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特許7438230予測モデルを用いたモデルパラメータの判定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】予測モデルを用いたモデルパラメータの判定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240216BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240216BHJP
   G01R 33/56 20060101ALI20240216BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240216BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240216BHJP
   G06N 3/08 20230101ALI20240216BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
A61B5/055 376
G01N24/00 530Y
G01N24/00 530G
G01R33/56
G01N23/04
G01N21/27 A
A61B5/055 380
A61B5/055 370
G06N3/08
G06N20/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021547808
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020018039
(87)【国際公開番号】W WO2020168035
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】16/277,939
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521359678
【氏名又は名称】キュー バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】カディッツ,ジェフェリー,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ビレーナ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ポリメリディス,アタナシオス
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0285122(US,A1)
【文献】Ananya Panda et al.,Magnetic Resonance Fingerprinting-An Overview,Curr Opin Biomed Eng.,2017年,3,56-66
【文献】Gopal Nataraj et al.,Dictionary-Free MRI PERK: Parameter Estimation via Regression with Kernels,IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,2018年,VOL.37, NO.9,2103-2114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/56
G01N 23/04
G01N 21/27
G06N 3/08
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法であって、
前記サンプルにソースを使用して励起を適用する動作であって、前記励起は、少なくとも波長および強度または磁束を有し、前記励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、または電界のうちの1つを含む、適用する動作と、
測定デバイスを使用して、前記励起に対する前記サンプルと関連付けられた応答を測定する動作と、
前記測定された応答と、前記励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報とを使用して、前記サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとに前記モデルパラメータを算出する動作であって、前記フォワードモデルは、前記励起、前記波長および前記強度または前記磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、前記サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし、
前記予測モデルは、前記測定された応答と前記情報の関数であり、前記フォワードモデルで使用するための前記ボクセルの前記モデルパラメータを提供し、
前記フォワードモデルは、前記励起、前記複数のボクセルの前記モデルパラメータ、および前記応答物理に近似する微分方程式または現象論方程式の関数であり、推定された応答を提供する、算出する動作と、
コンピュータを使用して、少なくとも前記測定された応答と、前記フォワードモデル、前記モデルパラメータ、および前記励起を使用して計算された前記応答の予測値とを比較することによって、前記モデルパラメータの精度を判定する動作と、
前記精度が事前定義された値を超えたときに、前記モデルパラメータを、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、またはメモリへの出力として提供する動作と、を含
前記予測モデルは、フォワードモデル、ある範囲のモデルパラメータ、およびある範囲の励起を使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して少なくとも部分的に訓練され、
前記事前定義された値を超える精度を有する前記モデルパラメータは、前記フォワードモデルの予測値と前記サンプルの測定された応答との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記モデルパラメータが、前記所定の予測モデルなしで反復的に計算される反復測定および分析技術よりも、前記所定の予測モデルを用いたより少ない反復を使用して計算される、方法。
【請求項2】
前記所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の予測モデルは、個体に対応する個人化された予測モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記精度が前記事前定義された値を超えたときに、前記モデルパラメータは、さらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精度が前記事前定義された値未満であるときに、前記方法は、
第2の所定の予測モデルへの入力として前記励起および前記精度を規定する情報を使用して、少なくとも訂正された波長、訂正された強度、または訂正された磁束を有する、訂正された励起を計算することと、
前記励起の代わりに前記訂正された励起を用いて、前記適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返すことと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記精度が前記事前定義された値未満であるときに、前記方法は、
前記励起および前記測定された応答を訓練データセットに追加することと、
前記訓練データセットを使用して、前記予測モデルの訂正されたインスタンスを判定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記モデルパラメータおよび第2の予測モデルを使用して、前記サンプル内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記励起は、X線帯域の波長の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光帯域の波長の電磁ビーム、赤外線帯域の波長の電磁ビーム、超音波帯域の波長の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する前記電界、磁気共鳴機器に関連する前記高周波、または磁化率測定デバイスに関連する前記磁界のうちの1つである、請求項1に記載の方法
【請求項11】
前記測定された応答は、前記サンプルの時間領域応答を含み、かつ、画像以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータと組み合わせて使用するための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、プログラム命令を記憶するように構成され、前記プログラム命令は、前記コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに、
サンプルに、ソースを使用して励起を適用することであって、前記励起は、少なくとも波長および強度または磁束を有し、前記励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、または電界のうちの1つを含む、適用することと、
測定デバイスを使用して、前記励起に対する前記サンプルと関連付けられた応答を測定することと、
前記測定された応答と、前記励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報とを使用して、前記サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出することであって、前記フォワードモデルは、前記励起、前記波長および前記強度または前記磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、前記サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし、
前記予測モデルは、前記測定された応答と前記情報の関数であり、前記フォワードモデルで使用するための前記ボクセルの前記モデルパラメータを提供し、
前記フォワードモデルは、前記励起、前記複数のボクセルの前記モデルパラメータ、および前記応答物理に近似する微分方程式または現象論方程式の関数であり、推定された応答を提供する、算出することと、
前記コンピュータを使用して、少なくとも前記測定された応答と、前記フォワードモデル、前記モデルパラメータ、および前記励起を使用して計算された前記応答の予測値とを比較することによって、前記モデルパラメータの精度を判定することと、
前記精度が事前定義された値を超えたときに、前記モデルパラメータを、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、またはメモリへの出力として提供することと、を含む動作を行わせ、前記予測モデルは、フォワードモデル、ある範囲のモデルパラメータ、およびある範囲の励起を使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して少なくとも部分的に訓練され、
前記事前定義された値を超える精度を有する前記モデルパラメータは、前記フォワードモデルの予測値と前記サンプルの測定された応答との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記モデルパラメータが、前記所定の予測モデルなしで反復的に計算される反復測定および分析技術よりも、前記所定の予測モデルを用いたより少ない反復を使用して計算される、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項12に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記精度が前記事前定義された値を超えたときに、前記モデルパラメータは、さらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出される、請求項12に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記精度が前記事前定義された値未満であるときに、前記動作は、
第2の所定の予測モデルへの入力として前記励起および前記精度を規定する情報を使用して、少なくとも訂正された波長、訂正された強度、または訂正された磁束を有する、訂正された励起を計算することと、
前記励起の代わりに前記訂正された励起を用いて、前記適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返すことと、を含む、請求項12に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記第2の所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項15に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
モデルパラメータを判定するように構成されたシステムであって、
励起を提供するように構成されたソースであって、前記励起は、X線帯域の波長の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光帯域の波長の電磁ビーム、赤外線帯域の波長の電磁ビーム、超音波帯域の波長の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、磁気共鳴機器に関連する高周波、または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つを含む、ソースと、
測定を実行するように構成された測定デバイスであって、前記測定デバイスは、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、前記磁気共鳴機器、前記インピーダンス測定デバイス、または前記磁化率測定デバイスのうちの少なくとも1つを含む、測定デバイスと、
