(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】モデルベース推論器のためのパラメトリックデータモデリング
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240216BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240216BHJP
G06F 11/22 20060101ALI20240216BHJP
G06N 5/04 20230101ALI20240216BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
B64D45/00 Z
G06F11/22 675E
G06N5/04
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2021519624
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 US2019043362
(87)【国際公開番号】W WO2020081138
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディクシット、スニール
(72)【発明者】
【氏名】ラムロス、リチャード、アール.
(72)【発明者】
【氏名】グッド、ネイサン、アール.
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0312783(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0064291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 11/22
B64D 45/00
G06N 5/04
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータプロセッサと不揮発性記憶装置とを備える複合システムのためのオンボード診断システムであって、
前記複合システム内の複数のソースから、前記複合システムの動作中
に伝送されるセンサデータを含むデータを読み取るためのインターフェースと、
前記複合システムを構成する複数のサブシステムの動作を各々表す複数のモデルであって、
前記複数のモデルの各々が複数のノード
を含み、前記ノードは、前記複合システムの各サブシステムの機能、構成要素、およびセンサを表し、前記ノードの少なくともいくつかは、パラメータ化されたデータ、直接アナログセンサデータ、および前記複数のサブシステム
が生成したBIT(組み込み試験)データを表し、前記複数のモデルの各々は、前記不揮発性記憶装置に格納され
る、XMLモデル構成ファイルからなる、前記複数のモデルと、
前記コンピュータプロセッサによって実行されるMBR(モデルベース推論)エンジンであって、前記MBRエンジンは、前記インターフェースで読み取られたデータを受信し、前記XMLモデル構成ファイルから前記複数のサブシステムの前記複数のモデルを実装して、
一つのサブシステムのモデルに含まれる複数のノードが表すデータに基づいて
前記一つのサブシステムの診断分析を生成し、BITデータ
を表すノードからのデータと、
少なくとも一つの他の
ノードからのデータと、に基づいて前記一つのサブシステムに異常があるか否かを判定し、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータが、前記一つのサブシステムに異常があるか否かの補強証拠を提供する、MBRエンジンと、
前記診断分析およびデータを受信し、実行可能な保守タスクおよびレポートを提供する保守ビューアと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記MBRエンジンは、前記一つのサブシステムの異常を示す前記
BITデータを表すノードからのデータと、前記一つのサブシステムの異常について補強証拠を提供しない、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータと、に基づいて、前記一つのサブシステムの異常が誤検出であり誤りであることを判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記MBRエンジンは、一つのサブシステムの異常を示す前記
BITデータを表すノードからのデータと、前記一つのサブシステムの異常について補強証拠を提供する、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータと、に基づいて、前記一つのサブシステムの異常判定が妥当であることを判定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記MBRエンジンによる誤判定であるとの判定が、前記複合システムのリアルタイム動作中に行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記MBRエンジンによる異常判定が妥当であるとの判定が、前記複合システムのリアルタイム動作中に行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記XMLモデル構成ファイルの各々は、関連するセンサ及び論理的機能を含む、対応す
