(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】防虫組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 27/00 20060101AFI20240216BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240216BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20240216BHJP
A01N 65/10 20090101ALI20240216BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20240216BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A01N27/00
A01P17/00
A01N37/10
A01N65/10
A01M29/12
A01N31/02
(21)【出願番号】P 2021546805
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020017183
(87)【国際公開番号】W WO2020163696
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518407593
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL BIOLIFE INC.
【住所又は居所原語表記】4800 Montgomery Lane, Suite 210, Bethesda, MD 20814, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダリル,エル.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,トーマス,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リース,ニコラス,エー.
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502860(JP,A)
【文献】特開2014-201581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセント基準で:
2~4% α-ピネン、
2~4% ボルネオール、
8~10% ゲラニオール、
28~35% リナロール、
25~38% 酢酸リナリル、
1~4% サリチル酸メチル、
2~4% ミルセン、
2~4% para-シメン、
4~8% フェランドレン、
1~4% チモール、及び
2~4% バニリン
を含んでなる組成物。
【請求項2】
4% α-ピネン、
4% ボルネオール、
8% ゲラニオール、
28% リナロール、
28% 酢酸リナリル、
4% サリチル酸メチル、
4% ミルセン、
4% para-シメン、
8% フェランドレン、
4% チモール、及び
4% バニリン
を含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
4% α-ピネン、
4% ボルネオール、
10% ゲラニオール、
30 % リナロール、
25 % 酢酸リナリル、
3% サリチル酸メチル、
4% ミルセン、
4% para-シメン、
8% フェランドレン、
4% チモール、及び
4% バニリン
を含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
2% α-ピネン、
2% ボルネオール、
10% ゲラニオール、
35% リナロール、
38% 酢酸リナリル、
1% サリチル酸メチル、
2% ミルセン、
2% para-シメン、
5 % フェランドレン、
1% チモール、及び
2% バニリン
を含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
重量パーセントで:
1~2% δ-3-カレン、
12~20% オシメン、
50~60% α-ファルネセン、
2~5% リナロール、
5~10% サリチル酸メチル、
1~2% α-ピネン、
2~6% サビネン、及び
3~7% オポパナクス油
を含んでなる、組成物。
【請求項6】
1% δ-3-カレン、
15.5% オシメン、
58% α-ファルネセン、
4% リナロール、
10% サリチル酸メチル、
1% α-ピネン、
4.6% サビネン、及び
6.3% オポパナクス油
を含んでなる請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
重量パーセント基準で:
2~4% α-ピネン、
2~4% ボルネオール、
8~10% ゲラニオール、
28~35% リナロール、
25~38% 酢酸リナリル、
1~4% サリチル酸メチル、
2~4% ミルセン、
2~4% para-シメン、
4~8% フェランドレン、
1~4% チモール、及び
2~4% バニリン
を含んでなる組成物を配備することを含む防虫方法。
【請求項8】