プログラム命令を実行するように構成されたプロセッサであって、前記プロセッサは前記ソース、前記測定デバイス、およびメモリに結合されている、プロセッサと、
前記プロセッサに結合され、かつ、プログラム命令を記憶するように構成された前記メモリと、を備え、前記プログラム命令は前記プロセッサによって実行されるときに、前記システムに、
サンプルに、前記ソースを使用して前記励起を適用することであって、前記励起は、少なくとも波長および強度または磁束を有し、前記励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、または電界のうちの1つを含む、適用することと、
測定デバイスを使用して前記励起に対する前記サンプルに関連する応答を測定することと、
前記測定された応答と、前記励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報とを使用して、前記サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとに前記モデルパラメータを算出することであって、前記フォワードモデルは、前記励起、前記波長および前記強度または前記磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、前記サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし、
前記予測モデルは、前記測定された応答と前記情報の関数であり、前記フォワードモデルで使用するための前記ボクセルの前記モデルパラメータを提供し、
前記フォワードモデルは、前記励起、前記複数のボクセルの前記モデルパラメータ、および前記応答物理に近似する微分方程式または現象論方程式の関数であり、推定された応答を提供する、算出することと、
前記プロセッサを使用して、少なくとも前記測定された応答と、前記フォワードモデル、前記モデルパラメータ、および前記励起を使用して計算された前記応答の予測値とを比較することによって、前記モデルパラメータの精度を判定することと、
前記精度が事前定義された値を超えたときに、前記モデルパラメータをユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、または前記メモリへの出力として提供することと、を含む動作を行わせ
前記予測モデルは、フォワードモデル、ある範囲のモデルパラメータ、およびある範囲の励起を使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して少なくとも部分的に訓練され、
前記事前定義された値を超える精度を有する前記モデルパラメータは、前記フォワードモデルの予測値と前記サンプルの測定された応答との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記モデルパラメータが、前記所定の予測モデルなしで反復的に計算される反復測定および分析技術よりも、前記所定の予測モデルを用いたより少ない反復を使用して計算される、システム。
【請求項18】
前記所定の予測モデルは、機械学習モデル、またはニューラルネットワークのうちの1つを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記所定の予測モデルは、個体に対応する個人化された予測モデルを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記精度が前記事前定義された値を超えるときは、前記モデルパラメータをさらなる反復を伴わない単一のパスにおいて計算される、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月15日に提出された通常の米国出願第16/277,939号に対して、35U.S.C.§120に基づく優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
記載された実施形態は、概して、励起に対するサンプルの応答物理をシミュレートするフォワードモデルで使用する、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定することに関する。
【0003】
関連技術
サンプルの1つ以上の物理パラメータを判定するために、多くの非侵襲的特性評価技術が利用可能である。例えば、磁気特性は、磁気共鳴、すなわちMR(多くの場合「核磁気共鳴」、すなわちNMRと称される)を使用して調べることができ、これは、磁界内の核が電磁放射を吸収して再放出する物理現象である。さらに、固体または剛性材料の密度変動および狭域または広域周期構造は、X線撮像、X線回折、コンピュータ断層撮影、中性子回折、または電子顕微鏡などの特性評価技術を使用して調べることができ、ここで、ド・ブローイ波長が短い電磁波またはエネルギー粒子は、サンプルによって吸収または散乱される。さらに、軟質材料または流体の密度変化および運動は、超音波撮像を使用して調べることができ、ここで、超音波はサンプル内を透過し、かつ、そのサンプル内で反射する。
【0004】
これら、および他の非侵襲的特性評価技術のそれぞれにおいて、1つ以上の(粒子の束もしくは入射放射線、静的もしくは時間変動するスカラー場、および/または静的もしくは時間変動するベクトル場などの)外部励起がサンプルに適用され、物理現象の形で、結果として生じるサンプルの応答は、直接的または間接的に1つ以上の物理パラメータを判定するために測定される。一例として、MRでは、磁性核スピンは印加された外部DC磁界において部分的に整列(または分極)され得る。これらの核スピンは、一種の核の磁気回転比と、外部磁界の大きさまたは強度との積によって与えられる角周波数(「ラーモア周波数」と称されることもある)で、その外部磁界の方向の周りで摂動または回転し得る。角周波数に対応するパルス幅を有する1つ以上の無線周波数(RF)パルス(および、より一般的には電磁パルス)などの分極された核スピンに、外部磁界の方向に直角または垂直に摂動を適用することによって、核スピンの分極は一時的に変化し得る。結果として生じる核スピンの(時間変動する全磁化など)動的応答から、サンプルと関連付けられた1つ以上の物理パラメータなどのサンプルの物理特性および材料特性に関する情報を得ることができる。
【0005】
さらに、一般的には、特性評価技術のそれぞれによって、1つ以上の物理パラメータをサンプル中の少量またはボクセルで判定することが可能となり、それらをテンソルを使用して表すことができる。一例として磁気共鳴撮像(MR)を使用すると、(陽子または同位体Hなどの)核スピンの摂動の角周波数の外部磁界の大きさへの依存性を使用して、異なる材料または種類の組織の3次元(3D)もしくは解剖学的構造、および/または化学組成の画像を判定できる。具体的には、サンプルに不均一または空間的に変化する磁界を印加することにより、典型的には、Hスピンの摂動の角周波数で生じた変化を用いて、Hスピンの測定された動的応答をボクセルに空間的に位置付け、これを患者の内部構造などの画像を生成するために使用することができる。
【0006】
しかしながら、多くの場合、サンプルの物理特性の特性評価には時間がかかり、複雑で、かつ費用がかる。例えば、MRIにおいて高空間分解能(つまり、小さなボクセルサイズ)でMR画像を取得するには、多くの場合、患者の様々な種類の組織内のHスピンの緩和時間よりも長い期間にわたって多数の測定(「走査」と称されることもある)を行うことが必要になる。さらに、高い空間分解能を達成するために、通常、MR中に大きな均一な外部磁界を使用する。この外部磁界は、通常、ボアが狭い環状の超伝導磁気を使用して生成され、多くの患者は閉塞感を感じ得る。さらに、フーリエ変換技術を使用して、RFパルスシーケンス、したがってMR走査時間の制約を犠牲にして、画像の再構成を容易にすることができる。
【0007】
長いMR走査時間と、(MRの場合は)マグネットボアの閉塞環境との組み合わせにより、ユーザ経験が悪化する可能性がある。さらに、MR走査時間が長くなるとスループットが低下し、それにより特性評価を実行するコストが増加する。この種の問題によって、多くの特性評価技術の使用が抑制または制限される可能性がある。
【0008】
これらの問題に対処するための1つのアプローチは、1つ以上の励起に対するサンプルの応答物理のシミュレーションを使用して、1つ以上の物理パラメータなどの情報を判定することである。例えば、ボクセルレベルのモデルパラメータと、物理現象を記述する1つ以上の微分方程式に基づくフォワードモデルを使用することにより、コンピュータは1つ以上の励起をフォワードモデルへの入力として規定する情報を用いて、フォワードモデルの出力としてのサンプルの応答物理をシミュレートすることができる。
【0009】
ただし、このアプローチは、多くの場合、MR走査の回数が多くMR走査時間が長いという問題を、ボクセルレベルでモデルパラメータを正確に判定することに関連する問題にすり替えている。例えば、モデルパラメータは通常、1つ以上の励起を反復して適用し、測定を実行し、シミュレーションされた応答物理の望ましい精度が達成されるまで、測定値を使用して対応するモデルパラメータを算出するという逆問題を解決することによって判定される(「反復アプローチ」と称されることもある)。一般に、これらの既存の技術を使用してモデルパラメータを判定することは困難で、時間と費用がかかる可能性があり、サンプルを特徴付けるための応答物理のシミュレーションの使用が抑制または制限されるおそれがある。
【発明の概要】
【0010】
サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するシステムについて説明する。このシステムには、励起を提供するように構成されたソースと、測定を行う測定デバイスと、プログラム命令を実行するプロセッサと、プログラム命令を記憶するメモリとを含む。システムは、動作中は、ソースを使用して励起をサンプルに適用し得、ここで、励起は少なくとも波長と強度または磁束を有し、励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、または電界のうちの1つを含む。次に、システムは測定デバイスを使用して、励起に対するサンプルと関連付けられた応答を測定し得る。さらに、システムは、測定された応答および励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報を使用して、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る。フォワードモデルは、励起、波長、および強度または磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし得る。さらに、フォワードモデルは、励起、複数のボクセルのモデルパラメータ、および応答物理に近似する微分方程式または現象論的方程式の関数であり得る。次に、システムはプロセッサを使用して、少なくとも測定された応答と、フォワードモデル、モデルパラメータ、および励起を使用した、応答の計算された予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度を判定し得る。さらに、精度が事前定義された値を超えるときは、システムは、モデルパラメータを、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリへの出力として提供し得る。
【0011】
例えば、励起は、X線帯域の波長の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光帯域の波長の電磁ビーム、赤外線帯域の波長の電磁ビーム、超音波帯域の波長の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、磁気共鳴機器に関連する高周波、および/または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0012】
さらに、測定デバイスは、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、磁気共鳴機器、インピーダンス測定デバイス、および/または磁化率測定デバイスのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0013】
所定の予測モデルは、機械学習モデル、および/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態では、所定の予測モデルは個体に対応する個人化された予測モデルを含む。
【0014】
さらに、精度が事前定義された値を超えるときは、モデルパラメータをさらなる反復を伴わない単一のパスにおいて計算し得る。結果として、事前定義された値を超える精度を有するモデルパラメータは、所定の予測モデルを使用しない反復アプローチよりも、所定の予測モデルでより少ない反復を用いて算出し得る。
【0015】
代替的に、精度が事前定義された値未満のときは、システムは、第2の所定の予測モデルへの入力として励起および精度を規定する情報を使用して、少なくとも訂正された波長および訂正された強度または訂正された磁束を有する訂正された励起を計算し、さらに、励起の代わりに訂正された励起を使用して、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る。第2の所定の予測モデルは、機械学習モデル、および/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。
【0016】
いくつかの実施形態では、精度が事前定義された値未満のときは、システムは、励起および測定された応答を訓練データセットに追加し、その訓練データセットを使用して予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。
【0017】
さらに、システムは、モデルパラメータおよび第3の予測モデルを使用して、サンプル内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化し得る。例えば、第3の所定の予測モデルは、機械学習モデル、および/またはニューラルネットワークを含み得る。