るサブシステムの表現である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記パラメータ化されたデータは、較正値をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つのノードが、BITデータを前記モデルに提供するための物理的センサノードをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのノードが、前記モデルに直接物理的センサ定量データを提供するための物理的センサノードをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記複合システムを表す前記モデルを作成し、試験するためのグラフィカルユーザインターフェースをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
複合システムのための統合輸送手段健全性管理(IVHM)の方法であって、
前記複合システムの複数
のサブシステムの動作を各々表す複数のモデルを生成し、前記複数のモデルの各々は、
前記複数のモデルの各々が複数のノード
を含み、前記ノードは、前記複合システムの前記複数
のサブシステムの各々の機能、構成要素、およびセンサを表し、前記ノードのうちの少なくともいくつかは、パラメータ化されたデータ、直接アナログセンサデータ、および前記複数
のサブシステム
が生成したBIT(組み込み試験)データを表し、
前記複数
のサブシステムの前記複数のモデルをそれぞれXMLモデル構成ファイルへエクスポートし、
前記モデルと前記複合システムの複数のソースからのセンサデータとを用いてMBR(モデルベース推論)エンジンを実行して、
一つのサブシステムのモデルに含まれる複数のノードが表すデータに基づいて
前記一つのサブシステムの診断分析を生成し、
前記MBRエンジンにより、BITデータ
を表すノードからのデータと、
少なくとも一つの他の
ノードからのデータとに基づいて、前記一つ
のサブシステムに異常があるか否かを判定し、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータが、前記一つ
のサブシステムに異常があるか否かの補強証拠を提供し、
前記診断分析に基づいて前記複合システムにおいて行われるべき保守を示すレポートを生成すること、
を含む、方法。
【請求項12】
前記MBRエンジンは、前記一つ
のサブシステムの異常を示す前記
BITデータを表すノードからのデータと、前記一つ
のサブシステムの異常について補強証拠を提供しない、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータと、に基づいて、前記一つ
のサブシステムの異常が誤検出であり誤りであることを判定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記MBRエンジンは、前記一つのサブシステムの異常を示す前記
BITデータを表すノードからのデータと、前記一つ
のサブシステムの異常について補強証拠を提供する、前記少なくとも一つの他の
ノードからのデータと、に基づいて、前記一つのサブシステムの異常判定が妥当であることを判定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記MBRエンジンによる誤判定であるとの判定が、前記複合システムのリアルタイム動作中に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記MBRエンジンによる異常判定が妥当であるとの判定が、前記複合システムのリアルタイム動作中に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記XMLモデル構成ファイルは、各々が関連するセンサ及び論理的機能を含む、対応す
るサブシステムの表現である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パラメータ化されたデータは、較正値をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのノードが、BITデータをモデルに提供するための物理的センサノードをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのノードが、モデルに直接物理的センサ定量データを提供するための物理的センサノードをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記複合システムを表す前記モデルを作成し、試験するためのグラフィカルユーザインターフェースをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の実施例は、全体として、モデルベース診断システムに関し、より詳細には、統合輸送手段健全性管理(Integrated Vehicle Health Management:IVHM)システムにおけるモデルベース推論(Model Based Reasoner:MBR)エンジンへのパラメータ化入力および機器故障の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送手段、航空機、宇宙船および他のシステムのような複雑なシステムは、通常、輸送手段(vehicle)を制御および管理するための多くのサブシステムを含む。本明細書全体を通して、輸送手段(vehicle)への言及は、様々な複雑なシステム(複合システム)を包含することを理解されたい。これらのサブシステムのうちの1つ以上において、特に輸送手段のリアルタイム動作中に発生し得る有害事象または故障を識別することが望ましい。統合輸送手段健全性管理システムを使用して、輸送手段の様々な特性(故障モード)を監視および診断することができる。システム挙動に関するモデル、ルール、決定、および事例を使用するモデルベースシステム(即ち、エキスパートシステム)は、輸送手段内のセンサおよび他のデータソースからの入力を受け取り、評価するシステムの機能モデルを作成するために開発されてきた。しかしながら、従来技術のモデルは、サブシステムレベルでのみ統合され、輸送手段全体を網羅していない。加えて、輸送手段のライフサイクルに亘ってハードウェアおよびソフトウェアのアップグレードに応じてモデルを開発および更新するために、大量の時間および資源が必要とされる。
