IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特許7438198抗薬物抗体の形成に対するカテプシンS阻害剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】抗薬物抗体の形成に対するカテプシンS阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/41 20060101AFI20240216BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K31/41
A61K31/4155
A61K39/395 P
A61K45/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C07D403/12
A61K45/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021515158
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019074918
(87)【国際公開番号】W WO2020058297
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】18195251.6
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クライン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ファブリス・アラン・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】マンチェスター・ヤング,マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】アーメド,サイエド・ソハイル
(72)【発明者】
【氏名】マトス・デ・アルメイダ・ベッサ,ジュリアナ
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/144483(WO,A1)
【文献】特表2012-524116(JP,A)
【文献】特表2009-533404(JP,A)
【文献】THERON M. et al.,Frontiers in Immunology,2017年,Volume 8 Article 806
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
A61K 45/06
A61P 43/00
C07D 403/12
A61K 31/4155
A61K 31/41
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬による処置を受けている対象において、前記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法で使用するためのカテプシンS阻害剤を含む医薬組成物であって、前記治療薬が生物学的薬剤であり、前記カテプシンS阻害剤が、
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、もしくは、
(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、
またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物
【請求項2】
有効量のカテプシンS阻害剤を患者に投与することを含む、治療薬による処置を受けていて、それを必要とする前記患者における前記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法であって、前記治療薬が生物学的薬剤である、方法で使用するためのカテプシンS阻害剤を含む医薬組成物であって、前記カテプシンS阻害剤が、
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、もしくは、
(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、
またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物
【請求項3】
対象における治療薬に対するADAの形成の予防または低減において使用するためのキットであって、カテプシンS阻害剤を含み、
前記カテプシンS阻害剤は、有効量の前記カテプシンS阻害剤および前記治療薬の前記対象への投与を含む処置方法において使用され、前記治療薬が生物学的薬剤であり前記カテプシンS阻害剤が、
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、もしくは、
(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、
またはその薬学的に許容される塩である、キット。
【請求項4】
(a)治療薬と、
(b)カテプシンS阻害剤とを含み
前記治療薬および前記カテプシンS阻害剤は、有効量の前記治療薬および前記カテプシンS阻害剤のそれを必要とする患者への投与を含む処置方法において使用される、請求項3に記載の使用するためのキット。
【請求項5】
前記カテプシンS阻害剤の最初の用量が前記治療薬の最初の用量の前に前記対象に投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項6】
前記方法が
(a)前記カテプシンS阻害剤の最初の有効用量を対象に投与するステップと、
(b)任意選択で、前記治療薬が前記対象に投与される前に前記カテプシンS阻害剤の投与を継続するステップと、
(c)前記治療薬の最初の有効用量を対象に投与するステップと、
(d)前記対象への前記カテプシンS阻害剤および/または前記治療薬の投与を継続するステップと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項7】
前記カテプシンS阻害剤の前記最初の用量が、前記治療薬の前記最初の用量の前に、特に、前記治療薬の前記最初の用量の少なくとも1日~2週間前、特に、前記治療薬の前記最初の用量の少なくとも1日~1週間前、より特には、前記治療薬の前記最初の用量の1週間前に、前記対象に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項8】
前記治療薬が、MHC-II抗原提示に依存しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項9】
前記ADAが、T細胞依存性免疫応答を介して産生される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項10】
前記ADAが、Tヘルパー細胞依存性免疫応答を介して産生される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項11】
前記ADAが、MHC-II依存性免疫応答によって産生される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項12】
前記治療薬が、抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項13】
前記治療薬が、免疫応答を誘導、増強または抑制する生物学的薬剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項14】
前記治療薬が、タンパク質、または、ベクターである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項15】
前記治療薬が、モノクローナル抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項16】
前記治療薬が、インターロイキン-2(IL-2v)の改変変異体に連結された線維芽細胞活性化タンパク質-アルファ(FAP)に対するヒトモノクローナル抗体からなる組換え融合タンパク質である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項17】
前記治療薬が、セルグツズマブアムナロイキンである、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項18】
前記治療薬が、抗TNFアルファ抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項19】
前記治療薬が、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))またはアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項20】
前記カテプシンS阻害剤が、前記治療薬に対するADAの形成を低減または防止するのに十分な量で投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項21】
前記カテプシンS阻害剤が、50mg/kg/日~400mg/kg/日、特に75mg/kg/日~250mg/kg/日、より特には100mg/kg/日または200mg/kg/日の用量で投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【請求項22】
前記カテプシンS阻害剤が、200mg/kg/日、特に100mg/kgの用量で1日2回投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物、または使用するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、治療薬による処置を受けている対象において、治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法で使用するためのカテプシンS阻害剤に関する。
【0002】
タンパク質ベースの生物学的薬剤、すなわち免疫調節薬は効果的な治療薬であり、免疫標的に対する特異性が高いため、過去数年間でその臨床応用は大幅に成長した(Leader,Baca et al.,Nat Rev Drug Discov 2008,7(1):21-39)。しかし、小分子と比較してその優れた有効性と安全性プロファイルに加えて、免疫原性を含むいくつかの有害反応がしばしば報告されている(Sathish,Sethu et al.,Nat Rev Drug Discov 2013,12(4):306-324;Boehncke and Brembilla,Expert Rev Clin Immunol 2018,14(6):513-523)。免疫原性は、無害である可能性があるが、有効性の喪失または低下、薬物動態の変化、注入反応、内因性タンパク質への交差反応性、および重症の場合はアナフィラキシー反応につながる可能性がある抗薬物抗体(ADA)形成を特徴とする(Abramowicz,Crusiaux et al.,N Engl J Med 1992,327(10):736,Baudouin,Crusiaux et al.,Transplantation 2003,76(3):459-463)。これらの望ましくない影響は、しばしば治療中止の理由であり、したがって、診療所でADAを軽減することを目的とした戦略の緊急の必要性を説明する。この目的のために、GazyvaのようなB細胞除去剤は、癌免疫療法(CIT)処置と組み合わせて診療所で適用され、新規ADA応答を抑制することが示されている。但し、CITの作用機序におけるB細胞の役割は完全にはわかっていないため、B細胞の完全な除去は患者にとって望ましくない場合がある。
【0003】
哺乳類のカテプシンは、生物学的および病理学的現象の重要なステップに関与するシステイン型プロテアーゼである。カテプシンは、小分子で酵素活性を阻害することが可能であり、したがって製薬業界にとって興味深いため、扱いやすい薬物標的と見なされている(Bromme,D.(2001),’Papain-like cysteine proteases’,Curr Protoc Protein Sci,Chapter 21,Unit 21 2;Roberts,R.(2005),’Lysosomal cysteine proteases:structure,function and inhibition of cathepsins’,Drug News Perspect,18(10),605-14)。
【0004】
