(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射標識化合物、陽電子放射断層撮影の診断方法における放射標識化合物の使用、及び多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射標識化合物を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 215/10 20060101AFI20240216BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20240216BHJP
A61K 101/02 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C07D215/10
A61K51/00 200
A61K101:02
(21)【出願番号】P 2021513279
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 PL2019000073
(87)【国際公開番号】W WO2020050729
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】521093325
【氏名又は名称】シネクティク・エス・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨアンナ・トフピク
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリン・アンジェイ・クライェフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ウカシュ・マレク・ステチェク
(72)【発明者】
【氏名】ヨアンナ・ヴロストフスカ
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】ACS Chem. Neurosci.,2017年11月03日,Vol.9 No.3,p.578-586
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett.,2017年05月,Vol.27 No.15,p.3460-3463
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
A61K 51/00
A61K 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
[式I中、
波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR
1置換基の間の単結合を示し、
R
1は、水素;ハロゲン;C
1~4アルコキシ;ニトロ基;1若しくは2個の水素原子がC
1~6アルキルで任意選択で置き換えられている、又は2個の水素原子がC
2~5アルキレンで任意選択で置き換えられて複素環を形成する、アミノ基;ハロゲン、カルボキシ、ホルミル又はC
1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C
1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C
1~6炭素置換基、ハロゲン化鎖状C
1~6炭素置換基、C
1~4アルコキシ、1~2個の水素原子がC
1~6アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~5個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R
2は、鎖の末端メンバーとして-CH
2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC
1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-、硫黄原子-S-及びC
3~6シクロアルキレンから選択され、R
2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、
18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R
3及びR
4は、組み合わされて、二価ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR
1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X
-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオン
から選択される陰イオンである]
を有する多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
式I中、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR
1置換基の間の単結合を示し、
R
1が、水素;ハロゲン;C
1~4アルコキシ;ニトロ基;1又は2個の水素原子がC
1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基;ハロゲン又はC
1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C
1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C
1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C
1~4炭素置換基、C
1~4アルコキシ、1~2個の水素原子がC
1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R
2が、鎖の末端メンバーとして-CH
2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC
1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-及び硫黄原子-S-から選択され、R
2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、
18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R
3及びR
4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR
1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X
-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオン
から選択される陰イオンである、
請求項1に記載の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物。
【請求項3】
式I中、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR
1置換基の間の単結合を示し、
R
1が、水素、ハロゲン、C
1~4アルコキシ、C
1~4アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C
1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C
1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C
1~4炭素置換基、C
1~4アルコキシから独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R
2が、鎖の末端メンバーとして-CH
2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC
1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が酸素原子-O-であり、R
2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、
18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R
3及びR
4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR
1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X
-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオン
から選択される陰イオンである、
請求項2に記載の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物。
【請求項4】
式I中、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR
1置換基の間の単結合を示し、
R
1が、水素、ハロゲン、C
1~4アルコキシ、C
1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C
1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C
1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C
1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R
2が、鎖の末端メンバーとして-CH
2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC
1~4アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R
2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、
18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R
3及びR
4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR
1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X
-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオン
から選択される陰イオンである、
請求項3に記載の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物。
【請求項5】
式I中、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR
1置換基の間の単結合を示し、
R
1が、水素の原子、ハロゲン、C
1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、鎖状C
1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C
1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C
1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R
2が、鎖の末端メンバーとして-CH
2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R
2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、
18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R
3及びR
4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR
1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X
-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオン
から選択される陰イオンである、
請求項4に記載の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射性同位体標識化合物を含む、陽電子放射断層撮影の診断方法における使用のための組成物。
【請求項7】
診断方法が、哺乳動物の心血管系の検査に使用される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
診断方法が、心筋を通る局所血流を定量化するための心筋灌流の検査を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
診断方法が、冠動脈疾患における冠動脈予備能を定量化するための心筋灌流の検査を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射性同位体標識化合物と、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含有する、医薬組成物。
【請求項11】
滅菌溶液の形態である、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射標識化合物、陽電子放射断層撮影の診断方法における前記化合物の使用、及び多環式第四級芳香族アミンの放射標識化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性医薬品(放射標識分子)を使用する非侵襲的イメージング研究に基づく心臓核医学は、心血管系の機能を安全で素早く比較的費用のかからない形で評価することを可能にしている。心臓核医学の手順には、冠動脈疾患の診断及び療法のための様々な指針が含まれる。ハイブリッドPET-CT(コンピューター断層撮影と組み合わせた陽電子放射断層撮影)及びSPECT-CT(コンピューター断層撮影と組み合わせた単一光子放出型コンピューター断層撮影)の方法は、心臓学的診断に使用される2つの十分に確立された非侵襲的イメージング技術である。
【0003】
