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特許7438241ペダルストロークシミュレータ、およびペダルストロークシミュレータを有する液圧ブロック
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  • 特許-ペダルストロークシミュレータ、およびペダルストロークシミュレータを有する液圧ブロック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ペダルストロークシミュレータ、およびペダルストロークシミュレータを有する液圧ブロック
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/16 20060101AFI20240216BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 8/40 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60T11/16 C
B60T8/17 B
B60T8/40
B60T13/122 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021564546
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020059512
(87)【国際公開番号】W WO2020224883
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】102019206660.7
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】グゲンモス,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/091195(WO,A1)
【文献】特開2010-000925(JP,A)
【文献】特開2016-188006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0362006(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017216001(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/16
B60T 8/17
B60T 8/40
B60T 13/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式非人力車両ブレーキシステムのペダルストロークシミュレータであって、シミュレータシリンダ(3)と、前記シミュレータシリンダ(3)の閉端における、前記シミュレータシリンダ(3)がマスタブレーキシリンダと連通するための液圧接続部(4)と、前記シミュレータシリンダ(3)内で摺動可能なシミュレータピストン(6)と、前記シミュレータシリンダ(3)の開端を閉鎖する中空シリンダカバー(9)と、前記中空シリンダカバー(9)内に配置された第1ピストンスプリング(12)と、前記第1ピストンスプリング(17)の、前記シミュレータシリンダ(3)に向いた側において前記シリンダカバー(7)に取り付けられ、かつ前記シリンダカバー(7)から前記シミュレータシリンダ(3)に、およびその逆に流体を通過させ、かつ前記第1ピストンスプリング(17)を前記シリンダカバー(7)内に保持する多機能部材(11)と、前記第1ピストンスプリング(17)と前記シミュレータピストン(6)との間に配置されるスペーサ(15)と、前記第1ピストンスプリング(17)と前記多機能部材(11)との間に配置される前記スペーサ(15)のディスク(16)と、前記第1ピストンスプリング(17)と前記ディスク(16)との間に配置される穴あきディスク(18)と、を備えるペダルストロークシミュレータにおいて、記スペーサは前記多機能部材(11)を貫通し、かつ前記第1ピストンスプリング(17)によって前記シミュレータピストン(6)の方向に付勢され、かつ前記シミュレータピストン(6)の第1移動距離(s1)後に前記第1ピストンスプリング(17)の弾撥力を前記シミュレータピストン(6)に伝達することと、前記ペダルストロークシミュレータ(2)は、前記第1移動距離(s1)中に前記シミュレータピストン(6)を前記シミュレータシリンダ(3)の前記閉端の方向に付勢する第2ピストンスプリング(21)を有し、