カテプシンSは、マクロファージや樹状細胞、平滑筋細胞などの抗原提示細胞で顕著に発現している。(Hsing,L.C.and Rudensky,A.Y.(2005),’The lysosomal cysteine proteases in MHC class II antigen presentation’,Immunol Rev,207,229-41;Rudensky,A.and Beers,C.(2006),’Lysosomal cysteine proteases and antigen presentation’,Ernst Schering Res Found Workshop,(56),81-95)カテプシンSは正常な動脈組織では弱くしか発現しないが、アテローム硬化性の動脈では強いアップレギュレーションが見られる(Liu,J.,et al.(2006),’Increased serum cathepsin S in patients with atherosclerosis and diabetes’,Atherosclerosis,186(2),411-9;Sukhova,G.K.,et al.(1998),’Expression of the elastolytic cathepsins S and K in human atheroma and regulation of their production in smooth muscle cells’,J Clin Invest,102(3),576-83)。
【0005】
前臨床データは、適切なマウスモデルで試験した場合、カテプシンS欠損マウスのアテローム性動脈硬化症の表現型が低下しているため、カテプシンSの機能がアテローム性動脈硬化症にとって重要であることを示唆している。LDL-Rec欠損マウスでは、脂質の蓄積が減少し、エラスチン線維の崩壊および慢性的な動脈の炎症が報告されている。APO E欠損マウスでは、急性プラーク破裂現象の有意な減少が報告された。慢性腎疾患がCatS/In APO-E欠損マウスに導入されると、動脈および心臓弁の抗アテローム硬化性活性に加えて、加速された石灰化の強力な減少が見られる(Aikawa,E.,et al.(2009),’Arterial and aortic valve calcification abolished by elastolytic cathepsin S deficiency in chronic renal disease’,Circulation,119(13),1785-94;de Nooijer,R.,et al.(2009),’Leukocyte cathepsin S is a potent regulator of both cell and matrix turnover in advanced atherosclerosis’,Arterioscler Thromb Vasc Biol,29(2),188-94;Rodgers,K.J.,et al.(2006),’Destabilizing role of cathepsin S in murine atherosclerotic plaques’,Arterioscler Thromb Vasc Biol,26(4),851-6;Sukhova,G.K.,et al.(2003),’Deficiency of cathepsin S reduces atherosclerosis in LDL receptor-deficient mice’,J Clin Invest,111(6),897-906)。これは、カテプシンSの潜在的な阻害剤が、細胞外マトリックスの崩壊を減らし、炎症誘発性状態を減らし、加速された石灰化とその後の臨床症状を減らすことによって、アテローム硬化性プラークを安定させることを示唆している。
【0006】
アテローム性動脈硬化症モデルに記載されているこれらの表現型は、カテプシンSの既知の細胞機能と一致している。第一に、カテプシンSは、プラークを安定化させる細胞外マトリックスの分解に関与している。特に、カテプシンSは強力なエラスチン分解性活性を持ち、中性pHでこれを発揮することができ、これは、カテプシンSを他の全てのカテプシンと区別する機能である。第二に、カテプシンSは、抗原プロセシング、特に抗原提示細胞(APC)の不変鎖の切断に関与する主要なプロテアーゼであり、アテローム硬化性組織の慢性炎症へのT細胞の寄与を低下させる。炎症の上昇は、さらなる酸化的およびタンパク質分解的組織損傷をもたらし、続いてプラークの不安定化をもたらす(Cheng,X.W.,et al.(2004),’Increased expression of elastolytic cysteine proteases,cathepsins S and K,in the neointima of balloon-injured rat carotid arteries’,Am J Pathol,164(1),243-51;Driessen,C.,et al.(1999),’Cathepsin S controls the trafficking and maturation of MHC class II molecules in dendritic cells’,J Cell Biol,147(4),775-90;Rudensky,A.and Beers,C.(2006),’Lysosomal cysteine proteases and antigen presentation’,Ernst Schering Res Found Workshop,(56),81-95)。
【0007】
Cat S阻害剤の抗炎症性および抗エラスチン分解性の特性により、慢性閉塞性肺疾患の顕著な標的にもなる(Williams,A.S.,et al.(2009),’Role of cathepsin S in ozone-induced airway hyperresponsiveness and inflammation’,Pulm Pharmacol Ther,22(1),27-32)。さらに、マトリックス分解におけるその細胞外機能のために、カテプシンSの阻害は新生内膜形成および血管新生に影響を与える(Burns-Kurtis,C.L.,et al.(2004),’Cathepsin S expression is up-regulated following balloon angioplasty in the hypercholesterolemic rabbit’,Cardiovasc Res,62(3),610-20;Cheng,X.W.,et al.(2004),’Increased expression of elastolytic cysteine proteases,cathepsins S and K,in the neointima of balloon-injured rat carotid arteries’,Am J Pathol,164(1),243-51;Shi,G.P.,et al.(2003),’Deficiency of the cysteine protease cathepsin S impairs microvessel growth’,Circ Res,92(5),493-500;Wang,B.,et al.(2006),’Cathepsin S controls angiogenesis and tumor growth via matrix-derived angiogenic factors’,J Biol Chem,281(9),6020-9)。したがって、カテプシンSの阻害剤は、いくつかの異なる疾患状況で有用である可能性がある。
【0008】
カテプシンSは、Clin Cancer Res 2009;15(19)のRoberta E.Burdenによって説明されているように、腫瘍の成長と腫瘍細胞の浸潤の減少にも役割を果たす。さらに、腎摘出されたカテプシンSノックアウトマウスは、腎摘出された野生型マウスと比較した場合、動脈石灰化の有意な減少を示した。これは、カテプシンSの阻害が、慢性腎臓病患者の心血管イベントの減少に有益な効果をもたらす可能性があることを示している(Elena Aikawa,Circulation,2009,1785-1794)。
【0009】
驚くべきことに、CatS阻害剤によるカテプシンS(CatS)の阻害は、免疫原性化合物、特に免疫調節性抗体薬に対するADA形成を減少または防止することを発見した。
【0010】
抗腫瘍免疫のサイクルにおける初期段階の1つは、MHC-IまたはMHC-II分子との関連で樹状細胞による腫瘍関連抗原の捕捉と提示である。したがって、癌免疫療法(CIT)の場合、MHC-IIの成熟と抗原提示を抑制する化合物を使用することは直感に反するように思われる。それにもかかわらず、最近の研究では、広範囲の癌でアップレギュレートされたカテプシンが腫瘍の成長、浸潤、および転移に関連していることが示されている(Pogorzelska,Zolnowska et al.,Biochimie,2018,85-106;Tan,Qian et al.,Oncology Reports,2018,111-122)。これを考慮に入れると、CatS阻害剤によるカテプシンSの阻害は、免疫調節性抗癌薬の活性を回復し、同時にカテプシンSをダウンレギュレートすることにより、癌との闘いにおいて免疫調節薬とともに、相加効果を発揮することさえも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アダリムマブの免疫化とカテプシンS阻害剤(破線)またはビヒクル(黒丸)の投与の前後にELISAによって測定されたhIgG1 Tgマウスにおけるアダリムマブ特異的IgG応答を表している。カテプシンS阻害剤は、hIgG1トランスジェニックマウスにおいてアダリムマブへのADAを減少させた。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。***P<0.001
図2】CEA-IL2vによる免疫化とカテプシンS阻害剤(破線の記号)またはビヒクルの投与の前後にELISAによって決定されたhlgG1 Tgマウス(図2A)および野生型マウス(図2B)におけるCEA特異的IgG応答を表している(塗りつぶされた記号)。カテプシンS阻害剤は、hIgGトランスジェニックマウスにおいてCEA-IL2vへのADAを防ぎ、野生型マウスでそのレベルを減少させる。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。それぞれ、***P<0.01および**P<0.001
図3】ELISAによって経時的に(x軸)測定された野生型マウスにおける高親和性NP特異的IgG応答を表している。高用量のカテプシンS阻害剤(40mg/kg/日)は、ビヒクルで処理した動物と比較して、NP特異的IgGレベルを有意に低下させる。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。***P<0.001
図4】アダリムマブ免疫化およびカテプシンS阻害剤(破線)またはビヒクル(黒丸)の投与前後のELISAによって経時的に(x軸)測定されたhIgG1 Tgマウスにおけるアダリムマブ特異的IgG応答を表している。カテプシンS阻害剤は、hIgG1トランスジェニックマウスにおいてアダリムマブへのADAを減少させた。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。***P<0.001
図5】CEA-IL2vによる免疫化とカテプシンS阻害剤(破線の記号)またはビヒクルの投与の前後にELISAによって経時的に(x軸)決定されたhlgG1 Tgマウス(図2A)および野生型マウス(図2B)におけるCEA特異的IgG応答を表している(塗りつぶされた記号)。カテプシンS阻害剤は、hIgGトランスジェニックマウスにおいてCEA-IL2vへのADAを防ぎ、野生型マウスでそのレベルを低下させる。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。それぞれ、***P<0.001および**P<0.01
図6】hlgG1 Tgマウス(図6A)および野生型マウス(図6B)で経時的に(x軸)プロットされた血清(y軸)中のCEA-IL2vのレベルを表している。カテプシンS阻害剤(破線の記号)およびビヒクル(塗りつぶされた記号)で処理された動物におけるCEA-IL2v曝露が示されている。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。
