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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ゴム組成物、加硫物及び加硫成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 11/00 20060101AFI20240216BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240216BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240216BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240216BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08L11/00
C08K5/3415
C08K5/14
C08J3/24 Z CEQ
C08J3/20 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021542717
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2020030668
(87)【国際公開番号】W WO2021039396
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2019152721
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦典
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】大貫 俊
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120759(JP,A)
【文献】特開2001-288304(JP,A)
【文献】特開2003-342419(JP,A)
【文献】特開2003-342420(JP,A)
【文献】特開2001-173724(JP,A)
【文献】特開2009-029994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 5/00-5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系ゴム100質量部と、マレイミド化合物0.50~4.0質量部と、有機過酸化物0.10~2.0質量部と、を含有する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記マレイミド化合物の含有量Aの前記有機過酸化物の含有量Bに対する質量比A/Bが1.0~10である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記クロロプレン系ゴムが、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとの共重合体、及び、クロロプレンとアクリロニトリルとの共重合体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記クロロプレン系ゴムの含有量が、当該ゴム組成物に含有されるゴム成分の全質量を基準として50質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記クロロプレン系ゴムの含有量が、当該ゴム組成物に含有されるゴム成分の全質量を基準として98質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物の加硫物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物の加硫成形体。
【請求項8】
JIS K 6262:2013に準拠して130℃、72時間の試験条件で測定される圧縮永久ひずみの変化率が40%以下である、請求項に記載の加硫成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、加硫物、加硫成形体等に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン系ゴムは、機械特性、耐オゾン性、耐薬品性等に優れており、その特性を活かして自動車部品、接着剤、各種工業用ゴム部品等の広範囲な分野に用いられている。クロロプレン系ゴムを用いることが可能な技術としては、下記特許文献1~3に記載のゴム組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-23191号公報
【文献】特開2012-111899号公報
【文献】特開平9-268239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロロプレン系ゴムを含有するゴム組成物に対しては、優れた耐熱性及び低発熱性(発熱が少ない特性)を有する加硫物を与えることが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、優れた耐熱性及び低発熱性を有する加硫物を得ることが可能なゴム組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、係る課題を解決するために鋭意研究を行った結果、クロロプレン系ゴムに対して特定量のマレイミド化合物及び有機過酸化物を混合することで、優れた耐熱性及び低発熱性を有する加硫物を得ることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の一側面は、クロロプレン系ゴム100質量部と、マレイミド化合物0.50~4.0質量部と、有機過酸化物0.10~2.0質量部と、を含有する、ゴム組成物に関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、上述のゴム組成物の加硫物に関する。本発明の他の一側面は、上述のゴム組成物の加硫成形体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面は、優れた耐熱性及び低発熱性を有する加硫物を得ることが可能なゴム組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫成形体を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。
【0012】
<ゴム組成物>
本実施形態に係るゴム組成物は、(1)クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)系ゴム100質量部と、(2)マレイミド化合物0.50~4.0質量部と、(3)有機過酸化物0.10~2.0質量部と、を含有する。本実施形態に係るゴム組成物によれば、当該ゴム組成物を加硫して得られる加硫物として、優れた耐熱性及び低発熱性を有する加硫物を得ることができる。
