗所で20分間インキュベートした。各ステップの間に2回の洗浄を行い、細胞をフローサイトメトリー(Intellicyt)分析のために1×PBS/1%BSA中に浮遊させた。
【0200】
2.6 シーケンシング
ELISAおよびFACSスクリーニングによって選択した陽性大腸菌クローンを、VHH遺伝子のヌクレオチドシーケンシングのためにBiosune(Shanghai、China)に送付した。シーケンシング結果を、CLC Main Workbench(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して分析した。
【0201】
2.7 VHHタンパク質生成
VHH遺伝子を保有するBL21大腸菌クローンを、ZYM-5052培地40ml中、230rpmで振とうさせながら25℃で48時間培養した。BL21上清中のhis-およびc-Myc-タグ融合VHHタンパク質の発現を、SDS-PAGEによって確認した後、Ni-NTAカラムを使用して精製した。VHHの純度を、SDS-PAGEおよび分析用SEC-HPLCによって決定した。低い上清発現クローンに関して、大腸菌細胞の超音波(Scientz、Ningbo、China)破壊を使用して、可溶性VHHタンパク質を放出させ、全細胞ライセートを精製した。
【0202】
2.8 キメラVHH-Fc(hIgG4)タンパク質の生成
対象とするクローンをVHH-Fc(uIgG4)融合抗体に変換した。手短には、VHH遺伝子を、適切な制限部位を含有するVHH特異的クローニングプライマーを使用してpET-bacベクターからPCR増幅し、次に改変ヒトIgG4 Fc(S228P)発現pcDNA3.3ベクターへの融合によってクローニングし、VHH-Fc(uIgG4)キメラ抗体の対応するクローンを作製した。293F細胞に、抗体発現のためにベクターを一過性にトランスフェクトした。抗体を含有する細胞培養上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。
【0203】
3.抗体の最適化
3.1 ヒト化
LAG-3に対して高い親和性および特異性を有するVHHを、ヒト化のために選択した。VHH鎖をヒト化するために「最良適合」アプローチを使用した。VHHフレームワーク領域のアミノ酸配列を、ヒト生殖系列V-遺伝子データベースに対してblast検索し、Kabat CDR定義を使用して、上位ヒットのヒトCDR配列をVHH CDR配列で置き換えることによって、ヒト化VHH配列を作製した。フレームワーク領域における特定の残基を、親和性を維持するためにラクダ起源の残基に復帰変異させた。ヒト化遺伝子は、GENEWIZによって逆翻訳され、哺乳動物発現に関してコドン最適化され、合成された。これらの遺伝子を、適切な制限部位を含有するクローニングプライマーと共に再増幅し、改変pcDNA3.3ベクターにクローニングし、ヒトIgG4 Fc(S228P)領域に連結したヒト化VHHを発現させた。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してLAG-3結合に関して試験した後、適切な親和性を有する変異体をヒト化抗体リードとして選択した。
【0204】
3.2 親和性成熟
親VHHクローンの3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)の各アミノ酸を、部位特異的変異誘発法を使用して他の20個のアミノ酸へと個々に変異させた。20個のアミノ酸をコードするNNSコドンを含有するDNAプライマーを使用して、各々の標的化CDR位置に変異を導入した。個々の縮重プライマーを部位特異的変異誘発反応において使用した。反応産物200ngをBL21にエレクトロポレーションし、96ウェル深底プレート(Axygen)において発現させた。VHH変異体を、96ウェル深底プレートにおいて成長させた細菌の上清を用いたELISAアッセイによってスクリーニングした。親クローンの1.5倍超のOD450を示すクローンを、変異体の親和性のSPRによってさらにスクリーニングした。
【0205】
抗原に対する結合にとって有益であることが決定されたVHHにおける点変異を、増強された親和性相乗効果を得るためにさらに組み合わせた。組み合わせた変異体を、GENEWIZにおいて合成し、BL21において発現させた。変異体の上清をSPRによって検出した。親和性成熟後、リポーター遺伝子アッセイ(RGA)反応において強い応答を示す合計で9つのヒト化VHH抗体を選択し、ヒトIgG4 Fc(S228P)領域と融合させた。9つの変異VHH-Fcキメラ抗体(VHH Ab)を、W3396-R2-1、W3396-R2-2、W3396-R2-3、W3396-R2-6、W3396-R2-10、W3396-R2-11、W3396-R2-12、W3396-R2-13およびW3396-R2-26H2として省略して表す。図1Aおよび1Bに示すように、9つの親和性成熟VHH Abは、RGAアッセイにおいて親VHH Ab(W3396-Z4と略される)と比較して増強された反応性を示す。
【0206】
4.抗体の特徴付け
4.1 LAG-3抗体の細胞表面LAG-3との結合