【0018】
さらに、システムは、フォワードモデル、ある範囲のモデルパラメータ、およびある範囲の励起を使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して、予測モデルを訓練し得る。
【0019】
さらに、測定された応答は、サンプルの時間領域応答を含み得、かつ、画像以外であり得る。
【0020】
別の実施形態は、システムと共に使用するためのコンピュータ可読記憶媒体を提供する。このコンピュータ可読記憶媒体はプログラムモジュールを含み、このプログラムモジュールはシステムによって実行されるときに、そのシステムに前述の動作の少なくとも一部を実行させる。
【0021】
別の実施形態は、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法を提供する。この方法は、システムによって実行される前述の動作の少なくとも一部を含む。
【0022】
この概要は、本明細書に記載の主題のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、いくつかの例示的な実施形態を説明する目的で提供される。したがって、上記の特徴は単なる例であり、本明細書に記載の主題の範囲または趣旨を決して狭めるように解釈されるべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の主題の他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明、図、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態によるシステムの一例を示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法の一例を示すフロー図である。
図3】本開示の一実施形態による、図1のシステム内の構成要素間の通信の一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態による機械学習モデルの一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態によるニューラルモデルの一例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態による、サンプル内の1つ以上の解剖学的構造の分類またはセグメト化の一例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態による電子デバイスの一例を示すブロック図である。
図8】本開示の一実施形態による、図7の電子デバイスが使用するデータ構造の一例を示す図である。
【0024】
同様の参照番号は図面全体で対応する部分を指すことに留意されたい。さらに、同一部品の複数のインスタンスは、ダッシュでインスタンス番号と区切られた共通の接頭語で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するシステムについて説明する。システムは、動作中にソースを使用してサンプルに励起を適用し得る。次に、システムは測定デバイスを使用して、励起に対するサンプルと関連付けられた応答を測定し得る。さらに、システムは、測定された応答および励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報を使用して、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る。フォワードモデルは、所与の励起に対するサンプル内で発生する応答物理をシミュレートし得る。さらに、フォワードモデルは、励起、複数のボクセルのモデルパラメータ、および応答物理に近似する微分方程式または現象論的方程式の関数であり得る。次に、システムは、プロセッサを使用して、少なくとも測定された応答と、フォワードモデル、モデルパラメータ、励起を使用した、応答の計算された予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度を判定し得る。さらに、精度が事前定義された値を超えるときは、システムはモデルパラメータを、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリへの出力として提供し得る。
【0026】
サンプル内のボクセルのモデルパラメータを判定することにより(ボクセル内のパラメータはベクトル場の真のテンソルではなくハイブリッドテンソルで表すことができるため、「テンソル場マッピング」、すなわちTFMと称されることもある)、この算出技術がモデルパラメータを判定する際の反復測定および適応の必要性を減少または排除し得る。その結果、この算出技術は、モデルパラメータを判定する際の(プロセッサ時間、メモリなどの)システムリソースの使用を著しく削減し得る。さらに、(精度が事前定義された値未満のときなど)精度が不十分な場合は、算出技術を使用して励起の修正を誘導し、モデルパラメータを所望の精度に迅速に収束するのを容易にし得る。さらに、ある範囲の励起値または強度について判定されたモデルパラメータに基づいて物理現象を予測するフォワードモデルを提供することにより、算出技術は、サンプルの迅速かつ正確な(サンプルの判定、または、サンプルの1つ以上の物理パラメータなどの)特性評価を容易に行い得る。したがって、算出技術を使用して、測定で使用される励起を動的に適合または修正することができ、かつ/または、改善されたサンプル特性評価を容易に行い得る。
【0027】
これらの機能により、MR走査または測定の時間が短縮され、スループットが向上し、それゆえ測定コストが削減され、(MRスキャナのマグネットボアの閉塞環境で人々が過ごす時間を削減するなどして)ユーザ体験が向上し、特性評価技術の使用が増加し得る。さらに、算出技術によって測定値の定量分析が容易になり、それにより精度が向上し、誤差が減少し、それゆえ人々の健康状態と福利が向上し得る。
【0028】
一般に、算出技術は、所与の励起に対するサンプル内で発生する応答物理を定量的にシミュレートする様々な特性評価技術およびフォワードモデルと組み合わせて使用し得る。例えば、特性評価技術は、(X線撮像、X線回折、コンピュータ断層撮影などの)X線測定、中性子測定(中性子回折)、(電子顕微鏡法、電子スピン共鳴などの)電子測定、(1つ以上の波長で複素屈折率を判定する光学撮像または光学分光法などの)光学的測定、(1つ以上の波長で複素屈折率を判定する赤外線撮像または赤外線分光法などの)赤外線測定、(超音波画像法などの)超音波測定、(陽子散乱などの)陽子測定、(MR、MR分光法、1種以上の核を用いるMRS、磁気共鳴スペクトル画像法、すなわちMRSI、MRエラストグラフィー、すなわちMRE、MRサーモメトリ、すなわちMRT、磁界緩和測定、拡散テンソル撮像および/または別のMR技術、例えば、機能的MRI、代謝撮像、分子撮像、血流撮像などの)MR測定もしくはMR技術、(DCおよび/またはAC周波数での電気インピーダンスなどの)インピーダンス測定、および/または、(DCおよび/またはAC周波数での磁化率などの)磁化率測定に関連し得る。したがって、励起には、X線帯域の波長(0.01~10nmなど)の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光学帯域の波長(300~800nmなど)の電磁ビーム、赤外線帯域の波長(700nm~1mmなど)の電磁ビーム、超音波帯域の波長(0.2~1.9mmなど)の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、MR装置またはスキャナに関連する高周波、および/または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つが含まれ得る。ただし、(陽電子放出分光法などの)別の非侵襲的特性評価技術、(陽子ビーム治療または陽子移植、放射線療法、磁気誘導ナノ粒子などの)統合療法、および/または、(10~400nmの紫外線波長などの)異なる範囲の波長を使用し得る。一般に、これらの励起の応答物理を記述するフォワードモデルがある限り、空間の領域を「励起」するために使用され得る様々な励起に算出技術を使用し得る。以下の考察では、MR技術を特性評価技術の実例として使用する。
【0029】
サンプルには、有機材料または無機材料が含まれている場合があることに留意されたい。例えば、サンプルには、無生物(すなわち、非生物学的)サンプル、生物学的生命体(人もしくは動物など、すなわち、生体サンプル)、または、動物もしくは人からの組織サンプル(すなわち、動物もしくは人の一部)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、組織サンプルを、動物または人から事前に採取した。したがって、(生検サンプルなどの)組織サンプルは病理学サンプルである場合があり、これは、ホルマリン固定パラフィンに埋め込まれている場合がある。以下の考察では、サンプルは人または個体であり、実例として使用される。
【0030】
ここで、システムの実施形態について説明する。図1は、システム100の例を示すブロック図を提示する。システム100では、ソース110がサンプル112に選択的に励起を提供し、測定デバイス114がサンプル112に対して選択的に測定を実行して、励起に対するサンプル112の応答を測定する。さらに、システム100はコンピュータ116を含む。図7を参照して以下でさらに説明するように、コンピュータ116は、処理サブシステム、メモリサブシステム、およびネットワーキングサブシステムなどのサブシステムを含み得る。例えば、処理サブシステムは、プログラム命令を実行するプロセッサを含んでく、メモリサブシステムは、プログラム命令を記憶するメモリを含み得、ネットワーキングサブシステムは、ソース110および測定デバイス114(1つ以上のセンサ)に命令またはコマンドを通信し、測定デバイス114から測定値を受信し、判定されたモデルパラメータを選択的に提供するインターフェースを含み得る。
【0031】
コンピュータ116内の通信エンジン(またはモジュール)120は、動作中に(1つ以上の有線および/もしくは無線リンクまたは相互接続などの)ネットワーク118を介してソース110に命令またはコマンドを提供し得、これによってソース110からサンプル112に励起を適用し得る。この励起は、少なくとも波長および強度または磁束を有し得る。例えば、励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、および/または電界を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、励起は、サンプル112内の1つ種以上の核を分極する外部磁界、磁界の任意の勾配、および/または無線周波数(RF)パルスシーケンスを含み得る(これらは「測定条件」または「走査命令」と称されることもある)。したがって、ソース110は、外部磁界を適用する磁石、任意の勾配を適用するオプションの勾配コイル、および/またはRFパルスシーケンスを適用するRFコイルを含み得る。
【0033】
次に、通信エンジン120は、ネットワーク118を介して、測定デバイス114に命令またはコマンドを提供し得、これにより、測定デバイス114は励起に対するサンプル112の少なくとも一部の応答の測定を実行し得る。さらに、測定デバイス114は、ネットワーク118を介して測定結果を通信エンジン120に提供し得る。測定デバイス114は、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、MR装置もしくはスキャナ、(MR装置またはスキャナのゲルで覆われたテーブルなどの)インピーダンス測定デバイス、および/または磁化率測定デバイスを含み得ることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、測定デバイス114は、1つ以上のRFピックアップコイルまたは(磁力計、超伝導量子干渉デバイス、オプトエレクトロニクスなどの)別の磁気センサを含み得、これらは、1種以上の核における核スピンの動的挙動に対応する時間変動または時間領域電気信号を測定するか、または、少なくともサンプル112の部分の核スピン(「磁気応答」と称されることもある)の総動的挙動に対応する磁化の少なくとも平均成分を測定する。例えば、測定デバイス114は、サンプル112がxy平面で摂動するときに、サンプル112の少なくとも一部の横方向磁化を測定し得る。
【0035】
測定デバイス114によって提供される測定値は、画像以外であり得るか、または、画像と異なり得ることに留意されたい。例えば、測定値はMR結果以外であり得る。例えば、測定値は、サンプル112内の核スピンの自由誘導減衰(の1つ以上の成分など)を含み得、または、それに対応し得る。その結果、いくつかの実施形態では、測定値は、測定された電気信号に対してフーリエ変換の実行を伴わなくてもよい(したがって、k空間で実行しなくてよく、MRフィンガープリントなどのk空間でのパターンマッチングを伴わなくてよい)。ただし、一般に、測定値は時間領域および/または周波数領域で規定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、(フィルタリング、画像処理などの)様々な信号処理、(離散フーリエ変換、Z変換、離散コサイン変換、データ圧縮などの)ノイズキャンセル、および変換技術が測定値に対して行われ得る。
【0036】
測定値を受信した後、コンピュータ116の分析エンジン(またはモジュール)122は、その測定値を分析し得る。この分析は、測定デバイス114に対するサンプル112の(おそらく時間変動する)3D位置を判定すること(「3D登録情報」と称されることもある)を伴い得る。例えば、位置合わせは、既知の空間位置に参照マーカーを使用するなどして、点集合登録を実行することを伴い得る。登録は、グローバルまたはローカル位置決めシステムを使用して、測定デバイス114に対するサンプル112の位置の変化を判定し得る。代替的に、または、さらに、登録は、ラーモア周波数の変動および所定の空間磁界の不均一性、またはソース110および/もしくは(MR装置またはスキャナなどの)測定デバイス112の磁界の変動に少なくとも部分的に基づき得る。いくつかの実施形態では、分析は、登録情報に少なくとも部分的に基づいてボクセルを所望のボクセル位置に位置合わせすること、ならびに/または、測定された信号を異なるボクセル位置にリサンプリングおよび/もしくは補間することを伴い、これによって、以前の測定値または結果とのその後の比較を容易にし得る。