前記多機能部材(11)は、前記シリンダカバー(7)の開口に取り付けられ、前記スペーサ(15)のプランジャ(14)の径より大きな径の穴を有し、
前記ディスク(16)は、前記穴あきディスク(18)に向いた端面に径方向通路(23)を有することを特徴とするペダルストロークシミュレータ。
【請求項2】
前記第1ピストンスプリング(17)が皿ばね、または皿ばね組立体を有すること、および/または前記第2ピストンスプリング(21)がコイルばねであること、を特徴とする請求項1に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項3】
前記第2ピストンスプリング(21)がコイルばねであることと、前記スペーサ(15)が前記第2ピストンスプリング(21)を貫通することと、前記スペーサ(15)が前記第2ピストンスプリング(21)の受け面(20)からの前記シミュレータピストン(6)の、前記第2ピストンスプリング(21)の最小長より大きい最小距離を確保することと、を特徴とする請求項1または2に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項4】
前記シミュレータピストン(6)は、前記第2ピストンスプリング(21)の一端が収容されている前記第1ピストンスプリング(17)に向いた端に凹部(19)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項5】
記ディスクから前記シミュレータピストン(6)の方向にプランジャ(14)が突出し、前記プランジャが前記多機能部材(11)を貫通し、前記シミュレータピストン(6)が前記第1移動距離(s1)の終わりに前記プランジャにぶつかることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項6】
前記多機能部材(11)によって前記シリンダカバー(7)に保持される前記シリンダカバー(7)と前記シリンダカバー(7)に取り付けられた多機能部材(11)と前記第1ピストンスプリング(17)とスペーサ(15)とが組立体を形成することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項7】
前記シミュレータピストン(6)の前記第1移動距離(s1)の長さは、前記スペーサ(15)の長さ、および/または前記シミュレータピストン(6)における凹部(19)の深さによって調整可能であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項8】
前記ペダルストロークシミュレータ(3)は、前記スペーサ(15)と前記シミュレータピストン(6)との間に弾性(25)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のペダルストロークシミュレータ(2)を有する液圧式非人力車両ブレーキシステムの液圧ブロックにおいて、前記シミュレータシリンダ(3)が前記液圧ブロック(1)における穴として形成されていることを特徴とする、液圧ブロック。
【請求項10】
前記液圧ブロック(1)がマスタブレーキシリンダ孔(5)および/または非人力シリンダ孔(22)を有することを特徴とする、請求項9に記載の液圧ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有するペダルストロークシミュレータ、および請求項10の前提部の特徴を有する液圧式非人力車両ブレーキシステムのための液圧ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
ペダルストロークシミュレータは、非人力操作される液圧式車両ブレーキシステムにおいて、マスタブレーキシリンダの操作時のペダルストローク(ハンドブレーキの場合はレバーストローク)を可能にする。マスタブレーキシリンダは、非人力操作される場合にマスタブレーキシリンダによってではなく、例えばハイドロポンプなどの外部エネルギーにより生成されるブレーキ液圧の目標値発生器として用いられる。マスタブレーキシリンダは、例えば弁の閉鎖による非人力制動時に、残りの車両ブレーキシステムから例えば液圧的に切り離され、その操作時にはブレーキ液をペダルストロークシミュレータに押しのけ、非人力制動中、ペダルストロークシミュレータはマスタブレーキシリンダと連通する。