試験抗体(W3396-R2-2およびW3396-R2-1)、ベンチマーク抗体(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)、および陰性対照抗体(アイソタイプIgG4)の連続希釈液をそれぞれ、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞と共にインキュベートし、抗体の細胞表面LAG-3との結合を、フローサイトメトリー(FACS)を介してPE標識二次抗体によって検出した。同様に、カニクイザルまたはマウスLAG-3に対する交差反応性を、カニクイザルまたはマウスLAG-3トランスフェクト細胞株によりFACSによって試験した。図2Aおよび2Bは、W3396-R2-2およびW3396-R2-1の両方がそれぞれ、細胞表面のヒトおよびマウスLAG-3に結合することを示す。ヒトLAG-3との結合EC50は、ベンチマーク抗体(BMK Ab)のものより良好であった。BMK AbはマウスLAG-3に結合しない(図2B)。W3396-R2-13およびW3396-R2-1はまた、細胞表面のサルLAG-3との結合に関しても試験され、BMK Abのものと同等またはそれより良好なEC50値を示した(図2Cを参照のこと)。
【0207】
4.2 FACSによる、LAG-3抗体によるLAG-3の細胞表面MHC-IIとの遮断
抗体の連続希釈液を、1%BSA-PBS中でマウスFc(mFc)タグを有するヒトLAG-3と共に4℃で30分間予め混合した。混合物を、Raji細胞を播種した96ウェルプレートに移した。ヤギ抗マウスIgG Fc-PE抗体を使用して、LAG-3タンパク質のRaji細胞との結合を検出した。平均蛍光強度(MFI)を、フローサイトメトリーによって評価し、FlowJoによって分析した。マウスLAG-3のマウス細胞表面MHC-IIとの結合の遮断を試験するために、mFcタグを有するマウスタンパク質およびA20細胞を使用した。図3Aは、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)のものと同等またはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3の、Raji細胞上のMHC-IIとの結合を遮断することを示している。図3Cは、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、2.4~2.9nMのIC50で、マウスLAG-3の、A20細胞上のマウスMHC-IIとの結合を遮断することを示している。図3Bは、W3396-R2-1およびW3396-R2-2が、0.99~1.78nMのIC50で、ヒトLAG-3の、A20細胞上のヒトMHC-IIとの結合を遮断することを示している。
【0208】
4.3 ELISAによるLAG-3のLSECtinおよびガレクチン-3との遮断
96ウェルプレートを、0.5μg/mlのヒトLSECtinまたはガレクチン-3によってそれぞれ、4℃で一晩コーティングした。試験抗体(W3396-R2-1およびW3396-R2-13)、ベンチマーク抗体(W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8)、および陰性対照抗体(アイソタイプIgG4)の連続希釈液を、1%BSA-PBS中でmFcタグを有するヒトLAG-3と4℃で30分間予め混合した。ブロッキングおよび洗浄後、混合物をプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。次にプレートを洗浄し、二次抗体であるヤギ抗マウスIgG Fc-HRPと共に1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を添加し、呈色反応を2M HClによって停止させた。450nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して読み取った。図4Aおよび図4Bは、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、BMK Abのものと同等であるかまたはそれより良好なIC50で、ヒトLAG-3のLSECtinとの結合を遮断することを示す。図4Cおよび4Dは、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13が、ヒトLAG-3のガレクチン-3との結合を遮断することを示す。
【0209】
4.4 表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験したLAG-3の結合速度論親和性
抗体を、Biacore 8Kを使用するSPRアッセイによって、ヒトLAG-3に対する親和性および結合速度論に関する特徴を調べた。ヤギ抗ヒトFcをセンサーチップ(CM5)に予め固定化し、抗LAG-3抗体を、チップに注入した際に捕捉した。種々の濃度のヒトLAG-3タンパク質およびランニングバッファーを、結合相300秒の間、センサーチップの中に流速30μL/分で流し、その後3600秒間解離させた。結合曲線(Kon)および解離曲線(Koff)を、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して1:1 Langmuir結合モデルにフィットさせた。平衡解離定数(KD)は、Koff/Konの比から計算される。表4Aおよび4Bは、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13のヒトLAG-3に対する親和性、およびマウスLAG-3に対する親和性を示す。