SPECT-CTは、心筋潅流をイメージングする重要な非侵襲的で広く普及した方法であり、心筋生存能、灌流及び機能の全てについて情報を提供する。灌流を評価するため、テクネチウム-99mで標識された化合物(セスタミビ及びテトロホスミン(tetrophosmin)、並びにタリウム-201で標識された化合物(塩化タリウム-201)が使用される。これらは、冠動脈疾患を検出する効率に関して同等のものである。
【0004】
PET-CTは、グルコースの代謝、酸素、灌流及び受容体機能を評価するために使用される。PET-CT研究は、心筋生存能を診断するのに有用であり、加えて、心筋の生理学的活性を測定することができる。PET-CT研究は、生物の構造に必須な元素の不安定同位体:酸素(15O)、窒素(13N)及び炭素(11C)等の陽電子放出放射性核種で標識された放射性医薬品を使用する。前記放射性核種で標識された化合物の利用可能性は、15O、13N及び11Cのそれぞれ2分、10分及び20分の短いT1/2半減期によって限定されている。別の陽電子放出放射性核種は、18Fフッ素同位体であり、したがって、18F標識化合物もPET-CT研究に使用された。18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)は、身体に投与されると、グルコースの代謝経路に取り込まれ、診療に使用される最も一般的な化合物である。18F-FDC研究は、慢性心不全を有する患者における心筋代謝変化のモニタリングを可能にし、それによって、慢性心不全における優れた予後ツールを提供する。18F放射性同位体の半減期T1/2は、15O、13N及び11Cより長い(18FのT1/2は109.8分である)ので、18F標識放射性医薬品は、研究が実施される以外の場所で製造することができる。
【0005】
国際公開第2011/084585号は、複素環の窒素原子に結合しているトリフェニルホスホニオアルキレン(triphenylphosphonioalkylene)基及び前記複素環のsp3炭素原子に結合しているフェニル基を有する放射標識ジヒドロエチジン(dihydroethidine)誘導体の発明を開示する。フェニル基は、フッ素原子が存在しうる他の置換基により置換される。解決策の態様のうちの1つによると、放射性同位体は、陽電子放射線を放出する同位体、とりわけ、11C又は18Fである。本発明による化合物は、ジヒドロエチジン誘導体が過酸化物により酸化され、陽電子放射断層撮影イメージングの使用が、過酸化物陰イオンラジカルのin vivoにおける分布の詳細なデータを提供するので、動物の身体における遊離酸素ラジカル、とりわけ過酸化物陰イオンラジカルの分布を可視化するように設計される。
【0006】
アミンの窒素原子の脂肪族置換基に19Fフッ素(すなわち、非放射性フッ素同位体)の原子を含有する、選択された第四級芳香族アミンを製造する方法が、知られている。米国特許第4,062,849号は、N-ヘプタデカフルオロデシルヨージド(C8F17C2H4I)及び対応する芳香族アミンを使用する、N-ヘプタデカフルオロデシルアクリジニウムヨージドの製造を開示する。更に、科学記事の表題「An unusual substitution reaction directed by an intramolecular re-arrangement」、(A.D.C. Parenty、L.V. Smith、L. Cronin)、Tetrahedron、61(2005)、8410~8418頁は、2-フルオロエチルトシレート及びフェナントリジンから始まり、続いて、飽和臭化ナトリウム溶液で前処理したDowex 1X-850樹脂を使用して、対イオンを臭化物陰イオンに交換することによる、2-フルオロエチルフェナントリジニウムブロミドの調製を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/084585号
【文献】米国特許第4,062,849号
【非特許文献】
【0008】
【文献】「An unusual substitution reaction directed by an intramolecular re-arrangement」、(A.D.C. Parenty、L.V. Smith、L. Cronin)、Tetrahedron、61(2005)、8410~8418頁
【文献】「Protective Groups in Organic Synthesis」(Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts、第2版、1991年、John Wiley & Sons, Inc.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物を提供すること、陽電子放射断層撮影の診断方法における多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物の使用、及び前記多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式I:
【0011】
【0012】
[式I中、
波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子(non-nodal carbon atom)とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素;ハロゲン;任意選択で保護されているヒドロキシ;C1~4アルコキシ;ニトロ基;1若しくは2個の水素原子がC1~6アルキルで任意選択で置き換えられている、又は2個の水素原子がC2~5アルキレンで任意選択で置き換えられて複素環を形成する、アミノ基;ハロゲン、カルボキシ、ホルミル又はC1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C1~6炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~6炭素置換基、任意選択で保護されているヒドロキシ、C1~4アルコキシ、1~2個の水素原子がC1~6アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~5個の置換基を任意選択で有するフェニル基から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-、硫黄原子-S-及びC3~6シクロアルキレンから選択され、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、二価ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン(mononegative anion)、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0013】
好ましくは、本発明は、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1が、水素;ハロゲン;C1~4アルコキシ;ニトロ基; 1又は2個の水素原子がC1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基;ハロゲン又はC1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基、C1~4アルコキシ、1~2個の水素原子がC1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基から独立して選択される置換基であり、
R2が、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-及び硫黄原子-S-から選択され、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである、
式Iを有する化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0014】
本発明は、特に、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1が、水素;ハロゲン;C1~4アルコキシ; 1又は2個の水素原子がC1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基;ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C1~4炭素基;及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基、C1~4アルコキシから独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基から独立して選択される置換基であり、
R2が、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が酸素原子-O-であり、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである、
式Iを有する化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0015】
本発明は、とりわけ、波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1が、水素、ハロゲン、C1~4アルコキシ、C1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R2が、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~4アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである、
式Iを有する化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0016】
特に好ましくは、本発明は、
波線が、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1が、水素、ハロゲン、C1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、鎖状C1~4炭素基、及び鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R2が、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4が、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nが、9の整数であり、
X-が、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである、
式Iを有する化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0017】
本発明は、陽電子放射断層撮影の診断方法における使用のための上記に定義された放射性同位体標識化合物に関する。好ましくは、前記診断方法は、哺乳動物の心血管系の検査に使用される。前記診断方法は、心筋を通る局所血流を定量化するための心筋灌流イメージング及び/又は冠動脈疾患における冠動脈予備能(coronary reserve)を定量化するための心臓灌流(cardiac perfusion)検査を含む。
【0018】
本発明は、また、上記に特定された放射性同位体標識化合物と、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含有する医薬組成物に関する。好ましくは、前記組成物は滅菌溶液の形態である。
【0019】
放射性同位体標識化合物は、陽電子放射断層撮影の診断方法における使用のための薬剤の製造に使用される。好ましくは、診断方法は、哺乳動物の心血管系の検査に使用される。診断方法は、特に、心筋を通る局所血流を定量化するための、及び/又は冠動脈疾患における冠動脈予備能を定量化するための心臓灌流の検査に使用される。
【0020】
本発明は、PETスキャンの際に心筋灌流を評価する及び冠動脈疾患を診断する心臓トレーサー(cardiotracer)としての使用のための18F放射標識化合物を提供する。陽電子の範囲が0.6mmのオーダーである、18F放射性核種を含有する心臓トレーサーの使用は、陽電子の範囲が5.9mmである82Rb又は13NH3(1.6mm)等の他のPETトレーサーと比較して、スキャンの際に取得画像の高い空間分解能及び高い計数感度を得ることが可能であり、それは、陽電子の運動エネルギーが減少すると空間分解能が増加するからである。PET技術及び本発明の心臓トレーサーの使用は、心筋血流を絶対値で定量化することを可能にし、侵襲的なカテーテル挿入を必要とすることなく、各冠動脈を通る流量を推定することが含まれる。PET検査における心臓灌流が、短い半減期の放射性核種を含有するトレーサーを使用して評価される場合、心臓灌流イメージングは、サイクロトロン又はジェネレータ(generator)に直接アクセスできるPET検査室においてのみ実施することができ、それは、トレーサーの活性が、通常、離れたPET検査室への移送に必要な時間で完全に衰えるからである。半減期が109.8分の18F放射性核種で標識された本発明の化合物の形態での心臓トレーサーの送達は、PET検査室の外部で心臓トレーサーを生成すること、必要であれば、調製された医薬形態を検査場所に送達することを可能にする。
【0021】
PETを使用する有効で容易に利用可能な心臓学的診断は、最優先事項であり、なぜなら、心不全の病態生理学の理解に寄与することに加えて、薬学的及び侵襲的治療の転帰を評価するツールを提供するからである。臓器機能(灌流、代謝及び左心室機能)についてのデータの他に、PET-CT方法は、冠動脈の解剖学的な狭窄の有意性について定量的なデータを提供する。両方の検査は、同時に実施される場合、虚血性が病因の慢性心不全を有する患者を評価する総合的な診断及び予後の方法を提供する。
【0022】
本発明は、図面を参照しながら詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】医薬形態の5-(2-[
18F]フルオロエチル)フェナントリジニウム塩の投与後のラットによる研究から得た放射能分布の代表的なPET画像を示す。
【
図2】医薬形態の6-フェニル-5-(2-[
18F]フルオロエチル)フェナントリジニウム塩の投与後のラットによる研究から得た放射能分布の代表的なPET画像を示す。
【
図3】医薬形態の3,6-ビス(ジメチルアミノ)-10-(2-[