【0003】
技術的診断ソリューションに対するルールベースのアプローチでは、組み込み試験(built-in test:BIT)データを使用することができる。BITエンジニアリング(ルールベースアプローチと考えられる)は、複雑なシステムに対してはあまり効果的ではなく、高い誤警報(false alarm:FA)率の主な理由となる。良好なルールを作成することに関わる工学的努力は、数十年にわたるソフトウェアおよびハードウェアのアップグレードでは非常に費用がかかり、高負担である。従って、これらのシステムを維持するコストは膨大であり、ライフサイクルコストのほぼ72%が動作およびサポートに費やされる。加えて、機器BIT情報は、異なるベンダによって供給され得るので、一般に、一貫した規格に従っていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施例は、輸送手段に関するリアルタイムの診断及び保守情報を生成するためにモデルベース推論器を使用する統合輸送手段健全性管理システムを包含する。一実施形態では、コンピュータプロセッサおよび不揮発性記憶装置を有する複合システム用オンボード診断システムは、複合システム内の複数のソースからセンサデータを含むデータを受信するためのインターフェースと、複合システムを表すモデルであって、図式内の複数のノードをさらに含み、前記ノードが、複合システムの機能、構成要素、センサを表し、前記ノードのうちの少なくともいくつかが、パラメータ化されたデータ、直接アナログセンサデータ、および組み込み試験(BIT)データを表し、不揮発性記憶装置内に格納されたXMLモデル構成ファイルからなる、モデルと、モデルを作成および検証するためのモデル開発および検証インターフェースと、モデルを評価するためのモデル試験マネージャと、コンピュータプロセッサによって実行されるモデルベース推論(MBR)エンジンであって、入力インターフェースからデータを受信し、対応するXMLモデル構成ファイルからモデルを実装し、複合システムの診断分析およびデータを生成する、MBRエンジンと、診断分析およびデータを受信し、実施可能な保守タスクおよびレポートを提供するための保守ビューアと、を含む。
【0005】
さらなる実施形態では、モデル試験マネージャは、シミュレートされたデータまたは複合システムから捕捉された動作データを使用してモデルを評価する。
【0006】
一実施形態では、複合システムの統合輸送手段健全性管理(IVHM)方法は、複合システムを表すモデルを生成し、前記モデルが図式内の複数のノードをさらに含み、前記ノードは、複合システムの機能、構成要素、およびセンサを表し、前記ノードのうちの少なくともいくつかは、パラメータ化データ、直接アナログセンサデータ、および組み込み試験(BIT)データを表し、前記モデルを検証し、前記モデルを試験し、前記モデルをXMLモデル構成ファイルにエクスポートし、前記モデル及び前記複合システム内の複数のソースからのセンサデータを使用してモデルベース推論(MBR)エンジンを実行し、前記複合システムの診断分析およびデータを生成し、前記診断分析およびデータに基づいて前記複合システムの保守を実行することを含む。
【0007】
さらなる実施形態では、試験ステップは、シミュレートされたデータまたは複合システムから捕捉された動作データを使用してモデルを評価することをさらに含む。
【0008】
上記の実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つのノードは、状態およびステータスを有するシステム要素を表すための構成要素ノード、他のノードからの出力を論理的に結合するための機能ノード、又はパラメータ化されたデータをモデルに提供するための物理的センサノードをさらに含む。
【0009】
上記の実施形態のいずれにおいて、パラメータ化されたデータは、センサデータの上限値および下限値をさらに含む。
【0010】
上記の実施形態のいずれにおいて、パラメータ化されたデータは、較正値をさらに含む。
【0011】
上記実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つのノードは、モデルにBITデータを提供するための物理的センサノード、またはモデルに直接的物理的センサ定量データを提供するための物理的センサノードをさらに含む。
【0012】
上記の実施形態のいずれかにおいて、複合システムを表すモデルを作成し、試験するためのグラフィカルユーザインターフェースが提供され得る。
【0013】
次に、いくつかの例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】航空機内の機器故障の診断分析のためのオンボード動作IVHMシステムおよびそのインターフェースのブロック図を示す。
【
図2】IVHMシステムの設計、動作、および保守プロセスおよびインターフェースのブロック図を示す。
【
図3】IVHMシステムと共に使用するサブシステムのモデルを示す。
【
図4】
図3のモデルにおける機能ノードの表示を示す。
【
図5】
図3のモデルにおけるセンサノードの表示を示す。
【
図6】