【0037】
さらに、分析エンジン122は、測定値を使用して、サンプル112を表し、かつ、可能な励起の範囲内の所与の励起に対するサンプル112で発生する応答物理をシミュレートする複数のボクセルを有するフォワードモデルのモデルパラメータを判定し得る(すなわち、フォワードモデルは特別な、または、特定の励起に対する予測応答を判定するフォワードモデルよりもより一般的であり得る)。特に、サンプル112内のボクセルの適切なモデルパラメータによって、分析エンジン122はフォワードモデルを使用して、励起に対するサンプル112の(磁化の予測成分など)予測応答を正確かつ定量的にシミュレートまたは計算し得る。フォワードモデルは、ボクセルごとにサンプル112の応答物理に近似する1つ以上の微分方程式または1つ以上の現象論的方程式に少なくとも部分的に基づき得るか、またはそれらを使用し得ることに留意されたい。例えば、フォワードモデルは、ブロッホ方程式、ブロッホ-トーリー方程式(したがって、フォワードモデルには、呼吸、心拍、血流、機械的運動などに関連する運動などのダイナミクスのシミュレーションが含まれ得る)、(2つ以上の要素間の相互作用のLiouvilleスーパーマトリックスなどの)完全なLiouvillian算出、完全なハミルトニアン、マクスウェル方程式(例えば、フォワードモデルはサンプル112の磁気的および電気的特性を計算し得る)、熱拡散方程式、ペンヌ方程式、および/または、ある種類の励起に対するサンプル112の応答の物理学を表す別のシミュレーション技術に少なくとも部分的に基づき得るか、またはそれらを使用し得る。いくつかの実施形態では、(磁化の平行成分と逆平行成分が結合されている場合、例えば、磁化の状態がRFパルスシーケンスの前にリセットされないときなど)ブロッホ方程式の基礎となる仮定が無効であるため、追加の誤差項をブロッホ方程式に追加し得る。したがって、フォワードモデルは、可能な励起または励起値の範囲内の任意の励起に応答するサンプル112の動的(例えば、時間変動)状態を算出することが可能であり得る。
【0038】
いくつかの分析アプローチでは、コンピュータ116は、予測応答と測定された動的磁気応答との間の差が(0.1、1、5、10%などの)事前定義された値未満になるまで、フォワードモデルのボクセルと関連付けられたモデルパラメータを反復して修正することによって逆問題を解決することでモデルパラメータを判定し得る。(「逆問題」は、1つ以上の結果または出力で始まり、入力または原因を計算することに留意されたい。これは、入力から始まり、1つ以上の結果または出力を計算する「順方向問題」の逆である。)ただし、この「反復アプローチ」では、ソース110は異なる励起を繰り返し適用し得、測定デバイス114は対応する測定を繰り返し実行し得る。その結果、反復アプローチは時間および費用がかかり、複雑になる場合がある。したがって、反復アプローチは、適切なモデルパラメータが判定されるまで、システム100においてかなりのリソースを消費する場合がある。
【0039】
図2図5を参照して以下でさらに説明するように、これらの問題に対処するために、算出技術では、分析エンジン122は、1つ以上の所定のまたは事前に訓練された予測モデル(特定のサンプルまたは個体に固有であり得る機械学習モデルまたはニューラルネットワークなど、例えば、予測モデルは、個人化された予測モデルであり得る)を使用して、少なくとも部分的にボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る。例えば、分析エンジン122は、測定値および励起を規定する情報を予測モデルへの入力として使用し得、それによりボクセルと関連付けられたモデルパラメータを出力として提供する。したがって、予測モデルは、測定値または測定結果に少なくとも部分的に基づいて訓練され得、またはモデルパラメータ情報を組み込み得る。いくつかの実施形態では、予測モデルは、特定のソース110および/もしくは測定デバイス114(RFノイズまたは空間磁界の不均一性など)、ならびに/または特定の励起もしくは測定条件の外因性特性またはシグネチャの測定値を修正し得、それにより、判定されたモデルパラメータは、測定が実行されたときには特定の時間にサンプル112に固有となる。
【0040】
モデルパラメータは、(ある種の核の核スピン磁化ベクトルの成分が外部磁界の方向と平行になるように緩和しているときの信号強度の損失に関連した時定数である)スピン-格子緩和時間T、(外部磁界の方向に垂直なある種の核の核-スピン磁化ベクトルの成分の緩和中の信号の広がりに関連する時定数である)スピン-スピン緩和時間T、調整されたスピン-スピン緩和時間T 、陽子または核密度(および、より一般的には、1種以上の核密度)、(拡散テンソルの成分などの)拡散、速度/流速、温度、非共振周波数、電気伝導率または誘電率、および/または、磁化率もしくは磁気誘電率を含み得ることに留意されたい。
【0041】
予測モデルによって提供されるこれらのモデルパラメータ、フォワードモデル、およびサンプル112の(シミュレートまたは予測されたMR信号などの)1つ以上の予測応答の1つ以上の励起を用いた後続のシミュレーションが対応する測定値と一致した場合(予測された応答と測定値との間の差が事前定義された値、例えば、0.1、1、5、または10%未満であるか、または代替的に、精度が事前定義された値を超えるとき)には、コンピュータ116の結果エンジン(またはモジュール)124は、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリに出力を提供するなどして、判定されたモデルパラメータを提供し得る。いくつかの実施形態では、結果エンジン124は、3空間×1時間×最大N個の測定次元のモデルパラメータを有するサンプル112のテンソル場マップを出力し得、各測定値はベクトルまたはスカラー量であり得る。
【0042】
したがって、精度が(90、95、99、または99.9%などの)事前定義された値を超えるときは、モデルパラメータをさらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出し得る。結果として、事前定義された値を超える精度を有するモデルパラメータは、所定の予測モデルを使用しない反復アプローチよりも、所定の予測モデルを使用して、より少ない反復で(または反復を行わずに)(したがって、より迅速に)算出することができる。
【0043】
代替的に、精度が事前定義された値未満のときは、コンピュータ116は、(異なるRFパルスシーケンスなどの)1つ以上の異なる、修正された、または、訂正された励起がソース114によってサンプル112に適用される1つ以上の反復を実行し得、1つ以上の対応する追加の測定が、測定デバイス114によって実行される。これらの1つ以上の追加の測定値を、コンピュータ116で使用して、事前定義された値未満の精度でモデルパラメータを判定し得る。
【0044】
例えば、分析エンジン122は、(第2の機械学習モデルまたは第2のニューラルネットワークなどの)第2の所定の予測モデルを使用して訂正された励起を判定することができる。特に、入力として励起と精度を規定する情報を使用して、第2の予測モデルは、訂正された励起を出力し得る。次に、システム100は、励起の代わりに訂正された励起を用いて、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る。したがって、第2の予測モデルは、システム100によって実行される動作の1つ以上の後続の反復における残りの差異を低減または排除するために、予測応答と測定値との残りの差異に少なくとも部分的に基づいて訓練され得るか、または励起情報を組み込み得る。いくつかの実施形態では、第2の予測モデルは、サンプリング頻度および特性評価技術などを訂正して、第1の予測モデルを使用したモデルパラメータの判定を収束させる(すなわち、事前定義された値未満の精度にする)ことを可能にする追加情報を判定し得る。別の言い方をすれば、次の摂動または擾乱を、超次元空間全体の誤差または差を最小化するように選択し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、精度が事前定義された値未満のときは、コンピュータ116の訓練エンジン(またはモジュール)126は、励起および測定された応答を訓練データセットに追加し、その訓練データセットを用いて、モデルパラメータの判定に後で使用するための予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。したがって、システム100によって実行される測定は適応学習技術で選択的に使用され、予測モデル、したがって、(波長および強度または磁束の異なる値など)ある範囲の励起に対して判定されたモデルパラメータを改善し得る。
【0046】
モデルパラメータおよびフォワードモデルを使用して、分析エンジン122は、任意の外部磁界強度または方向(0T、6.5mT、1.5T、3T、4.7T、9.4T、および/もしくは15T、または時間変動する方向、例えば、ゆっくりと回転する外部磁界など)などの任意の励起に対するサンプル112の応答と、任意のオプションの勾配と、任意のパルスシーケンスと、任意の磁気状態または条件(例えば、サンプル112の磁化または分極が測定前の初期状態に戻らない、リセットされる、または再磁化される)などをシミュレートまたは予測し得る。したがって、モデルパラメータおよびフォワードモデルを使用して、軟組織測定、形態学的研究、化学シフト測定、磁化移動測定、MRS、1種以上の核の測定、オーバーハウザ測定、および/または機能撮像などの高速かつより正確な測定を容易にすることができる。例えば、コンピュータ116が、ソース110および測定デバイス114によってサンプル112に対して実行される測定と同時に(すなわち、リアルタイムで)モデルパラメータを判定する実施形態では、システム100は、組織の任意の種類TまたはTよりも小さい時間スケール上で(ボクセルレベルまたは平均で)サンプル112の1つ以上の物理パラメータを迅速に特性評価し得る。この機能により、システム100は、初期測定を実行してモデルパラメータを判定し、次に、判定されたモデルパラメータを使用してMR信号をシミュレートまたは予測して、システム100によって実行されている進行中の測定を完了または記入し得、その結果、より迅速に(したがって、より短いMR走査時間で)結果を得ることができる。いくつかの実施形態では、システム100は、サンプル112の以前のMR走査(複数可)中に判定されたサンプル112のボクセルの記憶されたモデルパラメータなどの、サンプル112で得られた以前の結果の定量的比較に少なくとも部分的に基づいて、(サンプル112の異常または変化の検出などの)結果を判定し得ることに留意されたい。そのような比較は、異なる時間におけるサンプル112内のボクセル位置を整列させることを可能にする3D登録情報によって容易になされ得る。いくつかの実施形態では、結果は、少なくとも部分的に、医師の指示、医療検査結果(例えば、血液検査、尿サンプル検査、生検、遺伝子検査、またはゲノム検査など)、個体の病歴、個体の家族歴、サンプル112または他のサンプルのボクセル依存多次元データを含む定量的テンソル場マップ、サンプル112のインピーダンス、サンプル112の水和レベルおよび/または他の入力に基づく。
【0047】
さらに、図6を参照して以下でさらに説明するように、いくつかの実施形態では、分析エンジン122は、判定されたモデルパラメータおよび(第3の機械学習モデルおよび/または3番目のニューラルネットワークなどの)第3の所定の予測モデルを使用して、サンプル112内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化し得る。例えば、ボクセルレベルでのサンプル112のシミュレート応答もしくは予測応答、またはボクセルレベルで判定されたモデルパラメータを使用して、第3の予測モデルは、異なる解剖学的構造の位置を出力し得、かつ/または(臓器の種類、特定の病状に関連しているかどうか、例えば、がんの種類、がんの病期など)異なるボクセルの分類を出力し得る。したがって、いくつかの実施形態では、異なるボクセル間の境界に及ぶモデルパラメータの変動(不連続な変化など)に少なくとも部分的に基づいて、第3の予測モデルが訓練され得、または、セグメント化情報の分類を組み込み得る。この機能により、分析エンジン122は、(モデルパラメータの判定を支援し得る)異なる解剖学的構造を識別し、かつ/または、症状もしくは病状を診断するか、あるいはそれらに関する診断推奨を行うことが可能となる。いくつかの実施形態では、分類またはセグメンント化は、モデルパラメータの判定の前に、同時に、または後に実行される。
【0048】
いくつかの実施形態では、訓練エンジン126は、シミュレートされたデータセットを使用して、少なくとも部分的に予測モデル、第2の予測モデル、および/または第3の予測モデルを訓練し得る。例えば、訓練エンジン126は、フォワードモデルと、ある範囲のモデルパラメータと、ある範囲の励起とを使用して、シミュレートされたデータセットを生成し得る。このように、シミュレートされたデータを使用して、1つ以上の予測モデルの訓練を高速化し得る。
【0049】
特に、算出技術は(MR走査などの)測定中にすべての関連情報を取り込む場合があるため、フォワードモデルをオフラインモードで使用して、(異なる測定条件などの)多数の可能なシナリオを含む広範なラベル付きデータセットをキュレートできる。次いで、このデータベースは、予測モデルの訓練に使用できる。この機能は、正確にラベル付けされ、再現性があり、かつ、画像の乱れがないMRデータを取得する際の困難を克服し得る。
【0050】
