(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】メカニカルシールおよびメカニカルシールを有する回転ユニオン
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20240216BHJP
F16L 27/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16J15/34 L
F16L27/08 Z
(21)【出願番号】P 2021507948
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019073932
(87)【国際公開番号】W WO2020058013
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】102018215736.7
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520138302
【氏名又は名称】クリスティアン・マイヤー・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・シェンク
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351407(JP,A)
【文献】特開2009-127738(JP,A)
【文献】特開平11-294596(JP,A)
【文献】特開平04-296260(JP,A)
【文献】特開2002-195420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
F16L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境から、静止構成要素(2)および/または回転構成要素(3)内を延びる少なくとも1つの流体運搬チャネル(1)および/または空間を封止するためのメカニカルシールであって、
相手側リング(25)に接して軸方向に封止するように支持されたメカニカルシールリング(4)であって、前記メカニカルシールリング(4)の端部のシール表面(5)上または相手側の面上の摩耗を補償するために、前記シール表面(5)が前記相手側リング(25)に接した状態で弾性的にかつ軸方向に移動可能に支持される、メカニカルシールリング(4)と、
軸方向において前記メカニカルシールリング(4)を移動可能に収容し、周辺方向において周方向部分(6.1)で前記メカニカルシールリング(4)を囲む、ハウジング(6)と、
を有し、
前記ハウジング(6)は、軸方向において前記周方向部分(6.1)に隣接するフランジ(6.2)を有し、前記フランジ(6.2)は、前記周方向部分(6.1)と一体的に設計されるか、または、材料接着で前記周方向部分(6.1)に接続され、前記フランジ(6.2)は、少なくとも1つの半径方向内側に向く突出部(7)を形成し、前記メカニカルシールリング(4)は、軸方向において前記半径方向内側に向く突出部(7)に向かい合う停止面(8)を含み、前記停止面(8)により、前記メカニカルシールリング(4)は、軸方向における前記ハウジングから出る方向への最大許容移動中に前記突出部(7)にぶつかり、
前記フランジ(6.2)は、少なくとも1つの半径方向外側に向く突出部(9)を形成し、前記半径方向外側に向く突出部(9)によって、前記フランジ(6.2)は、前記ハウジング(6)を受容する前記
静止構成要素(
2)および前記回転構成要素(3)のうちの一方に回転不能に接続され得るか、または接続されることを特徴とする、メカニカルシール。
【請求項2】
前記フランジ(6.2)は、環状であ
り、前記周方向部分(6.1)を越えて半径方向内側および半径方向外側に突出することを特徴とする、請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記メカニカルシールリング(4)は
、前記ハウジング(6)内に回転不能に保持されることを特徴とする、請求項1または2に記載のメカニカルシール。
【請求項4】
前記フランジ(6.2)は、前記フランジ(6.2)を
前記静止構成要素(2)および前記回転構成要素(3)のうちの前記一方に回転不能に接続するために半径方向凹部および/または半径方向突出部(29)を有し、前記半径方向凹部および/または突出部は、周辺部にわたって分配されて配置され、周方向に並んで位置付けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項5】
前記フランジ(6.2)は、貫通孔(10)を有し、前記貫通孔(10)は、前記フランジ(6.2)を
前記静止構成要素(2)および前記回転構成要素(3)のうちの前記一方に回転不能に接続するために、周辺部にわたって分配され、周方向に並んで位置付けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項6】