18F]フルオロエチル)アクリジニウム塩の投与後のラットによる研究から得た代表的なPET画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、式I:
【0025】
【0026】
[式Iの式中、
波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素;ハロゲン;任意選択で保護されているヒドロキシ;C1~4アルコキシ;ニトロ基;1若しくは2個の水素原子がC1~6アルキルで任意選択で置き換えられている、又は2個の水素原子がC2~5アルキレンで任意選択で置き換えられて複素環を形成する、アミノ基;ハロゲン、カルボキシ、ホルミル又はC1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C1~6炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~6炭素置換基、任意選択で保護されているヒドロキシ、C1~4アルコキシ、1~2個の水素原子がC1~6アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~5個の置換基を任意選択で有するフェニル基から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-、硫黄原子-S-及びC3~6シクロアルキレンから選択され、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、二価ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物、
又はその水和物若しくは溶媒和物に関する。
【0027】
本発明は、また、本発明による多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物と、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む医薬組成物、特に滅菌溶液の形態の医薬組成物に関する。滅菌組成物は、外側遮蔽物の中に入れた最終容器(バイアル又はシリンジ)の中に提供される。
【0028】
本発明による化合物は、有機化学の分野に利用可能な一般的な合成方法を適合することによって製造される。スキームIに例示されている方法は、R1、R3及びR4が上記の式Iに示された意味を有する、式IIの置換化合物を使用し、式IIの前記化合物がアクリジン又はフェナントリジンの誘導体であり、符号GOA及びGOBが求核置換反応において求核試薬で置換されうる脱離基である、式IIIの化合物GOA-CH2-R5(GOB)を使用する。R5-CH2断片は、上記に定義された鎖R2置換基に構造の点で対応している。GOA及びGOB脱離基は、構造的に同一であり又は異なっており、フッ化物基を除いて、アルキルスルホネート脱離基、フルオロアルキルスルホネート脱離基、アリールスルホネート脱離基、ハロアリールスルホネート脱離基及びハロゲン脱離基から独立して選択される。好ましくは、脱離基は、メタンスルホネート、エタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)、ペンタフルオロエタンスルホネート、トルエンスルホネート(トシル)、4-ブロモフェニルスルホネート(ブロシル)、ヨウ化物及び臭化物基である。
【0029】
【0030】
合成の第1のステップでは、GOA基の置換が、側鎖にGOB脱離基を有する式IVのアクリジニウム又はフェナントリジニウム化合物の形成を生じ、合成の第2のステップでは、式IVの化合物が18F-フッ化物陰イオンと反応して、第四級窒素原子に結合した側鎖に18F原子を含有する式Vの化合物を形成する。
【0031】
必要な場合、式IIIの化合物との副反応に関与することができる式IIの化合物のR1基は、既知の保護基、例えば、モノグラフ「Protective Groups in Organic Synthesis」(Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts、第2版、1991年、John Wiley & Sons, Inc.)に開示されているものを使用して、機械的に保護される。式IIIの化合物との副反応に関与することができる式IIの化合物のR1基は、特に、第一級及び第二級アミノ基であり、任意選択でヒドロキシ基である。
【0032】
或いは、本発明の化合物は、R1、R3及びR4が上記の式Iに定義された通りである式IIの置換化合物を使用し、R6が18Fフッ素原子である又はCH2-R6断片が式IのR2の定義に対応し、符号GOCが求核置換反応においてアクリジン若しくはフェナントリジン環の窒素原子で置換されうる脱離基である式VIのGOC-CH2-R6化合物を使用する、スキームIIに例示されている方法によって製造される。GOC脱離基は、上記のGOA及びGOB基の定義において参照された脱離基から選択される。スキームIIの方法によると、側鎖に18F原子を含有する式VIIの化合物が製造され、R6断片は18Fフッ素原子である、又はCH2-R6断片は式IのR2の定義に対応する。スキームIによる反応に類似して、必要な場合、式VIの化合物との副反応に関与することができる式IIの化合物のR1基は、上記と同様の保護基を使用して標準的な手順に従って保護される。
【0033】
【0034】
本発明の化合物は、スキームI又はIIの最後の反応ステップで離れる脱離基に対応する、安定した有機又は無機酸の一価陰性陰イオンである対イオンと一緒に、第四級アンモニウム塩の形態で得られる。しかし本発明の範囲は、そのような塩に限定されず、それは、第四級塩の対イオンである一価陰性陰イオンを、必要であれば標準的な手順を使用して、安定した有機又は無機酸の別の陰イオンに置き換えることができるからである。例えば、スキームI又はIIの方法により得られる第四級アンモニウム塩は、所望の一価陰性陰イオンを含有する無機若しくは有機塩の溶液に溶解する、又は所望の一価陰性陰イオンを含有する無機若しくは有機塩は、スキームI若しくはIIの方法により得られる第四級アンモニウム塩の溶液に加えられる。任意選択で、スキームI又はIIの方法により得られる第四級アンモニウム塩は、イオン交換体を使用して、例えば、科学記事の表題「An unusual substitution reaction directed by an intramolecular re-arrangement」、(A.D.C. Parenty、L.V. Smith、L. Cronin)、Tetrahedron、61(2005)、8410~8418頁に開示されている方法を使用して、所望の陰イオンのアルカリ金属塩及び酸の溶液で前処理された陰イオン交換樹脂を使用して、又は下記の実施例に提示されている手順に従って適切な緩衝液を用いる溶離によって回収されて、所望の陰イオンを含有する塩に転換される。
【0035】
故に、本発明の範囲は、式Iの多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物を網羅し、式中、X-は、任意の安定した有機又は無機酸の一価陰性陰イオン、好ましくは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンを含む群から選択される陰イオンである。
【0036】
前記塩は、水和物及び/又は溶媒和物を形成することができ、水和物及び/又は溶媒和物も本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
好ましくは、本発明は、式I[式Iの式中、波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素;ハロゲン;C1~4アルコキシ;ニトロ基;1又は2個の水素原子がC1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基;ハロゲン又はC1~4アルカンスルホン置換基を任意選択で有する鎖状C1~6炭素基;及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基、1~2個の水素原子がC1~4アルキルで任意選択で置き換えられているアミノ基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖の炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が、酸素原子-O-及び硫黄原子-S-から選択され、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する放射性同位体標識化合物、
及びその水和物又は溶媒和物に関する。
【0038】
より好ましくは、本発明は、式I[式Iの式中、波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素、ハロゲン、C1~4アルコキシ、C1~4アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基、C1~4アルコキシから独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、鎖が少なくとも2個の炭素原子を含有する場合、この鎖には、鎖の炭素原子間に任意選択で二価連結があり、前記連結が酸素原子-O-であり、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する放射性同位体標識化合物、
及びその水和物又は溶媒和物に関する。
【0039】
更により好ましくは、本発明の化合物は、式I[式Iの式中、波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素、ハロゲン、C1~4アルコキシ、C1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、ハロゲン置換基を任意選択で有する鎖状C1~4炭素基、及びハロゲン、鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン及びC1~4アルキルから選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する放射性同位体標識化合物、
及びその水和物又は溶媒和物である。
【0040】
特に好ましくは、本発明の化合物は、式I[式Iの式中、波線は、多環式芳香族系の非縮合位置の炭素原子とR1置換基の間の単結合を示し、
R1は、水素、ハロゲン、C1~2アルキルで置き換えられる1又は2個の水素原子を任意選択で有するアミノ基、鎖状C1~4炭素基、及び鎖状C1~4炭素置換基、ハロゲン化鎖状C1~4炭素置換基から独立して選択される1~3個の置換基を任意選択で有するフェニル基、から独立して選択される置換基であり、
R2は、鎖の末端メンバーとして-CH2-断片を有する鎖状脂肪族置換基であり、この鎖には、ハロゲン置換基を任意選択で有するフェニル基が任意選択で結合しており、R2置換基が、合計で1~16個の炭素原子を含有し、炭素原子のうちの1個における水素原子が、18Fフッ素放射性同位体の原子に置き換えられており、
R3及びR4は、組み合わされて、ブタジエニル-1,3-置換基を形成し、その末端炭素原子が、B環の隣接する非縮合位置の炭素原子に連結して、非縮合位置の炭素原子にR1置換基を有する、A及びB環系と縮合した芳香族C環を形成し、
nは、9の整数であり、
X-は、薬学的に許容される対イオンであり、これは、一塩基無機酸の陰イオン、多塩基無機酸の一価陰性陰イオン、アルカンカルボン酸の陰イオン、脂肪族スルホン酸の陰イオン、芳香族スルホン酸の陰イオン、酸性アミノ酸の陰イオンである]
を有する放射性同位体標識化合物、
及びその水和物又は溶媒和物である。
【0041】
(i)本発明の放射性同位体標識化合物の製造方法における中間体の製造例、(ii)本発明の放射性同位体標識化合物の標準化合物の製造例、(iii)本発明の放射性同位体標識化合物の製造例、(iv)医薬組成物の配合例及び(v)診断技術における前記化合物の使用例を含む以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明による解決策を詳細に例示する。実施例の全体にわたって、DCMはジクロロメタンを表し、ACNはアセトニトリルを表す。
【0042】
括弧内のNMRスペクトルは、陽子及びフッ素スペクトルでは「zg30」シーケンスを使用し、炭素スペクトルでは「zg_pi_CPD」(Bruker 500MHz)又は「s2pul」(Varian 300MHz)シーケンスを使用し、水素の陽子をデカップリングして記録した。陽子スペクトルを、試料(クロロホルム中の試料)に存在するTMSに対して及び2.5ppmのDMSO溶媒の残留信号(五重項)に対して較正した。外部標準CFCl3をフッ素スペクトル測定に使用した。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(5.000g、17.72mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた100ml丸底一口フラスコに加える。フラスコを、冷却浴(砕氷+NaCl水溶液)を使用して0℃の温度に冷却する。DCMを、針及びシリンジを使用して加える。6mlのDCM中の2-フルオロエタノール(1.050g、16.39mmol)及びピリジン(1.570g、19.85mmol)の溶液を、20分間かけて滴下して加え、全体を室温で2時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlの冷水に注ぎ入れる。反応後の混合物を、分液漏斗に移し、水で3回洗浄する。有機相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去乾固して、1.170gのピンク色の液体を得る。収率36.4%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 4.64-4.75 (m, 4H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 74.7 (d, 2JC-F= 20.25 Hz), 79.9 (d, 1JC-F=173.88 Hz), 118.6 (q, 1JC-F= 317.13).
19F NMR (CDCl3, 470 MHz): -75.4 (s, 3F), -226.1-(-226.5) (m, 1F).
HR-MS C3H4F4O3S (196.12067 u).