図3のモデルにおける計算された境界センサノードの表示を示す。
【
図7】センサノードへのデータマッピングの表示を示す。
【
図8】IVHMシステムと共に使用するモデルを試験するための機構の表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
モデル駆動アーキテクチャ(Model Driven Architectures:MDA)およびモデルベースエンジニアリング(Model Based Engineering:MBE)を使用する統合輸送手段健全性管理(IVHM)は、システムが変更またはアップグレードされるたびにではなく、1回でソフトウェアおよびハードウェア要素に飛行資格を与える(flight qualified)解決方法である。これにより、システムの診断ドメイン知識を持つモデルを含むXML形式の構成ファイルを使用することで、コストを大幅に削減できる。モデルは、正確さのために検証される必要があるが、高価で時間のかかるソフトウェア飛行資格検査(flight qualification)を必要としない。これにより、軍事作戦および支援コストが25%~35%節約される。
【0016】
図1は、MBRエンジン14が航空機12のアビオニクス(航空電子機器)室内の計算装置(図示せず)上で動作する、航空機12上のIVHMシステム10の機能的挙動およびインターフェースを示す。
図1を参照して航空機が示され、説明されているが、実施形態はこの種の輸送手段に限定されない。観測された挙動16は、様々な航空機アビオニクスデータバスから得られたBIT、パラメトリック、及びセンサデータを指す。予想される挙動18は、様々なサブシステム、回線交換可能ユニット(line replaceable units:LRU)、およびシステム全体の構成要素のモデル化されたドメイン知識20から予想されるものを指す(このモデルはXMLフォーマットで表される)。構成要素は、サブシステム、LRU、およびその他の構成要素を指す。観測された挙動16が予想される挙動18と異なる場合、異常挙動(不一致/残差)が登録され、MBRエンジン14は診断モード(原因分析)に入る。BIT、パラメトリック、およびセンサデータの様々な推論アルゴリズムおよび分析により、MBRエンジン14は、故障した構成要素の検出、単一の故障した構成要素または類似の構成要素の曖昧性群(ambiguity group)の分離、誤警報識別、故障した構成要素の機能的評価(すなわち、ポンプ内の漏れ、パイプ内の漏れ、空気流の閉塞、軸受損傷、および構成要素の物理性に依存する他の評価)、および未知の異常を含む、結果22を生成する。未知の異常の場合、モデル20は、構成要素に関する追加情報と、その構成要素の故障モードに関連する他の構成要素との相互作用と、を用いて改善される。この情報は、これらの構成要素の製造業者から得られ、追加の故障モードが既存のモデルに追加される。チェーン(直列または並列)における類似の要素の曖昧性群を低減するために、典型的には、曖昧性群内の特定の構成要素を分離するために追加のセンサが必要とされる。サイズ、重量、および電力の制限により追加のセンサを適用できない場合、保守者は局所曖昧性群内でオフボード診断分析を実行しなければならない。
【0017】
図2は、IVHMシステム100のブロック図を示す。
図2の様々な構成要素は、モデル化されたシステムにおいて、それらの相互接続された機能、故障モード、故障確率、および機能評価を論理的に結合させるために共にリンクされ、設計ソース(114、116、118、120)、パイロットのディスプレイに配信される(運航飛行プログラム102から得られる)リアルタイムまたは後処理された入力データ、地上システム(OFP102から得られる)、および保守者の地上保守アクション122のためのディスク(126)上の記憶装置にもリンクされる。議論の目的上、IVHMシステム100はブロック図として表現されるが、記述された機能および方法は、様々な方法で、ハードウェア構成要素内で論理的に結合されてもよい。
【0018】
運航飛行プログラム(Operational Flight Program:OFP)102は、輸送手段の全体的な動作を管理するためのハードウェアおよびソフトウェアを含む。OFP102には、ランタイム診断エンジンIVHMExec104が含まれている。また、OFP102は、アビオニクスデータバスに受動的に取り付けられ、ミッション計画システムと能動的にインターフェースされ、地上システムおよび保守システム122と能動的にインターフェースされる、スタンドアロンのアビオニクスIVHMコンピュータとして実装されてもよい。IVHMExec104には、診断モデルベース推論(MBR)エンジン106が含まれている。MBRエンジン106は、輸送手段システムまたはサブシステムの物理モデルを、システム状態を記述する入力データと結合し、次いで、システムが正常に動作しているか、システム異常が存在するかを決定するために決定論的推論を実行し、システム異常が存在する場合には、存在する障害および誤警報の位置および種類を分離し、識別する。IVHMExec104は、携帯型保守装置ビューア122によってもアクセスされ得るディスク126に保守記録を書き込む。
【0019】
MBRエンジン106は、データメッセージインターフェース108を介してリアルタイムセンサデータを受信する。また、リアルタイム動作インターフェース112を介して輸送手段のランタイム動作モデル110を受信する。輸送手段のモデル110は、モデル開発グラフィカルユーザインターフェース(GUI)114を使用してモデリング技術者によって作成される。モデル110は、オフライン(非リアルタイム)でMBRエンジン106により作成および検証され、その後、IVHMExec104のリアルタイム埋め込みビルドによって使用されるXMLファイルにエクスポートされる。モデル110の作成に加えて、GUI114は、モデルを検証するためにも使用される。検証および妥当性確認は、特定の入力データを使用せずに、モデルの内部論理および要素を試験(テスト)することである。このプロセスは、モデルが適切に動作することを妨げるエラー、または全く動作しないというエラーなしに、モデルが論理的に一貫していることを保証するために必要である。
