(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】制御可能に展開可能な補綴弁
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2021558833
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020026236
(87)【国際公開番号】W WO2020206012
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513259997
【氏名又は名称】ニオバスク ティアラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フン, エリック ソン-サン
(72)【発明者】
【氏名】フン, キャサリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, カレン ツェク-ジ
(72)【発明者】
【氏名】カレキアン, アーロン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハーバール, コナー ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アンソン ワイ チュン
(72)【発明者】
【氏名】ボデル, ケレン
(72)【発明者】
【氏名】ブロデューア, クリストファー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504709(JP,A)
【文献】特表2016-518211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257467(US,A1)
【文献】特表2013-525039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055628(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0265400(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005863(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2777617(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00;2/02-2/80;3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補綴弁であって、
半径方向拡張可能フレームであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、環状領域と、心室アンカタブとを備え、
前記心房フランジは、前記拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、前記心室スカートは、前記拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、
前記環状領域は、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置され、
前記アンカタブは、前記心室スカートに結合され、
前記環状領域は、後部分と、前部分とを備え、前記後部分は、円形であり、前記前部分は、平坦である、半径方向拡張可能フレームと、
前記拡張可能フレームに結合される拘束要素であって、前記拘束要素は、フープ力を前記拡張可能フレームに印加し、それによって、前記拡張可能フレームの拡張の量または圧潰の量を制御するように構成される、拘束要素と
を備え
、
前記拘束要素は、前記心房フランジの外周の周囲に巻着される拘束具を備え、前記拘束具は、前記拘束具の対向する端部上に位置するタブおよびスロットを備え、前記拘束具は、圧潰構成において前記心房フランジを保持するように構成される、弁。
【請求項2】
前記拘束要素は、調節可能なフープ力を前記拡張可能フレームに印加するように構成される調節可能拘束要素である、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記調節可能拘束要素は、前記心房フランジの外周の周囲に配置されるラッソを備える、請求項2に記載の弁。
【請求項4】
前記拡張可能フレームは、前記心房フランジの外周に結合される複数のアイレットを備え、前記ラッソは、前記複数のアイレットを通して摺動可能に配置される、請求項3に記載の弁。
【請求項5】
前記ラッソは、前記ラッソに結合される1つ以上の伸長テザーを備え、前記1つ以上の伸長テザーの作動は、前記フープ力を印加または解放し、それによって、前記心房フランジを拡張または圧潰させる、請求項3に記載の弁。
【請求項6】
前記拘束要素は、前記拡張可能フレームに固定して取り付けられる、請求項1に記載の弁。
【請求項7】
前記拘束要素は、前記拡張可能フレームに解放可能に取り付けられる、請求項1に記載の弁。
【請求項8】
補綴弁であって、
半径方向拡張可能フレームであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、環状領域と、心室アンカタブとを備え、
前記心房フランジは、前記拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、前記心室スカートは、前記拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、
前記環状領域は、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置され、
前記アンカタブは、前記心室スカートに結合される、半径方向拡張可能フレームと、
前記拡張可能フレームに結合される拘束要素であって、前記拘束要素は、フープ力を前記拡張可能フレームに印加し、それによって、前記拡張可能フレームの拡張の量または圧潰の量を制御するように構成される、拘束要素と
を備え、
前記拘束要素は、前記心房フランジの外周の周囲に配置される拘束具を備え、
前記拘束具は、第1の遊離端と、前記第1の遊離端に対向する第2の遊離端とを備え、
前記第1の遊離端は、スロットを備え、前記第2の遊離端は、外向きに突出するアイレットを備え、
前記アイレットは、伸長テザーが、前記アイレット内に解放可能かつ摺動可能に配置されると、前記拘束具が、前記心房フランジの拡張を拘束する閉ループにおいて保持されるように、前記スロット内に配置され、
前記アイレットからの前記伸長テザーの除去は、前記拘束具が開放することを可能にし、前記心房フランジの拡張を可能にする、弁。
【請求項9】
前記拘束要素は、前記心室アンカタブおよび前記心室スカートにわたって配置され、前記フープ力の調節は、前記心室アンカタブと前記心室スカートとの間の半径方向距離を制御する、請求項1に記載の弁。
【請求項10】
第1の端部と、前記第1の端部に対向する第2の端部とを有するテザーをさらに備え、前記第1の端部は、前記拘束要素に結合され、前記第2の端部は、前記補綴弁を搬送する送達カテーテル内で、または前記送達カテーテルに並んで搬送されるように構成され、前記第2の端部は、オペレータによって作動または操作されるように構成される、請求項1に記載の弁。
【請求項11】
補綴弁システムであって、
請求項1または
8に記載の補綴弁と、
縦方向軸を有し、前記補綴弁を搬送する送達カテーテルと、
前記拘束要素に結合されるテザーであって、前記テザーは、前記送達カテーテルの縦方向軸に沿って軸方向に延設され、前記テザーの作用は、前記拡張可能フレームに印加される前記フープ力を制御する、テザーと
を備える、システム。
【請求項12】
前記テザーは、前記拘束要素に解放可能に結合される、請求項
11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2019年4月1日に出願された、米国仮特許出願第62/827,380号(弁理士整理番号第5131.016PRV号)の利益を主張する。
【0002】
脊椎動物の心臓は、4つの小室に分割され、心臓によって圧送される血液が、逆流動を伴わずに心血管系を通して順方向に流動することを確実にする、4つの弁(僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁、および三尖弁)を備える。健康な心臓の僧帽弁は、心臓の左心室から左心房の中への血液の逆流動を防止し、左心室が収縮するときに閉鎖する、2つの可撓性弁尖(前および後)を備える。弁尖は、線維性弁輪に付着し、それらの遊離縁は、弁下腱索によって左心室内の乳頭筋に繋留され、それらが左心室の収縮の間に左心房の中に逸脱しないように防止する。
【0003】
種々の心疾患または変性変化が、僧帽弁器官のこれらの部分のうちのいずれかにおける機能障害を引き起こし、僧帽弁を異常に狭化または拡張した状態にさせる、または血液が左心室から左心房の中に戻るように漏出(逆流とも称される)することを可能にし得る。いずれのそのような障害も、心臓充足性を損なわせ、消耗性または致命的となり得る。
【0004】
天然僧帽弁器官を置換する、修復する、または再成形するための開心外科手術技法、および天然僧帽弁の解剖学的構造を修正するための弁輪形成リング等の種々の補綴デバイスの外科手術埋込を含む、多数の外科手術方法およびデバイスが、それに応じて、僧帽弁機能障害を治療するために開発されている。より最近では、置換僧帽弁アセンブリの送達のための低侵襲性経カテーテル技法が、開発されている。そのような技法では、補綴弁は、概して、可撓性カテーテルの端部上に圧着状態において搭載され、弁が埋込部位に到達するまで、患者の血管または身体を通して前進される。補綴弁は、次いで、欠陥のある天然弁の部位においてその機能的サイズまで拡張される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
弁逆流のための外科手術および低侵襲性治療のうちのいくつかは、有望であるが、それらは、送達することが困難である、製造することが高価であり得る、または全ての患者のために必要を示されない場合がある。したがって、僧帽弁の機能不全等の弁の機能不全の治療のための改良されたデバイスおよび方法を提供することが、望ましいであろう。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、開示されるデバイスおよび方法によって満たされるであろう。
【0006】
開示されるデバイス、送達システム、および方法の具体的実施例が、ここで、図面を参照して説明されるであろう。本詳細な説明では、いかなる特定の構成要素、特徴、またはステップも、本発明に不可欠であることを示唆することを意図していない。
(項目1)
補綴弁であって、
半径方向拡張可能フレームであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、環状領域と、心室アンカタブとを備え、
前記心房フランジは、前記拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、前記心室スカートは、前記拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、
前記環状領域は、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置され、
前記アンカタブは、前記心室スカートに結合される、半径方向拡張可能フレームと、
前記拡張可能フレームに結合される拘束要素であって、前記拘束要素は、フープ力を前記拡張可能フレームに印加し、それによって、前記拡張可能フレームの拡張の量または圧潰の量を制御するように構成される、拘束要素と
を備える、弁。
(項目2)
前記拘束要素は、調節可能なフープ力を前記拡張可能フレームに印加するように構成される調節可能拘束要素である、項目1に記載の弁。
(項目3)
前記調節可能拘束要素は、前記心房フランジの外周の周囲に配置されるラッソを備える、項目2に記載の弁。
(項目4)
前記拡張可能フレームは、前記心房フランジの外周に結合される複数のアイレットを備え、前記ラッソは、前記複数のアイレットを通して摺動可能に配置される、項目3に記載の弁。
(項目5)
前記ラッソは、前記ラッソに結合される1つ以上の伸長テザーを備え、前記1つ以上の伸長テザーの作動は、前記フープ力を印加または解放し、それによって、前記心房フランジを拡張または圧潰させる、項目3に記載の弁。
(項目6)
前記拘束要素は、前記拡張可能フレームに固定して取り付けられる、項目1に記載の弁。
(項目7)
前記拘束要素は、前記拡張可能フレームに解放可能に取り付けられる、項目1に記載の弁。
(項目8)
前記拘束要素は、前記心房フランジの外周の周囲に配置される拘束具を備える、項目1に記載の弁。
(項目9)
前記拘束具は、第1の遊離端と、前記第1の遊離端に対向する第2の遊離端とを備え、
前記第1の遊離端は、スロットを備え、前記第2の遊離端は、外向きに突出するアイレットを備え、
前記アイレットは、伸長テザーが、前記アイレット内に解放可能かつ摺動可能に配置されると、前記拘束具が、前記心房フランジの拡張を拘束する閉ループにおいて保持されるように、前記スロット内に配置され、
前記アイレットからの前記伸長テザーの除去は、前記拘束具が開放することを可能にし、前記心房フランジの拡張を可能にする、項目8に記載の弁。
(項目10)
前記拘束要素は、前記心室アンカタブおよび前記心室スカートにわたって配置され、前記ループ力の調節は、前記心室アンカタブと前記心室スカートとの間の半径方向距離を制御する、項目1に記載の弁。
(項目11)
第1の端部と、前記第1の端部に対向する第2の端部とを有するテザーをさらに備え、前記第1の端部は、前記拘束要素に結合され、前記第2の端部は、前記補綴弁を搬送する送達カテーテル内で、またはそれに並んで搬送されるように構成され、前記第2の端部は、オペレータによって作動または操作されるように構成される、項目1に記載の弁。
(項目12)
補綴弁システムであって、
項目1に記載の補綴弁と、
縦方向軸を有し、前記補綴弁を搬送する送達カテーテルと、
拘束要素に結合されるテザーであって、前記テザーは、前記送達カテーテルの縦方向軸に沿って軸方向に延設され、前記テザーの作用は、拡張可能フレームに印加されるフープ力を制御する、テザーと
を備える、システム。
(項目13)
前記テザーは、前記拘束要素に解放可能に結合される、項目12に記載のシステム。
(項目14)
患者内の治療面積に補綴弁を送達する方法であって、前記方法は、
半径方向拡張可能フレームを有する補綴弁を提供することであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置される環状領域と、前記心室スカートに結合される心室アンカタブとを備える、ことと、
圧潰構成における前記補綴弁の少なくとも一部を保持する拘束要素を用いて、前記補綴弁にフープ力を印加させることと、
前記圧潰構成において前記治療面積に前記補綴弁を前進させることと、
前記フープ力を調節し、前記補綴弁の一部が半径方向に拡張することを可能にすることと、
前記補綴弁を前記治療面積内の組織に係留することと
を含む、方法。
(項目15)
前記拘束要素は、ラッソを備え、前記補綴弁に前記フープ力を印加させることは、前記補綴弁の周囲に前記ラッソを確実に維持することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ラッソを維持することは、前記ラッソに結合されるテザーに張力付与することを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記フープ力を調節することは、前記ラッソを弛緩させることを含む、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記ラッソを弛緩させることは、前記ラッソに結合されるテザーにおける張力を低減させることまたは前記ラッソから前記テザーを結合解除することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記拘束要素は、拘束具を備え、前記補綴弁に前記フープ力を印加させることは、前記補綴弁の周囲に前記拘束具を維持することを含む、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記フープ力を調節することは、前記拘束具を弛緩させることを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記拘束具を弛緩させることは、前記拘束具からテザーを結合解除することを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記フープ力を調節した後、第2のフープ力を前記補綴弁に印加し、それによって、前記補綴弁を圧潰させることをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記拘束要素は、前記心房フランジに結合される、項目14に記載の方法。
(項目24)
補綴弁であって、
半径方向拡張可能フレームであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置される環状領域と、心室アンカタブとを備える、半径方向拡張可能フレーム
を備え、
前記心房フランジは、前記拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、前記心室スカートは、前記拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、
前記心室アンカタブは、前記心室スカートに結合され、前記心室アンカタブは、非外傷性先端、または超音波を用いて可視化されるときにエコー源性である、または放射線撮影を用いて可視化されるときに放射線不透過性である先端を備える、補綴弁。
(項目25)
前記先端は、エコー源性材料から形成されるエコー源性先端である、または、
前記エコー源性先端は、前記アンカタブに結合されるエコー源性材料を含む、または、
前記エコー源性先端は、それにエコー源性を付与する前記アンカタブ上に配置される表面特徴から形成される、項目24に記載の補綴弁。