【0044】
(実施例2)
1,2-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(5.000g、17.72mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた100ml丸底一口フラスコに加える。反応フラスコを、冷却浴(砕氷+NaCl水溶液)を使用して0℃の温度に冷却する。12mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加え、その後、6mlのDCM中のエタン-1,2-ジオール(0.540g、8.70mmol)及びピリジン(1.400g、17.70mmol)の溶液を、20分間かけて滴下して加え、全体を室温で1.5時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlの冷水に注ぎ入れる。反応後の混合物を、分液漏斗に移し、水で3回洗浄する。有機相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去乾固して、2.200gのピンク色の液体を得る。収率77.5%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 4.77 (s, 4H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 71.87, 118.5 (q, 1JC-F=317.38 Hz).
19F NMR (CDCl3, 470 MHz): -74.7 (s, 6F).
【0045】
(実施例3)
1,6-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ヘキサン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(7.000g、24.81mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた100ml丸底一口フラスコに加える。反応フラスコを、冷却浴(砕氷+NaCl水溶液)を使用して0℃の温度に冷却する。12mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加え、その後、50mlのDCM中のヘキサン-1,6-ジオール(1.400g、11.85mmol)及びピリジン(1.450g、18.33mmol)の溶液を、20分間かけて滴下して加える。全体を室温で3時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlの冷水に注ぎ入れる。反応後の混合物を、分液漏斗に移し、水で3回洗浄する。有機相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去乾固して、2.000gの生成物を得る。収率44.2%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 1,51 (五重線, 4H, 3JH-H=4 Hz), 1.80-1.90 (m, 4H), 4.55 (t, 3JH-H=6.5 Hz, 4H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 24.5, 28.9, 77.2, 118.6 (q, 1JC-F=317.25 Hz).
19F NMR (CDCl3, 282 MHz): -75.0.
HR-MS C8H12F6O6S2 (382.29770 u).
【0046】
(実施例4)
1,3-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)プロパン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.104g、7.46mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた100ml丸底一口フラスコに加える。反応フラスコを、冷却浴(砕氷+NaCl水溶液)を使用して0℃の温度に冷却する。12mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加え、その後、6mlのDCM中のプロパン-1,3-ジオール(0.261g、3.43mmol)及びピリジン(0.620g、7.84mmol)の溶液を、20分間かけて滴下して加え、全体を室温で1.5時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlの冷水に注ぎ入れ、分液漏斗に移し、水で3回洗浄する。有機相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去乾固して、0.938gの標記化合物をピンク色の液体の形態で得る。収率80.38%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 2.37 (q, 3JH-H=5.5 Hz, 2H), 4.68 (t, 3JH-H=6.0 Hz, 4H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 29.3, 71.5, 118.6 (q, 1JC-F=319.60 Hz).
19F NMR (CDCl3, 470 MHz): -74.6 (s, 6F).
【0047】
(実施例5)
1,16-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ヘキサデカン
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.50g、8.86mmol)及びヘキサデカン-1,16-ジオール(0.252g、0.98mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた100ml丸底一口フラスコに加える。反応を室温で4時間実施する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlのDMC及び冷水に注ぎ入れる。反応後の混合物を、分液漏斗に移し、水で3回洗浄する。相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去乾固して、0.301gの生成物を得る。収率17.4%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 1.20 - 1.30 m (20 H), 1.41 (五重線, 4H, 3JH-H=4 Hz), 1.82 (五重線, 3JH-H = 4 Hz, 4H), 4.54 (t, 3JH-H=6.5 Hz, 4H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 25.0, 28.8, 29.2, 29.3, 29.4, 29.6, 29.6, 77.8, 118.6 (q, 1JC-F=317.25 Hz).
19F NMR (CDCl3, 470 MHz): -74.9.
【0048】
(実施例6)
2-(4-フルオロフェニル)エチルトリフルオロメタンスルホネート
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.000g、7.09mmol)を、磁気双極子及びセプタムを備えた50ml丸底一口フラスコに加える。溶液を、冷却浴(氷+NaCl)を使用して0℃の温度に冷却し、2-(4-フルオロフェニル)エタノール(0.921g、6.57mmol)を、冷却溶液に約10分間かけて滴下して加え、フラスコの内容物を室温で4時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を、HPLCのために20mlのDMC及び冷水に注ぎ入れる。反応混合物を分液漏斗に移し、水で繰り返し洗浄して、酸を除去する。相をMgSO4で脱水し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより留去して、0.999gの生成物を得る。収率55.8%。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 3.10 (t, 3JH-H=7,0 Hz,), 4.66 (td, 3JH-H=7,0 Hz,
4JH-F=0.5 Hz, 2H), 7.03 (dd, 3JH-F= 9.0 Hz, 4JH-H= 5.0 Hz, 2H), 7.16-7.20 (m, 3JH-H=7.0 Hz, 2H).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ 35.24, 77.55, 116.2 (d, 2JC-F= 21.5 Hz), 118.6 (q, 1JC-F= 317.13), 130.8090 (d, 3JC-F= 8.0 Hz), 130.8095 (d, 4JC-F= 3.4 Hz), 162.5 (d, 1JC-F=246.2 Hz).
19F NMR (CDCl3, 282 MHz): -74.8 (s, 3F), -115.0 (tt, 3JF-H=8.8 Hz, 4JF-H=5.0 Hz, 1F).
【0049】
(実施例7)
5-(2-フルオロエチル)フェナントリジニウムp-トルエンスルホネート
フェナントリジン(0.410g、2.29mmol)を、100ml丸底一口フラスコに不活性ガス雰囲気下で加え、その後、1mlのトルエンを、針及びシリンジを使用して3回加え、次いで留去乾固する。DMFに溶解したフェナントリジンを、磁気双極子を具備し、且つ磁気撹拌機に取り付けられた100ml丸底一口フラスコに含有されたDMF中の2-フルオロエチルトシレート(1.000g、4.58mmol)に滴下して加える。反応を不活性ガス雰囲気下において105℃で168時間実施する。反応の終了時に、黄褐色の溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮して、DMFを除去する。残留物を室温に冷却し、冷アセトン(約4ml)に溶解する。ジエチルエーテル(約60ml)を加え、これを冷蔵庫で冷却する。沈殿した生成物を濾別する。0.20gの標記化合物を得る(収率22.0%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 5.09 (td, 2JH-F=47 Hz, 3JH-H=4.5 Hz, 2H), 5.53 (td, 3JH-F=26 Hz, 3JH-H=4.5 Hz, 2H), 7.94-8.04 (m, 4H), 8.10-8.17 (m, 4H), 8.20-8.30 (m, 4H), 8.41-8.45 (m, 1H), 8.54 (dd, 3JH-H = 8 Hz, 4JH-H = 0.5 Hz, 1H), 8.62-8.69 (m, 2H), 9.00 - 9.06 (m, 2H), 9.16 (d, 3JH-H= 8 Hz, 1H), 9.21 (dd, 3JH-H = 8 Hz, 4JH-H=2 Hz), 10.37 (s, 1H).
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -221.1 (tt, 2JF-H=47.1 Hz, 3JH-H=25.9 Hz, 1F).
HR-MS C7H7S1O3
- (171.01104 u), 実測値: 171.01122 u, C15H13N1F1
+ (226.10265 u), 実測値: 226.10250 u.
【0050】
(実施例8)
6-フェニル-5-(2-フルオロエチル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(0.290g、1.48mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。6mlのDCM中の6-フェニルフェナントリジン(0.210g、0.82mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を216時間撹拌する。反応の終了時に、冷Et2Oを反応混合物に加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、生成物を減圧下で濾過する。0.200gの標記化合物を得る(収率53.9%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 4.95 (dt, 2JH-F=46.5 Hz, 3JH-H=5.0 Hz, 2H), 5.30 (dbs, 3JH-F=23.5 Hz, 2H), 7.56 (d, 3JH-H=8 Hz, 1H), 7.75-7.88 (m, 5H), 7.96 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 1H), 8.15-8.23 (m, 2H), 8.48 (ddd, 3JH-H=8.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.75 (d, 3JH-H=9 Hz, 1H), 9.28 (d, 3JH-H=8 Hz, 1H), 9.32 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 54.1 (d, 2JC-F= 21.00 Hz), 81.3 (d, 1JC-F=170.00 Hz), 121.1, 123.3, 124.8, 125.5, 126.0, 128.9, 129.2, 130.4, 130.6, 130.9, 131.4, 132.3, 132.9, 134.2, 134.7, 137.8, 165.3.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -78.1 (s, 3F), -220.4 - -220.8 (tt, 2JF-H=49.0 Hz, 3JH-H=22.1 Hz, 1F).