前記組成物の配備が、該組成物を個体に適用することにより、該個体から昆虫を遠ざけることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物の配備が、該組成物を、昆虫を遠ざけたい領域にスプレーすることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物の配備が、該組成物を、昆虫を遠ざけたい領域に置くことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物の配備が、該組成物を燃やすことにより、その構成成分が周囲環境に放出されて、該周囲環境から昆虫を遠ざけることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の配備が、液体としての適用のための溶液として製剤化された該組成物をスプレーするか又はミストとすることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
スプレー又はミストとしての適用のための溶液として製剤化された、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
スプレー又はミストとしての適用のための溶液として製剤化された、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は防虫組成物に関し、特に、防虫特性を有する製剤中に種々の構成成分を含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 昆虫は役立つ機能(植物の受粉、食糧源その他の有益な役割を含むがこれらに限定されない)を提供する。しかし、望ましくない影響(疾患を媒介すること及び邪魔者であることを含むがこれらに限定されない)を有する昆虫(例えば、刺咬昆虫)もいる。例えば、ダニ及び蚊は、動物及びヒトが罹患する疾患を運搬する。
[0003] 蚊は、ほとんどのヒト病気を担っており、年間で平均500百万症例が3百万人の死亡をもたらしている。この症例の90パーセントがアフリカのみで発生し、世界中で25億人がリスクにさらされている。女性は、皮膚のアルカリ度が高いため捕食性蚊を引付け易いので特に危険である。女性が高いリスクに晒される別の鍵となる因子は、女性が一般的に、知覚される毒性及び油っぽい皮膚感覚を好まないことにより、伝統的な蚊忌避技術(例えばDEET)を使用しない傾向にあることである。
【0003】
[0004] 更に、蚊媒介疾患は、ヒト集団とって最も致命的な脅威の1つである。地球温暖化に起因して蚊の天然生息地が拡大するにつれて、蚊媒介疾患のリスクが増加するので、これら疾患の予防戦略を見い出さなければならない。現在、世界中に約10百万種の昆虫が存在する。このうち、10,000種が血液を積極的に餌とするものであり、更にそのうちヒト血液を餌とするものは約100種であるとされている。ヒトを狙う昆虫は、特異的な配位で捕食対象の位置決定に働く高感度なケモレセプターネットワークアレイを備えている必要がある。
[0005] ヒトを蚊から保護する、現に存在する最良の戦略は、DEET、IR3535及びピカリジンである。これら化学物質は有効であるが、下記の発明が解決しようとする重要な限定を欠いている。DEET、IR3535、ピカリジンは、蚊の化学感覚アレイの重要なレセプターを刺激して忌避応答を誘発する点で有効である。この主要レセプターはOr47a及びOr83b DEET様レセプターと呼ばれる。DEET、IR3535又はピカリジンの使用が該レセプターに影響することは、該レセプターのみに影響するという薬物自体の制限であると証明している。この戦略は、蚊又は捕食性昆虫を遠ざける1つの方法の作出に役立つにすぎない。蚊は、依然として、他の化学感覚レセプターにより、DEETレセプターを無効にした捕食対象の位置を特定することができる。
【0004】
[0006] 蚊を遠ざけるための植物抽出物の使用は、含まれる一部の化学物質の毒性効果により制限されることが広く認識されている。ほとんどの蚊忌避性香料又はオイルの毒性効果は、それらに存在する他の毒性化学物質により有効性が制限される。下記は、ポピュラーな蚊忌避性香料/オイルの例及びそれらの毒性効果のリストである:アニス(Pimpinella anisum) メチルオイゲノールに起因する発癌性、バジル(Ocimum sp) メチルオイゲノールに起因する発癌性、ベルガモット(Citrus bergamia) d-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、カユプテ(Melaleuca alternifolia) メチルオイゲノールに起因する光毒性皮膚刺激性、シトロネラ(Cymbopogon nardus) メチルオイゲノール及びシトラールに起因する皮膚刺激性、シトラスオイル(Citrus sp) ベルガプテン及びd-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、クローブ(Syzygium aromaticum) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、レモンブッシュ(Lippia javanica) シトラールに起因する皮膚刺激性、ゼラニウム(Pelargonium graveolens) シトラールに起因する皮膚刺激性、ジンジャー(Zinziber sp) シトラールに起因する皮膚刺激性、フオン(Langarostrobus franklini) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、レモングラス(Cympogon cintratus) シトラールに起因する皮膚刺激性、ライム(Citrus aurantifolia) d-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、ハマビワ属(litsea)(Litsea cubebia) シトラールに起因する皮膚刺激性、マリーゴールド(Tagates