(項目26)
前記非外傷性先端は、前記アンカタブに結合され、前記組織を突刺することなく前記心臓内の組織に係合するように構成されるポリマーまたは他の材料を含む、項目24に記載の弁。
(項目27)
前記アンカタブに結合される非外傷性先端をさらに備え、前記非外傷性先端は、前記非外傷性先端を伴わない前記アンカタブに対してより広い表面積を有し、前記非外傷性先端は、より大きい表面積にわたって係留力を分配し、それによって、前記非外傷性先端が係留する組織への外傷を低減または排除するように構成される、項目24に記載の弁。
(項目28)
前記非外傷性先端は、拡張構成と、圧潰構成とを有する自己拡張先端を備え、前記非外傷性先端は、前記拡張構成に留まるように付勢され、前記非外傷性先端は、拘束を用いて前記圧潰構成において保持され、前記拡張構成では、前記非外傷性先端は、組織に突刺することなく前記組織に係合するように構成され、前記圧潰構成では、前記弁は、前記心臓への送達のために構成される外形を有する、項目24に記載の弁。
(項目29)
前記非外傷性先端は、渦巻捩りばねを備える、項目28に記載の弁。
(項目30)
前記非外傷性先端は、その可撓性を増加させるために、前記非外傷性先端内に配置される1つ以上のスロットまたは開口を備える、項目28に記載の弁。
(項目31)
前記拡張可能フレームに結合される複数の交連柱をさらに備え、前記複数の交連柱は、複数の補綴弁尖を保持するように構成され、前記複数の交連柱のうちの1つ以上のものは、前記半径方向拡張可能フレームの縦方向軸を横断する、項目24に記載の弁。
(項目32)
前記拡張可能フレームに結合される複数の交連柱をさらに備え、前記複数の交連柱のうちの1つ以上のものは、前記半径方向拡張可能フレームの縦方向軸に対して調節可能に角形成可能である、項目24に記載の弁。
(項目33)
補綴弁であって、
半径方向拡張可能フレームであって、前記半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、前記心房フランジと前記心室スカートとの間に配置される環状領域と、心室アンカタブと、複数の交連柱とを備える、半径方向拡張可能フレーム
を備え、
前記心房フランジは、前記拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、前記心室スカートは、前記拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、
前記心室スカートは、前記補綴弁の最下流縁である心室縁を有し、
前記心室アンカタブは、前記心室スカートに結合され、
前記複数の交連柱は、遊離端と、接続端とを備え、前記接続端は、前記拡張可能フレームに結合され、前記遊離端は、前記心室スカートの心室縁を越えて延在する、補綴弁。
(項目34)
前記補綴弁は、補綴僧帽弁である、項目33に記載の補綴弁。
(項目35)
前記交連柱は、前記遊離端上の結合要素を備え、前記結合要素は、前記補綴弁を送達カテーテルと解放可能に係合させるように構成される、項目33に記載の補綴弁。
(項目36)
前記複数の交連柱のうちの少なくとも1つは、前記半径方向拡張可能フレームの縦方向軸を横断する、項目33に記載の補綴弁。
(項目37)
前記複数の交連柱のうちの少なくとも1つは、前記半径方向拡張可能フレームの縦方向軸に対して調節可能に角形成可能である、項目33に記載の補綴弁。
(項目38)
少なくとも1つの結合要素は、オペレータが、放射線撮像を用いて前記補綴弁の前部分を可視化することを可能にするように構成される放射線不透過性マーカである、項目35に記載の補綴弁。
【図面の簡単な説明】
【0007】
必ずしも縮尺通りに描かれるわけではない図面では、同様の番号は、異なる図または類似するステップにおいて類似する構成要素を説明し得る。異なる文字の添え字を有する同様の番号は、類似する構成要素の異なる事例を表し得る。図面は、概して、実施例として、限定ではないが、本書に議論される種々の実施例を図示する。
【0008】
【
図1】
図1は、矢印を用いて収縮期の間の血流を示す、心臓の左心室の概略図である。
【0009】
【
図2】
図2は、僧帽弁内に逸脱弁尖を有する、心臓の左心室の概略図である。
【0010】
【
図3】
図3は、心臓が拡張され、弁尖が交わらない、心筋症に罹患している患者における心臓の概略図である。
【0011】
【0012】
【
図3B】
図3Bは、拡張された心臓における異常な閉鎖を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、損なわれた乳頭筋を有する、心臓の左心室内の僧帽弁逆流を図示する。
【0014】
【
図5A】
図5A-5Bは、基本的な僧帽弁の解剖学的構造を図示する。
【
図5B】
図5A-5Bは、基本的な僧帽弁の解剖学的構造を図示する。
【0015】
【
図6】
図6は、例示的補綴僧帽弁の底面部分的断面図を図示する。
【0016】
【
図7】
図7は、
図6に見られる補綴僧帽弁のアンカ部分の斜視図である。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【
図11】
図11は、補綴弁の埋込のための送達デバイスの側面図である。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【
図16】
図16は、補綴弁の埋込のための送達デバイスの別の実施例の側面図である。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【
図20】
図20は、補綴弁の一部に係合するように適合される、
図16の送達デバイスの遠位部分を図示する。
【0032】
【0033】
【
図22A】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22B】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22C】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22D】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22E】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22F】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図22G】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。
【0034】
【
図23A】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23B】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23C】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23D】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23E】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23F】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【
図23G】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する方法の実施例を図示する。
【0035】
【
図24】
図24は、僧帽空間内に埋込される補綴僧帽弁を図示する。
【0036】
【
図25】
図25は、左心室から上向きに見た僧帽空間内に埋込される僧帽弁の底面図を図示する。
【0037】
【0038】
【0039】
【
図28A】
図28A-28Cは、圧潰および拡張構成における非外傷性アンカの実施例を図示する。
【
図28B】
図28A-28Cは、圧潰および拡張構成における非外傷性アンカの実施例を図示する。
【
図28C】
図28A-28Cは、圧潰および拡張構成における非外傷性アンカの実施例を図示する。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【
図36】
図36は、拡張可能フレームの別の実施例を図示する。
【0050】
【
図37】
図37は、角度付き交連柱を伴う拡張可能フレームの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
心臓の解剖学的構造
【0052】
収縮期における正常な心臓Hの左心室LVが、
図1に図示される。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向において三尖弁である大動脈弁AVを通して外向きに流動する。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内のものよりも高いときに逆流動を防止する「逆止弁」として構成されるため、僧帽弁MVを通した血液の逆流動または「逆流」は、防止される。僧帽弁MVは、
図1に図示されるように、閉鎖するように均等に交わる、遊離縁FEを有する弁尖の対を備える。弁尖LFの対向する端部は、弁輪ANと称される環状領域に沿って、周辺心臓構造に付着している。弁尖LFの遊離縁FEは、弁尖LFのそれぞれの下面にわたって固着された複数の分岐腱を含む、腱索(chordae tendineae)CT(本明細書では、腱索(chordae)とも称される)を通して、左心室LVの下側部分に固着される。腱索CTは、ひいては、左心室および心室間中隔IVSの下側部分から上向きに延在する、乳頭筋PMに付着している。
【0053】
ここで
図2-4を参照すると、心臓内のいくつかの構造欠陥が、不適正な張力が、腱索を介して弁尖に伝達されるため、僧帽弁逸脱を引き起こし得る。他の弁尖LF1が、正常な外形を維持する一方、2つの弁尖は、適切に交わらず、左心室LVから左心房LAの中への漏出が、矢印によって示されるように起こるであろう。
【0054】
逆流はまた、
図3に示されるように、心臓が、拡張され、増大したサイズが、弁尖LFが適切に交わらないように妨げる、心筋症に罹患している患者において起こる。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大した状態にさせ、遊離縁FEが収縮期の間に交わることを不可能にする。前弁尖および後弁尖の遊離縁は、通常、
図3Aに示されるように、接合線Cに沿って交わるが、
図3Bに示されるように、有意な間隙Gが、心筋症に罹患している患者において残され得る。
【0055】
僧帽弁逆流はまた、
図4に図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている、虚血性心疾患に罹患した患者において起こり得る。左心室LVが、収縮期の間に収縮する際、乳頭筋PMは、適切な閉鎖をもたらすように十分に収縮しない。弁尖LF1およびLF2は、次いで、図示されるように、逸脱する。漏出が、再び、矢印によって示されるように、左心室LVから左心房LAに起こる。
【0056】
図5Aは、前側ANTおよび後側POSTを有する二尖弁である、僧帽弁MVの解剖学的構造をより明確に図示する。弁は、前(大動脈)弁尖ALおよび後(壁)弁尖PLを含む。腱索CTは、弁尖AL、PLを前外側乳頭筋ALPMおよび後内側乳頭筋PMPMと結合する。弁尖AL、PLは、前外側交連ALCおよび後内側交連PMCと称される線に沿って相互に繋がる。弁輪ANは、弁尖を取り囲み、前弁尖の対向する側上の弁輪の前部分に隣接する2つの領域は、左線維性三角LFT、およびまた、右線維性三角RFTと称される。これらの面積は、概して、中実三角形によって示される。
図5Bは、左および右線維性三角LFT、RFTをより明確に図示する。
【0057】
種々の外科手術技法および埋込可能デバイスが、提案されており、僧帽弁逆流にとって有望な治療であると考えられるが、外科手術アプローチは、長い回復周期を要求し得、埋込可能デバイスは、様々な臨床結果を有する。したがって、依然として、僧帽弁逆流を治療するための改良されたデバイスおよび方法の必要性が、存在する。本明細書に開示される実施例は、僧帽弁逆流を治療するための埋込可能補綴僧帽弁を対象とするが、当業者は、これが、限定であることを意図しておらず、本明細書に開示されるデバイスおよび方法がまた、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁等のような心臓弁等の他の弁、および静脈弁等の体内の他の弁を治療するために使用され得ることを理解するであろう。
【0058】
補綴弁
【0059】
補綴弁は、僧帽弁逆流のための治療として、心臓内に外科手術的に埋込されている。これらの弁のうちのいくつかは、ブタ弁等の動物から採取された弁であり、その他は、組織被覆を伴う、または伴わない補綴機械弁であった。より最近では、最小限侵襲性カテーテル技術が、補綴弁を心臓に送達するために使用されている。これらの弁は、典型的には、弁を患者の心臓に固着させるためのアンカと、機械弁、動物組織または合成材料を伴う弁、またはそれらの組み合わせのいずれかの弁機構とを含む。補綴弁は、いったん埋込されると、正常に機能していない天然弁の役割を引き継ぎ、それによって、弁の機能不全を低減または排除する。これらの弁のうちのいくつかは、有望と考えられるが、依然として、改良された弁の必要性が、存在する。以下は、既存の補綴弁と関連付けられる課題のうちのいくつかを克服し得る、補綴弁、補綴弁のための送達システム、および弁を送達する方法の実施例を開示する。
【0060】
ここで
図6-7を参照すると、概して、参照番号10を用いて指定される、僧帽弁補綴物の実施例が、薄型心房スカート領域18、環状領域20、心室スカート領域22、および心室スカート領域22によって画定される環状下空間の中に下流に片持ち梁方式で軸方向に延在する、複数の弁尖交連24(本明細書では、交連柱とも称される)に拡張する幾何学形状を有する、自己拡張または拡張可能アンカ部分16内に添着される、弁尖14を備える、三尖組織タイプ補綴一方向弁構造12を備える。
【0061】
図6は、右心房に向かって上向きに見た患者の左心室からの弁10の部分的断面を示す。心房スカート領域18は、右心房19の下側部分に係留される。弁尖14は、開放位置(図示せず)と、
図6に図示される閉鎖位置とを有する。開放位置では、弁尖14は、相互から離れるように変位され、それを過ぎる血流を可能にし、閉鎖位置では、弁尖14は、相互に係合し、弁を閉鎖し、それを過ぎる逆行性血流を防止する。弁交連24は、弓形継目28(
図7に最も詳細に見られる)に沿って弁尖14の取付を提供し、補強支柱の追加/削除を通してその軸方向長に沿った異なる点または区域において選択的に可撓性にされることによって、補綴弁構造12の効率および弁尖14に対する荷重分布を最適化するように構成されてもよい。
【0062】
図7は、一連の相互接続された支柱から形成された、弁10のアンカ部分16の斜視図を示す。心房スカート領域18は、アンカ上に環状フランジ付き領域を形成し、心房内に補綴弁の上側部分を固着させることに役立ち、環状領域20は、天然弁輪に沿って弁を係留するための円筒形領域である。心室スカート領域22も同様に、円筒形に成形され、患者の左心室内に弁の下側部分を係留することに役立つ。アンカの任意の部分または全ては、本明細書に開示される心膜または他の組織等の組織を用いて被覆されてもよい、またはダクロンまたはePTFE等の合成材料が、アンカを被覆するために使用されてもよい。被覆物は、アンカを天然弁にシールすることに役立ち、これは、弁の周囲ではなく、補綴弁の中に、かつそれを通して血液を注ぐことに役立つ。いくつかの実施例では、アンカは、露出されたままであってもよい。補綴弁は、拡張構成と、圧潰構成とを有する。圧潰構成は、送達システム上に搭載するために好適である薄型円筒形形状を有し、送達は、カテーテル上で経腔的、または心臓壁を通して経心尖的のいずれかで行われてもよい。拡張構成(図示されるような)は、補綴弁が所望の位置の中に係留されることを可能にする。
【0063】
図8Aは、随意の被覆物がアンカ支柱の可視性を可能にするために除去される、補綴僧帽弁の実施例の斜視図を図示する。
図8Bは、心室の中を見下ろした心房からの
図8Aの補綴弁の上面図を図示する。弁800は、D形断面を有する、非対称拡張アンカ部分を含む。示されるように、アンカ部分は、概して、その縦方向軸に沿った前側面802および後側面804、および、概して、
図6-7で上記に説明される実施例の心房スカート領域18、環状領域20、および心室スカート領域22に対応する、心房領域806、環状領域808、および心室領域810を備える。交連(本明細書では、交連柱とも称される)813もまた、概して、
図6-7の実施例の弁尖14に対応する。補綴弁800は、圧潰構成と、拡張構成とを有する。圧潰構成は、心臓への経腔的送達のための送達カテーテル等のシャフト上、または心臓壁を通した経心尖送達のためのシャフト上の装填に適合される。半径方向拡張構成は、罹患または損傷した弁に隣接して患者の天然心臓に弁を係留するように適合される。弁が圧潰構成から拡張構成に拡張することを可能にするために、弁のアンカ部分は、ニチノールのようなニッケルチタン合金等の自己拡張材料から加工されてもよい、またはこれはまた、ばねテンパーステンレス鋼または伸縮性ポリマーから作製されてもよい。なおも他の実施例では、アンカは、バルーン等の拡張可能部材を用いて拡張可能であってもよい。任意の実施例では、アンカは、皮下針管類等の管をレーザ切断、放電加工(EDM)、または光化学的にエッチングすることによって加工される。アンカはまた、材料の平坦なシートを光化学的にエッチングすることによって加工されてもよく、これは、次いで、巻回され、対向する端部が、ともに溶接される。
【0064】