【0020】
モデル開発プロセスのさらなるステップとして、試験マネージャ116は、シミュレートされた又は実際の飛行データ118に対して試験することによって、モデルを評価する。開発インターフェース120は、IVHMExec104ランタイムに静的または動的に(スタンドアロンIVHMExecの場合は静的に、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)との統合のためには動的に)実行可能にリンクされた別個のクラスである、MBRエンジン106アルゴリズムの修正および追加を可能にする。検証はモデルを論理的に試験するが、試験マネージャ116は、モデルの性能および出力が所望のものであることを保証する。モデルが検証され、試験されると、XMLモデル構成ファイル110が生成される。
【0021】
IVHMExec104は、モデルのXML表現をロードし、輸送手段内の様々なバスから受信されるセンサデータメッセージおよび地上での再生のための様々なフォーマットで記憶された履歴データの少なくとも一方を入力するためにモデルを適用することによって、リアルタイムでMBRエンジン106を実行する実行主体である。IVHMExec104はまた、開発インターフェース120を介して試験マネージャ116によって使用されてもよい。記憶装置インターフェース124は、MBRエンジン106を記録データ記憶装置126に接続させる。記録されたデータ126は、ログファイル、機器の完全なタイムスタンプされた状態、例えば、スナップショット、タイムスタンプされた故障/故障異常、検出、分離、および分離に関する任意の機能的評価を含む。ログファイルは、MBRエンジンソフトウェア状態(バージョン番号、故障および再起動)に加えて、他の航空ソフトウェアの識別子、そのバージョン番号、故障した場合は故障時の状態、ソフトウェアの再起動、および故障につながる機能評価を含むことができる。このデータの収集により、航空機で発生した実際のイベントの診断可視化の再現が可能になり、保守者は障害構成要素につながるハードウェア及びソフトウェア両方の相互作用をよりよく理解できるようになる。記録データ記憶装置126は、MBRエンジン106によって使用される生データおよびその処理の結果を記憶する。
【0022】
一実施形態では、MBRエンジン106は、動的に較正されたデータ入力能力と、論理ゲートのセット(共通集合AND、論理和OR、排他的論理和XOR、その他)と、ルールと、事例(履歴)と、決定ツリーと、を含み、これらは、パラメータ化された直接アナログセンサデータと、対応する組込み試験(BIT)入力と、のIVHMデータ融合のためにセンサ論理で組み合わされる。パラメトリックデータ、直接アナログセンサデータ、およびBIT結果の比較は、故障および誤警報予測における信頼性尺度を生成する。
【0023】
次に、MBRエンジン106が使用するモデルの作成の一例について説明する。一実施形態によると、モデルは、モデル化された輸送手段内の多くのソースからのデータ融合を提供する。具体的には、モデルはパラメータ化されたデータ入力機能を含むことができ、これは、MBRエンジン106が、異常の存在を判定するために、測定された物理量に対して固定的または動的に較正された境界値を有する、アナログおよび定量化されたデジタルデータ入力を含むことを可能にする。パラメータ化されたデータの異常判定は、単純な固定的境界値、物理的センサ動作に基づいて動的に変化する較正値、または信号雑音低減、ウィンドウ処理、待ち時間、および同様のパラメータ化されたデータ調整を含む、より複雑な判定特性に基づくことができる。これらのデータ較正パラメータおよび閾値は、システムのリアルタイム動作中の評価のためのセンサノード特性となる。機能(関数)は論理集合やオペランドとして表現でき、ルールは論理集合や自然言語の意味論、履歴挙動(事例ベース)、意思決定ツリー(フォールトツリー解析)として表現できる。例えば、圧力機能の場合、モデルは、流量圧力が提供されているかどうかを評価し、所望の機能論理に従って他の入力を組み合わせる。一実施形態では、各入力は、真として評価される機能に対して肯定的な結果を示さなければならないが、他の論理機能を使用してもよい。この機能のための様々なユーザ定義パラメータは、その機能のノードプロパティ(特性)として表現することができる。輸送手段のXML MBRモデル110およびアビオニクス計算装置上で動作するバイナリIVHMExec104リアルタイムエンジンは、輸送手段全体にIVHM能力/機能を提供する。
【0024】
パラメトリック及びBIT MBRモデルは、それらの機能に関連する構成要素及びセンサを含むことができる。一実施形態では、輸送手段システムまたはサブシステムのモデルは、
図3に示すような図式(グラフ)内のノードとして表すことができる。具体的には、
図3は、
図2のモデル開発GUI114を使用して表される、診断的ノードまたは非診断的ノードの両方を含む環境制御サブシステム(environment control subsystem:ECS)の一例を示す。説明上、特定の例を議論するが、本明細書で説明する原理は、輸送手段の任意のサブシステムまたはシステムに適用することができる。モデリング技術者は、