【0013】
本発明者らは、クロロプレン系ゴムに対して上述の特定量のマレイミド化合物及び有機過酸化物を混合することで、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得ることに成功した。本実施形態に係るゴム組成物によれば、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得ることもできる。
【0014】
(1)クロロプレン系ゴム
クロロプレン系ゴムは、クロロプレン由来の構造単位を有し、クロロプレンを単量体単位(クロロプレン単量体単位)として有する。クロロプレン重合体としては、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体(クロロプレンとクロロプレンに共重合可能な単量体との共重合体)等が挙げられ、これらの重合体の混合物を用いてもよい。重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではない。
【0015】
クロロプレンに共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸のエステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類(2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。クロロプレンに共重合可能な単量体は1種に限定されるものではなく、例えば、クロロプレンの共重合体は、クロロプレンを含む3種以上の単量体を共重合した共重合体であってもよい。
【0016】
クロロプレン系ゴムは、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとの共重合体、及び、クロロプレンとアクリロニトリルとの共重合体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、クロロプレンの単独重合体、及び、クロロプレンとアクリロニトリルとの共重合体から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとの共重合体は、クロロプレン由来の構造単位と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン由来の構造単位とを有する共重合体であり、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとを単量体単位(クロロプレン単量体単位及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体単位)として有する共重合体である。クロロプレンとアクリロニトリルとの共重合体は、クロロプレン由来の構造単位とアクリロニトリル由来の構造単位とを有する共重合体であり、クロロプレンとアクリロニトリルとを単量体単位(クロロプレン単量体単位及びアクリロニトリル単量体単位)として有する共重合体である。
【0017】
クロロプレン系ゴムとしてクロロプレンの共重合体を用いる場合、クロロプレン由来の構造単位の含有量(共重合量)は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、クロロプレン系ゴムの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。クロロプレン由来の構造単位の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50質量%を超えており、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上であり、極めて好ましくは80質量%以上であり、非常に好ましくは85質量%以上であり、より一層好ましくは90質量%以上である。クロロプレン由来の構造単位の含有量は、100質量%未満であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは93質量%以下であり、更に好ましくは91質量%以下である。これらの観点から、クロロプレン由来の構造単位の含有量は、好ましくは50質量%以上100質量%未満である。
【0018】
クロロプレン系ゴムとしてクロロプレンの共重合体を用いる場合、クロロプレンに共重合可能な単量体由来の構造単位の含有量(共重合量)は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点、及び、これらの単量体を共重合させたことによる効果を発現しやすい観点から、クロロプレン系ゴムの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。構造単位の含有量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは50質量%未満以下であり、更に好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下であり、極めて好ましくは20質量%以下であり、非常に好ましくは15質量%以下であり、より一層好ましくは10質量%以下である。構造単位の含有量は、0質量%を超え、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは7質量%以上であり、特に好ましくは9質量%以上である。これらの観点から、構造単位の含有量は、好ましくは0質量%を超え50質量%以下である。同様の観点から、アクリロニトリル由来の構造単位の含有量は、上述の各範囲を満たすことが好ましい。
【0019】
クロロプレン系ゴム(クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体等)は、硫黄変性クロロプレン系ゴム、メルカプタン変性クロロプレン系ゴム、キサントゲン変性クロロプレン系ゴム、ジチオカルボナート系クロロプレン系ゴム、トリチオカルボナート系クロロプレン系ゴム、カルバメート系クロロプレン系ゴム等であってよい。クロロプレン系ゴムとしてクロロプレンの単独重合体を用いる場合、クロロプレンの単独重合体は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、メルカプタン変性クロロプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0020】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分子量分布(分子量の多分散度、Mw/Mn)は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。