前記ハウジング(6)は金属薄板で作ら
れることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項7】
前記フランジ(6.2)は、前記回転構成要素(3)を支持するための、軸受(26
)を受容する軸受ハウジング(30)に回転不能に接続されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項8】
前記メカニカルシールは、軸方向における前記メカニカルシールリング(4)の位置を検出するための位置センサ(11)を有し、前記位置センサ(11)は、前記メカニカルシールリング(4)に固定されかつ前記メカニカルシールリング(4)と共に軸方向に移動するエンコーダー(12)を有し、前記周方向部分(6.1)の半径方向外側に位置付けられかつ軸方向における前記エンコーダー(12)の位置を検出する静止センサ(13)を有し、前記静止センサ(13)は、前記周方向部分(6.1)によって、および/または前記フランジ(6.2)によって、支持されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項9】
前記フランジ(6.2)は、軸方向に、かつ周方向、接線方向、または斜方向に外側に延びるブラケット(14)を有し
、前記ブラケット(14)は、前記周方向部分(6.1)から距離を置いて位置付けられ
、前記静止センサ(13)を保持することを特徴とする、請求項8に記載のメカニカルシール。
【請求項10】
前記フランジ(6.2)は、前記フランジ(6.2)を貫通する少なくとも1つの長手方向溝(15)を有し、前記長手方向溝(15)は
、斜方向に外側に、または周方向に延び、前記静止センサ(13)の少なくとも1つの接続ケーブル(16)を収容することを特徴とする、請求項8または9に記載のメカニカルシール。
【請求項11】
前記エンコーダー(12)は、前記メカニカルシールリング(4)の半径方向ボア(17)に挿入さ
れることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項12】
前記エンコーダー(12)は、少なくとも1つの磁石(18)を含むか、または前記少なくとも1つの磁石(18)によって形成され、前記静止センサ(13)は、軸方向における前記磁石(18)の位置を検出するホールセンサとして設計されることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項13】
前記ハウジング(6)は、前記シール表面(5)から離れる方を向く前記メカニカルシールリング(4)の端面に対向するハウジング基部(6.3)を有し、前記メカニカルシールリング(4)は、前記端面と前記ハウジング基部(6.3)との間のバネ要素(23)によっ
て、前記ハウジング基部(6.3)上で弾性的に支持されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項14】
前記フランジ(6.2)は、前記回転構成要素(3)
内のエンコーダー(37)と協働する速度センサ(36)を保持することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のメカニカルシール。
【請求項15】
回転ユニオンであって、静止構成要素(2)および回転構成要素(3)と、請求項1から14のいずれか一項に記載のメカニカルシールで封止され、前記静止構成要素(2)および前記回転構成要素(3)内を延びるチャネル(1)と、を有し、前記フランジ(6.2)は、前記静止構成要素(2)または前記回転構成要素(3)に回転不能に接続される、回転ユニオン。
【請求項16】
請求項8から
12のいずれか一項に記載のメカニカルシー
ルを有し、前記フランジ(6.2)は、前記静止構成要素(2)に回転不能に接続され、前記静止構成要素(2)は内壁(19)を有し、前記内壁(19)は
、前記ハウジング(6)の前記周方向部分(6.1)を取り囲み、前記内壁(19)に、少なくとも周方向において制限された凹部(20)が設けられ、前記凹部(20)は、前記静止センサ(13)を収容するように配置され寸法決めされることを特徴とする、請求項15に記載の回転ユニオン。
【請求項17】
請求項10に記載のメカニカルシールを有し、少なくとも1つの漏出チャネル(21)が、前記静止構成要素(2)に設けられ、前記漏出チャネル(21)は、前記メカニカルシールリング(4)を通過する流体を前記静止構成要素(2)から排出し、前記静止センサ(13)の少なくとも1つの接続ケーブル(16)は、前記漏出チャネル(21)を通ってガイドされ