【0210】
【表4A】
【0211】
【表4B】
【0212】
4.5 FACSによって試験した細胞表面LAG-3分子に対するLAG-3抗体の結合親和性
細胞表面LAG-3に対する抗体結合親和性をFACS分析によって測定した。ヒトLAG-3トランスフェクト細胞を、96ウェルU底プレートに5×10個/mlの密度で移した。試験抗体を洗浄バッファー(1×PBS/1%BSA)中で連続希釈し、細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。二次抗体であるヤギ抗ヒトIgG Fc FITC(3.5モルFITC/モルIgG)を添加し、4℃の暗所で0.5時間インキュベートした。次に細胞を1回洗浄し、1×PBS/1%BSAに再浮遊させ、フローサイトメトリーによって分析した。蛍光強度を、定量的ビーズ(QuantumTM MESF Kits、Bangs Laboratories、Inc.)に基づいて結合分子/細胞に変換する。表5Aおよび5Bは、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)と比較した場合の、異なるバッチの実験における細胞表面のヒト、カニクイザル、およびマウスLAG-3に対するW3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13の親和性を示す。
【0213】
【表5A】
【0214】
【表5B】
【0215】
4.6 ヒトCD4に対する交差反応性
ヒトCD4に対する交差反応性をELISAによって測定した。プレートを1μg/mlのヒトCD4によって4℃で一晩コーティングした。ブロッキングおよび洗浄後、1μg/mlのLAG-3抗体をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。次にプレートを洗浄し、その後ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPと共に45分間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を添加し、呈色反応を2M HClによって停止させた。450nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して読み取った。このアッセイは、W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13がヒトCD4に対して交差反応性がないことを示している(図5Aおよび5B)。
【0216】
4.7 W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8に対するエピトープビニング
LAG-3抗体の結合エピトープを、FACSアッセイによってベンチマーク抗体W339-BMK1、W339-BMK7およびW339-BMK8に対してビニングした。手短には、0.3μg/mlのビオチン化W339-BMK1を、W3396-R2-1、W3396-R2-13、またはW339-BMK1 Abの連続希釈液と予め混合した後、混合物をヒトLAG-3トランスフェクト細胞と共に1時間インキュベートした。ストレプトアビジン-PE抗体(Jackson Immunoresearch Lab)を使用して、ベンチマーク抗体の細胞との結合を検出した。同様に、W339-BMK7およびW339-BMK8に対するビニング試験を上記のように実施した(ビオチン化W339-BMK7およびW339-BMK8は1μg/mlで使用した)。MFIをフローサイトメトリーによって評価し、FlowJoによって分析した。図6は、W3396-R2-1およびW3396-R2-13がそれぞれ、W339-BMK1(図6A)、W339-BMK7(図6B)、およびW339-BMK8(図6C)とは異なるエピトープビンを有することを示している。
【0217】
4.8 エピトープマッピング
ヒトLAG-3に関するアラニンスキャニング実験を行って、抗体結合に対するその効果を評価した。ヒトLAG-3上のアラニン残基をグリシンコドンに変異させて、他のすべての残基(システイン残基を除く)をアラニンコドンに変異させた。ヒトLAG-3細胞外ドメイン(ECD)の各々の残基に関して、2つの連続的PCRステップを使用して点アミノ酸置換を行った。ヒトLAG-3のECDドメイン1およびドメイン2ならびにC末端mFCタグをコードするpcDNA3.3-LAG-3-D12.mFCプラスミドを鋳型として使用して、一組の変異誘発プライマーを、QuikChangeライトニングマルチサイト特異的変異誘発キット(Agilent technologies、Palo Alto、CA)を使用して第1ステップPCRのために使用した。変異体鎖合成反応の後に、Dpn Iエンドヌクレアーゼを使用して親鋳型を消化した。