【0021】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、好ましくは10×10g/mol以上であり、より好ましくは50×10g/mol以上であり、更に好ましくは100×10g/mol以上であり、特に好ましくは300×10g/mol以上であり、極めて好ましくは400×10g/mol以上であり、非常に好ましくは450×10g/mol以上である。クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、好ましくは5000×10g/mol以下であり、より好ましくは3000×10g/mol以下であり、更に好ましくは2000×10g/mol以下であり、特に好ましくは1000×10g/mol以下であり、極めて好ましくは800×10g/mol以下であり、非常に好ましくは500×10g/mol以下である。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの重量平均分子量は、好ましくは10×10~5000×10g/molであり、より好ましくは100×10~2000×10g/molであり、更に好ましくは300×10~1000×10g/molである。
【0022】
クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、好ましくは1×10g/mol以上であり、より好ましくは5×10g/mol以上であり、更に好ましくは10×10g/mol以上であり、特に好ましくは50×10g/mol以上であり、極めて好ましくは100×10g/mol以上であり、非常に好ましくは130×10g/mol以上である。クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、好ましくは1000×10g/mol以下であり、より好ましくは800×10g/mol以下であり、更に好ましくは500×10g/mol以下であり、特に好ましくは300×10g/mol以下であり、極めて好ましくは200×10g/mol以下であり、非常に好ましくは150×10g/mol以下である。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの数平均分子量は、好ましくは1×10~1000×10g/molであり、より好ましくは10×10~500×10g/molであり、更に好ましくは50×10~300×10g/molである。
【0023】
クロロプレン系ゴムの分子量分布は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2.0以上であり、特に好ましくは2.5以上であり、極めて好ましくは3.0以上であり、非常に好ましくは3.2以上であり、より一層好ましくは3.4以上である。クロロプレン系ゴムの分子量分布は、好ましくは10以下であり、より好ましくは8.0以下であり、更に好ましくは5.0以下であり、特に好ましくは4.0以下であり、極めて好ましくは3.8以下であり、非常に好ましくは3.5以下であり、より一層好ましくは3.4以下である。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの分子量分布は、好ましくは1.0~10であり、より好ましくは2.0~5.0であり、更に好ましくは2.5~4.0である。
【0024】
クロロプレン系ゴムの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算することで得ることが可能であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0025】
クロロプレン系ゴムの含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分の全質量を基準として、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50質量%を超え、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、極めて好ましくは95質量%以上であり、非常に好ましくは95質量%を超え、より一層好ましくは96質量%以上であり、更に好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上である。ゴム組成物に含有されるゴム成分は、クロロプレン系ゴムからなる(ゴム組成物に含有されるゴム成分の実質的に100質量%がクロロプレン系ゴムである)態様であってもよい。
【0026】
クロロプレン系ゴムの含有量は、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。クロロプレン系ゴムの含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは45質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上であり、極めて好ましくは50質量%を超え、非常に好ましくは55質量%以上であり、より一層好ましくは60質量%以上である。クロロプレン系ゴムの含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、特に好ましくは75質量%以下であり、極めて好ましくは70質量%以下であり、非常に好ましくは65質量%以下である。これらの観点から、クロロプレン系ゴムの含有量は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%であり、更に好ましくは50~70質量%である。
【0027】
クロロプレン系ゴムの製造方法は、クロロプレンを含む原料単量体を重合させる重合工程を備える。クロロプレン系ゴムは、例えば、乳化分散剤を用いて、重合反応の触媒、触媒活性化剤、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で、クロロプレンを含む原料単量体(例えば、クロロプレンを主成分とする原料単量体)を乳化重合することにより得ることができる。
【0028】
乳化分散剤としては、炭素数が6~22の飽和又は不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩(例えばロジン酸カリウム)、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0029】
重合反応の触媒としては、硫酸カリウム等の無機過酸化物;ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0030】