、前記接続ケーブル(16)は、前記長手方向溝(15)を通って予めガイドされることを特徴とする、請求項16に記載の回転ユニオン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、環境から、静止構成要素および/または回転構成要素内を延びる少なくとも1つの流体運搬チャネルおよび/または空間を封止するためのメカニカルシール、ならびに、そのようなメカニカルシールを有する回転ユニオンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ハウジングを備えた、ポンプシャフトを封止するための一般的なメカニカルシールであって、ハウジングが、軸方向に移動可能にメカニカルシールリングを収容し、ポンプハウジングの内壁に隣接する、このポンプハウジングの凹部に挿入された円筒形の周方向構成要素によりメカニカルシールリングを囲む、メカニカルシールを開示している。メカニカルシールのハウジングは、メカニカルシールのための回転防止装置と、メカニカルシールをハウジングから押し出すバネ要素が支持された基部と、を有する。ハウジングの開口側には、リング型のカバーが設けられ、このカバーは、ハウジングの端面上に設置され、端面に接して封止される。カバーは、段付きになるように形成され、ハウジングをポンプハウジングの凹部内に保持する停止部を形成するフランジを有する。カバーはまた、メカニカルシールリングの軸方向移動を妨げることなく、メカニカルシールリングをハウジング内に保持する。
【0003】
特許文献2は、円筒形ハウジングを有するメカニカルシールであって、ハウジングが、メカニカルシールリングを周方向に取り囲み、軸方向においてメカニカルシールリングの停止面に面する開口側に、半径方向内側に突出するフランジを有し、それによってメカニカルシールリングが軸方向における最大許容移動中にフランジに当接するようにする、メカニカルシールを開示している。さらに、磁石の形態のエンコーダーが設けられ、このエンコーダーもまた、停止面上に支持されるか、または停止面に当接し、ハウジングの外側に接続された静止センサと共に、メカニカルシールリングの軸方向位置を検出し得る位置センサを形成し、それによって、メカニカルシールの摩耗が判定され得る。
【0004】
前述したメカニカルシールの欠点は、メカニカルシールのハウジングが、外周上をぴったり包んでこのハウジングを収容する静止構成要素内でねじれ得ることである。位置センサが設けられる場合、これにより、静止センサがハウジングを剪断し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第3301947号明細書
【文献】独国特許出願第102017218689.5号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メカニカルシールハウジングの非意図的な回転が妨げられる、特に位置センサを有するメカニカルシールを明示する目的に基づく。本発明による解決策は、特に、容易に一体化され得る、小型で費用対効果が高いデザインを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による目的は、請求項1に記載の特徴を有するメカニカルシールによって解決される。従属請求項では、本発明の特に有利で実用的なデザイン、ならびに本発明によるメカニカルシールを有する回転ユニオンが、明示される。
【0008】
環境から、静止構成要素および/または回転構成要素内を延びる少なくとも1つの流体運搬チャネルおよび/または空間を封止するための、本発明によるメカニカルシールは、相手側リングに接して軸方向に封止するように支持されたメカニカルシールリングを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1つの流体運搬チャネルは、静止構成要素から回転構成要素内に、または回転構成要素から静止構成要素内に、よって回転ユニオンを通って延びる。回転ユニオンは、流体を、静止構成要素のそれぞれのチャネルセクションから、回転構成要素のそれぞれのチャネルセクションに運び、すなわち回転軸を中心として回転させるのに役立ち、または回転構成要素のそれぞれのチャネルセクションから、静止構成要素のそれぞれのチャネルセクションに運び、すなわち回転軸を中心として回転させるのに役立つ。しかしながら、本発明は、メカニカルシールによる封止が使用される任意の構成要素において回転ユニオンとは無関係に適用されてもよい。この点において、流体運搬チャネルは、メカニカルシールによって環境に対して封止される静止構成要素内および/または回転構成要素内の任意の空間である。環境は、その構成要素内および/もしくは別の構成要素内の別の空間であるか、または、ハウジング部品によってもはや囲まれていない環境とすることができる。環境は、加圧されていないか、または加圧されていてよい。流体は、チャネルおよび/もしくはチャンバ内を流れるか、または静止していてよい。ポンプ、例えば液体ポンプまたはガスポンプ、コンプレッサー、および他の工作機械における、少なくとも1つの流体運搬チャネルおよび/または室の封止が、例として提供されるに過ぎない。