minuta) 光毒性、ワームシード(Chenopodium ambrosiodes) 肝臓毒性、ミント(Mentha piperata) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性、ナツメグ(Myristica fragrans) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、パルマロサ(Cymbopogon martini) メチルファルネソールに起因する発癌性、ペニーロイヤル(Menthyl pulegium) 毒性、マツ(Pinus sylvestris) 光毒性、ローズマリー(Rosemarinus officinalis) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、ルー(Ruta chalepensis) ソラレンに起因する光毒性、タイム(Thymus vulgaris) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性、バイオレット(viola odorata) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
[0007] 本発明は、幾つかの構成成分からなるか又は該構成成分を含む製剤である種々の組成物に関する。構成成分の一部は植物中に見い出される。更に、成分又は構成成分の幾つかは植物が産生する香料であり、このような植物は、昆虫忌避性であってもなくてもよい性質を有する多くの他の化学物質を有し得る。この性質には、防御のための化学感覚シグナル伝達、誘引剤、創傷治癒などが含まれる。改善された蚊忌避剤は、多種多様な蚊忌避性香料由来の昆虫忌避性の活性化学物質のみが組み込まれた忌避剤の製剤化により強化し得る。このような製剤は、Or47a及びOr83b DEETレセプター、AgOr65タンパク質レセプター、cpA二酸化炭素レセプター及びAeegOr4又はAaegOr103スルカトンヒト特異的レセプターを阻害する重要な化学感覚阻害剤を含有する点で優れる。この製剤は、蚊又は防虫特性を有することが知られる全ての植物性香料についてのこれらケモレセプター特異的化合物の厳密分析及び外挿により実現され得る。
[0008] 優れた防虫特性に加え、本発明の組成物の製剤は、ヒト及び動物にとって安全である。
[0009] 本発明の幾つかの製剤は、より有用な戦略に関するものであり、蚊の化学感覚パッケージの全てを阻害することができる複合製剤であり得る。化学感覚パッケージには、AgOr65タンパク質レセプター、cpA二酸化炭素レセプター、及びヒト宿主が独自に発するスルカトンを検知するAaegOr4又はAaeg103レセプターが含まれる。
【0006】
[0010] 本発明は、1つの形態では、重量パーセント基準で:
2~4% α-ピネン、
2~4% ボルネオール、
8~10% ゲラニオール、
28~35% リナロール、
25~38% 酢酸リナリル、
1~4% サリチル酸メチル、
2~4% ミルセン、
2~4% para-シメン、
4~8% フェランドレン、
1~4% チモール、及び
2~4% バニリン
を含んでなる組成物に関する。
[0011] 本発明は、別の1つの形態では、重量パーセントで:
1~2% δ-3-カレン、
12~20% オシメン、
50~60% α-ファルネセン、
2~5% リナロール、
5~10% サリチル酸メチル、
1~2% α-ピネン、
2~6% サビネン、及び
3~7% オポパナクス油
を含んでなる組成物に関する。
【0007】
[0012] 本発明は、別の1つの形態では、重量パーセント基準で:
2~4% α-ピネン、
2~4% ボルネオール、
8~10% ゲラニオール、
28~35% リナロール、
25~38% 酢酸リナリル、
1~4% サリチル酸メチル、
2~4% ミルセン、
2~4% para-シメン、
4~8% フェランドレン、
1~4% チモール、及び
2~4% バニリン
を含んでなる組成物を用いる防虫方法に関する。
[0013] なお別の1つの形態では、防虫方法は、重量パーセント基準で:
1~2% δ-3-カレン、
12~20% オシメン、
50~60% α-ファルネセン、
2~5% リナロール、
5~10% サリチル酸メチル、
1~2% α-ピネン、
2~6% サビネン、及び
3~7% オポパナクス油
を含んでなる組成物を配備することを含む。
【0008】
[0014] 本組成物は、固体として、液体として、例えばオイル又はローションなどとして製剤化することができる。本組成物は、個体(ヒト又は動物)に、該組成物を局所的に適用すること、個体に対して又は昆虫を遠ざけたい環境中に該組成物をスプレーすること、該組成物を燃焼させることなどによって配備することができる。
[0015] 本発明の組成物及び方法の利点としては、従来の組成物より有効な昆虫忌避剤(蚊忌避剤を含む)であることや、他の従来の昆虫忌避剤(DEETを含むがこれに限定されない)より安全で負の影響が少ないことが挙げられるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
[0016] 本発明の組成物は、蚊を含む昆虫の忌避剤(防虫剤)として機能する。本発明が作用する機序は、当該組成物中の具体的構成成分に応じて変化する。本組成物は、昆虫の嗅覚ニューロンに作用する香料のような構成成分を含む。本発明の組成物中の他の構成成分は、昆虫の他の感覚に影響する。
[0017] 1つの好ましい製剤において、本発明の組成物は、忌避因子に焦点を当てて、昆虫を遠ざけたいヒト、動物又は他の生物(植物を含む)に対する毒性起因する制限を回避する優れた昆虫忌避剤を達成する。