触媒活性化剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノン、β-スルフォン酸ナトリウム、フォルムアミジンスルフォン酸、L-アスコルビン酸等が挙げられる。
【0031】
重合開始剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0032】
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン化合物;ヨードホルム;ベンジル1-ピロールジチオカルバメート(別名ベンジル1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,N-ジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート(別名1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート(別名ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)、ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート(別名ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート(別名ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、t-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を有するポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を有するポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル-4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2’-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル-2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(t-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナート等のチオカルボニル化合物などが挙げられる。
【0033】
クロロプレン系ゴムの重合温度は、特に限定されるものではなく、一般に乳化重合が行われる温度として、好ましくは0~50℃であり、より好ましくは20~50℃である。上述の重合工程で得られるクロロプレン系ゴムの最終重合率は、特に限定されるものではなく、30~100%の範囲内で任意に調節することが好ましい。最終転化率を調整するためには、所望する転化率になった時に、重合反応を停止させる重合停止剤を添加して重合を停止させることができる。
【0034】
重合停止剤は、特に限定されるものではなく、通常用いられている重合停止剤を使用することができる。重合停止剤としては、チオジフェニルアミン(別名フェノチアジン)、4-t-ブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0035】
次に、重合工程により得られた重合液から未反応単量体の除去を行うことができる。その方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スチームストリッピング法が挙げられる。その後、pHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経てクロロプレン系ゴムを得ることができる。
【0036】
(2)マレイミド化合物
マレイミド化合物は、マレイミドに由来する骨格を有する化合物である。マレイミド化合物は、ゴム組成物において加硫剤として用いることができる。マレイミド化合物としては、N,N’-フェニレンビスマレイミド(N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド等)、N,N’-ジフェニルメタンビスマレイミド(N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等)、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンなどのビスマレイミド化合物などが挙げられる。マレイミド化合物は、加硫物(例えば加硫成形体)の耐熱性、低発熱性及び耐圧縮永久ひずみ性が向上しやすい観点から、ビスマレイミド化合物を含むことが好ましく、N,N’-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-ジフェニルメタンビスマレイミドから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、N,N’-フェニレンビスマレイミドを含むことが更に好ましく、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドを含むことが特に好ましい。
【0037】
マレイミド化合物の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して0.50~4.0質量部である。マレイミド化合物の含有量が0.50質量部以上であると、ゴム組成物の加硫が充分に進行するため、加硫物の低発熱性が向上すると共に加硫物の耐圧縮永久ひずみ性が向上しやすい。マレイミド化合物の含有量が4.0質量部以下であると、加硫物(例えば加硫成形体)のゴム弾性が充分に確保されるため、加硫物の耐熱性(例えば熱老化後の切断時伸び)が向上する。
【0038】
マレイミド化合物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.70質量部以上であり、より好ましくは1.0質量部以上であり、更に好ましくは1.2質量部以上であり、特に好ましくは1.5質量部以上であり、極めて好ましくは1.8質量部以上であり、非常に好ましくは2.0質量部以上である。マレイミド化合物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは3.8質量部以下であり、より好ましくは3.5質量部以下であり、更に好ましくは3.2質量部以下であり、特に好ましくは3.0質量部以下であり、極めて好ましくは2.8質量部以下であり、非常に好ましくは2.5質量部以下であり、より一層好ましくは2.2質量部以下であり、更に好ましくは2.0質量部以下である。これらの観点から、マレイミド化合物の含有量は、好ましくは0.70~3.0質量部であり、より好ましくは1.0~3.0質量部であり、更に好ましくは1.0~2.0質量部である。マレイミド化合物の含有量は、2.2質量部以上、2.5質量部以上、2.8質量部以上、又は、3.0質量部以上であってよい。マレイミド化合物の含有量は、1.8質量部以下、1.5質量部以下、1.2質量部以下、1.0質量部以下、又は、0.70質量部以下であってよい。