【0009】
メカニカルシールリングは、軸方向に、すなわち回転構成要素の回転軸の方向に、相手側リングに接して支持されるので、摩耗を受けやすい。例えば、メカニカルシールリングは、炭素で作られるか、または炭素を含有する。例えば回転ユニオンにおいて、メカニカルシールリングを軸方向に短くする摩耗により、漏れが引き起こされるのを防ぐために、メカニカルシールリングは、軸方向に移動することができ、また摩耗を補償するために、メカニカルシールリングの前方シール表面が相手側リングに接した状態で弾性的に支持される。よって、漸進的な摩耗は、相手側リングに向かってメカニカルシールリングの軸方向変位を増大させることによって、補償される。さらに、または代わりに、相手側リングはまた、メカニカルシールリングのシール表面と接触している相手側の面のエリアにおいて摩損または摩耗を受けやすくなり得、それによって、これを補償するために、メカニカルシールリングはその弾性プレテンションによって軸方向に変位される。
【0010】
既に起こっている、メカニカルシールリングの摩耗または軸方向移動の程度を評価できるようにするため、軸方向におけるメカニカルシールリングの位置を検出するための位置センサが、本発明の有利な実施形態に従って提供される。
【0011】
本発明によるメカニカルシールは、メカニカルシールリングを収容するハウジングを有し、ハウジング内で、メカニカルシールリングは軸方向に移動可能である。ハウジングは、周方向においてメカニカルシールリングを囲む周方向部分を有する。この周方向部分は、例えば、メカニカルシールがチャネルおよび/または空間を封止する機械の静止部品によって囲まれ得る。
【0012】
本発明によると、ハウジングはフランジを有し、フランジは、軸方向において周方向部分に接続され、周方向部分と一体に設計されるか、または、材料接着(material bond)により周方向部分に接続される。フランジは、少なくとも1つの半径方向内側に向く突出部を形成し、メカニカルシールリングは、軸方向において、半径方向内側に向けられた突出部に向かい合う停止表面を有し、これにより、メカニカルシールリングは、軸方向における最大許容移動中に突出部に当接し、フランジは、少なくとも1つの半径方向外側に向く突出部をさらに形成し、これにより、フランジは、ハウジングを収容する2つの構成要素のうちの一方に回転不能に接続され得るか、または接続される。
【0013】
よって、本発明によると、フランジは、ハウジングから滑り落ちるのに逆らってメカニカルシールリングを固定するだけでなく、ハウジングがハウジングを囲む構成要素内で回転するのを防ぐのにも役立つ。位置センサも設けられる場合、フランジは、静止センサを接続するのにも役立ち得、静止センサは、メカニカルシールリングに接続された位置センサのエンコーダーと共に動作する。特に、フランジは単独で、静止センサを、直接、またはフランジによって保持された構成要素、例えばブラケットを介して、保持する。
【0014】
本発明の一実施形態によると、フランジは、環状に、特に平坦に形成され、周方向部分を越えて半径方向内側および半径方向外側に突出する。これは、周方向部分が、半径方向内側縁部および半径方向外側縁部から距離を置いてフランジに近接することを意味する。
【0015】
好ましくは、メカニカルシールリングは、例えばアンダーカットによって、ねじれることができないように、ハウジング内に保持される。例えば、軸方向溝が、メカニカルシールリングおよび/またはハウジング内に設けられ得、軸方向溝内で、他方の構成要素、すなわちハウジングまたはメカニカルシールリングの、対応する片割れの突出部が積極的に(positively)係合する。
【0016】
本発明の一実施形態によると、2つの構成要素、すなわち、静止構成要素または回転構成要素のうちの一方におけるフランジの回転防止装置は、積極的に、すなわち少なくとも1つのアンダーカットを形成することによって、達成され得る。例えば、フランジは、その周方向に並んで位置付けられかつ周辺部にわたって分配された半径方向凹部および/または半径方向突出部を有し、これら半径方向凹部および/または半径方向突出部は、構成要素の対応する片割れの突出部および/もしくは凹部と重なるか、または片割れの突出部および/もしくは凹部と係合する。
【0017】
本発明の有利な実施形態によると、フランジは、貫通孔を有し、これら貫通孔は、フランジを構成要素に回転不能に接続するために、周辺部にわたって分配されるように配置され、周方向に並んで位置付けられている。例えば、ねじもしくはピンは、貫通孔を通って構成要素に挿入され得るか、または、フランジは、構成要素上の対応するピンもしくは他の突出部上で押されて、周方向における積極的な適合を達成し得る。
【0018】