図7】hlgG1 Tgマウス(AおよびB)およびの血液におけるCEA-IL2vのPD効果を表している。TCRβ+CD8+CD8 T細胞(AおよびC)およびNK1.1+NKp46+NK細胞(BおよびD)のパーセンテージは、経時的に(x軸)y軸に示されている。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。
図8】ELISAによって決定された野生型マウスにおけるマウス代替FAP-OX40に対するIgG応答を表している。FAP(VHVL)に特異的なADAを図8Aに示し、OX40特異性ADAを図8Bに示す。カテプシンS阻害剤(破線の記号)は、野生型マウスのADAからFAP(A)およびOX40(B)ドメインを防ぐ。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。***P<0.001
図9】PD-L1免疫化およびカテプシンS阻害剤の投与の前後にELISAによって決定された野生型マウスにおけるマウス代替PD-L1に対するIgG応答を表している。カテプシンS阻害剤は、野生型マウスにおいてmPD-L1へのADAを有意に減少させた。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。***P<0.001
図10】hlgG1 Tgマウスにおけるマウスの半代替CEA-TCBに対するIgG応答を表している。CEA特異性ADAを図10Aに示し、CD3バインダー(2C11)に特異的なADAを図10Bに示す。カテプシンS阻害剤(破線の記号)およびビヒクル(塗りつぶされた記号)で処理された動物が示されている。カテプシンS阻害剤はCD3バインダーへのADAを有意に減少させたが(B)、CEA特異的ADAの減少はビヒクル処置動物と比較して有意ではなかった(A)。示されているデータは、±10匹のマウス/グループの平均SEMを表している。**P<0.01
【発明を実施するための形態】
【0012】
「生物学的」という用語は、「生物学的薬剤」、「生物学的医薬品」、または「生物学的」と変更することができ、生物源において製造された、生物源から抽出された、または生物源から半合成された、任意の医薬品を指す。完全に合成された医薬品とは異なり、ワクチン、血液、血液成分、アレルギー誘発物質、体細胞、遺伝子治療、組織、組換え治療用タンパク質、細胞治療に使用される生細胞が含まれる。生物学的薬剤は、糖、タンパク質、核酸、またはこれらの物質の複雑な組み合わせで構成されている場合もあれば、生細胞や組織である場合もある。それら(またはそれらの前駆体または成分)は、生物源(ヒト、動物、植物、真菌または微生物)から単離されている。
【0013】
本明細書の「抗体」との用語は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されないが、所望な抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを含む。
【0014】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」との用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。
【0015】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異またはモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように構築されない。例えば、本発明に従うモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができ、そのような方法および本明細書に記載されているモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法を含むがこれらに限定されない。
【0016】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、およびシングルドメイン抗体が挙げられる。ある特定の抗体フラグメントの総説としては、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照されたい。scFvフラグメントの総説としては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照。また、国際公開第93/16185号および米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFabおよびF(ab’)断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照。ダイアボディとは、二価または二重特異性であることができる、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、およびHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照のこと。トリアボディおよびテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に説明されている。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部または軽鎖可変ドメインの全てまたは一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA。例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照)。抗体フラグメントは、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0017】
「Fab分子」は、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVHおよびCH1ドメインと、免疫グロブリンの軽鎖(「Fab軽鎖」)のVLおよびCLドメインからなるタンパク質を指す。
【0018】
「二重特異性」との用語は、抗体が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、2つの抗原決定基(特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基)に同時に結合することができる。
【0019】
「T細胞二重特異性抗体」という用語は、標的細胞、例えば腫瘍細胞上の表面抗原、およびT細胞受容体(TCR)複合体の活性化不変コンポーネント、例えば、T細胞を再標的化して標的細胞を殺すためのCD3に同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。したがって、T細胞二重特異性抗体は、T細胞の表面に見られる抗原決定基と抗原結合部分-抗原複合体を形成することができる抗原結合部分を有する。
【0020】
「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージメント)は、2つのscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている分子である(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261号、および国際公開第2008/119567号、NagorsenおよびBauerle、Exp Cell Res 317、1255-1260(2011)を参照)。
【0021】
「抗体-薬物複合体」(ADC)という用語は、例えば、細胞毒性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)または放射性同位体などの1つまたは複数の治療薬に抱合された抗体を指す。抗体は典型的には、リンカーを使用して、治療薬の1つ以上に接続される。治療薬および薬剤およびリンカーの例を含む、ADC技術の概観は、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
【0022】
「組換え免疫毒素」は、表面抗原への結合、内在化、および細胞質ゾルへの毒素部分の送達を介して癌細胞を殺す抗体毒素キメラ分子である。
【0023】
「免疫原性(immunogenicity)」、したがって「免疫原性(immunogenic)」という用語は、特定の物質がヒトおよび他の動物の体内で免疫応答を誘発する能力を指す。言い換えれば、免疫原性は、体液性および/または細胞性免疫応答を誘発する能力である。望まれる免疫原性と望まれない免疫原性を区別する必要がある。望まれる免疫原性は通常、ワクチンに関連しており、抗原(ワクチン)の注射は、生物を保護することを目的とした病原体(ウイルス、細菌など)に対する免疫応答を引き起こす。望まれない免疫原性は、治療薬(例:組換えタンパク質、またはモノクローナル抗体)に対する生物による免疫応答である。この反応は、処置の治療効果を不活性化し、場合によっては有害反応を誘発する抗薬物抗体(ADA)の産生につながります。
【0024】
「抗薬物抗体」または「ADA」とは、治療薬に結合し、対象の血清濃度および治療薬の機能に影響を及ぼし得る抗体を指す。ADAの存在は、治療薬と抗体の間の免疫複合体の形成(中和、非中和、またはその両方)を通じて治療薬のクリアランスを増加させ、治療薬の半減期を短縮する可能性がある。さらに、治療薬の活性および有効性は、抗体が治療薬に結合することによって低下する可能性がある(特に、中和ADAの場合)。ADAはまた、アレルギー反応や過敏反応、および宿主タンパク質の中和などの他の有害事象と関連している可能性がある。
【0025】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、そのウイルス遺伝子が除去され、疾患を引き起こさない、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含む改変されたウイルスを指す。rAAVなどのウイルスベクターは、タンパク質の機能を回復するために、欠損または変異した遺伝子を細胞に輸送することを目的としている。その反復構造の結果として、ウイルスベクターは中和抗体の生成を特徴とする体液性免疫を頻繁に誘発し、これが、AAVベクターによる遺伝子導入の成功に対する最も効果的な障壁である。
【0026】
「活性」という用語は、生物に対する薬物の有益な薬理学的活性を指す。したがって、本発明の文脈において、「治療薬の活性を増加させる」という表現は、特に、上記治療薬の有益な薬理学的活性の増加を指す。本発明において、活性の増加は、例えば、曝露の増加、半減期の増加、または生物学的利用率の増加に関連するか、またはそれらに起因する可能性がある。
【0027】
「生物学的利用率」という用語は、全身循環に到達する未変化の薬物の投与量の割合を指す。薬理学では、生物学的利用率は、薬物が作用部位に到達する速度と程度の測定値である。両方の定義は、本発明の文脈で使用することができる。
【0028】
本発明における物質または治療薬の「半減期」という用語は、上記物質または治療薬の半分が標的組織または循環から消失するのにかかる時間である。
【0029】
「曝露」という用語は、時間の関数としての体のコンパートメント(通常は血液)内の薬物の濃度を指す。
【0030】
阻害剤が、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められている組織、システム、動物または人間の生物学的または医学的応答を誘発するそれぞれの化合物または組み合わせの量である「治療有効量」(または単に「有効量」)で患者に投与されることは自明である。
【0031】
本発明において有用なカテプシンS阻害剤の例は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/121918号および国際公開第2017/144483号に記載されている。
【0032】
本発明による有利なカテプシンS阻害剤は、
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、もしくは
(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、または、
その薬学的に許容される塩である。
【0033】
それらは、国際公開第2010/121918号および国際公開第2017/144483号に記載されている。それらを以下に示す。
【化1】
【0034】
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、本発明による特に有利なカテプシンS阻害剤である。
