(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液圧式クランプ装置及び液圧式クランプ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/40 20060101AFI20240216BHJP
F16D 1/09 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B23B31/40
F16D1/09 300
(21)【出願番号】P 2021554547
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043958
(87)【国際公開番号】W WO2021090492
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/043887(WO,A1)
【文献】特開2004-308679(JP,A)
【文献】特開昭57-184611(JP,A)
【文献】実開昭62-081506(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0253015(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105562747(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B1/00-51/14
B23Q1/00-41/08
F16D1/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形をなす第1の周面を備えた第1の部材と、前記第1の周面に嵌合する第2の周面を備えた第2の部材とを有し、
前記第1の周面及び前記第2の周面の少なくとも何れか一方に設けられた凹部により作動液体室が画定され、前記作動液体室に封入された作動液体の圧力によって、前記第2の部材が、径方向に弾性変形することにより、被クランプ部材をクランプする液圧式クランプ装置であって、
前記作動液体室の軸線方向の両端部よりも外側の各々の位置にて、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられ、前記作動液体室を
前記軸線方向に挟んで対をなす環状のシール部材と、
前記第1の部材に前記第2の部材を固定すべく
、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられ、
且つ前記作動液体室及び前記対をなす環状のシール部材の双方を軸線方向に挟むように位置することにより対をなす接着剤層とを有する液圧式クランプ装置。
【請求項2】
前記第1の周面及び前記第2の周面の少なくとも一方に、前記作動液体室の
前記軸線方向の両側に設けられ、前記作動液体室を
前記軸線方向に挟んで対をなす接着剤溝を有し、前記対をなす接着剤溝の各々に充填された接着剤によって前記接着剤層が形成されている請求項1に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項3】
前記対をなす接着剤溝の一方は前記第1の部材に設けられ、他方は前記第2の部材に設けられている請求項2に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項4】
前記第1の部材は前記第2の部材の端面に対向する端面を画定する拡径部或いは縮径部を有し、前記対をなす接着剤溝のうち前記拡径部或いは縮径部側の前記接着剤溝は前記第1の部材に設けられ、前記対をなす接着剤溝のうち前記拡径部或いは縮径部の反対側の前記接着剤溝は前記第2の部材に設けられている請求項2に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項5】
前記接着剤溝は、各々、螺旋溝を含む請求項2又は3に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項6】
前記接着剤溝は、各々、斜面及び直立面により画定される三角形断面を有する請求項2~4の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項7】
前記第1の部材或いは前記第2の部材は前記第1の周面或いは前記第2の周面に形成された環状の複数のOリング溝を有し、
前記シール部材は、各々、前記Oリング溝に嵌合した弾性体製のOリングを含む請求項1~5の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項8】
前記シール部材と対応する側の前記接着剤層との間の
前記軸線方向の位置に、各々、前記第1の周面と前記第2の周面との間隙が他の
前記軸線方向の位置の間隙より小さい接着剤堰止部を有する請求項1~6の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項9】
前記接着剤堰止部は、各々、前記第1の部材に形成された拡径によるランド部を含む請求項8に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項10】
前記接着剤堰止部は、各々、前記第1の部材或いは前記第2の部材に設けられた弾性体製のOリングを含む請求項8に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項11】
前記第1の部材或いは前記第2の部材は前記第1の周面或いは前記第2の周面に形成された環状の複数のOリング溝を有し、
前記シール部材は、各々、前記Oリング溝に嵌合した弾性体製のOリングを含み、
前記シール部材と前記接着剤層との間の
前記軸線方向の位置に、各々、前記第1の周面と前記第2の周面との間隙が他の
前記軸線方向の位置の間隙より小さい接着剤堰止部を有し、
前記接着剤堰止部は、各々、前記Oリング溝の前記作動液体室とは
前記軸線方向で見て反対側の側面に沿って設けられ、前記Oリング溝から径方向に突出する部分を有するリング部材を含む請求項1~5の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項12】
前記第1の部材は前記作動液体室に対して前記対をなす接着剤層より更に
前記軸線方向に離れた位置に拡径によるランド部を含む請求項1~11の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項13】
前記第1の部材と前記第2の部材とは異種材料により構成されている請求項1~12の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項14】
前記第1の部材は金属により構成され、前記第2の部材は前記第1の部材を構成する金属よりも弾性率が高い繊維強化プラスチックにより構成されている請求項13に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項15】
前記第1の部材は棒状部を含み、前記第1の周面は前記棒状部の外周面であり、前記第2の部材は円筒部を含み、前記第2の周面は前記円筒部の内周面であり、前記作動液体の圧力によって前記円筒部が拡径変形することにより前記円筒部の外周面において前記被クランプ部材をクランプする請求項1~14の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項16】
前記第1の部材が第1の外向きフランジ部を含み、前記第2の部材は前記第1の外向きフランジ部に対向する第2の外向きフランジ部を含み、
前記第1の外向きフランジ部と前記第2の外向きフランジ部との互いの対向面間に追加の接着剤層を有する請求項15に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項17】
前記第1の部材は
前記軸線方向に延在する開口を含み、前記第1の周面は前記開口の内周面であり、前記第2の部材は円筒部を含み、前記第2の周面は前記円筒部の外周面であり、前記作動液体の圧力によって前記円筒部が縮径変形することにより前記円筒部の内周面において前記被クランプ部材をクランプする請求項1~14の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項18】