[0018] 本発明の組成物の種々の製剤が昆虫、特に蚊にどのように影響するかに具体的に言及すると、蚊の各嗅覚ニューロンは、臭気物質分子中の特定の構造的特徴又はエピトープを認識する1つの嗅覚レセプターを発現する。同じレセプターを発現するニューロンの軸索は、1つの糸球体に収束する。したがって、所与の臭気物質は、対応する糸球体を活性化する嗅覚レセプターOr83b、Or47a、Or4、Or103及びcpAが認識する構造的特徴を有し得る。別の臭気物質は異なるエピトープを有し得、別のレセプターを活性化し得る。第3のタイプの臭気物質は、完全に異なるエピトープを有し、同時に幾つかのレセプターを活性化し得る。したがって、嗅覚レセプター及び対応する糸球体は、幾つかの異なる臭気物質によって活性化され得るが、各臭気物質は糸球体活性化の独自パターンを誘発する可能性が高い。このパターンは、蚊が捕食対象(獲物)を見つけ出すために利用する臭気物質特異的神経パターンを構成する。
【0010】
[0019] 本発明の組成物の1つの観点は、これら嗅覚レセプターを特異的又は普遍的に阻害して、昆虫(例えば、蚊)をヒト獲物に対して効果的に「盲目化」する特定の成分又は構成成分に焦点を当てる。この戦略により、単一レセプターのみに影響するDEET、IR3535又はピカリジンより優れた昆虫忌避剤を製造するに十分な本発明の組成物の製剤に含ませるための特定の構成成分及びそれぞれの濃度を選択することが可能になる。
[0020] シトロネラ、ローズマリー及びユーカリなどの香油は、何千年もの間、昆虫を遠ざけるために使用されてきた。これら香油は、花及び果物が産生するVOC(揮発性有機化合物)を含む。これらオイルは、それぞれの供給源から抽出物として集められ、技術的にはアコード(調和香;accord)として説明される。アコードは、特定の香りを作るために一纏めにされた一組の化学物質である。これらアコードは、調香師が特定の香料を作るために複製し得、トップノート、ミドルノート及びベースノートで構成される。これら成分の揮発性はトップノートで最も高く、ミドルノートで幾らか揮発性であり、ベースノートで最も低い。
[0021] シトロネラの場合、多くの植物源に見出され、その防虫活性が知られるオイルは、幾つかのオイル混合物で構成されると決定された。香料を構成するアコードは、忌避因子を有するサブオイルと、忌避因子でない他のサブオイルで構成されていることが見い出された。
【0011】
[0022] 例えば、シトロネラは、18~20%のゲラニオール、リモネン9~11%、メチルイソオイゲノール7~11%、シトロネロール6~8%、シトロネラール5~15%から構成される。興味深いことに、ゲラニオール、リモネン及びシトロネラオイルのみが蚊忌避特性を有する一方、アコード中の残るオイルは防御又は誘引剤などの他の目的のためであると指摘できる。
[0023] このことは、60~80%のシネオールオイルを含み、残る40~20%が微量オイルであるユーカリオイルについても同じである。残りの微量オイルは、α-ピネン9%、β-ピネン1.5%、α-フェランドレン1.5%、δ-リモネン12%、1.8-シネオール70%、カンファー0.1%及びサビネン0.3%である。
[0024] 行われた研究により、ほとんどの昆虫(例えば、蚊)忌避オイルに調合された香料は一部のみが昆虫忌避を担い、香油の残りは、受粉のための昆虫誘引剤として利用されるか又は近傍の類似種植物に健康特性(例えば防御フェロモン)を伝達するように作用することが示されている。
[0025] 例えば、通常のトマト植物の芳香は好例である。葉の細胞構造は、球状部分に結晶及びオイルを含む腺毛状突起で構成される。この構造は、植物防御を含む幾つかの生物学的機能を担うオイルを含有する。トマト葉の化学成分は、トマチン、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-2-ヘキセナール、オイゲノール、1,8-シネオール、カリオフィレン、b-フェランドレン、フムレン、リナロールである。トマトの各化学物質は、特定の機能又は相乗機能のいずれかを有する。トマト香料と同様、研究により、トマチンは、攻撃してくるカタツムリ、細菌又は真菌のバイオフィルムの形成防止に用いられる抗膜防御化学物質であるとされた。(Z)-ヘキセナールは、侵入してくる細菌及び真菌のJAシグナル伝達の阻害による抗菌能力を有するので、創傷治癒に関与する。(E)-2-ヘキセナールは、(Z)-3-ヘキセナールと類似するが、有益な捕食性昆虫の誘引物質として作用する。化学物質b-フェランドレンは、青虫捕食性ダニを創傷部位に誘引することが知られる化学誘引物質である。このことから、化学物質オイゲノール、1,8-シネオール、カリオフィレン、フムレン及びリナロールが、トマト香料アコード中で昆虫忌避を担う化学物質として残る。
【0012】
[0026] 既知の蚊忌避特性を有する植物の天然抽出物の使用に伴う別の重要な欠点は、アコードを構成する化学構成成分の一部が実際には蚊の化学誘引物質であることである。このことは、周知の蚊忌避性抽出物である、セドロール、イソロンギホレン及びデヒドロネオリンギホレンを含むセダーオイルの化学アコードにおいて明確に理解できる。蚊媒介性疾患の複製サイクルが人類に対する最大の生物学的脅威の1つであることはよく認識されている。ヒトに感染する全てのウイルスは、独特であるが類似するサイクルを共有する。好例は、マラリア感染サイクルである。このサイクルは、マラリアに感染した蚊が刺咬してヒト宿主を感染させることから始まる。その後、ヒト宿主中でマラリア原虫が増殖し、次の蚊が当該宿主を刺咬するのを待つ。次いで、原虫は当該宿主から蚊に移動し、同様に蚊が感染する。このサイクルは、マラリア原虫が2つの宿主、ヒト宿主と蚊宿主との間を移動することで繰り返される。マラリア原虫が、蚊に、自身のところに来て取り込むように伝える化学信号を発するように進化してきたことの議論は重要である。ヒト宿主内で成熟に近づくにつれ、原虫は、蚊を感染ヒト宿主に引き付ける化学シグネチャを発し始める。これら同じ化学シグネチャの多くは、蚊を遠ざけるために用いられる一般的な植物抽出物中に見出される。