【0003】
特許文献1は、非人力操作される液圧式車両ブレーキシステムのための液圧ブロックを開示する。液圧ブロックは幅の狭い直方体状の金属ブロックであり、この金属ブロックにペダルストロークシミュレータが組み込まれている。そのために液圧ブロックの短辺側に円筒状の有底穴が設けられ、シミュレータピストンは、この有底穴に軸方向に摺動可能に収容されている。有底穴は、円筒管状で一端が閉じたシリンダカバーにより圧密に閉鎖され、シリンダカバー内には、液圧ブロックにおけるシミュレータピストンを有底穴の底の方向に付勢するピストンスプリングとしての皿ばね組立体が入っている。有底穴の底では液圧ブロックにおいてマスタブレーキシリンダ孔へ通じる孔が開口する。液圧ブロック、もしくは有底穴を取り囲む液圧ブロックの領域は、ペダルストロークシミュレータのシミュレータシリンダをなし、このシミュレータシリンダにはシミュレータピストン、ピストンスプリング、およびシリンダカバーも属する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/091195号
【発明の概要】
【0005】
本発明による請求項1の特徴を有するペダルストロークシミュレータは、シミュレータシリンダ内で摺動可能であり、かつ第1ピストンスプリングによってシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢されるシミュレータピストンを有する。第1ピストンスプリングは、シミュレータシリンダの開端を殊に液密および耐圧(druckfest)に閉鎖する中空のシリンダカバー内に配置されている。中空とは、ピストンスプリングを収容するのに適した、かつ場合によってはシミュレータシリンダを延長するシリンダカバーの形状のことである。シリンダカバーは、例えば円筒管状であり開端と閉端を有する。例えば穴あきディスク(Lochscheibe)の形式の多機能部材は、第1ピストンスプリングのシミュレータシリンダに向いた側でシリンダカバーに取り付けられ、第1ピストンスプリングをシリンダカバー内に保持する。多機能部材は流体を通過させるので、ブレーキ液がシミュレータシリンダからシリンダカバーへ、およびその逆に流れることができる。
【0006】
第1ピストンスプリングとシミュレータピストンとの間には、多機能部材を貫通し、かつ第1ピストンスプリングによってシミュレータピストンの方向に付勢されるスペーサが配置されている。シミュレータピストンの第1移動距離(Verschiebeweg)の後に、スペーサは、第1ピストンスプリングの弾撥力をシミュレータピストンに伝達し、かつシミュレータピストンをシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢する。第1移動距離は、シミュレータピストンがシミュレータシリンダの閉端または閉端の近傍に位置するピストン往復運動の初めのシミュレータピストンのピストン往復運動の一部である。
【0007】
ペダルストロークシミュレータの第2ピストンスプリングは、第1移動距離中にシミュレータピストンを同様にシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢し、第2ピストンスプリングは、シミュレータピストンを、残りのピストン往復運動中もシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢することができる。ピストン往復運動の初めの第1移動距離中、第1ピストンスプリングではなく第2ピストンスプリングがシミュレータピストンをシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢し、それにより第1移動距離中にシミュレータピストンの摺動方向とは逆方向のシミュレータピストンに作用する弾撥力は、より強力な第1ピストンスプリングがスペーサを介してシミュレータピストンをシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢する残りのピストン往復運動中よりも小さい。それによって、いわゆる「ジャンプ・イン」が実現、もしくはシミュレートされる。
【0008】