生成したデータセットと組み合わせて1つ以上の予測モデルを使用することで、初期データの取得および/またはノイズ除去を高速化する正則化を選択することができる。さらに、1つ以上の予測モデルを使用して、フォワードモデルを使用したシミュレーションまたは再構成を高速化することもできる。例えば、予測モデルは、フォワードモデルで使用する初期モデルパラメータを提供でき、これにより、事前定義された値を超える精度を有する解に収束するために、測定とシミュレーションに必要な反復回数が低減され得る。したがって、初期モデルパラメータの結果として生じる予測応答が測定値と大きく異なる場合には、これを後続の測定およびシミュレーションにフィードバックして、モデルパラメータ、したがって、予測応答を改善することができる。
【0051】
さらに、予測モデル(複数可)でカバーされていないモデルパラメータ空間の部分が存在する場合には、新しいデータ点を正確に生成してラベルを付けて予測モデル(複数可)を訓練できる。さらに、予測モデル(複数可)は、異なるアプリケーションに対応する様々なメトリックに基づいて訓練し得る。例えば、予測モデル(複数可)は、様々なシナリオ(無症候性の母集団の高速走査、特定の組織特性の高精度、信号対雑音比の変動に対する堅牢性、様々なハードウェアの欠陥など)で使用される励起を最適化するための訓練であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、分析エンジン122は、測定またはシミュレートされたデータの少なくとも一部に基づいて第1のモデルパラメータを判定するニューラルネットワークを実行し得、測定またはシミュレートされたデータを使用して逆問題を解決するためにブルートフォース非線形数値計算を実行して、第2のモデルパラメータを判定し得る。これらの2つの「逆問題」からの第1と第2のモデルパラメータの違いは、ニューラルネットワークベースのアプローチの誤差として使用し得る。このアプローチによって、数値アプローチがニューラルネットワークにリアルタイムでフィードバックを提供し、ニューラルネットワークの重みを逆伝播/更新することができるため、ニューラルネットワークが学習することを可能にし得る。このハイブリッドアプローチは、依然として事前の訓練を要求または必要としないが、逆問題を解決するシミュレーション/数値技術の決定論および精度を備えた大規模ニューラルネットワークのパターンマッチングの利点を活用できる。ハイブリッドアプローチは、ニューラルネットワークの訓練に使用されるいずれの例とも異なり、入力があるときは、ニューラルネットワークを支援し得る。同様に、ハイブリッドアプローチを使用して、時間領域の測定からモデルパラメータ化された出力(つまり、逆問題の出力)に直接移動し得る。いくつかの実施形態では、ハイブリッドアプローチは、敵対的生成ネットワーク(GAN)を使用して実装される。
【0053】
いくつかの実施形態では、フォワードモデルは、特定のMR機器またはスキャナから独立し得ることに留意されたい。代わりに、フォワードモデルは、例えば、個体に固有のものであり得る。フォワードモデルを使用して算出された予測応答は、磁界の不均一性または磁界の空間的変動、RFノイズ、特定のRFピックアップコイルまたは別の磁気センサ、外部磁界強度または(ボクセルサイズなど)測定条件による特性またはシグネチャ、地理的位置、(例えば、磁気ストームによる)時間などの特定のMR機器またはスキャナの特性またはシグネチャを含むように調整し得る。したがって、予測応答はマシン固有のものであり得る。
【0054】
上記の考察ではサンプル112の単一の予測モデルを使用する算出技術を示したが、他の実施形態ではサンプル112の予測モデルが複数存在し得る。例えば、異なる予測モデルを使用して、サンプル112の(異なる臓器または異なる種類の組織などの)異なる部分、したがって異なるボクセルのモデルパラメータを判定し得る。したがって、いくつかの実施形態では、異なる予測モデルを用いて、表1に要約した値のような異なる種類の組織におけるT値およびT値を提供し得る。
【表1】
【0055】
さらに、システム100は特定の構成要素を有するものとして示されているが、他の実施形態では、システム100は、より少ないまたはより多い構成要素を有し得、単一の構成要素に2つ以上の構成要素を組み合わされ得、および/または、1つ以上の構成要素の位置を変更され得る。
【0056】
ここで、方法の実施形態を示す。図2は、サンプルと関連付けられたモデルパラメータを判定するための方法200の例を示すフロー図を提示する。この方法は、(図1のシステム100などの)システム、またはシステム内の1つ以上の構成要素(ソース110、測定デバイス114、および/または、コンピュータ116など)によって実行され得る。
【0057】
動作中、システム内のソースは、励起をサンプルに適用し得(動作210)、ここで励起は少なくとも波長および強度または磁束を有する。例えば、励起は、電磁放射、高周波、粒子ビーム、音波、磁界、および/または電界のうちの1つを含み得る。したがって、励起は、X線帯域の波長の電磁ビーム、中性子ビーム、電子ビーム、光帯域の波長の電磁ビーム、赤外線帯域の波長の電磁ビーム、超音波帯域の波長の音波、陽子ビーム、インピーダンス測定デバイスに関連する電界、磁気共鳴機器に関連する高周波、および/または磁化率測定デバイスに関連する磁界のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0058】
次に、システム内の測定デバイスは、励起に対するサンプルと関連付けられた応答(動作212)を測定し得る。例えば、測定デバイスは、X線検出器、中性子検出器、電子検出器、光検出器、赤外線検出器、超音波検出器、陽子検出器、磁気共鳴機器、インピーダンス測定デバイス、および/または磁化率測定デバイスのうちの少なくとも1つを含み得る。測定された応答は、サンプルの時間領域応答を含み得、かつ、画像以外または画像と異なり得ることに留意されたい。
【0059】
さらに、システムは、測定された応答および励起を所定の予測モデルへの入力として規定する情報を使用して、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルにおいて、ボクセルごとにモデルパラメータを算出し得る(動作214)。フォワードモデルは、励起、波長および強度または磁束、ならびに少なくとも1つの異なる波長および少なくとも1つの異なる強度または異なる磁束を含む、ある範囲の測定条件から選択される、所与の波長および所与の強度または所与の磁束を伴う所与の励起に対する、前記サンプル内で発生する応答物理をシミュレートし得る。さらに、フォワードモデルは、励起、複数のボクセルのモデルパラメータ、および応答物理に近似する微分方程式または現象論的方程式の関数であり得る。
【0060】
所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。いくつかの実施形態では、所定の予測モデルは、個体に対応する個人化された予測モデルを含む。
【0061】
次に、システムは少なくとも測定された応答と、フォワードモデル、モデルパラメータ、および励起を使用して計算された応答の予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度を判定し得る(動作216)。
【0062】
さらに、精度が事前定義された値を超えるときは(動作218)、システムは、モデルパラメータを、例えば、ユーザ、別の電子デバイス、ディスプレイ、および/またはメモリへの出力として提供し得る(動作220)。
【0063】
したがって、精度が事前定義された値を超えるときは(動作218)、モデルパラメータは、さらなる反復を伴わない単一のパスにおいて算出され得る。結果として、事前定義された値を超える精度を有するモデルパラメータは、所定の予測モデルを使用しない反復アプローチよりも、所定の予測モデルでより少ない反復を用いて算出され得る。
【0064】
代替的に、精度が事前定義された値未満のときは(動作218)、システムは、第2の所定の予測モデルへの入力として励起および精度を規定する情報を使用して、少なくとも訂正された波長、訂正された強度または訂正された磁束を有する訂正された励起を計算し(動作222)、さらに、励起の代わりに訂正された励起を使用して、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る(動作224)。第2の所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得ることに留意されたい。
【0065】
いくつかの実施形態では、システムは、オプションで1つ以上の任意の追加動作または代替動作を実行する。例えば、精度が事前定義された値未満のときは(動作218)、システムは、励起および測定された応答をトレーニングデータセットに追加し、そのトレーニングデータセットを使用して、予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。
【0066】
さらに、システムは、モデルパラメータおよび第3の予測モデルを使用して、サンプル内の1つ以上の解剖学的構造を分類またはセグメント化し得る。例えば、第3の所定の予測モデルは、機械学習モデルおよび/またはニューラルネットワークを含み得る。
【0067】
さらに、システムは、フォワードモデルと、ある範囲のモデルパラメータと、ある範囲の励起とを使用して算出されたシミュレートされたデータセットを使用して、予測モデルを訓練し得る。
【0068】
方法200のいくつかの実施形態では、追加の動作、またはより少ない動作が存在し得る。さらに、動作の順序は、変更され得、かつ/または、2つ以上の動作は、単一の動作に組み合わされ得る。
【0069】
図3は、システム100(図1)内の構成要素間の通信の例を示す図面を提示する。特に、コンピュータ116のプロセッサ310は、メモリ314に記憶されたプログラム命令(PI)312を実行し得る。プロセッサ310がプログラム命令312を実行するとき、プロセッサ310は、算出技術における動作の少なくとも一部を実行し得る。
【0070】
算出技術の間、プロセッサ310は、インターフェース回路(IC)316に命令318を提供し得る。それに応答して、インターフェース回路316は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで、ソース110に命令318を提供し得る。さらに、ソース110は、命令318を受信した後にサンプルに励起320を適用し得る。
【0071】
次に、プロセッサ310は、インターフェース回路316に命令322を提供し得る。これに応答して、インターフェース回路316は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで命令322を測定デバイス114に提供し得る。さらに、測定デバイス114は、命令322を受信した後に、励起320に対するサンプルと関連付けられた応答324を測定し得る。次に、測定デバイス114は、例えば、1つ以上のパケットまたはフレームで、測定された応答324をコンピュータ116に提供し得る。
【0072】
インターフェース回路316は、測定された応答324を受信した後に、この測定された応答324をプロセッサ310に提供し得る。次に、測定された応答324および所定の予測モデルへの入力として励起320を規定する情報を使用して、プロセッサ310は、サンプルを表す複数のボクセルを有するフォワードモデルのボクセルごとに、モデルパラメータ(MP)326を算出し得る。
【0073】
さらに、プロセッサ310は少なくとも測定された応答324と、フォワードモデル、モデルパラメータ326、および励起320を用いて計算された応答の予測値とを比較することによって、モデルパラメータの精度328を判定し得る。精度328が事前定義された値を超えるときは、プロセッサ310は、モデルパラメータ326を、例えば、ユーザ、(インターフェース回路316を介した)別の電子デバイス、ディスプレイ330、および/またはメモリ314への出力として提供し得る。
【0074】
そうでなく、精度が事前定義された値未満のときは、プロセッサ310は、是正措置332を実行し得る。例えば、プロセッサ310は、第2の所定の予測モデルへの入力として励起320および精度328を規定する情報を使用して、訂正された励起を計算し得、さらに、励起320の代わりに訂正された励起を用いて、適用する動作、測定する動作、算出する動作、および判定する動作を繰り返し得る。代替的に、または、さらに、プロセッサ310は、励起320および測定された応答324を訓練データセットに追加し得、さらに、訓練データセットを使用して、予測モデルの訂正されたインスタンスを判定し得る。
【0075】
ここで、予測モデルの実施形態について説明する。例えば、予測モデルには、教師あり学習モデルまたは(クラスタリングなどの)教師なし学習技術などの機械学習モデルが含まれ得る。いくつかの実施形態では、機械学習モデルは、サポートベクトルマシン、分類および回帰ツリー、ロジスティック回帰、LASOSO、線形回帰、非線形回帰、パターン認識、ベイジアン技術、および/または別の(線形または非線形)教師あり学習技術を含み得る。
【0076】
図4は、機械学習モデル400の例を示す図面を提示する。この機械学習モデルでは、測定値410と、1つ以上の対応する励起412と、1つ以上の測定値410とフォワードモデルを用いて判定された1つ以上の予測応答との間の1つ以上の誤差414と、フォワードモデル内のボクセルのモデルパラメータの現在のインスタンスと、1つ以上の励起412と、の重み付き(重み408を使用)線形または非線形の組み合わせ416を用いて、モデルパラメータ418の訂正されたインスタンスを算出する。したがって、いくつかの実施形態では、予測モデル400をフォワードモデルと組み合わせて使用して、予測応答の精度が事前定義された値未満になる(すなわち、収束基準が達成される)までモデルパラメータのインスタンスを反復して修正する。しかしながら、いくつかの実施形態では、機械学習モデルを使用して、モデルパラメータを単一のパスで、すなわち、開ループ方式で判定し得る。
【0077】