【0013】
[0027] 本発明の組成物の別の観点によれば、本組成物は、ヒト又は動物の体臭を検出するタンパク質レセプターを阻害することにより、該組成物が適用された個体を昆虫(蚊その他の刺咬昆虫などであるがこれらに限定されない)に「見えなくする」ように製剤化することができる。これら特殊なレセプターは、ヒトが発する体臭の特定タンパク質を検出する。臭気物質はスルカトン及び乳酸である。蚊のアンテナは、ヒト獲物の位置決定に特異的なヒト体臭スクラトン及び乳酸を検出する特殊なレセプター(AaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103)を有する。これらレセプターは全て、これらヒト特有臭気物質を検出するために、P450アイソザイムの機能を必要とする。鍵の化学物質を、AaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103レセプターの機能を十分に阻害する忌避剤に組み込むことは独特な戦略である。P450アイソザイム阻害を介してこれら重要なレセプターの不活化に成功すれば、蚊はヒト宿主の存在が見えなくなる。したがって、本発明の組成物の幾つかの製剤は、天然レセプターP450アイソザイムの不活化による蚊のスクラトン及び乳酸レセプターを盲目化させるための蚊忌避製剤として、チモール、ミルセン、ボルネオール、バニリン、ウルソール酸、ピネン及びフェランドレンを含む。
【実施例】
【0014】
[0028] 実施例
[0029] 以下は、本発明の組成物の製剤例及び使用例である。
[0030] 実施例1-バラ
[0031] バラの花(Rosa damscena又はRosa centifolia)は、この主要な例である。バラの香料アコード全体は28成分で構成される。それらは、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、フェニルエチルアルコール、ファルネソール、ステアロプテン、a-ピネン、b-ピネン、a-テルピネン、リモネン、p-シメン、カンフェン、b-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、オイゲノール、メチルオイゲノール、ローズオキシド、a-ダマセノン、b-ダマセノン、ベンジルアルデヒド、ベンジルアルコール、酢酸ロジニル、ギ酸フェニルエチル、β-イオノン、テトラヒドロフランである。
[0032] 上記アコードのうち、11の芳香成分のみが蚊忌避特性を有する。これらは、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ファルネソール、a-ピネン、b-ピネン、リモネン、p-シメン、カンフェン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニルである。残る17成分:ネロール、フェニルエチルアルコール、ステアロプテン、a-テルピネン、b-カリオフィレン、酢酸ネリル、オイゲノール、メチルオイゲノール、ローズオキシド、a-ダマセノン、b-ダマセノン、ベンジルアルデヒド、ベンジルアルコール、酢酸ロジニル、ギ酸フェニルエチル、β-イオノン及びテトラヒドロフランは忌避特性を有さず、特定の昆虫種のための複合誘引物質として利用される。
[0033] 更に、上記11の化学分離物は、蚊ORN(臭覚ニューロン)の阻害にも非常に有効であること、及び忌避剤製剤化中での有効使用のための濃度は、蚊cpA二酸化炭素レセプターとの直接相互作用に依存することを指摘することが重要である。
【0015】
[0034] 実施例2-ゼラニウム
[0035] 別の例は、蚊忌避のためのゼラニウム香料(pelargonium spp.)の十分に報告された使用である。ゼラニウム香料アコードは73成分で構成される。これらは、ヘキサノール、a-ピネン、ミルセン、p-シメン、リモネン、y-テルピネン、cis-リナロールオキシド、trans-リナロールオキシド、trans-ローズオキシド、ネオ-イソプレゴール、メントン、a-テルピネオール、シトロネロール、ネラール、ゲラニオール、ギ酸ネリル、シトロネル酸、ゲラン酸メチル、8-ヒドロキシネオメントール、a-クベン、b-ブルボネン、b-エレメン、イソ酪酸-1-フェニルエチル、カリオフィレン、a-グルジュネン、(E)カリオフィレン、b-コパエン、アロマデンドレン、プロピオン酸シトロネリル、cis-ムウロラ-3,5、ジエン、a-フムレン、allo-アロマデンドレン、cis-ムウロラ-4(14),5-ジエン、プロパン酸ゲラニル、a-アモルフェン、イソ酪酸シトロネリル、cis-b-グアイエン、a-ムウロレン、ラバンデュリル 2-メチルブタン酸、y-カジネン、trans-カラメネン、ブタン酸シトロネリル、a-カラコレン、ブタン酸ゲラニル、マアリオール、シトロネリル 2-メチルブタン酸、スパツレノール、カリフィレンオキシド、2-フェニルエチルオキシド、2-フェニルエチル チグレート、ビリジフロロール、ゲラニル 2-メチルブタン酸、フムレンエポキシドII、1,10-ジ-エピ-クベノール、ジュネノール、シトロネリル ペンタン酸、1-エピ-クベノール、カリオフィラ-4(12),8(13)-ジエン-5-オール、ムウロロール、a-ムウロロール、a-カジノール、吉草酸ゲラニル、(E)シトロネリル チグレート、14,ヒドロキシル-9-エピ-(E)-カリオフィレン、カダレン、ゲラニルチグレート、ゲラニルエステル、ゲラニルヘプタノエート、シトロネリル オクタノエート、シトロネリル エステル、ノナコサンである。