「ジャンプ・イン」は、マスタブレーキシリンダの筋力操作の初めの低いペダル力またはレバー力であり、およそ、すべてのホイールブレーキの摩擦ブレーキパッドがブレーキディスク、ブレーキドラム、または他の制動体(Bremskoerper)に当接するまでの間継続する。「ジャンプ・イン」中、マスタブレーキシリンダにおける実質的に復帰用スプリングのみがフットブレーキペダルの踏み込み、ハンドブレーキレバーの引き、または一般にマスタブレーキシリンダの操作要素の動きに抗する。ホイールブレーキの摩擦ブレーキパッドが制動体に当接した場合、マスタブレーキシリンダ内でのマスタブレーキシリンダピストンのさらなる摺動が液圧を発生させ、この液圧が操作力を感じとれるほど高める。本発明によるペダルストロークシミュレータは、第1移動距離中にシミュレータピストンに作用しない第1ピストンスプリングがシミュレータピストンの第1移動距離の終わりにシミュレータピストンをシミュレータシリンダの閉端の方向に付勢する場合に著しい力の上昇を達成する。
【0009】
シミュレータシリンダは、その閉端または閉端の近傍にマスタブレーキシリンダのための接続部を有し、この接続部を、ペダルストロークシミュレータのシリンダの、シミュレータシリンダがマスタブレーキシリンダと連通する入口および出口と解釈することもできる。
【0010】
従属請求項は、請求項1に記載の発明の有利な実施形態および発展形態を主題とする。
【0011】
殊に、ペダルストロークシミュレータは、液圧式車両ブレーキシステムの、特に非人力車両ブレーキシステムのスリップ制御の液圧ブロックに組み込まれている(請求項8および請求項9)。この種の液圧ブロックはそれ自体公知であり、液圧ブロックは通常、車両ブレーキシステム、もしくは車両ブレーキシステムのスリップ制御の液圧回路図に従って穿孔されている直方体状の金属ブロックである。液圧ブロックは、電磁弁、ハイドロポンプ、およびスリップ制御の他の液圧部品を装備する。この種の液圧ブロックはそれ自体公知であり、ここではこれ以上説明されない。
【0012】
明細書および図面に開示されるすべての特徴は、本発明の実施形態において単独で、または基本的に任意に組み合わせて実現することができる。本発明の請求項または実施形態の特徴のすべてではなく、1つのみ、または複数の特徴を有する本発明の実施形態が基本的に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるペダルストロークシミュレータを有する液圧式非人力車両ブレーキシステムのスリップ制御の液圧ブロックの断面図である。
図2】力・距離の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施形態をもとにして本発明について詳しく説明する。
【0015】
図面に示された本発明による液圧ブロック1は、その他は図示されない液圧式非人力車両ブレーキシステムのスリップ制御および非人力操作のために企図されている。液圧ブロック1は、説明されるペダルストロークシミュレータ2以外を装備せずに図示された直方体状の金属ブロックである。図示および説明される実施形態では、液圧ブロック1は軽金属、すなわちアルミニウム合金からなる。液圧ブロック1は、車両ブレーキシステムの液圧回路図に従う図面に見て取れない穿孔(Verbohrung)を有する。液圧ブロックは、非人力操作のための図示されない液圧部品と、電磁弁、1つまたは複数のピストンを有するマスタブレーキシリンダ、非人力ピストンを有する非人力シリンダ、およびペダルストロークシミュレータ2などのスリップ制御とを装備し、これらは車両ブレーキシステムの液圧回路図に従う穿孔によって液圧的に接続されている。マスタブレーキシリンダが液圧ブロック1に組み込まれているので、ブレーキ配管を介して液圧ブロック1に液圧ホイールブレーキを連結しさえすればよい。この種の液圧ブロック1は公知であり、ここではこれ以上説明しない。
【0016】
液圧ブロック1は、本発明によるペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3として円筒状の有底穴を有し、この有底穴の底にはマスタブレーキシリンダのための接続部4としての孔が開口している。接続部4をなす孔は、ペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3をマスタブレーキシリンダ孔5と液圧的に接続し、このマスタブレーキシリンダ孔に図示されないマスタブレーキシリンダまたはマスタブレーキシリンダブッシュが押し込まれるか、あるいはマスタブレーキシリンダ孔5がマスタブレーキシリンダをなす。シミュレータシリンダ3内にシミュレータピストン6が軸方向に摺動可能に収容されている。
【0017】
ペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3の開端における開口には、液圧ブロック1から突出するシリンダカバー7が設置されている。実施例では、シリンダカバー7は円筒管状であり、かつシミュレータシリンダ3に向いた開端と閉端とを有する。シミュレータシリンダ3の開口における内ねじにねじ込まれたねじ山付きリング8は、ユニオンナットのように、シリンダカバー7の外側に周方向に延びるリング段部9でシリンダカバー7を保持する。シミュレータシリンダ3の開口において周方向に延びる溝に設置されたシールリング10がシリンダカバー7とシミュレータシリンダ3との間を密封し、それによりシミュレータシリンダ3が圧密に閉鎖されている。
【0018】
シリンダカバー7の開側には多機能部材11として穴あきディスクが取り付けられている。実施例では、多機能部材11をなす穴あきディスクは、シリンダカバー7の開端におけるシリンダカバー7の端面縁に周方向に延びるリング段部に圧入されている。シミュレータシリンダ3の開口において、多機能部材11をなす穴あきディスクが周方向に延びるリング段部12で支持され、それにより多機能部材11は軸方向に固定されている。中央穴13によって多機能部材11を流体が通過でき、それによりブレーキ液は2方向に通り抜けることができる。
【0019】
スペーサ15のプランジャ14は多機能部材11の中央穴13を貫通する。スペーサ15は円盤状の基部(Fuss)16を有し、プランジャ15はこの基部から同軸に突出する。スペーサ15の基部16はシリンダカバー7内に位置し、かつ多機能部材11の中央穴13より大きい直径を有し、それにより多機能部材11はスペーサ15の基部16をシリンダカバー7内に保持し、スペーサ15をシリンダカバー7に保持する。実施例ではスペーサ15はシミュレータピストン6とは別個の部品である。
【0020】
シリンダカバー7内には第1ピストンスプリング17として皿ばね組立体が配置され、第1ピストンスプリングがシリンダカバー7の閉端で支持され、かつスペーサ15の基部16に押し付けられる。第1ピストンスプリング17とスペーサ15の基部16との間に穴あきディスク18が配置されている。第1ピストンスプリング17がシリンダカバー10の閉端で支持され、かつスペーサ15の基部16を多機能部材11に押し付け、多機能部材は、基部16と穴あきディスク18と第1ピストンスプリング17をなす皿ばね組立体とをシリンダカバー7内に保持する。多機能部材11は、スペーサ15をその基部16によりシリンダカバー7に保持する。スペーサ15の基部16は、穴あきディスク18に向いた端面に径方向通路23を有し、この径方向通路は穴あきディスク18の中央穴まで達し、それによりブレーキ液がシミュレータシリンダ3から多機能部材11を通ってスペーサ15の基部16の外側を取り囲み、径方向通路23および穴あきディスク18の中央穴を通ってシリンダカバー7内に、そしてその逆に流れることができる。多機能部材11の中央穴は星形であり、それによりブレーキ液は、基部16が多機能部材11に当接した場合にもスペーサ15の基部16の傍らを通って流れることができる。
【0021】
シリンダカバー7は、第1ピストンスプリング17、スペーサ15、および第1ピストンスプリング17をシリンダカバー7内に、かつスペーサ15をシリンダカバー7に保持する多機能部材11とともに組立済アセンブリ(Vormontage-Baugruppe)をなし、この組立済アセンブリは、それ以外の部品とは別に組み立てられ、単一部品のように取り扱われ、かつペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3の開口に取り付けることによってペダルストロークシミュレータ2に組み付けて一緒にすることができる。
【0022】
スペーサ15のプランジャ14は、シミュレータピストン6における同軸の、かつ直径が階段状の凹部19内に突出する。図面に見て取れるように、プランジャ14もしくはスペーサ15は短く、それによりシミュレータピストン6がシミュレータシリンダ3の閉端に当接した場合に凹部19内でプランジャ14とリング段部20との間に距離が生じる。それによってシミュレータピストン6は、そのリング段部20がスペーサ15のプランジャ14にぶつかり、シミュレータシリンダ3の閉端の方向に向いた第1ピストンスプリング17の弾撥力でスペーサ15を介して付勢される前に、シミュレータシリンダ3内をシミュレータピストン6が摺動できる第1移動距離sを有する。