図2のGUI114を介して
図3のモデルと対話する。
【0025】
診断的ノードは、故障または誤警報を引き起こすシステム構成要素を決定するために、MBRモデル推論において直接使用され、一方、非診断的ノードは、センサ出力およびBIT試験比較などのタスクのために使用される。非診断的ノードは、パラメトリックセンサデータとBITデータ結果とのリアルタイム比較のために使用される。パラメトリックセンサは、真の(センサが故障していない場合の)システムの挙動を表し、BITデータが対応する構成要素の故障を示しているときにそれらが名目上動作している場合、この結果は誤警報として示される。故障したセンサは、センサに対する誤検出および検出漏れ試験により識別される。流れ圧力構成要素などの構成要素は、当該構成要素をモデルの他の要素に接続することによって、その状態(例えば、オン、オフ、高圧または低圧など)およびステータス(動作中、故障、漏れなど)がMBRエンジン106によって示される、特定のシステム要素を指す。センサノードは、多くの形態、例えば、直接センサアナログ入力、パラメトリックデータ入力、及びバイナリBITデータ入力をとり得る、入力データによりモデル化される。
図3を参照すると、代表的な構成要素ノードが、ECS流量圧力(ECS Flow Pressure)センサノード202として示されている。他の構成要素ノードには、ECS流れ(ECS Flow)204、ECS冷却(ECS Cooling)206およびECS準備完了(ECS Ready)208が含まれる。
【0026】
図3のモデルにおける別の種類のノードは、機能ノードである。代表的な機能ノードが、流れ圧力供給(Provide Flow Pressure)ノード210として示されている。他の機能ノードには、流れ提供(Provide Flow)212、冷却提供(Provide Cooling)214、およびECS準備完了提供(Provide ECS Ready)216が含まれる。
図3の各機能ノードは、基本的AND関数(Basic AND function)を表す。例えば、流れ圧力提供(Provide Flow Pressure)210は、流れ圧力が提供されているかどうかを決定するために使用され(論理セットおよび論理オペランド)、所望の機能論理に従って他の入力を結合する。この例では、各入力は、結果として得られる機能の状態が真であるために、肯定的な結果を示さなければならない。機能ノード210のための様々なユーザ定義パラメータは、機能ノードアイコンをダブルクリックすることによってモデリング技術者によって見られることができ、これは、
図4に示される機能ノード210のウィンドウを呼び出す。ノードプロパティで定義されるパラメータには、ノードクラス302、デフォルトパラメータ値304、およびノード210の能力、出力およびステータスデータタイプを定義するデータアイテム306が含まれる。
図4には、特定のラベルおよび特徴が示されているが、これらは、モデル化される機能およびモデル化される輸送手段の設計に応じて変化し得る。
【0027】
図3のモデルにおける別の種類のノードは、物理的センサノードである。代表的な物理的センサノードは、
図3にECS_流れ圧力(ECS_FlowPressure)ノード218として示されている。別の物理的センサノードがECS_温度(ECS_Temperature)ノード238として示されている。物理ノードおよび仮想ノードは、多くの形態をとり得る入力データを示すためにモデル内で使用される。上述したように、モデリング技術者は、GUI114を介して
図3のモデルと対話する。物理的センサノード218のための様々なユーザ定義パラメータは、ノードアイコンをダブルクリックすることによってモデリング技術者が見ることができ、これにより、
図5に示す物理的センサノード218のウィンドウを表示する。センサノード218の場合、パラメータ化された入力データは、
図5に示されるノードプロパティウィンドウ内のデフォルトとして定義される固定上限値および下限値(許容閾値)と共に使用される。パラメータ化されたデータの使用は、
図5に見られるように、生の(未加工)値402としてセンサノードプロパティに列挙される、定量化されたセンサ値の直接分析を可能にする。この場合、センサ未加工値402は、ECSサブシステムについて測定された流量圧力を含む。未加工値402が下限値404を下回るか、または上限値406を上回る場合、センサは異常を示し、これは次いで、モデルの残りの部分とともにMBRエンジン106(
図2)によって、異常の性質および原因を決定するために使用される。
【0028】
物理的センサノードの別の例は、BIT ECS_流れ圧力故障(BIT ECS_FlowPressureFault)220である。このセンサは、モデル化されたシステムからのBIT(Built-In-Test)データを使用し、データ出力における異常または正常な動作のいずれかを示す。このBIT試験は、対応するパラメータ化されたセンサと同じ上限値および下限値を使用するように設計されているが、異常動作の場合には異なる結果を生成する可能性がある。したがって、本発明者らは、BIT試験を、別個のパラメータ化されたデータ入力と共に、排他的論理和(XOR)又はセンサノードであるXOR_ECS流れ圧力(XOR_ECS_FlowPressure)ノード222への入力として使用する。場合によっては、BIT試験センサのみが保守者に利用可能であり、この場合、BIT試験は、ECS流れ圧力(ECS Flow Pressure)218のためにここで使用されるパラメトリックセンサノードと同様に、診断的センサとして使用されるであろう。