【0016】
[0036] しかし、これら73成分のうち、42成分のみが蚊忌避活性の可能性を有する。これらは、a-ピネン、ミルセン、リモネン、y-テルピネン、cis-リナロールオキシド、リナロール、メトン、a-テルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ゲラニルホルメート、シトロネル酸、カリオフィレン、プロピオン酸シトロネリル、a-フムレン、プロパン酸ゲラニル、イソ酪酸シトロネリル、y-カジネン、シトロネリルブタン酸、マアリオール、シトロネリル 2-メチルブタン酸、スパツレノール、カリフィレン オキシド、ゲラニル 2-メチルブタン酸、フムレン エポキシドII、吉草酸シトロネリル、カリオフィラ-4(12),8(13)-ジエン-5-オール、ムウロロール、吉草酸ゲラニル、(E)シトロネリル チグレート、14-ヒドロキシ-9-エピ-(E)-カリオフィレン、カダレン、ゲラニルチグレート、ゲラニルエステル、ゲラニルヘプタノエート、シトロネリル オクタノエート、シトロネリル エステルである。
[0037] 上記42化合物を更に6つの主要な化学クラスにまとめ得ることの証明が更に重要である。これらは、10のシトロネリル化合物、2つのフムレン化合物、8つのゲラニル化合物、8つのイソプレノイド、4つのカリオフィレン化合物及び4つのメチル/メンチル化合物である。これは、シトロネリルクラス(シトロネロール、シトロネル酸、プロピオン酸シトロネリル、シトロネリル イソブチラート、シトロネリル ブタン酸、シトロネリル、シトロネリル ペンタノエート、(E)シトロネリル チグレート、シトロネリル オクタノエート、シトロネリル エステル)として明確に証明することができる。これは、ゲラニルクラス(ゲラニオール、ゲラニルホルメート、ゲラニルプロパノエート、ゲラニル 2-メチルブタン酸、吉草酸ゲラニル、ゲラニルチグレート、ゲラニルエステル、ゲラニルヘプタノエート)において更に証明される。化学的保存の更なる証拠は、イソプレノイドクラス(a-ピネン、ミルセン、リモネン、y-テルピネン、cis-リナロールオキシド、リナロール、a-テルピネオール、y-カジネン)に見い出すことができる。
【0017】
[0038] 実施例3-レモングラス
[0039] 例えば、レモングラスは、事実、蚊忌避特性を有し、そのアコード中に16の化学物質を含有する:2-シトラール、ボルネオール、エストラゴール、メチル オイゲノール、酢酸ゲラニル、ゲラニオール、β-ミルセン、リモネン、ピペリトン、シトロネラ、カレン-2、a-テルピネオール、ピネン、ファルネソール、プロキシマジオール(proximadiol)、レモングラスジアセチル(cymbodiacetyl)。これら16のうち、10の化学物質のみが幾らかの蚊忌避特性を有し、この10のうち7つの化学物質のみが2時間にわたって効力を示す。これらは、ボルネオール、酢酸ゲラニル、ゲラニオール、β-ミルセン、シトロネラ、ピネン及びファルネソールである。
【0018】
[0040] 実施例4-シダーオイル
[0041] 蚊忌避特性を有すると考えられる植物の抽出物を使用することの別の不完全性は、シダーオイルに容易に見出すことができる。シダーオイルは、アコード全体に45の特定のオイルを含有し、そのうち39の化学物質が蚊忌避特性又は防虫特性を有する。シダーオイルの完全なアコードは、a-ピネン、a-ツジェン、カンフェン、b-ピネン、サビネン、ミルセン、a-テルピネン、リモネン、b-フェランドレン、y-テルピネン、p-シメン、テルピノレン、イソロンギホレン、b-クベベン、リナロール、a-ロンギピネン、a-セドレン、a-バルバテン、b-セドレン、テルピネン-4-オール、b-フネブレン、cis-p-メント-2-エン-1-オール、ツヨブセン、allo-アロマデンドレン、b-バルバテン、trans-ピペリトール、セレナ-4,11-ジエン、b-チャミグレン、a-テルピネオール、シュードウィドレン(pseudowiddrene)、ビシクロゲルマクレン、a-クプレン(cuprene)、ツヨプサジエン、カジネン、ar-クルクメン、クパレン、デヒドロ-b-オイノン(dehydro-b-oinone)、8,9-デヒドロネオロンギホレン、a-セドロール、ウィドロール、3-ツヨプサノン、a-カジノール、a-セドレナール、a-ビサボロール、ツヨプセナール(thujopsenal)、マユロン(mayurone)である。
【0019】
[0042] シダーオイルのアコード全体のうち、37種のみが有効性が異なる蚊忌避特性を有する。これらは、a-ピネン、a-ツジェン、カンフェン、b-ピネン、サビネン、ミルセン、a-テルピネン、リモネン、b-フェランドレン、y-テルピネン、p-シメン、テルピノレン、b-クベベン、リナロール、a-セドレン、b-セドレン、テルピネン-4-オール、b-フネブレン、cis-p-メント-2-エン-1-オール、ツヨブセン、allo-アロマデンドレン、b-バルバテン、trans-ピペリトール、a-テルピネオール、ビシクロゲルマクレン、ツヨプサジエン、カジネン、ar-クルクメン、クパレン、ウィドロール、3-ツヨプサノン、a-カジノール、a-セドレナール、ツヨプセナールである。