心房スカート部分816は、僧帽弁の上方の心房に補綴弁を係留することに役立つ、フランジ付き領域を形成する。心房スカートは、複数の三角形指部を含み、これは、アンカから半径方向に外向きに延在し、フランジを形成する。心房スカート816の後部分804は、略丸形または円形である一方、心房スカート816の前部分802の一部は、平坦である。したがって、心房スカート領域は、D形断面を有してもよい。これは、下記に議論されるであろうように、補綴弁が、心臓の他の部分を妨害することなく、患者の心臓の解剖学的構造に共形化することを可能にする。各三角形指部は、相互接続された支柱の対から形成される。心房スカートの三角形指部は、概して、補綴弁の中心軸から半径方向に外向きに屈曲され、弁中心軸を横断する平面内に位置する。いくつかの実施例では、心房スカートは、弁の中心軸に略垂直である平面内に位置する。心房スカート806の前部分802は、随意に、補綴弁に垂直に上向きに、かつ略平行に延在する1つ以上の支柱であり得る、整合要素814を含む。整合要素814は、蛍光透視下の可視化を促進するために、放射線不透過性マーカ(図示せず)を含んでもよい。整合要素は、後で議論されるであろうように、医師が、補綴弁を天然僧帽弁の解剖学的構造と整合させることに役立つ。
【0065】
心房スカート領域の下に配置されるものは、環状領域820であり、これもまた、送達のための圧潰構成と、天然弁輪に沿って補綴弁を係留するための拡張構成とを有する。環状領域はまた、閉鎖セルまたは開放セルのいずれかである、一連のセルを形成する、複数の相互接続された支柱から成る。支柱のうちのいくつかにおける縫合糸孔821が、組織または他の被覆物(図示せず)が環状領域に取り付けられることを可能にする。組織または別の被覆物を用いてアンカの全てまたは一部を被覆することは、心臓弁および隣接する組織に対してアンカをシールすることに役立ち、それによって、血液が、弁の周囲ではなく、それを通して注がれることを確実にする。環状領域は、円筒形であってもよいが、任意の実施例では、円形である後部分804と、平坦である前部分802とを有し、それによって、D形断面を形成してもよい。本D形断面は、左心室流出路に衝突することによって等、心臓の他の面積において血流を妨害することなく、天然僧帽弁の解剖学的構造により良好に共形化する。
【0066】
補綴弁の下側部分は、心室スカート領域828を含む。心室スカート領域もまた、送達のための圧潰構成と、係留のための拡張構成とを有する。これは、半径方向に拡張し得る、閉鎖され得る、一連のセルを形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。拡張構成における心室スカートは、天然僧帽弁尖に対して拡張することによって、補綴弁を心室に係留する。心室スカートにおける随意の返し823が、心室組織の中に補綴弁を係留することにさらに役立つために使用されてもよい。返しはまた、随意に、心房スカート部分およびアンカの環状領域内に含まれてもよい。加えて、心室スカートにおける随意の縫合糸孔821が、上記に同様に議論されるように、組織または別の材料を心室スカート領域に縫合することに役立つために使用されてもよい。心室スカートの前部分802は、平坦であってもよく、心室スカートの後部分804は、円形であってもよく、同様に、D形断面を形成し、心臓の他の部分を妨害することなく、天然解剖学的構造に係留し、共形化する。また、心室スカートの下側部分は、下記により詳細に解説されるであろうように、下側部分が、随意の心室三角アンカタブおよび後アンカタブが拡張するまで、納設されたままであり、それによって、半径方向拡張から心室スカートを拘束することができるため、展開制御領域としての役割を果たす。
【0067】
心室スカート部分はまた、随意に、下記により詳細に議論されるであろうように、補綴弁を係留することに役立つために、アンカの前部分上に心室三角タブ824の対(本図では1つのみが可視である)を含んでもよい。心室スカートはまた、随意に、補綴弁を弁輪の後部分に係留するために、心室スカートの後部分804上に後タブ826を含んでもよい。三角タブ824または後タブ826は、アンカから半径方向に外向きに延在するタブであり、それらは、上流方向に上向きに傾斜される。
【0068】
実際の弁機構は、漏斗または円錐様形状においてアンカの中心軸に向かって半径方向に内向きに延在する、3つの交連柱(交連とも称される)813から形成される。交連813は、三角形形状交連を作成する、複数の相互接続された支柱から形成される。交連の支柱は、組織または合成材料が交連に取り付けられることを可能にする、1つ以上の縫合糸孔821を含んでもよい。本実施例では、弁は、三尖弁であり、したがって、これは、3つの交連813を含む。交連の先端は、送達カテーテルに係合するための交連タブ812(タブとも称される)を含んでもよい。本実施例では、タブは、より幅狭の頸部に接続される拡大された頭部領域を有し、キノコ様形状を形成する。交連は、任意の位置に偏ってもよいが、逆行性血流が、相互と併置するように交連を押進し、弁を閉鎖し、順行性血流が、交連を半径方向に外向きに押動し、弁を完全に開放するように、補綴弁の中心軸に向かってわずかに内向きに角度付けられてもよい。
図8Bは、心房側からの
図8Aの補綴弁を図示する、上面図であり、D形断面を示す。
【0069】
図9Aは、被覆物870が縫合糸872を用いてアンカの一部に結合される、
図8A-8Bの補綴僧帽弁を図示する。本図は、心房の観点から得られる。本実施例では、被覆物は、本明細書の別の場所に開示されるようないくつかの源に由来し得る、心膜であってもよい。代替実施例では、被覆物は、ダクロンポリエステル、ePTFE、または別の合成材料等のポリマーであってもよい。被覆物は、環状領域820および心室スカート領域828にわたって配置されてもよく、いくつかの実施例では、前心室三角タブ824および心室後タブ830もまた、同一または異なる材料を用いて被覆されてもよい。被覆物は、血液が、弁機構を通して注がれるように、隣接する組織に対してアンカをシールすることに役立つ。本実施例では、心房スカート、およびタブ824、830は、露出されたままであるが、それらは、所望される場合、被覆されてもよい。加えて、放射線不透過性マーカ814aが、整合要素の一部を形成し、弁の整合の間に重要である蛍光透視下の補綴弁の可視化を促進する。
【0070】
図9Bは、心室から見られるような、
図9Aに見られる補綴僧帽弁の斜視図である。弁交連の支柱は、上記に議論されるような環状および心室領域と同一の材料または異なる材料を用いて被覆され、それによって、三尖弁尖813を形成する。
図9Bは、3つの弁尖が相互と係合され、逆行性血流を防止する、閉鎖構成における弁を示す。交連タブ812は、露出されたままであり、下記に解説されるであろうように、交連が、送達デバイスと結合されることを可能にする。
図9A-9Bの補綴弁は、滅菌されてもよく、したがって、それらは、当技術分野で公知の方法を使用する患者内への埋込のために好適である。
【0071】
図10は、被覆物が除去され、残りのアンカが広げられ、平坦化される、
図9Aの補綴弁を図示する。補綴弁800は、複数の相互接続された支柱から形成される。例えば、心房スカート領域806は、一連の頂部および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む。補綴弁の平坦な前領域802は、心房スカートの残りの部分のものから軸方向にオフセットされるその頂部および谷部を有し、本領域は、整合要素814の一部になる。放射線不透過性マーカ814aが、オフセットされる頂部および谷部の両側上に配置され、弁の埋込の間の可視化に役立つ。軸方向に配向されるコネクタが、スカート領域806の支柱を環状領域808の支柱と継合する。環状領域もまた、頂部および谷部を形成する、複数の軸方向に配向され、相互接続された支柱から成る。コネクタ支柱が、環状領域の支柱を心室領域810の支柱と結合する。心室領域もまた、頂部および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む。加えて、支柱は、弁尖交連813、心室スカート828、および三角および後タブ824、830を形成する。縫合糸孔821が、心膜またはダクロンまたはePTFE等のポリマー等のカバーの取付を可能にするために、環状領域および心室領域の支柱に沿って配置される。随意の返し823が、補綴弁を隣接する組織に係留することに役立つために、心室スカート828に沿って配置される。
【0072】
交連タブまたはタブ812が、交連813の先端上に配置され、下記に説明されるであろうように、補綴弁を送達システムと解放可能に結合するために使用されてもよい。当業者は、いくつかの支柱幾何学形状が、使用され得、加えて、長さ、幅、厚さ等の支柱寸法が、剛性、半径方向粉砕強度、交絡偏向等の所望の機械的性質を伴うアンカを提供するために調節され得ることを理解するであろう。したがって、図示される幾何学形状は、限定であることを意図していない。
【0073】
いったん平坦なアンカパターンが、EDM、レーザ切断、光化学的エッチング、または当技術分野で公知の他の技法によって形成されると、アンカは、所望の幾何学形状に半径方向に拡張される。アンカは、次いで、形状を設定するために、公知のプロセスを使用して熱処理される。したがって、アンカは、圧潰構成において送達カテーテル上に装填され、拘束シースを用いて圧潰構成において拘束されてもよい。拘束シースの除去は、アンカが、その非付勢事前設定形状に自己拡張することを可能にするであろう。他の実施例では、バルーン等の拡張可能部材が、アンカをその拡張構成に半径方向に拡張させるために使用されてもよい。
【0074】
送達システム
【0075】
図11-15Cは、補綴僧帽弁を心臓に経心尖的に送達するように作られる、送達装置1124を示す。しかしながら、当業者は、本デバイスが、補綴僧帽弁を経中隔的に送達するために使用されることを可能にするために、送達システムが、修正され、種々の構成要素の相対的運動が、調節され得ることを理解するであろう。送達装置は、概して、取っ手区分1102および取っ手区分1103(
図12に最も詳細に見られる)の組み合わせである、取っ手1101と、加えて、心臓の頂点を円滑に貫通し得る、可撓性先端1110と、軸方向に平行移動するように設計され、下記に詳細に説明されるであろう、いくつかの付加的カテーテルを格納する、シースカテーテル1109とから成る。
【0076】
取っ手1101は、0.035インチ直径のガイドワイヤ(図示せず)との止血シールを提供するために、Tuohy Borstアダプタ1114に接続する、雌ねじ山付きルアーアダプタ1113を含む。雌ねじ山付きルアーアダプタ1113は、ねじ山付きポート1131(
図12に最も詳細に見られる)を通して取っ手1101の近位区分と螺着接触する。
【0077】
図11に見られ得るように、取っ手1101は、補綴僧帽弁を位置付け、展開するために使用される制御機構のための場所を提供する。取っ手1101は、取っ手1101の上部および底部の両方の上に現れる窓1137を通してアクセスされ得る、サムホイール1106のための筐体を提供する。サムホイール1106は、シースカテーテル1109を作動させるねじ山付き挿入部1115(
図12に最も詳細に見られる)と内部で噛合し、本相互作用の機械的構造は、下記に詳細に解説されるであろう。
【0078】
図11はまた、展開サムホイール1104の旋回運動が、パワーねじとして作用し、ペグ1128をユーザから前方かつ遠位に押動するため、旋回されると、展開カテーテル1120(
図12に最も詳細に見られる)に線形平行移動を提供する、展開サムホイール1104を示す。ペグ1128の背後の機械的構造が、下記にさらに詳述されるであろう。サムホイールロック1105は、回転に対する物理的障壁として作用することによって、展開サムホイール1104の不要な回転に対する安全性対策を提供する。展開サムホイール1104を旋回させるために、ユーザは、サムホイールロック1105を前方に押動し、展開サムホイール1105内の2つのスロット1147(
図12に見られる)からこれを係脱させなければならない。
【0079】
また、
図11に見られ得るように、ブリード弁1108および流体ライン1107が、取っ手1101の遠位部分における内部機構に接続され、これは、シースカテーテル1109のための止血シールを提供する。本接続の詳細は、下記に説明されるであろう。
【0080】
送達装置1124の内部機械的構造は、
図12に詳細に図示され、以下の説明は、個々の構成要素の間の相互作用および補綴心臓弁送達装置を達成するためにそれらの構成要素が組み合わせられる様式を露見させるであろう。
【0081】
図12に見られるように、取っ手区分1103および取っ手区分1102は、送達装置1124の基礎を形成する取っ手1101を作成するために組み合わせられる。弁装填の間にシースカテーテル1109を前進させる、または展開の間にシースカテーテル1109を後退させるために、回転可能サムホイール1106が、送達装置の軸に沿って近位位置から遠位位置に線形に平行移動する、ねじ山付き挿入部1115(
図13の外部ねじ山1130)と螺着接触する(
図14に見られる内部ねじ山1129)。シースカテーテル1109は、ねじ山付き挿入部1115と噛合接触し、カラーを挿入部と整合および噛合させる、カラー1117の使用を通して締結される。カラー1117は、ねじ1116(
図14の詳細Aに最も詳細に見られる)を用いてねじ山付き挿入部1115に締結され、止血が、患者と送達装置との間で維持され得るように、流体ライン1117のための場所を提供する、流体ポート1142(
図14の詳細Aに最も詳細に見られる)を含有する。Oリング1118(
図14の詳細Aに最も詳細に見られる)が、シースカテーテル1109に対して定常カテーテル1119(
図14に最も詳細に見られる)をシールする。流体ライン1107はまた、取っ手1101内のスロット1138が、流体ライン1107が動作の間にシースカテーテル1109とともに(孔1151(
図14の詳細Aに最も詳細に見られる)を通して)平行移動することを可能にし、本平行移動が、非常に可視であるため、位置に関してシースカテーテル1109を視覚的に位置特定する手段を提供する。平行移動の間にねじ山付き挿入部の回転を防止するために、平坦面1164が、ねじ山付き挿入部1115の両側上に機械加工されている。平坦面1164は、ボス1139および1140が、ねじ山付き挿入部1115を把持し、回転を防止するように作用するように、取っ手区分1102および取っ手区分1103の両方の上に位置するボス1139および1140と接触したままである。テクスチャ加工されたパターン1155が、ユーザが、術野においてサムホイール1106を容易に旋回させることを可能にする。戻り止め1141(
図14に最も詳細に見られる)が、回転を可能にするために、サムホイール1116上にフランジ63(
図14に見られる)を配置する。
【0082】
個々のカテーテル(4つのカテーテルが存在する)が相互に対して移動する様式が、
図12に図示される。シースカテーテル1109は、定常カテーテル1119のための筐体を提供し、これは、順に、移動可能ハブカテーテル1120のための筐体を提供する。ハブカテーテル1120は、ノーズカテーテル1121に対して線形に平行移動し、これもまた、各前のカテーテルおよび取っ手1101に対して平行移動されることができる。定常カテーテル1119は、内部ボア1150内で取っ手区分1103に噛合され、これはまた、定常カテーテル1119とハブカテーテル1120との間にシールを形成する。定常カテーテル1119の遠位部分は、ベル1122(
図15Aの詳細A参照)の形状において形成され、これは、ハブ捕捉部1123(
図15Aの詳細Aに見られる)を保定するための筐体として作用する。
【0083】
前述に記載されるように、サムホイールロック1105は、展開サムホイール1104の回転を防止する。操作されるまで、サムホイールロック1105を係止位置に保つ着座力を提供するために、ばね1125が、内部ボア62(
図14に最も詳細に見られる)内に格納され、サムホイールロック1105の内側に位置する肩部1161(
図14に最も詳細に見られる)に対して当接する。本ばね1125は、展開サムホイール1104の2つのスロット1147内で係止位置においてサムホイールロック1105の前縁1149を維持する。把持テクスチャ1154が、容易な使用のためにサムホイールロック1105上に提供される。取っ手1101の内側にサムホイールロック1105を配置および保定するために、スロット1135が、取っ手区分1102および取っ手区分1103の両方において提供されている。
【0084】
図12に示されるように、摺動ブロック1127が、取っ手1101の内側上に現れる、平坦な平行面1134の内側に格納される。本摺動ブロック1127は、ハブカテーテル1120と噛合接触し、カテーテルを線形に作動させる物理的機構である。ばね1126が、外部柱1159上に搭載され、摺動ブロック1127の遠位端上に位置する肩部1133に対して当接する。本ばね1126は、展開サムホイール1104の中に切り込まれる角度付きスロット1148の近位縁と接触するように(
図14の貫通孔1156の内側に位置する)ペグ1128を押進する。展開サムホイール1104は、肩部1136とスナップリング(図示せず)との間に含有され、その両方は、取っ手1101の特徴である。展開サムホイール1104上の把持テクスチャ1153は、ユーザが、サムホイールを時計回り方向に容易に回転させることを可能にし、ペグ1128を作動させ、スロット1148に沿って遠位に乗設させ、摺動ブロック1127を移動させ、これは、ハブカテーテル1120およびハブ1123(
図15Aの詳細Aに最も詳細に見られる)を前方かつベル1122(
図15Aの詳細Aに見られる)から外に押動する。スロット1132が、取っ手区分1102および取っ手区分1103内に現れ、ペグ1128が所望の範囲を越えて平行移動しないように防止する。
【0085】
ノーズカテーテル1121が、取っ手1101の近位端上のTuohy Borstアダプタ1114から、取っ手および個別のカテーテル(シースカテーテル1109、定常カテーテル1119、およびハブカテーテル1120)全体を通して内部で延在し、シースカテーテル1109の遠位端と当接する可撓性先端1110(
図15Aに見られる)のリジッド挿入部1112(
図15Aに見られる)の内側で終端する。
【0086】