【0039】
マレイミド化合物の含有量は、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。マレイミド化合物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは0.20質量%以上であり、更に好ましくは0.30質量%以上であり、特に好ましくは0.40質量%以上であり、極めて好ましくは0.50質量%以上であり、非常に好ましくは0.70質量%以上であり、より一層好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.2質量%以上である。マレイミド化合物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.8質量%以下であり、更に好ましくは2.5質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以下であり、極めて好ましくは1.8質量%以下であり、非常に好ましくは1.5質量%以下であり、より一層好ましくは1.3質量%以下である。これらの観点から、マレイミド化合物の含有量は、好ましくは0.10~3.0質量%であり、より好ましくは0.20~2.8質量%であり、更に好ましくは0.50~2.0質量%である。マレイミド化合物の含有量は、1.3質量%以上、1.5質量%以上、又は、1.8質量%以上であってよい。マレイミド化合物の含有量は、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.70質量%以下、0.50質量%以下、又は、0.40質量%以下であってよい。
【0040】
(3)有機過酸化物
有機過酸化物は、ゴム組成物において加硫助剤として用いることができる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物は、加硫物(例えば加硫成形体)の低発熱性及び耐圧縮永久ひずみ性が向上しやすい観点から、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、n-ブチル-4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート及び1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンを含むことが更に好ましい。
【0041】
有機過酸化物の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して0.10~2.0質量部である。有機過酸化物の含有量が0.10質量部以上であると、ゴム組成物の加硫を促進させる効果が充分に得られることにより加硫が充分に進行するため、加硫物の耐熱性(例えば熱老化後の切断時伸び)及び低発熱性が向上すると共に加硫物の耐圧縮永久ひずみ性が向上しやすい。有機過酸化物の含有量が2.0質量部以下であると、加硫密度の急上昇が抑制されるため加硫物の耐熱性(例えば熱老化後の切断時伸び)が向上する。
【0042】
有機過酸化物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.15質量部以上であり、より好ましくは0.20質量部以上であり、更に好ましくは0.30質量部以上であり、特に好ましくは0.40質量部以上である。有機過酸化物の含有量は、優れた耐熱性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは1.8質量部以下であり、より好ましくは1.7質量部以下であり、更に好ましくは1.5質量部以下であり、特に好ましくは1.2質量部以下であり、極めて好ましくは1.0質量部以下であり、非常に好ましくは0.80質量部以下であり、より一層好ましくは0.50質量部以下であり、更に好ましくは0.40質量部以下である。これらの観点から、有機過酸化物の含有量は、好ましくは0.15~1.8質量部であり、より好ましくは0.20~1.0質量部であり、更に好ましくは0.30~0.80質量部である。有機過酸化物の含有量は、優れた低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.50質量部以上であり、より好ましくは0.80質量部以上であり、更に好ましくは1.0質量部以上であり、特に好ましくは1.2質量部以上であり、極めて好ましくは1.5質量部以上であり、非常に好ましくは1.7質量部以上である。有機過酸化物の含有量は、0.30質量部以下、0.20質量部以下、又は、0.15質量部以下であってよい。
【0043】
有機過酸化物の含有量は、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。有機過酸化物の含有量は、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.06質量%以上であり、特に好ましくは0.07質量%以上であり、極めて好ましくは0.10質量%以上であり、非常に好ましくは0.15質量%以上であり、より一層好ましくは0.20質量%以上であり、更に好ましくは0.24質量%以上である。有機過酸化物の含有量は、優れた耐熱性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以下であり、特に好ましくは1.2質量%以下であり、極めて好ましくは1.0質量%以下であり、非常に好ましくは0.80質量%以下であり、より一層好ましくは0.50質量%以下であり、更に好ましくは0.30質量%以下であり、特に好ましくは0.25質量%以下である。これらの観点から、有機過酸化物の含有量は、好ましくは0.01~2.0質量%であり、より好ましくは0.05~1.5質量%であり、更に好ましくは0.20~0.80質量%である。有機過酸化物の含有量は、優れた低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物を得やすい観点から、好ましくは0.25質量%以上であり、より好ましくは0.30質量%以上であり、更に好ましくは0.50質量%以上であり、特に好ましくは0.80質量%以上であり、極めて好ましくは1.0質量%以上である。有機過酸化物の含有量は、0.24質量%以下、0.20質量%以下、0.15質量%以下、0.10質量%以下、0.07質量%以下、又は、0.06質量%以下であってよい。
【0044】