[0043] シダーオイルアコードの残る化学構成成分は、蚊を遠ざけないが、抗真菌、創傷修復(would, repel)、ストレス解消シグナル伝達及び昆虫誘引などの他の役割を果たす。これらは、a-ロンギピネン、a-バルバテン、セレナ-4,11-ジエン、b-チャミグレン、a-クプレン、b-クプレン、デヒドロ-b-オイノン、マユロン及びa-セドラール(cedral)、8,9-デヒドロネオロンギホレン、イソロンギホレンである。
[0044] シダーオイル成分a-セドロール、8,9-デヒドロネオロンギホレン及びイソロンギホレンは、実際、マラリアのリスクを増大させる蚊化学誘引剤であることを指摘しておく。
【0020】
[0045] 実施例5
[0046] 製剤1-製剤1の組成物は、重量パーセンテージ基準で、次のものを有する:
1. α-ピネン 4.00重量%
2. ボルネオール 4.00重量%
3. ゲラニオール60 8.00重量%
4. リナロール 28.00重量%
5. 酢酸リナリル 28.00重量%
6. サリチル酸メチル 4.00重量%
7. ミルセン 4.00重量%
8. para-シメン 4.00重量%
9. フェランドレン 8.00重量%
10. チモール 4.00重量%
11. バニリン 4.00重量%
【0021】
[0047] 実施例6
[0048] 製剤2-製剤2の組成物は、重量パーセンテージ基準で、次のものを有する:
1. α-ピネン 4.00重量%
2. ボルネオール 4.00重量%
3. ゲラニオール 10.00重量%
4. リナロール 30.00重量%
5. 酢酸リナリル 25.00重量%
6. サリチル酸メチル 3.00重量%
7. ミルセン 4.00重量%
8. para-シメン 4.00重量%
9. フェランドレン 8.00重量%
10. チモール 4.00重量%
11. バニリン 4.00重量%
【0022】
[0049] 実施例7
[0050] 製剤3-製剤3の組成物は、重量パーセンテージ基準で、次のものを有する:
1. α-ピネン 2.00重量%
2. ボルネオール 2.00重量%
3. ゲラニオール 10.00重量%
4. リナロール 35.00重量%
5. 酢酸リナリル 38.00重量%
6. サリチル酸メチル 1.00重量%
7. ミルセン 2.00重量%
8. para-シメン 2.00重量%
9. フェランドレン 5.00重量%
10. チモール 1.00重量%
11. バニリン 2.00重量%
【0023】
[0051] 実施例8
[0052] 製剤4-製剤4の組成物は、重量パーセンテージ基準で、次のものを有する:
1. δ-3-カレン 0.78重量%
2. オシメン 15.29重量%
3. α-ファルネセン 58.07重量%
4. リナロール 4.15重量%
5. サリチル酸メチル 9.95重量%
6. α-ピネン 0.83重量%
7. サビネン 4.62重量%
8. オポパナクス油 6.31重量%
【0024】
[0053] 実験
[0054] 以下の実験を行った:
[0055] 表1(下記)は、着地及び探索(摂食行動)の両方を阻害する製剤の昆虫忌避性を示す。
【表1】
【0025】
[0056] 表2(下記)は、着地及び探索(摂食行動)の両方を阻害する製剤の算出忌避率を示す。
【表2】
【0026】
[0057] 種々の製剤中の本発明の組成物は、先行技術の昆虫忌避剤には見られない特徴及び利点を提供することが明らかになる。本発明の組成物は、ヒト及び動物に安全でありながら、強力な防虫特性を有するように製剤化することができる。
[0058] 更に、本組成物は、その構成成分に基づく優れた蚊忌避特性を有するように製剤化することができる。ここで、該構成成分は、複数の捕食性昆虫(限定されないが、例えば、蚊、シラミ、マダニ、ノミ、ハエ、トコジラミ及びダニ)忌避戦略をもたらす活性抽出物の選択により作成される香料を含む。
[0059] 更に、本発明の組成物は、遠ざけたい昆虫及び昆虫(刺咬昆虫を含む)から保護したい哺乳動物(ヒト及び動物を含む)に基づいて、特定の構成成分を、所望の昆虫忌避特性を達成する所望の量で選択することによって最適化することができる。
[0060] 本発明の組成物は、既知の植物の複数の香料の組合せを含む特定の抽出物を含むように製剤化することができる。ここで、該香料は、チモール、ミルセン、ボルネオール、リナロール、バニリン、p-シメン、カリカルペナール(callicarpenol)、7-a-b-ネペタラクトン(nepatalactone)、ゲラニオール、酢酸リナリル、ウルソール酸、a-ピネン、3-カレン、サビネン、b-オシメン、サリチル酸メチル、ベルガモテン(bergemotene)、a-フェランドレン、a-ファルネセン、ピルビン酸エチル及びゲルマセン(germacene)を含むがこれらに限定されない。
【0027】
[0061] 当業者は、シトロネラール、リモネン、カンフェン、酢酸ゲラニル、y-テルピネン、メントン、テルピネオール、ゲラニルホルメート、シトロネル酸、ヒドロキシネオメントール、カリオフィレン、プロピオン酸シトロネリル、フムレン、プロパン酸ゲラニル、イソ酪酸シトロネリル、y-カジネン、シトロネリルブタン酸、ゲラニルブタン酸、マアリオール、シトロネリル 2-メチルブタン酸、フムレンエポキシドII、吉草酸シトロネリル、カリオフィラ-4(12),8(13)-ジエン-5-オール、ムロロール、吉草酸ゲラニル、(E)シトロネリル チグレート、ゲラニルエステル、ゲラニルヘプタノエート、シトロネリル オクタノエート、シトロネリル エステル、ツジェン、クベベン、テルピネン、テルピノレン、ロンギピネン、セドレン、テルピネン-4-オール、フネブレン、cis-p-メント-2-エン-1-オール、ツヨブセン、allo-アロマデンドレン、ピペリトール、ビシクロゲルマクレン、ツヨプサジエン、カジネン、ar-クルクメン、クパレン、ar-クルクメン、デヒドロネオロンギホレン、ウィドロール、カジノール、セドレナール、ビサボロール、ツヨプセナールを含むが、これらに限定されない誘導体の使用を含む種々の改変を本発明の組成物に行い得ることを理解する。