【0035】
本発明の大部分に利点をもたらす治療薬の中には、抗体、特に腫瘍学で使用される抗体、より特には免疫活性化化合物、例えば抗PD-L1または抗PD-1抗体、例えばアテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ペンブロリズマブまたはニボルマブのようなチェックポイント阻害抗体を含む癌免疫療法剤である。
【0036】
T細胞二重特異性抗体、BiTE、サイトカイン、免疫サイトカインおよび免疫調節性抗体は、そのような治療薬の特定の例である。眼科(例えば、Lucentis(登録商標))、糖尿病(Lantus(登録商標))、または炎症性および自己免疫疾患で使用される抗体もまた、本発明から恩恵を被る。
【0037】
本発明による治療薬の例としては、アレムツズマブ(LEMTRADA(登録商標))、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))、バビツキシマブ、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標))ブリアンキヌマブ、カナキヌマブ(ILARIS(登録商標))、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、シドフシツズマブ、シドツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレネズマブ、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標))、ダロツズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標)、XGEVA(登録商標))、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))、エファリズマブ、エミシズマブ(HEMLIBRA(登録商標))、エプラツズマブ、エリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、イピリムマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルムレツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ムロノマブ、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ネシツムマブ(PORTRAZZA(登録商標))、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標))、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標)/GAZYVARO(登録商標))、オクレリズマブ(OCREVUS(登録商標))、オロキズマブ、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、オナツズマブ(MetMAbとも呼ばれる)、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標))、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペグ化インターフェロン(PEGAZYS(登録商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ペキセリズマブ、プリリキシマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標))、ロバツムマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、シファリムマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、シプリズマブ、ソンツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))、トラリズマブ、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標))、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、ビシリズマブ、ザノリムマブ、およびザルツムマブがある。
【0038】
上記のリストおよび本出願書類の残りの部分では、説明のために商品名が括弧内に示されている。国際一般名称は、本発明による治療薬を定義し、したがって、本家製品のバイオシミラーもカバーすることが理解される。
【0039】
本発明による特定の治療薬は、本発明による特定の治療薬は、IgG抗体、特にヒトIgG抗体、IgG1抗体、特にヒト、ヒト化またはキメラIgG1抗体、IgG1抗体-薬物複合体、特にキメラIgG1抗体-薬物複合体、IgG2抗体、特にヒトまたはヒト化IgG2抗体、IgG4抗体、特にヒトまたはヒト化IgG4抗体、IgG2/4抗体、特に、ヒトまたはヒト化IgG2/4抗体、Fabフラグメント、特にIgG FabフラグメントまたはIgG1 Fabフラグメント、特にヒト化IgG Fabフラグメントまたはヒト化またはキメラIgG1 Fabフラグメント、ヒト化IgG4-毒素複合体、ヒトモノクローナル抗毒素抗体、ヒト化IgG4-毒素複合体または組換え免疫毒素である。
【0040】
抗体-薬物複合体は、本発明による特定の種類の治療薬である。
【0041】
本発明による特定の治療薬は、GPIIb/IIIa、TNF-α、CD-52、PCSK-9、PD-L1、CD-25、BLyS、CD-125、VEGF、クロストリジウム・ディフィシル毒素B、CD-30、IL-17RA、IL-1β、PD-1、EGFR、CD-38、RANKL、IL-4Rアルファ、補体C5、SLAMF7、ファクターVIII、CGRPR、CGRP、CD-33、CD-4、CTLA-4、IL-5、CCR4、CD-22、VLA-4、CD-20、PDGFR-アルファ、IgE、RSウイルスのFタンパク質、HER-2、VEGF-A、IL-17a、cCLB8、IL-23、IL-6受容体、IL-12、IL-23、インテグリン-アルファ4b7、CEAまたはCD3、に対する抗体である。
【0042】
本発明による特定の治療薬は、以下の抗体である:アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブレンツキシマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カツマキソマブ、セミプリマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デュピルマブ、デュピルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エミシズマブ、エレヌマブ、エタネルセプト、エボロクマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イバリズマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、モクセツモマブ、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララタマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、レスリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、チルドラキズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、およびベドリズマブ。
【0043】
本発明による他の特定の治療薬は、例えば、インターフェロンガンマ、インターフェロンベータ、エリスロポエチン、抗血友病第VIII因子、CD-2阻害剤、凝固第Xa因子、インターフェロンベータ模倣薬、卵胞刺激ホルモン、GLP-1アゴニスト、b-グルコセレブロシダーゼ模倣薬、エリスロポエチン模倣薬、KGF mmetic、インスリン模倣薬、酸性アルファ-グルコシダーゼ模倣物、G-CSF模倣物、IL-11模倣物、CD-80/86ブロッカー、代謝酵素、IL-2模倣薬、rhDNAse、創傷のフィブリンシーラントまたは直接トロンビン阻害剤などのタンパク質産物である。
【0044】
本発明による特定の治療薬は、以下のタンパク質である:Alteplase、Octocog alfa、Alefacept、Andexxa、Interferon Beta-1a、Interferon beta-1b、Urofollitropin、Exenatide、Alglucerase、Idursulfase、Eloctate、Epoetin alfa、Palifermin、Insulin detemir、Alglucosidase alfa、Pegfilgrastim、Neumega、Belatacept、Pegvaliase、Aldesleukin、Dornase alfa、Raplixa、ReFacto、LepirudinまたはAlbiglutide。
【0045】
本発明によるさらに特定の治療薬は、例えば、組換えヒト酸性アスルファ-グルコシダーゼ(rhGAA)、第VIII因子またはインターフェロンベータのようなタンパク質補充療法である。
【0046】
アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))は、本発明で使用するための特定の治療薬である。関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性乾癬、化膿性汗腺炎、若年性特発性関節炎の処置に使用されている。アダリムマブは、TNF阻害、抗炎症性、生物学的医薬品である。通常はTNFα受容体に結合する腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)に結合し、自己免疫疾患の炎症反応を引き起こす。アダリムマブはTNFαに結合することにより、この炎症反応を低減させる。TNFαは免疫系の一部でもあり、体を感染から保護するため、アダリムマブによる処置は感染のリスクを高める可能性がある。他のTNF阻害剤と同様に、関節リウマチなどの自己免疫疾患の処置に使用される免疫調節性薬である。これは、臨床試験における免疫原性の高い発生率と関連している(Bartelds GM et al、Ann Rheum Dis、2007、921-926;Bartelds GM et at、JAMA、2011、146-1468)。それはマウスTNFと交差反応して高いADA応答をもたらし(Bitoun S et al、Ann Rheum Dis、2018、1463-1470)、したがってアダリムマブは前臨床マウスモデルにおける本発明の有効性を実証するための適切なモデル化合物である。
【0047】
セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v、RG7813)は、本発明で使用するための特定の治療薬である。これは、CD25結合が消失された単一のIL-2変異体(IL2v)部分を含み、Fcを介したエフェクター機能を欠く高親和性の二価癌胎児性抗原(CEA)特異的抗体のC末端に融合した単量体CEA標的免疫サイトカインである。これは、国際公開第2012/107417号および国際公開第2012/146628号に記載されている。
【0048】
T細胞活性化二重特異性抗体は、腫瘍細胞に対して細胞傷害性T細胞を関与させるように設計された新しいクラスの癌治療薬である。このような抗体が、T細胞上のCD3と腫瘍細胞に発現する抗原に同時に結合すると、腫瘍細胞とT細胞の間に一時的な相互作用が生じ、T細胞の活性化とそれに続く腫瘍細胞の溶解が引き起こされる。それらは、本発明による特定の治療薬である。
【0049】
CEA TCB(RG7802、RO6958688、cibisatamab)は、腫瘍細胞上のCEAおよびT細胞上のCD3εを標的とする二重特異性抗体を活性化する新規T細胞である。マウスモデルでは、CEA TCBは強力な抗腫瘍活性を示し、腫瘍内T細胞浸潤の増加、IFNγ、TNF、グランザイムBなどの炎症誘発性サイトカインの放出の増加をもたらし、PD-L1/PD-1経路とその活性化をアップレギュレートする。PD-L1/PD-1経路の増加は、T細胞の活性化中にオンになる抑制経路の1つであるため、完全に活性化されたT細胞の兆候である。それは、本発明による特定の治療薬である。
【0050】