例えば、ハウジングは金属薄板で作られ、フランジは、特に周方向部分上で溶接される。溶接継目は周辺部全体に沿っている必要はないが、個々の溶接セクションまたは溶接点が設けられ得る。よって、フランジは、例えばパンチングによって、平坦な金属薄板リングとして製造され、その後、円筒形またはカップ型の周方向部分に接続され得る。
【0019】
本発明の一実施形態によると、フランジの非回転接続のための貫通孔に加えて、さらなるセンタリング孔がフランジに設けられ、これらセンタリング孔は、周辺部にわたって分配され、かつ並んで配置される。これらセンタリング孔は、フランジが周方向部分上に装着される際にフランジを周方向部分に対してセンタリングするのに使用され得る。さらに、このようなセンタリング孔は、必要に応じて、ハウジングを収容する構成要素内でハウジングをセンタリングするのに使用され得る。当然、フランジを周方向部分に装着する際のセンタリング孔として、構成要素へのフランジの非回転接続のための貫通孔を使用することも可能であり、それによって、追加のセンタリング孔が、必要に応じて省略され得る。
【0020】
本発明による実施形態によると、軸受ハウジングが設けられ、この軸受ハウジングは、回転構成要素を支持するための軸受、すなわち、ころ軸受または平軸受を収容する。フランジは、次に、軸受ハウジングに回転不能に接続され得、特に、例えば、図示の半径方向突出部および/もしくは半径方向凹部によって、かつ/または、ねじもしくはピンなどの対応する装着要素が導入される、周辺部の周りに分配された貫通孔によって、軸受ハウジングに直接接続され得る。
【0021】
本発明の一実施形態によると、メカニカルシールリングのハウジングは、流体運搬チャネルおよび/または空間を画定する静止構成要素または回転構成要素を形成し得る。例えば、このような場合、周方向部分は、流体の供給または排出のための接続部、例えば流体ホースのための接続ねじ山を有し得る。
【0022】
軸方向におけるメカニカルシールリングの位置を検出するための位置センサを有して示される実施形態では、メカニカルシールリングと共に軸方向に移動する少なくとも1つのエンコーダーが、メカニカルシールリングに取り付けられる。例えば、エンコーダーは、メカニカルシールリングの半径方向ボアに挿入され、好ましくは、半径方向外側においてメカニカルシールリングと面一とすることができる。さらに、周方向部分の半径方向外側に位置付けられた静止センサが設けられ、この静止センサは、軸方向におけるエンコーダーの位置を検出し、静止センサは、周方向部分および/またはフランジによって支持される。
【0023】
好適な実施形態によると、周方向部分は、エンコーダーと静止センサとの間の信号伝送を改善するために、静止センサが面する周辺エリアに突破口(breakthrough)を有する。
【0024】
特に好適な実施形態によると、フランジは、軸方向に、かつ周方向もしくは斜方向に外側に、または接線方向に延びるブラケットを有し、このブラケットは、周方向部分から距離を置いて位置付けられ、静止センサを支持する。例えば、ブラケットは、フランジに溶接された金属薄板ストリップ、特に平坦な金属薄板ストリップとして設計される。静止センサは、例えば金属薄板ストリップに接着され得る。一実施形態によると、ブラケットは、周方向部分に面する表面上で静止センサを保持する。
【0025】
特に、フランジは、長手方向溝を有し、この長手方向溝は、フランジを貫通し、例えば接線方向、周方向、または対角線状に外側に延びる。長手方向溝は、好ましくはまっすぐである。この長手方向溝は、静止センサの少なくとも1つの接続ケーブルを収容し得る。よって、少なくとも1つの接続ケーブルは、静止センサの側からフランジを通って、静止センサから離れる方を向くフランジの側まで、また、そこから、例えばハウジングを収容する構成要素の外側まで、例えばこの構成要素の漏出チャネルを通って、導かれ得る。
【0026】
センサは、少なくとも1つの磁石を含むか、または磁石によって形成され得、静止センサは、軸方向における少なくとも1つの磁石の位置を検出するホールセンサとして形成され得る。
【0027】
好ましくは、ハウジングはハウジング基部を有し、このハウジング基部は、シール表面から離れる方を向くメカニカルシールリングの端面に対向し、メカニカルシールリングは、端面とハウジング基部との間のバネ要素、特に波形バネによって、ハウジング基部上で弾性的に支持される。
【0028】
メカニカルシールリングは、特に中空の円筒形カーボンリングを含むか、またはこのようなリングから形成され、このリングは、シール表面を形成する端面を有し、特にハウジング基部に面する端面を有する。
【0029】
特に、メカニカルシールリングは、静止しており、相手側リングは、メカニカルシールリングに対して周囲に延びる。
【0030】