図13は、送達装置1124の先端区分の分解図を表示し、補綴僧帽弁1165と内部および外部カテーテルとの間の関係を示す。圧着および装填されると、補綴僧帽弁1165は、シースカテーテル1109の内面とノーズカテーテル1121の外面との間に内包される。送達装置1124内に補綴僧帽弁1165を捕捉および係留するために、補綴僧帽弁1165の近位端上に現れる3つの交連タブ1160(円周方向に約120度において離間される)が、弁とハブ1123の外面に機械加工される3つのスロット1143(
図15Aに見られる)(円周方向に約120度において離間される)との間の接触点を提供する。最初に、展開サムホイール1104(
図12に見られる)を時計回りに回転させることによって、ハブカテーテル1120(
図15A)を前進させた後、3つの交連タブ1160は、3つのスロット1143(
図15Aに見られる)内に捕捉されることができる。ハブ1123は、次いで、展開サムホイール1104(
図12に見られる)を解放することによって、ベル1122の中に後退されることができる。本位置において、補綴僧帽弁1165は、送達装置1124に係留され、弁のさらなる圧着は、シースカテーテル1109が弁にわたって前進されることを可能にするであろう。
【0087】
図15A-15Cはさらに、送達装置1124の中への補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)の装填が達成され得る様式を詳述する。最初に、可撓性先端1110は、シースカテーテル1109の遠位縁1157に対して当接される。可撓性先端1110は、リジッド挿入部1112と、リジッド挿入部1112上にオーバーモールドされる軟質かつ可撓性先端部分1111とから成る。リジッド挿入部1112の肩部1145およびテーパ状面1146は、カテーテルが、可撓性先端1110に対して静置し、それによって補剛され、心臓の頂点の中により容易に導入され得るように、シースカテーテル1109の遠位縁1157を誘導および配置するように作用する。
【0088】
それから装填が達成され得る初期位置が、
図15Aに図示される。送達装置1124の中への補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)の装填における第1のステップとして、シースカテーテル1109は、時計回り方向におけるサムホイール1106の回転によって抜去される。シースカテーテル1109の遠位縁1157は、
図15Bの詳細Aに図示されるように、これがベル1122の遠位縁を通過するまで、後退される。送達装置1124の中への補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)の装填における第2のステップとして、ハブ1123は、
図15Cの詳細Aに図示されるように、展開サムホイール1104(
図12に見られる)の時計回り旋回によって、ベル1122の下から前進される。展開サムホイールは、いったんサムホイールロック1105(
図12参照)が、前方位置に設定され、サムホイールとの接触からこれを係脱させたときのみ、旋回され得る。ハブ1123の前進は、3つのスロット1143を露出させ、その中に、補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)の3つの交連タブ1160が、嵌合し、係留されるであろう。ハブ1123の後退によるスロット1143の中への交連タブ1160の係留が、達成された後、送達装置1124の中への補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)の装填における第3のステップが、実施されてもよい。補綴僧帽弁1165(
図13に見られる)は、装填機構(図示せず)によって最小直径まで圧着されることができ、次いで、シースカニューレ1109は、反時計回り方向におけるサムホイール1106の回転によって、弁を被覆するように前方に前進されることができる。送達装置1124および補綴僧帽弁1165は、次いで、展開できる状態となる。
【0089】
図16-19Bは、心臓内に補綴弁を経心尖的に埋込するための送達デバイスの別の実施例を図示する。しかしながら、当業者は、本デバイスが、補綴物を経中隔的に送達するために使用されることを可能にするために、送達システムが、修正され、種々の構成要素の相対的運動が、調節され得ることを理解するであろう。送達装置は、概して、2つの半体(1610および1635)の組み合わせである、取っ手1601と、加えて、心臓の頂点を円滑に貫通し得る、先端1603と、軸方向に平行移動するように設計され、下記に詳細に説明されるであろう、同心カテーテルから成る、可撓性シース1602とから成る。
【0090】
取っ手1601は、0.035インチ直径ガイドワイヤ(図示せず)のためのシール可能退出口を提供するために、雌ねじ山付きルアーアダプタ1612に接続する、取っ手キャップ1611を含む。取っ手キャップ1611は、ねじ山付き締結具1613を用いて取っ手1601に取り付けられる。雌ねじ山付きルアーアダプタ1612は、タッピングされたポートを通して取っ手キャップ1611と螺着接触し、完全に挿入されると、Oリング(
図18に最も詳細に見られる1636)に対して圧搾し、これは、ガイドワイヤカテーテル(
図18に最も詳細に見られる1621)の外径に対してシールする。
【0091】
図17に見られ得るように、取っ手1601は、補綴僧帽弁を位置付け、展開するために使用される制御機構のための場所を提供する。取っ手1601は、取っ手1601の上部および底部の両方の上に現れる窓1606を通してアクセスされ得る、サムホイール1616のための筐体を提供する。サムホイール1616は、シースカテーテル1604を作動させるねじ山付き挿入部(
図18の1627)と内部で噛合し、本相互作用の機械的構造は、下記に詳細に解説されるであろう。
【0092】
図17はまた、スロット1605を通して内部に挿入され、孔を通して第1の止血ポート(それぞれ、
図18の1625および1626)と噛合する、第1の止血管1617を示す。第1の止血管1617は、内部カテーテルの間の流体パージを可能にする。スロット1605に沿った第1の止血管1617の位置は、シースカテーテル1604の位置および補綴僧帽弁(図示せず)の相対的展開段階に関する視覚的手掛りを提供する。第1の止血管1617およびシースカテーテル1604の接続の間の関係は、下記に説明されるであろう。
【0093】
また、
図17に見られ得るように、第2の止血管1614が、内部カテーテルの間の流体パージを可能にするために、取っ手1601の中に挿入され、第2の止血ポート(
図18の1629)に噛合され、本挿入の詳細が、下記に説明されるであろう。最後に、ピンロック1608が、内部機構の間の平行移動に対する物理的障壁として作用することによって、補綴僧帽弁の早期の解放に対する安全性対策を提供する。ピンロック突起1615は、取っ手1601内にピンロック1608を保定するために、ばね力に依拠し、ユーザは、最初に、補綴弁の最終展開の前に、ピンロック1608を引き抜かなければならない。
【0094】
図17はまた、取っ手1601が、ねじ山付き締結具およびナット(それぞれ、
図18の1607および1639)の使用によってともに締結され、皿ロケータ孔1609が、取っ手長全体を通して設置される方法を示す。
【0095】
送達システムの内部機構が、
図18に詳細に図示され、以下の説明は、個々の構成要素の間の相互作用および補綴僧帽弁を経心尖的に、または他のルートによって送達することが可能であるシステムを作成するためにそれらの構成要素が組み合わせられる様式を露見させるであろう。
【0096】
図18に見られるように、可撓性シース1602は、4つの同心状に入れ子されたカテーテルから成る。直径において最も小さいものから最も大きいものへの順序で、同心状に入れ子にされたカテーテルが、詳細に説明されるであろう。最内側カテーテルは、送達システム全体を通して内部に延設され、先端1603において始まり、雌ねじ山付きルアーアダプタ1612において終端する、ガイドワイヤカテーテル1621である。ガイドワイヤカテーテル1621は、より低いデュロメータ硬さの単一管腔Pebax押出物から成り、定常である。これは、それを通してガイドワイヤ(図示せず)が送達システムと連通し得る、チャネルを提供する。次のカテーテルは、ハブ1620のための支持を提供し、概して、より高いデュロメータ硬さの単一管腔PEEK押出物から成る、ハブカテーテル1622である。ハブカテーテル1622は、遠位端におけるハブ1622および近位端におけるステンレス鋼支持ロッド1634の両方と噛合接続する。ステンレス鋼支持ロッド1634は、取っ手1601内に内包される停止装置1637によって固定して保持される。ハブカテーテル1622は、定常であり、同心状に入れ子にされたカテーテルに支持および軸方向リジディティを提供する。次のカテーテルは、ハブ1620に筐体を提供し、概して、内部鋼編組および潤滑性ライナ、および放射線不透過性マーカバンド(図示せず)を含む、中程度のデュロメータ硬さの単一管腔Pebax押出物から成る、ベルカテーテル1624である。ベルカテーテル1624は、軸方向に平行移動し、ハブ1620に対して前進および後退されることができる。ベルカテーテル1624は、近位端において第2の止血ポート1629と噛合接続し、ベルカテーテル1624とステンレス鋼支持ロッド1634との間の止血が、第2の止血管1614をパージすることによって達成されることができる。ベルカテーテル1624は、ハブ1620をカプセル化するために、遠位端上のより大きい直径1623まで突き当てられる。最外側かつ最終カテーテルは、補綴僧帽弁(図示せず)のための筐体を提供し、先端1603を支持および指向し、心臓壁筋肉における切開部の拡張を補助することによって、心臓(図示せず)の頂点を貫通することが可能である、シースカテーテル1604である。シースカテーテル1604は、概して、内部鋼編組および潤滑性ライナ、および放射線不透過性マーカバンド(図示せず)を含む、中程度のデュロメータ硬さの単一管腔Pebax押出物から成る。シースカテーテル1604は、軸方向に平行移動し、ハブ1620に対して前進および後退されることができる。シースカテーテル1604は、近位端において第1の止血ポート1625と噛合接続し、シースカテーテル1604とベルカテーテル1624との間の止血が、第1の止血管1617をパージすることによって達成されることができる。
【0097】
図18に見られるように、シースカテーテル1604の近位端は、第1の止血ポート1625と噛合接触する。第1の止血ポートは、ベルカテーテル1624に対して圧縮し、止血シールを作成するために、ねじ山付き挿入部1627、および第1の止血ポート1625とねじ山付き挿入部1627との間に閉じ込められるOリング1638と噛合接触する。サムホイール1616が、回転されるにつれて、ねじ挿入部1627は、平行移動し、シースカテーテル1624は、取付によって後退または前進されることができる。心臓壁組織を拡張するために適正な剛性を提供するために、シースカテーテル1604の遠位縁は、先端1603上に位置する肩部1618に対して当接するであろう。本連通は、先端1603が、送達の間にシースカテーテル1604と確実に整合されたままであることを可能にし、突刺剛性を作成する。
【0098】
図18はまた、それを通してベルカテーテル1624がハブ1620に対して後退または前進され得る機構を詳述する。サムホイール1616は、ねじ挿入部1627が、第2の止血ポート1629に圧入される2つのピン1628と接触させられるであろう程度まで回転されることができる。ベルカテーテル1624は、第2の止血ポート1629と噛合接触しているため、サムホイール1616のさらなる回転は、第2の止血ポート1629を平行移動させ、第2の止血ポートキャップ1632への接続によってばね1633に対して押圧させるであろう。本前進は、ベルカテーテル1624の突き当てられたより大きい直径区分1623を、ハブ1620から後退させるであろう。サムホイール1616が、対向する方向に回転されるにつれて、ばね1633によって生成された復元力は、第2の止血ポート1629を対向する方向に押動させ、ハブ1620にわたって戻るようにベルカテーテル1624の突き当てられたより大きい直径区分1623を引き込み、弁補綴物の初期装填の間に必要であるアクションを引き起こすであろう。
【0099】
図18はさらに、止血がステンレス鋼支持ロッド1634とベルカテーテル1624との間で達成される様式を詳述する。Oリング1631が、第2の止血ポート1629と第2の止血ポートキャップ1632との間で圧縮され、ステンレス鋼支持ロッド1634に対するシールを作成する。ベルカテーテル1624とステンレス鋼支持ロッド1634との間の止血は、スロットおよび孔1630を通してパージされるべき隙間と連通する、第2の止血管1614をパージすることによって達成されることができる。
【0100】
展開プロセスおよび展開に関与する機構をアクティブ化するために必要なアクションが、
図19A-19Bに詳述される。逆の順序で実施されるとき、これらのアクションはまた、外科手術に先立って、弁(図示せず)の最初の装填を必要とする。
【0101】
図19Aに見られるように、サムホイール1616の操作は、シースカテーテル1604の平行移動制御を提供するであろう。心臓弁(図示せず)の展開をもたらすために、ユーザは、これがベルカテーテル1624のより大きい直径区分1623を通過するまで、先端1603の肩部1618との接触からシースカテーテル1604を抜去しなければならない。心臓弁(図示せず)は、
図13に図示される実施例に関するものと同様に、
図19Aの1621に関するリーダによって示される位置においてガイドワイヤカテーテル1621の上方に同心状に存在するであろう。シースカテーテル1604は、ねじ挿入部1627がピンロック1608と接触するまで、抜去されることができる。ピンロック1608は、次いで、ねじ挿入部1627のさらなる進行が達成され得る前に、除去されなければならない。
【0102】
図19Bに見られるように、ピンロック1608は、シースカテーテル1604のさらなる平行移動を可能にするために、取っ手1601から除去される。シースカテーテル1604が、完全に後退されると、ベルカテーテル1624のより大きい直径区分1623もまた、完全に後退され、これは、送達システムから心臓弁(図示せず)を完全に遊離させる。円周方向に相互から約120度において離間される、3つのハブスロット1619は、送達システムと心臓弁との間の係留機構および物理的連結を提供する。いったんベルカテーテル1624のより大きい直径区分1623が、抜去されると、ハブスロット1619は、露出された状態になり、これは、心臓弁アンカ(図示せず)が完全に拡張することを可能にする。
【0103】
図20は、
図16の送達デバイスの遠位部分を図示する。3つのハブスロット1619は、ベルカテーテル1624の大直径先端1623に対して遠位に摺動可能に配置される。これらのスロットは、補綴弁との係合を可能にする。弁は、補綴弁の交連タブまたはタブ812をスロット1619の中に配置し、次いで、ベルカテーテル1624の先端1623の下にスロット1619を後退させることによって、スロットによって解放可能に保持されてもよい。補綴弁は、ベルカテーテル1624上の先端1623の拘束が、除去されると、装填アンカまたはタブ812が、スロット1619から外に、かつそれから離れるように自己拡張し得るように、ベルカテーテルに対して遠位にスロットを前進させることによって、送達カテーテルから解放されてもよい。
【0104】
図21は、アンカタブ812がハブスロット(不可視)内に配置され、ベルカテーテル1623がそれにわたって前進される、補綴僧帽弁800(
図8Aを参照して上記に議論されるような)を図示する。したがって、補綴弁800の大部分が、その拡張構成に自己拡張しているが、弁交連は、タブ812がスロット1619内に捕捉される圧潰構成のままである。いったんベルカテーテル1623によって提供される拘束が、スロット1619から除去されると、タブ812は、スロット1619から外に自己拡張し得、交連は、それらの非付勢位置まで開放するであろう。補綴弁は、次いで、接続解除され、送達デバイスから遊離する。
【0105】
(経心尖送達方法)
【0106】
図22A-22Gは、補綴僧帽弁を経心尖的に送達する方法の実施例を図示する。本実施例は、本明細書に説明される補綴弁のうちのいずれかを使用してもよく、本明細書に説明される送達デバイスのうちのいずれかを使用してもよい。
図22Aは、頂点2202において心臓の中に、左心室2204を通して、僧帽弁2206を横断して、かつ左心房2208の中に進入するように辿られる、一般的な経心尖経路を図示する。大動脈弁2210は、影響を受けないままである。経心尖送達方法は、国際PCT公開第WO2009/134701号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)等の特許および科学文献に説明されている。
【0107】
図22Bでは、送達デバイス2214が、頂点2202における切開部を通して、かつガイドワイヤGWにわたって、心室2204を通して、僧帽弁2206を過ぎて導入され、送達デバイス2214の遠位部分が、心房2208内に配置される。送達デバイスは、切開部を通して通過し、それを拡張するように構成される、丸形先端2212を有し、僧帽弁2206または隣接する組織への不要な外傷を引き起こすことなく、心臓を通して前進されることができる。縫合糸2216が、過剰な出血を防止し、送達デバイスを定位置に保持することに役立つために、巾着縫いまたは当技術分野で公知の他のパターンを使用して、頂点2202において送達デバイス2214の周囲に縫い付けられてもよい。
【0108】
図22Cでは、送達デバイス2214の外側シース2214aは、補綴僧帽弁2220に対して近位に後退され(または補綴僧帽弁は、外側シース2214aに対して遠位に前進され)、補綴僧帽弁2220上の整合要素2218および心房スカート領域2222の一部を暴露し、これは、心房スカート領域2222が、部分的に半径方向に外向きに拡張し、開放するように漸広し始めることを可能にする。整合要素2218は、蛍光透視下の可視化を促進する、放射線不透過性マーカ2218aの対を含んでもよい。医師は、次いで、放射線不透過性マーカ2218aが、前僧帽弁尖の両側上に配置されるように、整合要素を整合させることができる。送達デバイス2214は、整合要素を整合させることに役立つために、回転されてもよい。整合要素は、大動脈根に隣接して、かつ天然前弁尖の線維性三角の間に据え付けられてもよい。