図3のモデルにおける他の物理的センサノードは、BIT_ECS_準備未完了(BIT_ECS_NotReady)ノード240およびBIT_ECS_温度故障(BIT_ECS_TempFault)ノード242を含む。
【0029】
XOR_ECS_流れ圧力(XOR_ECS_FlowPressure)ノード222は、物理的センサノードBIT_ECS_流れ圧力故障(BIT_ECS_FlowPressureFault)220およびパラメータ化された入力センサノードであるECS_流れ圧力_ND(ECS_FlowPressure_ND)228からの入力を受信する。別個のパラメータ化された入力センサがXOR入力のために使用される理由は、この入力が非診断的である(診断サイクルが実行されない)からである。センサは、システムの故障および誤警報を判定するためにMBRエンジンで使用されることを意味する診断的なものであってもよいし、MBRエンジン評価からそれらを除去するための非診断的なものであってもよい。XOR論理及び出力が相補的であり、MBRエンジン処理とは分離されるので、XORセンサ入力は、MBRエンジンとの干渉を防止するために非診断パラメトリックセンサ入力228が望ましい。ここで使用される例では、BIT試験センサ220も、同じ理由で非診断的センサである。さらに、XORセンサについては、各センサがそれに付属するダウンストリーム機能を有するという設計要求を満たすために、ブランク関数226を使用する。別のブランク関数が符号236に示されている。ノード222と同様に、XOR_ECS_温度(XOR_ECS_Temp)ノード244は、物理的センサノードBIT_ECS_温度故障(BIT_ECS_TempFault)242およびパラメータ化センサノードECS_温度_ND(ECS_Temperature_ND)224からの入力を受信する。
【0030】
XOR_ECS_流れ圧力(XOR_ECS_FlowPressure)ノード222は、別個の出力ストリームを生成し、接続されたセンサ(パラメータ化されたセンサノード228および対応するBIT試験ノード220)が異なる評価を提供する場合にのみ、正のブール結果を示す。通常の動作条件下ではこれは起こらないはずであり、したがって、XORセンサノードは、システムのBITまたはパラメータ化された入力のうちの1つが異常な結果を提供しているときを判定するのに有用である。これにより、モデル作成者にシステムの健全性を診断するためのまた別のツールが提供され、そうでなければシステム健全性を分析することは困難である。
【0031】
BIT試験データフィールドのみが利用可能である場合の例が、
図3において、BIT_ECS_流れステータスフラグ故障(BIT_ECS_FlowStatusFlagFault)ノード230として示され、これは、センサ入力を流れ提供ノード212に提供する。この場合、BIT試験ノード230は診断的ノードであり、MBRエンジンで直接使用される。
図3に見られる他のモデル要素種類は、例えば、モデル機能を記述する、符号232で示されるコメントと、
図3に示されるサブモデルに示されるものの外側のモデル要素が、サブモデル、具体的には冷却提供(Provide Cooling)機能ノード214と通信することを可能にする、出力アイコン234と、を含む。
【0032】
場合によっては、パラメトリックノードは、固定的な上限値および下限値を有さない。この場合、例えば
図6に示すような、別個のノードクラスを使用することができる。このノードは、
図3のサブシステムモデルの一部ではない。ここでは、時間とともに変化し得る較正値(例えば、較正電圧)を提供する第2の入力が使用される。測定値は、較正値の周囲で、較正マイナスパーセント(calib_minus_percent)502および較正プラスパーセント(calib_plus_percent)504(一般にサブシステムサプライヤ情報から決定される)によって定義されるパーセンテージ範囲内に収まる必要がある。この種のセンサノードは、パラメータ化されたセンサの限界に対する既知の較正値が存在する場合、
図3および
図5のECS流量圧力(ECS FlowPressure)ノード218などの境界_センサ_cfg(Bounds_sensor_cfg)クラスノードの代わりに使用することができる。
【0033】
一実施形態では、
図3に示すようなモデルは、モデルの各要素に対応するデータフィールドのリストを含む。例えば、
図7に示すように、ECS_温度(C)(ECS_Temperature (C))602値は、ECSサブモジュール内の診断的ECS_温度(ECS_Temperature)センサノード604および非診断的ECS_温度(ECS_Temperature)センサノード606にマッピングされる。これらは、このモデルのデータ入力として使用されるファイル形式のデータ列のラベルであり、各サブシステム内の様々なセンサのための全てのデータフィールドが、1つのファイル内で体系的に定義されることを可能にする。別々のデータ項目がBIT試験データノードに、および較正データ項目が較正されたセンサノードにマッピングされる。ドロップダウンメニュー608における未加工データ項目選択は、この例示的なデータ項目がECS温度センサからの未加工(生)の測定値であることを示す。モデル内の各センサ(パラメトリックまたはBIT)は、較正されたパラメトリックセンサのための任意の較正値データセットと共に、データ項目にマッピングされる。
【0034】
再び
図2を参照すると、モデル開発GUI114を使用してIVHM MBRモデルが構築された後(各サブシステムの動作をエミュレートするために、すべてのセンサ、構成要素、および機能が配置されている)、実際のまたはシミュレートされたシステムデータを使用してモデルを実行するには2つの方法がある。上述したように、GUI114は、試験マネージャ116を用いて、記録された飛行データ118を用いてMBRモデルを実行する直接的な方法を含む。