更に、
前記第1の部材に形成されて前記作動液体室に連通するピストン室と、
前記第1の部材に形成されて前記ピストン室に連通するねじ孔と、
前記ピストン室に移動可能に設けられたピストンと、
前記ねじ孔にねじ係合した作動ねじ部材とを有し、
前記作動ねじ部材のねじ込みによって前記ピストンが前記ピストン室を移動することにより前記作動液体室の作動液体を加圧する加圧構造を含む請求項1~17の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置。
【請求項19】
請求項1~18の何れか一項に記載の液圧式クランプ装置の製造方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材とを
前記軸線方向に相対的に移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを嵌合させ、
前記対をなす接着剤層のうち、前記第1の部材に対する前記第2の部材の移動方向で見て前記シール部材の何れよりも前側に位置する前記接着剤層は前記第1の部材と前記第2の部材との嵌合前に前記第1の部材に形成され、同移動方向で見て前記シール部材の何れよりも後側に位置する前記接着剤層は前記嵌合前に前記第2の部材に形成されている液圧式クランプ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液圧式クランプ装置及び液圧式クランプ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧式クランプ装置として、横断面形状が円形の棒状の本体及び本体の外周面に装着された薄肉の円筒部材を含み、本体と円筒部材との間に円筒形状の作動液体室が形成されたマンドレル型の液圧式クランプ装置が知られている(例えば、特許文献1)。この液圧式クランプ装置は、作動液体室に封入された作動液体が加圧されることにより円筒部材が拡径変形し、円筒部材の外周に配置された被クランプ部材をクランプする。
【0003】
このような液圧式クランプ装置では、円筒部材が本体に固定されることと、作動液体室の液密性とが要求される。本体に対する円筒部材の固定には本体に対する円筒部材の圧入嵌合が多く採用されている(例えば、特許文献2、3)。作動液体室の液密性は、本体と円筒部材との間に設けられた弾性シールリングや接着剤をシール部材としたものも知られている(例えば、特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭58-21605号公報
【文献】実公昭63-46177号公報
【文献】特公平1-60365号公報
【文献】DE3816562A1公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本体に対する円筒部材の固定が圧入嵌合によるものは、応力の影響により、円筒部材の同心度、円筒度、真円度の向上に限界があり、更なる高精度のクランピングを行うことが難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、液圧式クランプ装置において、円筒部材の同心度、円筒度、真円度を向上させ、より一層、高精度なクランピングが行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一つの実施形態による液圧式クランプ装置は、円形をなす第1の周面を備えた第1の部材と、前記第1の周面に嵌合する第2の周面を備えた第2の部材とを有し、前記第1の周面及び前記第2の周面の少なくとも何れか一方に設けられた凹部により作動液体室が画定され、前記作動液体室に封入された作動液体の圧力によって、前記第2の部材が、径方向に弾性変形することにより、被クランプ部材をクランプする液圧式クランプ装置であって、前記作動液体室の軸線方向の両端部よりも外側の各々の位置にて、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられ、前記作動液体室を軸線方向に挟んで対をなす環状のシール部材と、前記第1の部材に前記第2の部材を固定すべく、前記対をなす環状のシール部材よりも更に軸線方向の外側の各々の位置にて、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられ、前記作動液体室を軸線方向に挟んで対をなす接着剤層とを有する。
【0008】
この構成によれば、応力の影響がないので、円筒部材の同心度、円筒度、真円度が高く、より一層、高精度なクランピングが行われる。
【0009】
(2)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の周面及び前記第2の周面の少なくとも一方に、前記作動液体室の軸線方向の両側に設けられ、前記作動液体室を軸線方向に挟んで対をなす接着剤溝を有し、前記対をなす接着剤溝の各々に充填された接着剤によって前記接着剤層が形成されている。
【0010】
この構成によれば、接着剤溝の深さにより、接着剤層の厚さを高い均一性をもって確実に設定される。
【0011】
(3)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記対をなす接着剤溝の一方は前記第1の部材に設けられ、他方は前記第2の部材に設けられている。
【0012】
この構成によれば、第1の部材に対する第2の部材の組付(挿入)時に接着剤溝の接着剤が第1の部材に不適切に付着することが回避される。
【0013】
(4)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材は前記第2の部材の端面に対向する端面を画定する拡径部或いは縮径部を有し、前記対をなす接着剤溝のうち前記拡径部或いは縮径部側の前記接着剤溝は前記第1の部材に設けられ、前記対をなす接着剤溝のうち前記拡径部或いは縮径部の反対側の前記接着剤溝は前記第2の部材に設けられている。
【0014】
この構成によれば、第1の部材に対する第2の部材の組付(挿入)時に接着剤溝の接着剤が第1の部材に不適切に付着することが回避される。
【0015】
(5)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記接着剤溝は、各々、螺旋溝を含む。
【0016】
この構成によれば、第1の部材に対する第2の部材の固定が軸線方向にも周方向にも確実に行われる。
【0017】
(6)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記接着剤溝は、各々、斜面及び直立面により画定される三角形断面を有する。
【0018】
この構成によれば、第1の部材に対する第2の部材の組み付け時に接着剤溝の接着剤が接着剤溝外へ溢流し難くなり、接着剤溝に接着剤が残留し易くなる。
【0019】
(7)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材或いは前記第2の部材は前記第1の周面或いは前記第2の周面に形成された環状の複数のOリング溝を有し、前記シール部材は、各々、前記Oリング溝に嵌合した弾性体製のOリングを含む。
【0020】
この構成によれば、作動液体室の液密シールがOリングによって行われると共に、Oリングによって第1の部材に対する第2の部材のセンタリングが行われ、第1の部材と第2の部材との同心性が向上する。
【0021】
(8)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記接着剤層の接着剤が前記シール部材の配置部に侵入することを抑制すべく、前記シール部材と対応する側の前記接着剤層との間の軸線方向の位置に、各々、前記第1の周面と前記第2の周面との間隙が他の軸線方向の位置の間隙より小さい接着剤堰止部を有する。
【0022】
この構成によれば、シール部材に接着剤が付着することが抑制され、シール部材による作動液体室の液密シール性能が安定する。
【0023】