ここに提示されるさらなる特徴とは無関係に実装されてもよい、本発明の特徴によると、特に、突出部を形成しかつ回転防止装置を可能にする、ハウジング上のフランジがないメカニカルシールの場合、速度センサが、相手側リングと関連付けられ、相手側リングのエンコーダーと協働して、相手側リングの速度を検出する。速度センサは、例えば、軸方向においてメカニカルシールのハウジングに隣接して位置付けられ、かつ、そこで静止構成要素に取り付けられ得る。しかしながら、前記に示したようなハウジングが、材料接着で、または一体的に周方向部分に接続されたフランジと共に設計され、このフランジが速度センサも保持すると、好適である。
【0031】
よって、本発明の一実施形態によると、フランジは、その軸方向における第1の側に位置センサの静止センサを収容または支持し、かつその軸方向における他方の側に速度センサを収容または支持することができる。これらのセンサはそれぞれ、好ましくは図示のタイプのブラケット上に、例えばフランジに挿入される溶接金属薄板ストリップ(welded-on sheet metal strips)上に、位置付けられ得る。ブラケットは、フランジの異なる開口部に挿入された場合に特に、フランジの周方向に互いにオフセットして設けられ得る。しかしながら、フランジの開口部を通してブラケットを挿入し、このブラケットがフランジの軸方向における一方の側に摩耗検出のための位置センサの静止センサを、また軸方向における他方の側に速度検出のための速度センサを保持するように、ブラケットをそこで固定することも可能である。
【0032】
速度センサのためのエンコーダーは、例えば、外周上、または相手側リングの1つの端面上の、少なくとも1つの平らな部分もしくはノッチまたは他のマーキングによって、設計され得る。好適なデザインによると、エンコーダーは少なくとも1つの磁石によって形成され、速度センサはホールセンサとして設計される。
【0033】
静止構成要素および回転構成要素と、本発明によるメカニカルシールで封止され、静止構成要素および回転構成要素内を延びるチャネルと、を有する、本発明による回転ユニオンの場合、フランジは、回転不能に静止構成要素に、または回転不能に回転構成要素に接続される。例えば、フランジは、静止構成要素に回転不能に接続され、静止構成要素は、ハウジングの周方向部分を、特に周方向部分に隣接して囲む内壁を有し、この内壁に凹部が設けられ、凹部は、少なくとも周辺方向において制限され、静止センサを収容するように配置され寸法決めされる。
【0034】
例えば、静止構成要素は、メカニカルシールを通過する流体を構成要素から排出する、特にボアの形態の、前述した漏出チャネルを備えてもよく、静止センサの少なくとも1つの接続ケーブルは、特に静止センサから出発して長手方向溝を通って導かれた後、漏出チャネルを通って導かれ得る。
【0035】
本発明は、メカニカルシールを備えた回転ユニオンに限定されない。むしろ、他の構成要素または機械が、チャネルまたはチャンバを封止するために本発明によるメカニカルシールを備えて設計され得る。例えば、このようなメカニカルシールを備えたポンプを参照する。
【0036】
本発明は、例示的な実施形態および図面を活用して、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明によるメカニカルシールの概略図である。
【
図2】本発明によるメカニカルシールを有する回転ユニオンの別の概略断面図である。
【
図3】本発明によるメカニカルシールのフランジの例示的な実施形態の平面図である。
【
図4】本発明による別のメカニカルシールの概略断面図である。
【
図5】
図4に示すようなメカニカルシールのフランジの正面平面図である。
【
図6】
図4からのメカニカルシールのハウジングを通る断面図である。
【
図7】追加の速度センサを備えた
図2と類似の断面図である。
【
図8】追加の速度センサを備えた
図4と類似の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明に従って設計されたメカニカルシールを示し、メカニカルシールは、ハウジング6を含み、ハウジングは、周方向部分6.1と、開口端部において軸方向における前記ハウジングの前部に接続されたフランジ6.2と、を備える。図示のとおり、フランジ6.2は、例えば周方向部分6.1に溶接される。
【0039】
周方向部分6.1は、円筒形に設計され、メカニカルシールリング4を周辺方向において囲む。メカニカルシールリング4は、シール22によってハウジング6に挿入され、この場合、周方向部分6.1に接して封止される。
【0040】
メカニカルシールリング4は、ハウジング6から突出するその端面に、シール表面5を有する。シール表面5から離れる方を向く端面において、メカニカルシールリング4は、例えば波形バネの形態のバネ要素23によって圧力弾性(pressure elasticity)を受ける。バネ要素23は、ハウジング6のハウジング基部6.3上に支持される。
【0041】