HR-MS C1O3F3S1
- (148.95148 u), 実測値: 148.95106 u, C21H17FN+ (302.36423 u).
【0051】
(実施例9)
10-(2-フルオロエチル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(0.270g、1.38mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。6mlのDCM中のアクリジン(0.220g、1.23mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、その後、フラスコの内容物を72時間撹拌する。反応の終了時に、20mlの冷Et2Oを反応混合物に加え、混合物を冷蔵庫に30分間静置し、次いで生成物を減圧下で濾別する。0.200gの標記化合物を得る。収率43.4%。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 5.15 (dt, 2JH-F=47 Hz, 3JH-H =4.5 Hz, 2H), 5.91 (dt, 3JH-F=25.5 Hz, J= 4.5 Hz, 2H), 8.06 (dd, 3JH-H =8.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 2H), 8.48 (ddd, 3JH-H=9.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 2H), 8.67 (dd, 3JH-H=8 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 2H), 8.80 (d, 3JH-H=9.5 Hz, 2H), 10.26 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 49.9 (d, 2JC-F=19.12 Hz), 82.3 (d, 1JC-F=168.88 Hz), 118.9, 126.4, 127.8, 132.0, 139.4, 141.5, 152.1.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -78.1 (s, 3F), -221.5 (tt, 2JF-H=47 Hz, 2JF-H=25.5 Hz, 1F).
HR-MS C1O3F3S1
- (148.95148 u), C15H13N1F1
+ (226.10265 u), 実測値: 226.10250 u.
【0052】
(実施例10)
3,6-ビス(ジメチルアミノ)-10-(2-フルオロエチル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(0.218g、1.11mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。10mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。10mlのDCM中のアクリジニウムオレンジ(0.137g、0.52mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、その後、フラスコの内容物を72時間撹拌する。反応の終了時に、20mlの冷Et2Oを反応混合物に加え、混合物を冷蔵庫に30分間静置し、次いで生成物を減圧下で濾別する。0.104gの標記化合物を得る(収率57.5%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 3.19 (s, 12H), 4.90-5.10 (m, 4H), 6.54 (s, 2H), 7.10 (d, 3JH-H=9 Hz, 2H), 7.73 (d, 3JH-H=9 Hz, 2H), 8.56 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 40.2, 46.8 (d, 2JC-F=19.9 Hz), 81.6 (d, 1JC-F=167.6 Hz), 92.9, 114.0, 116.2, 120.7 (q, 1JC-F=320 Hz), 132.8, 142.6, 143.0, 155.2.
19F NMR ((CD3)2SO, 282 MHz): δ -77.71 (s, 3F), -221.3 (tt, 2JF-H=49.4 Hz, 3JH-H=25.1 Hz, 1F).
HR-MS C3F3S1O3
- (148.95148 u), 実測値: 148.95106 u, C19H23FN3 (312.40387 u).
【0053】
(実施例11)
5-(2-トリフルオロメチルスルホニルオキシエチル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,2-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタン(0.310g、0.95mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。10mlのDCM中のフェナントリジン(0.170g、0.95mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、その後、フラスコの内容物を48時間撹拌する。反応の終了時に、20mlの冷Et2Oを反応混合物に加え、混合物を冷蔵庫に30分間静置し、次いで生成物を減圧下で濾別する。0.160gの標記化合物を得る(収率33.3%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 4.88 (t, 3JH-H = 4.5 Hz, 2H), 5.48 (t, 3JH-H=4.5 Hz, 2H), 8.10-8.25 (m, 3H), 8.46 (ddd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 2H), 8.66 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 2H), 9.19 (d, 3JH-H=8.5 Hz, 1H), 9.24 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=2.0 Hz, 1H), 10.23 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz); δ 56.9, 73.1, 120.0, 120.7 (q, 1JC-F= 320.25), 123.2, 123.5, 125.1, 126.0, 130.4, 130.5, 132.0, 133.1, 133.6, 134.8, 138.6, 156.6.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz); δ -78.1 (s, 3F).
HR-MS C1F3S1O3
- (148.95148 u), 実測値: 148.95147 u, C16H13N1S1O3F3
+ (356.05628 u), 実測値: 356.05616 u.
【0054】
(実施例12)
6-フェニル-5-(2-トリフルオロメチルスルホニルオキシエチル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,2-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタン(0.404g、1.24mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却し、6mlのDCM中の6-フェニルフェナントリジン溶液(0.170g、0.67mmol)を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、次いでフラスコの内容物を96時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を8mlに濃縮し、40mlの冷Et2Oを加え、これを冷蔵庫に30分間静置する。生成物を減圧下で濾過して、0.200gの標記化合物(収率51.7%)を得る。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 4.70 (t, 2H, 3JH-H=4.5 Hz), 5.26 (bs, 2H), 7.58 (d, 1H, 3JH-H=8.5 Hz), 7.72-7.88 (m, 5H), 7.98 (t. 1H, J=7.5 Hz), 8.15-8.25 (m, 2H), 8.42 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 8.65 (d, 1H, 3JH-H=9.5 Hz), 9.29 (d, 1H, 3JH-H=8.5 Hz), 9.34 (d, 1H, 3JH-H=9.5 Hz).
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -78.1 (s, 3F).
MS-HR C1O3F3S1
- (148.95148), 実測値: 148.95106, C22H17F3NO3S (432.43484 u) 実測値: 432.08751 u.
【0055】
(実施例13)
10-(2-トリフルオロメチルスルホニルオキシエチル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,2-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタン(0.29g、0.89mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却し、6mlのDCM中のアクリジン溶液(0.120g、0.67mmol)を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、次いでフラスコの内容物を48時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を4mlに濃縮し、20mlの冷Et2Oを加え、これを冷蔵庫に30分間静置する。生成物を減圧下で濾過して、0.03gの標記化合物を得る。収率8.86%。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 5.39 (t, 3JH-H=5.0 Hz, 2H), 6.02 (t, 3JH-H=5.0 Hz, 2H), 8.00-8.10 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 2H), 8.15 (ddd, 3JH-H=9.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 2H,), 8.32 (d, 3JH-H=9.5 Hz, 2H), 8.47 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1 Hz, 2H), 9.99 (s, 1H).
19F FMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -78.1 (s, 3F).
MS-HR C3F3S1O3
- (148.95148), 実測値: 148.95106, C16H13F3NO3S+ (356.338981 u).
【0056】
(実施例14)
3,6-ビスジメチルアミノ-10-(2-トリフルオロメチルスルホニルオキシエチル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,2-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)エタン(0.355g、1.09mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却し、6mlのDCM中のアクリジンオレンジ(Acridinium Orange)(0.207g、0.78mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を96時間撹拌し、反応の終了時に、4mlに濃縮し、20mlの冷Et2Oを加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、生成物を減圧下で濾過して、0.310gの標記化合物を得る。収率67.2%。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 3.27 (s, 12H), 4.85 (t, 3JH-H =4.5 Hz, 2H), 5.15 (bs, 2H), 6.63 (s, 2H), 7.25 (d, 3JH-H=9.0 Hz, 2H), 7.89 (d, 3JH-H =7.5 Hz, 2H), 8.76 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 40.4, 57.8, 73.2, 93.1, 114.2, 116.4, 120.7 (q, 1JC-F=320 Hz), 133.0, 143.0, 155.5.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -78.1 (s, 3F).