(9)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記接着剤堰止部は、各々、前記第1の部材に形成された拡径によるランド部を含む。
【0024】
この構成によれば、他の部品を必要とすることなく、接着剤層の接着剤がシール部材の配置部に侵入することが抑制される。
【0025】
(10)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記接着剤堰止部は、各々、前記第1の部材或いは前記第2の部材に設けられた弾性体製のOリングを含む。
【0026】
この構成によれば、Oリングによって接着剤層の接着剤がシール部材の配置部に侵入することが抑制される。
【0027】
(11)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材或いは前記第2の部材は前記第1の周面或いは前記第2の周面に形成された環状の複数のOリング溝を有し、前記シール部材は、各々、前記Oリング溝に嵌合した弾性体製のOリングを含み、前記シール部材と前記接着剤層との間の軸線方向の位置に、前記第1の周面と前記第2の周面との間隙が他の軸線方向の位置の間隙より小さい接着剤堰止部を有し、前記接着剤堰止部は、各々、前記Oリング溝の前記作動液体室とは軸線方向で見て反対側の側面に沿って設けられ、前記Oリング溝から径方向に突出する部分を有するリング部材を含む。
【0028】
この構成によれば、リング部材によって接着剤層の接着剤がシール部材の配置部に侵入することが抑制されると共に、Oリングの不正変形が抑制される。
【0029】
(12)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材は前記作動液体室に対して前記対をなす接着剤層より更に軸線方向に離れた位置に拡径によるランド部を含む。
【0030】
この構成によれば、本体と円筒部材との間のクリアランスを全周に亘って最適に保ち、接着剤層の厚さの周方向の変動を抑制する。
【0031】
(13)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記第2の部材の弾性率や耐摩耗性が前記第1の部材に比して高い等、異種材料により構成されている。
【0032】
この構成によれば、第2の部材の性能を、第1の部材とは別に、高膨張性や耐摩耗性等を特化することができる。
【0033】
(14)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材は金属により構成され、前記第2の部材は前記第1の部材を構成する金属よりも弾性率が高い繊維強化プラスチックにより構成されている。
【0034】
この構成によれば、第2の部材の性能を、第1の部材とは別に、高膨張性を有することに特化することができる。
【0035】
(15)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材は棒状部を含み、前記第1の周面は前記棒状部の外周面であり、前記第2の部材は円筒部を含み、前記第2の周面は前記円筒部の内周面であり、前記作動液体の圧力によって前記円筒部が拡径変形することにより前記筒状体の外周面において前記被クランプ部材をクランプする。
【0036】
この構成によれば、マンドレル型のクランプ装置において、高精度なクランピングが行われる。
【0037】
(16)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材が第1の外向きフランジ部を含み、前記第2の部材は前記第1の外向きフランジ部に対向する第2の外向きフランジ部を含み、前記第1の外向きフランジ部と前記第2の外向きフランジ部との互いの対向面間に追加の接着剤層を有する。
【0038】
この構成によれば、第1の部材に対する第2の部材の接着強度が向上する。
【0039】
(17)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、前記第1の部材は軸線方向に延在する開口を含み、前記第1の周面は前記開口の内周面であり、前記第2の部材は円筒部を含み、前記第2の周面は前記円筒部の外周面であり、前記作動液体の圧力によって前記円筒部が縮径変形することにより前記円筒体の内周面において前記被クランプ部材をクランプする。
【0040】
この構成によれば、チャック型のクランプ装置において、高精度なクランピングが行われる。
【0041】
(18)上記液圧式クランプ装置において、好ましくは、更に、前記第1の部材に形成されて前記作動液体室に連通するピストン室と、前記第1の部材に形成されて前記ピストン室に連通するねじ孔と、前記ピストン室に移動可能に設けられたピストンと、前記ねじ孔にねじ係合した作動ねじ部材とを有し、前記作動ねじ部材のねじ込みによって前記ピストンが前記ピストン室を移動することにより前記作動液体室の作動液体を加圧する加圧構造を含む。
【0042】
この構成によれば、外部からの作動液体の授受、加圧を必要とすることなく、液圧式クランプ装置単体で、作動液体室の作動液体が加圧される。
【0043】
(19)本発明の一つの実施形態による液圧式クランプ装置の製造方法は、上記液圧式クランプ装置の製造方法であって、前記第1の部材と前記第2の部材とを軸線方向に相対的に移動させることにより、前記第1の部材と前記第2の部材とを嵌合させ、
前記対をなす接着剤層のうち、前記第1の部材に対する前記第2の部材の移動方向で見て前記シール部材の何れよりも前側に位置する前記接着剤層は前記第1の部材と前記第2の部材との嵌合前に前記第1の部材に形成され、同移動方向で見て前記シール部材の何れよりも後側に位置する前記接着剤層は前記嵌合前に前記第2の部材に形成されている。
【0044】
この製造方法によれば、第1の部材に対する第2の部材の組付(挿入)時に、接着剤層がシール部材に接触することがなく、組み付け時にシール部材に接着剤が付着することがない。
【発明の効果】
【0045】
本発明による液圧式クランプ装置によれば、円筒部材の同心度、円筒度、真円度が向上し、より一層、高精度なクランピングが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態1を示す縦断面図
【
図2】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態2を示す縦断面図
【
図3】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態3を示す縦断面図
【
図4】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態4を示す縦断面図
【
図5】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態5を示す縦断面図
【
図6】実施形態5の液圧式クランプ装置の組付工程を示す縦断面図
【
図7】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態6を示す縦断面図
【
図8】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態7を示す縦断面図
【
図9】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態8を示す縦断面図
【
図10】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態9を示す縦断面図
【
図11】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態10を示す縦断面図
【
図12】本発明による液圧式クランプ装置の実施形態11を示す縦断面図
【
図13】本発明による液圧式クランプ装置の他の実施形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態1を、
図1を参照して説明する。
【0048】
液圧式クランプ装置10は、マンドレル型のクランプ装置であり、