代替的に、または、さらに、予測モデルはニューラルネットワークを含み得る。ニューラルネットワークは、一般化された関数近似器である。例えば、深層学習などの技術では、典型的には以前の例を入力として使用する。一般に、これらの機械学習モデルでは、予測の誤差を推定するために使用する参照点がないため、近似しようとしている実際の関数を判定することはできない。特に、訓練された例とは非常に異なる入力に基づいて予測を行うことは、ニューラルネットワークには困難な場合がある。この点で、ニューラルネットワークは不可逆算出圧縮エンジンと考えることができる。
【0078】
しかしながら、様々な励起、測定された応答、および対応するモデルパラメータを使用してニューラルネットワークを訓練することにより、ニューラルネットワークは、励起に対するサンプルの応答の物理をシミュレートするフォワードモデルにモデルパラメータ(またはモデルパラメータの初期推定)を提供することができる。ニューラルネットワークは効果的な近似/圧縮であるため、同じ入力をそれほど算出能力を必要とせず、より高速に実行できる。さらに、関数はフォワードモデルで既知であるため、(近似を使用するのとは違って)応答を算出することができ、予測の精度を評価できる。したがって、算出技術を使用して、予測が信頼できない場合を判断できる。特に、図4について前述したように、ニューラルネットワークをフォワードモデルと組み合わせて使用して、予測応答の精度が事前定義された値未満になる(すなわち、収束基準が達成される)までモデルパラメータのインスタンスを反復して修正し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークを使用して、モデルパラメータを単一のパスで、すなわち開ループ方式で判定することができる。
【0079】
図5は、ニューラルネットワーク500の例を示す図面を提示する。このニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークまたはリカレントニューラルネットワークを使用して実装できる。例えば、ニューラルネットワーク500はネットワークアーキテクチャ512を含み得、これは、入力510のフィルタリングを提供する初期畳み込み層514(1つ以上の測定値、1つ以上の測定値とフォワードモデルを使用して判定された1つ以上の応答との間の差または誤差、モデルパラメータの現在のインスタンス、および励起など)と、重みを適用する追加の畳み込み層(複数可)516と、選択(例えば、モデルパラメータの訂正されたインスタンスの選択)を実行する出力層518(修正された線形層など)と、を含み得る。ニューラルネットワーク500の異なる層およびそれらの相互接続の詳細は、ネットワークアーキテクチャ512(有向非巡回グラフなど)を定義し得ることに留意されたい。これらの詳細は、ニューラルネットワーク500の指示によって規定され得る。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク500は、一連の行列乗算演算として再定式化される。ニューラルネットワーク500は、100万以上の入力における実世界の差異を処理することが可能であり得る。ニューラルネットワーク500は、深層学習技術、すなわちGANを使用して訓練され得ることに留意されたい。機械学習モデル400(図4)および/またはニューラルネットワーク500のいくつかの実施形態では、モデルパラメータの現在のインスタンスが入力として使用される。
【0080】
いくつかの実施形態では、大規模な畳み込みニューラルネットワークは、60Mのパラメータおよび650,000個のニューロンを含み得る。畳み込みニューラルネットワークは、重み付きの8つの学習層を含み得、この学習層は5つの畳み込み層と、様々な可能なモデルパラメータの1000クラスラベルにわたる分布を生成する最終的な1000通りのソフトマックス関数または正規化指数関数を有する3つの完全に接続された層と、を含む。一部の畳み込み層には、最大プーリング層が続き得る。訓練を高速化するために、畳み込みニューラルネットワークは、(ローカル応答の正規化などの)非飽和ニューロンと、畳み込み演算の効率的なデュアル並列GPU実装と、を使用し得る。さらに、完全に接続された層の過剰適合を減らすために、正則化技術(「ドロップアウト」と称されることもある)を使用し得る。ドロップアウトでは、様々なモデルの予測を効率的に組み合わせて、テスト誤差を減少させる。特に、各隠れニューロンの出力は、確率0.5でゼロに設定される。このように「ドロップアウト」されたニューロンは、フォワードパスに寄与せず、逆伝播に関与しない。畳み込みニューラルネットワークは、多項ロジスティック回帰の目的を最大化する場合があり、これは予測分布の下での正しいラベルの対数確率の訓練ケース全体の平均を最大化することと同等であり得ることに留意されたい。
【0081】
いくつかの実施形態では、第2、第4、および第5の畳み込み層のカーネルは、同一のGPU上に存在する前の層のそれらのカーネルマップに結合される。第3の畳み込み層のカーネルは、第2の層のすべてのカーネルマップに結合され得る。さらに、完全に接続された層のニューロンは、前の層のすべてのニューロンに結合することができる。さらに、応答正規化層は第1および第2の畳み込み層の後に続き得、最大プーリング層は応答正規化層と第5の畳み込み層の両方の後に続き得る。修正された線形ユニットなどのニューロンの非線形モデルは、すべての畳み込み、かつ、完全に接続された層の出力に適用し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の畳み込み層は、4ピクセルのストライドを有するサイズ11×11×3の96個のカーネルを有する224×224×3入力画像をフィルタリングする(これは、カーネルマップにおける隣接するニューロンの受容野の中心間の距離である)。第2の畳み込み層は、第1の畳み込み層の(応答正規化およびプールされた)出力を入力として受け取り得、サイズ5×5×48の256個のカーネルでフィルター処理し得ることに留意されたい。さらに、第3、第4、および第5の畳み込み層は、介在するプーリングまたは正規化層なしに互いに結合され得る。第3の畳み込み層は、第2の畳み込み層の(正規化され、プールされた)出力に結合されたサイズ3×3×256の384個のカーネルを有し得る。さらに、第4の畳み込み層はサイズ3×3×192の384個のカーネルを有しよく、第5の畳み込み層はサイズ3×3×192の256個のカーネルを有し得る。完全に接続された層は、それぞれ4096個のニューロンを有し得る。上述のおよび以降の残りの考察の数値は単に例示を目的としており、他の実施形態においては異なる値を使用し得ることに留意されたい。
【0083】
いくつかの実施形態では、畳み込みニューラルネットワークは、少なくとも2つのGPUを使用して実装される。一方のGPUは層部分の一部を実行し得、他方のGPUは残りの層部分を実行し、さらに、これらのGPUは特定の層で通信する場合がある。畳み込みニューラルネットワークの入力は150,528次元であり、畳み込みニューラルネットワークの残りの層のニューロンの数は253、440~186、624~64、896~64、896~43、および264~4096~4096~1000で与えられ得る。
【0084】
ここで、フォワードモデルの実施形態について説明する。このフォワードモデルは、(個体などの)サンプルの一部のボクセルの3Dモデルであり得、各ボクセルのブロッホ方程式にモデルパラメータを含み得る。特に、z軸に沿った準静的磁界Bの場合、ブロッホ方程式は次のようになる。
【数1】
【数2】
【数3】
式中、γは磁気回転比であり、
【数4】
はベクトル外積を示し、
【数5】
は、サンプル内のある種の核が受ける磁界である。ブロッホ方程式のモデルパラメータには、T、T、ある種類の核の密度、拡散、速度/流速、温度、磁化率などを含み得る。各ボクセルの異なる種類の核によって異なるモデルパラメータが存在し得ることに留意されたい。さらに、ブロッホ方程式は、時間変動する磁界に対するサンプル内の核の種類の磁気モーメントの動的応答への半古典的で巨視的な近似であることに留意されたい。例えば、1mmのボクセル内に67Mの細胞が存在し得る。
【0085】
原則として、サンプルのブロッホ方程式のモデルパラメータの解空間は、劣決定であり得、すなわち、モデルパラメータを規定または制約する観測値よりも、判定されるモデルパラメータが大幅に多く存在し得る。したがって、予測モデルを訓練するときは、または、(機械学習モデルまたはニューラルネットワークの層内での算出を用いて)予測モデルを使用してモデルパラメータを判定するときは、算出技術は、追加情報を活用して問題の次元を制約または削減する場合がある。例えば、サンプルの解剖学的構造の態様は、コンピュータ断層撮影、X線、超音波などの他の撮像技術を使用して判定され得る。さらに、(心臓組織など)ターゲットの種類の組織に似ていない(すなわち、非常に異なる測定値、例えば、異なる測定されたMR信号を有する)領域は(これらの領域でモデルパラメータをゼロに設定するなどして)フォワードモデルから除外され得る。このようにして、例えば、空気からなる領域を除外し得る。フォワードモデルの他の制約には、灌流または代謝を定量化するためのMRTの熱流(高温から低温へ)に対する熱力学的制約を含み得る。さらに、異なるパルスシーケンス、および/または異なるMR技術を使用して、(疑似ランダムパルスシーケンスに同様の情報を提供し得る)異なる磁界強度Bでの測定値を使用して予測モデルを訓練し得、これにより、モデルパラメータと観察値との比を削減し、予測モデルの訓練を簡素化し得る。
【0086】
代替的に、または、さらに、以前のMR測定値または走査値(例えば、異常値または変化値)に基づいて予測またはシミュレートされた(予測されたMR信号などの)応答から大幅に逸脱する組織は、輪郭マップ(例えば、三次スプライン)を使用して、著しく差異がある領域に境界を形成する(または、その領域の境界を指定する)などによりフォワードモデルの焦点になり得る。いくつかの実施形態では、予測モデルを訓練するときは、または、(機械学習モデルまたはニューラルネットワーク層で算出を使用するなどして)予測モデルを使用してモデルパラメータを判定するときは、測定値とシミュレートまたは予測された応答との間の差異または誤差を1つ以上のレベルセット関数を使用して表し得、閾値を超える誤差を有する領域の境界は、閾値に対応する平面と1つ以上のレベルセット関数との交点に基づいて判定し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク内の層は、サンプル内のモデルパラメータ解の表面(複数可)に沿って一次および二次導関数を算出し得る。(導関数の計算を容易にするために、モデルパラメータは1つ以上のレベルセット関数を使用して表し得る。)一次導関数がゼロである線に沿った一式のボクセルを識別し得る。この一式のボクセルは、ボクセル位置と3次スプラインとの間の誤差が最小となる3次スプラインを使用して適合させることができる。この適合動作は、モデル-パラメータ解空間のすべての境界で繰り返すことができる。さらに、3次スプラインによって定義された境界内の最大の連続面を判定し得、モデルパラメータ解の計算を繰り返して、前の連続面内にある新しい連続面を判定し得る。この一般化されたフレームワークは、ボクセル内体積全体の誤差を最小限に抑え、それによって、測定値と、フォワードモデルに基づいてシミュレートまたは予測された応答との間の整合性を改善することができる。
【0088】
例えば、ニューラルネットワークは、フォワードモデルのボクセルのモデルパラメータのヤコビ行列とニュートン法を使用して逆問題を解決し、モデルパラメータの摂動が測定値と予測応答との差または誤差にどのように影響を与えるかに基づいて、連続する層内のボクセルのモデルパラメータを修正し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、サンプルの一部が1つのボクセルを含む場合、特定の種類の組織について判定する必要がある(フォワードモデルを規定する)モデルパラメータが4~10個存在し得る。ボクセルがM種類の組織を含む場合、特定の種類の組織について判定する必要があるモデルパラメータが4M~10M個存在し得る。ボクセルの数が増えると、これは困難な問題のように思われ得る。
【0090】
しかしながら、核の種類が異なればラーモア周波数も異なるため、核の種類の空間分布とそれらの局所濃度は測定値から判定できる。次に、人体(または人体の一部)の事前定義された解剖学的テンプレートを、フォワードモデルの関連する初期モデルパラメータと共に、核の種類の空間分布、およびそれらの局所濃度に一致するようにスケーリングし得る。例えば、異なる種類の組織におけるモデルパラメータの所定の、または事前定義された範囲を使用して、初期モデルパラメータを判定し得る。いくつかの実施形態では、初期モデルパラメータは、以前の測定またはMR走査と関連付けられたモデルパラメータに基づく。
【0091】
次に、関連するモデルパラメータおよび励起の関数として(1つ以上のフォワードモデルを使用して生成された)シミュレートまたは予測された応答を含むルックアップテーブルを使用して、初期モデルパラメータを修正するか、または、サンプル内のボクセルのモデルパラメータを算出し得る。例えば、測定値に類似したシミュレートまたは予測された応答を識別し得、これらのシミュレートまたは予測された応答と測定値との間の差異または誤差を使用して、ルックアップテーブルのモデルパラメータ間の補間を誘導し得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、(特定の臓器などの)ある種類の組織に対して、ニューラルネットワークの異なる層を使用して判定されたモデルパラメータは、異なる層でボクセルのサイズが徐々に減少するにつれて(したがって、ボクセルの数が増加するにつれて)、反復して改善され得る。この分析は、フォワードモデルを使用した測定値と、シミュレートまたは予測された応答との間の誤差によって引き起こされる場合がある。ニューラルネットワークの連続する層を進むと、収束または精度の基準よりも大きい誤差のある残りの領域に焦点が当てられる場合がある。例えば、ニューラルネットワークの層内のフォワードモデルのモデルパラメータは、ある磁界強度での測定値に基づく場合があり、次いで、誤差は別の磁界強度でのフォワードモデルの予測応答に基づいて判定される場合がある。さらに、最初に予測モデルまたはフォワードモデルは、異なるボクセル間に寄与または相互作用がないと想定している場合があることに留意されたい。ただし、誤差とボクセルサイズが減少するにつれて、そのような寄与および/または相互作用は、ニューラルネットワークの後続の層に含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワーク内の層の逆問題に対して(同様の誤差を有する)複数の候補モデルパラメータ解があるときは、これらの候補の少なくとも一部は、後続の層で使用するために保持され得る(すなわち、この時点では一意のモデルパラメータ解が特定されていない場合がある)。代替的に、(50、25、10、5、または、1%未満などの)所望の誤差範囲内に一意のパラメータ解が存在しない場合は、最良の(最小誤差の)モデルパラメータ解を維持し得る。さらに、所望の誤差範囲内にモデルパラメータ解が存在しないときは、第2の予測モデルを使用して励起を修正し得、追加の測定(複数可)を実行し得る。