メカニカルシールリング4は、バネ要素23から離れる方を向くその停止面8がフランジ6.2の半径方向内側に向く突出部7に当接するまで、バネ要素23によってハウジング6から押し出され得る。これは、メカニカルシールリング4を軸方向に短くする、シール表面5の摩耗を補償する。
【0042】
さらに、フランジ6.2は、半径方向外側に向く突出部9を有し、この突出部9は、一方では、ハウジング6を保持する構成要素にハウジング6を回転不能に接続するのに役立ち、他方では、位置センサ11の静止センサ13を接続するのに役立つ。さらに、または代わりに、静止センサ13は、破線で示すように、ハウジング6の周方向部分6.1にも接続され得る。
【0043】
静止センサ13は、ここではメカニカルシールリング4の半径方向ボア17内に磁石18の形態で置かれたエンコーダー12と相互作用する。静止センサ13またはエンコーダー12のエリアでは、エンコーダー12から静止センサ13への信号の流れを妨げないように、開口部24が周方向部分6.1に設けられる。
【0044】
静止センサ13は、フランジ6.2の半径方向外側に向く突出部9に接続されたブラケット14によって支持される。特に、ブラケット14は、材料接着でフランジ6.2に接続されるか、または、フランジ6.2と一体的に設計され、静止センサ13は、形状嵌合(form fit)または材料接続でブラケット14に接続される。
【0045】
メカニカルシールリング4は、そのシール表面5により、
図1には不図示の相手側リングと共に、水またはガスなどの流体を運ぶチャネル1を封止する。
【0046】
図2は、本発明によるメカニカルシールの使用例を示す。これは、静止センサ13がブラケット14における半径方向内側に向く表面に接続され、特に接着されていることを除いて、大部分が
図1に示すようなデザインに対応する。
【0047】
図2に示すような回転ユニオンでは、ハウジング6は、ねじれを防止するように静止構成要素2に挿入される。この目的で、フランジ6.2は、静止構成要素2内で貫通孔10を通してねじで留められるか、またはピンで留められる。
【0048】
ハウジング6はやはり、静止構成要素2の内壁19に対して半径方向内側で寄りかかる周方向部分6.1を含む。静止構成要素2はまた、静止センサ13と共にブラケット14を収容する凹部20を有する。位置センサ11を形成するため、静止センサ13は次に、磁石18の形態で設計されかつメカニカルシールリング4の半径方向ボア17に挿入されるエンコーダー12に、開口部24を介して面する。メカニカルシールリング4のシール表面5を相手側リング25に押し付けかつハウジング基部6.3上に支持されるバネ要素23も示され、
図1からの対応する参照符号が、対応する構成要素にも使用されている。
【0049】
相手側リング25は、静止構成要素2内で少なくとも1つの軸受26によって支持されかつチャネル1を囲む回転構成要素3の一部である。チャネル1はまた、矢印で示すように静止構成要素2を通って、例えば静止構成要素2の入口または出口を通って、延びる。
【0050】
漏出物が、破線の矢印で示すように、シール表面5を介して、すなわちメカニカルシールリング4と相手側リング25との間を逃げると、静止構成要素2の漏出チャネル21を通って排出される。図示の例示的な実施形態では、このような漏出チャネル21はまた、静止センサ13の少なくとも1つの接続ケーブル16を静止構成要素2から外に導くのに役立つ。
【0051】
フランジ6.2を通して、静止センサ13の側から、軸方向において離れる方を向く漏出チャネル21の側まで接続ケーブル16を導くために、少なくとも1つの開口部、特に長手方向溝が、フランジ6.2に設けられ得、長手方向溝を通って接続ケーブル16が導かれる。いくつかのこのような長手方向溝15を
図3で見ることができ、
図3は、ハウジング6のいわゆる開口側、すなわちシール表面5の側の正面図を示す。やはり、対応する参照符号が、
図1および
図2の参照符号に対応している、対応する構成要素に使用されている。
【0052】
例えば、ハウジング6は、周方向部分6.1と、フランジ6.2と、ハウジング底部6.3と、を含む。フランジ6.2は、半径方向内側に向く突出部7と、半径方向外側に向く突出部9と、を有する。半径方向外側に向く突出部9には、貫通孔10がフランジ6.2の非回転接続のために設けられる。
【0053】
さらに、
図3は、ブラケット14が挿入されてブラケット14を固定し得る開口部を示す。これらの開口部に加えて、ここでは、接線方向に延びる長手方向溝15が、静止センサの接続ケーブルのために設けられている。
【0054】
図示の例示的な実施形態では、それぞれブラケット14のための3つの開口部と、3つの長手方向溝15と、がある。これにより、静止センサの適切な位置の選択が可能になる。複数の静止センサもそれに応じて使用され得ることが理解される。
【0055】