図1に示されているように、本体(第1の部材)12を有する。本体12は、第1軸端部14とマンドレル主部16とフランジ部(拡径部)18と第2軸端部20とを軸線方向に順に同一軸線上に有し、円形の横断面形状の棒状部を含む。第1軸端部14及び第2軸端部20は同一外径である。マンドレル主部16は第1軸端部14及び第2軸端部20より大きい外径を有する。フランジ部18は、マンドレル主部16より更に大きい外径を有し、マンドレル主部16に対して径方向外方に拡張された外向きフランジ部(第1の外向きフランジ部)であり、後述の円筒部材30及び被クランプ部材W1の軸線方向の配置位置を衝当式に設定するストッパをなす。
【0049】
マンドレル主部16の外周には、薄肉構造の円筒部材(第2の部材)30が接着剤層32によって固定されている。円筒部材30は、マンドレル主部16の外周面(第1の周面)16Aに嵌合する内周面(第2の周面)30Aと、円筒形状の被クランプ部材W1をクランプする外周面30Bと、フランジ部18の円盤状の一方の端面18Aに軸線方向に対向する円環状の一方の端面30Cとを有する。マンドレル主部16の外周面16Aの外径OD1は、円筒部材30の内周面30Aの内径ID1より小さい。(内径ID1)-(外径OD1)は50~150μm程度であってよい。尚、接着剤層32によるマンドレル主部16に対する円筒部材30の固定(貼着)の詳細は後述する。
【0050】
マンドレル主部16の外周面16A及び円筒部材30の内周面30Aには軸線方向の同一位置に周溝状の凹部16B及び30Dが形成されている。凹部16B及び30Dは、マンドレル主部16と円筒部材30との間に、軸線方向に所定の長さを有してマンドレル主部16の外周面16Aの全周に亘って延在する横断面形状が円環状の作動液体室40を画定している。
【0051】
接着剤層32は、マンドレル主部16の外周面16Aと円筒部材30の内周面30Aとの嵌合部であって、作動液体室40の軸線方向の端部よりも軸線方向に離れた作動液体室40の両側に各々2個ずつ軸線方向に隔置して設けられて対をなし、本体12と円筒部材30とを接着(貼着)によって互いに固定している。接着剤層32は、マンドレル主部16の外周面16Aに形成された周溝による接着剤溝34に充填された接着剤によって形成されている。接着剤層32を形成する好適な接着剤として2液性エポキシ接着剤や嫌気性接着剤等がある。
【0052】
各接着剤溝34に充填された接着剤による各接着剤層32の厚さは円筒部材30の内周面30Aの内径ID1から接着剤溝の外径OD2を差し引いた値の1/2の値によって決まる。つまり、接着剤溝34の深さによって接着剤層32の厚さが高い均一性をもって確実に設定される。
【0053】
各接着剤層32の最適厚さは、接着剤の種類等により決まる最大剪断強度により決まる。各接着剤層32の軸線方向の最適寸法は、マンドレル主部16の外周面16Aの外径OD1等により決まる。
【0054】
本体12に対する円筒部材30の組み付けは、先ず、マンドレル主部16の各接着剤溝34に未硬化の液状の接着剤を塗布、充填し、後述の各Oリング溝36にOリング38を装着する。その後に、第1軸端部14の端面14A側から円筒部材30を本体12に対して軸線方向に、円筒部材30の端面30Cがフランジ部18の端面18Aに衝当するまで移動させ、円筒部材30を、内周面30Aをもってマンドレル主部16の外周面16Aに嵌合させることにより行われる。
【0055】
円筒部材30の端面30Cがフランジ部18の端面18Aに衝当することにより、本体12に対する円筒部材30の軸線方向の組付位置が一義的に決まる。尚、本体12に対する円筒部材30の軸線方向の組付位置が他の治具等の使用のもとに決められる場合には、円筒部材30の端面30Cがフランジ部18の端面18Aに衝当する必要がない。
【0056】
マンドレル主部16の外周面16Aと円筒部材30の内周面30Aとの嵌合部であって、各接着剤層32と作動液体室40の対応する軸線方向の端部との間のマンドレル主部16の外周面16Aには周溝によるOリング溝36が形成されている。各Oリング溝36にはシール部材をなす弾性体製のOリング38が装着されている。各Oリング38は円筒部材30の内周面30Aに弾圧的に当接し、作動液体室40の液密シールを行う。
【0057】
換言すると、液圧式クランプ装置10は、作動液体室40の軸線方向の両端部よりも外側の各々の位置にて、本体12と円筒部材30との間に設けられて作動液体室40を軸線方向に挟んで互いに対をなす円環状のOリング38によるシール部材を有する。更に、液圧式クランプ装置10は、本体12に対する円筒部材30を固定すべく、両Oリング38(対をなすシール部材)よりも更に軸線方向の外側の各々の位置にて、本体12と円筒部材30との間に設けられて対をなす接着剤層32を有する。
【0058】
2個のOリング38は、互いに軸線方向に離れた位置にあって、各々全周に亘って円筒部材30の内周面30Aに弾圧的に当接することにより、マンドレル主部16に対する円筒部材30のセンタリングを行い、マンドレル主部16と円筒部材30との同心度を高める作用もする。
【0059】
マンドレル主部16は、円筒部材30との嵌合部であって、各Oリング38の配置部と当該配置部に隣接する接着剤層32との間に、外周面16Aより大きい外径OD3を有する、つまり拡径によるランド部42を有する。円筒部材30の内周面30Aの内径ID1とランド部42の外径OD3との差によるランド部42の嵌合間隙は、他の部分、つまり外周面16Aの外径OD1と円筒部材30の内周面30Aの内径ID1との差による嵌合間隙より小さい。
【0060】
ランド部42は円筒部材30との嵌合間隙が小さいことにより、接着剤層32の接着剤がOリング38の配置部に侵入することを防止する接着剤堰止部として作用し、Oリング38に接着剤が付着することを抑制する。
【0061】
本体12は中心軸線上を第1軸端部14及びマンドレル主部16に亘って軸線方向に延在するピストン室50を有する。ピストン室50にはピストン52が軸線方向に移動可能に嵌合している。ピストン室50の一方の端部はマンドレル主部16に形成された軸線方向の通路54及び径方向の複数の通路56によって作動液体室40に連通している。尚、通路54は、ドリル加工の都合上、ドリル加工孔66によって第2軸端部20の端面20Aに開口しているが、この開口は、第2軸端部20にねじ係合し、鋼球68をシール部材としたねじ栓69によって液密に塞がれている。
【0062】
ピストン52によって区切られたピストン室50の通路54側の室空間、通路54、56及び作動液体室40は、一つの密閉空間をなしており、グリース等の作動油(作動液体)を封入されている。
【0063】
第1軸端部14の中心軸線上には軸線方向に延在してピストン室50のもう一方の端部に連通するねじ孔58及びねじ孔58に連通し且つ第1軸端部14の端面14Aに開口した工具挿入孔60が形成されている。ねじ孔58には六角孔付きの作動ねじ部材62がねじ係合している。作動ねじ部材62とピストン52との間に鋼球64が配置されている。作動ねじ部材62は、ねじ込みによってねじ孔58をピストン室50側に螺進し、当該螺進によって鋼球64を介してピストン52を前進移動(
図1で見て左側への軸線方向移動)させる。
【0064】
このようにして加圧構造が構成され、作動ねじ部材62の前進移動により、ピストン52がピストン室50を通路54側(
図1で見て左側)に移動する。この移動によって作動液体室40の作動油が加圧され、作動油の圧力が上昇する。作動油の圧力上昇により、円筒部材30が弾性変形状態で径方向外方に拡径変形する。
【0065】
これにより、円筒部材30の外周面30Bにおいて円筒部材30の拡径変形のもとに被クランプ部材W1をクランプすることが行われる。より詳細には、被クランプ部材W1は、円筒部材30の外周に嵌合した中心孔Aを有していて、円筒部材30の拡径変形によって中心孔Aの内周面に円筒部材30の外周面30Bが密着することにより、液圧式クランプ装置10に固定(クランプ)される。
【0066】
実施形態1による液圧式クランプ装置10は、本体12に対する円筒部材30の固定が、圧入嵌合やろう付けによらずに、接着剤層32の接着剤による接着により行われているから、圧入嵌合時の応力が円筒部材30に残留することがない。これにより、円筒部材30の同心度、円筒度、真円度が向上し、より一層、高精度なクランピングが行われる。