【0109】
図22Dでは、いったん整合が、取得されると、シース2214aはさらに、近位に後退され、心房スカート2222の半径方向拡張を可能にし、これは、外向きに漸広し、フランジを形成する。送達デバイス2214および補綴弁2220の近位後退は、僧帽弁2206に隣接する心房表面に対して心房スカート2222を着座させ、それによって、第1の位置に補綴弁を係留する。
【0110】
図22Eは、シース2214aのさらなる近位後退が、補綴弁2220からの付加的拘束を暴露し、軸方向に除去し、それによって、弁のより多くの部分が自己拡張することを可能にすることを示す。環状領域2224は、僧帽弁輪と係合するように拡張し、心室三角タブ2226および後タブ2228は、半径方向に拡張する。心室スカートの一部は、それらが、依然として拘束されているため、展開制御領域としての役割を果たし、心室スカート全体が拡張しないように防止する。タブは、前および後僧帽弁尖と心室壁との間に捕捉される。後心室係留タブ2228は、腱索付着物が不在である後僧帽弁尖の中間に整合されてもよく、後弁尖にわたって通過され、後弁尖と心室壁との間に着座する。2つの心室三角係留タブ2226は、前弁尖の両側上に位置付けられ、それらの頭部は、線維性三角に位置付けられる。補綴物のわずかな回転および再整合が、この時点で起こり得る。補綴物が、拡張する際、前三角タブは、線維性三角に対して係留し、タブと補綴弁の前面との間に天然前弁尖および腱索を捕捉し、後心室タブは、心室壁と後弁尖との間に係留し、後係留タブと補綴弁アセンブリの後面との間に後弁尖を捕捉する。
【0111】
図22Fは、シース2214aのさらなる後退が、心室三角タブおよび後タブを解放し、心室スカート2230の展開制御領域もまた、解放され、天然僧帽弁尖に対して半径方向に外向きに拡張することを可能にされることを示す。これは、天然弁尖内にシール漏斗を作成し、補綴僧帽弁を通して血流を指向することに役立つ。補綴物の交連が、依然として、送達システム内に捕捉されていると、ごくわずかな調節が、依然として、正確な位置付け、係留、およびシールを確実にするために行われ得る。補綴弁は、ここでは、4つの位置に係留される。アンカタブ2232は、次いで、内側シャフトの後退によって送達デバイスから解放され、前述で上記に議論され、
図22Gに示されるように、タブが、送達カテーテル上のスロットから外に自己拡張することを可能にする。補綴弁は、ここで、患者の心臓内に埋込され、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。送達デバイス2214は、次いで、これを近位に後退させ、これを頂点切開部から除去することによって、心臓から除去されてもよい。縫合糸2216は、次いで、結紮され、穿刺部位をシールしてもよい。
【0112】
(経中隔送達方法)
【0113】
図23A-23Gは、補綴僧帽弁を経中隔的に送達する実施例を図示する。本実施例は、本明細書に説明される補綴弁のうちのいずれかを使用してもよく、適切に修正される場合、本明細書に説明される送達デバイスのうちのいずれかを使用してもよい。当業者は、上記に開示される送達システム実施例における種々のシャフトの相対的運動が、経中隔アプローチに適応するために逆転される必要があり得ることを理解するであろう。
図23Aは、右心房2304の中へ大静脈2302を上に通過する送達デバイスを用いて辿られる、一般的な経中隔経路を図示する。経中隔穿刺2306が、本デバイスが、僧帽弁2310の上方の、左心室2312に隣接する左心房2308の中に通過され得るように、心房中隔を通して、多くの場合、卵円孔を通して作成される。経中隔技法は、Zarbatany et al.の米国特許公開第2004/0181238号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)等の特許および科学文献に公開されている。
【0114】
図23Bでは、送達デバイス2314が、ガイドワイヤGWにわたって、大静脈2302を通して、右心房2306の中に通過される。送達デバイス2314は、次いで、心房壁を通して、僧帽弁2310に隣接する左心房2308の中に経中隔的に通過される。ガイドワイヤGWは、左心室2312内に僧帽弁2310を横断して配置されてもよい。送達デバイスの遠位先端は、典型的には、僧帽弁または隣接する組織を損傷させることを防止するために、ノーズコーンまたは他の非外傷性先端を含む。
【0115】
図23Cでは、送達デバイス2214の外側シース2214aは、補綴僧帽弁2319に対して近位に後退される。代替として、送達デバイス2214の遠位部分2314bが、補綴弁2319に対して遠位に前進され、補綴僧帽弁2319上の整合要素2316および心房スカート領域2318の一部を暴露してもよく、これは、心房スカート領域2318が、部分的に半径方向に外向きに拡張し、開放するように漸広し始めることを可能にする。整合要素2316は、蛍光透視下の可視化を促進する、放射線不透過性マーカ2316aの対を含んでもよい。医師は、次いで、放射線不透過性マーカ2316aが、前僧帽弁尖の両側上に配置されるように、整合要素を整合させることができる。整合要素は、大動脈根に隣接して、かつ天然前弁尖の線維性三角の間に据え付けられてもよい。送達デバイス2214は、整合要素を整合させることに役立つために、回転されてもよい。
【0116】
図23Dでは、いったん整合が、取得されると、遠位部分2314bはさらに、遠位に前進され、心房スカート2318の半径方向拡張を可能にし、これは、外向きに漸広し、フランジを形成する。送達デバイス2214および補綴弁2319を遠位に前進させることは、僧帽弁2310に隣接する心房表面に対して心房スカート2318を着座させ、それによって、第1の位置に補綴弁を係留する。
【0117】
図23Eは、遠位部分2314bのさらなる遠位前進が、補綴弁2319からの付加的拘束を暴露し、軸方向に除去し、それによって、弁のより多くの部分が自己拡張することを可能にすることを示す。環状領域2320は、僧帽弁輪と係合するように拡張し、心室三角タブ2324および後タブ2322は、半径方向に拡張する。心室スカートの一部は、それらが、拘束されたままであるため、展開制御領域としての役割を果たし、したがって、心室スカート全体は、拡張することができない。タブは、前および後僧帽弁尖と心室壁との間に捕捉される。後心室係留タブ2322は、腱索付着物が不在である後僧帽弁尖の中間に整合されてもよく、後弁尖にわたって通過され、後弁尖と心室壁との間に着座する。2つの心室三角係留タブ2324は、前弁尖の両側上に位置付けられ、それらの頭部は、線維性三角に位置付けられる。補綴物のわずかな回転および再整合が、この時点で起こり得る。補綴物が、拡張する際、前三角タブは、線維性三角に対して係留し、タブと補綴弁の前面との間に天然前弁尖および腱索を捕捉し、後心室タブは、心室壁と後弁尖との間に係留し、後係留タブと補綴弁アセンブリの後面との間に後弁尖を捕捉する。
【0118】
図23Fは、遠位部分2314bのさらなる遠位前進が、心室三角タブおよび後タブを解放し、心室スカート2326もまた、解放され、心室壁に係合することなく、天然僧帽弁尖に対して半径方向に外向きに拡張することを可能にされることを示す。これは、天然弁尖内にシール漏斗を作成し、補綴弁を通して血流を注ぐことに役立つ。補綴弁の交連が、依然として、送達システムによって捕捉されていると、ごくわずかな調節が、依然として、正確な位置付け、係留、およびシールを確実にするために行われ得る。補綴弁は、ここでは、4つの位置に係留される。アンカタブ2328は、次いで、内側シャフトのさらなる前進によって送達デバイスから解放され、前述で上記に議論され、
図23Gに示されるように、タブが、送達カテーテル上のスロットから外に自己拡張することを可能にする。補綴弁は、ここで、患者の心臓内に埋込され、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。送達デバイス2314は、次いで、心房中隔を通して、かつ大静脈から外に戻るようにこれを近位に後退させることによって、心臓から除去されてもよい。
【0119】
図24は、経心尖または経中隔送達後に僧帽空間内に係留される、補綴弁2418を示す。補綴弁2418は、
図8Aに図示される補綴僧帽弁または本明細書に開示される他の補綴弁のうちのいずれかであり、
図22A-22Gまたは
図23A-23Gに示される方法によって送達されてもよく、心室スカート2410もまた、半径方向に外向きに拡張され、係合し、外向きに押圧する。補綴弁2418は、僧帽弁と係合するように半径方向に自己拡張し、大動脈弁2402等の左心室流出路を含む心臓の他の部分を妨害することなく、これを定位置に係留している。前三角タブ2408(本図では1つのみが見られる)および後心室タブ2405は、心室スカート2410の残りの部分から半径方向に外向きに拡張され、前弁尖2406および後弁尖2404は、個別のタブと心室スカート2410との間に捕捉され、アンカ点を形成する。腱索および乳頭筋の少なくとも一部は、しかしながら、心室壁に対して押圧し得ない。環状領域2416は、半径方向に外向きに拡張され、僧帽弁輪に係合し、それに対して押圧し、心房スカート2414もまた、外向きに拡張され、心房に対して僧帽弁の上に静置するフランジを形成する。したがって、補綴弁2418は、僧帽空間内の4つの位置に係留され、これは、補綴弁が、心臓の収縮の間に移動しない、または外れないように防止する。また、4つのアンカ点を使用することは、単一の係留区域のみにおいて、またはこれらの4つの係留区域の任意の組み合わせにおいて係留される補綴物と比較して、任意の所与の係留区域において印加されるように要求される係留圧力を減少させる。各区域における天然構造に対して付与されるように要求される半径方向力の結果としての低減は、天然僧帽弁器官の変位によって引き起こされる近傍の大動脈弁または大動脈根の妨害または衝突のリスクを最小限にする。弁尖2420は、順行性血流とともに開放し、逆行性血流とともに閉鎖する、三尖弁を形成する。交連2421(
図25に最も詳細に見られる)の先端上のタブ2412は、送達デバイスからの係脱後に遊離したままである。
【0120】
図25は、心房に向かって上向きに見た、僧帽空間内に係留され、左心室から視認される、
図24の補綴弁2418を図示する。前述で言及されるように、補綴弁2418は、経心尖的または経中隔的に送達されてもよく、
図8Aに図示され、
図22A-22Gまたは
図23A-23Gに示される方法によって送達される、補綴僧帽弁であってもよい。本図は、補綴僧帽弁2418と隣接する組織との係留および係合をより明確に図示する。例えば、三尖弁を形成する3つの弁尖2420は、開放位置において示され、それを過ぎる血流を可能にする。加えて、前三角タブ2408および後心室タブ2405は、心室心臓組織2425と係合するように半径方向に外向きに拡張されて示される。前三角タブ2408の間の補綴弁の前部分は、前述で上記に議論されるように、対応する平坦な解剖学的構造に合致するように、略平坦である。補綴弁の前部分の平坦な形状は、補綴弁が、大動脈弁を含む左心室流出路等の隣接する解剖学的構造に衝突し、それを妨害しないように防止する。
図25はまた、心室スカート2410が天然僧帽弁尖に対して半径方向に外向きに拡張する方法を図示する。
【0121】
(薬物送達)
【0122】
補綴弁のうちのいずれかはまた、局所的な薬物溶出のための薬物送達デバイスとして使用されてもよい。治療剤は、補綴弁上、アンカを被覆する組織上、または両方の上にコーティングされる、または別様に補綴弁によって搬送され、埋込後にそれから制御可能に溶出されてもよい。薬物の実施例は、抗石灰化薬、抗生物質、抗血小板凝集薬、抗炎症薬、組織拒絶反応を阻止する薬物、抗再狭窄薬、抗血栓形成薬、血栓溶解薬等を含む。これらの治療効果を有する薬物は、当業者に周知である。
【0123】
(アンカタブ)
【0124】
本明細書に開示される補綴弁の任意の実施例は、1つ以上の前アンカタブおよび/または1つ以上の後アンカタブを含んでもよい、またはアンカタブは、拡張可能フレーム上の任意の場所に(例えば、外側または内側に)位置付けられてもよい。これらの実施例は、有望であるが、ある状況では、蛍光透視または心エコー下でアンカタブを観察することは、困難であり得る。また、ある状況下では、アンカタブの先端は、それに対してタブが係留する、または外傷を引き起こす組織に係合し、炎症を引き起こし得る。したがって、改良されたアンカタブが、これらの課題のうちの少なくともいくつかを克服する際に望ましくあり得る。
【0125】
アンカタブを伴う補綴弁の実施例のうちのいずれかでは、それらが、カテーテル検査室において、または医師への訪問を含む任意の医療手技の間に使用される、蛍光透視、心エコー、または他の可視化技法下でより容易に観察されるように、アンカタブを修正することが、望ましくあり得る。
図26Aは、心室端部上にアンカタブ3102を伴う補綴弁3100を示す(補綴物は、下端上に心房フランジを伴って反転される)。補綴弁3100は、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかであってもよく、アンカタブ3102は、前アンカタブ、後アンカタブ、または本明細書に開示されるアンカタブのうちのいずれかであってもよい。
図26B-26Eは、本明細書に開示される任意の補綴物の任意のアンカタブと併用され得る、アンカタブ3102のいくつかの実施例を図示する。アンカタブは、ダクロン等の被覆物を用いて被覆される支柱から形成されてもよい、またはアンカタブは、中実であってもよい。
【0126】
図26Bは、基部3104および遊離端3108を伴うアンカタブ3102を示す。基部は、補綴弁に結合され、心室スカートに結合されてもよい。基部は、補綴弁に結合される丸形端部を伴う幅狭伸長区分を有する。遊離端3108は、組織に対して、例えば、アンカが前アンカである場合、線維性三角に対して、またはアンカが後アンカである場合、弁輪の後部分に対して係合および係留する端部である。遊離端は、基部に対して拡大された頭部領域を有し、拡大された頭部部分は、より広い接触表面積を提供し、したがって、より大きい表面積にわたって力を分配し、それによって、組織外傷の潜在性を低減させ、および可視化のためにより放射線不透過性またはエコー源性の面積を提供する。随意に、遊離端は、放射線撮影または超音波下の可視化を同様に促進し得るパターンを提供するために、タブを通して部分的または完全に延在する、複数のスロットを含んでもよい。ここでは、随意のパターンは、山形を形成する遊離端の両側上の2つの接続されないスロットと、遊離端の係合縁に隣接する2つの水平スロットとを含む。水平スロットのうちの一方は、他方の水平スロットよりも長い。再び、本随意のパターンは、可視化に役立ち得る。
【0127】
加えて、アンカタブにおいてスロットを有することは、アンカタブが、先端可撓性または剛性等の望ましい機械的性質を有することを可能にし、それによって、組織外傷をさらに回避するであろう。スロットは、放射線不透過性またはエコー源性フィラメントまたは可視性を強化する他の材料と置換されてもよい。
【0128】
図26Cは、本明細書に開示される任意の補綴弁上の任意のアンカタブと併用され得る、アンカタブの別の実施例を図示する。ここでは、タブ3102は、概して、
図26Bのタブと同一の形態をとり、主要な差異は、いかなるスロットも存在せず、本実施例がカバーまたはコーティングを含むことである。タブ3102は、基部3104と、また、
図26Bの遊離端と実質的に同一である遊離端3108とを含む。しかしながら、ここでは、遊離端3108は、
図26Bのスロットを含まない。また、遊離端は、遊離端3108にわたって配置される、または別様にそれに結合される、カバーまたはコーティング3110を含む。カバーまたはコーティングは、X線または超音波下の可視化を向上させる任意の材料であってもよい。例えば、コーティングまたはカバーは、エコー源性を助長するためのシリコーンまたは放射線不透過性を助長するための緻密材料を含んでもよい。可視化を促進することに加えて、カバーまたはコーティングはまた、力を分配するためのクッションおよび/またはより大きい表面積を提供し、それによって、タブが、組織に対して係留されるとき、組織への外傷を最小限にし、または防止し、したがって、カバーまたはコーティングは、アンカタブの機械的性質を制御するために使用されてもよい。
【0129】
図26Dは、概して、
図26Bのタブと同一の形態をとり、主要な差異が、表面特徴の使用である、アンカタブ3102の別の実施例を図示する。タブ3102は、概して、
図26Bの基部および遊離端と同一の形態をとる、基部3104と、遊離端3108とを含む。本実施例では、アンカタブは、複数の相互接続された支柱3112から形成され、被覆物が、支柱にわたって配置される。被覆物は、ダクロン、ePTFE、テフロン(登録商標)、組織等の任意の材料であってもよい。個々の支柱3112は、放射線不透過性またはエコー源性を強化するために、表面特徴を有する、または表面特徴3114を有するようにエッチングされてもよい。表面特徴はまた、機械的性質を強化してもよい。支柱のうちのいくつかまたは全ては、表面特徴またはエッチングを有してもよい。
【0130】
図26Eは、タブの可視化または機械的性質を強化するために使用され得る特徴を伴う、アンカタブの別の実施例を示す。タブ3120は、概して、
図26Bのタブと同一の形態をとり、
図26Bに説明されるものに実質的に類似する、基部3104と、遊離端3108とを有する。アンカタブは、アンカタブを通して延在する、1つ以上の開口を有してもよい。ここでは、アンカタブは、遊離端における開口3108と、基部における2つの開口3114、3116とを含む。開口3108は、より大きい開口であり、円形孔または別のパターンであってもよい一方、2つの基部開口3114、3116もまた、円形であり、両方とも遊離端開口3108よりも小さいが、基部の縁に最も近接する一方の開口は、基部における他方の開口よりも大きい。オペレータは、開口を見て、遊離端および基部端の位置を決定することが可能である。開口はまた、所望に応じて、アンカタブの可撓性または他の機械的性質を増加または減少させるように調節されてもよい。