第2ステップPCRにおいて、CMVプロモーター、LAG-3の細胞外ドメイン1およびドメイン2(D12)、mFc-タグおよび単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)ポリアデニル化で構成される線形のDNA発現カセットを増幅し、Expi293細胞(Life Technologies、Gaithersburg、MD)において37℃で一過性に発現させ、プロテインA-HPLCおよびmFC-ELISA定量キット(Bethyl、USA)によって定量した。モノクローナル抗体W3396-R2-2および3 BMK Ab(すなわち、W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)(2μg/ml)を、ELISA結合アッセイのためにプレートにコーティングした。定量したLAG-3変異体またはヒトLAG-3-ECD.D12.mFCタンパク質を含有する上清と相互作用させた後、HRPコンジュゲート抗mFC抗体(1:5000;BetHyl、USA)を検出抗体として添加した。対照変異体の平均値に従って吸光度を正規化した。追加のカットオフを結合の変化倍率(<0.75)に設定後、最終的に決定されたエピトープ残基を同定した。
【0218】
結果は、LAG-3が、422アミノ酸(V29~L450)の細胞外ドメインを有することを示し、ドメイン1の132アミノ酸(G37~Q168)を、エピトープマッピングのためにアラニンスキャニング実験において実施した。既存のLAG-3構造がないことから、LAG-3(アミノ酸:31~431)の構造を、ミエリン関連糖タンパク質(PDB:5FLU、配列同一性18%)の公知の構造に基づいてモデルとした。アラニンスキャニング結果に基づいて、ホットスポットを、表6A~6Dおよび図12A~12Eに示すように同定した。結論すると、LAG-3は、422アミノ酸(V29~L450)の細胞外ドメインを有し、ドメイン1の132アミノ酸(G37~Q168)を、エピトープマッピングのためにアラニンスキャニング実験において実施した。配列同一性がわずか18%であることから、モデルおよび表示のホットスポットは単なる参照である。BMK Abの中では、W339-BMK1(BMS)が、本発明者らのエピトープマッピング結果と一致するそのエピトープを主張した。W339-BMK1/BMK7様Abの1つの特徴は、エクストラループ(G70~Y99)に属するW92に結合することであるが、W339-BMK8様AbはL134~P138領域に結合する。W3396-R2-2は、W339-BMK8様Abに属するが、W3396-R2-2はユニークエピトープ、すなわちV104に結合し、これは3つの試験したベンチマーク抗体では見られない。
【0219】
【表6A】
【0220】
【表6B】
【0221】
【表6C】
【0222】
【表6D】
【0223】
4.9 リポーター遺伝子アッセイにおけるヒトLAG-3抗体の効果
ヒトLAG-3およびIL-2ルシフェラーゼリポーター遺伝子(Promega)を安定に同時トランスフェクトしたJurkat細胞を実験室内で調製した。細胞を、Raji細胞と共にブドウ球菌エンテロトキシンE(SEE)(Toxin Technology-ET404)の存在下で96ウェルプレートに播種した。試験抗体の連続希釈液を細胞に添加し、37℃、5%COで一晩インキュベートした。インキュベーション後、復元したルシフェラーゼ基質を添加し、ルシフェラーゼ強度をマイクロプレート分光光度計によって測定した。図7A~7Bに示すデータは、W3396-R2-1、W3396-R2-2、およびW3396-R2-13が、BMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)のものと同等であるかまたはそれより良好なEC50で、RGAアッセイにおけるIL-2経路活性を増強することを示している。
【0224】
4.10 ヒト同種異系リンパ球混合反応に及ぼすヒトLAG-3抗体の効果
ヒトPBMCを、Ficoll-Paque PLUS密度勾配遠心を使用して健康なドナーから新たに単離した。ヒト単球濃縮キットを使用して、製造元の説明書(Miltenyi、biotec-130-050-201)に従って単球を単離した。単球を、GM-CSF(R&D)およびIL-4(R&D)を含有する培地中で5~7日間培養し、未成熟な樹状細胞(iDC)を生成した。ヒトCD4T細胞を、ヒトCD4T細胞濃縮キットを使用して、製造元のプロトコール(Stemcell、19052)に従って単離した。同種異系iDCと同時培養した精製CD4T細胞を、種々の濃度のLAG-3抗体と共に96ウェルプレートにおいてインキュベートした。5日目に、培養上清をIFN-γ試験のために回収した。ヒトIFN-γを、マッチさせた抗体対を使用してELISAによって測定した。組換えIFN-γを標準物質(Peprotech)として使用した。プレートを、ヒトIFN-γに対して特異的な捕捉抗体(Pierce-M700A)によって予めコーティングした。ビオチンコンジュゲート抗IFN-γ抗体(Pierce-M701B)を、検出抗体として使用した。結果は、W3396-R2-1およびW3396-R2-13が、MLRアッセイにおいてBMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)より強力であることを示している(図8A)。別のアッセイでは、アイソタイプ対照と比較すると、W3396-R2-1およびW3396-R2-2は、ヒトT細胞IFN-γ分泌を約50%促進し、その効力はBMK Ab(W339-BMK1、W339-BMK7、W339-BMK8)と同等である(図8B)。