【0057】
(実施例15)
5-(3-フルオロプロプロピル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
標記化合物は、実施例7に記載された手順に従うが、2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート及びフェナントリジン(0.230g、1.28mmol)の代わりに、3-フルオロプロプロピルトリフルオロメタンスルホネート(0.229g、1.09mmol)を使用して得られる。収率71.0%。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 2.46-2.58 (m, 2H), δ 4.73 (dt, 2JH-F=47 Hz, 3JH-H=5.5 Hz, 2H), 5.24 (t, 3JH-H=7 Hz, 2H,), 8.09-8.14 (m, 2H), 8.14-8.19 (m, 1H), 8.37-8.43 (m, 1H), 8.59 (dd, 3JH-H=8 Hz, 4JH-H=1 Hz, 1H ), 8.63 (d, 3JH-H=8 Hz, 1H), 9.12 (d, 3JH-H=8 Hz, 1H), 9.18 (dd, 3JH-H=8 Hz, 4JH-H=1 Hz,1H), 10.37 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 29.8 (d, 1JC-F=19.375 Hz), δ 55.0 (d, 1JC-F=4.5 Hz), 81.5 (d, 1JC-F=161.0 Hz), 119.8, 120.7 (q, 1JC-F=320.25 Hz), 123.1, 123.7, 125.1, 125.9, 130.3, 130.4, 132.1, 132.8, 133.1, 134.4, 138.1, 155.9.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -219.7 - -220.1 (m, 1F), -77.72 (s, 3F).
【0058】
(実施例16)
5-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
標記化合物は、実施例7に記載された手順に従うが、2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート及びフェナントリジン(0.147g、0.82mmol)の代わりに、2-(4-フルオロフェニル)エチルトリフルオロメタンスルホネート(0.174g、0.64mmol)を使用して得られる。0.198gの生成物を得る(収率53.7%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 3.41 (3JH-H=7.5 Hz. 2H). 5,33 (t. 3JH-H=7,5 Hz. 2H.), 7,09-7,14 (m. 2H). 7,27-7,33 (m, 2H), 8.10 (ddd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.5 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 8.14 (ddd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.5 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.19 (ddd, 3JH-H=9.0 Hz, 3JH-H=7.5 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.41 (ddd, 3JH-H=8.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.48 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 8.74 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 9.15 (d, 3JH-H=8.5 Hz, 1H), 9.21 (dd, 3JH-H=8 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 10.13 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 34.1, 58.5, 115.4 (d, 2JC-F=21.3 Hz), 120.1, 120.7 (q, 1JC-F=320.25 Hz), 123.2, 123.4, 125.1, 125.8, 130.5, 130.4, 131.0 (d, 3JC-F=8.2 Hz), 132.2, 132.6 (d, 4JC-F=3.1 Hz), 132.2 132.7, 132.9, 134.4, 138.2, 155.5, 161.3 (d, 1JC-F=243.2 Hz).
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -77.72 (s, 3F), -115.6 - -115.5 (m, 1F).
【0059】
(実施例17)
10-(2-ヨードエチル)アクリジニウムヨージド
1,2-ジヨードエタン(1.033g、3.66mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。10mlのトルエンに溶解したアクリジン(0.406g、2.26mmol)を、針及びシリンジを使用して加え、反応を溶媒沸点で10時間実施する。混合物を冷却し、形成された沈殿物を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄する。純度33%(HPLCによる)を有する0.433gの化合物を得る。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 3.79 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 2H), 5.76 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 2H), 8.03 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 2H), 8.48 (ddd, 3JH-H=8.5 Hz, 3JH-H=7.5 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 2H), 8.63 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 2H), 8.69 (d, 3JH-H=9.5 Hz, 2H) 10.20 (s, 1H).
【0060】
(実施例18)
5-(16-トリフルオロメチルスルホニルオキシヘキサデシル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,16-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ヘキサデカン(0.145g、0.28mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。15mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。15mlのDCM中のフェナントリジニウム(0.033g、0.18mmol)の溶液を、溶液に約20分間かけて滴下加え、その後、フラスコの内容物を96時間撹拌する。反応の終了時に、DCMを蒸発させ、残留物をジエチルエーテルで洗浄する。0.038gの標記化合物を得る。収率19.5%。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 1.1-1.4 (m, 20H), 1.45 (bs, 2H), 2.06 (bs, 2H), 4.5-4.7 (bs, 2H), 5.08 (t, 2H, 3JH-H=7.5 Hz), 8.07-8.17 (m, 3H), 8.40 (ddd 3JH-H=8.5 Hz, 3JH-H=7.5 Hz, 3JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.58 (d, 3JH-H=8.0 Hz, 1H), 8.64 (d, 3JH-H=8.5 Hz, 1H), 9.14 (d, 3JH-H=8.0 Hz, 1H), 9.19 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 10.32 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 24.7, 25.5, 25.7, 25.9, 28.5, 28.6, 28.8, 28.86, 28.91, 28.96, 29.00, 29.02, 29.06, 29.09, 60.7, 76.2, 119.4, 120.7 (q, 1JC-F=320.25), 123.2, 123.7, 125.0, 125.9, 130.3, 130.4, 132.1, 132.8, 133.1, 134.4, 138.0, 155.3.
【0061】
(実施例19)
6-[4-(クロロメチル)フェニル]-5-(2-フルオロエチル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
2-フルオロエチルトリフルオロメタンスルホネート(0.091g、0.46mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。6mlのDCM中の6-[4-(クロロメチル)フェニル]フェナントリジン(0.071g、0.23mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を70.5時間混合する。反応の終了時に、冷Et2O(40ml)を反応混合物に加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、生成物を減圧下で濾過する。0.019gの標記化合物を得る(収率15.6%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 4.93 (dt, 2JH-F=47.0 Hz, 3JH-H= 4.5 Hz, 2H), 4.99 (s, 2H), 5.27 (bd, 3JH-F=23.5 Hz), 7.54 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 7.80 (d, 3JH-H=8.0 Hz, 2H), 7.87 (d, 3JH-H=8.0 Hz, 2H), 7.97 (ddd, 3JH-H=8.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 8.17-8.23 (m, 2H), 8.41 (ddd, 3JH-H = 8.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H), 8.74 (d, 3JH-H=9.5 Hz, 1H), 9.28 (d, 3JH-H=8.5 Hz, 1H), 9.33 (dd, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=2.0 Hz, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 45.3, 54.2 (d, 2JC-F=21.3 Hz), 81.3 (d, 2JC-F=170.7 Hz), 121.1, 120.7 (q, 1JC-F=320.25 Hz), 120.8, 123.3, 124.9, 125.4 126.0, 129.4, 130.5, 130.6, 130.7, 132.3, 132.8, 134.1, 134.7, 137.8, 140.9, 164.9.
19F NMR ((CD3)2SO, 282 MHz): δ -77.7 (s, 3F), -220.2 (tt, 46.9, 24.0, 1F).
HR-MS C1O3F3S1
- (148.95148), 実測値: 148.95106, C22H18FClN+ (350.11063), 実測値: 350.11040.
【0062】
(実施例20)
9-クロロ-10-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
2-(4-フルオロフェニル)エチルトリフルオロメタンスルホネート(0.068g、0.25mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。6mlのDCM中の9-クロロアクリジン(0.057g、0.27mmol)の溶液を、溶液に約20分間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を19時間混合する。反応の終了時に、冷Et2O(40ml)を反応混合物に加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、生成物を減圧下で濾過する。0.001gの標記化合物を得る(収率0.6%)。
HR-MS C1O3F3S1
-(148.95148)、実測値:148.95106、C21H16FClN+(336.09498)、実測値:336.09481。
【0063】
(実施例21)
6-(4-ブチルフェニル)-5-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
標記化合物は、実施例20に記載された手順に従うが、9-クロロアクリジン及び2-(4-フルオロフェニル)エチルトリフルオロメタンスルホネート(0.1955g、0.72mmol)の代わりに、6-(4-ブチルフェニル)フェナントリジン(0.103g、0.33mmol)を使用して得られる。0.032gの生成物を得る(収率16.5%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 0.98 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 3H), 1.39 (六重線, 3JH-H=7.5 Hz, 2H), 1.71 (五重線, 3JH-H=7.5 Hz, 2H), 2.82 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 3H), 3.26 (t, 3JH-H=7.5 Hz, 2H), 4.94 (bs, 2H), 6.97-7.10 (m, 4H), 7.60-7.75 (m, 5H), 7.97 (t, 3JH-H=8.0 Hz, 1H), 8.20-8.30 (m, 2H), 8.40 (td, 3JH-H=8.0 Hz, 4JH-H = 1.0 Hz, 1H), 8.90 (d, 3JH-H=8.5 Hz, 1H), 9.26 (d, 3JH-H=10.00 Hz, 1H), 9.33 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 13.8, 21.6, 33.0, 33.5, 34.7, 55.3, 115.3 (d, 2JC-F=21.3, 21.00 Hz), 121.0, 120.7 (q, 1JC-F=320.25 Hz), 123.2, 124.9, 125.6 125.9, 128.4, 129.2, 133.0, 133.5, 130.5 (d, 3JC-F=8.2 Hz), 132.5, 132.7, 132.7 (d, 4JC-F=2.9 Hz), 133.8, 134.5, 137.5, 161.3 (d, 1JC-F=243.5 Hz), 164.6.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz); δ -77.7 (s, 3F), -115.5 - -115.4 (m, 1F).