マレイミド化合物の含有量Aの有機過酸化物の含有量Bに対する質量比A/Bは、下記の範囲であることが好ましい。質量比A/Bは、耐熱性、低発熱性及び耐圧縮永久ひずみ性のバランスに優れた加硫物を得やすい観点から、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.2以上であり、更に好ましくは1.3以上であり、特に好ましくは1.5以上であり、極めて好ましくは2.0以上であり、非常に好ましくは3.0以上であり、より一層好ましくは4.0以上であり、更に好ましくは5.0以上である。質量比A/Bは、加硫密度の急上昇が発生しにくいことから耐熱性(例えば熱老化後の切断時伸び)及び耐圧縮永久ひずみ性の低下を抑制しやすいため、耐熱性、低発熱性及び耐圧縮永久ひずみ性のバランスに優れた加硫物を得やすい観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、更に好ましくは10以下であり、特に好ましくは9.0以下であり、極めて好ましくは8.0以下であり、非常に好ましくは7.0以下であり、より一層好ましくは6.0以下であり、更に好ましくは5.0以下である。これらの観点から、質量比A/Bは、好ましくは1.0~20であり、より好ましくは1.0~10であり、更に好ましくは1.0~7.0であり、特に好ましくは2.0~7.0である。質量比A/Bは、6.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10以上、又は、15以上であってよい。質量比A/Bは、4.0以下、3.0以下、2.0以下、1.5以下、1.3以下、又は、1.2以下であってよい。
【0045】
(4)その他の化合物
本実施形態に係るゴム組成物は、上述の成分とは異なる成分として、ゴム成分(クロロプレン系ゴムを除く);加硫剤(マレイミド化合物を除く);加硫促進剤;加硫助剤(有機過酸化物を除く);可塑剤;カーボンブラック;充填材(補強材);加工助剤;老化防止剤等を含有してよい。
【0046】
ゴム成分は、塩素化ポリエチレンを含んでよく、塩素化ポリエチレンを含まなくてよい。塩素化ポリエチレンの含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分の全質量を基準として、5質量%以下、5質量%未満、3質量%以下、1質量%以下、又は、1質量%未満であってよい。
【0047】
加硫剤としては、特に制限するものではないが、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。加硫剤(マレイミド化合物を除く)の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して3~15質量部であってよい。
【0048】
加硫促進剤としては、クロロプレン系ゴムの加硫に一般に用いられる化合物を用いることができる。加硫促進剤としては、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系等の加硫促進剤;ジメチルアンモニウムハイドロジェンイソフタレート;1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体などが挙げられる。チオウレア系の加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレア等が挙げられ、トリメチルチオウレア及びエチレンチオウレアから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0049】
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の加硫速度又は加硫密度を向上させる観点から、加硫助剤として、二官能性エステル化合物及び三官能性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することができる。二官能性エステル化合物及び三官能性エステル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパン、エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアネート、トリアリルシアネート等が挙げられる。
【0050】
可塑剤としては、クロロプレン系ゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、植物油(菜種油等)、フタレート系可塑剤、DOS、DOA、エステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイル等が挙げられ、ゴム組成物に要求される特性に合わせて1種又は複数種を使用できる。可塑剤の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して5~50質量部であってよい。
【0051】
充填材(補強材)としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填材の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して5~100質量部であってよい。
【0052】
加工助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸;ポリエチレン等のパラフィン系加工助剤;脂肪酸アミドなどが挙げられる。加工助剤(有機過酸化物を除く)の含有量は、クロロプレン系ゴム100質量部に対して0.5~5質量部であってよい。
【0053】
老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、フェノール系老化防止剤、ワックス等が挙げられる。耐熱性の改良効果の大きいアミン系老化防止剤としては、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等が挙げられ、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの耐熱性の改良効果が特に大きい。
【0054】
本実施形態に係るゴム組成物は、上述の成分をその加硫温度以下の温度で混練することで得ることができる。混練装置としては、ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等を用いることができる。
【0055】
<未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体>
本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物を用いており、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)の成形体(成形品)である。本実施形態に係る未加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形する工程を備える。本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)からなる。