【0023】
スペーサ15の基部16とシミュレータピストン6との間には第2ピストンスプリング21としての圧縮コイルばねが配置され、この圧縮コイルばねはスペーサ15のプランジャ14を包囲し、このばねの一端がスペーサリング24を介してスペーサ15の基部16で支持され、他端がシミュレータピストン6における凹部19内のリング段部20で支持される。第2ピストンスプリング21は、第1移動距離s中に、シミュレータシリンダ3の閉端の方向に向いた弾撥力でシミュレータピストン6を付勢する。シミュレータピストン6における凹部19の円筒部は、第2ピストンスプリング21のための収容部、もしくは一種のガイドをなす。
【0024】
第1ピストンスプリング17をなす皿ばね組立体は、第2ピストンスプリング21をなす圧縮コイルばねよりも大きいばね硬さと高いばね定数とを有する。さらに、第1ピストンスプリング17は、シミュレータピストン6とスペーサ15の基部16との間に第2ピストンスプリング21よりも大きい付勢力で多機能部材11とシリンダカバー7の閉端との間に挟持されている。
【0025】
常用制動(Betriebsbremsung)は、図示されない電気液圧式非人力ブレーキ圧発生装置によってブレーキ圧が生成される非人力制動(Fremdkraftbremsung)として行われ、電気液圧式非人力ブレーキ圧発生装置の図示されない非人力シリンダまたは非人力シリンダブッシュは液圧ブロック1における非人力シリンダ孔22に圧入されるか、または電気液圧式非人力ブレーキ圧発生装置の非人力シリンダが非人力シリンダ孔22をなす。非人力ブレーキ圧発生装置は、非人力シリンダ内に図示されない非人力ピストンを有し、この非人力ピストンは、液圧ブロック1の外側にシミュレータシリンダ3と同軸に取り付けられた図示されない電気モータを用いて非人力シリンダ内の機械的減速機とねじ機構とを介して摺動される。
【0026】
図示されないマスタブレーキシリンダは、同様に液圧ブロック1に配置された同様に図示されない電磁弁を閉じることによって車両ブレーキシステムから液圧的に切り離され、マスタブレーキシリンダは、生成されるべきブレーキ圧および/または制御されるべきホイールブレーキ圧のための目標値発生器として用いられる。液圧ブロック1に配置された、ペダルストロークシミュレータ2とマスタブレーキシリンダとの接続部4をなす液圧ブロック1の孔に配置された図示されない電磁弁を開くことによって、ペダルストロークシミュレータ2がマスタブレーキシリンダと連通し、それによりマスタブレーキシリンダが筋力操作された場合にブレーキ液がマスタブレーキシリンダからペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3へ押しのけられる。
【0027】
マスタブレーキシリンダから押しのけられたブレーキ液は、シミュレータシリンダ3内で、まず第2ピストンスプリング21の低弾撥力に抗して、シミュレータピストン6(厳密にはシミュレータピストン6の凹部19におけるリング段部20)が第1移動距離sの終わりにスペーサ15のプランジャ14にぶつかるまでシミュレータピストン6を摺動させる。第1移動距離s中にシミュレータピストン6に作用する低弾撥力は、いわゆる「ジャンプ・イン」をシミュレートする。「ジャンプ・イン」は、マスタブレーキシリンダの筋力操作の初めの低操作力である。
【0028】
第1移動距離sの終わりにシミュレータピストン6がスペーサ15のプランジャ14にぶつかった場合、シミュレータピストン6は、さらに摺動してスペーサ15を介して第1ピストンスプリング21を圧縮する。第1ピストンスプリング21の弾撥力は第2ピストンスプリング17の弾撥力より大きいので、シミュレータピストン6を付勢する弾撥力は、シミュレータピストン6がさらに摺動した場合に上昇する。
【0029】
実施例では、第2ピストンスプリング21は、シミュレータピストン6の第1移動距離s中に、図2に示されるように小さい勾配の直線的な力の上昇を引き起こす。シミュレータピストン6がさらに摺動した場合、より強力な第1ピストンスプリング17が急峻な、実施例では累進的な力の上昇を引き起こす。
【0030】
いわゆる「ジャンプ・イン」をシミュレートする移動距離sの長さは、プランジャ14の長さとシミュレータピストン6における凹部19の深さとにより調整可能である。弾撥力もしくは力の上昇の急峻性は、第2ピストンスプリング21のばね硬さと、第2ピストンスプリング21とスペーサ15の基部16との間のスペーサリング24の省略、比較的薄いか、または厚いスペーサリング24、あるいは複数のスペーサリング24によって調整可能である。