【0131】
図27A-27Eは、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかと併用され得る、アンカタブの付加的実施例を図示する。
【0132】
図27Aは、上記の
図26A-26Eに前述で説明されるものに類似する、基部2702と、遊離端2704とを有する、アンカタブを示す。遊離端は、遊離端領域内のアンカタブの縦方向軸と平行な軸方向に配向されるレーストラック形スロット2712とともに、遊離端の外周の周囲に配置される、複数の丸形孔2714を含む。丸形孔2710の線形アレイが、基部と遊離端との間に配置され、幅広孔2706が、基部上に配置される。幅広孔2706は、テザーまたは他の物体が、アンカタブ(時として、エルボとも称される)の基部に結合され、エルボ展開を制御することを可能にする。丸形孔2708が、幅広孔2706の両側上に配置される。再び、孔は、アンカタブの可視化を促進し、望ましい機械的性質をアンカタブに提供することに役立つ。孔はまた、物体(例えば、カバー)をアンカタブに固着させるために、それを通して縫合糸を通過させるために使用されてもよい。
【0133】
図27Bは、
図27Aの実施例に類似し、異なるパターンのスロットおよび孔を伴う。基部2702は、それを通してテザーまたは他の制御要素が、エルボ展開を制御するために配置または結合され得る、幅広孔2716を含む。幅広孔2716の両側は、幅広孔2716の下に弓形スロット2720を用いて基部をマーキングするために、孔2718の線形アレイを含む。基部と遊離端との間のアンカタブの中間部分は、孔2722の線形アレイを含み、様々な長さの水平線形スロット2724、2728が、遊離端に至るまで延在し、丸形および長円形孔2726が、水平スロットのうちのいくつかの間に配置される。垂直長円形スロットが、水平スロットの間に配置されてもよい。丸形孔2730の最終線形アレイが、遊離端に沿って水平に配向されてもよい。
【0134】
図27Cは、アンカタブの放射線不透過性またはエコー源性および機械的特性を制御するためにアンカタブにおいて使用され得る、孔およびスロットパターンの別の実施例を図示する。孔パターンは、
図27Bにおけるものと実質的に同一であり、いくつかの修正を伴う。例えば、弓形スロット2720は、基部に向かって向く山形スロット2732と置換され、水平スロット2724、2728は、遊離端に向かって向く山形を形成する線形スロットと置換されている。山形は、基部2702と遊離端2704との間の領域内で開かれる(2734)、または閉じられてもよい(2736)。
【0135】
図27Dは、任意のアンカタブにおいて使用され得る、別の孔およびスロットパターンを示す。アンカタブは、基部2702と、遊離端2704とを含む。基部の近傍の孔パターンは、山形2732を除いて、
図27Cのものに類似する。遊離端に向かって向く閉じられた山形2740が、アンカの中間区分から遊離端に向かって延在し、複数の丸形孔が、
図27Aと同様に、遊離端の外周に沿って延在する。孔パターンの他の側面は、
図27A-27Cに類似する。
【0136】
図27Eは、アンカタブにおいて使用され得る、なおも別の孔およびスロットパターンを図示する。ここでは、基部2702は、テザー、フィラメント、または他の物体が、基部内の開口から容易に結合または結合解除されることを可能にする、開放スロット2750を含み、丸形孔2752が、スロットおよび開口を囲繞する。孔2754の線形アレイが、基部と遊離端との間の中間区分内でタブを辿って垂直に延在する。垂直に配向される長円形スロット2758が、遊離端の中心領域をマーキングし、遊離端2704の外周は、複数の丸形孔2756を用いて輪郭形成される。
【0137】
図27A-27Eの実施例は、限定であることを意図しておらず、スロット、孔、および他の表面特徴が、アンカタブの可視化を促進し、その機械的性質を制御するために、アンカタブの中に組み込まれ得る方法を図示するためにのみ開示される。
【0138】
図28A-28Cは、より可視であり、および低減された接触圧力、したがって、より外傷性の低いアンカを提供するであろう、アンカタブの別の実施例を図示する。本アンカタブは、前アンカタブ、後アンカタブ、または本明細書に開示される補綴弁実施例のうちのいずれかにおける任意のアンカタブとして使用されてもよい。
【0139】
図28Aは、圧潰構成であり、シースまたはカテーテルシャフト等の外側管状要素2804によって拘束される、補綴弁2802を図示し、これは、圧潰構成において治療領域への送達を促進する。補綴弁2802は、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかであってもよく、前アンカタブ、後アンカタブ、それらの組み合わせ、または他のアンカタブであり得る、アンカタブ2806を含む。本実施例では、2つのアンカタブのみが、見られるが、第3のアンカタブが、隠蔽され、したがって、本実施例は、2つの前アンカタブと、1つの後アンカタブとを含む。補綴弁はまた、前述で上記に開示されるように、送達カテーテルと解放可能に結合するための拡大された頭部を伴う交連柱2808を含む。アンカタブ2806はまた、アンカタブが、補綴弁の縦方向軸と略平行に延在する略線形形状において配置されるように、圧潰構成においてシース2804によって拘束される。
【0140】
図28Bでは、シース2804は、補綴弁の心房部分が、前述で説明されるように、自己拡張し、心房スカートまたはフランジ2810を形成するように、矢印によって示されるように、補綴物2802から離れるように後退される。シース2804が、さらに後退されるにつれて、アンカタブ2806は、拘束解除された状態になり、それらは、本明細書に前述で説明される他のアンカタブと実質的に同一の方法で自己拡張する。しかしながら、アンカタブの遊離端はまた、コイル2812に巻回するように付勢される。コイル状端部は、平坦な渦巻ばね(時として、クロックばねとも称される)を形成し得る。いったんシースが、完全に後退されると(
図28Bに図示せず)、補綴物の残りの部分は、自己拡張し、交連は、カテーテルから解放される。
【0141】
図28Cは、完全に拡張され、送達カテーテルから解放された補綴物を示す。完全拡張構成における補綴物は、本明細書に説明される他の弁補綴物の拡張構成と実質的に同一の形態をとる。主要な差異は、アンカタブのコイル状先端2812である。コイル状先端においてより多くの材料が、存在するため、質量および/または密度もまた、増加され、先端は、X線または超音波下でより可視であろう。加えて、アンカタブの係合部分は、平滑であり、湾曲し、およびより大きい表面積を有するため、組織への外傷もまた、最小限にされる、または回避されるであろう。
【0142】
補綴弁は、ニチノール、伸縮性ポリマー、または当技術分野で公知の他の材料等の任意の数の自己拡張または形状記憶材料から形成されてもよい。補綴弁はまた、バルーン拡張可能材料から形成されてもよく、バルーンカテーテルが、補綴物を拡張するために使用されてもよい。
【0143】
コイル状アンカタブはまた、本明細書に開示される被覆物、コーティング、スロット付き、テクスチャ加工、または別様に修正されたアンカタブのうちのいずれかと組み合わせられてもよい。
【0144】
(展開制御機構)
【0145】
前述で議論されるように、補綴弁は、自己拡張する、バルーン拡張可能であってもよい、またはこれは、当技術分野で公知の他の技法によって拡張可能であってもよい。自己拡張の間等のある状況では、補綴物は、唐突に勢いよく開放し、補綴物をその標的化展開場所から移動または跳躍させ得る。したがって、標的治療部位におけるより正確な展開および係留を確実にするために、補綴物に付加的展開制御機構を提供することが、望ましくあり得る。
【0146】
緊締またはラッソ機構が、半径方向拡張を制御するために、補綴弁の任意の部分に結合されてもよい。例えば、ラッソは、心房フランジ、環状領域、アンカタブに結合されてもよい、またはラッソは、補綴弁の心室部分の周囲に円周方向に延在してもよい。
【0147】
例えば、
図29A-29Bは、それぞれ、拡張および圧潰構成において心房フランジの外周に結合されるラッソを示す。
【0148】
図29Aは、部分的拡張構成における補綴弁を示す。補綴弁は、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかであってもよく、心房フランジは、拡張構成にある一方、補綴弁の残りの部分は、送達システムにおける伸長シャフト2914に結合される遠位カプセル2902内で圧潰構成において格納される。ラッソのループ部分2904は、フランジの外周の周囲に円周方向に延在し、ラッソの遊離端2910は、補綴弁から離れるように近位に延在する。ラッソの遊離端2910は、近位に延在し、送達システムの縦方向軸に略平行に延設されてもよい。遊離端は、送達システムの一部である別のシャフト2912の管腔内に摺動可能に配置されてもよい、または遊離端は、絡合を防止するために、送達カテーテルの外面に沿って、または管腔または環状空間内に延設されてもよい。シャフト2912は、送達カテーテルの管腔または環状空間の内側に配置されてもよい、またはシャフト2912は、送達カテーテルの外面に並んで延設されてもよい。遊離端は、それらがオペレータによって手動で制御され得る、送達カテーテルの近位端に近位に延在する、または遊離端は、オペレータがラッソを操作することを可能にする、アクチュエータに結合されてもよい。ラッソに張力を印加することは、概して、ラッソを引締し、したがって、心房フランジを圧潰させるであろう一方、張力を解放することは、ラッソを弛緩させ、それによって、心房フランジが拡張することを可能にするであろう。心房フランジを圧潰させることは、補綴弁が、送達カテーテルのカプセルまたは管腔内に再捕捉および再納設され、再位置付けされる、または患者から除去されることを可能にする。
【0149】
ラッソは、可撓性ワイヤまたは縫合糸等の任意のフィラメントから形成されてもよい。ラッソ(縫合糸、ワイヤ、または他の構成要素にかかわらず)は、心房フランジの外周の周囲に配置される、アイレット2906を通して通過される、またはラッソは、補綴弁フレーム上に配置される、他のコネクタ特徴を通して配置されてもよい。アイレット2906は、ファブリックタブであってもよく、これは、折り返され、チャネルを形成し、それを通して、フィラメントが、通過し、次いで、タブの端部は、補綴弁の支柱2908に(例えば、縫合によって)結合される、または補綴弁にわたって配置されるカバー2916(例えば、ダクロンカバー)に結合される。
【0150】
いったん補綴弁が、所望の場所に正しく展開されると、ラッソの遊離端は、近位端において解放され、フィラメントの一方の端部は、ラッソがアイレットから引き抜かれ、心房フランジから解放されるまで引動され、それによって、補綴弁からラッソを完全に除去してもよい。
【0151】
図29Bは、張力がラッソに印加され、それによって、これが再納設され、次いで、再位置付けおよび再展開されるか、または患者から除去されるかのいずれかであり得るように、補綴弁上の心房フランジを圧潰させるときの
図29Aの補綴弁を示す。
【0152】
いくつかの実施例では、ラッソは、ラッソの少なくとも一部が、埋込後に補綴弁とともに留まるように、補綴弁に固定して取り付けられてもよい。
【0153】
図30は、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかであり得る、補綴弁3002に固定して取り付けられる、ラッソ3004の別の実施例を図示する。ここでは、ラッソ3004は、補綴弁の心房フランジの外周に取り付けられる。ラッソは、心房フランジの周囲に閉ループを形成する、ワイヤまたは縫合糸等の単一のフィラメントから形成される。他の実施例では、1つを上回るフィラメントが、フィラメントを形成するために使用されてもよい。ループ等の1つ以上の(ここでは、2つが、存在する)コネクタ3006が、フィラメントにおいて形成され、ラッソから外向きかつ離れるように延在し、カテーテルシャフトまたはテザー等の作動要素に解放可能に結合され得る、アイレットを提供する。ラッソは、補綴弁の支柱3014に結合される、または補綴弁フレームの支柱3014にわたって配置される被覆物3016(例えば、ダクロンカバー)に結合される、タブ3010、3008を通してフィラメントを通過させることによって、補綴弁に固定される。タブは、短いタブ3008または長いタブ3010を含んでもよい。長いタブ3012は、スロットまたは開放窓部分3018を含み、コネクタ3006がスロットまたは窓を通して延在することを可能にし、コネクタのループ状部分へのアクセスを提供してもよい。コネクタのループ状部分は、アイレットとして作用し得るループを形成するために、フィラメントの一部をともに束ね、これに結び目を作る、または圧着リングを用いてこれを圧着することによって形成されてもよい。
【0154】
図30のラッソは、心房フランジを圧潰させるために、架張されてもよい、または張力は、心房フランジが自己拡張することを可能にするために、低減されてもよい。再び、これは、心房フランジの制御された拡張を可能にする、または所望される場合、心房フランジは、圧潰され、再納設され、再位置付けされる、または患者から除去されてもよい。
【0155】
図31A-31Cは、異なる構成における
図30の補綴弁を図示する。
図31Aは、張力がラッソ3004に印加され、それによって、心房フランジを圧潰構成に圧潰させる、補綴弁3002を示す。補綴弁の心室部分もまた、圧潰構成にあり、カプセル3102内に格納される。タブ3008が、前述で説明されるように、ラッソを補綴弁3002に保持する。2つのテザー3020が、ラッソにおいて形成されるループ3006に解放可能に結合される(
図31Cに最も詳細に見られる)。テザーは、ワイヤまたは縫合糸等のフィラメントであってもよく、テザーは、補綴弁を搬送する送達カテーテルシャフト3022の縦方向軸に略平行に近位に延在する。テザーは、絡合を防止し、摩擦を制御するために、別のカテーテルシャフト3024の管腔内に格納されてもよい、またはテザーは、単純に、送達カテーテルに並んで、または送達カテーテルの管腔または環状空間内に延設されてもよい。テザーの近位端は、オペレータによって手動で制御され、またはオペレータによって作動され得る取っ手上のアクチュエータに結合され、それによって、テザーにおける張力を制御し、したがって、心房フランジの拡張または圧潰構成を制御してもよい。
【0156】
図31Bは、張力が、テザー3020において弛緩され、それによって、心房フランジが拡張することを可能にする一方、補綴弁の心室部分は、カプセル3102内で圧潰または部分的に圧潰されたままであることを示す。オペレータが、補綴弁を再位置付けする、または患者からこれを除去することが必要である場合、張力が、これが再納設され、再位置付けまたは除去され得るように、心房フランジを圧潰させるために、テザーに再印加されてもよい。
【0157】
図31Cは、完全に展開された心房フランジを示し、いったん正しく展開されると、オペレータは、テザー3020から全ての張力を除去してもよく、コネクタ3026は、ラッソにおけるループ3006から解放され、それによって、ラッソからテザーを結合解除する。テザー3020およびそれらの保護シース3024は、次いで、患者から除去されてもよい一方、ラッソ3004は、補綴弁に取り付けられ、患者内に埋込されたままである。コネクタは、下記に説明されるもののうちのいずれか等、テザーとループとの解放可能結合を可能にする、任意のコネクタ要素であってもよい。
【0158】
図31D-31Fは、主要な差異が、テザー制御機構3032が含まれることである、上記の
図31A-31Cにおけるものと類似するラッソ展開制御機構を図示する。
図31D-31Fの他の側面は、
図31A-31Cにおけるものと実質的に同一である。
【0159】
図31Dでは、ここでは3つのテザーである、テザー3020は、送達カテーテル3022の縦方向軸に略平行である方向において、テザー制御要素3032内のチャネル3030に進入する。チャネル3030は、テザーが、送達カテーテル3022の縦方向軸を横断する、またはそれに直交する方向においてテザー制御要素3032から退出するように形成される。これは、テザーの絡合を防止することに役立ち、また、テザーによってラッソに送達される引張力を、ラッソにより半径方向に内向きに指向されるように指向し、これは、
図31Dに見られるように、張力が印加されるとき、ラッソおよび心房フランジの圧潰を促進するであろう。テザー制御要素は、張力制御要素が、いかなる隣接する表面にも引っ掛からない、またはこれが接触し得る隣接する組織へのいかなる外傷も引き起こさないことを確実にするために、斜角である近位および遠位接面を有してもよい。
図31Dの他の側面は、
図31Aと実質的に同一である。
【0160】
図31Eでは、張力は、テザーから解放され、ラッソを解放し、心房フランジが拡張することを可能にする。
図31Eの他の側面は、概して、
図31Bにおけるものと同一である。
【0161】
図31Fは、ラッソ上のコネクタループ3006から解放されたテザー3020を示す。テザーおよびコネクタ要素は、次いで、患者から除去されてもよい。
図31Fの他の側面は、概して、
図31Cにおけるものと同一である。
【0162】
図31G-31Iは、
図30におけるようなラッソの作動を制御するために使用され得る、機構の別の実施例を図示する。
図31G-31Iは、概して、
図31D-31Fに関して議論されるものと同一であり、主要な差異は、ラッソにおけるループへのテザーの結合/結合解除である。
【0163】