FAP-OX40(RO7194691)は、開発中の二重特異性抗体コンストラクトである。様々な固形腫瘍の間質細胞で高度に発現する線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)および活性化によって誘導されるT細胞特異的表面分子OX40に同時に結合する。作用機序は、FAP結合(腫瘍特異的ターゲティング)およびOX40発現腫瘍浸潤T細胞の刺激に依存している。したがって、患者の腫瘍細胞に対するT細胞性免疫応答(サイトカイン分泌、増殖)を増強する。それは、特に、国際公開第2017/060144号および国際公開第2019/086497号に記載されている。それは、配列番号1のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号2のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、それぞれが配列番号3のアミノ酸配列を含む4つの軽鎖を含む。それは、本発明による特定の治療薬である。実施例で使用されるマウス抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号5のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、それぞれが配列番号6のアミノ酸配列を含む4つの軽鎖を含む。
【0051】
【表1-1】
【0052】
【表1-2】
【0053】
【表1-3】
【0054】
アテゾリズマブ(MPDL3280A、商品名Tecentriq(登録商標))は、タンパク質プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に対するIgG1アイソタイプの完全にヒト化され、操作されたモノクローナル抗体であり、本発明による特定の治療薬である。
【0055】
インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))は、両方とも高度に免疫原性であることが知られているため、本発明による特定の治療薬である。それらは、特にクローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎および関節リウマチ(インフリキシマブ)および関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、化膿性汗腺炎、ブドウ膜炎および若年性特発性関節炎(アダリムマブ)の処置に適応となる抗TNFアルファ抗体である。
【0056】
クローン病と潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患(IBD)の主要な形態である。IBDは、特に若い患者に影響を与える重度の衰弱性疾患である。それは緊急性を伴う血性下痢、繰り返しの発赤、腹痛を引き起こす可能性があり、頻繁な外科的介入および入院を必要とする可能性がある。病気の負担には、腸穿孔、中毒性巨大結腸症、瘻孔、狭窄、不妊症、膿瘍および回腸瘻が含まれる。IBDの患者は、結腸癌のリスクが高く、うつ病、不安、自殺の増加、重度の倦怠感(47%)、障害(34%)、および慢性疼痛(38%)の発生率が高い。
【0057】
現在利用可能なIBDの処置には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNFアルファ抗体、ベドリズマブなどの抗α4β7インテグリン抗体、ウステキヌマブなどの抗p40抗体、トファシチニブなどのJAK1またはJAK3i阻害剤、および治療薬としてのリサンキズマブなどの抗IL23抗体が含まれる。
【0058】
しかし、広範な持続的寛解は観察されず、患者の10~20%のみが1年間の処置で寛解を維持している。上記の治療薬のいくつかの作用発現は遅く、最大12週間かかる。深刻な感染症や悪性腫瘍のリスクの増加とともに、内視鏡的および組織学的治癒の割合が低いことが観察されている。さらに、現在の標準治療であるインフリキシマブとアダリムマブは高い免疫原性を示し、免疫原性の割合はそれぞれ最大51%と26%と報告されている。
【0059】
IBDを効率的に処置することは、結果として高いアンメットメディカルのままである。
【0060】
本発明によるカテプシンSの投与は、上記治療薬による処置を受けている対象において、治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少または防止するので、カテプシンS阻害剤は、IBDの処置において特に有用である。
【0061】
本発明によるカテプシンS阻害剤、特に上記の2つの特定のカテプシンS阻害剤は、50mg/kg/日~400mg/kg/日、特に75mg/kg/日~250mg/kg/日、より特には100mg/kg/日または200mg/kg/日の用量で投与され得る。
【0062】
本発明によるカテプシンS阻害剤、特に上記の2つの特定のカテプシンS阻害剤は、特に有利に、200mg/kg/日、特に100mg/kgの用量で1日2回投与される。
【0063】
1日2回100mg/kgは、特に上記の2つの特定のカテプシンS阻害剤について、本発明によるヒトにおけるカテプシンS阻害剤の最も安全で最も有効な用量として確立されている。実施例で採用された用量は、マウス種に適合されている。
【0064】
カテプシンS阻害剤の最初の用量が、治療薬の最初の用量の前に、特に、治療薬の最初の用量の少なくとも1日~2週間前、特に、治療薬の最初の用量の少なくとも1日~1週間前、より特には、治療薬の最初の用量の1週間前に、対象に有利に投与される。
【0065】
したがって、「治療薬による処置を受けている患者」という表現は、上記治療薬による処置を開始しようとしており、最初の用量の前にカテプシンS阻害剤が投与される患者を包含することが理解される。
【0066】
したがって、本発明は、特に次のものに関する:
【0067】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法で使用するためのカテプシンS阻害剤;
【0068】
有効量のカテプシンS阻害剤を患者に投与することを含む治療薬による処置を受けていて、それを必要とする上記患者における上記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法;
【0069】
治療薬による処置を受けている患者における上記治療薬の活性を増加させる方法で使用するためのカテプシンS阻害剤であって、上記治療薬の活性が対象の免疫系によって低下している、カテプシンS阻害剤;
【0070】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬の活性を増加させるための方法であって、上記治療薬の活性が、上記患者への有効量のカテプシンS阻害剤の投与を含み、上記対象の免疫系によって低下している方法;
【0071】
治療薬による処置を受けている患者における上記治療薬の活性を増加させるための方法で使用するためのカテプシンS阻害剤であって、上記治療薬は、上記カテプシンS阻害剤の非存在下でより低い活性を有する、カテプシンS阻害剤;
【0072】
患者への有効量のカテプシンS阻害剤の投与を含む、治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬の活性を増加させるための方法であって、上記治療薬は、上記カテプシンS阻害剤の非存在下でより低い活性を有する、方法;
【0073】
治療薬による処置を受けている患者における上記治療薬の生物学的利用率を増加させるための方法で使用するためのカテプシンS阻害剤;
【0074】
患者への有効量のカテプシンS阻害剤の投与を含む治療薬による処置を受けていて、それを必要とする上記患者における上記治療薬の生物学的利用率を増加させるための方法;
【0075】
疾患を処置または予防するための方法であって、上記疾患に対する有効量の治療薬を、それを必要とする患者およびカテプシンS阻害剤に投与することを含み、上記カテプシンS阻害剤が、上記治療薬に対するADAの形成を低減または予防するのに十分な量で投与される、方法;
【0076】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための薬剤の製造におけるカテプシンS阻害剤の使用;
【0077】
有効量のカテプシンS阻害剤を患者に投与することを含む治療薬による処置を受けていて、それを必要とする上記患者における上記治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を低減または予防するための方法;
【0078】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬の活性を増加させるための薬剤の製造におけるカテプシンS阻害剤の使用であって、上記治療薬の活性は、対象の免疫系によって低下している、使用;
【0079】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬の活性を増加させるための薬剤の製造におけるカテプシンS阻害剤の使用であって、上記治療薬は、上記カテプシンS阻害剤の非存在下でより低い活性を有する、使用;
【0080】
治療薬による処置を受けている対象において、上記治療薬の生物学的利用率を増加させるための薬剤の製造におけるカテプシンS阻害剤の使用;
【0081】
対象において、治療薬に対するADAの形成の予防または低減のためのキットであって、上記キットは、カテプシンS阻害剤と、上記カテプシンS阻害剤および上記治療薬の上記対象への投与を含む処置方法において、上記カテプシンS阻害剤を使用するための説明書と、を含む、キット;
【0082】
対象において、疾患の予防または処置のためのキットであって、上記キットは、治療薬と、カテプシンS阻害剤および上記治療薬の上記対象への投与を含む処置方法において上記治療薬を使用するための説明書と、を含む、本発明によるキット;
【0083】
(a)治療薬と、
(b)カテプシンS阻害剤と、
(c)有効量の上記治療薬および上記カテプシンS阻害剤のそれを必要とする患者への投与を含む処置方法において、上記治療薬および上記カテプシンS阻害剤を使用するための説明書と、を含む、キット;
【0084】
カテプシンS阻害剤が、治療薬に対するADAの形成を低減または防止するのに十分な量で投与される、本発明によるキット;
【0085】
IBDの処置に使用するためのカテプシンS阻害剤;
【0086】
有効量のカテプシンS阻害剤をそれを必要とする患者に投与することを含む、IBDの処置方法;
【0087】
治療薬による処置を受けている患者におけるIBDの処置に使用するためのカテプシンS阻害剤;
【0088】
有効量のカテプシンS阻害剤をそれを必要とする患者に投与することを含み、上記患者が治療薬による処置を受けている、IBDの処置方法;
【0089】
カテプシンS阻害剤の最初の用量が治療薬の最初の用量の前に対象に投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0090】
本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキットであって、上記方法または説明書が、
(a)上記カテプシンS阻害剤の最初の有効用量を対象に投与するステップと、
(b)任意選択で、治療薬が上記対象に投与される前に上記カテプシンS阻害剤の投与を継続するステップと、
(c)上記治療薬の最初の有効用量を対象に投与するステップと、
(d)上記対象への上記カテプシンS阻害剤および/または上記治療薬の投与を継続するステップと、を含む、カテプシンS阻害剤;
【0091】
カテプシンS阻害剤の最初の用量が、治療薬の最初の用量の前に、特に、上記治療薬の最初の用量の少なくとも1日~2週間前、特に、上記治療薬の最初の用量の少なくとも1日~1週間前、より特には、上記治療薬の最初の用量の1週間前に、上記対象に投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0092】
カテプシンS阻害剤の最初の用量が治療薬の最初の用量と同じ日に前に対象に投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0093】
治療薬がMHC-II抗原提示を妨害しない、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0094】
治療薬がMHC-II抗原提示に依存しない、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0095】