【0225】
4.11 ADCC
ヒトLAG-3トランスフェクト細胞および種々の濃度のLAG-3抗体を96ウェル丸底プレートにおいて30分間プレインキュベートし、次いでエフェクターとしてのPBMCをエフェクター/標的比50:1で添加した。プレートを、37℃、5%COで4時間維持した。標的細胞の溶解を、LDHに基づく細胞傷害性検出キット(Roche-11644793001)によって決定した。492nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して読み取った。ハーセプチンおよびHER2発現細胞株SK-Br-3を、陽性対照として使用した。W3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13 Abは、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してADCC効果を誘導しない(図9Aおよび9B)。
【0226】
4.12 CDC試験
ヒトLAG-3トランスフェクト細胞および種々の濃度のLAG-3抗体を、96ウェル丸底プレートにおいて混合した。ヒト補体を1:50の最終希釈で添加した。プレートを37℃、5%COで2時間維持した。標的細胞溶解は、Cell Titer-Glo(Promega)によって決定した。マイクロプレートリーダーを使用して発光を読み取った。リツキシマブおよびCD20発現細胞株Rajiを陽性対照として使用した。W3396-R2-1、W3396-R2-2、およびW3396-R2-13は、ヒトLAG-3トランスフェクト細胞に対してCDC効果を誘導しない(図10Aおよび10B)。
【0227】
4.13 血清安定性試験
W3396-R2-1およびW3396-R2-13を、新たに単離したヒト血清(血清含有量>95%)中、37℃でインキュベートした。表記の時点(0日目、1日目、4日目、7日目、および14日目)で、血清処置したサンプルのアリコートをインキュベーターから採取して、液体窒素N2中で瞬間凍結し、試験の準備ができるまで-80℃で保存した。サンプルはすべて安定性試験の前に急速解凍した。ヒトLAG-3トランスフェクト細胞を、倍希釈して血清処置したW3396-R2-1およびW3396-R2-13と共に4℃で1時間インキュベートした。PE標識ヤギ抗ヒトIgGを使用して、W3396-R2-1およびW3396-R2-13の細胞との結合を検出した。細胞のMFIを、フローサイトメトリーによって測定し、FlowJoによって分析した。結果は、W3396-R2-1(図11A)およびW3396-R2-13(図11B)が、ヒト血清安定性試験において安定であることを示している。
【0228】
4.14 示差走査蛍光光度(DSF)アッセイによる熱安定性
DSFアッセイを、リアルタイム蛍光定量的PCR(QuantStudio 7 Flex、Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。手短には、抗体溶液19μLを62.5×SYPRO Orange溶液(Invitrogen)1μLと混合し、96ウェルプレート(Biosystems)に添加した。プレートを、26℃から95℃に2℃/分の速度で加熱し、得られた蛍光データを収集した。異なる温度に関する蛍光変化の負の導関数を計算し、最大値を、融解温度Tとして定義した。タンパク質が複数の変性転移を有する場合、最初の2つのTを報告し、Tm1およびTm2と名付けた。Tm1は、異なるタンパク質間の比較のための融解温度Tである。データ収集およびT計算は、操作ソフトウェア(QuantStudio(商標)リアルタイムPCR PCRソフトウェアv1.3)によって自動的に実施した。異なるバッファー中のW3396-R2-1、W3396-R2-2およびW3396-R2-13のT1およびT2値を表7に示す。
【0229】
【表7】
【0230】
4.15 マウスにおけるin vivo薬物動態(PK)調査
試験抗体のPK調査をC57BL/6マウスにおいて実施した。6~8週齢の雌性C57BL/6マウス(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,LTD)を調査に使用した。
【0231】
動物30匹(10匹/群)を3つの群に分けた:群1、群2および群3。動物に、W339-BMK1、W3396-R2-1およびW3396-R2-2をそれぞれ10mg/kgで静脈内注射によって1回投与した。AbはPBS中で製剤化した。PK血液サンプルを投与前、0.3時間、2時間、6時間、24時間、D2(48時間)、D4(96時間)、D7(144時間)、D10(240時間)、D14(312時間)、D21(480時間)に収集した。血清サンプル中のW3396-R2-1およびW3396-R2-2の血清中濃度をELISAによって決定した。注射日を0日目と見なした。調査における動物の取り扱い、ケアおよび処置に関連する手段はすべて、国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)のガイダンスによる、生物モデルの実験動物の管理と使用に関する施設内委員会(IACUC)によって承認されたガイドラインに従って実施した。