【0067】
作動液体室40の円筒部材30側は、円筒部材30の内周面30Aに形成された凹部(中ぐり加工部)30Dにより画定されているから、それよりも軸線方向の外側に存在する接着剤層32やOリング38に対応する部分より薄肉である。このことにより、作動液体室40の作動油の昇圧による円筒部材30の拡径変形が凹部30Dによる薄肉部分に集中する。
【0068】
これにより、円筒部材30の拡径変形による応力が接着剤層32やOリング38に作用し難くなり、接着剤層32による本体12と円筒部材30との接着強度及び作動液体室40の液密強度が少なくて済む。
【0069】
ランド部42は、接着剤層32の接着剤がOリング38の配置部に侵入することを防止する接着剤堰止部として作用し、Oリング38に接着剤が付着することを抑制するから、接着剤が使用されても、Oリング38の弾性がOリング38に付着して硬化した接着剤によって阻害されることが抑制され、シール性能の低下が抑制される。これにより、作動液体室40の液密性が安定して確保される。
【0070】
また、ランド部42は、円筒部材30との間のクリアランスを全周に亘って最適に保ち、接着剤層32の厚さの周方向の変動を抑制する。これにより、接着剤層32による本体12と円筒部材30との接着強度が安定する。また、ランド部42は、マンドレル主部16に対する円筒部材30の嵌合挿入時のガイド部としても作用し、組付け作業性を改善する。
【0071】
本体12と円筒部材30とは鉄系金属により構成されていてもよいが、本体12に対する円筒部材30の固定が、接着剤層32の接着剤による接着により行われていることにより、本体12と円筒部材30とを異種材料により構成することが可能になる。
【0072】
例えば、本体12は鉄系金属等の金属により構成され、円筒部材30が本体12よりも弾性率が高い、GFRP、CFRP、KFRP等の繊維強化プラスチック、エンジニアリングプラスチックや本体12よりも耐摩耗性が高い鉄系金属、非鉄系金属等により構成されてよい。つまり、本体12と円筒部材30とは、円筒部材30の弾性率や耐摩耗性が本体12に比して高い異種材料により構成されてよい。
【0073】
これにより、円筒部材30の性能を、本体12とは別に、高膨張性や耐摩耗性に関して特化することができる。
【0074】
特に、本体12が鉄系金属等の金属により構成されるのに対して、円筒部材30がCFRPにより構成されることにより、本体12及び円筒部材30の各々に必要な強度を確保したうえで、円筒部材30の性能(物性)を、本体12とは別に高膨張性を有することに特化することができる。
【0075】
このことにより、作動液体室40の所定の昇圧に対する円筒部材30の拡径変形量が増加し、被クランプ部材W1のクランプが確実に行われるようになる。また、円筒部材30が作動液体室40の昇圧に対して拡径変形し易くなることにより、所要のクランプ力を得るための作動液体室40の昇圧が少なくて済み、接着剤層32による本体12と円筒部材30との接着強度が少なくて済む。
【0076】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態2を、
図2を参照して説明する。尚、
図2において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0077】
実施形態2では、Oリング溝36の作動液体室40とは軸線方向で見て反対側の側面に沿って樹脂製やゴム製等のリング部材70が設けられている。リング部材70は、Oリング溝36から径方向外方に突出する部分を有し、突出している分だけ円筒部材30の内周面30Aの間隙が、マンドレル主部16の外周面16Aの外径OD1と円筒部材30の内周面30Aの内径ID1との差による嵌合間隙より小さい。
【0078】
これにより、リング部材70は、実施形態1のランド部42と同等の接着剤堰止部として作用し、接着剤層32の接着剤がOリング38の配置部に侵入することを防止する。このことにより、Oリング38に接着剤が付着することが抑制され、接着剤が使用されても、Oリング38の弾性がOリング38に付着して硬化した接着剤によって阻害されることが抑制され、シール性能の低下が抑制される。これにより、作動液体室40の液密性が安定して確保される。
【0079】
また、リング部材70は、Oリング38が作動液体室40の液圧による変形によって上述の嵌合間隙に侵入することを抑制するバックアップリングとしても作用する。これにより、Oリング38の異常変形によるシール性能の低下が抑制される。
【0080】
実施形態2は、リング部材70に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0081】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態3を、
図3を参照して説明する。尚、
図3において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0082】
実施形態3では、マンドレル主部16は、円筒部材30との嵌合部であって、各Oリング溝36と対応する側の接着剤層32との間の外周面16AにOリング溝72を有する。各Oリング溝72には弾性体製のOリング74が装着されている。
【0083】
各Oリング74は円筒部材30の内周面30Aに弾圧的に当接し、接着剤層32の接着剤がOリング38の配置部に侵入することを防止する接着剤堰止部として作用する。このことにより、Oリング38に接着剤が付着することが抑制され、接着剤が使用されても、Oリング38の弾性がOリング38に付着して硬化した接着剤によって阻害されることが抑制され、シール性能の低下が抑制される。これにより、作動液体室40の液密性が安定して確保される。
【0084】
実施形態3は、Oリング74に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0085】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態4を、
図4を参照して説明する。尚、
図4において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0086】
実施形態4では、マンドレル主部16は、円筒部材30との嵌合部であって、各接着剤層32よりも軸線方向の外側の各々の位置に、外周面16Aより大きい外径OD3を有する、つまり拡径によるランド部44を有する。つまり、ランド部44は作動液体室40に対して接着剤層32より更に軸線方向に離れた位置に形成されている。
【0087】
ランド部44は、マンドレル主部16と円筒部材30との間のクリアランスを全周に亘って最適に保ち、接着剤層32の厚さの周方向の変動を抑制する。これにより、接着剤層32による本体12と円筒部材30との接着強度が安定する。また、ランド部44は、マンドレル主部16に対する円筒部材30の嵌合挿入時のガイド部としても作用し、組付け作業性を改善する。
【0088】
実施形態4は、ランド部44に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0089】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態5を、
図5を参照して説明する。尚、
図5において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0090】
実施形態5の液圧式クランプ装置10は、両Oリング38(対をなすシール部材)、74よりも更に軸線方向の外側の各々の位置にて、本体12と円筒部材30との間に設けられて対をなす接着剤層32、82及び接着剤溝34、80を有する。接着剤溝34、80の各々に接着剤が塗布、充填されることにより、接着剤層32、82が形成される。
【0091】
作動液体室40よりもフランジ部18側の接着剤層32及び接着剤溝(一方の接着剤溝)34は、実施形態1と同様に、マンドレル主部16の外周面16Aに形成されている。フランジ部18とは軸線方向で見て反対側で、作動液体室40よりも第1軸端部14側の接着剤溝(他方の接着剤溝)80及び接着剤層82は、円筒部材30の内周面30Aに形成されている。