ADAがT細胞依存性免疫応答を介して産生される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0096】
ADAがTヘルパー細胞依存性免疫応答を介して産生される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0097】
ADAがMHC-II依存性免疫応答によって産生される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0098】
ADAがMHC-II/ペプチド複合体とT細胞受容体との間の同族の相互作用から産生される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0099】
治療薬が生物学的薬剤、特にタンパク質、より特にはポリペプチド、抗体、より特には二重特異性抗体、特にT細胞二重特異性抗体、抗体フラグメント、抗体-薬物複合体、BiTE、サイトカイン、または例えばAAVベクターのような遺伝子治療ベクターである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0100】
治療薬が免疫活性化化合物、特にチェックポイント阻害抗体を含む癌免疫療法薬である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0101】
治療薬は、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブオラベルマブ、特にアテゾリズマブのような抗PD-L1抗体である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0102】
治療薬は、例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブのような抗PD-1抗体である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0103】
上記治療薬が、免疫応答を誘導、増強または抑制する生物学的薬剤である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0104】
治療薬が免疫原性である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0105】
治療薬が、癌、例えば、糖尿病、眼疾患、自己免疫疾患または炎症性疾患のような代謝性疾患の処置のために示される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0106】
治療薬が炎症性腸疾患の処置のために示される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0107】
治療薬がモノクローナル抗体、特にアレムツズマブ(LEMTRADA(登録商標))、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))、バビツキシマブ、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標))ブリアンキヌマブ、カナキヌマブ(ILARIS(登録商標))、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、シドフシツズマブ、シドツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレネズマブ、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標))、ダロツズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標)、XGEVA(登録商標))、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))、エファリズマブ、エミシズマブ(HEMLIBRA(登録商標))、エプラツズマブ、エリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、イピリムマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルムレツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ムロノマブ、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ネシツムマブ(PORTRAZZA(登録商標))、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標))、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標)/GAZYVARO(登録商標))、オクレリズマブ(OCREVUS(登録商標))、オロキズマブ、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、オナツズマブ(MetMAbとも呼ばれる)、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標))、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペグ化インターフェロン(PEGAZYS(登録商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ペキセリズマブ、プリリキシマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標))、ロバツムマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、シファリムマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、シプリズマブ、ソンツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))、トラリズマブ、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標))、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、ビシリズマブ、ザノリムマブ、およびザルツムマブから選択されるモノクローナル抗体である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0108】
前記治療薬が、インターロイキン-2(IL-2v)の改変変異体に連結された線維芽細胞活性化タンパク質-アルファ(FAP)に対するヒトモノクローナル抗体からなる組換え融合タンパク質である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0109】
治療薬はセルグツズマブアムナロイキンである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0110】
治療薬が抗TNFアルファ抗体である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0111】
治療薬がインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))またはアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0112】
カテプシンS阻害剤が
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、もしくは
(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、または、
その薬学的に許容される塩である、カテプシンS阻害剤が本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0113】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミド、またはその薬学的に許容される塩である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0114】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0115】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))である、カテプシンS阻害剤が本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0116】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0117】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0118】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0119】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はセルグツズマブアムナロイキンである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0120】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はセルグツズマブアムナロイキンである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0121】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はCEA-TCBである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0122】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はCEA-TCBである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0123】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はFAP-OX40である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0124】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はFAP-OX40である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0125】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアテゾリズマブである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0126】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアテゾリズマブである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0127】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアテゾリズマブと組み合わせたCEA-TCBである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0128】
カテプシンS阻害剤が(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、治療薬はアテゾリズマブと組み合わせたCEA-TCBである、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0129】
カテプシンS阻害剤が、治療薬に対するADAの形成を低減または防止するのに十分な量で投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0130】
カテプシンS阻害剤が、50mg/kg/日~400mg/kg/日、特に75mg/kg/日~250mg/kg/日、より特には100mg/kg/日または200mg/kg/日の用量で投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0131】