【0064】
(実施例22)
6-フェニル-5-(3-フルオロプロピル)フェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
3-フルオロプロピルトリフルオロメタンスルホネート(0.159g、0.76mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。6mlのDCM中の6-フェニルフェナントリジン(0.149g、0.58mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を96時間混合する。反応の終了時に、生成物をエバポレーターにより濃縮し、冷Et2Oを加え、混合物を冷蔵庫に30分間静置する。沈殿した生成物を減圧下で濾別する。0.136gの標記化合物を得る(収率50.0%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 2.36 (dq, 3JH-F=27.0 Hz, 3JH-H= 5.5 Hz, 2H), 4.51 (dt, 2JH-F=47.0 Hz, 3JH-H= 4.5 Hz, 2H), 5.27 (bs, 2H), 7.56 (dd, 3JH-H=8.5 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 7.80-7.85 (m, 5H), 7.95 (ddd, 3JH-H=7.5 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 8.15-8.25 (m, 2H), 8.38 (ddd, 3JH-H=8.0 Hz, 3JH-H=7.0 Hz, 4JH-H=1.0 Hz, 1H), 8.73 (d, 3JH-H=8.0 Hz, 1H), 9.26 (d, 3JH-H = 8.5 Hz, 1H), 9.32 (dd, 3JH-H=8.0 Hz, 4JH-H=1.5 Hz, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 29.7 (d, 3JC-F=19.6 Hz), 51.3 (d, 3JC-F=4.9 Hz), 81.0 (d, 1JC-F=162.3 Hz), 120.67, 120.7 (q, 1JC-F=320.25 Hz), 123.2, 124.5, 125.6, 126.0, 128.3, 129.3, 130.3, 130.4, 130.9, 131.4, 132.4, 132.6, 133.8, 134.5, 137.4, 164.4.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -77.7 (s, 3F), -220.9 (tt, 2JF-H=47.1, 3JF-H=27.3, 1F).
【0065】
(実施例23)
3,6-ビス(ジメチルアミノ)-10-(3-フルオロプロピル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
3-フルオロプロプロピルトリフルオロメタンスルホネート(0.167g、0.79mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。12mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却する。12mlのDCM中のアクリジンオレンジ(0.168g、0.63mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下加え、その後、フラスコの内容物を72時間撹拌する。反応の終了時に、混合物を約12mlに濃縮し、12mlの冷Et2Oを加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、生成物を減圧下で濾過する。0.339gの標記化合物を得る(収率89.7%)。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 2.20 (d, 3JH-F=28.0, 2H), 3.19 (s, 12H), 4.50-4.80 (m, 4H), 6.48 (s, 2H), 7.12 (d, 3JH-H=9 Hz, 2H), 7.75 (d, 3JH-H=9 Hz, 2H), 8.57 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 26.7 (d, 2JC-F=19.5 Hz), 40.1, 43.2, 81.7 (d, 1JC-F=161.3 Hz), 92.0, 114.0, 116.2, 120.7 (q, 1JC-F=320 Hz), 132.8, 142.0, 142.7, 155.2.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -77.7 (s, 3F), -219.0 (tt, 2JF-H=49.4 Hz, 3JH-H=25.1 Hz, 1F).
【0066】
(実施例24)
3,6-ビス(ジメチルアミノ)-10-(6-トリフルオロメチルスルホニルオキシヘキシル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
1,16-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ヘキサン(0.434g、1.14mmol)を、磁気双極子を備えた50ml丸底一口フラスコに加える。6mlのDCMを、針及びシリンジを使用して加える。溶液を、冷却浴(液体窒素+酢酸エチル)を使用して-56℃の温度に冷却し、12mlのDCM中のアクリジンオレンジ(0.285g、1.07mmol)の溶液を、冷却した溶液に約20分間かけて滴下して加える。フラスコの内容物を96時間撹拌し、反応の終了時に、20mlの冷Et2Oを加える。混合物を冷蔵庫に30分間静置し、その後、形成された沈殿物を減圧下で濾別して、推定含有量(1H NMRスペクトルにおける信号積分に基づいて決定して)およそ33%の標記化合物の生生成物(raw product)0.370gを得る。
1H NMR ((CD3)2SO, 500 MHz): δ 1.0-2.0 (m, 8H), 3.22 (s, 12H), 4.40 (bs, 2H), 4.53 (bs, 2H), 6.28 (s, 2H), 7.02 (d, J=7.5 Hz, 2H), 7.65 (d, J=8.0 Hz, 2H), 8.43 (s, 1H).
13C NMR ((CD3)2SO, 125 MHz): δ 22.7, 25.0, 29.1, 29.2, 32.4, 46.6, 69.6, 91.8, 113.9, 114.2, 116.4, 132.7, 132.8, 142.4, 155.2.
19F NMR ((CD3)2SO, 470 MHz): δ -77.8 (s, 3F).
【0067】
(実施例25)
スキームIの反応シーケンスにより例示されている方法を使用した、本発明の18F放射標識化合物の製造方法
18F標識誘導体は、Modular Lab Standard(Eckert&Ziegler社)合成機を使用して合成される。18F放射性同位体は、Siemens Eclipseサイクロトロンを18O(p,n)18F反応に使用して生成される。得られる18F-を、陰イオン交換カラムQMAに付着させ、そこから、H2
18Oが豊富な水を回収する。H2O:ACN溶離液(1:1)を使用し、炭酸カリウム(11.7mg)を有する600μlのkryptofix溶液(22mg)を使用して、フッ化物化合物18F-をQMAカラムから反応器へ溶離する。溶媒を減圧下で留去し、次いで残留水を、1mlのACNを2回加える共沸蒸留を通して除去する。DCM中の前駆体、すなわち、第四級窒素原子の鎖側置換基の脱離基(好ましくは、トリフルオロメタンスルホネート基)を有する多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩(12~20mgの量)を、反応器に加える。反応を90℃の温度で6.5~10分間実施する。反応器を冷却し、溶液を収集バイアルに移す。次いで反応器を、エタノール(12~28.5%)を添加した酢酸緩衝液、pH=5.2の溶液で洗浄し、これも収集バイアルに移す。収集した溶液を、エタノールと混合した酢酸緩衝液、pH=5.2を移動相として使用して、セミ分取(semi-preparative)HPLCカラム(250×10mm、Luna、Phenomenex社)に適用する。フェナントリジン誘導体では、エタノール含有量が12.0%の移動相を使用し、フェニルフェナントリジン誘導体では、エタノール含有量が23.5%の移動相を使用し、アクリジン誘導体では、エタノール含有量が28.5%の移動相を使用する。
【0068】
標準を使用して実施した検査に基づいて、生成物を、特定の保持時間のセミ分取カラムから分画の収集を通して得た。フェナントリジン誘導体では、生成物を、最終バイアルに直接収集し、アクリジン及びフェニルフェナントリジン誘導体は、第2の反応器に移して、105~110℃の温度で8~10分間蒸留することにより過剰エタノールを除去し、続いて生成物を最終バイアルに移す。これらの条件下でもたらされた標識化は1~5%である。