【0092】
本体12に対する円筒部材30の組み付け(挿入)は、
図6に示されているように、先ず、マンドレル主部16の各接着剤溝34(
図5参照)及び円筒部材30の各接着剤溝80(
図5参照)に未硬化の液状の接着剤を塗布、充填して接着剤層32、82を形成する。また、各Oリング溝36、72(
図5参照)にOリング38、74を装着する。
【0093】
その後に、第1軸端部14の端面14A側から円筒部材30を本体12に対してフランジ部18に向けて軸線方向に、円筒部材30の端面30Cがフランジ部18の端面18Aに衝当するまで移動させ、円筒部材30を、内周面30Aをもってマンドレル主部16の外周面16Aに嵌合させる。
【0094】
この実施形態では、フランジ部18が、本体12に対する円筒部材30の組付時のフールプルーフとして作用し、本体12に対する円筒部材30の組付方向(挿入方向)を第1軸端部14の端面14A側からフランジ部18に向かう図にて左方向に限定し、逆方向からの挿入を禁止する。
【0095】
尚、本体12に対する円筒部材30の軸線方向の組付位置が他の治具等の使用のもとに決められる場合には、円筒部材30の端面30Cがフランジ部18の端面18Aに衝当する必要がなく、フランジ部18は本体12に対する円筒部材30の組付時のフールプルーフとしてのみに作用する。
【0096】
本体12と円筒部材30との嵌合における本体12に対する円筒部材30の移動方向(図にて左方向)で見て、フランジ部18側の接着剤溝34及び接着剤層32(一方の接着剤溝34及び接着剤層32)はOリング38、74の何れよりも見て前側になる。接着剤溝34は本体12に形成されている。接着剤溝34は本体12の外周に形成されている。接着剤層32は、本体12と円筒部材30との嵌合前に本体12に設けられる。
【0097】
これに対し、フランジ部18側の反対側の接着剤溝80及び接着剤層82(他方の接着剤溝80及び接着剤層82)はOリング38、74の何れよりも同移動方向で見て後側になる。接着剤溝80は円筒部材30の内周に形成されている。接着剤層82は、本体12と円筒部材30との嵌合前に円筒部材30に設けられる。
【0098】
換言すると、本体12に対する円筒部材30の移動方向で見て本体12に装着されているOリング38、74の何れよりも前側(フランジ部18側)に位置する接着剤溝34及び接着剤層32は本体12と円筒部材30との嵌合前に本体12に形成され、同移動方向で見てOリング38、74の何れよりも後側(フランジ部18の反対側)に位置する接着剤溝80及び接着剤層82は本体12と円筒部材30との嵌合前に円筒部材30に形成される。
【0099】
作動液体室40よりもフランジ部18側の接着剤層32だけがマンドレル主部16(本体12)の外周面16Aに形成され、作動液体室40よりもフランジ部18とは反対側の接着剤層82は円筒部材30の内周面30Aに形成されることにより、上述の本体12に対する円筒部材30の組み付け(挿入)において、接着剤層82の接着剤が何れのOリング38、74に接触することがない。
【0100】
これにより、組み付け時にOリング38、74に接着剤が付着することがなく、接着剤の付着、硬化によってOリング38、74の機能が損ねられることがない。
【0101】
実施形態5は、接着剤溝34、80及び接着剤層32、82に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0102】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態6を、
図7を参照して説明する。尚、
図7において、
図5に対応する部分は、
図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0103】
実施形態6では、フランジ部18が省略され、第2軸端部20がマンドレル主部16に対する図にて左側の拡径部をなす。第2軸端部20はマンドレル主部16との境界部に、円筒部材30の円環状の端面30Cと対向する第2軸端部20の円環状の端面(肩面)20Bを画定している。
【0104】
この実施形態では、第2軸端部20が、本体12に対する円筒部材30の組付時のフールプルーフとして作用し、実施形態5と同様に、本体12に対する円筒部材30の組付方向(挿入方向)を第1軸端部14の端面14A側から第2軸端部20の端面20Bに向かう図にて左方向に限定し、逆方向からの挿入を禁止する。
【0105】
この実施形態でも、本体12に対する円筒部材30の移動方向で見て本体12に装着されているOリング38、74の何れよりも前側(第2軸端部20側)に位置する接着剤溝34及び接着剤層32は本体12と円筒部材30との嵌合前に本体12に形成され、同移動方向で見てOリング38、74の何れよりも後側(第2軸端部20の反対側)に位置する接着剤溝80及び接着剤層82は本体12と円筒部材30との嵌合前に円筒部材30に形成される。
【0106】
これにより、本体12に対する円筒部材30の組み付け(挿入)において、接着剤層82の接着剤が何れのOリング38、74に接触することがなく、接着剤の付着、硬化によってOリング38、74の機能が損ねられることがない。
【0107】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態7を、
図8を参照して説明する。尚、
図8において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0108】
実施形態7では、各接着剤溝34は、フランジ部18に向けて下り勾配、つまり溝が深くなるテーパ面による斜面34A及び斜面34Aの終端から径方向外方に起立した円環面をなす直立面34Bにより画定される互いに同一形状の三角形断面を有する。各接着剤溝34の直立面34Bは、斜面34Aよりも本体12に対する円筒部材30の挿入方向で見て前側(
図8で見て左側)に整列し、全て接着剤溝34のフランジ部18側の側面をなす。
【0109】
この各接着剤溝34によれば、本体12に対する円筒部材30の挿入時に、各接着剤溝34に充填されている接着剤が接着剤溝34外へ溢流することが、各接着剤溝34のフランジ部18側の側面が直立面34Bであることにより、同側面が緩斜面である場合に比して効果的に堰き止められ、接着剤溝34に接着剤が残留し易くなる。
【0110】
これにより、接着剤の無駄な消費が低減すると共に接着剤溝34外の接着剤がOリング38、74に付着することが抑制される。
【0111】
実施形態7は、接着剤溝34の形状に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0112】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態8を、
図9を参照して説明する。尚、
図9において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0113】
実施形態8では、円筒部材30に、フランジ部18側の軸端から径方向外方に延出した円環状の外向きフランジ部(第2の外向きフランジ部)31が形成されている。外向きフランジ部31は本体12のフランジ部(第1の外向きフランジ部)18に正対している。フランジ部18が外向きフランジ部31に正対する面には円環状の接着剤溝33が形成されている。接着剤溝33には接着剤が充填されており、この接着剤はフランジ部18と外向きフランジ部31との互いの対向面間に存在する追加の接着剤層35をなす。
【0114】
接着剤層35は、本体12と円筒部材30とを互いに接着(貼着)する接着剤層として、接着剤層32と同等の接着剤層であり、接着剤層35が追加されることにより、本体12に対する円筒部材30の接着強度が増大する。
【0115】
実施形態8は、追加の接着剤層35に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0116】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態9を、