図8は、新しい試験ポップアップウィンドウ702を有する代表的な試験マネージャウィンドウを示す。飛行再現試験704が選択されると、適切な試験シミュレートデータまたは実際の飛行データファイルが選択肢706から選択され、試験マネージャ116にロードされる。データファイルを使用してモデルの試験を実行すると、出力ファイルが生成され、これに続いて保存され、保守記録として書き込まれた分析診断結果と共に、閲覧することができる。既に飛行データを使用した他のテストは、708に示されるものから選択されてもよい。
図8に示す特定の試験は代表的な例にすぎず、多くの他の試験を使用することもできる。
【0035】
代替的実施形態では、GUI114(
図2)を使用するモデリング技術者は、IVHMExec104(
図2)のコマンドラインスタンドアロンバージョンを使用してモデルを試験することができる。この手順では、モデルとデータマッピングに関する情報を含むXML(拡張マークアップ言語:Extensible Markup Language)ファイルが生成される。このファイルは、IVHMExec104のコマンドラインスタンドアロンバージョンで実行して、事前定義された記憶場所に出力ファイルを生成することができ、これはPMDデータビューア122(
図2)にロードすることができる。この結果は、試験マネージャ116で生成されたものと同じであるべきであるが、コマンドライン手順では、大量のデータセットと可変数のシステムMBRモデルのバッチファイル処理を可能にする。
【0036】
モデル試験からの出力データの一例が、
図9に示されている。MBRエンジン106(
図2)は、ECS冷却構成要素の故障を、ECS_温度(ECS_Temperature)ノード238として表されるパラメータ化されたECS温度センサと、他の温度センサを含む他のサブシステム構成要素における補強証拠(これらのケースの一部では、例えば、LTAレーザ増幅器ドライバ温度(図示せず)であり、利用可能な唯一のデータはBIT試験であり、従って、この場合にはBIT試験ノードが補強証拠として用いられる)と、の両方における故障を用いて、分離している。
図2及び
図9に同様に示されるように、相互接続されたサブシステムのサブモデルの論理は、ECS温度を測定するパラメータ化されたセンサECS_温度(ECS_Temperature)ノード238が、適切な補強証拠を有する異常であると判断されたときに、この結果を決定する。さらに、ECS温度異常を測定するBIT試験BIT_EC_温度故障(BIT_EC_TempFault)ノード242は、別個の故障を示しており、このセンサノードは非診断的であり、したがってシステム故障を判定するために使用されないが、非診断的ECS_温度_ND(ECS_Temperature_ND)パラメトリックセンサノード224のための比較器として使用される。BITノードとパラメトリックノード間の変動は、欠陥のあるBIT試験またはセンサを示すことができ、パラメータ化されたセンサを実装することによって追加される能力の1つである。
【0037】
図10は、誤警報を生成するMBRエンジン106の出力の一例を示す。この場合、配電ユニット(PDU)P5Vセンサ802は、PDUサブモデルシステム内の電圧を測定するパラメトリックセンサであるが、このサブシステムのためのデータ入力が定義されたパラメトリック範囲から外れているため、異常を生成している。パラメトリックセンサノードの実装は、潜在的に煩雑なハードウェアBIT試験結果を回避して、このセンサデータの直接使用を可能にする。パラメータ化されたノードはまた、信頼性尺度の計算、スプリアス(偽)データポイントのためのデータのウィンドウ化、および同様の分析のために、定量的データの分析を直接可能にする。このサブモデルでは、パラメトリックノードPDU_P5_ND806と、BIT_PDU_P5_電圧故障808からのBIT試験データとの間のXOR_PDU_P5ノード804を使用する比較器分析が行われ、これら2つの結果の間に、センサまたはBIT試験の失敗を示す不一致があるかどうかが判定される。以下の例では、他のサブシステムは、システムハードウェアにおける実際の障害の場合に同様の異常を予想するので、異常は誤警報であると判定される。このような他の異常は存在しないので、MBRエンジン106は、この異常が誤警報であると判断することができる。
【0038】
本発明の中心的目的は、ノースロップ・グラマン社セクターの全ての輸送手段、航空機、その他のシステムに対して、高忠実度リアルタイム診断能力(誤警報(FA)拒絶、故障検出(FD)、故障分離(FI)、および機器故障に対するパラメータ傾向分析)を生成することである。本発明は、多数のハードウェアデバイスおよびオペレーティングシステム、ならびにシステムアビオニクス統合に対する、飛行中のリアルタイムシステム動作中にシステムの健全性を判定するための、組み込みソフトウェア診断能力を提供する。パラメトリックデータ入力とXORパラメトリック・BIT比較器の融合とを実装することにより、システムは、定量的なセンサ入力を解析し、高度な故障と誤警報信頼度測度を開発し、有効なシステム健全性管理と診断能力を維持しながら、BIT故障を特定し、解析する能力を有する。
【0039】
別段の指定なく使用される限り、用語「上側」、「下側」、「前」、「後」、「上に」、「下に」、および同様のそのような用語は、実施形態を特定の向きに限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの用語は、相対的にのみ使用される。