図31Gは、心室部分がカプセル3102内に配置される圧潰構成における、本明細書に開示される弁のうちのいずれかであり得る、補綴弁3002を示す。拡張可能フレームまたはフレームにわたるカバーに結合されたタブまたはアイレット3008を通して心房フランジの外周の周囲に通過されたラッソ3004が、圧潰構成において心房フランジを保持するために架張される。テザーに接続されるループ3006は、ループが、テザー制御要素3032の上にあるように、テザー制御要素3032を通して延在する。テザー制御要素は、前述で上記に議論されるように、種々のシャフトおよびフィラメントの絡合を防止することに役立ち、およびテザーによって提供される力を指向することに役立つ。ループ状端部を有するテザー3050が、ラッソのループ3006の下にテザー3050ループを配置することによって、ラッソテザー3006に結合され、ワイヤ3020等のフィラメントが、次いで、両方のループを通して通過される。したがって、張力が、テザー3050に印加されると、ループは、フィラメント3020のため、相互係止されたままであり、ラッソは、心房フランジを圧潰させるように引締され得る。フィラメント3050は、送達カテーテルに並んで延在してもよい、またはシャフトまたはシース(図示せず)内の管腔内に配置されてもよい。テザー3050および/またはシャフトまたはシースは、送達カテーテルに並んで延設される、または送達カテーテルの管腔または環状空間内に格納されてもよい。
【0164】
オペレータが、ラッソにおける張力を解放することを所望するとき、張力は、これが、依然として、ラッソループ3006に結合されている(フィラメントが、依然として、テザーループおよびラッソループの両方において配置されている)間にテザー3050において解放されてもよい。これは、
図31Hに見られるように、心房フランジが自己拡張することを可能にする。オペレータが、所望する場合、張力が、再印加され、心房フランジは、圧潰されてもよく、次いで、弁は、再位置付けおよび再展開される、または患者から除去されてもよい。
【0165】
図31Iは、いったん補綴弁が、正しく位置付けられ、心房フランジが、拡張されると、フィラメント3020が、近位に後退され、ループ3006、3050から除去され、ループを相互から結合解除し得ることを示す。ラッソ上のループ3006は、補綴弁に結合され、したがって、患者内に埋込されたままである一方、フィラメント3020およびテザー3050は、患者から除去される。
【0166】
テザー実施例のうちのいずれかでは、ラッソに結合されるテザーは、シャフトまたはシースの管腔内に配置されてもよい、またはテザーは、いかなる管腔からも遊離して配置されたままであり、送達カテーテルの近位端に向かって延在してもよい。任意のテザーは、引動アクションを開始し、張力を制御する、カテーテルシャフトにも継合され得る、テザーの短い区画のみであってもよく、したがって、実際のテザー区画は、送達カテーテルの近位端まで完全に戻るように延在する必要性はない。
【0167】
図32A-32Cは、
図31A-31Dにおけるもの等の上記に開示されるラッソ実施例のうちのいずれかとテザーを解放可能に結合するために使用され得る、コネクタの実施例を図示する。
図32Aは、
図31Cに前述で説明されるようなテザーの遠位遊離端においてコネクタ3210を用いて外側シャフト3202の管腔内に摺動可能に配置される、テザー3204を示す。コネクタ3210は、テザーから半径方向に外向きに延在し、その上にラッソのループ3206が脱落することなく静置し得る領域を提供する、肩部領域3208を伴う部分的に円筒形に成形される要素であり、円筒の縦方向軸に沿って延在する溝付き領域3214が、テザー3212の両端が肩部領域の周囲にループ形成した後に位置し得るチャネルを提供する。張力が、ループに印加されると、ループは、コネクタに結合されたままであろう。張力が、除去されると、ループは、コネクタ要素から結合解除され、テザーからラッソを解放し得る。張力は、ラッソに印加されるフープ応力を変動させるために調節されてもよく、これは、拡張または収縮の速度または心房フランジのサイズを制御する。外側シャフト3202は、送達カテーテル(図示せず)に並んで位置してもよい、またはこれは、送達カテーテル(同様に図示せず)の管腔または環状領域内に配置されてもよい。
【0168】
図32Bは、ラッソのループにテザーを解放可能に結合するために使用され得る、コネクタの別の実施例を図示する。本実施例は、
図32Aの実施例に類似し、主要な差異は、コネクタ3216である。再び、テザー3204が、外側カテーテルまたはシャフト3202の管腔内に摺動可能に配置される。コネクタ3216が、テザー3204の遊離端(遠位端)に取り付けられる。コネクタは、長方形ブロックであり、したがって、その上でループ状部分3206が、その周囲に巻着されるときに位置し得る幅広肩部領域を有し、ループ3212の対向する端部もまた、長方形ブロックコネクタの一方の側に対して平坦に位置する。コネクタの本実施例の他の側面は、概して、
図32Aに関して前述で説明されるものと同一である。
【0169】
図32Cは、ラッソにテザーを解放可能に結合するために使用され得る、コネクタの別の実施例を示す。本実施例では、テザー3222は、外側シャフト3220の管腔を通して通過する、ワイヤまたは縫合糸のフィラメントである。テザー3222は、次いで、ループ3228を形成し、ラッソ3224に取り付けられるボールコネクタ3226の周囲に巻着する。張力が、テザー3222に印加されると、ボールコネクタ3226は、外側シャフト3220の遠位端に向かって引動され、テザーにおけるループ3228がボールから結合解除しないように防止し、張力付与構成においてラッソを保持する。テザー3222上の張力が、解放されると、ループ3228は、ボールコネクタ3226から解放され、ラッソ3224上の張力を解放し、それによって、心房フランジが開放することを可能にし得る。コネクタの本実施例の他の側面は、概して、
図32A-32Bに前述で説明されるものと同一である。
【0170】
別の実施例(図示せず)では、ボールは、テザー3222に結合されてもよく、ループ3006(
図31Cに最も詳細に見られる)は、ボールに解放可能に結合されてもよい。
【0171】
これらの実施例におけるラッソは、補綴弁の心房フランジに適用された。これは、限定であることを意図していない。ラッソは、補綴弁の1つ以上の領域の拡張または圧潰を制御するために、補綴弁のいずれか1つ以上の領域に適用されてもよい。例えば、ラッソは、アンカタブの遊離端と補綴物の心室スカートの外面との間の半径方向距離(時として、タブエルボ距離とも称される)を制御するために、補綴弁の心室部分およびアンカタブに適用されてもよい。本距離は、隣接する組織とのタブ接触を制御するために、製造プロセスの一部として、送達に先立って、または送達の後に調節されてもよい。または、ラッソは、心室スカート、または環状領域、または補綴弁の2つ以上の領域の組み合わせに適用されてもよい。
【0172】
図33A-33Bは、本明細書に開示される補綴弁のうちのいずれかであり得、そのうちのいずれかは、補綴僧帽弁として使用され得る、補綴弁の拡張を制御するために使用される、展開制御機構の別の実施例を図示する。
【0173】
図33Aでは、補綴弁3304は、圧潰構成にある。心室部分は、圧潰され、カプセル3302内に格納される。心房部分3308は、その周囲に巻着されるリボンまたは拘束具3306によって圧潰構成において拘束および保持される。拘束具3306は、幅に対する長さの比率が、1を上回るように、幅よりも長い長さを有し得る、伸長リボンである。タブ3316が、リボンの一方の端部において形成され、スロット3318が、リボンの他方の端部において形成される。拘束具は、スロット3318を通してタブ3316を通過させることによって、係止構成において保持されてもよく、次いで、ワイヤ、ピン、または他のフィラメント3312が、タブ内に配置され、これがスロットを通して滑動しないように防止する。オペレータが、拘束具を解放することを所望するとき、フィラメントは、タブから除去されてもよく、次いで、タブは、スロットから抜け出し、リボンが広がるように、相互からのリボンの端部の解放を可能にし、これは、拘束された領域、ここでは、心房フランジ3308が、次いで、自己拡張することを可能にされるように、補綴弁に印加される圧縮を解放するであろう。
【0174】
ピンまたはフィラメントは、オペレータがピンまたはフィラメントを手動で制御し得る、送達カテーテル3310の近位端に向かって近位に延在する、伸長フィラメントであってもよい。フィラメントは、オペレータが、送達カテーテル(図示せず)上の取っ手からフィラメントを制御することを可能にする、送達カテーテルの近位端上のアクチュエータに結合されてもよい。フィラメントは、絡合を防止し、摩擦を制御するために、外側シャフト3314の管腔内に摺動可能に配置されてもよい。外側シャフト3314は、送達カテーテル3310の外面に並んで延設されてもよい、または外側シャフトは、送達カテーテルの管腔または環状空間内に配置されてもよい。任意の実施例では、フィラメントは、外側シャフト3314を伴わずに、送達カテーテルに並んで、または送達カテーテルの管腔または環状空間内に延設されてもよい。
【0175】
図33Bでは、フィラメント3312は、近位に後退され、ループ状タブ3316からフィラメントを除去し、これがスロット3318から係脱することを可能にし、それによって、拘束具を解放し、開放しており、したがって、心房フランジは、自己拡張することができる一方、心室部分は、カプセルによって圧潰されたままである。拘束具は、補綴弁に縫合され(3320)、または別様に取り付けられてもよく、したがって、補綴弁とともに埋込されたままである、または任意の実施例では、拘束具は、患者から除去されてもよい。いったん心房フランジが、展開すると、補綴弁の残りの部分は、前述で説明されるものと同様に展開されてもよい。
【0176】
図34A-34Bは、
図33A-33Bの拘束具を保持するために使用され得る、係止機構を図示する。
図34Aでは、拘束具3400は、リボンの対向する端部3402、3404を継合することによって形成される、ループを含む。一方の端部3402は、スロット付き領域3410を含み、対向する端部3404は、タブを通して延在するチャネル3408を伴うタブ3406を含む。スロットは、タブを受容するように定寸され、チャネルは、リボンの縦方向軸を横断する、またはそれに実質的に直交する縦方向軸を有する。
【0177】
図34Bでは、リボンの対向する端部3402、3404は、相互と重複されており、タブ3406は、スロット3410の中に挿入される。ピンまたはフィラメント3412が、次いで、チャネル3408の中に挿入され、拘束具を閉鎖位置に係止し、補綴弁を自己拡張から拘束する。オペレータが、準備完了すると、ピンまたはフィラメント3412は、チャネル3408から除去されてもよく、これは、拘束具を解放し、補綴弁が自己拡張することを可能にする。拘束具はまた、ベルトまたは緊締要素/機構とも称され得る。
【0178】
拘束具は、心房フランジ、環状領域、アンカタブ、心室スカート等を含む、補綴弁のいずれか1つ以上の領域の周囲に配置されてもよい。これは、金属、ダクロン等のファブリック、ポリマー等を含む、任意の材料から形成されてもよい。
【0179】
(随意の弁本体構成)
【0180】
前述で上記に説明される補綴弁は、随意に、送達、展開、または弁機能を促進し得る、以下の特徴のうちのいずれかを含むように修正されてもよい。
【0181】
例えば、任意の実施例では、弁本体は、天然弁の解剖学的構造により良好に適合するために、D形断面とともに構成されてもよい。なおも他の実施例では、天然解剖学的構造に共形化または係留するために、丸形、楕円形、正方形、長方形等の他の断面形状が、望ましくあり得る。
【0182】
D形または別の形状にかかわらず、いくつかの実施例では、拡張に応じて、これが、天然弁輪に係合せず、したがって、係留が、上側心房フランジおよびアンカタブのみを介して遂行されるように、補綴弁本体を形成することが、望ましくあり得る。係留要素のサイズは、様々な環状サイズに適応するように調節されてもよい。弁本体は、天然弁輪の外周の直径よりも小さい直径を有する外周を有してもよい。これは、変性僧帽弁逆流(DMR)および高駆出率を伴う小さい心室を伴う患者にとって有利であり得る。
【0183】
他の拡張可能弁フレーム幾何学形状もまた、利点を提供し得る。例えば、より少ない支柱接続ノードを伴う拡張可能フレームは、補綴弁における材料の量を低減させ、それによって、弁フレームがより薄型に圧潰されることを可能にし、これは、送達の間に望ましい。
【0184】
図35は、より小さい送達システムの送達に役立つだけではなく、また、フレームが送達システム上により緊密に圧着されることを可能にし、フレームが送達システムから射出される機会がより少ない、より安全な送達を確実にする、前述の実施例に対してより小さい外形に圧潰し得る、拡張可能フレームの実施例を示す。拡張可能フレーム3502は、概して、上記の他のフレームにおいて前述で説明されるものと同一の形態をとるが、拡張可能フレームを形成する金属がより少なく、したがって、送達を促進し、また、蛇行した血管を通したナビゲーションを促進する、より薄型に圧潰する。環状領域内の低減された数の菱形セルは、低減された圧着を可能にする。より小さい外形は、フレームが送達システム上により緊密に圧着されることを可能にし、より安全な送達を確実にする。また、より薄型は、より小さい経皮穿刺が導入および送達の間に使用されることを可能にし、それによって、血管外傷および出血の変化を低減させ、潜在的に、手技後の穿刺部位のシールを高速化する。
【0185】
拡張可能フレーム3502は、心房領域3504と、環状領域3506と、心室領域3510とを含む。心房領域3504は、頂部および谷部を伴う正弦波パターンを形成するようにコネクタ支柱とともに結合される、複数の伸長線形支柱を含む。心房領域は、前述で上記に説明される心房フランジを形成するために、熱処理されてもよい。
【0186】
環状領域3506も同様に、頂部および谷部を伴う正弦波パターンを形成するようにコネクタとともに結合される、複数の伸長線形支柱から形成される。環状領域は、丸形および円筒形である、またはD形断面または任意の他の断面形状を有してもよい。線形コネクタ支柱は、心房領域を環状領域と継合する。
【0187】
心室領域3510は、頂部および谷部を伴う正弦波パターンを形成するようにともに接続される、伸長線形支柱を含む。心室領域の他の側面は、拡張可能フレームの他の実施例において前述で説明されるものに類似する。例えば、拡張可能フレームは、拡張可能フレームを送達カテーテルと解放可能に結合する、拡大されたキノコ形頭部を伴う交連柱3512を含み、また、交連柱は、組織または他の材料が交連柱に結合され、補綴弁尖を形成することを可能にする。いくつかの実施例では、交連柱は、オペレータが、放射線撮影または超音波下で、天然弁の解剖学的構造に対する補綴弁配向を可視化することを可能にするために、前交連柱上に異なるように成形されたコネクタ頭部を有してもよい。例えば、後交連頭部は、キノコ形であってもよい一方、前交連柱は、台形頭部を有してもよい。前および/または後アンカタブ等の心室アンカ3508および心室スカート3514もまた、拡張可能フレーム内に含まれる。本実施例では、交連柱は、心室スカートを形成する支柱内で入れ子にされる。また、交連柱は、心室スカートの縁を過ぎて延在しない。
【0188】
フレーム設計はまた、送達システム上に圧着または圧潰されるとき、アンカタブよりも長い交連柱を含んでもよい。これは、送達カテーテルへの取付を簡略化し、交連柱と送達システムとの間の接触の深さを低減させる。
【0189】
図36は、心室スカート3614の縁を過ぎて延在する交連柱3610を伴う、拡張可能フレーム3602の実施例を図示する。本実施例は、交連柱3610よりも軸方向に短い係留タブ3616を示す。また、交連柱は、係留点が、ここでは、フレームの最も遠い端部にあるため、隣接する支柱(心室アーチ)によってもはや包囲されず、送達システムへの係留を簡略化する。また、除去されるものは、「S字」バーである。支持バーのみが、そのままであり、これは、本実施例では、交連レールに直接取り付けられる。全体的により短い設計(アイレットの除去もまた役立つ)はまた、緊密な解剖学的構造を通した本デバイスのナビゲーションを改良する。心室アーチの除去はまた、圧着状態における係留点の近傍のバルクを除去する。また、送達システムへの弁の搭載は、アーチを伴わないと、より容易に可視化される。アンカフレーム3602の他の側面は、概して、
図35に説明されるものと同一であり、心房フランジを形成する心房部分3604と、環状領域3606と、心室領域3608とを含む。これらの領域はそれぞれ、頂部および谷部を伴う正弦波パターンを形成するようにともに結合される、伸長支柱を含む。領域は、コネクタ支柱とともに結合される。
【0190】
前述で開示されるように、交連柱上の拡大されたキノコ頭部領域3612は、補綴物が、送達システム上の陥凹付きまたはスロット付き領域内に配置されることを可能にする。外側カテーテルが、交連柱にわたって摺動可能に配置され、それによって、カテーテル陥凹内に交連柱を拘束し、補綴物を送達システムに解放可能に係合させる。外側カテーテルの後退は、交連柱が、送達システムの陥凹付き領域から解放されることを可能にし、それによって、補綴物を送達カテーテルから結合解除する。いくつかの実施例では、交連柱の遊離端は、拡大されたキノコ頭部の有無を問わず、送達システム上への補綴物装填を促進し、早期の解放を防止することに役立つために、半径方向に内向きに、または半径方向に外向きに角度付けられてもよい。交連柱の角度付けはまた、弁シール、左心室流出路(LVOT)妨害に影響を及ぼし、かつ望ましい機械的性質を補綴弁フレームに提供し得る。角度付き交連柱に関する付加的開示が、下記に見出され得る。
【0191】
また、前述で開示されるように、交連柱3610上のコネクタ頭部3612は、キノコ頭部であってもよい、またはそれらは、相互に異なってもよい。例えば、オペレータが、放射線撮影または超音波技法を用いて補綴物を可視化することによって、送達の間の補綴物の配向を決定し得るように、前交連頭部は、1つの形状(例えば、台形)を有してもよい一方、後交連頭部は、異なる形状を有してもよい。
【0192】
多孔性弁もまた、これが、漏出が最初に応従性を可能にするため、埋込に応じて瞬間的にではなく、経時的により漸進的にシールが形成されることを可能にするため、有用であり得る。メッシュまたは多孔性材料が、心室スカートに結合されてもよく、組織が、メッシュ材料の中に内方成長するにつれて、流動は、経時的に次第に低減される。
【0193】
低減された心室スカートもまた、押流を可能にするために採用されてもよい。これは、心室スカートの一部または全てを露出されたままにすることによって遂行されてもよく、これは、血流停滞を防止し、それによって、補綴弁を通したより自然な血流を可能にすることに役立ち、血栓形成を回避する、または最小限にする。