[0062] 本発明の組成物の製剤に望ましい構成成分の選択は、鍵となる昆虫レセプター(蚊忌避のための蚊レセプターを含む)の阻害に基づく。これは、二酸化炭素レセプター、体臭レセプター、DEET様レセプター又はドーパミンレセプターの阻害により相乗的に達成され得る。これらレセプターにおけるシナプスの活動電位発火を進行性に阻害することにより、昆虫はヒト標的を望ましくないものと判定して摂食を忌避するようになる。
【0028】
[0063] 更に、本組成物は、蚊その他の昆虫によって捕食対象を選択するために利用される鍵のレセプターの超刺激に関係する香料を含む特定の単離物を特別に選択することによって、ヒトに適用したとき、ヒトが昆虫(例えば蚊)に「不可視」であるか又は魅力的でないように改変することができる。
[0064] 本発明の組成物の種々の形態において、構成要素は相乗的に作用して、蚊などの昆虫の既知のDEETレセプターに影響する。例えば、2つの特異的DEETレセプターOr83B及びOr47aが存在する。企図される製剤は、これら特異的レセプターにそれぞれ影響することが知られるオイゲノール及びリナロールを含む。
[0065] 加えて、本発明の組成物は、蚊の摂食行動をモジュレートする鍵の化学シグネチャを阻害するように製剤化することができる。そうすることで、蚊が媒介するマラリアの感染率の低減又は抑制がもたらされる。マラリア原虫は、感染個体に、蚊を誘引する化学誘引物質(ピネン及びリモネン)を「ガス放出」させることが知られている。本発明の目的は、これら化学物質を検出する蚊感覚レセプターを過剰刺激することにより、α-ピネン若しくはリモネン又はその両方を化学的「盲目化因子」として利用することである。これら鍵のレセプターの過剰刺激は、捕食性蚊の回避行動を誘発する。
【0029】
[0066] 加えて、本組成物は、動物及びヒト宿主から排出される二酸化炭素の感知に関して、昆虫を「盲目」とする特定の化学構成成分と共に製剤化することができる。このレセプターは、特に、cpAレセプター感覚クラスターを含むgr1、gr2及びgr3「味覚」レセプターである。本製剤は、味覚阻害剤として、ピルビン酸エチル、7-a-β-ネパタラクトン、サリチル酸メチルを、単独又は組合せで含有することが企図される。
[0067] 本組成物はまた、昆虫レセプターAaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103を、該レセプター中に見出されるP450アイソザイムの不活化又は阻害して「盲目化」する特定の化学単離物を含有するように製剤化することができる。タンパク質特異的レセプターの不活化は、ヒト標的が産生するスクラトン臭及び乳酸臭の存在に対して蚊を盲目とする。これら企図される単離物は、チモール、ミルセン、ボルネオール、バニリン、ウルソル酸、ピネン及びフェランドレンであり、これらは、該レセプターの天然ニューロンP450アイソザイムの直接的及び受動的阻害により蚊のスクラトン及び乳酸特異的タンパク質レセプターを能動的に不活化する。
[0068] 或いは、本発明の組成物は、マラリア(P. falciparum)スポロゾイトに対して毒性である植物抽出物の局所製剤を作製することによりマラリア感染を予防するように製剤化することができる。植物抽出物の特定の化学成分は、マラリアのスポロゾイト及びプラスモジウムに対して毒性であることが企図される。更に、宿主への刺入開始時に蚊口吻がこれら植物抽出物と接触するので、マラリア感染の直接低減が達成され得ると企図される。
【0030】
[0069] 更に別の代替形態では、本発明の組成物は、蚊がDEETの嫌悪誘発特性を回避するように学習行動を発達させることを阻害する化学物質を含むように製剤化することができる。蚊は、DEET効力を回避、低下させる行動を学習できることが証明されている。この学習行動は、DEETの有効性を低下させる重要な要因の1つとして十分に特定されている。本発明の目的は、蚊忌避製剤が、耐性学習によるDEETの効力喪失を阻害する手段としてモノテルペンを含むことである。これには、ミルセン、リモネン、シメン、ピネン、オシメン、ゲルマクレン、カレン、ファルネセン及びベルガモテンが含まれる。
[0070] 本発明の組成物は、洗濯洗剤、化粧品、シャンプー、石鹸、布地柔軟剤、キャンドルワックス、ティキトーチ及び屋外エアーディフューザーに配合することができる。特定の用途に応じて、製剤は防虫効果を提供する。
[0071] 更に、本発明の組成物中の構成成分の改変は、得られる組成物の香料シグネチャ全体を変更する効果を有し、ルーチンの実験及び最適化を通じて、所望の昆虫又は特定の適用若しくは使用のための忌避剤として機能する昆虫忌避剤をもたらす。
[0072] 最後に、本発明の組成物は、当該組成物に含まれる構成成分の組合せであって、所望の香料ノートを作る組合せによって改変することができる。改変され得る構成成分は、本願組成物の活性成分であり、これには、チモール、ミルセン、ボルネオール、リナロール、バニリン、p-シメン、カリカルペナール、7-a-b-ネペタラクトン、ゲラニオール、酢酸リナリル、ウルソール酸、a-ピネン、3-カレン、サビネン、b-オシメン、サリチル酸メチル、ベルガモテン、a-フェランドレン、a-ファルネセン、ピルビン酸エチル及びゲルマセンが含まれるが、これらに限定されない。