図10を参照して説明する。尚、
図10において、
図1に対応する部分は、
図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0117】
実施形態9では、接着剤溝34がマンドレル主部16の外周を取り囲む螺旋溝を含んでおり、螺旋溝に充填された接着剤による接着剤層32を含む。
【0118】
螺旋状の接着剤層32が設けられることにより、本体12に対する円筒部材30の周方向の接着強度(剪断強度)に加えて、軸線方向の接着強度(剪断強度)も向上する。
【0119】
実施形態9は、接着剤溝34に関すること以外は、実施形態1と実質的に同一であり、実施形態1と同等の作用、効果を奏する。
【0120】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態10を、
図11を参照して説明する。
【0121】
液圧式クランプ装置100は、チャック型のクランプ装置であり、本体(第1の部材)102を有する。本体102は筒状部104とフランジ部106とを軸線方向に順に同一軸線上に有する。フランジ部106は、筒状部104より大径で、径方向に拡張された外向きフランジ部をなす。
【0122】
本体102の内周には、薄肉構造の円筒部材(第2の部材)110が接着剤層112によって固定されている。円筒部材110は、本体102の内周面(第1の周面)102Aに嵌合する外周面(第2の周面)110Aと、丸棒形状の被クランプ部材W2をクランプする内周面110Bとを有する。尚、接着剤層112による本体102に対する円筒部材110の固定(貼着)の詳細は後述する。
【0123】
円筒部材110の外周面110Aには周溝状の凹部110Cが形成されている。凹部110Cは、本体102と円筒部材110との間に、軸線方向に所定の長さを有して本体102の内周面102Aの全周に亘って延在する横断面形状が円環状の作動液体室120を画定している。
【0124】
各接着剤層112は、本体102の内周面102Aと円筒部材110の外周面110Aとの嵌合部であって、作動液体室120の軸線方向の端部よりも軸線方向に離れた作動液体室120の両側に、各々2個ずつ軸線方向に隔置して設けられて対をなし、本体102と円筒部材110とを接着(貼着)によって互いに固定している。接着剤層112は、円筒部材110の外周面110Aに形成された周溝による接着剤溝114に充填された接着剤によって形成されている。接着剤層112を形成する好適な接着剤として2液性エポキシ接着剤や嫌気性接着剤等がある。
【0125】
各接着剤溝114に充填された接着剤による各接着剤層112の厚さは本体102の内周面102Aの内径から接着剤溝の外径を差し引いた値の1/2の値によって決まる。各接着剤層112の最適厚さは、接着剤の種類等により決まる最大剪断強度により決まる。各接着剤層112の軸線方向の最適寸法は、円筒部材110の内径等により決まる。
【0126】
本体102の内周面102Aと円筒部材110の外周面110Aとの嵌合部であって、各接着剤層112と作動液体室120の対応する軸線方向の端部との間の円筒部材110の外周面110Aには周溝によるOリング溝116が形成されている。各Oリング溝116にはシール部材をなす弾性体製のOリング118が装着されている。各Oリング118は本体102の内周面102Aに弾圧的に当接し、作動液体室120の液密シールを行う。
【0127】
換言すると、液圧式クランプ装置100は、作動液体室120の軸線方向の両端部よりも外側の各々の位置にて、本体102と円筒部材110との間に設けられて対をなす円環状のOリング118によるシール部材を有する。更に、液圧式クランプ装置100は、本体102に対する円筒部材110を固定すべく、両Oリング118(対をなすシール部材)よりも更に軸線方向の外側の各々の位置にて、本体102と円筒部材110との間に設けられて対をなす接着剤層112を有する。
【0128】
2個のOリング118は、互いに軸線方向に離れた位置にあって、各々全周に亘って本体102の内周面102Aに弾圧的に当接することにより、本体102に対する円筒部材110のセンタリングを行い、本体102と円筒部材110との同心度を高める作用もする。
【0129】
円筒部材110は、本体102との嵌合部であって、各Oリング溝116と対応する側の接着剤層112との間の外周面110AにOリング溝122を有する。各Oリング溝122には弾性体製のOリング124が装着されている。
【0130】
各Oリング124は本体102の内周面102Aに弾圧的に当接し、接着剤層112の接着剤がOリング118の配置部に侵入することを防止する接着剤堰止部として作用する。このことにより、Oリング118に接着剤が付着することが抑制され、接着剤が使用されても、Oリング118の弾性がOリング118に付着して硬化した接着剤によって阻害されることが抑制され、シール性能の低下が抑制される。これにより、作動液体室120の液密性が安定して確保される。
【0131】
本体102は軸線方向に延在するピストン室130を有する。ピストン室130にはピストン132が軸線方向に移動可能に嵌合している。ピストン室130の一方の端部は本体102に形成された径方向の通路134によって作動液体室120に連通している。
【0132】
ピストン132によって区切られたピストン室130の通路134側の室空間、通路134及び作動液体室120は、一つの密閉空間をなしており、グリース等の作動油(作動液体)を封入されている。
【0133】
本体102には、軸線方向に延在してピストン室130のもう一方の端部に連通し、且つ本体102の端面104Aに開口したねじ孔136が形成されている。ねじ孔136には六角孔付きの作動ねじ部材138がねじ係合している。作動ねじ部材138とピストン132との間に鋼球140が配置されている。作動ねじ部材138はねじ込みによってねじ孔136をピストン室130側に螺進し、当該螺進が鋼球140を介してピストン132に伝達される。
【0134】
このように、加圧構造が構成され、作動ねじ部材138のねじ込みによってピストン132がピストン室130を通路134側(
図11で見て左側)に移動することにより、作動液体室120の作動油が加圧され、当該加圧によって円筒部材110が径方向の弾性変形により径方向内方に縮径変形する。これにより、円筒部材110の内周面110Bにおいて円筒部材110の縮径変形のもとに被クランプ部材W2をクランプすることが行われる。より詳細には、被クランプ部材W2は、円筒部材110の縮径変形によって外周面に円筒部材110の内周面110Bが密着することにより、液圧式クランプ装置100に固定(クランプ)される。
【0135】
このように、実施形態10の液圧式クランプ装置100は、丸棒形状の被クランプ部材W2を心だし状態(同心状態)でクランプする。
【0136】
実施形態10による液圧式クランプ装置100も、本体102に対する円筒部材110の固定が、圧入嵌合によらずに、接着剤層112の接着剤による接着により行われているから、圧入嵌合時の応力が円筒部材110に残留することがない。これにより、円筒部材110の同心度、円筒度、真円度が低下することが回避され、高精度なクランピングが行われる。
【0137】
作動液体室120は、円筒部材110の外周面110Aには形成された凹部110Cにより画定されているから、それよりも軸線方向の外側に存在する接着剤層112やOリング118、124に対応する部分より薄肉であるから、作動液体室120の作動油の昇圧による円筒部材110の縮径変形が凹部110Cによる薄肉部分に集中する。
【0138】
これにより、円筒部材110の拡径変形及び縮径変形による応力が接着剤層112やOリング118に作用し難くなり、接着剤層112による本体102と円筒部材110との接着強度及びOリング118による作動液体室120の液密強度が少なくて済む。
【0139】
この実施形態でも、本体102と円筒部材110とは鉄系金属により構成されていてもよいが、本体102に対する円筒部材110の固定が、接着剤層112の接着剤による接着により行われていることにより、本体102と円筒部材110とを異種材料により構成することが可能になる。