【0093】
したがって、測定値に基づいてモデルパラメータを判定するという逆問題は、測定値と、フォワードモデル、モデルパラメータ、および励起に基づいて生成されたシミュレートまたは予測された応答との間の誤差または差異を最小化するモデルパラメータを提供する予測モデルを使用して「解決」し得る。いくつかの実施形態では、逆問題は1つ以上の分析技術を使用して解決され、分析技術は、最小二乗法、凸二次最小化法、最急降下法、準ニュートン法、シンプレックス法、レーベンバーグ・マルカート法を含む、シミュレートされたアニーリング、遺伝的技術、グラフベースの技術、別の最適化技術、および/またはカルマンフィルタリング(または線形二次推定)を含む。
【0094】
予測モデルの訓練では、動的プログラミングを使用し得ることに留意されたい。特に、訓練の問題は、例えば、クラウドベースのコンピューティングシステムでは、複数のコンピュータによって分割され、並行して実行され得る。例えば、特定のスレッドで特定の測定条件の逆問題を解決しようとし得る。コンピュータ(またはプロセッサ)によって生成された複数の潜在的なモデルパラメータ解を(例えば、線形重ね合わせを使用して)組み合わせて、1つ以上の分析技術を使用して最小化される誤差メトリックを判定し得る。
【0095】
さらに、前述のように、逆問題は、最初に粗いボクセルサイズを使用したフォワードモデルに対して適切なモデルパラメータ(例えば、測定値とシミュレートまたは予測された応答との間の誤差を最小化するモデルパラメータ)を見つけようと試みて、次いで、計算の後続の層または段階でボクセルサイズが小さい適切なパラメータを段階的に見つけることで、(機械学習モデルまたはニューラルネットワークなど)予測モデルによって反復して解決され得る。この反復手順で使用される最終的なボクセルサイズ(またはボクセルサイズがいくつかの実施形態では固定されない場合があるため、ボクセルサイズの適切な範囲)は、走査される核の種類の磁気回転比に基づいて判定し得ることに留意されたい。さらに、ボクセルのサイズまたは位置はまた、ボクセルがサブボクセルのセットに均等に分割されるように、または、プレビューボクセルサイズと一定量の重複があり、重複領域を効果的に「オーバーサンプリング」し、潜在的にMR信号が発生する箇所をさらに突き止めるように選択され得る。この最後の技術は、(ボクセルの長さ、幅、または高さなどの)ボクセルの特性長未満の距離dxだけ、勾配システム全体を1つ以上の次元でシフトさせることによって類似し得る。いくつかの実施形態では、予測モデルまたはフォワードモデルでのボクセルサイズは、測定で使用されるものよりも小さい(すなわち、予測モデルまたはフォワードモデルは、超解像技術を使用し得る)。例えば、3Tの磁界強度で512×512ボクセル、または、1024×1024ボクセルが存在し得る。ボクセルサイズは0.25mm未満であり得ることに留意されたい。
【0096】
ここで、異なる種類の組織をセグメント化するための技術の実施形態について説明し、これは、(ニューラルネットワークなどの)3番目の予測モデルで使用し得る。異なる種類の組織dj(j=1~Nの場合)に対して多次元パラメータ空間で測定された時間サンプリングMR軌道(またはベクトル)の辞書Dmrを定義し、その結果、ボクセルについて測定されたMR信号yobvを以下のように表すことができる。
【数6】
式中、αは正規化された重みであり(つまり、
【数7】
)、εは誤差(つまり、ε=(y,α)、j=1~n)である。これは、ボクセル内線形方程式の問題を定義する場合がある。一般化されたボクセル間の問題は、(27個のボクセルを有する立方体などの)一式のボクセルをグラフGとしてモデル化し得る。一式内の各ボクセルには、8個の隣接するボクセルに対し26個のエッジを有し得ることに留意されたい。逆問題のパラメータ解は、誤差を最小化するものとして定義され得る。
【0097】
2つの隣接するボクセルuとvの場合を考える。ボクセル内線形方程式UおよびVは、uとvの両方で解決される必要がある。いくつかの可能な結果がある。まず、UとVは、一意のモデルパラメータ解を持っている場合があり(ここで、「一意のモデルパラメータ解」は、既存のフォワードモデル、つまり、収束または精度基準未満の誤差または差分ベクトルを有するものに最適合し得る)、そして、分析が終了する場合がある。代替的に、Uが一意のモデルパラメータ解を有し、Vが有さない場合がある。Uに対するモデルパラメータ解が、Vが単一のモデルパラメータ解を有するようにVに制約を課すことが可能であり得、その場合には、分析を終了し得る。ただしとVのいずれも一意のモデルパラメータ解を有さない場合があり、この場合、式のシステムを組み合わせる(すなわち、効果的にボクセルサイズを増加させる)ことにより一意のモデルパラメータ解を生成し得る。また、UとVのいずれも、いかなるモデルパラメータ解も有しない場合があり、その場合は、さらなる制約を伴わずにボクセル内問題を解決することはできない。
【0098】
最後の場合には、隣接するボクセルwを調べることが可能であり得、すなわち、対応するボクセル内線形方程式Uy、y、を有する一連のボクセルu、v、wはu、v、wで解決する必要がある。ボクセル内線形方程式VとWは、以前の場合まで減少することに留意されたい。ボクセル内線形方程式が以前の場合まで減少しないときは、このペアリング動作を減少するまで再帰的に適用でき、その後、ボクセル内線形方程式を前述のように解くことができる。
【0099】
一般に、この分析技術は、誤差を最小限に抑えるために3D表面(または体積)を適合させる問題と同形であり得る。この点に関する1つの課題は、隣接するすべての体積が、誤差を最小化するモデルパラメータ解αに等しく影響を与えていると想定していることである
【0100】
誤差の最小化は、最初はボクセル間の寄与がない(つまり、ボクセルが独立している)と想定し得る。その後、ボクセル間の寄与が含まれる場合がある。特に、隣接するボクセル体積を考慮すると、2つの異なるクラスが存在する。表面を共有する体積と、1Dエッジのみを共有する体積。最小化関数は、相対座標系の中心にあるボクセルuでの誤差の寄与に重みを付けることで改善できる。誤差への影響がr-2(rはボクセルの中心点間の距離)に比例し、重み付けに1mmの等方性ボクセルを想定すると、ボクセル間の寄与に関する最小化または適合の問題は次のように表すことができる。
【数8】
式中、kの合計は、共通の表面を共有する隣接するボクセル(つまり、(-1,0,0)、(1,0,0)、(0、-1,0)、(0,1,0)、(0,0、-1)、(0,0,1))の合計であり、lの合計は、共通のエッジを共有する隣接するボクセルの残りの部分の合計である。分析の前提は、モデルパラメータ解を適合させる、または判定するのが最も難しい場所は、異なる組織間の不連続性または境界面に存在するということである。その結果、算出技術の間、分析エンジン122(図1)は、最初にこれらの位置を解決し、次に残りの位置を解決し得る。
【0101】
代替的に、隣接するボクセルからの磁気的寄与はrに比例するため、最小化問題で一次ボクセルまたは中央ボクセルの中心から半径Rの球が与えられると、球が隣接するボクセルの体積内でどれだけ膨張するかに基づいて(したがって、それらのボクセル間の寄与がどれほど強いと推定されるかに基づいて)周囲のボクセルは重み付けされ得る。例えば、2D表面を共有するボクセルの重み、1D線を共有するボクセルの重み、0D点を共有するボクセルの重みを含む、割り当てる必要のある3つの異なる重みが存在する場合がある。各ボクセル内に均一な組織分布がない場合があるため、誤差を最小化する分布を見つけるために、重みを動的に調整して各ボクセル内の様々な種類の分布をモデル化し得る。これにより、様々な種類の組織に対して、単一のボクセル内で複数のMRシグネチャを識別する機能が提供され得る。算出能力が向上すると、第3の予測モデルの精度が向上し得、最小化問題(したがって逆問題)を解決するために使用される分析技術が修正され得ることに留意されたい。
【0102】
したがって、実施形態ではボクセルのフォワードモデルが、周囲の、または隣接するボクセルのフォワードモデルに依存する場合、ボクセルのフォワードモデルは2次またはN次効果を使用して算出され得る。例えば、N個の1次フォワードモデルが存在する場合(Nは整数)、(すべてのボクセルが相互に作用する場合には)N!/(N-27)!ほど多くの2次フォワードモデルが存在し得る。いくつかの実施形態では、局所性を使用して逆問題を単純化する。このように、フォワードモデルは、隣接するボクセルのフォワードモデルが主要な(中央の)、すなわち、一次ボクセルのフォワードモデルにどのように影響するかを取り入れることによって生成し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、ディザリング技術を使用して、体内の組織の種類の分布に対するボクセルの任意の位置を克服する。特に、任意のボクセル配置または現在のボクセルサイズのために、ボクセル内に2つ以上の種類の組織が存在する場合がある。これにより、このボクセルのフォワードモデルパラメータが大幅に変更される場合がある。これは、ボクセルに必要なフォワードモデルが2つ以上存在することを示唆している場合がある。これを確認するために、ボクセルを(ボクセルの長さ、幅、または高さの一部である)距離dxだけ変位させ得、(例えば、予測モデルを使用して)フォワードモデルパラメータを再度判定し得る。その過程で、組織分布を判定し得る。その結果、このアプローチは、ボクセルサイズを変更することなく、分析の空間分解能を効果的に高めることができる。
【0104】
図6は、1つ以上の解剖学的構造600の分類またはセグメント化の例を示す図面を提示する。特に、図6は、ボクセル境界でのTおよびTの不連続な変化に少なくとも部分的に基づいて、臓器610を識別またはセグメント化することを示している。
【0105】
前述の考察ではMR技術を使用した算出技術を例示したが、このアプローチは、様々な特性評価技術を使用してリアルタイムでサンプルを物理的にモデル化および測定できる測定システムに一般化できる。一般に、算出技術は、機械的波および/または電磁波の組み合わせを使用して、体積が摂動にどのように応答するかに関しての予測の正確さを評価するために、走査される体積を「摂動」または「励起」することができる。これには、システムが自身、および、システムが走査または測定される体積を記述するために生成しようとしているフォワードモデルの正確さまたは精度に影響を与える可能性のある、システムが配置された環境の任意の部分をシミュレートする機能も含まれる。
【0106】
様々な特性評価技術により、テンソル場マッピングとテンソル場の異常を検出する機能が提供され得ることに留意されたい。これらのマップは、画像または定量的テンソル場マップの可能性があり、各特性評価技術は、様々な種類の測定で取り込まれた様々な種類のテンソル場マップの視覚化を提供し得る。これらのマップの2つ以上を確認または考慮することにより、システムは直交情報にアクセスし得る。
【0107】
したがって、システムはリアルタイム、または、ほぼリアルタイムで、3D空間内の各ボクセルで高次または超次元の疑似またはハイブリッドテンソルまたは行列を取り込む方法を提供し得る。電磁的および/または機械的摂動または励起を使用することにより、システムは様々な特性評価技術を使用して、外乱および応答を測定し、次いで、応答をシミュレートし得る。
【0108】
この特性評価の結果は、走査される体積の(4+N)D(3つの空間次元、1つの時間次元、および空間内の各点で最大Nの測定次元)の定量的モデルであり得る。(4+N)D定量的モデルは、2Dまたは3D画像を含む完全な(4+N)D空間の任意のサブセットに投影できることに留意されたい。
【0109】
いくつかの実施形態では、多次元データおよびモデルを使用することにより、より大きなボクセルサイズが使用される場合であっても、従来のMRIアプローチと比較して高い診断精度(すなわち、より低い偽陽性率)が得られる。したがって、算出技術は、従来のMRIで必要とされるよりも大きなボクセルサイズ(またはより弱い外部磁界)で改善された診断精度を可能にし得る。ただし、前述のように、算出技術は、MRIとは別に、または、MRIに加えて様々な測定技術と共に使用し得る。
【0110】
ここで、算出技術の動作の少なくとも一部を実行する電子デバイスについてさらに説明する。図7は、コンピュータ116(図1)などのシステム100(図1)内の電子デバイス700、または、ソース110もしくは測定デバイス114(図1)などのシステム100内の別のコンピュータ制御構成要素を示すブロック図を提示する。この電子デバイスは、処理サブシステム710と、メモリサブシステム712と、ネットワーキングサブシステム714とを含む。処理サブシステム710は、算出動作を実行し、かつ、システム100(図1)の構成要素を制御するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。例えば、処理サブシステム710は、1つ以上のマイクロプロセッサまたは中央処理装置(CPU)、1つ以上のグラフィックス処理装置(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、(フィールドプログラマブルロジックアレイ、すなわちFPGAなどの)プログラマブルロジックデバイス、および/または1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を含み得る。