図3に従って設計されると、フランジ6.2またはフランジ6.2における半径方向外側に向く突出部9は、センタリング孔27を有し、これらセンタリング孔27は、フランジ6.2が材料接着で周方向部分6.1に接続される前、および/またはその間に、フランジ6.2を周方向部分6.1上でセンタリングするのに役立つ。同時に、これらのセンタリング孔27は、ハウジング6が収容される構成要素内でハウジング6をセンタリングするのにも使用され得る。
【0056】
図3に示す例示的な実施形態では、ハウジング6は、半径方向内側に向く突出部28も有し、これら突出部28は、メカニカルシールリングの対応する凹部に係合して、メカニカルシールリングがハウジング6に対して周方向に回転するのを防ぐ。
【0057】
例示的な実施形態に示すように、特に溶接によって、周方向部分6.1に材料接着されたフランジ6.2の代わりに、フランジ6.2は、ハウジング6を周方向部分6.1上で形成することによって製造されてもよい。例えば、ハウジング6は、その開口端部において、最初は内側に、次に外側に、またはこの逆に屈曲されて、半径方向内側に向く突出部7と、半径方向外側に向く突出部9と、を形成することができる。
【0058】
図4~
図6に示す実施形態では、メカニカルシールのハウジング6は、チャネル1を囲む、静止構成要素2、または静止構成要素2の一部も形成する。例えば、周方向部分6.1は、チャネル1を通過する媒体のための入口または出口の形態の接続部31を有する。例えば、流体ホース(または媒体ホース)のための接続ねじ山が、接続部31のために設けられ得る。
【0059】
図4~
図6に示す実施形態では、周方向部分6.1は、特に半径方向に整列される接続部31を挿入することを可能にするために、ハウジング基部6.3を越えてメカニカルシールの回転軸の方向に延ばされる。端面上では、チャネル1はカバー32によって閉じられ、カバーは、完全に閉じられて設計されるか、またはオプションとして、さらにもしくは代わりに流体のための接続部31を形成することができる。
【0060】
先の例示的な実施形態と同じように、バネ要素23は、ハウジング基部6.3上に支持されて、メカニカルシールリング4のシール表面5を相手側リング25に押し付ける。
【0061】
相手側リング25は、軸受26、ここではころ軸受によって軸受ハウジング30に装着される回転構成要素3と共に回転する。周方向部分6.1と一体に設計されるかまたは材料接着によって周方向部分6.1に接続される、メカニカルシールのハウジング6のフランジ6.2は、軸受ハウジング30に回転不能に接続される。図示の例示的な実施形態では、フランジ6.2は、軸受ハウジング30の対応する軸方向溝33内に係合する半径方向突出部29を有する。フランジ6.2は、例えば、スナップリングとして設計され得るサークリップ35によって、軸方向に固定される。
【0062】
図示の例示的な実施形態では、ナット34が回転構成要素3上にねじで留められる。しかしながら、これは必須ではない。
【0063】
これは詳細には図示されていないが、ハウジング6は、
図1~
図3によるデザインで示すような、好適な実施形態による位置センサの静止センサを保持する。したがって、フランジ6.2は、
図3の例示に従って設計され得、特に半径方向突出部29がさらに設けられ、必要に応じて貫通孔10が省略される。
【0064】
図7に従って設計されると、フランジ6.2は、相手側リング25の、よって回転構成要素3の速度を検出するために相手側リング25のエンコーダー37と協働する速度センサ36を、さらなるブラケット14によって、静止センサ13から離れる方を向く側に保持する。速度センサ36のためのブラケット14は、例えば、静止センサ13のためのブラケット14と同じようにフランジ6.2上に装着され得る。あるいは、一体的に設計された、静止センサ13および速度センサ36のための2つのブラケット14を、例えばフランジ6.2を押し通される金属薄板部品として有することも可能である。
【0065】
図8は、
図4~
図6のうちの1つと類似していて、さらに速度センサ36も備えた、さらなる例示的な実施形態を示し、速度センサは、相手側リング25のエンコーダー37と相互作用して、相手側リング25または回転構成要素3の速度を検出する。
【符号の説明】
【0066】
1 チャネル
2 静止構成要素
3 回転構成要素
4 メカニカルシールリング
5 シール表面
6 ハウジング
6.1 周方向部分
6.2 フランジ
6.3 ハウジング基部
7 半径方向内側に向く突出部
8 停止表面
9 半径方向外側に向く突出部
10 貫通孔
11 位置センサ
12 エンコーダー
13 静止センサ
14 ブラケット
15 長手方向溝
16 接続ケーブル
17 半径方向ボア
18 磁石
19 内壁
20 凹部
21 漏出チャネル
22 シール
23 バネ要素
24 開口部
25 相手側リング
26 軸受
27 センタリング孔
28 突出部
29 半径方向突出部
30 軸受ハウジング
31 接続部
32 カバー
33 軸方向溝
34 ナット
35 サークリップ
36 速度センサ
37 エンコーダー