【0056】
本実施形態に係る加硫物は、本実施形態に係るゴム組成物の加硫物である。本実施形態に係る加硫物の製造方法は、本実施形態に係るゴム組成物を加硫する工程を備える。
【0057】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物の加硫成形体である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物を用いており、本実施形態に係る加硫物の成形体(成形品)である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物からなる。本実施形態に係る加硫成形体に関して、JIS K 6262:2013に準拠して130℃(試験温度)、72時間(試験時間)の試験条件で測定される加硫成形体の圧縮永久ひずみの変化率は、40%以下であることが好ましい。本実施形態に係る加硫成形体は、加硫成形体の全質量を基準として、マレイミド化合物を0.01~2質量%含有することが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を加硫して得られる加硫物を成形することにより得ることが可能であり、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形して得られる成形体を加硫することにより得ることもできる。本実施形態に係る加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係る加硫物を成形する工程、又は、本実施形態に係る未加硫成形体を加硫する工程を備える。
【0059】
本実施形態に係る未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能であり、自動車用ゴム部材(例えば自動車用シール材)、ホース材、ゴム型物、ガスケット、ゴムロール、産業用ケーブル、産業用コンベアベルト等のゴム部品として利用することができる。
【0060】
本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)及び加硫物を成形する方法としては、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等が挙げられる。ゴム組成物を加硫する温度は、ゴム組成物の組成に合わせて適宜設定すればよく、好ましくは140~220℃であり、より好ましくは160~190℃である。ゴム組成物を加硫する加硫時間は、ゴム組成物の組成、未加硫成形体の形状等によって適宜設定すればよく、10~60分であってよい。
【実施例
【0061】
<クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの製造>
加熱冷却ジャケット及び攪拌機を備えた内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体24質量部、アクリロニトリル単量体24質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。上述のクロロプレン単量体は、重合開始20秒後から分添し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジン0.02質量部を加えて重合を停止させた。その後、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを得た。
【0062】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスの上述の重合率は、クロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを風乾したときの乾燥質量から算出した。具体的には、下記式(I)より計算した。式中、「固形分濃度」とは、サンプリングしたクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品、原料等の揮発成分を除いた固形分の濃度[質量%]である。「総仕込み量」とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬及び溶媒(水)の総量である。「蒸発残分」とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量である。単量体仕込み量は、重合缶に初期に仕込んだ単量体、及び、重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計である。なお、ここでいう「単量体」とは、クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量である。
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100 ・・・(I)
【0063】
上述のクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスのpHを、酢酸又は水酸化ナトリウムを用いて7.0に調整した後、-20℃に冷やした金属板上でクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを凍結凝固させることで乳化破壊することによりシートを得た。このシートを水洗した後、130℃で15分間乾燥させることにより固形状のクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムを得た。
【0064】
上述のクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムをTHFでサンプル調整濃度0.1質量%の溶液とした後、高速GPC装置(TOSOH HLC-8320GPC:東ソー株式会社製)によりクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとしてTSKガードカラムHHR-Hを使用し、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-Hを3本使用し、サンプルポンプ圧8.0~9.5MPa、流量1mL/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。
【0065】
流出時間及び分子量は、以下に挙げる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いて得た。
Mw=8.42×10、1.09×10、7.06×10、4.27×10、1.90×10、9.64×10、3.79×10、1.74×10、2.63×10