【0031】
図2の力・距離線図における点sにおいて、シミュレータピストン6が多機能部材11にぶつかり、そのことがピストン往復運動を終了させる。シミュレータピストン6はそれ以上動かず、力はそこから垂直に上昇する。
【0032】
シミュレータピストン6にスペーサ15が激しく衝突することを回避するために、ここでは一般化して弾性(Elastizitaet)25と呼ばれるゴム弾性要素がシミュレータピストン6の凹部19に配置されている。弾性25は、第1移動距離sからシミュレータピストン6のさらなる摺動への、図2の力・距離線図にsで示されているソフトな移行をもたらす。
【0033】
スペーサ15もしくはスペーサのプランジャ14は長く、それによりスペーサもしくはスペーサのプランジャは、第2ピストンスプリング21の受け面をなすシミュレータピストン6の凹部19におけるリング段部20と、第2ピストンスプリング21が支持されるスペーサ15の基部16との間に、第2ピストンスプリング21の最小長より長い最小距離を確保する。実施例では圧縮コイルばねである第2ピストンスプリング21は、巻線同士が当接する場合に最小長を有する。第2ピストンスプリング21が「密着する」とも解釈され得る第2ピストンスプリング21の巻線同士のこの当接を、スペーサ15がプランジャ14の長さによって回避する。
【0034】
実施例ではシミュレータシリンダ3内でシミュレータピストン6と第1ピストンスプリング17との間に軸方向固定的に(axialfest)配置された穴あきディスクである多機能部材11は、シミュレータピストン6の往復運動を制限するシミュレータピストン6のための往復運動制限器(Hubbegrenzung)をもなす。往復運動制限器は、実施例では、第1ピストンスプリング17が「密着する」のを回避するように選択される。第1ピストンスプリング17が「密着する」とは、第1ピストンスプリング17をなす皿ばね組立体の皿ばねの圧縮であろうから、皿ばね同士が面状に当接し、皿ばねの外周縁または内周縁のみで当接するのでなく、および/または皿ばね同士が平らに押圧されるか、または逆の反りにひっくり返ることである。
【0035】
液圧ブロック1は、すでに述べたようにマスタブレーキシリンダ孔5を有し、マスタブレーキシリンダ孔は、実施形態では直径が階段状であり、かつ周方向に延びる溝を有する。マスタブレーキシリンダ孔5に図示されないマスタブレーキシリンダが圧入され、マスタブレーキシリンダ内に1つまたは複数の図示されないマスタブレーキシリンダピストンが挿入され、複数のマスタブレーキシリンダピストンのうちの1つが、図示されないブレーキペダルによってマスタブレーキシリンダもしくは車両ブレーキシステムを操作するために摺動可能であり、かつ1つまたは複数の他のシミュレータピストンが加圧によって摺動可能である。
【0036】
液圧ブロック1は、非人力操作のために非人力シリンダ孔22を有し、このシリンダ孔はペダルストロークシミュレータ2のように他の断面平面に位置するので、図1にはそのうちの1つの半断面しか見て取れない。図において、断面は、ペダルストロークシミュレータ2が軸方向断面で、かつ非人力シリンダ孔22が半断面として見て取れるようにずらしてある。ペダルストロークシミュレータ2のシミュレータシリンダ3と、液圧ブロック1におけるマスタブレーキシリンダをなす、曲げて形成されていてもよい孔との接続部4は、非人力シリンダ孔22と交差することなしに非人力シリンダ孔の傍らを通過し、マスタブレーキシリンダ孔5に到達するか、もしくはマスタブレーキシリンダ孔と交差し、それによりシミュレータシリンダ3がマスタブレーキシリンダ孔5と連通する。
【符号の説明】
【0037】
1 液圧ブロック
2 ペダルストロークシミュレータ
3 シミュレータシリンダ
4 接続部
5 マスタブレーキシリンダ孔
6 シミュレータピストン
7 シリンダカバー
8 ねじ山付きリング
9 リング段部
10 シールリング
11 多機能部材
12 リング段部
13 中央穴
14 プランジャ
15 スペーサ
16 基部、ディスク
17 第1ピストンスプリング
18 穴あきディスク
19 凹部
20 リング段部、受け面
21 第2ピストンスプリング
22 非人力シリンダ孔
23 径方向通路
24 スペーサリング
25 弾性
第1移動距離
図1
図2