【0111】
メモリサブシステム712は、処理サブシステム710およびネットワーキングサブシステム714のためのデータおよび/または命令を記憶するための1つ以上のデバイスを含み得る。例えば、メモリサブシステム712は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、および/または他の種類のメモリを含み得る。いくつかの実施形態では、メモリサブシステム712内の処理サブシステム710の命令は、処理サブシステム710よって(オペレーティングシステム722などの)動作環境で実行され得る1つ以上のプログラムモジュール、または(プログラム命令724などの)命令セットを含む。1つ以上のコンピュータプログラムは、コンピュータプログラム機構またはプログラムモジュール(すなわち、ソフトウェア)を構成し得ることに留意されたい。さらに、メモリサブシステム712内の様々なモジュール内の命令は、高水準手続言語、オブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリもしくは機械語で実装され得る。さらに、プログラミング言語は、処理サブシステム710によって実行されるように、コンパイルまたは解釈される、例えば、構成可能であるか、または、構成され得る(これは、この考察において交換可能に使用され得る)。
【0112】
さらに、メモリサブシステム712は、メモリへのアクセスを制御するための機構を含み得る。いくつかの実施形態では、メモリサブシステム712は、電子デバイス700のメモリに結合された1つ以上のキャッシュを含むメモリ階層を含む。これらの実施形態のいくつかでは、1つ以上のキャッシュは、処理サブシステム710に位置している。
【0113】
いくつかの実施形態では、メモリサブシステム712は、1つ以上の大容量記憶デバイス(図示せず)に結合されている。例えば、メモリサブシステム712は、磁気または光学ドライブ、ソリッドステートドライブ、または別の種類の大容量記憶デバイスに結合され得る。これらの実施形態では、メモリサブシステム712は、頻繁に使用されるデータのための高速アクセス記憶装置として電子デバイス700によって使用され得、一方では、大容量記憶デバイスは、あまり使用されないデータを記憶するために使用される。
【0114】
いくつかの実施形態では、メモリサブシステム712は、リモートに位置するアーカイブデバイスを含む。このアーカイブデバイスは、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、外部ハードドライブ、ストレージサーバ、一群のサーバ、クラウドストレージプロバイダ、クラウドコンピューティングプロバイダ、磁気テープバックアップシステム、医療記録アーカイブサービス、および/または別の種類のアーカイブデバイスなどの高容量ネットワーク接続大容量記憶デバイスであり得る。さらに、処理サブシステム710は、アプリケーションプログラミングインターフェースを介してアーカイブデバイスと相互作用して、アーカイブデバイスからの情報を記憶および/またはアクセスし得る。メモリサブシステム712および/または電子デバイス700は、医療保険の相互運用性および説明責任に関する法律に準拠し得ることに留意されたい。
【0115】
メモリサブシステム712に(ローカルおよび/またはリモートに)記憶されたデータの例が図8に示されおり、図8は電子デバイス700(図7)によって使用されるデータ構造800の例を示す図面を提示する。このデータ構造は、(個体などの)サンプル808-1の識別子810-1、(年齢、性別、生検結果、すでに作成されている場合は診断、他のサンプル情報、人口統計情報、家族歴などの)メタデータ812、データが取得されたときのタイムスタンプ814、(MR信号、および、より一般的には生データなどの)受信した測定値816、(外部磁界、任意の勾配、RFパルスシーケンス、MR機器、位置、磁界の不均一性、RFノイズ、および他の1つ以上のシステムの欠陥などのマシン固有の特性、信号処理技術、登録情報、測定値と個体の心拍または呼吸パターンとの間などの同期情報などの)励起および測定条件818、および/または(ボクセルサイズ、速度、共振周波数、または核の種類、TおよびT緩和時間、セグメント化情報、分類情報などを含む)判定されたモデルパラメータ820、(サンプル808-1が測定された部屋またはチャンバー内の温度、湿度、および/または気圧などの)環境条件822、フォワードモデル824、サンプル808-1の(重量、寸法、画像などの)物理的な特性の1つ以上の追加測定値826、(1つ以上の検出された異常828に関連する特定のボクセル(複数可)を含み得る)オプションの検出された異常828、および/または、1つ以上の検出された異常の828のオプションの分類830を含み得る。データ構造800は、異なる測定に複数のエントリを含み得ることに留意されたい。
【0116】
一実施形態では、データ構造800内のデータは、ブロックチェーンまたは同様の暗号化ハッシュ技術を使用して暗号化され、記録の不正な修正、または破損を検出する。さらに、データは保存前に匿名化できるため、サンプルに関連付けられた個体の識別情報は、その個体が、自身の識別情報にアクセスまたは解放する許可を与えない限り、または、承認を与えない限り匿名となる。
【0117】
図7に戻って参照すると、ネットワーキングサブシステム714は、有線、光、および/または無線ネットワークに結合して通信するように(すなわち、ネットワーク動作、より一般的には通信を実行するように)構成された1つ以上のデバイスを含み得、制御論理716、インターフェース回路718、1つ以上のアンテナ720、および/または、入力/出力(I/O)ポート728を含む。(図7は1つ以上のアンテナ720を含むが、いくつかの実施形態では、電子デバイス700は、1つ以上のアンテナ720に結合することができる1つ以上のノード708、例えば、パッドまたはコネクタを含む。したがって、電子デバイス700は、1つ以上のアンテナ720を含んでもよく、または含まなくてもよい。)例えば、ネットワーキングサブシステム714は、(ブルートゥース低エネルギー、BLE、またはブルートゥースLEを含むことができる)ブルートゥースネットワーキングシステム、セルラーネットワーキングシステム(例えば、UMTS、LTEなどの3G/4Gネットワーク)、ユニバーサルシリアルバス(USB)ネットワーキングシステム、IEEE802.11に記載された規格に基づくネットワーキングシステム(例えば、Wi-Fiネットワーキングシステム)、イーサネットネットワーキングシステム、および/または別のネットワーキングシステムを含むことができる。
【0118】
さらに、ネットワーキングサブシステム714は、サポートされている各ネットワーキングシステムのデータおよびイベントへの結合、通信、および処理に使用されるプロセッサ、コントローラ、無線/アンテナ、ソケット/プラグ、および/または他のデバイスを含み得る。各ネットワークシステムのネットワーク上のデータおよびイベントへの結合、通信、および処理に使用される機構は、ネットワークサブシステム714のための「ネットワークインターフェース」とも総称されることに留意されたい。さらに、いくつかの実施形態では、システム100(図1)の構成要素間の「ネットワーク」はまだ存在していない。したがって、電子デバイス700は、例えば、広告またはビーコンフレームを送信する、かつ/または、他の構成要素によって送信される広告フレームを走査する、などの構成要素間の単純な無線通信を実行するためにネットワーキングサブシステム714の機構を使用し得る。
【0119】
電子デバイス700内で、処理サブシステム710、メモリサブシステム712、ネットワーキングサブシステム714は、バス726などの1つ以上の相互接続を使用して結合され得る。これらの相互接続には、サブシステムがコマンドとデータを相互に通信するために使用できる電気的、光学的、および/または電気光学的接続が含まれ得る。明確化のために1つのバス726のみが示されているが、異なる実施形態は、サブシステム間の異なる数または構成の電気的、光学的、および/または、電気光学的接続を含むことができる。
【0120】
電子デバイス700は、多種多様な電子デバイスに含まれ得る(または含めることができる)。例えば、電子デバイス700は、タブレットコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、ポータブルコンピューティングデバイス、ウェアラブルデバイス、テスト機器、デジタル信号プロセッサ、コンピューティングデバイスのクラスタ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバ、サブノートブック/ネットブック、および/または別のコンピューティングデバイスに含まれ得る。
【0121】
特定の構成要素が電子デバイス700を説明するために使用されているが、代替の実施形態では、異なる構成要素および/またはサブシステムが電子デバイス700に存在し得る。例えば、電子デバイス700は、1つ以上の追加の処理サブシステム、メモリサブシステム、および/またはネットワーキングサブシステムを含み得る。さらに、1つ以上のサブシステムは、電子デバイス700に存在しなくてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電子デバイス700は、図7に示されていない1つ以上の追加のサブシステムを含み得る。
【0122】
別個のサブシステムが図7に示されているが、いくつかの実施形態では、所与のサブシステムまたは構成要素の一部またはすべてを、電子デバイス700内の他のサブシステムまたは構成要素のうちの1つ以上に統合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、プログラム命令724がオペレーティングシステム722に含まれる。いくつかの実施形態では、所与のサブシステム内の構成要素が異なるサブシステムに含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、電子デバイス700は、単一の地理的位置に位置するか、または複数の異なる地理的位置に分散されている。
【0123】
さらに、電子デバイス700の回路および構成要素は、バイポーラ、PMOSおよび/もしくはNMOSゲート、またはトランジスタを含むアナログおよび/またはデジタル回路の任意の組み合わせを使用して実装され得る。さらに、これらの実施形態における信号は、ほぼ離散的な値を有するデジタル信号および/または連続的な値を有するアナログ信号を含み得る。さらに、構成要素と回路はシングルエンドまたは差動であり得、電源はユニポーラまたはバイポーラであり得る。
【0124】
集積回路は、ネットワーキングサブシステム714の(無線など)機能の一部またはすべて、および、より一般的には、電子デバイス700の機能の一部またはすべてを実装し得る。さらに、集積回路は、電子デバイス700から無線信号を送信し、システム100内の他の構成要素(図1)、および/または、システム100(図1)の外部の電子デバイスから電子デバイス700で信号を受信するために使用されるハードウェアおよび/またはソフトウェア機構を含み得る。本明細書に記載の機構とは異なり、無線機は一般に当該技術分野で既知であり、したがって詳細には説明していない。一般に、ネットワーキングサブシステム714および/または集積回路は、任意の数の無線機を含み得る。複数の無線機の実施形態における無線機は、単一の無線機の実施形態で説明された無線機と同様に機能することに留意されたい。
【0125】
前述の実施形態の動作の一部はハードウェアまたはソフトウェアで実装されたが、一般に、前述の実施形態の動作は、多種多様な構成およびアーキテクチャで実装することができる。したがって、前述の実施形態における動作の一部、またはすべては、ハードウェア、ソフトウェア、またはその両方で実行され得る。
【0126】
さらに、前述の実施形態のいくつかでは、より少ない構成要素が存在し、より多くの構成要素が存在し、構成要素の位置が変更され、かつ/または、2つ以上の構成要素が組み合わされる。
【0127】
前述の考察は、ベクトル波動方程式を解くための算出技術を例示しているが、他の実施形態では算出技術を使用して、スカラー方程式を解き得る。例えば、音波方程式は、フォワードモデルを使用した超音波測定に基づいて任意の不均一な媒体で解き得る。(したがって、いくつかの実施形態では、励起は、機械的であり得る。)超音波測定における音響結合は、操作者に依存し得る(すなわち、超音波測定は圧力に依存し得る)ことに留意されたい。それにもかかわらず、同様のアプローチを使用して、超音波撮像の改善、3D構造の判定、プレゼンテーションの改善の促進などを行うことができる。
【0128】
前述の説明では、「いくつかの実施形態」を参照している。「いくつかの実施形態」では、可能なすべての実施形態のサブセットが記載されているが、実施形態の同じサブセットが常に規定されるとは限らないことに留意されたい。さらに、前述の実施形態の数値は、いくつかの実施形態の実例であることに留意されたい。算出技術の他の実施形態では、異なる数値を使用し得る。
【0129】
前述の説明は、当業者が開示を作成および使用できるようにすることを意図しており、特定の用途およびその要件の文脈内で提供される。さらに、本開示の実施形態の前述の説明は、例示および説明のみを目的として提示されている。それらは、包括的であること、または本開示を開示された形式に限定することを意図するものではない。したがって、多くの修正および変形は当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用し得る。さらに、前述の実施形態の考察は、本開示を限定することを意図するものではない。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8