【0232】
マウスにおけるW3396-R2-1、W3396-R2-2およびW339-BMK1の血清中濃度を、Phoenix WinNonlinソフトウェア(バージョン6.3、Pharsight、Mountain View、CA)を使用することによってノンコンパートメント薬物動態解析に供した。
【0233】
調査の間、有害事象は観察されなかった。
【0234】
PKパラメータの概要を表8および図13に記載した。結果は、W3396-R2-2およびW339-BMK1がマウスにおいて類似のPKプロファイルを示すことを示す。
【0235】
【表8】
【0236】
4.16 ナイーブの雄性および雌性カニクイザルにおけるW3396-R2-1およびW3396-R2-2の1回投与調査
4匹のナイーブカニクイザルは、Hainan Jingang Laboratory Animal Co.Ltdから供給された。体重は、雄性サルに関して2.46~2.72kg、雌性サルに関して2.50~2.58kgの範囲であった。
【0237】
動物4匹(2匹/群)を2群に分けた:群1および群2。群1および群2の動物にそれぞれ、W3396-R2-1およびW3396-R2-2を30mg/kgで1回、30分間の静脈内注入によって投与した。製剤はPBS中で製剤化した。PK血液サンプルを投与前、0.25時間、1時間、4時間、8時間、24時間、D3(48時間)、D5(96時間),D7(144時間)、D9(192時間)、D11(240時間)、D14(312時間)、D21(480時間)、D28(648時間)に収集した。抗薬物抗体(ADA)サンプルを投与前、D14、およびD28に収集した。血清サンプル中のW3396-R2-1、W3396-R2-2、およびADAの血清中濃度を、ELISAによって決定した。血液学および臨床科学試験のサンプルを、投与前、24時間、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目に収集した。
【0238】
全身健康および外観のケージ越しの観察、特に皮膚の刺激感を観察した。血液学(CBC)に関する全血サンプル分析および化学物質検出に関する血清分析をそれぞれ、血液学分析器(ADVIA2120)および化学物質分析器(HITACHI 7180)によって決定した。
【0239】
PKのために血液およそ1.0mLおよび抗薬物抗体(ADA)のために血液1.0mLを、各時点で、各調査動物から腹腔静脈または伏在静脈を介して収集した。各サンプル収集の実際の時間を記録した。すべてのサンプリング時間が許容された(サンプリング時間の変動は、投与前または投与後1時間の時点で1分未満であり、投与後1時間より後で名目時間の5%未満であった)。血液サンプルはすべて、ポリマーシリカ活性化因子を含有する市販のチューブに移した。血液サンプルを含有するチューブを室温で1時間以内放置した後、遠心分離した(血清が出現するまで)。血液サンプルをおよそ4℃、2000gで20分間遠心分離することによって、血清サンプルを調製した。血清サンプルはすべて、ドライアイス上で急速に凍結し、ELISA分析まで-60℃以下で維持した。
【0240】
調査における動物の取り扱い、ケア、および処置に関連する手順はすべて国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)のガイダンスによる、WuXi AppTec(Suzhou)の実験動物の管理と使用に関する施設内委員会(IACUC)によって承認されたガイドラインに従って実施した。
【0241】
サルにおけるW3396-R2-1、W3396-R2-2の血清中濃度を、Phoenix WinNonlinソフトウェア(バージョン6.3、Pharsight、Mountain View、CA)を使用することによってノンコンパートメント薬物動態解析に供した。PKパラメータを得るために線形/対数台形則を適用した。すべてのBLQ値をPKパラメータの計算から除外した。すべての血清中濃度および薬物動態パラメータは、3桁の有効数字で報告した。個々のBLQは、平均濃度の計算から除外した。名目上の用量レベルおよび名目上のサンプリング時間を、すべての薬物動態パラメータの計算に使用した。
【0242】
結果は、調査の間に副作用が観察されなかったことを示している。飼料の消費および体重に明白な変化はなかった。血液学、ならびにAST、ALT、WBC、HGBおよびHCTを含む臨床化学パラメータは、一般的に参照範囲内である(データは示していない)。PKパラメータの要約を表9および図14に記載する。血液中のADA力価を表10に要約する。結論すると、W3396-R2-2は、サルにおいて約212時間の良好なT1/2を示す。W3396-R2-2のADA力価は、サルにおいてW3396-R2-1の力価より低い。
【0243】
【表9】
【0244】
略語
【0245】
【表A】
【0246】
【表10】
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
【配列表】
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