【0140】
次に、本発明による液圧式クランプ装置の実施形態11を、
図12を参照して説明する。尚、
図12において、
図11に対応する部分は、
図11に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0141】
実施形態11の液圧式クランプ装置100は、両Oリング118(対をなすシール部材)、124よりも更に軸線方向の外側の各々の位置にて、本体102と円筒部材110との間に設けられて対をなす接着剤層112、144及び接着剤溝114、142を有する。接着剤溝114、142の各々に接着剤が塗布、充填されることにより、接着剤層112、144が形成される。
【0142】
実施形態11の液圧式クランプ装置100は、更に、本体102のフランジ部106側の軸端に設けられた内向きフランジ部(縮径部)108を有する。内向きフランジ部108は、本体102の軸端から径方向内方に円環状に突出して内周面102Aの内径より小さい内径を有し、本体102の一部をなす。
【0143】
内向きフランジ部108の図にて右側の端面108Aは、円筒部材110の端面110Dの衝当により、本体102に対する円筒部材110の軸線方向の組付位置を一義的に決めるストッパ面をなすと共に、本体102に対する円筒部材110の組付方向(挿入方向)を、筒状部104の端面104A側から内向きフランジ部108に向かう図にて左方向に限定し、逆方向からの挿入を禁止するフールプルーフ部をなす。
【0144】
尚、本体102に対する円筒部材110の軸線方向の組付位置が他の治具等の使用のもとに決められる場合には、円筒部材110の端面110Dが内向きフランジ部108の端面108Aに衝当する必要がない。
【0145】
本体102と円筒部材110との嵌合における本体102に対する円筒部材110の移動方向(図にて左方向)で見て、内向きフランジ部108側の接着剤溝142及び接着剤層144(一方の接着剤溝142及び接着剤層144)はOリング118、124の何れよりも前側になる。接着剤溝142は本体102の内周に形成されている。接着剤層144は、本体102と円筒部材110との嵌合前に本体102に設けられる。
【0146】
これに対し、内向きフランジ部108側の反対側の接着剤溝114及び接着剤層112(他方の接着剤溝114及び接着剤層112)はOリング118、124の何れよりも同移動方向で見て後側になる。接着剤溝114は円筒部材110の外周に形成されている。接着剤層112は、本体102と円筒部材110との嵌合前に円筒部材110に設けられる。
【0147】
換言すると、本体102に対する円筒部材110の移動方向で見て本体102に装着されているOリング118、124の何れよりも前側(内向きフランジ部108側)に位置する接着剤溝142及び接着剤層144は本体102と円筒部材110との嵌合前に本体102に形成され、同移動方向で見てOリング118、124の何れよりも後側(内向きフランジ部108の反対側)に位置する接着剤溝114及び接着剤層112は本体102と円筒部材110との嵌合前に円筒部材110に形成される。
【0148】
作動液体室120よりも内向きフランジ部108とは反対側の接着剤層112だけが円筒部材110の外周面110Aに形成され、作動液体室120よりも内向きフランジ部108側の接着剤層144は、本体102の内周面102Aに形成されることにより、上述の本体102に対する円筒部材110の組み付け(挿入)において、接着剤層112の接着剤が何れのOリング118、124に接触することがない。
【0149】
これにより、組み付け時にOリング118、124に接着剤が付着することがなく、接着剤の付着、硬化によってOリング118、124の機能が損ねられることがない。
【0150】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0151】
何れの実施形態でも、作動液体室40、120の軸線方向の両側の接着剤層32、82、112、144は2個ずつ設けられているが、これらの接着剤層32、82、112、144は作動液体室40、120の軸線方向の両側の1個でも、2個以上の複数個であってもよい。接着剤溝34、80、114、142は必須でなく、接着剤層32、82、112、144は、マンドレル主部16の外周面16Aと円筒部材30の内周面30Aとの間の嵌合間隙或いは本体102の内周面102Aと円筒部材110の外周面110Aとの間の嵌合間隙に形成されていてもよい。
図13は接着剤層32がマンドレル主部16の外周面16Aと円筒部材30の内周面30Aとの間の嵌合間隙に形成された実施形態を示している。
【0152】
第1軸端部14とマンドレル主部16とフランジ部18と第2軸端部20とは、必ずしも同一軸線上になくてもよく、第1軸端部14と第2軸端部20とが同一外径でなくてもよい。また、マンドレル主部16は第1軸端部14及び第2軸端部20より大きい外径でなくてもよい。
【0153】
マンドレル型の液圧式クランプ装置10のOリング溝36、72は円筒部材30の内周面30Aに形成されていてもよく、チャック型の液圧式クランプ装置100のOリング溝116、122は本体102の内周面102Aに形成されていてもよい。また、作動液体室40の軸線方向の両側に形成されたOリング溝36、72、116、122は一方が円筒部材30、110に形成され、他方が本体12、102に形成されていてもよい。
【0154】
本体12、102に対する円筒部材30、110の組み付けは、円筒部材30、110に対して本体12、102が軸線方向に移動することにより行われてもよい。つまり、本体12、102と円筒部材30、110との嵌合は、当該両者の軸線方向の相対的な移動により行われればよい。
【0155】
上述の各実施形態の技術的特徴事項は、相互に組み合わされてもよい。実施形態10によるチャック型の液圧式クランプ装置100に実施形態1~9に示されているマンドレル型の液圧式クランプ装置10の技術的特徴事項を組み合わせられてもよい。
【0156】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0157】
10 :液圧式クランプ装置
12 :本体(第1の部材)
14 :第1軸端部
14A :端面
16 :マンドレル主部
16A :外周面(第1の周面)
16B :凹部
18 :フランジ部(拡径部、第1の外向きフランジ部)
18A :端面
20 :第2軸端部(拡径部)
20A :端面
30 :円筒部材(第2の部材)
30A :内周面(第2の周面)
30B :外周面
30C :端面
30D :凹部
31 :外向きフランジ部(第2の外向きフランジ部)
32 :接着剤層
33 :接着剤溝
34 :接着剤溝
34A :斜面
34B :直立面
35 :接着剤層
36 :Oリング溝
38 :Oリング(シール部材)
40 :作動液体室
42 :ランド部(接着剤堰止部)
44 :ランド部
50 :ピストン室
52 :ピストン
54 :通路
56 :通路
58 :ねじ孔
60 :工具挿入孔
62 :作動ねじ部材
64 :鋼球
66 :ドリル加工孔
68 :鋼球
69 :ねじ栓
70 :リング部材(接着剤堰止部)
72 :Oリング溝
74 :Oリング(接着剤堰止部)
80 :接着剤溝
82 :接着剤層
100 :液圧式クランプ装置
102 :本体(第1の部材)
102A :内周面(第1の周面)
104 :筒状部
104A :端面
106 :フランジ部
108 :内向きフランジ部(縮径部)
108A :端面
110 :円筒部材(第2の部材)
110A :外周面(第2の周面)
110B :内周面
110C :凹部
110D :端面
112 :接着剤層
114 :接着剤溝
116 :Oリング溝
118 :Oリング
120 :作動液体室
122 :Oリング溝
124 :Oリング(接着剤堰止部)
130 :ピストン室
132 :ピストン
134 :通路
136 :ねじ孔
138 :作動ねじ部材
140 :鋼球
142 :接着剤溝
144 :接着剤層
A :中心孔
ID1 :内径
OD1 :外径
OD2 :外径
OD3 :外径
W1 :被クランプ部材
W2 :被クランプ部材