カテプシンS阻害剤が200mg/kg/日、特に100mg/kgの用量で1日2回投与される、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0132】
カテプシンS阻害剤が200mg/kg/日、特に100mg/kgの用量で1日2回投与され、カテプシンS阻害剤は(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;および
【0133】
カテプシンS阻害剤が200mg/kg/日の用量、特に100mg/kgの用量で1日2回投与され、カテプシンS阻害剤は、(2S,4R)-4-[4-(5-メチル-テトラゾール-2-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドまたはその薬学的に許容される塩である、本発明による使用するためのカテプシンS阻害剤、方法、使用またはキット;
【0134】
上記の用量は遊離塩基に対して与えられる。塩が投与される場合、最終的に上記遊離塩基の用量が患者に利用可能になるように用量を調整するものとする。
【0135】
IBDの処置に使用するカテプシンS阻害剤において、患者は、インフリキシマブまたはアダリムマブのような抗TNFアルファ抗体、ベドリズマブのような抗α4β7インテグリン抗体、ウステキヌマブのような抗p40抗体、トファシチニブのようなJAK1またはJAK3i阻害剤、またはリサンキズマブのような抗IL23抗体、より具体的にはインフリキシマブまたはアダリムマブのような抗TNFアルファ抗体から選択される治療薬による処置を有利に受けている。
【0136】
IBDの処置方法において、カテプシンS阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含み、患者は、インフリキシマブまたはアダリムマブのような抗TNFアルファ抗体、ベドリズマブのような抗α4β7インテグリン抗体、ウステキヌマブのような抗p40抗体、トファシチニブのようなJAK1またはJAK3i阻害剤、またはリサンキズマブのような抗IL23抗体、より具体的にはインフリキシマブまたはアダリムマブのような抗TNFアルファ抗体から選択される治療薬による処置を有利に受けている。
【0137】
次に、本発明を、限定的な特徴を有しない以下の実施例によって説明する。
【実施例
【0138】
実施例1:HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)およびCEA-IL2vに対するADAの緩和(28日)
アダリムマブとCEA-IL2vはクリニックで免疫原性があることが知られている(Bartelds,Krieckaert et al.JAMA 2011,305(14):1460-1468,van Schouwenburg,Rispens et al.Nat Rev Rheumatol 2013,9(3):164-172)。
【0139】
アダリムマブは、マウスで免疫原性が高いことが示されている抗TNFα阻害抗体である。
【0140】
対照的に、CEA-IL2vは、腫瘍学の適応症のための免疫調節薬である。
【0141】
免疫原性の評価には、前述のヒトIgG1免疫寛容マウスモデル(Bessa,Boeckle et al.Pharm Res 2015,32(7):2344-2359)を使用した。このヒトIgGトランスジェニックマウスは広範囲のヒトIgG1抗体(Abs)に耐性があるため、このシステムで誘発されるADA応答は、ヒトでADAを引き起こすと予想される誘発Ab化合物の固有の免疫原性属性を反映していると見なされている。
【0142】
(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、抗原提示細胞によるMHCIIの成熟と抗原提示を阻害することが知られているカテプシンS阻害剤である(WO 2010/121918;Theron,Bentley et al.2017,Front Immunol 8:806)。以下の実験で使用されている。
【0143】
免疫化
15週齢のマウスC57BL/6野生型およびC57BL/6-Tg(hIgG1、k、l)は、Taconic(Denmark)から購入し、12時間(h)の明期と12時間の暗期のサイクルで、換気のサイクルおよび水と食物への自由なアクセスを備えた動物施設に収容した。7x10μgのCEA-IL2vまたは7x10μgのHumira(アダリムマブ、Abbvie Germany GmbH)を、それぞれ0、4、7、11、14、18、および21日目に、右脇腹または左脇腹に皮下注射した。カテプシンS阻害剤の投与量は40mg/kg/日だった。フードミックス(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)は、Humiraで免疫化されたマウスに対して、最初の免疫化の1日前から28日目まで毎日与えられた。CEA-IL2v(RO6895882)で免疫化したマウスには、最初の免疫化の1週間前から28日目まで毎日混合食品を投与した。-12、7、14、28日目に、血液サンプルを採取した。
【0144】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのHumiraまたはCEA-PGLALA(3.42mg/ml、ID 8037)で、それぞれNaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで+4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0145】
図1図2に結果を示す。
【0146】
これらの結果は、カテプシンS阻害剤を与えられ、アダリムマブで免疫化された動物が、ビヒクルで処理された動物と比較して、ADAレベルの低下を示したことを示している(図1)。興味深いことに、この効果は後の時点およびより高い血清希釈でより顕著であり、カテプシンS阻害剤が後期に出現する高親和性抗体応答の阻害に優先的な効果があるか、免疫化の1日前ではAPCによるある程度の抗原提示を予防するに不十分であったことを示唆している。
【0147】
我々の実験はまた、カテプシンS阻害剤による予防的処置(免疫化の7日前)が、hIgGトランスジェニックマウスにおけるCEA-IL2vへのADAの完全な抑止をもたらすことを明らかにした(図2A)。対照的に、ADAの部分的な減少のみが野生型(WT)マウスで達成された(図2B)。これは、hIgG Tgマウス(抗イディオタイプADAのみ)と比較して、WT動物(抗Fcおよび抗イディオタイプADA)で誘発されたADAの全体的な大きさが大きいことによって説明される可能性がある。
【0148】
実施例2:T細胞依存性IgG応答の抑止
NP-OVALによる免疫化
6~8週齢の雌マウスC57BL/6-Tg(hIgG1、k、l)は、Charles River Laboratories(ドイツ)から購入し、12時間の明暗サイクル下で空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。マウスに-2日目に20μg/マウスのNP-OVAL(卵白アルブミンに抱合した4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチルハプテン、Biosearch Technologies、米国、バッチ番号060368)をアジュバント(Alhydrogel、InvivoGen#vac-alu-250)とともに両方の側面に、または28日目にアジュバントなしで皮下注射した。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は0(ビヒクル)、1、10、40mg/kg/日だった。カテプシンSアンタゴニスト(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のNP-OVAL免疫化の2日前から35日目まで、食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して毎日投与された。-2、1、7、12、21、28および35日目に、尾からの血液サンプルをBD MicrotainerチューブSSTに採取した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。
【0149】
NP特異的IgG測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのNP(4)-BSA(Biosearch Technologies N-5050L;1mg/mL)をNaHCO3 100mMバッファー中1μg/mLでコーティングし、+4℃で一晩インキュベートした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。NP特異的IgGの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0150】
結果を図3に示す。
【0151】
カテプシンSアンタゴニストの40mg/kg/日の用量は、NPに対するT細胞依存性IgG応答を効果的に抑止することができた。
【0152】
実施例3:HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)に対するADAの緩和(63日)
免疫化
15週齢の雌マウスC57BL/6-Tg(hIgG1、k、l)は、Taconic(Denmark)から購入し、12時間の明暗サイクルで空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。7x10μgのHumira(アダリムマブ、Abbvie Germany GmbH)を、0、4、7、11、14、18、および21日目に、右脇腹または左脇腹に交互に皮下注射した。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は40mg/kg/日だった。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のHumira免疫化の1日前から28日目まで、食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して毎日投与された。-4、7、14、21、28、42、49、および56日目に、投与前に尾からの血液サンプルをBD MicrotainerチューブSSTに採取した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。
【0153】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのHumiraまたはCEA-PGLALAで、それぞれNaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで+4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0154】
結果を図4に示す。
【0155】
実施例4:CEA-IL2vに対するADAの緩和(63日)
免疫化
15週齢のマウスC57BL/6-Tg(hIgG1、k、l)およびC57BL/6野生型混合性別は、Taconic(Denmark)から購入し、12時間の明暗サイクルで空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。7x10μgのCEA-IL2v(バッチ番号GLI0144-01)を、一次応答の場合は0、4、7、11、14、18、および21日目に、記憶応答の場合は49、53、56、および60日目に注射した。CEA-IL2v注射は、右脇腹または左脇腹の皮下に交互に行われた。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は40mg/kg/日だった。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のCEA-IL2v免疫化の1週間前から一次反応の場合は28日目まで、および記憶反応の場合は42日目(CEA-IL2vによる追加免疫の1週間前)から78日目まで毎日食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して投与された。-12、7、14、28、42、56、および63日目に、投与前に尾から血液サンプルを採取した。血清およびPKサンプルには、Sarstedt Microチューブ1,1ml Zゲル(カタログ番号41.1378.005)を使用した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。PDサンプルにはSarstedt Microvette(登録商標)100μl、リチウム-ヘパリンチューブ(カタログ番号20.1282)を使用し、同じ日に測定するまで室温で保管した。