【0194】
同様に、PTFE、ePTFE、または他の材料が、血栓形成および成長を阻止することに役立つために、補綴弁の種々の部分に結合されてもよい。例えば、PTFEは、補綴弁尖に沿って、または補綴弁尖が交連柱および/または拡張可能フレームに結合される領域に隣接することを含め、それに隣接して配置されてもよい。抗血栓薬もまた、補綴弁に結合され、それから送達または溶出され、血栓形成を低減させてもよい。
【0195】
なおも他の実施例では、補綴弁尖は、1つまたは2つ、またはそれを上回る可動性弁尖と、1つまたは2つ、またはそれを上回る定常弁尖とを含んでもよい。定常弁尖は、設計することがより容易であり得る。閉鎖の間の補綴弁尖高もまた、制御することがより容易であり得る。補綴弁尖の可動性はまた、全てともに、または一意の可動性を伴ってそれぞれのいずれかで制御されてもよい。
【0196】
任意の実施例では、半径方向に内向きに角度付けられる交連柱を提供することが、望ましくあり得る。これは、血液または他の流体が、交連に取り付けられる補綴弁尖を通して通過する際の流動動態に役立ち得る。
【0197】
図37は、これが補綴弁の縦方向軸に直交する、またはそれを横断するように、半径方向に内向きに角度付けられる交連柱3704を伴う、補綴弁3700を示す。各柱は、円形線が各柱の先端に接するように、等量において内向きに角度付けられてもよい、または柱は、異なる量において屈曲されてもよい。他の実施例では、交連柱は、外向きに角度付けられてもよい、またはいくつかの交連柱は、内向きに角度付けられ、いくつかは、外向きに角度付けられてもよい。なおも他の実施例では、内向きに角度付けられる、外向きに角度付けられる、または直線のままであり、補綴弁フレームの縦方向軸と略平行である交連柱の任意の並べ替えまたは組み合わせが、使用されてもよい。例えば、一実施例では、1つ以上の後交連柱は、直線であり、補綴弁フレームの縦方向軸と略平行であってもよい一方、補綴弁はまた、半径方向に外向きに角度付けられる1つ以上の前交連柱を有する(角度付けられる交連柱は、弁の縦方向軸に直交する、またはそれを横断する)。任意の実施例では、交連柱のうちのいくつかまたは全ては、補綴弁の縦方向軸と平行であってもよい、または交連柱は、補綴弁の縦方向軸に対して曲線であってもよい。したがって、交連柱の任意の変形例は、弁縦方向軸を横断する、またはそれに直交する、またはそれに平行である、またはそれに曲線であってもよい。交連角度は、効果的なオリフィス面積、弁装填の容易さ、弁シールを促進するための半径方向力、潜在的なLVOT妨害、弁の流体力学的性能、およびフレームの機械的性質に影響を及ぼすために使用されることができ、したがって、所望の性能特性を提供するために、角度は、製造の間に調節されてもよい、または交連角度は、患者内への埋込の間に調節されてもよい。
(注記および実施例)
【0198】
以下の非限定的実施例は、とりわけ、本明細書に議論される課題を解決し、利益を提供するために、本主題のある側面を詳述する。
【0199】
本開示は、僧帽弁逆流を治療するための補綴弁の使用に焦点を当てるが、これは、限定であることを意図していない。本明細書に開示される補綴弁はまた、他の心臓弁または静脈弁を含む、他の身体弁を治療するために使用されてもよい。心臓弁の実施例は、大動脈弁、三尖弁、または肺動脈弁を含む。
【0200】
実施例1は、心房フランジと、心室スカートと、環状領域と、心室アンカタブとを備える、半径方向拡張可能フレームであって、心房フランジは、拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、心室スカートは、拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、環状領域は、心房フランジと心室スカートとの間に配置され、アンカタブは、心室スカートに結合される、半径方向拡張可能フレームと、拡張可能フレームに結合される、拘束要素であって、拘束要素は、フープ力を拡張可能フレームに印加し、それによって、拡張可能フレームの拡張の量または圧潰の量を制御するように構成される、拘束要素とを備える、補綴弁である。
【0201】
実施例2は、拘束要素が、調節可能なフープ力を拡張可能フレームに印加するように構成される、調節可能拘束要素である、実施例1に記載の弁である。
【0202】
実施例3は、調節可能拘束要素が、心房フランジの外周の周囲に配置される、ラッソを備える、実施例1-2のいずれかに記載の弁である。
【0203】
実施例4は、拡張可能フレームが、心房フランジの外周に結合される、複数のアイレットを備え、ラッソは、複数のアイレットを通して摺動可能に配置される、実施例1-3のいずれかに記載の弁である。
【0204】
実施例5は、ラッソが、ラッソに結合される、1つ以上の伸長テザーを備え、1つ以上の伸長テザーの作動は、フープ力を印加または解放し、それによって、心房フランジを拡張または圧潰させる、実施例1-4のいずれかに記載の弁である。
【0205】
実施例6は、拘束要素が、拡張可能フレームに固定して取り付けられる、実施例1-5のいずれかに記載の弁である。
【0206】
実施例7は、拘束要素が、拡張可能フレームに解放可能に取り付けられる、実施例1-6のいずれかに記載の弁である。
【0207】
実施例8は、拘束要素が、心房フランジの外周の周囲に配置される、拘束具を備える、実施例1-7のいずれかに記載の弁である。
【0208】
実施例9は、拘束具が、第1の遊離端と、第1の遊離端に対向する第2の遊離端とを備え、第1の遊離端は、スロットを備え、第2の遊離端は、外向きに突出するアイレットを備え、アイレットは、伸長テザーが、アイレット内に解放可能かつ摺動可能に配置されると、拘束具が、心房フランジの拡張を拘束する閉ループにおいて保持されるように、スロット内に配置され、アイレットからの伸長テザーの除去は、拘束具が開放することを可能にし、心房フランジの拡張を可能にする、実施例1-8のいずれかに記載の弁である。
【0209】
実施例10は、拘束要素が、心室アンカタブおよび心室スカートにわたって配置され、ループ力の調節は、心室アンカタブと心室スカートとの間の半径方向距離を制御する、実施例1-9のいずれかに記載の弁である。
【0210】
実施例11は、第1の端部と、第1の端部に対向する第2の端部とを有する、テザーをさらに備え、第1の端部は、拘束要素に結合され、第2の端部は、補綴弁を搬送する送達カテーテル内で、またはそれに並んで搬送されるように構成され、第2の端部は、オペレータによって作動または操作されるように構成される、実施例1-10のいずれかに記載の弁である。
【0211】
実施例12は、実施例1-11のいずれかに記載の補綴弁と、縦方向軸を有し、補綴弁を搬送する、送達カテーテルと、拘束要素に結合される、テザーであって、テザーは、送達カテーテルの縦方向軸に沿って軸方向に延設され、テザーの制御は、拡張可能フレームに印加されるフープ力を制御する、テザーとを備える、補綴弁システムである。
【0212】
実施例13は、テザーが、拘束要素に解放可能に結合される、実施例12に記載のシステムである。
【0213】
実施例14は、患者内の治療面積に補綴弁を送達する方法であって、半径方向拡張可能フレームを有する、補綴弁を提供するステップであって、半径方向拡張可能フレームは、心房フランジと、心室スカートと、心房フランジと心室スカートとの間に配置される、環状領域と、心室スカートに結合される、心室アンカタブとを備える、ステップと、圧潰構成における補綴弁の少なくとも一部を保持する拘束要素を用いて、補綴弁にフープ力を印加させるステップと、圧潰構成において治療面積に補綴弁を前進させるステップと、フープ力を調節し、補綴弁の一部が半径方向に拡張することを可能にするステップと、補綴弁を治療面積内の組織に係留するステップとを含む、方法である。
【0214】
実施例15は、拘束要素が、ラッソを備え、補綴弁にフープ力を印加させるステップは、補綴弁の周囲にラッソを確実に維持するステップを含む、実施例14に記載の方法である。
【0215】
実施例16は、ラッソを維持するステップが、ラッソに結合されるテザーに張力付与するステップを含む、実施例14-15のいずれかに記載の方法である。
【0216】
実施例17は、フープ力を調節するステップが、ラッソを弛緩させるステップを含む、実施例14-16のいずれかに記載の方法である。
【0217】
実施例18は、ラッソを弛緩させるステップが、ラッソに結合されるテザーにおける張力を低減させるステップまたはラッソからテザーを結合解除するステップを含む、実施例14-17のいずれかに記載の方法である。
【0218】
実施例19は、拘束要素が、拘束具を備え、補綴弁にフープ力を印加させるステップは、補綴弁の周囲に拘束具を維持するステップを含む、実施例14-18のいずれかに記載の方法である。
【0219】
実施例20は、フープ力を調節するステップが、拘束具を弛緩させるステップを含む、実施例14-19のいずれかに記載の方法である。
【0220】
実施例21は、拘束具を弛緩させるステップが、拘束具からテザーを結合解除するステップを含む、実施例14-20のいずれかに記載の方法である。
【0221】
実施例22は、フープ力を調節した後、第2のフープ力を補綴弁に印加し、それによって、補綴弁を圧潰させるステップをさらに含む、実施例14-21のいずれかに記載の方法である。
【0222】
実施例23は、拘束要素が、心房フランジに結合される、実施例14-22のいずれかに記載の方法である。
【0223】
実施例24は、心房フランジと、心室スカートと、心房フランジと心室スカートとの間に配置される、環状領域と、心室アンカタブとを備える、半径方向拡張可能フレームを備え、心房フランジは、拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、心室スカートは、拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、心室アンカタブは、心室スカートに結合され、心室アンカタブは、非外傷性先端、または超音波を用いて可視化されるときにエコー源性である、または放射線撮影を用いて可視化されるときに放射線不透過性である先端を備える、補綴弁である。
【0224】
実施例25は、先端が、エコー源性材料から形成される、エコー源性先端である、または、エコー源性先端は、アンカタブに結合される、エコー源性材料を含む、または、エコー源性先端は、それにエコー源性を付与する、アンカタブ上に配置される表面特徴から形成される、実施例24に記載の弁である。
【0225】
実施例26は、非外傷性先端が、アンカタブに結合され、組織を突刺することなく心臓内の組織に係合するように構成される、ポリマーまたは他の材料を含む、実施例24-25のいずれかに記載の弁である。
【0226】
実施例27は、アンカタブに結合される、非外傷性先端をさらに備え、非外傷性先端は、非外傷性先端を伴わないアンカタブに対してより広い表面積を有し、非外傷性先端は、より大きい表面積にわたって係留力を分配し、それによって、非外傷性先端が係留する組織への外傷を低減または排除するように構成される、実施例24-26のいずれかに記載の弁である。
【0227】
実施例28は、非外傷性先端が、拡張構成と、圧潰構成とを有する、自己拡張先端を備え、非外傷性先端は、拡張構成に留まるように付勢され、非外傷性先端は、拘束を用いて圧潰構成において保持され、拡張構成では、非外傷性先端は、組織に突刺することなく組織に係合するように構成され、圧潰構成では、弁は、心臓への送達のために構成される外形を有する、実施例24-27のいずれかに記載の弁である。
【0228】
実施例29は、非外傷性先端が、渦巻捩りばねを備える、実施例24-28のいずれかに記載の弁である。
【0229】
実施例30は、非外傷性先端が、その可撓性を増加させるために、非外傷性先端内に配置される、1つ以上のスロットまたは開口を備える、実施例24-29のいずれかに記載の弁である。
【0230】
実施例31は、拡張可能フレームに結合される、複数の交連柱をさらに備え、複数の交連柱は、複数の補綴弁尖を保持するように構成され、複数の交連柱のうちの1つ以上のものは、半径方向拡張可能フレームの縦方向軸を横断する、実施例24-30のいずれかに記載の弁である。
【0231】
実施例32は、拡張可能フレームに結合される、複数の交連柱をさらに備え、複数の交連柱のうちの1つ以上のものは、半径方向拡張可能フレームの縦方向軸に対して調節可能に角形成可能である、実施例24-31のいずれかに記載の弁である。
【0232】
実施例33は、心房フランジと、心室スカートと、心房フランジと心室スカートとの間に配置される、環状領域と、心室アンカタブと、複数の交連柱とを備える、半径方向拡張可能フレームを備え、心房フランジは、拡張可能フレームの一方の端部上に配置され、心室スカートは、拡張可能フレームの対向する端部上に配置され、心室スカートは、補綴弁の最下流縁である、心室縁を有し、心室アンカタブは、心室スカートに結合され、複数の交連柱は、遊離端と、接続端とを備え、接続端は、拡張可能フレームに結合され、遊離端は、心室スカートの心室縁を越えて延在する、補綴弁である。
【0233】
実施例34は、補綴弁が、補綴僧帽弁である、実施例33に記載の弁である。
【0234】
実施例35は、交連柱が、遊離端上の結合要素を備え、結合要素は、補綴弁を送達カテーテルと解放可能に係合させるように構成される、実施例33-34のいずれかに記載の弁である。
【0235】
実施例36は、複数の交連柱のうちの1つ以上のものが、半径方向拡張可能フレームの縦方向軸を横断する、実施例33-35のいずれかに記載の弁である。
【0236】
実施例37は、複数の交連柱のうちの少なくとも1つが、半径方向拡張可能フレームの縦方向軸に対して調節可能に角形成可能である、実施例33-36のいずれかに記載の弁である。
【0237】
実施例38は、少なくとも1つの結合要素が、オペレータが、放射線撮像を用いて補綴弁の前部分を可視化することを可能にするように構成される、放射線不透過性マーカである、実施例33-37のいずれかに記載の弁である。
【0238】
実施例39では、実施例1-38のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせの装置または方法は、随意に、列挙される全ての要素または選択肢が、使用または選択するために利用可能であるように構成されることができる。
【0239】
上記に詳述される説明は、発明を実施するための形態の一部を形成する、付随の図面の参照を含む。図面は、例証として、本発明が実践され得る、具体的実施形態を示す。これらの実施形態はまた、本明細書では、「実施例」とも称される。そのような実施例は、示される、または説明されるものに加えて、要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らはまた、示される、または説明されるそれらの要素のみが提供される実施例を想定する。また、本発明者らはまた、本明細書に示される、または説明される特定の実施例(またはその1つ以上の側面)に対して、または他の実施例(またはその1つ以上の側面)に対してのいずれかにおいて、示される、または説明されるそれらの要素(またはその1つ以上の側面)の任意の組み合わせまたは並べ替えを使用する実施例を想定する。
【0240】
本書とそのように参照することによって組み込まれる任意の文書との間の矛盾する使用の場合、本書における使用が、優先される。
【0241】
本書では、用語「a」または「an」は、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上の」の任意の他の事例または使用から独立して、1つまたは1つを上回るものを含むために使用される。本書では、用語「または」は、別様に示されない限り、非排他的である、すなわち、「AまたはB」が、「Aを含むが、Bを含まない」、「Bを含むが、Aを含まない」、および「AおよびBを含む」ものを指すように使用される。本書では、用語「~を含む(including)」および「in which」は、個別の用語「~を備える(comprising)」および「wherein」の平易な英語均等物として使用される。また、以下の請求項では、用語「~を含む(including)」および「~を備える(comprising)」は、非制限的である、すなわち、請求項におけるそのような用語の後のそれらの列挙されたものに加えた要素を含む、システム、デバイス、物品、組成物、調合物、またはプロセスも、依然として、その請求項の範囲内に該当すると見なされる。また、以下の請求項では、用語「第1」、「第2」、および「第3」等は、単に、標識として使用され、その目的語に対して数値要件を課すことを意図していない。
【0242】
上記の説明は、制限的ではなく、例証的であることを意図している。例えば、上記に説明される実施例(またはその1つ以上の側面)は、相互と組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態が、上記の説明を精査することに応じて、当業者によって等、使用されることができる。要約は、読者が、技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。これは、これが請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないであろうことを理解した上で提出される。また、上記の発明を実施するための形態では、種々の特徴が、本開示を合理化するためにともに群化され得る。これは、請求されない開示される特徴が、任意の請求項に必須であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明的主題は、特定の開示される実施例の全ての特徴よりも少ないものにあり得る。したがって、以下の請求項は、本明細書に実施例または実施形態としての発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立し、そのような実施形態が、種々の組み合わせまたは並べ替えにおいて、相互と組み合わせられ得ることが想定される。本発明の範囲は、そのような請求項が享受する均等物の全範囲とともに、添付される請求項を参照して決定されるべきである。