【0066】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)は473×10g/molであり、数平均分子量(Mn)は138×10g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。
【0067】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中のアクリロニトリル由来の構造単位の含有量を、クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中の窒素原子の含有量から算出した。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて、100mgのクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中における窒素原子の含有量を測定し、アクリロニトリル由来の構造単位の含有量を算出した。アクリロニトリル由来の構造単位量は9.9質量%であった。
【0068】
上述の元素分析は次のとおり行った。電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2ml/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80ml/minフローした。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成した。
【0069】
<ゴム組成物の製造>
表1に記載のクロロプレン系ゴム、マレイミド化合物及び有機過酸化物と、酸化亜鉛5質量部と、酸化マグネシウム4質量部と、可塑剤10質量部と、充填材40質量部と、加工助剤1質量部と、老化防止剤3質量部とを8インチオープンロールで混練することにより実施例1~9及び比較例1~6のゴム組成物を得た。
【0070】
表1に記載のクロロプレン系ゴムと、酸化亜鉛5質量部と、酸化マグネシウム4質量部と、可塑剤10質量部と、充填材40質量部と、加工助剤1質量部と、老化防止剤3質量部と、加硫促進剤1質量部とを8インチオープンロールで混練することにより比較例7のゴム組成物を得た。
【0071】
ゴム組成物を得るために用いた各成分は以下のとおりである。
クロロプレン系ゴム1:上述の方法で作製したクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム
クロロプレン系ゴム2:メルカプタン変性クロロプレン系ゴム(メルカプタン変性クロロプレンの単独重合体)、生ゴム、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=60、デンカ株式会社製
マレイミド化合物1:N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、大内新興化学工業製「バルノック(登録商標)PM」
マレイミド化合物2:N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、大和化成社製「BMI-1000」
有機過酸化物1:1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、日本油脂株式会社製「パーブチル(登録商標)P-40」
有機過酸化物2:n-ブチル-4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、日本油脂株式会社製「パーヘキサ(登録商標)V-40」
酸化亜鉛:加硫剤、堺化学工業株式会社製「酸化亜鉛2種」
酸化マグネシウム:加硫剤、協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)30」
可塑剤:ポリエーテルエステル系可塑剤、株式会社ADEKA製「アデカサイザー(登録商標)RS-700」
充填材:カーボンブラック、旭カーボン株式会社製「旭#60UG」
加工助剤:滑剤、ステアリン酸、新日本理化株式会社製「ステアリン酸50S」
老化防止剤:4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック(登録商標)CD」
加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーTMU」
【0072】
<加硫成形体の製造>
上述のゴム組成物を180℃×30分の条件でプレス加硫することにより厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。
【0073】
<加硫成形体の評価>
上述の加硫成形体の評価を以下のとおり行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
(耐熱性)
上述の加硫成形体を用いて、JIS K 6251:2010に準拠して引張試験を行うことにより切断時伸びX1(Eb)を測定した。130℃、72時間の条件で加硫成形体を放置した後、JIS K 6257:2017に準拠して引張試験を行うことにより切断時伸びX2(Eb)を測定した。下記式に従って切断時伸びの変化率(ΔEb、単位:%)を算出した。切断時伸びの変化率が-30%以上である場合を良好であると判断した。
変化率(%)=[(X2-X1)/X1]×100
【0075】
(耐圧縮永久ひずみ性(CS))
JIS K 6262:2013に準拠して130℃、72時間の試験条件で上述の加硫成形体を放置する前後の圧縮永久ひずみの変化率を測定した。圧縮永久ひずみの変化率が40%以下である場合を良好であると判断した。
【0076】
(低発熱性)
低発熱性の評価をグッドリッチフレクソメーター(Goodrich Flexometer:JIS K 6265)により行った。グッドリッチフレクソメーターは、加硫ゴム等の試験片に動的繰り返し負荷を加えて、試験片内部の発熱による疲労特性を評価する試験方法であって、詳しくは、一定の温度条件で試験片に静的初期荷重を加え、一定振幅の正弦振動を更に加え、時間の経過と共に変化する試験片の発熱温度及びクリープ量を測定するものである。上述の加硫成形体を用いて、JIS K 6265:2018に準拠し、温度50℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1800回の条件で発熱量(ΔT、単位:℃)を測定した。発熱量が40℃以下である場合を良好であると判断した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示した結果から、実施例のゴム組成物によれば、優れた耐熱性、低発熱性及び優れた耐圧縮永久ひずみ性を有する加硫物(加硫成形体)を得ることができる。このような加硫物は、各種ゴム部品として好適に使用できる。