【0156】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのHumiraまたはCEA-PGLALAで、それぞれNaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで、+4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0157】
これらの結果を、図5Aおよび図5Bに示す。
【0158】
実施例5:Tgおよび野生型マウスにおけるCEA-IL2v曝露
PK測定
C56BL/6 hIgG tgおよびCEA-IL2vで処理された野生型マウス(実施例4)からの血清サンプルを、非GLP条件下で酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して分析した。ELISA法では、捕捉抗体(mAb<CEA>M-Bi)、キャリブレーター(RO6895882)、希釈血清サンプル、検出抗体(mAb<CEA>M-Dig)、および抗ジゴキシゲニン-PODをストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレート(SA-MTP)に連続して添加する。形成された固定化免疫複合体は、基質溶液ABTSの添加によって検出される。色の強度は測光的に決定され、試験サンプル中の分析物濃度に比例していた。
【0159】
これらの結果を、図6Aおよび図6Bに示す。
【0160】
カテプシンS阻害剤は、CEA-IL2v曝露を大幅に増加させ、延長する。
【0161】
PD測定
実施例4から、50μlのリチウムヘパリン全血を5mlのポリスチレン丸底チューブ(BD Falcon、カタログ番号352058)および2mlの新たに調製した1x Pharm Lyse(商標)溶解バッファー(BD Bioscience、カタログ番号555899)に移し、UltraPur(商標)蒸留水(Invitrogen、カタログ番号10977-035)を含む)を追加した。サンプルを完全にボルテックスし、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション時間後、チューブを300gで5分間スピンダウンし、上清を除去し、細胞ペレットを2ml DPBS(Gibco、カタログ番号14190-094)+2%ウシ胎児血清(Gibco、カタログ番号10082147)で除去した。チューブを300gで5分間スピンダウンし、上清を除去した。DPBS+2%FBSで1:100に希釈した100μlのTruStain fcX(商標)(BioLegend、カタログ番号101320)を細胞ペレットに加え、注意深くボルテックスし、室温で15分間インキュベートした。マスターミックスは、1サンプルあたり、0.5μlのBV510抱合型抗マウスCD45(Biolegend、カタログ番号103138)、0.4μlのPE-Cy5抱合型抗マウスTCRb(Biolegend、カタログ番号109210)、0.5μlのBUV737抱合型抗マウスCD4(BD Biosciences、カタログ番号564298)、0.5μlのBUV395抱合型抗マウスCD8(BD Biosciences、カタログ番号563786)、0.5μlのBV605抱合型抗マウスNKP46(BD Biosciences、カタログ番号564069)、およびサンプルあたり0.5μlのBV605抱合型抗マウスNK1.1(Biolegend、カタログ番号108740)で調製した。3μlのマスターミックスをサンプルに加えた。暗所で+4℃で30分間インキュベートした後、2mlのDPBS+2%FBSを添加し、チューブを300g、+4℃でスピンダウンした。上清を除去し、ペレットを150μlのDPBS+2%FBSで再懸濁した。データは、BD LSRFortessa(商標)サイトメーター上のBD FACSDivaソフトウェアv8.0で取得し、FlowJo(商標)V10で分析した。
【0162】
結果を図7A図7Dに示す。
【0163】
CEA-IL2vの薬理学は、カテプシンS阻害剤で処置された動物で保存されている。
【0164】
実施例6:FAP-OX40に対するADAの緩和
免疫化
10週齢の雌マウスC57BL/6は、Charles River Laboratories(ドイツ)から購入し、12時間の明暗サイクル下で空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。12.5mg/kgのmuFAP-OX40iMab(P1AD4396-005)を1、4、8日目にグループ2(n=10マウス)、1、4、8、11、15、18、22日目にそれぞれグループ3(n=10マウス)に静脈内注射した。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は40mg/kg/日だった。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のmuFAP-OX40iMab免疫化の1週間前から23日目まで、グループ3に食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して毎日投与された。グループ2には、同時にSsniffから提供された固形飼料の食餌を与えた。-7、8、15、および23日目に、投与前に尾からの血液サンプルをSarstedt Microチューブの1,1ml Zゲル(カタログ番号41.1378.005)に採取した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。
【0165】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのFAP(28H1)-OX40(49B4)PGLALA(P1AD4523)または抗OX40 moIgG2a(P1AD4561)で、それぞれNaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで、+4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0166】
これらの結果を、図8Aおよび図8Bに示す。
【0167】
実施例7:PD-L1に対するADAの緩和
免疫化
10週齢の雌マウスC57BL/6は、Charles River Laboratories(ドイツ)から購入し、12時間の明暗サイクル下で空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。10mg/kgのmuPD-L1(P1AE4930-001)を1、8、15日目にグループ4(n=10マウス)に、1、8、15、22日目にグループ5(n=10マウス)にそれぞれ静脈内注射した。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は40mg/kg/日だった。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のmuPD-L1免疫化の1週間前から23日目まで、グループ5に食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して毎日投与された。グループ4には、同時にSsniffから提供された固形飼料の食餌を与えた。-7、8、15、および23日目に、投与前に尾からの血液サンプルをSarstedt Microチューブの1,1ml Zゲル(カタログ番号41.1378.005)に採取した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。
【0168】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlの抗muPD-L1(P1AE4930-001)でそれぞれ、NaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで、+4℃で一晩、コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0169】
結果を図9に示す。
【0170】
実施例8:CEA-TCBに対するADAの緩和
免疫化
11~15週齢のマウスC57BL/6-Tg(hIgG1、k、l)混合性別(n=20)は、Taconic(Denmark)から購入し、12時間の明暗サイクルで空調された部屋の動物施設で、豊かな環境と水と食べ物への自由なアクセスを備えたマクロロンボックスに収容した。7x10μgのCEA-TCB(P1AE3536、huCEAバインダーCH1A1A/マウスCD3バインダー2C11)を、0、4、7、11、14、18、および21日目に、右脇腹または左脇腹に交互に皮下注射した。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドの投与量は40mg/kg/日だった。(2S,4R)-4-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニル]-1-(1-トリフルオロメチル-シクロプロパンカルボニル)-ピロリジン-2-カルボン酸(1-シアノ-シクロプロピル)-アミドは、最初のCEA-TCB免疫化の1週間前からの28日目まで、グループ2(n=10)に食品混合物(Ssniff Spezialdiaten、ドイツ)を介して毎日投与された。グループ1(n=10)には、同時にSsniffから提供された固形飼料の食餌を与えた。-7、8、15、および28日目に、投与前に尾からの血液サンプルをSarstedt Microチューブの1,1ml Zゲル(カタログ番号41.1378.005)に採取した。30分間静置した後、チューブを10,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。
【0171】
ADA測定
Nunc Maxisorp平底96ウェルELISAプレートを、ウェルあたり100μlのhuCEA IgG PGLALA(P1AD9477)またはhu抗マウスCD3(P1AE2779-001-01)で、それぞれNaHCO3 100mMバッファー中5μg/mLで、+4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。ブロッキングのために、100μlのPBS+2%BSAを各ウェルに加え、ELISAプレートを室温で2時間インキュベートした。最初の未加工の丸底希釈プレートにおいて、血清をPBS+1%FBSで1~50に希釈し、続いて1~3の連続希釈ステップによって、PBS+1%FBSで7回希釈した。ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄し、100μlの希釈血清を希釈プレートからELISAプレートに移した。室温で2時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。CEAに対するADAの検出のために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型のヤギ抗マウスIgG(Jackson カタログ番号115-055-071)のウェルあたり100μlを添加した。CD3バインダーに対するADAを検出するために、PBS+1%BSAで1:2000に希釈したアルカリホスファターゼ抱合型ヤギ抗マウスIgG2c(Jackson カタログ番号115-055-208)のウェルあたり100μlを添加した。室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBS+0.05% Tweenで3回洗浄した。すぐに使用できる基質P-ニトロフェニルホスフェート(Life Technologies、カタログ番号002212)100μlをウェルごとに添加し、室温で10分間インキュベートした後、Versamax ELISAリーダーでエンドポイント測定として405nmのODを読み取った。
【0172】
これらの結果を、図10Aおよび図10Bに示す。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
【配列表】
0007438198000001.app