【0069】
酢酸塩の形態で得られる本発明の放射性同位体標識化合物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して、同一性を確認し(本発明の多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の放射性同位体標識化合物の構造類似体により提供される標準との比較であり、前記類似体は、R2置換基炭素原子の対応する位置に、18Fの代わりに非放射性フッ素原子、すなわち、19Fを有する)、存在する場合、化学及び/又は放射化学的汚染物質のレベルを決定する。18F同位体の同一性は、半減期(110分)を決定すること及び18F同位体のガンマ線エネルギー(主ピーク511KeV)を測定することによって確認される。加えて、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して、放射化学的純度を決定する。
【0070】
上記の方法を使用する本発明の18F放射標識化合物の製造方法も、酢酸塩陰イオン以外の対イオンを有する塩の形態で生成物を得ることを可能にする。この目的のため、18F標識化合物を得るために使用されたセミ分取HPLCカラム(250×10mm、Luna、Phenomenex社)を使用して実験を実施し、このカラムに、N-(2-フルオロエチル)-6-フェニルフェナントリジニウムトリフルオロメタンスルホネートを装填した。アセトニトリルと、定組成系(isocratic system)中のそれぞれ0.1Mリン酸(pH=2.4)、アスコルビン酸(pH=6.3)又はクエン酸(pH=6.3)濃度の3つの異なる緩衝液との混合物を、溶離剤として使用した。セミ分取カラムから溶離した後に得られた生成物試料を、高解像度質量分析計により分析して、塩の形態で溶離した第四級アミン化合物の陽イオン及び陰イオンの両方の構造を決定した。分析の結果を下記のTable 1(表1)にまとめる。
【0071】
【0072】
得られた結果は、使用された溶離剤に加えられた緩衝液に応じて、必要な対イオン塩が得られること、及びこれらの特定の実験では、多環式芳香族アミンの第四級アンモニウム塩の化合物が得られ、アンモニウム陽イオンが、リン酸ニ水素、クエン酸塩又はアスコルビン酸塩陰イオンをそれぞれ伴っていることを明確に実証している。
【0073】
(実施例26)
医薬形態の本発明の18F放射標識化合物の製造
調合剤の合成、配合及び分配を高温チャンバにおいて実施する。活性成分、すなわち、本発明の多環式第四級芳香族アミンの放射性同位体標識化合物を、上記の実施例に提示された手順に従って製造及び精製し、その後、適切なpHの活性成分溶液を、緩衝液、例えば、クエン酸、酢酸、リン酸緩衝液を使用して決定する(任意選択であり、必要がない場合は、緩衝液は使用されない)。必要な場合、薬理学的に許容される非水性の希釈剤/溶媒を溶液に(例えば、エタノール等を、溶解度又は安定性を改善するために)加え、任意選択で、溶液は希釈されない。得られた溶液を、例えば、0.22μmのサイズの滅菌フィルターを通して加えて、グレードA純度アイソレーター(grade A purity isolator)に設置した収集バイアルに入れ、そこで、所望の放射能濃度の最終配合及び決定を、塩化ナトリウムの生理学的溶液又は注射水による生生成物の希釈(必要な場合)によって実施する。バルク内の得られた生成物を、0.22μm最終滅菌フィルターを通して最終容器(バイアル又は直接シリンジ)に自動的に分配する。任意選択で最終熱滅菌が使用され、熱処理は、生成物の安定性に有害な影響を与えないものである。バイアルを、外側保護遮蔽物の中に入れる。
【0074】
(実施例27)
動物モデルを使用して実施されたPET-CTスキャン
体重がおよそ250gの雄ラットを、少なくとも5日間にわたって隔離する。動物を、3.5~4%イソフルラン(Baxter社 AErrane)雰囲気を使用して、誘導室(induction chamber)において麻酔をかける。麻酔をかけた動物を、麻酔維持マスク(空気中1.5~2%イソフルラン)を着けて移動する。カテーテルを、動物の外側尾静脈に装着する。カテーテルの開存性のチェック及び過剰な凝血を予防するために、ヘパリン溶液(およそ50μl)を静脈内に注射する。
【0075】
動物を、呼吸数のモニタリングを可能にするセンサー及び測定の際に麻酔を提供するシステムを具備したPET/SPECT/CTスキャナー(Albira Carestream社)の測定ベッドに移動する。測定の際の呼吸数は、空気中に供給されたイソフルランの濃度により調節され、1分間に50~70回の呼吸の範囲に維持される。測定の最中、動物の目を保護調合剤(Vidisic)で保護する。
【0076】
動物には、100~200μlの本発明の化合物の18F標識放射性医薬品(心臓トレーサー)及び100~200μlの生理食塩溶液(カテーテルのデッドスペースから可能な限り多くの心臓トレーサーを移送するため)を投与する。
【0077】
トレーサーの投与が終了すると、動的PET取得を開始する。
【0078】
PET取得は、スキャンを指示する人物の推奨に応じて35~90分間かかる。取得は、30~500秒間の持続時間のスキャンシーケンスから構成される(より短いスキャンが、トレーサーの体内分布の高い動的変化によって取得の第1フェーズで発生する)。
【0079】
PET取得が終了すると、検査対象をCTモジュールに移し、そこで全身スキャンを実施する(45kVpの管電圧、400mAの電流、1回転当たり400回の投影、4回の回転)。
【0080】
取得が終了すると、動物を麻酔から覚醒させ、ケージの中に48時間置いて、トレーサー投与が任意の有害な作用を誘導したかについて観察する。次いで、安楽死させる、又は数日内に予定される場合には別の実験に使用する場合もある。
【0081】
取得の結果を、Albira Suite Reconstructorソフトウェアを使用して3D画像に再構成する。分析を実施して、選択された臓器及び組織:心筋、心血液プール(cardiac blood pool)、肺、肝臓、腎臓、膀胱における心臓トレーサーの特定取り込み値(SUV)を得る。
【0082】
図1~
図3は、上記の実験動物研究から得た代表的なPET画像を例示し、本発明の化合物を動物に投与した後の、前額面(1~2)、矢状面(3)及び横断面(4)における合計(1)及び断面(2~4)の放射能分布である。より詳細には、
図1の画像は、医薬形態の5-(2-[
18F]フルオロエチル)フェナントリジニウム塩の投与により得られ、
図2の画像は、医薬形態の6-フェニル-5-(2-[
18F]フルオロエチル)フェナントリジニウム塩の投与により得られ、
図3の画像は、医薬形態の3,6-ビス(ジメチルアミノ)-10-(2-[
18F]フルオロエチル)アクリジニウム塩の投与により得られた。この研究に提供される医薬形態は、生理食塩水溶液中の酢酸塩の溶液であった(すなわち、上記に参照された本発明の式Iの多環式芳香族アミンのアンモニウム塩の陽イオンは、塩化物及び酢酸塩陰イオンを伴っていた)。画像は、2~5分(A)及び20~35分(B)の時間枠の合計として提示されている。
【0083】
(実施例28)
ヒトにおける医療処置の記載
患者を、PET-CTスキャナーの中に、手を頭部の後ろ側にして仰向けに寝かせ、静脈内カテーテルを上肢の下部に設置する。イメージングは、本発明の18F標識放射性医薬品の注射により、動的データ収集モードの安静時スキャンで開始する。次のスキャンでは、イメージングを薬理学的又は身体的ストレス後のストレス下で実施する。動的イメージングでは、データ取得開始時間は、トレーサー投与の数秒前である。灌流画像は、静脈内トレーサーボーラス投与直後の10分間で取得する。安静時及びストレス下でのスキャンの間の最小間隔は、50分である。ストレスは、身体運動を通して又はレガデノソン(regadenosone)の静脈内ボーラス(0.4mg)投与により薬理学的に、体重に無関係に20~30秒間にわたって患者において誘導される。レガデノソンでは、投与の直後にカニューレを5mlの生理食塩水でフラッシュし、続いて、18Fで標識した本発明の放射性同位体標識化合物(心臓トレーサー)を、生理食塩水の後に30秒間投与する。PETスキャンを以下のように実施する。上下に追加の区域を伴って心臓の区域に10分間の動的スキャン(12×10秒間、4×30秒間、1×6分間)、3Dデータ取得、ECG同期法(1サイクル当たり8又は16フレーム)、アレイ:128×128。
【0084】
PETイメージングは、PET-CT断層撮影機を使用して、安静時及びストレス下で実施する。CTスキャンでは、減弱調整を、安静時及びストレス下での検査の前後2分間で達成する。低線量CTは、動的スキャンの取得の前後3分以内に実施する。合計CTスキャン時間は、20秒間である。X線管の回転時間は、140kV及び30mAで0.5秒間である。心筋灌流イメージングの詳細をTable 2(表2)にまとめる。
【0085】